説明

縮合ヘテロ環を含むモノシクロペンタジエニル錯体

少なくとも1種の縮合ヘテロ環および少なくとも1種の非荷電供与体を含むシクロペンタジエニル環式基を有するモノシクロペンタジエニル錯体を、オレフィンの重合または共重合用の触媒組成物中で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタジエニル環系が少なくとも1種の縮合ヘテロ環と少なくとも1種の非荷電供与体を含むモノシクロペンタジエニル錯体、および少なくとも1種のモノシクロペンタジエニル錯体を含む触媒組成物に関する。
【0002】
更に、本発明は、触媒組成物をオレフィンの重合または共重合に使用する方法、オレフィンを触媒組成物の存在下に重合または共重合することによるポリオレフィンの製造方法、およびこのようにして得られるポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
メタロセン錯体等の有機遷移金属化合物は、オレフィンの重合用触媒として非常に重要である。なぜなら、これにより、従来のチーグラ−ナッタ触媒を用いることなく得られるポリオレフィンを合成することが可能となるからである。例えば、かかるシングルサイト触媒により、モル質量分布が狭く且つコモノマー含有量の均一なポリマーをもたらす。ビス(シクロペンタジエニル)化合物の他に、「窮屈な幾何学的形状」の触媒を使用することができる。この触媒は、通常、ブリッジを間に介してアニオン性のアミドに結合されるシクロペンタジエニル環系を1個だけ含む酸化状態4のチタン錯体であり、このアニオン性のアミドも同様に中心のチタンに結合されている。
【0004】
WO98/22486では、1個または2個のシクロペンタジエニル環系が1個以上の縮合ヘテロ環を含むビス(シクロペンタジエニル)錯体を記載している。
【0005】
WO98/37106では、縮合ヘテロ環を含む少なくとも1種のシクロペンタジエニル配位子と他のシクロペンタジエニル配位子またはアニオン性の供与体とを有する遷移金属錯体を含む触媒組成物を記載している。
【0006】
J. Org. Chem. 1996, 61, 7230-7231頁において、 Fu et alは、1個のシクロペンタジエニル環が縮合ピリジン環を含むフェロセン錯体を記載している。
【0007】
【特許文献1】WO98/22486
【特許文献2】WO98/37106
【非特許文献1】J. Org. Chem. 1996, 61, 7230-7231頁
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル配位子を基礎とする、オレフィンの重合に適当な遷移金属錯体を見出すことにある。
【0009】
本発明者等は、上記目的が下式:
(HCp)Y
[但し、HCpが少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系を表し、
YがHCpに結合され且つ周期表第15族または第16族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を有する置換基を表し、
Mが周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族または第10族の金属を表し、
nが1、2または3を表す。]
で表される構造的な特徴を有するモノシクロペンタジエニル錯体により達成されることを見出した。
【0010】
更に、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を含む触媒組成物、この触媒組成物をオレフィンの重合または共重合に使用する方法、およびこの触媒組成物の存在下にオレフィンを重合または共重合することによるポリオレフィンの製造方法、更にこのようにして得られるポリマーが見出された。
【0011】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、構造的な要素として(HCp)YMを含み、それぞれの記号は上記と同義である。したがって、別の配位子を金属原子Mに結合させることができる。この別の配位子の数は、例えば金属原子の酸化状態に依存している。考え得る他の配位子は、更に別のシクロペンタジエニル環系を含んでいない。適当な配位子は、例えばXについて記載されているモノアニオン性およびジアニオン性の配位子である。更に、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィドまたはホスフィン等のルイス塩基を中心の金属Mに結合させることも可能である。
【0012】
HCpは、少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系である。以下において、シクロペンタジエニルは、炭素原子の1個を窒素またはリン、好ましくはリンで置き換えられていても良い、6π電子を有するC環式基である。ヘテロ原子で置き換えられていないC環式基を使用するのが好ましい。周期表第15族または第16族の原子を少なくとも1個含む少なくとも1種のヘテロ環は、このシクロペンタジエニル基本骨格構造に縮合されている。本発明の内容に関して、縮合(fused-on)は、ヘテロ環およびシクロペンタジエニル骨格構造が2個の原子、好ましくは炭素原子を共有していることを意味する。
【0013】
式(F−I):
【0014】
【化1】

【0015】
[但し、E1A〜E5Aがそれぞれ炭素を表し、またはE1A〜E5Aの1個以下がリンまたは窒素、好ましくはリンを表し、
1A〜R6Aが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR6Aを表し、且つ有機基R1A〜R5Aがハロゲンで置換されても良く、そして2個のビシナル基R1A〜R5Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、且つビシナル基R1A〜R5Aの少なくとも2個を相互に合体させて、周期表第15族または第16族の原子を少なくとも1個含むヘテロ環を形成しても良く、更に、R1A〜R6AがYを表しても良く、
6Aが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個のビシナル基R6Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
で表されるシクロペンタジエニル環系HCpが好ましい。
【0016】
好ましいシクロペンタジエニル環系HCpにおいて、E1A〜E5Aの全てが炭素である。
【0017】
少なくとも2個のビシナル基R1A〜R5Aが、周期表第15族または第16族の原子、好ましくは窒素、リン、酸素及び/又は硫黄、特に好ましくは窒素及び/又は硫黄を少なくとも1個含んでいるヘテロ環を形成する。環の大きさが5または6員環のヘテロ環が好ましい。炭素の他に環員として1〜4個の窒素原子及び/又は硫黄もしくは酸素原子を含んでいても良い5員のヘテロ環の例は、フラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、3−イソチアゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1.2.5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−トリアゾールおよび1,2,4−トリアゾールである。1〜4個の窒素原子及び/又はリン原子を含んでいても良い6員のヘテロ環の例は、ピリジン、ホスファベンゼン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジンおよび1,2,3−トリアジンである。6員環および6員環のヘテロ環は、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール、トリアルキルシリルまたはハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)で置換されていても良く、または1個以上の芳香族化合物もしくはヘテロ芳香族化合物で縮合されていても良い。ベンゾ縮合の5員ヘテロアリール基の例は、インドール、インダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾールおよびベンゾイミダゾールである。ベンゾ縮合の6員ヘテロアリール基の例は、クロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,10−フェナントロリンおよびキノリジンである。ヘテロ環の命名および番号付与は、Lettau, Chemie der Heterocyclen, 第1版, VEB, Weinheim 1979から引用した。ヘテロ環を、シクロペンタジエニル基本骨格構造にヘテロ環のC−C二重結合を間に介して縮合させた。1個のヘテロ原子を含むヘテロ環は、2,3−またはb−縮合であるのが好ましい。
【0018】
ヘテロ環を形成しない置換基R1A〜R5Aの変体も同様に、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体の重合作用および溶解性に影響を及ぼすことができる。置換基の数および種類により、重合されるべきオレフィンの、金属原子Mへの接近に影響を及ぼすことができる。このようにして、種々のモノマー、特に嵩高いモノマーに対する触媒の活性および選択性を修正することができる。この置換基は成長ポリマー鎖の停止反応の速度に影響を及ぼすことができることから、これにより形成されるポリマーの分子量を変化させることもできる。したがって、置換基R1A〜R5Aの化学的な構造を広範囲内で変更して、所望の結果を達成し且つ目的の触媒組成物を得ることができる。
【0019】
考え得る有機炭素置換基R1A〜R5Aの例は以下の通りである:すなわち、
直鎖でも、または分岐でも良いC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンまたはシクロドデカン、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有することができるC〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として別のアルキル基を有していても良いC〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として別のアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、
であり、且つ2個のR1A〜R5Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、そして有機基R1A〜R5Aは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。考え得る有機ケイ素置換基SiR6Aは、R1A〜R5Aと同義である基R6Aを有することができ、且つ2個のR6Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、有機ケイ素置換基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。好ましいR1A〜R5Aは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−もしくはo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−もしくはトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。特に有用な有機ケイ素置換基は、アルキル基の炭素原子数が1〜10個であるトリアルキルシリル基、特にトリメチルシリル基である。2個のビシナル基R1A〜R5Aが、縮合環系、すなわちE1A〜E5A骨格構造、好ましくはCシクロペンタジエニル骨格構造と合体して、例えば無置換または置換のインデニル、ベンゾインデニルまたはテトラヒドロインデニル環系を形成することも可能である。
【0020】
縮合へテロ環を含むシクロペンタジエニル環系HCpの例は、チアペンタレン、2−メチルチアペンタレン、2−エチルチアペンタレン、2−イソプロピルチアペンタレン、2−n−ブチルチアペンタレン、2−tert−ブチルチアペンタレン、2−トリメチルシリルチアペンタレン、2−フェニルチアペンタレン、2−ナフチルチアペンタレン、3−メチルチオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジメチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジエチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジイソプロピル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジ−n−ブチル−1−チオペンタレン、4−フェニル−2,6−ジトリメチルシリル−1−チオペンタレン、アザペンタレン、2−メチルアザペンタレン、2−エチルアザペンタレン、2−イソプロピルアザペンタレン、2−n−ブチルアザペンタレン、2−トリメチルシリルアザペンタレン、2−フェニルアザペンタレン、2−ナフチルアザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−tert−ブチル−1−アザペンタレン、1−フェニル−2,5−ジトリメチルシリル−1−アザペンタレン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−アザペンタレン、オキサペンタレン、ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジエチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−n−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジ−tert−ブチル−1−ホスファペンタレン、1−フェニル−2,5−ジトリメチルシリル−1−ホスファペンタレン、1−メチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、1−tert−ブチル−2,5−ジメチル−1−ホスファペンタレン、7−シクロペンタ[1,2]チオフェン[3,4]シクロペンタジエンまたは7−シクロペンタ[1,2]ピロール[3,4]シクロペンタジエンである。
【0021】
別の好ましいシクロペンタジエニル環系HCpにおいて、基R1A〜R5Aの4個、すなわち二組の一対のビシナル基が、2個のヘテロ環を形成する。この複素環式基は、上記に詳細に記載したとおりである。2個の縮合へテロ環を含むシクロペンタジエニル環系HCpの例は、7−シクロペンタジチオフェン、7−シクロペンタジピロールまたは7−シクロペンタジホスホール(7-cyclopentadiphosphole)である。
【0022】
かかるシクロペンタジエニル環系HCpの合成は、例えば上述のWO98/22486に記載されている。"metalorganic catalysts for synthesis and polymerisation", Springer Verlag 1999において、Ewen等は、150頁以降にシクロペンタジエニル環系HCpの別の合成を記載している。
【0023】
メタロセンの場合のように、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体はキラルであっても良い。したがって、シクロペンタジエニル基本骨格構造の置換基R1A〜R5Aの1つは、1個以上のキラル中心を有することができ、またはシクロペンタジエニル環系HCpそれ自体が、互変性であっても良く、これにより、HCpを遷移金属Mに結合させた場合のみキラリティが引き起こされる(シクロペンタジエニル化合物のキラリティに用いられる形式に関して、R. Halterman, Chem. Rev, 92, (1992), 965-994頁を参照乞う)。
【0024】
Yは、HCpに結合され且つ周期表第15族または第16族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を含む置換基を表す。置換基Yをシクロペンタジエニル基本骨格構造またはヘテロ環に結合させることができる。Yは、シクロペンタジエニル基本骨格構造に結合されているのが好ましく、そして置換基R1A〜R5Aに置き換えられている。Yは、縮合へテロ環に隣接する位置でシクロペンタジエニル骨格構造に結合されているのが特に好ましい。したがって、ヘテロ環をシクロペンタジエニル骨格構造の2,3位で縮合させる場合、Yは、シクロペンタジエニル骨格構造の1位または4位に配置されるのが好ましい。Yにおける供与体を、金属Mに分子間結合または分子内結合させることができる。Yにおける供与体をMに分子内結合させるのが好ましい。この供与体は、周期表第15族または第16族の元素を含む非荷電官能基であっても良く、例えばアミン、イミン、カルボキシアミド、カルボン酸エステル、ケトン(オキソ)、エーテル、チオケトン、ホスフィン、ホスフィト、酸化ホスフィン、スルホニル、スルホンアミドまたは無置換、置換または縮合の、ヘテロ環式系である。Yを供与体に結合するのは、例えば、M. Enders等によるChem. Ber. (1996), 129, 459-463頁またはP. Jutzi and U. SiemelingによるJ. Orgmet. Chem. (1995), 500, 175-185頁に記載されている方法に類似の方法によって行われ得る。
【0025】
Mは、周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族または第10族、好ましくは周期表第3族、第4族、第5族または第6族の金属、例えばスカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タンタル、クロムまたはタングステンである。Mは、チタンまたはクロムであるのが特に好ましい。金属錯体、特にクロム錯体は、対応の金属塩、例えば金属塩化物を配位子アニオンと反応させる(例えば、DE18710615の実施例に類似の手順による)ことによって簡易な方法で得ることができる。
【0026】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体の中で、下式:
(HCp)YMX
[但し、HCpが少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系を表し、
Yが、HCpに結合され且つ周期表第14族または第15族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を有する置換基を表し、
Mが周期表第3族、第4族、第5族または第6族の金属を表し、
Xが相互に独立して、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、NR、OR、SR、SO、OC(O)R、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PFまたは嵩高い非配位アニオンを表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、且つ有機基R、Rがハロゲンで置換されても良く、そして2個の基R、Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
kが1、2または3を表す。]
で表される錯体が好ましい。
【0027】
HCpおよびYの上述した実施の形態および好ましい実施の形態は、これらの好ましいモノシクロペンタジエニル錯体にも適用される。
【0028】
Mは、周期表第3族、第4族、第5族または第6族、好ましくは周期表第4族、第5族または第6族の金属、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タンタル、クロムまたはタングステンである。Mは酸化状態3のチタンまたは特に酸化状態3もしくは4のクロムであるのが特に好ましい。
【0029】
配位子Xは、例えばモノシクロペンタジエニル錯体の合成に用いられる対応の出発金属化合物を選択することによって決定されるが、次いでこれを変更することも可能である。考え得る配位子Xは、特にハロゲンのフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特に塩素である。メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、アリル、フェニルおよびベンジル等のアルキル基は、有利な配位子Xでもある。例として特記に値し且つ網羅的な列挙を構築しない別の配位子Xは、トリフルオロアセテート、BF、PFおよび弱配位もしくは非配位アニオン(例えば、S. Strauss in Chem. Rev. 1993, 93, 927-942頁参照乞う)、例えばB(Cである。
【0030】
アミド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレートおよびβ−ジケトネートは特に有用な配位子Xである。基RおよびRの変更により、例えば、溶解性等の物理的特性を良好に調整することができる。考え得る有機炭素置換基RおよびRの例は、以下の通りである:
直鎖でも、または分岐でも良いC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンまたはシクロドデカン、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有していても良いC〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として別のアルキル基を有していても良いC〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として別のアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、
であり、且つRをRに合体させて、5または6員環を形成しても良く、そして有機基R〜Rは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。有機ケイ素置換基SiR中の考え得る基Rは、R〜Rについて上記に詳細に記載した基と同義であり、且つ2個のRを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。基RおよびRとして、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等のC〜C10アルキル、更にビニル、アリル、ベンジルおよびフェニルを使用するのが好ましい。置換された配位子Xの一部を使用するのが特に好ましい。なぜなら、この配位子Xは、安価で且つ容易に利用可能な出発材料から得ることができるからである。したがって、Xがアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフレート、p−トルエンスルホネート、アセテートまたはアセチルアセトネートである場合、特に好ましい実施の形態を得ることができる。
【0031】
配位子Xの数kは、遷移金属Mの酸化状態に応じて異なる。したがって、数kを、一般的に利用可能な数字として形成することができない。触媒活性錯体における遷移金属Mの酸化状態は、主として当業者等に知られている。クロム、モリブデンおよびタングステンは、ほとんど+3の酸化状態である。しかしながら、酸化状態が活性触媒の酸化状態に対応していない錯体を使用することも可能である。そこで、かかる錯体を、適当な活性化剤を用いて適当に還元又は酸化することができる。酸化状態が+3または+4のクロム錯体および酸化状態が+3または+4のチタン錯体を使用するのが好ましい。
【0032】
好ましいモノシクロペンタジエニル錯体において、シクロペンタジエニル環系HCpおよびYが、式II:
【0033】
【化2】

【0034】
[但し、各記号Y、E1A〜E5AおよびR6Aが上記と同義であり、これらの好ましい実施の形態がここでは望ましく、そして
1A〜R4Aが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR6Aを表し、且つ有機基R1A〜R4Aがハロゲンで置換されても良く、そして2個のビシナル基R1A〜R4Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、且つビシナル基R1A〜R4Aの少なくとも2個を相互に合体させて、周期表第15族または第16族の原子を少なくとも1個含む複素環を形成する。]
で表される配位子(HCp−Y)を形成する。
【0035】
上述した実施の形態および好ましい実施の形態も同様にR1A〜R4Aへ適用される。
【0036】
特に好ましいモノシクロペンタジエニル錯体において、Yが下式:
−Z−A
[但し、ZがAとHCpとの間における2価のブリッジを表し、
AがNR、PR、OR、SRまたは無置換、置換もしくは縮合の複素環式基を表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、且つ有機基RおよびRがハロゲンで置換されても良く、そして2個の基RおよびRを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが1を表すか、またはAが無置換、置換もしくは縮合のヘテロ芳香族環式基を表す場合に0を表しても良い。]
で表される置換基である。
【0037】
Aは、例えばブリッジZと合体して、アミン、エーテル、チオエーテルまたはホスフィンを形成しても良い。しかしながら、Aは、炭素環員の他に酸素、硫黄、窒素およびリンからなる群から選択されるヘテロ原子を含むことができる無置換、置換または縮合の複素環式基、好ましくはヘテロ芳香族環式基であっても良い。炭素の他に環員として1〜4個の窒素原子もしくは1〜3個の窒素原子及び/又は硫黄もしくは酸素原子を含む5員環のヘテロアリール基の例は、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イルまたは1,2,4−トリアゾール−3−イルである。1〜4個の窒素原子及び/又はリン原子を含むことができる6員のへテロアリール基の例は、2−ピリジニル、2−ホスファベンゾイル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イルまたは1,2,4−トリアジン−6−イルである。5または6員環のヘテロアリール基は、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、トリアルキルシリルまたはハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)で置換されていても良く、または1個以上の芳香族化合物もしくはヘテロ芳香族化合物と縮合されていても良い。ベンゾ縮合の5員ヘテロアリール基の例は、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チアナフテニル、7−チアナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンゾイミダゾリルおよび7−ベンゾイミダゾリルである。ベンゾ縮合の6員へテロアリール基の例は、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジリル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジルおよび1−フェナジリルである。これらのヘテロ芳香族環系の中で、置換および無置換の2−ピリジルおよび8−キノリルが特に好ましい。
【0038】
基R、Rを適当に選択することにより、同様に触媒の活性および形成されるポリマーの分子量に対して影響を及ぼすことができる。考え得る置換基R、Rは、R、Rと同義であり、且つ2個のビシナル基RおよびRを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、そしてハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換しても良い。好ましい基R、Rは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。RおよびRがこれらの有するヘテロ原子と共に、ピロリジンまたはピペリジン等のヘテロ環を形成する構造も同様に好ましい。考え得る有機ケイ素置換基は、特に、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル、特にトリメチルシリル基である。
【0039】
シクロペンタジエニル環系HCpと官能基Aとの間のブリッジZは、炭素及び/又はケイ素単位を含み且つ1〜5の鎖長を有する2価の有機基(organic diradical)である。Zを、シクロペンタジエニル基本骨格構造またはヘテロ環に結合させることができる。Zを、シクロペンタジエニル基本骨格構造に結合させるのが好ましい。シクロペンタジエニル環系とヘテロ原子供与体Aとの間の結合の長さを変更することにより、触媒の活性に影響を及ぼすことができる。
【0040】
好ましいZは、
【0041】
【化3】

【0042】
[但し、R1B〜R6Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B〜R6Bがハロゲンで置換されても良く、そして2個の基R1B〜R6Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
1Bが炭素、ケイ素またはゲルマニウム、好ましくは炭素またはケイ素を表す。]
である。
【0043】
考え得る置換基R1B〜R6Bは、R、Rと同義であり、且つ2個のゲミナルまたはビシナル基R1B〜R6Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、そしてハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換しても良い。好ましい基R1B〜R6Bは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。考え得る有機ケイ素置換基は、特に、アルキル基に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル、特にトリメチルシリル基である。
【0044】
好ましいモノシクロペンタジエニル錯体において、シクロペンタジエニル環系HCpと−Z−Aが、式III:
【0045】
【化4】

【0046】
[但し、各記号A、Z、E1A〜E5AおよびR6Aが上記と同義であり、これらの好ましい実施の形態がここでは望ましく、そして
1A〜R4Aが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR6Aを表し、且つ有機基R1A〜R4Aがハロゲンで置換されても良く、そして2個のビシナル基R1A〜R4Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、但し、ビシナル基R1A〜R4Aの少なくとも2個が相互に合体して、周期表第15族または第16族の原子を少なくとも1個含むヘテロ環(ヘテロシクリル)を形成する。]
で表される配位子(CP−Z−A)を形成する。
【0047】
上述した実施の形態および好ましい実施の形態も同様にR1A〜R4Aへ適用される。
【0048】
これらのモノシクロペンタジエニル錯体の中で、
mが1を表し、
AがNR、PR、ORまたはSR、好ましくはNRまたはPRを表し
Zが、下式:
【0049】
【化5】

【0050】
[但し、L2Bが相互に独立して、それぞれ炭素またはケイ素を表し、
1B〜R6Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B〜R6Bがハロゲンで置換されても良く、そして2個のゲミナルまたはビシナル基R1B〜R6Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
からなる群から選択される2価のブリッジを表す、モノシクロペンタジエニル錯体が特に好ましい。
【0051】
1B〜R7Bについて上述した実施の形態および好ましい実施の形態もこれらの好ましいモノシクロペンタジエニル錯体へ適用される。これらを容易に製造することができることに起因して、Z=CH、SiMe、CH=CHまたは1,2−フェニレンとA=NRまたはPRとの組み合わせが好ましい。
【0052】
別の好ましい実施の形態では、
Aが無置換、置換または縮合のヘテロ芳香族環系を表し、
Zが、下式:
【0053】
【化6】

【0054】
[但し、L3Bが相互に独立して、それぞれ炭素またはケイ素を表し、
1B、R2Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B、R2Bがハロゲンで置換されても良く、そして2個の基R1B、R2Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが0または1を表す。]
で表される、モノシクロペンタジエニル錯体である。
【0055】
1B、R2BおよびR7Bについて上述した実施の形態および好ましい実施の形態もこれらの好ましいモノシクロペンタジエニル錯体へ適用される。
【0056】
これらの好ましい実施の形態において、Aは無置換、置換または縮合のヘテロ芳香族環系である。下式:
【0057】
【化7】

【0058】
[但し、R1C〜R10Cが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR11Cを表し、且つ有機基R1C〜R10Cがハロゲンで置換されても良く、そして2個のビシナル基R1C〜R10Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
11Cが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R11Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
から選択される容易に入手可能で且つ安価である簡易な環系(環式基)が好ましい。
【0059】
考え得る置換基R1C〜R11Cは、R、Rと同義であり、且つ2個のビシナル基R1C〜R11Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、そしてハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換しても良い。好ましい基R1C〜R11Cは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。特に有用な有機ケイ素置換基は、特に、アルキル基に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル、特にトリメチルシリル基である。
【0060】
ZとAとの好ましい組み合わせは、Aが無置換または置換の2−ピリジルを表し、mが1を表し、そしてZがCH、CM2またはSiMeを表すことによってもたらされる。
【0061】
極めて容易に入手可能であることから、好ましいものであるモノシクロペンタジエニル錯体にも、mが0を表し、Aが無置換または置換の8−キノリルを表すブリッジZを用いないモノシクロペンタジエニル錯体が含まれる。これらの錯体において、R5C〜R10Cが水素を表すのが好ましく、或いはR5C〜R9Cがそれぞれ水素を表し、R10Cがメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル、フェニル、ナフチル、ビフェニルまたはアントラニルを表す。これらは、製造することが容易であり且つ同時に極めて高い活性を示す。
【0062】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を、オレフィンの重合用触媒組成物として単独で、または他の成分と共に用いることができる。更に、本発明者等は、
A)本発明による少なくとも1種のモノシクロペンタジエニル錯体、
B)必要により、有機または無機担体、
C)必要により、1種以上のカチオン形成化合物、
D)必要により、1種以上の、オレフィンの重合に適当な触媒、
E)必要により、少なくとも1種の周期表第1族、第2族または第13族の金属、
を含むオレフィンの重合に用いられる触媒組成物を見出した。
【0063】
したがって、本発明によるモノシクロペンタジエニル錯体の2種以上をオレフィンまたは複数のオレフィンと同時に接触させて重合することができる。これにより、広範囲のポリマーを製造することができる点で有効である。例えば、このようにして二モードの生成物を製造することができる。
【0064】
本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を気相または懸濁液中での重合処理に用いることができるようにするため、メタロセンを固体の状態で使用する、すなわちメタロセンを固体の担体(B)に施すのが屡々有効である。更に、担持モノシクロペンタジエニル錯体は、高い生産性を示す。したがって、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を必要により、有機担体または無機担体(B)に固定して、重合中に担持状態で使用することも可能である。これは、反応器中で析出物を回避し、そしてポリマーのモルホロジーを制御する一般的な方法である。担体材料として、シリカゲル、塩化マグネシウム、酸化アルミニウム、中位の多孔性材料(mesoporous material)、アルミノシリケート、ヒドロタルサイトおよび有機ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンを使用するのが好ましい。
【0065】
オレフィンの重合用触媒の固体の担体材料(B)として、シリカゲルを使用するのが好ましい。なぜなら、寸法および構造がオレフィン重合用の単体として適当である粒子をこの材料から製造することができるからである。一次粒子として知られている小さな顆粒状の粒子からなる球形の凝集物である噴霧乾燥シリカゲルが特に有用であると見出された。シリカゲルを使用前に乾燥及び/又はか焼することができる。
【0066】
同様に好ましい担体(B)は、ヒドロタルサイトおよびか焼されたヒドロタルサイトである。鉱物学において、ヒドロタルサイトは、以下の理想式:
【0067】
【化8】

を有し、その構造がブルーサイトMg(OH)の構造から誘導される天然材料である。ブルーサイトは、密集したヒドロキシルイオンからなる二層の間で金属イオンを八面体の孔隙に配置させている層構造で結晶化させるが、その際、八面体の孔隙における全ての第二層のみが塞がれている。ヒドロタルサイトにおいて、マグネシウムイオンの一部をアルミニウムイオンに置き換え、プラスの電荷をもたらす層とする。これは、結晶化による水と共に中間層に配置するアニオンによって補償される。
【0068】
かかる層構造は、マグネシウム−アルミニウムの水酸化物の場合ばかりでなく、一般に、層構造を有し、且つ下式:
【0069】
【化9】

【0070】
[但し、M(II)が2価の金属、例えばMg、Zn、Cu、Ni、Co、Mn、Ca及び/又はFeを表し、
M(III)が酸化の金属、例えばAl、Fe、Co、Mn、La、Ce及び/又はCrを表し、
xが0.5間隔で0.5〜10までの数を表し、
Aが侵入型のアニオンを表し、
nが侵入型アニオンの電荷を表し、1〜8までの範囲であっても良く、通常1〜4までの範囲であり、そして
zが1〜6までの整数であり、特に2〜4までを表す。]
で表わされ混合状態の金属水酸化物の場合に見出された。考え得る侵入型アニオンは、有機アニオン、例えばアルコキシドアニオン、アルキルエーテルスルフェート、アリールエーテルスルフェートまたはグリコールエーテルスルフェート、無機アニオン、例えば特に炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩またはB(OH)或いはポリオキソ金属アニオン、例えばMo246−またはV10286−である。しかしながら、複数のかかるアニオンの混合物も含まれる場合がある。
【0071】
したがって、層構造を有するこのような混合金属水酸化物の全ては、本発明の目的のためにヒドロタルサイトとして見なされる。
【0072】
ヒドロタルサイトを、か焼、すなわち加熱によってか焼ヒドロタルサイトに転化することができ、これにより、特に所望のヒドロキシル含有量を設定することができる。更に、結晶構造も変化する。本発明によって使用されるか焼ヒドロタルサイトの製造は、通常、180℃を超える温度で行われる。250℃〜1000℃、特に400℃〜700℃の条件で3〜24時間に亘ってか焼するのが好ましい。か焼され、または真空の適用される、材料に対する空気または不活性ガスの同時通過も可能である。
【0073】
加熱時に、天然または合成のヒドロタルサイトを最初に水を放出させ、すなわち乾燥が生じる。その他の加熱時、すなわち実際のか焼処理時に、金属水酸化物がヒドロキシル基および侵入型アニオンを取り除いて、金属酸化物を形成し、その際に、OH基または侵入型アニオン、例えば炭酸塩を依然としてか焼ヒドロタルサイト中に存在させることができる。これに対する基準は、強熱減量である。これは、2工程、すなわち最初に乾燥炉中で200℃にて30分間に亘って、その後にマッフル炉中で950℃にて1時間に亘ってで加熱されるサンプルによって経験される質量損失である。
【0074】
したがって、成分(B)として使用されるか焼ヒドロタルサイトは、2価および3価の金属M(II)およびM(III)(但し、M(II)のM(III)に対するモル比は0.5〜10の範囲が一般的であり、0.75〜8の範囲が好ましく、特に1〜4である。)の混合酸化物である。更に、通常のレベルの不純物、例えばSi、Fe、Na、CaまたはTi並びに塩化物および硫酸塩も含まれる場合がある。
【0075】
好ましいか焼ヒドロタルサイトは、M(II)マグネシウムであり、M(III)がアルミニウムである混合酸化物である。かかるアルミニウム−マグネシウム混合酸化物は、Condea Chemie GmbH, Hamburgより商標名プラロックスMg(Puralox Mg)で得ることができる。
【0076】
構造的な変換が完全または実質的に完全であるか焼ヒドロタルサイトが好ましい。か焼、すなわち構造の変換を、例えばX線回折像によって確立することができる。
【0077】
使用されるヒドロタルサイト、か焼ヒドロタルサイトまたはシリカゲルは、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは15〜100μm、特に20〜70μmの平均粒径d50および一般に0.1〜10cm/g、好ましくは0.2〜5cm/gの細孔容積、そして30〜1000m/g、好ましくは50〜800m/g、特に100〜600m/gの比表面積を有する微粒子状の粉末として用いられる。本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、仕上げ処理された触媒組成物中のモノシクロペンタジエニル錯体濃度が担体(B)1gあたりに、10〜200μモル、好ましくは20〜100μm、特に好ましくは25〜70μmとなるような量で利用されるのが好ましい。
【0078】
本発明による一部のモノシクロペンタジエニル錯体は、低い重合活性しか有していないので、良好な重合活性を示すことができるようにするために、活性化剤、すなわち成分C)と接触させられる。従って、触媒組成物は必要によりさらに成分C)として1種以上のカチオン形成化合物を含む。少なくとも1種のカチオン形成化合物を含むのが好ましい。
【0079】
モノシクロペンタジエニル錯体A)と反応してこれをカチオン性化合物に転化させ得るカチオン形成化合物C)としては、例えばアルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有しているイオン性化合物、またはカチオンとしてブレンステッド酸を有しているイオン性化合物が好ましい。
【0080】
アルミノキサンとして、例えばWO00/31090に記載されている化合物を使用することができる。特に有用な化合物は、式(F X)または(F XI):
【0081】
【化10】

【0082】
[但し、基R1D〜R4Dが、相互に独立してそれぞれC−C−アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、ブチル、またはイソブチルを表わし、
lが1〜30、好ましくは5〜25の整数を表わす。]
で表わされる開鎖状または環状アルミノキサン化合物である。
【0083】
特に有用なアルミノキサン化合物は、メチルアルミノキサンである。
【0084】
これらのオリゴマーのアルミノキサン化合物は、トリアルキルアルミニウム溶液と水との制御された反応によって慣用的に製造される。このようにして得られたオリゴマーのアルミノキサン化合物は、一般的には様々な長さの直鎖状分子と環状分子の混合物の形態で存在する。従って、上記lの値は平均値を意味する。アルミノキサン化合物は、他のアルキル金属、通常はアルキルアルミニウムとの混合物として存在することもできる。成分C)として好適なアルミノキサン製品は市販されている。
【0085】
更に、式(F X)または(F XI)における炭化水素基のうちの一部を水素原子またはアルコキシ、アリールオキシ、シロキシまたはアミド基で置換した変性アルミノキサンを、成分C)として式(F X)または(F XI)で表わされるアルミノキサン化合物の代わりに使用することができる。
【0086】
モノシクロペンタジエニル錯体A)とアルミノキサン化合物とは、残存しているアルキルアルミニウムを含んだアルミノキサン化合物におけるアルミニウムのモノシクロペンタジエニル錯体A)における遷移金属に対する原子比が10:1〜1000:1、好ましくは20:1〜500:1、特に好ましくは30:1〜400:1になるような量で使用することが有効であることがわかっている。
【0087】
非荷電の強ルイス酸としては、式(F XII):
【0088】
【化11】

【0089】
[但し、M2Dが元素周期律表の第13族に属する元素、好ましくはB、AlまたはGa、特に好ましくはBを表わし、
1D、X2DおよびX3Dがそれぞれ水素、C−C10−アルキル、C−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリールまたはアリールアルキルまたはハロアルキルまたはハロアリール、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはハロアリール、特に好ましくはペンタフルオロフェニルを表わす。]
で表わされる化合物が好ましい。
【0090】
非荷電の強ルイス酸の他の例は、WO00/31090に記載されている。
【0091】
成分C)として特に有用な化合物は、ボランおよびボロキシン、例えばトリアルキルボラン、トリアリールボラン、またはトリメチルボロキシンである。少なくとも2個の過フッ素化アリール基を有するボランを使用するのが特に好ましい。X1D、X2DおよびX3Dが同一である式(F XII)で表わされる化合物が特に好ましく、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが極めて好ましい。
【0092】
カチオン形成化合物C)として好適な非荷電の強ルイス酸には、ホウ酸と2当量のトリアルキルアルミニウムの反応による反応生成物、またはトリアルキルアルミニウムと2当量の酸性フッ素化炭素化合物、特に過フッ素化炭素化合物、例えばペンタフルオロフェノールまたはビス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸との反応による反応生成物も含まれる。
【0093】
ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物には、式(F XIII):
【0094】
【化12】

【0095】
[但し、M3Dが元素周期律表の第1〜16族に属する元素を表し、
からQがC−C28−アルキル、C−C15−アリール、炭素原子数1〜28個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリールまたはアリールアルキルまたはハロアルキルまたはハロアリール、置換基としてC−C10−アルキルを有していてもよいC−C10−シクロアルキル、ハロゲン、C−C28−アルコキシ、C−C15−アリールオキシ、シリル、またはメルカプト基等の1価に負帯電した基を表わし、
aが1〜6の整数を表わし、
zが0〜5の整数を表わし、
dがа−zの差を表わすが、dは1以上である。]
で表わされるカチオンの塩様化合物が含まれる。
【0096】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、およびスルホニウムカチオンおよびカチオン性遷移金属錯体である。トリフェニルメチルカチオン、銀カチオンおよび1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンを特に挙げることができる。これらは非配位の対イオンを有しているのが好ましく、特に、WO91/09882にも記載されているホウ素化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが好ましい。
【0097】
非配位アニオンを含む塩は、ホウ素またはアルミニウム化合物、例えばアルキルアルミニウムを、上記ホウ素またはアルミニウム化合物と2個以上のホウ素またはアルミニウムが互いに結合するように反応可能な第2の化合物、例えば水、および、上記ホウ素またはアルミニウム化合物とイオン化したイオン性化合物を形成する第3の化合物、例えばトリフェニルクロロメタン、を組み合わせることによって製造することもできる。更に、同様に上記ホウ素またはアルミニウム化合物と反応する第4の化合物,例えばペンタフルオロフェノール、も添加することができる。
【0098】
カチオンとしてブレンステッド酸を有しているイオン性化合物も、同様に非配位対イオンを有しているのが好ましい。ブレンステッド酸としては、プロトン化アミンまたはアニリン誘導体が特に好ましい。好ましいカチオンは、N,N−ジメチルアニリニウムイオン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムイオン、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムイオン、および後の2つのイオンの誘導体である。
【0099】
WO97/36937に記載されているようなアニオン性ホウ素複素環を含む化合物、特にジメチルアニリニウムボラタベンゼンまたはトリチルボラタベンゼン、も成分C)として好ましい。
【0100】
好適なイオン性化合物C)は、少なくとも2個の過フッ素化したアリール基を有するホウ酸塩(ボレート)を含む。特に、N,N−ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、特にN,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルベンジルアンモニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはトリチル テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0101】
2個以上のボレートアニオンは、2価のアニオン[(CB−C−B(C2−のように互いに結合することもでき、またボレートアニオンは好適な官能基を含む架橋基を介して担体表面に結合することもできる。
【0102】
他の好適なカチオン形成化合部C)は、WO00/31090に記載されている。
【0103】
非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、またはカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物の量は、モノシクロペンタジエニル錯体A)に対して0.1〜20当量が好ましく、1〜10当量がより好ましい。
【0104】
別の好適なカチオン形成化合物C)は、ジ[ビス(ペンタフルオロフェニルボロキシ)]メチルアランのようなホウ素−アルミニウム化合物である。この種のホウ素−アルミニウム化合物は、例えばWO99/06414に記載されている。
【0105】
全ての上述のカチオン形成化合物C)の混合物を使用することもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、とイオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを含む化合物および/または非荷電の強ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含む。
【0106】
モノシクロペンタジエニル錯体A)とカチオン形成化合物C)の両方を溶媒、好ましくは炭素原子数6〜20個の芳香族炭化水素、特にキシレン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはこれらの混合物中で使用するのが好ましい。
【0107】
同様に広い範囲の生成物は、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体A)を少なくとも1種のオレフィンの重合に適当な他の触媒D)と組み合わせて用いることによって得ることもできる。従って、触媒組成物において必要により使用される成分D)としてオレフィンの重合に適当である1種以上の触媒を用いることができる。考え得る触媒D)には、特にチタンを基礎とする典型的なチーグラ−ナッタ触媒及び酸化クロムを基礎とする典型的なフィリップス触媒が含まれる。
【0108】
原則として、考え得る成分D)には、有機基を含み、そして触媒A)及び必要によりB)及び/又はE)の存在下で成分C)との反応後にオレフィン重合で活性である触媒を形成する周期表第3族〜第12族の遷移金属又はランタニドからなる全ての化合物が含まれる。これは、通常、単座配位子又は多座配位子をシグマ結合又はパイ結合を間に介して中心原子に結合させている化合物である。好適な配位子には、シクロペンタジエニル基を含むものとシクロペンタジエニル基を含まないものとの両方が含まれる。Chem. Rev. 2000, 第100巻, No 4には、オレフィンの重合に適当であるこのような化合物B)の多くを記載している。多核シクロペンタジエニル錯体もオレフィンの重合に適当である。
【0109】
別の特に適当な成分D)は、少なくとも1種のシクロペンタジエニル型配位子を含み、一般にメタロセン錯体と称される成分である。特に有用なメタロセン錯体は、式(F XIV):
【0110】
【化13】

【0111】
[但し、M1Eがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン、又は周期表第3族及びランタニドの元素を表し、
がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C15アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、−OR6E又は−NR6E7Eを表し、又は2個の基が置換又は無置換のジエン配位子、特に1,3−ジエン配位子を形成し、
tがM1Eの原子価に応じて1、2又は3を表し、式(F XIV)で表されるメタロセン錯体を非荷電状態となるように選択され、
6E、R7EがそれぞれC−C10−アルキル、C−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキルまたはフルオロアリールを表し、そして
基Xが同一でも、異なっていても良く、相互に合体しても良く、
1E〜R5Eがそれぞれ、水素、C−C22−アルキル、置換基としてC−C10−アルキルを有していても良い5〜7員のシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルを表し、且つ2個の隣接基を相互に合体させて、炭素原子数4〜40個の飽和もしくは不飽和の環式基を形成しても良く、又はR1E〜R5EがSi(R8Eを表し、
8Eが同一でも、異なっていても良く、それぞれC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C15アリール、C−Cアルコキシ又はC−C10アリールオキシを表し、
1EがXと同義であるか、又は下式:
【0112】
【化14】

【0113】
{但し、R9E〜R13Eがそれぞれ水素、C−C22−アルキル、置換基としてC−C10−アルキルを有していても良い5〜7員のシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルを表し、且つ2個の隣接基を相互に合体させて、炭素原子数4〜40個の飽和もしくは不飽和の環式基を形成しても良く、又はSi(R14Eを表し、
14EがそれぞれC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C15アリール、C−Cアルコキシ又はC−C10アリールオキシを表す。}
で表され、或いは
基R4E及びZ1Eが合体して、
−R15E−A1E
{但し、R15E
【0114】
【化15】

【0115】
(式中、R16E、R17E及びR18Eが同一でも、異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C−C10アルキル基、C−C10フルオロアルキル基、C−C10フルオロアリール基、C−C10アリール基、C−C10アルコキシ基、C−C15アルキルアリールオキシ基、C−C10アルケニル基、C−C40アリールアルキル基、C−C40アリールアルケニル基又はC−C40アルキルアリール基を表し、又は2個の隣接基がこれらを含む原子と合体して、炭素原子数4〜15個の飽和又は不飽和環を形成し、
2Eがケイ素、ゲルマニウム又はスズを表し、ケイ素を表すのが好ましい。)
を表し、
1Eが、
【0116】
【化16】

又は無置換、置換もしくは縮合の複素環式基を表し、且つ
19Eが相互に独立してそれぞれC−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、C−C15アリール、アルキルアリール又はSi(R20Eを表し、
このR20Eが水素、C−C10−アルキル、置換基としてC−C−アルキルを有していても良いC〜C15アリール又はC〜C10シクロアルキルを表し、
vが1、又はA1Eが無置換、置換又は縮合の複素環式基の場合に0であっても良い。}
を形成し、又は
基R4E及びR12Eが相互に合体して、基−R15E−を形成する。]
で表される錯体である。
【0117】
式(F XIV)中の基Xは同一であるのが好ましく、フッ素、塩素、臭素C−Cアルキル又はアラルキル(アルキルアリール)を表すのが好ましく、特に塩素、メチル又はベンジルを表す。
【0118】
このような錯体をそれ自体公知の方法によって合成することができ、適当に置換された環式の炭化水素アニオンをチタン、ジルコニウム、ハフニウム又はクロムのハロゲン下物と反応させるのが好ましい。
【0119】
特に有用な化合物D)の例には、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド及びビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、更に対応するジメチルジルコニウム化合物が含まれる。
【0120】
成分D)として、ラセミ型又は擬ラセミ型の架橋されたビスインデニル錯体が好ましく、ここで擬ラセミとは、2個のインデニル配位子が、錯体における他の全ての置換基を無視した場合に相互にラセミ配列状態である錯体を意味する。
【0121】
特に有用な触媒D)の別例には、
ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
テトラメチルエチレン−9−フルオレニルシクロペンタジエニルジルコニウム、
ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−メチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−エチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、及び
ジメチルシランジイルビス(2−i−ブチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
が含まれ、且つこれらの錯体はラセミ型で使用されるのが好ましい。
【0122】
適当な製造法の例示が、例えばJournal of Organometallic Chemistry, 369 (1989), 359-370頁に記載されている。
【0123】
別の好ましい成分D)は、基R4E及びZ1Eが相互に合体して基−R15E−A1E−を形成する成分である。
【0124】
1Eが−O−、−S−、−NR19E−及び−PR19E−を表す場合、M1Eがチタンを表すのが好ましく、酸化状態+4のチタンであるのが特に好ましい。この種の錯体D)で特に有用なのは、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ベンジルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(tert−ブチルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(アダマンチル)チタンジクロリド、及び
ジメチルシランジイル(インデニル)(tert−ブチルアミノ)チタンジクロリド、
である。
【0125】
1Eが−O−R19E−、−NR19E−、−PR19E−又は無置換、置換、又は縮合のヘテロ環式基又はヘテロ芳香族環式基を表す場合、M1Eがチタン又はクロムであるのが好ましく、その際、チタンが酸化状態+3又は+4であり、クロムが酸化状態+3であるのが特に好ましい。
【0126】
好ましい実施の形態において、A1Eが無置換、置換又は縮合のヘテロ芳香族環式基であり、M1Eがクロムである。A1Bが無置換又は特に8位において置換、例えばアルキル置換のキノリル結合であり、例えば8−キノリル、8−(2−メチルキノリル)、8−(2,3,4−トリメチルキノリル)、8−(2,3,4,5,6,7−ヘキサメチルキノリル)であり、vが0であり、そしてM1Eがクロムであるのが極めて好ましい。
【0127】
この種の好ましい触媒D)は、
1−(8−キノリル)−2−メチル−4−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−3−イソプロピル−5−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)テトラヒドロインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−メチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−イソプロピルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−エチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−tert−ブチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)ベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−メチルベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチル−4−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))テトラヒドロインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−8−(2−メチルキノリル))インデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−イソプロピルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−エチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−tert−ブチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))ベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、又は
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、
である。
【0128】
このような官能性のシクロペンタジエニル配位子の製造法は、以前から知られていた。これらの錯化配位子への種々の合成経路は、例えばM. Enders等によってChem. Ber. (1996), 129, 459-463頁又はP. Jutzi and U. Siemeling等によってJ. Orgmet. Chem. (1995), 500, 175-185頁に記載されている。
【0129】
金属錯体、特にクロム錯体は、適当な金属塩、例えば金属の塩化物を配位子アニオンと反応させる(例えば、DE−A−19710615の実施例に類似の手順を用いる)ことによって簡易な形態で得ることができる。
【0130】
他の好適な触媒D)には、シクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルと縮合状態のヘテロシクリル(ヘテロシクリルは芳香族性であり、窒素及び/又は硫黄を含んでいる。)によって形成される少なくとも1種の配位子を含むメタロセンが含まれる。このような化合物は、例えばWO98/22486に記載されている。これは、特にジメチルシランジイル(2−メチル−4−フェニルインデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド及びジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリドである。
【0131】
好適な触媒D)には、クロムが構造的な特徴として少なくとも1個のイミド基を有するイミドクロム化合物も含まれる。この化合物及びその製造法は、例えばWO91/09148に記載されている。
【0132】
別の好適な成分D)には、3座の巨視的な大環状配位子を含む遷移金属錯体、特に置換及び無置換の1,3,5−トリアザシクロヘキサン及び1,4,7−トリアザシクロノナンが含まれる。この種の触媒において、クロム錯体が同様に好ましい。この種の好ましい触媒は、[1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリオクチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリドデシル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド及び[1,3,5−トリベンジル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリドである。
【0133】
別の好適な触媒D)の例は、下式F XV〜F XIX:
【0134】
【化17】

で表され、遷移金属が単体のTi、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、Pt及び希土類金属の元素から選択される場合の少なくとも1種の配位子を含む遷移金属錯体である。中心金属としてニッケル、鉄、コバルト又はパラジウムを有する化合物が好ましい。
【0135】
は、元素周期表第15族の元素、好ましくはN又はPを表し、Nが特に好ましい。分子中の2個又は3個の原子Eが同一でも異なっていても良い。
【0136】
配位子組成物F−XV〜F−XIX内で同一でも異なっていても良い基R1F〜R25Fは、以下の基を表す:即ち、
1F及びR4Fが相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基、好ましくは元素Eに隣接する炭素原子を少なくとも2個の炭素原子に結合させている炭化水素基を表し、
2F及びR3Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、R2F及びR3Fを相互に合体させて、1個以上のヘテロ原子が含まれていても良い環式基を形成しても良く、
6F及びR8Fが相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
5F及びR9Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
6F及びR5F又はR8F及びR9Fが相互に合体して、環式基を形成しても良く、
7Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、2個のR7Fを相互に合体させて、環式基を形成しても良く、
10F及びR14Fが相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
11F、R12F、R12F’及びR13Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、2個以上のゲミナル又はビシナル基R11F、R12F、R12F’及びR13Fを相互に合体させて、環式基を形成しても良く、
15F及びR18Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
16F及びR17Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
19F及びR25Fが相互に独立して、それぞれC−C20アルケニル、C−C20アリール、アルキル部分の炭素原子数1〜10個及びアリール部分の炭素原子数6〜20個のアルキルアリールを表し、且つ有機基R19F及びR25Fがハロゲンで置換されていても良く、
20F〜R24Fが相互に独立して、それぞれ水素、C−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20アリール、アルキル部分の炭素原子数1〜10個及びアリール部分の炭素原子数6〜20個のアルキルアリール又はSiR26Fを表し、且つ有機基R20F〜R24Fがハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R20F〜R24Fを相互に合体させて、5〜6員環を形成しても良く、
26Fが相互に独立して、それぞれ水素、C−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20アリール、アルキル部分の炭素原子数1〜10個及びアリール部分の炭素原子数6〜20個のアルキルアリール又はSiR26Fを表し、そして2個の基R26Fを相互に合体させて、5〜6員環を形成しても良く、
xが0又は1を表し、且つxが0である場合にF−XVIがマイナスに荷電され、そして
yが1〜4までの整数を表し、2又は3を表すのが好ましい。
【0137】
中心金属としてFe、Co、Ni、Pd又はPtを融資、式F−XVで表される配位子を含む遷移金属錯体が特に有用である。Ni又はPdで表されるジイミン錯体が特に好ましく、例えば
ジ(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(ジ−i−プロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンパラジウムジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンジメチルニッケル、
1,1’−ビピリジルパラジウムジクロリド、
1,1’−ビピリジルニッケルジクロリド、
1,1’−ビピリジルジメチルパラジウム、
1,1’−ビピリジルジメチルニッケル、
である。
【0138】
特に有用な化合物F−XIXには、J. Am. Chem. Soc. 120, 4049頁以降 (1998)、J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1998, 849及びWO98/27124に記載されている化合物も含まれる。F−XIXのR19F及びR25Fがフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、−ジクロロフェニルもしくは−ジブロモフェニル、2−クロロ−6−メチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニルを表すのが好ましく、特に2,3−もしくは2,6−ジメチルフェニル、−ジイソプロピルフェニル、−ジクロロフェニルもしくは−ジブロモフェニル及び2,4,6−トリメチルフェニルである。同時に、R20F及びR24Fが水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル又はフェニル、特に水素又はメチルを表す。R21F及びR23Fが水素を表すのが好ましく、R22Fが水素、メチル、エチル又はフェニル、特に水素を表すのが好ましい。遷移金属Fe、Co又はNi、特にFeを有する配位子F−XIXで表される化合物が好ましい。
【0139】
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
が特に好ましい。
【0140】
使用し得る別の触媒D)は、イミノフェノキシド錯体であり、その場合、配位子を例えば置換又は無置換のサリチルアルデヒド及び第一級アミン、特に置換又は無置換のアリールアミンから製造する。pi系(pi環系)に1個以上のヘテロ原子を含むpi配位子、例えばボレートベンゼン配位子、ピロリルアニオン又はホスホリルアニオンを有する遷移金属錯体を、触媒D)として使用することもできる。
【0141】
このような成分A)〜D)の組み合わせにより、例えば二モードの生成物を製造するか、又はコモノマーをその場で生成することが可能となる。オレフィンの重合に一般的である少なくとも1種の触媒D)、必要により1種以上のカチオン形成化合物C)の存在下に少なくとも1種のモノシクロペンタジエニル錯体A)を使用するのが好ましい。触媒の組み合わせA)及びD)に応じて、1種以上のカチオン形成化合物が有効なこともある。重合触媒D)も同様に担持されていても良く、そして本発明の錯体A)と同時に又は任意の順序で用いることができる。種々の触媒の混合物を成分D)として使用することもできる。
【0142】
さらに、触媒組成物は、他の成分E)として、式(F−XX):
【0143】
【化18】

【0144】
[但し、MはLi、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムまたはタリウムを表わし、
1Gは、水素、C−C10−アルキル、C−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリールまたはアリールアルキルを表わし、
2GとR3Gは、それぞれ、水素、ハロゲン、C−C10−アルキル、C−C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリールまたはアリールアルキルまたはアルコキシを表わし、
は1〜3の整数を表わし、
およびtは、0〜2の範囲の整数を表わす。但し、r+s+tの合計はMの価数に対応する。]
で表される金属化合物を含むこともできる。
【0145】
尚、上式において、成分E)は成分C)と同一でない。種々の式(F−XX)で表わされる金属化合物の混合物を使用することもできる。
【0146】
式(F−XX)で表わされる金属化合物のうち、Mがリチウム、マグネシウム又はアルミニウムでかつR2GとR3GがそれぞれC−C20−アルキルである化合物が好ましい。
【0147】
特に好ましい式(F−XX)で表わされる金属化合物(F−XX)は、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウム、クロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、特にn−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウム塩化物(クロリド)、ジメチルアルミニウムフッ化物(フロリド)、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドおよびトリメチルアルミニウム、およびこれらの混合物である。アルキルアルミニウムとアルコールの部分加水分解生成物も使用することができる。
【0148】
金属化合物E)が使用される場合には、この化合物は触媒組成物中にモノシクロペンタジエニル錯体A)における遷移金属に対する式(F−XX)の化合物におけるMのモル比が2000:1〜0.1:1、好ましくは800:1〜0.2:1、特に好ましくは100:1〜1:1になるような量で存在しているのが好ましい。
【0149】
本発明の触媒組成物を製造するためには、少なくとも1種の成分A)を成分C)と共に担体B)上に物理吸着または化学反応、すなわち各成分の担体表面への反応基による共有結合によって固定するのが好ましい。担体成分B)、成分A)および使用される場合には成分C)を組み合わせる順序は、自由に選択することができる。成分A)とC)は、別々に、または同時に、または成分B)と予め混合した形態で添加することができる。各工程の後に固体を適当な不活性溶媒、例えば脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素で洗浄することができる。
【0150】
好ましい形態において、モノシクロペンタジエニル錯体A)とカチオン形成化合物C)とを、通常は溶解性の反応生成物、付加物、または混合物を与える好適な溶媒中で接触させる。このようにして得られた生成物を、次いで適宜、前処理を施していてもよい担体B)と接触させ、溶媒を完全にまたは部分的に除去する。この方法は、好適にも易流動性粉末形態の固体を与える。上述の工程の工業的な実施の例は、WO96/00243、WO98/40419またはWO00/05277に記載されている。別の好ましい形態は、まず担体B)にカチオン形成化合物C)を施し(担持し)、次いでこの担持されたカチオン形成化合物にモノシクロペンタジエニル錯体A)を接触させる方法である。
【0151】
成分D)も同様に、成分A)及び必要によりB)、C)及びE)と任意の順序で反応させることができる。最初に、D)を成分C)と接触させ、その後、成分A)及びB)、更にC)と上述したように処理するのが好ましい。別の好ましい実施の形態において、固体触媒を上述したように成分A)、B)及びC)から調製して、これを重合中、重合の開始時又は重合の直前に成分E)と接触させる。最初にE)を重合すべきα−オレフィンと接触させ、次いで上述したように成分A)、B)およびC)から形成された触媒固体を添加するのが好ましい。
【0152】
モノシクロペンタジエニル錯体A)を、重合すべきオレフィンと接触させる前又は接触させた後、成分C)及び/又は成分D)と接触させることができる。オレフィンとの混合前に1種以上の成分C)を用いて予備活性化し、この混合物をオレフィンと接触させた後に同一又は別の成分C)及び/又はD)を更に添加することも可能である。予備活性化は、10〜100℃の範囲で行われるのが一般的であり、20〜80℃の範囲が好ましい。
【0153】
まず触媒組成物をα−オレフィン、好ましくは直鎖状C−C10−1−アルケン、特にエチレンまたはプロピレンで重合させ、次いで得られた予備重合触媒固体を実際の重合で使用することもできる。予備重合において使用された触媒固体のこの固体上に重合されたモノマーに対する質量比は、一般的には1:0.1〜1:1000、好ましくは1:1〜1:200の範囲である。
【0154】
更に、変性成分としての少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレンまたはフェニルジメチルビニルシラン、帯電防止化合物または好適な不活性化合物、例えばワックスまたはオイルを添加剤として触媒組成物の製造の間または後に添加することができる。遷移金属化合物B)に対する添加剤のモル比は、通常は1:1000〜1000:1、好ましくは1:5〜20:1である。
【0155】
本発明の触媒組成物は、オレフィンの重合、特にα−オレフィン、すなわち末端に2重結合を有する炭化水素の重合に適当である。好適なモノマーには、官能化オレフィン性不飽和化合物、例えばアクロレイン、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミド誘導体、例えばアクリラート、メタクリルラート、またはアクリロニトリル、またはビニルエステル、例えば酢酸ビニルも含まれる。アリール置換α−オレフィンを含む非極性オレフィン化合物を使用するのが好ましい。特に好ましいα−オレフィン化合物は、直鎖状または分枝状のC−C12−1−アルケン、特に直鎖状のC−C10−1−アルケン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、または分枝状のC−C10−1−アルケン、例えば4−メチル−1−ペンテン、共役または非共役のジエン、例えば1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、または芳香族ビニル化合物、例えばスチレンまたは置換スチレンである。様々なα−オレフィンの混合物を重合させることもできる。エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンおよび1−デセンからなる群から選択された少なくとも1種のオレフィンを重合させるのが好ましい。
【0156】
別の好適なオレフィンには、1個以上の環系を含むことができかつ二重結合が環構造の一部であるオレフィンが含まれる。例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、またはテトラシクロドデセン、およびメチルノルボルネン、並びにジエン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、またはエチルノルボルナジエンが挙げられる。
【0157】
2種以上のオレフィンの混合物を重合させることもできる。一部の知られている鉄及びコバルトの錯体と対照的に、本発明のモノシクロペンタジエニル錯体は、高級α−オレフィンの場合であっても良好な重合活性を示して、その共重合に対する安定性を特に際立たせることもある。特に本発明のモノシクロペンタジエニル錯体を、エチレン又はプロピレンの重合又は共重合に用いることができる。エチレン重合におけるコモノマーとして、C−C−α−オレフィン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンを使用するのが好ましい。少なくとも50モル%のエチレンを含むモノマー混合物を使用するのが好ましい。プロピレンの重合におけるコモノマーとしては、エチレンおよび/またはブテン好ましい。
【0158】
重合方法は、オレフィンの重合に使用される慣用的な反応器内で、塊状として、懸濁媒中で、気相中で、または超臨界媒体中で公知の方法で行うことができる。重合は、回分法により行なうことができ、または、好適には連続法により1段階以上の工程で行なうことができる。管状反応器またはオートクレーブ内での高圧重合法、溶液法、懸濁法、撹拌気相法または気相流動層法が可能である。
【0159】
重合は、通常、−60〜350℃の温度および0.5〜4000bar(バール)の圧力下で0.5〜5時間、好適には0.5〜3時間の平均滞留時間の条件で行なわれる。重合を行なうための有効な圧力および温度範囲は、重合法に大きく依存する。通常1000〜4000bar、特に2000〜3500barの圧力下で行なわれる高圧重合法では、一般に高い重合温度も設定される。これらの高圧重合法における有効な温度範囲は、200〜320℃、特に220〜290℃である。低圧重合法の場合には、一般にポリマーの軟化温度より少なくとも数℃低い温度に設定されるのが有用である。これらの重合法では特に、50〜180℃、好ましくは70〜120℃の温度が設定される。懸濁重合法の場合には、重合は通常懸濁媒中で、好ましくはイソブタン等の不活性炭化水素中で、さらにはモノマー自体の中で行なわれる。重合温度は一般的には−20〜115℃の範囲であり、圧力は一般的には1〜100barの範囲である。懸濁液の固体含有量は、一般的には10〜80%の範囲である。重合は、例えば撹拌式オートクレーブ中で回分法、または例えば管状反応器、好ましくはループ反応器中での連続法のいずれかにより行なうことができる。特に、重合はUS−A−3242150およびUS-A-3248179に記載されているようなフィリップスPF法により行なうことができる。気相重合は、一般的には30〜125℃の範囲で行なわれる。
【0160】
上述の重合法の中で、気相重合、特に気相流動床反応器内での気相重合、溶液重合、および懸濁重合、特にループ反応器および撹拌式タンク反応器内での懸濁重合が特に好ましい。気相重合は、循環ガスの一部を露点未満に冷却して2相混合物として反応器に戻すような凝縮形態または過凝縮形態で行なうこともできる。様々な重合方法、または同一の重合方法を、所望により直列に接続して、重合カスケードを形成して行なうこともできる。更に、分子量調整剤、例えば水素、または帯電防止剤のような他の添加物も重合において使用することができる。
【0161】
本発明の方法により、オレフィンのポリマーを製造することができる。本発明を説明するためにここで使用される“重合”と言う語は、ポリマー化およびオリゴマー化の両方を意味する。すなわち、本発明の方法により、約56〜3000000の範囲の分子量Mwを有するオリゴマーおよびポリマーを製造することができる。
【0162】
良好な機械的特性に起因して、本発明の触媒組成物を使用して製造されたオレフィンポリマーは、フィルム、ファイバーおよび成形体の製造に特に好適である。
【0163】
本発明の触媒組成物は、オレフィンの重合において極めて高い生産性を示し、重合後のポリマーの後処理において利点を示し、これによりポリマーにおける触媒残留物に関しても問題がほとんど生じないという利点を示す。本発明の触媒組成物を使用して製造されたポリマーは、高純度の生成物を必要とする用途に適している。さらに、本発明の触媒組成物は、遷移金属を含む有機金属化合物に対するアルミノキサンのモル比が比較的小さい場合でも、極めて良好な活性を示す。
【実施例】
【0164】
[実施例1]
1−ピロリジノ−2−(2,5−ジメチルチエノ[3’,2’:3,4]シクロペンタ[1,2−b]チオフェン−7−イル)エタンジクロロクロムの製造
【0165】
【化19】

【0166】
a)配位子組成物1−ピロリジノ−2−(2,5−ジメチル−7H−チエノ[3’,2’:4,5]シクロペンタ[b]チオフェニル)エタンの製造
0.95g(4.5ミリモル)の2,5−ジメチル−7H−チエノ[3’,2’:3,4]シクロペンタ[1,2−b]チオフェンを50mlのジエチルエーテルに溶解した溶液を−78℃に冷却し、そしてこの温度で2.8ml(4.5ミリモル)の、n−ブチルリチウムをヘキサンに溶解した1.6M溶液と混合した。これにより得られた懸濁液を室温にゆっくりと暖め、次いで室温で更に45分間に亘って撹拌した。その後、反応混合物を再び−78℃に冷却し、そして0.6g(4.5ミリモル)の1−クロロ−2−(1−ピロリル)エタンを20mlのジエチルエーテルに溶解した溶液をこの温度で滴下した。これにより得られた混合物を室温にゆっくりと暖め、室温で更に12時間に亘って撹拌した。
【0167】
このようにして得られた懸濁液に、2.8mlの、n−ブチルリチウムをヘキサンに溶解した1.6M溶液(4.5ミリモルのn−ブチルリチウムに相当する)を室温で添加し、これにより沈殿を形成した。沈殿を分離し、ヘキサンで2回洗浄した。これを三塩化クロムと直接反応させるか、または加水分解して、配位子を形成することができる。このために、沈殿を30mlの塩化アンモニウム水溶液と混合し、この混合物に50mlのジエチルエーテルを添加し、そして有機層を分離した。水性層を50mlのジエチルエーテルでそれぞれ2回抽出し、有機層を集めた。集めた有機層を50mlの水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、次いでシリカゲルからなる短いカラムに通してろ過した。溶剤を除去し、高真空下で乾燥することにより、1.14g(84%の収量)の配位子を赤みがかった褐色油として得た。
【0168】
1−ピロリジノ−2−(2,5−ジメチル−7H−チエノ[3’,2’:4,5]シクロペンタ[b]チオフェニル)エタンのNMRデータ
H−NMR(CDCl、25℃、δ):6.76(q、2H)、3.95(t、1H)、2.68(m、2H)、2.62(m、4H)、2.55(s、6H)、2.10(q、2H)、1.83(m、4H)。
【0169】
b)2−ピロリジノ−1−[2−(2,5−ジメチルチエノ[3’,2’:4,5]シクロペンタ[b]チオフェン7−イル)]エタンクロムジクロリドの製造
2.1mlの、n−ブチルリチウムをヘキサンに溶解した1.6M溶液を、−78℃の条件下で、1.0g(3.3ミリモル)の1−ピロリジノ−2−(2,5−ジメチル−7H−チエノ[3’,2’:3,4]シクロペンタ[b]チオフェン−7−イル)エタンを50mlのトルエンに溶解した溶液に添加した。次いで、これにより得られた反応混合物を室温にゆっくりと暖め、室温で更に5時間に亘って撹拌した。その後、反応混合物を再び−78℃に冷却し、1.3g(3.3ミリモル)のCrCl×3THFを添加した。これにより得られた反応混合物を室温にゆっくりと暖め、そして室温で更に1時間に亘って撹拌し、その後50℃で更に1時間撹拌した。この溶液をろ過して、未溶解組成分を除去し、そして10mlの体積が残るまで溶剤を除去した。このようして得られた濃縮溶液を−30℃に冷却し、1日後、これにより形成した沈殿をろ過し、冷たいトルエンで洗浄し、そして乾燥した。0.61gのクロム錯体を単離することができた。
【0170】
[実施例2]
6−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−3−フェニル[シクロペンタ[b]チオフェニル]クロムジクロリドの製造
【0171】
【化20】

【0172】
a)配位子6−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−3−フェニル[4−H−シクロペンタ[b]チオフェン]の製造
1.16gの8−ブロモキノリン(5.6ミリモル)を15mlのTHFに溶解した溶液を−80℃に冷却し、そして3.5mlの、n−ブチルリチウムをヘキサンに溶解した1.6M溶液(5.6ミリモル)と混合した。次いで、これにより得られた反応混合物を−80℃で更に20分間に亘って撹拌し、そして1.35gの4,5−ジヒドロ−2,5−ジメチル−2−フェニル(シクロペンタ[b]チオフェン−6−オン)(5.6ミリモル)を5mlのTHFに溶解した溶液を添加した。これにより得られた反応混合物を室温にゆっくりと暖め、室温で更に10時間に亘って撹拌した。このようにして得られた混合物を氷水に注ぎ、水性層を30mlの塩化メチレンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして溶剤を除去した。これにより、1.1gの褐色油(アルコール)を形成した。この油を、0.3gのヨウ素および50mlのベンゼンと混合し、このようにして得られた混合物を0.5時間に亘って還流した。室温に冷却後、混合物を炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして溶剤を除去した。生成物を、流出液としてのトルエン/酢酸エチルの1/1混合物および固定相としてのシリカゲルを用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。これにより、0.96gの配位子(8−ブロモキノリンに対して48%の収量)を得た。
【0173】
配位子のH−NMR(CDCl):9.03(m、1H)、8.26(m、1H)、7.98(m、1H)、7.81(m、1H)、7.65(m、1H)、7.50−7.30(m、6H)、3.48(s、2H)、2.50(s、3H)、2.17(s、3H)。
【0174】
b)6−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−3−フェニル[シクロペンタ[b]チオフェニル]クロムジクロリドの製造
1.4mlの、メチルリチウムをジエチルエーテルに溶解した1.6M溶液を、−30℃の条件下で、0.73g(2.1ミリモル)の6−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−3−フェニル[4−H−シクロペンタ[b]チオフェン]を20mlのジエチルエーテルに溶解した溶液に添加した。次いで、これにより得られた反応混合物を室温にゆっくりと暖め、室温で更に1時間に亘って撹拌した。その後、反応混合物を−70℃に冷却し、0.86g(2.3ミリモル)のCrCl×3THFを添加した。これにより得られた反応混合物を室温にゆっくりと暖め、そして室温で更に6時間に亘って撹拌し、その後、50mlの塩化メチレンを添加した。この溶液をろ過して、未溶解組成分を除去し、そして3mlの体積が残るまで溶剤を除去した。このようして得られた濃縮溶液を−30℃に冷却し、1日後、これにより形成した沈殿をろ過し、冷たいジエチルエーテルで洗浄し、そして乾燥した。0.22gのクロム錯体(21%)を単離することができた。
【0175】
[実施例3]
4−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−1−フェニル[シクロペンタ[b]ピロリル]クロムジクロリドの製造
【0176】
【化21】

【0177】
a)配位子組成物4−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−7−H−1−フェニル[シクロペンタ[b]ピロール]の製造
10.4gの8−ブロモキノリン(50ミリモル)を100mlのTHFに溶解した溶液を−80℃に冷却し、20mlの、n−ブチルリチウムをヘキサンに溶解した2.5M溶液(50ミリモル)と混合した。次いで、これにより得られた反応混合物を−80℃で更に15分間に亘って撹拌し、そして11.3gの5,6−ジヒドロ−2,5−ジメチル−1−フェニル(シクロペンタ[b]ピロール−4−オン)(50ミリモル)を30mlのTHFに溶解した溶液を添加した。これにより得られた反応混合物を室温にゆっくりと暖め、次いで更に3時間に亘って還流した。このようにして得られた混合物を室温に冷却し、氷、次いで塩酸と混合して、pHを約1とした。有機層を分離し、水性層をアンモニア溶液と混合してpHを約9として、ジエチルエーテルで抽出し、そして有機層を集めて硫酸マグネシウムで乾燥し、そして溶剤を除去した。このようにして得られた生成物を塩酸と混合して、pHを約0とし、そして混合物を2時間に亘って還流した。中和および後処理により、10.9gの配位子を得た。
【0178】
b)4−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−1−フェニル[シクロペンタ[b]ピロリル]クロムジクロリドの製造
1.0g(3ミリモル)の4−(8−キノリル)−2,5−ジメチル−7−H−1−フェニル[シクロペンタ[b]ピロール]を、0.13g(3.1ミリモル)の水素化カリウムを60mlのTHFに溶解した溶液に添加した。次いで、これにより得られた反応混合物を室温で更に1時間に亘って撹拌し、その後、1.12g(3ミリモル)のCrCl×3THFを添加した。これにより得られた混合物を室温で更に15時間に亘って撹拌し、その後、50mlの塩化メチレンを添加した。この溶液から溶剤を除去し、残留物をジクロロエタンに取り込み、このようにして得られた溶液ををろ過して、未溶解組成分を除去した。溶剤を除去することにより、0.84gのクロム錯体(61%)を得た。
【0179】
[実施例4]
a)担体の予備処理(前処理)
100gのES70X、すなわちクロスフィールド(Crosfield)社の噴霧乾燥シリカゲルを減圧条件下、130℃にて6時間に亘って加熱した。
【0180】
b)錯体の担体への施し(塗布)
実施例1により得られた35mgの錯体(82.1ミリモル)を、アルベマール(Albemarle)社による4.32mlの、MAOをトルエンに溶解した4.75M溶液と混合し、そして混合物を15分間に亘って撹拌した。これにより得られた溶液を10分間に亘って、2gの、実施例4a)から得られた担体材料ES70Xに添加し、そして混合物を更に60分間に亘って撹拌した。その後、触媒を10−3ミリバールの条件下に室温で乾燥した。
【0181】
[実施例5]重合
400mlのイソブタンおよび2mlのトリイソプレニルアルミニウムをヘプタンに溶解した溶液(75mgのトリイソプレニルアルミニウムに相当する)を、アルゴンで不活性状態にした1Lのオートクレーブに導入し、その後、実施例4b)で得られた13.8mgの固体触媒を添加した。重合を、70℃およびエチレン圧40バールの条件で60分間に亘って行った。圧力を開放することによって重合を停止させ、生成物を底部バルブを通じて排出させた。72gのポリエチレンを得た。
【0182】
生産性:520gのPE/固体触媒1g。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
(HCp)Y
[但し、HCpが少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系を表し、
YがHCpに結合され且つ周期表第15族または第16族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を有する置換基を表し、
Mが周期表第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族または第10族の金属を表し、
nが1、2または3を表す。]
で表される構造的な特徴を有するモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項2】
Yにおける供与体をMに分子間結合させる請求項1に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項3】
下式:
(HCp)YMX
[但し、HCpが少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系を表し、
YがHCpに結合され且つ周期表第14族または第15族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を有する置換基を表し、
Mが周期表第3族、第4族、第5族または第6族の金属を表し、
Xが相互に独立して、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、NR、OR、SR、SO、OC(O)R、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PFまたは嵩高い非配位アニオンを表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、且つ有機基R、Rがハロゲンで置換されても良く、そして2個の基R、Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
kが1、2または3を表す。]
で表される請求項1または2に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項4】
HCpおよびYが、式II:
【化1】

[但し、E1A〜E5Aがそれぞれ炭素を表し、またはE1A〜E5Aの少なくとも1個がリンまたは窒素、好ましくはリンを表し、
1A〜R4Aが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR6Aを表し、有機基R1A〜R4Aがハロゲンで置換されても良く、そして2個のビシナル基R1A〜R4Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、但しビシナル基R1A〜R4Aの少なくとも2個が相互に合体して、周期表第15族または第16族の原子を少なくとも1個含む複素環を形成する。]
で表される配位子(HCp−Y)を形成する請求項1〜3のいずれかに記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項5】
Yが、下式:
−Z−A
[但し、ZがAとHCpとの間における2価のブリッジを表し、
AがNR、PR、OR、SRまたは無置換、置換もしくは縮合状態のヘテロ芳香族環式基を表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、有機基RおよびRがハロゲンで置換されても良く、そして2個の基RおよびRを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが1を表すか、またはAが無置換、置換もしくは縮合状態のヘテロ芳香族環式基を表す場合に0を表しても良い。]
で表される置換基である請求項1〜4のいずれかに記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項6】
mが1を表し、
AがNR、PR、ORまたはSRを表し、
Zが、下式:
【化2】

[但し、L2Bが相互に独立して、それぞれ炭素またはケイ素を表し、
1B〜R6Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B〜R6Bがハロゲンで置換されても良く、2個のゲミナルまたはビシナル基R1B〜R6Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
からなる群から選択される2価のブリッジを表す、請求項5に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項7】
Aが無置換、置換または縮合状態のヘテロ芳香族環式基を表し、
Zが、下式:
【化3】

[但し、L3Bが相互に独立して、それぞれ炭素またはケイ素を表し、
1B、R2Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B、R2Bがハロゲンで置換されても良く、2個の基R1B、R2Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが0または1を表す。]
で表される、請求項5に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項8】
Aが、下式:
【化4】

[但し、R1C〜R10Cが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR11Cを表し、且つ有機基R1C〜R10Cがハロゲンで置換されても良く、2個のビシナル基R1C〜R10Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
11Cが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R11Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
で表される、請求項5または7に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項9】
A)請求項1〜8のいずれかに記載の少なくとも1種のモノシクロペンタジエニル錯体、
B)必要により、有機または無機担体、
C)必要により、1種以上のカチオン形成化合物、
D)必要により、1種以上の、オレフィン重合に適当な触媒、
E)必要により、少なくとも1種の周期表第1族、第2族または第13族の金属、
を含むオレフィン重合に用いられる触媒組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の触媒組成物を含み、且つその触媒組成物に対して、1種以上の直鎖のC〜C10−1−アルケンを触媒組成物に対して1:0.1〜1:1000のモル比で重合させた予備重合触媒組成物。
【請求項11】
請求項9または10に記載の触媒組成物をオレフィンの重合または共重合に使用する方法。
【請求項12】
オレフィンを請求項9または10に記載の触媒組成物の存在下に重合または共重合することによるポリオレフィンの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
(HCp)Y
[但し、HCpが少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系を表し、
YがHCpに結合され且つ周期表第14族または第15族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を有する置換基を表し、そして下式:
−Zm−A
{式中、ZがAとHCp間の2価のブリッジを表し、
AがNR、PR、OR、SRまたは無置換、置換もしくは縮合状態の複素環式基を表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、且つ有機基RおよびRがハロゲンで置換されても良く、2個の基RおよびRを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが1を表すか、またはAが無置換、置換もしくは縮合状態の複素環式基を表す場合に0を表しても良い。}
を有し、
Mが周期表第3族、第4族、第5族または第6族の金属を表し、
nが1、2または3を表す。]
で表される構造的な特徴を有するモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項2】
Yにおける供与体をMに分子間結合させる請求項1に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項3】
下式:
(HCp)YMX
[但し、HCpが少なくとも1個の縮合ヘテロ環を含むシクロペンタジエニル環系を表し、
YがHCpに結合され且つ周期表第14族または第15族の原子を含む少なくとも1種の非荷電供与体を有する置換基を表し、そして下式:
−Z−A
{式中、ZがAとHCpとの間における2価のブリッジを表し、
AがNR、PR、OR、SRまたは無置換、置換もしくは縮合状態の複素環式基を表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、且つ有機基RおよびRがハロゲンで置換されても良く、2個の基RおよびRを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが1を表すか、またはAが無置換、置換もしくは縮合状態の複素環式基を表す場合に0を表しても良い。}
を有し、
Mが周期表第3族、第4族、第5族または第6族の金属を表し、
Xが相互に独立して、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、NR、OR、SR、SO、OC(O)R、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PFまたは嵩高い非配位アニオンを表し、
、Rが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiRを表し、且つ有機基R、Rがハロゲンで置換されても良く、2個の基R、Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
が相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基Rを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
kが1、2または3を表す。]
で表される請求項1または2に記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項4】
HCpおよびYが、式II:
【化1】

[但し、E1A〜E5Aがそれぞれ炭素を表し、またはE1A〜E5Aの少なくとも1個がリンまたは窒素、好ましくはリンを表し、
1A〜R4Aが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR6Aを表し、且つ有機基R1A〜R4Aがハロゲンで置換されても良く、2個のビシナル基R1A〜R4Aを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、且つビシナル基R1A〜R4Aの少なくとも2個を相互に合体させて、周期表第15族または第16族の原子を少なくとも1個含む複素環を形成しても良い。]
で表される配位子(HCp−Y)を形成する請求項1〜3のいずれかに記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項5】
mが1を表し、
AがNR、PR、ORまたはSRを表し、
Zが、下式:
【化2】

[但し、L2Bが相互に独立して、それぞれ炭素またはケイ素を表し、
1B〜R6Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B〜R6Bがハロゲンで置換されても良く、2個のゲミナルまたはビシナル基R1B〜R6Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
からなる群から選択される2価のブリッジを表す、請求項1〜4のいずれかに記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項6】
Aが無置換、置換または縮合状態のヘテロ芳香族環式基を表し、
Zが、下式:
【化3】

[但し、L3Bが相互に独立して、それぞれ炭素またはケイ素を表し、
1B、R2Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR7Bを表し、且つ有機基R1B、R2Bがハロゲンで置換されても良く、2個の基R1B、R2Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
7Bが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基R7Bを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
mが0または1を表す。]
で表される、請求項1〜4のいずれかに記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項7】
Aが、下式:
【化4】

[但し、R1C〜R10Cが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、SiR11Cを表し、且つ有機基R1C〜R10Cがハロゲンで置換されても良く、2個のビシナル基R1C〜R10Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良く、
11Cが相互に独立して、それぞれ水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、2個の基R11Cを相互に合体させて、5または6員環を形成しても良い。]
で表される、請求項1、4または6のいずれかに記載のモノシクロペンタジエニル錯体。
【請求項8】
A)請求項1〜7のいずれかに記載の少なくとも1種のモノシクロペンタジエニル錯体、
B)必要により、有機または無機担体、
C)必要により、1種以上のカチオン形成化合物、
D)必要により、1種以上の、オレフィン重合に適当な触媒、
E)必要により、少なくとも1種の周期表第1族、第2族または第13族の金属、
を含むオレフィン重合に用いられる触媒組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の触媒組成物を含み、且つその触媒組成物上に、1種以上の直鎖のC〜C10−1−アルケンを触媒組成物に対して1:0.1〜1:1000のモル比で重合させた予備重合触媒組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の触媒組成物をオレフィンの重合または共重合に使用する方法。
【請求項11】
オレフィンを請求項8または9に記載の触媒組成物の存在下に重合または共重合することによるポリオレフィンの製造方法。

【公表番号】特表2006−502076(P2006−502076A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−528829(P2003−528829)
【出願日】平成14年9月10日(2002.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2002/010117
【国際公開番号】WO2003/024982
【国際公開日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】