説明

縮環化合物の製造方法、及び新規化合物

【課題】縮環化合物の新規製造方法、及び新規化合物を提供する。
【解決手段】一般式(4)で示す化合物を製造する方法であって、ハロゲン分子(Y)を反応させる工程を含む方法。


(一般式(4)中における、A1及びA2は互いに独立に芳香環を表し、Xは、周期表における14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される何れか一種に対応する原子を表し、Mは金属原子、半金属原子、炭素原子、リン原子、硫黄原子及セレン原子からなる群より選択される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5員環を骨格に持つ縮環化合物の新規製造方法、及び新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロアセン類等の5員複素環を骨格に持つ縮環化合物は、有機EL(ElectroLuminescence)用の発光材料、有機トランジスタ、及び有機太陽電池等への活用が期待される機能性分子として注目されている。
【0003】
これまで、5員複素環を構成するヘテロ原子としてSi(ケイ素)、P(リン)、及びS(硫黄)等の元素を導入した縮環化合物を中心に、その合成法が様々検討されている(例えば、特許文献1〜7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2004/018488(2004年3月4日国際公開)
【特許文献2】WO2006/077888(2006年7月27日国際公開)
【特許文献3】特開2008−56630(2008年3月13日出願公開)
【特許文献4】特開2008−290963(2008年12月4日出願公開)
【特許文献5】特開2007−119392(2007年5月17日出願公開)
【特許文献6】特開2008−156261(2008年7月10日出願公開)
【特許文献7】特開2009−196975(2009年9月3日出願公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載の技術は、何れも5員複素環同士が縮環した構造を含むヘテロアセン類の製造に用いることができる。しかし、製法上の制約から、縮環した2つの5員複素環に含まれるヘテロ原子は、同一の組み合わせに制約されるという課題がある。
【0006】
特許文献5及び6に記載の技術は、何れも5員複素環同士が縮環した構造を含み、かつ縮環した2つの5員複素環同士が異なるヘテロ原子を持つヘテロアセン類の製造に用いることができる。しかし、製法上の制約から、縮環した2つの5員複素環に導入可能なヘテロ原子の種類は、少数の所定の組み合わせのみに限定されるという課題がある。
【0007】
特許文献7に記載の技術は、5員複素環同士が縮環した構造を含むヘテロアセン類の製法、及び当該へテロアセン類の合成中間体としてのジハロカルコゲノフェニルアリール誘導体(特許文献7中の一般式(7))が記載されている。しかし、上記ジハロカルコゲノフェニルアリール誘導体は、縮環構造を有する化合物と、3−ハロアリール金属試薬(縮環構造でありうる)とのカップリングにより製造されるものであって、これら化合物及び金属試薬を得るための反応工程が煩雑となりうる。
【0008】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、5員環を骨格に持つ縮環化合物及びその合成中間体の新規製造方法、並びに新規化合物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本願発明者らは鋭意検討を行った。その結果、5員環の形成と同時に、所望する原子を導入する足場となるハロゲン対を形成する反応を新たに見出し、本願発明に想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る下記一般式(2)で示す化合物を製造する方法は、下記一般式(1)で示す化合物にハロゲン分子(Y)を反応させる工程を含むことを特徴としている。
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(1)及び(2)中における、A1及びA2は互いに独立に芳香環を表し、Xは、周期表における14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される何れか一種に対応する原子を表し、Yは上記ハロゲン分子を構成するハロゲン原子を表し、Zはハロゲン原子を表し、R1は、水素原子、水酸基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基、及び置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基からなる群より選択される何れか一種を表す。また、一般式(2)中におけるXは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよく、一般式(1)中におけるXは、それに結合する原子又は原子団をR1の他に一つ以上有していてもよい。)
本発明において、上記Xは、硫黄原子(S)、酸素原子(O)、セレン原子(Se)、及びテルル原子(Te)からなる群より選択される何れかであることが好ましい。
【0013】
本発明において、上記A1及びA2は互いに独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記一般式(2)で示す化合物に対して、第一級アミン又はアンモニアを反応させることにより、一般式(3)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物を製造する方法を提供する。
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(3)中における、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。R2は、水素原子、又は上記第一級アミンに由来する炭化水素基である。)
本発明において、上記第一級アミンが、置換基を有していてもよいアニリンであることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、上記一般式(2)で示す化合物に対して、メタル化試薬を反応させることにより、一般式(2)中におけるハロゲン原子たるY及びZをメタル化する工程と、次いで、金属原子、半金属原子、炭素原子、リン原子、硫黄原子及びセレン原子からなる群より選択される原子Mを含む親電子試薬を反応させることにより、一般式(4)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物を製造する方法を提供する。
【0018】
【化3】

【0019】
(一般式(4)中における、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。Mは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。)
本発明において、上記Mが、リン原子(P)、砒素原子(As)、アンチモン原子(Sb)、ビスマス原子(Bi)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、テルル原子(Te)、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)、炭素原子(C)、パラジウム原子(Pd)、ニッケル原子(Ni)、白金原子(Pt)、インジウム原子(In)、亜鉛原子(Zn)、銅原子(Cu)、ケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)、及びゲルマニウム原子(Ge)からなる群より選択される何れかであることが好ましい。
【0020】
本発明において、上記メタル化試薬が、有機リチウム化合物、リチウム金属、有機マグネシウム化合物、及びマグネシウム金属からなる群より選択される何れかであることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、一般式(4)で示す化合物を提供する。
【0022】
【化4】

【0023】
(一般式(4)中で、Xは、周期表における14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される何れか一種に対応する原子を表し、Mは、金属原子、半金属原子、炭素原子、リン原子、硫黄原子及びセレン原子からなる群より選択される原子を表し、ただしXとMとの組み合わせとして硫黄原子同士、硫黄原子とセレン原子、及び硫黄原子と酸素原子の組み合わせは除かれ、
一般式(4)中に示すX及びMは互いに独立して、それぞれに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。)
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、5員環を骨格に持つ縮環化合物及びその合成中間体の新規製造方法、並びに新規化合物が提供されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例に係り、実測から求められた励起エネルギーと分子軌道計算によるHOMO-LUMO ギャップとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施の形態1〕
(合成中間体の製造方法)
<反応の概要>
本発明に係る下記一般式(2)で示す化合物を製造する方法は、下記一般式(1)で示す化合物にハロゲン分子(Y)を反応させる工程を含む。一般式(2)で示す化合物の用途の一つは、5員環を骨格に持つ縮環化合物の合成中間体であるので、以下、この化合物を「合成中間体」と称し、一般式(1)で示す化合物を「合成中間体の前駆体」と称する場合もある。
【0027】
【化5】

【0028】
一般式(2)で示す化合物を製造する上記方法は、炭素−炭素三重結合に対するハロゲン分子(Y)の付加反応を介して、原子Xを含む5員環閉環構造の形成と、所望する原子を導入する足場となるハロゲン対(一般式(2)中のYとZとが近接する構造)の形成とを同時に行うことが出来るという点に特徴点の一つを有する。
【0029】
<A1及びA2の定義>
上記一般式(1)及び(2)中において、A1及びA2は互いに独立に芳香環を表す。すなわち、上記A1及びA2は同一の芳香環であってもよく、互いに異なる芳香環であってもよい。芳香環は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子等のヘテロ原子を骨格に含む複素芳香環であってもよい。芳香環は単環であってもよく、縮環であってもよい。
【0030】
芳香環の骨格構造は特に限定されないが、例えば、5員環単環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環としてベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、5又は6員環の縮合環としてナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。これらのうち、合成がより容易であるとの観点では単環が好ましく、更に好ましくは6員環の単環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0031】
芳香環は、一般式(1)に示す−XR1及び−Z以外に、更に置換基を有していてもよい。該置換基は特に限定されないが、例えば、鎖状炭化水素基、環状炭化水素基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、或いは、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。なお、上記A1及びA2が置換基を有する場合、ハロゲン分子(Y)との反応を円滑に行うとの観点では、A1及びA2それぞれにおいて一般式(1)中に示す三重結合に結合する炭素原子と隣り合う原子以外の箇所に、−XR1及び−Z以外の置換基が位置していることが好ましい。
【0032】
上記鎖状炭化水素基として、例えば、鎖状アルキル基、鎖状アルケニル基、及び鎖状アルキニル基等が例示される。鎖状炭化水素基を構成する炭素数は特に限定されないが、例えば、20以下の直鎖状又は分岐状のものが挙げられる。鎖状炭化水素基は、例えば、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。鎖状アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0033】
上記環状炭化水素基として、例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びアリール基等が例示される。炭化水素環基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、及びテトラデカヒドロアントラニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは5以上であり、かつ、炭素数が20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。シクロアルケニル基の例としては、シクロヘキセニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは5以上であり、かつ、炭素数が20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。アリール基の例としては、フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、及びフェロセニル基等の、炭素数が6以上であり、かつ、炭素数が18以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。
【0034】
上記複素環基として、例えば、5〜6員環の単環又は5〜6員環が2から6個縮合してなる縮合環からなるヘテロアリール基、5〜6員環の単環又は5〜6員環が2から6個縮合してなる縮合環からなるヘテロシクロアルキル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。具体的には、チエニル基等の5員環の単環;ピリジル基、2−ピペリジニル基、2−ピペラジニル基等の6員環の単環;ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、オクタヒドロキノリニル基等の5〜6員環が2〜6個縮合してなる縮合環が挙げられる。
【0035】
上記アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられ、その炭素数は、好ましくは2以上で、かつ9以下、好ましくは8以下である。アルコキシ基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0036】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0037】
<原子Xの定義>
上記一般式(1)及び(2)中において、Xは、周期表における14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される何れか一種に対応する原子を表す。Xは、硫黄原子(S)、酸素原子(O)、セレン原子(Se)、及びテルル原子(Te)からなる群より選択される何れかであることが好ましく、より好ましくは硫黄原子、酸素原子、及びセレン原子からなる群より選択される何れかであり、特に好ましくは硫黄原子又は酸素原子である。
【0038】
また、一般式(2)中におけるXは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。これら原子又は原子団は、一般式(1)において、後述するR1以外に原子Xに直接結合していた原子又は原子団がある場合には、当該原子又は原子団でありうる。例えば、原子Xが第16属元素に対応する原子である場合、原子Xに配位子が結合している場合がありうる。また、原子Xが第15属元素或いは第14属元素に対応する原子である場合、それぞれ1個以上或いは2個以上の原子又は原子団が原子Xに結合しうる。これら原子又は原子団としては、特に限定されないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はシクロアルキル基又はフェニル基等の炭化水素基、水酸基、及びアミノ基等が挙げられる。
【0039】
<原子Xに結合するR1の定義>
上記一般式(1)中において、R1は、上記原子Xに直接結合する、水素原子、水酸基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基、及び置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基からなる群より選択される何れか一種を表す。上記アルコキシ基は、炭素数5以下のものであることが好ましく、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。また、上記炭化水素基は、炭素数5以下の鎖状炭化水素基であることが好ましく、特に好ましくはメチル基である。A1に結合した基である−XR1は、A1とA2とをつなぐ三重結合に付加したハロゲン原子(Y)との間で閉環反応を起こす基点となる。
【0040】
また、原子Xの種類と上記R1との関係では、原子Xが16族原子の場合は、R1は水素原子又は炭化水素基であることが好ましい。原子Xが15族原子の場合は、R1はアミノ基であることが好ましい。原子Xが14族原子の場合は、R1はアルコキシ基、水酸基、又は水素原子であることが好ましい。
【0041】
なお、一般式(1)では、原子Xに結合する原子又は原子団として、少なくともR1が存在することを示すが、その他の原子又は原子団が原子Xに結合することを排除するものではない。例えば、原子Xが第16属元素に対応する原子である場合、原子Xに配位子が結合している場合がありうる。また、原子Xが第15属元素或いは第14属元素に対応する原子である場合、それぞれ1個以上或いは2個以上の原子又は原子団が原子Xに結合しうる。これら原子又は原子団としては、特に限定されないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はシクロアルキル基又はフェニル基等の炭化水素基、水酸基、及びアミノ基等が挙げられる。
【0042】
<Y及びZの定義>
上記一般式(1)及び(2)において、Y及びZは互いに独立してハロゲン原子を表す。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。なお、一般式(2)中のYは、一般式(1)に示す化合物に反応させたハロゲン分子(Y)に由来する。
【0043】
<反応の条件等>
一般式(1)で示す化合物にハロゲン分子(Y)を反応させる工程は、例えば溶媒中で行われる。溶媒としては、上記一般式(1)及び(2)で表される化合物と実質的に反応しないものを適宜利用することができ、より好ましくはハロゲン分子(Y)との反応性がより低いものである。特に限定されないが、溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、或いはジクロロメタン、トリクロロメタン等のハロゲン置換された炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン等の各種のエーテル類;等が挙げられる。溶媒は好ましくはジクロロメタン又はトリクロロメタンである。
【0044】
上記工程を行う際の温度条件、反応時間条件、及び圧力などは、反応が進行する限りにおいて特に限定されない。反応温度は、例えば、5℃以上で30℃以下の温度範囲であり、好ましくは5℃以上で20℃以下の温度範囲であり、より好ましくは10℃以上で15℃以下の温度範囲である。反応時間は、例えば、0.5時間以上で5時間以下であり、好ましくは1.5時間以上で3時間以下である。反応時の圧力は、例えば、1005hPa以上で1030hPa以下の範囲内であり、好ましくは1010hPa以上で1015hPa以下である。
【0045】
なお、上記工程は、一般式(1)に示すA1とA2とをつなぐ三重結合にハロゲン分子(Y)を付加反応させるとともに、閉環反応を起こすものであるから、比較的容易に反応が進行する。そのため、例えば、室温下で、数分〜数時間程度の反応時間で、かつ常圧条件下で、円滑に反応を進行させることができる。また、反応触媒を用いてもよいが、原則として反応触媒は不要である。
【0046】
<一般式(1)で示す化合物の製造例>
以下、上記一般式(1)で示す化合物(合成中間体の前駆体)の製造方法の一例を示す。なお、当該前駆体の製造方法は、以下に例示する方法のみに限定されるものではない。
【0047】
一般式(1)で示す化合物は、下記一般式(5)で示す化合物(ヨウ素化アリール)と、一般式(6)で示す化合物(末端アルキンを含む化合物)とをカップリングすることにより容易に製造可能である。
【0048】
【化6】

【0049】
なお、上記一般式(5)におけるA1、X、及びR1は、上記一般式(1)で説明したものと同一である。また、一般式(5)におけるヨウ素原子(I)は、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等の他のハロゲン原子であってもよい。また、上記一般式(6)におけるA2、及びZは、上記一般式(1)で説明したものと同一である。
【0050】
なお、ハロゲン化アリールと、末端アルキンとをクロスカップリングさせる方法は種々知られており、当業者であればこれら知られた方法に準じて上記一般式(1)で示す化合物を製造可能である(参考文献:(a) Chinchilla, R.; Najera, C. Chem. Rev. 2007, 107, 874-922; (b) Doucet, H.; Hierso, J. -C. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 834-871)
)。好ましくは、所定のパラジウム触媒、銅触媒、及び塩基の存在下で上記クロスカップリングを行う薗頭反応に準じて、上記一般式(1)で示す化合物が製造される。
【0051】
〔実施の形態2〕
(5員環を骨格に持つ縮環化合物の製造(1))
<反応の概要>
下記一般式(3)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物は、実施の形態1で示した上記一般式(2)で示す化合物に対して、第一級アミン又はアンモニアを反応させる工程により製造することが出来る。
【0052】
【化7】

【0053】
(一般式(3)中における、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。R2は、水素原子、又は上記第一級アミンに由来する炭化水素基である。)
本実施形態に係る5員環を骨格に持つ縮環化合物の製造方法は、一般式(3)に示す原子Xを含む5員環の形成と、Nを含む5員環の形成とを異なる反応機構に基づき行う。そのため、Nと組み合わせ可能なXの種類を様々に変更可能であるという利点を有する。
【0054】
上記工程に供される「第一級アミン」の種類は特に限定されず、具体的には例えば、アニリン、メチルアミン、及びベンジジン等が例示される。第一級アミンは、その炭化水素基中の水素原子が、例えば、ハロゲン原子等の置換基により置換されていてもよい。置換基として、例えばフッ素原子を有する場合には、上記反応で得られる一般式(3)で示す縮環化合物の会合性がより高まりうる。
【0055】
<反応の条件等>
一般式(2)で示す化合物(ハロゲン化アリールの一種)に対して、第一級アミン又はアンモニアを反応させる工程は、いわゆるダブルクロスカップリング反応とも称されるものである(参考文献:Balaji, G.; Valiyaveettil, S. Org. Lett. 2009, 11, 3358-3361)。したがって、当業者であればこれら知られた方法に準じて上記一般式(3)で示す化合物を製造可能である。以下に反応条件の一例を示す。
【0056】
上記の工程は、例えば溶媒中で行われる。溶媒としては、上記一般式(2)及び(3)で表される化合物と実質的に反応しないものを適宜利用することができ、より好ましくは第一級アミン又はアンモニアとの反応性がより低いものである。特に限定されないが、溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノ−ル、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール;テトラヒドロフラン等の各種のエーテル類;ジメチルホルムアミド;ジクロロメタン、トリクロロメタン;等が挙げられる。上記工程の反応温度条件(後述する)が比較的高温の場合には、例えば、トルエン及びキシレン等の高沸点溶媒を用いることがより好ましい。
【0057】
上記工程を行う際の温度条件、反応時間条件、及び圧力などは、反応が進行する限りにおいて特に限定されない。反応温度は、例えば、110℃以上で130℃以下の温度範囲であり、好ましくは120℃以上で125℃以下の温度範囲である。反応時間は、例えば、4時間以上で36時間以下であり、好ましくは5時間以上で24時間以下である。反応時の圧力は、例えば、1005hPa以上で1030hPa以下の範囲内であり、好ましくは1010hPa以上で1015hPa以下である。
【0058】
<得られる化合物>
上記工程により、一般式(3)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物が得られる。なお、一般式(3)において、R2は、水素原子、又は上記第一級アミンに由来する炭化水素基であり、例えば第一級アミンとしてアニリンを用いる場合にはR2はフェニル基である。なお、一般式(3)で示す縮環化合物は、後述の一般式(4)で示す縮環化合物において原子Mが窒素である化合物と捉えることもできる。
【0059】
一般式(3)で示す化合物は、例えば、有機EL用の発光材料、有機トランジスタ、及び有機太陽電池等への活用が期待される機能性分子となりうる。
【0060】
〔実施の形態3〕
(5員環を骨格に持つ縮環化合物の製造(2))
<反応の概要>
下記一般式(4)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物は、実施の形態1で示した上記一般式(2)で示す化合物に対して、メタル化試薬を反応させることにより、一般式(2)中におけるハロゲン原子たるY及びZをメタル化する工程(メタル化工程)と、次いで、原子Mを含む親電子試薬を反応させる工程(親電子試薬反応工程)と、により製造することができる。
【0061】
【化8】

【0062】
(一般式(4)中における、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。Mは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。)
本実施形態に係る5員環を骨格に持つ縮環化合物の製造方法は、一般式(4)に示す原子Xを含む5員環の形成と、原子Mを含む5員環の形成とを異なる反応機構に基づき行う。そのため、組み合わせ可能な原子Xと原子Mとを様々に変更可能であるという利点を有する。
【0063】
<メタル化工程、及びメタル化試薬について>
上記のメタル化工程は、一般式(2)で示す化合物が有するハロゲン対(Y及びZにて示す)を両方ともメタルで置換することにより、いわゆる求核剤(ジメタル中間体)として機能させる工程である。
【0064】
メタル化工程にて用いられる上記メタル化試薬は、好ましくは、アルカリ金属、マグネシウム金属、有機アルカリ金属化合物、及び有機マグネシウム金属化合物からなる群より選択される。上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、リチウムがより好ましい。
【0065】
有機アルカリ金属化合物、及び有機マグネシウム金属化合物としては、上述したアルカリ金属又はマグネシウムの有機金属化合物を用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、アルキルリチウム、グリニャール試薬等が挙げられる。アルキルリチウムとしては、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等が挙げられる。グリニャール試薬としては、イソプロピルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムクロライド等が挙げられる。
【0066】
メタル化試薬の使用量は、反応が進行する限りにおいて特に限定されないが、上記一般式(2)で表される化合物に対して、2〜3モル当量用いることが好ましい。
【0067】
必要に応じて反応に用いられる溶媒としては、メタル化工程での反応に対して不活性なものが好ましく、ジエチルエーテル、ペンタン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、これらを組み合わせて使用してもよい。中でもジエチルエーテルが好ましい。
【0068】
上記工程を行う際の温度条件、反応時間条件、及び圧力などは、反応が進行する限りにおいて特に限定されない。反応温度は、例えば、−40℃以上で0℃以下の温度範囲であり、好ましくは−25℃以上で−20℃以下の温度範囲である。反応時間は、例えば、5分以上で1時間以下であり、好ましくは10分以上で15分以下である。反応時の圧力は、例えば、1005hPa以上で1030hPa以下の範囲内であり、好ましくは1010hPa以上で1015hPa以下である。
【0069】
<親電子試薬反応工程、及び親電子試薬について>
上記の親電子試薬反応工程は、上記メタル化工程で得られた求核剤(上記ジメタル中間体)に対して、親電子試薬を反応させる工程と捉えることもできる。
【0070】
ここで、「親電子試薬」とは、一般式(4)で示す化合物に導入される原子Mを含み、かつ求核剤として機能する上記ジメタル中間体と反応して、原子Mを含んだ5員閉環構造(一般式(4)参照)を形成しうるものである。
【0071】
親電子試薬が含む原子Mとは、金属原子、半金属原子、炭素原子、リン原子、硫黄原子及びセレン原子からなる群より選択される何れかである。なお、半金属原子とは、ホウ素原子、ケイ素原子、ヒ素原子、テルル原子等の半金属元素に対応した原子を指す。
【0072】
Mで表される元素としては、例えば、リン原子(P)、砒素原子(As)、アンチモン原子(Sb)、ビスマス原子(Bi)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、テルル原子(Te)、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)、炭素原子(C)、パラジウム原子(Pd)、ニッケル原子(Ni)、白金原子(Pt)、インジウム原子(In)、亜鉛原子(Zn)、銅原子(Cu)、ケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)、及びゲルマニウム原子(Ge)、等が挙げられる。
【0073】
原子Mを含む親電子試薬は、上記原子Mの種類に応じたものを適宜使用可能である。例えば、Mがケイ素原子(Si)であれば、ジメチルジクロロシラン(MeSiCl)など、Mがスズ原子(Sn)であれば、ジメチルジクロロスズ(MeSnCl)など、Mがリン原子(P)であれば、ジクロロフェニルホスフィン(PhPCl)など、Mがゲルマニウム原子(Ge)であれば、ジメチルジクロロゲルマニウム(MeGeCl)など、Mが砒素原子(As)であれば、ジクロロフェニルアルシン(PhAsCl)など、Mがアンチモン原子(Sb)であれば、ジクロロフェニルアンチモン(PhSbCl)又はジブロモフェニルアンチモン(PhSbBr)など、Mがビスマス原子(Bi)であれば、ジクロロフェニルビスマス(PhBiCl)など、Mが硫黄原子(S)であれば、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド((PhSOS)など、Mがセレン原子(Se)であれば、四塩化セレン(SeCl)又は(PhSOSeなど、Mがテルル原子(Te)であれば、四塩化テルル(TeCl)又は金属Teなど、Mがホウ素原子(B)であれば、三塩化ホウ素(BCl)など、Mがアルミニウム原子(Al)であれば、三塩化アルミニウム(AlCl)など、Mがガリウム原子(Ga)であれば、三塩化ガリウム(GaCl)など、Mがインジウム原子(In)であれば、三塩化インジウム(InCl)など、Mが亜鉛原子(Zn)であれば、塩化亜鉛(ZnCl)など、Mが銅原子(Cu)であれば、シアン化銅(CuCN)など、Mが炭素原子であればジヨードメタンなど、Mがパラジウム原子であれば塩化パラジウムなど、Mがニッケル原子であれば塩化ニッケルなど、Mが白金原子であれば塩化白金など、を用いることができる。
【0074】
上記親電子試薬の使用量は、反応が進行する限りにおいて特に限定されないが、上記一般式(2)で表される化合物に対して、1〜2モル当量用いることが好ましい。
【0075】
必要に応じて反応に用いられる溶媒としては、親電子試薬反応工程での反応に対して不活性なものが好ましく、ジエチルエーテル、ペンタン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、これらを組み合わせて使用してもよい。中でもジエチルエーテルが好ましい。なお、溶媒交換が不要であるとの観点では、上記メタル化工程と親電子試薬反応工程とで同一の溶媒を用いることが好ましい。
【0076】
上記工程を行う際の温度条件、反応時間条件、及び圧力などは、反応が進行する限りにおいて特に限定されない。反応温度は、例えば、−40℃以上で0℃以下の温度範囲であり、好ましくは−25℃以上で−20℃以下の温度範囲である。反応時間は、例えば、5時間以上で24時間以下であり、好ましくは12時間以上で15時間以下である。反応時の圧力は、例えば、1005hPa以上で1030hPa以下の範囲内であり、好ましくは1010hPa以上で1015hPa以下である。
【0077】
<親電子試薬反応工程を複数回にわたり行う例示>
一般式(4)で示す化合物に導入される原子Mの種類によっては、上記親電子試薬反応工程を複数回行うことによって、当該原子Mの導入がより容易となる場合もありうる。
【0078】
例えば、一般式(4)で示す化合物に導入される原子Mが、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、及び銅原子からなる群より選択される何れかの場合には、まず、上記一般式(2)に示す化合物に対して、上記メタル化工程を行う。次いで、第一段階の親電子試薬反応工程として、例えばスズ原子(Sn)を含む親電子試薬(ジメチルジクロロスズ等)を用いた反応を行い、式中の原子MとしてSnが導入された上記一般式(4)で示す化合物を得る。
【0079】
次いで、第二段階の親電子試薬反応工程として、原子Mとしてホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、及び銅原子からなる群より選択される何れかを含む親電子試薬を用いた反応を行う。これにより、第一段階の反応で導入されたMと第二段階の反応で導入されたMとの間で金属交換反応が起こるので、原子Mとしてホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、又は銅原子が導入された一般式(4)で示す化合物を容易に得ることができる。
【0080】
このような、第二段階の親電子試薬反応工程で用いる親電子試薬としては、例えば、Mがホウ素(B)であれば、三塩化ホウ素(BCl)など、Mがアルミニウム(Al)であれば、三塩化アルミニウム(AlCl)など、Mがガリウム(Ga)であれば、三塩化ガリウム(GaCl)など、Mがインジウム(In)であれば、三塩化インジウム(InCl)など、Mが亜鉛(Zn)であれば、塩化亜鉛(ZnCl)など、Mが銅(Cu)であれば、シアン化銅(CuCN)などが挙げられる。
【0081】
<得られる化合物>
上記工程により、一般式(4)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物が得られる。一般式(4)において、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。なお、一般式(4)中のXとMとの組み合わせとして硫黄原子同士、硫黄原子とセレン原子、及び硫黄原子と酸素原子の組み合わせを除けば、一般式(4)で示す縮環化合物は何れも新規化合物である。
【0082】
一般式(4)で示す化合物は、例えば、有機EL用の発光材料、有機トランジスタ、及び有機太陽電池等への活用が期待される機能性分子となりうる。
【0083】
なお、一般式(4)で示す化合物中のMが、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、又は銅原子であれば、電子を有さない軌道(空軌道)を持つため、当該化合物は、その平面性が高くなり、また、電子材料として好適に用いられ得る。
【0084】
また、一般式(4)で示す化合物中のMが、パラジウム原子、ニッケル原子、又は白金原子であれば、Mを含む5員環構造を、必要に応じてMを除いた4員環構造に変換することが可能となる。
【0085】
また、一般式(4)において、Mは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。上記原子Mに結合する原子又は原子団は、Mを導入する際に用いた親電子試薬に由来するものであってもよく、当該原子又は原子団としては、例えば、ハロゲン原子、置換基があってもよい炭化水素基等が挙げられる。
【0086】
特に、上記Mがホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、銅原子、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、またはビスマス原子を表す場合には、該置換基としては、アルキル基、O−アルキル基、アリール基、置換されたビニル基等の炭化水素基;ハロゲン原子;等が挙げられる。炭化水素基としては、炭化水素基としては、炭素数1〜10個のものが好ましく、炭素数1〜5個のものがより好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子または臭素原子が好ましい。
【0087】
また、特に上記Mがホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、または銅原子を表す場合には、Mに結合する原子団として、アリール基を用いることが好ましい。アリール基としては、2、4及び6位が、炭素数1〜5個のアルキル基で置換されたフェニル基で表されるものであることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、2,4,6−トリメチルフェニル(メシチル)基等が挙げられる。
【0088】
このような原子又は原子団を有することにより、上記一般式(4)で示す化合物が安定になり、容易に扱うことが可能になる。特に、上記Mが、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、又は銅原子等の空軌道を有する元素を表す場合には、置換基としてアリール基を有することにより、空気中においてもより安定に取り扱えるようになるため、応用面での有用性を向上させることができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、各実施例の化合物名の後に示す(1a)〜(17a)の記号は、各化合物を識別するために用いた記号である。
【0090】
〔実施例1:合成中間体の製造〕
本実施例では、3-bromo-2-(2-bromophenyl)benzo[b]thiophene(4a)の合成を以下の通り行った。この化合物は、上記一般式(2)で示す化合物の一例である。
【0091】
(1-Bromo-2-[(2-methylthiophenyl)ethynyl]benzene(3a)の合成)
アルゴン気流下で、市販の2−ヨードチオアニソール(1a)(19.4g,77.4mmol,1.2mol eq.)のジエチルアミン溶液(160ml)に、氷冷下、PdCl(PPh)(445mg,0.63mmol,0.01mol eq.)、及びヨウ化銅(I)(499 mg, 2.6 mmol, 0.04 mol eq.)を加えた後、文献記載の方法(参考文献:J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 11535-11545)により合成した2−ブロモフェニルアセチレン(2a)(11.5 g, 63.5 mmol)を加え、同温度(氷冷下)で10分間、次いで室温で15時間撹拌した。
【0092】
次いで、溶媒を減圧下で留去して得た残渣に、氷冷下、ジクロロメタン(300ml)、及び水(200ml)を加え10分間撹拌した後、セライトを用いて吸引ろ過した。有機層を分取後、水層をジクロロメタン(2回:それぞれ300ml, 200ml)で抽出し、有機層は水(200 ml×3回)、及び飽和食塩水(200ml×2回)で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、溶媒を減圧下で留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n−ヘキサン:ジクロロメタン=10:1)で分離し、n−ヘキサン:ジクロロメタン混合溶媒(再結晶溶媒)より再結晶して1-Bromo-2-[(2-methylthiophenyl)ethynyl]benzene(3a)を得た。
【0093】
【化9】

【0094】
化合物(3a)の収量16.4 g,収率85 %, 色pale yellow prisms, 融点mp 61-63 ℃。
1H-NMR (400MHz; CDCl3) δ: 2.52 ( 3H, s, S-Me ) , 7.12 ( 1H, t, J = 7.3 Hz, Ar-H ) , 7.19 ( 2H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ) , 7.31 ( 2H, m, Ar-H ) , 7.54 ( 1H, d, J = 6.9 Hz, Ar-H ) , 7.61 ( 2H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ).
13C-NMR (100MHz; CDCl3 ) δ: 15.2 (q), 91.3 (s), 94.1 (s), 121.0 (s), 124.2 (d), 124.3 (d), 125.35 (s), 125.41 (s), 127.0 (d), 129.1 (d), 129.5 (d), 132.5 (d), 132.7 (d), 133.5 (d), 141.9 (s).
IR ( KBr ) cm-1: 2216 ( C≡C ).
LRMS ( EI ) m/z : 302 (M, 98% ), 221 ( 56% ), 208 ( 28% ), 163 ( 14% ), 147 ( 30% ) .
HRMS ( EI ) m/z : Anal. Calcd for C15H11BrS : 301.9765 . Found : 301.9774 .
Anal. Calcd for C15H11BrS : C , 59.42 ; H , 3.66 . Found : C , 59.58 ; H , 3.79 .
上記は、化合物(3a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、赤外分光分析(IR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0095】
(3-bromo-2-(2-bromophenyl)benzo[b]thiophene (4a)の合成)
アルゴン気流下で、上記化合物(3a)(4.70 g, 15.5 mmol)の無水ジクロロメタン溶液 (40 ml)に、水冷下、臭素(5.0 g, 31.3 mmol, 2 mol eq.)の無水ジクロロメタン溶液(20 ml)を45分かけて滴下し、同温度(水冷下)で30分間、次いで室温で1時間撹拌した。次いで、氷冷下、反応液をジクロロメタン(200 ml)で希釈し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液 (200ml)を加えて撹拌した後、セライトを用いて吸引ろ過した。有機層を分取後、水層をジクロロメタン(2回:それぞれ200 ml, 150 ml)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、溶媒を減圧下で留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:ジクロロメタン=20:1)で分離し、n-ヘキサン:ジクロロメタン混合溶媒(再結晶溶媒)より再結晶して3-bromo-2-(2-bromophenyl)benzo[b]thiophene (4a)を得た。反応式は以下に示す。
【0096】
【化10】

【0097】
化合物(4a)の収量5.29 g, 収率92%, 色colorless prisms, 融点mp 75-79 ℃。
1H-NMR (400MHz; CDCl3) δ: 7.33(1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H), 7.39-7.52(4H, m, Ar-H), 7.71(1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H), 7.83(1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H), 7.84(1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H).
13C-NMR (100 MHz; CDCl3) δ: 108.6 (s), 122.3 (d), 123.6 (d), 124.6 (s), 125.2 (d), 125.7 (d), 127.2 (d), 130.7 (d), 132.5 (d), 133.0 (d), 134.1 (s), 137.3 (s), 137.9 (s), 138.4 (s).
LRMS (EI) m/z : 366(M, 50%), 208(82%), 163(15%), 104(12%).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C14H8Br2S : 365.8713. Found : 365.8679.
Anal. Calcd for C14H8Br2S : C , 45.68 ; H , 2.19 . Found : C , 45.13 ; H , 2.33.
上記は、化合物(4a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0098】
〔実施例2:4環縮環化合物の製造〕
本実施例では、10-Phenyl[1]benzothieno[3,2-b]indole(5a)の合成を以下の通り行った。この化合物は、上記一般式(3)で示す化合物の一例である。
【0099】
シールドチューブに、アニリン(47 mg, 0.51mmol)、トルエン(5ml)、実施例1で得た化合物(4a)(203mg, 0.55mmol, 1.1mol eq.)、P(t-Bu)3HBF4(33mg, 0.11mmol, 0.22mol eq.)、t-BuONa(160mg, 1.67mmol, 3.3mol eq.)、Pd2(dba)3 (101 mg, 0.11 mmol, 0.22 mol eq.)を加えアルゴン封入した後、室温で 30 分撹拌した。反応液は、125℃で 24 時間撹拌した。氷冷下、反応液をジクロロメタン(30ml)で希釈し、次いで水(30 ml)を加え撹拌した後、セライトを用いて吸引ろ過した。有機層を分取後、水層をジクロロメタン (30 ml×2回)で抽出し、有機層は飽和食塩水(30ml×2回) で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、溶媒を減圧下で留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶液は、n-ヘキサン:ジクロロメタン=20:1)で分離し、エタノール:ジクロロメタン混合溶媒(再結晶溶媒)より再結晶して、10-Phenyl[1]benzothieno[3,2-b]indole (5a)を得た。反応式は以下に示す。
【0100】
【化11】

【0101】
化合物(5a)の収量107mg, 収率71 %, 色yellow prisms(ethanol/dichloromethane), 融点mp 111.0-114.0 ℃。
1H-NMR (400MHz;CDCl3) δ: 7.17-7.30 (5H, m, Ar-H), 7.36 (1H, d, J = 8.2 Hz, Ar-H), 7.52-7.64 (5H, m, Ar-H), 7.82 (1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H), 7.88 (1H, d, J = 8.2 Hz, Ar-H).
13C-NMR (100MHz;CDCl3) δ: 111.0 (d), 116.8 (s), 119.3 (d), 120.4 (d), 120.5 (d), 122.1 (s), 123.4 (d), 123.9 (d), 124.0 (d), 124.3 (d), 126.8 (s), 127.7 (d), 128.2 (d), 129.7 (d), 137.5 (s), 137.9 (s), 142.5 (s), 143.1 (s).
LRMS ( EI ) m/z : 299 (M, 100%), 222 (12%). HRMS m/z : Anal. Calcd for C20H13NS : 299.08 . Found : 299.0769 .
Anal. Calcd for C20H13NS : C , 80.23 ; H , 4.68 ; N , 4.38 . Found : C , 80.27 ; H , 4.70 ; N , 4.72 .
上記は、化合物(5a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0102】
〔実施例3:4環縮環化合物の製造〕
本実施例では、上記一般式(4)で示す複数種の化合物(6a)〜(11a)の合成を行った。
【0103】
アルゴン気流下で、実施例1で得た化合物(4a) (736 mg, 2.0 mmol)の無水エーテル溶液(40 ml)に、−20℃でn-BuLi(n-ヘキサン溶液;1.57M)(3.1 ml, 4.87 mmol, 2.5 mol eq.)を5分かけて滴下し、同温度で15分撹拌した。次いで-20℃撹拌下、親電子試薬 (MX2又はM, 4 mmol, 2 mol eq.)を2分〜10分かけて加え撹拌した。室温まで昇温しながら 15時間撹拌した後、氷冷下、反応液をジクロロメタン(100ml)で希釈し、次いで水(100ml)を加え撹拌した後、セライトを用いて吸引ろ過した。有機層を分取後、水層をジクロロメタン(100 ml×2回)で抽出し、有機層は飽和食塩水(200 ml×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、減圧留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:ジクロロメタン)で分離し、再結晶により精製し、化合物(6a)〜(11a)を得た。収率および各スペクトルデータはまとめて示した。なお化合物(6a)は、展開溶媒としてジクロロメタン:アセトン=10 : 1を用いて分離した。反応式は以下に示す。
【0104】
【化12】

【0105】
10-Phenyl-10-oxo-[1]benzophospholo[3,2-b][1]benzothiophene・・化合物(6a)
収量578mg, 収率87%, 色pale yellow prisms (n-hexane / dichloromethane), 融点mp 161.0-163.0 ℃。
1H-NMR (400MHz; CDCl3 ) δ: 7.32-7.42 (5H, m, Ar-H), 7.49-7.54 (3H, m, Ar-H), 7.68 (1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H), 7.74-7.79 (3H, m, Ar-H), 7.81(1H, d, J = 6.9 Hz, Ar-H).
13C-NMR (100MHz; CDCl3) δ: 121.9(dd, Jcp = 9.6 Hz), 123.4(dd, Jcp = 4.8 Hz), 125.4 (d), 126.0 (d), 128.9 (dd, Jcp = 12.5 Hz ), 129.4 (dd, Jcp = 6.7 Hz ), 129.5 (d, Jcp = 4.8 Hz), 129.8 (d, Jcp = 106.4 Hz ), 130.6(d, Jcp = 108.3 Hz ), 130.9 (dd, Jcp = 10.5 Hz), 132.4 (dd, Jcp = 2.9 Hz), 133.1 (d), 136.0 (d, Jcp = 1.9 Hz), 136.6 (d, Jcp = 99.7 Hz), 137.5 (d, Jcp = 18.2 Hz), 143.2 (d, Jcp = 12.5 Hz), 154.6 (d, Jcp = 27.8 Hz).
LRMS (EI) m/z : 332 (M, 100% ), 284 ( 42% ), 255 ( 33% ), 208 ( 14% ), 163 ( 7% ), 77 ( 8% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C20H13OPS : 332.0425 . Found : 332.0420
Anal. Calcd for C20H13OPS : C , 72.28 ; H , 3.94 . Found : C , 72.30 ; H , 3.95 .
上記は、化合物(6a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0106】
10-Phenyl[1]benzoarsolo[3,2-b][1]benzothiophene ・・化合物(7a)
収量562 mg, 収率78 %, 色colorless prisms ( methanol / dichloromethane ), 融点mp 117.5-119.5 ℃.
1H-NMR (400 MHz; CDCl3) δ: 7.16-7.34 ( 8H, m, Ar-H ), 7.42 ( 1H, t, J = 6.9 Hz, Ar-H ), 7.68 ( 2H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.75 ( 1H, d, J = 6.9 Hz, Ar-H ), 7.89 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 125 MHz; CDCl3) δ: 122.5 (d), 123.35 (d), 123.38 (d), 124.4 (d), 125.0 (d), 127.1 (d), 128.79 (d), 128.85 (d), 131.3 (d), 132.3(d), 138.3 (s), 139.5 (s), 140.7 (s), 141.4 (s), 142.4 (s), 148.2 (s), 149.9 (s).
LRMS ( EI ) m/z : 360 ( M, 100% ), 283 ( 53% ), 252 ( 9% ), 208 ( 15% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C20H13AsS : 359.9954 . Found : 359.9948 .
Anal. Calcd for C20H13AsS : C , 66.67 ; H , 3.64 . Found : C , 66.44 ; H , 3.80 .
上記は、化合物(7a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0107】
10-Phenyl[1]benzostibolo[3,2-b][1]benzothiophene ・・化合物(8a)
収量586 mg, 収率72 %, 色colorless prisms (n-hexane / dichloromethane), 融点mp 100-102 ℃.
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3 ) δ: 7.14-7.43 ( 9H, m, Ar-H ), 7.68 ( 1H, d, J = 6.9 Hz, Ar-H ), 7.69 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.74 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.89 ( 1H, d, J = 6.9 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 100 MHz; CDCl3 ) δ: 123.0 (d), 123.7 (d), 124.3 (d), 124.4 (d), 124.9 (d), 127.4 (d), 128.8 (d), 128.9 (d), 129.1 (d), 134.8 (d), 135.3 (d), 137.4 (s), 139.4 (s), 141.4 (s), 142.6 (s), 145.36 (s), 145.41 (s), 156.1 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 406 ( M, 100% ), 329 ( 52% ), 285 ( 89% ), 208 ( 49% ), 163 ( 11% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C20H13SSb : 405.9776 . Found : 405.9770 .
Anal. Calcd for C20H13SSb : C , 59.00 ; H , 3.22 . Found : C , 58.87 ; H , 3.37 .
上記は、化合物(8a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0108】
[1]Benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene・・化合物(9a)
収量312mg, 収率65 %, 色colorless prisms (n-hexane / dichloromethane ), 融点mp 215.0-219.0 ℃ ( lit. 215-216 ℃).
1H-NMR (400 MHz; CDCl3) δ: 7.39 ( 2H, t, J = 8.0 Hz, Ar-H ), 7.45 ( 2H, t, J = 8.0 Hz, Ar-H ), 7.88 ( 2H, d, J = 8.0 Hz, Ar-H ), 7.91 ( 2H, d, J = 8.0 Hz, Ar-H )
13C-NMR ( 100 MHz; CDCl3) δ: 121.6 (d), 124.0 (d), 124.9 (d), 125.0 (d), 133.1 (s), 133.4 (s), 142.2 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 240 ( 100% ), 208 ( 5% ), 195 ( 7% ), 120 ( 12% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C14H8S2 : 240.01 . Found : 240.0067 .
Anal. Calcd for C14H8S2 : C , 69.96 ; H , 3.36 . Found : C , 70.04 ; H , 3.64 .
上記は、化合物(9a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0109】
[1]Benzoselenolo[3,2-b][1]benzothiophene ・・化合物(10a)
収量379 mg, 収率66 %, 色pale red prisms (ethanol / dichloromethane ), 融点mp 206-209 ℃.
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3) δ: 7.32 ( 1H, t, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.38 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.43 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.44 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.80 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.86 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.91 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.94 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ).
13C-NMR (100 MHz; CDCl3) δ: 122.2 (d), 123.1 (d), 123.8 (d), 124.89 (d), 124.92 (d), 125.2 (d), 125.3 (d), 127.0 (d), 131.7 (s), 135.2 (s), 135.6 (s), 135.7 (s), 141.2 (s), 142.1 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 288 (M, 100% ), 210 ( 20% ), 163 ( 7% ), 144 ( 6% ), 104 ( 5% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C14H8SSe : 287.95 . Found : 287.9505 .
Anal. Calcd for C14H8SSe : C , 58.54 ; H , 2.81 . Found : C , 58.71 ; H , 3.08 .
上記は、化合物(10a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0110】
[1]Benzotellurolo[3,2-b][1]benzothiophene ・・化合物(11a)
収量343mg, 収率51 %, 色pale yellow needle ( methanol / dichloromethane ), 融点mp 164-166 ℃.
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3) δ: 7.19 ( 1H, t, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.36-7.40 ( 2H, m, Ar-H ), 7.44 ( 1H, t, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.66 ( 1H, d, J = 8.7 Hz, Ar-H ), 7.88 ( 1H, d, J = 8.7 Hz, Ar-H ), 7.91 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.95 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 125 MHz; CDCl3) δ: 119.2 (s), 123.4 (d), 123.5 (d), 124.9 (d), 125.1 (d), 125.3 (d), 126.1 (d), 130.9 (s), 133.1 (d), 139.6 (s), 139.9 (s), 140.1 (s), 141.8 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 338 ( M, 100% ), 208 ( 43% ), 163 ( 15% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C14H8STe : 377.94 . Found : 337.9419 .
Anal. Calcd for C14H8STe : C , 50.06 ; H , 2.40 . Found : C , 50.08 ; H , 2.58 .
上記は、化合物(11a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0111】
〔実施例4:4環縮環化合物の製造〕
本実施例では、上記一般式(4)で示す化合物(12a)の合成を行った。
【0112】
アルゴン気流下で、上記実施例3で得た化合物(6a)( 394 mg, 1.18 mmol )のベンゼン溶液 ( 6 ml )に、0℃でトリクロロシラン( 0.24 ml, 2.37 mmol, 2 mol eq. )を加え、室温で3時間撹拌した。氷冷下、反応液をベンゼン( 50 ml )で希釈し、次いで脱気水( 50 ml )を加え撹拌した。次いで有機層を分取後、水層を ベンゼン( 50 ml ×2回)で抽出し、有機層は飽和食塩水( 30 ml × 2回)で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、溶媒を減圧下で留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:ジクロロメタン)で分離し、メタノール:ジクロロメタン混合溶媒(再結晶溶媒)より再結晶して、10-Phenyl[1]benzophospholo[3,2-b][1]benzothiophene(12a)を得た。反応式は以下に示す。
【0113】
【化13】

【0114】
収量253 mg, 収率68 %, 色colorless prisms ( methanol / dichloromethane ), 融点mp 133.0-136.5 ℃.
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3 ) δ: 7.34 ( 9H, m, Ar-H ), 7.70 ( 3H, m, Ar-H ), 7.89 ( 1H, d, J = 8.2 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 100 MHz; CDCl3 ) δ: 121.7 (d), 123.0 (d), 123.6 (d), 124.5 (d), 125.0 (d), 126.8 (dd, Jcp = 8.6 Hz ), 128.7 (dd, Jcp = 8.6 Hz ), 128.8 (dd, Jcp = 7.7 Hz ), 129.5 (d), 130.2 (dd, Jcp = 21.1 Hz ), 132.8 (dd, Jcp = 21.1 Hz ), 133.9 (d, Jcp = 17.3 Hz ), 138.07 (d, Jcp = 17.3 Hz ), 138.12 (d, Jcp = 6.7 Hz ), 139.6 (d, Jcp = 1.9 Hz ), 143.0 (d, Jcp = 4.8 Hz ), 146.0 (d, Jcp = 4.8 Hz ), 148.3 (d, Jcp = 3.8 Hz ).
LRMS ( EI ) m / z : 316 ( M, 100% ), 284 ( 15% ), 239 ( 40% ), 194 ( 5% ), 158 ( 5% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C20H13PS : 316.0476 . Found : 316.0473 .
Anal. Calcd for C20H13PS : C , 75.93 ; H , 4.14 . Found : C , 75.57 ; H , 4.36 .
上記は、化合物(12a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0115】
〔実施例5:合成中間体の製造〕
本実施例では、2-(2-bromophenyl)-3-iodobenzo[b]furan(15a)の合成を以下の通り行った。この化合物は、上記一般式(2)で示す化合物の一例である。
【0116】
(1-Bromo-2-(2-methoxyphenylethynyl)benzene (14a)の合成)
アルゴン気流下、市販の 2-iodoanisole (13a) ( 14.8 g, 63.0 mmol, 1.2 mol eq. )のジエチルアミン溶液 ( 132 ml )に、PdCl(PPh) ( 377 mg, 0.54 mmol, 0.010 mol eq. )、ヨウ化銅(I)( 443 mg, 2.3 mmol, 0.045 mol eq. )を加えた後、実施例1で記載の2-ブロモフェニル アセチレン(2a) ( 9.5 g, 52.5 mmol )を加え、室温で15時間撹拌した。
【0117】
次いで、溶媒を減圧下で留去して得た残渣に、氷冷下、ジクロロメタン ( 300 ml )、及び水 ( 200 ml )を加え 10 分間撹拌した後、セライトを用いて吸引ろ過した。有機層を分取後、水層をジクロロメタン (2回:それぞれ300 ml, 200 ml)で抽出し、有機層は水( 200 ml × 3回)、及び飽和食塩水 ( 200 ml × 2 )で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、減圧留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:ジクロロメタン=5 : 1 )で分離し、n-ヘキサン-ジクロロメタン混合溶媒(再結晶溶媒)より再結晶して化合物(14 a)を得た。反応式は以下に示す。
【0118】
【化14】

【0119】
収量12.4 g, 収率83 %, 色colorless prisms, 融点mp 36.5-37.5 ℃.
IR ( KBr ) cm-1: 2220 ( C≡C ).
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3 ) δ: 3.92 ( 3H, s, O-Me ), 6.91 ( 1H, d, J = 8.2 Hz, Ar-H ), 6.95 ( 1H, t, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.16 ( 1H, t, J = 8.2 Hz, Ar-H ), 7.28 ( 1H, t, J = 8.7 Hz, Ar-H ), 7.32 ( 1H, t, J = 6.4 Hz, Ar-H ), 7.55 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.59 ( 1H, d, J = 6.4 Hz, Ar-H ), 7.60 ( 1H, d, J = 8.7 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 100 MHz; CDCl3 ) δ: 55.9 (q), 90.5 (s), 91.9 (s), 110.8 (d), 112.1 (s), 120.5 (d), 125.5 (s), 125.7 (s), 126.9 (d), 129.2 (d), 130.1 (d), 132.4 (d), 133.3 (d), 133.7 (d), 160.1 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 286 ( M, 100% ), 243 ( 12% ), 205 ( 14% ), 178 ( 31% ), 163 ( 26% ), 131 ( 27% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C15H11BrO : 285.9989. Found : 285.9986 .
上記は、化合物(14a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、赤外分光分析(IR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0120】
(2-(2-bromophenyl)-3-iodobenzo[b]furan(15a)の合成)
アルゴン気流下、化合物(14a) ( 4.57g, 15.9 mmol ) の無水ジクロロメタン溶液 ( 15 ml )に、ヨウ素 ( 8.09 g, 31.9 mmol, 2 mol eq. )の無水ジクロロメタン溶液 ( 185 ml )を50分かけて滴下し、室温で19時間撹拌した。氷冷下、反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液 ( 200ml )を加えて撹拌した後、有機層を分取し、水層をジクロロメタン ( 200 ml, 150 ml )で抽出した。次いで有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、自然ろ過後、溶媒を減圧下で留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒n-ヘキサン:ジクロロメタン=20 : 1 )で分離し、n-ヘキサン:ジクロロメタン混合溶媒(再結晶溶媒)より再結晶して化合物(15a)を得た。反応式は以下に示す。
【0121】
【化15】

【0122】
収量5.04 g, 収率93 %, 色pale yellow prisms, 融点mp 43-47 ℃.
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3 ) δ: 7.34-7.52 ( 6H, m, Ar-H ), 7.56 ( 1H, d, J = 6.4 Hz, Ar-H ), 7.73 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 100 MHz; CDCl3 ) δ: 66.2 (s), 111.5 (d), 121.8 (d), 123.6 (d), 124.0 (s), 125.8 (d), 127.1 (d), 131.1 (s), 131.36 (d), 131.40 (s), 133.0 (d), 133.3 (d), 154.4 (s), 154.8 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 398 ( M, 100% ), 243 ( 21% ), 163 ( 24% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C14H8BrIO : 397.8803 . Found : 397.8810 .
Anal. Calcd for C14H8BrIO : C , 42.14 ; H , 2.02 . Found : C , 42.19 ; H , 2.05 .
上記は、化合物(15a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0123】
〔実施例6:4環縮環化合物の製造〕
本実施例では、[1]Benzothieno[3,2-b][1]benzofuran(16a)、及び10-Phenyl-10-oxo-[1]benzophospholo[3,2-b][1]benzofuran (17a)の合成を以下の通り行った。これらの化合物は、上記一般式(4)で示す化合物の一例である。
【0124】
アルゴン気流下で、上記実施例5に記載の化合物(15a)( 799 mg, 2.0 mmol )の無水エーテル溶液( 30 ml )に、−78℃で t-BuLi ( n- ペンタン溶液; 1.05M ) ( 7.6 ml, 8.0 mmol, 4.0 mol eq. )を10分かけて滴下し、同温度で15分撹拌した。次いで−78℃で撹拌しながら、親電子試薬 (PhMX2; 4 mmol, 2 mol eq. )を2分〜10分かけて加えた。室温まで昇温しながら15時間撹拌した後、氷冷下、反応液をジクロロメタン ( 100 ml )で希釈し、次いで水 ( 100 ml )を加え撹拌した後、セライトを用いて吸引ろ過した。有機層を分取後、水層をジクロロメタン ( 100 ml ×2回 )で抽出し、有機層は飽和食塩水 ( 200 ml × 2回 )で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。自然ろ過後、溶媒を減圧下で留去して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:ジクロロメタン)で分離し、再結晶により精製して、化合物(16a)及び(17a)を得た。 収率および各スペクトルデータはまとめて示した。なお化合物(17a)は、展開溶媒としてジクロロメタン:アセトン =10 : 1を用いて分離した。反応式は以下に示す。
【0125】
【化16】

【0126】
[1]Benzothieno[3,2-b][1]benzofuran・・化合物(16a)
収量218 mg, 収率49 %, 色colorless prisms ( n-hexane / dichloromethane ), 融点mp 132-134 ℃ ( lit. 130-132℃).
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3 ) δ: 7.33 ( 1H, t, J = 8.2 Hz, Ar-H ), 7.37 ( 2H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ). 7.46 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.63 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.71 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.86 ( 1H, d, J = 8.2 Hz, Ar-H ), 7.99 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 125 MHz; CDCl3 ) δ: 112.5 (d), 118.6 (s), 119.6 (d), 119.7 (d), 123.3 (d), 124.0 (s), 124.3 (d), 124.87 (d), 124.91 (d), 125.1 (s), 142.0 (s), 153.0 (s), 158.8 (s).
LRMS ( EI ) m / z : 224 ( M, 100% ), 195 ( 13% ), 152 ( 11% ), 112 ( 8% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C14H8OS : 224.0296 . Found :224.0297 .
Anal. Calcd for C14H8OS : C , 74.97 ; H , 3.60 . Found : C , 74.99 ; H , 3.65 .
上記は、化合物(16a)の構造を決定付けるための、NMR分析(1H-NMR及び13C-NMR)、低分解能及び高分解能質量分析(LRMS及びHRMS)の結果である。
【0127】
10-Phenyl-10-oxo-[1]benzophospholo[3,2-b][1]benzofuran・・化合物(17a)
収量327mg, 収率52%, 色colorless prisms ( n-hexane / dichloromethane ), 融点mp 151-155 ℃.
1H-NMR ( 400 MHz; CDCl3 ) δ: 7.28 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.34 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.38 - 7.44 ( 3H, m, Ar-H ), 7.53 ( 1H, t, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.55 ( 1H, d, J = 7.8 Hz, Ar-H ), 7.61 ( 2H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.66 - 7.72 ( 2H, m, Ar-H ), 7.78 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ), 7.82 ( 1H, d, J = 7.3 Hz, Ar-H ).
13C-NMR ( 100 MHz; CDCl3 ) δ: 112.1 (d, Jcp = 121.7 Hz ), 112.4 (d), 120.0 (dd, Jcp = 8.6 Hz ), 121.4 (d), 124.8 (d), 125.3 (d, Jcp = 7.7 Hz ), 125.6 (d), 129.0 (dd, Jcp = 13.4 Hz ), 129.8 (d, Jcp = 111.2 Hz ), 129.9 (dd, Jcp = 8.6 Hz ), 130.1 (dd, Jcp = 11.5 Hz ), 139.0 (dd, Jcp = 11.5 Hz ), 132.6 (dd, Jcp = 2.9 Hz ), 132.7 (dd, Jcp = 1.9 Hz ), 132.9 (d, Jcp = 13.4 Hz ), 138.6 (d, Jcp = 106.4 Hz ), 159.2 (d, Jcp =10.5 Hz ), 167.9 (d, Jcp = 36.4 Hz ).
LRMS ( EI ) m / z : 316 ( M, 100% ), 268 ( 27% ), 239 ( 39% ), 223 ( 7% ), 164 ( 5% ).
HRMS m/z : Anal. Calcd for C20H13O2P : 316.0653 . Found : 316.0652 .
〔実施例7:化合物のHOMO-LUMOギャップ等の測定〕
本実施例では、下記一般式(7)に示す化合物について、その紫外線可視吸収スペクトルの測定、及びHOMO-LUMOギャップの算出を行った。
【0128】
紫外可視吸収スペクトルは日本分光製V-670 を用い、溶媒にメタノールを用いて測定した。理論計算には分子軌道計算ソフト(Gaussian03:Gaussian社製)を用いた。B3LYP/LanL2DZ 法を用いて、対象化合物の分子構造最適化を行った。得られた最適化構造の最高被占軌道(HOMO)のエネルギーと最低空軌道(LUMO)のエネルギーとから、対象化合物のエネルギー差(HOMO-LUMO ギャップ)を求めた。
【0129】
【化17】

【0130】
Xに硫黄原子、Mに酸素からテルルまでの16族元素を導入した際の吸収極大波長、励起エネルギーおよび分子軌道計算によるHOMO-LUMO ギャップを下表1に示す。なお、励起エネルギーは吸収極大波長の実測値から換算して求めた。
【0131】
【表1】

【0132】
実測から求められた励起エネルギーは、Mに導入した16族元素が大きくなるにつれて小さくなる傾向にあった。また分子軌道計算によるHOMO-LUMO ギャップも16族元素が大きくなるにつれて小さくなる傾向にあり、実測から求められた励起エネルギーと分子軌道計算によるHOMO-LUMO ギャップとは、下図1に示すように良好な比例関係を示した。
【0133】
次に、XとMとに系統的に16族元素を導入した際の、分子軌道計算によるHOMO-LUMO ギャップを下表2に示す。ただし、X及びMの双方にテルル原子を導入した際のHOMO-LUMO ギャップのみは、HOMOとπ軌道に由来するLUMO+1との差である。表2から分かるように、導入される16族元素が大きくなるにつれて系統的にHOMO-LUMO ギャップが小さくなる傾向が見られ、導入する元素の組み合わせによりHOMO-LUMO ギャップの制御が可能であることが示唆された。
【0134】
【表2】

【0135】
また、Xに硫黄原子、Mにホウ素から酸素までの第2周期元素を導入した際の、分子軌道計算によるHOMO-LUMO ギャップを下表に示す。導入する元素を変えることによりHOMO-LUMOギャップの制御が可能であることが示唆された。
【0136】
【表3】

【0137】
有機半導体材料や有機発光素子を設計する際に、用いる化合物のHOMO-LUMO レベルを制御することは不可欠である。しかし、従来の製造法では、一般式(7)に示すX及びMの組合せが少数に限られたためHOMO-LUMO レベルを自在に制御することは困難であった。
【0138】
しかし、本発明の方法では、上述の通り、同種のヘテロ元素はもちろん、様々な組合せの異種のヘテロ元素が導入された縮環化合物の製造が可能である。すなわち、本発明によれば、様々なHOMO-LUMOレベルを有する縮環化合物を容易に製造でき、これら縮環化合物は、例えば、有機半導体材料や有機発光素子に有望な有機材料となりうる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によれば、5員環を骨格に持つ縮環化合物の新規製造方法、及び新規化合物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示す化合物にハロゲン分子(Y)を反応させる工程を含む、下記一般式(2)で示す化合物を製造する方法。
【化1】

(一般式(1)及び(2)中における、A1及びA2は互いに独立に芳香環を表し、Xは、周期表における14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される何れか一種に対応する原子を表し、Yは上記ハロゲン分子を構成するハロゲン原子を表し、Zはハロゲン原子を表し、R1は、水素原子、水酸基、アミノ基、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基、及び置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基からなる群より選択される何れか一種を表す。また、一般式(2)中におけるXは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよく、一般式(1)中におけるXは、それに結合する原子又は原子団をR1の他に一つ以上有していてもよい。)
【請求項2】
Xは、硫黄原子(S)、酸素原子(O)、セレン原子(Se)、及びテルル原子(Te)からなる群より選択される何れかである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A1及びA2は互いに独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環を表す請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法により一般式(2)で示す化合物を製造する工程と、次いで、一般式(2)で示す化合物に対して第一級アミン又はアンモニアを反応させる工程とを含む、下記一般式(3)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物を製造する方法。
【化2】

(一般式(3)中における、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。R2は、水素原子、又は上記第一級アミンに由来する炭化水素基である。)
【請求項5】
上記第一級アミンが、置換基を有していてもよいアニリンである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法により一般式(2)で示す化合物を製造する工程と、次いで、一般式(2)で示す化合物に対して、メタル化試薬を反応させることにより、一般式(2)中におけるハロゲン原子たるY及びZをメタル化する工程と、次いで、
金属原子、半金属原子、炭素原子、リン原子、硫黄原子及びセレン原子からなる群より選択される原子Mを含む親電子試薬を反応させる工程とを含む、下記一般式(4)で示す5員環を骨格に持つ縮環化合物を製造する方法。
【化3】

(一般式(4)中における、A1、A2及びXの定義は、一般式(2)と同一である。Mは、それに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。)
【請求項7】
Mが、リン原子(P)、砒素原子(As)、アンチモン原子(Sb)、ビスマス原子(Bi)、硫黄原子(S)、セレン原子(Se)、テルル原子(Te)、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)、炭素原子(C)、パラジウム原子(Pd)、ニッケル原子(Ni)、白金原子(Pt)、インジウム原子(In)、亜鉛原子(Zn)、銅原子(Cu)、ケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)、及びゲルマニウム原子(Ge)からなる群より選択される何れかである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記メタル化試薬が、有機リチウム化合物、リチウム金属、有機マグネシウム化合物、及びマグネシウム金属からなる群より選択される何れかである請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
一般式(4)で示す化合物。
【化4】

(一般式(4)中で、Xは、周期表における14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される何れか一種に対応する原子を表し、Mは、金属原子、半金属原子、炭素原子、リン原子、硫黄原子及びセレン原子からなる群より選択される原子を表し、ただしXとMとの組み合わせとして硫黄原子同士、硫黄原子とセレン原子、及び硫黄原子と酸素原子の組み合わせは除かれ、
一般式(4)中に示すX及びMは互いに独立して、それぞれに結合する原子又は原子団を一つ以上有していてもよい。)

【図1】
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【公開番号】特開2011−184309(P2011−184309A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48169(P2010−48169)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】