説明

繊維反応性アゾ染料及び繊維反応性アゾ染料混合物、それらの製造、並びにそれらの使用

本発明は、式(1)
【化1】


〔式中、R、M、及びYは、請求項1に明記されたように定義される〕
で示されるアゾ染料、それらを含む染料混合物、それらの製造プロセス、及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維反応性アゾ染料の技術分野内に位置する。
【背景技術】
【0002】
繊維業界内には、非常に良好なビルドアップ性及び良好な堅牢性を有する橙色反応性染料の需要が存在する。この染料は、特には、他の染料との混合物で染色するために必要とされる。特許文献1及び特許文献2により開示された染料は、まだこの需要を満たしてしない。従って、そのような染料の更なる需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0785237A1号明細書
【特許文献2】韓国特許第20020038989号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この度の発明は、高い需要に対して、ビルドアップ性、ウォッシュオフ性、及び堅牢性の要件を満たす染料の提供に成功した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)
【化1】

〔式中、
Yは、−CH=CH又は−CHCHZであり、ここで、
Zは、アルカリ脱離性基であり、
Rは、−COOR基、−CN基、又は−CONR基であり、ここで、
は、M又は(C〜C)−アルキルであり、
及びRは、互いに独立して、水素又は(C〜C)−アルキルであり、且つ
Mは、水素、アンモニウム、アルカリ金属、又は等価量のアルカリ土類金属である〕
で示されるアゾ染料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
アルカリ脱離性基Zは、例えば、塩素や臭素のようなハロゲン原子、有機カルボン酸又は有機スルホン酸(例としては、アルキルカルボン酸、無置換型若しく置換型のベンゼンカルボン酸、又は無置換型若しくは置換型のベンゼンスルホン酸が挙げられる)のエステル基(特には、2〜5個の炭素原子のアルカノイルオキシ、例えば、アセチルオキシ、更には、ベンゾイルオキシ、スルホベンゾイルオキシ、フェニルスルホニルオキシ、又はトリルスルホニルオキシ)、更には、無機酸(例えば、リン酸、硫酸、チオ硫酸)の酸性エステル基(ホスファト基、スルファト基、又はチオスルファト基)、更には、それぞれ1〜4個の炭素原子のアルキル基を有するジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ)である。好ましくは、Zは、ビニル又はβ−クロロエチルであり、更に特に好ましくは、β−スルファトエチルである。−SOZ基は、部分的にビニルスルホニルとして、且つ部分的に−SOCHCHZとして、好ましくはβ−スルファトエチルスルホニルとして存在していてもよい。この場合、ビニルスルホニル基を有する各染料の分率は、特には、染料の各全量を基準にして約30mol%以下である。
【0007】
(C〜C)−アルキル基R、R、又はRは、線状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、又はtert−ブチルである。メチル又はエチルが好ましい。Rは、好ましくは、−COOR又は−CONRであり、ここで、R、R、及びRは、特には水素である。
【0008】
アルカリ金属Mは、特には、リチウム、ナトリウム、又はカリウムであり、等価量のアルカリ土類金属としてのMは、特には、等価量のカルシウムである。好ましくは、Mは、水素又はナトリウムである。
【0009】
本発明に係る式(1)で示される染料は、単独で使用可能であるが、特には、他の反応性染料との混合物で使用される。
【0010】
従って、本発明はまた、式(1)で示される染料と少なくとも1種の更なる繊維反応性染料とを含む染料混合物を提供する。
【0011】
式(1)で示される染料との混合物で使用可能な好適な繊維反応性染料としては、原理的には、すべての公知の繊維反応性染料が挙げられる。これらの染料は、当業者に公知であり、例えば、British Society of Dyers and Colourists及びAmerican Association of Textile Chemistsにより出版されたColour Index並びに他の関連する著作物に網羅的に記載されている。式(1)で示される染料と更なる繊維反応性染料との混合比(重量%)は、広い許容範囲内で変更可能であり、例えば、1:99〜99:1に設定される。好ましい混合比は、5:95〜95:5、10:90〜90:10、20:80〜80:20、25:75〜75:25、30:70〜70:30、40:60〜60:40、45:55〜55:45、及び50:50である。
【0012】
式(1)で示される染料との混合物で使用可能な好ましい繊維反応性染料は、式(2)
【化2】

〔式中、
Aは、
【化3】

であり、
は、水素、メチル、メトキシ、又はスルホであり、
は、水素、アセチル、又はカルボニルアミドであり、
nは、0又は1であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
M及びZは、以上に明記された定義を有し、且つ
Qは、式(a)、(b)、又は(c)
【化4】

{ここで、
Xは、ハロ、好ましくはフルオロ又はクロロであり、
及びRは、水素、メチル、又はエチルであり、且つ
M及びZは、以上に明記されたように定義される}
で示される基である〕
で示される染料である。
【0013】
式(2)で示される特に好ましい染料は、式(2a)〜(2h)
【化5】

【化6】

〔式中、Mは、いずれの場合も、以上に明記されたように定義され、好ましくは水素又はナトリウムである〕
で示される染料である。
【0014】
式(1)で示される染料と式(2)で示される染料との混合物は、特には、黄色〜橙色に染色する混合物である。式(1)で示される染料と式(2)で示される染料との混合比(重量%)は、特には、1:99〜50:50である。10:90、20:80、及び30:70は、典型的な混合比である。
【0015】
式(1)で示される染料との混合物で使用可能な更なる好ましい繊維反応性染料は、式(3)
【化7】

〔式中、
及びRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシであり、且つ
pは、0又は1であり、且つ
Z及びMは、以上に明記されたように定義される〕
で示される染料である。
【0016】
式(3)で示される特に好ましい染料は、式(3a)〜(3d)
【化8】

〔式中、Mは、いずれの場合も、以上に明記されたように定義され、好ましくは水素又はナトリウムである〕
で示される染料である。
【0017】
式(1)で示される染料との混合物で使用可能な更なる好ましい繊維反応性染料は、式(4)
【化9】

〔式中、
10及びR11は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシであり、且つ
qは、0又は1であり、且つ
Z及びMは、以上に明記されたように定義される〕
で示される染料である。
【0018】
式(4)で示される特に好ましい染料は、式(4a)〜(4c)
【化10】

〔式中、Mは、いずれの場合も、以上に明記されたように定義され、好ましくは水素又はナトリウムである〕
で示される染料である。
【0019】
本発明に係る特に好ましい染料混合物は、式(3)で示される染料及び/又は式(4)で示される染料と一緒に式(1)で示される染料を含み、且つ濃黒色に染色する。
【0020】
式(1)、(3)、及び(4)で示される染料を含む濃黒色染色混合物は、特には、5〜40重量%の量の式(1)で示される染料と、50〜90重量%の量の式(3)で示される染料と、5〜40重量%の量の式(4)で示される染料と、を含む。20:60:20、15:70:15、及び20:65:15は、典型的な混合比(重量%)である。
【0021】
本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、固体又は液体(溶解状態)の形態の調製物として存在可能である。固体の形態では、それらは、水溶性染料、特には繊維反応性染料の場合に慣用される電解質塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又は硫酸ナトリウムを一般に含有し、更には、商用の染料で慣用される助剤、例えば、水性溶液のpHを3〜7に設定可能な緩衝物質(例えば、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、又はリン酸水素二ナトリウム)、少量の乾燥剤等を含有していてもよく、又は液体水性溶液(捺染糊で慣用されるタイプの増粘剤を成分として含む)の状態で存在する場合、それらはまた、これらの調製物の長寿命を確保する物質、例えば防黴剤を含有していてもよい。
【0022】
一般的には、本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、標準化剤としても知られる電解質塩を20〜85重量%(染料粉末/調製物を基準にして)含有する染料粉末として存在する。これらの染料粉末は、染料粉末を基準にして10重量%以下の全量で以上に挙げた緩衝物質を更に含有していてもよい。本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物が水性溶液中に存在する場合、これらの水性溶液中の全染料含有率は、約50重量%以下、例えば5〜50重量%である。また、これらの水性溶液中の電解質塩含有率は、水性溶液を基準にして好ましくは10重量%未満である。水性溶液(液体調製物)は、一般的には10重量%以下、好ましくは2重量%以下の量で以上に挙げた緩衝物質を含有可能である。
【0023】
本発明に係る式(1)で示される染料は、従来方式により、例えば、当業者の熟知する方式で適切な成分を用いて且つ必要な割合を用いて慣用的なジアゾ化反応及びカップリング反応を利用して合成により、取得可能である。
【0024】
従って、本発明に係る式(1)で示される染料は、式(5)
【化11】

〔式中、Rは、以上に明記されたように定義される〕
で示される化合物をジアゾ化し、続いて、式(6)
【化12】

〔式中、Y及びMは、以上に明記されたように定義される〕
で示される化合物にカップリングさせることにより、取得可能である。
【0025】
本発明に係る式(1)で示される化学的に生成された染料のその合成されたままの溶液からの分離は、以下の一般に知られている方法により、例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウム等のような電解質を利用して反応媒体から沈殿させるか又は反応溶液を蒸発若しくはスプレー乾燥させるかのいずれかにより実施可能であり、その場合、この反応溶液に緩衝物質を添加することが可能である。
【0026】
式(5)及び(6)で示される化合物は、公知であり、かつ当業者に公知の方法により調製可能である。
【0027】
本発明に係る染料混合物は、当業者に公知の慣用的手順により、例えば、染料の粉末若しくは顆粒の形態であってもよいし又は慣用的助剤を依然として含んでいる可能性のある合成されたままの溶液等の水性溶液の形態であってもよい個々の染料の機械的混合により調製可能である。
【0028】
本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、有用な適用性を有し、カルボキサミド基及び/又はヒドロキシル基を含む材料を染色及び捺染するために使用可能である。挙げられた材料は、紙や皮革のようなシート状構造の形態、ポリアミドフィルム等のようなフィルムの形態、ポリアミドやポリウレタン等のバルク組成物の形態でありうる。しかしながら、特には、それらは、挙げられた材料の繊維の形態で存在する。従って、本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、任意の種類のセルロース系繊維材料を染色及び捺染するために使用される。それらはまた、好ましくは、ポリアミド繊維の染色若しくは捺染又はポリアミド繊維と綿繊維若しくはポリエステル繊維とで構成された混紡布の染色若しくは捺染に有用である。テキスタイル、紙、又は他の材料をインクジェットプロセスにより捺染するために本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物を使用することも可能である。
【0029】
従って、本発明はまた、カルボキサミド基及び/又はヒドロキシル基を含む材料を染色又は捺染するための本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物の使用、もっと正確に言えば、本発明に係る式(1)で示される1種以上の染料及び本発明に係る染料混合物を着色剤として使用することにより従来方式でそのような材料を染色又は捺染する方法を提供する。本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、これらの材料上、好ましくは繊維材料上に非常に良好な堅牢性を有する染色物を提供する。
【0030】
有利には、本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物の合成されたままの溶液は、適切であれば緩衝物質の添加後及び適切であれば濃縮後又は希釈後、染色用液体調製物として直接使用可能である。
【0031】
本発明に関連する繊維材料又は繊維は、特には、織布若しくはヤーンとして又は綛若しくは巻き取られたパッケージの形態で存在可能なテキスタイル繊維である。
【0032】
カルボキサミド基を含む材料の例は、合成若しくは天然のポリアミド若しくはポリウレタン(特には繊維の形態のもの)、例えば、羊毛又は他の獣毛、絹、皮革、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−11、又はナイロン−4である。
【0033】
ヒドロキシル基を含む材料は、天然起源又は合成起源のもの、例えば、セルロース繊維材料若しくはその再生品又はポリビニルアルコールである。セルロース繊維材料は、好ましくは綿繊維、更には、リネン繊維、麻繊維、ジュート繊維、ラミー繊維のような他の植物繊維である。再生セルロース繊維は、ステープルビスコース又はフィラメントビスコースである。
【0034】
本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、水溶性染料、特には繊維反応性染料の公知の適用技術に従って、挙げられた材料上、特には挙げられた繊維材料上に適用し固着させることが可能である。
【0035】
セルロース繊維上では、非常に良好なカラーイールドを有する染色物は、種々の酸結合剤及び適切であれば塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムのような中性塩を用いて低浴比から更には高浴比から吸尽法により得られる。浴比は、広い範囲内で選択可能であり、例えば5:1〜100:1、好ましくは5:1〜30:1である。染色は、好ましくは40〜105℃の温度で、適切であれば大気圧超の圧力下130℃以下の温度で、且つ適切であれば慣用的染色助剤の存在下で、水性浴中で行われる。
【0036】
実施可能な一手順では、材料を温浴中に導入し、浴を所望の温度に徐々に加熱し、そして染色操作を終了する。実際の染色温度に到達した後、所要の場合に限り、染料の吸尽を促進する中性塩を浴に添加することも可能である。
【0037】
パディングプロセスは、同様に、セルロース繊維上で優れたカラーイールド及び非常に良好なカラービルドアップ性を提供する。この場合、染料は、室温若しくは高温(例えば約60℃以下)でバッチングすることにより、スチーミングにより、又は乾熱を利用して、従来方式で固着可能である。
【0038】
同様に、セルロース繊維に対する慣用的捺染プロセスでは、一工程でこの場合、例えば、重炭酸ナトリウム若しくは何か他の酸結合剤を含む捺染糊を用いて捺染してから100〜103℃でスチーミングすることにより、実施可能であるか、或いは、二工程で例えば、中性若しくは弱酸性の捺染糊を用いて捺染し、次に、捺染された材料を高温電解質含有アルカリ浴に通すか又はアルカリ性電解質含有パディング液でオーバーパディングしてからアルカリオーバーパディングされた材料をバッチング若しくはスチーミング若しくは乾熱処理するかのいずれかで固着させることにより、実施可能であり、明瞭な輪郭及び鮮やかな白地を有する鮮明色捺染物が得られる。捺染結果は、固着条件の変動による影響をほとんど受けない。
【0039】
慣用的熱固着プロセスに従って乾熱を利用して固着させる場合、120〜200℃の熱風が使用される。101〜103℃の慣用的スチームの他に、160℃以下の温度の過熱スチーム又は高圧スチームを使用することも可能である。
【0040】
セルロース繊維上への染料の固着を行う酸結合剤は、例えば、アルカリ金属更にはアルカリ土類金属と無機酸若しくは有機酸との水溶性塩基性塩又は加熱時にアルカリを遊離する化合物である。特に好適なのは、アルカリ金属水酸化物又は弱酸性〜中酸性の無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩であり、この場合、好ましいアルカリ金属化合物は、ナトリウム化合物又はカリウム化合物である。そのような酸結合剤は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ギ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、水ガラス、又はリン酸三ナトリウムである。
【0041】
本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物は、よく知られた染色プロセス及び捺染プロセスで適用した場合、卓越した色強度及びセルロース繊維材料上のビルドアップ曲線の急勾配の経路が得られる点で注目に値する。セルロース繊維材料上で本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物を用いて取得可能な染色物及び捺染物は更に、良好な耐光堅牢性、特には良好な耐湿潤堅牢性(例えば、洗濯、縮絨、水、海水、クロス染色、並びに酸性及びアルカリ性の汗に対する堅牢性)、その他にはプリーティング、ホットプレッシング、及びラビングに対する良好な堅牢性を有する。
【0042】
濯ぎにより非固着染料部分を除去する慣用的後処理を行った後に得られる染色物及び捺染物は更に、特には冷水への溶解性が良好であることから非固着染料部分が容易に洗浄除去されることに起因して、優れた耐湿潤堅牢性を呈する。
【0043】
更に、本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物はまた、羊毛の繊維反応性染色に使用可能である。非フェルト化仕上げ又は低フェルト化仕上げ(例えば、H.Rath著,Lehrbuch der Textilchemie,Springer−Verlag刊,第3巻(1972年),295−299頁、特にHercosettプロセスによる仕上げ(298頁)、J.Soc.Dyers and Colourists 1972年,93−99頁、及び1975年,33−44頁を参照されたい)の施された羊毛は、非常に良好な堅牢性を持たせて染色可能である。羊毛上への染色プロセスは、この場合、酸性媒体から従来方式で行われる。例えば、所望のpHを得るために、酢酸及び/若しくは硫酸アンモニウム又は酢酸又は酢酸アンモニウム若しくは酢酸ナトリウムを染浴に添加することが可能である。許容しうる均染度の染色物を得るために、慣用的均染剤、例えば、シアヌル酸クロリドと3倍モル量のアミノベンゼンスルホン酸及び/若しくはアミノナフタレンスルホン酸との反応生成物に基づく均染剤又は例えばステアリルアミンとエチレンオキシドとの反応生成物に基づく均染剤を添加することが望ましい。例えば、本発明に係る染料を、好ましくは、最初に、pH制御下で約3.5〜5.5のpHを有する酸性染浴からの吸尽プロセスに付し、次に、染色時間の終点に向かってpHを中性領域に、場合により8.5のpH以下の弱アルカリ性領域に変化させることにより、特には非常に濃色の染色物が得られるように、本発明に係る混合物の染料と繊維と間に十分な反応結合を生成させる。それと同時に、反応結合されなかった染料部分を除去する。
【0044】
本明細書中に記載の手順はまた、他の天然のポリアミド又は合成のポリアミド又はポリウレタンで構成された繊維材料の染色物の製造に適合する。これらの材料は、文献に記載の及び当業者に公知の慣用的な染色プロセス及び捺染プロセスを用いて染色可能である(例えば、H.−K.Rouette,Handbuch der Textilveredlung,Deutscher Fachverlag GmbH,Frankfurt/Mainを参照されたい)。一般的には、染色される材料を約40℃の温度の浴に導入し、そこで暫くの間攪拌し、次に、染浴を所望の弱酸性pH、好ましくは弱酢酸酸性pHに調整し、そして実際の染色を60〜98℃の温度で行う。しかしながら、沸騰状態で又は密閉染色装置中で106℃以下の温度で染色を行うことも可能である。本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物の水への溶解性が非常に良好であるので、それらはまた、慣用的連続染色プロセスで有利に使用可能である。本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物の色強度は、非常に高い。
【0045】
本発明はまた、本発明に係る式(1)で示される1種以上の染料又は本発明に係る染料混合物を含む、インクジェットプロセスによるディジタルテキスタイル捺染のためのインクを提供する。
【0046】
本発明に係るインクは、インクの全重量を基準にして、例えば0.1〜50重量%の量で、好ましくは1〜30重量%の量で、より好ましくは1〜15重量%の量で、本発明に係る式(1)で示される染料及び本発明に係る染料混合物を含有する。連続フロープロセスで使用されるインクの場合、電解質を添加することにより0.5〜25mS/mの導電率に設定可能である。有用な電解質としては、例えば、硝酸リチウム又は硝酸カリウムが挙げられる。
【0047】
本発明に係るインクは、1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の全量で有機溶媒を含有可能である。好適な有機溶媒は、例えば、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、ペンチルアルコール等、多価アルコール類、例えば、1,2−エタンジオール、1,2,3−プロパントリオール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2,3−プロパンジオール、ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、D,L−1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−オクタンジオール等、ポリアルキレングリコール類、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、2〜8個のアルキレン基を有するアルキレングリコール類、例えば、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、チオグリコール、チオジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル等、ポリアルキレングリコールエーテル類、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールグリセロールエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等、アミン類、例えば、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−ホルミルエタノールアミン、エチレンジアミン等、ウレア誘導体類、例えば、ウレア、チオウレア、N−メチルウレア、N、N’−イプシロン−ジメチルウレア、エチレンウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、N−アセチルエタノールアミン等、アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトアミド等、ケトン類又はケトアルコール類、例えば、アセトン、ジアセトンアルコール等、環状エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン等、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−ブトキシエタノール、ベンジルアルコール、2−ブトキシエタノール、ガンマブチロラクトン、イプシロン−カプロラクタム、更には、スルホラン、ジメチルスルホラン、メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ジメチルスルホン、ブタジエンスルホン、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、N−シクロヘキシルピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、1,3−ビスメトキシメチルイミダゾリジン、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−プロポキシエトキシ)エタノール、ピリジン、ピペリジン、ブチロラクトン、トリメチルプロパン、1,2−ジメトキシプロパン、ジオキサン、エチルアセテート、エチレンジアミンテトラアセテート、エチルペンチルエーテル、1,2−ジメトキシプロパン、トリメチルプロパンである。
【0048】
本発明に係るインクは、慣用的添加剤、例えば、20〜50℃の温度範囲内で粘度を1.5〜40.0mPasの範囲内に設定するための粘度調整剤を更に含有していてもよい。好ましいインクは、1.5〜20mPasの粘度を有し、特に好ましいインクは、1.5〜15mPasの粘度を有する。有用な粘度調整剤としては、レオロジー添加剤、例えば、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン、又はそれらのコポリマー、ポリエーテルポリオール、会合性増粘剤、ポリウレア、ポリウレタン、ナトリウムアルギネート、変性ガラクトマンナン、ポリエーテルウレア、ポリウレタン、非イオン性セルロースエーテル等が挙げられる。更なる添加剤として、本発明に係るインクは、必要であれば使用されるプロセス(サーマル技術又はピエゾ技術)の関数として適合化される20〜65mN/mの表面張力に設定するための界面活性物質を含んでいてもよい。有用な界面活性物質としては、例えば、すべての界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、ブチルジグリコール又は1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。インクは、慣用的添加剤、例えば、菌類及び細菌類の増殖を阻害するための物質を、インクの全重量を基準にして0.01〜1重量%の量で更に含んでいてもよい。
【0049】
本発明に係るインクは、水中で成分を混合することにより従来方式で調製可能である。
【0050】
本発明に係るインクは、多種多様な前処理された材料、例えば、絹、皮革、羊毛、任意の種類のセルロース系繊維材料、又はポリウレタン、特にはポリアミド繊維を捺染するためのインクジェット捺染プロセスに有用である。本発明に係る捺染インクはまた、混紡布(例えば、綿、絹、又は羊毛とポリエステル繊維又はポリアミド繊維との混紡)中に存在する前処理されたヒドロキシル含有繊維又はアミノ含有繊維を捺染するのに有用である。捺染糊が既に反応性染料用の固着化学物質及び増粘剤をすべて含有している従来のテキスタイル捺染とは対照的に、インクジェット捺染では、個別の前処理工程で助剤をテキスタイル基材に適用しなければならない。テキスタイル基材、例えば、セルロース繊維又は再生セルロース繊維、更には絹及び羊毛の前処理は、捺染前に水性アルカリ浴を用いて行われる。反応性染料を固着させるために、アルカリ、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等、アルカリ供与体、例えば、クロロ酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム等、ヒドロトロピー物質、例えば、ウレア等、還元防止剤、例えば、ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム等、更には、捺染インクを適用した時に可動性物質の流動を防止するための増粘剤、例えば、アルギン酸ナトリウム、変性ポリアクリレート、又は高エーテル化ガラクトマンナン等が必要である。これらの前処理試薬は、好適なアプリケーターを用いて(例えば、二本ロールパッド若しくは三本ロールパッドを用いて)、無接触スプレー処理技術を用いて、泡塗布を利用して、又は適切に適合化されたインクジェット技術を用いて、規定量でテキスタイル基材に均一に適用され、続いて乾燥される。捺染後、テキスタイル繊維材料は、120〜150℃で乾燥され、続いて固着される。反応性染料を用いて作製されたインクジェット捺染物の固着は、室温で行ってもよいし、或いは飽和スチームを用いて、過熱スチームを用いて、熱風を用いて、マイクロ波を用いて、赤外線を用いて、レーザー若しくは電子ビームを用いて、又は他の好適なエネルギー移動技術を用いて行ってもよい。一相固着プロセスと二相固着プロセスとは、次のように区別される。一相固着では、必要な固着化学物質は、既にテキスタイル基材上に存在する。二相固着では、この前処理は不要である。固着は、単にアルカリを必要とするにすぎず、アルカリは、インクジェット捺染に続いて中間乾燥を行うことなく固着プロセス前に適用される。ウレアや増粘剤のような更なる添加剤は必要ではない。固着に続いて、捺染物の後処理が行われる。この後処理は、良好な堅牢性、高い輝度、及び完璧な白地を得るための前提条件である。本発明に係るインクを用いて作製された捺染物は、酸性領域だけでなくアルカリ性領域においても高い色強度及び高い繊維−染料結合安定性を有し、而も、良好な耐光堅牢性及び非常に良好な耐湿潤堅牢性、例えば、洗濯、水、海水、クロス染色、及び汗に対する堅牢性を有すると共に、プリーティング、ホットプレッシング、及びラビングに対しても良好な堅牢性を有する。
【0051】
これ以降の実施例は、本発明を例示する役割を果たす。部及びパーセントは、特に明記されていない限り重量基準である。重量部と体積部との関係は、キログラムとリットルとの関係と同様である。式により実施例に記述された化合物は、ナトリウム塩の形態で示されている。何故なら、それらは、一般的には、それらの塩、好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩の形態で調製及び単離され、そしてそれらの塩の形態で染色に使用されるからである。これ以降の実施例に記載の出発化合物は、遊離酸の形態で、更にはそれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩又はカリウム塩の形態で合成に使用可能である。
【実施例】
【0052】
実施例1
a) 13.7部の3−アミノ安息香酸を100部の水に導入する。20部の濃塩酸及び100部の氷を添加し、30分間かけて20部の水中の7部の亜硝酸ナトリウムの溶液を滴下する。これに続いて、0〜5℃で1時間撹拌する。過剰の亜硝酸塩をアミドスルホン酸で分解する。
b) 56部の2,4−ジアミノ−5−[2−スルホ−4−(2−スルホオキシエタンスルホニル)フェニルアゾ]ベンゼンスルホン酸を6〜7のpHの300部の水に溶解させ、20%濃度の炭酸ナトリウム溶液を用いて6〜7のpHに保持しながら、a)で調製されたジアゾ化合物を滴下する。温度は20〜25℃であり、反応の終了時まで撹拌を継続する。最後に、得られた反応混合物を減圧下で乾燥させる。
得られた染料(λmax=430nm)は、式(1a)
【化13】

に一致し、綿を橙色色調に染色する。
【0053】
実施例2
実施例1の3−アミノ安息香酸を13.6部の3−アミノベンズアミドに置き換えて実施例1の場合と同じように進行させることにより、式(1b)
【化14】

で示される染料を得る。(λmax=427nm)。
【0054】
実施例3
実施例1の3−アミノ安息香酸を3−アミノベンゾニトリルに置き換えて実施例1の場合と同じように進行させることにより、式(1c)
【化15】

で示される染料を得る。(λmax=421nm)。
【0055】
一般式(1d)〔Dの定義は表中に明記された通りである〕で示される実施例4〜15は、実施例1の場合と同じように調製可能である。
【化16】

【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
実施例16
実施例1に従って得られた2部の染料及び50部の塩化ナトリウムを999部の水に溶解させ、5部の炭酸ナトリウム、0.7部の水酸化ナトリウム(32.5%水性溶液の形態)、及び適切であれば1部の湿潤剤を添加する。この染浴に100gの織成綿布を入れる。最初に、染浴の温度を25℃で10分間保持し、次に、30分間かけて最終温度(40〜80℃)に上昇させ、そして最終温度で更に60〜90分間保持する。その後、最初に、染色布を水道水で2分間濯ぎ、次に、脱イオン水で5分間濯ぐ。1部の50%酢酸を含有する1000部の水性溶液中40℃で染色布を10分間中和する。それを70℃の脱イオン水で再び濯ぎ、次に、洗濯用洗剤を用いて沸騰状態で15分間洗浄除去し、もう一度濯ぎ、そして乾燥させて非常に良好な堅牢性を有する橙色染色物を提供する。実施例2〜15に従って得られた染料を用いて記載のプロセスを反復した場合、類似の結果が得られる。
【0059】
実施例17
実施例1に従って得られた4部の染料及び50部の塩化ナトリウムを998部の水に溶解させ、5部の炭酸ナトリウム、2部の水酸化ナトリウム(32.5%水性溶液の形態)、及び適切であれば1部の湿潤剤を添加する。この染浴に100gの織成綿布を入れる。処理の残りの部分を実施例16に報告されるように行って、高い色強度で非常に良好な堅牢性を有する橙色染色物を提供する。実施例2〜15に従って得られた染料を用いて記載のプロセスを反復した場合、類似の結果が得られる。
【0060】
実施例18
35g/lの無水炭酸ナトリウム、100g/lのウレア、及び150g/lの低粘度アルギン酸ナトリウム溶液(6%)を含有する浴を用いてマーセル化綿よりなるテキスタイル布にパディングし、次に、乾燥させる。含浸率は70%である。こうして前処理されたテキスタイルに、ドロップオンデマンド(バブルジェット)型インクジェット捺染ヘッドを用いて、
2%の実施例1の染料
20%のスルホラン
0.01%のMergal K9N
77.99%の水
を含有する水性インクを捺染する。捺染物を十分に乾燥させる。102℃の飽和スチームを利用してそれを8分間固着させる。次に、捺染物を加温下で濯ぎ、95℃の熱水による堅牢化洗浄に付し、加温下で濯ぎ、次に、乾燥させる。その結果、優れた耐使用堅牢性を有する橙色捺染物が得られる。
【0061】
実施例19
35g/lの無水炭酸ナトリウム、50g/lのウレア、及び150g/lの低粘度アルギン酸ナトリウム溶液(6%)を含有する浴を用いてマーセル化綿よりなるテキスタイル布にパディングし、次に、乾燥させる。含浸率は70%である。こうして前処理されたテキスタイルに、ドロップオンデマンド(バブルジェット)型インクジェット捺染ヘッドを用いて、
8%の実施例1の染料
20%の1,2−プロパンジオール
0.01%のMergal K9N 及び
71.99%の水
を含有する水性インクを捺染する。捺染物を十分に乾燥させる。102℃の飽和スチームを利用してそれを8分間固着させる。次に、捺染物を加温下で濯ぎ、95℃の熱水による堅牢化洗浄に付し、加温下で濯ぎ、次に、乾燥させる。その結果、優れた耐使用堅牢性を有する橙色捺染物が得られる。
【0062】
実施例20
35g/lの無水炭酸ナトリウム、100g/lのウレア、及び150g/lの低粘度アルギン酸ナトリウム溶液(6%)を含有する浴を用いてマーセル化綿よりなるテキスタイル布にパディングし、次に、乾燥させる。含浸率は70%である。こうして前処理されたテキスタイルに、ドロップオンデマンド(バブルジェット)型インクジェット捺染ヘッドを用いて、
8%の実施例1の染料
15%のN−メチルピロリドン
0.01%のMergal K9N 及び
77.99%の水
を含有する水性インクを捺染する。捺染物を十分に乾燥させる。102℃の飽和スチームを利用してそれを8分間固着させる。次に、捺染物を加温下で濯ぎ、95℃の熱水による堅牢化洗浄に付し、加温下で濯ぎ、次に、乾燥させる。その結果、優れた耐使用堅牢性を有する橙色捺染物が得られる。
【0063】
比較例1
式(1a)、(1b)、及び(1c)で示される染料を用いて、更には、韓国特許第20020038989号明細書に記載される式(a)
【化17】

及び式(b)
【化18】

で示される染料を用いて、標準染色濃度で綿トリコット上で得られた染色物の耐光堅牢性を調べた(DIN 54004)。評価は、1が最悪の耐光堅牢性及び6が最良の耐光堅牢性である耐光堅牢性スケールに基づくものであった。以下の値が得られた。
【0064】
【表3】

【0065】
従って、驚くべきことに、式(1a)、(1b)、及び(1c)で示される本発明の染料の耐光堅牢性は、先行技術の染料(a)及び(b)の場合よりもかなり良好であることが分かる。
【0066】
比較例2
式(1a)で示される染料を用いて更には韓国特許第20020038989号明細書に記載の式(a)で示される染料を用いて得られた染色物のDIN EN ISO105−C06−C2「60℃耐洗濯堅牢性」を調べた。この堅牢性試験では、隣接する綿布の汚染が評価される。使用した評価スケールによれば、5は、汚染が全くないことを表し、1は、実質的な汚染を表す。以下の結果が得られた。
【0067】
【表4】

【0068】
従って、非固着染料の染色後ウォッシュオフは、染料(a)の場合よりも染料(1a)の場合の方がかなり良好であることが分かる。
【0069】
以下の実施例21〜30は、明記された混合比で明記された染料の機械的混合を行うことにより調製された本発明の染料混合物に関する。染料混合物は、黄色染色物又は黄金色染色物を生成する。
【0070】
【表5】

【0071】
以下の実施例31〜47は、明記された混合比で明記された染料の機械的混合を行うことにより調製された更なる本発明の染料混合物に関する。
【0072】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

〔式中、
Yは、−CH=CH又は−CHCHZであり、ここで、
Zは、アルカリ脱離性基であり、
Rは、−COOR基、−CN基、又は−CONR基であり、ここで、
は、M又は(C〜C)−アルキルであり、
及びRは、互いに独立して、水素又は(C〜C)−アルキルであり、且つ
Mは、水素、アンモニウム、アルカリ金属、又は等価量のアルカリ土類金属である〕
で示されるアゾ染料。
【請求項2】
Yが、ビニル、β−クロロエチル、又はβ−スルファトエチルである、請求項1に記載のアゾ染料。
【請求項3】
Rが、−COOM又は−CONH(ここで、Mは、水素又はナトリウムである)である、請求項1又は2に記載のアゾ染料。
【請求項4】
請求項1に記載の式(1)で示される染料と、少なくとも1種の更なる繊維反応性染料と、を含む、染料混合物。
【請求項5】
式(2)
【化2】

〔式中、
Aは、
【化3】

であり、
は、水素、メチル、メトキシ、又はスルホであり、
は、水素、アセチル、又はカルボニルアミドであり、
nは、0又は1であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
M及びZは、請求項1に明記されたように定義され、且つ
Qは、式(a)、(b)、又は(c)
【化4】

{ここで、
Xは、ハロ、好ましくはフルオロ又はクロロであり、
及びRは、水素、メチル、又はエチルであり、且つ
M及びZは、請求項1に明記されたように定義される}
で示される基である〕
で示される染料を更なる繊維反応性染料として含む、請求項4に記載の染料混合物。
【請求項6】
式(3)
【化5】

〔式中、
及びRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシであり、且つ
pは、0又は1であり、且つ
Z及びMは、請求項1に明記されたように定義される〕
で示される染料、及び/又は
式(4)
【化6】

〔式中、
10及びR11は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、メトキシ、又はエトキシであり、且つ
qは、0又は1であり、且つ
Z及びMは、請求項1に明記されたように定義される〕
で示される染料
を更なる繊維反応性染料として含む、請求項4に記載の染料混合物。
【請求項7】
式(5)
【化7】

〔式中、Rは、請求項1に明記されたように定義される〕
で示される化合物をジアゾ化し、続いて、式(6)
【化8】

〔式中、Y及びMは、請求項1に明記されたように定義される〕
で示される化合物上へのカップリングを行うことを含む、請求項1に記載のアゾ染料の製造プロセス。
【請求項8】
個々の染料を機械的に混合することを含む、請求項4に記載の染料混合物の製造プロセス。
【請求項9】
ヒドロキシ及び/又はカルボキサミド含有材料を染色又は捺染する方法であって、1種以上の染料を溶解形態で前記材料に適用することと、熱を利用して若しくはアルカリ剤を用いて又はその両方の手段を利用して前記1種若しくは複数種の染料を前記材料上に固着させることと、を含み、請求項1に記載のアゾ染料又は請求項4に記載の染料混合物を使用することを含む、上記方法。
【請求項10】
請求項1に記載のアゾ染料又は請求項4に記載の染料混合物を含む、インクジェットプロセスによるディジタルテキスタイル捺染のためのインク。

【公表番号】特表2012−511591(P2012−511591A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538947(P2011−538947)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065682
【国際公開番号】WO2010/066570
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(310020183)ダイスター・カラーズ・ドイッチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (11)
【Fターム(参考)】