説明

繊維強化熱可塑性樹脂

本発明は、エアレイドセルロース繊維材料を含む繊維強化熱可塑性樹脂、ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維強化熱可塑性樹脂、ならびにそれから製造される、または製造可能な成形部材に関する。さらに本発明は、このような繊維強化熱可塑性樹脂の製造のためのエアレイドセルロース繊維材料の使用に関する。
【0002】
発明の背景
熱可塑性樹脂ベースの繊維強化複合材料は、本質的な質量低減と、それ以外の場合は多くの点で比較可能な機械的特性値を約束するため、多くの技術分野において金属材料に代わってますます使用される。複合材料はそのために熱可塑性樹脂母材の他に、高いレベルで機械的特性値への影響、とりわけ複合材料の引張強さ、および曲げ強さ、ならびに衝撃強さへ影響を与える繊維状成分を含む。繊維状成分としては、(i)無機材料、例えばガラス、炭素、およびホウ素から成る繊維、(ii)金属繊維、例えば鋼、アルミニウム、およびタングステンから成る金属繊維、(iii)合成有機繊維、例えば芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアクリラート、およびポリ塩化ビニルから成る合成有機繊維、または(iv)天然由来の繊維、例えば麻、および亜麻から成る繊維が使用される。その他の助剤および充填材が、複合材料に添加されていてもよい。
【0003】
実地で特に重要なのは、自動車製造、例えば自動車の内装仕上げにおけるガラス繊維強化熱可塑性樹脂の使用である。ただしガラス繊維の製造は、エネルギーの大量使用を必要とし、かつ基礎材料が生物由来ではないので、環境的観点から製造工程の持続性が批判される。さらには、材料の熱的分解の際にも通常一カ所のみのゴミ処理場に運ばれ得る大量の残渣が残留するので、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の廃棄処理は困難である。最終的にガラス繊維が高い摩耗性を有するので、材料の加工が熱可塑性樹脂のための通常の加工方法の範囲において困難になる。
【0004】
従って上記の欠点に基づいて、また一般的に材料特性の改善のために、現在可能な限り強く求められているのは、多くの技術的適用において主流の、補強成分としてのガラス繊維に代替することである。天然由来の有機繊維材料が、この関連においてその僅少な密度、およびそれと結びついた複合材料における質量低減、ならびに持続性およびより良好な廃棄処理のために特に魅力的である。
【0005】
DE10335139A1より、繊維強化成分として3〜10mmの長さの人工セルロース再生繊維を熱可塑性樹脂と混合する、繊維複合材料から成る構成部材の製造方法は公知である。得られた材料をベース材料として、軽量構成部材の製造に使用する。
【0006】
WO97/30838A1は、天然セルロース繊維材料、ここでは木材粉と熱可塑性樹脂からの繊維複合材料を記載している。この素材を直接構成部材へと押出する。
【0007】
しかしながら繊維強化成分としての天然繊維材料の使用には、ガラス繊維成分で繊維強化された複合材料と比較して、生成する複合材料の機械的特性値はより劣る。さらには天然繊維、例えば亜麻、麻、または木材パーティクルのような天然繊維もまた、組成が変動する。栽培地域、栽培時期、貯蔵、場合によっては前処理によって、材料の各バッチは異なる。そのためまた、製造されるべき繊維強化熱可塑性樹脂の機械的特性値も変化してしまい、このことは技術的使用を困難にする。この材料はさらには、漸進的な分解過程のためにその形態と外観を変化させ得る。最終的に天然生成物中の天然の硫黄含分、および窒素含分が望ましくない匂い物質の放出につながり得る。
【0008】
WO03/104309A1は、パルプからのセルロース繊維が添加されている繊維複合材料を記載しており、その際使用されるセルロースは、80%超の純度を有するα−セルロースである。ポリマー母材としては、200℃未満の溶融点を有するポリマー、例えばポリプロピレンが役立つ。この複合材料はさらには、少なくとも1の水溶性結合剤、少なくとも1の潤滑剤、および少なくとも1の接着促進剤を含む。天然繊維に比較してセルロース繊維の使用は、得られた複合材料の剛性と衝撃強さが高められており、セルロース繊維の包括的な利用可能性が存在し、かつ出発生成物の粘稠度と複合材料の粘稠度が高められているという利点を有する。
【0009】
本発明の課題は、天然由来の有機材料の使用と結びついている利点を利用し、複合材料の加工関連特性と使用関連特性をさらに改善することである。
【0010】
本発明による解決手段
この課題は、
a)エアレイドセルロース繊維材料を
b)熱可塑性樹脂母材の中に
含む、繊維強化熱可塑性樹脂によって解決される。
【0011】
本発明によれば、前記分散物(Streugut)は従って繊維強化成分としてエアレイドの形でセルロース繊維材料を含む。この繊維材料の使用は、この加工工程に供されていない、繊維パルプから成るセルロース繊維の使用に比較して、および木粉が添加された熱可塑性樹脂と比較しても、衝撃強さと切欠衝撃強さの向上、ならびに引張強さと曲げ強さの向上につながることを示している。この挙動に対する理由は未だ完全には説明されていない。フリースの製造が個々のセルロース繊維間の繊維結合につながり、この繊維形成は後段階でのフリースの破砕、または加工においても少なくとも部分的に維持されていると考えられる。
【0012】
エアレイドセルロース繊維材料とは、本発明の意味においてはセルロース繊維、とりわけ硫酸法または亜硫酸法に従って繊維パルプから製造された繊維セルロースと、相応するエアレイドフリースのスクラップからのセルロース繊維を含む材料である。
【0013】
エアレイドフリースの製造のために、繊維パルプを機械的にハンマーミルで分離する。この繊維を空気流を介して不規則にベルト上に堆積させながら、平面体を形成する(エアレイドウェブ形成)。それに引き続いて繊維の結合を水性分散液(例えばポリアクリラート、ポリビニルアセタート、エチレンビニルアセタート、スチレン−ブタジエン、および他のラテックス)を用いた接着によって、結合剤繊維の熱処理によって、または超音波か高周波を用いた処理によって行うことができる。フリースの密度はローラー圧の制御、および温度作用の制御によって調整することができる。エアレイド法の詳細についてはとりわけ、特許US4,494,278、US5,527,171、およびUS4,640,810から読み取ることができ、これらの内容はここで開示目的のために完全に引き合いに出されている。
【0014】
特に好ましくは繊維強化成分として、リグニンを含まない繊維パルプからの、エアレイド工程に従って製造されたフリースの破砕によって得られる分散物を使用する。破砕とは本発明の意味においては、フリースの機械的断片化を含む。加工されるエアレイドフリースは、破砕前に好適には長さ加重(laengengewichtet)平均0.5〜5mmの範囲の繊維長、特に好ましくは2〜3mmの範囲の繊維長を有する。長さ加重繊維長は、関連する長さの二乗を掛けたすべての繊維の総計を、関連する長さを掛けたすべての繊維の総計で割った商として得られる(測定法:ISO 16065−1基準、2001−09、繊維素材、自動光学分析による繊維長の測定−第一部:偏光による方法)。この繊維長の記載は、破砕されたエアレイドセルロース繊維材料の長さではなく、セルロース繊維の平均長に対する。凝集による経過後のエアレイドセルロース繊維材料の長さは一義的に測定できるものではないが、セルロース繊維の長さよりは確実に長い。
【0015】
エアレイドセルロース繊維材料の繊維成分が基本的に重要であるため、本発明の目的にとってはその他の成分は通常、二次的に重要である。木粉が添加された熱可塑性樹脂(とりわけポリプロピレン)と比較して特に良好な衝撃強さ、および切欠衝撃強さは、エアレイドセルロース繊維材料の割合が繊維強化熱可塑性樹脂の全量に対して少なくとも25質量%である、本発明による繊維強化熱可塑性樹脂によって得られる。
【0016】
破砕されたエアレイドフリース自体だけではなく、好適にはエアレイドフリースの工業的製造および加工の残渣も回収し、破砕し、かつ本発明による意味で使用することも、とりわけ考えられる。フリース製造の残渣は、エアレイド工程後、または材料のその後の加工段階において、これまで破砕され、プレスされ、かつ廃棄されるかもしくは焼却される。しかしながら材料の焼却は焼却工程の品質管理を必要とするので、焼却は特別な装置内でのみ実施可能である。この欠点は、本発明によるエアレイドセルロース繊維材料の使用において省略される。さらにまた、この使用によって先に記載した本発明による熱可塑性樹脂の利点を達成することができる。従って、残渣を繊維強化成分として熱可塑性樹脂複合材料中で使用することもまた、特に好ましい。
【0017】
破砕されたエアレイドフリースの供給源として好適には、リグニンを含まない繊維パルプから成るエアレイドフリースを含む吸収性衛生用品の製造および加工の際に生じる残渣を使用する。吸収性衛生用品はとりわけ、女性用衛生用品、およびおむつを含む。
【0018】
セルロース繊維材料の主成分として特に好ましい繊維パルプは、工業的な全パルプ製造の特殊製品であり、酸性亜硫酸法、およびまたアルカリ亜硫酸(クラフト)法によって得ることができる。この際リグニン割合を事前に典型的に30%から10%に低下させる。ヘミセルロース割合もまた影響されるが、広く普及された硫酸法での処理後、亜硫酸法の場合に比べて約12%大きい。通常さらに、酸素(酸素脱リグニン)、過酸化水素増白剤(過酸化物増白剤)、およびオゾン漂白を用いた、白色度の向上のための脱リグニンの漂白工程がある。漂白に使用される塩素−酸素化合物はほとんど使わない。引き続き脱リグニンされた繊維パルプは、湿式抄紙法、脱水、乾燥、および巻取りまたは断裁によってプレート状から輸送可能な形態に変換される。この綿状の、容易に繊維に分解可能なパルプ(フラッフパルプ)を、エアレイド工程で良好にさらに加工することができる。
【0019】
繊維パルプとは、木材または他の植物繊維のパルプ化の際に生じる、微細繊維状の、主にセルロースから構成される物質の名称である。繊維パルプは精製された天然製品であり、室温で白色の繊維状の固体として存在し、かつ95質量%超のセルロース含有率を有する。
【0020】
繊維パルプはほぼリグニンを含まず、この際リグニンを含まないとは、本発明の意味においては、(乾燥)繊維パルプの全量に対して0.5質量%以下のリグニン含有率を有することである。リグニンを加水分解残渣として強熱残分の考慮のもと、セルロース成分の酸性加水分解によって測定することができる。さらには、リグニン特有の赤外線活性帯域を評価するNIR(近赤外線)スペクトル法が存在する。DIN54356に従って測定され、ISO 2469/ISO 2470に従ったスペクトル反射率の白色度(brightness)の記載による可視的特性として残留リグニン含分は通常75%超、より良好には85%超である。ISO302は、カッパー価としてパルプ化度の測定のため(係数0.15と結びついてリグニン%が出る)、酸化可能な成分の間接的な測定のためにあり、その際リグニンは実質的な割合を有するが、ヘキセンウロン酸によって数値に誤りが生じ得る。従ってカッパー価はこの際、実際のリグニン含分と比較して高過ぎる結果となる。
【0021】
繊維パルプの特性は、使用される木材の種類、およびまた使用される製造工程に依存しており、変動する。好適には長繊維の軟材−針葉樹−繊維パルプを有するエアレイドセルロース繊維材料を、熱可塑性樹脂の繊維強化成分として使用する。と言うのも、この例えばマツをベースとして製造された繊維は、比較的高い引っ張り強さを有するからである。高純度の、たいていヘミセルロースを含まない化学パルプとの根本的な差異として、繊維パルプにおけるヘミセルロース割合は、(乾燥)繊維パルプの全質量に対して約12%である。化学パルプは食料品工業、化粧品工業、および医薬品工業において、およびセルロース再生物、例えばビスコース、酢酸セルロース、リヨセル、セルロースカルバマートなどからの人工繊維の製造において使用される。
【0022】
セルロースはセロビオースのアイソタクチックなβ−1,4−ポリアセタールであり、かつ非分枝状の、非水溶性鎖を形成する。平均モル質量は50,000〜500,000である。α−セルロースとして、20℃で17.5%のNaOH、または24%のKOHに非溶解性の、平均重合度200超の成分が挙げられる。水酸化ナトリウムアルカリ溶液からメタノールで析出可能な成分が、β−セルロースと、析出できない成分、γ−セルロースになり、後者の二つはともにヘミセルロースとも言われる。セルロース繊維はベースとして、電子顕微鏡で見ることができるいわゆる基本フィブリル(Elementarfibrill)を基礎におく。複数の基本フィブリルはマイクロフィブリルとマクロフィブリルを形成する。この配置は天然セルロース繊維のみに見られるものであるが、ビスコースのような人工セルロース再生繊維には見られないものである。セルロースのための最も重要な原料供給源は、繊維産業にとっては木綿と靭皮植物、例えば亜麻、ラミー、ジュート、麻(現在非常に僅かな量)であり、製紙産業、およびパルプ産業にとっては、木材である。本発明による目的には、好適には木材、とりわけ針葉樹木材を使用する。
【0023】
熱可塑性樹脂は、使用温度以上で流動性移行領域を有する、使用温度で軟質または硬質の材料であるポリマーの名称である。熱可塑性樹脂は鎖状、または分枝鎖状のポリマーから構成されており、非晶質の熱可塑性樹脂の場合はガラス転移点(Tg)以上で、(部分)結晶質の熱可塑性樹脂の場合は溶融点(Tm)以上で原則的に流動性になる。これらの熱可塑性樹脂を、軟化された状態でプレス、押出、射出成形、または他の成形法によって成形部材へと加工することができる。重要な熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルニトリット、ポリアミド、ポリエステル、およびポリアクリラートである。異なる熱可塑性樹脂ポリマーの断裁屑も、ポリマー母材として使用することができる。熱可塑性樹脂はホモポリマーである必要はなく、コポリマー、ポリ重合体、ブロックポリマー、または他の方法で変性されたポリマーとして存在することができる。
【0024】
好適には熱可塑性樹脂母材はポリプロピレンであるか、またはポリプロピレンを断裁屑中に主要成分として含む、すなわちポリプロピレンが熱可塑性樹脂母材の50%以上の質量割合を有する。このポリマーベースの複合材料は、粒体形または半製品としても容易に加工可能であり、かつとりわけ自動車製造における適用のため、例えば内装仕上げのために有利な機械的特性値を示す。
【0025】
場合によっては引張強さまたは曲げ強さの向上のために、その都度目的とする適用に焦点を当てながら、ポリマー母材と繊維強化成分との間の接着を高めることができる。このために好適にはセルロースとの相互作用の強化のために変性ポリプロピレン、とりわけポリプロピレン−無水マレイン酸のグラフトコポリマー(MAPP)を使用することができる。変性ポリプロピレンもしくは別の接着性を向上させる成分を、ポリマー母材、または/および繊維強化成分に添加する。
【0026】
さらに好ましくは、エアレイドセルロース繊維材料はエアレイドセルロース繊維材料の繊維間の結合の維持のために結合剤を含み、該結合剤が(i)繊維状または粒体状の熱可塑性樹脂、好適にはポリエチレンおよび/またはポリプロピレンおよび/またはポリエチレンテレフタラート、(ii)熱可塑性樹脂で被覆された繊維、(iii)ラテックス、好適には自己架橋性のまたは架橋されたEVAラテックス、ホモポリマー、またはエチレンモノマーおよび/またはアクリルモノマーとのコポリマーの形での、酢酸ビニルまたは他のビニルエステルベースのエマルションを含む、ビニルエマルション、ホモポリマーまたはコポリマーの形でのアクリルエマルション、または他の架橋された接着剤、および(i)から(iii)に記載のこれらの結合剤の2またはそれ以上の混合物から成る群から選択される。結合剤として際立っているのはラテックスの他に、ポリプロピレンから、またはポリエチレンテレフタラートから成る芯を有し、ポリエチレンから成る被覆を有する、いわゆる2成分繊維である。被覆のポリエチレンはこの際、ポリエチレンの溶融の際に比較的高溶融性の芯によってその繊維構造を保持し、セルロース繊維を維持するのにも適している2成分繊維またはコンジュゲート繊維(Bikomponentenfaser)間の実質的な結合剤として作用する。
【0027】
これらの2成分繊維の他に結合剤として、ポリエステル−コポリエステルの芯−被覆繊維、および多成分繊維も考慮される。ポリエステル−コポリエステルの芯−被覆繊維は、類似の温度窓を有する低溶融性コポリエステル、例えばポリエチレンも適用可能なため、とりわけ適している。結合剤は通常、セルロース繊維材料の繊維間の結合が、液体接触の際にも維持されることを可能にする。結合剤はさらに、加工の際、および完成熱可塑性樹脂における繊維材料の結合力を改善することによって、繊維強化熱可塑性樹脂におけるエアレイドセルロース繊維材料の強化作用を支持する。このことはとりわけエアレイドセルロース繊維材料からの分散物の使用において有利である。
【0028】
本発明による有利な実施形態はさらに、超吸収ポリマー(SAP)を含む熱可塑性樹脂である。超吸収ポリマー(SAP、「超吸収剤」とも)は、非常に大量の水を流れて広がることなく結合することができる、ポリマーゲルを形成する化合物である。その例は澱粉/アクリルニトリルのコポリマーのアルカリ加水分解によって製造される非水溶性の澱粉/アクリルアミド/アクリル酸−グラフトコポリマー、または架橋されたポリアクリル酸である。粒体から成形部材への加工後、ガス放出の低減が達成可能である。
【0029】
さらには、本発明による熱可塑性樹脂は他の助剤および添加剤を含んでいてもよい。助剤はとりわけ、充填材、安定剤、静電気防止剤、難燃剤、全粒体に対して1〜3%のマスターバッチの形での着色剤、柔軟剤、および可塑剤、接着促進剤、発泡剤、抗菌剤、および抗真菌剤であることができる。充填材としては無機材料、例えば白亜、石灰岩、大理石、アルミニウム、石英、金属、雲母などが考慮される。
【0030】
好適には熱可塑性樹脂は以下の組成
10〜70質量部のエアレイドセルロース繊維材料、
30〜90質量部の熱可塑性樹脂母材、および
0.01〜15質量部の助剤および添加剤
を有する。
【0031】
挙げられた組成の熱可塑性樹脂は、粒体にも、半製品またはその他の加工に適した形態にも、良好に加工することができる。
【0032】
繊維強化熱可塑性樹脂の製造のために、成分を公知の方法で相互に混合し、場合によっては細断する。成分の熱的な、または物理的−熱的な凝集によって得られる熱可塑性樹脂を、好適には粒体または半製品としてさらなる加工のために調製する。得られた熱可塑性樹脂は、粒体として貯蔵可能であり、輸送的にも良好に取り扱い可能であり、かつ容易にさらなる加工において使用可能である。繊維パルプから成るセルロース繊維は白色であり、着色剤の添加は天然繊維に比較して基本的に拡大されている。従って本発明のさらなる観点は、自動車製造における、とりわけ自動車内装仕上げの構成部材、例えばサイドドアトリム、フロント部分、リアトランク、および自動車ルーフの製造のための、自動車製造における繊維強化熱可塑性樹脂の、もしくは熱可塑性樹脂ベースの粒体/熱可塑性樹脂ベースの半製品の使用にある。ここで典型的には1〜3質量部のマスターバッチの添加によって、色調整を行うことができる。繊維強化熱可塑性樹脂、もしくは熱可塑性樹脂ベースの粒体または熱可塑性樹脂ベースの半製品は、ケーシングまたは梱包材料、例えば容器の製造、とりわけ自動車製造において特に適している。
【0033】
ここで記載する好ましい実施形態を含む本発明による熱可塑性樹脂は、有利には成形部材の形成、とりわけ自動車工業における使用に適している。このような成形部材について特に有利なのは、本発明による熱可塑性樹脂の使用によって達成可能な高い衝撃強さ、および切欠衝撃強さであり、同時に高コストの熱可塑性樹脂母材の材料の節約である。
【0034】
以下では本発明を実施例によってさらに説明するが、これは本発明の権利範囲を限定するものではない。以下のすべての記載は、特に記載がない場合は質量部に関する。
【0035】
実施例1 エアレイドフリースの製造/加工の残渣
エアレイドフリースの工業的製造または加工の際に生じる残渣は、シュレッダーで破砕する。得られる分散物は、典型的には以下の組成
(i)2〜3mmの繊維長を有する繊維パルプからの、70質量部のセルロース繊維
(ii)比較的高い溶融温度を有するポリマー芯材料と、鞘を形成する第二のポリマー成分から成る、10質量部の合成繊維(2成分繊維)。芯は主にポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタラートから成り、かつ鞘はポリエチレンから誘導されたポリマーから成る。繊維長は3〜18mmである。
(iii)10質量部の高吸収ポリマー(SAP)、すなわちポリアクリラート。選択的には変性された澱粉、または他の非水溶性のゲルを形成するポリサッカライドを使用することができる。
(iv)8質量部のラテックス
(v)2質量部のポリプロピレン
を有する。
【0036】
この残渣を質量比1:1で純粋なポリプロピレンからのペレットと混合し、かつ熱機械的な処理によって凝集させる。製品のペレット化により粒体が得られる。
【0037】
実施例2−おむつ製造の残渣
おむつの製造および加工からの残渣をシュレッダーで破砕した。得られた分散物は以下の典型的な組成
(i)エアレイドフリースに由来する繊維パルプからの、43質量部のセルロース繊維。繊維長は2〜3mmである。
(ii)27質量部の高吸収ポリマー(SAP)、つまりポリアクリラート。選択的には変性された澱粉、または他の非水溶性のゲルを形成するポリサッカライドを使用することができる。
(iii)22質量部の合成繊維(1成分繊維または2成分繊維)。芯は主にポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタラートから成り、二成分繊維の場合、鞘はポリエチレンから誘導されたポリマーから成る。繊維長は3〜18mmである。
(iv)3質量部の接着剤
(v)1質量部の弾性成分
を有する。
【0038】
残渣を質量比1:1で純粋なポリプロピレンから成るペレットと混合し、かつ熱機械的な処理によって凝集させる。製品のペレット化により粒体が得られる。
【0039】
本発明による熱可塑性樹脂と他の材料との衝撃強さおよび切欠衝撃強さの比較
ポリプロピレン粒体(以下「PP]、Borealis HK 060AE)を木材粉(以下「木」)と、もしくはエアレイドセルロース繊維材料(以下「セル」)と表1に記載された比率で混合し、かつ厚さ4mmのISO基準ロッドに射出成形加工した。
【表1】

【0040】
工具温度は25℃、スクリュー周速度は10m/分、動圧は10bar、射出速度は60cm3/秒、および残渣冷却時間は20秒であった。エアレイドセルロース繊維材料は70質量%のフラッフパルプ−セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、および/またはポリエチレンテレフタラートから成る10質量%の合成繊維、8質量%のラテックス、10質量%の高吸収ポリマー粒子、残分はポリプロピレンの担体である。
【0041】
製造されたISO基準ロッドをDIN EN ISO 179/1eAUに従って振子衝撃装置を用いて23℃で(衝撃強さ、切欠無しの振り子:5J 非強化型[100%PP]、2J 強化型[その他];切欠衝撃強さ、切欠ありの振り子:0.5J)その衝撃強さと切欠衝撃強さを試験した。表2はこの結果を示す。
【表2】

【0042】
本発明による繊維強化熱可塑性樹脂は、木材強化熱可塑性樹脂と比較して、および純粋なポリプロピレンと比べて、とりわけ25質量%の割合のエアレイドセルロース繊維材料から、部分的に明らかにより良好な、すなわち、より大きい、かつ一定ではない組成にもかかわらず安定的な衝撃強さ、およびとりわけより大きな切欠衝撃強さを有することがわかる。
【0043】
本発明による熱可塑性樹脂と、他の材料のガス放出値の比較
先に記載した材料について、DIN75201−Bに従って、制御された加熱により揮発性の成分のガス放出試験を実施した。試料(直径80mm、厚さ2mmの円形板)を事前に14日間、五酸化リン酸によって乾燥した。成分はより低温のフィルムにおいて凝縮し、測定前と測定後のそれらの質量差異は、フォギングとも呼ばれる、堆積した成分に関する情報を与える。
【表3】

【0044】
本発明による繊維強化熱可塑性樹脂は、木材強化熱可塑性樹脂と比較して、および純粋なポリプロピレンと比べて、とりわけ25質量%の割合のエアレイドセルロース繊維材料から、部分的に明らかにより良好な、すなわちより僅少な凝縮値を有し、かつ自動車工業の基本的な要求を、ディスクなどにおける揮発成分の僅少な凝縮という基準で満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エアレイドセルロース繊維材料を
b)熱可塑性樹脂母材中に
含む、繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項2】
前記エアレイドセルロース繊維材料がエアレイドセルロース繊維材料の繊維間の結合の維持のための結合剤を含み、該結合剤が(i)1の繊維状または粒体状の熱可塑性樹脂、好適にはポリエチレンおよび/またはポリプロピレン、および/またはポリエチレンテレフタラート、(ii)熱可塑性樹脂で被覆された繊維、(iii)ラテックス、および2またはそれ以上のこれらの結合剤の混合物から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項3】
ポリエチレン結合剤が、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタラートからの芯を有する2成分繊維の表層の形で存在することを特徴とする、請求項2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項4】
前記結合剤が、多成分繊維の成分としての低溶融ポリマーであるか、またはポリエステル−コポリエステルの芯−被覆繊維の被覆を形成するコポリエステルであることを特徴とする、請求項2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂母材が、完全に、または主要部がポリプロピレンから形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項6】
さらに高吸収ポリマーを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項7】
エアレイドセルロース繊維材料の割合が、繊維強化熱可塑性樹脂の全量に対して少なくとも25質量%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項8】
前記セルロース繊維材料が最大0.2質量%の残留リグニン含分を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項9】
前記セルロース繊維材料の長さ加重繊維長が0.5〜5mmであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂母材の割合が、繊維強化熱可塑性樹脂の全量に対して30〜90質量%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂の成形によって製造可能な、または製造される成形部材。
【請求項12】
繊維強化熱可塑性樹脂における、エアレイドセルロース繊維材料の強化材としての使用。

【公表番号】特表2009−530462(P2009−530462A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500836(P2009−500836)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052536
【国際公開番号】WO2007/107527
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(506288151)コンサート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】Concert GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Lehmberg 10, D−16928 Falkenhagen, Germany
【Fターム(参考)】