説明

繊維性包帯

背面層を有する創傷包帯と、流動流通管に接続するための少なくとも一つの排出管と、を備える流路と、使用時創床と接触する創傷接触物体(wound contact integer)を有し、創傷接触物体は生物分解性及び/または生態吸収性繊維状電界紡糸担体を備えている、創傷の吸引及び/または消毒のための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は創傷の吸引、洗浄及び/または消毒に対する医療用創傷包帯、及び創傷の吸引、洗浄及び/または消毒に対する前記装置を用いた創傷の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
それは特に、多種多様な創傷(特に慢性的な創傷を除いて)と、創傷内部に広がる間またはいくらか治療の面(特に創傷治癒)で助けとなる創傷物質へ戻る間に創傷治癒に対して有害である物質を消毒すること、に容易に適用することのできる前記創傷包帯及び前記処理方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
急性、亜急性、慢性、外傷性及び裂開性創傷を含むさまざまな皮膚創傷に陰圧治療を適応させることは周知である。その治療は傷からの滲出液を取り除くこと、バクテリア負荷(bacterial burden)を軽減させること、及び肉芽組織の形成を促進させること、及びこのようにして創傷の治癒を促進すること、に用いられる。前記創傷治癒の周知の形態において、有害要因の除去の後に創床(wound bed)へ戻る滲出液の消毒と再循環とを組み合わせて、創傷の吸引のみ、創傷の順次的吸引と洗浄、または創傷の洗浄と吸引、が行われてもよい。
【0004】
陰圧創傷治療の多くの上記形態は、例えば、大気圧より低い圧力で創床上に引き延ばされ、陰圧によって刺激される肉芽組織の過多の成長を避けるといわれる網状スポンジのような、繊維性メッシュまたは繊維性穿孔物体(integer:インテジャー)を備える特殊包帯を使用する傾向にある。しかしながら、陰圧治療には痛みが付随することもある。この痛みは短期間でスポンジ包帯または物体(インテジャー)内で肉芽組織の内方成長によるものであり、そして、創床組織の内方成長のあと、包帯を取り除くことはさらに痛みを増加させうる。
【0005】
陰圧治療で創傷を扱う方法において、組織修復に対して好ましい環境を作るために担体(scaffold)を創床(創傷と創傷包帯の間の接する層)に塗ることは既に周知である。前記担体は生物担体(bio‐scaffold)であるか、または合成担体(synthetic scaffold)であってもよく、生物分解性及び/または生体吸収性(創傷内部に残りうる)であってもよく、または非生物分解性または非生体吸収性(取り除かれる必要がある)であってもよい。
【0006】
陰圧創傷治癒の前記形態が、創床上で異なる物体(インテジャー)の多数回適用を要求することができるように、前記担体は包帯から隔離される。同様な理由として、全体のアッセンブリーは最適一致より劣る傾向にある。担体は肉芽組織及び細胞によって浸入を受け、周知の陰圧治癒で用いられる非生体吸収性/非生物分解性担体は創傷治癒の間または後で取り除く必要性、及び創床に損傷を引き起こす除去、及び患者への痛み、の不利な点に悩む。
【0007】
周知の陰圧治癒担体のこれら不利な点を避ける包帯を提供することは望ましく、創傷を吸引、洗浄及び/または浄化に対する機器において、特に慢性的な創傷を除く多種多様な創傷に容易に適用されうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
我々は、陰圧治癒包帯の不可欠な部分、例えば、前記包帯において創傷接触層の底面の部分である電界紡糸担体によりこれが達成されることを驚くべきことに発見している。
【0009】
従って、本願発明の第1の態様では、
比較的液密なシール、または創傷全体の閉口を形成することが可能な創傷直面表面(wound‐facing face)を有する背面層を備え、及び
創傷直面表面の中を、及び/または下を通過し、流体流通菅に接続するための少なくとも一つの放出管と、その/または各々の放出管が創傷直面表面の中を、及び/または下を通過する位置は、比較的液密なシール、または創傷全体の閉口を形成しており、
使用時創床に接して位置する創傷接触物体(インテジャー)と、を有し、及び
創傷接触物体(インテジャー)は使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を備えることを特徴とする、準拠した創傷包帯が提供される。
【0010】
本発明に従って、以下の条件を備える創傷の吸引及び/または消毒のための装置が提供される。
(a)創傷直面表面を含む背面層を有する創傷包帯と、創傷直面表面の中を、及び/または、下を通過する流動体流通管に接続するための少なくとも一つの排出管とを備える流路
(b)創傷包帯と、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)とを通じて流動体を移動させるための少なくとも一つの機器
を備え、
(c)創傷接触物体(インテジャー)は、生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を備えることを特徴とする装置。
【0011】
本発明の第1の態様の一つの実施形態では、使用時創床に接して位置する繊維状電界紡糸担体は、電界紡糸ターゲットとして創傷接触物体(インテジャー)に付着して、直接その上で電界紡糸となるナノファイバーを備える。本発明の第1の態様の追加的な実施形態では、使用時創床に接して位置する繊維状電界紡糸担体は、直接組み立てた包帯の上で電界紡糸となるナノファイバーを備える。
【0012】
ここで用いられる用語“ナノファイバー”は担体における多数のファイバー直径が1μmより細いことを意味している。
【0013】
本発明の第1の態様の包帯は、周知の陰圧治癒担体の不利な点を回避する。それは、創傷の吸引、洗浄及び/または消毒のための装置において、特に慢性創傷を除く多種多様な創傷に容易に適応されうる。そして、それは単一の適用品であることの利点を有し、それが包帯の残りの部分に付着されるように、さらに適合させることもできる。
【0014】
使用時、担体は傷からの滲出液によって包帯の創傷接触物体(インテジャー)から次第に取り除かれ、包帯除去時にどの担体も創床からの除去が要求されないよう、包帯の洗浄によってその作用が強化されてもよい。これは結果として、患者によって経験される痛みや不快を減少し、局所麻酔の必要性を減らすことになる。
【0015】
担体の電界紡糸物質はナノファイバーの形状となる傾向にあり、標準の生物担体と比べてより高表面積、高空隙率、及び高空隙率による増大した流体運動、及びそれ故により早い劣化、を導く。
【0016】
本発明の第1の態様の一つの実施形態では、創傷直面表面の中を、及び/または下を通過し、そして創傷直面表面の下の創傷空間と連絡しているさらなる単管または複管を包帯は有しない。前記実施形態は、創傷の吸引、または放出単管または複管を通じて逆流を有する創傷の順次的吸引と洗浄に対して一般的に用いられる。
【0017】
創傷吸引の間、任意の創傷の順次的吸引と洗浄において常圧より低い圧力源が流体流通管の接続を経由して放出管に適用される。これは創傷接触物体(インテジャー)を創床上に引き付け、そしてそれは大気圧に戻るまで創床に接触して位置する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、創傷領域は常圧より低い圧力または陰圧に曝されている。この陰圧は1.01から100.3kPaの間(0.01から0.99気圧の間)でよい。他の適した気圧範囲は60から80mmHgの間(0.079から0.105気圧の間、9.12から10.7kPaの間)を含む(しかし、これに限定されない)。
【0019】
より浅い創傷に対して、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)は一般的に、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する背面層であってもよい。
【0020】
あるいは、より浅い創傷に対して、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)は一般的に、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する背面層の下で、創傷包帯の一つの部材としての創傷膜であってもよい。
【0021】
あるいは、より浅い創傷に対して、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)は一般的に、以下のマニホルドを規定する一つまたはそれ以上の準拠した中空体を備えるか、または本質的にそれらより構成される背面層の下で、創傷包帯の一つの部材としての創傷膜であってもよい。
a)吸引において創傷から流動物を直接引き付ける、または
b)洗浄において創床に直接流動物を運ぶ注入管マニホルドとしても機能する
【0022】
それは、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または準拠した中空体を規定している生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する。
【0023】
治癒がこの方法で適用されるとき、より深い創傷に対して、より適した創傷接触物体(インテジャー)は、少なくとも部分的に固体物体(インテジャー)を取り囲む一つまたはそれ以上の準拠した中空体を備えるものであってよい。それらは、例えば、ポリマーフィルムやシート、または薄膜により規定されてもよい。これは手ごろな操作に対して優れた厳密性を有するシステムを提供することができる。
【0024】
それは、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する。
【0025】
あるいは、この形態で、一つまたはそれ以上の準拠した中空体は放出管マニホルドを以下のように規定する。
a)吸引において創傷から流動物を直接引き付ける、または
b)洗浄において創床に直接流動物を運ぶ注入管マニホルドとしても機能する
【0026】
それは、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または準拠した中空体を規定している生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する。
【0027】
本発明の第1の態様のもう一つの実施形態では、創傷直面表面の中を、及び/または下を通過し、そして創傷直面表面の下の創傷空間と連絡しているさらなる単管または複管を包帯は有する。
【0028】
前記実施形態は一般的に、任意的に有害要因の除去の後に創床へ戻る滲出液の浄化と再循環とを組み合わせて、逆流なしに同時的または順次的な創傷の吸引及び洗浄に対して用いられる。
【0029】
創傷直面表面の中を、及び/または下を通過し、及び創傷直面表面の下の創傷空間と連絡しているさらなる単管または複管は一般的に、創傷直面表面の中を、及び/または下を通過する流動体供給管へ接続するための少なくとも一つの注入管として機能を果たす。
【0030】
従って、本発明の第1の態様の一つの実施形態では、
比較的液密なシールまたは創傷全体の閉口の形成ができる創傷直面表面を有する背面層を備え、そして
創傷直面表面の中を、及び/または下を通過し、流動体供給菅への接続のための少なくとも一つの注入管と、及び
創傷直面表面の中を、及び/または下を通過し、流動体流通管への接続のための少なくとも一つの放出管と、
その/または各々の注入管及びその/または各々の放出管が創傷直面表面の中を、及び/または下を通過する位置は、比較的液密なシールまたは創傷全体の閉口を形成しており、
使用時創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)と、を有し、
創傷接触物体(インテジャー)は使用時に創床に接触して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を備えることを特徴とした、準拠した創傷包帯が提供される。
【0031】
さらに、より浅い創傷に対して、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)は一般的に、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する背面層であってもよい。
【0032】
あるいは、より浅い創傷に対して、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)は一般的に、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する背面層の下で、創傷包帯の一つの構成物としての創傷膜であってもよい。
【0033】
あるいは、より浅い創傷に対して、使用時に創床に接触して位置する創傷接触物体(インテジャー)は一般的に、以下を規定する一つまたはそれ以上の準拠した中空体を備えるか、または本質的にそれらより構成される背面層の下で、創傷包帯の一つの部材としての創傷膜であってもよい。
a)吸引において創傷から直接流動物を引き付ける排出管マニホルド、または
b)より多くの場合は洗浄において創床へ直接流動物を運ぶ注入管マニホルド
それは使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する。
【0034】
治癒がこの方法で適用されるとき、より深い創傷に対して、より適した創傷接触物体(インテジャー)は、少なくとも部分的に固体物体(インテジャー)を取り囲む一つまたはそれ以上の準拠した中空体であってもよい。それらは例えば、ポリマーフィルムやシートまたは薄膜によって規定されてもよい。
【0035】
これは手ごろな操作に対して優れた厳密性を有するシステムを提供することができる。それは、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する。
【0036】
あるいは、この形態では、一つまたはそれ以上の準拠した中空体は以下を規定してもよい。
a)吸引において創傷から直接流動物を引き付ける排出管マニホルド、または
b)より多くの場合は洗浄において創床へ直接流動物を運ぶ注入管マニホルド
【0037】
それは、使用時創床に接して位置する生物分解性及び/または準拠した中空体を規定している生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有する。
【0038】
適した生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体の例は不織マット、パッド、ロール、及び電界紡糸ファイバーの束、織り込まれた物質の中または上、または支持形態の中または上、凍結乾燥された形態の中または上、またはゲル内、または他の材料、例えばアルギン酸塩に挟まれた形態の中または上の電界紡糸ファイバーを含む。
【0039】
本発明のいくらかの実施形態では、創傷接触物体(インテジャー)は、ガーゼ、泡、または他の多孔性物質を備えてもよく、その上、及び/または中に生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体/物質が位置される。
【0040】
本発明の装置は加えて、いくらかの実施形態では、創傷包帯の背面層の下にフィルター物質としてガーゼまたは泡または他の多孔性物質を有してもよい。
【0041】
適した生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸繊維の例は連続的な、または先端を切り取った繊維において、直径が最大で100nmより下回り、100μmを超える範囲の電界紡糸繊維を含む。
【0042】
適した電界紡糸繊維の直径は150μmから90nm、50μmから50nm、75μmから75nm、90μmから90nm、80μmから90nm、110μmから90nm、または120μmから105nmであってよい。
【0043】
担体の適した深さの例は50μmを下回り、3mmを超える範囲である。
【0044】
担体の適した深さは25μmから3.1mm、40μmから3.1mm、45μmから3.25mm、49μmから3.1mm、または50μmから3.1mmを含む。
【0045】
包帯創傷接触物体(インテジャー)の表面の上に蒸着及び/または接着されるに適した生物分解性及び/または生体吸収性物質の例は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(D−)乳酸、ポリグリコール乳酸、ケラチン、ラミニン、エラスチン、コラーゲン及び自然発生的細胞外基質タンパク質、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びそれらの混合物及び準ポリマーのような生物分解性及び/または生体吸収性物質を含む。
【0046】
その物質は当業者に知られる包帯創傷接触物体(インテジャー)の表面の上に蒸着及び/または接着される電界紡糸であってもよい。
【0047】
好ましくは、それらは、溶解状またはナノ粒子状で、当業者に周知である適した添加剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ素酸カリウム、リン酸カリウム炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、乳酸カルシウム)を有する適した溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、メチレン、塩化物、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、メタノール、N−メチルピロリドン、ヘキサフルオロイソプロパノール、及びジメチルスルホキシド)、及び他の添加剤、溶媒、ポリマー、生活性剤、医薬品、金属、金属酸化物または細胞、または細胞成分を用いた溶媒紡糸である。
【0048】
本発明に従って、電界紡糸と、使用時に創傷接触物体(インテジャー)が創床に接触して位置する創傷包帯の創傷接触物体(インテジャー)の上の生物分解性及び/または生体吸収性物質と、の工程を備える創傷包帯の製造方法が提供される。
【0049】
本発明に従って、陰圧が創傷に適応される請求項1に従った装置を用いる創傷治癒を促進させるための創傷の処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
[実施例1]
[ポリウレタン包帯創傷接触層上の繊維マット電界紡糸]
ポリラクティックグリコール酸(ラクチド25%、グリコリド75%)共重合体10%溶液がジクロロメタン中に用意される。これは、接地したステンレススチールターゲット上に位置するALLEVYNTM非粘着性包帯(Smith&Nephew)の創傷接触層上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧20kVで針を介して通過することによる電界紡糸である。電界紡糸の薄いマットは約10分内で創傷接触層上に蒸着されて、空気乾燥してもよい。その電界紡糸マットは創傷接触層の表面によく付着することがわかっており、十分よく一致する。
【0051】
[実施例2]
[ポリウレタン包帯上の繊維マット電界紡糸]
ポリカプロラクトンホモポリマー20%溶液がジクロロメタン中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置するALLEVYNTM非粘着性ポリウレタン包帯(Smith&Nephew)の創傷接触層上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧6.5−25kVで針を介して通過することによる電界紡糸である。直径が6.5−8.7μmの繊維を備える厚さが150−200nmの電界紡糸物質が136分以内に創傷接触層に蒸着される。その電界紡糸繊維マットは創傷接触層の表面に十分よく付着されていることがわかったが、直接力の適用で原型を保ったまま剥すことができる。
【0052】
電界紡糸繊維の層を組み込んだALLEVYNTM包帯が生の豚肉の表面に貼り付けられ、室温及び10mbarより低いかまたは等しい圧力で少なくとも3時間真空オーブンで乾燥された後、ALLEVYNTM包帯は豚肉の表面に原型のまま残った電界紡糸繊維層から簡単に剥すことが可能であった。電界紡糸繊維の層の無いALLEVYNTM包帯の制御片(control pieces)は、同一の状況の下で豚肉の表面に付着していた。
【0053】
[実施例3]
[ポリウレタン包帯上の繊維マット電界紡糸]
ポリカプロラクトンホモポリマー20%溶液がジクロロメタン中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置するALLEVYNTM粘着性ポリウレタン包帯(Smith&Nephew)の創傷接触層上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧7.0kVで針を介して通過することによる電界紡糸である。直径が6.7−9.1μmの繊維を備える電界紡糸物質が70分以内に創傷接触層に蒸着される。電界紡糸繊維マットは創傷接触層の表面にしっかりと付着されることがわかったが、包帯の表面を湿らせた後、直接力の適用で原型を保ったまま剥すことができる。剥された電界紡糸繊維マットは70−90μmの厚さである。
【0054】
[実施例4]
[ポリウレタンフォーム上の繊維マット電界紡糸]
ポリカプロラクトンホモポリマー20%溶液がジクロロメタン中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置する創傷接触層または背面層の無いALLEVYNTMポリウレタン包帯(Smith&Nephew)の厚さ3mmのポリウレタンフォーム部位上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧7.0kVで針を通じて通過することによる電界紡糸である。直径7.4−9.3μmの繊維を備える厚さ70−100μmの電界紡糸物質のマットは60分以内でフォーム表面に蒸着される。電界紡糸繊維マットはフォームの表面に十分よく付着することがわかったが、直接力の適用で原型を保ったまま剥すことができた。
【0055】
電界紡糸繊維の層を組み入れたポリウレタンフォームを生の豚肉の表面に接触させて、室温及び10mbarに等しいかそれより低い圧力で少なくとも3時間ほど真空オーブンで乾燥させた後、ポリウレタンフォームは豚肉の表面上で原型を保ち残っている電界紡糸繊維層から容易に剥がされる。電界紡糸繊維の層を有さないALLEVYNTM包帯の制御片は、同一状態の下、豚肉の表面に付着していた。
【0056】
[実施例5]
[ポリウレタンフォーム上の繊維マット電界紡糸]
ポリ(乳酸/グリコール酸)(ラクチド10%、グリコリド90%)共重合体20%溶液がヘキサフルオロイソプロパノール中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置する創傷接触層または背面層の無いALLEVYNTMポリウレタン包帯(Smith&Nephew)の厚さ4mmポリウレタンフォーム部位上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧5.0kVで針を介して通過することによる電界紡糸である。直径1.7−2.7μmの繊維を備える厚さ60−80μmの電界紡糸物質のマットは120分以内でフォーム表面に蒸着される。電界紡糸繊維マットはフォームの表面に十分よく付着することがわかったが、直接力の適用で原型を保ったまま剥すことができた。
【0057】
[実施例6]
[ポリ(エチレン/ビニル アセテート)/ポリスチレンフィルム上の繊維マット電界紡糸]
ポリ(乳酸/グリコール酸)(ラクチド10%、グリコリド90%)共重合体20%溶液がヘキサフルオロイソプロパノール中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置するポリ(エチレン/ビニル アセテート)/ポリスチレンフィルム上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧7.0kVで針を介して通過することによる電界紡糸である。そのフィルムはALLEVYNTMキャビティ(Smith&Nephew)の創傷接触層の生成で用いられる非穿孔ポリ(エチレン/ビニル アセテート)/ポリスチレンフィルムを備える。厚さ70−90μmの電界紡糸物質のマットはポリマーフィルム上に120分以内で蒸着された。電界紡糸繊維マットはポリマーフィルムの表面に十分よく付着することがわかったが、直接力の適用で原型を保ったまま剥すことができた。
【0058】
[実施例7]
[ホイル/ポリマーラミネートから形成される中空体上の繊維マット電界紡糸]
ポリカプロラクトンホモポリマー20%溶液がジクロロメタン中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置するホイル/ポリマーラミネート中空体のポリプロピレン層上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧7.0kVで針を通じて通過することによる電界紡糸である。中空体は、ポリプロピレン層が外層を形成することができるように、配向ポリプロピレン、ポリエチレン、アルミニウムホイル及びポリエチレン(FR 2175‐B、Covalence Coated Products)を備える四層ラミネートの二つのシートと共にヒートシーリングによって用意される。直径7.0−9.7μmの繊維を備える厚さ130−240μmの電界紡糸物質のマットは90分以内で中空体上に蒸着される。電界紡糸繊維マットは中空体の表面に十分よく付着することがわかったが、直接力の応用で原型を保ったまま剥すことができた。数サイクルの膨張と収縮の後でも電界紡糸繊維マットは中空体から離れなかった。
【0059】
[実施例8]
[ホイル/ポリマーラミネートから形成される中空体上の繊維マット電界紡糸]
ポリ(乳酸/グリコール酸)(ラクチド10%、グリコリド90%)共重合体10%溶液がヘキサフルオロイソプロパノール中に用意される。これは、回転接地ステンレススチールマンドレル上に位置するホイル/ポリマーラミネート中空体上に15cmの作動距離を有する、流量0.03ml/min、直流電圧5.0‐7.0kVで針を介して通過することによる電界紡糸である。中空体は、ポリプロピレン層が外層を形成することができるように、配向ポリプロピレン、ポリエチレン、アルミニウムホイル及びポリエチレン(FR 2175‐B、Covalence Coated Products)を備える四層ラミネートの二つのシートと共にヒートシーリングによって用意される。直径1.2−2.4μmの繊維を備える厚さ30−90μmの電界紡糸物質のマットは90分以内で中空体上に蒸着される。電界紡糸繊維マットは中空体の表面に十分よく付着することがわかったが、直接力の応用で原型を保ったまま剥すことができた。数サイクルの膨張と収縮の後でも電界紡糸繊維マットは中空体から離れなかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ALLEVYNTM非粘着性包帯から部分的に剥された電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットを示す。
【図2】6時間45分真空の下にさらした後、豚肉の表面に付着している電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットからALLEVYNTM非粘着性包帯の除去を示す。
【図3】6時間45分真空の下にさらした後、豚肉の表面から電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットの除去を示す。
【図4】ALLEVYNTM非粘着性包帯上に蒸着させた電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図5】湿らせたALLEVYNTM粘着性包帯から部分的に剥された電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットを示す。
【図6】ALLEVYNTM粘着性包帯上に蒸着させた電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図7】ポリウレタンフォームから部分的に剥された電界紡糸ポリカプロラクトンを示す。
【図8】6時間45分真空の下にさらした後、豚肉の表面に付着している電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットからポリウレタンフォームの除去を示す。
【図9】6時間45分真空の下にさらした後、豚肉の表面から電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットの除去を示す。
【図10】ポリウレタンフォームに蒸着させた電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図11】ポリウレタンフォームから部分的に剥された電界紡糸ポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体繊維マットを示す。
【図12】ポリウレタンフォームに蒸着させた電界紡糸ポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体繊維マットの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図13】ポリ(エチレン/ビニル/アセテート)/ポリスチレンフィルムから部分的に剥された電界紡糸ポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体繊維マットを示す。
【図14】電界紡糸ポリカプロラクトン繊維の層を有する膨張したホイル/ポリマー積層中空体を示す。
【図15】ホイル/ポリマー積層中空体に蒸着させた電界紡糸ポリカプロラクトン繊維マットの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図16】電界紡糸ポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体繊維マットの層を有する膨張したホイル/ポリマー積層中空体を示す。
【図17】ホイル/ポリマー積層中空体に蒸着させた電界紡糸ポリ(乳酸/グリコール酸)共重合体繊維マットの走査型電子顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷の吸引、及び/または消毒のための装置であって、
(a)創傷直面表面を含む背面層を有する創傷包帯と、創傷直面表面の中を、及び/または、下を通過する流動体流通管に接続するための少なくとも一つの排出管とを備える流路
(b)創傷包帯と、使用時に創床に接触して位置する創傷接触インテジャーとを通じて流動体を移動させるための少なくとも一つの機器
を備え、
(c)創傷接触インテジャーは、生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
背面層は比較的液密なシール、または創傷全体の閉口を形成することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
流動体洗浄のための、背面層の中を、及び/または、下を通過する注入管を有することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
その/または各々の、注入/放出管が、背面層の中を、及び/または、下を通過する位置は、比較的液密なシール、または創傷全体の閉口を形成することができることを特徴とする請求項1、2または3のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
担体の繊維状電界紡糸繊維は電界紡糸ターゲットとして創傷接触インテジャーの直接上にあり、及び付着する電界紡糸であることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
担体の繊維状電界紡糸繊維は組み上げた創傷包帯の直接上にある電界紡糸であることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
繊維状電界紡糸担体はナノファイバーを備えることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
創傷の順次的吸引と洗浄が存在することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項9】
大気圧より低い圧源または陰圧源が創傷に適用されることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
創傷の周りの領域が1.01及び100.3kPa(0.01及び0.99気圧)の間の陰圧を受けることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
創傷接触インテジャーは背面層の創傷直面表面であることを特徴とする請求項1から10のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
創傷接触インテジャーは創傷フィルターであり、該創傷フィルターは背面層の下に置かれた創傷包帯の一つの部材であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
創傷フィルターはマニホルドを規定する一つまたはそれ以上の中空体を備えることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
集合管を規定する一つまたはそれ以上の中空体が創傷接触インテジャーの生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体を支える創傷直面表面を有することを特徴つとする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体物質は、不織マット、パッド:ロール、詰め綿、織物、凍結乾燥、ゲルまたはラミネート型または物質、のグループから選ばれる物質を備えることを特徴とする請求項1から14のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
生物分解性及び/または生体吸収性繊維状電界紡糸担体は織布または何らかの支持形態の中にまたは上に電界紡糸繊維を有することを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
生物分解性及び/または生体吸収性電界紡糸繊維は、連続的または断ち切った繊維において、直径が100nmから100μmの範囲の電界紡糸を含むことを特徴とする請求項1から16のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
担体の適した深さは、50μmから3mmの範囲であることを特徴とする請求項1から17のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
使用時に創傷接触インテジャーが創床に接触して位置する創傷包帯の創傷接触インテジャー上に、生物分解性及び/または生体吸収性繊維物質をエレクトロスピニングするステップを含むことを特徴とする創傷包帯の製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし18のいずれか一項に記載の装置を用いた創傷治癒を促進させるための創傷を扱う方法。
【請求項21】
創傷に陰圧が適用された請求項1に記載の装置を用いた創傷治癒を促進させるための創傷を扱う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−517110(P2009−517110A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541820(P2008−541820)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004379
【国際公開番号】WO2007/060433
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】