説明

繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置、及び該装置を用いた繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離方法

【課題】繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維混入量をより簡便に、かつ効率よく測定することができる繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供すること。
【解決手段】所定量の繊維混入フレッシュコンクリートが投入され、かつ洗浄液が注入され続け、自らが回転可能な試験槽と、前記試験槽に回転動力を伝達する回転駆動部と、前記繊維混入フレッシュコンクリートと前記洗浄液とを攪拌する攪拌部と、前記試験槽から溢れ出した溢流液を受ける液受け部と、前記溢流液から、前記繊維混入フレッシュコンクリートに含まれる補強繊維を分離する分離部と、を少なくとも備える繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置、及び該装置を用いた繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離方法に関する。より詳しくは、繊維混入コンクリートに混入された補強繊維を分離する装置、及び該装置を用いた繊維混入フレッシュコンクリートに混入された補強繊維を分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、任意の形状や寸法に成形でき、かつ耐久性に富んだ土木・建築材料として汎用されている。コンクリートは、打設後に適切に養生することで硬化し、優れた耐久性を発揮する。しかし、コンクリートは圧縮する力に対しては強いが、曲げや引っ張りの力にはそれほど強くないため、この脆さを改良するため補強材として繊維を混入させることでコンクリートの靭性を向上させた繊維補強コンクリートが汎用されている。
【0003】
コンクリートに混入される補強繊維としては、例えば、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、有機系繊維、合成樹脂製繊維等が挙げられ、その中でも、経済性等の観点からは、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン繊維等が汎用されている。
【0004】
しかし、コンクリート中の補強繊維量が少なかったり、補強繊維が不均一に分散している場合には、所望の力学的特性を得ることができない。そして、コンクリート構造物の構造計算において基準となる設計基準強度が定められており、これを踏まえてコンクリートの配合強度・調合強度が定められる。このような指標として示方配合・計画調合が現場に示され、この示方配合・計画調合に従って現場配合・現場調合が定められる。
【0005】
従って、現場で繊維補強コンクリートを打設する際には、使用するフレッシュコンクリートに補強繊維が一定量含有されているか、あるいは均一に混合しているかを、逐次、把握しながら打設する必要がある。そのため、例えば、打設される繊維混入フレッシュコンクリートについて定期的に、適宜、繊維混入率試験を行なう必要がある。
【0006】
この繊維混入率の試験方法としては洗い分析等による方法が挙げられる。例えば、繊維混入フレッシュコンクリートを所定量採取し、この繊維混入フレッシュコンクリートに多量の水を加え、その水中から測定対象とする補強繊維を手や網等によって水中からすくい出し、そのすくい出した全体量を混入繊維量として測定・評価する試験方法等が行なわれている。また、特許文献1には磁力を利用した鋼繊維混入フレッシュコンクリート試料の鋼繊維分離採取装置等について開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−20217号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、繊維混入フレッシュコンクリートに多量の水を加えた状態の中から手等により補強繊維をすくったりすることは作業効率が悪い。また、すくい残しが生じるため試験精度に影響を与えるという問題を抱えていた。
【0009】
また、特許文献1のような分離装置等を用いた場合には大掛かりとなったり、鋼繊維などの磁力を利用できる補強繊維以外の補強繊維には用いることができない等の問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維を分離する作業をより簡便に、かつ効率よく行なうことができる分離装置、及び該分離装置を用いた分離方法を提供すること主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、単に試験槽内に攪拌部を設けるというだけでなく、試験槽を回転させることで繊維混入フレッシュコンクリートを洗浄液に効率よく混合・攪拌できるという着想を得て、この着想等に基づいて鋭意研究することで本発明を完成させた。
【0012】
まず、本発明は、所定量の繊維混入フレッシュコンクリートが投入され、かつ洗浄液が注入され続け、自らが回転可能な試験槽と、前記試験槽に回転動力を伝達する回転駆動部と、前記繊維混入フレッシュコンクリートと前記洗浄液とを攪拌する攪拌部と、前記試験槽から溢れ出した溢流液を受ける液受け部と、前記溢流液から前記繊維混入フレッシュコンクリートに含まれる補強繊維を分離する分離部と、を少なくとも備える繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。試験槽を回転させるとともに、攪拌部を設けることで、試験槽内の繊維混入フレッシュコンクリートと洗浄液とを効率よく簡便に混合・攪拌することができる。また、洗浄液を溢流させながら攪拌することで補強繊維を試験槽内に効率よく浮上させることができ、分離部によって補強繊維を取り出すことができる。なお、洗浄液が「注入され続ける」とは、分離したい補強繊維が洗浄液とともに試験槽から溢流する程度に注入すればよく、必ずしも連続的に注入しなければならないことを意味するものではない。
【0013】
次に、本発明は、前記試験槽は、前記補強繊維分離装置から脱着可能である繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。試験槽が補強繊維分離装置から脱着可能とすることで、容易に試験槽内を洗浄すること等ができるため、取扱いが簡便であり、連続して使用すること等ができる。
【0014】
そして、本発明は、前記液受け部は前記溢流液を前記分離部へと排出する開口部を有し、かつ前記液受け部の底が前記開口部に向かって傾斜が形成されている繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。液受け部において、開口部に向かって傾斜が形成されていることで、溢流液を開口部に向かって効率よく流れさせることができる。
【0015】
また、本発明は、前記試験槽の上部フランジは外側方向にせり出すように形成され、前記せり出している部分の上面の少なくとも最外部分が底方向に傾斜している繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。試験槽の上部フランジをかかる構造とすることで、溢流液を効率よく液受け部へと流し込むことができる。
【0016】
更に、本発明は、前記攪拌部が固定されている繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。試験槽を回転させて、攪拌部を固定させることによって、攪拌の際に一定の抵抗を有する流動体であっても効率よく攪拌させることができる。
【0017】
そして、本発明は、前記攪拌部は、試験槽の底面と実質平行な部分を有し、かつ前記実質平行な部分は、前記試験槽の底面から0.01〜3cmの距離である繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。攪拌部を試験槽の底面から0.01〜3cmの距離とすることで、試験槽の底部に堆積している繊維混入フレッシュコンクリート等も効率よく攪拌することができる。
【0018】
また、本発明は、前記溢流液から前記補強繊維を分離した後の液体を、前記試験槽に再度送り込む送液部を備える繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を提供する。これにより、使用した溢流液を再度洗浄液として使用することができるため、洗浄液の使用量を軽減すること等ができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置によれば、繊維混入コンクリートの補強繊維をより簡便にかつ効率よく分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面に示された実施形態は本発明の好適な実施形態を例示したものであり、これにより本発明が狭く解釈されることはない。
【0021】
図1は、本発明に係る繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置(以下、「補強繊維分離装置」という。)の第1実施形態の側面視の簡略図であり、図2は、同実施形態の正面視の簡略図であり、図3は、同実施形態の上面視の簡略図であり、図4は、同実施形態を分解した状態の斜視簡略図である。
【0022】
図1〜4で示された符号1は、補強繊維分離装置を示している。該補強繊維分離装置1は、試験槽11と、攪拌部12と、回転駆動部13と、液受け部14とを備えている。そして、前期回転駆動部13の上方には中板15が配置されている。前記回転駆動部13は底板16上に設置されており、中板15と底板16は支柱17により支持・固定されている。そして、図4に示すように、装置本体は、試験槽11と、攪拌部12と、回転駆動部13と、液受け部14とに分解することができる。また、補強繊維分離装置1は、装置本体以外にも分離部19と送液部20も備えている(図1参照)。なお、図2〜4については、分離部19と送液部20は省略している。
【0023】
まず、試験槽11の上方から繊維混入フレッシュコンクリートを投入する。そして、試験槽11を回転させながら洗浄液を注液することで攪拌流を形成することができる。更に、攪拌部12を設けることで、繊維混入フレッシュコンクリートと洗浄液を効率よく攪拌することができ、繊維混入フレッシュコンクリート中の補強繊維がほどよく分離されて洗浄液よりも比重の小さい補強繊維を試験槽11内で浮きださせることができる。そして、注入されている洗浄液や補強繊維等が、液受け部14の開口部Aから溢流液として溢れ出し、この溢流液中の補強繊維を分離部19によって分離する。そして、溢流液を送液部20によって再び試験槽11へ送り込むことで、洗浄液として再利用する。
【0024】
また、混入繊維分離装置1は分解可能であり、以下の手順で組み立てることができる(図4参照)。まず、図4において液受け部14を下方向(矢印Y参照)に降ろすことで、支柱17のストッパー171にひっかかり、所定位置に設置される。そして、試験槽11を液受け部14の孔部Bに挿入することで(矢印Y参照)、試験槽11を中板15上に設置できる。
【0025】
更に、中板15上に固定化されている試験槽固定部151を設けて試験槽11を回転駆動部13に固定、一体化させることができる。そして、試験槽固定部151は、バックル等の脱着可能な接続具1511を設けることが望ましい。これにより、試験槽11をより確実に固定することができる。
【0026】
そして、攪拌部12を(図1等参照)接続することで(矢印Y参照)、補強繊維分離装置1を組み立てることができる。このように、分解可能とすることで、メンテナンス性や、不使用時の持ち運び容易性等を向上させることができる。
以下、装置の構成についてそれぞれ説明する。
【0027】
試験槽11の形状等については、特に限定されないが、好適には、上部フランジ111が試験槽11の外側にせりだすように形成され、かつせり出している上部フランジ111の上面の少なくとも最外部分が底方向に傾斜していることが望ましい(符号B参照)。かかる構造とすることで、溢流水が試験槽11から液受け部14へと容易に流出させることができ、さらにフランジ111上へ補強繊維が溜まりにくくすることもできる。
【0028】
更に、前記上部フランジ111の周縁が、断面側面視、曲面となるように形成されていることが望ましい(図1の符号C参照)。前記上部フランジ111の周縁を曲面とすることで、洗浄液や補強繊維がフランジ111から溢流する際により円滑に流れ出すことができる。
【0029】
そして、試験槽11を回転させる際に、試験槽11と液受け部14のフランジ141とが接触しない構造であることが望ましい(符号B参照)。かかる構造とすることで、試験槽11が回転する際に、液受け部14と接触しないため、無駄な摩擦が発生することなく滑らかに回転させることができる。このような構造とするためには、例えば、試験槽11を回転駆動部13や中板15や試験槽固定部151等で支持し、液受け部14を支柱17のストッパー171等で支持する構造とすることが挙げられる。
【0030】
更に、試験槽11は、補強繊維分離装置1から脱着可能であることが望ましい。例えば、補強繊維分離装置1を繊維補強コンクリート打設時の補強繊維量の測定試験に用いる場合には、打設作業中に何回も測定試験を行なう必要がある。そのような場合等に、試験槽11を補強繊維分離装置1から取り外して、槽内を洗浄すること等が容易にできる点で望ましい。
【0031】
試験槽11の容積や形状等については、特に限定されず、基準となる繊維混入率や取り扱い性等を考慮して適宜決定できるが、好適には3〜30L容量とすることが好ましい。かかる容量であれば、5〜10Lの繊維混入フレッシュコンクリートを投入後5分程度の短い試験時間で済ますことができ、かつ、組立てや持ち運びも容易である点で望ましい。
【0032】
攪拌部12は、試験槽11内に設けられ、第1攪拌翼121,第2攪拌翼122,第3攪拌翼123が主軸124に備えている。この攪拌部12は、試験槽11内で固定されている。この攪拌部12の形状について図5〜図7に示す。図5は、攪拌部12の正面図であり、図6は、攪拌部12の上面視の簡略図であり、図7は、攪拌部12の斜視間略図である。
【0033】
洗浄液を蓄えた試験槽11を所定方向F1(図3参照)に回転させることで遠心力が発生し、この遠心力F1によって攪拌流F2(図3参照)が試験槽11内に発生する。この攪拌流F2が攪拌翼121,122,123に衝突することで、試験槽11内の補強繊維や洗浄液を効率よく攪拌することができる。そして、試験槽固定部151により試験槽11がしっかりと固定されているため、試験槽11を所定方向F1方向に効率よく回転させることができる。
【0034】
本発明において、攪拌部12の構造は特に限定されないが、好適には、攪拌翼を有し、かつ使用時には固定されていることが望ましい。前記攪拌翼の数は限定されず、試験槽の大きさや攪拌条件等を考慮して、適宜好適な数とすることができる。
【0035】
攪拌翼の形状について、特に限定されないが、好適には、攪拌部12の主軸124に対して略横F字状に、板状の第1攪拌翼121と、板状の第2攪拌翼122と、板状の第3攪拌翼が形成されていることが望ましい。第1攪拌翼121は、試験槽11内の周方向側に設けられ、第2攪拌翼122は試験槽11内の中心側に設けられている。そして、第3攪拌翼123は、前記第1攪拌翼121と前記第2攪拌翼122とを連結し、試験槽11内の底部に設けられ、この端縁1211は側面視試験槽の底面と実質平行となるように設けられている。このような攪拌部12とすることで、効率よく攪拌することができる。
【0036】
本発明では、試験槽11内に設置された状態の攪拌部12について、試験槽11の底面と実質平行な部分(例えば、攪拌翼123の端縁1231等)を有し、前記実質平行な部分と試験槽11の底面との距離が、0.01〜3.0cmであることが望ましい。かかる距離とすることで、試験槽11内に堆積した繊維混入フレッシュコンクリート等も効率よく攪拌すること等ができる点で望ましい。
【0037】
更に好適には、第1攪拌翼121、第2攪拌翼122、第3攪拌翼123は、試験槽11内に発生する攪拌流F2に対して所定の傾斜角度を有するように形成されていることが望ましい。例えば、第1攪拌翼121は、第1攪拌翼121に衝突する攪拌流F2が略垂直方向F3(図3参照)に方向転換するように、形成されている。第2攪拌翼122は、試験槽11内の略中心位置に形成され、前記第1攪拌121と異なる方向に傾斜がかかっているため、より効率よく攪拌することができる。第3攪拌翼123は、側面視、角度a(図5参照)だけ傾斜がかかっているため、これに衝突する攪拌流F2を上方に巻き上げることができる。このように、攪拌翼121,122,123に所定角度を有することで、効率よく攪拌することができる。
【0038】
回転駆動部13は、前記試験槽11に回転動力を伝達する。これにより前記試験槽11を矢印F1方向(図3)に回転させることができ、繊維混入フレッシュコンクリートや洗浄水等を効率よく攪拌することができるとともに、補強繊維を効率よく試験槽11から浮上させることができる。
【0039】
特に、繊維混入フレッシュコンクリートと洗浄水とを混合した状態は、高い粘性を有する状態である。従って、例えば、攪拌棒等を回転させることで攪拌する方法では、大きな攪拌流を起し難いこと等から攪拌効率が悪い。また、攪拌装置等を用いた場合では装置の故障も引き起こし易い。これに対して、試験槽11自体を回転することで、このような粘性の高い液体であっても、大きな攪拌流F2を発生させることができること等から、装置内の目詰まりや故障等を引き起こすこともなく、効率よく攪拌することができる。
【0040】
本発明では、回転駆動部13により試験槽11を回転させる方向については、一方向に限定されず、例えば、試験槽11を時計周り(F1方向;図3参照)に所定時間回転させた後、反時計回りに回転させるようにしてもよい。
【0041】
回転駆動部13の構造については、試験槽11を前記F1方向(図3参照)に回転させることができればよく、その構造等については限定されず、例えば、モーター等を動力源として用いることができ、小型の発動発電機等を電源として用いることができる。
【0042】
また、回転駆動部13から試験槽11への回転動力の伝達方法については限定されず、従来公知の動力伝達機器や伝動機器等を用いることができ、例えば、回転駆動部13と一体化させた状態で固定化する方法や、歯車や、歯車を組み合わせたギヤ等を用いることができる。
【0043】
液受け部14は、前記試験槽11から溢れ出した洗浄水や補強繊維等を回収し、開口部Aよりこれを排出する。液受け部14の形状は、特に限定されず、例えば多角形状であってもよいし、円形状であってもよい。また、開口部Aの形状や設置数についても、特に限定されず、複数箇所設けてもよい。
【0044】
また、液受け部14は、前記開口部Aに向かって傾斜が形成されていることが望ましい。前記開口部Aに向かって傾斜が設けられていることで、溢流液が前記液受け部14内に残留することなく、効率よく開口部Aから送り出すことができる。
【0045】
本発明において、前記傾斜を形成される方法については特に限定されず、例えば、底板18には移動容易とするためにタイヤ181,181,182,182を設けてもよい。さらに、タイヤ前輪181よりもタイヤ後輪182のタイヤ径を大きくすることで、液受け部14に傾斜をつけることもでき、かつ補強繊維分離装置1の重心をやや前方にすることができる。そのため、足場が悪い工事現場であっても容易に移動・運搬させることもできる。
【0046】
液受け部14の孔部D(図4参照)の構造は特に限定されないが、試験槽11を円滑に挿入することができる観点から、孔部Bから側壁141が上方に起立した形状であることが望ましい。側壁141を設けることで、前記側壁141に沿って試験槽11を矢印Y方向(図4参照)に円滑に挿入でき、試験槽11が回転する際のガイドとしても機能させることができる。
【0047】
分離部19は、前記液受け部14の開口部Aから回収した溢流液(洗浄水や補強繊維等を含有する。)から補強繊維を分離する。これにより、繊維混入フレッシュコンクリートに含まれる補強繊維を取り出すことができる。分離部19は前記補強繊維を分離することができればよく、その構造等は特に限定されないが、例えば、ふるい網やネット等を設け、溢流液を前記ふるい網や前記ネット等に通過させることで補強繊維を分離することができる。前記ふるい網やネットの網目の大きさは、測定対象である補強繊維が通過できない大きさであればよく、特に限定されないが、例えば、短繊維の場合には、0.5mm〜10.0mmであることが好ましく、さらには、0.5mm〜2.0mmであることが好ましい。
【0048】
また、分離部19は、独立して設ける必要はなく、図示はしないが、開口部Aに前記ふるい網や前記ネットを貼付することで、開口部Aに補強繊維が残留する構造とすることもできる。
【0049】
本発明では、前記溢流液から補強繊維を分離した後の液体を、前記試験槽11に再度送り込む送液部20を設けることが望ましい。送液部20は、前記分離部19により補強繊維を分離した後の使用液を再度試験槽11内に供給する。これにより洗浄液を再利用することができ、洗浄液の少量化を可能とすることができる。特に、トンネル内等のように水の確保(送液)が困難な環境下での使用において、洗浄液の少量化ができる点は望ましい。
【0050】
前記送液部20は、前記溢流液から補強繊維を分離した後の液体を、試験槽11に送液することができればよく、その構造等については特に限定されず、例えば、従来公知のポンプ等を用いることができる。また、送液部20で電源を必要とする場合には、回転駆動部13に用いる電源を共有することもできる。
【0051】
また、前記送液部20では、必要に応じストレーナー等のろ過器材を用いてもよいし、溢流液の粘性が高すぎる場合等は適宜新しい洗浄液を継ぎ足してもよい。
【0052】
図8は、本発明に係る補強繊維分離装置の第2実施形態の側面視の簡略図であり、図9は同実施形態の正面視の簡略図である。以下、第1実施形態と共通する点については説明を割愛し、相違点について主に説明する。
【0053】
図8に示された符号2は、補強繊維分離装置を表している。該補強繊維分離装置2は、液受け部24の底部が、開口部Aに向かって傾斜が形成されていることを特徴とする。例えば、図8に示すように液受け部24の底部241に傾斜が形成されていることで、溢流液を開口部Aに向かって効率よく集めることができる。このように、本発明において、前記液受け部24に開口部Aを設け、かつ前記液受け部24の底が前記開口部Aに向かって傾斜が形成されている構造とすることは望ましく、前記傾斜を形成する手段は、第1実施形態である補強繊維分離装置1のようにタイヤ181,182のタイヤ径を変えることに限定されない。
【0054】
図10は、本発明に係る補強繊維分離装置1の使用を説明するための概念図である。即ち、補強繊維分離装置1を用いて繊維混入フレッシュコンクリートから補強繊維を分離する工程を説明するものである。なお、図10は、図1に示した補強繊維分離装置1を横断面側面視し、補強繊維分離装置1の試験槽11と液受け部14を概念的に示した図であり、他の構成部分は省略している。
【0055】
前記補強繊維分離装置1を用いて、所定量の繊維混入フレッシュコンクリートKに混入されている補強繊維K´の繊維量を測定することで、繊維混入フレッシュコンクリートK中の補強繊維K´の混入率を求めることができる。以下、その手順についてP1〜P4状態に沿って説明する。
【0056】
図10のP1状態は、所定量の繊維混入フレッシュコンクリートKを試験槽11に投入した状態である。前記繊維混入フレッシュコンクリートKは補強繊維K´が混入されている。なお、本発明においては、繊維混入フレッシュコンクリートの状態等については限定されないが、好適には、空気量試験(JIS A 1128 フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法)用の容器等、容量が明確な容器を利用して採取した、繊維混入フレッシュコンクリートであることが望ましい。このような繊維混入フレッシュコンクリートを用いることで、試験誤差をより減少させることができる。このP1状態の試験槽1に洗浄水(洗浄液)を注入しながら攪拌することでP2状態となる。
【0057】
図10のP2状態は、試験槽11中に洗浄水を注入しながら回転させている状態である。前記注入された洗浄水と繊維混入フレッシュコンクリートKを試験槽11内で攪拌部12(図示せず。図1等参照)を用いて混合・攪拌している状態である(図10の点線矢印R参照)。このように、試験槽11に注水しながら、試験槽11自身を回転させることで、補強繊維K´を繊維混入フレッシュコンクリートKから効率よく分離できるとともに、浮上させることができる。また、試験槽11と液受け部14が直接接触しない構造であるため、試験槽11を効率よく回転させることができる。
【0058】
攪拌時の注水量は特に限定されないが、攪拌時の注水量は多すぎると、補強繊維と一緒に測定不要な細骨材や各種混入材が急激に浮遊してくる現象が起きる。従って、あらかじめ試験し、前記現象が起きることのない適切な注水量となるように制御することが望ましい。また、水面Wの上昇速度を測定し、これに基づいて洗浄液の注入量を制御する注水機能を補強繊維分離装置1に付与してもよい。
【0059】
このように、洗浄水を注入し続けることで液面Wの高さが上昇し続け、その結果、試験槽11の上端開口部から洗浄水や補強繊維K´が溢流していくことでP3状態となる。
【0060】
図10のP3状態は、試験槽1に注入された洗浄水が溢流し、溢流液として液受け部14内に溢れ出している状態である。そして、液受け部14に設けられた開口部A(図2符合A参照)から前記溢流液が排出されている。この溢流液には繊維混入フレッシュコンクリートKから分離された補強繊維K´が含まれており、溢流液とともに繊維混入フレッシュコンクリート中のセメント粒子や微細な骨材が試験槽11の上方に浮遊することで、液受け部14内に溢れだし、更には該液受け部14の開口部Aからふるい網3上に排出される。これにより、前記ふるい網3上で補強繊維K´を回収できる。
【0061】
攪拌時間は試験槽11内において補強繊維K´が浮遊してこなくなるまで継続して行なうことが望ましく、更に好適には、補強繊維K´をふるい網3に回収した後に、試験槽11内から洗浄液を排出し、補強繊維が残留していないことを確認することが望ましい。これによってより正確に補強繊維K´の混入量を測定することができる。攪拌終了後には、試験槽11から洗浄液を捨て、試験槽11の中に補強繊維K´が残っていないことを確認することが望ましい。
【0062】
そして、前記ふるい網3を通過した洗浄液については、再度試験槽11に投入すべく再利用することができる(図示せず)。これにより、洗浄液(水)の使用量を少量化することができる。
【0063】
図10のP4状態は、繊維混入フレッシュコンクリートKに混入された補強繊維K´が全て分離された状態を示している。この後、ふるい網3上に回収された補強繊維K´を必要に応じ、軽く洗浄・乾燥した後、総重量を計量したり、繊維長を測定することで、繊維混入率の計算を行なうことができる。
【0064】
以上より、本発明によれば、所定量の繊維混入フレッシュコンクリートKが投入された試験槽11内で洗浄液を溢流させながら試験槽11を回転させることで、試験槽11内に大きな攪拌流を発生させることができる。そして、攪拌部12を設けることで効率よく補強繊維K´を浮上させることができる。その結果、手等ですくったり、大掛かりな分離装置を用意する必要もなく、補強繊維K´を効率よく分離・回収できる。
【0065】
本発明において、試験槽11の容積や、繊維混入フレッシュコンクリートKの投入量等については特に限定されないが、好適には、試験槽11の容量が10〜30Lであり、繊維混入フレッシュコンクリートKの投入量が5〜10Lである場合には、試験時間は繊維混入フレッシュコンクリート試料の投入後5分程度で完了するため試験時間が短時間ですむ。
【0066】
従って、本発明によれば、簡易な補強繊維分離装置でありながら、効率よく補強繊維量を測定できる。これによって、繊維混入率試験の煩雑な洗い作業の省力化も可能となり、繊維混入率試験の所要時間を短縮できる。
【0067】
本装置で分離することができる補強繊維K´は洗浄液より比重が小さい繊維である。即ち、洗浄液より比重が小さい補強繊維K´は、試験槽11から洗浄液が溢流するとともに浮上する(図10のP2〜P4等参照)。これにより、浮上した補強繊維K´を回収することができる。本発明では、洗浄液より比重が小さい補強繊維であればよく、その種類については限定されない。また、補強繊維K´は、短繊維でもよいし、連続繊維補強材でもよいし、連続繊維シートでもよい。
【0068】
本発明に用いる洗浄液の種類は特に限定されないが、水を洗浄水として用いることができる。前記洗浄水は、工業用水や水道水であってもよいし、中水等であってもよい
【0069】
例えば、前記洗浄液として水を用いた場合には、水の比重より小さい補強繊維K´について測定することができ、例えば、合成樹脂製の補強繊維や、多孔質、発泡、中空形態を有する各種材料の補強繊維等といった幅広い補強繊維の分離に使用することができる。好適には、ポリプロピレン系、ポリエチレン系などのポリオレフィン系繊維に用いることができるが、これら以外の材料であっても、例えば独立気泡を有する構造等であれば、比重が水よりも小さくなるため使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、混入繊維フレッシュコンクリート打設時等における補強繊維量の測定に用いることができる。特に、繊維補強コンクリート打設時の測定試験に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る補強繊維分離装置の第1実施形態の側面視の簡略図である。
【図2】同実施形態の正面視の簡略図である。
【図3】同実施形態の上面視の簡略図である。
【図4】同実施形態を分解した状態の斜視簡略図である。
【図5】同実施形態の攪拌部12の側面視の簡略図である。
【図6】同実施形態の攪拌部12の上面視の簡略図である。
【図7】同実施形態の攪拌部12の斜視間略図である。
【図8】本発明に係る補強維分離装置の第2実施形態の側面視の簡略図である。
【図9】同実施形態の正面視の簡略図である。
【図10】本発明に係る補強繊維分離装置の使用を説明するための簡略図である。
【符号の説明】
【0072】
1,2 ,3 補強繊維分離装置
11,21,31 試験槽
12,22,32 攪拌部
13,23,33 回転駆動部
14,24,34 液受け部
K 繊維混入フレッシュコンクリート
K´ 補強繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の繊維混入フレッシュコンクリートが投入され、かつ洗浄液が注入され続け、自らが回転可能な試験槽と、
前記試験槽に回転動力を伝達する回転駆動部と、
前記繊維混入フレッシュコンクリートと前記洗浄液とを攪拌する攪拌部と、
前記試験槽から溢れ出した溢流液を受ける液受け部と、
前記溢流液から、前記繊維混入フレッシュコンクリートに含まれる補強繊維を分離する分離部と、
を少なくとも備える繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項2】
前記試験槽は、前記混入繊維分離装置から脱着可能であることを特徴とする請求項1記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項3】
前記液受け部は前記溢流液を前記分離部へと排出する開口部を有し、かつ前記液受け部は前記開口部に向かって傾斜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項4】
前記試験槽の上部フランジは外側方向にせり出すように形成され、前記せり出している部分の上面の少なくとも最外部分が底方向に傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項5】
前記攪拌部が固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項6】
前記攪拌部は、試験槽の底面と実質平行な部分を有し、かつ前記実質平行な部分は、前記試験槽の底面から0.01〜3cmの距離であることを特徴とする請求項5に記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項7】
前記溢流液から前記補強繊維を分離した後の液体を、前記試験槽に再度送り込む送液部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維分離装置を用いた繊維混入フレッシュコンクリートの補強繊維の分離方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−267915(P2008−267915A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109574(P2007−109574)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】