繰返し可能な熱処理方法および機器
第1の熱処理方法は、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視し、熱効率パラメータの監視に応じて、放射装置が放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新する段階を含む。第2の方法は、面の加熱パラメータの測定に応じて工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を予測し、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前に調整する段階を含む。第3の方法は、面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定し、この温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する段階を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年9月14日出願の米国特許出願第60/716,488号からの優先権の利益をクレームする。
本発明は、熱処理に関するものであって、より特定すると、工作物を熱処理する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの応用が工作物の熱処理に関係する。例えば、共有米国特許第6,594,446号は、半導体ウェーハを焼きなます種々の方法を開示している。例えば、ウェーハを通る熱伝導率より遅い傾斜速度でウェーハ全体を中間温度まで予熱し、次にウェーハの素子側を熱伝導率よりかなり速い速度で加熱する。これは、素子側に放射フラッシュを当てることにより行う。一例として、基板側をアーク・ランプで照射してウェーハ全体を、例えば、400℃/秒などの速度で加熱することにより、ウェーハを、例えば、700℃などの中間温度まで予熱する。次に、フラッシュ・ランプから1ミリ秒フラッシュなどの高強度のフラッシュを素子側に当てて、素子側だけを、例えば、1300℃などの焼きなまし温度まで加熱する。フラッシュ中は、素子側を高速加熱(105℃/s程度)するために、ウェーハのバルクは、中間温度に留まり、フラッシュの後にヒート・シンクとして作用して素子側を冷却する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ウェーハ毎の性能の変動を最小にするには、一貫して再現可能または繰返し可能な熱プロセスで、できるだけウェーハ毎に同じ熱サイクルに近くなるように各ウェーハを確実に処理することが望ましい。
熱処理装置の効率は、時間と共に変わることがある。例えば、装置の効率は、構成要素の劣化や汚染や老化により低下したり、構成要素の交換により向上したりすることがある。本発明の実施の形態の第1の態様は、この問題を補償することに関する。
【0004】
更に、工作物自体の熱パラメータ(照射を受ける面の放射率など)が繰返し性に大きな影響を与えることがある。例えば、工作物が半導体ウェーハであって照射を受ける面がウェーハの素子側の場合は、異なるウェーハの素子側は、異なる放射率を有する傾向がある。見かけが同じウェーハのグループの間でもかかる放射率の差があることが分かっている。或る装置内に用いられている設備の正確さに依存して、これらのウェーハ毎の放射率の変動は、ウェーハが受ける熱サイクルの意図しないウェーハ毎の変動の大きな原因になり得る。本発明の例示の実施の形態の第2の態様は、この問題に関する。
【0005】
本発明の実施の形態の第3の態様は、放射フラッシュを実施中のフラッシュの実時間フィードバック制御に関する。個々の工作物への連続的なフラッシュの加熱効果の差は、かかるフィードバック制御を行うことにより、うまく補償できることがある。
本発明の実施の形態の第4の態様は、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に適切な形の電気パルスを供給することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様または実施の形態では、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視することを含む方法を提供する。この方法は、更に、この熱効率パラメータの監視に応じて、放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新することを含む。
装置の熱効率パラメータの自動監視に応じて放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新することにより、この装置は、例えば、劣化や汚染や老化または装置の構成要素の交換などにより装置の効率が時間と共に変わるのを正しく自動的に補償することができる。このように自動調整装置を備えることにより、頻繁に手動で再較正する必要がなくなる。
【0007】
本発明の別の態様または実施の形態では、面の加熱パラメータの測定に応じて、工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を予測することを含む方法を提供する。この方法は、更に、この予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整することを含んでよい。
このようにして放射フラッシュを事前調整することにより、測定加熱パラメータ(加熱面の反射率を含んでよい)の工作物の間の変動を補償するようにフラッシュを事前調整することができる。したがって、工作物の間の熱サイクルの繰返し性は、向上する。更に、かかる方法により、熱特性がまだ決定されていない工作物の熱処理を容易にすることができる。
【0008】
本発明の別の態様または実施の形態では、面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定し、この温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御することを含む方法を提供する。
【0009】
望ましければ、この後者の電力制御の態様と放射フラッシュの事前調整に関する前の態様とを組み合わせてよい。かかる実施の形態の利点として、放射フラッシュの事前調整を用いて、フラッシュの残りの部分の電力を制御するときに行うフラッシュ電力の調整の大きさを事実上、小さくすることができる。これらの2つの態様をこのように組み合わせることにより誤差を訂正することができる。他の方法では、これは、後者の電力制御の態様で自分自身を訂正するときに非常に大きくなることがある。また、これらの2つの態様をこのように組み合わせることにより、フラッシュ自身の残りの部分の間の電力制御の介入の程度を少なくして一貫した熱サイクルを実現して、パルスの波形および温度対時間曲線をサイクルの間で更に一貫させることもできる。または、望ましくは、この電力制御の態様は、かかる事前調整なしに行ってよい。
【0010】
本発明の別の態様または実施の形態では、工作物を熱処理する方法を提供する。この方法は、工作物に入射する放射フラッシュを作る放射装置に、パルスの立ち下がり時間がパルスの立ち上がり時間より短い電気パルスを供給することを含む。
本発明の別の態様または実施の形態では、熱処理装置を制御してここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するよう構成したプロセッサ回路を含む機器を提供する。
本発明の別の態様または実施の形態では、ここに述べた種々の機能の1つまたは全てを実行する手段を含む機器を提供する。
【0011】
本発明の別の態様または実施の形態では、ここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するようプロセッサ回路に指示する命令コードを記憶するコンピュータ読取り可能媒体を提供する。
本発明の別の態様または実施の形態では、プロセッサ回路が実行すると、ここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するコード手段を備えるコンピュータ・プログラムを提供する。
【0012】
本発明の別の態様または実施の形態では、媒体内に実現される信号であって、ここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するようプロセッサ回路に指示するコード・セグメントを含む信号を提供する。
ここに述べた機能の任意の組合せを実行させるために、かかる機器、媒体、または信号を含む任意の数のかかる実施の形態を提供する。
【0013】
本発明の別の態様または実施の形態では、望ましければ、ここに述べた別の態様の任意の組合せまたは部分的な組合せを1つの実施の形態にまとめてよい。例えば、監視した熱効率パラメータに応じて制御情報を自動的に更新することに関する態様と、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整することに関する態様の任意の1つ以上とを組み合わせて、フラッシュの最初の部分の間に測定した表面温度に応じてフラッシュの残りの部分の電力を制御し、またその立下り時間が立ち上がり時間より短い電気パルスを放射装置に供給してよい。1つの例示の実施の形態では、ここに述べた態様の全てを実施してよい。更に一般に、ここに述べた態様の1つ1つとここに述べた他の態様の任意の1つ以上とを組み合わせてよい。または望ましくは、残りの態様を用いずに本発明の態様の任意の1つを特定の実施の形態だけで実施してよい。
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と共に本発明の特定の実施の形態に関する以下の説明を見れば、当業者に明らかになる。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る高速熱処理(RTP)装置を全体的に100で示す。この実施の形態では、装置100は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュを作る放射装置180と、測定装置102と、測定装置102および放射装置180と通信するプロセッサ回路110とを含む。この実施の形態では、測定装置102は、放射装置180に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視し、プロセッサ回路110は、熱効率パラメータの監視に応じて、放射装置180が放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新する。
【0015】
この実施の形態では、測定装置102は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の面104の温度も測定する。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、この測定温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する。
この実施の形態では、プロセッサ回路110は、面104の加熱パラメータの測定値に応じて放射フラッシュの加熱効果を予測する。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、また予測加熱効果に応じて放射フラッシュの事前調整を行う。
【0016】
高速熱処理室
この実施の形態では、装置100は、工作物106を熱処理するのに用いる。この実施の形態では、工作物106は、半導体ウェーハ120を含む。より特定すると、この実施の形態のウェーハ120は、例えば、マイクロプロセッサなどの半導体チップの製造に用いる300mm径のシリコン半導体ウェーハである。この実施の形態では、工作物106の第1の面104は、ウェーハ120の上側、すなわち、素子側122を含む。同様に、この実施の形態の工作物106の第2の面118は、ウェーハ120の裏側、すなわち、基板側124を含む。
【0017】
この実施の形態では、ウェーハ120のかかる熱処理を行うため、ウェーハを高速熱処理室130内に支持する。この実施の形態では、室130は、共有特許協力条約公開第WO03/060447号(これをここに援用する)に開示されているものとほぼ同様であり、工作物の上と下に放射線吸収領域を含む。室130は、上部および底部の選択的に放射線を吸収する壁132および134と、側壁とを含む。側壁の2つを136および138で示し、他の2つは、図示の都合上、取り除いている。この実施の形態では、側壁136および138は(図示していない別の側壁も)鏡のように反射するダイアモンドで削ったアルミニウム表面を含み、選択的に吸収する水冷窓を含む上部壁132および下部壁134と協働する。
【0018】
この実施の形態では、室130は、工作物106を内部に支持する空洞を有する内壁140を更に含む。この実施の形態では、特許協力条約公開第WO2004/057650号(これをここに援用する)に開示されているものと同様の工作物支持装置(図示せず)により、工作物は、その空洞内に支持される。または、工作物は、例えば、複数の水晶ピン(図示せず)などを用いる従来の方法で支持してよい。より一般に、工作物を支持する他の適当な手段を代わりに用いてよい。
【0019】
内壁140は、特定の応用に依存して放射線を吸収または反射してよい。反射面の方がエネルギ効率が良いが、放射線吸収面は、熱の均一度が高い。または両極端の中間をとって、例えば、陽極酸化アルミニウムなど、部分的に反射し部分的に吸収する面などを用いてよい。同様に、望ましくは、室130の種々の反射面の代わりに完全にまたは部分的に放射線を吸収する面を用いてよい。好ましくは、室の全ての面を冷却装置144により冷却する。この実施の形態では、これは循環水冷装置を含む。
【0020】
この実施の形態では、工作物106の面104の反射率のために、面104は、パターン化された鏡として作用して室130の一部(図示せず)の映像を測定装置102に反射する。この実施の形態では、室130のこの映像の部分は、できるだけ黒にして、面104で反射される電磁放射線を測定装置102が検出しないようにする。
【0021】
この実施の形態では、装置100は、ウェーハ120を予熱する予熱装置150を更に含む。この実施の形態の予熱装置150は、室130の底壁134の下に配置した高強度アーク・ランプ152および反射装置154を含む。この実施の形態では、底壁134はフィルタを事実上含み、これを通して、予熱装置150のアーク・ランプ152および反射装置154は、電磁放射線を放射してウエーハ120を加熱する。より特定すると、この実施の形態の底壁134は、水冷窓156を含む。更に特定すると、この実施の形態の水冷窓156は、その間に冷却チャネルを形成する2枚の平行な間隔をあけた水晶ガラスを含み、これを通して冷却装置144により水をポンプ送りする。この実施の形態では、水冷窓は、アーク・ランプ152から工作物106への放射線の大部分を透過させるが、1450nmの放射線は吸収する。
【0022】
装置100は、更に、診断用照明源160などの複数の追加の測定装置と、例えば、映像装置162および高速放射計164などの放射線検出器を含む。望ましくは、これは、前に述べた共有PCT公開第WO03/060447号に述べられているように用いてよい。この実施の形態では、測定装置102、映像装置162および高速放射計164は、1450nmの診断波長で動作し、ウエーハ温度およびその光学的特性の測定を容易にする。
【0023】
この実施の形態では、装置100は、更に、工作物106の第1の面の104に入射する放射フラッシュを作る放射装置180を含む。より特定すると、この実施の形態の放射装置180は、フラッシュ・ランプ装置を含む。更に特定すると、この実施の形態の放射装置180は、室130の上壁132のすぐ上に配置された第1、第2、第3、第4のフラッシュ・ランプ182,183,185,187と反射装置184とを含む。または、3つ以下のフラッシュ・ランプ、例えば、1つのフラッシュ・ランプなどを用いてよい。逆に、5つ以上のフラッシュ・ランプ、例えば、非常に多数のフラッシュ・ランプのアレイなどを用いてよい。または別の態様として、例えば、マイクロ波フラッシュまたはパルス発生器などの他のタイプの放射装置をフラッシュ・ランプの代わりに用いてよい。この実施の形態では、上壁132は、上に述べた水冷窓156と同様の水冷窓185を含む。
【0024】
この実施の形態では、放射装置180は、更に、フラッシュ・ランプ182,183,185,187に電力を供給して放射フラッシュを作る電源装置188を含む。この実施の形態では、電源装置188は、個々のフラッシュ・ランプ182,183,185,187にそれぞれ電力を供給する個々の電源装置189,191,193,195を含む。または、望ましくは、フラッシュ・ランプ182,183,185,187は、単一の共通電源で電力を供給してよい。
【0025】
この実施の形態では、ウェーハ120を室130内に挿入する前に、ウェーハの素子側122に、ウェーハの素子側の表面領域内に不純物原子、すなわち、ドーパントを導入するイオン注入プロセスを行う。イオン注入プロセスでは、ウェーハの表面領域の水晶格子構造に傷をつけ、注入したドーパント原子を電気的に不活性な格子間位置内に残す。ドーパント原子を格子の置換位置に移して電気的に活性にするため、またイオン注入中に起こる結晶格子構造の傷を修復するため、ウェーハの素子側の表面領域を高温に加熱して焼きなます。
【0026】
この実施の形態では、かかる焼きなましは、共有米国特許第6,594,446号および第6,941,063号(両特許をここに援用する)、および上に述べたPCT公開第WO03/060447号に開示されている方法と同様にして行う。例えば、焼きなまし方法の第1の段階は、ウェーハを通る熱伝導時間より遅い速度でウェーハを中間温度まで予熱して、ウェーハ全体を比較的均一に中間温度まで加熱することを含んでよい。この実施の形態では、この予熱段階では、ウェーハの裏側、すなわち、基板側124をアーク・ランプ152で照射して、ウェーハを100℃/秒から400℃/秒などの傾斜速度で、例えば、700℃などの中間温度まで加熱する。
【0027】
予熱段階の後、ウェーハの上側、すなわち、ウェーハを通る熱伝導時間よりかなり速い速度で実質的に一層高い焼きなまし温度まで素子側122を急加熱して、ウェーハの上側の表面領域だけは最終の焼きなまし温度まで加熱してウェーハのバルクは、比較的冷たい中間温度の近くに留めておく。この実施の形態では、この第2の段階で放射装置180からの高電力フラッシュを、例えば、1ミリ秒程度の比較的短時間、上側の面に当てる。これにより、より冷たいウェーハのバルクは、ヒート・シンクとして作用して、上側の面の急冷却を容易にする。
【0028】
かかるウェーハの十分な熱処理を確実に行うため、また室130内で次々に処理する同様のウェーハに一貫した繰返し可能な熱処理を行うため、この実施の形態では、ここに詳細に説明したように、第2の段階の間(すなわち、高速放射フラッシュの間)素子側温度を実時間で監視する。
【0029】
基板側の予熱装置
この実施の形態では、アーク・ランプ152は、カナダ、バンクーバのマットソン・テクノロジ・カナダ社(Mattson Technology Canada, Inc.)製の500kWの水壁アルゴン・プラズマ・アーク・ランプである。かかるアーク・ランプの例は、共有米国特許第4,700,102号、第4,937,490号および第6,621,199号に開示されており、これらをここに援用する。上に示した米国特許に説明されているように、かかるアーク・ランプは、タングステン・フィラメント・ランプ源に比べて半導体の焼きなまし用として多くの利点を有する。温度を更に高くするには、単一のアーク・ランプ152の代わりに多数のアーク・ランプを用いてよい。または、例えば、フラッシュ・ランプ、タングステン・フィラメント・ランプ源、これらのランプ源のアレイなどの他のタイプの予熱装置を代わりに用いてよい。
【0030】
RTPシステム・コンピュータ(RSC)
図1および図2に関連して、RTPシステム・コンピュータ(RSC)112を図2に詳細に示す。この実施の形態では、RSCは、プロセッサ回路110を含む。これは、この実施の形態ではマイクロプロセッサ210を含む。しかし、より一般に、この明細書では、「プロセッサ回路」という用語は、ここに述べる機能を実行することができる任意のタイプの装置または装置の組合せを広く含むものであって、例えば、他のタイプのマイクロ・プロセッサ、マイクロ・コントローラ、他の集積回路、他のタイプの回路または回路の組合せ、論理ゲートまたはゲート・アレイまたは任意の種類のプログラム可能な装置を、例えば、単独で、または同じ場所でまたは互いに離れた場所にある他の同様の装置と組み合せて含む(制限なしに)。追加のタイプのプロセッサ回路は、この明細書を見れば当業者に明らかであり、任意のかかる他のタイプのプロセッサ回路を代わりに用いることは、本発明の範囲から逸れるものではないと考える。
【0031】
この実施の形態では、マイクロ・プロセッサ210は、この実施の形態でハード・ディスク・ドライブを含む記憶装置220と通信する。記憶装置220は、マイクロ・プロセッサ210を構成し、またプログラムしてここに述べる種々の機能を実行する複数のルーチンを記憶するのに用いる。例えば、主高速熱処理(RTP)ルーチン221、事前調整ルーチン222、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224、シミュレーション・ルーチン226、熱分析ルーチン230およびドリフト制御ルーチン236を含み、また望ましくは、追加のルーチン(図示せず)を含んでよい。この実施の形態では、記憶装置220は、マイクロ・プロセッサ210が受けまたは用いる種々のタイプのデータを記憶するのに用いてもよい。例えば、電荷ルックアップ・テーブル228、電流削減ルックアップ・テーブル232、電流増強ルックアップ・テーブル234および工作物パラメータ記憶240などである。
【0032】
この実施の形態では、マイクロ・プロセッサ210は、この実施の形態でランダム・アクセス・メモリ(RAM)を含むメモリ装置260とも通信してよい。この実施の形態では、記憶装置220に記憶する種々のルーチンは、マイクロ・プロセッサ210が測定、計算、または用いる種々の特性、すなわち、パラメータを記憶するRAM内の種々のレジスタまたは記憶を定義するようマイクロ・プロセッサ210を構成する。これらは、基準反射率記憶261、基準照明強度記憶262、基準広帯域強度レジスタ263、工作物広帯域強度レジスタ264、工作物照射強度記憶265、測定反射強度記憶266、工作物反射率記憶267、工作物放射率記憶268、放射エネルギ記憶270、吸収エネルギ記憶272、エネルギ・インディケータ・レジスタ274、基準エネルギ・インディケータ・レジスタ276、充電パラメータ記憶278、素子側温度記憶280、予想温度記憶282、RTPパラメータ記憶284、効率パラメータ記憶286、温度誤差レジスタ288、フラッシュ干渉効果レジスタ290ならびに他の記憶および/またはレジスタ(図示せず)を含む。
【0033】
この実施の形態のマイクロ・プロセッサ210は、更に、図1に示す装置100の種々の装置と通信する入出力(I/O)インターフェース250と通信する。種々の装置は、例えば、測定装置102および放射装置180ならびに予熱装置150、診断照射源160、映像装置162、高速放射計164および種々のユーザ入出力装置(図示せず)(キーボード、マウス、モニタ、CD−ROMドライブおよびフロッピ・ディスケット・ドライブなどの1つ以上のディスク・ドライブおよびプリンタなど)を含む。この実施の形態では、入出力インターフェース250は、光ファイバ網(図示せず)を介して、これらの装置(例えば高速放射計164、測定装置102など)の少なくとも一部と通信する光電変換器を含む。これについて、かかる光通信は、予熱装置150および放射装置180が必要とする大電流や急速放電により生じる電磁妨害および電気雑音により生じる種々の困難を防ぐことが認識される。
【0034】
素子側の放射装置
図1に戻って、一般に放射装置180は、工作物106の面104(この実施の形態ではウェーハ120の素子側122)を照射する。この実施の形態では、放射装置180は、図1に示すフラッシュ・ランプ182,183,185,187および反射装置184を含む。より特定すると、この実施の形態の各フラッシュ・ランプ182は、共有米国特許出願公開第US2005/0179354号およびPCT公開第WO2005/078762号(共にここに援用する)に述べられているものと同様のカナダ、バンクーバのマットソン・テクノロジ・カナダ社製の液体冷却フラッシュ・ランプを含む。これについて、この特定のタイプのフラッシュ・ランプは、従来のフラッシュ・ランプに比べて、例えば、熱処理の一貫性および繰返し性の向上を含む多くの利点を有することが分かっている。または、他のタイプのフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。または別の態様として、例えば、マイクロ波フラッシュまたはマイクロ波パルス発生器などの他のタイプの放射装置をフラッシュ・ランプの代わりに用いてよい。より一般に、望ましくは、他の加熱装置を放射装置180の代わりに用いてよい。
【0035】
この実施の形態では、放射装置180は、ウェーハ120の熱伝導時間より短い継続時間を有する放射フラッシュを素子側122に当てる。この実施の形態では、ウェーハの熱伝導時間は、10msから15ms程度である。したがって、この実施の形態では、放射装置180は10ms以下の程度の継続時間を有する放射フラッシュを作る。より特定すると、この実施の形態の放射装置は、1ms程度の継続時間を有する放射フラッシュを作る。
【0036】
このため、この実施の形態では、放射装置180は、更に図1に示す電源装置188を含む。より特定すると、この実施の形態の電源装置188の各電源装置189,191,193,195は、フラッシュ・ランプ182,183,185,187のそれぞれの電源装置として働き、パルス放電ユニットを含む。これは、事前に充電した後で急速に放電して、各フラッシュ・ランプに入力電力の「スパイク」を供給して望ましい放射フラッシュを作る。更に特定すると、この実施の形態では、各パルス放電ユニットは、一対の7.9mFのコンデンサ(図示せず)(パルス放電ユニット当たり15.8mF)を含む。これは、3500Vで充電して最大96.775kJの電気エネルギを蓄積し、この蓄積エネルギをそれぞれのフラッシュ・ランプに、例えば、0.5msから1.5msなどの短時間に放電することができる。このように、この実施の形態の放射装置180は、最大387.1kJの電気エネルギを蓄積し、1ms程度の継続時間のフラッシュでフラッシュ・ランプ182,183,185,187を通してかかるエネルギを放電することができる。または、これより大きなまたは小さな電源または他のタイプの電源を代わりに用いてよい。
【0037】
この実施の形態では、各電源装置189,191,193,195は、放射フラッシュを作るパルス放電をフィードバック制御し、パルス放電ユニットおよび各フラッシュ・ランプと通信する電力制御回路を含む。これについては、後で説明する。または、望ましくは、複数のフラッシュ・ランプに単一の電源装置から、および/または単一の電力制御回路から電力を供給してよい。または別の態様として、単一の電源装置および制御回路を持つ単一のフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。
【0038】
電力制御回路
図1および図3に関連して、例示の電力制御回路を図3に全体的に300で示す。この実施の形態では、電源装置188の個々の電源装置189,191,193,195は、それぞれ、各フラッシュ・ランプ182,183,185,187と通信し、300で示す電力制御回路を含む。または、望ましくは、代わりに単一の電力制御回路を単一の共通電源または多重の電源と組み合わせて、また同様に単一のフラッシュ・ランプまたは多重のフラッシュ・ランプと組み合わせて、用いてよい。また別の態様として、他のタイプの電力制御回路を代わりに用いてよい。
【0039】
この実施の形態では、電力制御回路300は、電源ユニット302およびフラッシュ・ランプ(この例では、フラッシュ・ランプ182)と電気的に通信する。この実施の形態では、電源ユニット302は、プロセッサ回路110と通信し、プロセッサ回路で制御して、コンデンサ・バンク328を充電する最大3500Vの調整可能なDC電圧を作る。この実施の形態では、コンデンサ・バンク328は、2つの並列の7.9mFのコンデンサを含む(すなわち、15.8mFの有効静電容量を与える)。したがって、3500Vで充電すると、コンデンサ・バンク328は、96.775kJの電気エネルギを蓄積する。
【0040】
この実施の形態では、電力制御回路300は、第1のダイオード304および第2のダイオード306と、第1の抵抗器308および第2の抵抗器310(この実施の形態では20kΩの抵抗器)を含む。この実施の形態では、電力制御回路300は、更に、抵抗器312、ダンプ・リレー314および別の抵抗器316を含む。この実施の形態の抵抗器312は、60Ωの抵抗器を含み、抵抗器316は、5Ωの抵抗器を含む。この実施の形態では、安全のためにコンデンサ・バンクを放電しなければならない場合には、ダンプ・リレー314を用いて抵抗器312を通してコンデンサ・バンクを安全に放電する。
【0041】
この実施の形態の電力制御回路300は、全体的に320で示す第1の電力削減回路と、全体的に330で示す電力増強回路とを含む。一般に、この実施の形態の電力削減回路320は、プロセッサ回路110から受ける制御信号に応じて、フラッシュ・ランプ182に供給する電流の量を減らすことによりフラッシュ・ランプの電力出力を減らす。逆に、この実施の形態の電力増強回路330は、プロセッサ回路110から受ける制御信号に応じて、フラッシュ・ランプ182に供給する電流の量を増やすことによりフラッシュ・ランプのピーク電力出力を増やす。
【0042】
この実施の形態では、電力削減回路320は、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信するクローバ回路を含む。より特定すると、この実施の形態のクローバ回路は、コンデンサ・バンク328に並列に接続する。更に特定すると、この実施の形態のクローバ回路(すなわち、電力削減回路320)は、スイッチング回路、インダクタ324および抵抗器326を含む。この実施の形態のスイッチング回路は、この実施の形態では半導体スイッチである単一のスイッチ要素を含む。より特定すると、この実施の形態の半導体スイッチは、サイリスタ、すなわちシリコン制御整流器322であり、そのゲートは、プロセッサ回路110と通信する。この実施の形態では、インダクタ324は、5.2μHのインダクタンス、抵抗器326は、39mΩの抵抗を有する。
【0043】
この実施の形態では、電力削減回路320のサイリスタ322は、プロセッサ回路110からサイリスタ322のゲートに制御信号を受けて導通状態になってフラッシュ・ランプ182に供給する電流を減少させるまでは非導通状態である。より詳細については後で説明する。
【0044】
この実施の形態の電力増強回路330は、放射フラッシュの放射源(この実施の形態ではフラッシュ・ランプ182)および放射源の電源(この実施の形態ではコンデンサ・バンク328)と通信する誘導クローバ回路を含む。より特定すると、この実施の形態の電力増強回路330は、サイリスタ332およびインダクタ334(この実施の形態では1.5μHのインダクタンスを有する)を含む。
【0045】
この実施の形態では、電力制御回路300は、更に、サイリスタ336、インダクタ338、抵抗器340およびフリーホイール・ダイオード342を含む。この実施の形態では、抵抗器340は、5mΩの抵抗を有し、インダクタ338は、4.7μHのインダクタンス(電力増強回路330のインダクタ334のインダクタンス1.5μHより大きい)を有する。
この実施の形態では、サイリスタ336およびサイリスタ332の制御ゲートは、共にプロセッサ回路110と通信し、プロセッサ回路110がゲート電圧を与えるまでは、それぞれ非導通状態にある。
【0046】
後で詳細に説明するが、プロセッサ回路110は、サイリスタ336にゲート電圧を与えて、コンデンサ・バンク328がフラッシュ・ランプ182、抵抗器340およびインダクタ338を通して放電を開始すると放射フラッシュを開始する。このように、フラッシュを開始してアーク電流がピークに向かって増加するに従って、増加する電流に抗して自己誘導起電力(emf)(ε=−L(di/dt))がインダクタ内に発生するので、フラッシュ・ランプ182を通って放電する電流の増加速度は、4.7μHのインダクタ338により事実上、制限される。電力増強が必要な場合は、プロセッサ回路110は、サイリスタ332にゲート電圧を与えて、これを導通状態にする。これにより電流は、1.5μHのインダクタ334を通って流れる。その自己誘導emf(電流の増加に抗する)は、インダクタンスが小さいので、インダクタ338の自己誘導emfより小さい。したがって、電力制御回路のこれらの構成要素の全体の電流制限効果が減少し、アーク電流は、より高いピークに向かってより速く増加する。この実施の形態では、サイリスタ332を適当なときに点火すると、フラッシュ・ランプ182に供給されるピーク電流が事実上、増加するので、フラッシュ・ランプ182からの放射フラッシュが入射する工作物106の面104のピーク温度は、事実上高くなる。ただし、電流(したがって放射フラッシュの電力)は、サイリスタ332を点火しない場合よりやや速く減少する。
【0047】
この実施の形態では、電力制御回路300は、更に、図3に全体的に350で示す第2の電力削減回路を含む。一般に、この実施の形態の第2の電力削減回路350は、プロセッサ回路110から受けた制御信号に応じてフラッシュ・ランプ182に供給する電流の量を減らすことによりフラッシュ・ランプの電力出力を減らす回路である。この実施の形態では、第2の電力削減回路350は、第1の電力削減回路320と同様であり、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信するクローバ回路を含む。しかし、第1の電力削減回路とは異なり、この実施の形態の第2の電力削減回路350は、コンデンサ・バンク328ではなくフラッシュ・ランプ182に並列に接続する。より特定すると、この実施の形態の第2の電力削減回路350は、スイッチング回路、インダクタ354および抵抗器356を含む。この実施の形態のスイッチング回路は、この実施の形態では半導体スイッチである単一のスイッチ要素を含む。より特定すると、この実施の形態の半導体スイッチは、サイリスタ、すなわち、シリコン制御整流器352であり、そのゲートは、プロセッサ回路110と通信する。この実施の形態では、インダクタ354は、5.2μHのインダクタンス、抵抗器356は、39mΩの抵抗を有する。
【0048】
この実施の形態では、第2の電力削減回路350のサイリスタ352は、プロセッサ回路110からサイリスタ352のゲートに制御信号を受けて導通状態になってフラッシュ・ランプ182に供給する電流を減少させるまでは非導通なのである。より詳細については後で説明する。
【0049】
第1の測定装置(フラッシュ・フィードバック制御およびドリフト制御用)
図1および図4に関連して、測定装置を図4に全体的に102で示す。この実施の形態では、測定装置102は、広いダイナミック・レンジおよび超高速時間応答を有するよう設計され、共有PCT公開第WO03/060447号に開示されているものと一般に同様の超高速放射計400を含む。この実施の形態の超高速放射計400は、1450nmの狭帯域フィルタ402、光学的スタック404、高速InGaAs PINフォトダイオード406、フォトダイオード406の温度を20ミリケルビン以内に制御する統合熱電クーラ408、増幅器410およびアナログ・デジタル(A/D)変換器412を含む。
【0050】
この実施の形態では、増幅器410は、500kHzの3dB電気帯域幅を有し、非常に低雑音で高速の差動トランス・インピーダンス増幅器を含む。増幅器410は、フォト・ダイオード出力信号を調整して増幅し、増幅された信号をA/D変換器412に供給する。A/D変換器412は、増幅されたフォト・ダイオード信号の16ビットのサンプルを1MHzのサンプリング速度で作る。
【0051】
この実施の形態では、A/D変換器412は、入出力(I/O)インターフェース460を介してRSC112のプロセッサ回路110と通信する。この実施の形態では、入出力インターフェース460は、光電変換器を含み、かかる通信信号を光ファイバ網(図示せず)で送信および受信することを可能にするので、フラッシュの時間的付近での顕著な電磁妨害および電気雑音の悪影響を避けることができる。この実施の形態では、ほとんどの測定に関する計算は、測定装置102のオン・ボード回路ではなくプロセッサ回路110が行う。しかし、かかる測定に関する計算を測定装置102の光学的オン・ボード・プロセッサ回路(図示せず)で、またはより一般に、任意の他の局所または遠方のプロセッサ回路またはプロセッサ回路の組合せで行ってよい。
【0052】
この実施の形態では、超高速放射計400は、更に、超高速放射計の種々の内部構成要素へのかかる妨害の影響を減らす遮蔽470を含む。
望ましくは、超高速放射計400は、熱的に制御され、非常に安定な較正信号および基準信号を作るのに用いることができる内部基準素子450も含むことができる。かかる実施の形態では、かかる較正信号および基準信号に応じて放射計400は、A/D変換器412から受ける16ビットのサンプルを調整するオン・ボード回路も含み、超高速放射計の種々の電子構成要素内で起こる可能性のある予測できないドリフトがあれば動的に補償してよい。
【0053】
図1に戻って、この実施の形態では、測定装置102(より特定すると超高速放射計400)は、工作物106の第1の面104(より特定すると、ウェーハ120の素子側122)の現在の温度を測定する。この実施の形態では、装置100は、この実施の形態では第1の面104と放射装置180との間にあるフィルタ装置(より特定すると水冷窓186)を事実上、含む。これについて、水冷窓186は、フラッシュ・ランプ182,183,185,187が作る放射線のほとんどを工作物106の第1の面104(この実施の形態ではウェーハ120の素子側122)に透過させて素子側を加熱し、同時に1450nmの波長の放射線を吸収する。
【0054】
逆に、1450nmの狭帯域フィルタ402のために、超高速放射計は、1450nmのすぐ近くの放射線だけに応答する。したがって、超高速放射計は、面104(素子側122)からの熱放射だけを検出し、放射装置が作り、面104が反射する放射線は、全く検出しない。また水冷窓186は、素子側122が熱として放出する波長(代表的に1400nm以上)の放射線のほとんどを吸収するので、冷やすのが望ましい不適当なときに、かかる波長がウェーハに反射して素子側を望ましくなく、かつ、不均一に加熱しそうになることを防ぐ。(しかし、超高速放射計は、少量の「室の戻り」を検出する。すなわち、診断波長で素子側が熱として放出する放射線の少量が窓186の下側の水晶ガラスにより素子側に反射することがあり、かかる反射された熱放出のごく一部が再び放射計に反射する。望ましくは、例えば、共有PCT公開第WO03/060447号に開示されているのと同様の方法、または任意の他の適当な方法を用いて、室の戻りを考慮に入れてよい。)
【0055】
第2の測定装置(フラッシュ事前調整測定用)
図1および図5に関連して、第2の測定装置を図5に全体的に500で示す。この実施の形態の第2の測定装置500は、工作物106の面104に放射フラッシュが当たる前に面104の加熱パラメータの最初の測定値を得るのに用いる。
【0056】
この実施の形態では、第2の工作物の同様の面に現在の放射フラッシュを入射させると同時に、第1の工作物の第1の面に入射する将来の放射フラッシュを事前調整する。より特定すると、この実施の形態の第2の測定装置500は、図1に示す室130の外に配置し、この実施の形態では、高速熱処理のために工作物106を室130内に取りつける前に面104の加熱パラメータを測定する。このように、1つの工作物の面104の加熱パラメータは、室130の外で測定し、他方で第2のウェーハは、室内で熱処理するので、室130の処理量は、落ちない。または、望ましくは、面104をもとの場所で測定するために第2の測定装置またはそのバリエーションを室130内に配置してよい。
【0057】
この実施の形態では、第2の測定装置500で測定する加熱パラメータは、面104の放射率を含む。この実施の形態では、これは、面104の反射率を測定することにより間接に測定する。これについて、所定の波長では、工作物106の放射率εW、反射率RWおよび透過率TWは、関係εW(λ)=1−RW(λ)−TW(λ)を満足する。工作物がシリコン・ウェーハであるこの実施の形態では、水が冷たい(例えば、室温の)とき、ウェーハは、放射フラッシュの全ての波長に対して完全に不透明ではないので、少なくとも或る波長で透過率TWは、非ゼロである。
【0058】
しかし、この実施の形態では、アーク・ランプを用いて放射フラッシュを作ると透過率の影響は、最小になる。なぜなら、かかるアーク・ランプが作る放射エネルギの95%以上が冷たいシリコンの1.2μmの禁止帯幅吸収より低いからである。これに比べて、例えば、代表的なタングステン源の場合は、わずかに40%である。したがって、放射フラッシュのスペクトルで測定するとき、工作物の透過率は、ほとんどの該当する波長で無視できる。放射フラッシュを事前調整する目的からすると、この実施の形態では透過率を無視してよく、したがって放射率は、εW(λ)=1−RW(λ)で近似してよい。このように、関心のある加熱パラメータ、すなわち、面104の放射率εW(λ)は、面の反射率RW(λ)を測定することにより間接的に測定することができる。または、加熱パラメータは、面104の反射率と見てよく、これは、この実施の形態では直接測定する。
【0059】
この実施の形態では、第2の測定装置500は、照射源502、検出器504、プローブ506および第2の検出器516を含む。より特定すると、この実施の形態のプローブ506は、光ファイバ・プローブで、照射源502と光学的に通信する2つの光ファイバ508、510と、検出器504と通信する光ファイバ512と、第2の検出器516と通信する光ファイバ514とを含む。または、別の数の光ファイバを代わりに用いてよい。より一般に、他のタイプの測定装置を代わりに用いてよい。
【0060】
この実施の形態では、照射源502は、重水素ハロゲン光源を含む。これについて、かかる光源は、放射装置180が作る放射フラッシュの波長に対応する波長(紫外線、可視線、赤外線の波長)でかなりの強度を含むことが分かっている。
【0061】
または、照射源は、低強度アーク・ランプを含んでよい(その強度は、放射フラッシュを作るのに用いる高強度フラッシュ・ランプに比べて「低い」)。例えば、照射源502は、早まって面104を高温まで加熱しないようにするために、十分低い光出力パワーを持つ低強度アーク・ランプを含んでよい。低強度アーク・ランプは、連続波(DC)アーク・ランプまたは、例えば、キセノン・フラッシュ・ランプなどのフラッシュ・ランプを含んでよい。望ましくは、照射源502は、放射フラッシュを作るのに用いる高強度フラッシュ・ランプの放射スペクトルをシミュレートするフィルタを備えてよい。かかるフィルタにより、全パワーが非常に低くても、照射源502は、放射装置180の出力スペクトルをシミュレートすることができる。例えば、照射源がキセノン・フラッシュ・ランプの場合は、低強度キセノン・フラッシュ・ランプの容器は、かかる効果を達成する干渉フィルタを備えてよい。または、他のタイプの照射源を代わりに用いてよい。
【0062】
または、更に別の態様では別個の照射源を省いてよい。例えば、或る実施の形態の検出器504は、自分自身の照射源を含んでよい。または、望ましくは、面104の照射は、別の工作物に入射する現在の放射フラッシュの一部を工作物106の面104に向けることを含んでよい。例えば、光ファイバ508、512は、室130と光学的に通信するので、室130内の第1の工作物の面104を加熱するのに用いる放射フラッシュの小部分は、室の外側に逸れて、第1の工作物の処理が完了した後に室130で処理する予定の室130の外にある第2の工作物の面104を照射してよい。かかる実施の形態では、室130から逸れて第2の工作物の面104を照射する放射は、濾波してまたは1つ以上のレンズにより大きな表面領域に拡散して、面104上の強度を事実上、減らしてよい。
【0063】
この実施の形態では、検出器504は、分光計を含む。より特定すると、この実施の形態の検出器は、カナダ、BC、バーナビ(Burnaby)のフォトン・コントロール社(Photon Control Inc.)製のモデルPS001 スペクトロ・メータを含む。この実施の形態では、検出器504は、面104が受ける放射フラッシュに対応する波長スペクトル全体で工作物106の面104の反射率を測定する。より特定すると、この実施の形態の波長スペクトル範囲は、180nmから1400nmで、分光計は、180nmから1400nmの範囲の複数の離散的波長で反射率R(λ)を測定する。更に特定すると、この実施の形態の波長スペクトルは、180nmから1400nmの範囲に均一に間隔をとった2048の離散的波長λ={λ0,λ1,λ2,...,λ2047,}を含む。または、望ましくは、スペクトルの境界を変えてよい。例えば、或る実施の形態では、1100nmより長い波長のスペクトルの一部は、かかる波長で放射装置180が作るエネルギが比較的少量なので無視してよい。同様に、スペクトル内の離散的な波長の数を変えて、希望に応じて、より多数またはより少数の離散的な波長を含んでもよい。したがって、一般化のために、この実施の形態では2048の離散的な波長をここではλ={λ1,λ2,...,λN}で表す。
【0064】
または、望ましくは、検出器504は、例えば、放射フラッシュの波長スペクトルのかなりの部分にわたる広帯域反射率の値などの単一の反射率の値を作ってよい。かかる単一の反射率の値は、照射源502が放射装置180の波長スペクトルをシミュレートする実施の形態や、例えば、上に述べたように放射装置180からの放射を用いて反射率測定の目的で面104を照射する場合に用いてよい。
【0065】
この実施の形態では、第2の検出器516は、広帯域放射検出器を含む。第2の検出器516は、光ファイバ514を介して照射源502から電磁放射線を受け、照射源502からの電磁放射線の関心のあるスペクトル全体にわたる広帯域強度を表す単一のデータ値を作る。
この実施の形態では、RSC112のプロセッサ回路110は、第2の測定装置500と、より特定すると、照射源502および検出器504と、光ファイバ網(図示せず)を介して通信する。
【0066】
動作 −− 概観
この実施の形態では、高速熱処理サイクルの一貫性および繰返し性を高めるために複数の方法を組み合わせて用いる。
第1の方法では、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの加熱効果を面104の加熱パラメータの測定に応じて予測する。次に、開始する前に、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する。したがって、例えば、加熱パラメータは、工作物106の面104の放射率を含んでよく、また見かけが同じ2つの工作物が実際には少し異なる放射率を有する場合は、放射フラッシュのエネルギ出力を事前調整して、2つの工作物の面が吸収する放射フラッシの異なる割合を補償してよい。
【0067】
第2の方法では、工作物106の面104の温度を面104に入射する放射フラッシュの最初の部分の間で測定する。この温度に応じて、放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する。したがって、望ましい時間より速くまたは遅く面104が加熱されていることを、例えば、放射フラッシュの最初の部分の間(例えば、フラッシュの最初の0.3msから0.5msの間など)の面104の温度の実時間測定値が示す場合は、放射フラッシュの残りの部分の電力を減らしまたは増やして、面104の温度が望ましい温度軌道に一層、密接に追従するようにする。
【0068】
第3の方法では、放射装置180に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視し、これに応じて、放射装置が放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新する。これについて、例えば、電極、容器または冷却液などのフラッシュ・ランプ構成要素や装置100の窓186またはその他の構成要素の汚れまたは劣化のために、装置100の熱効率は、時間と共に低下する可能性がある。逆に、例えば、劣化した電極または他の構成要素を交換した場合または汚れた冷却液または窓を掃除または交換した場合は、例えば、装置の熱効率が向上する可能性がある。したがって、この実施の形態では、放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新して、装置の熱効率のこのような変化を補償する。
【0069】
第4の方法では、その立ち上がり時間より短い立下り時間を有する電気パルスを放射装置(より特定すると、この実施の形態ではフラッシュ・ランプ182,183,185,187)に供給して、工作物106の面104に入射する放射フラッシュを作る。
或る特定の実施の形態では、これらの全ての方法を組み合わせて用いてよいが、例示の別の実施の形態では、これらの方法の任意の1つを用いて、残りの任意または全ての方法を必ずしも用いなくてよい。これらの方法の全てを組み合せると、誤差は、最小また再現性は最大になる。ただし、これらの方法の1つ以上の部分的な組合せでも、極端な再現性を必要としない応用には十分である。
【0070】
主高速熱処理ルーチン −− 概観
図1および図2に関連して、この実施の形態の主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に装置100を制御して工作物106に望ましい熱サイクルを行うよう指示する。このため、この実施の形態の主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に望ましい熱サイクルを定義するユーザ指定のパラメータを受けて記憶するよう指示する。このパラメータは、例えば、キーボードなどのユーザ入力装置(図示せず)を用いてユーザが入力してよい。より特定すると、この実施の形態のユーザ指定のパラメータは、特有の工作物タイプ識別子WID、放射フラッシュを開始する直前に工作物106全体を加熱すべき望ましい中間温度TINTおよび工作物106の面104だけを加熱して工作物のバルクは中間温度TINTまたはその近くに実質的に保つときの望ましい温度ジャンプΔTを含む。プロセッサ回路110は、このユーザ指定のパラメータをRTPパラメータ記憶284内に記憶するよう指示される。
【0071】
この実施の形態では、工作物タイプ識別子WIDは、装置100が熱処理のために事前に特性化した、複数の異なるタイプの工作物の特定の1つを識別する。より特定すると、この実施の形態の工作物パラメータ記憶240は、これらの異なるタイプの事前に特性化した工作物毎の定義済みの熱処理パラメータを含む。更に特定すると、この実施の形態のユーザ指定の温度ジャンプΔTと電源装置188に蓄積すべき電荷の対応する量との関係は、ΔT=STE*ln(ECH)+OTEで近似してよい。したがって、この実施の形態の工作物パラメータ記憶240は、複数の工作物特性化レコードを記憶する。かかる各レコードは、特有の工作物タイプ識別子WIDを記憶するフィールドを含み、各フィールドは、そのタイプの工作物の所定の特性化の値STEおよびOTEを記憶し、また別のフィールドは、その工作物タイプの特性化の値STEおよびOTEを生成して記憶したときの装置100の効率を表す効率の値CTEを記憶する。
【0072】
この実施の形態では、工作物パラメータ記憶240の各レコードは、更に、特定の工作物のタイプに対応する基準エネルギ・インディケータの値EREFを記憶するフィールドを含む。これについては、後で事前調整ルーチン222に関係してより詳細に説明する。または、この実施の形態の目的では温度ジャンプと電荷との対数関係は、経験的観察と一致するが、他の適当な近似または関数関係を代わりに用いてよく、また他の対応する特性化の値を記憶してよい。例えば、指定された温度ジャンプΔTとこのジャンプを達成するために必要な電荷ECHとの関係を定義するのに、指定された中間温度TINTを考慮に入れてもよい。同様に、シリコンが吸収するより、むしろ反射する傾向がある紫外線波長では電荷が大きいほど大きな放射を作る傾向があることも、望ましくは、所定の関数関係において考慮してよい。
【0073】
この実施の形態では、主RTPルーチン221は、RTPパラメータ記憶284に記憶されている工作物タイプ識別子WIDを用いて、工作物パラメータ記憶240の対応するレコードの位置を見つけてアドレス指定するようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、次に、見つけた特性化の値STEおよびOTEおよび指定された温度ジャンプΔTを用いて、電源装置188(より特定すると、そのコンデンサ・バンク)に蓄積すべき電気エネルギECHNの対応する量を次式で計算して望ましい放射フラッシュを作るよう指示される。
【数1】
【0074】
WID、TINT、およびΔT以外のパラメータを用いて望ましい熱サイクルを定義してよい。例えば、処理する工作物が事前に特性化したウェーハ・タイプの1つでない場合は、識別子WIDを省いてよい。この場合は、ユーザ指定のパラメータは、望ましい中間温度TINTと、放電フラッシュを作るために電源装置188内に蓄積すべき電気エネルギECHNの望ましい量とを含んでよい。このように特性化していないウェーハ・タイプについては、望ましい中間温度TINTおよび望ましい温度ジャンプΔTを指定し、プロセッサ回路は、デフォルトの工作物タイプを参照して望ましい電気エネルギおよび電圧を決定し、このデフォルトの工作物タイプと実際の工作物106との放射率に差があれば、事前調整ルーチン22を実行して補償してよい。これについては、後でより詳細に説明する。
【0075】
この実施の形態では、次に、蓄積した電荷の値ECHNを調整して、現在の工作物タイプについて特性化の値STEおよびOTEを生成した後で生じた装置効率のドリフトがあれば補償する。このため、この実施の形態の主RTPルーチン221は、工作物パラメータ記憶240の現在アドレス指定されたレコードからの効率の値CTE(レコードを生成したときの装置100の効率を表す)と、装置100の現在の効率を表す現在の効率の値Ceff(N)とに応じて電気エネルギECHNを調整するようプロセッサ回路110に指示する。この実施の形態では、後者の現在の効率の値Ceff(N)は、効率パラメータ記憶238、286に記憶されている。これについては、ドリフト制御ルーチン236(段階3)に関して後でより詳細に説明する。このように、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に効率調整済みの電気エネルギの値を次式で計算するよう指示する。
【数2】
主RTPルーチン221は、この調整済みの電気エネルギの値EADJを充電パラメータ記憶278に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。望ましければドリフト訂正は省略してよい。
【0076】
この実施の形態では、プロセッサ回路110は、各電源装置189,191,193,195のコンデンサ・バンクを充電して電気エネルギの値EADJの望ましい量を蓄積する電圧を表す対応するコンデンサ充電電圧の値Vを充電パラメータ記憶278に記憶するよう指示される。この電圧Vは、効率調整済みの電気エネルギの値EADJをフラッシュ・ランプの数で割り、また各フラッシュ・ランプのコンデンサ・バンクが理想的なコンデンサである(E=0.5CV2、すなわち、V=(2E/C)0.5)と仮定して計算してよい。または、コンデンサ・バンクの非理想的な態様があれば補償するため、後者の値EADJを用いて電荷ルックアップ・テーブル228をアドレス指定して対応する充電電圧Vを見つけることにより効率調整済みのエネルギの値から充電電圧を決定してよい。
【0077】
この実施の形態では、熱サイクルを開始する前に、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に事前調整ルーチン222を実行するよう指示する。後で(段階1)より詳細に説明するが、事前調整ルーチン222は、処理する実際の工作物106の放射率を測定し、工作物106と工作物パラメータ記憶240内に記憶されているタイプの工作物のレコードを作るのに用いた工作物の放射率との差があれば補償するようプロセッサ回路110に指示する。適当であれば、充電パラメータ記憶278に記憶されている電気エネルギの値EADJおよび電圧Vを更に調整してよい。これについては、事前調整ルーチン222に関して後でより詳細に説明する。
【0078】
事前調整ルーチン222を実行した後、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に装置100を制御して熱サイクルを行うよう指示する。より特定すると、この実施の形態の主RTPルーチン221は、予熱装置150を制御すると共に、高速放射計164から受ける温度測定信号を監視して、RTPパラメータ記憶284に記憶されている望ましい中間温度TINTまで工作物106を予熱するようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、電源装置188を制御して、各電源装置189,191,193,195のコンデンサ・バンクを充電パラメータ記憶278で指定された充電電圧Vまで充電して、充電パラメータ記憶278に指定された電気エネルギの値EADJの望ましい調整済みの量を蓄積する。
【0079】
中間温度に達すると、主RTPルーチン221は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の実行を開始するようプロセッサ回路110に指示する。ルーチン224は、電源装置188に信号を送って、蓄積された電気エネルギーの放電を開始して放射フラッシュを作るようプロセッサ回路110に指示する。フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の実行および放射フラッシュの生成は、好ましくは中間温度に達したとき、またはその直後に開始して、中間温度の滞在時間を最小にする。
【0080】
熱サイクルが完了すると、主RTPルーチン221は、ドリフト制御ルーチン236を実行し、装置効率に変化があれば実際に測定して、次の熱サイクルを実行するときに装置がかかる変化を補償するようプロセッサ回路110に指示する。
【0081】
段階1: 予測および事前調整
図1、図2および図5に関連して、この実施の形態のプロセッサ回路110は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの加熱効果を面104の加熱パラメータの測定値に応じて予測するようプログラムまたは構成される。プロセッサ回路110は、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整するよう構成される。この実施の形態では、加熱効果は、面104の放射率の測定値および放射フラッシュが面104に伝達するエネルギの量に応じて予測する。
【0082】
より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、複数の同様の工作物の各面に入射する同様の放射フラッシュの各加熱効果を面の各熱パラメータの測定値に応じて予測するよう構成され、また更に、工作物毎のフラッシュを予測加熱効果に応じて事前調整するよう構成される。更に特定すると、この実施の形態の工作物の見かけは同じである。これについて、複数の工作物は、見かけが同じでも、その面104は、実際には異なる放射率を有し、したがって異なる割合の放射フラッシュを吸収してよいことが分かっている。したがって、工作物毎に放射フラッシュ自体が実際には同じであっても、見かけが同じ工作物の間のかかる放射率の変動により、面104の異なる温度軌跡やピーク温度などの異なる加熱効果が生じる傾向がある。
【0083】
例えば、図6は、2つの工作物の面の放射率の差が比較的小さくても、同じフラッシュを当てたときに、その面が到達するピーク温度にかなりの影響を与えることを示す。したがって、この実施の形態では、かかる異なる加熱効果を予測して、開始する前に放射フラッシュを事前調整してかかる変動を補償することを試みる。この実施の形態の方法は、工作物の見かけが同一または同様でない場合にも同様に適用してよい。例えば、処理する工作物が熱処理パラメータを事前に特性化して工作物パラメータ記憶240に記憶した工作物のタイプの1つに属していないときは、放射率を測定し、工作物の面への放射フラッシュの加熱効果を予測し、事前に特性化した工作物のタイプへのかかるフラッシュの予想加熱効果と比較することにより、放射フラッシュをかかる工作物について事前調整してよい。
【0084】
かかる予測および事前調整を行うため、この実施の形態の図2に示す事前調整ルーチン222は、図5に示す第2の測定装置500と協力して面104の加熱パラメータを測定するようプロセッサ回路110(より特定すると、マイクロ・プロセッサ21)をプログラムまたは構成する。より特定すると、この実施の形態の加熱パラメータは、面104の放射率を含む。これは、この実施の形態では、面の反射率を測定することにより間接的に測定する(前に述べたように、この実施の形態では、放射フラッシュの波長が短いために工作物の放射率は、無視してよく、したがって、放射率はεW(λ)=1−RW(λ)で近似してよい)。この実施の形態では、加熱パラメータは、放射フラッシュに対応する波長スペクトル(この実施の形態では180nmと1400nmとの間のスペクトル)で測定する。より特定すると、この実施の形態では、加熱パラメータの複数の値は、スペクトルの複数の各波長λ={λ1,λ2,...,λN}で測定する。
【0085】
このため、この実施の形態では、照射源502が作る照射スペクトルの強度を表す値の集合をまずメモリ装置260の基準照射強度記憶262に記憶する。この実施の形態では、これは、基準片(図示せず)を用いて行う。しかし、他の方法を代わりに用いてよい(例えば、照射強度を直接測定するために分光計(図示せず)を追加して)。この実施の形態では、基準片は、放射フラッシュに対応するスペクトルの複数の波長λ={λ1,λ2,...,λN}について既知の反射率RREF(λ)を有する。この実施の形態では、基準片は、工作物106と同じ外形寸法を有する反射性の高い磨いたアルミニウムのウェーハを含む。ただし、既知の反射率を持つ任意の他の適当な基準片を代わりに用いてよい。
【0086】
複数の反射率の値ではなく、広帯域反射率の値などの単一の反射率の値だけを用いる実施の形態では、既知の対応する単一の反射率の値を有する基準片で十分である。この実施の形態では、波長λ={λ1,λ2,...,λN}での基準片の既知の反射率RREF(λ)をメモリ装置260の基準反射率記憶261に記憶する。事前調整ルーチン222は、記憶装置220などの不揮発性記憶の位置からこれらの値を基準反射率記憶261にロードするようプロセッサ回路110に指示してよく、またはこれらの既知の反射率の値を別の方法で得るようプロセッサ回路110に指示(例えば、それが記憶されている値または位置を手で入力するようRSC112のユーザに指示するなど)してよい。
【0087】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、照射源502、検出器504、516およびプローブ506を制御して基準片の上面を照射して基準片から反射される照射の強度を測定するよう次にプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、各波長λ={λ1,λ2,...,λN}で基準片から反射される放射の測定強度の複数の測定値RREF(λ)を検出器504から受け、基準片に入射する照射源502からの照射の照射強度IREF(λ)を計算する(すなわち、波長λ={λ1,λ2,...,λN}毎にIREF(λ)=MREF(λ)/RREF(λ))。次に照射強度の値IREF(λ)をメモリ装置260の基準照射強度記憶262に記憶する。更に、この実施の形態のプロセッサ回路110は、基準片に入射する照射スペクトルの広帯域強度を表す単一の値I0REFを検出器516から受け、この値を基準広帯域強度レジスタ263に記憶する。後でより詳細に説明するように、これらの記憶済みの値IREF(λ)およびI0REFは、工作物106の面104に入射する照射スペクトルIW(λ)を決定するのに用いる。
【0088】
この実施の形態では、照射源502が作る照射スペクトルは、スペクトル的に安定、すなわち、スペクトル内の任意の1つの波長での照射強度とスペクトル内の任意の他の波長での照射強度との比は一定であり、基準片を照射したときと後で工作物を照射したときとで変わらないと仮定する。しかし、照射強度の絶対的な大きさは、変わってよい(例えば、工作物に入射する照射強度は、基準片に入射する照射強度に比べて全ての波長でやや大きく、または全ての波長でやや小さいことがある)。
【0089】
長い時間尺度にわたって照射源502に影響を与える可能性のある「ドリフト」(すなわち、他の波長に対する1つ以上の波長での比例的強度に影響を与える可能性のある緩やかな変化)があれば補償するため、基準片を用いて後で照射強度を再測定し、基準照射強度記憶262および基準広帯域強度レジスタ263の内容をこれに従ってリフレッシュしてよい。かかる再較正は、計画をたてて定期的に行ってよく、または、例えば、熱処理中に観測した温度測定値が不一致であることを示したときに行ってよい。望ましくは、かかる再較正は、各順次の工作物の各反射率を測定する前に行ってよい。しかし、処理室130の処理量を落とさないよう十分速く行うことができるのでなければ、較正の目的で照射強度をかかる頻度で再測定することは実施の形態によっては不都合である。
または、上に述べたように、工作物に入射する照射強度を任意の他の適当な方法で測定または予測してよい。
【0090】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、次にプロセッサ回路110に加熱パラメータを測定するよう指示する。この実施の形態では、これは、照射フラッシュに対応するスペクトルの複数の波長λ={λ1,λ2,...,λN}での面104の放射率εW(λ)である。この実施の形態では、放射率εW(λ)は、面104の反射率RW(λ)を測定することにより間接的に測定する。
【0091】
この実施の形態では、加熱パラメータを測定することは、加熱パラメータ内の小規模の角変動を補償することを含む。より特定すると、この実施の形態では、補償することは、面の十分大きな領域にわたって加熱パラメータを測定して小規模の角変動を事実上、平均することを含む。したがって、工作物106の面104が半導体ウェーハ120の素子側122を含むこの実施の形態では、十分大きな領域にわたって加熱パラメータを測定することは、少なくとも約1cm幅の領域にわたって加熱パラメータを測定することを含む。より特定すると、この実施の形態の加熱パラメータは、工作物106の面104上の少なくとも約2cm幅の領域にわたって、光ファイバ・プローブ506を用いて測定する。
【0092】
これについて、面104上に形成される素子の構造的寸法に比べて大きいかかる領域にわたって反射率を測定すると、かかる素子からの反射の角依存性を平均または補償して、面104の小さな部分にわたって測定するのに比べて測定誤差が小さくなることが分かった。または、測定領域が1cmより小さくても面104上の素子の寸法に比べてまだ大きいので、反射の小規模の角変動を平均するのに十分大きい。または更に別の態様として、例えば、測定領域は、2cmより大きくてよく、また面104全体を含んでよい。または、かかる誤差を小さくする他の方法を代わりに用いてよい。例えば、半球反射率を測定するのに積分球を用いてよい。しかし、積分球は、測定対象に近接するために汚染の可能性があるので、或る特定の実施の形態では望ましくないかもしれない。
【0093】
したがって、この実施の形態のプロセッサ回路110は、照射源502を制御して、放射フラッシュの波長λ={λ1,λ2,...,λN}を含む放射スペクトルで工作物106の面104上の約2cm幅の領域を照射するよう指示される。この実施の形態では照射源502は、重水素ハロゲン源を含むことが思い出される。このように、この実施の形態の面104は、放射フラッシュを作る放射装置180以外の照射源が作る放射スペクトルで照射される。
【0094】
この実施の形態では、工作物106の面104を照射源502で照射するので、事前調整ルーチン222は、照射源502が作る広帯域照射強度IOWを表す信号を検出器516から受けるようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路は、照射強度を工作物広帯域強度レジスタ264に記憶するよう指示される。同時に、この実施の形態の事前調整ルーチン222は、各波長λ={λ1,λ2,..., N}で工作物106の面104が反射する放射スペクルの測定反射強度MW(λ)を表す信号を検出器504から受けるようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、測定反射強度MW(λ)を反射強度記憶266に記憶するよう指示される。
【0095】
この実施の形態では、波長λ毎に事前調整ルーチン222は、その波長での面104の照射強度の値IW(λ)および反射率RW(λ)を計算するようプロセッサ回路110に指示する。面104に入射する照射の強度を表す照射強度の値IW(λ)を計算するため、プロセッサ回路は、工作物広帯域強度レジスタ264内に記憶されていると照射強度IOWと基準広帯域強度レジスタ263内に記憶されていると照射強度IOREFとの比を基準照射強度記憶262に記憶されている値IREF(λ)に掛ける(すなわち、IW(λ)=IREF(λ)*IOW/IOREF)よう指示される。プロセッサ回路は、得られた工作物照射強度の値IW(λ)を照射強度記憶265に記憶するよう指示される。
【0096】
特定の波長での面104の反射率RW(λ)を計算するため、事前調整ルーチン222は、反射強度記憶266内に記憶されているその波長の測定反射強度の値MW(λ)を工作物照射強度記憶265に記憶されているその波長の対応する照射強度の値IW(λ)で割る(すなわち、RW(λ)=MW(λ)/IW(λ))ようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、波長λ={λ1,λ2,..., N}毎の対応する反射率の値RW(λ)をメモリ装置260の工作物反射率記憶267に記憶するよう指示される。
【0097】
この実施の形態では、プロセッサ回路110は、次に、対応する工作物放射率の値を計算して工作物放射率記憶268に記憶するよう指示される。この実施の形態では、工作物は、不透明と仮定するので、透過率は、ゼロである。したがって、反射率の値RW(λ)毎に、対応する記憶する放射率の値は、放射率εW(λ)=1−RW(λ)である。
【0098】
望ましくは、放射率および/または反射率の値を訂正して温度差を補償してよい。これについて、前述の反射率の測定は、処理室130の外で室温で行ってよいが、面104に最初に放射フラッシュを当てるときの工作物106の温度は、かなり高い(例えば、摂氏数百度)ことがあり、フラッシュで実際に加熱するとき面104の温度は、更に高くなる(例えば、シリコンの融点の近く)。放射率および反射率は、温度と共に緩く変化するので、望ましくは、記憶済みの放射率および/または反射率に訂正を行って、面104に放射フラッシュを当てたときと測定したときとで面104の放射率および反射率が上に述べた温度差のために少し異なるという事実を補償してよい。面104の温度に差があるために記憶済みの放射率および/または反射率の値に行う訂正は、種々の工作物について経験的に決定してよい。または、かかる訂正は、一般に小さく、また後で説明するように段階2のフラッシュの実時間フィードバック制御の機能に含まれるので、望ましくは、かかる訂正は、省いてよい。
【0099】
この実施の形態では、次に事前調整ルーチン222は、プロセッサ回路110に放射フラッシュの加熱効果を予測するよう指示する。これは、面104のピーク温度を予測することを事実上、含む。
この実施の形態では、放射フラッシュの加熱効果を予測することは、面104が吸収する放射フラッシュのエネルギの量を予測することを含む。より特定すると、この実施の形態の事前調整ルーチン222は、面104の放射率の測定値と放射フラッシュが面104に伝達するエネルギの量とに応じて加熱効果を予測するようプロセッサ回路110を構成する。
【0100】
このため、この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、スペクトルの複数の各波長での加熱パラメータの複数の値と、フラッシュが面に伝達する各波長での放射の各量を示す複数の放射の値とを畳み込むようプロセッサ回路110を構成する。より特定すると、この実施の形態の加熱パラメータの複数の値は、工作物放射率記憶268に記憶されている複数の放射率の値を含む。これは、この実施の形態では、工作物の対応する反射率の値を測定することにより測定したものである。したがって、この実施の形態のプロセッサ回路110は、複数の各波長λ={λ1,λ2,..., N}での面104の複数の吸収率の値と、フラッシュが面104に伝達する各波長での放射エネルギの各量を表す複数の放射エネルギの値とを畳み込むよう指示される。
【0101】
この実施の形態では、畳み込みのための吸収率の値は、工作物放射率記憶268に記憶されている放射率の値ε(λ)である。畳み込みのための放射エネルギの値に関して、この実施の形態では、複数の放射エネルギの値IFLASH(λ)の初期値を装置100の光学的および幾何学的性質に基づいてシミュレートする。または、前のフラッシュ(最新のフラッシュなど)の一連の測定放射エネルギの値IFLASH(λ)と同じ値に、または一連の前のフラッシュについての放射エネルギの値の平均(例えば、最新のN回のフラッシュにわたる移動平均など)と同じ値に、複数の放射エネルギの値IFLASH(λ)の初期値を設定してよい。かかる実施の形態では、放射エネルギの値は、放射フラッシュを直接測定することにより得てよい。望ましくは、別個の機器(測定装置102と同様の追加の測定装置など)を設けてフラッシュの放射を直接測定し、装置100の影響を補償して、面104に実際に到着するフラッシュ・エネルギを表す値IFLASH(λ)を決定してよい。または、複数の放射エネルギの値IFLASH(λ)の初期値を、例えば、記憶装置220または他の場所に記憶してよい。
【0102】
この実施の形態では、シミュレーション・ルーチン226の指示の下にプロセッサ回路110は、放射フラッシュが面104に伝達した放射エネルギを表す複数の放射エネルギの値のシミュレーションを行う。この実施の形態では、シミュレーション・ルーチン226は、米国、カリフォルニア、パサディナのオプティカル・リサーチ・アソシエーツ(Optical Research Associates)社製のLIGHTTOOLS(TM)3D固体モデリングおよび照明分析ソフトウエアを含む。後者のソフトウエアは、システム100の光学的および幾何学的特性を分析し、面104に実際に到着する放射フラッシュのエネルギの量IFRASH(λ)を計算する。例えば、この実施の形態の電光変換効率(すなわち、コンデンサ・バンクの蓄積された電気エネルギを放射フラッシュの電磁エネルギに変換する効率)は、約44%である。同様に、作られる全放射フラッシュの中の一部は、室壁、水窓または他のシステム構成要素に吸収され、放射フラッシュの全エネルギの一部(この実施の形態では約36%)だけが実際に面104に到着する。
【0103】
したがって、この実施の形態の蓄積された電気エネルギを面104に入射する電磁エネルギに変換する全効率は、0.44*0.36=0.16である。したがって、この実施の形態では、放射装置180は、最大387.1kJ*0.16=約6x104Jの電磁エネルギを工作物106の面104に伝達することができる。この実施の形態では、シミュレーション・ルーチン226は、上記の電気的および光学的エネルギーの損失を考慮に入れて波長毎に装置100を分析して、各波長λ={λ1,λ2,..., N}で工作物106の面104に到着する放射フラッシュのエネルギーの各量IFRASH(λ)を計算するようプロセッサ回路110に指示する。シミュレーション・ルーチン226は、得られた放射エネルギの値IFRASH(λ)を放射エネルギー記憶270内に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。望ましくは、放射エネルギの値IFRASH(λ)は、後で用いるために記憶装置220に記憶してもよい。
【0104】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、工作物放射率記憶268内に記憶されている放射率の値ε(λ)と、放射エネルギ記憶270に記憶されている放射エネルギの値IFRASH(λ)とを畳み込んで、放射フラッシュの加熱効果を予測するようプロセッサ回路に指示する。より特定すると、この実施の形態の畳み込みは、Ei=Σj(ε)j*(IFRASH)i-jである。
プロセッサ回路110は、これらの値Eiをメモリ装置260の吸収エネルギ記憶272に記憶するよう指示される。
【0105】
この実施の形態では、加熱効果を予測することは、更に、畳み込みから得られる複数の吸収エネルギの値を合計することを含む。より特定すると、この実施の形態の事前調整ルーチン222は、吸収エネルギ記憶272に記憶されている全てのエネルギの値Eiを合計してエネルギ・インディケータの値ETOTを作り、このエネルギ・インディケータの値をメモリ装置260のエネルギ・インディケータ・レジスタ274に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。
【0106】
次にプロセッサ回路110は、このエネルギ・インディケータの値と、前に記憶済みの基準エネルギ・インディケータの値EREFを事実上、比較するよう指示される。この実施の形態では、前に記憶済みの基準エネルギ・インディケータの値EREFは、工作物106ではなく基準片(図示せず)について、エネルギ・インディケータの値ETOTと同じ方法で計算する。より特定すると、主RTPルーチン221に関して前に説明したように、この実施の形態の基準片は、現在の工作物タイプ(WID)についてレコードを工作物パラメータ記憶240に作るのに用いた工作物であって、このレコードからプロセッサ回路は、電気エネルギおよび電圧の値ECHN、EADJおよびVを計算するのにプロセッサ回路が用いた特性化の値OTEおよびSTEを得た。このように、この実施の形態の基準エネルギ・インディケータの値EREFは、工作物106用の工作物タイプ識別子(WID)に対応する工作物パラメータ記憶のレコードに記憶する。
【0107】
または、工作物106を事前に特性化せず、また工作物タイプ識別子WIDを持たない場合は、デフォルトのまたは一般的な工作物タイプについての工作物パラメータ記憶240のレコードを用いて、上に説明したように主RTPルーチン221の指示の下に特性化の値OTEおよびSTEを取り出し、この同じレコードを用いて、事前調整ルーチンの指示の下に基準エネルギ・インディケータの値EREFを取り出す。
【0108】
この実施の形態では、次に事前調整ルーチン222は、プロセッサ回路110に放射フラッシュを事前調整するよう指示する。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、放射フラッシュを作るのに用いる蓄積電気エネルギの量を事前調整するよう指示される。この実施の形態では、蓄積電気エネルギは、コンデンサ・バンクに蓄積された電荷を含む。より特定すると、この実施の形態の事前調整すべき蓄積電気エネルギは、電源装置188に、更に特定すると、4つの個々の電源装置189,191,193,195のコンデンサ・バンクに蓄積された電荷である。
この実施の形態では、電源装置188の蓄積電気エネルギは、工作物106についてのエネルギ・インディケータの値ETOTと基準片の前に記憶済みのエネルギ・インディケータの値EREFとの比較に応じて事前調整する。これについては、後でより詳細に説明する。
【0109】
この実施の形態では、電源装置188(より特定すると、そのコンデンサ・バンク)の蓄積電気エネルギの量EADJと放射フラッシュを作る対応するコンデンサ充電電圧Vとは、主RTPルーチン221の指示の下にプロセッサ回路110が決定し、望ましい熱サイクルを定義し処理する工作物のタイプを識別するユーザ指定のパラメータに応じて、充電電圧Vおよび対応する電気エネルギEADJを充電パラメータ記憶278に記憶することが思い出される。
【0110】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、プロセッサ回路110に放射フラッシュを事前調整するよう指示する。このため、この実施の形態のプロセッサ回路は、RTPパラメータ記憶284に記憶されているユーザ指定または定義済みのパラメータΔTを読み取る。これは、望ましい温度ジャンプの大きさを定義し、ΔTにEREF/ETOTを掛けて、放射率訂正済みの温度ジャンプ・パラメータΔTECを得る。次に、主RTPルーチン221に関して上に説明したのと同じ方法で、放射率訂正済みの温度ジャンプ・パラメータΔTECおよび工作物の特性化の値OTEおよびSTEを用いて放射率訂正済みの電気エネルギの値ECHN_ECを得る。すなわち、
【数3】
【0111】
同様に、主RTPルーチン221に関して上に説明したように、工作物の特性化の値OTEおよびSTEを生成して記憶した後に装置100の効率の劣化または変化があれば、訂正するため、事前調整ルーチン222は、更に新しい放射率訂正済みの電荷の値を用いて、放射率訂正済みかつ効率調整済みの電気エネルギの値を計算するようプロセッサ回路に指示する。すなわち、
【数4】
【0112】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、更に主RTPルーチン221に関して上に説明したのと同じ方法で、放射率訂正済み、かつ、効率調整済みの電気エネルギの値ECHN_ECを用いて、計算または電荷ルックアップ・テーブル228を参照することにより、対応する放射率訂正済み、かつ、効率調整済みの充電電圧VECを決定するようプロセッサ回路に指示する。(または、効率ドリフト訂正を省く実施の形態では、放射率訂正済みの充電電圧をEADJ_ECではなくECHN_ECから決定してよい。)次に、放射率訂正済み、かつ、効率調整済みの充電電圧VECおよび電気エネルギEADJ_ECを充電パラメータ記憶278に書き込み、以前に主RTPルーチン221の命令の下にプロセッサ回路が記憶したEADJおよびVの値に上書きする。したがって、新しい調整済みの充電電圧の値VECは、処理のために工作物106を室130に取りつけたときに電源装置188のコンデンサ・バンクを充電するのに用いる放射率訂正済みの電圧を指定し、他方で、新しいEADJ_ECの値は、装置の効率を監視するのに用いる対応する放射率訂正済みの電気エネルギを指定する(後で説明するように、段階3で)。
【0113】
工作物106のエネルギ・インディケータの値ETOTが工作物パラメータ記憶240の対応するレコードを作るのに用いた基準片のエネルギ・インディケータの値EREFより大きい場合は、工作物106は、基準工作物より大きな割合の放射フラッシュのエネルギを吸収する傾向があり、その結果、工作物106の面104を所定の温度まで加熱するのに必要な放射エネルギは、基準片の同様な面を同じ温度まで加熱するのに必要な放射エネルギより小さい。このような場合は、ΔTECは、ΔTより小さい。言い換えると、放射率訂正済みの充電電圧VECは、基準片の温度をΔTではなく、わずかにΔTECだけジャンプさせるのに必要だったはずの電圧に対応する。工作物の面104は、工作物パラメータ記憶240の現在、用いているレコードが対応する基準片の面に比べて放射率が大きいことから考えて、一次の訂正として、基準片の面をわずかΔTECだけ加熱するはずの同じ充電電圧VECは、面104をΔTの温度ジャンプだけ加熱すると予想される。
【0114】
したがって、このような場合は、面104がΔTの温度ジャンプをするのに必要な充電電圧は、基準片の面が同じ温度ジャンプをするのに必要な充電電圧より小さい。逆に、工作物パラメータ記憶240の現在、用いているレコードが対応する基準片のエネルギ・インディケータの値EFEFに比べて工作物106のエネルギ・インディケータの値ETOTが小さい場合は、調整済みのインデクスΔTECは、ユーザ指定または定義済みの値ΔTより大きく、また対応する電圧VECは、基準片の面がΔTの温度ジャンプをするのに必要であるはずの電圧Vより高い。一次訂正として、この充電電圧VECでは、面104は、ΔTの望ましい温度ジャンプをすると予想される。
【0115】
段階2: フラッシュの実時間フィードバック制御
図1および図2に関連して、この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、測定装置102と協力して、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの最初の部分の間面104の温度を測定するようプロセッサ回路110を構成する。フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、更に放射装置180と協力して、最初の部分の間の温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御するようプロセッサ回路110を構成する。
【0116】
この実施の形態では、放射フラッシュは、工作物の熱伝導時間(この実施の形態では約1x101ms程度)より短い継続時間を有する。より特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、約2msより短い継続時間を有する。更に特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、約1ms程度の継続時間を有する。
【0117】
この実施の形態では、放射フラッシュは、これまで実時間フィードバック制御を行った一般的な放射フラッシュよりかなり強力になる傾向がある。これについて、この実施の形態の放射フラッシュは、少なくとも約1MWの速度でエネルギを面に伝達する。より特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、少なくとも約10MWの速度で、更に特定すると、少なくとも約30MWの速度で、更に特定すると、少なくとも約60MWの速度でエネルギを面に伝達する。例えば、電源装置188の4つのコンデンサ・バンクを全て3500Vで充電して全体で387.1kJの電気エネルギを蓄積した場合、またはこの電気エネルギを1msと2msの間の継続時間を有するフラッシュで放電した場合は、電源装置188から放電される電気エネルギの速度は、193.5MWと387MWの間である。
【0118】
この電気エネルギを、例えば、44%の効率で170.324kJの電磁放射エネルギに変換した場合は、1−2msの継続時間にわたる放射フラッシュの電力は85.1MWと170.3MWの間である。装置100がこの電磁エネルギを面104に、例えば、36%の効率で当てた場合は、約61.3kJのエネルギが30.7MW(2msのフラッシュの場合)から約61.3MW(1msのフラッシュの場合)の平均速度で面104に伝達される。または、望ましくは、より低いエネルギ伝達速度の場合は、コンデンサ・バンクを最大電荷より低く充電してよい。逆に、望ましくは、より大きなエネルギ伝達速度を与えるには、より大きな静電容量および/または充電電圧を持つコンデンサ・バンクを代わりに用いてよい。
【0119】
この実施の形態では、フラッシュの最初の部分(この間に面104の温度を測定する)は、約1msより短い継続時間を有する。より特定すると、この実施の形態の最初の部分は、約0.5msより短い、または更に特定すると、約6x102msより短い継続時間を有する。更に特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、約1.5ms程度の継続時間を有し、フラッシュの最初の部分は、約4x102msの継続時間を有する。これについて、この実施の形態では、フラッシュの最初の部分の継続時間は、2つの競合する要因のバランスをとって選択する。すなわち、より正確な温度測定データを得たいという希望(この場合は、より多くの温度測定データを得るために最初の部分は長い方がよい)と、望ましいピーク温度を達成するためにフラッシュの残りの部分の制御を十分速く行えるようにしたいという競合する希望(この場合は最初の部分は短い方がよい)である。
【0120】
後者の関心に関して、或る例示の実施の形態では、フラッシュ・ランプに供給するピーク・アーク電流を調整して増やしまたは減らすと、面104のピーク温度は、高くまたは低くなるが、ピーク・アーク電流がすでに起こった後に調整する(したがって、ピーク・アーク電流は増えまたは減らない)と、電流パルスの形に依存して、面104の時間的温度プロフィールは、変わるが、ピーク温度は、余り変わらないことが分かった(例えば、電流ピークの後で図7に示すものと同様のベル形の電流パルスを変えてもピーク表面温度は、余り変わらないが、フラット・トップ形の電流ピークが到着した後で別のフラット・トップ形の電流パルス(図示せず)を変えると、確かにピーク工作物の表面温度に影響を与えることがある)。
【0121】
この実施の形態では、面104のピーク温度の調整に十分な時間を与えるには、最初の部分を十分短くして、制御するフラッシュの残りの時間がアーク電流のピークの前に始まるように定義することが望ましい。したがって、例えば、別の実施の形態では、最初の部分は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路110の介入により制御しなかった場合の放射フラッシュの継続時間の約半分以下または約四分の一以下の継続時間を有してよい。
【0122】
この実施の形態では、放射フラッシュの最初の部分の間に面104の温度を測定することは、放射フラッシュの最初の部分の間に複数の各時刻に面の温度の複数の測定値を得ることを含む。これは、例えば、少なくとも1x104Hzの速度または少なくとも1x105Hzの速度で温度をサンプリングすることを含む。したがって、この実施の形態では、放射フラッシュの最初の部分が、例えば、0.4msの継続時間を有する場合は、105Hzの後者の速度で面104の温度をサンプリングすると、放射フラッシュの最初の部分の間に面104の40個の温度測定値を得る。
【0123】
この実施の形態では、放射フラッシュを作るために、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110にフラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の実行を開始するよう指示する。制御ルーチン224は、電源装置188に信号を送って、蓄積された電気エネルギーの放電を開始して放射フラッシュを作らせるようプロセッサ回路に指示する。同時に、プロセッサ回路は、測定装置102と協力してフラッシュの最初の部分の間素子側の温度を測定し、またフラッシュの残りの部分をこれに従って制御するよう指示される。
【0124】
この実施の形態では、面104の温度測定値は、放射計(この実施の形態では高速放射計)で得る。より特定すると、この実施の形態の放射計は、InGaAsフォト・ダイオードを含む超高速放射計400を含む。この実施の形態では、超高速放射計400は、1MHzの速度で面104の温度をサンプリングすることが思い出される。したがって、この実施の形態では、素子側の表面温度を105Hzの遅い速度で事実上サンプリングするために、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、超高速放射計400から入出力460を介して受けた10個目毎のサンプルをメモリ装置260の素子側温度記憶280に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。したがって、この実施の形態では、プロセッサ回路110は、面104の新しい温度測定値を10μs毎に受けて記憶する。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、放射フラッシュの開始後経過した時間の量を表す時間インデクスの値(例えば、t=0、t=10μs、t=20μs、t=30μsなど)と関連してかかる各温度測定値を記憶する。この実施の形態では、最初のかかる表面温度測定値(t=0)は、放電の開始と同時に得る。
【0125】
フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、引き続きプロセッサ回路110に面104の新しい温度測定値を10μs毎に得て記憶するよう指示する。この実施の形態では、例として、フラッシュの最初の部分は、0.4msの継続時間を有すると仮定するので、フラッシュの最初の部分が終わるまでに面104の40個の温度測定値を素子側温度記憶280に記憶する。
この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、次にプロセッサ回路110に測定温度と予想温度とを事実上比較するよう指示する。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、複数の記憶済みの温度測定値の少なくとも1つと予想温度軌跡とを比較するよう指示される。
【0126】
この実施の形態では、予想温度軌跡は、工作物106に対して行う熱サイクルを開始する前に予め計算して記憶する。このため、この実施の形態のプロセッサ回路110は、熱分析ルーチン230を実行して、望ましい熱サイクルを定義するユーザ指定または定義済みパラメータに基づいて予想温度軌跡を計算する。この実施の形態では、熱分析ルーチン230は、米国、マサチューセッツ、ハーバードのハーバード・サーマル社(Harvard Thermasl Inc.)製のTAS熱分析ソフトウエア(TAS Thermal Analysis Software)を含む。または、他の熱分析ルーチンを代わりに用いてよい。より一般に、工作物106の面104の予想温度または温度軌跡を決定する他の方法を代わりに用いてよい。得られた予想温度データは、メモリ装置260の予想温度記憶282に記憶する。
【0127】
この実施の形態では、フラッシュの最初の部分の終わり(この実施の形態ではフラッシュの開始から約0.4ms後)に、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、素子側温度記憶280内に記憶されている複数の温度測定値の少なくとも1つと、予想温度記憶282内に記憶されている予想温度軌跡データとを比較するようプロセッサ回路110に指示する。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、最新の温度測定値(この例では、t=400μsでの温度測定値)と、この最新の温度測定値を得た時刻の予想温度記憶282に記憶されている対応する予想温度値とを比較する。更に特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、測定温度から予想温度を引いた値に等しい差の値を計算して、得られた差の値を温度誤差レジスタ288に記憶する。
【0128】
または、実際の測定温度と予想温度とを比較する他の方法を代わりに用いてよい。例えば、望ましくは、突出したピーク温度は、測定温度データから外挿してよく、また予想ピーク温度(すなわち、予想温度記憶282に記憶されている最高の温度の値)と比較してよい。かかる突出したピーク温度を外挿するのに必要な処理時間を最小にするため、熱サイクルを開始する前に、プロセッサ回路110は、熱分析ルーチン230の指示の下に多数の可能な温度軌跡を予め計算しまた予め記憶してよい。その後の放射フラッシュの間、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、実際の測定温度データに最も密接に対応する特定の記憶済みの温度軌跡を見つけて、識別された温度軌跡のピーク温度の値を取り出し、取り出したピーク温度の値と予想温度記憶282に記憶されているピーク温度の値とを比較するようプロセッサ回路に指示してよい。
【0129】
また、実際の測定温度と予想温度との比較は、単一のデータ点に基づいて行う必要はない。例えば、望ましくは、測定温度の値の全集合について一次導関数(変化の速度)および二次導関数(加速/減速の速度)などの量を計算して比較に用いてよい。望ましくは、曲線の当てはめ技術を用いてよいが、放射フラッシュの残りの部分を変えることができるように十分速く比較を行う必要があることを考えると、曲線の当てはめ技術の複雑さは、利用可能な機器に依存して、特定の実施の形態で利用可能な処理速度によって制限される。
【0130】
この実施の形態では、実際の測定温度と予想温度との比較の結果、面104の加熱が速すぎて望ましいピーク温度を超える(この例では、温度誤差レジスタ288に記憶されている温度差の値が正になる)可能性があることが分かった場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路110に放射フラッシュの残りの部分を変更して面104のピーク温度を下げるよう指示する。より特定すると、この実施の形態の変更は、放射フラッシュの残りの部分のエネルギ出力を減らすことを含む。更に特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、比較の結果(この実施の形態では、温度誤差レジスタ288の内容)を用いて電流削減ルックアップ・テーブル232をアドレス指定して、各電源装置189,191,193,195の回路の電力削減回路をいつ活動化するかを決定する。
【0131】
2つの別個の電力削減回路320、350を含む実施の形態では、電流削減ルックアップ・テーブル232は、電力削減回路320と350のどちらを活動化するかを示す2進フラグを含んでよい。後者は、より大きな電力削減を短時間に行うことができる。または、単一の電力削減回路だけを含む実施の形態では、かかるフラグは省いてよい。この実施の形態では、該当する電力削減回路をいつ活動化するかを指定するのに加えて、電流削減ルックアップ・テーブル232のアドレス指定されたレコードは、フラッシュ介入効果インディケータFも指定する。ドリフト制御ルーチン236の指示の下にプロセッサ回路が後で用いるために、プロセッサ回路110は、インディケータFをフラッシュ介入効果レジスタ290に一時的に記憶するよう指示される。これについては、後でより詳細に説明する。
【0132】
図2、図3、図7に関連して、この実施の形態では、各電力削減回路320は、コンデンサ・バンク328に並列に接続するクローバ回路を含むことが思い出される。この実施の形態では、コンデンサ・バンク328は、放射フラッシュを作るのに用いる電気エネルギを蓄積する。フラッシュを開始する前は、図3に示すサイリスタ322,332,336は、全て非導通状態である。これとダイオード342が設けられていることとにより、コンデンサ・バンク328の放電が妨げられる。放射フラッシュを開始するには、プロセッサ回路110は、ゲート電圧をサイリスタ336に与えて導通状態にする。これによりコンデンサ・バンク328は、フラッシュ・ランプ182、抵抗器340、インダクタ338、およびサイリスタ336を通して蓄積電気エネルギの放電を開始する。
【0133】
フラッシュの最初の部分からの測定値と上に述べた比較の結果、電力削減回路320を用いてフラッシュの残りの部分の電力出力を減らすべきであるとプロセッサ回路110が決定した場合は、プロセッサ回路110は、上に述べた電流削減ルックアップ・テーブル232のアドレス指定されたレコードが指定する時刻にゲート電圧をサイリスタ322に与えてサイリスタを非導通状態から導通状態に移行させることにより、放射フラッシュの残りの部分を変更する。したがって、事実上コンデンサ・バンク328の両端が短絡されて、コンデンサ・バンク328は、サイリスタ322、インダクタ324および抵抗器326を通して部分的に放電し、同時に、フラッシュ・ランプ182、抵抗器340、インダクタ338およびサイリスタ336を通して部分的な放電が続く。したがってクローバ回路を点火すると、電流がサイリスタ322、インダクタ324およびサイリスタ326を通って流れ始め、アーク電流(すなわち、フラッシュ・ランプを通って流れる電流)は、これに対応して減少する。
【0134】
図7は、時間に対するアーク電流を表す種々の曲線を全体的に700で示す。これは、コンデンサ・バンク328を2500Vで充電し、次にサイリスタ336を点火して急に放電して放射フラッシュを作る場合に関する。第1の曲線702は、電流を削減しないとき(すなわち、電力削減回路320を活動化しないとき)の放射フラッシュの継続時間中のアーク電流を表す。第2の曲線704は、放射フラッシュを開始してから1.3ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第3の曲線706は、放射フラッシュを開始してから1ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第4の曲線708は、放射フラッシュを開始してから0.8ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第5の曲線710は、放射フラッシュを開始してから0.6ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第6の曲線712は、放射フラッシュを開始してから0.4ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第7の曲線714は、放射フラッシュを開始してから0.3ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表す。
【0135】
図7に示す例では、放射フラッシュを開始してから約0.6ms経過する前に電力削減回路320を活動化すると、ピーク・アーク電流が減少すると共に全体のエネルギ出力が減少するという効果を有し、これらの効果により、面104は、そうでないときに比べて到達するピーク温度が低くなる傾向がある。対照的に、放射フラッシュを開始してから約0.7ms後に最大温度に到達した後に電力削減回路320を活動化すると、フラッシュのその後の電力は、減少するがピーク・アーク電流に余り影響を与えず、その結果、冷却速度は、やや速くなるが、面104のピーク温度は、余り下がらない。
【0136】
第2の電流削減回路350を活動化すべきであることを温度誤差レジスタ288に記憶されている温度差の値に対応する電流削減ルックアップ・テーブル232の内容が示した場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路110に第2の電流削減回路350を活動化させて放射フラッシュの残りの部分のエネルギ出力を減らすよう指示する。このため、この実施の形態のプロセッサ回路110は、上に説明したように電流削減ルックアップ・テーブル232のアドレス指定したレコードが指定する時刻にゲート電圧をサイリスタ352に与えて、サイリスタを初期の非導通状態から導通状態に移行させる。第2の電流削減回路350は、フラッシュ・ランプ182より低いインピーダンスを有するので、コンデンサ・バンク328が供給する電流は、フラッシュ・ランプ182を通るのではなくインダクタ354および抵抗器356を通って放電する。
【0137】
この実施の形態では、第1の電流削減回路320がコンデンサ・バンク328に並列に接続するのとは対照的に、第2の電流削減回路350は、フラッシュ・ランプ182に並列に接続することが思い出される。第1の電流削減回路320を活動化するとコンデンサ・バンク328の両端は、事実上短絡するが、電流がフラッシュ・ランプ182を通り、インダクタ338を通り、フリー・ホイール・ダイオード342を通って戻るのは妨げない。対照的に、第2の電流削減回路350を活動化すると、フラッシュ・ランプ182自身の両端が事実上短絡する。第1の電流削減回路320と比較すると、第2の電流削減回路350を活動化することにより立ち下り時間が速くなり、すなわち、フラッシュ・ランプ182を通って流れる電流は、より速く減少し、放射フラッシュの電力は、これに従って、より速く減少する。しかし、これと同時に、第2の電流削減回路350を活動化すると装置の構成要素に一層大きなストレスがかかり、第1の電流削減回路320より一層大きな電気エネルギを浪費することがある。したがって、第2の電流削減回路350は、第1の電流削減回路320の補助用または交換用として用いる。または、望ましくは、第2の電力削減回路は、省いてもよい。
【0138】
逆に、素子側温度記憶280の測定温度の値と予想温度記憶282に記憶されている予想温度軌跡とを比較した結果、面104の加熱が遅すぎて望ましいピーク温度に到達しそうにない(この例では、温度誤差レジスタ288に記憶されている温度差の値が負である)ことが分かった場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路110に放射フラッシュの残りの部分を変更して面104のピーク温度を高くするよう指示する。より特定すると、この実施の形態では、フラッシュの残りの部分を制御することは、放射フラッシュの残りの部分のピーク電力出力を増やすことを含む。この実施の形態では、ピーク電力出力を増やすことは、電力増強回路を活動化すること(この実施の形態では誘導クローバ回路を点火すること)を含む。
【0139】
より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、この比較の結果(この実施の形態では、温度誤差レジスタ288の内容)を用いて電流増強ルックアップ・テーブル234をアドレス指定して、各個別の電源装置189,191,193,195の電力増強回路330をいつ活動化するかを決定する。この実施の形態では、電力増強回路330をいつ活動化するかを指定することに加えて、電流増強ルックアップ・テーブル234のアドレス指定されたレコードは、フラッシュ介入効果インディケータFも指定する。ドリフト制御ルーチン236の指示の下にプロセッサ回路が後で用いるために、プロセッサ回路110は、インディケータFをフラッシュ干渉効果レジスタ290に一時的に記憶するよう指示される。これについては、後でより詳細に説明する。
【0140】
これについて、この実施の形態では、図3に示す電力増強回路330は、誘導クローバ回路を含むことが思い出される。前に説明したように、この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路にゲート電圧をサイリスタ336に与えることにより放射フラッシュを開始するよう指示する。これにより、コンデンサ・バンク328は、フラッシュ・ランプ182、抵抗器340、インダクタ338およびサイリタス336を通して放電を開始する。この方法では、フラッシュ・ランプ182を通して放電する電流の増加率に対抗して、4.7μHのインダクタ338の自己誘導emf(ε=−L(di/dt))が事実上、発生する。
【0141】
温度の測定値と予想値とを比較した結果、電流増強ルックアップ・テーブル234で識別される特定の時刻での電力増強が望ましいことが分かった場合は、プロセッサ回路110は、ゲート電圧をサイリスタ332に与えて、これを導通状態にする。これにより、1.5μHのインダクタ334を通って電流が流れる(インダクタ338よりインダクタンスが低いために低い自己誘導emfを有する)ので、電力制御回路のこの構成要素の全体の電流制限効果が減少する。これにより、アーク電流は、より高いピークまでより速く上昇し、そのため面104のピーク温度は、より高くなる。このように、この実施の形態の放射フラッシュは、電流放電により駆動されるアーク・ランプ(この実施の形態ではフラッシュ・ランプ182および他のフラッシュ・ランプ)により作られ、この放電は、第1のインダクタンスを有する第1の電気路(この実施の形態は、インダクタ338を通る)を通って流れて放射フラッシュの最初の部分を作り、また面104のピーク温度を高めることは、第1のインダクタンスより低い第2のインダクタンスを有する第2の電気路(この実施の形態は、インダクタ334を通る)を通して電流放電を行うことを含む。
【0142】
図8は、時間に対するアーク電流を表す種々の曲線を全体的に800で示す。これも、コンデンサ・バンク328を2500Vで充電し、次に急に放電して放射フラッシュを作る場合に関する。第1の曲線802は、電力を増強しないとき(すなわち、電力増強回路330を活動化しないとき)の放射フラッシュの継続時間中のアーク電流を表す。第2の曲線804は、放射フラッシュを開始してから0.8ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第3の曲線806は、放射フラッシュを開始してから0.7ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第4の曲線808は、放射フラッシュを開始してから0.6ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第5の曲線810は、放射フラッシュを開始してから0.55ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第6の曲線812は、放射フラッシュを開始してから0.5ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第7の曲線814は、放射フラッシュを開始してから0.45ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第8の曲線816は、放射フラッシュを開始してから0.4ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表す。
【0143】
図8に示す例では、放射フラッシュを開始してから0.6ms経過する前に電力増強回路330を活動化すると、ピーク・アーク電流を増やす効果を有するが、アーク電流は、ピークの後に一層急速に低下する傾向があり、かかる効果により、面104は、そうでないときに比べて高いピーク温度に到達する傾向がある。対照的に、放射フラッシュを開始してから約0.6ms経過した後に電力増強回路330を活動化するとピーク・アーク電流は、余り増えず、その結果、面104のピーク温度は、余り高くなりそうにない。
【0144】
特定の実施の形態では、電力増強回路および電力削減回路を両方とも有する必要はないことが認識される。例えば、別の実施の形態は、例えば、350で示すような単一の電力削減回路だけを含んでよく、電力増強回路は、省いてよい。かかる実施の形態では、コンデンサ・バンク328は、常に過充電されるので、面104の測定温度軌跡は、常に予想温度軌跡を超え、その結果、温度の測定値と予想値との比較に基づいて電流削減ルックアップ・テーブル232を参照することにより決まる時刻に電力削減回路350を必ず点火する。
【0145】
この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、引き続き超高速放射計から10μs毎に面104の新しい温度測定値を受けて、この各温度測定値とこれに関連する時間インデクスの値とを素子側温度記憶280内に記憶し、そのピーク温度に到達した後冷却する工作物106の面104の完全な温度曲線をレコードするようプロセッサ回路110に指示する。このように、実際の温度ジャンプΔTは、測定温度の値から計算することができる(ΔT=TMAX−T0)。
【0146】
段階3: ドリフト制御
この実施の形態では、ドリフト制御ルーチン236は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュを作る放射装置(この実施の形態では装置100)に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視するようプロセッサ回路110に指示する。ドリフト制御ルーチン236は、更に熱効率パラメータの監視に応じて、放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新するようプロセッサ回路110に指示する。したがって、装置100の熱効率が時間と共に徐々に変化する場合は、ドリフト制御ルーチン236は、かかる変化を自動的に補償するようにプロセッサ回路を事実上構成する。
【0147】
この実施の形態では、熱効率パラメータを監視することは、放射フラッシュにより生じた工作物106の面104の実際の温度増加ΔTの測定値に応じて熱効率パラメータを計算することを含む。または、フラッシュの放射エネルギのエネルギー密度(例えば、面104に到着するフラッシュのエネルギ密度など)または他のタイプの熱効率パラメータを監視してよい。
【0148】
この実施の形態では、制御信号を自動的に更新することは少なくとも1つの記憶済みの効率パラメータを自動的に更新することを含み、また、放射フラッシュのエネルギ出力パラメータを自動的に変えることを含む。より特定すると、この実施の形態では、エネルギ出力パラメータを変えることは、放射フラッシュの出力エネルギを自動的に変えることを含む。この実施の形態では、これは、放射フラッシュを作るのに用いる蓄積電荷の量を自動的に変えることにより達成される。更に特定すると、この実施の形態の蓄積電荷は、装置効率の値Ceff(N)を更新することにより自動的に変わる。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、主RTPルーチン221および事前調整ルーチン222の指示の下にこれを用いて、放射フラッシュを作るために電源装置188に蓄積すべき望ましい電気エネルギを計算する。
【0149】
これについて、この実施の形態では、主RTPルーチン221は、望ましい熱サイクルを定義するユーザ指定のパラメータ(例えば、WID、TINT、およびΔTを含んでよい)に応じて、放射フラッシュを作るために電源装置188に蓄積すべきエネルギを表す電気エネルギ・レベルECHNを計算して、この値ECHNを充電パラメータ記憶278に記憶するようプロセッサ回路110に指示することが思い出される。また、この実施の形態では、主RTPルーチン221は、最新の記憶済みのこの装置効率の値Ceff(N)に応じて、対応する効率調整済みの電気エネルギ・レベルEADJを決定することもプロセッサ回路110に指示することが思い出される。同様に、この実施の形態は、フラッシュの事前調整を含むので、事前調整ルーチン222の指示の下にプロセッサ回路110は、やはり装置効率の値Ceff(N)を用いて、放射率補正済み、かつ、効率調整済みの電気エネルギの値EADJ_ECを計算し、主RTPルーチンの指示の下に計算したEADJの前の値を上書きすることが思い出される。
【0150】
したがって、放射フラッシュを作るのに用いる電気エネルギの量を自動的に変えるため、この実施の形態のプロセッサ回路110は、各熱サイクルを実行した後でドリフト制御ルーチン236の指示の下に装置効率の値Ceff(N)を更新して、主RTPルーチンおよび/または事前調整ルーチンの指示の下にプロセッサ回路が次の熱サイクルのための計算する電気エネルギに自動的に影響を及ぼす。または、望ましくは、装置効率の値の更新の頻度を少なくしてよい。例えば、装置効率の値の更新は、所定回数のサイクルの後または所定の時間間隔の後に、または測定温度ジャンプ誤差が最小しきい値を超え始めたときに、または装置ユーザの選択に従って、または任意の他の適当な方法で行ってよい。
【0151】
前に説明したように、放射装置180は、電気エネルギから電磁エネルギへの変換の効率を特性化する電光変換効率Ceo(例えば、44%(0.44)など)を有する。この装置は、工作物の面104に放射フラッシュの電磁エネルギを伝達するときのシステムの効率を特性化する光効率Co(例えば、36%(0.36)など)も有する。したがって、蓄積された電気エネルギを電磁エネルギとして面104に伝達するときの装置100の複合効率は、
Ceff=Ceo*Co
である。ただし、Ceffは、全体効率、Ceoは、放射装置180の電光変換効率、Coは、放射を面104に伝達するときの装置100の光効率である。(この実施の形態では、Ceff=0.44*0.36=0.16である。)
【0152】
実際には装置効率Ceffは、一定ではなく、むしろ時間と共に変わってよい。例えば、水晶窓または容器の老化または劣化により、その透過度は、低下し、そのため光効率Coは、低下する。同様に、放射装置100の電光変換効率Ceoも時間と共に劣化しまたはその他の変化をすることがある。
【0153】
一次近似として、Ceffは、「ショット」すなわち、放射フラッシュの回数Nと共に直線的に変わり、したがってN回のショットの後のCeffは、式y=mx+bの形で次のように表してよいと仮定してよい。
Ceff(N)=Sd(n-1)*N+Od(n-1)
ただし、
Sd(n-1)は、最新の効率劣化傾斜(最初に或る推定値に設定する)、
Nは、ショット回数、すなわち、作られた放射フラッシュの数、
Od(n-1)は、最新の効率オフセットの値(最初に或る推定値に設定する)。
【0154】
この実施の形態では、効率劣化傾斜の値Sd(n-1)は、最初はゼロに設定するが、後で説明するように、ドリフト制御ルーチン236を実行する度に自分自身を調整する(例えば、装置効率が徐々に低下する場合は、ゼロに近い負の値になる)。同様に、効率オフセットの値Od(n-1)は、最初は現在の装置効率の推定値に設定する(例えば、この実施の形態では、N=0のときのOd(n-1) の初期値は、Ceff=0.16に設定してよい)。これについては、前に詳細に説明した。
【0155】
この実施の形態では、ドリフト制御ルーチン236は、各フラッシュ、すなわち、「ショット」の後に傾斜の値Sd(n)およびオフセットの値Od(n)を更新するようプロセッサ回路110に指示する。各ショットで、プロセッサ回路110は、測定装置102(または、より特定すると、素子側の面104の温度を測定する超高速放射計400)と協力して、放射フラッシュの結果、工作物の面104で起こる実際の温度ジャンプを表す測定温度ジャンプの値ΔTMを事実上、測定して記憶するよう指示される。この測定温度ジャンプの値を識別するため、ドリフト制御ルーチン236は、フラッシュ中の面104のピーク温度を表す素子側温度記憶280に記憶されている最高温度の値を識別し、この値から素子側温度記憶280に記憶されている時間インデクスの値t=0における初期温度の値を引くようプロセッサ回路110に指示する。(これについて、時間インデクスの値t=0は、放射フラッシュを開始した時刻に対応し、そのときの測定素子側温度は、理想的には、フラッシュを開始する前に工作物106を予熱しておくべきユーザ指定の中間温度TINTに等しいはずである。)この実施の形態では、プロセッサ回路110は、測定温度ジャンプの値ΔTMを効率パラメータ記憶238に記憶するよう指示される。
【0156】
または、測定装置102を用いるのではなく、他の適当な測定装置を代わりに用いて熱効率パラメータを監視してよい。例えば、監視するパラメータが温度ジャンプではなく放射エネルギ密度である実施の形態では、室130の内壁140に取り付けた別個の光測定器(図示せず)でエネルギ密度を測定してよい。
【0157】
この実施の形態では、ドリフト制御ルーチン236は、測定温度ジャンプの値ΔTMと、工作物106に対応する工作物パラメータ記憶240からの工作物パラメータOTEおよびSTEとを用いて、実際の測定温度ジャンプに対応する有効電気エネルギの値ECHMを計算するようプロセッサ回路110に指示する。すなわち、
【数5】
【0158】
次にドリフト制御ルーチン236は、プロセッサ回路110に完了したばかりの特定の熱サイクルの効率Cmeff(N) を計算するよう指示する。この実施の形態では、プロセッサ回路は、この効率の値を次式で計算するよう指示される。
【数6】
ただし、
ECHMは、上に示した式で計算し、
EADJ_ECは、充電パラメータ記憶278に記憶されている効率調整済みかつ放射率訂正済みの電気エネルギの値であって、事前調整ルーチン222の指示の下にプロセッサ回路が計算したもので、放射フラッシュを作るのに用いるコンデンサ・バンクの充電電圧を決定するのに用いたものであり、
CTEは、工作物106に対応する工作物パラメータ記憶240のレコードから工作物特性化の値STEおよびOTEを計算して記憶したときの装置効率であり、
Fは、前にここで説明したように、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路がフラッシュ介入効果レジスタ290に記憶したフラッシュ介入効果インディケータである。
【0159】
この実施の形態では、後者のフラッシュ介入効果インディケータFは、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路が電力削減回路320、350のどちらかを活動化した場合に、電力削減回路をいつ活動化したかに依存して、放射フラッシュを作るためにフラッシュ・ランプに供給する全電気エネルギがEADJ_ECより小さく、またフラッシュ・ランプに供給するピーク電力も減少した可能性があるという事実を補償するのに用いる。したがって、この実施の形態では、電流削減ルックアップ・テーブル232の各レコードは、フラッシュ介入効果インディケータFに関する値(この実施の形態では経験的に決定される)を含む。同様に、この実施の形態では、電流増強ルックアップ・テーブル234の各レコードもフラッシュ介入効果インディケータFに関する対応する値を含む。
【0160】
または、フラッシュ・フィードバック制御を省いた実施の形態では、フラッシュ介入効果インディケータFを上の式から除く。同様に、前に、ここで説明したように、事前調整(放射率補償)を行わない実施の形態では、上の式のEADJ_ECの代わりに、主RTPルーチン221の指示の下にプロセッサ回路110が計算して充電パラメータ記憶278に記憶した元の電気エネルギの値EADJを用いる。したがって、事前調整ルーチン222もフラッシュ・フィードバック制御ルーチン224も含まない例示の簡単な別の実施の形態では、完了したばかりの特定の熱サイクルの効率Cmeff(N)は、
【数7】
で計算する。
【0161】
この実施の形態では、次に傾斜の値Sd(n)およびオフセットの値Od(n)を更新する。この実施の形態では、これは、最新のM個のかかる測定効率Cmeff(N)に移動一次最小自乗(LLS)当てはめを行うことにより得られる。すなわち、
【数8】
【0162】
上の傾斜およびオフセットの計算を行うのに用いるサンプル数Mは、ドリフト制御ルーチンのフィルタ特性を決定する。一般に、サンプル数Mが少なすぎる場合は「ジッタ」(すなわち、連続した実行の間の効率の訂正が望ましくないほど大きい)の原因になることがある。逆にサンプル数Mが多すぎる場合は、時間と共に変わる効率の訂正が遅すぎることがある。この実施の形態では、Mは、好ましくは100未満である。より特定すると、この実施の形態では、M=75である。または、100より大きいか、または小さい他のMの値を代わりに用いてよい。
【0163】
または、効率パラメータを更新するのに移動一次最小自乗当てはめ以外の方法を用いてよい。例えば、移動平均または指数加重移動平均などの他のフィルタリング法を代わりに用いてよい。より一般に、装置効率の劣化は、y=mx+bまたはC=SN+Oの形の一次劣化として近似する必要はなく、他の関数関係および更新方法を代わりに用いてよい。
【0164】
次にプロセッサ回路110は、更新された傾斜の値およびオフセットの値を用いて、改訂された総合効率の値Ceff(N)を上に述べたように計算するよう指示される。この実施の形態では、プロセッサ回路は、更新された傾斜、オフセットおよび効率の値を効率パラメータ記憶238、286に記憶するよう指示される。前に、ここで主RTPルーチン221に関してより詳細に説明したように、次の熱サイクルのための充電エネルギおよび電圧の値を設定するときに、プロセッサ回路110は、主RTPルーチン221の指示の下にこの更新された効率の値Ceff(N)を考慮に入れる。
【0165】
好ましくは、更新された効率パラメータSd(n)、Od(n)、Ceff(N)を記憶する前に、ドリフト制御ルーチン236は、プロセッサ回路110にこれらの更新されたパラメータとその最新の値とを比較するよう指示し、これらのパラメータのどれかの変化がしきい値最大調整値を超える場合は、プロセッサ回路は、上に計算した実際の(より大きい)調整によるのではなく最大しきい値調整だけにより、該当する効率パラメータを調整するよう指示される。この方法は、効率の値がサイクル毎に極端に大きく変わるのを防ぐのを助け、これにより、特定のサイクルで突出した異常が起こっても、これが次のサイクルに極端に大きな影響を与えるのを防ぐ。
【0166】
これまでは、工作物106は、事前に特性化したタイプの1つの工作物であって、その特性化の値STE、OTE、CTEは、工作物パラメータ記憶240の対応するレコードに記憶されていると仮定した。しかし、処理した工作物が事前に特性化したタイプの1つでなくてかかる特性化の値が利用できない熱サイクルでは、現在の装置効率の値は、他の方法で更新してよい。例えば、装置効率のサイクル毎の変化は、効率パラメータ記憶238、286に記憶されている最新の更新済みの効率劣化傾斜の値Sdで正確に特性化されるので、単一のサイクルでは、Ceff(N)=Ceff(N-1)+Sd(N-1)であると仮定してよい。更新済みの装置効率の値Ceff(N)は、効率パラメータ記憶238、286に記憶してよい。ただし、この場合は、効率劣化傾斜の値は、更新する必要はない。
【0167】
この実施の形態では、装置効率パラメータを上に述べたように更新した後、ドリフト制御ルーチン236は、プロセッサ回路100に更新済みの装置効率の値Ceff(N)と定義済みの最小装置効率しきい値CMINとを比較するよう指示する。現在の装置効率の値Ceff(N)が最小装置効率しきい値CMINに到達した場合またはそれより低くなった場合は、ドリフト制御ルーチンは、プロセッサ回路に装置100のユーザに信号を送って装置の整備および保全を行うべきであることを示すよう指示する。
【0168】
他の態様および代替態様
図1、図9、図10に関連して、この実施の形態のプロセッサ回路110は、放射装置180および電源装置188と協力して、図10に1010で示すような電気パルスを工作物106に入射する放射フラッシュを作る放射装置に供給するよう構成される。この実施の形態では、電気パルス1010は、立ち上り時間(t1−t0)より短い立ち下り時間(t3−t1)を有する。
【0169】
これについて、図9および図10に関連して、フラッシュ・ランプ182を通って放電して工作物の面104に入射する放射フラッシュを作るアーク電流の一例を全体的に910で示し、工作物の面104の温度を全体的に920で示す。図9に示すように同じ時間線の上にプロットすると、温度は、アーク電流より遅れる(図9に示す例では、ピーク表面温度922は、ピーク・アーク電流912より約0.4ms遅れる)。この例では、アーク電流910は、アーク電流が減少するに従って電流不安定時間領域914を有し、その結果、工作物の面104の温度920の温度不安定時間領域924を生じる。熱処理の繰返し性を更に改善するため、この実施の形態の装置100は、これらの不安定領域を減らすよう構成される。
【0170】
このため、この実施の形態のプロセッサ回路110および電源装置188は、図10に示す電気パルス1010と同様の電気パルスを放射装置180の各フラッシュ・ランプに供給するよう構成される。これについて、電気パルス1010は立ち上り時間より速い立ち下り時間を有するので、電気パルス1010不安定領域1014は、はるかに急な傾斜を有し、したがって、図9に示すアーク電流910の対応する不安定領域914より短い継続時間(t3−t2)を有する。したがって、工作物表面温度1020の対応する不安定時間領域1024も図9に示す不安定領域924より急な傾斜および短い継続時間を有する。したがって、図10に示す電気パルス1010を用いると、これらの領域内の電流および温度の不安定性が減少するので、装置100を用いる熱プロセスの繰返し性が改善される。
【0171】
この実施の形態では、パルス1010は、一般にのこぎり波形パルスを含む。望ましくは、パルスののこぎり波形を一層鋭くしてよい。例えば、ほとんど方形の入力波形が利用できる場合は、インダクタを用いてかかる波形を立ち上り時間より短い立ち下り時間を有する一般に三角パルスに変換してよい。
【0172】
この実施の形態では、プロセッサ回路は、パルス1010を立ち上り時間から立ち下り時間に急に移行させるよう構成される。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、クローバ回路を点火してパルスを立ち上り時間から立ち下り時間に移行させるよう構成される。この実施の形態では、クローバ回路は、フラッシュ・ランプに並列に接続する。したがって、この目的で用いるクローバ回路は、図3に350で示すものと同様の電力削減回路を含んでよく、または後で説明する図12および図13に示すものと同様の電力削減回路を含んでよい。かかるクローバ回路を点火すると、事実上、放射装置の両端を短絡して、パルスを立ち上り時間から立ち下り時間に移行させる。
【0173】
図1、図2、図3、図11に関連して、本発明の別の実施の形態に係る電力制御回路を図11に全体的に1100で示す。この実施の形態では、電力制御回路1100は、図3に示す電力制御回路300といくらか似ており、第1の電力増強回路330を含む。しかし、電力制御回路300とは異なり、電力制御回路1100は、第2の電力増強回路1104も含む。回路1104は、更に補助コンデンサ1106およびダイオード1108を含む。この実施の形態では、コンデンサ1106は、667μFの静電容量を有する。この実施の形態では、放射フラッシュを開始するとき、サイリスタ332は、非導通状態にあり、ダイオード1108が設けられていることと共に、コンデンサ1106がフラッシュ・ランプ182を通して放電するのを防ぐ。
【0174】
しかし、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路110がフラッシュの残りの部分のピーク電力出力を増やすことが望ましいと決定した場合は、プロセッサ回路は、ゲート電圧をサイリスタ332に与えて導通状態にし、その結果、上に述べたような電流増強効果を生じる。しかし、前に説明した電流増強効果に加えて、サイリスタ332を導通状態にすると補助コンデンサ1106がフラッシュ・ランプ182およびインダクタ334を通して放電するので、追加の電流増強を与える。したがって、この実施の形態において放射フラッシュのピーク電力出力を増やすことは、フラッシュ・ランプ182およびインダクタ334を通して補助コンデンサを放電することを含む。
【0175】
上に述べた各実施の形態は、プロセッサ回路110が電流をうまく制御するのにサイリスタを用いたが、他の固体素子(より一般に他の適当な回路)を代わりに用いてよい。例えば、望ましくは、サイリスタ322、332、336、352の代わりに絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)を用いてよい。これについて、一般にIGBTにはサイリスタほど多くの電流を流すことはできないが、一層大きな電流容量を持つIGBTが次第に広く利用できるようになっている。また、IGBTは、スイッチ・オフできるという別の利点を有する。これに比べてサイリスタは、ゲート電圧を与えて導通状態にすると、サイリスタを通って流れる電流がしきい値保持電流を超えている限り、ゲート電圧を取り去っても導通を続ける。
【0176】
上に述べた主な実施の形態は、複数の電力制御回路(すなわち、2つの電力削減回路320、350と電力増強回路330)を含むが、他の実施の形態はかかる電力制御回路を1つだけ、または他のタイプの回路を含んでよい。
【0177】
例えば、或る別の実施の形態では、電力削減回路350だけは、備えるが、電力削減回路320および電力増強回路330は、除く。かかる実施の形態では、望ましくは、工作物パラメータ記憶240に記憶されている工作物特性化の値を変更して、放射フラッシュを作るのに用いる電荷が望ましいピーク温度を達成するのに常に十分であって、電力削減回路350による介入を常に必要とするようにしてよい。これについて、かかる実施の形態は、高度な応用によっては特に優れているかも知れない。例えば、イオン/ドーパントを活動化する半導体ウェーハの焼きなましでは、ウェーハの素子側のピーク温度の変動は、プロセス結果(活動化および拡散)に強く影響を与えるが、実施の形態によっては温度対時間曲線の形の変動も大きいことがある。
【0178】
例えば、対象とする特定の繰返し性および一貫性の要求に依存して、同じピーク温度の100℃以内の温度対時間曲線の形が異なると大きな変動の原因になることがある。温度対時間曲線は、放射フラッシュを生成する電気パルスの電流対時間曲線から一般に遅れるが、形が異なることもあり、電流パルス波形の比較的小さな変化がウェーハの素子側の温度対時間曲線の形の大きな変動の原因になることがある。したがって、電力削減回路350による介入を常に必要とする実施の形態は、かかる介入を時には必要とするが常には必要としない実施の形態に比べて、ウェーハ毎により一貫した電流パルス波形(したがって、より一貫した温度対時間曲線の形)を作るという利点を有する。
【0179】
同様に、別の実施の形態では電力削減回路320だけを備える。望ましくは、工作物パラメータ記憶240に記憶されている工作物特性化の値を同様にして変更して、電力削減回路320による介入を常に必要とするようにしてよい。
逆に、別の実施の形態では、図3に示す電力増強回路330だけ、または図11に示すその変更した回路を備えてよい。望ましくは、かかる実施の形態では、工作物パラメータ記憶240に記憶されている工作物特性化の値を変更して、放射フラッシュを作るのに用いる電荷が望ましいピーク温度を達成するのにやや不十分であって、電力増強回路330による介入を常に必要とするようにしてよい。
【0180】
上に述べた特定の実施の形態を用いてサイクル毎に一貫した熱サイクルおよび一貫したピーク温度を達成してよいが、実施の形態によっては、見かけが同じ工作物についても少し異なるピーク温度を意図的に求めて、プロセスの最終結果の一貫性を向上させるのが望ましいことがある。これについて、或る実施の形態のプロセス結果が単にピーク温度だけでなく温度対時間曲線の形により大きく影響されることがある場合は、ここに述べた種々のパルス変更回路を用いてパルス波形を変えると、同じピーク温度を達成しても温度対時間曲線が異なる場合は、少し異なるプロセス結果が実際に得られることがある。例えば、半導体ウェーハの素子側にイオン/ドーパントの活動化および拡散が起こる応用では、対象とする特定の繰返し性および一貫性の要求に依存して、同じピーク温度の100℃以内の温度対時間曲線の形が異なると大きな変動の原因になることがある。
【0181】
かかる実施の形態では、ウェーハの素子側がピーク温度に向かって予想以上に速く加熱していて(例えば、素子側の放射率が予想以上に大きいために)電流削減回路による介入が予想より早く必要であることを実時間の素子側温度測定値が示す場合は、望ましいピーク温度を正確に達成しても、素子側の温度対時間曲線の形が変わるとイオン/ドーパントの活動化および拡散の結果が少し異なることがある。したがって、かかる実施の形態では、該当するパルス変更回路を活動化するタイミングを調整して、素子側のピーク温度を前に定義済みの望ましいピーク温度から意図的にずらして、望ましいピーク温度からのずれが予想温度対時間曲線の形からのずれを補償することにより、より一貫した全体的なイオン/ドーパントの活動化および拡散結果を達成してよい。かかる調整は、例えば、各工作物タイプに対応する経験的に決定されるルックアップ・テーブルにより行ってよい。
【0182】
または、繰返し性および一貫性の要求が余り厳しくない他の実施の形態では、特定の応用では温度対時間曲線の形の変動の影響がピーク温度の変動に比べて非常に小さいことがあり、この場合は、前者を無視してよい。
【0183】
別の実施の形態では、他のタイプの電力削減回路および/または電力増強回路を備えてよい。例えば、図1、図2、図3、図12に関連して、本発明の別の実施の形態に係る電力制御回路を図12に全体的に1200で示す。この実施の形態では、電力制御回路1200は、電力削減回路1202を含む。この実施の形態では、電力削減回路1202は、図3に示す電力削減回路350にいくらか似ているが、抵抗器356を省いている。このように、この実施の形態の電力削減回路1202は、クローバ回路を含み、これは、スイッチング回路およびインダクタ1206を含む。この実施の形態では、スイッチング回路は、単一のスイッチ要素1204を含む。より特定すると、この実施の形態のスイッチ要素1204は、半導体スイッチである。更に特定すると、この実施の形態のスイッチ要素1204は、サイリスタである。ただし、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バーポーラ・トランジスタ)などの他のタイプのスイッチを代わりに用いてよい。或るタイプのサイリスタは、過度の電流増加速度で壊れることがあるので、この実施の形態のインダクタ1206は、電流の増加速度dI/dtを事実上制限して、スイッチ要素1204が壊れる可能性を防ぐ。
【0184】
この実施の形態では、インダクタ1206のインダクタンス(インダクタ354のインダクタンスと同じである必要はない)は、この後者の目的にかなうようにできるだけ低く選択し、またフラッシュ・ランプ182よりはるかに低いインダクタンスを与える。この実施の形態では、サイリスタ336を導通状態にするとコンデンサ・バンク328は、フラッシュ・ランプ182を通して放電を開始して放射フラッシュを作る。フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224に関して上に述べたように、面104の加熱が速すぎて望ましいピーク温度を超える可能性があることをフラッシュの最初の部分の間の工作物の面104の温度測定値が示す場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路が決定する時刻にプロセッサ回路は、ゲート電圧をスイッチ要素1204に与えて、スイッチ要素1204を非導通状態から導通状態に移行させる。これにより、コンデンサ・バンク328に蓄積された残留電荷は、フラッシュ・ランプ182を通るのではなくスイッチ要素1204およびインダクタ1206を通って放電を開始する。電力削減回路1202をこのように活動化すると、電力削減回路350より早く放射フラッシュが終了するという利点を有する。
【0185】
図1、図2、図3、図12、図13に関連して、本発明の更に別の実施の形態に係る電力制御回路を図13に全体的に1300で示す。この実施の形態では、電力制御回路1300は、電力削減回路1302を含む。この実施の形態では、電力削減回路1302は、図12に示す電力削減回路1202にいくらか似ているが、インダクタ1206を省いている。このように、この実施の形態の電力削減回路1302は、クローバ回路を含み、これは、スイッチング回路から成る。より特定すると、この実施の形態のスイッチング回路は、単一のスイッチ要素1304から成る。この実施の形態では、スイッチ要素は、半導体スイッチである。より特定すると、この実施の形態のスイッチ要素1304は、サイリスタである。ただし、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バーポーラ・トランジスタ)などの他のタイプのスイッチを代わりに用いてよい。
【0186】
これについて、サイリスタおよびIGBTは、歴史的に過度の電流増加速度に対する感度が高い傾向があったが、かかる過度の電流増加速度に対して一層大きな許容度を持つサイリスタおよびIGBTが一層多く利用できるようになっている。したがって、特定の実施の形態における電流の大きさおよびその変化の速度に依存して、スイッチ要素1304は、スイッチ要素1304を単独で設けてよく、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路110がこれを導通状態にしたときに急な電流増加速度から保護するインダクタを必要としない。十分な強さを持つ単一のスイッチ要素1304が特定の応用で利用できない場合は、種々のシステム変更を行ってよい。例えば、より多数のフラッシュ・ランプおよび電力制御回路を備えて、各電力削減回路1302の全電流および電流増加速度を低くしてよい。
【0187】
または更に別の実施の形態として、単一のスイッチ要素1304で構成するのではなく、電力削減回路1302のスイッチング回路を複数のスイッチ要素で構成してよい。例えば、単一のサイリスタまたは単一のIGBTではなく、スイッチング回路は、複数のサイリスタを互いに並列または複数のIGBTを互いに並列に備えてよい。したがって例示の別の実施の形態では、スイッチング回路は、例えば、5kAのピーク電流毎に1つのIGBTを設けるように選んだ多数の並列のIGBTを含んでよい。
同様に、再び図12に関連して、望ましくは、複数の並列のスイッチ要素を単一のスイッチ要素1204の代わりに用いてよい。
【0188】
図12および図13には、各電力削減回路1202、1302をフラッシュ・ランプ182に並列に接続するように示したが、例えば、図3に示す電力削減回路320の接続と同様に、これらの電力削減回路のどちらかをコンデンサ・バンク328に並列に接続してよい。電力削減回路をコンデンサにではなくフラッシュ・ランプに並列に接続すると、放電および得られる放射フラッシュの立ち下り時間が速くなり、その結果、面104の冷却が速くなり、ドーパント拡散および工作物内の熱ストレスが小さくなるという利点を有し、またフラッシュ・ランプの電極の寿命が長くなることがある。ただし、これらの利点の重要性または欠点は応用および実施の形態によって異なってよい。
【0189】
4つのフラッシュ・ランプを用いて例示の実施の形態を説明したが、望ましくは、例えば、1つの少数のフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。逆に、例えば、30個、40個またはそれ以上などの多数のフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。同様に、異なるタイプのフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。例えば、望ましくは、放射フラッシュは、マイクロ波パルス発生器で生成してよい。
図2に戻って、望ましくは、熱処理のために室130内に現在支持している工作物に関する情報を記憶するための「現在」の領域と、現在室の外で測定していて「現在」の工作物の処理が終わったときに室130内に挿入して処理する工作物に関する情報を記憶する「次」の領域とに処理量を高めるためにメモリ装置260を分割してよい。
【0190】
より一般に、本発明の特定の実施の形態について記述しまた図示したが、かかる実施の形態は、本発明の例に過ぎず、添付の特許請求の範囲に関して解釈される本発明を制限するものではないと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0191】
以下の図面は本発明の実施の形態を示す。
【図1】2つの垂直の前側の壁を取り去った本発明の第1の実施の形態に係る高速熱処理(RTP)装置の斜視図である。
【図2】図1に示す装置の高速熱処理装置コンピュータ(RSC)のブロック図である。
【図3】図1に示す装置の電力制御回路の回路図である。
【図4】図1に示す装置の超高速放射計のブロック図である。
【図5】図1に示す装置の第2の測定装置の表現である。
【図6】工作物放射率の10%の変動が工作物の表面温度に与える影響を示すグラフである。
【図7】フラッシュ中の異なる時刻に電力削減回路を活動化したときの放射フラッシュを作るのに用いる図1に示す放射装置のアーク電流を示すグラフである。
【図8】フラッシュ中の異なる時刻に電力増強回路を活動化したときの放射フラッシュを作るのに用いる図1に示す放射装置のアーク電流を示すグラフである。
【図9】第1のアーク電流および対応する工作物の表面温度軌跡を示すグラフである。
【図10】第2のアーク電流および対応する工作物の表面温度軌跡を示すグラフである。
【図11】本発明の別の実施の形態に係る電力制御回路の回路図である。
【図12】本発明の更に別の実施の形態に係る電力制御回路の回路図である。
【図13】本発明のまた更に別の実施の形態に係る電力制御回路の回路図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年9月14日出願の米国特許出願第60/716,488号からの優先権の利益をクレームする。
本発明は、熱処理に関するものであって、より特定すると、工作物を熱処理する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの応用が工作物の熱処理に関係する。例えば、共有米国特許第6,594,446号は、半導体ウェーハを焼きなます種々の方法を開示している。例えば、ウェーハを通る熱伝導率より遅い傾斜速度でウェーハ全体を中間温度まで予熱し、次にウェーハの素子側を熱伝導率よりかなり速い速度で加熱する。これは、素子側に放射フラッシュを当てることにより行う。一例として、基板側をアーク・ランプで照射してウェーハ全体を、例えば、400℃/秒などの速度で加熱することにより、ウェーハを、例えば、700℃などの中間温度まで予熱する。次に、フラッシュ・ランプから1ミリ秒フラッシュなどの高強度のフラッシュを素子側に当てて、素子側だけを、例えば、1300℃などの焼きなまし温度まで加熱する。フラッシュ中は、素子側を高速加熱(105℃/s程度)するために、ウェーハのバルクは、中間温度に留まり、フラッシュの後にヒート・シンクとして作用して素子側を冷却する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ウェーハ毎の性能の変動を最小にするには、一貫して再現可能または繰返し可能な熱プロセスで、できるだけウェーハ毎に同じ熱サイクルに近くなるように各ウェーハを確実に処理することが望ましい。
熱処理装置の効率は、時間と共に変わることがある。例えば、装置の効率は、構成要素の劣化や汚染や老化により低下したり、構成要素の交換により向上したりすることがある。本発明の実施の形態の第1の態様は、この問題を補償することに関する。
【0004】
更に、工作物自体の熱パラメータ(照射を受ける面の放射率など)が繰返し性に大きな影響を与えることがある。例えば、工作物が半導体ウェーハであって照射を受ける面がウェーハの素子側の場合は、異なるウェーハの素子側は、異なる放射率を有する傾向がある。見かけが同じウェーハのグループの間でもかかる放射率の差があることが分かっている。或る装置内に用いられている設備の正確さに依存して、これらのウェーハ毎の放射率の変動は、ウェーハが受ける熱サイクルの意図しないウェーハ毎の変動の大きな原因になり得る。本発明の例示の実施の形態の第2の態様は、この問題に関する。
【0005】
本発明の実施の形態の第3の態様は、放射フラッシュを実施中のフラッシュの実時間フィードバック制御に関する。個々の工作物への連続的なフラッシュの加熱効果の差は、かかるフィードバック制御を行うことにより、うまく補償できることがある。
本発明の実施の形態の第4の態様は、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に適切な形の電気パルスを供給することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様または実施の形態では、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視することを含む方法を提供する。この方法は、更に、この熱効率パラメータの監視に応じて、放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新することを含む。
装置の熱効率パラメータの自動監視に応じて放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新することにより、この装置は、例えば、劣化や汚染や老化または装置の構成要素の交換などにより装置の効率が時間と共に変わるのを正しく自動的に補償することができる。このように自動調整装置を備えることにより、頻繁に手動で再較正する必要がなくなる。
【0007】
本発明の別の態様または実施の形態では、面の加熱パラメータの測定に応じて、工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を予測することを含む方法を提供する。この方法は、更に、この予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整することを含んでよい。
このようにして放射フラッシュを事前調整することにより、測定加熱パラメータ(加熱面の反射率を含んでよい)の工作物の間の変動を補償するようにフラッシュを事前調整することができる。したがって、工作物の間の熱サイクルの繰返し性は、向上する。更に、かかる方法により、熱特性がまだ決定されていない工作物の熱処理を容易にすることができる。
【0008】
本発明の別の態様または実施の形態では、面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定し、この温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御することを含む方法を提供する。
【0009】
望ましければ、この後者の電力制御の態様と放射フラッシュの事前調整に関する前の態様とを組み合わせてよい。かかる実施の形態の利点として、放射フラッシュの事前調整を用いて、フラッシュの残りの部分の電力を制御するときに行うフラッシュ電力の調整の大きさを事実上、小さくすることができる。これらの2つの態様をこのように組み合わせることにより誤差を訂正することができる。他の方法では、これは、後者の電力制御の態様で自分自身を訂正するときに非常に大きくなることがある。また、これらの2つの態様をこのように組み合わせることにより、フラッシュ自身の残りの部分の間の電力制御の介入の程度を少なくして一貫した熱サイクルを実現して、パルスの波形および温度対時間曲線をサイクルの間で更に一貫させることもできる。または、望ましくは、この電力制御の態様は、かかる事前調整なしに行ってよい。
【0010】
本発明の別の態様または実施の形態では、工作物を熱処理する方法を提供する。この方法は、工作物に入射する放射フラッシュを作る放射装置に、パルスの立ち下がり時間がパルスの立ち上がり時間より短い電気パルスを供給することを含む。
本発明の別の態様または実施の形態では、熱処理装置を制御してここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するよう構成したプロセッサ回路を含む機器を提供する。
本発明の別の態様または実施の形態では、ここに述べた種々の機能の1つまたは全てを実行する手段を含む機器を提供する。
【0011】
本発明の別の態様または実施の形態では、ここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するようプロセッサ回路に指示する命令コードを記憶するコンピュータ読取り可能媒体を提供する。
本発明の別の態様または実施の形態では、プロセッサ回路が実行すると、ここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するコード手段を備えるコンピュータ・プログラムを提供する。
【0012】
本発明の別の態様または実施の形態では、媒体内に実現される信号であって、ここに述べた方法の任意の1つ以上を実行するようプロセッサ回路に指示するコード・セグメントを含む信号を提供する。
ここに述べた機能の任意の組合せを実行させるために、かかる機器、媒体、または信号を含む任意の数のかかる実施の形態を提供する。
【0013】
本発明の別の態様または実施の形態では、望ましければ、ここに述べた別の態様の任意の組合せまたは部分的な組合せを1つの実施の形態にまとめてよい。例えば、監視した熱効率パラメータに応じて制御情報を自動的に更新することに関する態様と、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整することに関する態様の任意の1つ以上とを組み合わせて、フラッシュの最初の部分の間に測定した表面温度に応じてフラッシュの残りの部分の電力を制御し、またその立下り時間が立ち上がり時間より短い電気パルスを放射装置に供給してよい。1つの例示の実施の形態では、ここに述べた態様の全てを実施してよい。更に一般に、ここに述べた態様の1つ1つとここに述べた他の態様の任意の1つ以上とを組み合わせてよい。または望ましくは、残りの態様を用いずに本発明の態様の任意の1つを特定の実施の形態だけで実施してよい。
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と共に本発明の特定の実施の形態に関する以下の説明を見れば、当業者に明らかになる。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る高速熱処理(RTP)装置を全体的に100で示す。この実施の形態では、装置100は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュを作る放射装置180と、測定装置102と、測定装置102および放射装置180と通信するプロセッサ回路110とを含む。この実施の形態では、測定装置102は、放射装置180に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視し、プロセッサ回路110は、熱効率パラメータの監視に応じて、放射装置180が放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新する。
【0015】
この実施の形態では、測定装置102は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の面104の温度も測定する。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、この測定温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する。
この実施の形態では、プロセッサ回路110は、面104の加熱パラメータの測定値に応じて放射フラッシュの加熱効果を予測する。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、また予測加熱効果に応じて放射フラッシュの事前調整を行う。
【0016】
高速熱処理室
この実施の形態では、装置100は、工作物106を熱処理するのに用いる。この実施の形態では、工作物106は、半導体ウェーハ120を含む。より特定すると、この実施の形態のウェーハ120は、例えば、マイクロプロセッサなどの半導体チップの製造に用いる300mm径のシリコン半導体ウェーハである。この実施の形態では、工作物106の第1の面104は、ウェーハ120の上側、すなわち、素子側122を含む。同様に、この実施の形態の工作物106の第2の面118は、ウェーハ120の裏側、すなわち、基板側124を含む。
【0017】
この実施の形態では、ウェーハ120のかかる熱処理を行うため、ウェーハを高速熱処理室130内に支持する。この実施の形態では、室130は、共有特許協力条約公開第WO03/060447号(これをここに援用する)に開示されているものとほぼ同様であり、工作物の上と下に放射線吸収領域を含む。室130は、上部および底部の選択的に放射線を吸収する壁132および134と、側壁とを含む。側壁の2つを136および138で示し、他の2つは、図示の都合上、取り除いている。この実施の形態では、側壁136および138は(図示していない別の側壁も)鏡のように反射するダイアモンドで削ったアルミニウム表面を含み、選択的に吸収する水冷窓を含む上部壁132および下部壁134と協働する。
【0018】
この実施の形態では、室130は、工作物106を内部に支持する空洞を有する内壁140を更に含む。この実施の形態では、特許協力条約公開第WO2004/057650号(これをここに援用する)に開示されているものと同様の工作物支持装置(図示せず)により、工作物は、その空洞内に支持される。または、工作物は、例えば、複数の水晶ピン(図示せず)などを用いる従来の方法で支持してよい。より一般に、工作物を支持する他の適当な手段を代わりに用いてよい。
【0019】
内壁140は、特定の応用に依存して放射線を吸収または反射してよい。反射面の方がエネルギ効率が良いが、放射線吸収面は、熱の均一度が高い。または両極端の中間をとって、例えば、陽極酸化アルミニウムなど、部分的に反射し部分的に吸収する面などを用いてよい。同様に、望ましくは、室130の種々の反射面の代わりに完全にまたは部分的に放射線を吸収する面を用いてよい。好ましくは、室の全ての面を冷却装置144により冷却する。この実施の形態では、これは循環水冷装置を含む。
【0020】
この実施の形態では、工作物106の面104の反射率のために、面104は、パターン化された鏡として作用して室130の一部(図示せず)の映像を測定装置102に反射する。この実施の形態では、室130のこの映像の部分は、できるだけ黒にして、面104で反射される電磁放射線を測定装置102が検出しないようにする。
【0021】
この実施の形態では、装置100は、ウェーハ120を予熱する予熱装置150を更に含む。この実施の形態の予熱装置150は、室130の底壁134の下に配置した高強度アーク・ランプ152および反射装置154を含む。この実施の形態では、底壁134はフィルタを事実上含み、これを通して、予熱装置150のアーク・ランプ152および反射装置154は、電磁放射線を放射してウエーハ120を加熱する。より特定すると、この実施の形態の底壁134は、水冷窓156を含む。更に特定すると、この実施の形態の水冷窓156は、その間に冷却チャネルを形成する2枚の平行な間隔をあけた水晶ガラスを含み、これを通して冷却装置144により水をポンプ送りする。この実施の形態では、水冷窓は、アーク・ランプ152から工作物106への放射線の大部分を透過させるが、1450nmの放射線は吸収する。
【0022】
装置100は、更に、診断用照明源160などの複数の追加の測定装置と、例えば、映像装置162および高速放射計164などの放射線検出器を含む。望ましくは、これは、前に述べた共有PCT公開第WO03/060447号に述べられているように用いてよい。この実施の形態では、測定装置102、映像装置162および高速放射計164は、1450nmの診断波長で動作し、ウエーハ温度およびその光学的特性の測定を容易にする。
【0023】
この実施の形態では、装置100は、更に、工作物106の第1の面の104に入射する放射フラッシュを作る放射装置180を含む。より特定すると、この実施の形態の放射装置180は、フラッシュ・ランプ装置を含む。更に特定すると、この実施の形態の放射装置180は、室130の上壁132のすぐ上に配置された第1、第2、第3、第4のフラッシュ・ランプ182,183,185,187と反射装置184とを含む。または、3つ以下のフラッシュ・ランプ、例えば、1つのフラッシュ・ランプなどを用いてよい。逆に、5つ以上のフラッシュ・ランプ、例えば、非常に多数のフラッシュ・ランプのアレイなどを用いてよい。または別の態様として、例えば、マイクロ波フラッシュまたはパルス発生器などの他のタイプの放射装置をフラッシュ・ランプの代わりに用いてよい。この実施の形態では、上壁132は、上に述べた水冷窓156と同様の水冷窓185を含む。
【0024】
この実施の形態では、放射装置180は、更に、フラッシュ・ランプ182,183,185,187に電力を供給して放射フラッシュを作る電源装置188を含む。この実施の形態では、電源装置188は、個々のフラッシュ・ランプ182,183,185,187にそれぞれ電力を供給する個々の電源装置189,191,193,195を含む。または、望ましくは、フラッシュ・ランプ182,183,185,187は、単一の共通電源で電力を供給してよい。
【0025】
この実施の形態では、ウェーハ120を室130内に挿入する前に、ウェーハの素子側122に、ウェーハの素子側の表面領域内に不純物原子、すなわち、ドーパントを導入するイオン注入プロセスを行う。イオン注入プロセスでは、ウェーハの表面領域の水晶格子構造に傷をつけ、注入したドーパント原子を電気的に不活性な格子間位置内に残す。ドーパント原子を格子の置換位置に移して電気的に活性にするため、またイオン注入中に起こる結晶格子構造の傷を修復するため、ウェーハの素子側の表面領域を高温に加熱して焼きなます。
【0026】
この実施の形態では、かかる焼きなましは、共有米国特許第6,594,446号および第6,941,063号(両特許をここに援用する)、および上に述べたPCT公開第WO03/060447号に開示されている方法と同様にして行う。例えば、焼きなまし方法の第1の段階は、ウェーハを通る熱伝導時間より遅い速度でウェーハを中間温度まで予熱して、ウェーハ全体を比較的均一に中間温度まで加熱することを含んでよい。この実施の形態では、この予熱段階では、ウェーハの裏側、すなわち、基板側124をアーク・ランプ152で照射して、ウェーハを100℃/秒から400℃/秒などの傾斜速度で、例えば、700℃などの中間温度まで加熱する。
【0027】
予熱段階の後、ウェーハの上側、すなわち、ウェーハを通る熱伝導時間よりかなり速い速度で実質的に一層高い焼きなまし温度まで素子側122を急加熱して、ウェーハの上側の表面領域だけは最終の焼きなまし温度まで加熱してウェーハのバルクは、比較的冷たい中間温度の近くに留めておく。この実施の形態では、この第2の段階で放射装置180からの高電力フラッシュを、例えば、1ミリ秒程度の比較的短時間、上側の面に当てる。これにより、より冷たいウェーハのバルクは、ヒート・シンクとして作用して、上側の面の急冷却を容易にする。
【0028】
かかるウェーハの十分な熱処理を確実に行うため、また室130内で次々に処理する同様のウェーハに一貫した繰返し可能な熱処理を行うため、この実施の形態では、ここに詳細に説明したように、第2の段階の間(すなわち、高速放射フラッシュの間)素子側温度を実時間で監視する。
【0029】
基板側の予熱装置
この実施の形態では、アーク・ランプ152は、カナダ、バンクーバのマットソン・テクノロジ・カナダ社(Mattson Technology Canada, Inc.)製の500kWの水壁アルゴン・プラズマ・アーク・ランプである。かかるアーク・ランプの例は、共有米国特許第4,700,102号、第4,937,490号および第6,621,199号に開示されており、これらをここに援用する。上に示した米国特許に説明されているように、かかるアーク・ランプは、タングステン・フィラメント・ランプ源に比べて半導体の焼きなまし用として多くの利点を有する。温度を更に高くするには、単一のアーク・ランプ152の代わりに多数のアーク・ランプを用いてよい。または、例えば、フラッシュ・ランプ、タングステン・フィラメント・ランプ源、これらのランプ源のアレイなどの他のタイプの予熱装置を代わりに用いてよい。
【0030】
RTPシステム・コンピュータ(RSC)
図1および図2に関連して、RTPシステム・コンピュータ(RSC)112を図2に詳細に示す。この実施の形態では、RSCは、プロセッサ回路110を含む。これは、この実施の形態ではマイクロプロセッサ210を含む。しかし、より一般に、この明細書では、「プロセッサ回路」という用語は、ここに述べる機能を実行することができる任意のタイプの装置または装置の組合せを広く含むものであって、例えば、他のタイプのマイクロ・プロセッサ、マイクロ・コントローラ、他の集積回路、他のタイプの回路または回路の組合せ、論理ゲートまたはゲート・アレイまたは任意の種類のプログラム可能な装置を、例えば、単独で、または同じ場所でまたは互いに離れた場所にある他の同様の装置と組み合せて含む(制限なしに)。追加のタイプのプロセッサ回路は、この明細書を見れば当業者に明らかであり、任意のかかる他のタイプのプロセッサ回路を代わりに用いることは、本発明の範囲から逸れるものではないと考える。
【0031】
この実施の形態では、マイクロ・プロセッサ210は、この実施の形態でハード・ディスク・ドライブを含む記憶装置220と通信する。記憶装置220は、マイクロ・プロセッサ210を構成し、またプログラムしてここに述べる種々の機能を実行する複数のルーチンを記憶するのに用いる。例えば、主高速熱処理(RTP)ルーチン221、事前調整ルーチン222、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224、シミュレーション・ルーチン226、熱分析ルーチン230およびドリフト制御ルーチン236を含み、また望ましくは、追加のルーチン(図示せず)を含んでよい。この実施の形態では、記憶装置220は、マイクロ・プロセッサ210が受けまたは用いる種々のタイプのデータを記憶するのに用いてもよい。例えば、電荷ルックアップ・テーブル228、電流削減ルックアップ・テーブル232、電流増強ルックアップ・テーブル234および工作物パラメータ記憶240などである。
【0032】
この実施の形態では、マイクロ・プロセッサ210は、この実施の形態でランダム・アクセス・メモリ(RAM)を含むメモリ装置260とも通信してよい。この実施の形態では、記憶装置220に記憶する種々のルーチンは、マイクロ・プロセッサ210が測定、計算、または用いる種々の特性、すなわち、パラメータを記憶するRAM内の種々のレジスタまたは記憶を定義するようマイクロ・プロセッサ210を構成する。これらは、基準反射率記憶261、基準照明強度記憶262、基準広帯域強度レジスタ263、工作物広帯域強度レジスタ264、工作物照射強度記憶265、測定反射強度記憶266、工作物反射率記憶267、工作物放射率記憶268、放射エネルギ記憶270、吸収エネルギ記憶272、エネルギ・インディケータ・レジスタ274、基準エネルギ・インディケータ・レジスタ276、充電パラメータ記憶278、素子側温度記憶280、予想温度記憶282、RTPパラメータ記憶284、効率パラメータ記憶286、温度誤差レジスタ288、フラッシュ干渉効果レジスタ290ならびに他の記憶および/またはレジスタ(図示せず)を含む。
【0033】
この実施の形態のマイクロ・プロセッサ210は、更に、図1に示す装置100の種々の装置と通信する入出力(I/O)インターフェース250と通信する。種々の装置は、例えば、測定装置102および放射装置180ならびに予熱装置150、診断照射源160、映像装置162、高速放射計164および種々のユーザ入出力装置(図示せず)(キーボード、マウス、モニタ、CD−ROMドライブおよびフロッピ・ディスケット・ドライブなどの1つ以上のディスク・ドライブおよびプリンタなど)を含む。この実施の形態では、入出力インターフェース250は、光ファイバ網(図示せず)を介して、これらの装置(例えば高速放射計164、測定装置102など)の少なくとも一部と通信する光電変換器を含む。これについて、かかる光通信は、予熱装置150および放射装置180が必要とする大電流や急速放電により生じる電磁妨害および電気雑音により生じる種々の困難を防ぐことが認識される。
【0034】
素子側の放射装置
図1に戻って、一般に放射装置180は、工作物106の面104(この実施の形態ではウェーハ120の素子側122)を照射する。この実施の形態では、放射装置180は、図1に示すフラッシュ・ランプ182,183,185,187および反射装置184を含む。より特定すると、この実施の形態の各フラッシュ・ランプ182は、共有米国特許出願公開第US2005/0179354号およびPCT公開第WO2005/078762号(共にここに援用する)に述べられているものと同様のカナダ、バンクーバのマットソン・テクノロジ・カナダ社製の液体冷却フラッシュ・ランプを含む。これについて、この特定のタイプのフラッシュ・ランプは、従来のフラッシュ・ランプに比べて、例えば、熱処理の一貫性および繰返し性の向上を含む多くの利点を有することが分かっている。または、他のタイプのフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。または別の態様として、例えば、マイクロ波フラッシュまたはマイクロ波パルス発生器などの他のタイプの放射装置をフラッシュ・ランプの代わりに用いてよい。より一般に、望ましくは、他の加熱装置を放射装置180の代わりに用いてよい。
【0035】
この実施の形態では、放射装置180は、ウェーハ120の熱伝導時間より短い継続時間を有する放射フラッシュを素子側122に当てる。この実施の形態では、ウェーハの熱伝導時間は、10msから15ms程度である。したがって、この実施の形態では、放射装置180は10ms以下の程度の継続時間を有する放射フラッシュを作る。より特定すると、この実施の形態の放射装置は、1ms程度の継続時間を有する放射フラッシュを作る。
【0036】
このため、この実施の形態では、放射装置180は、更に図1に示す電源装置188を含む。より特定すると、この実施の形態の電源装置188の各電源装置189,191,193,195は、フラッシュ・ランプ182,183,185,187のそれぞれの電源装置として働き、パルス放電ユニットを含む。これは、事前に充電した後で急速に放電して、各フラッシュ・ランプに入力電力の「スパイク」を供給して望ましい放射フラッシュを作る。更に特定すると、この実施の形態では、各パルス放電ユニットは、一対の7.9mFのコンデンサ(図示せず)(パルス放電ユニット当たり15.8mF)を含む。これは、3500Vで充電して最大96.775kJの電気エネルギを蓄積し、この蓄積エネルギをそれぞれのフラッシュ・ランプに、例えば、0.5msから1.5msなどの短時間に放電することができる。このように、この実施の形態の放射装置180は、最大387.1kJの電気エネルギを蓄積し、1ms程度の継続時間のフラッシュでフラッシュ・ランプ182,183,185,187を通してかかるエネルギを放電することができる。または、これより大きなまたは小さな電源または他のタイプの電源を代わりに用いてよい。
【0037】
この実施の形態では、各電源装置189,191,193,195は、放射フラッシュを作るパルス放電をフィードバック制御し、パルス放電ユニットおよび各フラッシュ・ランプと通信する電力制御回路を含む。これについては、後で説明する。または、望ましくは、複数のフラッシュ・ランプに単一の電源装置から、および/または単一の電力制御回路から電力を供給してよい。または別の態様として、単一の電源装置および制御回路を持つ単一のフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。
【0038】
電力制御回路
図1および図3に関連して、例示の電力制御回路を図3に全体的に300で示す。この実施の形態では、電源装置188の個々の電源装置189,191,193,195は、それぞれ、各フラッシュ・ランプ182,183,185,187と通信し、300で示す電力制御回路を含む。または、望ましくは、代わりに単一の電力制御回路を単一の共通電源または多重の電源と組み合わせて、また同様に単一のフラッシュ・ランプまたは多重のフラッシュ・ランプと組み合わせて、用いてよい。また別の態様として、他のタイプの電力制御回路を代わりに用いてよい。
【0039】
この実施の形態では、電力制御回路300は、電源ユニット302およびフラッシュ・ランプ(この例では、フラッシュ・ランプ182)と電気的に通信する。この実施の形態では、電源ユニット302は、プロセッサ回路110と通信し、プロセッサ回路で制御して、コンデンサ・バンク328を充電する最大3500Vの調整可能なDC電圧を作る。この実施の形態では、コンデンサ・バンク328は、2つの並列の7.9mFのコンデンサを含む(すなわち、15.8mFの有効静電容量を与える)。したがって、3500Vで充電すると、コンデンサ・バンク328は、96.775kJの電気エネルギを蓄積する。
【0040】
この実施の形態では、電力制御回路300は、第1のダイオード304および第2のダイオード306と、第1の抵抗器308および第2の抵抗器310(この実施の形態では20kΩの抵抗器)を含む。この実施の形態では、電力制御回路300は、更に、抵抗器312、ダンプ・リレー314および別の抵抗器316を含む。この実施の形態の抵抗器312は、60Ωの抵抗器を含み、抵抗器316は、5Ωの抵抗器を含む。この実施の形態では、安全のためにコンデンサ・バンクを放電しなければならない場合には、ダンプ・リレー314を用いて抵抗器312を通してコンデンサ・バンクを安全に放電する。
【0041】
この実施の形態の電力制御回路300は、全体的に320で示す第1の電力削減回路と、全体的に330で示す電力増強回路とを含む。一般に、この実施の形態の電力削減回路320は、プロセッサ回路110から受ける制御信号に応じて、フラッシュ・ランプ182に供給する電流の量を減らすことによりフラッシュ・ランプの電力出力を減らす。逆に、この実施の形態の電力増強回路330は、プロセッサ回路110から受ける制御信号に応じて、フラッシュ・ランプ182に供給する電流の量を増やすことによりフラッシュ・ランプのピーク電力出力を増やす。
【0042】
この実施の形態では、電力削減回路320は、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信するクローバ回路を含む。より特定すると、この実施の形態のクローバ回路は、コンデンサ・バンク328に並列に接続する。更に特定すると、この実施の形態のクローバ回路(すなわち、電力削減回路320)は、スイッチング回路、インダクタ324および抵抗器326を含む。この実施の形態のスイッチング回路は、この実施の形態では半導体スイッチである単一のスイッチ要素を含む。より特定すると、この実施の形態の半導体スイッチは、サイリスタ、すなわちシリコン制御整流器322であり、そのゲートは、プロセッサ回路110と通信する。この実施の形態では、インダクタ324は、5.2μHのインダクタンス、抵抗器326は、39mΩの抵抗を有する。
【0043】
この実施の形態では、電力削減回路320のサイリスタ322は、プロセッサ回路110からサイリスタ322のゲートに制御信号を受けて導通状態になってフラッシュ・ランプ182に供給する電流を減少させるまでは非導通状態である。より詳細については後で説明する。
【0044】
この実施の形態の電力増強回路330は、放射フラッシュの放射源(この実施の形態ではフラッシュ・ランプ182)および放射源の電源(この実施の形態ではコンデンサ・バンク328)と通信する誘導クローバ回路を含む。より特定すると、この実施の形態の電力増強回路330は、サイリスタ332およびインダクタ334(この実施の形態では1.5μHのインダクタンスを有する)を含む。
【0045】
この実施の形態では、電力制御回路300は、更に、サイリスタ336、インダクタ338、抵抗器340およびフリーホイール・ダイオード342を含む。この実施の形態では、抵抗器340は、5mΩの抵抗を有し、インダクタ338は、4.7μHのインダクタンス(電力増強回路330のインダクタ334のインダクタンス1.5μHより大きい)を有する。
この実施の形態では、サイリスタ336およびサイリスタ332の制御ゲートは、共にプロセッサ回路110と通信し、プロセッサ回路110がゲート電圧を与えるまでは、それぞれ非導通状態にある。
【0046】
後で詳細に説明するが、プロセッサ回路110は、サイリスタ336にゲート電圧を与えて、コンデンサ・バンク328がフラッシュ・ランプ182、抵抗器340およびインダクタ338を通して放電を開始すると放射フラッシュを開始する。このように、フラッシュを開始してアーク電流がピークに向かって増加するに従って、増加する電流に抗して自己誘導起電力(emf)(ε=−L(di/dt))がインダクタ内に発生するので、フラッシュ・ランプ182を通って放電する電流の増加速度は、4.7μHのインダクタ338により事実上、制限される。電力増強が必要な場合は、プロセッサ回路110は、サイリスタ332にゲート電圧を与えて、これを導通状態にする。これにより電流は、1.5μHのインダクタ334を通って流れる。その自己誘導emf(電流の増加に抗する)は、インダクタンスが小さいので、インダクタ338の自己誘導emfより小さい。したがって、電力制御回路のこれらの構成要素の全体の電流制限効果が減少し、アーク電流は、より高いピークに向かってより速く増加する。この実施の形態では、サイリスタ332を適当なときに点火すると、フラッシュ・ランプ182に供給されるピーク電流が事実上、増加するので、フラッシュ・ランプ182からの放射フラッシュが入射する工作物106の面104のピーク温度は、事実上高くなる。ただし、電流(したがって放射フラッシュの電力)は、サイリスタ332を点火しない場合よりやや速く減少する。
【0047】
この実施の形態では、電力制御回路300は、更に、図3に全体的に350で示す第2の電力削減回路を含む。一般に、この実施の形態の第2の電力削減回路350は、プロセッサ回路110から受けた制御信号に応じてフラッシュ・ランプ182に供給する電流の量を減らすことによりフラッシュ・ランプの電力出力を減らす回路である。この実施の形態では、第2の電力削減回路350は、第1の電力削減回路320と同様であり、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信するクローバ回路を含む。しかし、第1の電力削減回路とは異なり、この実施の形態の第2の電力削減回路350は、コンデンサ・バンク328ではなくフラッシュ・ランプ182に並列に接続する。より特定すると、この実施の形態の第2の電力削減回路350は、スイッチング回路、インダクタ354および抵抗器356を含む。この実施の形態のスイッチング回路は、この実施の形態では半導体スイッチである単一のスイッチ要素を含む。より特定すると、この実施の形態の半導体スイッチは、サイリスタ、すなわち、シリコン制御整流器352であり、そのゲートは、プロセッサ回路110と通信する。この実施の形態では、インダクタ354は、5.2μHのインダクタンス、抵抗器356は、39mΩの抵抗を有する。
【0048】
この実施の形態では、第2の電力削減回路350のサイリスタ352は、プロセッサ回路110からサイリスタ352のゲートに制御信号を受けて導通状態になってフラッシュ・ランプ182に供給する電流を減少させるまでは非導通なのである。より詳細については後で説明する。
【0049】
第1の測定装置(フラッシュ・フィードバック制御およびドリフト制御用)
図1および図4に関連して、測定装置を図4に全体的に102で示す。この実施の形態では、測定装置102は、広いダイナミック・レンジおよび超高速時間応答を有するよう設計され、共有PCT公開第WO03/060447号に開示されているものと一般に同様の超高速放射計400を含む。この実施の形態の超高速放射計400は、1450nmの狭帯域フィルタ402、光学的スタック404、高速InGaAs PINフォトダイオード406、フォトダイオード406の温度を20ミリケルビン以内に制御する統合熱電クーラ408、増幅器410およびアナログ・デジタル(A/D)変換器412を含む。
【0050】
この実施の形態では、増幅器410は、500kHzの3dB電気帯域幅を有し、非常に低雑音で高速の差動トランス・インピーダンス増幅器を含む。増幅器410は、フォト・ダイオード出力信号を調整して増幅し、増幅された信号をA/D変換器412に供給する。A/D変換器412は、増幅されたフォト・ダイオード信号の16ビットのサンプルを1MHzのサンプリング速度で作る。
【0051】
この実施の形態では、A/D変換器412は、入出力(I/O)インターフェース460を介してRSC112のプロセッサ回路110と通信する。この実施の形態では、入出力インターフェース460は、光電変換器を含み、かかる通信信号を光ファイバ網(図示せず)で送信および受信することを可能にするので、フラッシュの時間的付近での顕著な電磁妨害および電気雑音の悪影響を避けることができる。この実施の形態では、ほとんどの測定に関する計算は、測定装置102のオン・ボード回路ではなくプロセッサ回路110が行う。しかし、かかる測定に関する計算を測定装置102の光学的オン・ボード・プロセッサ回路(図示せず)で、またはより一般に、任意の他の局所または遠方のプロセッサ回路またはプロセッサ回路の組合せで行ってよい。
【0052】
この実施の形態では、超高速放射計400は、更に、超高速放射計の種々の内部構成要素へのかかる妨害の影響を減らす遮蔽470を含む。
望ましくは、超高速放射計400は、熱的に制御され、非常に安定な較正信号および基準信号を作るのに用いることができる内部基準素子450も含むことができる。かかる実施の形態では、かかる較正信号および基準信号に応じて放射計400は、A/D変換器412から受ける16ビットのサンプルを調整するオン・ボード回路も含み、超高速放射計の種々の電子構成要素内で起こる可能性のある予測できないドリフトがあれば動的に補償してよい。
【0053】
図1に戻って、この実施の形態では、測定装置102(より特定すると超高速放射計400)は、工作物106の第1の面104(より特定すると、ウェーハ120の素子側122)の現在の温度を測定する。この実施の形態では、装置100は、この実施の形態では第1の面104と放射装置180との間にあるフィルタ装置(より特定すると水冷窓186)を事実上、含む。これについて、水冷窓186は、フラッシュ・ランプ182,183,185,187が作る放射線のほとんどを工作物106の第1の面104(この実施の形態ではウェーハ120の素子側122)に透過させて素子側を加熱し、同時に1450nmの波長の放射線を吸収する。
【0054】
逆に、1450nmの狭帯域フィルタ402のために、超高速放射計は、1450nmのすぐ近くの放射線だけに応答する。したがって、超高速放射計は、面104(素子側122)からの熱放射だけを検出し、放射装置が作り、面104が反射する放射線は、全く検出しない。また水冷窓186は、素子側122が熱として放出する波長(代表的に1400nm以上)の放射線のほとんどを吸収するので、冷やすのが望ましい不適当なときに、かかる波長がウェーハに反射して素子側を望ましくなく、かつ、不均一に加熱しそうになることを防ぐ。(しかし、超高速放射計は、少量の「室の戻り」を検出する。すなわち、診断波長で素子側が熱として放出する放射線の少量が窓186の下側の水晶ガラスにより素子側に反射することがあり、かかる反射された熱放出のごく一部が再び放射計に反射する。望ましくは、例えば、共有PCT公開第WO03/060447号に開示されているのと同様の方法、または任意の他の適当な方法を用いて、室の戻りを考慮に入れてよい。)
【0055】
第2の測定装置(フラッシュ事前調整測定用)
図1および図5に関連して、第2の測定装置を図5に全体的に500で示す。この実施の形態の第2の測定装置500は、工作物106の面104に放射フラッシュが当たる前に面104の加熱パラメータの最初の測定値を得るのに用いる。
【0056】
この実施の形態では、第2の工作物の同様の面に現在の放射フラッシュを入射させると同時に、第1の工作物の第1の面に入射する将来の放射フラッシュを事前調整する。より特定すると、この実施の形態の第2の測定装置500は、図1に示す室130の外に配置し、この実施の形態では、高速熱処理のために工作物106を室130内に取りつける前に面104の加熱パラメータを測定する。このように、1つの工作物の面104の加熱パラメータは、室130の外で測定し、他方で第2のウェーハは、室内で熱処理するので、室130の処理量は、落ちない。または、望ましくは、面104をもとの場所で測定するために第2の測定装置またはそのバリエーションを室130内に配置してよい。
【0057】
この実施の形態では、第2の測定装置500で測定する加熱パラメータは、面104の放射率を含む。この実施の形態では、これは、面104の反射率を測定することにより間接に測定する。これについて、所定の波長では、工作物106の放射率εW、反射率RWおよび透過率TWは、関係εW(λ)=1−RW(λ)−TW(λ)を満足する。工作物がシリコン・ウェーハであるこの実施の形態では、水が冷たい(例えば、室温の)とき、ウェーハは、放射フラッシュの全ての波長に対して完全に不透明ではないので、少なくとも或る波長で透過率TWは、非ゼロである。
【0058】
しかし、この実施の形態では、アーク・ランプを用いて放射フラッシュを作ると透過率の影響は、最小になる。なぜなら、かかるアーク・ランプが作る放射エネルギの95%以上が冷たいシリコンの1.2μmの禁止帯幅吸収より低いからである。これに比べて、例えば、代表的なタングステン源の場合は、わずかに40%である。したがって、放射フラッシュのスペクトルで測定するとき、工作物の透過率は、ほとんどの該当する波長で無視できる。放射フラッシュを事前調整する目的からすると、この実施の形態では透過率を無視してよく、したがって放射率は、εW(λ)=1−RW(λ)で近似してよい。このように、関心のある加熱パラメータ、すなわち、面104の放射率εW(λ)は、面の反射率RW(λ)を測定することにより間接的に測定することができる。または、加熱パラメータは、面104の反射率と見てよく、これは、この実施の形態では直接測定する。
【0059】
この実施の形態では、第2の測定装置500は、照射源502、検出器504、プローブ506および第2の検出器516を含む。より特定すると、この実施の形態のプローブ506は、光ファイバ・プローブで、照射源502と光学的に通信する2つの光ファイバ508、510と、検出器504と通信する光ファイバ512と、第2の検出器516と通信する光ファイバ514とを含む。または、別の数の光ファイバを代わりに用いてよい。より一般に、他のタイプの測定装置を代わりに用いてよい。
【0060】
この実施の形態では、照射源502は、重水素ハロゲン光源を含む。これについて、かかる光源は、放射装置180が作る放射フラッシュの波長に対応する波長(紫外線、可視線、赤外線の波長)でかなりの強度を含むことが分かっている。
【0061】
または、照射源は、低強度アーク・ランプを含んでよい(その強度は、放射フラッシュを作るのに用いる高強度フラッシュ・ランプに比べて「低い」)。例えば、照射源502は、早まって面104を高温まで加熱しないようにするために、十分低い光出力パワーを持つ低強度アーク・ランプを含んでよい。低強度アーク・ランプは、連続波(DC)アーク・ランプまたは、例えば、キセノン・フラッシュ・ランプなどのフラッシュ・ランプを含んでよい。望ましくは、照射源502は、放射フラッシュを作るのに用いる高強度フラッシュ・ランプの放射スペクトルをシミュレートするフィルタを備えてよい。かかるフィルタにより、全パワーが非常に低くても、照射源502は、放射装置180の出力スペクトルをシミュレートすることができる。例えば、照射源がキセノン・フラッシュ・ランプの場合は、低強度キセノン・フラッシュ・ランプの容器は、かかる効果を達成する干渉フィルタを備えてよい。または、他のタイプの照射源を代わりに用いてよい。
【0062】
または、更に別の態様では別個の照射源を省いてよい。例えば、或る実施の形態の検出器504は、自分自身の照射源を含んでよい。または、望ましくは、面104の照射は、別の工作物に入射する現在の放射フラッシュの一部を工作物106の面104に向けることを含んでよい。例えば、光ファイバ508、512は、室130と光学的に通信するので、室130内の第1の工作物の面104を加熱するのに用いる放射フラッシュの小部分は、室の外側に逸れて、第1の工作物の処理が完了した後に室130で処理する予定の室130の外にある第2の工作物の面104を照射してよい。かかる実施の形態では、室130から逸れて第2の工作物の面104を照射する放射は、濾波してまたは1つ以上のレンズにより大きな表面領域に拡散して、面104上の強度を事実上、減らしてよい。
【0063】
この実施の形態では、検出器504は、分光計を含む。より特定すると、この実施の形態の検出器は、カナダ、BC、バーナビ(Burnaby)のフォトン・コントロール社(Photon Control Inc.)製のモデルPS001 スペクトロ・メータを含む。この実施の形態では、検出器504は、面104が受ける放射フラッシュに対応する波長スペクトル全体で工作物106の面104の反射率を測定する。より特定すると、この実施の形態の波長スペクトル範囲は、180nmから1400nmで、分光計は、180nmから1400nmの範囲の複数の離散的波長で反射率R(λ)を測定する。更に特定すると、この実施の形態の波長スペクトルは、180nmから1400nmの範囲に均一に間隔をとった2048の離散的波長λ={λ0,λ1,λ2,...,λ2047,}を含む。または、望ましくは、スペクトルの境界を変えてよい。例えば、或る実施の形態では、1100nmより長い波長のスペクトルの一部は、かかる波長で放射装置180が作るエネルギが比較的少量なので無視してよい。同様に、スペクトル内の離散的な波長の数を変えて、希望に応じて、より多数またはより少数の離散的な波長を含んでもよい。したがって、一般化のために、この実施の形態では2048の離散的な波長をここではλ={λ1,λ2,...,λN}で表す。
【0064】
または、望ましくは、検出器504は、例えば、放射フラッシュの波長スペクトルのかなりの部分にわたる広帯域反射率の値などの単一の反射率の値を作ってよい。かかる単一の反射率の値は、照射源502が放射装置180の波長スペクトルをシミュレートする実施の形態や、例えば、上に述べたように放射装置180からの放射を用いて反射率測定の目的で面104を照射する場合に用いてよい。
【0065】
この実施の形態では、第2の検出器516は、広帯域放射検出器を含む。第2の検出器516は、光ファイバ514を介して照射源502から電磁放射線を受け、照射源502からの電磁放射線の関心のあるスペクトル全体にわたる広帯域強度を表す単一のデータ値を作る。
この実施の形態では、RSC112のプロセッサ回路110は、第2の測定装置500と、より特定すると、照射源502および検出器504と、光ファイバ網(図示せず)を介して通信する。
【0066】
動作 −− 概観
この実施の形態では、高速熱処理サイクルの一貫性および繰返し性を高めるために複数の方法を組み合わせて用いる。
第1の方法では、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの加熱効果を面104の加熱パラメータの測定に応じて予測する。次に、開始する前に、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する。したがって、例えば、加熱パラメータは、工作物106の面104の放射率を含んでよく、また見かけが同じ2つの工作物が実際には少し異なる放射率を有する場合は、放射フラッシュのエネルギ出力を事前調整して、2つの工作物の面が吸収する放射フラッシの異なる割合を補償してよい。
【0067】
第2の方法では、工作物106の面104の温度を面104に入射する放射フラッシュの最初の部分の間で測定する。この温度に応じて、放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する。したがって、望ましい時間より速くまたは遅く面104が加熱されていることを、例えば、放射フラッシュの最初の部分の間(例えば、フラッシュの最初の0.3msから0.5msの間など)の面104の温度の実時間測定値が示す場合は、放射フラッシュの残りの部分の電力を減らしまたは増やして、面104の温度が望ましい温度軌道に一層、密接に追従するようにする。
【0068】
第3の方法では、放射装置180に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視し、これに応じて、放射装置が放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新する。これについて、例えば、電極、容器または冷却液などのフラッシュ・ランプ構成要素や装置100の窓186またはその他の構成要素の汚れまたは劣化のために、装置100の熱効率は、時間と共に低下する可能性がある。逆に、例えば、劣化した電極または他の構成要素を交換した場合または汚れた冷却液または窓を掃除または交換した場合は、例えば、装置の熱効率が向上する可能性がある。したがって、この実施の形態では、放射フラッシュを作るのに用いる制御情報を自動的に更新して、装置の熱効率のこのような変化を補償する。
【0069】
第4の方法では、その立ち上がり時間より短い立下り時間を有する電気パルスを放射装置(より特定すると、この実施の形態ではフラッシュ・ランプ182,183,185,187)に供給して、工作物106の面104に入射する放射フラッシュを作る。
或る特定の実施の形態では、これらの全ての方法を組み合わせて用いてよいが、例示の別の実施の形態では、これらの方法の任意の1つを用いて、残りの任意または全ての方法を必ずしも用いなくてよい。これらの方法の全てを組み合せると、誤差は、最小また再現性は最大になる。ただし、これらの方法の1つ以上の部分的な組合せでも、極端な再現性を必要としない応用には十分である。
【0070】
主高速熱処理ルーチン −− 概観
図1および図2に関連して、この実施の形態の主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に装置100を制御して工作物106に望ましい熱サイクルを行うよう指示する。このため、この実施の形態の主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に望ましい熱サイクルを定義するユーザ指定のパラメータを受けて記憶するよう指示する。このパラメータは、例えば、キーボードなどのユーザ入力装置(図示せず)を用いてユーザが入力してよい。より特定すると、この実施の形態のユーザ指定のパラメータは、特有の工作物タイプ識別子WID、放射フラッシュを開始する直前に工作物106全体を加熱すべき望ましい中間温度TINTおよび工作物106の面104だけを加熱して工作物のバルクは中間温度TINTまたはその近くに実質的に保つときの望ましい温度ジャンプΔTを含む。プロセッサ回路110は、このユーザ指定のパラメータをRTPパラメータ記憶284内に記憶するよう指示される。
【0071】
この実施の形態では、工作物タイプ識別子WIDは、装置100が熱処理のために事前に特性化した、複数の異なるタイプの工作物の特定の1つを識別する。より特定すると、この実施の形態の工作物パラメータ記憶240は、これらの異なるタイプの事前に特性化した工作物毎の定義済みの熱処理パラメータを含む。更に特定すると、この実施の形態のユーザ指定の温度ジャンプΔTと電源装置188に蓄積すべき電荷の対応する量との関係は、ΔT=STE*ln(ECH)+OTEで近似してよい。したがって、この実施の形態の工作物パラメータ記憶240は、複数の工作物特性化レコードを記憶する。かかる各レコードは、特有の工作物タイプ識別子WIDを記憶するフィールドを含み、各フィールドは、そのタイプの工作物の所定の特性化の値STEおよびOTEを記憶し、また別のフィールドは、その工作物タイプの特性化の値STEおよびOTEを生成して記憶したときの装置100の効率を表す効率の値CTEを記憶する。
【0072】
この実施の形態では、工作物パラメータ記憶240の各レコードは、更に、特定の工作物のタイプに対応する基準エネルギ・インディケータの値EREFを記憶するフィールドを含む。これについては、後で事前調整ルーチン222に関係してより詳細に説明する。または、この実施の形態の目的では温度ジャンプと電荷との対数関係は、経験的観察と一致するが、他の適当な近似または関数関係を代わりに用いてよく、また他の対応する特性化の値を記憶してよい。例えば、指定された温度ジャンプΔTとこのジャンプを達成するために必要な電荷ECHとの関係を定義するのに、指定された中間温度TINTを考慮に入れてもよい。同様に、シリコンが吸収するより、むしろ反射する傾向がある紫外線波長では電荷が大きいほど大きな放射を作る傾向があることも、望ましくは、所定の関数関係において考慮してよい。
【0073】
この実施の形態では、主RTPルーチン221は、RTPパラメータ記憶284に記憶されている工作物タイプ識別子WIDを用いて、工作物パラメータ記憶240の対応するレコードの位置を見つけてアドレス指定するようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、次に、見つけた特性化の値STEおよびOTEおよび指定された温度ジャンプΔTを用いて、電源装置188(より特定すると、そのコンデンサ・バンク)に蓄積すべき電気エネルギECHNの対応する量を次式で計算して望ましい放射フラッシュを作るよう指示される。
【数1】
【0074】
WID、TINT、およびΔT以外のパラメータを用いて望ましい熱サイクルを定義してよい。例えば、処理する工作物が事前に特性化したウェーハ・タイプの1つでない場合は、識別子WIDを省いてよい。この場合は、ユーザ指定のパラメータは、望ましい中間温度TINTと、放電フラッシュを作るために電源装置188内に蓄積すべき電気エネルギECHNの望ましい量とを含んでよい。このように特性化していないウェーハ・タイプについては、望ましい中間温度TINTおよび望ましい温度ジャンプΔTを指定し、プロセッサ回路は、デフォルトの工作物タイプを参照して望ましい電気エネルギおよび電圧を決定し、このデフォルトの工作物タイプと実際の工作物106との放射率に差があれば、事前調整ルーチン22を実行して補償してよい。これについては、後でより詳細に説明する。
【0075】
この実施の形態では、次に、蓄積した電荷の値ECHNを調整して、現在の工作物タイプについて特性化の値STEおよびOTEを生成した後で生じた装置効率のドリフトがあれば補償する。このため、この実施の形態の主RTPルーチン221は、工作物パラメータ記憶240の現在アドレス指定されたレコードからの効率の値CTE(レコードを生成したときの装置100の効率を表す)と、装置100の現在の効率を表す現在の効率の値Ceff(N)とに応じて電気エネルギECHNを調整するようプロセッサ回路110に指示する。この実施の形態では、後者の現在の効率の値Ceff(N)は、効率パラメータ記憶238、286に記憶されている。これについては、ドリフト制御ルーチン236(段階3)に関して後でより詳細に説明する。このように、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に効率調整済みの電気エネルギの値を次式で計算するよう指示する。
【数2】
主RTPルーチン221は、この調整済みの電気エネルギの値EADJを充電パラメータ記憶278に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。望ましければドリフト訂正は省略してよい。
【0076】
この実施の形態では、プロセッサ回路110は、各電源装置189,191,193,195のコンデンサ・バンクを充電して電気エネルギの値EADJの望ましい量を蓄積する電圧を表す対応するコンデンサ充電電圧の値Vを充電パラメータ記憶278に記憶するよう指示される。この電圧Vは、効率調整済みの電気エネルギの値EADJをフラッシュ・ランプの数で割り、また各フラッシュ・ランプのコンデンサ・バンクが理想的なコンデンサである(E=0.5CV2、すなわち、V=(2E/C)0.5)と仮定して計算してよい。または、コンデンサ・バンクの非理想的な態様があれば補償するため、後者の値EADJを用いて電荷ルックアップ・テーブル228をアドレス指定して対応する充電電圧Vを見つけることにより効率調整済みのエネルギの値から充電電圧を決定してよい。
【0077】
この実施の形態では、熱サイクルを開始する前に、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に事前調整ルーチン222を実行するよう指示する。後で(段階1)より詳細に説明するが、事前調整ルーチン222は、処理する実際の工作物106の放射率を測定し、工作物106と工作物パラメータ記憶240内に記憶されているタイプの工作物のレコードを作るのに用いた工作物の放射率との差があれば補償するようプロセッサ回路110に指示する。適当であれば、充電パラメータ記憶278に記憶されている電気エネルギの値EADJおよび電圧Vを更に調整してよい。これについては、事前調整ルーチン222に関して後でより詳細に説明する。
【0078】
事前調整ルーチン222を実行した後、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110に装置100を制御して熱サイクルを行うよう指示する。より特定すると、この実施の形態の主RTPルーチン221は、予熱装置150を制御すると共に、高速放射計164から受ける温度測定信号を監視して、RTPパラメータ記憶284に記憶されている望ましい中間温度TINTまで工作物106を予熱するようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、電源装置188を制御して、各電源装置189,191,193,195のコンデンサ・バンクを充電パラメータ記憶278で指定された充電電圧Vまで充電して、充電パラメータ記憶278に指定された電気エネルギの値EADJの望ましい調整済みの量を蓄積する。
【0079】
中間温度に達すると、主RTPルーチン221は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の実行を開始するようプロセッサ回路110に指示する。ルーチン224は、電源装置188に信号を送って、蓄積された電気エネルギーの放電を開始して放射フラッシュを作るようプロセッサ回路110に指示する。フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の実行および放射フラッシュの生成は、好ましくは中間温度に達したとき、またはその直後に開始して、中間温度の滞在時間を最小にする。
【0080】
熱サイクルが完了すると、主RTPルーチン221は、ドリフト制御ルーチン236を実行し、装置効率に変化があれば実際に測定して、次の熱サイクルを実行するときに装置がかかる変化を補償するようプロセッサ回路110に指示する。
【0081】
段階1: 予測および事前調整
図1、図2および図5に関連して、この実施の形態のプロセッサ回路110は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの加熱効果を面104の加熱パラメータの測定値に応じて予測するようプログラムまたは構成される。プロセッサ回路110は、予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整するよう構成される。この実施の形態では、加熱効果は、面104の放射率の測定値および放射フラッシュが面104に伝達するエネルギの量に応じて予測する。
【0082】
より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、複数の同様の工作物の各面に入射する同様の放射フラッシュの各加熱効果を面の各熱パラメータの測定値に応じて予測するよう構成され、また更に、工作物毎のフラッシュを予測加熱効果に応じて事前調整するよう構成される。更に特定すると、この実施の形態の工作物の見かけは同じである。これについて、複数の工作物は、見かけが同じでも、その面104は、実際には異なる放射率を有し、したがって異なる割合の放射フラッシュを吸収してよいことが分かっている。したがって、工作物毎に放射フラッシュ自体が実際には同じであっても、見かけが同じ工作物の間のかかる放射率の変動により、面104の異なる温度軌跡やピーク温度などの異なる加熱効果が生じる傾向がある。
【0083】
例えば、図6は、2つの工作物の面の放射率の差が比較的小さくても、同じフラッシュを当てたときに、その面が到達するピーク温度にかなりの影響を与えることを示す。したがって、この実施の形態では、かかる異なる加熱効果を予測して、開始する前に放射フラッシュを事前調整してかかる変動を補償することを試みる。この実施の形態の方法は、工作物の見かけが同一または同様でない場合にも同様に適用してよい。例えば、処理する工作物が熱処理パラメータを事前に特性化して工作物パラメータ記憶240に記憶した工作物のタイプの1つに属していないときは、放射率を測定し、工作物の面への放射フラッシュの加熱効果を予測し、事前に特性化した工作物のタイプへのかかるフラッシュの予想加熱効果と比較することにより、放射フラッシュをかかる工作物について事前調整してよい。
【0084】
かかる予測および事前調整を行うため、この実施の形態の図2に示す事前調整ルーチン222は、図5に示す第2の測定装置500と協力して面104の加熱パラメータを測定するようプロセッサ回路110(より特定すると、マイクロ・プロセッサ21)をプログラムまたは構成する。より特定すると、この実施の形態の加熱パラメータは、面104の放射率を含む。これは、この実施の形態では、面の反射率を測定することにより間接的に測定する(前に述べたように、この実施の形態では、放射フラッシュの波長が短いために工作物の放射率は、無視してよく、したがって、放射率はεW(λ)=1−RW(λ)で近似してよい)。この実施の形態では、加熱パラメータは、放射フラッシュに対応する波長スペクトル(この実施の形態では180nmと1400nmとの間のスペクトル)で測定する。より特定すると、この実施の形態では、加熱パラメータの複数の値は、スペクトルの複数の各波長λ={λ1,λ2,...,λN}で測定する。
【0085】
このため、この実施の形態では、照射源502が作る照射スペクトルの強度を表す値の集合をまずメモリ装置260の基準照射強度記憶262に記憶する。この実施の形態では、これは、基準片(図示せず)を用いて行う。しかし、他の方法を代わりに用いてよい(例えば、照射強度を直接測定するために分光計(図示せず)を追加して)。この実施の形態では、基準片は、放射フラッシュに対応するスペクトルの複数の波長λ={λ1,λ2,...,λN}について既知の反射率RREF(λ)を有する。この実施の形態では、基準片は、工作物106と同じ外形寸法を有する反射性の高い磨いたアルミニウムのウェーハを含む。ただし、既知の反射率を持つ任意の他の適当な基準片を代わりに用いてよい。
【0086】
複数の反射率の値ではなく、広帯域反射率の値などの単一の反射率の値だけを用いる実施の形態では、既知の対応する単一の反射率の値を有する基準片で十分である。この実施の形態では、波長λ={λ1,λ2,...,λN}での基準片の既知の反射率RREF(λ)をメモリ装置260の基準反射率記憶261に記憶する。事前調整ルーチン222は、記憶装置220などの不揮発性記憶の位置からこれらの値を基準反射率記憶261にロードするようプロセッサ回路110に指示してよく、またはこれらの既知の反射率の値を別の方法で得るようプロセッサ回路110に指示(例えば、それが記憶されている値または位置を手で入力するようRSC112のユーザに指示するなど)してよい。
【0087】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、照射源502、検出器504、516およびプローブ506を制御して基準片の上面を照射して基準片から反射される照射の強度を測定するよう次にプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、各波長λ={λ1,λ2,...,λN}で基準片から反射される放射の測定強度の複数の測定値RREF(λ)を検出器504から受け、基準片に入射する照射源502からの照射の照射強度IREF(λ)を計算する(すなわち、波長λ={λ1,λ2,...,λN}毎にIREF(λ)=MREF(λ)/RREF(λ))。次に照射強度の値IREF(λ)をメモリ装置260の基準照射強度記憶262に記憶する。更に、この実施の形態のプロセッサ回路110は、基準片に入射する照射スペクトルの広帯域強度を表す単一の値I0REFを検出器516から受け、この値を基準広帯域強度レジスタ263に記憶する。後でより詳細に説明するように、これらの記憶済みの値IREF(λ)およびI0REFは、工作物106の面104に入射する照射スペクトルIW(λ)を決定するのに用いる。
【0088】
この実施の形態では、照射源502が作る照射スペクトルは、スペクトル的に安定、すなわち、スペクトル内の任意の1つの波長での照射強度とスペクトル内の任意の他の波長での照射強度との比は一定であり、基準片を照射したときと後で工作物を照射したときとで変わらないと仮定する。しかし、照射強度の絶対的な大きさは、変わってよい(例えば、工作物に入射する照射強度は、基準片に入射する照射強度に比べて全ての波長でやや大きく、または全ての波長でやや小さいことがある)。
【0089】
長い時間尺度にわたって照射源502に影響を与える可能性のある「ドリフト」(すなわち、他の波長に対する1つ以上の波長での比例的強度に影響を与える可能性のある緩やかな変化)があれば補償するため、基準片を用いて後で照射強度を再測定し、基準照射強度記憶262および基準広帯域強度レジスタ263の内容をこれに従ってリフレッシュしてよい。かかる再較正は、計画をたてて定期的に行ってよく、または、例えば、熱処理中に観測した温度測定値が不一致であることを示したときに行ってよい。望ましくは、かかる再較正は、各順次の工作物の各反射率を測定する前に行ってよい。しかし、処理室130の処理量を落とさないよう十分速く行うことができるのでなければ、較正の目的で照射強度をかかる頻度で再測定することは実施の形態によっては不都合である。
または、上に述べたように、工作物に入射する照射強度を任意の他の適当な方法で測定または予測してよい。
【0090】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、次にプロセッサ回路110に加熱パラメータを測定するよう指示する。この実施の形態では、これは、照射フラッシュに対応するスペクトルの複数の波長λ={λ1,λ2,...,λN}での面104の放射率εW(λ)である。この実施の形態では、放射率εW(λ)は、面104の反射率RW(λ)を測定することにより間接的に測定する。
【0091】
この実施の形態では、加熱パラメータを測定することは、加熱パラメータ内の小規模の角変動を補償することを含む。より特定すると、この実施の形態では、補償することは、面の十分大きな領域にわたって加熱パラメータを測定して小規模の角変動を事実上、平均することを含む。したがって、工作物106の面104が半導体ウェーハ120の素子側122を含むこの実施の形態では、十分大きな領域にわたって加熱パラメータを測定することは、少なくとも約1cm幅の領域にわたって加熱パラメータを測定することを含む。より特定すると、この実施の形態の加熱パラメータは、工作物106の面104上の少なくとも約2cm幅の領域にわたって、光ファイバ・プローブ506を用いて測定する。
【0092】
これについて、面104上に形成される素子の構造的寸法に比べて大きいかかる領域にわたって反射率を測定すると、かかる素子からの反射の角依存性を平均または補償して、面104の小さな部分にわたって測定するのに比べて測定誤差が小さくなることが分かった。または、測定領域が1cmより小さくても面104上の素子の寸法に比べてまだ大きいので、反射の小規模の角変動を平均するのに十分大きい。または更に別の態様として、例えば、測定領域は、2cmより大きくてよく、また面104全体を含んでよい。または、かかる誤差を小さくする他の方法を代わりに用いてよい。例えば、半球反射率を測定するのに積分球を用いてよい。しかし、積分球は、測定対象に近接するために汚染の可能性があるので、或る特定の実施の形態では望ましくないかもしれない。
【0093】
したがって、この実施の形態のプロセッサ回路110は、照射源502を制御して、放射フラッシュの波長λ={λ1,λ2,...,λN}を含む放射スペクトルで工作物106の面104上の約2cm幅の領域を照射するよう指示される。この実施の形態では照射源502は、重水素ハロゲン源を含むことが思い出される。このように、この実施の形態の面104は、放射フラッシュを作る放射装置180以外の照射源が作る放射スペクトルで照射される。
【0094】
この実施の形態では、工作物106の面104を照射源502で照射するので、事前調整ルーチン222は、照射源502が作る広帯域照射強度IOWを表す信号を検出器516から受けるようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路は、照射強度を工作物広帯域強度レジスタ264に記憶するよう指示される。同時に、この実施の形態の事前調整ルーチン222は、各波長λ={λ1,λ2,..., N}で工作物106の面104が反射する放射スペクルの測定反射強度MW(λ)を表す信号を検出器504から受けるようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、測定反射強度MW(λ)を反射強度記憶266に記憶するよう指示される。
【0095】
この実施の形態では、波長λ毎に事前調整ルーチン222は、その波長での面104の照射強度の値IW(λ)および反射率RW(λ)を計算するようプロセッサ回路110に指示する。面104に入射する照射の強度を表す照射強度の値IW(λ)を計算するため、プロセッサ回路は、工作物広帯域強度レジスタ264内に記憶されていると照射強度IOWと基準広帯域強度レジスタ263内に記憶されていると照射強度IOREFとの比を基準照射強度記憶262に記憶されている値IREF(λ)に掛ける(すなわち、IW(λ)=IREF(λ)*IOW/IOREF)よう指示される。プロセッサ回路は、得られた工作物照射強度の値IW(λ)を照射強度記憶265に記憶するよう指示される。
【0096】
特定の波長での面104の反射率RW(λ)を計算するため、事前調整ルーチン222は、反射強度記憶266内に記憶されているその波長の測定反射強度の値MW(λ)を工作物照射強度記憶265に記憶されているその波長の対応する照射強度の値IW(λ)で割る(すなわち、RW(λ)=MW(λ)/IW(λ))ようプロセッサ回路110に指示する。プロセッサ回路110は、波長λ={λ1,λ2,..., N}毎の対応する反射率の値RW(λ)をメモリ装置260の工作物反射率記憶267に記憶するよう指示される。
【0097】
この実施の形態では、プロセッサ回路110は、次に、対応する工作物放射率の値を計算して工作物放射率記憶268に記憶するよう指示される。この実施の形態では、工作物は、不透明と仮定するので、透過率は、ゼロである。したがって、反射率の値RW(λ)毎に、対応する記憶する放射率の値は、放射率εW(λ)=1−RW(λ)である。
【0098】
望ましくは、放射率および/または反射率の値を訂正して温度差を補償してよい。これについて、前述の反射率の測定は、処理室130の外で室温で行ってよいが、面104に最初に放射フラッシュを当てるときの工作物106の温度は、かなり高い(例えば、摂氏数百度)ことがあり、フラッシュで実際に加熱するとき面104の温度は、更に高くなる(例えば、シリコンの融点の近く)。放射率および反射率は、温度と共に緩く変化するので、望ましくは、記憶済みの放射率および/または反射率に訂正を行って、面104に放射フラッシュを当てたときと測定したときとで面104の放射率および反射率が上に述べた温度差のために少し異なるという事実を補償してよい。面104の温度に差があるために記憶済みの放射率および/または反射率の値に行う訂正は、種々の工作物について経験的に決定してよい。または、かかる訂正は、一般に小さく、また後で説明するように段階2のフラッシュの実時間フィードバック制御の機能に含まれるので、望ましくは、かかる訂正は、省いてよい。
【0099】
この実施の形態では、次に事前調整ルーチン222は、プロセッサ回路110に放射フラッシュの加熱効果を予測するよう指示する。これは、面104のピーク温度を予測することを事実上、含む。
この実施の形態では、放射フラッシュの加熱効果を予測することは、面104が吸収する放射フラッシュのエネルギの量を予測することを含む。より特定すると、この実施の形態の事前調整ルーチン222は、面104の放射率の測定値と放射フラッシュが面104に伝達するエネルギの量とに応じて加熱効果を予測するようプロセッサ回路110を構成する。
【0100】
このため、この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、スペクトルの複数の各波長での加熱パラメータの複数の値と、フラッシュが面に伝達する各波長での放射の各量を示す複数の放射の値とを畳み込むようプロセッサ回路110を構成する。より特定すると、この実施の形態の加熱パラメータの複数の値は、工作物放射率記憶268に記憶されている複数の放射率の値を含む。これは、この実施の形態では、工作物の対応する反射率の値を測定することにより測定したものである。したがって、この実施の形態のプロセッサ回路110は、複数の各波長λ={λ1,λ2,..., N}での面104の複数の吸収率の値と、フラッシュが面104に伝達する各波長での放射エネルギの各量を表す複数の放射エネルギの値とを畳み込むよう指示される。
【0101】
この実施の形態では、畳み込みのための吸収率の値は、工作物放射率記憶268に記憶されている放射率の値ε(λ)である。畳み込みのための放射エネルギの値に関して、この実施の形態では、複数の放射エネルギの値IFLASH(λ)の初期値を装置100の光学的および幾何学的性質に基づいてシミュレートする。または、前のフラッシュ(最新のフラッシュなど)の一連の測定放射エネルギの値IFLASH(λ)と同じ値に、または一連の前のフラッシュについての放射エネルギの値の平均(例えば、最新のN回のフラッシュにわたる移動平均など)と同じ値に、複数の放射エネルギの値IFLASH(λ)の初期値を設定してよい。かかる実施の形態では、放射エネルギの値は、放射フラッシュを直接測定することにより得てよい。望ましくは、別個の機器(測定装置102と同様の追加の測定装置など)を設けてフラッシュの放射を直接測定し、装置100の影響を補償して、面104に実際に到着するフラッシュ・エネルギを表す値IFLASH(λ)を決定してよい。または、複数の放射エネルギの値IFLASH(λ)の初期値を、例えば、記憶装置220または他の場所に記憶してよい。
【0102】
この実施の形態では、シミュレーション・ルーチン226の指示の下にプロセッサ回路110は、放射フラッシュが面104に伝達した放射エネルギを表す複数の放射エネルギの値のシミュレーションを行う。この実施の形態では、シミュレーション・ルーチン226は、米国、カリフォルニア、パサディナのオプティカル・リサーチ・アソシエーツ(Optical Research Associates)社製のLIGHTTOOLS(TM)3D固体モデリングおよび照明分析ソフトウエアを含む。後者のソフトウエアは、システム100の光学的および幾何学的特性を分析し、面104に実際に到着する放射フラッシュのエネルギの量IFRASH(λ)を計算する。例えば、この実施の形態の電光変換効率(すなわち、コンデンサ・バンクの蓄積された電気エネルギを放射フラッシュの電磁エネルギに変換する効率)は、約44%である。同様に、作られる全放射フラッシュの中の一部は、室壁、水窓または他のシステム構成要素に吸収され、放射フラッシュの全エネルギの一部(この実施の形態では約36%)だけが実際に面104に到着する。
【0103】
したがって、この実施の形態の蓄積された電気エネルギを面104に入射する電磁エネルギに変換する全効率は、0.44*0.36=0.16である。したがって、この実施の形態では、放射装置180は、最大387.1kJ*0.16=約6x104Jの電磁エネルギを工作物106の面104に伝達することができる。この実施の形態では、シミュレーション・ルーチン226は、上記の電気的および光学的エネルギーの損失を考慮に入れて波長毎に装置100を分析して、各波長λ={λ1,λ2,..., N}で工作物106の面104に到着する放射フラッシュのエネルギーの各量IFRASH(λ)を計算するようプロセッサ回路110に指示する。シミュレーション・ルーチン226は、得られた放射エネルギの値IFRASH(λ)を放射エネルギー記憶270内に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。望ましくは、放射エネルギの値IFRASH(λ)は、後で用いるために記憶装置220に記憶してもよい。
【0104】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、工作物放射率記憶268内に記憶されている放射率の値ε(λ)と、放射エネルギ記憶270に記憶されている放射エネルギの値IFRASH(λ)とを畳み込んで、放射フラッシュの加熱効果を予測するようプロセッサ回路に指示する。より特定すると、この実施の形態の畳み込みは、Ei=Σj(ε)j*(IFRASH)i-jである。
プロセッサ回路110は、これらの値Eiをメモリ装置260の吸収エネルギ記憶272に記憶するよう指示される。
【0105】
この実施の形態では、加熱効果を予測することは、更に、畳み込みから得られる複数の吸収エネルギの値を合計することを含む。より特定すると、この実施の形態の事前調整ルーチン222は、吸収エネルギ記憶272に記憶されている全てのエネルギの値Eiを合計してエネルギ・インディケータの値ETOTを作り、このエネルギ・インディケータの値をメモリ装置260のエネルギ・インディケータ・レジスタ274に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。
【0106】
次にプロセッサ回路110は、このエネルギ・インディケータの値と、前に記憶済みの基準エネルギ・インディケータの値EREFを事実上、比較するよう指示される。この実施の形態では、前に記憶済みの基準エネルギ・インディケータの値EREFは、工作物106ではなく基準片(図示せず)について、エネルギ・インディケータの値ETOTと同じ方法で計算する。より特定すると、主RTPルーチン221に関して前に説明したように、この実施の形態の基準片は、現在の工作物タイプ(WID)についてレコードを工作物パラメータ記憶240に作るのに用いた工作物であって、このレコードからプロセッサ回路は、電気エネルギおよび電圧の値ECHN、EADJおよびVを計算するのにプロセッサ回路が用いた特性化の値OTEおよびSTEを得た。このように、この実施の形態の基準エネルギ・インディケータの値EREFは、工作物106用の工作物タイプ識別子(WID)に対応する工作物パラメータ記憶のレコードに記憶する。
【0107】
または、工作物106を事前に特性化せず、また工作物タイプ識別子WIDを持たない場合は、デフォルトのまたは一般的な工作物タイプについての工作物パラメータ記憶240のレコードを用いて、上に説明したように主RTPルーチン221の指示の下に特性化の値OTEおよびSTEを取り出し、この同じレコードを用いて、事前調整ルーチンの指示の下に基準エネルギ・インディケータの値EREFを取り出す。
【0108】
この実施の形態では、次に事前調整ルーチン222は、プロセッサ回路110に放射フラッシュを事前調整するよう指示する。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、放射フラッシュを作るのに用いる蓄積電気エネルギの量を事前調整するよう指示される。この実施の形態では、蓄積電気エネルギは、コンデンサ・バンクに蓄積された電荷を含む。より特定すると、この実施の形態の事前調整すべき蓄積電気エネルギは、電源装置188に、更に特定すると、4つの個々の電源装置189,191,193,195のコンデンサ・バンクに蓄積された電荷である。
この実施の形態では、電源装置188の蓄積電気エネルギは、工作物106についてのエネルギ・インディケータの値ETOTと基準片の前に記憶済みのエネルギ・インディケータの値EREFとの比較に応じて事前調整する。これについては、後でより詳細に説明する。
【0109】
この実施の形態では、電源装置188(より特定すると、そのコンデンサ・バンク)の蓄積電気エネルギの量EADJと放射フラッシュを作る対応するコンデンサ充電電圧Vとは、主RTPルーチン221の指示の下にプロセッサ回路110が決定し、望ましい熱サイクルを定義し処理する工作物のタイプを識別するユーザ指定のパラメータに応じて、充電電圧Vおよび対応する電気エネルギEADJを充電パラメータ記憶278に記憶することが思い出される。
【0110】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、プロセッサ回路110に放射フラッシュを事前調整するよう指示する。このため、この実施の形態のプロセッサ回路は、RTPパラメータ記憶284に記憶されているユーザ指定または定義済みのパラメータΔTを読み取る。これは、望ましい温度ジャンプの大きさを定義し、ΔTにEREF/ETOTを掛けて、放射率訂正済みの温度ジャンプ・パラメータΔTECを得る。次に、主RTPルーチン221に関して上に説明したのと同じ方法で、放射率訂正済みの温度ジャンプ・パラメータΔTECおよび工作物の特性化の値OTEおよびSTEを用いて放射率訂正済みの電気エネルギの値ECHN_ECを得る。すなわち、
【数3】
【0111】
同様に、主RTPルーチン221に関して上に説明したように、工作物の特性化の値OTEおよびSTEを生成して記憶した後に装置100の効率の劣化または変化があれば、訂正するため、事前調整ルーチン222は、更に新しい放射率訂正済みの電荷の値を用いて、放射率訂正済みかつ効率調整済みの電気エネルギの値を計算するようプロセッサ回路に指示する。すなわち、
【数4】
【0112】
この実施の形態では、事前調整ルーチン222は、更に主RTPルーチン221に関して上に説明したのと同じ方法で、放射率訂正済み、かつ、効率調整済みの電気エネルギの値ECHN_ECを用いて、計算または電荷ルックアップ・テーブル228を参照することにより、対応する放射率訂正済み、かつ、効率調整済みの充電電圧VECを決定するようプロセッサ回路に指示する。(または、効率ドリフト訂正を省く実施の形態では、放射率訂正済みの充電電圧をEADJ_ECではなくECHN_ECから決定してよい。)次に、放射率訂正済み、かつ、効率調整済みの充電電圧VECおよび電気エネルギEADJ_ECを充電パラメータ記憶278に書き込み、以前に主RTPルーチン221の命令の下にプロセッサ回路が記憶したEADJおよびVの値に上書きする。したがって、新しい調整済みの充電電圧の値VECは、処理のために工作物106を室130に取りつけたときに電源装置188のコンデンサ・バンクを充電するのに用いる放射率訂正済みの電圧を指定し、他方で、新しいEADJ_ECの値は、装置の効率を監視するのに用いる対応する放射率訂正済みの電気エネルギを指定する(後で説明するように、段階3で)。
【0113】
工作物106のエネルギ・インディケータの値ETOTが工作物パラメータ記憶240の対応するレコードを作るのに用いた基準片のエネルギ・インディケータの値EREFより大きい場合は、工作物106は、基準工作物より大きな割合の放射フラッシュのエネルギを吸収する傾向があり、その結果、工作物106の面104を所定の温度まで加熱するのに必要な放射エネルギは、基準片の同様な面を同じ温度まで加熱するのに必要な放射エネルギより小さい。このような場合は、ΔTECは、ΔTより小さい。言い換えると、放射率訂正済みの充電電圧VECは、基準片の温度をΔTではなく、わずかにΔTECだけジャンプさせるのに必要だったはずの電圧に対応する。工作物の面104は、工作物パラメータ記憶240の現在、用いているレコードが対応する基準片の面に比べて放射率が大きいことから考えて、一次の訂正として、基準片の面をわずかΔTECだけ加熱するはずの同じ充電電圧VECは、面104をΔTの温度ジャンプだけ加熱すると予想される。
【0114】
したがって、このような場合は、面104がΔTの温度ジャンプをするのに必要な充電電圧は、基準片の面が同じ温度ジャンプをするのに必要な充電電圧より小さい。逆に、工作物パラメータ記憶240の現在、用いているレコードが対応する基準片のエネルギ・インディケータの値EFEFに比べて工作物106のエネルギ・インディケータの値ETOTが小さい場合は、調整済みのインデクスΔTECは、ユーザ指定または定義済みの値ΔTより大きく、また対応する電圧VECは、基準片の面がΔTの温度ジャンプをするのに必要であるはずの電圧Vより高い。一次訂正として、この充電電圧VECでは、面104は、ΔTの望ましい温度ジャンプをすると予想される。
【0115】
段階2: フラッシュの実時間フィードバック制御
図1および図2に関連して、この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、測定装置102と協力して、工作物106の面104に入射する放射フラッシュの最初の部分の間面104の温度を測定するようプロセッサ回路110を構成する。フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、更に放射装置180と協力して、最初の部分の間の温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御するようプロセッサ回路110を構成する。
【0116】
この実施の形態では、放射フラッシュは、工作物の熱伝導時間(この実施の形態では約1x101ms程度)より短い継続時間を有する。より特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、約2msより短い継続時間を有する。更に特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、約1ms程度の継続時間を有する。
【0117】
この実施の形態では、放射フラッシュは、これまで実時間フィードバック制御を行った一般的な放射フラッシュよりかなり強力になる傾向がある。これについて、この実施の形態の放射フラッシュは、少なくとも約1MWの速度でエネルギを面に伝達する。より特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、少なくとも約10MWの速度で、更に特定すると、少なくとも約30MWの速度で、更に特定すると、少なくとも約60MWの速度でエネルギを面に伝達する。例えば、電源装置188の4つのコンデンサ・バンクを全て3500Vで充電して全体で387.1kJの電気エネルギを蓄積した場合、またはこの電気エネルギを1msと2msの間の継続時間を有するフラッシュで放電した場合は、電源装置188から放電される電気エネルギの速度は、193.5MWと387MWの間である。
【0118】
この電気エネルギを、例えば、44%の効率で170.324kJの電磁放射エネルギに変換した場合は、1−2msの継続時間にわたる放射フラッシュの電力は85.1MWと170.3MWの間である。装置100がこの電磁エネルギを面104に、例えば、36%の効率で当てた場合は、約61.3kJのエネルギが30.7MW(2msのフラッシュの場合)から約61.3MW(1msのフラッシュの場合)の平均速度で面104に伝達される。または、望ましくは、より低いエネルギ伝達速度の場合は、コンデンサ・バンクを最大電荷より低く充電してよい。逆に、望ましくは、より大きなエネルギ伝達速度を与えるには、より大きな静電容量および/または充電電圧を持つコンデンサ・バンクを代わりに用いてよい。
【0119】
この実施の形態では、フラッシュの最初の部分(この間に面104の温度を測定する)は、約1msより短い継続時間を有する。より特定すると、この実施の形態の最初の部分は、約0.5msより短い、または更に特定すると、約6x102msより短い継続時間を有する。更に特定すると、この実施の形態の放射フラッシュは、約1.5ms程度の継続時間を有し、フラッシュの最初の部分は、約4x102msの継続時間を有する。これについて、この実施の形態では、フラッシュの最初の部分の継続時間は、2つの競合する要因のバランスをとって選択する。すなわち、より正確な温度測定データを得たいという希望(この場合は、より多くの温度測定データを得るために最初の部分は長い方がよい)と、望ましいピーク温度を達成するためにフラッシュの残りの部分の制御を十分速く行えるようにしたいという競合する希望(この場合は最初の部分は短い方がよい)である。
【0120】
後者の関心に関して、或る例示の実施の形態では、フラッシュ・ランプに供給するピーク・アーク電流を調整して増やしまたは減らすと、面104のピーク温度は、高くまたは低くなるが、ピーク・アーク電流がすでに起こった後に調整する(したがって、ピーク・アーク電流は増えまたは減らない)と、電流パルスの形に依存して、面104の時間的温度プロフィールは、変わるが、ピーク温度は、余り変わらないことが分かった(例えば、電流ピークの後で図7に示すものと同様のベル形の電流パルスを変えてもピーク表面温度は、余り変わらないが、フラット・トップ形の電流ピークが到着した後で別のフラット・トップ形の電流パルス(図示せず)を変えると、確かにピーク工作物の表面温度に影響を与えることがある)。
【0121】
この実施の形態では、面104のピーク温度の調整に十分な時間を与えるには、最初の部分を十分短くして、制御するフラッシュの残りの時間がアーク電流のピークの前に始まるように定義することが望ましい。したがって、例えば、別の実施の形態では、最初の部分は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路110の介入により制御しなかった場合の放射フラッシュの継続時間の約半分以下または約四分の一以下の継続時間を有してよい。
【0122】
この実施の形態では、放射フラッシュの最初の部分の間に面104の温度を測定することは、放射フラッシュの最初の部分の間に複数の各時刻に面の温度の複数の測定値を得ることを含む。これは、例えば、少なくとも1x104Hzの速度または少なくとも1x105Hzの速度で温度をサンプリングすることを含む。したがって、この実施の形態では、放射フラッシュの最初の部分が、例えば、0.4msの継続時間を有する場合は、105Hzの後者の速度で面104の温度をサンプリングすると、放射フラッシュの最初の部分の間に面104の40個の温度測定値を得る。
【0123】
この実施の形態では、放射フラッシュを作るために、主RTPルーチン221は、プロセッサ回路110にフラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の実行を開始するよう指示する。制御ルーチン224は、電源装置188に信号を送って、蓄積された電気エネルギーの放電を開始して放射フラッシュを作らせるようプロセッサ回路に指示する。同時に、プロセッサ回路は、測定装置102と協力してフラッシュの最初の部分の間素子側の温度を測定し、またフラッシュの残りの部分をこれに従って制御するよう指示される。
【0124】
この実施の形態では、面104の温度測定値は、放射計(この実施の形態では高速放射計)で得る。より特定すると、この実施の形態の放射計は、InGaAsフォト・ダイオードを含む超高速放射計400を含む。この実施の形態では、超高速放射計400は、1MHzの速度で面104の温度をサンプリングすることが思い出される。したがって、この実施の形態では、素子側の表面温度を105Hzの遅い速度で事実上サンプリングするために、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、超高速放射計400から入出力460を介して受けた10個目毎のサンプルをメモリ装置260の素子側温度記憶280に記憶するようプロセッサ回路110に指示する。したがって、この実施の形態では、プロセッサ回路110は、面104の新しい温度測定値を10μs毎に受けて記憶する。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、放射フラッシュの開始後経過した時間の量を表す時間インデクスの値(例えば、t=0、t=10μs、t=20μs、t=30μsなど)と関連してかかる各温度測定値を記憶する。この実施の形態では、最初のかかる表面温度測定値(t=0)は、放電の開始と同時に得る。
【0125】
フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、引き続きプロセッサ回路110に面104の新しい温度測定値を10μs毎に得て記憶するよう指示する。この実施の形態では、例として、フラッシュの最初の部分は、0.4msの継続時間を有すると仮定するので、フラッシュの最初の部分が終わるまでに面104の40個の温度測定値を素子側温度記憶280に記憶する。
この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、次にプロセッサ回路110に測定温度と予想温度とを事実上比較するよう指示する。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、複数の記憶済みの温度測定値の少なくとも1つと予想温度軌跡とを比較するよう指示される。
【0126】
この実施の形態では、予想温度軌跡は、工作物106に対して行う熱サイクルを開始する前に予め計算して記憶する。このため、この実施の形態のプロセッサ回路110は、熱分析ルーチン230を実行して、望ましい熱サイクルを定義するユーザ指定または定義済みパラメータに基づいて予想温度軌跡を計算する。この実施の形態では、熱分析ルーチン230は、米国、マサチューセッツ、ハーバードのハーバード・サーマル社(Harvard Thermasl Inc.)製のTAS熱分析ソフトウエア(TAS Thermal Analysis Software)を含む。または、他の熱分析ルーチンを代わりに用いてよい。より一般に、工作物106の面104の予想温度または温度軌跡を決定する他の方法を代わりに用いてよい。得られた予想温度データは、メモリ装置260の予想温度記憶282に記憶する。
【0127】
この実施の形態では、フラッシュの最初の部分の終わり(この実施の形態ではフラッシュの開始から約0.4ms後)に、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、素子側温度記憶280内に記憶されている複数の温度測定値の少なくとも1つと、予想温度記憶282内に記憶されている予想温度軌跡データとを比較するようプロセッサ回路110に指示する。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、最新の温度測定値(この例では、t=400μsでの温度測定値)と、この最新の温度測定値を得た時刻の予想温度記憶282に記憶されている対応する予想温度値とを比較する。更に特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、測定温度から予想温度を引いた値に等しい差の値を計算して、得られた差の値を温度誤差レジスタ288に記憶する。
【0128】
または、実際の測定温度と予想温度とを比較する他の方法を代わりに用いてよい。例えば、望ましくは、突出したピーク温度は、測定温度データから外挿してよく、また予想ピーク温度(すなわち、予想温度記憶282に記憶されている最高の温度の値)と比較してよい。かかる突出したピーク温度を外挿するのに必要な処理時間を最小にするため、熱サイクルを開始する前に、プロセッサ回路110は、熱分析ルーチン230の指示の下に多数の可能な温度軌跡を予め計算しまた予め記憶してよい。その後の放射フラッシュの間、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、実際の測定温度データに最も密接に対応する特定の記憶済みの温度軌跡を見つけて、識別された温度軌跡のピーク温度の値を取り出し、取り出したピーク温度の値と予想温度記憶282に記憶されているピーク温度の値とを比較するようプロセッサ回路に指示してよい。
【0129】
また、実際の測定温度と予想温度との比較は、単一のデータ点に基づいて行う必要はない。例えば、望ましくは、測定温度の値の全集合について一次導関数(変化の速度)および二次導関数(加速/減速の速度)などの量を計算して比較に用いてよい。望ましくは、曲線の当てはめ技術を用いてよいが、放射フラッシュの残りの部分を変えることができるように十分速く比較を行う必要があることを考えると、曲線の当てはめ技術の複雑さは、利用可能な機器に依存して、特定の実施の形態で利用可能な処理速度によって制限される。
【0130】
この実施の形態では、実際の測定温度と予想温度との比較の結果、面104の加熱が速すぎて望ましいピーク温度を超える(この例では、温度誤差レジスタ288に記憶されている温度差の値が正になる)可能性があることが分かった場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路110に放射フラッシュの残りの部分を変更して面104のピーク温度を下げるよう指示する。より特定すると、この実施の形態の変更は、放射フラッシュの残りの部分のエネルギ出力を減らすことを含む。更に特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、比較の結果(この実施の形態では、温度誤差レジスタ288の内容)を用いて電流削減ルックアップ・テーブル232をアドレス指定して、各電源装置189,191,193,195の回路の電力削減回路をいつ活動化するかを決定する。
【0131】
2つの別個の電力削減回路320、350を含む実施の形態では、電流削減ルックアップ・テーブル232は、電力削減回路320と350のどちらを活動化するかを示す2進フラグを含んでよい。後者は、より大きな電力削減を短時間に行うことができる。または、単一の電力削減回路だけを含む実施の形態では、かかるフラグは省いてよい。この実施の形態では、該当する電力削減回路をいつ活動化するかを指定するのに加えて、電流削減ルックアップ・テーブル232のアドレス指定されたレコードは、フラッシュ介入効果インディケータFも指定する。ドリフト制御ルーチン236の指示の下にプロセッサ回路が後で用いるために、プロセッサ回路110は、インディケータFをフラッシュ介入効果レジスタ290に一時的に記憶するよう指示される。これについては、後でより詳細に説明する。
【0132】
図2、図3、図7に関連して、この実施の形態では、各電力削減回路320は、コンデンサ・バンク328に並列に接続するクローバ回路を含むことが思い出される。この実施の形態では、コンデンサ・バンク328は、放射フラッシュを作るのに用いる電気エネルギを蓄積する。フラッシュを開始する前は、図3に示すサイリスタ322,332,336は、全て非導通状態である。これとダイオード342が設けられていることとにより、コンデンサ・バンク328の放電が妨げられる。放射フラッシュを開始するには、プロセッサ回路110は、ゲート電圧をサイリスタ336に与えて導通状態にする。これによりコンデンサ・バンク328は、フラッシュ・ランプ182、抵抗器340、インダクタ338、およびサイリスタ336を通して蓄積電気エネルギの放電を開始する。
【0133】
フラッシュの最初の部分からの測定値と上に述べた比較の結果、電力削減回路320を用いてフラッシュの残りの部分の電力出力を減らすべきであるとプロセッサ回路110が決定した場合は、プロセッサ回路110は、上に述べた電流削減ルックアップ・テーブル232のアドレス指定されたレコードが指定する時刻にゲート電圧をサイリスタ322に与えてサイリスタを非導通状態から導通状態に移行させることにより、放射フラッシュの残りの部分を変更する。したがって、事実上コンデンサ・バンク328の両端が短絡されて、コンデンサ・バンク328は、サイリスタ322、インダクタ324および抵抗器326を通して部分的に放電し、同時に、フラッシュ・ランプ182、抵抗器340、インダクタ338およびサイリスタ336を通して部分的な放電が続く。したがってクローバ回路を点火すると、電流がサイリスタ322、インダクタ324およびサイリスタ326を通って流れ始め、アーク電流(すなわち、フラッシュ・ランプを通って流れる電流)は、これに対応して減少する。
【0134】
図7は、時間に対するアーク電流を表す種々の曲線を全体的に700で示す。これは、コンデンサ・バンク328を2500Vで充電し、次にサイリスタ336を点火して急に放電して放射フラッシュを作る場合に関する。第1の曲線702は、電流を削減しないとき(すなわち、電力削減回路320を活動化しないとき)の放射フラッシュの継続時間中のアーク電流を表す。第2の曲線704は、放射フラッシュを開始してから1.3ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第3の曲線706は、放射フラッシュを開始してから1ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第4の曲線708は、放射フラッシュを開始してから0.8ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第5の曲線710は、放射フラッシュを開始してから0.6ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第6の曲線712は、放射フラッシュを開始してから0.4ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第7の曲線714は、放射フラッシュを開始してから0.3ms後に電力削減回路を活動化した場合のアーク電流を表す。
【0135】
図7に示す例では、放射フラッシュを開始してから約0.6ms経過する前に電力削減回路320を活動化すると、ピーク・アーク電流が減少すると共に全体のエネルギ出力が減少するという効果を有し、これらの効果により、面104は、そうでないときに比べて到達するピーク温度が低くなる傾向がある。対照的に、放射フラッシュを開始してから約0.7ms後に最大温度に到達した後に電力削減回路320を活動化すると、フラッシュのその後の電力は、減少するがピーク・アーク電流に余り影響を与えず、その結果、冷却速度は、やや速くなるが、面104のピーク温度は、余り下がらない。
【0136】
第2の電流削減回路350を活動化すべきであることを温度誤差レジスタ288に記憶されている温度差の値に対応する電流削減ルックアップ・テーブル232の内容が示した場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路110に第2の電流削減回路350を活動化させて放射フラッシュの残りの部分のエネルギ出力を減らすよう指示する。このため、この実施の形態のプロセッサ回路110は、上に説明したように電流削減ルックアップ・テーブル232のアドレス指定したレコードが指定する時刻にゲート電圧をサイリスタ352に与えて、サイリスタを初期の非導通状態から導通状態に移行させる。第2の電流削減回路350は、フラッシュ・ランプ182より低いインピーダンスを有するので、コンデンサ・バンク328が供給する電流は、フラッシュ・ランプ182を通るのではなくインダクタ354および抵抗器356を通って放電する。
【0137】
この実施の形態では、第1の電流削減回路320がコンデンサ・バンク328に並列に接続するのとは対照的に、第2の電流削減回路350は、フラッシュ・ランプ182に並列に接続することが思い出される。第1の電流削減回路320を活動化するとコンデンサ・バンク328の両端は、事実上短絡するが、電流がフラッシュ・ランプ182を通り、インダクタ338を通り、フリー・ホイール・ダイオード342を通って戻るのは妨げない。対照的に、第2の電流削減回路350を活動化すると、フラッシュ・ランプ182自身の両端が事実上短絡する。第1の電流削減回路320と比較すると、第2の電流削減回路350を活動化することにより立ち下り時間が速くなり、すなわち、フラッシュ・ランプ182を通って流れる電流は、より速く減少し、放射フラッシュの電力は、これに従って、より速く減少する。しかし、これと同時に、第2の電流削減回路350を活動化すると装置の構成要素に一層大きなストレスがかかり、第1の電流削減回路320より一層大きな電気エネルギを浪費することがある。したがって、第2の電流削減回路350は、第1の電流削減回路320の補助用または交換用として用いる。または、望ましくは、第2の電力削減回路は、省いてもよい。
【0138】
逆に、素子側温度記憶280の測定温度の値と予想温度記憶282に記憶されている予想温度軌跡とを比較した結果、面104の加熱が遅すぎて望ましいピーク温度に到達しそうにない(この例では、温度誤差レジスタ288に記憶されている温度差の値が負である)ことが分かった場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路110に放射フラッシュの残りの部分を変更して面104のピーク温度を高くするよう指示する。より特定すると、この実施の形態では、フラッシュの残りの部分を制御することは、放射フラッシュの残りの部分のピーク電力出力を増やすことを含む。この実施の形態では、ピーク電力出力を増やすことは、電力増強回路を活動化すること(この実施の形態では誘導クローバ回路を点火すること)を含む。
【0139】
より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路110は、この比較の結果(この実施の形態では、温度誤差レジスタ288の内容)を用いて電流増強ルックアップ・テーブル234をアドレス指定して、各個別の電源装置189,191,193,195の電力増強回路330をいつ活動化するかを決定する。この実施の形態では、電力増強回路330をいつ活動化するかを指定することに加えて、電流増強ルックアップ・テーブル234のアドレス指定されたレコードは、フラッシュ介入効果インディケータFも指定する。ドリフト制御ルーチン236の指示の下にプロセッサ回路が後で用いるために、プロセッサ回路110は、インディケータFをフラッシュ干渉効果レジスタ290に一時的に記憶するよう指示される。これについては、後でより詳細に説明する。
【0140】
これについて、この実施の形態では、図3に示す電力増強回路330は、誘導クローバ回路を含むことが思い出される。前に説明したように、この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、プロセッサ回路にゲート電圧をサイリスタ336に与えることにより放射フラッシュを開始するよう指示する。これにより、コンデンサ・バンク328は、フラッシュ・ランプ182、抵抗器340、インダクタ338およびサイリタス336を通して放電を開始する。この方法では、フラッシュ・ランプ182を通して放電する電流の増加率に対抗して、4.7μHのインダクタ338の自己誘導emf(ε=−L(di/dt))が事実上、発生する。
【0141】
温度の測定値と予想値とを比較した結果、電流増強ルックアップ・テーブル234で識別される特定の時刻での電力増強が望ましいことが分かった場合は、プロセッサ回路110は、ゲート電圧をサイリスタ332に与えて、これを導通状態にする。これにより、1.5μHのインダクタ334を通って電流が流れる(インダクタ338よりインダクタンスが低いために低い自己誘導emfを有する)ので、電力制御回路のこの構成要素の全体の電流制限効果が減少する。これにより、アーク電流は、より高いピークまでより速く上昇し、そのため面104のピーク温度は、より高くなる。このように、この実施の形態の放射フラッシュは、電流放電により駆動されるアーク・ランプ(この実施の形態ではフラッシュ・ランプ182および他のフラッシュ・ランプ)により作られ、この放電は、第1のインダクタンスを有する第1の電気路(この実施の形態は、インダクタ338を通る)を通って流れて放射フラッシュの最初の部分を作り、また面104のピーク温度を高めることは、第1のインダクタンスより低い第2のインダクタンスを有する第2の電気路(この実施の形態は、インダクタ334を通る)を通して電流放電を行うことを含む。
【0142】
図8は、時間に対するアーク電流を表す種々の曲線を全体的に800で示す。これも、コンデンサ・バンク328を2500Vで充電し、次に急に放電して放射フラッシュを作る場合に関する。第1の曲線802は、電力を増強しないとき(すなわち、電力増強回路330を活動化しないとき)の放射フラッシュの継続時間中のアーク電流を表す。第2の曲線804は、放射フラッシュを開始してから0.8ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第3の曲線806は、放射フラッシュを開始してから0.7ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第4の曲線808は、放射フラッシュを開始してから0.6ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第5の曲線810は、放射フラッシュを開始してから0.55ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第6の曲線812は、放射フラッシュを開始してから0.5ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第7の曲線814は、放射フラッシュを開始してから0.45ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表し、第8の曲線816は、放射フラッシュを開始してから0.4ms後に電力増強回路を活動化した場合のアーク電流を表す。
【0143】
図8に示す例では、放射フラッシュを開始してから0.6ms経過する前に電力増強回路330を活動化すると、ピーク・アーク電流を増やす効果を有するが、アーク電流は、ピークの後に一層急速に低下する傾向があり、かかる効果により、面104は、そうでないときに比べて高いピーク温度に到達する傾向がある。対照的に、放射フラッシュを開始してから約0.6ms経過した後に電力増強回路330を活動化するとピーク・アーク電流は、余り増えず、その結果、面104のピーク温度は、余り高くなりそうにない。
【0144】
特定の実施の形態では、電力増強回路および電力削減回路を両方とも有する必要はないことが認識される。例えば、別の実施の形態は、例えば、350で示すような単一の電力削減回路だけを含んでよく、電力増強回路は、省いてよい。かかる実施の形態では、コンデンサ・バンク328は、常に過充電されるので、面104の測定温度軌跡は、常に予想温度軌跡を超え、その結果、温度の測定値と予想値との比較に基づいて電流削減ルックアップ・テーブル232を参照することにより決まる時刻に電力削減回路350を必ず点火する。
【0145】
この実施の形態では、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224は、引き続き超高速放射計から10μs毎に面104の新しい温度測定値を受けて、この各温度測定値とこれに関連する時間インデクスの値とを素子側温度記憶280内に記憶し、そのピーク温度に到達した後冷却する工作物106の面104の完全な温度曲線をレコードするようプロセッサ回路110に指示する。このように、実際の温度ジャンプΔTは、測定温度の値から計算することができる(ΔT=TMAX−T0)。
【0146】
段階3: ドリフト制御
この実施の形態では、ドリフト制御ルーチン236は、工作物106の面104に入射する放射フラッシュを作る放射装置(この実施の形態では装置100)に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視するようプロセッサ回路110に指示する。ドリフト制御ルーチン236は、更に熱効率パラメータの監視に応じて、放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新するようプロセッサ回路110に指示する。したがって、装置100の熱効率が時間と共に徐々に変化する場合は、ドリフト制御ルーチン236は、かかる変化を自動的に補償するようにプロセッサ回路を事実上構成する。
【0147】
この実施の形態では、熱効率パラメータを監視することは、放射フラッシュにより生じた工作物106の面104の実際の温度増加ΔTの測定値に応じて熱効率パラメータを計算することを含む。または、フラッシュの放射エネルギのエネルギー密度(例えば、面104に到着するフラッシュのエネルギ密度など)または他のタイプの熱効率パラメータを監視してよい。
【0148】
この実施の形態では、制御信号を自動的に更新することは少なくとも1つの記憶済みの効率パラメータを自動的に更新することを含み、また、放射フラッシュのエネルギ出力パラメータを自動的に変えることを含む。より特定すると、この実施の形態では、エネルギ出力パラメータを変えることは、放射フラッシュの出力エネルギを自動的に変えることを含む。この実施の形態では、これは、放射フラッシュを作るのに用いる蓄積電荷の量を自動的に変えることにより達成される。更に特定すると、この実施の形態の蓄積電荷は、装置効率の値Ceff(N)を更新することにより自動的に変わる。この実施の形態では、プロセッサ回路110は、主RTPルーチン221および事前調整ルーチン222の指示の下にこれを用いて、放射フラッシュを作るために電源装置188に蓄積すべき望ましい電気エネルギを計算する。
【0149】
これについて、この実施の形態では、主RTPルーチン221は、望ましい熱サイクルを定義するユーザ指定のパラメータ(例えば、WID、TINT、およびΔTを含んでよい)に応じて、放射フラッシュを作るために電源装置188に蓄積すべきエネルギを表す電気エネルギ・レベルECHNを計算して、この値ECHNを充電パラメータ記憶278に記憶するようプロセッサ回路110に指示することが思い出される。また、この実施の形態では、主RTPルーチン221は、最新の記憶済みのこの装置効率の値Ceff(N)に応じて、対応する効率調整済みの電気エネルギ・レベルEADJを決定することもプロセッサ回路110に指示することが思い出される。同様に、この実施の形態は、フラッシュの事前調整を含むので、事前調整ルーチン222の指示の下にプロセッサ回路110は、やはり装置効率の値Ceff(N)を用いて、放射率補正済み、かつ、効率調整済みの電気エネルギの値EADJ_ECを計算し、主RTPルーチンの指示の下に計算したEADJの前の値を上書きすることが思い出される。
【0150】
したがって、放射フラッシュを作るのに用いる電気エネルギの量を自動的に変えるため、この実施の形態のプロセッサ回路110は、各熱サイクルを実行した後でドリフト制御ルーチン236の指示の下に装置効率の値Ceff(N)を更新して、主RTPルーチンおよび/または事前調整ルーチンの指示の下にプロセッサ回路が次の熱サイクルのための計算する電気エネルギに自動的に影響を及ぼす。または、望ましくは、装置効率の値の更新の頻度を少なくしてよい。例えば、装置効率の値の更新は、所定回数のサイクルの後または所定の時間間隔の後に、または測定温度ジャンプ誤差が最小しきい値を超え始めたときに、または装置ユーザの選択に従って、または任意の他の適当な方法で行ってよい。
【0151】
前に説明したように、放射装置180は、電気エネルギから電磁エネルギへの変換の効率を特性化する電光変換効率Ceo(例えば、44%(0.44)など)を有する。この装置は、工作物の面104に放射フラッシュの電磁エネルギを伝達するときのシステムの効率を特性化する光効率Co(例えば、36%(0.36)など)も有する。したがって、蓄積された電気エネルギを電磁エネルギとして面104に伝達するときの装置100の複合効率は、
Ceff=Ceo*Co
である。ただし、Ceffは、全体効率、Ceoは、放射装置180の電光変換効率、Coは、放射を面104に伝達するときの装置100の光効率である。(この実施の形態では、Ceff=0.44*0.36=0.16である。)
【0152】
実際には装置効率Ceffは、一定ではなく、むしろ時間と共に変わってよい。例えば、水晶窓または容器の老化または劣化により、その透過度は、低下し、そのため光効率Coは、低下する。同様に、放射装置100の電光変換効率Ceoも時間と共に劣化しまたはその他の変化をすることがある。
【0153】
一次近似として、Ceffは、「ショット」すなわち、放射フラッシュの回数Nと共に直線的に変わり、したがってN回のショットの後のCeffは、式y=mx+bの形で次のように表してよいと仮定してよい。
Ceff(N)=Sd(n-1)*N+Od(n-1)
ただし、
Sd(n-1)は、最新の効率劣化傾斜(最初に或る推定値に設定する)、
Nは、ショット回数、すなわち、作られた放射フラッシュの数、
Od(n-1)は、最新の効率オフセットの値(最初に或る推定値に設定する)。
【0154】
この実施の形態では、効率劣化傾斜の値Sd(n-1)は、最初はゼロに設定するが、後で説明するように、ドリフト制御ルーチン236を実行する度に自分自身を調整する(例えば、装置効率が徐々に低下する場合は、ゼロに近い負の値になる)。同様に、効率オフセットの値Od(n-1)は、最初は現在の装置効率の推定値に設定する(例えば、この実施の形態では、N=0のときのOd(n-1) の初期値は、Ceff=0.16に設定してよい)。これについては、前に詳細に説明した。
【0155】
この実施の形態では、ドリフト制御ルーチン236は、各フラッシュ、すなわち、「ショット」の後に傾斜の値Sd(n)およびオフセットの値Od(n)を更新するようプロセッサ回路110に指示する。各ショットで、プロセッサ回路110は、測定装置102(または、より特定すると、素子側の面104の温度を測定する超高速放射計400)と協力して、放射フラッシュの結果、工作物の面104で起こる実際の温度ジャンプを表す測定温度ジャンプの値ΔTMを事実上、測定して記憶するよう指示される。この測定温度ジャンプの値を識別するため、ドリフト制御ルーチン236は、フラッシュ中の面104のピーク温度を表す素子側温度記憶280に記憶されている最高温度の値を識別し、この値から素子側温度記憶280に記憶されている時間インデクスの値t=0における初期温度の値を引くようプロセッサ回路110に指示する。(これについて、時間インデクスの値t=0は、放射フラッシュを開始した時刻に対応し、そのときの測定素子側温度は、理想的には、フラッシュを開始する前に工作物106を予熱しておくべきユーザ指定の中間温度TINTに等しいはずである。)この実施の形態では、プロセッサ回路110は、測定温度ジャンプの値ΔTMを効率パラメータ記憶238に記憶するよう指示される。
【0156】
または、測定装置102を用いるのではなく、他の適当な測定装置を代わりに用いて熱効率パラメータを監視してよい。例えば、監視するパラメータが温度ジャンプではなく放射エネルギ密度である実施の形態では、室130の内壁140に取り付けた別個の光測定器(図示せず)でエネルギ密度を測定してよい。
【0157】
この実施の形態では、ドリフト制御ルーチン236は、測定温度ジャンプの値ΔTMと、工作物106に対応する工作物パラメータ記憶240からの工作物パラメータOTEおよびSTEとを用いて、実際の測定温度ジャンプに対応する有効電気エネルギの値ECHMを計算するようプロセッサ回路110に指示する。すなわち、
【数5】
【0158】
次にドリフト制御ルーチン236は、プロセッサ回路110に完了したばかりの特定の熱サイクルの効率Cmeff(N) を計算するよう指示する。この実施の形態では、プロセッサ回路は、この効率の値を次式で計算するよう指示される。
【数6】
ただし、
ECHMは、上に示した式で計算し、
EADJ_ECは、充電パラメータ記憶278に記憶されている効率調整済みかつ放射率訂正済みの電気エネルギの値であって、事前調整ルーチン222の指示の下にプロセッサ回路が計算したもので、放射フラッシュを作るのに用いるコンデンサ・バンクの充電電圧を決定するのに用いたものであり、
CTEは、工作物106に対応する工作物パラメータ記憶240のレコードから工作物特性化の値STEおよびOTEを計算して記憶したときの装置効率であり、
Fは、前にここで説明したように、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路がフラッシュ介入効果レジスタ290に記憶したフラッシュ介入効果インディケータである。
【0159】
この実施の形態では、後者のフラッシュ介入効果インディケータFは、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路が電力削減回路320、350のどちらかを活動化した場合に、電力削減回路をいつ活動化したかに依存して、放射フラッシュを作るためにフラッシュ・ランプに供給する全電気エネルギがEADJ_ECより小さく、またフラッシュ・ランプに供給するピーク電力も減少した可能性があるという事実を補償するのに用いる。したがって、この実施の形態では、電流削減ルックアップ・テーブル232の各レコードは、フラッシュ介入効果インディケータFに関する値(この実施の形態では経験的に決定される)を含む。同様に、この実施の形態では、電流増強ルックアップ・テーブル234の各レコードもフラッシュ介入効果インディケータFに関する対応する値を含む。
【0160】
または、フラッシュ・フィードバック制御を省いた実施の形態では、フラッシュ介入効果インディケータFを上の式から除く。同様に、前に、ここで説明したように、事前調整(放射率補償)を行わない実施の形態では、上の式のEADJ_ECの代わりに、主RTPルーチン221の指示の下にプロセッサ回路110が計算して充電パラメータ記憶278に記憶した元の電気エネルギの値EADJを用いる。したがって、事前調整ルーチン222もフラッシュ・フィードバック制御ルーチン224も含まない例示の簡単な別の実施の形態では、完了したばかりの特定の熱サイクルの効率Cmeff(N)は、
【数7】
で計算する。
【0161】
この実施の形態では、次に傾斜の値Sd(n)およびオフセットの値Od(n)を更新する。この実施の形態では、これは、最新のM個のかかる測定効率Cmeff(N)に移動一次最小自乗(LLS)当てはめを行うことにより得られる。すなわち、
【数8】
【0162】
上の傾斜およびオフセットの計算を行うのに用いるサンプル数Mは、ドリフト制御ルーチンのフィルタ特性を決定する。一般に、サンプル数Mが少なすぎる場合は「ジッタ」(すなわち、連続した実行の間の効率の訂正が望ましくないほど大きい)の原因になることがある。逆にサンプル数Mが多すぎる場合は、時間と共に変わる効率の訂正が遅すぎることがある。この実施の形態では、Mは、好ましくは100未満である。より特定すると、この実施の形態では、M=75である。または、100より大きいか、または小さい他のMの値を代わりに用いてよい。
【0163】
または、効率パラメータを更新するのに移動一次最小自乗当てはめ以外の方法を用いてよい。例えば、移動平均または指数加重移動平均などの他のフィルタリング法を代わりに用いてよい。より一般に、装置効率の劣化は、y=mx+bまたはC=SN+Oの形の一次劣化として近似する必要はなく、他の関数関係および更新方法を代わりに用いてよい。
【0164】
次にプロセッサ回路110は、更新された傾斜の値およびオフセットの値を用いて、改訂された総合効率の値Ceff(N)を上に述べたように計算するよう指示される。この実施の形態では、プロセッサ回路は、更新された傾斜、オフセットおよび効率の値を効率パラメータ記憶238、286に記憶するよう指示される。前に、ここで主RTPルーチン221に関してより詳細に説明したように、次の熱サイクルのための充電エネルギおよび電圧の値を設定するときに、プロセッサ回路110は、主RTPルーチン221の指示の下にこの更新された効率の値Ceff(N)を考慮に入れる。
【0165】
好ましくは、更新された効率パラメータSd(n)、Od(n)、Ceff(N)を記憶する前に、ドリフト制御ルーチン236は、プロセッサ回路110にこれらの更新されたパラメータとその最新の値とを比較するよう指示し、これらのパラメータのどれかの変化がしきい値最大調整値を超える場合は、プロセッサ回路は、上に計算した実際の(より大きい)調整によるのではなく最大しきい値調整だけにより、該当する効率パラメータを調整するよう指示される。この方法は、効率の値がサイクル毎に極端に大きく変わるのを防ぐのを助け、これにより、特定のサイクルで突出した異常が起こっても、これが次のサイクルに極端に大きな影響を与えるのを防ぐ。
【0166】
これまでは、工作物106は、事前に特性化したタイプの1つの工作物であって、その特性化の値STE、OTE、CTEは、工作物パラメータ記憶240の対応するレコードに記憶されていると仮定した。しかし、処理した工作物が事前に特性化したタイプの1つでなくてかかる特性化の値が利用できない熱サイクルでは、現在の装置効率の値は、他の方法で更新してよい。例えば、装置効率のサイクル毎の変化は、効率パラメータ記憶238、286に記憶されている最新の更新済みの効率劣化傾斜の値Sdで正確に特性化されるので、単一のサイクルでは、Ceff(N)=Ceff(N-1)+Sd(N-1)であると仮定してよい。更新済みの装置効率の値Ceff(N)は、効率パラメータ記憶238、286に記憶してよい。ただし、この場合は、効率劣化傾斜の値は、更新する必要はない。
【0167】
この実施の形態では、装置効率パラメータを上に述べたように更新した後、ドリフト制御ルーチン236は、プロセッサ回路100に更新済みの装置効率の値Ceff(N)と定義済みの最小装置効率しきい値CMINとを比較するよう指示する。現在の装置効率の値Ceff(N)が最小装置効率しきい値CMINに到達した場合またはそれより低くなった場合は、ドリフト制御ルーチンは、プロセッサ回路に装置100のユーザに信号を送って装置の整備および保全を行うべきであることを示すよう指示する。
【0168】
他の態様および代替態様
図1、図9、図10に関連して、この実施の形態のプロセッサ回路110は、放射装置180および電源装置188と協力して、図10に1010で示すような電気パルスを工作物106に入射する放射フラッシュを作る放射装置に供給するよう構成される。この実施の形態では、電気パルス1010は、立ち上り時間(t1−t0)より短い立ち下り時間(t3−t1)を有する。
【0169】
これについて、図9および図10に関連して、フラッシュ・ランプ182を通って放電して工作物の面104に入射する放射フラッシュを作るアーク電流の一例を全体的に910で示し、工作物の面104の温度を全体的に920で示す。図9に示すように同じ時間線の上にプロットすると、温度は、アーク電流より遅れる(図9に示す例では、ピーク表面温度922は、ピーク・アーク電流912より約0.4ms遅れる)。この例では、アーク電流910は、アーク電流が減少するに従って電流不安定時間領域914を有し、その結果、工作物の面104の温度920の温度不安定時間領域924を生じる。熱処理の繰返し性を更に改善するため、この実施の形態の装置100は、これらの不安定領域を減らすよう構成される。
【0170】
このため、この実施の形態のプロセッサ回路110および電源装置188は、図10に示す電気パルス1010と同様の電気パルスを放射装置180の各フラッシュ・ランプに供給するよう構成される。これについて、電気パルス1010は立ち上り時間より速い立ち下り時間を有するので、電気パルス1010不安定領域1014は、はるかに急な傾斜を有し、したがって、図9に示すアーク電流910の対応する不安定領域914より短い継続時間(t3−t2)を有する。したがって、工作物表面温度1020の対応する不安定時間領域1024も図9に示す不安定領域924より急な傾斜および短い継続時間を有する。したがって、図10に示す電気パルス1010を用いると、これらの領域内の電流および温度の不安定性が減少するので、装置100を用いる熱プロセスの繰返し性が改善される。
【0171】
この実施の形態では、パルス1010は、一般にのこぎり波形パルスを含む。望ましくは、パルスののこぎり波形を一層鋭くしてよい。例えば、ほとんど方形の入力波形が利用できる場合は、インダクタを用いてかかる波形を立ち上り時間より短い立ち下り時間を有する一般に三角パルスに変換してよい。
【0172】
この実施の形態では、プロセッサ回路は、パルス1010を立ち上り時間から立ち下り時間に急に移行させるよう構成される。より特定すると、この実施の形態のプロセッサ回路は、クローバ回路を点火してパルスを立ち上り時間から立ち下り時間に移行させるよう構成される。この実施の形態では、クローバ回路は、フラッシュ・ランプに並列に接続する。したがって、この目的で用いるクローバ回路は、図3に350で示すものと同様の電力削減回路を含んでよく、または後で説明する図12および図13に示すものと同様の電力削減回路を含んでよい。かかるクローバ回路を点火すると、事実上、放射装置の両端を短絡して、パルスを立ち上り時間から立ち下り時間に移行させる。
【0173】
図1、図2、図3、図11に関連して、本発明の別の実施の形態に係る電力制御回路を図11に全体的に1100で示す。この実施の形態では、電力制御回路1100は、図3に示す電力制御回路300といくらか似ており、第1の電力増強回路330を含む。しかし、電力制御回路300とは異なり、電力制御回路1100は、第2の電力増強回路1104も含む。回路1104は、更に補助コンデンサ1106およびダイオード1108を含む。この実施の形態では、コンデンサ1106は、667μFの静電容量を有する。この実施の形態では、放射フラッシュを開始するとき、サイリスタ332は、非導通状態にあり、ダイオード1108が設けられていることと共に、コンデンサ1106がフラッシュ・ランプ182を通して放電するのを防ぐ。
【0174】
しかし、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路110がフラッシュの残りの部分のピーク電力出力を増やすことが望ましいと決定した場合は、プロセッサ回路は、ゲート電圧をサイリスタ332に与えて導通状態にし、その結果、上に述べたような電流増強効果を生じる。しかし、前に説明した電流増強効果に加えて、サイリスタ332を導通状態にすると補助コンデンサ1106がフラッシュ・ランプ182およびインダクタ334を通して放電するので、追加の電流増強を与える。したがって、この実施の形態において放射フラッシュのピーク電力出力を増やすことは、フラッシュ・ランプ182およびインダクタ334を通して補助コンデンサを放電することを含む。
【0175】
上に述べた各実施の形態は、プロセッサ回路110が電流をうまく制御するのにサイリスタを用いたが、他の固体素子(より一般に他の適当な回路)を代わりに用いてよい。例えば、望ましくは、サイリスタ322、332、336、352の代わりに絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)を用いてよい。これについて、一般にIGBTにはサイリスタほど多くの電流を流すことはできないが、一層大きな電流容量を持つIGBTが次第に広く利用できるようになっている。また、IGBTは、スイッチ・オフできるという別の利点を有する。これに比べてサイリスタは、ゲート電圧を与えて導通状態にすると、サイリスタを通って流れる電流がしきい値保持電流を超えている限り、ゲート電圧を取り去っても導通を続ける。
【0176】
上に述べた主な実施の形態は、複数の電力制御回路(すなわち、2つの電力削減回路320、350と電力増強回路330)を含むが、他の実施の形態はかかる電力制御回路を1つだけ、または他のタイプの回路を含んでよい。
【0177】
例えば、或る別の実施の形態では、電力削減回路350だけは、備えるが、電力削減回路320および電力増強回路330は、除く。かかる実施の形態では、望ましくは、工作物パラメータ記憶240に記憶されている工作物特性化の値を変更して、放射フラッシュを作るのに用いる電荷が望ましいピーク温度を達成するのに常に十分であって、電力削減回路350による介入を常に必要とするようにしてよい。これについて、かかる実施の形態は、高度な応用によっては特に優れているかも知れない。例えば、イオン/ドーパントを活動化する半導体ウェーハの焼きなましでは、ウェーハの素子側のピーク温度の変動は、プロセス結果(活動化および拡散)に強く影響を与えるが、実施の形態によっては温度対時間曲線の形の変動も大きいことがある。
【0178】
例えば、対象とする特定の繰返し性および一貫性の要求に依存して、同じピーク温度の100℃以内の温度対時間曲線の形が異なると大きな変動の原因になることがある。温度対時間曲線は、放射フラッシュを生成する電気パルスの電流対時間曲線から一般に遅れるが、形が異なることもあり、電流パルス波形の比較的小さな変化がウェーハの素子側の温度対時間曲線の形の大きな変動の原因になることがある。したがって、電力削減回路350による介入を常に必要とする実施の形態は、かかる介入を時には必要とするが常には必要としない実施の形態に比べて、ウェーハ毎により一貫した電流パルス波形(したがって、より一貫した温度対時間曲線の形)を作るという利点を有する。
【0179】
同様に、別の実施の形態では電力削減回路320だけを備える。望ましくは、工作物パラメータ記憶240に記憶されている工作物特性化の値を同様にして変更して、電力削減回路320による介入を常に必要とするようにしてよい。
逆に、別の実施の形態では、図3に示す電力増強回路330だけ、または図11に示すその変更した回路を備えてよい。望ましくは、かかる実施の形態では、工作物パラメータ記憶240に記憶されている工作物特性化の値を変更して、放射フラッシュを作るのに用いる電荷が望ましいピーク温度を達成するのにやや不十分であって、電力増強回路330による介入を常に必要とするようにしてよい。
【0180】
上に述べた特定の実施の形態を用いてサイクル毎に一貫した熱サイクルおよび一貫したピーク温度を達成してよいが、実施の形態によっては、見かけが同じ工作物についても少し異なるピーク温度を意図的に求めて、プロセスの最終結果の一貫性を向上させるのが望ましいことがある。これについて、或る実施の形態のプロセス結果が単にピーク温度だけでなく温度対時間曲線の形により大きく影響されることがある場合は、ここに述べた種々のパルス変更回路を用いてパルス波形を変えると、同じピーク温度を達成しても温度対時間曲線が異なる場合は、少し異なるプロセス結果が実際に得られることがある。例えば、半導体ウェーハの素子側にイオン/ドーパントの活動化および拡散が起こる応用では、対象とする特定の繰返し性および一貫性の要求に依存して、同じピーク温度の100℃以内の温度対時間曲線の形が異なると大きな変動の原因になることがある。
【0181】
かかる実施の形態では、ウェーハの素子側がピーク温度に向かって予想以上に速く加熱していて(例えば、素子側の放射率が予想以上に大きいために)電流削減回路による介入が予想より早く必要であることを実時間の素子側温度測定値が示す場合は、望ましいピーク温度を正確に達成しても、素子側の温度対時間曲線の形が変わるとイオン/ドーパントの活動化および拡散の結果が少し異なることがある。したがって、かかる実施の形態では、該当するパルス変更回路を活動化するタイミングを調整して、素子側のピーク温度を前に定義済みの望ましいピーク温度から意図的にずらして、望ましいピーク温度からのずれが予想温度対時間曲線の形からのずれを補償することにより、より一貫した全体的なイオン/ドーパントの活動化および拡散結果を達成してよい。かかる調整は、例えば、各工作物タイプに対応する経験的に決定されるルックアップ・テーブルにより行ってよい。
【0182】
または、繰返し性および一貫性の要求が余り厳しくない他の実施の形態では、特定の応用では温度対時間曲線の形の変動の影響がピーク温度の変動に比べて非常に小さいことがあり、この場合は、前者を無視してよい。
【0183】
別の実施の形態では、他のタイプの電力削減回路および/または電力増強回路を備えてよい。例えば、図1、図2、図3、図12に関連して、本発明の別の実施の形態に係る電力制御回路を図12に全体的に1200で示す。この実施の形態では、電力制御回路1200は、電力削減回路1202を含む。この実施の形態では、電力削減回路1202は、図3に示す電力削減回路350にいくらか似ているが、抵抗器356を省いている。このように、この実施の形態の電力削減回路1202は、クローバ回路を含み、これは、スイッチング回路およびインダクタ1206を含む。この実施の形態では、スイッチング回路は、単一のスイッチ要素1204を含む。より特定すると、この実施の形態のスイッチ要素1204は、半導体スイッチである。更に特定すると、この実施の形態のスイッチ要素1204は、サイリスタである。ただし、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バーポーラ・トランジスタ)などの他のタイプのスイッチを代わりに用いてよい。或るタイプのサイリスタは、過度の電流増加速度で壊れることがあるので、この実施の形態のインダクタ1206は、電流の増加速度dI/dtを事実上制限して、スイッチ要素1204が壊れる可能性を防ぐ。
【0184】
この実施の形態では、インダクタ1206のインダクタンス(インダクタ354のインダクタンスと同じである必要はない)は、この後者の目的にかなうようにできるだけ低く選択し、またフラッシュ・ランプ182よりはるかに低いインダクタンスを与える。この実施の形態では、サイリスタ336を導通状態にするとコンデンサ・バンク328は、フラッシュ・ランプ182を通して放電を開始して放射フラッシュを作る。フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224に関して上に述べたように、面104の加熱が速すぎて望ましいピーク温度を超える可能性があることをフラッシュの最初の部分の間の工作物の面104の温度測定値が示す場合は、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路が決定する時刻にプロセッサ回路は、ゲート電圧をスイッチ要素1204に与えて、スイッチ要素1204を非導通状態から導通状態に移行させる。これにより、コンデンサ・バンク328に蓄積された残留電荷は、フラッシュ・ランプ182を通るのではなくスイッチ要素1204およびインダクタ1206を通って放電を開始する。電力削減回路1202をこのように活動化すると、電力削減回路350より早く放射フラッシュが終了するという利点を有する。
【0185】
図1、図2、図3、図12、図13に関連して、本発明の更に別の実施の形態に係る電力制御回路を図13に全体的に1300で示す。この実施の形態では、電力制御回路1300は、電力削減回路1302を含む。この実施の形態では、電力削減回路1302は、図12に示す電力削減回路1202にいくらか似ているが、インダクタ1206を省いている。このように、この実施の形態の電力削減回路1302は、クローバ回路を含み、これは、スイッチング回路から成る。より特定すると、この実施の形態のスイッチング回路は、単一のスイッチ要素1304から成る。この実施の形態では、スイッチ要素は、半導体スイッチである。より特定すると、この実施の形態のスイッチ要素1304は、サイリスタである。ただし、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バーポーラ・トランジスタ)などの他のタイプのスイッチを代わりに用いてよい。
【0186】
これについて、サイリスタおよびIGBTは、歴史的に過度の電流増加速度に対する感度が高い傾向があったが、かかる過度の電流増加速度に対して一層大きな許容度を持つサイリスタおよびIGBTが一層多く利用できるようになっている。したがって、特定の実施の形態における電流の大きさおよびその変化の速度に依存して、スイッチ要素1304は、スイッチ要素1304を単独で設けてよく、フラッシュ・フィードバック制御ルーチン224の指示の下にプロセッサ回路110がこれを導通状態にしたときに急な電流増加速度から保護するインダクタを必要としない。十分な強さを持つ単一のスイッチ要素1304が特定の応用で利用できない場合は、種々のシステム変更を行ってよい。例えば、より多数のフラッシュ・ランプおよび電力制御回路を備えて、各電力削減回路1302の全電流および電流増加速度を低くしてよい。
【0187】
または更に別の実施の形態として、単一のスイッチ要素1304で構成するのではなく、電力削減回路1302のスイッチング回路を複数のスイッチ要素で構成してよい。例えば、単一のサイリスタまたは単一のIGBTではなく、スイッチング回路は、複数のサイリスタを互いに並列または複数のIGBTを互いに並列に備えてよい。したがって例示の別の実施の形態では、スイッチング回路は、例えば、5kAのピーク電流毎に1つのIGBTを設けるように選んだ多数の並列のIGBTを含んでよい。
同様に、再び図12に関連して、望ましくは、複数の並列のスイッチ要素を単一のスイッチ要素1204の代わりに用いてよい。
【0188】
図12および図13には、各電力削減回路1202、1302をフラッシュ・ランプ182に並列に接続するように示したが、例えば、図3に示す電力削減回路320の接続と同様に、これらの電力削減回路のどちらかをコンデンサ・バンク328に並列に接続してよい。電力削減回路をコンデンサにではなくフラッシュ・ランプに並列に接続すると、放電および得られる放射フラッシュの立ち下り時間が速くなり、その結果、面104の冷却が速くなり、ドーパント拡散および工作物内の熱ストレスが小さくなるという利点を有し、またフラッシュ・ランプの電極の寿命が長くなることがある。ただし、これらの利点の重要性または欠点は応用および実施の形態によって異なってよい。
【0189】
4つのフラッシュ・ランプを用いて例示の実施の形態を説明したが、望ましくは、例えば、1つの少数のフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。逆に、例えば、30個、40個またはそれ以上などの多数のフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。同様に、異なるタイプのフラッシュ・ランプを代わりに用いてよい。例えば、望ましくは、放射フラッシュは、マイクロ波パルス発生器で生成してよい。
図2に戻って、望ましくは、熱処理のために室130内に現在支持している工作物に関する情報を記憶するための「現在」の領域と、現在室の外で測定していて「現在」の工作物の処理が終わったときに室130内に挿入して処理する工作物に関する情報を記憶する「次」の領域とに処理量を高めるためにメモリ装置260を分割してよい。
【0190】
より一般に、本発明の特定の実施の形態について記述しまた図示したが、かかる実施の形態は、本発明の例に過ぎず、添付の特許請求の範囲に関して解釈される本発明を制限するものではないと考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0191】
以下の図面は本発明の実施の形態を示す。
【図1】2つの垂直の前側の壁を取り去った本発明の第1の実施の形態に係る高速熱処理(RTP)装置の斜視図である。
【図2】図1に示す装置の高速熱処理装置コンピュータ(RSC)のブロック図である。
【図3】図1に示す装置の電力制御回路の回路図である。
【図4】図1に示す装置の超高速放射計のブロック図である。
【図5】図1に示す装置の第2の測定装置の表現である。
【図6】工作物放射率の10%の変動が工作物の表面温度に与える影響を示すグラフである。
【図7】フラッシュ中の異なる時刻に電力削減回路を活動化したときの放射フラッシュを作るのに用いる図1に示す放射装置のアーク電流を示すグラフである。
【図8】フラッシュ中の異なる時刻に電力増強回路を活動化したときの放射フラッシュを作るのに用いる図1に示す放射装置のアーク電流を示すグラフである。
【図9】第1のアーク電流および対応する工作物の表面温度軌跡を示すグラフである。
【図10】第2のアーク電流および対応する工作物の表面温度軌跡を示すグラフである。
【図11】本発明の別の実施の形態に係る電力制御回路の回路図である。
【図12】本発明の更に別の実施の形態に係る電力制御回路の回路図である。
【図13】本発明のまた更に別の実施の形態に係る電力制御回路の回路図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視する段階と、
b) 熱効率パラメータの監視に応じて、前記放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新する段階と、
ことを含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記監視する段階は放射フラッシュにより起こる工作物の面の実際の温度上昇の測定に応じて少なくとも1つの熱効率パラメータを計算する段階を含む前記方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法であって、前記監視する段階は、前記面に到着するフラッシュの放射エネルギのエネルギ密度を監視する段階を含む前記方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、前記自動的に更新する段階は、少なくとも1つの記憶済みの効率パラメータを自動的に更新する段階を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、前記自動的に更新する段階は、放射フラッシュの出力エネルギを自動的に変える段階を含む前記方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、前記自動的に変える段階は、放射フラッシュを作るのに用いる蓄積電荷の量を自動的に変える段階を含む前記方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、さらに、
a) 前記面の加熱パラメータの測定に応じて工作物の面への放射フラッシュの加熱効果を予測する段階と、
b) 予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する段階と、
を含む前記方法。
【請求項8】
a) 工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を前記面の加熱パラメータの測定に応じて予測する段階と、
b) 予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する段階と、
c) 工作物の面に入射する事前調整済みの放射フラッシュを生成する段階と、
d) 前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定する段階と、
e) 前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する段階と、
を含む方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の方法であって、前記予測する段階は、複数の同様の工作物の各面に入射する同様の放射フラッシュの各加熱効果を各面の各加熱パラメータの各測定に応じて予測する段階を含む前記方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記工作物は、見かけ上同じである前記方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれかに記載の方法であって、前記放射フラッシュの加熱効果を予測する段階は、前記面のピーク温度を予測する段階を含む前記方法。
【請求項12】
請求項7から10のいずれかに記載の方法であって、前記放射フラッシュの加熱効果を予測する段階は、前記面が吸収する放射フラッシュのエネルギの量を予測する段階を含む前記方法。
【請求項13】
請求項7から12のいずれかに記載の方法であって、さらに、前記面の加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、前記加熱パラメータを測定する段階は、前記面の反射率を測定する段階を含む前記方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法であって、前記加熱パラメータを測定する段階は、前記面の放射率を測定する段階を含む前記方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれかに記載の方法であって、前記測定する段階は、放射フラッシュに対応する波長スペクトル内の加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、前記測定する段階は、前記スペクトルの複数の各波長での加熱パラメータの複数の値を測定する段階を含む前記方法。
【請求項18】
請求項13から17のいずれかに記載の方法であって、前記加熱パラメータを測定する段階は、加熱パラメータ内の小規模の角変動を補償する段階を含む前記方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法であって、前記補償する段階は、前記面の十分大きな領域にわたって加熱パラメータを測定して小規模の角変動を事実上平均化する段階を含む前記方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、前記面は、半導体ウェーハの素子面を含み、また十分大きな領域にわたって前記加熱パラメータを測定する段階は、少なくとも約1cm幅の領域にわたって加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、前記測定する段階は、少なくとも約2cm幅の領域にわたって加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項22】
請求項18記載の方法であって、前記測定する段階は、光ファイバ・プローブで加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項23】
請求項15記載の方法であって、前記放射率を測定する段階は、放射フラッシュの波長を含む放射スペクトルで前記面を照射する段階を含む前記方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、前記照射する段階は、放射フラッシュの放射源以外の照射源が作る放射スペクトルで前記面を照射する段階を含む前記方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法であって、さらに、前記照射源は、放射フラッシュの放射源の放射スペクトルをシミュレートするよう構成されたフィルタを含む前記方法。
【請求項26】
請求項23から25のいずれかに記載の方法であって、前記事前調整する段階は、第1の工作物の第1の面に入射する将来の放射フラッシュを第2の工作物の同様の面に現在の放射フラッシュを入射させるのと同時に事前調整する段階を含む前記方法。
【請求項27】
請求項7から13のいずれかに記載の方法であって、前記加熱効果を予測する段階は、前記面の放射率の測定値および放射フラッシュが前記面に伝達するエネルギの量に応じて加熱効果を予測する段階を含む前記方法。
【請求項28】
請求項17記載の方法であって、前記加熱効果を予測する段階は、前記スペクトルの複数の各波長での加熱パラメータの複数の値と、前記フラッシュが前記面に伝達する各波長での放射の各量を表す複数の放射の値とを畳み込む段階を更に含む前記方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、前記畳み込む段階は、複数の各波長での前記面の複数の吸収率の値と、前記フラッシュが前記面に伝達する各波長での放射エネルギの各量を表す複数の放射エネルギの値とを畳み込む段階を含む前記方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法であって、さらに、前記加熱効果を予測する段階は、畳み込みから得られる複数の吸収エネルギの値を合計する段階を含む前記方法。
【請求項31】
請求項7から30のいずれかに記載の方法であって、前記事前調整する段階は、放射フラッシュを生成するのに用いる蓄積電気エネルギの量を事前調整する段階を含む前記方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法であって、前記蓄積電気エネルギは、コンデンサ・バンクに蓄積された電荷を含む前記方法。
【請求項33】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、さらに、
a) 工作物の面に入射する放射フラッシュを生成する段階と、
b) 前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定する段階と、
c) 前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する段階と、
を含む前記方法。
【請求項34】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記放射フラッシュは、工作物の熱伝導時間より短い継続時間を有する前記方法。
【請求項35】
請求項8から33のいずれか一項記載の方法であって、前記放射フラッシュは、エネルギを前記面に少なくとも約1MWの速度で伝達する前記方法。
【請求項36】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記最初の部分は、約1msより短い継続時間を有する前記方法。
【請求項37】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記最初の部分は、約1/2msより短い継続時間を有する前記方法。
【請求項38】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記測定する段階は、放射フラッシュの最初の部分の間の複数の各時刻に前記面の温度の複数の測定値を得ることを含む前記方法。
【請求項39】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記測定する段階は、前記温度を高速放射計で測定することを含む前記方法。
【請求項40】
請求項39記載の方法であって、前記放射計は、InGaAsフォトダイオードを含む前記方法。
【請求項41】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、さらに、前記温度と予想温度とを比較することを含む前記方法。
【請求項42】
請求項38記載の方法であって、さらに、複数の温度測定値の少なくとも1つと予想温度軌跡とを比較することを含む前記方法。
【請求項43】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記制御する段階は、放射フラッシュの残りの部分を変更して前記面のピーク温度を下げることを含む前記方法。
【請求項44】
請求項43記載の方法であって、前記変更する段階は、放射フラッシュの残りの部分のエネルギ出力を減らすことを含む前記方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法であって、前記減らす段階は、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信するグローバ回路を点火することを含む前記方法。
【請求項46】
請求項44記載の方法であって、前記減らす段階は、フラッシュ・ランプまたはコンデンサ・バンクに並列に接続するグローバ回路を点火することを含む前記方法。
【請求項47】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記制御する段階は、放射フラッシュの残りの部分を変更して前記面のピーク温度を上げることを含む前記方法。
【請求項48】
請求項47記載の方法であって、前記制御する段階は、放射フラッシュの残りの部分のピーク電力出力を増やすことを含む前記方法。
【請求項49】
請求項48記載の方法であって、前記増やす段階は、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信する誘導グローバー回路を点火することを含む前記方法。
【請求項50】
請求項48記載の方法であって、前記放射フラッシュは、放電電流により電力を供給されたアーク・ランプが作り、放電電流は、第1のインダクタンスを有する第1の電気路を通して流れて放射フラッシュの最初の部分を作り、また前記増やす段階は、第1のインダクタンスより小さな第2のインダクタンスを有する第2の電気路を通して放電電流を流すことを含む前記方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法であって、前記増やす段階は、アーク・ランプを通してコンデンサを放電することを更に含む前記方法。
【請求項52】
請求項1から51のいずれか一項記載の方法であって、さらに、前記工作物に入射する放射フラッシュを作る放射装置に電気パルスを供給する段階を含み、前記パルスの立ち下り時間は、パルスの立ち上がり時間より短い前記方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法であって、前記パルスは、のこぎり歯形パルスを含む前記方法。
【請求項54】
請求項52または53記載の方法であって、前記供給する段階は、パルスを立ち上がり時間から立ち下り時間に急に移行させることを含む前記方法。
【請求項55】
請求項54記載の方法であって、前記移行させる段階は、クローバ回路を点火してパルスを立ち上がり時間から立ち下り時間に移行させることを含む前記方法。
【請求項56】
請求項54または55記載の方法であって、前記移行させる段階は、放射装置の両端を短絡してパルスを立ち上がり時間から立ち下り時間に移行させることを含む前記方法。
【請求項57】
工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視する手段と、
熱効率パラメータの監視に応じて放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新する手段と、
を含む機器。
【請求項58】
請求項57記載の機器であって、さらに、
前記工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を前記面の加熱パラメータの測定値に応じて予測する手段と、
予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する手段と、
を含む前記機器。
【請求項59】
請求項57または58記載の機器であって、さらに、
前記工作物の面に入射する放射フラッシュを生成する手段と、
前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間に工作物の面の温度を測定する手段と、
前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する手段と、
を含む前記機器。
【請求項60】
請求項57から59のいずれかに記載の機器であって、さらに、
前記工作物に入射する放射フラッシュを作る放射装置に電気パルスを供給する手段を含み、前記パルスの立ち下り時間は、パルスの立ち上がり時間より短い前記機器。
【請求項61】
a) 前記工作物の面に入射する前記放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視する測定装置と、
b) 前記測定装置と通信するプロセッサ回路であって、前記熱効率パラメータの監視に応じて、前記放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新するプロセッサ回路と、
を備える機器。
【請求項62】
請求項61記載の機器であって、前記工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置を更に含み、前記プロセッサ回路は、放射装置と通信し、前記プロセッサ回路は、
1) 前記面の加熱パラメータの測定値に応じて放射フラッシュの加熱効果を予測し、
2) 予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する、
よう構成される前記機器。
【請求項63】
請求項61または62記載の機器であって、
前記測定装置は、前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定し、前記プロセッサ回路は、測定装置および放射装置と通信し、前記プロセッサ回路は、前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する前記機器。
【請求項64】
請求項61から63のいずれかに記載の方法であって、前記機器は、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に電気パルスを供給する電気パルス供給装置を備え、前記パルスの立ち下がり時間は前記パルスの立ち上がり時間より短い前記機器。
【請求項65】
熱処理装置を制御して請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するプロセッサ回路を含む機器。
【請求項66】
熱処理装置を制御して請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するようプロセッサ回路に指示する命令コードを記憶するコンピュータ読取り可能な媒体。
【請求項67】
プロセッサ回路が実行すると請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するコード手段を備えるコンピュータ・プログラム。
【請求項68】
媒体内で実現される信号であって、熱処理装置を制御して請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するようプロセッサ回路に指示するコード・セグメントを備える信号。
【請求項1】
a) 工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視する段階と、
b) 熱効率パラメータの監視に応じて、前記放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新する段階と、
ことを含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記監視する段階は放射フラッシュにより起こる工作物の面の実際の温度上昇の測定に応じて少なくとも1つの熱効率パラメータを計算する段階を含む前記方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法であって、前記監視する段階は、前記面に到着するフラッシュの放射エネルギのエネルギ密度を監視する段階を含む前記方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、前記自動的に更新する段階は、少なくとも1つの記憶済みの効率パラメータを自動的に更新する段階を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、前記自動的に更新する段階は、放射フラッシュの出力エネルギを自動的に変える段階を含む前記方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、前記自動的に変える段階は、放射フラッシュを作るのに用いる蓄積電荷の量を自動的に変える段階を含む前記方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、さらに、
a) 前記面の加熱パラメータの測定に応じて工作物の面への放射フラッシュの加熱効果を予測する段階と、
b) 予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する段階と、
を含む前記方法。
【請求項8】
a) 工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を前記面の加熱パラメータの測定に応じて予測する段階と、
b) 予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する段階と、
c) 工作物の面に入射する事前調整済みの放射フラッシュを生成する段階と、
d) 前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定する段階と、
e) 前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する段階と、
を含む方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の方法であって、前記予測する段階は、複数の同様の工作物の各面に入射する同様の放射フラッシュの各加熱効果を各面の各加熱パラメータの各測定に応じて予測する段階を含む前記方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記工作物は、見かけ上同じである前記方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれかに記載の方法であって、前記放射フラッシュの加熱効果を予測する段階は、前記面のピーク温度を予測する段階を含む前記方法。
【請求項12】
請求項7から10のいずれかに記載の方法であって、前記放射フラッシュの加熱効果を予測する段階は、前記面が吸収する放射フラッシュのエネルギの量を予測する段階を含む前記方法。
【請求項13】
請求項7から12のいずれかに記載の方法であって、さらに、前記面の加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、前記加熱パラメータを測定する段階は、前記面の反射率を測定する段階を含む前記方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法であって、前記加熱パラメータを測定する段階は、前記面の放射率を測定する段階を含む前記方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれかに記載の方法であって、前記測定する段階は、放射フラッシュに対応する波長スペクトル内の加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、前記測定する段階は、前記スペクトルの複数の各波長での加熱パラメータの複数の値を測定する段階を含む前記方法。
【請求項18】
請求項13から17のいずれかに記載の方法であって、前記加熱パラメータを測定する段階は、加熱パラメータ内の小規模の角変動を補償する段階を含む前記方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法であって、前記補償する段階は、前記面の十分大きな領域にわたって加熱パラメータを測定して小規模の角変動を事実上平均化する段階を含む前記方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、前記面は、半導体ウェーハの素子面を含み、また十分大きな領域にわたって前記加熱パラメータを測定する段階は、少なくとも約1cm幅の領域にわたって加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、前記測定する段階は、少なくとも約2cm幅の領域にわたって加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項22】
請求項18記載の方法であって、前記測定する段階は、光ファイバ・プローブで加熱パラメータを測定する段階を含む前記方法。
【請求項23】
請求項15記載の方法であって、前記放射率を測定する段階は、放射フラッシュの波長を含む放射スペクトルで前記面を照射する段階を含む前記方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、前記照射する段階は、放射フラッシュの放射源以外の照射源が作る放射スペクトルで前記面を照射する段階を含む前記方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法であって、さらに、前記照射源は、放射フラッシュの放射源の放射スペクトルをシミュレートするよう構成されたフィルタを含む前記方法。
【請求項26】
請求項23から25のいずれかに記載の方法であって、前記事前調整する段階は、第1の工作物の第1の面に入射する将来の放射フラッシュを第2の工作物の同様の面に現在の放射フラッシュを入射させるのと同時に事前調整する段階を含む前記方法。
【請求項27】
請求項7から13のいずれかに記載の方法であって、前記加熱効果を予測する段階は、前記面の放射率の測定値および放射フラッシュが前記面に伝達するエネルギの量に応じて加熱効果を予測する段階を含む前記方法。
【請求項28】
請求項17記載の方法であって、前記加熱効果を予測する段階は、前記スペクトルの複数の各波長での加熱パラメータの複数の値と、前記フラッシュが前記面に伝達する各波長での放射の各量を表す複数の放射の値とを畳み込む段階を更に含む前記方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、前記畳み込む段階は、複数の各波長での前記面の複数の吸収率の値と、前記フラッシュが前記面に伝達する各波長での放射エネルギの各量を表す複数の放射エネルギの値とを畳み込む段階を含む前記方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法であって、さらに、前記加熱効果を予測する段階は、畳み込みから得られる複数の吸収エネルギの値を合計する段階を含む前記方法。
【請求項31】
請求項7から30のいずれかに記載の方法であって、前記事前調整する段階は、放射フラッシュを生成するのに用いる蓄積電気エネルギの量を事前調整する段階を含む前記方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法であって、前記蓄積電気エネルギは、コンデンサ・バンクに蓄積された電荷を含む前記方法。
【請求項33】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、さらに、
a) 工作物の面に入射する放射フラッシュを生成する段階と、
b) 前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定する段階と、
c) 前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する段階と、
を含む前記方法。
【請求項34】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記放射フラッシュは、工作物の熱伝導時間より短い継続時間を有する前記方法。
【請求項35】
請求項8から33のいずれか一項記載の方法であって、前記放射フラッシュは、エネルギを前記面に少なくとも約1MWの速度で伝達する前記方法。
【請求項36】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記最初の部分は、約1msより短い継続時間を有する前記方法。
【請求項37】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記最初の部分は、約1/2msより短い継続時間を有する前記方法。
【請求項38】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記測定する段階は、放射フラッシュの最初の部分の間の複数の各時刻に前記面の温度の複数の測定値を得ることを含む前記方法。
【請求項39】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記測定する段階は、前記温度を高速放射計で測定することを含む前記方法。
【請求項40】
請求項39記載の方法であって、前記放射計は、InGaAsフォトダイオードを含む前記方法。
【請求項41】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、さらに、前記温度と予想温度とを比較することを含む前記方法。
【請求項42】
請求項38記載の方法であって、さらに、複数の温度測定値の少なくとも1つと予想温度軌跡とを比較することを含む前記方法。
【請求項43】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記制御する段階は、放射フラッシュの残りの部分を変更して前記面のピーク温度を下げることを含む前記方法。
【請求項44】
請求項43記載の方法であって、前記変更する段階は、放射フラッシュの残りの部分のエネルギ出力を減らすことを含む前記方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法であって、前記減らす段階は、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信するグローバ回路を点火することを含む前記方法。
【請求項46】
請求項44記載の方法であって、前記減らす段階は、フラッシュ・ランプまたはコンデンサ・バンクに並列に接続するグローバ回路を点火することを含む前記方法。
【請求項47】
請求項8から33のいずれかに記載の方法であって、前記制御する段階は、放射フラッシュの残りの部分を変更して前記面のピーク温度を上げることを含む前記方法。
【請求項48】
請求項47記載の方法であって、前記制御する段階は、放射フラッシュの残りの部分のピーク電力出力を増やすことを含む前記方法。
【請求項49】
請求項48記載の方法であって、前記増やす段階は、放射フラッシュの放射源および放射源の電源と通信する誘導グローバー回路を点火することを含む前記方法。
【請求項50】
請求項48記載の方法であって、前記放射フラッシュは、放電電流により電力を供給されたアーク・ランプが作り、放電電流は、第1のインダクタンスを有する第1の電気路を通して流れて放射フラッシュの最初の部分を作り、また前記増やす段階は、第1のインダクタンスより小さな第2のインダクタンスを有する第2の電気路を通して放電電流を流すことを含む前記方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法であって、前記増やす段階は、アーク・ランプを通してコンデンサを放電することを更に含む前記方法。
【請求項52】
請求項1から51のいずれか一項記載の方法であって、さらに、前記工作物に入射する放射フラッシュを作る放射装置に電気パルスを供給する段階を含み、前記パルスの立ち下り時間は、パルスの立ち上がり時間より短い前記方法。
【請求項53】
請求項52記載の方法であって、前記パルスは、のこぎり歯形パルスを含む前記方法。
【請求項54】
請求項52または53記載の方法であって、前記供給する段階は、パルスを立ち上がり時間から立ち下り時間に急に移行させることを含む前記方法。
【請求項55】
請求項54記載の方法であって、前記移行させる段階は、クローバ回路を点火してパルスを立ち上がり時間から立ち下り時間に移行させることを含む前記方法。
【請求項56】
請求項54または55記載の方法であって、前記移行させる段階は、放射装置の両端を短絡してパルスを立ち上がり時間から立ち下り時間に移行させることを含む前記方法。
【請求項57】
工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視する手段と、
熱効率パラメータの監視に応じて放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新する手段と、
を含む機器。
【請求項58】
請求項57記載の機器であって、さらに、
前記工作物の面に入射する放射フラッシュの加熱効果を前記面の加熱パラメータの測定値に応じて予測する手段と、
予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する手段と、
を含む前記機器。
【請求項59】
請求項57または58記載の機器であって、さらに、
前記工作物の面に入射する放射フラッシュを生成する手段と、
前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間に工作物の面の温度を測定する手段と、
前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する手段と、
を含む前記機器。
【請求項60】
請求項57から59のいずれかに記載の機器であって、さらに、
前記工作物に入射する放射フラッシュを作る放射装置に電気パルスを供給する手段を含み、前記パルスの立ち下り時間は、パルスの立ち上がり時間より短い前記機器。
【請求項61】
a) 前記工作物の面に入射する前記放射フラッシュを作る放射装置に関連する少なくとも1つの熱効率パラメータを監視する測定装置と、
b) 前記測定装置と通信するプロセッサ回路であって、前記熱効率パラメータの監視に応じて、前記放射フラッシュを作る放射装置が用いる制御情報を自動的に更新するプロセッサ回路と、
を備える機器。
【請求項62】
請求項61記載の機器であって、前記工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置を更に含み、前記プロセッサ回路は、放射装置と通信し、前記プロセッサ回路は、
1) 前記面の加熱パラメータの測定値に応じて放射フラッシュの加熱効果を予測し、
2) 予測加熱効果に応じて放射フラッシュを事前調整する、
よう構成される前記機器。
【請求項63】
請求項61または62記載の機器であって、
前記測定装置は、前記面に入射する放射フラッシュの最初の部分の間の工作物の面の温度を測定し、前記プロセッサ回路は、測定装置および放射装置と通信し、前記プロセッサ回路は、前記温度に応じて放射フラッシュの残りの部分の電力を制御する前記機器。
【請求項64】
請求項61から63のいずれかに記載の方法であって、前記機器は、工作物の面に入射する放射フラッシュを作る放射装置に電気パルスを供給する電気パルス供給装置を備え、前記パルスの立ち下がり時間は前記パルスの立ち上がり時間より短い前記機器。
【請求項65】
熱処理装置を制御して請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するプロセッサ回路を含む機器。
【請求項66】
熱処理装置を制御して請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するようプロセッサ回路に指示する命令コードを記憶するコンピュータ読取り可能な媒体。
【請求項67】
プロセッサ回路が実行すると請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するコード手段を備えるコンピュータ・プログラム。
【請求項68】
媒体内で実現される信号であって、熱処理装置を制御して請求項1から56のいずれかに記載の方法を実行するようプロセッサ回路に指示するコード・セグメントを備える信号。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−508337(P2009−508337A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530288(P2008−530288)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001518
【国際公開番号】WO2007/030941
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503200800)マトソン テクノロジー カナダ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001518
【国際公開番号】WO2007/030941
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503200800)マトソン テクノロジー カナダ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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