説明

置換ジヒドロプテリジン−6−オン誘導体、その製造方法及びキナーゼ阻害剤としてのその使用

明細書に定義する式(I)のジヒドロプテリジン−6−オン誘導体とその医薬的に許容可能な塩、その製造方法及び前記誘導体等を含有する医薬組成物を開示する。本発明の化合物は治療面において癌等の蛋白質キナーゼ活性の調節異常に付随する疾患の処置に有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛋白質キナーゼの活性を調節する所定の置換ジヒドロプテリジン−6−オン化合物に関する。従って、本発明の化合物は蛋白質キナーゼ活性の調節異常に起因する疾患の治療に有用である。本発明はこれらの化合物の製造方法、これらの化合物を含有する医薬組成物、及びこれらの化合物を含有する医薬組成物を使用する疾患の治療方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
癌治療における有糸分裂阻害剤の使用は広範なヒト癌の治療に広く受け入れられている臨床ストラテジーである。タキサン類(パクリタキセルとドセタキセル)とニチニチソウアルカロイド類(ビンクリスチンとビンブラスチン)は微小管を安定化又は不安定化することにより作用し、有糸分裂進行中の細胞に破滅的結末をもたらす。これらの薬剤は数種類の腫瘍型の一次治療薬であり、シスプラチン耐性の卵巣癌、乳癌、肺癌、膀胱癌及び十二指腸癌の二次治療薬である(タキサン類)。しかし、細胞運動、食作用及び軸索輸送等のプロセスにおける微小管の役割により、これらの薬剤では末梢神経障害等の所定の障害が頻繁に認められる。有糸分裂の進行は全増殖細胞の要件であるため、有糸分裂を標的とする癌治療は一般に広範な腫瘍型に適用可能である。数種類の蛋白質キナーゼは細胞周期の調整に重要な役割を果たし、そのうちには、Cdk−2やAurora−Aのように既に腫瘍学の場で標的治療の対象となっているものもある。有糸分裂の忠実性は最も重要であり、細胞周期中に染色体の完全性を維持するために正常細胞には数個の「チェックポイント」が存在する。これらのチェックポイントは癌化中に破綻することが多く、そのため、癌細胞では異数性や染色体不安定性が生じる。癌細胞は異常な有糸分裂を進行させようとするので、「チェックポイント機能の低下した」腫瘍細胞で有糸分裂を阻害すると、破滅的結末につながると考えられる。
【0003】
有糸分裂の開始、進行及び終了には4種類のセリン/スレオニンキナーゼ(Plk−1〜4)を含むポロ様キナーゼファミリーが主に関与している。これらのキナーゼはn末端キナーゼドメインと、ユニークなc末端「ポロボックス」ドメインをもつことを特徴とする。このドメインは各種有糸分裂構造(中心体、動原体、紡錘体極、中央体)にキナーゼを送達するのに関与しており、有糸分裂の正常な進行にはPlkの時間的及び空間的制御が重要である(van Vugt and Medema,Oncogene 2005,24(17):2844−59;Barr et al,Nat Rev Mol Cell Biol.2004,5(6):429−40;Dai and Cogswell,Prog Cell Cycle Res.2003,5:327−34;Glover et al,Genes Dev.1998,12(24):3777−87に概説)。このファミリーのメンバーで最も詳細に特性決定されているのはPlk−1であり、その酵素活性はG2/M期遷移、中心体成熟及び分離、前期の染色体アーム凝集と中期/後期遷移時の姉妹染色分体分離の制御、有糸分裂終了を開始するための後期促進複合体の活性化、細胞質分裂等の有糸分裂中の数種類のプロセスに関係があるとされている(Inoue et al,EMBO J.2005,24(5):1057−67;van Vugt et al,J Biol Chem.2004,9(35):36841−54;Watanabe et al,Proc Natl Acad Sci U S A.2004,101(13):4419−24 2004;Nakajima et al,J Biol Chem.2003,278(28):25277−80;Toyoshima−Morimoto et al,J Biol Chem.2002,277(50):48884−8;Bartholomew et al,Mol Cell Biol,2001 21(15):4949−59;Qian et al,Mol Biol Cell.2001,12(6):1791−9;Roshak et al,Cell Signal.2000,12(6):405−11)。Plk−1は乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、結腸癌、頭頸部癌、子宮内膜癌及び十二指腸癌を含む数種類の腫瘍細胞で過剰発現され、その過剰発現は予後不良に相関することが多い。
【0004】
正常細胞では「チェックポイントによる」細胞周期停止を生じるが、腫瘍細胞では各種手段(siRNA及びアンチセンス切断、ドミナントネガティブ蛋白質及び免疫除去)によりPlk−1機能が妨害される結果、異常な有糸分裂を生じ、延いては有糸分裂の破綻に至る。従って、薬物でPlk−1機能を低下させると、数種類の多様な癌の治療に治療効果があると思われる。細胞周期における有糸分裂阻止とアポトーシスを生じるにはPLK1の阻害で十分であり、細胞周期遮断にこのファミリーの他の2つのメンバーの阻害は不可欠ではなく、むしろ、血液悪性腫瘍や神経障害等の副作用を招く場合もある。文献に報告されているように、Plk2はB細胞新生物で転写がダウンレギュレートされる。バーキットリンパ腫(BL)では非常に高頻度でサイレンシングが生じるが、他の型のB細胞新生物でも検出され、異常なシトシンメチル化に結び付けられる。BL細胞でSnk/Plk2の異所性発現の結果、アポトーシスが生じたことから、PLK2はB細胞新生物形成において腫瘍サプレッサーとしての役割を果たす可能性がある(Syed,N.et al.Blood 2006,107,250−256)。更に、PLK2とPLK3はいずれもニューロンシナプス可塑性において有糸分裂以外の重要な役割を果たすことが報告されている(Pak,D.T.Science 2003,302,1386−1373;Kauselmann,G.EMBO J.1999,18,5528−5539)。
【0005】
Warner Lambert Co.名義のWO2001/019825には癌等の細胞増殖性疾患の治療用としてのプテリジン誘導体が開示されている。
【0006】
いずれもBoehringer Ingelheim Pharma名義のWO2003/020722、WO2004/076054及びWO2007/090844には細胞増殖性疾患の治療用としてのジヒドロプテリジン−6−オン誘導体とその塩も開示されている。
【0007】
これらの開発にも拘わらず、前記疾患に有効な薬剤が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2001/019825号
【特許文献2】国際公開第2003/020722号
【特許文献3】国際公開第2004/076054号
【特許文献4】国際公開第2007/090844号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】van Vugt and Medema,Oncogene 2005,24(17):2844−59
【非特許文献2】Barr et al,Nat Rev Mol Cell Biol.2004,5(6):429−40
【非特許文献3】Dai and Cogswell,Prog Cell Cycle Res.2003,5:327−34
【非特許文献4】Glover et al,Genes Dev.1998,12(24):3777−87
【非特許文献5】Inoue et al,EMBO J.2005,24(5):1057−67
【非特許文献6】van Vugt et al,J Biol Chem.2004,9(35):36841−54
【非特許文献7】Watanabe et al,Proc Natl Acad Sci U S A.2004,101(13):4419−24 2004
【非特許文献8】Nakajima et al,J Biol Chem.2003,278(28):25277−80
【非特許文献9】Toyoshima−Morimoto et al,J Biol Chem.2002,277(50):48884−8
【非特許文献10】Bartholomew et al,Mol Cell Biol,2001 21(15):4949−59
【非特許文献11】Qian et al,Mol Biol Cell.2001,12(6):1791−9
【非特許文献12】Roshak et al,Cell Signal.2000,12(6):405−11
【非特許文献13】Syed,N.et al.Blood 2006,107,250−256
【非特許文献14】Pak,D.T.Science 2003,302,1386−1373
【非特許文献15】Kauselmann,G.EMBO J.1999,18,5528−5539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは以下に記載する式(I)の化合物が選択的PLK1阻害剤であり、従って、抗腫瘍薬として治療面で有用であり、しかも毒性と副作用の両面において、現在入手可能な抗腫瘍薬に付随する上記欠点を伴わないことを今般発見した。
【0011】
従って、本発明の第1の目的は式(I):
【0012】
【化1】

[式中、
は直鎖又は分岐鎖C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cポリフッ化アルキル、C−Cポリフッ化アルコキシ及び−COR’(式中、R’は置換されていてもよいC−Cアルキルである。)から選択される置換されていてもよい基であり;
は−NR”R”’基(式中、R”及びR”’は各々独立して水素又は直鎖もしくは分岐鎖C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル及び複素環から選択される置換されていてもよい基である。)であり、あるいはR”とR”’はそれらが結合している窒素原子と一緒になり、N、O又はSから選択される更に1個のヘテロ原子を含んでもよい置換されていてもよい複素環を形成してもよく;
及びRは各々独立して水素又は直鎖もしくは分岐鎖C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル及び複素環から選択される置換されていてもよい基である。]により表される置換ジヒドロプテリジン−6−オン化合物及びその医薬的に許容可能な塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は更に、標準合成変換から構成される方法により製造される式(I)により表される置換ジヒドロプテリジン−6−オン化合物の合成方法を提供する。
【0014】
本発明は更に蛋白質キナーゼ活性、特にPLKファミリー、ABL、AKT1、ALK、AUR1、AUR2、BRK、CDC7/DBF4、CDK2/CYCA、CHK1、CK2、EGFR1、ERK2、FAK、FGFR1、FLT3、GSK3β、IGFR1、IKK2、IR、JAK2、JAK3、KIT、LCK、MAPKAPK2、MET、MPS1、NEK6、NIM1、P38α、PAK4、PDGFR、PDK1、PIM1、PKAα、PKCβ、PLK1、RET、STLK2、SULU1、TRKA、VEGFR2、VEGFR3、ZAP70の調節異常に起因及び/又は付随する疾患の治療方法を提供し、特に、上記化合物はPLK2及びPLK3に比較してPLK1キナーゼに対する選択的活性を示した。
【0015】
本発明の好ましい1方法は癌、細胞増殖性疾患、自己免疫疾患及び神経変性疾患から構成される群から選択される蛋白質キナーゼ活性の調節異常に起因及び/又は付随する疾患の治療方法である。
【0016】
本発明の別の好ましい方法は特定種の癌の治療方法であり、限定されないが、膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌を含む。)、十二指腸癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、前立腺癌及び皮膚癌(扁平上皮細胞癌を含む。)等の癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫及びバーキットリンパ腫等のリンパ系造血器腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群並びに前骨髄球性白血病等の骨髄系造血器腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫等の間葉系腫瘍;星状細胞腫、神経細胞芽腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫等の中枢及び末梢神経系腫瘍;メラノーマ、セミノーマ、奇形癌腫、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトキサントーマ、甲状腺濾胞癌及びカポジ肉腫等の他の腫瘍が挙げられる。
【0017】
本発明の別の好ましい方法は例えば良性前立腺過形成、家族性大腸腺腫症、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎並びに手術後狭窄及び再狭窄等の特定の細胞増殖性疾患の治療方法である。
【0018】
本発明は更に抗癌治療で同時、別個又は順次使用するために放射線療法又は化学療法レジメンと式(I)の化合物を併用する治療方法を提供する。
【0019】
更に、本発明はPLK−1蛋白質活性の阻害方法として、前記蛋白質を有効量の式(I)の化合物と接触させる段階を含む方法を提供する。
【0020】
本発明は更に、式(I)の1種以上の化合物又はその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能な賦形剤、担体又は希釈剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明は更に、公知細胞増殖抑制剤又は細胞傷害剤、抗生物質型薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、免疫剤、インターフェロン型薬剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばCOX−2阻害剤)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖因子受容体剤、抗HER剤、抗EGFR剤、抗血管新生剤(例えば血管新生阻害剤)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ras−rafシグナル伝達経路阻害剤、細胞周期阻害剤、他のcdk阻害剤、チューブリン結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤等と共に式(I)の化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0022】
更に、本発明は抗癌治療で同時、別個又は順次使用するための併用製剤として、上記式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩と、1種以上の化学療法剤を含む製剤又はキットを提供する。
【0023】
更に別の側面において、本発明は医薬用としての上記式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0024】
更に、本発明は癌の治療方法で使用するための上記式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0025】
最後に、本発明は抗腫瘍活性をもつ医薬の製造における上記式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特に指定しない限り、式(I)の化合物自体とその任意医薬組成物又は前記化合物を含む任意治療処置に言及する場合には、本発明は本発明の化合物の水和物、溶媒和物、複合体、代謝産物、プロドラッグ、担体、N−オキシド及び医薬的に許容可能な塩の全てを包含する。
【0027】
式(I)の化合物の代謝産物とは、式(I)のこの同一化合物が例えば治療を必要とする哺乳動物に投与後にインビボ変換される任意化合物である。限定例ではないが、一般に、式(I)の化合物の投与後にこの同一誘導体は各種化合物に変換される場合があり、例えば排泄し易い水酸化誘導体等の溶解度の高い誘導体が挙げられる。従って、この場合に存在する代謝経路に応じて、これらの水酸化誘導体の任意のものを式(I)の化合物の代謝産物とみなすことができる。
【0028】
プロドラッグとは、式(I)の活性な親薬剤をインビボ放出する任意共有結合化合物である。
【0029】
本発明の化合物にキラル中心又は別の形態の異性体中心が存在する場合には、エナンチオマーとジアステレオマーを含むこのような異性体の全形態を本発明に含むものとする。キラル中心を含む化合物はエナンチオリッチな混合物であるラセミ混合物として使用してもよいし、周知技術を使用してラセミ混合物を分離し、個々のエナンチオマーを単独で使用してもよい。化合物が不飽和炭素−炭素二重結合をもつ場合には、シス(Z)異性体とトランス(E)異性体の両方が本発明の範囲に含まれる。
【0030】
化合物がケト−エノール互変異性体等の互変異性体として存在している場合もあるが、そのような場合には、平衡状態で存在しているか又は主に一方の形態で存在しているかに関係なく、各互変異性体を本発明に含むものとする。
【0031】
本明細書において、「直鎖又は分岐鎖アルキル」なる用語は特に指定しない限り、夫々炭素原子数1〜6と1〜3のアルキル基であるC−Cアルキル基とC−Cアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等)を意味する。
【0032】
−Cアルコキシなる用語は、酸素原子(−O−)を介して分子の残余と結合した上記C−Cアルキル基の任意のものを意味する。
【0033】
−Cポリフッ化アルキル又はアルコキシなる用語は、2個以上のフッ素原子で置換された上記直鎖又は分岐鎖C−Cアルキル又はアルコキシ基の任意のもの(例えばトリフルオロメチル、トリフルオロエチル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル、トリフルオロメトキシ等)を意味する。
【0034】
「C−Cシクロアルキル」なる用語は特に指定しない限り、1個以上の二重結合を含んでいてもよいが、完全共役π電子系をもたない3〜6員炭素単環を意味する。シクロアルキル基の例は限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン及びシクロヘキサジエンである。
【0035】
「複素環」なる用語は1個以上の炭素原子が窒素、酸素及び硫黄等のヘテロ原子で置換された3〜7員飽和又は部分不飽和炭素環を意味する。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例は例えばピラン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、チアゾリン、チアゾリジン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等である。
【0036】
必要に応じて、上記置換基は各々更に上記基の1個以上で置換されていてもよい。
【0037】
式(I)の化合物の医薬的に許容可能な塩としては、無機酸又は有機酸(例えば硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、蓚酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸及びサリチル酸)との酸付加塩が挙げられる。本発明の化合物の酸付加塩は塩酸塩とメシル酸塩から選択することが好ましい。
【0038】
式(I)の化合物の医薬的に許容可能な塩としては更に無機塩基又は有機塩基(例えばアルカリ又はアルカリ土類金属、特にナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム又はマグネシウムの水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩、非環状又は環状アミン、好ましくはメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン等)との塩が挙げられる。
【0039】
好ましい1分類の式(I)の化合物は、Rが置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C−Cアルキルである化合物である。
【0040】
別の好ましい分類の式(I)の化合物は、Rが−OCF、−OCH、−CH及び−COR’(式中、R’は上記に定義した通りである。)から選択される基であり;
がメチルピペラジニル基:
【0041】
【化2】

であり;
がC−Cシクロアルキルである化合物である。
【0042】
特に好ましい式(I)の化合物は以下の化合物:
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−2−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−トリフルオロメトキシフェニルアミノ]−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン、
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−2−[2−メトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミノ]−5−メチル−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン、及び
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−2−[2−メチル−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミノ]−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オンである。
【0043】
必要に応じて医薬的に許容可能な塩の形態である本発明の式(I)の任意の特定の化合物については、実験のセクションと特許請求の範囲参照。
【0044】
本発明は更に、
1)式(II):
【0045】
【化3】

(式中、R及びRは上記に定義した通りである。)の化合物を式(III):
【0046】
【化4】

(式中、R及びRは上記に定義した通りである。)の化合物と反応させ、式(I)の化合物を得る段階と、
必要に応じてその医薬的に許容可能な塩に変換する段階を含むことを特徴とする上記式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0047】
上記方法は類推方法であり、当分野で周知の手法により実施することができる。
【0048】
上記方法の段階1によると、式(II)の化合物と式(III)の化合物の反応は従来の手法に従って種々の様式で実施することができる。エタノール又は水又はその混液等の適切な溶媒中で酸性条件(例えばHCl)下に室温から約100℃までの温度にて約2〜約48時間実施することが好ましい。
【0049】
式(I)の化合物の製造方法の任意変法によると、出発材料と他の任意反応成分は公知であるか又は公知手法により容易に製造される。式(II)の化合物はWO2003/020722及びWO2004/076454に記載されているように製造することができる。式(III)の化合物は市販品もあるし、下記製造例2〜4に記載するように類推により製造できるものもある。
【0050】
以上から当業者に自明の通り、上記方法により式(I)の化合物を製造する際に、出発材料又はその中間体内に官能基が存在している場合には望ましくない副反応を生じる可能性があるので、従来の手法により適正に保護する必要がある。同様に、これらの出発材料等から遊離脱保護化合物への変換も公知手順により実施することができる。
【0051】
容易に理解される通り、上記方法により製造される式(I)の化合物が異性体の混合物として得られる場合には、従来の手法を使用して式(I)の単一異性体に分離する方法又は従来のラセミ分割法としては、例えばジアステレオマー塩誘導体の分別結晶や分取キラルHPLCが本発明の範囲内に含まれる。従来のラセミ分割法としては、例えばジアステレマー塩誘導体の分別結晶や分取キラルHPLCが挙げられる。
【0052】
薬理作用
式(I)の化合物は蛋白質キナーゼ阻害剤として活性であるため、例えば腫瘍細胞の無制御な増殖を制限するために有用である。治療面では、上記腫瘍等の各種腫瘍の治療に加え、良性前立腺過形成、家族性大腸腺腫症、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎並びに手術後狭窄及び再狭窄等の他の細胞増殖性疾患の治療にも使用することができる。
【0053】
推定PLK−1阻害剤の阻害活性と選択化合物の効力を下記アッセイにより測定した。
【0054】
本明細書で使用する短縮形と略語は以下の意味である:
Ci キュリー
DMSO ジメチルスルホキシド
KDa キロダルトン
μCi マイクロキュリー
mg ミリグラム
μg マイクログラム
ng ナノグラム
L リットル
mL ミリリットル
μL マイクロリットル
M モル
mM ミリモル
μM マイクロモル
nM ナノモル
Et エチル。
【0055】
組換えPLK1キナーゼドメインのクローニング、発現及び精製
imaGenesからクローンIRATp970A078Dとして購入した全長ヒトPLK1遺伝子からPLK1キナーゼドメイン(全長配列の残基2〜345に対応,Swiss−Protアクセション番号P53350参照)をPCR増幅した。
【0056】
フォワードオリゴヌクレオチド:
5’GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTATTCGAAAACCTGTATTTTCAGGGCCCTAGTGCTGCAGTGACTGCAGGGAAG3’[配列番号1]
とリバースオリゴヌクレオチド:
5’GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTCACTATTTATTGAGGACTGTGAGGGGCTT−3’[配列番号2]
を使用して増幅を実施した。
【0057】
クローニングの目的で、Gateway(登録商標)テクノロジー(Invitrogen)を使用するクローニングに適したattBで挟まれたPCR産物を得るためにattB部位をオリゴヌクレオチドに付加した。更に、精製の目的で、TEV(登録商標)開裂部位(Amersham Biosciences)をフォワードプライマーに付加した。得られたPCR産物をpDONR221プラスミドにクローニングした後、Gateway(登録商標)に対応するように改変したバキュロウイルス発現ベクターpVL1393(Invitrogen)に導入した。発現と精製の目的で、HisタグをPLKキナーゼドメインのN末端に付加した。Gateway(登録商標)マニュアルに記載されているプロトコルに従ってクローニングを実施した。
【0058】
BaculoGold(登録商標)トランスフェクションキット(Pharmingen)を使用してSf9昆虫細胞に発現ベクターとウイルスDNAを同時トランスフェクトすることによりバキュロウイルスを作製した。5日後にウイルス上清を回収し、3回増幅してウイルス力価を増加した。High5昆虫細胞に感染させることにより組換え蛋白質を産生させた。48時間感染後に細胞を回収し、ペレット化し、−80℃で凍結させた。組換え蛋白質を精製するために、ペレットを解凍し、溶解用緩衝液(PBS,NaCl 150mM,CHAPS 0.1%,DTT 20mM,グリセロール10%,プロテアーゼ阻害剤)に再懸濁し、音波処理により溶解させた。遠心により溶解液を清澄化し、Nichelアフィニティーカラムにロードした。十分に洗浄後、TEV(登録商標)プロテアーゼの存在下で温置することにより組換え蛋白質を開裂及び溶出させた。
【0059】
PLK−1キナーゼ活性の阻害剤の生化学アッセイ
トランスリン酸化アッセイを使用して推定キナーゼ阻害剤の阻害活性と選択化合物の効力を測定した。
【0060】
ATP(33P−γ−ATPで追跡)と、それ自体の最適な緩衝液及び補因子の存在下で夫々の特異的なセリン−スレオニン又はチロシンキナーゼにより特定ペプチド又は蛋白質基質をトランスリン酸化する。
【0061】
リン酸化反応後に、98%を上回る非放射性ATPと放射性ATPを過剰のイオン交換ダウエックス樹脂に吸着させた後、樹脂を重力により反応プレートの底に沈降させる。
【0062】
次にリン酸化基質を含有する上清を回収し、計数用プレートに導入後、β線計数により評価する。
【0063】
試薬/アッセイ条件
i.ダウエックス樹脂調製
湿潤樹脂(SIGMA,特注製造樹脂DOWEX 1×8 200〜400メッシュ,2.5Kg)500gを計量し、150mMギ酸ナトリウム,pH3.00で2Lまで希釈する。樹脂を(数時間)沈降させた後、上清を捨てる。2〜3日間かけて上記のように3回洗浄後、樹脂を沈降させ、上清を捨て、ペレット1容量当たり150mMギ酸ナトリウム緩衝液2容量を加える。その後、pHを測定すると、3.00前後になる。洗浄した樹脂は1週間以上安定であり、ストック樹脂を使用時まで4℃に維持する。
【0064】
ii.キナーゼ緩衝液(KB)
PLK1アッセイのキナーゼ緩衝液は10mM MgCl,1mM DTT,3μM NaVO,0.2mg/mL BSA,及び10mM β−グリセロリン酸を添加した50mM HEPES pH7.9から構成した。
【0065】
iii.アッセイ条件
PLK−1の最終酵素濃度を3nMとし、40μM ATP、3nM 33P−γ−ATP及び85μM基質α−カゼインSIGMA,#C−3240の存在下でキナーゼアッセイを実施した。
【0066】
自動化ダウエックスアッセイ
1)3×酵素ミックス(3倍量のキナーゼ緩衝液で調製),5μL/ウェル
2)3×基質及びATPミックス(ddHOで調製)に33P−γ−ATPを添加,5μL/ウェル
3)3×試験化合物(3%DMSOのddHO溶液で希釈)−5μL/ウェル。
【0067】
化合物希釈及びアッセイスキームを以下に規定する。
【0068】
i.化合物の希釈
試験化合物を100%DMSOに溶解した10mMストック溶液を96ウェル12×8フォーマットマイクロタイタープレートに分配した。
【0069】
%阻害試験では、100%DMSOで1mM、100μM及び10μMの個々の希釈プレートを調製後、3%DMSOのddHO溶液で3×濃度(30、3及び0.3μM)に希釈する。Multimek 96(Beckman)を希釈に使用し、化合物を試験プレートに分注する。
【0070】
IC50測定では、化合物を1mM,100%DMSO溶液としてマイクロタイタープレートの最初のカラム(A1〜G1)に100μLずつ加える。
【0071】
プレートの全7種の化合物でカラムA1からA10まで3%DMSO水溶液による3倍系列希釈にBiomek 2000(Beckman)を使用する。標準実験では、全化合物の最高濃度を30μMとした後、最終試験混合物で10μMまで希釈する。
【0072】
ii.アッセイスキーム
化合物希釈液(3×)5μLでV字底384ウェルプレート(試験プレート)を調製後、酵素ミックス(3×)用リザーバ1個とATPミックス(3×)用リザーバ1個と共にPlateTrak 12自動化ステーション(Perkin Elmer;ロボットはアッセイ開始用の384チップ分注ヘッド1個と樹脂分配用の96チップヘッド1個をもつ)に配置する。試験開始時にロボットはATPミックス5μLを吸引し、チップの内側に空隙(3μL)を作り、PLK1ミックス5μLを吸引する。その後、プレートに分配し、ロボット自体で3サイクル混合後にキナーゼ反応を開始する。
【0073】
この時点で全試薬に適正な濃度が回復される。
【0074】
ロボットはプレートを60分間室温で温置した後、ダウエックス樹脂懸濁液70μLを反応ミックスに分注することにより反応を停止する。樹脂の添加直後に3サイクル混合を行う。
【0075】
全プレートの停止後に今度は正常チップを使用して更に1サイクル混合を実施した後、ATP吸着を最大限にするようにプレートを約1時間静置する。この時点で上清20μLをMicroscint 40(Perkin−Elmer)70μLと共に384−Optiplates(Perkin−Elmer)に導入し、オービタルシェーカーで5分間振盪後、Perkin−Elmer Top Count放射能カウンターでプレートを読取る。
【0076】
iii.データ分析
一次アッセイには阻害率%を提供し、二次アッセイ/ヒット確認ルーチンにはIC50測定用に10倍系列希釈曲線のS字フィッティングを提供するSWパッケージ「Assay Explorer」の社内カスタマイズ版によりデータを分析する。
【0077】
組換えPLK2キナーゼドメインのクローニング、発現及び精製
ヒト精巣cDNAライブラリーからPLK2キナーゼドメイン(全長配列の残基2〜375に対応,Swiss−Protアクセション番号Q9NYY3参照)をPCR増幅した。フォワードオリゴヌクレオチド:
5’GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTACTGGAAGTTCTGTTCCAGGGGCCCGAGCTTTTGCGGAGCATCACCTACC−3’[配列番号3]
とリバースオリゴヌクレオチド:
5’GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTTATTTGCCACCAAAAAGAGCAGCAGCTGC−3’[配列番号4]
を使用して増幅を実施した。
【0078】
クローニングの目的で、Gateway(登録商標)テクノロジー(Invitrogen)を使用するクローニングに適したattBで挟まれたPCR産物を得るためにattB部位をオリゴヌクレオチドに付加した。更に、精製の目的でPreScission(登録商標)開裂部位(Amersham Biosciences)をフォワードプライマーに付加した。得られたPCR産物をGateway(登録商標)に対応するように改変したバキュロウイルス発現ベクターpVL1393(Invitrogen)にクローニングした。発現と精製の目的で、GSTタグを両方のPLKキナーゼドメインのN末端に付加した。Gateway(登録商標)マニュアルに記載されているプロトコルに従ってクローニングを実施した。
【0079】
BaculoGold(登録商標)トランスフェクションキット(Pharmingen)を使用してSf9昆虫細胞に発現ベクターとウイルスDNAを同時トランスフェクトすることによりバキュロウイルスを作製した。5日後にウイルス上清を回収し、3回増幅してウイルス力価を増加した。High5昆虫細胞に細胞10個当たりウイルス上清3mlを細胞1×10個/mlの密度で感染させることにより組換え蛋白質を産生させた。48時間感染後に細胞を回収し、ペレット化し、−80℃で凍結させた。組換え蛋白質を精製するために、ペレットを解凍し、溶解用緩衝液(Tris−HCl pH7.4 50mM,NaCl 150mM,CHAPS 0.2%,DTT 20mM,グリセロール10%)に再懸濁し、音波処理により溶解させた。24000gで30分間遠心により溶解液を清澄化し、Glutathione Sepharose 4FF(登録商標)(Amersham Biosciences)カラムにロードした。十分に洗浄後、PreScission(登録商標)プロテアーゼの存在下で温置することにより組換え蛋白質を開裂及び溶出させた。
【0080】
PLK−2キナーゼ活性の阻害剤の生化学アッセイ
PLK−1酵素について記載したと同様にインビトロキナーゼ阻害アッセイを実施した。
【0081】
i.PLK−2のキナーゼ緩衝液(KB)
キナーゼ緩衝液は50mM HEPES,pH7.9,5mM MgCl,1mM DTT,3μM NaVO,10mM β−グリセロリン酸及び0.2mg/mL BSAから構成した。
【0082】
ii.PLK−2のアッセイ条件(終濃度)
酵素濃度5nM、200μM ATP、3nM 33P−γ−ATP及び175μM基質α−カゼインSIGMA,#C−3240でキナーゼアッセイを実施した。
【0083】
組換えPLK3キナーゼドメインのクローニング、発現及び精製
ヒト精巣cDNAライブラリーからPLK3キナーゼドメイン(全長配列の残基2〜355に対応,Swiss−Protアクセション番号Q9H4B4参照)をPCR増幅した。フォワードオリゴヌクレオチド:
5’GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTACTGGAAGTTCTGTTCCAGGGGCCCGAGCCTGCCGCCGGTTTCCTGTCTCCGC−3’[配列番号5]
とリバースオリゴヌクレオチド:
5’GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTTTACTTTCTGACAAAGAGGCTCTTGGTAACTTTGGC−3’[配列番号6]
を使用して増幅を実施した。
【0084】
クローニングの目的で、Gateway(登録商標)テクノロジー(Invitrogen)を使用するクローニングに適したattBで挟まれたPCR産物を得るためにattB部位をオリゴヌクレオチドに付加した。更に、精製の目的でPreScission(登録商標)開裂部位(Amersham Biosciences)をフォワードプライマーに付加した。得られたPCR産物をGateway(登録商標)に対応するように改変したバキュロウイルス発現ベクターpVL1393(Invitrogen)にクローニングした。発現と精製の目的で、GSTタグをPLK3キナーゼドメインのN末端に付加した。Gateway(登録商標)マニュアルに記載されているプロトコルに従ってクローニングを実施した。
【0085】
BaculoGold(登録商標)トランスフェクションキット(Pharmingen)を使用してSf9昆虫細胞に発現ベクターとウイルスDNAを同時トランスフェクトすることによりバキュロウイルスを作製した。5日後にウイルス上清を回収し、3回増幅してウイルス力価を増加した。High5昆虫細胞に細胞10個当たりウイルス上清3mlを細胞1×10個/mlの密度で感染させることにより組換え蛋白質を産生させた。48時間感染後に細胞を回収し、ペレット化し、−80℃で凍結させた。組換え蛋白質を精製するために、ペレットを解凍し、溶解用緩衝液(Tris−HCl pH7.4 50mM,NaCl 150mM,CHAPS 0.2%,DTT 20mM,グリセロール10%)に再懸濁し、音波処理により溶解させた。24000gで30分間遠心により溶解液を清澄化し、Glutathione Sepharose 4FF(登録商標)(Amersham Biosciences)カラムにロードした。十分に洗浄後、PreScission(登録商標)プロテアーゼの存在下で温置することにより組換え蛋白質を開裂及び溶出させた。
【0086】
PLK−3キナーゼ活性の阻害剤の生化学アッセイ
PLK−1酵素について記載したと同様にインビトロキナーゼ阻害アッセイを実施した。
【0087】
i.PLK−3のキナーゼ緩衝液(KB)
キナーゼ緩衝液は50mM HEPES,pH7.9,5mM MgCl,1mM DTT,3μM NaVO,10mM β−グリセロリン酸及び0.2mg/mL BSAから構成した。
【0088】
ii.PLK−3のアッセイ条件(終濃度)
酵素濃度0.5nM、50μM ATP、3nM 33P−γ−ATP及び110μM基質α−カゼインSIGMA,#C−3240でキナーゼアッセイを実施した。
【0089】
Aurora−2キナーゼ活性の阻害剤の生化学アッセイ
PLK−1酵素について記載したと同様にインビトロキナーゼ阻害アッセイを実施した。
【0090】
i.Aurora−2のキナーゼ緩衝液(KB)
キナーゼ緩衝液は50mM HEPES,pH7.0,10mM MgCl,1mM DTT,3μM NaVO、及び0.2mg/mL BSAから構成した。
【0091】
ii.Aurora−2のアッセイ条件(終濃度)
酵素濃度2.5nM,10μM ATP,1nM 33P−γ−ATP、及びLRRWSLG反復配列4個から構成される基質8μMでキナーゼアッセイを実施した。
【0092】
Cdk2/サイクリンA活性の阻害アッセイ
キナーゼ反応:1.5μMヒストンH1基質,25μM ATP(0.2μCi P33γ−ATP)、バキュロウイルスで同時発現させたCdk2/サイクリンA 30ng、10μM阻害剤を最終容量100μLの緩衝液(TRIS HCl 10mM pH7.5,MgCl 10mM,7.5mM DTT)に加え、96ウェルU字底プレートの各ウェルに加えた。10分間37℃で温置後、120mM EDTA 20μLにより反応を停止した。
【0093】
吸着:各ウェルから100μLをMultiScreenプレートに移し、ホスホセルロースフィルターと基質結合させた。次にCa++/Mg++を含まないPBS150μL/ウェルでプレートを3回洗浄し、MultiScreen濾過システムで濾過した。
【0094】
PLK−1酵素について記載したと同様にインビトロキナーゼ阻害アッセイを実施した。
【0095】
i.CDK−2/CycAのキナーゼ緩衝液(KB)
キナーゼ緩衝液はTRIS HCl 50mM pH7.5,MgCl 10mM,DTT 1mM,NaVO 3μM,0.2mg/ml BSAから構成した。
【0096】
ii.CDK−2のアッセイ条件(終濃度)
酵素濃度1.08nM,10μM ATP,1nM 33P−γ−ATP及び4μM基質ヒストンH1でキナーゼアッセイを実施した。
【0097】
インビトロ細胞増殖アッセイ
A2780ヒト卵巣癌及びMCF7ヒト乳癌細胞(1250個/ウェル)を白色384ウェルプレートで完全培地(RPMI1640又はEMEM+10%ウシ胎仔血清)に撒き、播種から24時間後に0.1% DMSOに溶解した化合物で処理した。細胞を37℃で5% CO下に温置し、72時間後にCellTiter−Gloアッセイ(Promega)を製造業者の指示に従って使用してプレートを処理した。
【0098】
CellTiter−Gloは代謝活性細胞の指標であるATP存在量の定量に基づく均一法である。ルシフェラーゼとD−ルシフェリンによる発光に基づくシステムを使用してATPを定量する。発光シグナルは培養液中に存在する細胞数に比例する。
【0099】
要約すると、試薬溶液25μL/ウェルを各ウェルに加え、5分間振盪後にルミノメーターによるとマイクロプレートは赤色である。発光シグナルは培養液中に存在する細胞数に比例する。
【0100】
式(I)の化合物を上記のように試験した結果、アイソフォームPLK2及びPLK3に比較して顕著な選択的PLK1阻害活性をもつことが判明した。生化学アッセイにおいて、PLK1のIC50は一般に0.1μM未満である。
【0101】
1例として、Steegmaier,Martin et al.,Current Biology 2007,17(4),316−322に記載されている従来技術の最も近縁の化合物(Ref)と比較して上記方法で試験した本発明の式(I)の代表的な化合物の1例の実験データ(IC50)を報告する下表1参照。
【0102】
【表1】


【0103】
驚くべきことに、本発明の新規化合物はPLK1生化学アッセイで参照化合物に比較して選択性が高かった。実際に、本発明の式Iの化合物はPLK2/PLK1比とPLK3/PLK1比が参照化合物よりも大きい。
【0104】
本発明の化合物は単剤として投与することもできるし、細胞増殖抑制剤又は細胞傷害剤、抗生物質型薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、免疫剤、インターフェロン型薬剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばCOX−2阻害剤)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖因子受容体剤、抗HER剤、抗EGFR剤、抗血管新生剤(例えば血管新生阻害剤)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ras−rafシグナル伝達経路阻害剤、細胞周期阻害剤、他のcdk阻害剤、チューブリン結合剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤等と共に、放射線療法又は化学療法レジメン等の公知抗癌治療と併用することもできる。
【0105】
固定用量として製剤化する場合には、このような併用製剤は下記用量範囲内の本発明の化合物と許容用量範囲内の他の医薬活性剤を併用する。
【0106】
併用製剤が不適切な場合には、式(I)の化合物を公知抗癌剤と順次使用してもよい。
【0107】
哺乳動物(例えばヒト)に投与するのに適した本発明の式(I)の化合物は通常の経路で投与することができ、用量レベルは患者の年齢、体重、状態及び投与経路により異なる。例えば、式(I)の化合物の経口投与に採用される適切な用量は1回当たり約10〜約500mgを1日1〜5回投与することができる。本発明の化合物は各種剤形で投与することができ、例えば錠剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルムコーティング錠、溶液剤又は懸濁液剤として経口投与することもできるし、座剤として直腸投与することもできるし、例えば筋肉内又は静脈内及び/又は髄腔内及び/又は脊髄内注射又は輸液により非経口投与することもできる。
【0108】
本発明は更に、担体でも希釈剤でもよい医薬的に許容可能な賦形剤と共に式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を包含する。
【0109】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は一般に従来の手法に従って製造され、適切な医薬形態で投与される。例えば、固体経口形態は活性化合物と共に希釈剤(例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、スクロース、セルロース、コーンスターチ又はジャガイモ澱粉);滑沢剤(例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及び/又はポリエチレングリコール);結合剤(例えば澱粉、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン);崩壊剤(例えば澱粉、アルギン酸、アルギン酸塩又は澱粉グリコール酸ナトリウム);発泡混合物;色素;甘味剤;湿潤剤(例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩);及び一般に医薬製剤で使用される薬理的に不活性な非毒性物質を含有することができる。これらの医薬製剤は例えば混合、顆粒化、錠剤化、糖衣又はフィルムコーティング工程により公知の通りに製造することができる。
【0110】
経口投与用液体分散液剤としては、例えばシロップ、エマルション及び懸濁液剤が挙げられる。1例として、シロップには担体としてサッカロース又はサッカロースとグリセリン及び/又はマンニトール及びソルビトールを添加することができる。
【0111】
懸濁液剤及びエマルションには担体として天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールを添加することができる。筋肉内注射用懸濁液剤又は溶液剤は活性化合物と共に医薬的に許容可能な担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール類(例えばプロピレングリコール)、及び必要に応じて適量の塩酸リドカインを含有することができる。
【0112】
静脈内注射又は輸液用溶液剤には担体として滅菌水を加えてもよいし、滅菌等張塩類水溶液でもよく、この形態が好ましいが、担体としてプロピレングリコールを加えてもよい。
【0113】
座剤は活性化合物と共に医薬的に許容可能な担体(例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤又はレシチン)を含有することができる。
【0114】
本発明を更に詳細に例証するために、以下に実施例を記載するが、これらの実施例により本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0115】
以下の実施例に従って製造した本発明の化合物をH NMR及びMS分析により特性決定した。
【0116】
実施例1
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−2−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−トリフルオロメトキシフェニルアミノ]−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン(R=OCF,R=4−メチルピペラジン,R=シクロペンチル,R=エチル)
【0117】
【化5】

WO2004/076454に記載されているように製造した(R)−2−クロロ−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン(0.60g,2mmol)をHO/エタノール2/1混液(60mL)に懸濁した懸濁液に37%HCl(0.6mL)と製造例1に記載したように製造した2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン(0.55g,2mmol)を加えた。反応混合物を72時間還流し、小容量(20mL)まで濃縮し、水(30mL)で希釈し、DCM(2×50mL)で抽出した。NaHCOの添加により水相を中和後、DCM(2×50mL)で抽出した。有機フラクションを合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発乾涸した。粗製固形物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:DCM/EtOH 90/10)により精製し、標記化合物を薄茶色固体として得た(0.23g,22%収率)。
【0118】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm 0.76(t,J=7.50Hz,3H)1.44(m,2H)1.60(m,2H)1.73(m,2H)1.82(m,4H)2.27(s,3H)2.49−2.53(m,4H)3.09−3.18(m,4H)3.23(s,3H)4.18(dd,J=7.56,3.66Hz,1H)4.20−4.28(m,1H)6.67(dd,J=9.15,3.05Hz,1H)7.12−7.21(m,1H)7.54(d,J=3.05Hz,1H)7.77(s,1H)7.93(s,1H);MS(ESI):534[M+H]
【0119】
(上記又は製造例2及び3に記載したように製造した)適切な出発材料を使用して同様の手順により以下の生成物を得ることができる:
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−2−[2−メトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミノ]−5−メチル−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン(R=OCH,R=A−メチルピペラジン,R=シクロペンチル,R=エチル)H NMR(401MHz,DMSO−d)δppm 0.78(t,J=7.44Hz,3H)1.57(m,2H)1.60(m,2H)1.71(m,2H)1.73(m,2H)1.96(m,2H)2.23(s,3H)2.45−2.49(m,4H)3.01(d,J=5.00Hz,4H)3.25(s,3H)3.80(s,3H)4.18(dd,J=7.99,3.72Hz,1H)4.43−4.54(m,1H)6.49(dd,J=8.78,2.93Hz,1H)6.88(d,J=8.90Hz,1H)7.40(s,1H)7.83(s,1H)7.99(d,J=2.93Hz,1H);MS(ESI):480[M+H]
【0120】
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−2−[2−メチル−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミノ]−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン(R=CH,R=4−メチルピペラジン,R=シクロペンチル,R=エチル)H NMR(401MHz,DMSO−d)δppm 0.77(t,J=7.50Hz,3H)1.41(m,2H)1.58(m,2H)1.71(m,2H)1.74(m,2H)1.83(m,2H)2.11(s,3H)2.22(s,3H)2.41−2.46(m,4H)3.01−3.07(m,4H)3.22(s,3H)4.12(dd,J=7.80,3.66Hz,1H)4.18−4.31(m,1H)6.59(dd,J=8.35,2.50Hz,1H)7.00(d,J=8.41Hz,1H)7.16(d,J=2.56Hz,1H)7.73(s,1H)7.87(s,1H);MS(ESI):464[M+H]
【0121】
製造例1
2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン三塩酸塩
【0122】
【化6】

ステップ1:N−(5−ブロモ−2−トリフルオロメトキシフェニル)アセトアミド
【0123】
【化7】

2−トリフルオロメトキシ−5−ブロモフェニルアミン(5.12g,20mmol)の0℃のEtOH(50mL)溶液に無水酢酸(4.7mL,50mmol)のEtOH(10mL)溶液を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発乾涸し、固形物にジエチルエーテルを加えてトリチュレートし、濾過し、N−(5−ブロモ−2−トリフルオロメトキシフェニル)アセトアミド5.64g(95%収率)を得た。
【0124】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm:2.11(s,3H)7.39(m,2H)8.21(s,1H)9.87(s,1H);MS(ESI):257[M+H]
【0125】
ステップ2:N−[2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]アセトアミド
【0126】
【化8】

アルゴン置換した丸底フラスコにPd(dba)(157mg,0.17mmol)と、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(134.7mg,0.34mmol)と、N−(5−ブロモ−2−トリフルオロメトキシフェニル)アセトアミド(5.05g,17mmol)を仕込んだ。フラスコを排気し、再びアルゴン置換した。LiN(TMS)溶液(1M THF溶液,37.6mL)とN−メチルピペラジン(2.3mL,20.5mmol)を加え、反応混合物を3時間還流した。次に反応混合物を室温まで冷却し、濃縮した。粗製固形物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:DCM/EtOH 90/10)により精製し、N−[2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]アセトアミド4.78g(88%収率)を得た。
【0127】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm:2.06(s,3H)2.22(s,3H)2.45(m,4H)3.11(m,4H)6.75(dd,J=9.15,3.05Hz,1H)7.17(dd,J=9.15,1.46Hz,1H)7.41(bs,1H)9.54(s,1H);MS(ESI):299[M+H]
【0128】
ステップ3:2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン三塩酸塩
【0129】
【化9】

N−[2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル]アセトアミド(4.75g,15mmol)のEtOH(100mL)溶液をHCl 37%(35mL)で処理した。還流下に1時間後に混合物を濃縮し、ヘキサンを加えてトリチュレートし、定量的収率で2−トリフルオロメトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン三塩酸塩5.74gを得た。
【0130】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm:2.82(d,J=4.76Hz 3H)3.1(m,4H)3.48(m,4H)6.24(dd,J=8.90,2.93Hz,1H)6.40(d,J=2.93Hz,1H)6.98(dd,J=8.90,1.34Hz,1H)10.31(bs,1H);MS(ESI):318[M+H]
【0131】
製造例2
2−メトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン
【0132】
【化10】

ステップ1:1−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−4−メチルピペラジン
アルゴン置換した丸底フラスコにPd(OAc)(85mg,0.38mmol)と、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(225mg,0.57mmol)と、KPO(2.26g,10.68mmol)と、4−ブロモ−1−メトキシ−2−ニトロベンゼン(1.77g,7.63mmol)のTHF(50mL)溶液を仕込んだ。フラスコを排気し、再びアルゴン置換した。N−メチルピペラジン(1.01mL,9.15mmol)を加え、反応混合物を72時間還流した。次に反応混合物を室温まで冷却し、濃縮した。粗製固形物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:DCM/EtOH 90/10)により精製し、標記化合物1.05g(55%収率)を得た。
【0133】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm:2.22(s,3H)2.45(m,4H)3.09(m,4H)3.83(s,3H)7.22(d,J=9.27Hz,1H)7.26(dd,J=9.27 and 2.93Hz,1H)7.35(d,J=2.93Hz,1H)。
【0134】
ステップ2:2−メトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン
1−(4−メトキシ−3−ニトロフェニル)−4−メチルピペラジン(1.0g,4.0mmol)のMeOH(100mL)溶液をPd/C10%(150mg)の存在下に35psiで2時間水素化した。混合物をセライトパッドで濾過し、溶液を濃縮し、標記化合物0.8g(90%収率)を得た。
【0135】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm:2.21(s,3H)2.43(m,4H)2.94(m,4H)3.68(s,3H)4.55(s,2H)6.09(dd,J=8.66 and 2.80Hz,1H)6.30(d,J=2.80Hz,1H)6.64(d,J=8.66Hz,1H)。
【0136】
製造例3
2−メチル−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン塩酸塩
【0137】
【化11】

ステップ1:メチル−4−(4−メチル−3−ニトロフェニル)ピペラジン。円筒形石英管に4−フルオロ−1−メチル−2−ニトロベンゼン(20.0g,129mmol)とN−メチルピペラジン(26g,258mmol)を入れた。HPLCにより出発材料が消滅したと判断されるまで反応混合物を48時間200℃に加熱した。溶媒を減圧除去し、残渣をDCMに溶解した。溶液を2回水洗し、有機相を無水NaSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。最終化合物(14.65g,48%収率)を茶色油状物として得た。
【0138】
ステップ2:2−メチル−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミン。1−メチル−4−(4−メチル−3−ニトロフェニル)ピペラジン(9.0g,38.29mmol)をエタノール(100mL)とシクロヘキセン(7ml)に溶解した溶液にPd/C10%(1.5g)を加えた。HPLCにより出発材料が消滅したと判断されるまで反応混合物を80℃に6時間加熱した。Pdを反応混合物から濾別し、溶媒を濾液から減圧除去した。粗生成物をDCMで希釈し、HClジオキサン溶液で処理し、沈殿を採取し、ジエチルエーテルで洗浄し、最終化合物を茶色固体として定量的収率で得た。
【0139】
H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm 2.10(s,3H)2.82(s,3H)2.91−3.01(m,2H)3.06−3.21(m,2H)3.49(d,J=14.02Hz,2H)3.66(d,J=12.44Hz,2H)6.57(bs,1H)6.63(bs,1H)7.01(d,J=7.68Hz,1H)10.21(bs,1H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
は直鎖又は分岐鎖C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cポリフッ化アルキル、C−Cポリフッ化アルコキシ及び−COR’(式中、R’は置換されていてもよいC−Cアルキルである。)から選択される置換されていてもよい基であり;
は−NR”R”’基(式中、R”及びR”’は各々独立して水素又は直鎖もしくは分岐鎖C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル及び複素環から選択される置換されていてもよい基である。)であり、あるいはR”とR”’はそれらが結合している窒素原子と一緒になり、N、O又はSから選択される更に1個のヘテロ原子を含んでもよい置換されていてもよい複素環を形成してもよく;
及びRは各々独立して水素又は直鎖もしくは分岐鎖C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル及び複素環から選択される置換されていてもよい基である。]
の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
が置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖C−Cアルキルである
請求項1に定義される式(I)の化合物。
【請求項3】
が−OCF、−OCH、−CH及び−COR’(式中、R’は請求項1に定義した通りである。)から選択される基であり;
がメチルピペラジニル基:
【化2】

であり;
がC−Cシクロアルキルである
請求項1又は2に定義される式(I)の化合物。
【請求項4】
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−2−[5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−トリフルオロメトキシフェニルアミノ]−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン、
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−2−[2−メトキシ−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミノ]−5−メチル−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン、及び
(R)−8−シクロペンチル−7−エチル−5−メチル−2−[2−メチル−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニルアミノ]−7,8−ジヒドロ−5H−プテリジン−6−オン
から構成される群から選択される化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項5】
請求項1に定義される式(I)の化合物の製造方法であって、
1)式(II):
【化3】

(式中、R及びRは請求項1に定義した通りである。)の化合物を式(III):
【化4】

(式中、R及びRは請求項1に定義した通りである。)の化合物と反応させ、式(I)の化合物を得る段階と、
必要に応じてその医薬的に許容可能な塩に変換する段階
を含む方法。
【請求項6】
蛋白質キナーゼ活性の調節異常に起因及び/又は付随する疾患の治療方法であって、前記治療を必要とする哺乳動物に有効量の請求項1に定義される式(I)の化合物を投与する段階を含む前記方法。
【請求項7】
PLKファミリー活性の調節異常に起因及び/又は付随する疾患の治療方法である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
PLK−1活性の調節異常に起因及び/又は付随する疾患の治療方法である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
疾患が癌、細胞増殖性疾患、ウイルス感染症、自己免疫疾患及び神経変性疾患から構成される群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項10】
癌が膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌を含む。)、十二指腸癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頸癌、甲状腺癌、前立腺癌及び皮膚癌(扁平上皮細胞癌を含む。)等の癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫及びバーキットリンパ腫を含むリンパ系造血器腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群並びに前骨髄球性白血病を含む骨髄系造血器腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系腫瘍;星状細胞腫、神経細胞芽腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫を含む中枢及び末梢神経系腫瘍;メラノーマ、セミノーマ、奇形癌腫、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトキサントーマ、甲状腺濾胞癌及びカポジ肉腫を含む他の腫瘍から構成される群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞増殖性疾患が良性前立腺過形成、家族性大腸腺腫症、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎並びに手術後狭窄及び再狭窄から構成される群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
HIV感染個体におけるウイルス感染症の治療するための請求項9に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍血管新生及び転移抑制と臓器移植拒絶反応及び宿主対移植片病の治療を行う請求項6に記載の方法。
【請求項14】
治療を必要とする哺乳動物に少なくとも1種の細胞増殖抑制剤又は細胞傷害剤と併用して放射線療法又は化学療法レジメンを実施する段階を更に含む請求項6に記載の方法。
【請求項15】
治療を必要とする哺乳動物がヒトである請求項6に記載の方法。
【請求項16】
PLK−1蛋白質の活性の阻害方法であって、前記蛋白質を有効量の請求項1に定義される化合物と接触させる段階を含む前記方法。
【請求項17】
治療有効量の請求項1に定義される式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩、及び少なくとも1種の医薬的に許容可能な賦形剤、担体及び/又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
更に1種以上の化学療法剤を含む請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗癌治療で同時、別個又は順次使用するための併用製剤として、請求項1に定義される式(I)の化合物もしくはその医薬的に許容可能な塩又は請求項17に定義される医薬組成物及び1種以上の化学療法剤を含む製剤又はキット。
【請求項20】
医薬用としての請求項1に定義される式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項21】
癌の治療方法で使用するための請求項1に定義される式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項22】
抗癌活性をもつ医薬の製造における請求項1に定義される式(I)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。

【公表番号】特表2011−505403(P2011−505403A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536412(P2010−536412)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066253
【国際公開番号】WO2009/071480
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】