説明

美容用貼付材

【課題】肌に貼付することで、肌に美容成分を効率よく浸透させると共に、目立つことがなく、化粧料の適用が容易で、自然な感じの化粧が可能な美容用貼付材を提供する。
【解決手段】厚み1〜10μm、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマーを主成分とする基材層11と、基材層11の片面側に配設され、厚み1〜15μm、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤を主成分とする粘着剤層12を備え、前記両層の厚さの合計が2〜20μmであり、基材層11及び粘着剤層12の少なくとも一方に美容成分15を含有する、あるいは、基材層11と粘着剤層12との間に美容成分15を含有してなる美容成分層25が介在されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容用貼付材に係り、特に皮膚に美容成分を効率よく浸透させるようにした美容用貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、人の肌は、皮膚組織から供給される水分及び脂肪によって、一定の潤い状態に保持されているが、体質や健康状態、気候や大気中の水分等、様々な要因により、乾燥状態となる。肌が乾燥すると、当該肌に痒みや突っ張り感等が生じたり、肌の表面がカサカサし、ざらつきが目立つようになったり、皺が深くなる等、様々な皮膚障害を引き起こしやすくなる。そこで、この様な肌の乾燥を防止するために、保湿成分を含有する乳液、美容液、クリーム、オイル等の美容用塗布剤を塗布することが行われている。
【0003】
近年では、肌の乾燥防止に加え、肌の表面を滑らかで柔らかい状態に整えるためのエモリエント成分、しみ・くすみを改善する美白成分、肌を活性化する肌活性成分、肌荒れを改善する肌荒れ改善成分、肌を引締める肌引締成分等を含有した美容用塗布剤も用いられている。
【0004】
前述したような美容用塗布剤は、通常、液体あるいは乳化状態またはペースト状態であるため、パックとして使用する時は、前記美容用塗布剤をシートに含浸させ、このシートを肌に当てたり、肌に美容用塗布剤を通常よりも厚めに塗布した後、シートで覆う等、手間がかかっていた。
【0005】
そこで、近年では、不織布等からなるシートに液状のパック用化粧料を含浸させ、それを封入袋で個別包装した顔用マスク(フェイスマスクとも称される)やシート状化粧料が市販されている。
【0006】
このような顔用マスクとしては、例えば、不織布で構成されるシート片を、顔面を覆うことができる程度の大きさのマスク状に成形し、このシート片に美容液を含浸させ、このシート片の両頬部付近に、シート片を折り返して重ね合わせるための切り込み線を形成したものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、痩身効果、むくみ防止・改善効果、肌のひきしめ効果、及びスキンケア効果に優れたシート状化粧料として、黄花菜又はその抽出物を含有するシート状化粧料も提案されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−15049号公報
【特許文献2】特開2009−91317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来の顔用マスクやシート状化粧料は、自宅、あるいは美容サロン等で使用することを目的としたものであるため、パックした状態である(肌に貼付した状態である)ことが一目瞭然である。したがって、顔用マスクやシート状化粧料を肌に貼付した状態で外出することが通常はできない等、使用する時間帯や使用場所等に制限があった。また、従来の顔用マスクやシート状化粧料は、ある程度の厚さ(種類によっても異なるが、通常は、1mm〜数mm程度)を有しているため、顔に貼付した状態で歩いたり、作業をしたり、顔の表情を大きく変える等を行うと、顔から剥がれる虞もあった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、肌に貼付することで、肌に美容成分を効率よく浸透させることができることに加え、肌に貼付した状態であっても、目立つことがないと共に、貼付時の違和感もなく、肌の動きに追随することができ、カブレを生じることがなく、周囲の肌と同じような手触り感触があり、さらにその上、化粧料の適用が容易で、自然な感じの化粧が可能な美容用貼付材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため本発明は、基材層と、当該基材層の片面側に配設された粘着剤層を有する美容用貼付材であって、前記基材層は、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマーを主成分とする層からなると共に、1〜10μmの厚みを有し、前記粘着剤層は、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤を主成分とする層からなると共に、1〜15μmの厚みを有し、前記基材層及び粘着剤層の厚さの合計が2〜20μmであり、当該基材層及び粘着剤層の少なくとも一方に美容成分を含有してなる美容用貼付材を提供するものである。
【0012】
この構成を備えた美容用貼付材は、基材層及び粘着剤層の少なくとも一方に美容成分が含有された構成を有しているため、当該美容用貼付材を肌に貼付した際に、当該美容成分が蒸発することを防止することができると共に、当該美容成分を肌に継続的に効率よく浸透させることができる。したがって、前記美容成分の効果を十分に発揮させることができる。
【0013】
また、本発明は、基材層と、当該基材層の片面側に配設された粘着剤層を有する美容用貼付材であって、前記基材層は、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマーを主成分とする層からなると共に、1〜10μmの厚みを有し、前記粘着剤層は、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤を主成分とする層からなると共に、1〜15μmの厚みを有し、前記基材層及び粘着剤層の厚さの合計が2〜20μmであり、当該基材層と当該粘着剤層との間に、美容成分を含有してなる美容成分層が介在されてなる美容用貼付材を提供するものである。
【0014】
この構成を備えた美容用貼付材は、基材層と当該粘着剤層との間に、美容成分を含有してなる美容成分層が介在されているため、当該美容用貼付材を肌に貼付した際に、当該美容成分が蒸発することを防止することができると共に、当該美容成分を肌に継続的に効率よく浸透させることができる。したがって、前記美容成分の効果を十分に発揮させることができる。
【0015】
また、本発明に係る美容用貼付材は、前記基材層及び粘着剤層の厚さの合計が2〜20μmであるため、皺や肌の細かな凹凸(微細な溝)にも適合し、貼付箇所が目立つことがなく、肌の動きに容易に追随することができ、カブレを発生し難く、化粧料や紫外線から肌を保護し、周囲の健常肌と同じような手触り感触があり、貼付状態で化粧料を適用することができる。したがって、美容用貼付材を貼付した状態で外出することが可能である等、TPOを考慮することなく、いつでも使用することができる。また、化粧をした状態で美容効果を得ることができる。
【0016】
そしてまた、本発明に係る美容用貼付材は、当該美容用貼付材を貼付した上から化粧することで、化粧料が直接肌につかず、当該美容用貼付材を肌から剥がす際に、化粧料を除去することができ、簡便性や、肌への影響がない等の利点もある。
【0017】
また、本発明に係る美容用貼付材は、前記粘着剤層の前記基材層が配設されていない側の面に、セパレータ層を配設することができる。このように構成することで、前記利点に加え、前記粘着剤層を保護することができる。また、前記粘着剤層に前記美容成分が含有されている際は、このセパレータ層によって、当該美容成分も保護することができるため、衛生的であると共に、美容成分の性能を一層効率よく維持させることができる。また、厚みが薄い美容用貼付材の取扱性をさらに向上させることができる。
【0018】
そしてまた、本発明に係る美容用貼付材は、前記基材層の前記粘着剤層が配設されていない側の面に、キャリア層を配設することができる。このように構成することで、前記利点に加え、厚みが薄い美容用貼付材の取扱性をさらに向上させることができる。
【0019】
なお、本発明に係る美容用貼付材が、キャリア層やセパレータ層等の付加的な層を有する場合には、その厚みが追加されることになるが、これらの付加的な層は、使用時に剥離されるため、貼付状態での美容用貼付材の厚みは、基材層の厚みと粘着剤層の厚みの合計厚み、あるいは、基材層の厚みと、美容成分層の厚みと、粘着剤層の厚みの合計厚みになる。
【0020】
また、本発明に係る美容用貼付材では、前記美容成分として、保湿成分、エモリエント成分、肌荒れ改善成分、肌活性成分、美白成分、肌引締成分からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。勿論、これらの成分同士を組み合わせることもできる。
【0021】
前記保湿成分としては、例えば、ヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸、ローヤルゼリーエキス、セラミド、セリン、ユリエキス、ローズ水、ローズマリーエキス、ハトムギエキス、ハチミツ、甘草フラボノイド、エイジツエキス、シイタケエキス、ホエイ、パルミトイルオリゴペプチド、コラーゲン、グルコシルトレハロース、ガリカバラエキス、シャクヤクエキス等からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0022】
前記エモリエント成分としては、スクワラン、スクワレン、アーモンド油、アンズ核油、馬油、ブドウ種子油、オリーブ油、オレンジ油、コメヌカスフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴシン、ブドウ種子油、コメヌカ油、シアー脂、月見草油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、グレープフルーツ果皮油、ヒマワリ種子油からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0023】
前記肌荒れ改善成分としては、アラントイン、アルニカエキス、オウゴンエキス、甘草エキス、レチノール、グリチルリチン酸ジカリウム、シャクヤクエキス、セージ葉エキス、ビワ葉エキス、ローズマリーエキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0024】
前記肌活性成分としては、アスタキサンチン、イチョウ葉エキス、ウコンエキス、エーデルワイスエキス、オタネニンジンエキス、オリザノール、オリーブ葉エキス、カルニチン、カロチン、クロレラエキス、コメヌカエキス、ショウガ根エキス、ダイズエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウニンエキス、ドグダミエキス、トコフェロール、トレオニン、ハッカ油、ヒノキチオール、プロリン、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、ユーカリエキス、ユビキノン、ヨクイニンエキス、ラベンダーエキス、レイシエキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0025】
前記美白成分としては、アルブチン、アセロラエキス、ビタミンC誘導体、ユキノシタエキス、プラセンタエキス、ハイドロキノン、カミツレエキス、ソウハクヒエキス、トコトリエノール、雪見草エキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0026】
前記肌引締成分としては、クエン酸、紅茶エキス、緑茶エキス、ウーロン茶エキス、シラカバエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、レモンエキス、カミツレエキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0027】
また、前記基材層の主成分であるポリウレタンエラストマーとしては、ポリエーテル型ポリウレタンエラストマーを挙げることができる。
【0028】
そしてまた、前記粘着剤層の主成分であるアクリル酸アルキルエステルとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、及びイソノニルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のアクリル酸アルキルエステルを挙げることができる。
【0029】
また、前記基材層は、前記粘着剤層が設けられていない側の面に、エンボス加工が施され、当該エンボス加工が施された面は、角度60度で測定した光沢度を、0.5〜7.5の範囲内に調整することができる。
【0030】
さらにまた、前記基材層及び粘着剤層の少なくとも一方を、着色剤によって黄色系またはオレンジ色系の色調に着色することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る美容用貼付材は、肌に貼付した際に、皺や肌の細かな凹凸(微細な溝)にも適合し、貼付箇所が目立つことがなく、肌の動きに容易に追随することができ、カブレを発生し難く、化粧料や紫外線から肌を保護し、周囲の健常肌と同じような手触り感触があり、貼付状態で化粧料を適用することができることに加え、当該美容成分が蒸発することを防止することができると共に、当該美容成分を肌に継続的に効率よく浸透させることができる。したがって、TPOを考慮することなく、いつでも使用することができると共に、肌に美容成分を効率よく浸透させることができ、美容成分の効果を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る美容用貼付材の断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る美容用貼付材の断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施形態に係る美容用貼付材の断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係る美容用貼付材の断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る美容用貼付材をユーザの顔に貼付した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施形態に係る美容用貼付材について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る美容用貼付材の断面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
【0035】
図1に示す美容用貼付材1は、基材層11と、基材層11の片面側に配設された粘着剤層12と、基材層11の粘着剤層12が配設されている面とは反対側の面に配設されたキャリア層13と、粘着剤層12の基材層11が配設されている面とは反対側の面に配設されたセパレータ層14と、を備えて構成されている。また、粘着剤層12には、美容成分15が含有されている。
【0036】
基材層11は、厚さが1〜10μmであり、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマーを主成分とした層から構成されている。このポリウレタンエラストマーは、分子中にウレタン基を持つエラストマーであり、ポリオール成分とジイソシアネート成分との重付加反応によって生成する。ポリオール成分としては、長鎖ジオールが用いられるが、それに加えて、鎖延長剤として短鎖ジオールが併用されることがある。この他、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトールのような単分子ポリオール等の架橋剤が用いられることがある。ポリウレタンエラストマーの製造技術は、当業界で周知技術である。
【0037】
ポリウレタンエラストマーは、ソフトセグメントを構成するポリオール成分の種類がその性質に大きく影響するため、ポリオール成分の種類によって分類されている。具体的には、ポリウレタンエラストマーは、(1)カプロラクトンを開環重合して得られるポリラクトンエステルポリオールとジイソシアネートとの重付加反応により合成したカプロラクトン型ポリウレタンエラストマー、(2)アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオールとジイソシアネートとの重付加反応により合成したアジピン酸エステル型ポリウレタンエラストマー、及び(3)テトラヒドロフランの開環重合で得られたポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとジイソシアネートとの重付加反応により合成したポリエーテル型ポリウレタンエラストマーに大別される。
【0038】
ポリウレタンエラストマーは、引張強さや引裂強さ等の機械的特性、耐摩耗性、低温特性、柔軟性等に優れる上、その薄膜は、紫外線吸収性、吸水性、透湿性等に優れている。ポリウレタンエラストマーを主成分とする薄膜を基材層11とする美容用貼付材1は、皺や肌の溝等の細かい凹凸にも良く適合し、肌に貼付した場合に違和感を感じさせることがない。
【0039】
ポリウレタンエラストマーの薄膜を基材層11とする美容用貼付材1は、基材層11が吸水性と透湿性を有するため、肌の貼付部位に汗が溜まったり、蒸れを生じることが少ない。そのため、美容用貼付材1は、貼付部位にカブレや痒みを生じさせることが極めて少ない。また、ポリウレタンエラストマーの薄膜は、吸水性があり、水となじみやすいため、化粧料の適用も容易である。これらのポリウレタンエラストマーの中でも、美容用貼付材1の基材層11として優れた総合的機能を発揮し得る点で、ポリエーテル型ポリウレタンエラストマーが好ましい。
【0040】
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
前記カプロラクトン型ポリウレタンエラストマーは、ポリオール成分として、カプロラクトンを開環重合して得られるポリラクトンエステルポリオールを使用する。アジピン酸エステル型ポリウレタンエラストマーは、ポリオール成分として、アジピン酸とグリコールとのアジピン酸エステルポリオールを使用する。ポリエーテル型ポリウレタンエラストマーは、ポリオール成分として、ポリ(オキシプロピレン)グリコール(PPG)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)等の二官能ポリエーテルポリオールを使用する。
【0042】
本発明に適したポリエーテル型ポリウレタンエラストマーとしては、市販品では、BASFジャパン株式会社のエラストラン(登録商標)(1180A、1190ATR、1195ATR、1198ATR、1154D、1164D、ET385、ET880、ET885、ET890、ET858D、ET860D、ET864D、NY90A、NY97A、ET370)、日本ミラクトラン株式会社のミラクトラン(登録商標)(E300シリーズ、P300シリーズ)、大日精化工業株式会社のレザミン(登録商標)(P−2000シリーズ)、DIC Bayer Polymer Ltd(ディーアイシーバイエルポリマー株式会社)のパンデックス(登録商標)(T8175、T8180、T8185、T8190、T8195、DP9370A、5377A、588、KU2−8659、DP5094A)等を挙げることができる。
【0043】
前記ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であり、好ましくは−10℃以下である。ガラス転移温度の下限値は、約−70℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。美容用貼付材1を、平均体温が36.5℃の肌面に貼付した場合、基材層11のガラス転移温度が低いことによって、美容用貼付材1の柔軟性を確保することができる。肌に美容用貼付材1を貼付した際に、基材層11の柔軟性が優れていると、化粧料の適用が容易である(化粧の乗りが良好である)。化粧料を適用する前に、貼付中の美容用貼付材1の基材層11の表面に水を施すと、ポリウレタンエラストマーからなる基材層11が柔らかくなり、肌面によりなじみ易くなる上、化粧料の乗りが良好になる。ポリウレタンエラストマーは、ガラス転移温度が低いため、体温付近の温度で柔軟性に優れており、肌面への適合性、化粧料の適用性等に優れている。
【0044】
基材層11の厚みは、1〜10μmの範囲内であり、好ましくは1〜8μm、より好ましくは1〜6μm、さらに好ましくは1〜5μmの範囲内である。基材層11の厚みが1〜10μmの範囲内であると、美容用貼付材1が肌の微小な凹凸に適合し、肌の動きに容易に追随し、かつ、貼付箇所が目立たなくなる。基材層11の厚みが1μmに満たない場合には、基材層11の強度が十分ではなく、貼付中あるいは美容用貼付材1を肌から剥がす際に基材層11が切れてしまう場合がある。一方、基材層11の厚みが10μmを超えると、貼付箇所が目立ちやすくなることに加えて、肌の表面への適合性や肌の動きに対する追随性が低下する。
【0045】
基材層11の厚みが極めて薄いことによって、透湿性を向上させることもできる。極めて薄いポリウレタンエラストマー層は、吸水性と透湿性に優れるため、美容用貼付材1の貼付箇所に汗や水分が溜まって、カブレや痒みを生じさせることや、損傷部の保護を阻害することが極めて少ない。
【0046】
本発明の美容用貼付材1は、ポリウレタンエラストマーからなる基材層11の厚みが薄く、且つ、柔軟性に優れているため、皺またはたるみのある肌の部位を引っ張って貼付すると、肌に密着し、引っ張りを解くと、皮溝や皺等の内部に入り込む状態になる。そのため、美容用貼付材1が皺等のある肌の表面で折り畳まれたような状態となり、貼付部位が平坦に見え、その結果、皺またはたるみが少なくなるように見える効果を奏することができる。
【0047】
基材層11の背面(基材層11の粘着剤層12が設けられていない側の表面)は、エンボス加工することが望ましい。エンボス加工は、ポリウレタンエラストマーのフィルムをエンボスロールに通すことによって行うことができる。ポリウレタンエラストマー層を溶液キャスティング法により成形する場合には、表面に微細な凹凸を設けたキャリア層(溶液を塗布する支持体)上にキャスティングする方法によってエンボス加工を行うことができる。キャリア層表面の微細な凹凸は、ポリウレタンエラストマー層に転写される。したがって、本発明において、エンボス加工とは、エンボスロールを用いた機械的な処理だけではなく、ポリウレタンエラストマー層の表面に微細な凹凸を形成することができる他の方法をも包含するものである。
【0048】
エンボス加工処理の程度は、角度60度で測定した基材層背面の光沢度によって定量的に評価することができる。日本工業規格(JIS規格)では、光沢度の基準として、屈折率1.567のガラス表面における入射角60度で測定した反射率10%を光沢度100%として用いている。本発明では、光沢度計としてmicro−TRI−gross(東洋精機社製)を用い、角度60度で光沢度を測定する。
【0049】
基材層11の背面の光沢度は、0.5〜7.5、好ましくは1〜6の範囲内である。ポリウレタンエラストマーからなる基材層11の光沢度が前記範囲内となるように、該基材層をエンボス加工することによって、美容用貼付材1の貼付状態が外観上より不自然に感じられないようにすることができることに加えて、化粧料の適用がさらに容易となる。
【0050】
本発明の美容用貼付材1は、基材層11の材質がポリウレタンエラストマーであることにより、健常肌と同じような手触りの感触がある。傷跡やケロイド等の肌は、健常肌のキメが失われて、プラスチックフィルム表面のようにつるつるしていることが多い。肌の疾患の種類によっては、肌に過度な凹凸、キメの乱れ、乾燥等が生じて、ガサガサとした荒れた手触りとなる場合もある。本発明の美容用貼付材1は、上記の如き損傷等のある肌の部位に貼付すると、周囲の健常肌と同じような手触り感触を得ることができる。基材層11の背面をエンボス加工することによって、貼付時において、周囲の健常肌と同じような手触り感触をさらに良好にすることができる。手触り感触の改善によって、被適用者の心の満足度を向上させるという、心理的なリハビリテーション効果をさらに高めることもできる。
【0051】
ポリウレタンエラストマーは、例えば、押出成形法、溶液キャスティング法、カレンダー法等、一般的なフィルムまたはシートの成形方法を採用することにより、薄い基材層11に成形することができる。ポリウレタンエラストマーの有機溶剤溶液を支持体上にキャスティングし、有機溶剤を揮散させる溶液キャスティング法は、均一な厚みの薄いポリウレタンエラストマー層を容易に形成できる点で好ましい製膜法である。支持体の表面に微細な凹凸を設けておくと、形成したポリウレタンエラストマー層の表面に微細な凹凸を転写することができる。支持体としてキャリア材を用いると、ポリウレタンエラストマーからなる支持体層の背面にキャリア層を有する美容用貼付材1が得られる。
【0052】
基材層11は、貼付中の違和感(肌が伸びた時等に感じる美容用貼付材1の抵抗感)の観点から、物性の方向による差(異方性)が殆どないことが好ましい。この観点からは、製膜方法として、物性の方向による差が表れない溶液キャスティング法やカレンダー法が好ましく、溶液キャスティング法がより好ましい。
【0053】
ポリウレタンエラストマーには、顔料や染料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、充填剤、軟化剤等の各種添加剤を、所望により含有させることができる。着色剤は、美容用貼付材1の色調を肌色に合わせるのに利用することができるが、損傷等のある肌の貼付部位の外観が目立たないようにするために、着色剤は、黄色系、オレンジ色系等が好ましい。
【0054】
また、ポリウレタンエラストマーからなる基材層11は、紫外線吸収性に優れており、波長280〜400nmの範囲で測定した時、該波長域内で20%以下、好ましくは15%以下の紫外線透過率を示す。波長280〜360nmの領域では、14%以下の紫外線透過率を示す。特に、波長が300nm以下の領域では、紫外線透過率が10%以下にまで急激に低下する。紫外線透過率は、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計(Ubest−V530)を用いて測定した。
【0055】
粘着剤層12は、厚さが1〜15μmであり、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤を主成分とし、且つ美容成分が含有された層から構成されている。
【0056】
粘着剤層12を構成する主成分であるアクリル粘着剤は、肌に貼付した際に、カブレが生じ難く、透明感があり、粘着特性の調整がし易いという特徴を有している。前記単量体の中でも、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より具体的には、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、及びイソノニルアクリレートがより好ましい。また、前記アクリル酸エステル共重合体は、前記単量体単位を80重量%以上の割合で含有することがより好ましい。そしてまた、前記アクリル酸エステル共重合体は、前記の一種以上の単量体の共重合体であってもよいが、他のコモノマーとの共重合体であることがより好ましい。
【0057】
他のコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するモノマー;等の官能基を含有するモノマーが挙げられる。他のコモノマーとしては、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、アクリルアミド等の各種モノマーも使用することができる。さらに、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等、炭素数8〜12のアルキル基以外のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルをコモノマーとして用いることもできる。
【0058】
好ましいアクリル酸エステル共重合体としては、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体70〜95重量%、官能基を有するコモノマー1〜10重量%、その他のコモノマー0〜25重量%を共重合して得られる共重合体を挙げることができる。
【0059】
アクリル粘着剤は、前記モノマー成分を、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の有機溶媒中で、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ系化合物を開始剤として、窒素雰囲気下で溶液重合することにより調製することができる。アクリル粘着剤は、モノマー成分を水中で乳化剤にて乳化分散した後、乳化重合することによっても調製することができる。アクリル粘着剤に、エポキシ樹脂等の架橋剤を加えて、粘着剤層の形成工程で架橋させてもよい。
【0060】
粘着剤層12の厚みは、1〜15μm、好ましくは1〜12μm、より好ましくは1〜8μm、特に好ましくは1〜6μmである。粘着剤層12は、基材層11に比べて引張抵抗力が小さく、伸縮性が高いため、基材層11の厚み範囲よりも広い範囲とすることができる。しかし、粘着剤層12の厚みが大きくなり過ぎると、皺や肌の細かな凹凸に適合することが困難となる傾向があり、貼付状態が目立ち易くなる。粘着剤層12の厚みが薄過ぎると、均一な粘着剤層12の形成が困難となる傾向があることに加えて、肌への貼付性が不十分となり易い。
【0061】
粘着剤層12を極めて薄くすると、肌上に見られる極小の溝である皮溝のような、肌の細かな凹凸への適合性に優れるものの、肌に対する粘着力が低下することがある。本発明では、基材層11の厚みが1〜10μm、粘着剤層の厚みが1〜15μm、且つ、基材層11と粘着剤層12との合計厚みが2〜20μmの範囲にある美容用貼付材1において、粘着剤層12が、JIS Z 0237に準じてクロスヘッドの移動速度が毎分300±30mmの速さで測定される対ベークライト板の90度剥離力が0.1N/10mm以上を示すように、粘着剤の粘着性を調整することが好ましい。この剥離力は、粘着剤層12の粘着力に相当する特性である。
【0062】
前述した0.1N/10mmという剥離力(粘着力)の下限値は、必ずしも大きい値ではないが、基材層11が薄く柔軟であるため、基材層11の厚みと剥離力が適切な範囲を満たしていれば、美容用貼付材1として十分な機能を発揮できるため好ましい。粘着剤層12の剥離力は、好ましくは0.1〜3N/10mm、より好ましくは0.2〜3N/10mmである。剥離力(粘着力)が高過ぎると、貼付部にカブレが生じ易くなったり、使用後の肌からの美容用貼付材1の剥離が困難になり易くなる。
【0063】
粘着剤層12には、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤等の各種添加剤を添加することができる。着色剤は、美容用貼付材1の色調を肌色に合わせるのに利用することができるが、損傷等のある肌の貼付部位の外観が目立たないようにするために、着色剤は、黄色系、オレンジ色系等が好ましい。この他、例えば、抗菌剤、保湿剤、美白剤、抗シワ剤、抗たるみ剤、抗くすみ剤、育毛剤、美爪剤、ビタミン類、香料等を配合して付加的な機能を付与することもできる。
【0064】
また、粘着剤層12に含有される美容成分15としては、保湿成分、エモリエント成分、肌荒れ改善成分、肌活性成分、美白成分、肌引締成分等が挙げられる。これらの美容成分15は、単独で粘着剤層12に含有させてもよく、複数種を組み合わせて含有させてもよい。
【0065】
前記保湿成分としては、例えば、ヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸、ローヤルゼリーエキス、セラミド、セリン、ユリエキス、ローズ水、ローズマリーエキス、ハトムギエキス、ハチミツ、甘草フラボノイド、エイジツエキス、シイタケエキス、ホエイ、パルミトイルオリゴペプチド、コラーゲン、グルコシルトレハロース、ガリカバラエキス、シャクヤクエキス等からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0066】
前記エモリエント成分としては、スクワラン、スクワレン、アーモンド油、アンズ核油、馬油、ブドウ種子油、オリーブ油、オレンジ油、コメヌカスフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴシン、ブドウ種子油、コメヌカ油、シアー脂、月見草油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、グレープフルーツ果皮油、ヒマワリ種子油からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0067】
前記肌荒れ改善成分としては、アラントイン、アルニカエキス、オウゴンエキス、甘草エキス、レチノール、グリチルリチン酸ジカリウム、シャクヤクエキス、セージ葉エキス、ビワ葉エキス、ローズマリーエキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0068】
前記肌活性成分としては、アスタキサンチン、イチョウ葉エキス、ウコンエキス、エーデルワイスエキス、オタネニンジンエキス、オリザノール、オリーブ葉エキス、カルニチン、カロチン、クロレラエキス、コメヌカエキス、ショウガ根エキス、ダイズエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウニンエキス、ドグダミエキス、トコフェロール、トレオニン、ハッカ油、ヒノキチオール、プロリン、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、ユーカリエキス、ユビキノン、ヨクイニンエキス、ラベンダーエキス、レイシエキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0069】
前記美白成分としては、アルブチン、アセロラエキス、ビタミンC誘導体、ユキノシタエキス、プラセンタエキス、ハイドロキノン、カミツレエキス、ソウハクヒエキス、トコトリエノール、雪見草エキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0070】
前記肌引締成分としては、クエン酸、紅茶エキス、緑茶エキス、ウーロン茶エキス、シラカバエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、レモンエキス、カミツレエキスからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0071】
また、粘着剤層12には、必要に応じて、美容成分15を粘着剤層12内により安定して維持させるための助剤等を適宜添加してもよい。
【0072】
基材層11と粘着剤層12の厚さの合計は、2〜20μmの範囲であり、好ましくは2〜15μm、より好ましくは2〜10μm、特に好ましくは2〜7μmの範囲内である。この合計厚みが2〜20μmの時は、基材層11の厚みが1〜10μmであり、粘着剤層12の厚みが1〜15μmであることが好ましい。また、前記合計厚みが2〜15μmの時は、基材層11の厚みが1〜8μmであり、粘着剤層12の厚みが1〜12μmであることが好ましい。さらにまた、前記合計厚みが2〜10μmの時は、基材層11の厚みが1〜6μmであり、粘着剤層12の厚みが1〜8μmであることが好ましい。そしてまた、前記合計厚みが2〜7μmの時は、基材層11の厚みが1〜5μmで、粘着剤層12の厚みが1〜6μmであることが好ましい。基材層11、粘着剤層12、両者の合計厚みは、ダイヤルゲージにより測定することができる。
【0073】
また、基材層11と粘着剤層12との間には、両層との密着性に優れた他の弾性体層(図示せず)を配置したり、後述するキャリア層13と基材層11との間に他の粘着剤層(図示せず)を配置したりすることもできる。
【0074】
キャリア層13は、基材層11にシワが入るのを防止すると共に、美容用貼付材1の腰を強くして、貼付部位への貼付作業を容易にすることができる。このキャリア層13は、美容用貼付材1を肌に貼付する際に、基材層11から剥離されるようになっている。このキャリア層13が配設された美容用貼付材1は、キャリア層13を支持体層として用いて、溶液キャスティング法によってポリウレタンエラストマーからなる基材層11をその上に形成することができる。
【0075】
キャリア層13は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等の各種熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いて形成することが好ましい。環境保全を目的として、キャリア層13は、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート、マルトトリオース、ポリ乳酸、ポリ乳酸系樹脂、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、デンプン脂肪酸エステル、デンプン加工樹脂、デンプンポリエステル、酢酸セルロース、キトサン等に代表される生分解性を有する各種プラスチックからなるフィルムを用いて形成することもできる。各種フィルムは、紙にラミネートされた状態のものでもよい。これらのキャリア層は、ポリウレタンエラストマー層に比べて、厚みが厚いか、腰の強いものとすることが望ましい。
【0076】
セパレータ層14は、粘着テープの技術分野において、一般に、離型紙、剥離紙、剥離ライナー等と呼ばれているものを用いる。セパレータ層14としては、例えば、表面をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、表面をシリコーン処理したポリエチレンと紙との積層体等が挙げられる。このセパレータ層14の存在により、美容用貼付材1は、個々の製品に分割して製造販売し、使用することができる。
【0077】
この構成を備えた美容用貼付材1は、セパレータ層14上に粘着剤層12を形成する一方、キャリア層13上に基材層11を形成し、次いで、セパレータ層14の粘着剤層12とキャリア層13の基材層11とを貼り合わせて製造する方法により作製することが好ましい。また、美容用貼付材1は、キャリア層13とフィルム状の基材層11とを積層する工程を含む方法によって作製してもよい。
【0078】
粘着剤層12に美容成分15を含有させる方法としては、例えば、粘着剤層12を構成する主成分であるアクリル粘着剤に、前述した任意の美容成分15を混練する方法、分散させる方法等が挙げられる。また、粘着剤層12に美容成分15を含有させるに際に、美容成分15の表面を、例えば、美容用貼付材1を肌に貼付した際に溶解する材料等でコーティングし、このコーティングがなされた美容成分15をアクリル粘着剤に混練する、あるいは分散させる等してもよい。
【0079】
また、基材層11の背面に、エンボス加工により微小な凹凸を形成する方法としては、例えば、キャリア層13上に基材層11を形成する方法を採用する場合には、キャリア層13を構成するキャリア材の表面に微細な凹凸を設けておき、その微細な凹凸を基材層11に転写することが挙げられる。キャリア材に微細な凹凸を形成するには、エンボスロールを用いた公知のエンボス加工法を採用することができる。別の方法として、キャリア材の表面をサンドブラスト処理したり、キャリア材にフィラーを含ませたりして、微細な凹凸を形成してもよい。
【0080】
一方、セパレータ層14の上に粘着剤層12を形成するには、セパレータ材上に溶液キャスティング法によってアクリル粘着剤溶液を塗布し、乾燥する方法を採用することが好ましい。
【0081】
また、本発明に係る美容用貼付材1は、図2に示すように、美容成分15を基材層11に含有させてもよい。この場合も、美容成分15は、粘着剤層12に含有させたものと同様のものを使用することができる。なお、美容成分15を基材層11に含有させた構成の美容用貼付材1は、肌に貼付した際に、美容成分15が粘着剤層12を通過して肌に浸透することになる。
【0082】
そしてまた、本発明に係る美容用貼付材1は、図3に示すように、美容成分15を基材層11及び粘着剤層12の両方に含有させてもよい。この構成の場合、美容成分15を基材層11及び粘着剤層12のいずれかに含有させた場合に比べ、美容用貼付材1に対する美容成分の含有率を増やすことができる。また、基材層11に含有されている美容成分15は、粘着剤層12に含有されている美容成分15よりも遅れて肌に浸透するため、美容成分15を、さらに継続的に肌に浸透させることができる。
【0083】
さらにまた、本発明に係る美容用貼付材1は、図4に示すように、基材層11と粘着剤層12との間に、美容成分15を含有してなる美容成分層25を介在させてもよい。この構成の場合、美容成分15は、美容用貼付材1を肌に貼付した際に、粘着剤層12を通過して肌に浸透することになる。
【0084】
前述した構成を備えた美容用貼付材1は、図5に示すように、肌の美容成分15を浸透させたい部分を覆うように貼付することで、肌を美容成分15でパックした状態を継続して維持することができるため、美容成分15を肌に効率よく浸透させることができる。また、美容成分15を肌に浸透させる効果に加え、美容用貼付材1を貼付した肌に、例えば、しみ、あざ、そばかす、毛穴、傷跡、にきび跡、熱傷跡、皮膚疾患による変色等がある場合は、これらを自然に隠すことができる。また、貼付された美容用貼付材1の上から化粧を行うことで、周囲の健常肌とより同様な外観にすることができる。
【0085】
また、本発明の美容用貼付材1は、肌の細かな凹凸(微細な溝)に適合し、貼付箇所が目立つことがなく、肌の動きに容易に追随することができ、カブレを発生し難く、化粧料や紫外線から肌を保護し、貼付状態で化粧料を適用することができる。肌の細かな凹凸に適合するとは、本発明の美容用貼付材1が皮溝等を含む肌の細かな凹凸に入り込んで、肌と同様の外観を呈することを意味する。本発明の美容用貼付材1は、基材層の背面をエンボス加工すると、基材に微少な厚薄の差が生じ、より柔軟性を示すので、皮溝や皺の中に入り込み易くなる。
【0086】
そしてまた、本発明の美容用貼付材1は、粘着剤層12が薄く、かつ、基材層11が吸水性及び透湿性に優れるため、汗が溜まったり、蒸れたりして、カブレや痒みを引き起こすことが少ない。化粧料を適用するに際し、基材層11の背面から水を施すと、ポリウレタンエラストマーからなる基材層11が柔らかくなり、肌面によりなじみ易くなる上、化粧料の乗りが良好になる。ポリウレタンエラストマーは、ガラス転移温度が低いため、体温付近の温度で柔軟性に優れており、肌面への適合性、化粧料の適用性等に優れている。
【0087】
さらにまた、本発明の美容用貼付材1は、美容成分15を肌に浸透させる効果に加え、加齢による、目尻、目の下部、口元、頬等の肌の皺またはたるみを引き伸ばし目立たなくするのに用いることができる。このような用途も、本発明の美容用貼付材1を用いた化粧方法の一部である。美容用貼付材1は、皺やたるみのある肌の部位を引っ張って皺若しくはたるみを伸ばした状態で、本発明の美容用貼付材1を貼付すると該部位に密着し、引っ張りを解くと、美容用貼付材1が皮溝や皺等の内部に入り込む状態になると推定される。その結果、美容用貼付材1は、当該肌の表面で折り畳まれたような状態となって存在し、全体の外観が平坦状に見える。このような機構によって、美容用貼付材1を皺またはたるみのある部位に貼付するだけで、皺またはたるみが少なくなるような外観が形成されると推定される。貼付後、基材層11の上から水を施すと、基材層11が吸水によって膨らむため、皺またはたるみを伸ばす効果がより大きくなる。ポリウレタンエラストマーからなる基材層11は、吸水性があるため、貼付後、水を施さなくても、経時によって体内から蒸散した水分を吸水して膨らむため、皺またはたるみを伸ばす効果が増大することが期待される。このポリウレタンエラストマーからなる基材層11の膨潤度は、厚さ75μm、大きさ100mm×100mmのポリウレタンエラストマーを水に24時間浸漬して、浸漬前後の長さを測定して、(増分の長さ)/(100mm)で、算出する。膨潤度は、1〜20%、好ましくは2〜10%である。
【0088】
また、本発明の美容用貼付材1は、肌の動きに追従して貼付中に違和感を感じさせないという特徴を有する。この特徴は、美容用貼付材1の伸び易さの程度に関連している。この伸び易さの指標として、美容用貼付材1の引張抵抗に対応する10%引張荷重を用いることができる。
【0089】
具体的には、本発明の美容用貼付材1は、日本工業規格JIS Z 0237に従って、10%引張荷重を測定したとき、縦方向及び横方向共に0.01〜1.2N/cmの範囲内の引張荷重を示すことが好ましい。この引張荷重は、縦方向及び横方向共に、0.01〜1.2N/cmが好ましく、0.01〜1.0N/cmであることがより好ましく、0.01〜0.5N/cmであることがさらに好ましく、0.01〜0.3N/cmであることが特に好ましい。
【0090】
本発明の美容用貼付材1の目立ちにくさや違和感を少なくする上で、美容用貼付材1の厚み、基材層11の厚み、及び美容用貼付材1の伸び易さが特定の関係にあることが好ましいことが見出された。例えば、美容用貼付材1または基材層11の厚みが厚ければ、人の肌の動きへの追随性が十分ではない。その一方で、美容用貼付材1が伸び易ければ、肌の動きへの追随性がよいから、美容用貼付材1または基材層11が多少厚くてもよいというように、美容用貼付材1もしくは基材層11の厚みと伸び易さとには相互関係がある。
【0091】
本発明の美容用貼付材1は、日本工業規格JIS Z 0208に従って、温度40℃及び相対湿度90%の条件下で測定したとき、1,000g/m2・24hr以上の透湿度を示すものであることが望ましい。この透湿度は、好ましくは3,000〜10,000g/m2・24hrである。
【0092】
目標とする透湿度は、美容用貼付材1を構成する基材層11や粘着剤層12の種類や厚み等を選択することにより達成することができる。この他、美容用貼付材1に微小な孔を設けることによって、透湿度を高める方法も採用することができる。
【0093】
本発明の美容用貼付材1は、基材層11、粘着剤層12、またはこれら両層が、着色剤によって黄色系の色調に着色されていることが好ましい。黄色系では、測色計によるL*a*b*表色系の測定値が、下記式1〜3
45<L*<90 ・・・1
−8<a*<12 ・・・2
20<b*<50 ・・・3
で表わされる関係を満足するように、着色剤によって黄色系の色調に着色されていることが好ましい。測色計でのL*a*b*表色系で表した測定値は、55<L*<80、−4<a*<8、及び30<b*<50の関係を満足するものであることがより好ましい。
【0094】
L*a*b*表色系では、L*値は、明るさを表す明度の程度を表す。a*値は、数値が高くなると赤色、低くなると緑色の程度を表す。b*値は、数値が高くなると黄色、低くなると青色の程度を表す。表色系の測定は、測色計(CM−3500d、ミノルタ製)を使用し、標準白板によって、基準のL*a*b*を定め、表面色を、L*a*b*表色系で表す方法によって行う。
【0095】
本発明の美容用貼付材1の各層を着色するには、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック等の各色の顔料または染料を、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することにより、所望の色調となるようにすればよい。これらの着色剤は、各層に混合して用いることができる。あるいは、これらの着色剤を含有する塗布液を、基材層に塗布して着色する方法を採用してもよい。前記L*a*b*表色系の測定値を得るには、例えば、シアン着色剤3/マゼンタ着色剤3/イエロー着色剤47(重量比)の混合物を用いる方法が挙げられる。このような混合物は、各色のインクを混合して調製してもよい。
【0096】
本発明の美容用貼付材1は、基材層11、粘着剤層12、またはこれら両層が、黄色またはオレンジ色に着色されていてもよい。測色計によるL*a*b*表色系の測定値が前記式1〜3で表わされる関係を満足するように、着色剤によって黄色(オレンジ色も含む)の色調に着色されていることによって、損傷等のある肌の貼付部位の外観が目立たない上、化粧料の適用による化粧が容易になる。一般には、黄色系の色調が好ましいが、青あざ等に対してはオレンジ色系も好ましい。
【符号の説明】
【0097】
1…美容用貼付材、 11…基材層 12…粘着剤層、 13…キャリア層、 14…セパレータ層、 15…美容成分、 25…美容成分層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、当該基材層の片面側に配設された粘着剤層を有する美容用貼付材であって、
前記基材層は、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマーを主成分とする層からなると共に、1〜10μmの厚みを有し、
前記粘着剤層は、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤を主成分とする層からなると共に、1〜15μmの厚みを有し、
前記基材層及び粘着剤層の厚さの合計が2〜20μmであり、当該基材層及び粘着剤層の少なくとも一方に美容成分を含有してなる美容用貼付材。
【請求項2】
基材層と、当該基材層の片面側に配設された粘着剤層を有する美容用貼付材であって、
前記基材層は、ガラス転移温度が0℃以下のポリウレタンエラストマーを主成分とする層からなると共に、1〜10μmの厚みを有し、
前記粘着剤層は、炭素数8〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体単位を70重量%以上の割合で含有する共重合体からなるアクリル粘着剤を主成分とする層からなると共に、1〜15μmの厚みを有し、
前記基材層及び粘着剤層の厚さの合計が2〜20μmであり、当該基材層と当該粘着剤層との間に、美容成分を含有してなる美容成分層が介在されてなる美容用貼付材。
【請求項3】
前記粘着剤層の前記基材層が配設されている面とは反対側の面に、セパレータ層が配設されてなる請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項4】
前記基材層の前記粘着剤層が配設されている面とは反対側の面に、キャリア層が配設されてなる請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項5】
前記美容成分は、保湿成分、エモリエント成分、肌荒れ改善成分、肌活性成分、美白成分、肌引締成分からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項6】
前記保湿成分は、ヒアルロン酸、アセチルヒアルロン酸、ローヤルゼリーエキス、セラミド、セリン、ユリエキス、ローズ水、ローズマリーエキス、ハトムギエキス、ハチミツ、甘草フラボノイド、エイジツエキス、シイタケエキス、ホエイ、パルミトイルオリゴペプチド、コラーゲン、グルコシルトレハロース、ガリカバラエキス、シャクヤクエキスからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項7】
前記エモリエント成分は、スクワラン、スクワレン、アーモンド油、アンズ核油、馬油、ブドウ種子油、オリーブ油、オレンジ油、コメヌカスフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴシン、ブドウ種子油、コメヌカ油、シアー脂、月見草油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、グレープフルーツ果皮油、ヒマワリ種子油からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項8】
前記肌荒れ改善成分は、アラントイン、アルニカエキス、オウゴンエキス、甘草エキス、レチノール、グリチルリチン酸ジカリウム、シャクヤクエキス、セージ葉エキス、ビワ葉エキス、ローズマリーエキスからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項9】
前記肌活性成分は、アスタキサンチン、イチョウ葉エキス、ウコンエキス、エーデルワイスエキス、オタネニンジンエキス、オリザノール、オリーブ葉エキス、カルニチン、カロチン、クロレラエキス、コメヌカエキス、ショウガ根エキス、ダイズエキス、チンピエキス、トウキエキス、トウニンエキス、ドグダミエキス、トコフェロール、トレオニン、ハッカ油、ヒノキチオール、プロリン、メリッサエキス、メリロートエキス、メントール、ユーカリエキス、ユビキノン、ヨクイニンエキス、ラベンダーエキス、レイシエキスからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項10】
前記美白成分は、アルブチン、アセロラエキス、ビタミンC誘導体、ユキノシタエキス、プラセンタエキス、ハイドロキノン、カミツレエキス、ソウハクヒエキス、トコトリエノール、雪見草エキスからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項11】
前記肌引締成分は、クエン酸、紅茶エキス、緑茶エキス、ウーロン茶エキス、シラカバエキス、ハマメリスエキス、マロニエエキス、レモンエキス、カミツレエキスからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項12】
前記ポリウレタンエラストマーは、ポリエーテル型ポリウレタンエラストマーである請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項13】
前記アクリル酸アルキルエステルは、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、及びイソノニルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のアクリル酸アルキルエステルである請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項14】
前記基材層は、前記粘着剤層が設けられていない側の面にエンボス加工が施されてなり、当該エンボス加工が施された面は、角度60度で測定した光沢度が、0.5〜7.5の範囲内に調整されてなる請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の美容用貼付材。
【請求項15】
前記基材層及び粘着剤層の少なくとも一方が、着色剤によって黄色系またはオレンジ色系の色調に着色されてなる請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の美容用貼付材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173851(P2011−173851A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40840(P2010−40840)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(510052768)有限会社KAZKIインターナショナル (2)
【Fターム(参考)】