説明

羽根駆動装置及び光学機器

【課題】外部からの衝撃による羽根の位置ずれが抑制された羽根駆動装置及び光学機器を提供する。
【解決手段】実施例1に係る羽根駆動装置1は、開口12を有すると共に摺動溝15を有する基板10と、開口12の開口量を調整する羽根20と、摺動溝15を介して電磁アクチュエータ60からの動力を羽根20へ伝達する伝達部材30とを備え、伝達部材30は、旋回する腕部材40と、摺動溝15内を移動すると共に伝達部材30に外部からの衝撃によって摺動溝15の内面に圧接する係合部材50とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラなどに採用される羽根駆動装置においては、駆動源であるアクチュエータと、そのアクチュエータの動力を伝達する伝達部材と、伝達部材によって動力が伝達される羽根とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。このようなアクチュエータは、ロータと、ロータに磁力を作用させるステータと、コイルと、コイルボビンとを備えている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−341704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、羽根駆動装置の小型化に伴い、アクチュエータも小型化している。このため、ロータのディテントトルクも小さくなる傾向にある。しかしならが、ディテントトルクが小さいと、外部からの衝撃によって、ロータが回転して、羽根が所望の位置からずれる恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、外部からの衝撃による羽根の位置ずれが抑制された羽根駆動装置及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口を有すると共に摺動溝を有する基板と、前記開口の開口量を調整する羽根と、前記摺動溝を介して駆動源からの動力を前記羽根へ伝達する伝達部材とを備え、前記伝達部材は、旋回する腕部材と、前記腕部材の旋回に連動して前記摺動溝の内面を摺動すると共に外部からの衝撃によって前記摺動溝の内面に圧接する係合部材とを含む、ことを特徴とする羽根駆動装置によって達成できる。
【0007】
外部から衝撃が加わった場合に伝達部材の係合部が摺動溝の内面に圧接して摺動抵抗となることにより、伝達部材が所望の位置からずれることを抑制できる。これにより、外部からの衝撃によって羽根の位置がずれることを抑制できる。
【0008】
上記構成において、前記係合部材は、前記腕部材と別体に設けられ、該腕部材の旋回に連動して該係合部材が前記摺動溝の内面を摺動する、構成を採用できる。係合部材が腕部材と別体に設けられ、摺動溝の内面を摺動するので、外部からの衝撃により、係合部材が確実に摺動溝の内面を圧接する。これにより、羽根の位置ずれを抑制できる。
【0009】
上記構成において、前記腕部材は、先端が二股状に形成され前記係合部材を挟持する挟持部を含み、前記係合部は、前記挟持部に挟持される突起状の被挟持部を含む、構成を採用できる。この構成により、係合部材は、確実に摺動溝の内面を摺動する。
【0010】
上記構成において、前記腕部材は、前記係合部材が前記摺動溝の内面に圧接し得るように撓む、構成を採用できる。この構成により、外部からの衝撃により、腕部材が撓んで係合部材が摺動溝の内面に圧接する。これにより羽根の位置ずれを抑制できる。
【0011】
上記構成において、前記腕部材は、旋回方向での撓みを容易にする幅狭部を含む、構成を採用できる。
【0012】
上記構成において、前記羽根は、前記係合部材に直接連結されている、構成を採用できる。
【0013】
上記構成において、前記係合部材は、前記摺動溝の内面を摺動する複数のピンを含む、構成を採用できる。
【0014】
また、上記目的は、上記の何れかに記載の羽根駆動装置を備えた光学機器によっても達成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部からの衝撃による羽根の位置ずれが抑制された羽根駆動装置及び光学機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して複数の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。図1、図2は、実施例1に係る羽根駆動装置1の斜視図である。実施例1に係る羽根駆動装置1は、開口12が形成された基板10と、開口12の開口量を絞るための絞り開口22が形成された羽根20と、伝達部材30と、電磁アクチュエータ60とを含む。尚、図1は、電磁アクチュエータ60が配置された側から見た斜視図であり、図2は、羽根20が配置された側から見た斜視図である。また、図1においては、基板10を一部切り欠いて示している。図2においては、羽根20の一部を切り欠いて示している。
【0018】
伝達部材30は、電磁アクチュエータ60からの動力を羽根20へと伝達する。具体的には、ロータ61が回転することにより、伝達部材30が旋回して、これにより羽根20が揺動する。また、伝達部材30は、詳しくは後述するが、腕部材40、係合部材50の2つの部材により構成されている。基板10には、円弧状に摺動溝15が形成されており、係合部材50は、腕部材40の旋回に連動して、摺動溝15の内面を摺動しながら摺動溝15内を移動する。
【0019】
電磁アクチュエータ60は、基板10に形成された軸16によって回動可能に支持されているロータ61、ロータ61との間で磁気的吸引力又は反発力が発生するステータ62、合成樹脂により形成されステータ62の腕部に取り付けられるコイルボビン63、コイルボビン63に巻回されてステータ62を励磁するためのコイル64を含む。また、基板10には、図2に示すように、電磁アクチュエータ60の厚みを逃がすための逃げ孔19が形成されている。
【0020】
ロータ61の回動に応じて、羽根20は、開口12から退避した位置及び臨む位置間を移動する。また、羽根20は、図2に示すように、2本の連結ピン58a、58bと直接連結されている。詳細には、羽根20に形成された2つの係合孔と係合している。尚、図2においては、他方の連結ピン58aを確認しやすいように、羽根20の一部分を切り欠いている。
【0021】
図3は、実施例1に係る羽根駆動装置1の断面図である。図4は、図1における伝達部材30付近の拡大図である。図5(A)は、腕部材40の正面図、図5(B)は、係合部材50の正面図である。前述したように、伝達部材30は、互いに合成樹脂により形成された腕部材40、係合部材50を含む。腕部材40は、円筒部41、円筒部41から径方向外側に伸びた腕部42、腕部42の先端部に二股状に形成された挟持部44を含む。円筒部41は、ロータ61と嵌合しており、これにより、腕部材40は、ロータ61と一体に旋回する。
【0022】
係合部材50は、正面から見て菱形状に形成されたベース部56と、ベース部56の一方の面に形成された被挟持ピン(被挟持部)54と、他方の面に形成された2本の連結ピン58a、58bとを含む。被挟持ピン54は、円柱状に形成されている。被挟持ピン54は、その側面を挟持部44によって挟持されている。これにより、係合部材50は、腕部材40によって支持されている。また。被挟持ピン54が円柱状に形成されていることにより、腕部材40に対して回転可能に挟持されている。連結ピン58a、58bは、摺動溝15が伸びた方向に所定の間隔をおいて並設されており、羽根20に直接連結されている。
【0023】
次に、羽根駆動装置1に外部からの衝撃が加わった場合について説明する。尚、「外部からの衝撃」とは、例えば、羽根駆動装置1が搭載された光学機器を落下させたような場合をいい、電磁アクチュエータ60の作動により羽根20や伝達部材30に作用する衝撃は含まれない。図6は、伝達部材30の機能の説明図である。尚、腕部材40については省略してある。例えば、図6に示した位置でロータ61が停止している場合に衝撃が加わった場合を想定する。電磁アクチュエータ60が作動した場合、係合部材50は挟持部44によって腕部材40の旋回に連動して摺動溝15の内面を摺動するが、上記衝撃が加わった場合、係合部材50は羽根20にかかる外力により摺動溝15の内面に圧接する構成となっている。すなわち連結ピン58a、58bは、摺動溝15の内面に圧接する。さらにその衝撃により、係合部材50には、摺動溝15内において連結ピン58a又は58bを中心として回転するように外力が作用する。羽根20の位置により回転中心は異なるが図6においては、連結ピン58aを中心とし時計方向Rに回転ように外力が作用する場合を例に示している。
【0024】
このような力が作用すると、連結ピン58bは、連結ピン58aを中心として図中Rb方向に移動しようとする。しかしながら、連結ピン58bは、摺動溝15の内面に圧接する。詳細には、連結ピン58bは、ロータ61に近い側の摺動溝15の内面に押し付けられその内面を押し広げる働きをすることになる。このように、係合部材50が連結ピン58aを中心として回転しようとすると、連結ピン58bは、摺動溝15の内面に力を及ぼすため、摺動溝15に対する連結ピン58bの摺動抵抗が増すことになる。これは、係合部材50に連結ピン58bを中心として反時計方向の外力が作用した場合も同様である。この摺動抵抗が増すことによって、係合部材50に外力が作用した場合であっても、係合部材50はその位置で維持されて摺動溝15内を移動することが抑制される。このようにして、外力による係合部材50の位置ずれが抑制される。従って、外部からの衝撃によって羽根20の位置がずれることが抑制される。
【0025】
尚、前述したようにロータ61が回動して係合部材50が摺動溝15内を移動するときは、連結ピン58a、58bは、摺動溝15の内面に対して摺動する。また、連結ピン58a、58bは、それぞれ円柱状に形成されているので、摺動溝15の内面との接触面積が少なく、摺動が容易となるように形成されている。
【0026】
また、羽根20の回転中心、すなわち摺動溝15の形状中心とロータ61の回転中心とは必ずしも一致しなくてもよい。電磁アクチュエータ60の配置スペースの都合により各中心位置が異なるよう配置してもよく、また羽根20の形状や衝撃特性に合わせて中心位置の関係を決定することができる。具体的には、図6に示すように、連結ピン58a、58b間の距離Laが同じであれば、羽根が比較的大きい駆動装置の場合、すなわち外部からの衝撃により摺動溝15内において連結ピン58a又は58bを中心として回転しようとする外力が大きい場合には、羽根が比較的小さい駆動装置の場合よりも、摺動溝15の形状中心からの距離Lbを大きくして耐衝撃特性を改善することができる。
【実施例2】
【0027】
次に、実施例2に係る羽根駆動装置1Aについて説明する。尚、実施例1に係る羽根駆動装置1と同様な部分は、同様の符号を付することによりその説明を省略する。図7は、実施例2に係る羽根駆動装置1Aの斜視図であり、図8は、実施例2に係る羽根駆動装置の断面図、図9は、実施例2に係る羽根駆動装置1Aの伝達部材30A周辺の拡大図である。図10は、実施例2に係る羽根駆動装置1Aの伝達部材30Aの正面図である。
【0028】
伝達部材30Aは、実施例1の羽根駆動装置1に係る伝達部材30と異なり、腕部材32と係合部材である連結ピン38a、38bが一体に形成されている。伝達部材30Aは、合成樹脂により形成され、円筒部31、円筒部31から径方向外側に伸びた腕部材32、腕部材32の先端部に形成された2本の連結ピン38a、38bを含む。連結ピン38a、38bは、羽根20と直接連結されている。詳細には、羽根20に形成された2つの係合孔と係合している。腕部材32には、その中腹部分で他の部位よりも幅が狭い幅狭部34が形成されている。幅狭部34は、幅狭部34部付近を中心にして腕部材32の先端部の旋回方向での撓みを容易にする機能を有している。
【0029】
次に、羽根駆動装置1Aに衝撃が加わった場合について説明する。図11は、実施例2に係る羽根駆動装置1Aの伝達部材30Aの機能の説明図である。図11に示した位置でロータ61が停止している場合に、羽根駆動装置1Aに衝撃が加わった場合、その衝撃により、腕部材32の先端部は、幅狭部34によって撓む。図11は、外力により腕部材32の先端部が、時計方向Rに撓もうする場合を示している。このような力が腕部材32に作用すると、連結ピン38aは、図中Raの向きにロータ61よりも離れた側の摺動溝15の内面に圧接し、連結ピン38bは、図中Rbの向きにロータ61に近い側の摺動溝15の内面に圧接する。このように、腕部材32の先端部が撓もうとすると、連結ピン38a、38bは、それぞれ相反する摺動溝15の内面に力を及ぼすため、摺動溝15に対する連結ピン38a、38bの摺動抵抗が増す。これにより、伝達部材30Aの位置ずれが抑制され、羽根20の位置ずれも抑制される。
【0030】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0031】
本実施例において羽根20は開口12の開口量を絞るための絞り開口22が形成された場合を示したが、開口12を全閉にする羽根を採用してもよい。また、羽根20の絞り開口22に透過性のフィルタを設けてもよい。
【0032】
本実施例において、羽根20と直接連結される連結ピンが2本のピンである場合を示したが、係合部材と羽根20が一体となって腕部材40の旋回に連動して摺動溝15の内面を摺動するように駆動されれば、羽根20と直接連結される部分の係合部材の形状は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係る羽根駆動装置の斜視図である。
【図2】実施例1に係る羽根駆動装置の斜視図である。
【図3】実施例1に係る羽根駆動装置の断面図である。
【図4】図1における伝達部材付近の拡大図である。
【図5】腕部材と係合部材との正面図である。
【図6】伝達部材の機能の説明図である。
【図7】実施例2に係る羽根駆動装置の斜視図である。
【図8】実施例2に係る羽根駆動装置の断面図である。
【図9】実施例2に係る羽根駆動装置の伝達部材周辺の拡大図である。
【図10】実施例2に係る羽根駆動装置の伝達部材の正面図である。
【図11】実施例2に係る羽根駆動装置の伝達部材の機能の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10 基板
12 開口
15 摺動溝
20 羽根
22 絞り開口
30、30A 伝達部材
31、41 円筒部
32、42 腕部
34 幅狭部
38a、38b、58a、58b 連結ピン
40 腕部材
44 挟持部
50 係合部材
54 被挟持ピン
56 ベース部
60 電磁アクチュエータ
61 ロータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有すると共に摺動溝を有する基板と、
前記開口の開口量を調整する羽根と、
前記摺動溝を介して駆動源からの動力を前記羽根へ伝達する伝達部材とを備え、
前記伝達部材は、旋回する腕部材と、前記腕部材の旋回に連動して前記摺動溝の内面を摺動すると共に外部から衝撃によって前記摺動溝の内面に圧接する係合部材とを含む、ことを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
前記係合部材は、前記腕部材と別体に設けられ、該腕部材の旋回に連動して該係合部材が前記摺動溝の内面を摺動する、ことを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記腕部材は、先端が二股状に形成され前記係合部材を挟持する挟持部を含み、
前記係合部材は、前記挟持部に挟持される突起状の被挟持部を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記腕部材は、前記係合部材が前記摺動溝の内面に圧接し得るように撓む、ことを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置
【請求項5】
前記腕部材は、旋回方向での撓みを容易にする幅狭部を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記羽根は、前記係合部材に直接連結されている、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
前記係合部材は、前記摺動溝の内面を摺動する複数のピンを含む、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の羽根駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の羽根駆動装置を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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