説明

羽毛搬送装置及び羽毛選別装置

【課題】羽毛の選別を機械化し、かつ選別精度を向上させることを実現する。
【解決手段】羽毛搬送装置1は、中央部に複数の貫通孔が所定間隔に並べて形成された無端ベルト4をローラ5,6に張設させ、無端ベルト4の内側に、排気ブロア18aに連結されかつ無端ベルト4の搬送側の表面に形成された複数の貫通孔に対向する部位に溝が形成された中空の角筒材7を配置している。羽毛搬送装置1は、羽毛搬送部2を、羽毛Fを収納する羽毛供給部3に設置し、無端ベルト4をエンドレス移動させるとともに排気ブロア18aに角筒材7内の空気を排出させることによって溝に対向する貫通孔に吸引力を発生させ、羽毛供給部3の羽毛Fを無端ベルト4の貫通孔に吸着させて収容室11の外に搬送させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽毛をダウン、フェザー、ファイバー等に選別する羽毛選別装置、及び羽毛選別装置に適用され、羽毛を搬送する羽毛搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛は、かなり以前から寝具や衣料などの羽毛製品の詰め物として用いられており、ダウン、フェザー及びファイバーの3種類に大別されている。ここで、ダウンは、水鳥の胸部に密生し、羽軸がなくタンポポの種子の綿毛のような形状をしている羽毛である。フェザーは、水鳥の腹部や翼の部分に生えている羽軸を持った羽毛である。ファイバーは、ダウンファイバーとフェザーファイバーとに分けられる。ダウンファイバー及びフェザーファイバーは、それぞれ、ダウン及びフェザーから羽軸を分離した羽枝である。ダウンファイバー及びフェザーファイバーは、それぞれ、1本の状態まで完全に分離されている。
【0003】
羽毛を用いる羽毛製品の値段は、羽毛の混合比率によって決定されている。したがって、羽毛の混合比率は、羽毛が市場で取引される際に、検査される。羽毛の混合比率の検査は、予め決められており、検査される羽毛から3gの試料を取り出す取出ステップと、取り出された試料から羽毛の種類(ダウン、フェザー、ファイバー)を選別する選別ステップと、選別された羽毛の種類の比率を求める測定ステップとを行う。なお、羽毛の混合比率は、重量比で決定される。
【0004】
現在においても、選別作業は手作業によって行われている。しかし、選別作業は、手作業で行うので、多くの作業時間を要し、この結果、必要な人件費は多額になるという問題がある。また、混合比率の精度は、選別作業を行う作業者の熟練度に応じて異なるという問題がある。このような問題を解決するため、現在、羽毛の選別の機械化が望まれている。
【0005】
そこで、従来、風力を利用して羽毛を選別する風力選別装置が使用されている。例えば、風力選別装置は、試料を収容した収容ボックスとこれに隣接するように水平方向に並べて配置された3つの選別ボックスとを有し、送風機から吹き出される風によって収容ボックスの羽毛を選別ボックスの上方に吹き飛ばす。
【0006】
吹き飛ばされた羽毛は、これらの空気抵抗、質量(浮力)の違いに応じて吹き飛ばされる距離が異なるので、羽毛の質量に応じた選別ボックスに落下する。このようにして、風力選別装置は羽毛の種類を選別する。つまり、羽毛のうち、一番遠くに配置された選別ボックスに最も軽いダウンが落下し、その手前の選別ボックスにフェザーが落下し、もっとも手前の選別ボックスに大きなフェザーが落下する。このように、従来の風力選別装置は、一般的に、羽毛の空気の抵抗及び浮力並びに質量の差を利用して選別する。
【0007】
また、特許文献1には、収容ボックスの内部の空気をイオン化させるイオン化ステップと、イオン化された空気により収容ボックスの羽毛のうちダウンを生来の姿形に復元させて、浮上させるダウン浮上ステップと、浮上させたダウンを吸引装置によって吸引、回収する回収ステップとを実行するイオン化選別装置が記載されている。これにより、羽毛からダウンを選別することができる。
【0008】
特許文献2には、その羽毛が回収ボックスに向かって飛ばされる方向とほぼ同じ方向の気流を噴射させて、エアカーテンを形成させる噴射装置を有する噴射選別装置が記載されている。このエアカーテンの気流により、羽毛のうち、空気抵抗の少ない、比重の軽いダウンを効率よく選別することができる。
【特許文献1】特開昭61−54263号公報
【特許文献2】特開昭61−125379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、発明者は、風力を利用して羽毛を選別する風力選別装置、すなわち、羽毛の空気抵抗と浮力との差を利用して羽毛の選別をする風力選別装置の有効性について検討した。発明者は、実験で、表1に示す10種類の羽毛(ダウン(大、中、小)、類似ダウン(大きめ、小さめ)、スモールフェザー(大、中、小)、スモールフェザー幹羽軸固め、ダウンファイバー)についてこれらが浮上するときの風速を測定し、これらの風速に差が生じるか否かを調べた。
【0010】
測定に用いた実験装置は、上下面に開口を有する筒状の四角柱と、この四角柱の下部に、上部に向かって気流を生じさせるDCファンとを有する。測定は、DCファンを低速回転から高速回転に順次作動させて、四角柱内に入れられた羽毛が上昇し始めるときのDCファンに印加された電圧を測定した。なお、風速はDCファンに印加される電圧に応じて変えられるようになっており、電圧と風速の関係は、熱流速計を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0011】
【表1】

【0012】
表1に示すように、ダウン小とダウンファイバーとが上昇する風速は他の羽毛が上昇する風速に比べて顕著な差があるので、風力選別装置は、ダウン小及びダウンファイバーとそれら以外の羽毛とを有効に選別することができる。しかし、測定結果によれば、ダウンを浮上させるために必要な風速とフェザーを浮上させるために必要な風速とは、ほとんど差がない。そのため、風力選別装置は、風速を変化させて羽毛からダウンとフェザーとを正確に選別することができないという問題を有する。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決し、羽毛を選別する作業を機械化し、かつ、選別作業の精度を向上させる羽毛選別装置及びその羽毛選別装置に適用する羽毛搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は、前記目的を達成するため、羽毛の選別作業の内容に着目して、以下の発明をした。具体的には、羽毛の選別作業は、作業者が試料から1つ羽毛を取り出す取出作業と、作業者の目視による羽毛の種類を特定する認識作業とをしているので、発明者は、取出作業の代わりにベルトに設けた複数の孔のそれぞれに羽毛を吸着させ、認識作業の代わりに、吸着された羽毛を画像認識で選別する羽毛選別装置及びその羽毛選別装置に適用する羽毛搬送装置を発明した。
【0015】
(1) これのエッジが伸びる方向に平行な方向に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有する無端ベルトと、前記無端ベルトを張設させる少なくとも2つのローラと、前記ローラの少なくとも1つのローラを回転させる駆動部と、前記無端ベルトの下側走行領域の下側に隙間を置いて配置され、前記下側走行領域の一部分に供給される複数の羽毛が収納された羽毛供給部と、前記下側走行領域に隣接する隣接面を有し、該隣接面において前記貫通孔に対向する部分に、前記貫通孔の整列方向に伸びるとともに内部に貫通する溝が形成された中空部材と、前記中空部材に連結し、前記中空部材内の空気を外部に排出させるエア排出部と、を備え、各貫通孔は、前記羽毛のいずれよりも小さく、前記羽毛供給部は、前記羽毛のうちの一部の複数の羽毛を前記下側走行領域に吹き上げさせる吹上器を有し、前記中空部材は、前記無端ベルトの内側に設けられ、前記下側走行領域の内側に近接又は当接し、前記貫通孔のうち前記下側走行領域の貫通孔は、前記溝の開口に位置し、前記エア排出部は、前記貫通孔のうち前記下側走行領域に位置する貫通孔から前記溝を介して空気を吸引して、吹き上げられた羽毛のうちの少なくとも1つを貫通孔に保持させることを特徴とする羽毛搬送装置。
【0016】
(1)の発明は、無端ベルトに、羽毛供給部に格納された羽毛のいずれの羽毛の大きさよりも小さい複数の貫通孔を形成している。このため、エア排出部が中空部材の内部の空気を排出することにより、無端ベルトは、下側走行領域の近傍に吹き上げられた羽毛のそれぞれを確実に各貫通孔に吸着させて、1つの貫通孔に対して少なくとも1つの羽毛を保持する。
【0017】
また、吸着された羽毛は、貫通孔を塞ぐので、羽毛を吸着した貫通孔は、他の羽毛を吸着しにくくなる。このために、複数の羽毛を同時に保持することがほとんどないので、1つの貫通孔は、羽毛供給部に格納されていた複数の羽毛のうち1つの羽毛を吸着することができる。
【0018】
(2) 前記ローラは、前記下側走行領域が水平になるように配置されている(1)に記載の羽毛搬送装置。
【0019】
(2)の発明は、下側走行領域が水平になるように配置されているので、下側走行領域は羽毛を吹き上げる方向に直角の方向になるように配置されている。このため、エア排出部によって下側走行領域にある貫通孔から吸い込まれる空気の流れる方向と、吹き上げられる羽毛の移動方向とがほぼ一致するので、無端ベルトは吹き上げられた羽毛を保持しやすい。
【0020】
(3) 前記羽毛供給部は、前記羽毛を飛散させることができる状態で収納する収容室と、該収納室の下側に配置され、前記無端ベルトに向けて羽毛を吹き上げる空気を噴射するエア噴射器と、を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の羽毛搬送装置。
【0021】
(3)の発明は、羽毛を飛散させることができる状態で収納する収容室を有するので、エア噴射器によって羽毛を収容室で飛散させることができる。これにより、収容室に格納された複数の羽毛は、無端ベルトの貫通孔に吸着される前に、互いに分離されるので、複数の羽毛が各貫通孔に同時に吸着されにくくすることができる。
【0022】
(4) 前記収容室には、開口部が形成されており、前記無端ベルトは、前記開口部を介して、前記無端ベルトの一部分が前記収容室の内部に配置され、前記下側走行領域において前記無端ベルトの一部分の下流側の部分が前記収容室の外部に配置された(3)に記載の羽毛搬送装置。
【0023】
(4)の発明は、下側走行領域において無端ベルトの一部分の下流側の部分が収容室の外部に配置されているので、無端ベルトに保持された羽毛は、収容室の外に搬出される。このため、各羽毛を収容室の外で選別することができる。
【0024】
(5) 前記開口部に、前記下側走行領域に保持された羽毛の近傍に空気を吹き付けるエア吹付部を備えたことを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の羽毛搬送装置。
【0025】
(5)の発明は、下側走行領域に保持された羽毛の近傍に空気を吹き付けるエア吹付部を開口部に備えているので、吹き上げられた羽毛が開口部から羽毛供給部の外に飛散することを防止することができる。
【0026】
(6) 前記エア吹付部は、前記下側走行領域の移動方向の反対の方向に空気を吹き付けることを特徴とする(5)に記載の羽毛搬送装置。
【0027】
(6)の発明は、エア吹付部が下側走行領域の移動方向の反対の方向に空気を吹き付けるので、1つの貫通孔に吸着された複数の羽毛のうち、もっとも吸着されている羽毛以外の羽毛を、エア吹付部から噴射される空気によって形成される気流によって羽毛供給部に還元させることができる。
【0028】
(7) 前記開口部及び前記中空部材に配置され、前記貫通孔に保持された余剰の羽毛を除去する羽毛除去部を備え、前記羽毛除去部は、前記中空部材側に側部によって開口を形成している凹部を有するケース体であり、前記無端ベルトの下側走行領域は、前記中空部材と前記凹部の開口とによって形成された隙間内に配置され、前記凹部は、これの底部に隣接し、前記下側走行領域の上流の方向に開口するスリットを有し、前記エア吹付部は、これの先端が前記スリットに向くように、前記底部に配置されている(1)から(6)のいずれかに記載の羽毛搬送装置。
【0029】
(7)の発明は、エア吹付部が凹部に形成されたスリットに向くように、凹部の底部に配置されているので、エア吹付部から噴射された空気はスリットから凹部の外に噴射される。このとき、凹部内の空気の一部は、エア吹付部から噴射される空気と共に凹部の外に流れる。したがって、凹部内の気圧が減圧されるので、中空部材と凹部の開口とによって形成された隙間から空気が入り込む。中空部材と凹部の開口との間には、無端ベルトの下流走行領域が配置されているので、無端ベルトに保持された複数の羽毛のうち、もっとも強く無端ベルトの貫通孔に吸着された羽毛以外の羽毛を凹部の中に吸い込む。そして、吸い込まれた羽毛は、エア吹付部から噴射される空気と共に、スリットから凹部の外へ噴射され、羽毛供給部に回収される。
【0030】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の羽毛搬送装置と、前記無端ベルトに保持された羽毛を識別する識別装置と、を備えたことを特徴とする羽毛選別装置。
【0031】
(8)の発明は、無端ベルトに保持された羽毛を識別する識別装置を備えているので、無端ベルトに保持された羽毛の種類を自動で識別することができる。これにより、従来行われていた、目視による識別を省略することができるので、識別精度が作業者の能力に依存しなくなる。
【0032】
また、羽毛が所定の間隔をおいて無端ベルトの貫通孔に保持されて搬送されるため、貫通孔に保持された羽毛の判別作業や回収作業のタイミングを取ることが容易になる。さらに、羽毛が保持された貫通孔には、他の羽毛が吸着されにくくなるために、1つの貫通孔に複数の羽毛を同時に保持しにくくなる。また、無端ベルトの貫通孔に吸着された羽毛の形状が安定するので、画像認識処理によって吸着された羽毛の種類を判別し、判別に基づいて容易に吸着された羽毛を回収する選別装置に対して最適な搬送装置を提供することができる。
【0033】
(9) 前記識別装置は、前記無端ベルトが保持する羽毛を撮影する撮影部と、該撮影部が撮影した画像を処理して、撮影された羽毛の種類を判別する画像処理部と、を有することを特徴とする(8)に記載の羽毛選別装置。
【0034】
このような構成により、精度の高い羽毛選別が可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、複数の羽毛からなる試料から1つの羽毛を分離した状態で画像処理部に搬送することが可能になるので、選別作業は機械化され、選別の作業効率が向上する。また、画像認識によって羽毛の種類を判別するため、高い精度で選別をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の羽毛搬送装置の概略構成を示す模式図である。図2は、図1に示す羽毛搬送装置の部分拡大斜視図である。図3は、図1に示す羽毛搬送装置を底部から見た部分拡大斜視図である。図4は、図1に示す羽毛搬送装置の一部拡大図である。
【0038】
羽毛搬送装置1は、羽毛Fを保持しかつ搬送する羽毛搬送部2と、羽毛搬送部2に羽毛を供給する羽毛供給部3とを備える。
【0039】
<羽毛搬送部>
羽毛搬送部2は、無端ベルト4と、無端ベルト4を張設させる駆動側ローラ5及び従動側ローラ6と、駆動側ローラ5を回転させる駆動部10とを備える。つまり、羽毛搬送部2は、羽毛Fを搬送させる無端ベルトコンベア方式の搬送部である。
【0040】
無端ベルト4は、これのエッジe(図2参照)が伸びる方向に平行な方向に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の貫通孔4aを有する。すなわち、無端ベルト4の中央には、無端ベルト4の移動方向、換言すれば、駆動側ローラ5の回転軸に対して直角方向に等間隔に並んだ複数の貫通孔4aが形成されている。無端ベルト4は、所定の張力を付与された状態で、駆動側ローラ5と従動ローラ6とに架けられる。
【0041】
なお、本明細書では、駆動側ローラ5と従動側ローラ6との間の無端ベルト4のうち下側の無端ベルト4の領域を下側走行領域と称する。また、駆動側ローラ5と従動側ローラ6との間の無端ベルト4のうち上側の無端ベルト4の領域を上側走行領域と称する。
【0042】
駆動側ローラ5と従動側ローラ6との間には、横断面が矩形状の角筒材7が配置されている。具体的には、角筒材7は、無端ベルト4の下側走行領域に当接又は近接するように、無端ベルト4の内側に配置されている。図2に示すように、角筒材7は、この内部に空間Sを形成している。また、角筒剤7の長手方向の両端部は、気密状に塞がれている。したがって、角筒材7は中空部材として作用する。
【0043】
角筒材7において従動側ローラ6の軸線方向に直角の一方の側面に、空間Sに連通する排気口7bが形成されている。排気口7bは、後述する支持体9の近傍に形成されており、排気口7bには、排気ブロア18aが気密的に配置されている。
【0044】
角筒材7は、下側走行領域に隣接している隣接面7c(図3参照)において、貫通孔4aに対向する部分に、貫通孔4aの整列方向に伸び、角筒材7の内部の空間Sに貫通する溝7aが形成されている。
【0045】
図1に示すように、角筒材7の一端には、駆動側ローラ5を支持する支持体8,8が備えられている。支持体8,8は、駆動側ローラ5の両端を支持する軸受け(図示せず)を有している。支持体8の一方には駆動側ローラ5を回転駆動させる駆動部10が設置されている。駆動部10の出力軸は、駆動側ローラ5に相対的回転不能に接続されている。駆動部10としては、例えば、直流モータや、ステッピングモータが採用される。
【0046】
図3に示すように、角筒材7の長手方向の他端部には、支持体9,9が固定されている。支持体9,9は従動側ローラ6の両端を支持する軸受けBを有している。
【0047】
駆動部10は、駆動側ローラ5を回転駆動させることにより、無端ベルト4を循環移動させる。図示の例では、駆動側ローラ5は図1において反時計方向CCWに回転される。駆動側ローラ5が回転させることにより、無端ベルト4は、駆動側ローラ5から角筒材7の下側つまり隣接面7cの近傍を通って従動側ローラ6に移動させ、また、従動側ローラ6から角筒材7の上側を通って駆動側ローラ5に移動させる。このとき、下側走行領域にある複数の貫通孔4aは、溝7a上を移動する。
【0048】
<羽毛供給部>
羽毛供給部3は、無端ベルト4の下側走行領域の下側に隙間を置いて配置されている。羽毛供給部3には、下側走行領域の一部分B1に供給される複数の羽毛Fが収納されている。
【0049】
羽毛供給部3は、羽毛Fを収納する円筒形の収納室11と、収納室11の内部に羽毛Fを吹き上げるための空気を供給するエア噴射器12とを備える。
【0050】
エア噴射器12には、吸気口13a及び排気口13bが形成されたケース体13と、ケース体13の内部に設置された2つのファン14と、排気口13bに設置されかつ羽毛Fよりも小さい複数の孔が形成されたカバー15とが備えられている。ファン14は、これが作動することにより、排気口13bから排気された空気がカバー15の下側から上側に流れるように、ケース体13に取り付けられている。
【0051】
収納室11の対向する側面には、それぞれ、開口部11a,11bが形成されている。開口部11aは、無端ベルト4の下側走行領域の移動方向における上流側に位置し、開口部11bは、無端ベルト4の下側走行領域の移動方向における下流側に位置する。
【0052】
羽毛搬送部2は、無端ベルト4及び角筒材7が両開口部11a,11bを貫くように、収納室11に取り付けられている。したがって、無端ベルト4の下側走行領域の一部B1及び上側走行領域の一部は収納室11の内部に配置され、また、駆動側ローラ5及び従動側ローラ6は収納室11の両側に配置される。
【0053】
また、エア噴射器12は、無端ベルト4の下側走行領域がエア噴射器12に対向するように、収納室11における無端ベルト4及び角筒材7の下方に設置される。そのため、エア噴射器12から供給された空気は、排気ブロア18aの作動により、下側走行領域の一部分B1の貫通孔4a及び排気口7bを通って収納室11の外に排気される。
【0054】
図4に示すように、羽毛除去部17は、開口部11b及び角筒材7の隣接面7cに配置されている。羽毛除去部17は、貫通孔4aに保持された余剰の羽毛Fを除去し、かつ、収納室11内に吹き上げられ、無端ベルト4に保持されていない羽毛Fが開口11bから収容室11の外に出ることを防止する。羽毛除去部17は、角筒材7側すなわち直方体の上部が開口している凹部17aを有する。無端ベルト4の下側走行領域は、直方体7の隣接面7cと凹部17aの側部17cとによって形成された隙間17b内に配置されている。
【0055】
凹部17aは、これの底部17dに隣接し、下側走行領域の移動方向に対して反対の方向に開口するスリット17eを有する。チューブ16は、これの先端16aがスリット17eに向くように、底部17dに配置されている。したがって、チューブ16の先端16aが羽毛除去部17に無端ベルト4の搬送方向に対して反対の方向に向けて固定されている。
【0056】
チューブ16には、飛散防止ブロア18bから供給された空気は、チューブ16から無端ベルト4の移動方向に対して反対の方向に噴射されるように、飛散防止ブロア18bが連結されている。
【0057】
ところで、無端ベルト4に吸着された羽毛Fが羽毛除去部17を通過する際に吹き飛ばされないようにするため、隙間17bの付近をできるだけ無風状態することが望ましい。そこで、チューブ16は、チューブ16から噴射された空気が直接的に無端ベルト4に吸着された羽毛Fに当たらないように、凹部17aの底部17dに配置されている。つまり、無端ベルト4の下側走行領域とチューブ16との間は、所定間隔Wだけ離れている。
【0058】
ここで、無端ベルト4の貫通孔4aに吸着された複数の羽毛Fのうち、余分な羽毛Fを吹き飛ばすためには、羽毛除去部17を通過する前の余分な羽毛Fに、所定の風すなわち空気の流れを与える必要がある。そのため、スリット17eから噴射される空気を拡散噴射させて羽毛Fに当たるように、間隔Wを調節することが望ましい。
【0059】
次に、本実施形態の羽毛搬送装置1による羽毛の搬送動作について説明する。
【0060】
<羽毛搬送装置の動作>
モータ10を作動させることにより、無端ベルト4が駆動側ローラ5及び従動側ローラ6を循環移動する。このとき、下側走行領域にある貫通孔4aが、いずれも、角筒材7の溝7aが開口している位置にあるように、無端ベルト4は隣接面7cに接触しながら移動する。
【0061】
収納室11に3gの羽毛Fを試料として供給する。羽毛Fを供給した後に、ファン14を作動させることにより、吸気口13aから排気口13b及びカバー15の孔15aを介して収納室11に供給される気流が形成される。羽毛Fはファン14ひいてはカバー15の孔15aから吹き出される風によって上方に吹き飛ばされる。上方に吹き飛ばされた複数の羽毛Fは、空気抵抗により、互いに分離される。
【0062】
また、排気ブロア18aを作動させることにより、排気ブロア18aは空間S内の空気を吸引し、吸引された空気を角筒材7ひいては収容室11の外に排出する。そのため、空間Sの気圧が減圧するから溝7aから空間Sに空気が入り込む。これにより、溝7aは隣接する無端ベルト4の下流走行領域を隣接面7cに密着するように、無端ベルト4を吸引する。さらに、下流走行領域の下側にある空気が下流走行領域の貫通孔4a及び溝7aを通って空間Sに流れる空気流が発生する。つまり、排気ブロア18aが作動すると、空間S内にある空気が排気されるので、溝7a及び下側走行領域の貫通孔4aを介して羽毛供給部3の空気を吸い込む。
【0063】
したがって、ファン14によって飛ばされ、互いに分離された羽毛Fは、無端ベルト4の貫通孔4aに吸着される。
【0064】
無端ベルト4は、駆動側ローラ5の回転により開口部11bを通って従動側ローラ6に向けて移動している。また、下側走行領域の貫通孔4aは、溝7aの開口に位置しているので、貫通孔4aに吸着された羽毛Fは、これが吸着された状態を維持しながら、無端ベルト4の移動によって開口部11bを介して収容室11の外部に搬送される。
【0065】
ここで、複数の羽毛Fが1つの貫通孔4aに吸着している場合や貫通孔4aへの吸着が不十分な羽毛Fは、羽毛除去部17のスリット17eから、無端ベルト4の下側走行領域の移動方向に対して反対の方向に噴射される空気によって除去され、収納室11に戻される。なお、隙間17bにおける空気の動きすなわち隙間17bにおける風速はほぼ零になっているので、無端ベルト4に吸着している羽毛Fが羽毛除去部17を通過しても殆ど吹き飛ばされない。
【0066】
また、ファン14によって飛ばされた羽毛Fうち、開口部11a,11bから収容室11の外に出ようとする羽毛Fがある場合、例えば、開口部11aと無端ベルト4の上側走行領域及び下側走行領域とが形成する隙間や、開口部11bと無端ベルト4の上側走行領域が形成する隙間には、可撓性部材を収容室11に取り付けて、開口部11a,11bの開口量を小さくする。
【0067】
なお、羽毛Fが無端ベルト4の下側走行領域と開口部11bとが形成する隙間から収容室11の外に出そうになっても、羽毛除去部17のスリット17eから噴射される空気によって、収容室11の外へ飛散しようとする羽毛Fが収納室11に戻される。
【0068】
羽毛搬送部2によって羽毛供給部3の外部に搬送された羽毛Fは、後述する撮影装置20に向かって搬送され、撮影装置20によって羽毛Fの画像が取り込まれる。取り込まれた画像は画像認識処理を施して、羽毛Fの種類が判定される。そして、羽毛Fは回収装置23によって回収される。回収された羽毛Fはこれの種類の選別の結果に基づいて、所定の選別容器に移動させられる。これにより、羽毛Fは、これの種類に応じて、選別される。
【0069】
回収装置23は、予め設定された羽毛の種類の他に、選別不可能と判定された場合に回収させる選別不可能容器を有してもよい。又は、回収装置23は、回収ブロア18cに連結された吸引ポートを羽毛Fの種類の数だけ用意し、羽毛の判別結果に基づいて所望の吸引ポートに切り換えて、羽毛を回収する構成にしてもよい。
【0070】
<羽毛選別装置>
図5は、図1に示す羽毛搬送装置1を備えた羽毛選別装置30の構成を示すブロック図である。羽毛選別装置30は、羽毛搬送装置1と、撮像装置20と、画像処理装置21と、ホストコンピュータ22とを備える。
【0071】
撮像装置20は、収容室11の開口部11bより下流に配置されている。この撮像装置20によって撮影された羽毛Fの画像データは画像処理装置21に送られる。撮像装置20としては、例えば、CCDカメラが採用される。
【0072】
画像処理装置21は、撮像装置20から出力される画像データを受信する画像入力部21aと、画像データのノイズを除去及び正規化などの処理を行う前処理部21bと、羽毛Fの識別に必要となる本質的な特徴を抽出する特徴抽出部21cと、羽毛Fの識別のための参照用のモデルパターンが記憶されているメモリ部21dと、モデルパターンと特徴抽出部21cによる抽出パターンとを比較して羽毛Fをダウン又はフェザーに識別する識別部21eと、識別結果に基づいて選別データを出力する出力部21fとを有している。
【0073】
画像処理装置21から出力される選別データは、ホストコンピュータ22に送信される。ホストコンピュータ22は、受信した選別データに基づいて、飛散防止ブロア18b及び回収装置23を駆動制御する。ホストコンピュータ22は、無端ベルト4の貫通孔4aに吸着されている羽毛Fを、回収装置23によって吸引させて回収させるとともに、回収した羽毛Fを、これの蓄積先を選別データに基づいて決定された所定の選別容器(図示せず)に搬送される。その結果、羽毛Fの選別が機械的に行われる。
【0074】
ホストコンピュータ22は、これから信号を出力して、ファン14、角筒材7の排気口7bに連結される排気ブロア18a、チューブ16に連結される飛散防止ブロア18bを制御する。
【0075】
<駆動電圧と流速との関係>
図6は、ブロア18a,18b,18cに印加する駆動電圧Eと流速vとの関係を示すグラフである。ブロア18a,18b,18cに印加する電圧Eが上昇すれば流速vも速くなる関係にある。そのため、ホストコンピュータ22からの命令に応じてブロア18a,18b,18cの駆動電圧Eを変えることによって、流速vを変えることができる。例えば、排気ブロア18aの駆動電圧Eを制御することにより、貫通孔4aにおける羽毛Fの吸着力が制御される。
【0076】
<排気ブロアの設定>
貫通孔4aの径が大きい場合、羽毛Fが貫通孔4aに入り込みすぎてしまうことがある。他方、貫通孔4aの径が小さい場合、羽毛Fを保持するための吸着力が得られないことがある。
【0077】
図5に示すように、羽毛Fが無端ベルト4の貫通孔4aに吸着された羽毛Fは、画像認識によって羽毛Fの形状が整っており、その種類を識別することができる程度に、保持されていることが望ましい。
【0078】
そこで、貫通孔4aは、ファイバーが入り込まないように、0.3mmの直径にすることが好ましい。また、無端ベルト4の移動速度は0.09m/sに設定されており、貫通孔4aは50mmの間隔で無端ベルト4に形成されている。また、羽毛除去部17においてスリット17eの大きさは縦7mm×横40mm、隙間17bの大きさは縦5mm×横40mm、間隔Wの大きさは21mmにそれぞれ設定されている。また、排気ブロア18aの設計仕様を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
発明者は、表2に示す設計仕様の排気ブロア18aを用いて、羽毛Fの吸着力の安定性を測定した。測定は、排気ブロア18aから送られる空気の流速vが変化するように、排気ブロア18aを駆動させて行われた。測定の結果、直径0.3mmの貫通孔4aにおける吸引圧が8.15kPaにあるとき、羽毛Fの吸着力が安定した。
【0081】
<識別装置の有効性の検証>
次に、発明者は、以下に示す手順で、撮像装置20によって撮影された貫通孔4aに吸着した100サンプルの羽毛Fの画像の認識可能率と、ファン14に印加する電圧Eとの関係を調べた。ファン14に入力した電圧Eは、0,35,40,50,60Vである。なお、試験試料にはダウン80%、その他15%の羽毛を使用した。より具体的には、試験試料は、ダウン、スモールフェザー、ラージフェザー、水鳥の損傷フェザー、陸鳥フェザー、ダウンファイバー、フェザーファイバー及びきょう雑物からなる組成成分の羽毛を用いた。
【0082】
検査の対象となった羽毛製品から2つの試験試料を採取する。各試験試料は3gの質量の羽毛からなる。試験作業者は各試験試料について以下の第1次選別及び第2次選別を行い、組成混合率の算出を行う。
【0083】
(第1次選別)
(1)フェザーの採取及びその種類毎の分別
試験作業者は、各試験試料から複数のフェザーを採取する。試験作業者は、採取された各フェザーの元羽軸をピンセットで挟み、挟んだフェザーを試験作業者の親指の腹と人差し指の腹とで軽くブラッシングして、挟んだフェザーをこれに付着しているダウンファイバー及びフェザーファイバーを取り除く。そして、挟まれたフェザーは、試験作業者の目視により、スモールフェザー、ラージフェザー、損傷フェザー及び陸鳥フェザーのいずれかの種類に分類される。
【0084】
分類は、試験作業者がフェザーを複数のビーカーのいずれかに入れることにより行われる。複数のビーカーのそれぞれには、スモールフェザー、ラージフェザー、損傷フェザー及び陸鳥フェザーの名称が付されている。
【0085】
(2)ダウン及びファイバーの採取
次に、試験作業者は、残った各試験試料からダウン及びファイバーをピンセットで取り出して、ダウン及びファイバー用のビーカーに入れる。
【0086】
(3)きょう雑物の採取
最後に残ったきょう雑物はきょう雑物用のビーカーに入れる。
【0087】
(4)質量の測定
採取されたスモールフェザー、ラージフェザー、損傷フェザー、陸鳥フェザー、ダウンファイバー及びフェザーファイバー並びにきょう雑物のそれぞれの質量を0.1mgの精度で測定する。
【0088】
(第2次選別)
次に、試験作業者は、1次選別で選別したダウン及びファイバーを均一に混合して混合体を得た後、その混合体の上層、中層及び下層からランダムに約0.2gの2次選別試験試料を採取する。
【0089】
試験作業者は、この2次選別試験試料からダウンとダウンファイバーとフェザーファイバーときょう雑物とを選別する。具体的には、試験作業者は、2次選別試料から1つのダウンをピンセットで挟み、2次選別試料から取り出す。取り出されたダウンは、試験作業者によって、挟まれた状態のまま、軽く4、5回振られる。これにより、ダウンに付着しているダウンファイバーは落される。
【0090】
また、試験作業者は、ダウンに突き刺さったり、からまったりしているフェザーファイバーを注意深く1つずつ抜き取る。このようにして、試験作業者は、2次選別試料からダウン、ダウンファイバー及びフェザーファイバーを、それぞれ、ダウン用、ダウンファイバー用及びフェザーファイバー用のビーカーに選別する。そして、残った2次選別試験試料はきょう雑物として、2次きょう雑物用のビーカーに採取される。それぞれの質量[mg]を求める。
【0091】
(組成混合率の算出)
試験作業者は、以下の式によって、各試験試料に対する各組成混合率[%]を求め、求めた2つの試験試料の組成混合率の平均値を小数点以下1桁まで表して、組成混合率を算出する。
【0092】
ただし、一方の試験試料のダウンの混合率と他方の試験試料のダウンの混合率との差が3%以上あった場合、試験作業者は、さらに別の2つの試験試料について上述の測定を行い、測定された別の2つの試験試料とすでに測定された2つの試験試料との平均値を求めた。
【0093】
Xa=(Wa×100)/(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)
【0094】
Xb=(Wb×100)/(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)
【0095】
Xc=(Wc×100)/(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)
【0096】
Xd=(Wd×100)/(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)
【0097】
Xe1=(Wm×Wy1×100)/{(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)×(Wx+Wy1+Wy2+Wz)}
【0098】
Xe2=(Wm×Wy2×100)/{(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)×(Wx+Wy1+Wy2+Wz)}
【0099】
Xg=(Wm×Wz×100)/{(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)×(Wx+Wy1+Wy2+Wz)}+(Wm×100)/(Wa+Wb+Wc+Wd+Wm+Wn)
【0100】
Xf=100−(X1+Xb+Xc+Xd+Xe1+Xe2+Xg)
【0101】
ここで、Waは1次選別によるスモールフェザーの質量[mg]であり、Wbは1次選別によるラージフェザーの質量[mg]であり、Wcは1次選別による損傷フェザーの質量[mg]であり、Wdは1次選別による陸鳥フェザーの質量[mg]であり、Wmは1次選別によるダウンファイバー及びフェザーファイバーの質量[mg]であり、Wnは1次選別によるきょう雑物の質量[mg]であり、Wxは2次選別によるダウンの質量[mg]であり、Wy1は2次選別によるダウンファイバーの質量[mg]であり、Wy2は2次選別によるフェザーファイバーの質量[mg]であり、Wzは2次選別によるきょう雑物の質量[mg]である。
【0102】
また、Xaはスモールフェザーの混合率[%]であり、Xbは損傷フェザーの混合率[%]であり、Xcは陸鳥フェザーの混合率[%]であり、Xe1はダウンファイバーの混合率[%]であり、Xe2はフェザーファイバーの混合率[%]であり、Xfはダウンの混合率[%]であり、Xgはきょう雑物の混合率[%]である。
【0103】
図7に測定結果を示す。図7は、羽毛の認識可能率とファン14に印可する電圧との関係を示すグラフである。ここで、画像処理装置21が画像を認識することができる状態は、次に示す状態a及びbに分類される。状態aは、1つ若しくは2つのダウン、フェザー又はファイバーが1つの貫通孔4aに保持されている状態であり、認識可能状態である。状態bは、1つ若しくは2つ以上のダウンが1つの貫通孔4aに保持されている状態であり、認識可能かもしれない状態である。両状態以外の状態は、認識不可能状態である。
【0104】
すなわち、1つの羽毛Fが1つの貫通孔4aに吸着している場合、撮像装置20は、画像処理装置21が羽毛Fの種類を選別することができる画像を得ることができる。2又は3つのダウンが1つの貫通孔4aに吸着している場合であっても、撮像装置20は、画像処理装置21が吸着された羽毛Fがダウンであることを選別することができる画像を得ることはできる。
【0105】
しかし、1つの貫通孔4aに、フェザー又はファイバーを含む複数の種類の羽毛Fが吸着されている場合には、撮像装置20は、画像処理装置21がフェザーやファイバーを識別することができる画像を得ることができない。
【0106】
図7に示す測定結果によれば、羽毛選別装置30は、ファン14を作動させない場合であっても、76%の認識可能率を有する。また、羽毛選別装置30は、これに別の公知の画像認識方法を採用することにより、86%の認識可能率を得ることができる。
【0107】
一般に、ファン14に印加する電圧が高くなるにつれて、羽毛Fの吹き上がる速度が速くなる。このため、互いにくっついていた複数の羽毛Fが上昇するとき、これら羽毛Fは、大きな空気抵抗を受けるので、そのような羽毛Fは互いに分離されて舞い上がる。したがって、1つの貫通孔4aに1つの羽毛Fが吸着されやすくなるので、ファン14に印加する電圧が高くなるにつれて、羽毛選別装置30は、高い認識可能率を有する。
【0108】
つまり、風力を上げることによって、絡み合った状態の複数の羽毛Fが舞い上がる場合、複数の羽毛Fは大きな空気抵抗を受けるので、複数の羽毛Fは互いに分離される。しかし、羽毛Fに強い風を吹き当てて、互いに分離させることには限界があるが、認識可能率を90%にすることができた。
【0109】
<試料の回収率>
また、上述の組成混合率は、選別後の合計質量を用いて、ダウン、フェザー、ファイバーなどの比率を算出しているので、羽毛の混合比率は選別後の質量比で決定される。このため、羽毛選別装置30が選別して求めた羽毛の混合比率の値の信頼性は、収容室11内に供給した羽毛の合計質量と収容室11の外に搬送した羽毛すなわち回収装置23に回収された羽毛の合計質量とが同一に近いほど、高い。
【0110】
表3に試料の回収率を求める測定結果を示す。ここで、回収率は、0.4gの試料を収容室11に供給して、羽毛選別装置30によって回収装置23に回収された羽毛の合計質量を測定して、求めた。
【0111】
【表3】

【0112】
表3に示すように、回収装置23は、約90%の試料を回収したことがわかる。このような回収率は、実用に耐えうる回収率である。試料の回収率の測定を行っている間に、羽毛が回収装置23の外部に出て行く様子は目視されなかったことから、羽毛選別装置30による羽毛の選別の後から、回収装置23による羽毛の回収までの間に、羽毛が回収装置23の外に飛散してしまったことや、静電気によって羽毛が羽毛移送装置1にくっついてしまったことが考えられる。
【0113】
そのような場合、選別装置23に羽毛Fが外部に飛散することを防止する機構を設けたり、羽毛供給部3の内部や羽毛の搬送経路に関わる部分に帯電防止剤等を塗布しておいたりすることにより、回収率を上げることできる。又は、未回収分の羽毛を別途、手作業で選別してもよい。
【0114】
また、選別作業時間を短縮するためには、貫通孔4aの数を増やしたり、あるいは無端ベルト4の速度を上げたり、貫通孔4aを複数列に配置したりしてもよい。そのようにすることにより、選別作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の羽毛搬送装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す羽毛搬送装置の部分拡大斜視図である。
【図3】図1に示す羽毛搬送装置を底部から見た部分拡大斜視図である。
【図4】図1に示す羽毛搬送装置の一部拡大図である。
【図5】図1の羽毛搬送装置を備えた羽毛選別装置の要部を示す説明図である。
【図6】ブロアの駆動電圧と流速との関係を示すグラフである。
【図7】エア供給装置の風速と画像処理による認識可能率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0116】
1…羽毛搬送装置
2…羽毛搬送部
3…羽毛供給部
4…無端ベルト
4a…貫通孔
5…駆動側ローラ
6…従動側ローラ
7…中空部材
7a…溝
7b…排気口
11…収納室
12…エア噴射器
14…ファン
16…チューブ
17…羽毛除去部
17a…凹部
17d…底部
17e…スリット
18a…排気ブロア
18b…飛散防止ブロア
18c…回収ブロア
20…撮像装置
21…画像処理装置
21a…画像入力部
21b…前処理部
21c…特徴抽出部
21d…メモリ部
21e…識別部
21f…出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
これのエッジが伸びる方向に平行な方向に沿って所定の間隔をおいて形成された複数の貫通孔を有する無端ベルトと、
前記無端ベルトを張設させる少なくとも2つのローラと、
前記ローラの少なくとも1つのローラを回転させる駆動部と、
前記無端ベルトの下側走行領域の下側に隙間を置いて配置され、前記下側走行領域の一部分に供給される複数の羽毛が収納された羽毛供給部と、
前記下側走行領域に隣接する隣接面を有し、該隣接面において前記貫通孔に対向する部分に、前記貫通孔の整列方向に伸びるとともに内部に貫通する溝が形成された中空部材と、
前記中空部材に連結し、前記中空部材内の空気を外部に排出させるエア排出部と、を備え、
各貫通孔は、前記羽毛のいずれよりも小さく、
前記羽毛供給部は、前記羽毛のうちの一部の複数の羽毛を前記下側走行領域に吹き上げさせる吹上器を有し、
前記中空部材は、前記無端ベルトの内側に設けられ、前記下側走行領域の内側に近接又は当接し、
前記貫通孔のうち前記下側走行領域の貫通孔は、前記溝の開口に位置し、
前記エア排出部は、前記貫通孔のうち前記下側走行領域に位置する貫通孔から前記溝を介して空気を吸引して、吹き上げられた羽毛のうちの少なくとも1つを貫通孔に保持させることを特徴とする羽毛搬送装置。
【請求項2】
前記ローラは、前記下側走行領域が水平になるように配置されている請求項1に記載の羽毛搬送装置。
【請求項3】
前記羽毛供給部は、前記羽毛を飛散させることができる状態で収納する収容室と、該収納室の下側に配置され、前記無端ベルトに向けて羽毛を吹き上げる空気を噴射するエア噴射器と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の羽毛搬送装置。
【請求項4】
前記収容室には、開口部が形成されており、
前記無端ベルトは、前記開口部を介して、前記無端ベルトの一部分が前記収容室の内部に配置され、前記下側走行領域において前記無端ベルトの一部分の下流側の部分が前記収容室の外部に配置された請求項3に記載の羽毛搬送装置。
【請求項5】
前記開口部に、前記下側走行領域に保持された羽毛の近傍に空気を吹き付けるエア吹付部を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の羽毛搬送装置。
【請求項6】
前記エア吹付部は、前記下側走行領域の移動方向の反対の方向に空気を吹き付けることを特徴とする請求項5に記載の羽毛搬送装置。
【請求項7】
前記開口部及び前記中空部材に配置され、前記貫通孔に保持された余剰の羽毛を除去する羽毛除去部を備え、
前記羽毛除去部は、前記中空部材側に側部によって開口を形成している凹部を有するケース体であり、
前記無端ベルトの下側走行領域は、前記中空部材と前記凹部の開口とによって形成された隙間内に配置され、
前記凹部は、これの底部に隣接し、前記下側走行領域の上流の方向に開口するスリットを有し、
前記エア吹付部は、これの先端が前記スリットに向くように、前記底部に配置されている請求項1から6のいずれかに記載の羽毛搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の羽毛搬送装置と、前記無端ベルトに保持された羽毛を識別する識別装置と、を備えたことを特徴とする羽毛選別装置。
【請求項9】
前記識別装置は、前記無端ベルトが保持する羽毛を撮影する撮影部と、該撮影部が撮影した画像を処理して、撮影された羽毛の種類を判別する画像処理部と、を有することを特徴とする請求項8に記載の羽毛選別装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−341959(P2006−341959A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169350(P2005−169350)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(501105015)財団法人科学技術振興会 (2)
【Fターム(参考)】