説明

翻訳システム及びプログラム

【課題】翻訳精度を向上させた翻訳システム及びこのプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、第1言語による文を入力する入力部と、省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、前記入力部により入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列について前記対応リストを用いて本来表現に変換する表現変換部と、前記形態素解析部で得られた単語列及び該当する場合には前記表現変換部で変換された本来表現について構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、前記構文解析部で得られた構文木を用いて第2言語への変換処理を行う変換処理部、及び構文生成部と形態素生成部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば翻訳システム及びプログラムに係り、特に機械翻訳技術を用いる翻訳システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の文書において、文の中に「○○(以下××と記す)」という記述がある場合、その××(省略表現)がそれ以降の文で使用されることになる。第一言語を第二言語に翻訳する機械翻訳システムにおいて、従来、上述××という省略表現が翻訳辞書に登録されていないか、省略前の言葉(本来表現)○○の訳語と異なる訳語で登録されていることが多い。
【0003】
これによって、翻訳結果には未知語が出力されたり、誤訳が出力されたりすることになる。これらの場合、文全体の翻訳が正しく行われず、翻訳精度の低下を招くことになる。また、この弊害を防ごうとすると、ユーザが未知語の抽出や辞書登録、誤訳の修正などの操作を行うことを余儀なくされ、作業効率の低下を招くことになる。
【0004】
より深刻には、上記の××という省略表現が未知語あるいは誤訳によって、その単語が持つ意味属性などの属性を正しく取得することができないことがある。この場合、最悪には全く別の意味属性などを持つものとして翻訳されてしまう場合があり、結果的に文の他の部分まで影響されてしまい、さらなる翻訳精度の低下につながる。
【0005】
例えば日英翻訳において、原文中に「健康管理センター(以下健管と記す)」という省略表現があるとする。このとき、「定期健康診断は、来週から健管で実施される。」を翻訳すると、「A regular health check is carried out by健管from next week.」となる。ここでは、“健管”という省略表現が未知語として訳語に出力されてしまっている。そのため、翻訳システムは“健管”が持つ“場所”という意味属性が正しく取得できず、その前置詞に“by”を用いた(正しくは”in”)訳文が出力されることになる
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、英語を母国語とする人にとっては、訳文「A regular health check is carried out by健管from next week.」にある“健管”が何であるかを知らない。さらに、前置詞“by”が使用されていることから、“健管”が人または組織と誤解釈される可能性は否定できない。したがって、原文の意味をきちんと伝えることができない。
【0007】
上述のように、第一言語内で省略表現が使用されている場合、省略表現を含む部分が正確に訳出されず、翻訳精度が低下する。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、第一言語から第二言語に翻訳する機械翻訳システムにおいて、第一言語内で省略表現が使用されている場合、その省略表現と本来表現の対応リストを作成し、そのリストを元に、
(1)翻訳を行う際、省略表現を本来表現に置き換えてから翻訳を行う、
(2)省略表現と本来表現の訳語の対を予め翻訳辞書に登録し、翻訳が終了すると削除するまたは削除しない、
ことを可能とする翻訳システム及びこのプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
本願は究極的には、翻訳精度を向上させた翻訳システム及びこのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、本発明に係る翻訳システムは、第1言語による文を入力する入力部と、省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、前記入力部により入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列について前記対応リストを用いて本来表現に変換する表現変換部と、前記形態素解析部で得られた単語列に対して構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、前記構文解析部で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る変換処理部と、前記変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する構文生成部と、前記構文生成部によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する形態素生成部とを具備する。
【0011】
かかる構成を有する本発明によれば、第一言語に省略表現(例えば日本語の場合「○○「以下××と記す」の記述」がある場合、翻訳処理を行う前に、省略表現と本来表現(省略表現の元となる表現)の対応リストを作成し、省略表現を本来表現に置き換えて翻訳を行うので、訳文生成時に省略表現による未知語または誤訳が減り、翻訳精度が高まり、文の意味をより正確に伝えることができるという本願特有の効果が奏される。
【0012】
また、本発明は、第1言語による文を入力する入力部と、省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、前記入力部により入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、前記対応リストを用いて前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列と該単語列の本来表現に対応する第2言語とを対応させて記憶する翻訳辞書記憶部と、前記形態素解析部で得られた単語列について構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、前記構文解析部で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る変換処理部と、前記変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する構文生成部と、前記構文生成部によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する形態素生成部とを具備する。
【0013】
かかる構成を有する本発明によれば、第一言語に省略表現(例えば日本語の場合「○○「以下××と記す」の記述」がある場合、翻訳処理を行う前に、省略表現を見出し語、本来表現の訳語を訳語として翻訳辞書へ登録を行ってから翻訳を行うので、訳文生成時に省略表現による未知語または誤訳が減り、翻訳精度が高まり、文の意味をより正確に伝えることができるという本願特有の効果が奏される。
【0014】
また、この場合に、前記翻訳辞書記憶部に記憶された前記単語列と該単語列の本来表現に対応する第2言語とを削除する削除部をさらに具備するように構成しても良い。
【0015】
これらの場合の入力部、省略表現検出部、形態素解析部、表現変換部、構文解析部、変換処理部、構文生成部及び形態素生成部は、それぞれの該当する機能を持つ専用チップ、専用回路、または当該機能をコンピュータに果たさせるためのソフトウェア(ツールとしてのソフトウェアも含む)、或いは該ソフトウェアを記録した記録媒体、当該記録媒体を搭載した処理装置・管理装置・ツールとして実現される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、訳文生成時に省略表現による未知語または誤訳が減り、翻訳精度が高まり、文の意味をより正確に伝えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る翻訳システム全体の機能構成を示すブロック図である。なお、以下では、本願発明の目的の達成のために説明に必要な範囲を模式的に示し、本願発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所に付いては公知技術によるものとする。
同図に示すように、本発明の一実施形態に係る翻訳システム10は、ユーザとの間で翻訳を所望する文の入出力を行うための入出力部100と、第1言語での入力文が省略された表現を持つか否かを検出し該検出された省略表現と該省略前の本来表現との対応リストを作成するための機能を有する省略表現検出部201と、第1言語での入力文について形態素を解析して単語列を得るための機能を有する形態素解析部101と、省略表現検出部201で省略表現が検出された単語列について本来表現に変換するための機能を有する表現変換部202と、形態素解析部101で得られた単語列、及び該当する場合には表現変換部202で変換された本来表現、について構文解析を行い構文木を得るための機能を有する構文解析部102と、構文解析部102で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得るための機能を有する変換処理部103と、変換処理部103で変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成するための機能を有する構文生成部104と、構文生成部104によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成するための機能を有する形態素生成部105と、全体の制御を司る制御部106とを具備して構成される。
【0018】
省略表現検出部201は、省略表現が登録されたデータベースである省略表現パターン・データベース211を参照して、上記検出された省略表現と該省略前の本来表現との対応リストを作成する。
【0019】
形態素解析部101は、言語の活用変化規則が記録されたデータベースである活用変化規則辞書111を参照して、上記第1言語での入力文について形態素を解析して単語列を得る。
【0020】
構文解析部102は、構文を解析するための規則が記録されたデータベースである構文解析規則辞書112を参照して、上記形態素解析部101で得られた単語列、及び該当する場合には表現変換部202で変換された本来表現、について構文解析を行い構文木を得る。
【0021】
変換処理部103は、第1言語と第2言語との対応が規定されたデータベースである翻訳辞書辞書212及び変換規則が規定されたデータベースである変換規則辞書113を参照して、上記構文解析部102で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る。
【0022】
構文生成部104は、第2言語に係る構文を生成するための規則が記録されたデータベースである構文生成規則辞書114を参照して、上記変換処理部103で変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する。
【0023】
形態素生成部105は、第2言語に係る形態素を生成するための規則が記録されたデータベースである形態素生成規則辞書115を参照して、上記構文生成部104によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する。
【0024】
次に、このように構成される本発明の翻訳システムの動作を説明する。まず、概略的動作を説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る翻訳システムの全体の概略的動作のうち、本願に特有のものを説明するためのブロック&フローチャートである。
同図に示すように、第1の実施形態及び後述する第2の実施形態に係る本発明の翻訳システムは、翻訳処理を行う前に、まず省略表現検出部201によって原文の全文走査を行って省略表現が存在するかどうかをチェックする。この場合、省略表現パターン・データベース211が参照される。省略表現においては、例えば日本語には「○○(以下××と記す)」、「○○(以下××)」、「○○(以下××と略す)」など、英語には「○○(henceforth to be referred to as “××”)」、「○○(henceforth referred to as “××”)」、「○○(henceforth a “××”)」など様々な表現があり、省略表現パターン・データベース211がこれらのすべての表現を網羅したデータベースとする。省略表現検出部201によって省略表現が検出され、本来表現に対応した省略表現と訳語の対応リスト221が作成される。このリスト221を用いて、方法1(第1の実施形態)では表現変換部202において省略表現を本来表現に置き換えてから翻訳処理を行い、方法2(第2の実施形態)では辞書登録部203で省略表現を見出し語に、本来表現の訳語を訳語に翻訳辞書212への辞書登録を行ってから翻訳処理を行う。方法2においては、翻訳処理が完了した後ユーザの意向で辞書登録部203によって登録された用語を削除するまたは削除しないを決めることが可能で、削除する場合の処理は辞書削除部204によって行われる。
【0026】
次に、より詳細な動作を説明する。
図3は、本実施形態に係る翻訳システムのさらに詳細な動作を示すフローチャートである。
同図に示すように、まず、言語Aによる入力文が与えられる(ステップS201)と、翻訳処理を行う前に、まず省略表現検出部201によって原文の全文走査を行って省略表現が存在するかどうかをチェックする(ステップS201)。この場合、省略表現パターン・データベース211が参照される。詳細は上記による。
【0027】
次に、形態素解析部101が、活用変化規則辞書111を参照して、入出力部100により入力された文について形態素を解析して単語列を得る(ステップS202)。
【0028】
次に、表現変換部202が、省略表現パターン・データベース211を参照しつつ、省略表現検出部201で省略表現が検出された単語列について対応リスト221を用いて本来表現に変換すると共に、構文解析部102が、構文解析規則辞書112を参照して形態素解析部101で得られた単語列及び、該当する場合には表現変換部202で変換された本来表現、について構文解析を行い構文木を得る(ステップS203)。ここでいう構文木は、たとえば図4に示されるように、「定期健康診断は、来週から健管で実施される。」のような原文に対して、「実施」が、「健管」、「定期健康診断」、「来週」とそれぞれ、「de」、「wo」、「kara」で樹状に構造化されるものをいう。
【0029】
次に、変換処理部103が、変換規則辞書113を参照して、こうして構文解析部102で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る(ステップS204)。
【0030】
次に、構文生成部104が、構文生成規則辞書114を参照して、変換処理部103によって変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する(ステップS205)。これはたとえば図5で示すような第2言語に係る構文木に変換することを意味する。
【0031】
次に、形態素生成部105が、形態素生成規則辞書115を参照して、構文生成部104によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する(ステップS206)。
【0032】
次に、省略表現検出部201のさらに詳細な動作を説明する。図6は、省略表現検出部201の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
同図に示すように、まず、省略表現パターン・データベース211を用いて原文の全文走査を行う(ステップS601)。たとえば、原文中に「健康管理センター(以下健管と記す)」という省略表現があり、「定期健康診断は、来週から健管で実施される。」を翻訳する場合の例で説明するならば、ステップS601では、翻訳が開始する前に、省略表現検出部201によって省略表現パターン・データベース211が参照され、全文が走査され省略表現の検出が行われる。
【0034】
次に、省略表現が検出されたかどうかを判定する(ステップS602)。検出されなかったら、そのまま終了する。省略表現が検出されると、たとえば上記の例では、省略表現「健管」が存在すると判明することになる。
【0035】
省略表現が検出されると、その直前の本来表現を確定する(ステップS603)。上記の例では、省略表現「健管」に対応した本来表現が「健康管理センター」と確定されることになる。
【0036】
次に、本来表現が確定したら、本来表現と省略表現の対応リスト221を作成する(ステップS604)。上記の例では、「健康管理センター→健管」という対応リストが作成される。
この一連の処理は形態素解析部101の処理が開始する直前に行われる。
【0037】
次に、表現変換部202のさらに詳細な動作を説明する。図7は、表現変換部202の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
同図に示すように、翻訳処理が開始すると、原文の構文木に省略表現が存在かどうかを判定する(ステップS701)。上記の例では、原文中「健管」という省略表現が存在すると判定される。一方省略表現が存在しない場合、そのまま終了する。
【0038】
省略表現が存在する場合、上記省略表現検出部201で作成した対応リスト221を参照して本来表現を確定する(ステップS702)。上記の例では、「健康管理センター→健管」という対応リスト221を用いて、「健管」に対応した本来表現が「健康管理センター」であると確定される。
【0039】
次に、省略表現を当該確定された本来表現に置き換える(ステップS703)。上記の例では、原文中の「健管」が「健康管理センター」に置き換えられることになる。その後、翻訳を継続する。
この一連の処理は形態素解析部101の処理の後に行われる。
【0040】
以上、詳細に説明したように、したがって、原文が「定期健康診断は、来週から健康管理センターで実施される。」のとき、これを翻訳すると、「A regular health check is carried out in the health-care-administration center from next week.」という訳文になる。これは、従来技術による「A regular health check is carried out by健管from next week.」に比べて、この訳文は非常に分かりやすくなり、本願特有の顕著な効果である。
【0041】
次に、本願の第2の実施形態を説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る翻訳システム全体の機能構成を示すブロック図である。なお、以下では、第1の実施形態(図1)と同様の機能を有するブロックは同一の番号を付し、その説明は第1の実施形態において行ったものを転用することとし、以下では第1の実施形態の場合と異なる点についてのみ説明を加える。
同図に示すように、第2の実施形態に係る翻訳システム10Aは、図1のブロック図における表現変換部202に替えて、もしくは加えて、辞書登録部203を具備する。これにさらに辞書削除部204を具備するように構成してもよい。
【0042】
辞書登録部203は、対応リスト221を用いて省略表現検出部201で省略表現が検出された単語列と該単語列の本来表現に対応する第2言語とを対応させて翻訳辞書212に登録する機能を有する。
【0043】
辞書削除部204は、この辞書登録部203によって登録された省略表現が検出された単語列と該単語列の本来表現に対応する第2言語との対応表現を、ユーザの意向に応じて削除する機能を有する。
【0044】
次に、主に、上記の構成において、第1の実施形態の場合との相違点を、主に辞書登録部203及び辞書削除部204との取り合いにおいて説明する。
【0045】
図9は、辞書登録部203の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
同図に示すように、省略表現検出部201で作成した対応リスト221が空かどうかを判定する(ステップS901)。上記の、原文中に「健康管理センター(以下健管と記す)」という省略表現があり、「定期健康診断は、来週から健管で実施される。」を翻訳する場合の例では、たとえば、対応リスト「健康管理センター→健管」が空でないと判断される。
【0046】
次に、リストにエントリがある場合、翻訳辞書212を用いて本来表現の辞書引きを行う(ステップS902)。上記の例では、翻訳辞書212を用いて「健康管理センター」に対して辞書引きを行うことになる。
【0047】
次に、辞書引きの結果をチェックし(ステップS903)、辞書212に存在しない場合は、本来表現も未知語であることを意味し、そのまま終了する。上記の例では、辞書引きの結果、「health-care-administration center」が戻ってくることになる。
【0048】
次に、本来表現に対応した訳語が辞書に存在する場合、省略表現を見出し語に、本来表現の訳語を訳語に翻訳辞書へ登録する(ステップS904)。上記の例では、見出し語「健管」、訳語「health-care-administration center」という条件で翻訳辞書へ登録を行う。
【0049】
その後、翻訳処理が行われ、方法1(第1の実施形態)と同様な訳が得られる。翻訳処理が完了した後、辞書削除部204においてユーザの意向で「健管→health-care-administration center」の登録内容を削除するようにすることも可能である。
【0050】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、原文が「定期健康診断は、来週から健康管理センターで実施される。」のとき、これを翻訳すると、「A regular health check is carried out in the health-care-administration center from next week.」という訳文になる。これは、従来技術による「A regular health check is carried out by健管from next week.」に比べて、この訳文は非常に分かりやすくなり、本願特有の顕著な効果である。
【0051】
以上、詳細に説明したように、本願の第1及び第2の実施形態によれば、このように、省略表現が存在する文を翻訳する際、
(1)翻訳を行う際、省略表現を本来表現に置き換えてから翻訳を行う、
(2)省略表現と本来表現の訳語の対を予め翻訳辞書に登録し、翻訳が終了すると削除するまたは削除しない、
という2つの方法を用いることによって、誤訳や未知語の出力を防ぐことができ、翻訳精度を高めることができる。また、誤訳によるユーザの訳文編集などの手間が一切必要とせず、翻訳作業の効率の向上にもつながる。
【0052】
なお、本発明は、上述した各実施形態及び実施例には限定されず、本発明の技術思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0053】
さらに本願発明は、その技術思想の同一及び等価に及ぶ範囲において様々な変形、追加、置換、拡大、縮小等を許容するものである。また、本願発明を用いて生産される装置、方法、ソフトウェア、システムが、その2次的生産品に登載されて商品化された場合であっても、本願発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、訳文生成時に省略表現による未知語または誤訳が減り、翻訳精度が高まり、文の意味をより正確に伝えることが可能であることから、コンピュータを用いて第1言語から第2言語に翻訳することを要するいかなる産業・用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る翻訳システム全体の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る翻訳システムの全体の概略的動作のうち、本願に特有のものを説明するためのブロック&フローチャートである。
【図3】本実施形態に係る翻訳システムのさらに詳細な動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る構文木の例である。
【図5】本発明の一実施形態に係る構文木の例である。
【図6】本発明の一実施形態に係る省略表現検出部201の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る表現変換部202の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る翻訳システム全体の機能構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る辞書登録部203の詳細な処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10,10A…翻訳システム、100…入出力部、101…形態素解析部、102…構文解析、103…変換処理部、104…構文生成部、105…形態素生成部、106…制御部、111…活用変化規則辞書、112…構文解析規則辞書、113…変換規則辞書、114…構文生成規則辞書、115…形態素生成規則辞書、201…省略表現検出部、202…表現変換部、203…辞書登録部、204…辞書削除部、211…省略表現パターン・データベース、212…翻訳辞書辞書、221…対応リスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1言語による文を入力する入力部と、
省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、
前記入力部により入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、
前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列について前記対応リストを用いて本来表現に変換する表現変換部と、
前記形態素解析部で得られた単語列に対して構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、
前記構文解析部で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る変換処理部と、
前記変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する構文生成部と、
前記構文生成部によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する形態素生成部と
を具備することを特徴とする翻訳システム。
【請求項2】
第1言語による文を入力する入力部と、
省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、
前記入力部により入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、
前記対応リストを用いて前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列と当該単語列の本来表現に対応する第2言語とを対応させて記憶する翻訳辞書記憶部と、
前記形態素解析部で得られた単語列について構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、
前記翻訳辞書記憶部を参照して前記構文解析部で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る変換処理部と、
前記変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する構文生成部と、
前記構文生成部によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する形態素生成部と
を具備することを特徴とする翻訳システム。
【請求項3】
前記翻訳辞書記憶部に記憶された前記単語列と当該単語列の本来表現に対応する第2言語とを削除する削除部をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の翻訳システム。
【請求項4】
第1言語による文を入力する入力部と、
省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、
前記入力部により入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、
前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列について前記対応リストを用いて本来表現に変換する表現変換部と、
前記形態素解析部で得られた単語列に対して構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、
前記構文解析部で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る変換処理部と、
前記変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する構文生成部と、
前記構文生成部によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する形態素生成部と
をコンピュータに実行させるための機能を有することを特徴とするプログラム。
【請求項5】
第1言語による文を入力する入力部と、
省略表現が登録された省略表現記憶部を参照して前記入力部により入力された文について省略された表現を持つか否かを検出し当該検出された省略表現と当該省略前の本来表現との対応リストを作成する省略表現検出部と、
入力された文について形態素を解析して単語列を得る形態素解析部と、
前記対応リストを用いて前記省略表現検出部で省略表現が検出された単語列と当該単語列の本来表現に対応する第2言語とを対応させて記憶する翻訳辞書記憶部と、
前記形態素解析部で得られた単語列について構文解析を行い構文木を得る構文解析部と、
前記構文解析部で得られた構文木に対して第2言語への変換処理を行い第2言語に係る構文木を得る変換処理部と、
前記変換処理された第2言語に係る構文木から単語列を生成する構文生成部と、
前記構文生成部によって生成された単語列から第2言語による出力文を生成する形態素生成部と
をコンピュータに実行させるための機能を有することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記翻訳辞書記憶部に記憶された前記単語列と当該単語列の本来表現に対応する第2言語とを削除する削除部をさらに具備することを特徴とする請求項5記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−185042(P2006−185042A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376154(P2004−376154)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】