説明

耐プラズマ性を有するセラミックコーティング体

プラズマ処理装置に適用される耐プラズマ特性が向上されたセラミックコーティング体を開示している。前記セラミックコーティング体はプラズマ処理装置に適用される被コーティング体及び前記被コーティング体表面に形成され、800Wパワーで形成されたプラズマに対して13〜25nm/minの腐食速度を有し、気孔の含有率が0.1〜1%のセラミックコーティング膜を含む構成を有する。このような構成を有するセラミックコーティング体はプラズマに長時間露出された場合でも、その表面損傷を十分に減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックコーティング体に関し、より詳しくは1%以下の気孔を有するセラミックコーティング膜を含む耐プラズマ性セラミックコーティング体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に半導体製造工程で利用されるプラズマ処理装置は、フッ化物、塩化物、臭化物などのような反応物を含むガスがプラズマ処理装置のチャンバー内部でプラズマ化され、プラズマ化された前記ガスを利用して被処理対象物を加工することができる。このようなプラズマ処理装置の内部では前記被処理対象物の加工のみならず、プラズマ処理装置のチャンバー内部面または内部部品素材は、前記ガスによって腐食されることができる。
【0003】
上述のようなチャンバーの内部面または内部部品素材の腐食を防止するために、酸化イットリウム(Y)または酸化アルミニウム(Al)等の酸化物を含むセラミックコーティング膜をチャンバーの内部面または内部部品素材の表面に溶射コーティング方法で形成することができる。しかし、前記溶射コーティング方法で形成されるセラミックコーティング膜は高融点のセラミック原料の特性上、溶融が完全でなかったり溶融時間の差による不均一なコーティングのために5%以上の高い気孔を含む。このような気孔は半導体製造工程に適用されるプラズマまたは各種反応性ガスがコーティング膜と接触する時、簡単に腐食を起こすだけでなく、このように腐食によって損傷されたセラミックコーティング膜は装置内部で汚染物発生源として作用することになるため、結果的に前記被処理対象物、例えば、半導体ウェハの汚染まで招く原因になる。
【0004】
前記セラミックコーティング膜の耐プラズマ性を向上させるために前記セラミックコーティング膜の気孔率を減少させてコーティング膜の密度を増加させることができる。例えば、高融点セラミックの溶融を容易にし、均一なコーティング膜を得るために従来の数十umの大きさの粉末の代りに数十〜数百ナノメートルの大きさのセラミック粉末を溶射コーティングする方法が使われることができ、また、溶射コーティング後、有機溶媒を用いた後処理または熱処理を遂行することができる。しかし、このような方法は溶射コーティング方法を代替することではなく、セラミック粉末またはコーティング膜の後処理方法を改善したことであるので、前記セラミックコーティング膜の気孔率を十分に減少させることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は溶射コーティング方法を適用せず、十分に減少した気孔率と改善された耐プラズマ特性を有するセラミックコーティング膜を含むセラミックコーティング体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の本発明の目的を実現するためのセラミックコーティング体はプラズマ処理装置に適用される被コーティング体及び前記被コーティング体表面に形成されて800Wパワーを利用して形成されたプラズマに対し13〜25nm/minの腐食速度(erosion rate)を有し、気孔の含有率が0.1〜1%であるセラミックコーティング膜を含む構成を有する。このような構成を有する耐プラズマ性セラミックコーティング体は従来の溶射コーティング方法によって得ることのできるセラミックコーティング体と比較して相対的に低い表面粗度、高い付着力及び1%以下の気孔を含んでいてプラズマに長時間露出されてもその表面の損傷を十分に減少させることができる。
【0007】
一例として、前記セラミックコーティング膜を形成する方法は、セラミック粉末を0.1〜1.0umの粒度を有するセラミック粉末に粉砕、破砕及び分散させるステップと、分散したセラミック粉末を250〜400m/sの速度で被コーティング体の表面に噴出させて衝突/破砕させるステップと、破砕されたセラミック粒子を被コーティング体表面に一部吸着させるステップと、を含むことができる。前記ステップは少なくとも2回繰り返して反復遂行されることができ、それによって、前記被コーティング体表面に前記破砕されたセラミック粒子が累積固着されることができる。結果的に、前記セラミックコーティング膜は前記ステップを反復的に遂行することによって目的とする厚さで形成することができる。上述のセラミックコーティング膜の例としては酸化イットリウム膜、酸化アルミニウム膜、またはこれらの混合膜などを挙げることができる。
【0008】
また、前記セラミック粉末は破砕工程処理されて屈曲された表面または溝が形成された多面体形状を有する。前記破砕されたセラミック粒子は、80〜200nmの粒径を有する。
【0009】
前記プラズマ装置の被コーティング体はアルミニウム、ステンレス、石英、またはセラミック物質を含む。また、前記被コーティング体の例としてはガス分配板、静電チャック、シャワーヘッド、チャンバーの内壁、シリンダー、フォーカスリングなどを挙げることができる。
【発明の効果】
【0010】
上述のような特性を有するセラミックコーティング体は既存溶射コーティング工程を遂行して形成されたセラミックコーティング膜と比べて十分に減少した気孔率を有するセラミックコーティング膜を含む。そのために前記セラミックコーティング体の耐プラズマ性及び耐化学適性が十分に改善されるし、それに伴い、前記セラミックコーティング体がプラズマに長時間露出する場合でもその損傷を十分に減少させることができる。
【0011】
また、前記耐プラズマ性を有するセラミックコーティング体がプラズマ処理装置の部品に適用される場合、前記プラズマ処理装置の維持、補修費用を著しく減少させることができるだけでなく、パーティクルなどの汚染物の発生及びセラミックコーティング膜の汚染物の吸着によるウェハの汚染を十分に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る耐プラズマ性を有するセラミックコーティング体を示す断面図である。
【図2】図1に示したセラミックコーティング体に含まれたセラミックコーティング膜の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング体を形成する方法を示す工程のフローチャートである。
【図4】第2の実施形態のセラミックコーティング体形成時に適用されたセラミック粒子を示す写真である。
【図5】第5の実施形態のセラミックコーティング体形成時に適用されたセラミック粒子を示す写真である。
【図6】第1の実施形態のセラミックコーティング体の断面を示す写真である。
【図7】比較例1のセラミックコーティング体の断面を示す写真である。
【図8】プラズマに露出した第1の実施形態のセラミックコーティング体の表面を示す写真である。
【図9】プラズマに露出した比較例1のセラミックコーティング体の表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態は添付図面を参照してより詳細に説明する。しかし、本発明は下記に説明する実施形態に限定したように構成されなければならないのではなく、それと他の色々な形態で具体化されることができる。下記の実施形態は、本発明が全て完成できるようにするために提供されるというよりは本発明の技術分野において熟練した当業者に本発明の範囲を十分に伝達するために提供する。
【0014】
一つの要素が異なる一つの要素または層上に、配置または接続されることとして説明される場合、前記要素は前記他の一つの要素上に直接的に配置されたり接続されることもでき、他の要素または層がそれらの間に介在されることもできる。これと異なるように、一つの要素が異なる一つの要素上に直接的に配置されたり接続されることとして説明される場合、それらの間にはまた他の要素がありえない。類似の要素に対しては全体的に類似の参照符号が使われ、また、「及び/または」という用語は関連した項目の中のいずれか一つまたはそれ以上の組合せを含む。
【0015】
多様な要素、造成、領域、層、及び/または部分のような多様な項目を説明するために第1、第2、第3等の用語が使われるが、前記項目はこれら用語によって限定されない。これら用語は単に他の要素から一つの要素を区別するために使われる。従って、下記において説明される第1要素、造成、領域、層、または部分は本発明の範囲を逸脱せずに第2要素、造成、領域、層、または部分と表現されることができる。
【0016】
空間的に相対的な用語、例えば、「下部」または「底」そして「上部」等の用語は図面に説明したように、他の要素に対して一要素の関係を説明するために使われることができる。相対的な用語は図面に示した方位に加えて装置の他の方位を含むことができる。例えば、図面のうちの一つにおいて、装置の方向が変わるならば、他の要素の下部側にあることと説明された要素が、前記他の要素の上部側にあることと整合される。従って、「下部」という典型的な用語は図面の特定方位に対し「下部」及び「上部」方位の全てを含むことができる。これと類似に、図面の中の一つにおいて、装置の方向が変わるならば、他の要素の「下」または「下側」として説明された要素は前記他の要素の「上」に整合される。従って、「下」または「下側」という典型的な用語は、「下」と「上」の方位皆を含むことができる。
【0017】
下記において使われた専門用語は単に特定実施形態を説明するための目的で使われることであり、本発明を限定するためのものではない。下記において使われた通り、単数の形態と表示されるのは特別に明確に指示されない以上、複数の形態も含む。また、「含む」または「含んでいる」という用語が使われる場合、それは言及された形態、領域、完全体、ステップ、作用、要素、及び/または成分の存在を特徴づけることであり、他の一つ以上の形態、領域、完全体、ステップ、作用、要素、成分、及び/またはそれらのグループの追加を排除することではない。
【0018】
特に限定しない以上、技術及び科学用語を含む全ての用語は本発明の技術分野で通常の知識を有する当業者に理解されることのできる同じ意味を有する。通常の辞書で限定することのような前記用語は関連技術と本発明の説明の文脈において、その意味と一致する意味を有することと解釈するべきであり、明確に限定しない限り理想的にまたは過度に外形的な直感として解釈しないべきである。
【0019】
本発明の実施形態は本発明の理想的な実施形態の概略的な図解の断面図解を参照して説明する。それに伴い、前記図解の形状からの変化、例えば、製造方法、及び/または許容誤差の変化は予想できる。従って、本発明の実施形態は図解で説明した領域の特定形状に限定したように説明するのではなく、形状での偏差を含むことである。例えば、平たいと説明された領域は一般的に粗度及び/または非線形的な形態を有することができる。また、図解で説明した尖っている角は丸くすることもできる。従って、図面で説明した領域は全面的に概略的なことであり、これらの形状は領域の正確な形状を説明するためのものではなくまた、本発明の範囲を限定しようとすることではない。
【0020】
<セラミックコーティング体>
図1は、本発明の一実施形態に係る耐プラズマ性を有するセラミックコーティング体を示す断面図であり、図2は図1に示したセラミックコーティング体に含まれたセラミックコーティング膜の断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0021】
図1及び図2を参照すると、本実施形態のセラミックコーティング体30は、プラズマ装置に適用される被コーティング体10及び被コーティング体上に蒸着されたセラミックコーティング膜20を含む。具体的に前記被コーティング体10は、アルミニウム、ステンレス、石英、セラミック物質(例えば、アルミニウム酸化物)等を含むことができ、その表面は、アノダイジング処理されることができる。また、前記被コーティング体10はプラズマ処理装置内部に適用される部品であることができる。例えば、前記被コーティング体10は、ガス分配板、静電チャック、シャワーヘッド、チャンバーの内壁、シリンダー、フォーカスリングなどであることができる。
【0022】
前記セラミックコーティング膜20は、被コーティング体10上に常温微粒子蒸着方法によって所定の厚さで形成され、前記被コーティング体10と75〜95Mpaの付着力を有し、約0.1〜3umの表面粗度を有し、気孔の含有率が0.1〜1%の耐プラズマ特性を有する金属酸化物膜である。前記金属酸化物膜の例としては、酸化イットリウム(Y)、酸化アルミニウム(Al)等を挙げることができる。また、前記セラミックコーティング膜は800Wパワーで形成されたプラズマに露出した場合、約13〜25nm/minの腐食速度を有することが望ましい。これは、前記セラミックコーティング膜の腐食速度が25nm/minを超過する場合、プラズマ装置の維持補修費用が増加するという問題点が発生するためである。
【0023】
前記セラミックコーティング膜20に含まれた気孔の含有率が1%を超過する場合、気孔を1%含有するセラミックコーティング膜に比べて表面の損傷が大きく発生するという問題点が発生する。それで、前記セラミックコーティング膜20の表面の損傷部位はウェハを汚染させるパーティクル発生の原因として作用する。従って、本発明のセラミックコーティング膜20は1%以下の気孔を含有することが望ましい。
【0024】
また、前記セラミックコーティング膜20の表面粗度が0.1um未満の場合、耐プラズマ特性が多少向上するが、チャンバー内で発生できる反応副産物がその表面に付着しにくい。結果的に、前記反応副産物によって半導体ウェハのような被処理物の汚染が増加するという問題点が発生する。反面、表面粗度が3umを超過する場合、工程の副産物が前記セラミックコーティング膜表面には付着されやすいが、前記セラミックコーティング膜の腐食が早く進行するという問題点が発生する。従って、前記セラミックコーティング膜は0.1〜3um範囲の表面粗度を有し、望ましくは0.5〜1um範囲の表面粗度を有する。
【0025】
図3は本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング体を形成する方法を示す工程フローチャートである。
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係るセラミックコーティング体を形成するためには、まず、前記セラミックコーティング装置のセラミック粉末供給部に収容されるセラミック粉末を設ける(ステップS110)。前記セラミック粉末は前記粉末供給部内で凝集することができる。
【0026】
前記セラミック粉末は既存溶射コーティング工程に適用されるセラミック粉末として酸化イットリウム(Y)粉末、酸化アルミニウム(Al)粉末または、これらの混合物粉末などを含み、大きさが約0.1〜1.0umの粒子を有する。前記セラミックコーティング膜形成工程に適用されるセラミック粉末の粒子の大きさが0.1um未満の場合、セラミック粉末間の凝集力が高まって粉末供給がまともに成り立たない。反面、前記粒子の大きさが1.0umを超過する場合、コーティング時にセラミック粉末自体の重さの増加にともなう加速力が増加するため、破砕後、セラミックコーティング体の被コーティング体の表面から粒子が撥ねられる問題点が発生する。従って、本実施形態では、セラミック粉末は0.1〜1.0umの粒子の大きさを有することができ、望ましくは0.4〜0.8umの粒子の大きさを有することができる。
【0027】
一例として、前記セラミック粉末は、2〜10umの粒径を有する予備セラミック粒子をボールミル工程を遂行することによって形成されることができる。他の例として、前記セラミック粉末はプラズマ冷却粉砕法を遂行して形成されることができる。前記プラズマ冷却粉砕法は、約2〜10umの粒径を有する予備セラミック粒子をプラズマ溶融させた以後、質素ガス下で冷却粉砕させるステップを含む。
【0028】
特に、本実施形態では前記セラミック粉末が球形でない屈曲された表面または溝が形成された多面体形状を有するように機械的破砕工程を利用することが望ましい。前記機械的破砕工程はボールミル工程及びプラズマ低温破砕工程などを含むことができる。このような多面体形状を有するセラミック粉末は前記被コーティング体10表面に衝突して破砕される場合、比較的に小さな大きさの粒子状態を有するように容易に破砕されることができるためである。前記被コーティング体はアルミニウム、石英、アルミニウム酸化物などを含むことができ、その表面はアノダイジング処理することができる。
【0029】
次いで、凝集された状態を有するセラミック粉末を0.1〜1.0umの粒度を有するセラミック粉末で分散させる(ステップS120)。
前記凝集されたセラミック粉末は、実質的に約2〜10umの粒子の大きさを有するため、セラミック粉末は、再び0.1〜1.0umの粒子の大きさを有するように各々分散させなければならない。一例として、前記セラミック粉末の分散は、セラミック粉末供給部から提供される凝集されたセラミック粉末がキャリアガスとともに前記コーティング膜形成装置に含まれた分散ユニット内部に高速流入された後、前記分散ユニットの内部で衝突/粉砕反応が連続的に発生することによって成されることができる。前記キャリアガスの例としては酸素ガス、アルゴンガス(Ar)、質素ガス(N)、水素ガス(H)、ヘリウムガス(He)等を挙げることができる。これらは、単独または混合ガスとして使われることができる。
【0030】
次いで、前記分散したセラミック粉末を被コーティング体の表面に高速噴出させて衝突/破砕させる(ステップS130)。
前記キャリアガスに分散したセラミック粉末は、噴出ユニットによって被コーティング体表面に高速で噴出される。前記分散したセラミック粉末はキャリアガスとともに約250〜400m/sの速度で噴出する。具体的に、前記セラミック粉末の噴出速度はキャリアガスの圧力とセラミックコーティング膜が形成されるチャンバー内部の圧力によって変わることができる。特に、前記チャンバー内部の真空圧力は、約1.3Pa(約10−2torr)程度に調節することができ、前記セラミック粉末とキャリアガスは前記噴出ユニットから亜音速または超音速(約250〜400m/s)領域まで加速されることができる。
【0031】
特に、前記被コーティング体の表面で噴出するセラミック粉末の速度が250m/s未満の場合、前記分散したセラミック粉末の破砕が容易ではないだけでなく、セラミックコーティング膜の形成速度が減少するという問題点が発生する。噴出速度が400m/sを超過する場合、前記分散したセラミック粉末の破砕が容易ではあるが、破砕後、高い運動エネルギーを有することによって前記被コーティング体に吸着することができずに撥ねられるかまたは被コーティング体の表面或いはコーティング層が損傷する問題点が起きる。従って、前記分散したセラミック粉末は約250〜400m/sの速度で噴出することが望ましく、特に約300〜350m/sの速度で噴出することが望ましい。
【0032】
上述のような条件で噴出する分散したセラミック粉末は、前記被コーティング体表面と衝突することによって破砕(分裂)されてナノ粒子の大きさを有する破砕されたセラミック粒子で形成される。前記破砕されたセラミック粒子の大きさが80nm未満の場合、被コーティング体表面に吸着(蒸着)される破砕されたセラミック粒子の累積速度が著しく減少する問題点が発生する。反面、前記破砕されたセラミック粒子の大きさが200nmを超過する場合、前記被コーティング体表面に吸着する破砕されたセラミック粒子の累積速度は増加するが、セラミックコーティング層内の気孔率が増加する問題点が発生する。従って、前記破砕されたセラミック粒子は、約80〜200nmの大きさを有することが望ましく、約100〜150nmの大きさを有することが望ましい。
【0033】
一般的に、前記被コーティング体の表面は20um以下の粗度を有することが望ましい。前記コーティング層形成のために約80〜200nmの粒子を適用してコーティング層を形成する時、前記被コーティング体の粗度が20um以下の場合、被コーティング体の溝を大部分埋めてコーティング層表面を0.1〜3umの粗度で形成することができるが、前記被コーティング体の粗度が20um以上の場合、コーティング層の粗度は被コーティング体の粗度と類似であることができる。
【0034】
しかし、本実施形態のセラミックコーティング膜形成方法は、溶射コーティング方法より被コーティング層の表面粗度による影響が少ないため、被コーティング層の表面粗度を調節するための別途の工程が要求されない。
【0035】
一例として、セラミックコーティング膜として酸化イットリウム膜を形成する場合、前記スプレーガンから酸化イットリウム粉末を約300〜350m/sの速度で噴出させ、前記スプレーガンを被コーティング体上から約40〜60m/min速度で移送させ、前記スプレーガンと前記被コーティング体の表面との間を約100〜130mmの距離で離隔させ、前記被コーティング体の表面に対して前記コーティング物質の噴射角を約80〜90°に調節することができる。
【0036】
前記破砕されたセラミック粒子を前記被コーティング体表面に吸着(蒸着)させる(ステップS140)。
前記ステップS140で破砕して形成したセラミック粒子の吸着は、前記被コーティング体表面に衝突して破砕されたセラミック粒子が有する運動エネルギーによって成る。即ち、前記セラミック粒子は被コーティング体表面に衝突して幾つかの破片に破砕されることができ、破砕されたセラミック粒子は前記運動エネルギーによって前記被コーティング体表面部位に打ち込まれることができる。この時、前記被コーティング体の表面部位に打ち込まれたセラミック粒子はコーティング層を形成することができ、前記被コーティング体とコーティング層上に持続的にセラミック粒子が衝突することによって前記コーティング層が成長することができる。
【0037】
次いで、前記被コーティング体表面に破砕されたセラミック粒子を累積吸着させて気孔の含有率が1%以下のセラミックコーティング膜を含むセラミックコーティング体を形成する(ステップS150)。
【0038】
具体的に、分散したセラミック粉末を被コーティング体の表面に高速噴出させて衝突/破砕させるステップ(S130)と、破砕して形成されたセラミック粒子を被コーティング体表面に吸着させるステップ(S140)とを少なくとも2回繰り返して遂行する。それによって、前記被コーティング体表面には破砕して形成されたセラミック粒子が累積吸着して気孔の含有率が1%以下のセラミックコーティング膜を含むセラミックコーティング体が形成される。
【0039】
上述の常温微粒子蒸着方法で形成される前記セラミックコーティング体は、溶射コーティング方法で形成されたセラミックコーティング膜と異なり、気孔含有率が1%以下のセラミックコーティング膜を含むため、耐プラズマ特性が優秀であり、800Wパワーで形成されたプラズマに対して約13〜25nm/minの腐食速度を有する。また、形成されるセラミックコーティング体の表面は約0.1〜3umの粗度を有する。
【0040】
前記セラミックコーティング体の表面の粗度が0.1未満の場合、耐プラズマ特性が多少向上するが、プラズマ処理装置のチャンバー内で発生し得る反応副産物が前記セラミックコーティング体の表面に付着しにくいこともあって、これによって処理対象物、例えば、半導体ウェハが前記反応副産物によって汚染され得る。反面、表面粗度が3umを超過する場合、反応副産物が前記セラミックコーティング体表面に付着することが容易であるが、前記セラミックコーティング体の腐食速度が増加し得る。従って、前記セラミックコーティング体は0.1〜3um範囲の表面粗度を有するように形成し、望ましく0.5〜1um範囲の表面粗度を有するように形成する。
【0041】
<セラミックコーティング体の特性評価1>
下記表1に開示されたコーティング方法とコーティング条件により形成されたセラミックコーティング体のセラミックコーティング膜の厚さを測定した。ここで、比較例のコーティング方法は広く知られた常圧プラズマ溶射(APS)コーティング方法であり、実施形態のコーティング方法は前記ステップS110〜ステップS150を含む常温微粒子蒸着方法である。特に、本実施形態のコーティング方法の条件はスプレーガンから酸化イットリウム粉末を約40m/sの速度で噴出させ、前記スプレーガンを被コーティング体を横切って約1mm/sec速度で移送させて、前記スプレーガンと前記被コーティング体10の表面との間を約110mmの距離で離隔させ、前記被コーティング体の表面に対して前記コーティング物質の噴射角を約90°に設定した。前記被コーティング体はガス分配板であり、コーティング膜は酸化イットリウム膜であり、前記粒子の大きさはスプレーガンで噴出する時の粒子の大きさを示す。
【0042】
【表1】

前記表1に示したように第1の実施形態〜第7の実施形態で粒子の大きさが700〜800nmの場合に形成される酸化イットリウム膜のコーティングの厚さが最適の厚さを見せることを確認することができる。また、前記粒子の大きさが互いに類似している場合、酸化イットリウム粒子の形状が、図4に示したように球形の形状を有する時より図5に示したように多面体形状を有する場合、コーティングの厚さが増加することが確認された。それによって、被コーティング体の表面に酸化イットリウム膜が形成されたセラミックコーティング体を形成する場合、多面体の700〜800nmの粒子の大きさを有するセラミック粉末を使うことが最も望ましい。
【0043】
<セラミックコーティング体の特性評価2>
前記評価1に示したコーティング方法とコーティング条件によりセラミックコーティング体を形成した後、セラミックコーティング体の気孔含有量と耐プラズマ特性を評価した。その結果を下記表2に示した。ここで、前記プラズマ特性評価はAMAT(Applied Materials)社のP−500(商標名)プラズマチャンバーで、炭化ふっ素ガス(CF)50sccm、酸素ガス10sccm、チャンバー圧力6.67Pa(0.05torr)、プラズマパワー800W、プラズマ露出時間60分に設定して遂行した。前記被コーティングはガス分配板であり、セラミックコーティング体は酸化イットリウム膜が形成されたガス分配板である。
【0044】
【表2】

表2を参照すると、実施形態の方法で形成されたセラミックコーティング体の酸化イットリウム膜は、1%以下の気孔含有量を有することによって比較的高い耐プラズマ特性を有する。反面、比較例1の方法で形成されたセラミックコーティング体の酸化イットリウム膜は気孔含有量が5%以上で耐プラズマ特性が相対的に非常に低くて腐食が早く起きることを確認することができる。
【0045】
具体的に図6に示したセラミックコーティング体の酸化イットリウム膜(第1の実施形態)は、図7に示したセラミックコーティング体の酸化イットリウム膜(比較例1)に比べて気孔含有量が顕著に小さいことが確認された。また、図8のプラズマに露出されたコーティング体の酸化イットリウム膜(第1の実施形態)は図9のプラズマに露出されたセラミックコーティング体の酸化イットリウム膜(比較例1)に比べてプラズマによる表面損傷が相対的に非常に小さいことが確認された。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特徴請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上述のような特性を有するセラミックコーティング体は、既存溶射コーティング工程を遂行して形成されたセラミックコーティング膜に比べて数〜数十倍以下の気孔を有するセラミックコーティング膜を含む。そのため、前記セラミックコーティング体はプラズマに長時間露出される場合でも、その損傷が最小化される耐プラズマ性及び耐化学的特性を有する。それによって、前記耐プラズマ性を有するセラミックコーティング体がプラズマ処理装置の部品に適用される場合、前記プラズマ処理装置の維持補修費用を顕著に減少させることができるだけでなく、パーティクル発生によるウェハの汚染を最小化することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置に適用される被コーティング体と、
前記被コーティング体表面に形成されて800Wパワーで形成されたプラズマに対して13〜25nm/minの腐食速度を有し、気孔含有率が0.1〜1%のセラミックコーティング膜と、を含む耐プラズマ性セラミックコーティング体。
【請求項2】
前記被コーティング体はアルミニウム、ステンレス、石英、またはセラミック物質を含み、ガス分配板、静電チャック、シャワーヘッド、チャンバーの内壁、シリンダー、及びフォーカスリングからなる群から選択されたいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマ性セラミックコーティング体。
【請求項3】
前記セラミックコーティング膜は、酸化イットリウム膜または酸化アルミニウム膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマ性セラミックコーティング体。
【請求項4】
前記セラミックコーティング膜は、
(A)セラミック粉末を0.1〜1.0umの粒度を有するセラミック粉末に分散させるステップと、
(B)分散したセラミック粉末を250〜400m/sの速度で被コーティング体の表面に噴出させて衝突及び破砕させるステップと、
(C)コーティング体に衝突して破砕されたセラミック粒子を被コーティング体表面に一部吸着させるステップと、
(D)前記ステップ(A)、ステップ(B)、及びステップ(C)を連続的に少なくとも2回繰り返して遂行して前記被コーティング体表面に破砕して形成したセラミック粒子を累積吸着させるステップを順次に遂行して形成されることを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマ性セラミックコーティング体。
【請求項5】
前記セラミック粉末は屈曲された表面または溝が形成された多面体形状を有することを特徴とする請求項4に記載の耐プラズマ性セラミックコーティング体。
【請求項6】
前記破砕して形成したセラミック粒子は、80〜200nmの粒径を有することを特徴とする請求項4に記載の耐プラズマ性セラミックコーティング体。
【請求項7】
前記セラミックコーティング膜は、0.1〜3umの表面粗度を有し、前記被コーティング体と75〜95Mpaの付着力を有することを特徴とする請求項1に記載の耐プラズマ性セラミックコーティング体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2011−528755(P2011−528755A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519998(P2011−519998)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004160
【国際公開番号】WO2010/011113
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(502394184)コミコ株式会社 (12)
【住所又は居所原語表記】79,Sinmosan−dong,Anseong−si,Gyeonggi−do,Korea
【Fターム(参考)】