説明

耐亀裂性難燃性ハロゲンフリーケーブルアセンブリ及びコーティング組成物

ハロゲンフリーで、難燃性、耐亀裂性のケーブルコーティングは、A)0.86〜0.91g/cmの範囲の密度を有し、シングルサイト触媒によって作製されるVLDPE系樹脂を用いる、3〜10重量%の、低融解温度で中〜高グラフトレベルの無水マレイン酸グラフトポリエチレン;B)15〜25重量%の、少なくとも1種のEEA又はEVA;C)5〜20重量%のα−オレフィンポリマー;及びD)40〜65重量%の難燃性無機充填剤を含む組成物から調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年9月16日付で出願された米国特許出願番号第61/097,260号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、耐亀裂性又は低亀裂性の、減煙もしくは低煙の、非ハロゲンであるか又はハロゲンを全く含有しない(zero halogen-containing)化合物及びそれらの使用方法に関する。本発明は、例えば、電線ケーブル(特に「外装」ケーブル)及び通信媒体用の絶縁材料又は外被材料として用いられる、低煙、無ハロゲン(zero halogen)ポリマー類、具体的にはポリオレフィン組成物と呼ばれるものに特に適用可能である。電気的用途と非電気的用途が含まれる。
【背景技術】
【0002】
耐火性組成物は、その多くの用途の中で、電線及びケーブル外被並びに絶縁に広く使用されている。電気的環境では、電気絶縁特性と耐燃特性の両方が必須である。つまり、組成物は、着火時に残光を示してはならず、有害もしくは有毒な煙を放出してはならず、煙の放出を少なくしなければならない。その上、組成物は、長い使用期間にわたってそれらの物理的特性を維持し、かつ劣化(例えば亀裂)しないことが望ましい。
【0003】
歴史的に、押出可能な耐火性の組成物は、ハロゲン化ポリマー、例えば塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルクロライド、及びクロロブタジエン、又はその他のポリマー組成物を覆う塩素化ポリマーのコーティングなどから製造されている。しかし、火災の状況において、かかる塩素化組成物は有毒な塩化水素ガスを生じ、大量の有害な煙を放出することがわかった。火災においては、煙の吸入は火自体よりもさらに大きな死亡原因であり、そのような生成物は不適当であると見なされた。よって、非ハロゲン又はハロゲンフリーの耐亀裂性組成物が、(他の多くの業界でも)電線及びケーブルコーティング産業に特に必要とされている。
【0004】
熱老化/熱応力亀裂は、世界中に多くの電線及びケーブル製造業者にとって決定的に重要な性能用件である。熱応力亀裂耐性のための困難なケーブル構造は、亜鉛めっき鋼線で「外装」されたケーブルコアである。これらのケーブルは、英国工業規格(BS)6724を用いて評価され、そこではケーブルの一部分が100℃にて7日間熱老化され、亀裂について観察される。その上、一部の製造業者は英国工業規格(BS)60811−3−1に従って熱衝撃試験を実施している。この試験は、150℃にて1時間の熱老化の結果としてのケーブル外被の亀裂性向を評価する。その他の特性、例えば押出性、機械的性質、柔軟性及び低温性能は、多くの場合そのような特性に対しマイナスの影響を及ぼし得る高レベルの無機充填剤を通常含有する低煙ゼロハロゲン化合物の組成を制御することによって適切に制御される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり、一態様では、本発明は、MAHと、好ましくは1立方センチメートルあたり0.86〜0.91グラム(g/cm)の密度を有し、かつ好ましくはシングルサイト触媒を用いて作製されたエチレン−α−オレフィン共重合体との反応により作製された無水マレイン酸(MAH)グラフトカップリング剤を組み込むことにより、低煙、非ハロゲン化合物の耐亀裂性を増大させるか、又は亀裂性向を低下させる方法である。本発明の低融解温度カップリング剤、例えば、MAHグラフトポリエチレンは、一般に約90℃未満、好ましくは約80℃未満、最も好ましくは約70℃未満の融解温度を有する。本発明の配合物には、さらなるエチレン樹脂、例えば、エチレンエチルアクリレート(EEA)共重合体;エチレンビニルアセテート共重合体;及び好ましくは約0.910g/cm未満の密度を有するエチレン−α−オレフィン共重合体などが含まれ得る。この0.910g/cmという密度は、EEA又はEVAには適用されないが、PEにのみ適用される。本発明のポリマーはまた、一般に、任意選択の充填剤、例えばアルミナ三水和物(ATH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))及び炭酸カルシウムなどを含有する。その他のかかる充填剤は、当業者に容易に連想されよう。
【0006】
微粒子の無機充填剤を有機ポリマーと配合する場合、ポリマーと無機粒子との間の接触面は、物理的要因と化学的要因の両方の組合せに関連し得る複雑な相互作用を伴う。これらの要因は、粒子のポリマーへの接着、充填剤の局部的な濃度勾配を引き起こし得る粒子分散、熱膨張率、未老化の及び老化した物理的特性例えば引張特性及び伸長特性など、並びに特に湿潤環境において高温で老化した場合の物理的特性の保持に影響を及ぼすことになる。適切に選定された、カップリング剤は適した濃度でいくつかの特性を有意に改良することができ、さらに重要なことには熱老化試験、及び製品の実際の使用においてそれらの特性を保持することができる。良好なカップリング剤の基本的な機能は、互いに接着が不十分な2つの表面間に永続的な結合を提供することである。カップリング剤は、本質的に配合物中の成分として用いられる場合に接着促進剤として作用し、ポリマーにおいては充填剤の表面をより適合性かつ分散性にするのに役立つ。カップリング剤がなければ、充填剤とポリマーとの間の結合は弱くなり、試験及び実際の使用条件でその結合性を保持することができなくなる。
【0007】
充填剤とポリマーとの間の結合を弱める傾向のある一つの要因が水である。良好なカップリング剤は、水による弱体化に抵抗性の有る結合を形成することになる。
【0008】
充填剤とポリマーとの間の結合の特性は、カップリングの種類/レベル、充填剤とポリマーの化学的同一性、及び充填剤の分散の程度などのいくつかの要因の関数となる。最も一般的な2種類のカップリング剤は、シランカップリング剤と、無水マレイン酸(maleic anyhydride)グラフトポリオレフィンカップリング剤である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般的に言えば、本発明の好ましい化合物は、次のような組成範囲を有する:
【0010】
約15〜約25重量%のEEA(エチレン−アクリル酸エチル)又はEVA(エチレンビニルアセテート)
【0011】
5重量パーセント〜約20重量パーセントのポリオレフィン樹脂;
【0012】
3重量パーセント〜約10重量パーセントの低融解温度MAHグラフトポリエチレン、好ましくはメタロセン触媒を用いて作製され0.86〜0.91の範囲の密度を有するVLDPE系樹脂;
【0013】
40重量パーセント〜約65重量パーセントの充填剤。
【0014】
また、本発明の好ましい組成物には、
1〜約5重量パーセントのシリコーン防煙剤
0.1〜約1重量パーセントのコーティングもしくは加工助剤、例えば、ステアリン酸
を含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】亀裂した外被と亀裂していない外被を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明でベース樹脂として用いられるエチレン樹脂もしくは樹脂類は、好ましくはエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、及び超低密度エチレンα−オレフィン共重合体(VLDPE)EVAからなる群から選択され、EEAは共重合体である。EEA及びEVA共重合体は、約150〜約350℃の範囲内の反応温度及び約100〜約300MPaの反応圧力下でフリーラジカル開始剤例えば有機過酸化物などを用いて、エチレンとビニルアセテートとを又はエチレンとエチルアクリレートとを共重合させることによる従来の高圧法で製造することができる。EVA及びEEAは、Dow Chemical Company、E.I.duPont Companyなどから市販されている。
【0017】
EVA及びEEAは10分あたり約0.5〜約50グラム(g/10分)の範囲内のメルトフローレートを有することが好ましい。ビニルアセテート又はエチルアクリレートのコモノマー含量は、ポリマーの重量に基づいて約5〜約40重量パーセントであってよく、好ましくは約10〜約35重量パーセントである。
【0018】
超低密度PE(VLDPE)は、エチレンと、α−オレフィン例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセンなどとの共重合体である。VLDPEは、好ましくはシングルサイト触媒を用いて作製され、次の特性:約0.5〜約50g/10分のメルトフローレート(ASTM−1238(190℃/2.16Kg))及び0.86〜0.91g/cmの密度(ASTM D−792)を有する。VLDPEは、The Dow Chemical CompanyよりAFFINITY(登録商標)及びENGAGE(登録商標)の商標名で市販されている。エチレン/α−オレフィン共重合体である、AFFINITY(登録商標)樹脂は、一般に拘束幾何触媒(シングルサイト触媒)を用いて製造され、全炭素原子1000個あたり約0.01〜約3の長鎖分枝を含有する。
【0019】
本発明のカップリング剤は、有機官能基を含有する化学物質によるエチレン樹脂の改質により得られる。エチレン樹脂は、単に、主なモノマーがエチレンである樹脂であってよい。有機官能基含有化学物質の例は、不飽和カルボン酸、例えばフマル酸、アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、及びシトラコン酸など;不飽和脂肪族二酸無水物、例えば無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及び4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物など;エポキシ化合物、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びアリルグリシジルエーテルなど;ヒドロキシ化合物、例えば2−ヒドロキシエチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリル酸、及びポリエチレングリコールモノ−アクリレートなど;金属塩、例えばアクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、及びアクリル酸亜鉛など;シラン化合物、例えばビニルトリ−クロロシラン、ビニルトリ−エトキシシラン、ビニルトリ−メトキシシラン、及びメタクリロキシプロピルトリ−メトキシシランなどである。
【0020】
エチレン樹脂(例えば、PE樹脂)は、未改質形態で、約0.1〜約50g/10分の範囲内のメルトインデックス及び約0.860〜0.950g/cmの範囲内の密度を有し得る。それらは、チーグラー・ナッタ触媒系、フィリップス触媒系、又はその他の遷移金属触媒系を用いる従来法により製造されるいずれのエチレン/α−オレフィン共重合体であってもよい。よって、共重合体は、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、0.926〜0.940g/cmの範囲内の密度を有する中密度ポリエチレン(MDPE)、又は0.940g/cmより大きい密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)であり得る。これらのエチレン樹脂はまた、シングルサイトメタロセン触媒を用いることにより製造されるEVA、EEA、高圧低密度ポリエチレン(HP−LDPE)(HP−LDPEはホモポリマーである)、又はエチレン/α−オレフィン共重合体のような樹脂であり得る。これらの様々なエチレン樹脂は、本明細書において総称的にポリエチレンと呼ばれ得る。
【0021】
エチレン樹脂を改質するために添加される上記の有機官能基含有化学物質の量は、好ましくは樹脂の重量に基づいて約0.05〜約10重量パーセントの範囲内である。改質は、例えば、溶液法、懸濁法、又は溶融法により達成することができる。溶液法は、有機官能基含有化学物質、エチレン樹脂、非極性有機溶媒及びフリーラジカル開始剤、例えば有機過酸化物などを混合し、次いでこの混合物を約100〜約160℃に加熱して改質反応を行うことである。ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン及びテトラ−クロロエタンが非極性溶媒の例である。2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、及びベンゾイルペルオキシドが有機過酸化物の例である。懸濁法では、エチレン樹脂、有機官能基含有化学物質を極性溶媒、例えば水などと混合し、次いでフリーラジカル開始剤を添加する。次に、混合物を100℃を超える温度まで加熱して改質されたエチレン樹脂を得る。溶融法では、エチレン樹脂、有機官能基含有化学物質、及びフリーラジカル開始剤を溶融混練機例えば押出機及びBANBURY(登録商標)ミキサーなどに導入して改質されたエチレン樹脂を得る。
【0022】
典型的な無水物改質は、次の通り説明することができる:無水物、有機過酸化物触媒、及び有機溶媒の溶液を微粒子形態のポリエチレンに添加することによりグラフトを達成する。有機過酸化物触媒は有機溶媒に可溶性である。この反応に対して不活性である様々な有機溶媒を用いてよい。有用な有機溶媒の例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、3−ペンタノン、及びその他のケトン類である。過酸化物及び無水物の可溶化を可能にし、かつ適切な脱揮条件下でうまく剥離する、その他のキャリア溶媒を用いてよい。アセトンは、グラフトされていない無水物又は無水物副生成物などの残留物の剥離剤として働くので、好ましい溶媒である。無水物溶液は、溶液の総重量に基づいて、約(abut)10〜約50重量%の無水物;約0.05〜約5重量%の有機過酸化物触媒;及び約50〜約90重量%の有機溶媒を含んでよい。好ましい溶液は、約20〜約40パーセントの無水物;約0.1〜約2パーセントの過酸化物;及び約60〜約80パーセントの溶媒を含む。
【0023】
無水物グラフトポリマーは、100重量部のポリマーあたり約0.05〜約5又は10重量部の無水物を含んでよく、好ましくは100重量部のポリマーあたり約0.1〜約2重量部の無水物を含んでよい。
【0024】
無水物改質はまた、共重合、例えば、エチレン、アクリル酸エチル、及び無水マレイン酸(malefic anhydride)を共重合することによっても達成することができる。重合法は従来のものであり、その下にあるコモノマー、すなわちエチレンと1又はそれ以上のα−オレフィンの重合に類似する。「Maleic Anhydride」, Trivedi et al, Polonium Press, New York, 1982, 第3章、3−2節を参照してよい。この専門書もグラフトを取り上げている。
【0025】
無機難燃剤が、好ましくは本発明において用いられるが、次の物質が例として与えられる:ハント石、ハイドロマグネサイト、三酸化アンチモン、水酸化カリウム、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタ−ホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタ−ホウ酸亜鉛、アルミニウム無水物、モリブデンジスルフィド、クレイ、赤リン、珪藻岩、カオリナイト、モンモリロナイト(montmorilonite)、ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、セライト、アスベスト、及びリトポン。
【0026】
好ましい無機難燃剤は、水和無機難燃充填剤、Mg(OH)及びアルミナ三水和物(ATH)である。充填剤が主にATHを含み、Mg(OH)は、存在する場合、微量成分であることが好ましい。従来の既製の水酸化マグネシウム及びアルミナ三水和物を用いてもよい。
【0027】
組成物中で用いられる充填剤の量は、100重量部の樹脂混合物あたり約50〜約250重量部の水和充填剤の範囲内であってよく、好ましくは約100〜約230重量部の水和充填剤の範囲内である。
【0028】
水和充填剤は、約8〜約24個の炭素原子を有する、好ましくは約12〜約18個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和カルボン酸又はその金属塩で表面処理(コーティング)されてよいが、コーティングは任意選択である。これらの酸及び/又は塩の混合物を、必要に応じて使用してよい。適したカルボン酸の例は、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、及びラウリン酸であり;これらの酸の塩を形成するために用いてよい金属の例は、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、及びバリウムであり;塩自体の例は、マグネシウムステアレート、亜鉛オレエート、カルシウムパルミテート、マグネシウムオレエート、及びアルミニウムステアレートである。酸又は塩の量は、100部の金属水和物あたり約0.1〜約5部の範囲の酸及び/又は塩であってよく、好ましくは100部の金属水和物あたり約0.25〜約3部である。表面処理は、米国特許第4,255,303号に記載されている。酸又は塩は、表面処理手順を用いずに単に同量の組成物に添加することができるが、これは好ましくない。
【0029】
本発明の樹脂成分は、選択された特定の添加剤が組成物に悪影響を与えないという条件で、従来の添加剤と混合することができる。添加剤は、成分の混合の前又は間、あるいは押出の前又は間に樹脂組成物に添加してよい。添加剤には、酸化防止剤、紫外線吸収剤又は安定剤、帯電防止剤、色素、染料、核剤、補強充填剤又はポリマー添加剤、抵抗率変性剤(resistivity modifiers)例えばカーボンブラックなど、スリップ剤、可塑剤、加工助剤、滑沢剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、充填剤、難燃性添加剤、架橋促進剤(crosslinking boosters)及び触媒、並びに防煙剤が含まれる。添加剤は、それぞれ100重量部の樹脂に対して約0.1未満から約5重量部より多い範囲の量で添加されてよい。充填剤は、一般に200重量部又はそれ以上のより多い量で添加される。
【0030】
酸化防止剤の例は、ヒンダードフェノール類、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]−メタン、ビス[(β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4'−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメートなど;ホスファイト類及びホスホナイト類、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホナイトなど;チオ化合物類、例えばジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなど;様々なシロキサン類;及び様々なアミン類、例えば重合した2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどである。酸化防止剤は、100重量部の樹脂あたり約0.1〜約5重量部の量で用いることができる。
【0031】
好ましくは本発明で用いられるシリコーンオイルは、次式:R−Si−O(R−Si−O)−R−Si−O−R(式中、各々のRは、独立に、飽和もしくは不飽和アルキル基、アリール基、又は飽和もしくは不飽和アルキル基、アリール基、又は水素原子であり、nは1〜5000である)により例示され得る。典型的な基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、フェニル、又はビニルである。シリコーンオイルはまた、グリシジル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、又は高級脂肪酸変性シリコーンオイルであってよい。シリコーンオイルの粘度は、25℃で約0.65〜約1,000,000センチストークの範囲内、好ましくは約5000〜約100,000センチストークの範囲内、最も好ましくは約10,000〜約100,000センチストークの範囲内であってよい。シリコーンオイル成分は、配合物中約1〜約5重量%の量で使用される。
【0032】
様々な樹脂を、必要に応じて従来法で架橋することができる。架橋は、通常有機過酸化物によって達成され、その例は、グラフトに関して言及される。用いる架橋剤の量は、それぞれ100重量部の樹脂に対して約0.5〜約4重量部の範囲の有機過酸化物であってよく、好ましくは約1〜約3重量部の範囲内である。また、架橋は、照射又は湿分によって、あるいは型の中でも、公知の技法に従って行うことができる。架橋温度は、約150〜約250℃の範囲内であってよく、好ましくは約170〜約210℃の範囲内である。
【0033】
また、組成物は、均一に配合された組成物を得るためにBANBURY(登録商標)ミキサー、HENSCHEL(登録商標)ミキサー、混練機、多軸スクリュー押出機、又は連続ミキサーを用いてブレンド及び混練することができる。
【0034】
樹脂組成物は混合されてよく、樹脂組成物でコーティングされたケーブルを様々な種類の押出機で作製することができる。すべての種類の単軸スクリュー及び二軸スクリュー押出機並びにポリマー溶融ポンプ及び押出プロセスは、一般に、それらが混合又はフォーミングのために適合する限り、本発明のプロセスを行う際に適したものとなる。一般に成形加工押出機と呼ばれる、典型的な押出機は、その上流末端に固体樹脂供給ホッパー、及びその下流末端に溶融形成ダイを有する。ホッパーは、流動していない(unfluxed)プラスチックを、フォーミングダイを通じてプラスチック溶融体を流動させて最終的にポンプ輸送する加工プロセシングスクリュー(類)を含むバレルの供給部に供給する。下流末端の、スクリューの末端とダイとの間には、多くの場合スクリーンパック及びダイ又はブレーカープレートが存在する。成形加工押出機は、一般に、固体樹脂の運搬及び圧縮、プラスチックの溶融(fluxing)、溶融混合及び溶融体ポンプ輸送の機構を達成するが、一部の二段階構成は溶融体ポンプ輸送機構に別々の溶融体供給押出機(melt fed extruder)又はメルトポンプ装置を使用する。押出機バレルは、起動のためのバレル加熱及び冷却特性ならびに改良された定常状態温度制御を装備する。現代の装置は、通常、後部供給帯から始まってバレルと下流の形成ダイを分割する複数の加熱/冷却帯を組み込んでいる。それぞれのバレルの長さと直径の比は、一般に約15:1〜約30:1の範囲内である。
【0035】
本発明の利点は、優れた耐炎性及び耐熱性、従来の生成物に優る機械的性質、良好な成形性、良好な低温性能、良好な絶縁特性、良好な加工性及び柔軟性、並びに、ハロゲンを用いるシステムの燃焼中に被るような有害なガス又は腐食性の煙が本質的に放出されないことを備えた耐亀裂性配合物を製造することにある。この耐亀裂性配合物は、多様なケーブルのための、かつ低電圧ケーブルの絶縁のための汎用低煙ゼロハロゲン外被としての使用に適している。
【0036】
言及したように、本発明を一般に適用可能なケーブルは、1又はそれ以上の電気導体又は通信媒体、あるいは2又はそれ以上の電気導体又は通信媒体のコアを含み、それぞれの電気導体、通信媒体、又はコアは、絶縁組成物に取り囲まれている。電気導体は、一般に銅であり、通信媒体は一般にガラス繊維から作られるファイバーオプティックスである。用語「ケーブル」には、上記のように電線及び外装ケーブルが含まれる。
【0037】
米国特許実務のために、本願中で言及される特許、特許出願及びその他の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0039】
例示的な配合物を、0.86〜0.910g/cmの密度を有する代替ポリエチレンカップリング剤を用いて調製した。配合物1(表1)は、高融点カップリング剤官能性ポリマー(融点117℃)を含む。配合物2(表1)は、低融点カップリング剤官能性ポリマー(融点63℃)を含む。双方とも、示される条件下でBrabender(登録商標)ミキサーを用いて調製された。配合物3(表3)は、無水マレイン酸改質ポリエチレン(du Pont de Nemours,Incから市販されているカップリング剤(3))を使用した。また、MAHカップリング剤の供給業者による製品カタログに従って、配合物1で用いたカップリング剤を、0.900g/cm未満の密度を有するチーグラー・ナッタ触媒(マルチサイト触媒)VLDPEと配合し、一方、配合物2及び3で用いたカップリング剤を、シングルサイト触媒を用いて作製したベース樹脂と配合する。
【0040】
以下の条件を使用した:
【0041】
バッチサイズ:350g;すべての成分をボウル内に入れてブラベンダー(登録商標)を1分あたり20回転(rpm)で開始させる。ひとたび溶融温度が132℃に達したら、ミキサーの毎分回転数を50に増加し、この条件下で10分間維持した後バッチを排出する。ミキサーボウル中の最大溶融温度は155℃であった。排出したバッチをロールミルし、示されるようにペレット化した。
【0042】
次に、ペレットを、14 AWG 7ストランド銅心線に実験室Brabenderの電線ラインで電線上に30及び45ミル壁厚で押出した。電線には、一の直径のマンドレル(電線と同じ直径)の周囲を7回巻いた。巻かれた電線は、次にオーブン内で100℃で熱老化され、亀裂は配合物1を押出した電線についてさらに一層顕著であることが見出された。電線は、121℃及び150℃でも評価された。低融点無水マレイン酸カップリング剤(2)を含む配合物2は、100℃の熱老化で亀裂に対してより抵抗性であることが見出された。配合物1は、目視検査に対して平均して最初の0.2日以内に亀裂し、それに対して、配合物2については10日後も亀裂がゼロであった。両方の配合物は、物理的特性(引張/伸長)、炎、煙についてチェックされ、本質的に等価であることが見出された。
【0043】
樹脂Aは、上記のエチレン−エチルアクリレートであり、The Dow Chemical Companyより市販されている。
【0044】
樹脂Bは、エチレン−オクテン共重合体であり、これもThe Dow Chemical Companyより市販されている。
【0045】
カップリング剤(1)、(2)、(3)は、Dow Chemical Companyから(それぞれAmplify(登録商標)GR−208及びAmplify(登録商標)GR−216の商標名で)市販されている無水マレイン酸グラフトポリエチレン((1)及び(2))、並びに、E.I.du Pont Chemical Company(3)である。
【0046】
ステアリン酸は、18炭素の脂肪酸加工助剤及び充填剤表面処理剤である;
【0047】
酸化防止剤は、Ciba Specialty Chemicalsより商標名Irganox1010で商業的に入手可能なフェノール系抗酸化剤である。
【表1】

【0048】
異なる供給源の炭酸カルシウムを配合物第2番で使用した場合に、その他の特性にはあまり影響を及ぼさずに、亀裂性能(すなわち耐亀裂性)に、同じ劇的かつ予期せぬ改善が観察された。
【表2】

【表3】

【表4】

【0049】
実施例3をさらなる例として与える。カップリング剤官能性ポリマー(3)も、物理的特性と亀裂性能の良好なバランスを供した。それは、配合物中に用いたカップリング剤の融点温度がより低いほうが亀裂問題を取り除く助けとなることをさらに示す。実施例中に言及される充填剤カップリング剤のいくつかの特性も下の表5に列挙する。
【表5】

【0050】
上記の実施例で使用したカップリング剤は、配合物中で用いる充填剤とポリマーとの接着性を向上させるために(一般に無水マレイン酸グラフトにより)官能化されている改質ポリマーである。無水マレイン酸のレベルを調節して、配合物中に中程度レベル(中)又は「高」レベルのグラフトを得る。カップリング剤中で用いる無水マレイン酸の正確なレベルは、供給業者により開示されていない。充填剤とポリマーの接着という見地から、より高レベルの無水マレイン酸コモノマーグラフトレベルが、結合を改善する助けとなる。これらのMAHレベルの特性表示は、MAH供給業者の特性表示である。
【0051】
BS60811−3−1のようにケーブル老化試験では、約30〜約40cmの3本のケーブルサンプルをリールから切断する。これらのケーブルサンプルを、外被又はケーブルがどんな物体にも直接接触していないことを確実にすることにより、100℃のオーブン中で7日間吊り下げたままにする。外被の亀裂を、最初は1時間ごとに6時間まで、その後は毎日裸眼でチェックする。これまでの結果に基づくと、亀裂は、もしあるとすれば、試験の1〜2日以内に起こると思われる。亀裂したケーブルと亀裂しないケーブルの写真を図1に示す。
【0052】
本発明を先行する具体的な実施形態によってある程度詳細に説明したが、この詳細は、説明のためのものである。以下の特許請求の範囲に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変形及び変更が当業者によって行われてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.エチレンエチルアクリレート(EEA)又はエチレンビニルアセテート(EVA)共重合体のうちの少なくとも1種;
B.α−オレフィン共重合体;
C.(1)シングルサイト触媒によって作製され、(2)0.5〜10重量パーセント(重量%)のMAH由来単位を含有し、かつ(3)融点温度が90℃未満である、無水マレイン酸(MAH)グラフト超低密度ポリエチレン(VLDPE);
D.難燃性無機充填剤;
E.任意の防煙剤;及び
F.任意の加工助剤
を含むハロゲンフリーコーティング組成物。
【請求項2】
EEA又はEVAのうちの少なくとも1種が、組成物の15〜25重量パーセント(重量%)を占め、α−オレフィン共重合体が、組成物の5〜20重量%を占め、MAHグラフトVLDPEが、組成物の3〜10重量%を占め、かつ、難燃性無機充填剤が、組成物の40〜65重量%を占める、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
難燃性無機充填剤が、アルミナ三水和物と水酸化マグネシウムのうちの少なくとも1種である、請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
防煙剤がシリコーンオイルであり、組成物の1〜5重量%の量で存在する、請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
加工助剤がステアリン酸であり、組成物の0.1〜5重量%の量で存在する、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
α−オレフィンポリマーが、0.91g/cm又はそれ以下の密度を有するポリエチレンである、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
EEAが、5〜40重量%の間のエチルアクリレート由来単位を含み、EVAが、5〜40重量%の間のビニルアセテート由来単位を含む、請求項6に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
酸化防止剤、紫外線吸収剤又は安定剤、帯電防止剤、色素、染料、核剤、抵抗率変性剤、スリップ剤、可塑剤、滑沢剤、粘度調整剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、架橋剤、並びに架橋促進剤及び触媒からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物を含む、ケーブル保護用外側外被。
【請求項10】
請求項9に記載の外側外被を含む、ケーブル。

【図1】
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【公表番号】特表2012−503042(P2012−503042A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526926(P2011−526926)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056070
【国際公開番号】WO2010/033396
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】