説明

耐加水分解性ポリアミド組成物、およびそれより形成された物品

約240℃以下の融点と、少なくとも約30μeq/gのアミン末端と、少なくとも約1.2の固有粘度とを有するコポリアミドを含む、優れた耐加水分解性を示すポリアミド組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な可撓性を有する耐加水分解性ポリアミド組成物、およびそれから製造された物品に関する。本発明のポリアミド組成物は、約240℃以下の融点と、少なくとも約30μeq/gのアミン末端と、少なくとも約1.2の固有粘度とを有するコポリアミドを含む。
【背景技術】
【0002】
物理的性質および耐薬品性が良好であるために、種々のポリアミドは、エンジニアリングポリマーとして多くの用途が見いだされている。このような用途の多くでは、ポリアミドが水と接触することが要求され、多くの用途で高温が要求される。例としては、地球内部からの熱油と接触する海底油送管、および自動車ラジエーターの配管が挙げられる。このような条件下では、多くのポリアミドのアミド結合は、水の存在下で加水分解が起こりやすくなる場合があり、温度とともに加水分解速度は増加する。アミド結合の加水分解によって、分子量の低下を引き起こすことがあり、それに伴って物理的性質が低下し、使用中に管が破壊されることがある。このような破壊は、突発的である場合があり、流体が流出することで、配管が内部に組み込まれる装置の性能の低下から、流体の周囲環境との接触までに及ぶ望ましくない結果が生じうる。
【0003】
管および他の管状構造を製造するためにポリアミド6,12またはポリアミド11などの脂肪族ポリアミドが使用されてきたが、多くの用途では、現在利用可能なポリアミドで得られるよりも高い耐加水分解性が要求されている。
【0004】
【非特許文献1】コーハンM.I.編著(Kohan,M.I.Ed.)、ナイロンプラスチックハンドブック(Nylon Plastics Handbook)、ハンサー(Hanser):ミュンヘン(Munich)、1995;79頁
【非特許文献2】ウォルツ(Waltz),J.E.;テイラー(Taylor)、G.B.Anal.Chem.1947 19、448−50頁
【非特許文献3】コーハンM.I.編著(Kohan,M.I.Ed.)、ナイロンプラスチックハンドブック(Nylon Plastics Handbook)、ハンサー(Hanser):ミュンヘン(Munich)、1995;13−32頁
【非特許文献4】API(米国石油協会(American Petroleum Institute))技術レポート(Technical Report)17TR2,June 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
良好な耐加水分解性を有し、管およびその他の押出物品の製造に有用となるために好都合に可塑化することができるポリアミドを得ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
コポリアミドを含むポリアミド組成物であって、コポリアミドは、
(a)(i)8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸、および/または8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸、ならびに4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに
(ii)6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジアミン、および/または6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂環式ジアミン、ならびに4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸
からなる群の1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位と;
(b)(iii)6〜36個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸、および4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに
(iv)4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つのラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群の1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位と
を含み;
上記コポリアミドが、約240℃以下の融点と、少なくとも約30μeq/gのアミン末端と、m−クレゾール中で測定して少なくとも約1.2の固有粘度とを有する、ポリアミド組成物が、本明細書において開示され請求される。
【0007】
上記組成物から製造される製品が、本明細書においてさらに開示され請求される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書全体で多数の用語が使用されており、以下の説明が、それらの範囲および意味の理解に役立つであろう。本明細書おいて使用され、当業者によって理解されているように、用語「テレフタル酸」、「イソフタル酸」、および「ジカルボン酸/二酸」は、これらの材料の対応するカルボン酸誘導体をも意味しており、そのような誘導体としてはカルボン酸エステル、ジエステル、および酸塩化物を挙げることができる。さらに、本明細書において使用され、当業者には理解されているように、ポリアミドとともに使用される用語「耐加水分解性」は、水に曝露した後で、その分子量を維持するポリアミドの能力を意味する。用語「コポリアミド」は、2つ以上の異なる繰り返し単位を有するポリアミドを意味する。
【0009】
本発明のポリアミド組成物はコポリアミドを含み、コポリアミドは、(i)8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸および/または8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸、ならびに4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに(ii)6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジアミン、および/または6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂環式ジアミン、ならびに4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位(a)を含む。このコポリアミドは、(i)6〜36個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸、および4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに(ii)4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つのラクタムおよび/またはアミノカルボン酸からなる群の1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位(b)をさらに含む。
【0010】
「芳香族ジカルボン酸」は、各カルボキシル基が芳香環に直接結合しているジカルボン酸を意味する。好適な芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナトファレンジカルボン酸(1,5−nathphalenedicarboxylic acid)、2,6−ナトファレンジカルボン酸(2,6−nathphalenedicarboxylic acid)、および2,7−ナトファレンジカルボン酸(2,7−nathphalenedicarboxylic acid)が挙げられる。テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましい。「脂環式ジカルボン酸」は、シクロヘキサン環などの飽和炭化水素環を有するジカルボン酸を意味する。このカルボキシル基は、好ましくは、飽和炭化水素環に直接結合している。好適な脂環式ジカルボン酸の一例としては1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0011】
「芳香族ジアミン」は、芳香環を有するジアミンを意味する。好適な芳香族ジアミンの一例はm−キシリレンジアミンである。「脂環式ジカルボン酸」は、飽和炭化水素環を有するジアミンを意味する。好適な脂環式ジアミンの例としては、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、およびビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンが挙げられる。あらゆる立体異性体の脂環式ジアミンを使用することができる。
【0012】
6〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、ノナン二酸、デカン二酸(セバシン酸とも呼ばれる)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、およびテトラデカン二酸が挙げられる。4〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンは、線状であっても分岐していてもよい。好ましいジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、メチル−1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、および1,12−ジアミノドデカンが挙げられる。ラクタムの例としては、カプロラクタムおよびラウロラクタムが挙げられる。アミノカルボン酸の一例としてはアミノデカン酸が挙げられる。
【0013】
好ましいコポリアミドは、半芳香族コポリアミドである。コポリアミドは、好ましくは、テレフタル酸および/またはイソフタル酸、ならびにヘキサメチレンジアミンから誘導される繰り返し単位(a)、ならびに、ノナン二酸およびヘキサメチレンジアミン;デカン二酸およびヘキサメチレンジアミン;ウンデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン;ドデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン;トリデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン;テトラデカン二酸およびヘキサメチレンジアミン;カプロラクタム;ラウロラクタム;ならびに11−アミノウンデカン酸の1つまたは複数から誘導される繰り返し単位(b)を含む。
【0014】
好ましいコポリアミドの1つは、テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンから誘導される繰り返し単位(a)、ならびにデカン二酸および/またはドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンとから誘導される繰り返し単位(b)を含む。
【0015】
本発明のコポリアミドは、少なくとも約30μeq/gのアミン末端を有し、好ましくは少なくとも約40μeq/g、より好ましくは少なくとも約50μeq/g、さらにより好ましくは少なくとも約60μeq/gのアミン末端を有する。アミン末端の量は、滴定によって求められる。アミン末端は、フェノール/メタノール/水の混合物(50:25:25の体積比)中のポリアミドの2パーセント溶液を0.1N塩酸で滴定することによって求めることができる。終点は、電位差または電気伝導度の測定によって求めることができる。((非特許文献1)および(非特許文献2)を参照されたい)。
【0016】
本発明のコポリアミドは、ASTM D5225に準拠してm−クレゾール中で測定される固有粘度が少なくとも約1.2である。
【0017】
本発明のコポリアミドの融点は、約240℃以下、好ましくは約230℃以下、さらにより好ましくは約220℃以下である。「融点」は、ISO 11357およびASTM D3418に準拠して測定されるポリマーの第2の融点を意味する。
【0018】
本発明のコポリアミドは、オートクレーブなどを使用したバッチ方法、または連続方法の使用など当業者に周知のあらゆる手段によって調製することができる。たとえば、(非特許文献3)を参照されたい。潤滑剤、消泡剤、およびエンドキャッピング剤などの添加剤を重合混合物に加えることができる。
【0019】
本発明のポリアミド組成物は、コポリアミド単独を含むこともできるし、場合により添加剤を含むこともできる。好ましい添加剤は少なくとも1つの可塑剤である。この可塑剤は好ましくは、コポリアミド混和性である。好適な可塑剤の例としては、スルホンアミド、好ましくはベンゼンスルホンアミドおよびトルエンスルホンアミドなどの芳香族スルホンアミドが挙げられる。好適なスルホンアミドの例としては、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドなどのN−アルキルベンゼンスルホンアミドおよびトルエンスルホンアミドが挙げられる。N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、およびN−エチル−p−トルエンスルホンアミドが好ましい。
【0020】
可塑剤は、ポリマーを、可塑剤および場合により他の成分と溶融混合することによって組成物中に混入させることができるし、重合中に混入させることもできる。可塑剤が重合中に混入される場合、コポリアミドモノマーを1つまたは複数の可塑剤と混合した後、重合サイクルを開始し、この混合物を重合反応器に導入する。あるいは、重合サイクル中に可塑剤を反応器に加えることもできる。
【0021】
可塑剤が使用される場合、可塑剤は組成物中に約1〜約20重量パーセント、より好ましくは約6〜約18重量パーセント、さらにより好ましくは約8〜約15重量パーセントで存在し、これらの重量パーセント値は組成物の全重量を基準としている。
【0022】
ポリアミド組成物は、場合により、熱安定剤、酸化安定剤、および/または光安定剤;着色剤;潤滑剤;離型剤などのさらなる添加剤を含むことができる。このような添加剤は、結果として得られる材料に望まれる性質により従来量で加えることができ、所望の性質に対するこれらの量の制御は当業者の知識の範囲内である。
【0023】
添加剤が存在する場合、あらゆる周知の方法を使用した溶融混合によって、本発明のポリアミド組成物中に添加剤を混入させることができる。これらの成分材料を、一軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、バンバリー(Banbury)ミキサーなどの溶融混合機を使用して均一に混合することで、ポリアミド組成物を得ることができる。あるいは、一部の材料を溶融混合機中で混合し、次に残りの材料を加えて、均一になるまでさらに溶融混合することもできる。
【0024】
本発明のポリアミド組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、熱成形などのあらゆる好適な溶融加工技術を使用して成形物品にすることができる。
【0025】
本発明のポリアミド組成物は、良好な耐加水分解性を有し、好都合に可塑化することができる。押出成形によって管およびチューブなどの物品を形成するのに特に好適である。
【実施例】
【0026】
(耐加水分解性の測定)
当技術分野においては周知であるが、ポリアミドは加水分解すると物理的性質が低下することが多い。多くの場合この物理的性質の低下は、ポリアミドの固有粘度の低下と直接相関がある。劣化の程度は、ポリアミドの固有粘度の経時による低下を観察することによって好都合に研究することができる。このような方法は、(非特許文献4)に記載されており、以下の手順はこの方法に基づいている。
【0027】
組成物を標準ISO引張試験片に成形し、それを圧力容器中の蒸留水に浸漬することで耐加水分解性試験を行った。水および試料は、真空下で30分間維持した後、高純度アルゴンを水中に30分間バブリングして溶存酸素を除去した。次に、この容器を密閉し、従来の電気マントルヒーターに入れた。容器の壁の中のサーモウェル内の熱電対を使用して容器中の温度を制御して105±1℃に維持し、間隔を開けて試料を抜き取り、それらの固有粘度および可塑剤含有率を測定した。各試料を抜き取った後、水を戻し、新しい試料を加え、新しい試料を加え、この手順を繰り返した。次に、後述するように各試料について、固有粘度(IV)および可塑剤含有率を補正した固有粘度(CIV)を求めた。
【0028】
(固有粘度)
固有粘度(IV)は、m−クレゾール中にポリマー試料を溶解させ、ASTM 2857に準拠した毛細管粘度計中でIVを測定することによって行った。試料中に存在する可塑剤が加水分解中に浸出することで測定IVに影響することがあるため、各試料中に存在する可塑剤量を補正する必要があった。
【0029】
各試料中の可塑剤量を補正するために、真空下で試料を加熱し、加熱中に生じる重量減を測定することによって、重量パーセント可塑剤含有率を測定した。可塑剤含有率を補正した固有粘度(CIV)は式(1)によって計算した(式中の可塑剤%は、試料中に存在する可塑剤の重量パーセント値である):
【0030】
【数1】

【0031】
CIVのパーセント低下率は式(2)によって計算され:
【0032】
【数2】

【0033】
上式中、CIV(t=x)は時間xに採取した試料のCIVであり、CIV(t=0)は加水分解試験前に採取した試料のCIVである。
【0034】
%CIV低下率をlog10(時間)の関数としてプロットし、式中の時間は、各試料を105±1℃の圧力容器中の水に曝露した時間の量を、時間の単位で表したものである。log10(時間)の関数としての%CIV低下率のプロットに対して線形最小自乗フィットを行い、500時間における%CIV低下率の値を、この最小自乗フィットからの補間によって計算した。各試料および比較例の結果を以下に報告する。
【0035】
(末端分析)
ポリアミド溶液の滴定によって末端基分析を行った。
【0036】
0.0005gの精度で秤量した2.9〜3.1グラムの試料を、170±5℃の温度の75mLのベンジルアルコール中に溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として使用して体積比9:1のベンジルアルコール/メタノール混合物中0.05NのNaOHで滴定を行うことによって、ポリマーのカルボキシル末端基(−COOH)を求めた。同じ条件下で75mLのベンジルアルコールを使用して空滴定を行った。正味の滴定量は、試料の滴定量と空滴定の滴定量との差である。
【0037】
滴定によってアミン末端基(−NH2)を測定した。ポリマー(0.0001gの精度で2.5〜3.0gを秤量した)を、85重量パーセントのフェノールおよび15重量パーセントのメタノールを含む90mLの溶液中で穏やかに撹拌し加熱しながら溶解させた。次に、この溶液について、0.5Nの過塩素酸で電位差滴定を行った。
【0038】
このように計算した末端測定値は、末端測定値を(1−存在する可塑剤の重量分率)で除することによって、ポリマー中に存在する可塑剤を補正した。
【0039】
(比較例1)
11重量パーセントの可塑剤N−ブチルベンゼンスルホンアミドを含有するポリアミド11組成物であり、アルケマ・インコーポレイテッド(Arkema,Inc.)より市販されるリルサン(Rilsan)(登録商標)ベンソ(Benso)P40TLを、標準ISO試験片に成形した。リルサン(Rilsan)(登録商標)ベンソ(Benso)P40TLは、可塑剤含有率を補正した場合に33.5μeq/gのアミン末端、および35.3μeq/gの酸末端を有した。ISO試験片を使用してリルサン(Rilsan)(登録商標)ベンソ(Benso)P40TLの耐加水分解性を求めた。結果を表1に示す。500時間における%CIV低下率を測定すると31.1%であった。
【0040】
【表1】

【0041】
(比較例2)
水中でヘキサメチレンジアミンおよび1,12−ドデカン二酸から調製されpHが約8.0である5,700ポンドの45重量パーセントポリアミド6,12塩溶液を蒸発器に投入した。次に、従来の消泡剤の10重量パーセント水溶液250gをこの塩溶液に加えた。次に、蒸発器中に得られた溶液を、35psiaにおいて水中80重量パーセントとなるまで濃縮した。次に、得られた濃縮溶液および480ポンドのN−ブチルベンゼンスルホンアミド可塑剤をオートクレーブに入れ、圧力を265psiaまで上昇させながら加熱した。蒸気を排出し、バッチ温度が255℃に到達するまで加熱を続けた。次に、圧力をゆっくりと14.7psiaまで低下させながら、バッチ温度を280℃までさらに上昇させた。次に、圧力を14.7psiaで維持し、温度を280℃で30分間維持した。最後に、得られたポリマー溶融物をストランドに押し出し、冷却し、ペレットに切断し、窒素下160℃で乾燥させた。得られたポリアミド6,12を本明細書ではC1と記載する。
【0042】
以下の処方で、乾燥した安定剤粉末をC1樹脂ペレットと混合した:98.4重量パーセントのC1樹脂ペレット、0.5重量パーセントのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)234、0.4重量パーセントのイルガフォス(Irgafos)(登録商標)168、0.4重量パーセントのイルガノックス(Irganox)(登録商標)1098、および0.3重量パーセントのチマソルブ(Chimassorb)(登録商標)944。各安定剤は、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)より市販されている。これらの成分を、ドラム中で混転した後、その乾燥成分混合物を成形機中で配合して、標準ISO試験片に成形した。
【0043】
この結果得られた配合C1混合物は、22.1μeq/gのアミン末端および60.1μeq/gの酸末端を有した。ISO試験片を使用して、配合C1混合物の耐加水分解性を測定した。結果を表2に示す。500時間における%CIV低下率を計算すると39.8%であった。
【0044】
【表2】

【0045】
(比較例3)
水中でヘキサメチレンジアミンおよび1,12−ドデカン二酸から調製されpHが約7.7である1712.8gの44.56重量パーセントポリアミド6,12塩溶液と、水中でヘキサメチレンジアミンおよびテレフタル酸から調製されpHが8.0±0.2である229.3gの40重量パーセントポリアミド6,T塩溶液とを、オートクレーブに入れた。次に、従来の消泡剤の10重量パーセント水溶液250g、0.014gの次リン酸ナトリウム、および51.1gのN−ブチルベンゼンスルホンアミドを上記オートクレーブに加えた。次に、得られた溶液を、35psiaにおいて水中80重量パーセントとなるまで濃縮した。次に、得られた濃縮溶液をオートクレーブ中に維持して加熱しながら、圧力を240psiaまで上昇させた。蒸気を排出し、バッチ温度が241℃に到達するまで加熱を続けた。次に、圧力をゆっくりと14.7psiaまで低下させながら、バッチ温度を270℃までさらに上昇させた。次に、圧力を14.7psiaで維持し、温度を280℃で60分間維持した。最後に、得られたポリマー溶融物をストランドに押し出し、冷却し、ペレットに切断し、窒素下160℃で乾燥させた。得られた可塑化ポリアミド6,12/6,Tを本明細書ではC2と記載する。
【0046】
以下の処方で、乾燥した安定剤粉末をC2樹脂ペレットと混合した:98.4重量パーセントのC2樹脂ペレット、0.5重量パーセントのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)234、0.4重量パーセントのイルガフォス(Irgafos)(登録商標)168、0.4重量パーセントのイルガノックス(Irganox)(登録商標)1098、および0.3重量パーセントのチマソルブ(Chimassorb)(登録商標)944。各安定剤は、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)より市販されている。これらの成分を、ドラム中で混転した後、その乾燥成分混合物を成形機中で配合して、標準ISO試験片に成形した。
【0047】
この結果得られた配合C2混合物は、22.6μeq/gのアミン末端および126.4μeq/gの酸末端を有した。ISO試験片を使用して、配合C1混合物の耐加水分解性を測定した。結果を表3に示す。500時間における%CIV低下率を計算すると29.5%であった。
【0048】
【表3】

【0049】
(実施例1)
1,2−ドデカン二酸対テレフタル酸のモル比を85:15として、水中でヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカン二酸、およびテレフタル酸から、209.6ポンドの40.08重量パーセントのポリアミド6,12/6,T塩溶液を調製した。この塩溶液はpHが9.0±0.2であり、この塩溶液をオートクレーブに加え、これとともに従来の消泡剤の10重量パーセント水溶液3.4g、3.4gの次リン酸ナトリウム、8.5gの重炭酸ナトリウム、および20.4gの氷酢酸もオートクレーブに加えた。次にこの溶液を加熱しながら、圧力を265psiaまで上昇させ、その圧力に到達した時点で蒸気を排出することで圧力を265psiaに維持し、バッチ温度が245℃に到達するまで加熱を続けた。次に、圧力をゆっくりと11.0psiaまで低下させながら、バッチ温度を265〜275℃までさらに上昇させた。次に、圧力を11.0psiaで維持し、温度を265〜275℃で10分間維持した。最後に、得られたポリマー溶融物をストランドに押し出し、冷却し、ペレットに切断した。得られたポリアミド6,12/6,Tを本明細書ではE1と記載し、このポリアミドの融点は約191±2℃であった。
【0050】
1,2−ドデカン二酸対テレフタル酸のモル比を85:15として、水中でヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカン二酸、およびテレフタル酸から、209.6ポンドの40.08重量パーセントのポリアミド6,12/6,T塩溶液を調製した。この塩溶液はpHが9.0±0.2であり、この塩溶液をオートクレーブに加え、これとともに従来の消泡剤の10重量パーセント水溶液3.4g、3.4の次リン酸ナトリウム、8.5gの重炭酸ナトリウム、および117.5gのN−ブチルベンゼンスルホンアミドもオートクレーブに加えた。次にこの溶液を加熱しながら、圧力を265psiaまで上昇させ、その圧力に到達した時点で蒸気を排出し、バッチ温度が245℃に到達するまで加熱を続けた。次に、圧力をゆっくりと6.0psiaまで低下させながら、バッチ温度を265〜275℃までさらに上昇させた。次に、圧力を6.0psiaで維持し、温度を265〜275℃で25分間維持した。最後に、得られたポリマー溶融物をストランドに押し出し、冷却し、ペレットに切断し、窒素下160℃で乾燥させた。得られた可塑化ポリアミド6,12/6,Tを本明細書ではE2と記載し、このポリアミドの融点は約186±2℃であった。
【0051】
以下の処方で、乾燥した安定剤粉末をE1樹脂ペレットと混合した:78.4重量パーセントのC2樹脂ペレット;17.2重量パーセントの、無水マレイン酸改質エチレン/プロピレン/ジエンポリマー(EPDM)を含む衝撃改質剤であるフサボンド(Fusabond)(登録商標)MF521D(本願特許出願人より供給されている);1.4重量パーセントのチヌビン(Tinuvin)(登録商標)234;1.1重量パーセントのイルガフォス(Irgafos)(登録商標)168;1.1重量パーセントのイルガノックス(Irganox)(登録商標)1098;および0.9重量パーセントのチマソルブ(Chimassorb)(登録商標)944。各安定剤は、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)より市販されている。これらの成分を30mmのW&P押出機中で溶融混合し、水中で急冷し、窒素ブランケット下で冷却した。この混合物を本明細書ではE3と記載する。
【0052】
E2(65重量パーセント)およびE3(35重量パーセント)のペレットを、ドラム中で混転することによって乾式混合した。これより得られたキューブ状のブレンドを成形機中で標準ISO試験片に成形した。得られたE2/E3溶融混合物は、64.3μeq/gのアミン末端および82.5μeq/gの酸末端を有した。ISO試験片を使用して、E2/E3溶融混合物の耐加水分解性を測定した。結果を表4に示す。500時間における%CIV低下率を計算すると−9.0%であった。
【0053】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリアミドを含むポリアミド組成物であって、前記コポリアミドは、
(a)(i)8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸、および/または8〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸、ならびに4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに
(ii)6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族ジアミン、および/または6〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂環式ジアミン、ならびに4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸
からなる群の1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位と、
(b)(iii)6〜36個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸、および4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族ジアミン、ならびに
(iv)4〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つのラクタムおよび/またはアミノカルボン酸
からなる群の1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される繰り返し単位と
を含み;
前記コポリアミドが、約240℃以下の融点と、少なくとも約30μeq/gのアミン末端と、m−クレゾール中で測定して少なくとも約1.2の固有粘度とを有することを特徴とするポリアミド組成物。
【請求項2】
繰り返し単位(b)がデカン二酸および/またはドデカン二酸、ならびにヘキサメチレンジアミンから誘導されることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
モノマー(iii)の前記脂肪族ジカルボン酸が、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、およびテトラデカン二酸の1つまたは複数から選択され、(iii)の前記脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアム(hexamethylenediame)であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記ラクタムおよび/またはアミノカルボン酸が、ラウロラクタム、カプロラクタム、および11−アミノウンデカン酸の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記コポリアミドが、約80〜約99重量パーセントで存在し、約1〜約20重量パーセントの可塑剤をさらに含み、重量パーセント値が前記組成物の全重量を基準としていることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記可塑剤がスルホンアミドであることを特徴とする請求項5に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記可塑剤が、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド、N−エチル−o−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、およびp−トルエンスルホンアミドの1つまたは複数であることを特徴とする請求項5に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
熱安定剤、酸化安定剤、および/または光安定剤;離型剤;着色剤;ならびに潤滑剤の1つまたは複数をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
前記コポリアミドが少なくとも約40μeq/gのアミン末端を有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
前記コポリアミドが少なくとも約50μeq/gのアミン末端を有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
前記コポリアミドが少なくとも約60μeq/gのアミン末端を有することを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
前記コポリアミドの融点が約230℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項13】
前記コポリアミドの融点が約220℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のポリアミド組成物を含むことを特徴とする物品。

【公表番号】特表2009−511674(P2009−511674A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534737(P2008−534737)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/039238
【国際公開番号】WO2007/044573
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】