説明

耐塩性ポリアミド組成物

指定された比率で1,6−ヘキサンジアミンと、ジカルボン酸である、1,10デカン二酸および/または1,12−ドデカン二酸と、テレフタル酸とから製造されたポリアミドは、塩応力(誘発)腐食割れに対して特に抵抗性である。これによって、これらのポリアミドは塩にさらされ得る車両部品として特に有用になる。特に、これらのポリアミドが強化剤および/または可塑剤を含有する時、これらのポリアミドは、ホースおよびチューブのために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1,12−ドデカン二酸および/または1,10デカン二酸と、テレフタル酸と、1,6−ヘキサンジアミンとから製造され、これらの2種の二酸を特定の比で含有するポリアミドは、塩によって引き起こされる応力割れに対して優れた抵抗性を有する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含む高分子材料は、自動車車両中で、および他の目的のために広く用いられている。高分子材料は、軽量で、且つ複雑な部品に作り上げるのに比較的容易であり、従って、多くの場合に金属の代わりに好まれる。しかし、幾つかの金属合金および幾つかのポリマーに関わる問題は、応力下にあるとともに無機塩と接触している時、応力下の部品が加速腐食を受ける塩応力(誘発)腐食割れ(SSCC)である。これは、部品の割れおよび早期破損の原因となることが多い。
【0003】
ポリアミド6,6、ポリアミド6、ポリアミド6,10およびポリアミド6,12などのポリアミドは、車両部品および他のタイプの部品に作られ、車両部品および他のタイプの部品として用いられてきた。ポリアミド6,10および6,12がSSCCに対してより抵抗性であることが報告されている(例えば、特開3271325B2号公報参照)一方で、これらのポリアミドのすべては、こうした用途においてSSCCを被りやすい。その理由は、例えば、車両および車両部品の種々の部分が、塩、例えば、より寒冷な気候において雪および氷を溶かすために用いられる塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムなどの塩に時にはさらされるからである。水および道路の塩に接触している、スチールおよび種々の鉄系合金から作られたフィッティングおよびフレーム部品などの金属部品の腐食は、塩の形成にもつながり得る。これらの塩によって、次に、ポリアミド部品が侵蝕され得、よってポリアミド部品がSSCCを被りやすくなる。従って、SSCCに対するより良好な抵抗性を有するポリアミド組成物が望まれる。
【0004】
ポリアミドが塩にさらされ得るとともに、従ってSSCCを被り得るポリアミドの用途は注目されてきた。例えば、特開3271325B2号公報および特開3085540B2号公報を参照すること。これらの文書のいずれもが本明細書で記載されている特定のポリアミドを記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、
反復単位が、

−C(O)(CH2mC(O)NH(CH26NH− (I)
(式中、mは8および/または10である)
の反復単位約68〜約82モル%と、

【0006】
【化1】

の反復単位約18〜約32モル%と
から本質的になるポリアミドを含有する組成物を含む車両部品であって、前記車両部品は正規運転において塩にさらされるという条件である車両部品に関する。
【0007】
本発明は、
反復単位が、
式(I)
−C(O)(CH2mC(O)NH(CH26NH− (I)
(式中、mは8および/または10である)
の反復単位約65〜約85モル%と、
式(II)
【0008】
【化2】

の反復単位約15〜約35モル%と
から本質的になるポリアミドを含む組成物を含有する部品を備えた車両であって、前記車両部品は正規運転において塩にさらされるという条件である車両にも関する。
【0009】
反復単位が、
式(I)
−C(O)(CH2mC(O)NH(CH26NH− (I)
(式中、mは8および/または10である)
の反復単位約68〜約82モル%と、
式(II)
【0010】
【化3】

の反復単位約18〜約32モル%と
から本質的になるポリアミドも本明細書において記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物および車両部品は、塩にさらされるゆえの劣化に対する改善された抵抗性を提供する。こうした暴露は、例えば、道路の塩、または海洋および他の水塊の中および周りの塩に接触することになる部品によって典型的に発生され得る。これらの環境における正規運転において、車両部品、特に、見えない所での用途において用いられる車両部品は、長い期間を経て劣化を受けやすい。塩への間欠暴露でさえも経時的には悪影響を及ぼし得る。
【0012】
「車両」は、車輪上で動くとともに人および/または貨物を運搬するか、または他の機能を実施する任意の車両も意味する。車両は自己推進であってもよく、そうでなくてもよい。適用できる車両は、自動車、単車、車輪付き建設車両、農用トラクターまたは芝用トラクター、トラックおよびトレーラーを含む。好ましい車両は、自動車、トラックおよび単車である。
【0013】
「前記部品が正規運転において塩にさらされる」は、(適所にすべてのOEMガードを有するが追加の装置が存在しない、製造業者によって供給されたままの状態の)正規車両構成において試験された時、部品が湿っているか、あるいは以下の試験においてその露出側で水溶液にさらされることを意味する。車両は、水または水中の「マーカー」溶液で満たされた深さ1.5cmの溝を通して(すべての車輪が水または水溶液を通るように)20メートルにわたり50km/h(約30mph)で運転されるか(または自己推進でない場合、牽引される)。その後、試験される部品は、その部品が露出側で湿っているかどうかを見るために検査される。部品が湿っている場合、部品は正規運転において塩にさらされていると見なされる。部品が運転において正規に熱く、水が迅速に蒸発する場合、マーカー物質が水中で用いられ、そして部品がマーカーについて検査される。マーカーは、紫外線を用いて検査され得るフルオレセインなどの化学品の塩(白塩沈殿物は残る)であってもよい。マーカー化学品が部品上にある場合、部品は正規運転において塩にさらされていると見なされる。この試験は、溶融氷または溶融雪および/または塩溶液である塩粒子で、および車両上にかかる生じた塩水噴霧で覆われ得るハイウェー上での移動を模擬している。
【0014】
ポリアミドの反復単位(I)は、1,6−ヘキサンジアミンと、1,10−デカン二酸(DDA)および/または1,12−ドデカン二酸(DDDA)とから誘導される。好ましくは、DDAまたはDDDAのいずれか一方が存在し、両方は存在しない。ポリアミドの反復単位(II)は、1,6−ヘキサンジアミン(HMDA)およびテレフタル酸(T)から誘導される。存在する反復単位(I)の最少量は、約68モル%、好ましくは約70モル%である。存在する反復単位(I)の最大量は、82モル%、好ましくは約80モル%である。反復単位の残りは反復単位(II)である。任意の反復単位の任意の最大量を任意の反復単位の任意の最少量と組み合わせて、好ましい反復単位範囲を作ってよいことは理解されるべきである。モル%は、ポリアミド中の反復単位の全量に基づいている。ポリアミドは、ポリアミドを製造するための当該技術分野において公知の方法によって製造することが可能である。例えば、米国特許第5,891,987号明細書および米国特許第6,656,589号明細書ならびに特開04239531号公報を参照すること。これらの明細書のすべては、本明細書における参照により、および実施例によって本明細書に含まれる。
【0015】
好ましいポリアミド、車両部品用のポリアミドは、上記の反復単位が式(I)約68〜82モル%と、式(II)18〜32モル%とから本質的になる。
【0016】
ポリアミドは、充填剤および強化剤、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、核剤、難燃剤、高分子強化剤、可塑剤、滑剤および離型剤などのポリアミド組成物中で通常見られる他の物質を含有してもよい。有用な充填剤および強化剤は、クレー、タルク、ウォラストナイトおよびマイカなどの無機材料ならびにガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス繊維粉、アラミド繊維、炭素繊維およびカーボンブラックなどの他の材料を含む。好ましい充填剤/強化剤は、ガラス繊維および無機鉱物繊維である。これらのポリアミド組成物は、一軸スクリュー押出機または二軸スクリュー押出機中での溶融混合(ポリアミドが溶融される)などの従来の手段によって製造してもよい。部品は、射出成形、押出、圧縮成形、熱成形および回転成形などの熱可塑性樹脂のために普通に用いられる任意の方法によってポリアミド(組成物)から作ってもよい。
【0017】
他の物質の好ましいタイプは、安定剤、着色剤、高分子強化剤および可塑剤である。高分子強化剤は、通常エラストマーであるか、またはポリアミドより低い融点を有し、そして室温でそのガラス転移温度より高くなる大量の非晶質ポリマーを普通は含有するポリマーを意味する。高分子強化剤は、ポリアミド上の末端基およびアミド基などの基としばしば反応できる高分子強化剤自体に結合された(「結合」は、普通は強化剤ポリマー上への官能性モノマーの共重合、および/または強化剤ポリマー上へのグラフトによる)官能基を場合により有してもよい。有用な強化剤は、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、プロピレンとのコポリマー(EPゴム)および場合によりジエンとのコポリマー(EPDMゴム)、1−ブテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンなどのより高級なオレフィンとのコポリマーなどのエチレンコポリマー、エチレンと、アルキル(メタ)アクリレート(アクリル酸またはメタクリル酸のエステルを意味する)とのコポリマー、および/またはグリシジル(メタ)アクリレートなどの官能化(メタ)アクリレートエステルのコポリマーを含む。また、こうしたコポリマー(特に活性官能基を含有しないポリマー)は、官能基を含有する薬剤とグラフトしてもよい。こうしたグラフト化剤は、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノエチルエステルの金属塩、フマル酸、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸、ビニル安息香酸、ビニルフタル酸、フマル酸モノエチルエステルの金属塩、マレイン酸またはフマル酸またはイタコン酸のモノエステル(ここで、アルコールは、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ステアリル、メトキシエチル、エトキシエチル、ヒドロキシまたはエチルなどである)を含む。存在する強化剤の量は、好ましくは全組成物の約5〜約45重量%、より好ましくは約10〜約40重量%である。1種以上の強化剤ポリマーを用いてもよく、強化剤の量は、こうしたすべてのポリマーの合計量と解釈される。
【0018】
組成物の中で好ましい別の物質は可塑剤である。可塑剤の好ましい量は、組成物の全重量を基準にして約1.0〜約20重量%、より好ましくは約5〜約15重量%である。幾つかの組成物、特にチューブおよびホースにおいて、好ましくは既に記載された量で可塑剤と高分子強化剤の両方が存在することが好ましい場合がある。
【0019】
有用な車両部品は、もちろん特定の部品が正規車両運転において塩にさらされるという条件で、冷却システム部品、吸気マニホールド、油受皿、変速機箱、電気ハウジングおよび電子ハウジング、燃料システム部品、フィルターハウジング、冷却液用ポンプカバー、ラジエータエンドタンクを含む。特に有用な部品は、車両の一部から別の部分に流体を移すために用いられる流体(液体および/または気体)のチューブまたはホースである。これらのポリアミド組成物は、チューブおよびホースのためにポリアミド組成物を特に有用にする特性、例えば、熱、車両中に見られる種々の流体、特に燃料、油圧流体および冷却流体に対する良好な抵抗性、(特に可塑剤を含有する時)耐屈曲性ならびに良好な高圧破裂抵抗性の1つ以上を有する。
【0020】
融点:実施例において、融点は、10℃/分の加熱速度でASTM試験法ASTM D3418を用いて測定される。第二熱において、融点は融解吸熱のピークと解釈される。
【0021】
SSCC試験:ASTM D1693、条件Aは、石鹸、油、洗剤などの表面活性剤の存在下でエチレンプラスチックの環境応力割れの決定のための試験方法を提供する。この手順は、次の通りSSCCに対するコポリアミドの応力割れ抵抗性を決定するために適合された。
【0022】
37.5mm×12mm×3.2mmの寸法の長方形試験片をポリアミドから成形した。調節された刻み目を標準手順通り各成形バーの面に切り出し、刻み目を外側に向けてバーをU形に曲げ、標準手順通り真鍮の試験片ホールダーに入れた。コポリマーごとに少なくとも5個のバーを用いた。ホールダーを大きい試験管に入れた。
【0023】
用いられた試験流体は、50:50の重量比で無水塩化亜鉛を水に溶解させることにより調製された50%塩化亜鉛溶液であった。試験片ホールダーを収容している試験管を、試験片を完全に浸すように調製したばかりの塩溶液で満たし、最上部の試験片より上に流体が少なくとも12mm存在するようにした。試験管を50℃で維持された循環空気炉内に直立で置いた。試験片の割れの発生を24時間にわたって、場合により162時間まで周期的に検査した。
【0024】
すべての実施例において、ポリアミド組成物のすべては、7部(重量による)のKI、1部のCuIおよび1部のジステアリン酸アルミニウムであった安定剤0.4重量%を含有していた。
【0025】
実施例において、すべての圧力は、別段に注記がないかぎりゲージ圧である。
【0026】
本明細書において以下の略語を用いる。
PA612−反復単位(I)、(式中、mは10である。)
PA610−反復単位(I)、(式中、mは8である。)
PA6T−反復単位(II)
PA66−1,6−ヘキサンジアミンおよびアジピン酸から誘導された反復単位を有するポリアミド
【0027】
実施例および比較例において、別段に注記がないかぎり、すべての試験は23℃および相対湿度50%で行った。
【0028】
ポリアミドの調製
5、13、20、25、30および35モル%のPA6T単位を有するPA612/6Tコポリアミド、5、20、25および30モル%のPA6T単位を有するPA610/6Tコポリアミドならびに20および25モル%のPA6T単位を有するPA66/6Tコポリアミドを次の通りオートクレーブ内で調製した。5kgの公称能力を有する小オートクレーブおよび50kgの公称能力を有する大オートクレーブの2つのサイズのオートクレーブを用いた。PA612系コポリアミドを両方のオートクレーブ内で調製し、PA610系コポリアミドを小オートクレーブ内で作り、PA66系コポリアミドを大オートクレーブ内で調製した。
【0029】
小オートクレーブ内でのPA610/6T:80/20コポリアミドを作るための手順は次の通りであった。
【0030】
塩の調製:DDA(2027.5g)、テレフタル酸(416.3g)、HMDA(1832.7g)80.5重量%を含有する水溶液、次亜リン酸ナトリウム(34.5g)1重量%を含有する水溶液、酢酸(51.7g)28重量%を含有する水溶液、Carbowax8000(10.3g)1重量%を含有する水溶液および水(2223.5g)をオートクレーブに投入した。
【0031】
プロセス条件:オートクレーブの攪拌機を5rpmに設定し、内容物を69kPa(10psi)で窒素で10分にわたりパージした。攪拌機を50rpmに設定し、圧力制御弁を1.72MPa(250psi)に設定し、オートクレーブを275℃に加熱した。圧力は、45分以内に1.72MPaに達し、オートクレーブの温度が245℃に達するまで、そこでもう90分間にわたり保持した。その後、圧力を、約60分間かけて0Paに下げた。この時間の間、オートクレーブの温度は260℃に上がった。オートクレーブの圧力を真空引きすることにより34.5kPa(絶対)(5psia)に下げ、そこで15分間にわたり保持した。その後、オートクレーブを480kPa(70psi)の窒素で加圧し、溶融ポリマーをオートクレーブからキャスティングした。集めたポリマーストランドを冷水で冷し、ペレット化した。
【0032】
得られたコポリアミドは1.06dl/gの固有粘度(IV)を有していた。この場合、IVを25℃でm−クレゾール中の0.5%溶液で測定した。
【0033】
他のPA610系コポリアミド組成物を作るために、DDAおよびテレフタル酸の量を調節して所望のモル比を達成した。同様に、PA612系コポリアミドを作るために、DDDAをDDAの代わりに用い、この酸およびテレフタル酸の量を調節して所望のモル比を達成した。
【0034】
大オートクレーブ内でのPA612/6Tコポリアミドを作るための手順は次の通りであった。
【0035】
ポリアミド塩溶液45重量%:101kg(222ポンド)をHMDA、DDDAおよび水から調製した。ここで、DDDA対Tのモル比を調節して、6T20、25、30または35モル%の最終ポリマー中の目標PA6T含有率に一致させた。この溶液に水中の従来の消泡剤の10重量%溶液3.4g、次亜リン酸ナトリウム0.7g、146〜322gの間の100%HMDA、および103〜237gの間の氷酢酸をオートクレーブ中に投入して、8.1±0.1の塩溶液の目標pHを得た。その後、溶液を加熱する一方で、圧力を放置して1.72MPa(250psi)に上げ、その点で蒸気を逃がして1.72MPaで圧力を維持し、バッチの温度が240℃に達するまで加熱を続けた。その後、圧力をゆっくり下げて、28〜55kPA(絶対)(4〜8psia)の範囲に達した一方で、バッチ温度を放置して、265〜275℃にさらに上げた。その後、圧力を41kPA(絶対)(6psia)辺りで保持し、温度を約20分にわたり265〜275℃で保持した。最後に、ポリマー溶融物をストランドに押し出し、冷却し、ペレットに切断した。コポリアミドは、0.87〜1.02の範囲内のIVを有していた。
【0036】
PA66/6Tコポリアミドを作るために、HMDA、アジピン酸およびTから塩溶液を調製した。ここで、アジピン酸対テレフタル酸のモル比を調節して、最終ポリマー中の目標6T含有率に一致させた。
【実施例】
【0037】
実施例1〜6および比較例A〜H
これらのポリアミドの選択された特性を表1において示している。表1において、ポリアミドのすべてにおいて用いられたジアミンは1,6−ヘキサンジアミンであった。組成は、(存在するジカルボン酸の合計として)ジカルボン酸のモル%を示し、12=1,12−ドデカン二酸、T=テレフタル酸および10=1,10−デカン二酸である。表1において、「Tm」は、示差走査熱分析法で、ASTM D3418によって、加熱速度10℃/分、二次熱での融解吸熱の最大で取られた融点によって決定される融点である。
【0038】
【表1】

【0039】
上で記載された手順に従い、50重量%ZnCl2溶液中のSSCCについてポリアミドを試験し、結果を表2において示している。X/Yの呼称は、合計試験片数Y個のうち、この時間で破損した試験片数X個を意味する。ポリマーの呼称は表1と同じである。表2のデータは、比較例A〜E、GおよびHが24時間後のZnCl2抵抗性試験において非常に劣った性能を示す一方で、実施例1〜3が意外にも優れた塩抵抗性を与えることを示している。優れた塩抵抗性は、実施例1および3に関する162時間処理で存在する。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例7
実施例2および3のポリマーを10重量%のn−ブチルベンゼンスルホンアミド(Uniplex(登録商標)214として市販されている)と混合した。得られた組成物を試験バーに射出成形し、降伏応力(ASTM D638)および曲げ弾性率(ASTM D790)を試験した。降伏応力は、50mm/分(2インチ/分)のクロスヘッド速度で、ASTM D638−02a試験手順に準拠して長さ115mm(4.5インチ)および厚さ3.2mm(0.13インチ)のタイプIV引張バーを用いて測定した。曲げ弾性率は、50mm(2インチ)スパン、5mm(0.2インチ)荷重およびサポートノーズ半径ならびに1.3mm/分(0.05インチ/分)のクロスヘッド速度で、ASTM D790に準拠して厚さ3.2mm(0.13インチ)の試験片を用いて測定した。結果を表3において示している。
【0042】
これらの組成物もODが8.35mmおよびIDが6.35mmのチューブに押し出した。圧力計付きマニュアル油圧ポンプを用いて、これらのチューブの破裂圧力を23℃および136℃で測定した。これらの結果も表3において示している。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例8
実施例1、2および3のポリマーを(強化剤とポリアミドの合計重量を基準にして)25または40重量%の強化剤と混合し、それを二軸スクリュー押出機中でポリアミドに混合した。強化剤は、Exxon LL1002.09直鎖状低密度ポリエチレン60重量%、無水マレイン酸グラフト低密度ポリエチレン(DuPontから入手できるFusabond(登録商標)MB226D)28重量%および無水マレイン酸グラフトEPDM(Dow Elastomersから入手できるNordel(登録商標)IP3745)12重量%からなっていた。組成物を試験バーに成形し、実施例7において記載されたのと同じ方式で試験した。また、実施例7において記載されたのと同じ方式で、組成物をチューブに押し出し、破裂圧力を試験した。結果を表4において示している。
【0045】
【表4】

【0046】
実施例9
実施例1、2および3のポリマーを実施例7からの可塑剤5.0重量%および実施例8の強化剤22.8重量%と混合した。試験バーおよびホースを実施例7および実施例8のように調製し、これらの実施例と同じ方式で試験した。結果を表5において示している。
【0047】
【表5】

【0048】
実施例7〜9において示した通り、これらのポリアミドは、強化剤および/または可塑剤と混合された時、特に塩が存在する環境におけるホースとチューブのための特性の良好な組合せである良好な塩応力割れ抵抗性のみでなく、優れた耐屈曲性および良好な破裂強度を典型的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反復単位が、

−C(O)(CH2mC(O)NH(CH26NH− (I)
(式中、mは8および/または10である)
の反復単位約68〜約82モル%と、

【化1】

の反復単位約18〜約32モル%と
から本質的になるポリアミドを含有する組成物を含む車両部品であって、前記車両部品は正規運転において塩にさらされるという条件である車両部品。
【請求項2】
前記組成物が、強化剤および/または可塑剤を含有する、請求項1に記載の車両部品。
【請求項3】
前記強化剤が前記組成物の約5重量%〜約45重量%の量で存在する、請求項2に記載の車両部品。
【請求項4】
前記可塑剤が前記組成物の約1.0重量%〜約20重量%である、請求項2に記載の車両部品。
【請求項5】
前記ポリアミド反復単位が式(I)約70〜80モル%と、式(II)20〜30モル%とから本質的になる、請求項2に記載の車両部品。
【請求項6】
ホースまたはチューブである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両部品。
【請求項7】
反復単位が、
式(I)
−C(O)(CH2mC(O)NH(CH26NH− (I)
(式中、mは8および/または10である)
の反復単位約65〜約85モル%と、
式(II)
【化2】

の反復単位約15〜約35モル%と
から本質的になるポリアミドを含有する組成物を含む部品を備えた車両であって、前記車両部品は正規運転において塩にさらされるという条件である車両。
【請求項8】
前記部品がホースまたはチューブである、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
反復単位が、
式(I)
−C(O)(CH2mC(O)NH(CH26NH− (I)
(式中、mは8および/または10である)
の反復単位約68〜約82モル%と、
式(II)
【化3】

の反復単位約18〜約32モル%と
から本質的になる、ポリアミド。
【請求項10】
前記反復単位が式(I)約70〜80モル%と、式(II)20〜30モル%とから本質的になる、請求項9に記載のポリアミド。
【請求項11】
請求項9に記載のポリアミドを含む、部品。
【請求項12】
ホースまたはチューブである、請求項11に記載の部品。

【公表番号】特表2012−520380(P2012−520380A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554139(P2011−554139)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/026785
【国際公開番号】WO2010/104925
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】