耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法と鋳鉄焼結材及び軸受部材
【課題】 本発明は、安価であり、入手が容易な鋳鉄切削屑を有効に利用して、特に高価な設備や高価な処理手段を施すことなく耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材を得ることができる技術の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明は、鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体の集合体を圧密した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライトにすることを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体の集合体を圧密した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライトにすることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法と鋳鉄焼結材及び耐摩耗性に優れた軸受部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄は日本において年間数百万tも生産されているが、その大部分は鋳造用途に供されるものであり、鋳造後、目的の形状に切削加工されて利用される。従って製造された鋳鉄の数%〜10%程度は切削後の切削屑として廃棄されている。
例えば自動車産業界においては年間数千万台もの生産に伴い、自動車エンジンの各構成ブロック等から生じる切削屑だけで年間数万tもの量に達しているので、一部では切削屑を収集して他の原料と一緒に溶解して再利用しているが、多くの製造現場では屑として廃棄されている。
これら鋳鉄の切削屑は、自動車産業界に限らず、日本の各種産業界の製造現場において大量に存在しているが、その有効利用はなされておらず、一部業界の工場では溶解して再利用しようとする試みも見られたが、再生にコストが嵩むと採算が合わなくなるので、大部分の製造現場では廃棄物として大量に処分されているのが現状である。また、このような廃棄物としての切削屑は一般に極めて安い単価で取り引きされている。
【0003】
そこで従来から、これらの切削屑を粉末冶金に利用して再利用するための技術が研究されている。
例えば粉末冶金による切削屑の再生利用として、均質な切削屑を粉末冶金に利用するために不純物等を取り除き、切削屑を粉砕して粉末化し、粉砕時の加工硬化による問題を回避するために焼き鈍して軟化させ、金型に粉末を投入して加圧成形し、焼結性について研究すると共に、その経済性について研究した技術が知られている。(非特許文献1、P1331〜P1337参照)(非特許文献2、P79〜P85参照)
【非特許文献1】精密機械第46巻第11号、中川威雄、載豊樹、天野富雄、共著、1980年、11月刊行、P1331〜P1337、「粉末冶金による切削切粉の再生利用」
【非特許文献2】「鋳鉄粉の粉末冶金」、生産機械第36巻第2号、塙健三、中川威雄、共著、1984年、2月刊行、P79〜P85、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先の非特許文献1、2にも記載の如く大部分の金属材料は焼結可能ではあるが、実際に粉末化が容易な切削屑の中には焼結性の劣るものが多く、特別な焼結雰囲気が必要とされている。即ち、鉄は空気中において容易に酸化される材料であるので、焼結しようとしても切削屑から得られる成形用粉末の表面が酸化皮膜で覆われ易く、焼結しようとしている粉末どうしの間にこの酸化皮膜が存在すると、酸化皮膜が邪魔になって焼結が進行せず、焼結密度が上がらない、必要とする強度が得られ難いという問題がある。
また、鋳鉄は脆いので切削屑に機械的な粉砕操作を行えば容易に微粉化できるものの、先の非特許文献1に記載の如く微粉化した鋳鉄切削屑を焼結する際の焼結性は焼結温度と雰囲気に極めて敏感であり、引張強さの高いものを得ようとすると、制御が難しいと記載されていることからも知られているように、鋳鉄の切削屑を利用した鋳鉄の粉砕粉から満足な焼結材を得ようとする事業は現在でも実用化されていないのが実情である。
【0005】
また、これら非特許文献1、2の記載には、切削屑の粉末冶金への研究開発は種々進められているが、その殆どは切削屑を粉砕しないまま利用しようとするものが多く、そのため大きな塑性流動を与えた特別な鍛造を行ったり、長尺素材に押し出したりしているが、切削屑の流動性は悪く、その取り扱いは面倒であり、厳密な前処理を施すほど製造コストの面では大量生産の溶製材に比べて不利になる問題があり、一般には実用化ないしは普及には至っていないと記載されており、現在においても鋳鉄切削屑については有効な再利用手段が確率されていないのが現状である。
【0006】
そこで本発明者らは、各種工場において殆ど手が付かない状態で廃棄されるか、回収業者においても極めて安価に取り扱われている鋳鉄切削屑の粉末冶金への再利用について研究した結果、極めて安価かつ容易な操作により焼結可能であり、また、焼結後に得られる耐摩耗性などの特性が極めて優れており、焼結密度も高くすることができる鋳鉄焼結材の製造方法と、その製造方法により得られた鋳鉄焼結材を提供できる技術に到達し、本願発明に至った。
即ち本願発明は、極めて安価で入手し易い鋳鉄切削屑を積極的に利用することにより、耐摩耗性に優れ、焼結密度が高い鋳鉄焼結材の製造方法と鋳鉄焼結材、並びに耐摩耗性に優れた軸受部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体の集合体を加圧した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライト主体であって黒鉛粒子を分散させた組織にすることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、前記鋳鉄粉粒体として鋳鉄の切削屑を用いることを特徴とする。
【0008】
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、前記還元性雰囲気を水素雰囲気あるいは水素と不活性ガスの混合雰囲気とすることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくすることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭することを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結した後、冷却することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭するとともに、鋳鉄粉粒体に含まれる黒鉛粒子を微細化してパーライトを主体とする素地中に黒鉛粒子を分散させ、前記黒鉛粒子の周囲をフェライト層が覆った組織とすることを特徴とする。
【0009】
本発明の鋳鉄焼結材は、鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体が焼結され、焼結後の素地がパーライトを主体とした組織とされ、該組織内に複数の黒鉛粒子が分散されてなることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材は、前記複数の黒鉛粒子の周囲にフェライトの被覆層が生成され、該被覆層の周囲をパーライトが覆ってなることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材は、焼結体の内部に生成されている空孔に油が含浸されてなることを特徴とする。
本発明の軸受部材は、先のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価であり、入手が容易な鋳鉄切削屑を有効に利用して、特に高価な設備や高価な処理手段を施すことなく耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材を得ることができる。
本発明において鋳鉄粉粒体の集合体を加圧した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライト主体であって黒鉛粒子を分散させた組織にすることにより、耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材を得ることができる。
鋳鉄粉粒体の集合体を加圧した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結することにより、加圧成形されている鋳鉄粉粒体どうしの界面部分に生成する酸化皮膜の影響を抑制して焼結し易くすることができ、より密度の高い焼結材を得ることができる。焼結時の加熱温度は1000〜1160℃の範囲が好ましく、この範囲より低温度では焼結反応が進行し難くなり、この範囲よりも高い温度では鋳鉄粉粒体が溶解するおそれがある。
【0011】
本発明において、焼結する際に加圧成形されている鋳鉄粉粒体の界面に焼結の阻害となる酸化皮膜が生成しないようにするためには、還元性雰囲気として水素雰囲気、あるいは、水素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが望ましく、これらの雰囲気で焼結するならば、焼結することにより密度を向上させることができ、高密度のものが得られ易い。
焼結時の雰囲気としては水素を含む還元雰囲気が望ましく、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくすることが可能となる。
【0012】
本発明により、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結した後、冷却することにより、鋳鉄粉粒体に含まれる黒鉛粒子を微細化してパーライトを主体とする素地中に微細化した黒鉛粒子を分散させた組織とすることができる。また、微細化した黒鉛粒子の周囲をフェライト層が取り囲み、更にその周囲にパーライトの素地が存在する複合的な組織とすることで、耐摩耗性に特に優れた組織が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
本発明の最良の形態においては鋳鉄切削屑を出発材料として主に利用する。
この鋳鉄切削屑とは、鋳鉄の鋳物から鋳造品を製造する場合に旋盤等の切削具にて鋳造物を削り出した場合に発生するもので、適用できる鋳鉄として、球状黒鉛鋳鉄、片状黒鉛鋳鉄、ネズミ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄など、いずれの鋳鉄の切削屑でも使用することができるが、特に球状黒鉛鋳鉄あるいは片状黒鉛鋳鉄が国内で大量に使用されていて、切削屑も豊富で安価なことなどの理由から好ましい。
これらの鋳鉄切削屑は、大小種々の粒径の粉末状または粒状もしくは不定形の片状など、その他の種々形状の切削屑の混合体となっているので、本発明ではこれら切削屑の集合体を主として利用する。ただし、本発明を適用できるのは、鋳鉄切削屑に限らず、鋳鉄の溶湯からアトマイズ法などの粉末形成法にて得られた粉末あるいは鋳鉄のスラッジなどの廃棄物であっても良く、本発明で使用できるこれらの出発物を総称して鋳鉄粉粒体と称する。
【0014】
組成的に鋳鉄はCを1.7〜4.5%程度含む鉄−炭素系合金の総称であるが、用途に応じて、あるいは通常の微量不純物としてSi、Mn、S、Pなどの元素を含有している。
また、球状黒鉛鋳鉄にあって、例えば、C:3〜4%、Si:1.5〜2.0%、Mn:0.4〜0.6%、P<0.1%、S<0.1%の組成のものを用いることができる。
本実施形態において球状黒鉛鋳鉄切削屑や片状黒鉛鋳鉄切削屑の具体的な組成について例示するならば、Fe−3.38%C−2.71%Si−0.25%Mn−0.015%S−0.03%P、Fe−3.65%C−2.62%Si−0.66%Mn−0.080%S−0.03%P、Fe−3.10%C−2.71%Si−0.26%Mn−0.015%S−0.03%P、Fe−3.09%C−2.69%Si−0.25%Mn−0.075%S−0.03%Pなどである。
【0015】
これら鋳鉄の切削屑などの鋳鉄粉粒体を収集したならば、篩い分けなどの手法により適宜の大きさのものを選別する。ここで例えば、420μm以上のものを篩い分けして選択し、それよりも小さな粒径のものは除去することが好ましい。
また、粒径の上限として1680μm程度のものまで振り分けして選択し、それよりも大きなものは除去する。この範囲の中でも例えば420μm〜1190μm程度の範囲あるいは840μm〜1190μmの範囲の鋳鉄粉粒体を用いることが好ましい。
なお、粒径1680μmを超える大粒の鋳鉄粉粒体は、粉砕工程を付加して微細化し、420μm〜1190μm程度の範囲の粒径とすることで再利用できる。
【0016】
前述の如く粉砕する場合に必要以上に微細に粉砕する必要はなく、先の範囲であれば良い。また、あまりに微細に粉砕し過ぎると、粉砕に時間や手間がかかり、低コストの切削屑を利用する意味が薄くなるとともに、粉砕機の粉砕刃が粉砕時に粉粒体に強く接触するので粉砕刃の構成元素の混入する問題が生じ易い。また、あまりに微細に粉砕した場合、通常の厚さの酸化皮膜が生成したとしても、粒径に比して表面に厚い酸化皮膜が生成し易いなどの問題が生じるので、微細に粉砕し過ぎるのは望ましくない。また、鋳鉄粉粒体の粒径が1680μmを超えるようになると焼結しても焼結体に大きな空孔が生じるようになり、焼結密度が向上しなくなる。なお、傾向として420μmよりも微細な粒度分布の鋳鉄粉粒体を使用すると焼結しても密度は減少するおそれが高く、逆に840μmより大きな粒度分布の鋳鉄粉粒体では金型に挿入し難くなる傾向となる。
これらを勘案すると、切削屑などを含む鋳鉄粉粒体の望ましい粒径範囲として420μm〜1680μm程度の範囲が好ましく、420〜1190μmの範囲がより好ましく、粒径840〜1190μmの範囲の鋳鉄粉粒体が更に好ましいと考えられる。
【0017】
前記粒径を揃えた鋳鉄粉粒体を必要量集合したならば、加圧成形処理が可能な金型に投入し、加圧して目的の形状に圧密し、この圧密体を金型から取り出して加熱炉に収容して還元性雰囲気中にて必要な温度に加熱して焼結し、焼結後に加熱炉から取り出して空冷などの手段で急冷する。なお、先の工程において金型の内部を還元性雰囲気中として所望の圧力で加圧して目的の形状に成形した後に直ちに所望の温度に加熱して焼結し、加圧加熱後に空冷して目的の鋳鉄焼結材を得るようにしても良い。
【0018】
前記加圧処理を行う場合の圧力は300〜500MPaの範囲が好ましい。ここでの加圧力が低すぎると鋳鉄粉粒体を焼結した後の密度が高い値にならなくなり、高すぎると圧密できる金型が大がかりな設備となってしまい、低コスト操業が困難となりやすい。
【0019】
前記加熱処理を行う場合の雰囲気は、還元性雰囲気が好ましい。還元性雰囲気においても水素ガス雰囲気あるいは水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気、COガス雰囲気、炭化水素ガス雰囲気などが望ましい。この加圧加熱処理を行う場合の雰囲気が大気雰囲気、真空中では望ましくなく、これらの雰囲気中では切削屑の表面に焼結を阻害する酸化皮膜が生成されてしまうおそれが高くなる。また、前記水素ガスを用いる場合、高濃度水素ガス雰囲気では作業自体が危険であるので、1〜5%程度の水素ガスを含むアルゴンガス雰囲気が望ましい。
前記焼結処理を行う場合の温度は、1000℃以上、1160℃以下の範囲が好ましい。これは、鋳鉄粉粒体が焼結を起こす場合に最低必要な温度が1000℃程度であり、鋳鉄の融点が1160℃程度であることに起因する。この範囲の温度であっても、焼結反応が充分に進みやすく、かつ、溶融のおそれの少ない温度範囲として、1050〜1150℃の範囲が好ましく、この範囲内であっても、より好ましい焼結性の観点から見て1100〜1130℃の範囲がより好ましい。
【0020】
一般組成比の鋳鉄は鋳造品において密度が7程度であるので、鋳鉄切削屑を圧密して焼結した鋳鉄鋳造材において得られる密度範囲は、4.5〜6.2程度となる。これは、密度が低くなりすぎると充分な焼結性が得られなくなり、耐摩耗性が低下するとともに、鋳鉄粉粒体を充分に圧密加工しても充填度合いは100%にはなり得ないので、6を超える程度の密度が粉末焼結法としての限界であることに起因する。
鋳造品の密度が7とすると鋳鉄焼結材の密度が6となれば15%程度の軽量化が可能となったことになり、密度5.4とすれば約23%の軽量化、密度4.5とすれば約35%の軽量化ができたことになる。
【0021】
前記焼結により形成された鋳鉄焼結材は、先の範囲の加圧条件と温度条件により加圧加熱処理した後、炉から取り出して空冷する操作により急冷されて製造されているので、焼結後に得られる組織は素地がほぼパーライトであって、パーライトの素地の中に球状の黒鉛粒子が分散され、更に黒鉛粒子の周囲に黒鉛粒子を取り囲む形でフェライト層が析出された組織を呈する。
このように組織の素地がパーライトであり、その内部に微細化された黒鉛粒子が分散され、更に黒鉛粒子の周囲をフェライト層が取り囲み、その外側がパーライトで覆われた組織構造であると、得られた鋳鉄焼結材は鋳造材として得られた鋳鉄よりも耐摩耗性に格段に優れた特徴を有する。
【0022】
また、得られた鋳鉄焼結材にあっては、圧密した鋳鉄粉粒体を還元性雰囲気中においてできるだけ酸化させないまま焼結しているので、鋳鉄粉粒体の粒子間に焼結の阻害となる強固な酸化皮膜を生成させることなく焼結できるので、焼結時の収縮作用を生じさせて焼結密度の高い焼結材とすることができる。また、還元性雰囲気中において鋳鉄粉粒体中に含まれている黒鉛粒子を脱炭する作用を生じさせることにより、出発原料である鋳鉄粉粒体の内部に存在していた黒鉛粒子よりも微細な黒鉛粒子に変性することができ、これにより素地をパーライトとする効果と相俟って耐摩耗性を更に向上することができる。
この点に鑑み、鋳鉄焼結材の製造に利用する鋳鉄は球状黒鉛鋳鉄が好ましく、球状黒鉛鋳鉄中に分散されている黒鉛粒子を容易に微細化することができる。
【0023】
先の如く還元性雰囲気中において焼結することにより、素地のパーライト化並びに黒鉛粒子の微細化、微細化した黒鉛粒子の周囲にフェライト層を生成させるためには、還元性雰囲気の中でも水素を含む雰囲気とすることが好ましい。ただし、焼結時の雰囲気に高濃度の水素が存在すると焼結の実施に危険を伴うので、実用的には数%程度の水素ガスとアルゴンなどの不活性ガスの混合ガスを用いることが好ましい。
【0024】
以上の如く得られた鋳鉄焼結材は内部に空孔を複数有しているので、これらの空孔に油を含浸させることで、無給油軸受部材として有効に利用することができる。そして、この形態の鋳鉄焼結材は耐摩耗性に特に優れているので、優れた軸受けとして市場に提供できる。
【実施例】
【0025】
球状黒鉛鋳鉄(FCD400)の切削工程で発生した鋳鉄切削加工粉(鋳鉄切削屑)を収集し、これらの鋳鉄切削屑の中から篩い分けにより粒径840〜1190μmの鋳鉄切削屑を約5.5gを選別してこれを出発材料とした。なお、用いた球状黒鉛鋳鉄切削屑の組成は、分析の結果Fe−3.38%C−2.71%Si−0.25%Mn−0.015%S−0.03%Pであった。
この鋳鉄切削屑を金型(ψ10.2×50mm)の中に投入し、400MPaの圧力にて成形後、得られた円柱状の試料(ψ10×50mm)を水素雰囲気(水素ガス2%、残部窒素ガス98%の水素雰囲気)とした加熱炉中において1373〜1403K(約1100℃〜1130℃)の温度で1時間焼結した後、試料を加熱炉から取り出し、空冷して鋳鉄焼結材試料を得た。また、先の鋳鉄切削屑から先と同じ条件で切削屑を選別し、先と同等の条件で複数の鋳鉄焼結材試料を得た。
また、鋳鉄焼結材試料の耐摩耗性に及ぼす成形圧力の影響を調べるために、切削屑の成形圧のみを試料に応じて300MPaあるいは500MPaに変更して焼結し、他の鋳鉄焼結材試料を得た。
【0026】
得られた各種の鋳鉄焼結材試料は、乾式にて相手材試料として市販の炭素鋼(JIS:S45C)に設定して摩擦摩耗試験に供した。
この摩擦摩耗試験とは、炭素鋼(JIS:S45C)製の図1に示す円盤状(ψ70mm)の回転自在な定盤1の上面中央部に円柱状の前記鋳鉄焼結材試料(ψ10×50mm)2を鉛直に規定の面圧(0.6〜1.8MPa)で押し付けつつ定盤1をその周周りに回転(0.1〜0.2m/sec)させて測定される摩耗量で示した。
前記摩擦摩耗試験による各鋳鉄焼結材試料の摩耗量を鋳鉄の鋳造材試料(JIS:FCD400)の摩耗量と比較して図2に示す。
【0027】
図2に示す結果から、鋳鉄鋳造材試料が180mg〜250mgの範囲の摩耗量を示すのに対し、本発明に係る鋳鉄焼結材試料の摩耗量は0.6mg〜1.9mgの範囲の摩耗量を示し、摩耗量が鋳造材試料の約1/100となり、格段に優れた耐摩耗性を発揮することが判明した。また、本願発明試料は300MPaあるいは500MPaのいずれの成形圧力で加圧成形した場合であっても摩耗量は少なく、定盤1の回転速度が上昇しても摩耗量は変わらないが、鋳鉄鋳造材試料の摩耗量は定盤1の回転数が上昇すると明らかに増加した。
【0028】
以上のことから、本願発明の鋳鉄焼結材であれば、成形圧を300MPaあるいは500MPaのいずれの値としても摩耗量が変わず、しかもその値自体も低いので、鋳鉄焼結材で得ることができる製品の耐摩耗性を維持したまま軽量化を図ることができることが判る。即ち、300MPaで加圧焼結した試料は密度が5となり、比重7の鋳鉄鋳造材よりも約30%程度軽量化ができ、500MPaで加圧焼結した試料は密度が5.7となり、比重7の鋳鉄鋳造材より約20%程度軽量化ができたことになる。
次に、成形圧500MPaで成形した前記鋳鉄焼結材試料の密度は5.6、硬度は(ビッカース硬さ)310であるのに対し、鋳造材試料の密度は7.0、硬度は(ビッカース硬さ)200であった。これは鋳鉄焼結材試料の素地がパーライトに変化していること、黒鉛粒子が微細化されていること、後述する如く黒鉛粒子の周囲にフェライト層が生成している組織を有するために硬度が向上したものと思われる。
【0029】
次に、Fe−3.65%C−2.62%Si−0.66%Mn−0.080%S−0.03%Pの組成比の片状黒鉛鋳鉄の切削屑を用いて先の例と同等の製造条件で得た鋳鉄焼結材において、摩擦速度0.1m/sで、成形圧を300MPaあるいは500MPaとした試料であって、焼結後の密度が5.4と6.0を示した試料について、相手材の摩耗量に及ぼす面圧(面圧0.6MPa、面圧1.2MPa、面圧1.8MPa)の影響を測定した結果を図3(A)、(B)に示す。また、図3(A)、(B)には密度7.2の片状黒鉛鋳鉄鋳造材の摩耗量も示した。
図3(A)、(B)に示すように片状黒鉛鋳鉄焼結材の摩耗量は、面圧を0.6MPaから1.8MPaに増加させた場合、摩耗量は面圧1.8MPaでは幾分増加する傾向を示すが、その増加量は成形圧で幾分変化し、面圧0.6MPaと面圧1.2MPaでは殆ど摩耗量に大差はない。一方、相手材の摩耗量は面圧を0.6MPaから1.8MPaに増加することにより2倍程度増加した。
即ち、片状黒鉛鋳鉄鋳造材試料の摩耗量は面圧を0.6〜1.2に変えることにより大きく増加するが、本発明に係る片状黒鉛鋳鉄焼結材試料は面圧を0.6〜1.8MPaに変えても大きく変化しないことが判明した。
【0030】
図4は各種条件のうち、加圧条件を300MPaあるいは500MPaとして得た球状黒鉛鋳鉄の焼結材試料の摩耗量を示すが、加圧条件を300MPaとした密度5の試料はいずれの面圧においても摩耗量が少なく、加圧条件を500MPaとした密度5.7の試料はいずれの面圧においても摩耗量が少なくなった。これらに対して密度7の球状黒鉛鋳鉄の鋳造材の摩耗量は0.6MPaの面圧においても、1.2MPaの面圧においても摩耗量が著しく増加した。この図4に示す測定結果から、本発明に係る鋳鉄焼結材の耐摩耗性が優れていることがわかる。
【0031】
図5と図6は球状黒鉛鋳鉄の切削屑から得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の摩耗量に及ぼす摩耗時間の測定結果を示す。
図5に示す如く面圧が低い場合は時間が経過しても(3時間経過後も)殆ど摩耗量が増加していない。また、図6に示すように相手材においては面圧が低い場合は時間が経過しても殆ど摩耗量が増加していない。図5と図6に示すデータから、面圧を上昇させると自身の摩耗量、相手材摩耗量はいずれも増加した。
【0032】
図7は先の実施例に用いるために用意した球状黒鉛鋳鉄切削屑の粒度分布を示し、図8は先の実施例に用いるために用意した片状黒鉛鋳鉄の粒度分布を示す。
図7と図8の粒度分布に示す如く鋳鉄切削屑の粒界は微細なものから極めて大きいmmオーダーのものまで分布している。ここでmmオーダーの切削屑を焼結に用いたのでは空孔の割合が増加して焼結密度が上がらないか、焼結できなくなるおそれが高いので、本実施例では粒度を選別し、先の説明の如く420〜1190μmの片状黒鉛鋳鉄切削屑、あるいは840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑を用いた。
片状黒鉛鋳鉄切削屑と球状黒鉛鋳鉄切削屑において、片状黒鉛鋳鉄切削屑の粒度分布よりも球状黒鉛鋳鉄の粒度分布の方が大きな粒径のものが多くなっている。
【0033】
次に、球状黒鉛鋳鉄の鋳造材の組織と先の球状黒鉛鋳鉄切削屑を用いて得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材試料の組織の比較を図9と図10に示す。
図9(A)は球状黒鉛鋳鉄の鋳造材(摩耗試験と同じサイズの試料を鋳造後空冷した試料)の組織写真を示し、図9(B)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって500MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示し、図9(C)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって400MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示し、図10(D)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって300MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示し、図10(E)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって200MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示す。これらの図において示されるパーライト組織は、試料を加熱炉から取り出して空冷したことによる急冷効果により得られたものと思われる。
【0034】
なお、本発明者の推論では、試料中に比較的多くのC(黒鉛粒子)が存在することに加え、還元雰囲気に存在していた水素が要因となり、更に空冷により急冷されたことによって、鋳鉄焼結材から脱炭が進行し、黒鉛粒子の微細化と素地のパーライト化に寄与したものと思われる。
また、黒鉛粒子の微細化については、球状黒鉛鋳鉄の切削屑を用いることが有利と思われる。これは、黒鉛粒子が既に球状化されている方が、脱炭が進行した際に黒鉛粒子の空洞化が起こり易くなり、黒鉛粒子の微細化とともに空隙が増えて相手材との接触面積が減少するために耐摩耗性が向上するのではないかと推定できる。
【0035】
これらの図9と図10に示す組織写真に示す結果から、鋳鉄焼結材の加圧加熱時の条件が300〜500MPaの範囲であれば、鋳造材よりも微細化された黒鉛粒子が組織中に分散され、微細黒鉛粒子の周囲をフェライト層が取り囲み、その周囲の素地がパーライトとなっている組織を呈していることが判る。これに対して200MPaで加圧した試料は組織の状態が変わっていることが判明した。
このような黒鉛粒子の微細化とその周囲をフェライト層が取り囲み、更にその周囲の素地がパーライトとなっていることが耐摩耗性が著しく向上した一因と思われる。
図9、図10に示す組織写真の縮尺は同一であり、図9(A)に示す多数の黒点が黒鉛粒子Cを示すが、図9(B)、(C)、図10(D)に示す鋳鉄焼結材試料に見られる黒点の黒鉛粒子aはいずれも図9(A)に示す黒鉛粒子Cよりも微細化されており、しかも微細化された黒鉛粒子aの周囲に薄いフェライト層bが存在し、更にその周囲に素地としてのパーライトが存在していることが判る。図10(E)に示す200MPaで加圧した後に焼結した試料の組織は、図9(B)、(C)、図10(D)に示す鋳鉄焼結材試料の組織と大きく変わっていることが判る。図10(E)に示す試料においても微細な黒点の黒鉛粒子aとその周囲を囲むフェライト層bは一部見られるものの、素地の中に黒い大きな不定形の領域が広がっていた。この領域は気孔または空隙と思われる。
【0036】
ところで、先の製造条件において、焼結時の雰囲気として、還元性雰囲気に代えて、大気中で焼結したもの、大気中で通電焼結したものはいずれの試料であっても焼結後も密度が向上せず、焼結できなかった。
また、先の片状黒鉛鋳鉄切削屑を用いて10−2〜10−3mmHg程度の減圧雰囲気中(真空雰囲気中)において900℃、1000℃、1100℃の各温度で1時間焼結した試料の焼結前後の密度を測定した結果を以下に記載する。
【0037】
900℃ 1時間 減圧雰囲気中
焼結前密度ρ(g/cm) 焼結後密度ρ'(g/cm)
200MPa 5.05259 4.9433
200MPa 5.04605 4.9471
300MPa 5.41371 5.30299
300MPa 5.44116 5.29
400MPa 5.69799 5.57158
400MPa 5.6846 5.5608
【0038】
1000℃ 1時間 減圧雰囲気
200MPa 5.0529 4.86225
200MPa 4.9968 4.908384
300MPa 5.4239 5.21244
300MPa 5.42162 5.43504
400MPa 5.70106 5.68817
400MPa 5.77082 5.67837
【0039】
1100℃ 1時間 減圧雰囲気
200MPa 5.0424 5.02678
200MPa 5.1669 5.1983
300MPa 5.4308 5.545044
300MPa 5.4287 5.5005
400MPa 5.6742 5.6996
400MPa 5.7069 5.7455
【0040】
これらの測定結果から見ると、減圧雰囲気におけるテスト焼結において900℃で焼結するといずれの圧力でも密度の向上は見込めず、1000℃で焼結しても焼結後の密度向上は見込めず、1100℃で焼結する処理ならば若干密度の向上が見込めたが、減圧雰囲気中で焼結しても焼結密度の大きな向上効果は期待できないことが判明した。
この試験結果から鑑みて先の還元雰囲気中において行う際の熱処理温度の下限は1000℃、より好ましい熱処理温度の下限は1100℃と推定し、先の還元雰囲気で行う試験の焼結温度の下限を規定した。また、焼結温度は高いほど焼結性が向上するので先の下限温度よりも高い方が好ましいが、1160℃を越える温度になると鋳鉄自身が溶融するおそれが高くなる。
【0041】
図11は先の摩耗試験に供した片状黒鉛鋳鉄焼結体試料の硬度を測定した結果を示し、図12は先の摩耗政権に供した球状黒鉛鋳鉄焼結体試料の硬度を測定した結果を示す。
図11と図12において試料全体の硬度をビッカース硬さで示し、基地硬さ(パーライトとフェライトの存在する基地部分の硬さ)としてマイクロビッカース硬さの測定値を示した。
図11と図12に示す結果から、基地部分の硬さが全体の硬さより明らかに上回っており、これが優れた耐摩耗性に貢献しているものと思われる。なお、密度が7を若干越える試料は鋳造材試料である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明に係る試料を摩擦摩耗試験に供した際に用いた摩擦摩耗試験装置の一例を示す構成図。
【図2】図2は実施例で製造した鋳鉄焼結体試料と鋳鉄鋳造材試料について摩擦摩耗試験に供した場合に得られる定盤の回転数と摩耗量の関係を測定した結果を示す図である。
【図3】図3(A)は鋳鉄焼結材試料と鋳鉄鋳造材試料の摩耗量に及ぼす面圧の影響を測定した結果を示す図、図3(B)は鋳鉄焼結材試料と鋳鉄鋳造材試料の相手材(定盤)の摩耗量に及ぼす面圧の影響を測定した結果を示す図である。
【図4】図4は鋳鉄焼結材試料と鋳鉄鋳造材試料の摩耗量に及ぼす面圧の影響を示す図である。
【図5】図5は球状黒鉛鋳鉄焼結材の摩耗量に及ぼす摩耗時間と面圧の影響を示す図である。
【図6】図6は球状黒鉛鋳鉄焼結材において摩擦摩耗試験装置の定盤(相手材)の摩耗量に及ぼす摩耗時間と面圧の影響を示す図である。
【図7】図7は球状黒鉛鋳鉄焼結材試料の製造に用いた切削屑の粒度分布を示す図である。
【図8】図8は片状黒鉛鋳鉄焼結材試料の製造に用いた切削屑の粒度分布を示す図である。
【図9】図9(A)は球状黒鉛鋳鉄の鋳造材の組織を示す写真、図9(B)は500MPaにで加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真、図9(C)は400MPaにで加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真である。
【図10】図10(D)は300MPaにて加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真、図10(E)は200MPaにて加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真である。
【図11】図11は片状黒鉛鋳鉄焼結体試料の全体硬さ(ビッカース)と基地硬さ(マイクロビッカース)並びに鋳造品の硬さを測定した結果を示す図である。
【図12】図12は球状黒鉛鋳鉄焼結体試料の全体硬さ(ビッカース)と基地硬さ(マイクロビッカース)並びに鋳造品の硬さを測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…定盤、2…鋳鉄焼結材試料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法と鋳鉄焼結材及び耐摩耗性に優れた軸受部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄は日本において年間数百万tも生産されているが、その大部分は鋳造用途に供されるものであり、鋳造後、目的の形状に切削加工されて利用される。従って製造された鋳鉄の数%〜10%程度は切削後の切削屑として廃棄されている。
例えば自動車産業界においては年間数千万台もの生産に伴い、自動車エンジンの各構成ブロック等から生じる切削屑だけで年間数万tもの量に達しているので、一部では切削屑を収集して他の原料と一緒に溶解して再利用しているが、多くの製造現場では屑として廃棄されている。
これら鋳鉄の切削屑は、自動車産業界に限らず、日本の各種産業界の製造現場において大量に存在しているが、その有効利用はなされておらず、一部業界の工場では溶解して再利用しようとする試みも見られたが、再生にコストが嵩むと採算が合わなくなるので、大部分の製造現場では廃棄物として大量に処分されているのが現状である。また、このような廃棄物としての切削屑は一般に極めて安い単価で取り引きされている。
【0003】
そこで従来から、これらの切削屑を粉末冶金に利用して再利用するための技術が研究されている。
例えば粉末冶金による切削屑の再生利用として、均質な切削屑を粉末冶金に利用するために不純物等を取り除き、切削屑を粉砕して粉末化し、粉砕時の加工硬化による問題を回避するために焼き鈍して軟化させ、金型に粉末を投入して加圧成形し、焼結性について研究すると共に、その経済性について研究した技術が知られている。(非特許文献1、P1331〜P1337参照)(非特許文献2、P79〜P85参照)
【非特許文献1】精密機械第46巻第11号、中川威雄、載豊樹、天野富雄、共著、1980年、11月刊行、P1331〜P1337、「粉末冶金による切削切粉の再生利用」
【非特許文献2】「鋳鉄粉の粉末冶金」、生産機械第36巻第2号、塙健三、中川威雄、共著、1984年、2月刊行、P79〜P85、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先の非特許文献1、2にも記載の如く大部分の金属材料は焼結可能ではあるが、実際に粉末化が容易な切削屑の中には焼結性の劣るものが多く、特別な焼結雰囲気が必要とされている。即ち、鉄は空気中において容易に酸化される材料であるので、焼結しようとしても切削屑から得られる成形用粉末の表面が酸化皮膜で覆われ易く、焼結しようとしている粉末どうしの間にこの酸化皮膜が存在すると、酸化皮膜が邪魔になって焼結が進行せず、焼結密度が上がらない、必要とする強度が得られ難いという問題がある。
また、鋳鉄は脆いので切削屑に機械的な粉砕操作を行えば容易に微粉化できるものの、先の非特許文献1に記載の如く微粉化した鋳鉄切削屑を焼結する際の焼結性は焼結温度と雰囲気に極めて敏感であり、引張強さの高いものを得ようとすると、制御が難しいと記載されていることからも知られているように、鋳鉄の切削屑を利用した鋳鉄の粉砕粉から満足な焼結材を得ようとする事業は現在でも実用化されていないのが実情である。
【0005】
また、これら非特許文献1、2の記載には、切削屑の粉末冶金への研究開発は種々進められているが、その殆どは切削屑を粉砕しないまま利用しようとするものが多く、そのため大きな塑性流動を与えた特別な鍛造を行ったり、長尺素材に押し出したりしているが、切削屑の流動性は悪く、その取り扱いは面倒であり、厳密な前処理を施すほど製造コストの面では大量生産の溶製材に比べて不利になる問題があり、一般には実用化ないしは普及には至っていないと記載されており、現在においても鋳鉄切削屑については有効な再利用手段が確率されていないのが現状である。
【0006】
そこで本発明者らは、各種工場において殆ど手が付かない状態で廃棄されるか、回収業者においても極めて安価に取り扱われている鋳鉄切削屑の粉末冶金への再利用について研究した結果、極めて安価かつ容易な操作により焼結可能であり、また、焼結後に得られる耐摩耗性などの特性が極めて優れており、焼結密度も高くすることができる鋳鉄焼結材の製造方法と、その製造方法により得られた鋳鉄焼結材を提供できる技術に到達し、本願発明に至った。
即ち本願発明は、極めて安価で入手し易い鋳鉄切削屑を積極的に利用することにより、耐摩耗性に優れ、焼結密度が高い鋳鉄焼結材の製造方法と鋳鉄焼結材、並びに耐摩耗性に優れた軸受部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体の集合体を加圧した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライト主体であって黒鉛粒子を分散させた組織にすることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、前記鋳鉄粉粒体として鋳鉄の切削屑を用いることを特徴とする。
【0008】
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、前記還元性雰囲気を水素雰囲気あるいは水素と不活性ガスの混合雰囲気とすることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくすることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭することを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材の製造方法は、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結した後、冷却することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭するとともに、鋳鉄粉粒体に含まれる黒鉛粒子を微細化してパーライトを主体とする素地中に黒鉛粒子を分散させ、前記黒鉛粒子の周囲をフェライト層が覆った組織とすることを特徴とする。
【0009】
本発明の鋳鉄焼結材は、鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体が焼結され、焼結後の素地がパーライトを主体とした組織とされ、該組織内に複数の黒鉛粒子が分散されてなることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材は、前記複数の黒鉛粒子の周囲にフェライトの被覆層が生成され、該被覆層の周囲をパーライトが覆ってなることを特徴とする。
本発明の鋳鉄焼結材は、焼結体の内部に生成されている空孔に油が含浸されてなることを特徴とする。
本発明の軸受部材は、先のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価であり、入手が容易な鋳鉄切削屑を有効に利用して、特に高価な設備や高価な処理手段を施すことなく耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材を得ることができる。
本発明において鋳鉄粉粒体の集合体を加圧した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライト主体であって黒鉛粒子を分散させた組織にすることにより、耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材を得ることができる。
鋳鉄粉粒体の集合体を加圧した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結することにより、加圧成形されている鋳鉄粉粒体どうしの界面部分に生成する酸化皮膜の影響を抑制して焼結し易くすることができ、より密度の高い焼結材を得ることができる。焼結時の加熱温度は1000〜1160℃の範囲が好ましく、この範囲より低温度では焼結反応が進行し難くなり、この範囲よりも高い温度では鋳鉄粉粒体が溶解するおそれがある。
【0011】
本発明において、焼結する際に加圧成形されている鋳鉄粉粒体の界面に焼結の阻害となる酸化皮膜が生成しないようにするためには、還元性雰囲気として水素雰囲気、あるいは、水素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが望ましく、これらの雰囲気で焼結するならば、焼結することにより密度を向上させることができ、高密度のものが得られ易い。
焼結時の雰囲気としては水素を含む還元雰囲気が望ましく、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくすることが可能となる。
【0012】
本発明により、鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結した後、冷却することにより、鋳鉄粉粒体に含まれる黒鉛粒子を微細化してパーライトを主体とする素地中に微細化した黒鉛粒子を分散させた組織とすることができる。また、微細化した黒鉛粒子の周囲をフェライト層が取り囲み、更にその周囲にパーライトの素地が存在する複合的な組織とすることで、耐摩耗性に特に優れた組織が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
本発明の最良の形態においては鋳鉄切削屑を出発材料として主に利用する。
この鋳鉄切削屑とは、鋳鉄の鋳物から鋳造品を製造する場合に旋盤等の切削具にて鋳造物を削り出した場合に発生するもので、適用できる鋳鉄として、球状黒鉛鋳鉄、片状黒鉛鋳鉄、ネズミ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄など、いずれの鋳鉄の切削屑でも使用することができるが、特に球状黒鉛鋳鉄あるいは片状黒鉛鋳鉄が国内で大量に使用されていて、切削屑も豊富で安価なことなどの理由から好ましい。
これらの鋳鉄切削屑は、大小種々の粒径の粉末状または粒状もしくは不定形の片状など、その他の種々形状の切削屑の混合体となっているので、本発明ではこれら切削屑の集合体を主として利用する。ただし、本発明を適用できるのは、鋳鉄切削屑に限らず、鋳鉄の溶湯からアトマイズ法などの粉末形成法にて得られた粉末あるいは鋳鉄のスラッジなどの廃棄物であっても良く、本発明で使用できるこれらの出発物を総称して鋳鉄粉粒体と称する。
【0014】
組成的に鋳鉄はCを1.7〜4.5%程度含む鉄−炭素系合金の総称であるが、用途に応じて、あるいは通常の微量不純物としてSi、Mn、S、Pなどの元素を含有している。
また、球状黒鉛鋳鉄にあって、例えば、C:3〜4%、Si:1.5〜2.0%、Mn:0.4〜0.6%、P<0.1%、S<0.1%の組成のものを用いることができる。
本実施形態において球状黒鉛鋳鉄切削屑や片状黒鉛鋳鉄切削屑の具体的な組成について例示するならば、Fe−3.38%C−2.71%Si−0.25%Mn−0.015%S−0.03%P、Fe−3.65%C−2.62%Si−0.66%Mn−0.080%S−0.03%P、Fe−3.10%C−2.71%Si−0.26%Mn−0.015%S−0.03%P、Fe−3.09%C−2.69%Si−0.25%Mn−0.075%S−0.03%Pなどである。
【0015】
これら鋳鉄の切削屑などの鋳鉄粉粒体を収集したならば、篩い分けなどの手法により適宜の大きさのものを選別する。ここで例えば、420μm以上のものを篩い分けして選択し、それよりも小さな粒径のものは除去することが好ましい。
また、粒径の上限として1680μm程度のものまで振り分けして選択し、それよりも大きなものは除去する。この範囲の中でも例えば420μm〜1190μm程度の範囲あるいは840μm〜1190μmの範囲の鋳鉄粉粒体を用いることが好ましい。
なお、粒径1680μmを超える大粒の鋳鉄粉粒体は、粉砕工程を付加して微細化し、420μm〜1190μm程度の範囲の粒径とすることで再利用できる。
【0016】
前述の如く粉砕する場合に必要以上に微細に粉砕する必要はなく、先の範囲であれば良い。また、あまりに微細に粉砕し過ぎると、粉砕に時間や手間がかかり、低コストの切削屑を利用する意味が薄くなるとともに、粉砕機の粉砕刃が粉砕時に粉粒体に強く接触するので粉砕刃の構成元素の混入する問題が生じ易い。また、あまりに微細に粉砕した場合、通常の厚さの酸化皮膜が生成したとしても、粒径に比して表面に厚い酸化皮膜が生成し易いなどの問題が生じるので、微細に粉砕し過ぎるのは望ましくない。また、鋳鉄粉粒体の粒径が1680μmを超えるようになると焼結しても焼結体に大きな空孔が生じるようになり、焼結密度が向上しなくなる。なお、傾向として420μmよりも微細な粒度分布の鋳鉄粉粒体を使用すると焼結しても密度は減少するおそれが高く、逆に840μmより大きな粒度分布の鋳鉄粉粒体では金型に挿入し難くなる傾向となる。
これらを勘案すると、切削屑などを含む鋳鉄粉粒体の望ましい粒径範囲として420μm〜1680μm程度の範囲が好ましく、420〜1190μmの範囲がより好ましく、粒径840〜1190μmの範囲の鋳鉄粉粒体が更に好ましいと考えられる。
【0017】
前記粒径を揃えた鋳鉄粉粒体を必要量集合したならば、加圧成形処理が可能な金型に投入し、加圧して目的の形状に圧密し、この圧密体を金型から取り出して加熱炉に収容して還元性雰囲気中にて必要な温度に加熱して焼結し、焼結後に加熱炉から取り出して空冷などの手段で急冷する。なお、先の工程において金型の内部を還元性雰囲気中として所望の圧力で加圧して目的の形状に成形した後に直ちに所望の温度に加熱して焼結し、加圧加熱後に空冷して目的の鋳鉄焼結材を得るようにしても良い。
【0018】
前記加圧処理を行う場合の圧力は300〜500MPaの範囲が好ましい。ここでの加圧力が低すぎると鋳鉄粉粒体を焼結した後の密度が高い値にならなくなり、高すぎると圧密できる金型が大がかりな設備となってしまい、低コスト操業が困難となりやすい。
【0019】
前記加熱処理を行う場合の雰囲気は、還元性雰囲気が好ましい。還元性雰囲気においても水素ガス雰囲気あるいは水素ガスと不活性ガスの混合雰囲気、COガス雰囲気、炭化水素ガス雰囲気などが望ましい。この加圧加熱処理を行う場合の雰囲気が大気雰囲気、真空中では望ましくなく、これらの雰囲気中では切削屑の表面に焼結を阻害する酸化皮膜が生成されてしまうおそれが高くなる。また、前記水素ガスを用いる場合、高濃度水素ガス雰囲気では作業自体が危険であるので、1〜5%程度の水素ガスを含むアルゴンガス雰囲気が望ましい。
前記焼結処理を行う場合の温度は、1000℃以上、1160℃以下の範囲が好ましい。これは、鋳鉄粉粒体が焼結を起こす場合に最低必要な温度が1000℃程度であり、鋳鉄の融点が1160℃程度であることに起因する。この範囲の温度であっても、焼結反応が充分に進みやすく、かつ、溶融のおそれの少ない温度範囲として、1050〜1150℃の範囲が好ましく、この範囲内であっても、より好ましい焼結性の観点から見て1100〜1130℃の範囲がより好ましい。
【0020】
一般組成比の鋳鉄は鋳造品において密度が7程度であるので、鋳鉄切削屑を圧密して焼結した鋳鉄鋳造材において得られる密度範囲は、4.5〜6.2程度となる。これは、密度が低くなりすぎると充分な焼結性が得られなくなり、耐摩耗性が低下するとともに、鋳鉄粉粒体を充分に圧密加工しても充填度合いは100%にはなり得ないので、6を超える程度の密度が粉末焼結法としての限界であることに起因する。
鋳造品の密度が7とすると鋳鉄焼結材の密度が6となれば15%程度の軽量化が可能となったことになり、密度5.4とすれば約23%の軽量化、密度4.5とすれば約35%の軽量化ができたことになる。
【0021】
前記焼結により形成された鋳鉄焼結材は、先の範囲の加圧条件と温度条件により加圧加熱処理した後、炉から取り出して空冷する操作により急冷されて製造されているので、焼結後に得られる組織は素地がほぼパーライトであって、パーライトの素地の中に球状の黒鉛粒子が分散され、更に黒鉛粒子の周囲に黒鉛粒子を取り囲む形でフェライト層が析出された組織を呈する。
このように組織の素地がパーライトであり、その内部に微細化された黒鉛粒子が分散され、更に黒鉛粒子の周囲をフェライト層が取り囲み、その外側がパーライトで覆われた組織構造であると、得られた鋳鉄焼結材は鋳造材として得られた鋳鉄よりも耐摩耗性に格段に優れた特徴を有する。
【0022】
また、得られた鋳鉄焼結材にあっては、圧密した鋳鉄粉粒体を還元性雰囲気中においてできるだけ酸化させないまま焼結しているので、鋳鉄粉粒体の粒子間に焼結の阻害となる強固な酸化皮膜を生成させることなく焼結できるので、焼結時の収縮作用を生じさせて焼結密度の高い焼結材とすることができる。また、還元性雰囲気中において鋳鉄粉粒体中に含まれている黒鉛粒子を脱炭する作用を生じさせることにより、出発原料である鋳鉄粉粒体の内部に存在していた黒鉛粒子よりも微細な黒鉛粒子に変性することができ、これにより素地をパーライトとする効果と相俟って耐摩耗性を更に向上することができる。
この点に鑑み、鋳鉄焼結材の製造に利用する鋳鉄は球状黒鉛鋳鉄が好ましく、球状黒鉛鋳鉄中に分散されている黒鉛粒子を容易に微細化することができる。
【0023】
先の如く還元性雰囲気中において焼結することにより、素地のパーライト化並びに黒鉛粒子の微細化、微細化した黒鉛粒子の周囲にフェライト層を生成させるためには、還元性雰囲気の中でも水素を含む雰囲気とすることが好ましい。ただし、焼結時の雰囲気に高濃度の水素が存在すると焼結の実施に危険を伴うので、実用的には数%程度の水素ガスとアルゴンなどの不活性ガスの混合ガスを用いることが好ましい。
【0024】
以上の如く得られた鋳鉄焼結材は内部に空孔を複数有しているので、これらの空孔に油を含浸させることで、無給油軸受部材として有効に利用することができる。そして、この形態の鋳鉄焼結材は耐摩耗性に特に優れているので、優れた軸受けとして市場に提供できる。
【実施例】
【0025】
球状黒鉛鋳鉄(FCD400)の切削工程で発生した鋳鉄切削加工粉(鋳鉄切削屑)を収集し、これらの鋳鉄切削屑の中から篩い分けにより粒径840〜1190μmの鋳鉄切削屑を約5.5gを選別してこれを出発材料とした。なお、用いた球状黒鉛鋳鉄切削屑の組成は、分析の結果Fe−3.38%C−2.71%Si−0.25%Mn−0.015%S−0.03%Pであった。
この鋳鉄切削屑を金型(ψ10.2×50mm)の中に投入し、400MPaの圧力にて成形後、得られた円柱状の試料(ψ10×50mm)を水素雰囲気(水素ガス2%、残部窒素ガス98%の水素雰囲気)とした加熱炉中において1373〜1403K(約1100℃〜1130℃)の温度で1時間焼結した後、試料を加熱炉から取り出し、空冷して鋳鉄焼結材試料を得た。また、先の鋳鉄切削屑から先と同じ条件で切削屑を選別し、先と同等の条件で複数の鋳鉄焼結材試料を得た。
また、鋳鉄焼結材試料の耐摩耗性に及ぼす成形圧力の影響を調べるために、切削屑の成形圧のみを試料に応じて300MPaあるいは500MPaに変更して焼結し、他の鋳鉄焼結材試料を得た。
【0026】
得られた各種の鋳鉄焼結材試料は、乾式にて相手材試料として市販の炭素鋼(JIS:S45C)に設定して摩擦摩耗試験に供した。
この摩擦摩耗試験とは、炭素鋼(JIS:S45C)製の図1に示す円盤状(ψ70mm)の回転自在な定盤1の上面中央部に円柱状の前記鋳鉄焼結材試料(ψ10×50mm)2を鉛直に規定の面圧(0.6〜1.8MPa)で押し付けつつ定盤1をその周周りに回転(0.1〜0.2m/sec)させて測定される摩耗量で示した。
前記摩擦摩耗試験による各鋳鉄焼結材試料の摩耗量を鋳鉄の鋳造材試料(JIS:FCD400)の摩耗量と比較して図2に示す。
【0027】
図2に示す結果から、鋳鉄鋳造材試料が180mg〜250mgの範囲の摩耗量を示すのに対し、本発明に係る鋳鉄焼結材試料の摩耗量は0.6mg〜1.9mgの範囲の摩耗量を示し、摩耗量が鋳造材試料の約1/100となり、格段に優れた耐摩耗性を発揮することが判明した。また、本願発明試料は300MPaあるいは500MPaのいずれの成形圧力で加圧成形した場合であっても摩耗量は少なく、定盤1の回転速度が上昇しても摩耗量は変わらないが、鋳鉄鋳造材試料の摩耗量は定盤1の回転数が上昇すると明らかに増加した。
【0028】
以上のことから、本願発明の鋳鉄焼結材であれば、成形圧を300MPaあるいは500MPaのいずれの値としても摩耗量が変わず、しかもその値自体も低いので、鋳鉄焼結材で得ることができる製品の耐摩耗性を維持したまま軽量化を図ることができることが判る。即ち、300MPaで加圧焼結した試料は密度が5となり、比重7の鋳鉄鋳造材よりも約30%程度軽量化ができ、500MPaで加圧焼結した試料は密度が5.7となり、比重7の鋳鉄鋳造材より約20%程度軽量化ができたことになる。
次に、成形圧500MPaで成形した前記鋳鉄焼結材試料の密度は5.6、硬度は(ビッカース硬さ)310であるのに対し、鋳造材試料の密度は7.0、硬度は(ビッカース硬さ)200であった。これは鋳鉄焼結材試料の素地がパーライトに変化していること、黒鉛粒子が微細化されていること、後述する如く黒鉛粒子の周囲にフェライト層が生成している組織を有するために硬度が向上したものと思われる。
【0029】
次に、Fe−3.65%C−2.62%Si−0.66%Mn−0.080%S−0.03%Pの組成比の片状黒鉛鋳鉄の切削屑を用いて先の例と同等の製造条件で得た鋳鉄焼結材において、摩擦速度0.1m/sで、成形圧を300MPaあるいは500MPaとした試料であって、焼結後の密度が5.4と6.0を示した試料について、相手材の摩耗量に及ぼす面圧(面圧0.6MPa、面圧1.2MPa、面圧1.8MPa)の影響を測定した結果を図3(A)、(B)に示す。また、図3(A)、(B)には密度7.2の片状黒鉛鋳鉄鋳造材の摩耗量も示した。
図3(A)、(B)に示すように片状黒鉛鋳鉄焼結材の摩耗量は、面圧を0.6MPaから1.8MPaに増加させた場合、摩耗量は面圧1.8MPaでは幾分増加する傾向を示すが、その増加量は成形圧で幾分変化し、面圧0.6MPaと面圧1.2MPaでは殆ど摩耗量に大差はない。一方、相手材の摩耗量は面圧を0.6MPaから1.8MPaに増加することにより2倍程度増加した。
即ち、片状黒鉛鋳鉄鋳造材試料の摩耗量は面圧を0.6〜1.2に変えることにより大きく増加するが、本発明に係る片状黒鉛鋳鉄焼結材試料は面圧を0.6〜1.8MPaに変えても大きく変化しないことが判明した。
【0030】
図4は各種条件のうち、加圧条件を300MPaあるいは500MPaとして得た球状黒鉛鋳鉄の焼結材試料の摩耗量を示すが、加圧条件を300MPaとした密度5の試料はいずれの面圧においても摩耗量が少なく、加圧条件を500MPaとした密度5.7の試料はいずれの面圧においても摩耗量が少なくなった。これらに対して密度7の球状黒鉛鋳鉄の鋳造材の摩耗量は0.6MPaの面圧においても、1.2MPaの面圧においても摩耗量が著しく増加した。この図4に示す測定結果から、本発明に係る鋳鉄焼結材の耐摩耗性が優れていることがわかる。
【0031】
図5と図6は球状黒鉛鋳鉄の切削屑から得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の摩耗量に及ぼす摩耗時間の測定結果を示す。
図5に示す如く面圧が低い場合は時間が経過しても(3時間経過後も)殆ど摩耗量が増加していない。また、図6に示すように相手材においては面圧が低い場合は時間が経過しても殆ど摩耗量が増加していない。図5と図6に示すデータから、面圧を上昇させると自身の摩耗量、相手材摩耗量はいずれも増加した。
【0032】
図7は先の実施例に用いるために用意した球状黒鉛鋳鉄切削屑の粒度分布を示し、図8は先の実施例に用いるために用意した片状黒鉛鋳鉄の粒度分布を示す。
図7と図8の粒度分布に示す如く鋳鉄切削屑の粒界は微細なものから極めて大きいmmオーダーのものまで分布している。ここでmmオーダーの切削屑を焼結に用いたのでは空孔の割合が増加して焼結密度が上がらないか、焼結できなくなるおそれが高いので、本実施例では粒度を選別し、先の説明の如く420〜1190μmの片状黒鉛鋳鉄切削屑、あるいは840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑を用いた。
片状黒鉛鋳鉄切削屑と球状黒鉛鋳鉄切削屑において、片状黒鉛鋳鉄切削屑の粒度分布よりも球状黒鉛鋳鉄の粒度分布の方が大きな粒径のものが多くなっている。
【0033】
次に、球状黒鉛鋳鉄の鋳造材の組織と先の球状黒鉛鋳鉄切削屑を用いて得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材試料の組織の比較を図9と図10に示す。
図9(A)は球状黒鉛鋳鉄の鋳造材(摩耗試験と同じサイズの試料を鋳造後空冷した試料)の組織写真を示し、図9(B)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって500MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示し、図9(C)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって400MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示し、図10(D)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって300MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示し、図10(E)は粒径840〜1190μmの球状黒鉛鋳鉄切削屑から焼結された鋳鉄焼結材であって200MPaにて加圧した場合の試料の組織写真を示す。これらの図において示されるパーライト組織は、試料を加熱炉から取り出して空冷したことによる急冷効果により得られたものと思われる。
【0034】
なお、本発明者の推論では、試料中に比較的多くのC(黒鉛粒子)が存在することに加え、還元雰囲気に存在していた水素が要因となり、更に空冷により急冷されたことによって、鋳鉄焼結材から脱炭が進行し、黒鉛粒子の微細化と素地のパーライト化に寄与したものと思われる。
また、黒鉛粒子の微細化については、球状黒鉛鋳鉄の切削屑を用いることが有利と思われる。これは、黒鉛粒子が既に球状化されている方が、脱炭が進行した際に黒鉛粒子の空洞化が起こり易くなり、黒鉛粒子の微細化とともに空隙が増えて相手材との接触面積が減少するために耐摩耗性が向上するのではないかと推定できる。
【0035】
これらの図9と図10に示す組織写真に示す結果から、鋳鉄焼結材の加圧加熱時の条件が300〜500MPaの範囲であれば、鋳造材よりも微細化された黒鉛粒子が組織中に分散され、微細黒鉛粒子の周囲をフェライト層が取り囲み、その周囲の素地がパーライトとなっている組織を呈していることが判る。これに対して200MPaで加圧した試料は組織の状態が変わっていることが判明した。
このような黒鉛粒子の微細化とその周囲をフェライト層が取り囲み、更にその周囲の素地がパーライトとなっていることが耐摩耗性が著しく向上した一因と思われる。
図9、図10に示す組織写真の縮尺は同一であり、図9(A)に示す多数の黒点が黒鉛粒子Cを示すが、図9(B)、(C)、図10(D)に示す鋳鉄焼結材試料に見られる黒点の黒鉛粒子aはいずれも図9(A)に示す黒鉛粒子Cよりも微細化されており、しかも微細化された黒鉛粒子aの周囲に薄いフェライト層bが存在し、更にその周囲に素地としてのパーライトが存在していることが判る。図10(E)に示す200MPaで加圧した後に焼結した試料の組織は、図9(B)、(C)、図10(D)に示す鋳鉄焼結材試料の組織と大きく変わっていることが判る。図10(E)に示す試料においても微細な黒点の黒鉛粒子aとその周囲を囲むフェライト層bは一部見られるものの、素地の中に黒い大きな不定形の領域が広がっていた。この領域は気孔または空隙と思われる。
【0036】
ところで、先の製造条件において、焼結時の雰囲気として、還元性雰囲気に代えて、大気中で焼結したもの、大気中で通電焼結したものはいずれの試料であっても焼結後も密度が向上せず、焼結できなかった。
また、先の片状黒鉛鋳鉄切削屑を用いて10−2〜10−3mmHg程度の減圧雰囲気中(真空雰囲気中)において900℃、1000℃、1100℃の各温度で1時間焼結した試料の焼結前後の密度を測定した結果を以下に記載する。
【0037】
900℃ 1時間 減圧雰囲気中
焼結前密度ρ(g/cm) 焼結後密度ρ'(g/cm)
200MPa 5.05259 4.9433
200MPa 5.04605 4.9471
300MPa 5.41371 5.30299
300MPa 5.44116 5.29
400MPa 5.69799 5.57158
400MPa 5.6846 5.5608
【0038】
1000℃ 1時間 減圧雰囲気
200MPa 5.0529 4.86225
200MPa 4.9968 4.908384
300MPa 5.4239 5.21244
300MPa 5.42162 5.43504
400MPa 5.70106 5.68817
400MPa 5.77082 5.67837
【0039】
1100℃ 1時間 減圧雰囲気
200MPa 5.0424 5.02678
200MPa 5.1669 5.1983
300MPa 5.4308 5.545044
300MPa 5.4287 5.5005
400MPa 5.6742 5.6996
400MPa 5.7069 5.7455
【0040】
これらの測定結果から見ると、減圧雰囲気におけるテスト焼結において900℃で焼結するといずれの圧力でも密度の向上は見込めず、1000℃で焼結しても焼結後の密度向上は見込めず、1100℃で焼結する処理ならば若干密度の向上が見込めたが、減圧雰囲気中で焼結しても焼結密度の大きな向上効果は期待できないことが判明した。
この試験結果から鑑みて先の還元雰囲気中において行う際の熱処理温度の下限は1000℃、より好ましい熱処理温度の下限は1100℃と推定し、先の還元雰囲気で行う試験の焼結温度の下限を規定した。また、焼結温度は高いほど焼結性が向上するので先の下限温度よりも高い方が好ましいが、1160℃を越える温度になると鋳鉄自身が溶融するおそれが高くなる。
【0041】
図11は先の摩耗試験に供した片状黒鉛鋳鉄焼結体試料の硬度を測定した結果を示し、図12は先の摩耗政権に供した球状黒鉛鋳鉄焼結体試料の硬度を測定した結果を示す。
図11と図12において試料全体の硬度をビッカース硬さで示し、基地硬さ(パーライトとフェライトの存在する基地部分の硬さ)としてマイクロビッカース硬さの測定値を示した。
図11と図12に示す結果から、基地部分の硬さが全体の硬さより明らかに上回っており、これが優れた耐摩耗性に貢献しているものと思われる。なお、密度が7を若干越える試料は鋳造材試料である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明に係る試料を摩擦摩耗試験に供した際に用いた摩擦摩耗試験装置の一例を示す構成図。
【図2】図2は実施例で製造した鋳鉄焼結体試料と鋳鉄鋳造材試料について摩擦摩耗試験に供した場合に得られる定盤の回転数と摩耗量の関係を測定した結果を示す図である。
【図3】図3(A)は鋳鉄焼結材試料と鋳鉄鋳造材試料の摩耗量に及ぼす面圧の影響を測定した結果を示す図、図3(B)は鋳鉄焼結材試料と鋳鉄鋳造材試料の相手材(定盤)の摩耗量に及ぼす面圧の影響を測定した結果を示す図である。
【図4】図4は鋳鉄焼結材試料と鋳鉄鋳造材試料の摩耗量に及ぼす面圧の影響を示す図である。
【図5】図5は球状黒鉛鋳鉄焼結材の摩耗量に及ぼす摩耗時間と面圧の影響を示す図である。
【図6】図6は球状黒鉛鋳鉄焼結材において摩擦摩耗試験装置の定盤(相手材)の摩耗量に及ぼす摩耗時間と面圧の影響を示す図である。
【図7】図7は球状黒鉛鋳鉄焼結材試料の製造に用いた切削屑の粒度分布を示す図である。
【図8】図8は片状黒鉛鋳鉄焼結材試料の製造に用いた切削屑の粒度分布を示す図である。
【図9】図9(A)は球状黒鉛鋳鉄の鋳造材の組織を示す写真、図9(B)は500MPaにで加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真、図9(C)は400MPaにで加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真である。
【図10】図10(D)は300MPaにて加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真、図10(E)は200MPaにて加圧加熱した場合に得られた球状黒鉛鋳鉄焼結材の組織を示す写真である。
【図11】図11は片状黒鉛鋳鉄焼結体試料の全体硬さ(ビッカース)と基地硬さ(マイクロビッカース)並びに鋳造品の硬さを測定した結果を示す図である。
【図12】図12は球状黒鉛鋳鉄焼結体試料の全体硬さ(ビッカース)と基地硬さ(マイクロビッカース)並びに鋳造品の硬さを測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…定盤、2…鋳鉄焼結材試料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体の集合体を圧密した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライト主体であって黒鉛粒子を分散させた組織にすることを特徴とする耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項2】
前記鋳鉄粉粒体として鋳鉄の切削屑を使用することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項3】
前記還元性雰囲気を水素雰囲気あるいは水素と不活性ガスの混合雰囲気とすることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項4】
鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項5】
鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結した後、冷却することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭するとともに、鋳鉄粉粒体に含まれる黒鉛粒子を微細化してパーライトを主体とする素地中に黒鉛粒子を分散させ、前記黒鉛粒子の周囲をフェライト層が覆った組織とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項6】
鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体が焼結され、焼結後の焼結体の素地がパーライトを主体とした組織とされ、該組織内に複数の黒鉛粒子が分散されてなることを特徴とする耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材。
【請求項7】
前記複数の黒鉛粒子の周囲にフェライトの被覆層が生成され、該被覆層の周囲をパーライトが覆ってなることを特徴とする請求項6に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材。
【請求項8】
焼結体の内部に生成されている空孔に油が含浸されてなることを特徴とする請求項6または7に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材からなることを特徴とする軸受部材。
【請求項1】
鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体の集合体を圧密した後、還元雰囲気において1000〜1160℃の温度に加熱して焼結した後、冷却して素地をパーライト主体であって黒鉛粒子を分散させた組織にすることを特徴とする耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項2】
前記鋳鉄粉粒体として鋳鉄の切削屑を使用することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項3】
前記還元性雰囲気を水素雰囲気あるいは水素と不活性ガスの混合雰囲気とすることを特徴とする請求項1または2に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項4】
鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項5】
鋳鉄粉粒体の集合体を水素を含む還元性雰囲気にて焼結した後、冷却することにより、焼結物の炭素含有量を元の鋳鉄粉粒体の炭素含有量よりも少なくして脱炭するとともに、鋳鉄粉粒体に含まれる黒鉛粒子を微細化してパーライトを主体とする素地中に黒鉛粒子を分散させ、前記黒鉛粒子の周囲をフェライト層が覆った組織とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材の製造方法。
【請求項6】
鋳鉄素材から得られた鋳鉄粉粒体が焼結され、焼結後の焼結体の素地がパーライトを主体とした組織とされ、該組織内に複数の黒鉛粒子が分散されてなることを特徴とする耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材。
【請求項7】
前記複数の黒鉛粒子の周囲にフェライトの被覆層が生成され、該被覆層の周囲をパーライトが覆ってなることを特徴とする請求項6に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材。
【請求項8】
焼結体の内部に生成されている空孔に油が含浸されてなることを特徴とする請求項6または7に記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結体。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の耐摩耗性に優れた鋳鉄焼結材からなることを特徴とする軸受部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−257483(P2006−257483A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75716(P2005−75716)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月17日 社団法人日本鋳造工学会発行の「第145回 全国講演大会講演概要集」に発表
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月17日 社団法人日本鋳造工学会発行の「第145回 全国講演大会講演概要集」に発表
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】
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