説明

耐火性フィラー粉末、封着材料及び耐火性フィラー粉末の製造方法

【課題】低膨張、高強度であり、且つ低温で固相反応し得る耐火性フィラー粉末およびその製造方法を創案することにより、封着材料の低廉化を図るとともに、封着部位の破損及び未反応の原料に起因する封着不良を防止すること。
【解決手段】本発明の耐火性フィラー粉末は、主結晶相がウイレマイト及びガーナイトであることを特徴とし、ウイレマイトとガーナイトの割合が、モル比で99:1〜70:30であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性フィラー粉末、封着材料及び耐火性フィラー粉末の製造方法に関し、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(以下、FED)、蛍光表示管(以下、VFD)等の表示装置の封着、圧電振動子パッケージ、ICパッケージ等の電子部品の封着に好適な耐火性フィラー粉末、封着材料及び耐火性フィラー粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
封着材料として、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む複合粉末材料が用いられている。この封着材料は、樹脂系の接着剤に比べ、化学的耐久性や耐熱性に優れており、また気密性の確保に適している。
【0003】
従来、ガラス粉末として、PbO−B系ガラスが用いられていた(特許文献1等参照)。しかし、環境的観点から、ガラス組成からPbOを除くことが要求されており、Bi−B系ガラスが開発されるに到っている。特許文献2等によると、Bi−B系ガラスは、低融点であり、且つPbO−B系ガラスと同様の化学的耐久性を有している。
【0004】
耐火性フィラー粉末を用いると、熱膨張係数の低下や機械的強度の向上を図ることができる。従来、耐火性フィラー粉末として、低膨張のチタン酸鉛等が使用されてきた。しかし、ガラス粉末と同様にして、耐火性フィラー粉末の組成からPbOを除くことが要求されている。このため、耐火性フィラー粉末として、ウイレマイト、コーディエライト、二酸化スズ、β−ユークリプタイト、ムライト、シリカ、β−石英固溶体、チタン酸アルミ、ジルコン等が検討されている。その中でもウイレマイトは、低膨張であり、且つBi−B系ガラスと適合性が良好である(封着時にBi−B系ガラスを失透させ難い)ため、注目されている(特許文献3、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−315536号公報
【特許文献2】特開平8−59294号公報
【特許文献3】特開平4−114930号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E.N.Bunting、「Phase equilibtia in the system SiO2−ZnO−Al2O3」、J.Res.NAT.Bur.Stand.,11,725、1933
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウイレマイトは、低膨張であるが、他の耐火性フィラー粉末に比べると、封着部位の機械的強度を高める効果が低い。封着部位の機械的強度が低いと、機械的衝撃等により、封着部位が破損し易くなり、表示装置等の気密性を維持し難くなる。
【0008】
また、ウイレマイトは、一般的に固相反応法で作製される。固相反応法でウイレマイトを作製する場合、固相反応を完了させるために、高温(具体的には1440℃以上)で原料を焼成する必要がある。焼成温度が低いと、原料の一部が未反応になり易い。封着材料中に未反応の原料が残存していると、封着時にガラスに意図しない結晶が析出し易くなるため、封着不良が発生し易くなる。一方、ウイレマイトの融点は、約1510℃である(非特許文献1参照)。このため、焼成温度が高いと、焼成時に焼成物の融着が発生し易くなり、結果として、焼成物の粉砕効率が大幅に低下し、封着材料の製造コストが高騰してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、低膨張、高強度であり、且つ低温で固相反応し得る耐火性フィラー粉末及びその製造方法を創案することにより、封着材料の低廉化を図るとともに、封着部位の破損及び未反応の原料に起因する封着不良を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意努力の結果、主結晶として、ウイレマイト及びガーナイトを析出させた耐火性フィラー粉末を用いることにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の耐火性フィラー粉末は、主結晶相がウイレマイト及びガーナイトであることを特徴とする。
【0011】
同一粒子中にウイレマイト及びガーナイトを析出させた場合、主結晶相がウイレマイトのみの場合よりも、封着部位の機械的強度を向上させる効果が大きくなる。その結果、封着部位の破損を防止し易くなり、表示装置等の気密性を維持し易くなる。また、ウイレマイトの析出により、熱膨張係数を低下させる効果も的確に享受することができる。
【0012】
さらに、ガーナイトの生成により、ウイレマイトの生成が促進されるため、焼成温度を低温化でき、結果として、焼成物の融着が生じ難くなり、耐火性フィラー粉末の製造効率が向上する。
【0013】
第二に、本発明の耐火性フィラー粉末は、ウイレマイトとガーナイトの割合が、モル比で99:1〜70:30であることを特徴とする。このようにすれば、熱膨張係数を低下させる効果を維持しながら、封着部位の機械的強度を高めることができる。
【0014】
第三に、本発明の耐火性フィラー粉末は、組成として、モル%で、ZnO 60〜79.9%、SiO 20〜39.9%、Al 0.1〜10%を含有することを特徴とする。このようにすれば、ウイレマイトとガーナイトの割合を適正化し易くなり、熱膨張係数を低下させる効果を維持しながら、封着部位の機械的強度を高め易くなる。
【0015】
第四に、本発明の耐火性フィラー粉末は、固相反応法により作製されてなることを特徴とする。固相反応法は、まず所望の組成になるように酸化物等の原料を調合し、これを焼成した後、得られた焼成物を解砕、粉砕、分級して耐火性フィラー粉末を作製する方法である。この方法によれば、原料の溶融が不要になるため、耐火性フィラー粉末の製造コストを低廉化することができる。
【0016】
第五に、本発明の封着材料は、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む封着材料において、耐火性フィラー粉末として、上記の耐火性フィラー粉末を含むことを特徴とする。
【0017】
第六に、本発明の封着材料は、耐火性フィラー粉末の含有量が0.1〜70体積%であることを特徴とする。このようにすれば、封着材料の熱膨張係数を被封着物の熱膨張係数に整合させ易くなり、また封着材料の機械的強度も高めることができる。
【0018】
第七に、本発明の封着材料は、ガラス粉末がBi−B系ガラスであることを特徴とする。Bi−B系ガラスは、低融点であり、且つ熱的安定性や耐水性が良好であるため、低温で封着し易く、また表示装置等の気密性を確保し易い性質を有している。さらに、Bi−B系ガラスは、本発明の耐火性フィラー粉末との適合性が良好である。なお、「〜系ガラス」とは、明示の成分を必須成分として含み、その合量が30モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上のガラスを指す(以下、同様)。
【0019】
第八に、本発明の封着材料は、更に、耐火性フィラー粉末として、コーディエライト、ジルコン、β−ユークリプタイト、石英ガラス、アルミナ、ムライト、アルミナ−シリカ系セラミックスから選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする。
【0020】
第九に、本発明の封着材料は、更に、無機顔料を含むことを特徴とする。
【0021】
第十に、本発明の封着材料は、実質的にPbOを含有しないことを特徴とする。このようにすれば、近年の環境的要請を満たすことができる。ここで、「実質的にPbOを含有しない」とは、封着材料中のPbOの含有量が1000ppm(質量)以下の場合を指す。
【0022】
第十一に、本発明の耐火性フィラー粉末の製造方法は、組成として、モル%で、ZnO 60〜79.9%、SiO 20〜39.9%、Al 0.1〜10%を含有するように、原料を調合した後、固相反応法により、ウイレマイト及びガーナイトを析出させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】マクロ型DTA装置で測定した時の封着材料の軟化点を示す模式図である。
【図2】タブレット一体型排気管の一形態を示す断面概念図である。
【図3】タブレット一体型排気管の一形態を示す断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の耐火性フィラー粉末において、ウイレマイトとガーナイトの割合は、モル比でウイレマイト:ガーナイト=99:1〜70:30、95:5〜80:20、特に90:10〜85:15が好ましい。ガーナイトの割合が多過ぎると、熱膨張係数を低下させる効果が乏しくなり、また反応温度が高温化して、耐火性フィラー粉末の製造コストが高騰し易くなる。一方、ガーナイトの割合が少な過ぎると、機械的強度を高める効果が乏しくなる。
【0025】
本発明の耐火性フィラー粉末は、組成として、モル%で、ZnO 60〜79.9%(好ましくは63〜70%)、SiO 20〜39.9%(好ましくは28〜35%)、Al 0.1〜10%を含有することが好ましい。耐火性フィラー粉末を作製する際のバッチ組成も、モル%で、ZnO 60〜79.9%、SiO 20〜39.9%、Al 0.1〜10%を含有することが好ましい。ZnO及びSiOは、結晶の構成成分である。Alは、結晶の構成成分であり、且つ反応促進剤として機能し、焼成温度を低下させる成分である。なお、反応促進剤としての機能を考慮すると、Alの含有量は0.1モル%以上、1モル%以上、特に3モル%以上が好ましい。Alの含有量が0.1モル%より少ないと、反応促進剤として機能し難くなる。一方、Alの含有量が多過ぎると、ウイレマイトが生成し難くなる。
【0026】
本発明の耐火性フィラー粉末は、固相反応法により作製されてなることが好ましい。この方法によれば、原料の溶融が不要になるため、耐火性フィラー粉末の製造コストを低廉化することができる。また、焼成前に原料を粉砕混合することが好ましい。このようにすれば、原料同士が機械的衝撃を受けながら微粉末の状態で混合されるため、原料の比表面積が大きくなり、結果として、固相反応が促進される。また、このようにすれば、焼成時間を短縮させることも可能になる。なお、焼成温度は、焼成物の融着が生じず、所望の結晶が十分に析出する温度が好ましく、具体的には1400〜1460℃が好ましい。
【0027】
本発明の封着材料において、耐火性フィラー粉末の平均粒子径D50は20μm以下、特に2〜15μmが好ましい。このようにすれば、耐火性フィラー粉末の製造コスト(粉砕コスト、分級コスト)を高騰させることなく、封着厚みを狭小化し易くなる。なお、耐火性フィラー粉末による効果を的確に享受するために、耐火性フィラー粉末の平均粒子径D50は0.5μm以上が好ましい。ここで、「平均粒子径D50」は、レーザ回折法で測定した値を指し、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。
【0028】
本発明の封着材料において、耐火性フィラーの最大粒子径Dmaxは100μm以下、特に10〜75μmが好ましい。このようにすれば、封着材料の製造コストを高騰させることなく、封着厚みを狭小化し易くなる。ここで、「平均粒子径Dmax」は、レーザ回折法で測定した値を指し、レーザ回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して99%である粒子径を表す。
【0029】
本発明の封着材料は、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含み、耐火性フィラー粉末として、上記の耐火性フィラー粉末を含むことを特徴とする。本発明の封着材料において、耐火性フィラー粉末の含有量は0.1〜70体積%、15〜50体積%、特に20〜40体積%が好ましい。耐火性フィラー粉末の含有量が70体積%より多いと、ガラス粉末の含有量が相対的に少なくなるため、封着材料の流動性が低下し、結果として、封着強度が低下し易くなる。一方、耐火性フィラー粉末の含有量が0.1体積%より少ないと、耐火性フィラー粉末による効果が乏しくなる。なお、本発明の封着材料において、本発明の耐火性フィラー粉末(主結晶相がウイレマイト及びガーナイトである耐火性フィラー粉末)の含有量は0.1〜70体積%、15〜50体積%、特に20〜40体積%が好ましい。
【0030】
ガラス粉末として、種々のガラス系のガラス粉末を用いることができる。例えば、Bi−B系ガラス、V−P系ガラス、SnO−P系ガラスが低融点特性の点で好適であり、Bi−B系ガラスが熱的安定性、耐水性の点で特に好ましい。
【0031】
Bi−B系ガラスは、ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%で、Bi 15〜50%、B 15〜50%、ZnO 0〜45%(好ましくは1〜40%)含有することが好ましい。このようにすれば、熱的安定性と低融点特性を高いレベルで両立させることができる。なお、熱的安定性を高めるために、BaO、Fe、CuOの一種又は二種以上を0.1モル%以上添加することが好ましい。
【0032】
本発明の封着材料において、ガラス粉末の平均粒子径D50は15μm未満、0.5〜10μm、特に1〜5μmが好ましい。ガラス粉末の平均粒子径D50が15μm未満であると、ガラス粉末の軟化点が低下し、封着材料の流動性が向上する。
【0033】
本発明の封着材料は、更に、耐火性フィラー粉末として、コーディエライト、ジルコン、β−ユークリプタイト、石英ガラス、アルミナ、ムライト、アルミナ−シリカ系セラミックスから選ばれる一種又は二種以上を含んでもよい。これらの耐火性フィラー粉末は、熱膨張係数や流動性の調整や機械的強度の向上の観点から、有用である。また、これらの耐火性フィラー粉末の含有量は、合量で0〜30体積%、特に0〜10体積%が好ましい。
【0034】
本発明の封着材料は、更に無機顔料を含むことが好ましい。このようにすれば、封着部位の外観不良を低減することができる。無機顔料の含有量は0〜10体積%、0.1〜5体積%、特に0.5〜3体積%が好ましい。無機顔料の含有量が10体積%より多いと、封着時においてガラスへの無機顔料の溶け込み量が多くなるため、封着材料の熱的安定性が損なわれ易くなる。無機顔料として、Cu系酸化物、Fe系酸化物、Cr系酸化物、Mn系酸化物及びこれらのスピネル型複合酸化物が好ましい。
【0035】
本発明の封着材料において、無機顔料の平均粒子径D50は0.01〜5μm、0.5〜5μm、特に1〜3μmが好ましい。無機顔料の平均粒子径D500が5μmより大きいと、封着材料中に無機顔料を均一に分散させることが困難になり、局所的に封着不良が発生するおそれが生じる。一方、無機顔料の平均粒子径D50が0.01μmより小さいと、封着時に無機顔料がガラスに溶け込み易くなるため、封着材料の熱的安定性が損なわれ易くなる。
【0036】
本発明の封着材料は、更に、封着厚みを均一化するために、ガラスファイバー、ガラスビーズ、シリカビーズ、樹脂ビーズ等をスペーサーとして10体積%まで含有してもよい。
【0037】
本発明の封着材料において、熱膨張係数は80×10−7/℃以下、特に75×10−7/℃以下が好ましい。このようにすれば、被封着物や封着部位に残留する応力を低減できるため、封着部位が応力破壊して、表示装置等の気密性が損なわれる事態を防止し易くなる。ここで、「熱膨張係数」は、30〜300℃の温度範囲において押棒式熱膨張係数測定(TMA)装置で測定した値を指す。
【0038】
本発明の封着材料において、軟化点は475℃以下、特に460℃以下が好ましい。このようにすれば、封着材料の流動性を高めることができる。ここで、「軟化点」は、示差熱分析(DTA)装置で測定した値を指し、マクロ型DTA装置により、大気中、昇温速度10℃/分、室温から測定開始等の条件で測定することができる。なお、マクロ型DTAの場合、図1に示す第四屈曲点の温度(Ts)が軟化点に相当する。
【0039】
本発明の封着材料において、結晶化温度は550℃以上、570℃以上、特に600℃以上が好ましい。このようにすれば、一次焼成工程(グレーズ工程、脱バインダー工程)及び二次焼成工程(封着工程)でガラスに結晶が析出し難くなり、表示装置等の気密性を確保し易くなる。ここで、「結晶化温度」は、DTA装置で測定した結晶化ピーク温度を指し、マクロ型DTA装置により、大気中、昇温速度10℃/分、室温から測定開始等の条件で測定することができる。
【0040】
本発明の封着材料は、粉末状態で使用に供してもよいが、ビークルと均一に混練し、ペースト化すると取り扱い易くなり、好ましい。ビークルは、通常、溶媒と樹脂を含む。樹脂は、ペーストの粘性を調整する目的で添加される。また、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤等を添加することもできる。作製されたペーストは、ディスペンサーやスクリーン印刷機等の塗布機を用いて、被封着物の表面に塗布される。
【0041】
樹脂としては、アクリル酸エステル(アクリル樹脂)、エチルセルロース、ポリエチレングリコール誘導体、ニトロセルロース、ポリメチルスチレン、ポリエチレンカーボネート、メタクリル酸エステル等が使用可能である。特に、アクリル酸エステル、ニトロセルロースは、熱分解性が良好であるため、好ましい。
【0042】
溶媒としては、N、N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、α−ターピネオール、高級アルコール、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラリン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、水、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン等が使用可能である。特に、α−ターピネオールは、高粘性であり、樹脂等の溶解性も良好であるため、好ましい。
【0043】
本発明の封着材料は、所定形状に焼結し、タブレット化して用いることが好ましい。PDP等の排気管の封着には、リング状に成型加工されたタブレット(プレスフリット・ガラス焼結体・ガラス成形体)が使用されている。タブレットには、排気管を挿入するための挿入孔が形成されており、この挿入孔に排気管を挿入し、排気管の先端部をパネルの排気孔の位置に合わせ、クリップ等で固定される。その後、二次焼成工程でタブレットを軟化させることにより、排気管がパネルに取り付けられる。本発明の封着材料をタブレットに加工すれば、排気管の取り付けに際して、排気設備への接続が容易になり、また排気管の傾きを低減でき、更にはPDP等の発光能力を維持しつつ、気密信頼性が保たれるように取り付け易くなる。
【0044】
タブレットは、複数回の熱処理により作製される。まず、封着材料に樹脂や溶剤を添加し、スラリーを調製する。その後、このスラリーをスプレードライヤー等の造粒装置に投入し、顆粒を作製する。その際、顆粒は、溶剤が揮発する温度(100〜200℃程度)で乾燥される。さらに、作製された顆粒は、所定の寸法に設計された金型に投入された後、リング状に乾式プレス成型され、プレス体が作製される。次に、ベルト炉等の熱処理炉にて、このプレス体に残存する樹脂を分解揮発させた後、封着材料の軟化点程度の温度で焼結する。このようにして、所定形状のタブレットを作製することができる。また、焼結回数を複数回としてもよい。このようにすれば、タブレットの強度が向上し、タブレットの欠損、破壊等を防止し易くなる。
【0045】
本発明の封着材料は、タブレット化した上で、更に拡径された排気管の先端部に取り付けてタブレット一体型排気管として用いることが好ましい。このようにすれば、排気孔を起点にして、排気管とタブレットの位置合わせが不要になり、排気管の取り付け作業を簡略化することができる。
【0046】
タブレット一体型排気管の作製に当たり、まず排気管の先端部にタブレットを接触させた状態で熱処理し、予めタブレットを排気管の先端部に接着しておく必要がある。この場合、治具で排気管を固定し、この状態の排気管にタブレットを挿入し熱処理する方法が好ましい。排気管を固定する治具は、タブレットが融着しない材質、例えばカーボン治具等が好ましい。また、排気管とタブレットの接着は、封着材料の軟化点付近で短時間、例えば5〜10分程度行えばよい。
【0047】
排気管として、アルカリ金属酸化物を所定量含有させたSiO−Al−B系ガラスが好適であり、特に日本電気硝子株式会社製FE−2が好適である。この排気管は、熱膨張係数が85×10−7/℃、耐熱温度が550℃であり、寸法が、例えば外径5mm、内径3.5mmである。また、排気管の先端部を拡径化すれば、自立安定性を高めることができる。その場合、排気管の先端部は、フレア形状又はフランジ形状が好ましい。排気管の先端部を拡径化する方法として、種々の方法を採用することができる。特に、排気管の先端部を回転させながらガスバーナーを用いて加熱し、数種類の治具を用いて所定の形状に加工する方法が量産性に優れるため好ましい。図2は、この構成のタブレット一体型排気管の一例を示している。つまり、図2は、タブレット一体型排気管の断面図であり、排気管1の先端部が拡径化されており、排気管のパネル側の先端部にタブレット2が接着されている。
【0048】
タブレット一体型排気管として、拡径された排気管の先端部にタブレットと、高融点タブレットとが取り付けられており、且つタブレットを拡径された排気管の先端部側に取り付け、高融点タブレットをタブレットよりも後端部側に取り付けた構造が好ましい。この構成を採用すれば、パネル等に排気管を取り付ける際にパネル等と接触する面積が、排気管だけの場合よりも大きくなるため、パネルに対して垂直に取り付け易くなる。また、タブレットを排気管に固着させる際、タブレットと治具の間に高融点タブレットを配置できるため、特殊な治具が不要になり、結果として、タブレット一体型排気管の製造工程を簡略化することができる。
【0049】
上記のタブレット一体型排気管において、タブレットが排気管の先端部の外周面に接着した構成が好ましく、タブレットが排気管の先端部の外周面のみに接着し、排気管の先端部の先端面、すなわちパネル等と接する面に接着していない構成が更に好ましい。このようにすれば、真空排気工程でタブレットの構成成分が排気孔へ流れ込む事態を防止し易くなる。また、高融点タブレットは、排気管に直接接着せず、タブレットを介して排気管に固定すれば、二次焼成工程で高融点タブレット部分をクリップで固定した状態で排気管を加圧封着できるため、好ましい。図3は、この構成のタブレット一体型排気管の一例を示している。つまり、図3は、タブレット一体型排気管の断面図であり、排気管1の先端部が拡径化されており、排気管1のフランジ部分1aの外周面側の先端部にタブレット2が接着している。一方、高融点タブレット3は排気管1の外周面側に接着していない。また、タブレット2は、フランジ部分1aの先端部側に取り付けられており、高融点タブレット3がタブレット2よりもフランジ部分1aの後端部側に取り付けられている。
【0050】
高融点タブレットとして、日本電気硝子株式会社製ST−4、FN−13が好ましい。高融点タブレットの作製方法は、材質がガラスの場合、上記のタブレットの作製方法と同様である。また、高融点タブレットとして、セラミックス、金属等を用いることもできる。
【実施例1】
【0051】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0052】
表1は、本発明の耐火性フィラー粉末の実施例(試料No.1〜4)及び比較例(試料No.5〜7)を示している。
【0053】
【表1】

【0054】
固相反応法により表中の耐火性フィラー粉末を作製した。まず表中の組成になるように、各種酸化物の原料を調合し、ボールミルを用いて、10分〜3時間粉砕混合した。この粉砕混合物をアルミナ坩堝に入れて、表中の焼成温度で20時間焼成した。最後に、得られた焼成物を解砕後、ボールミルにて粉砕した上で、250メッシュパスの篩で分級し、平均粒子径D5012μmの耐火性フィラー粉末を得た。各耐火性フィラーにつき、焼成物の融着の有無、未反応の原料(主にZnO)の有無を評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
表1から明らかなように、試料No.1〜4は、組成中にAlを含有しているため、主結晶として、ウイレマイト及びガーナイトが析出しており、焼成温度が1420〜1440℃でも、未反応物が無く、固相反応が完了していた。一方、試料No.5、6は、組成中にAlを含有していないため、ガーナイトが析出しておらず、焼成温度が1430℃の場合、未反応の原料が残っており、焼成温度が1470℃の場合、焼成物の融着が発生し、焼成物の解砕が困難な状態であった。なお、試料No.7は、ウイレマイトが析出していないため、熱膨張係数を低下させる効果が乏しいと考えられる。
【実施例2】
【0056】
表2は、Bi−B系ガラスのガラス組成例及びその特性を示している。
【0057】
【表2】

【0058】
次のようにして、表2に記載のBi−B系ガラスを調製した。まず表中のガラス組成になるように、各種酸化物、炭酸塩等の原料を調合したガラスバッチを準備し、このガラスバッチを白金坩堝に入れて1100℃で1時間溶融した。次に、水冷ローラーにより、溶融ガラスを薄片状に成形した。最後に、薄片状のガラスをボールミルにて粉砕後、200メッシュパスの篩で分級し、平均粒子径D5010μmのガラス粉末を得た。
【0059】
ガラス転移点及び軟化点は、大気雰囲気下において、DTA装置で測定した値である。なお、室温から測定を開始し、昇温速度を10℃/分とした。
【0060】
熱膨張係数は、TMA装置で測定した値である。測定温度範囲を30〜300℃とした。なお、測定試料として、緻密なガラス粉末の焼結体を所定形状に加工したものを用いた。
【0061】
表3は、本発明の封着材料の実施例(試料A〜D)及び比較例(試料E、F)を示している。
【0062】
【表3】


表1に記載の耐火性フィラー粉末と表2に記載のガラス粉末とを表中に記載の体積割合で混合することにより、表中の各試料を作製した。各試料について、ガラス転移点、軟化点、熱膨張係数及び抗折強度を評価した。その結果を表3に示す。
【0063】
ガラス転移点及び軟化点は、大気雰囲気下において、DTA装置で測定した値である。なお、室温から測定を開始し、昇温速度を10℃/分とした。
【0064】
熱膨張係数は、TMA装置で測定した値である。測定温度範囲を30〜300℃とした。なお、測定試料として、緻密な封着材料の焼結体を所定形状に加工したものを用いた。
【0065】
抗折強度は、JIS R1601:ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法に準拠した3点曲げ試験により測定した値である。
【0066】
表3から明らかなように、試料A〜Dは、熱膨張係数が低く、また抗折強度が高かった。一方、試料Eは、試料A〜Dよりも抗折強度が低かった。なお、試料Eは、耐火性フィラー粉末の製造コストが高いため、試料A〜Dよりも製造コストが高いと考えられる。また、試料Fは、試料A〜Dよりも熱膨張係数が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の耐火性フィラー及びそれを用いた封着材料は、(1)PDP、有機ELディスプレイ、FED、VFD等の表示装置の封着、(2)圧電振動子パッケージ、ICパッケージ等の電子部品の封着、(3)磁気ヘッドのコア同士又はコアとスライダーの封着、(4)シリコン太陽電池、色素増感型太陽電池等の太陽電池の封着、(5)有機EL照明等の照明装置の封着に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相がウイレマイト及びガーナイトであることを特徴とする耐火性フィラー粉末。
【請求項2】
ウイレマイトとガーナイトの割合が、モル比で99:1〜70:30であることを特徴とする請求項1に記載の耐火性フィラー粉末。
【請求項3】
組成として、モル%で、ZnO 60〜79.9%、SiO 20〜39.9%、Al 0.1〜10%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐火性フィラー粉末。
【請求項4】
固相反応法により作製されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐火性フィラー粉末。
【請求項5】
ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含む封着材料において、
耐火性フィラー粉末として、請求項1〜4のいずれかに記載の耐火性フィラー粉末を含むことを特徴とする封着材料。
【請求項6】
耐火性フィラー粉末の含有量が0.1〜70体積%であることを特徴とする請求項5に記載の封着材料。
【請求項7】
ガラス粉末がBi−B系ガラスであることを特徴とする請求項5または6に記載の封着材料。
【請求項8】
更に、耐火性フィラー粉末として、コーディエライト、ジルコン、β−ユークリプタイト、石英ガラス、アルミナ、ムライト、アルミナ−シリカ系セラミックスから選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の封着材料。
【請求項9】
更に、無機顔料を含むことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の封着材料。
【請求項10】
実質的にPbOを含有しないことを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の封着材料。
【請求項11】
組成として、モル%で、ZnO 60〜79.9%、SiO 20〜39.9%、Al 0.1〜10%を含有するように、原料を調合した後、固相反応法により、ウイレマイト及びガーナイトを析出させることを特徴とする耐火性フィラー粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−225402(P2011−225402A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98440(P2010−98440)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】