説明

耐火材料

【課題】耐火材料を提供する。
【解決手段】無機−有機ハイブリッド(IOH)、その調製方法、及び耐火材料又は耐火材料の成分としてのその使用が提供される。より具体的には、運送業界、建築業界、建設業界、及び電気業界又は光学業界で使用するための耐火製品又はその部品の製造において適用されるIOHを含有するポリアミド耐火配合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機−有機ハイブリッド(IOH)、その調製方法、及び耐火材料又は耐火材料の成分としてのその使用に関する。より具体的には、本発明は、運送業界、建築業界、建設業界、及び電気業界又は光学業界で使用するための耐火製品又はその部品の製造において適用されるIOHを含有するポリアミド耐火配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ポリマー系に基づく材料(プラスチック)は、運送業界、建築業界、及び建設業界で広く使用されている。多くの種類の有機ポリマーの欠点は燃焼性であり、それによって、耐燃焼性を必要とし、規制当局が燃焼性基準を支配するような適用においてその適性が制限されている。
【0003】
商業生産されるポリマー系においては、最終生成物の燃焼性を低下させるため、材料の処理又は形成の際に難燃性化学種を添加することができる。通常の難燃剤は、以下を含む異なるカテゴリーに分類することができる。
【0004】
ハロゲン系:臭素化又は塩素化された化学物質から成る。例えば、臭素化ポリスチレン又はフェニレンオキシド(Dead Sea Bromine又はGreat Lakes CC)又はビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロオクタン(Occidental CC)。
【0005】
リン系:リン元素(Clarient)、ホスホネート(A&W antiblaze 1045)、ホスホネートエステル(Akzo Nobel)、亜リン酸塩、リン酸塩、及びポリリン酸塩、例えば、亜リン酸及びリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム及びメラミン(DSM Melapur)からの一連の異なる化学物質から成る。
【0006】
窒素系:例えばメラミンとその塩(Schmidt及びHoppeによる米国特許第4,511,684号明細書)。
【0007】
発泡性防炎剤:(i)ポリリン酸アンモニウムなどの酸供給源(炭化触媒);(ii)炭化試薬、例えば、ペンタエリトリトールなどの多価アルコール;及び(iii)メラミンのような発泡剤を取り込む。膨張性黒鉛はまた、加熱により熱膨張を受けることが知られている。
【0008】
無機添加剤:例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム(Martinswerk)、ホウ酸亜鉛(Fire Brake ZB,US Borax)及び三酸化アンチモン。
【0009】
ポリマー系に難燃剤を添加することでその耐火性能を改善できるが、他の重要な特性、例えば、
・機械的性能
・表面仕上げ
・耐久性
・レオロジー
・安定性
・発煙性
・毒性
・コスト
・リサイクル性
がしばしば不利に影響を受ける。
【0010】
さらに、毒性又は環境への関心から一部の難燃性クラスの使用を減らすという無視できない最近の動きがある。このような法律は、ハロゲン化化合物及び幾つかの金属酸化物相乗剤の使用に対して圧力をかけている。ホスホネート及び(赤)リン元素などのリン系難燃剤もまた、化学兵器法による規制や少なからぬ製造上の危険のため望ましくない。
【0011】
すでに1965年に、Jonas(英国特許第1,114,174号明細書)は、有機改質粘土をプラスチック中に取り込むと、燃焼の際の溶融物のしたたりが減少することを教示している。
【0012】
より最近では、幾つかの合成又は処理条件下で、有機改質粘土をポリマー材料にナノ分散させて機械的性能及び耐火性能を改善できることが示された。
【0013】
Okadaらは、米国特許第4,739,007号明細書(1988)トヨタにおいて、ナイロン6を合成する際、適切に改質した粘土を加えることにより、機械的性質と熱変形温度が改善されたナイロン6材料を調製できると教示している。この場合、ナイロン鎖の成長によって粘土のプレートレットを引き離し、インターカレーションされるか又は剥離されたナノ材料構造を形成する(いわゆる「その場重合」法)。
【0014】
改質粘土をナノ分散させるより商業的に望ましい方法は、Maxfieldらにより国際公開第93/04118号パンフレット、同第93/04117号パンフレット(1993)Allied Signalにおいて記載されている。Maxfieldは、官能基化した粘土と溶融プラスチック、例えば、ナイロン6、ナイロン66及びPBTとをせん断力に付すことにより、機械的性能と熱変形性の改善された粘土−プラスチックのナノ材料を調製することができると教示している。
【0015】
他の研究者は、粘土のナノ粒子を含むプラスチックの耐火性能を調べた。Gilmanは、コーン熱量測定法(cone calorimetry)を用いて「その場」重合の経路により調製したナイロンナノ材料の耐火性能を調べた(Proc.43.Int.SAMPE Sympos.,(1998),1053−1066頁,Fire and Materials,24,(2000),201−208頁,Applied Clay Sciene,15,(1999),31−49頁)。市販の改質粘土を添加することにより、毒性ガス又は煙の発生を増加させることなく熱放出速度の改善がなされた。Gilmanは、耐火性能の改善は、ナノ粒子が木炭を機械的に安定化させそのバリア性能を向上させることに由来すると教示している。Gilmanのコーン熱量測定試験は、熱放出速度の減少の点で改善された性能を示唆するが、材料の耐火性を評価、調節及び認定するのに用いられるASTMやFAAなどの団体によって記載される共通試験での材料の耐火性能に関する他の側面については言及されていない。
【0016】
他のグループは、従来の難燃剤とナノ分散された粘土が相乗的に作用して耐火性能を改善することができると報告している。
【0017】
Klattは、国際公開第98/36022号パンフレット(1998)BASFにおいて、有機改質粘土を含むナイロン材料と赤リンが相乗的に耐火性能を改善し、UL94タイプの垂直燃焼試験でVO評価を与えることを教示している。しかしながら、このような組成物は、元素リンの取り扱いに伴う危険性のために望ましくない。
【0018】
Mortonは、国際公開第99/43747号パンフレット(1999)General Electric Companyにおいて、幾つかのポリエステルブレンドでは、リン系難燃剤、特にレゾルシノールジホスフェートと有機改質粘土が相乗的に作用して耐火性能が改善すると教示している。しかしながら、機械的性能、煙や毒性ガスの排出に対する影響など、他の重要な側面については言及されていない。
【0019】
Takekoshimは、米国特許第5,773,502号明細書(1998)General Electric Companyにおいて、通常のハロゲン化−Sb23難燃剤系と有機改質粘土が相乗的に作用することができると教示している。Takekoshimは、ナノ分散された粘土によって、UL94の燃焼性試験でVO評価を維持するのに必要とされるSb23とハロゲン化難燃剤の量を低減することができると主張している。ハロゲン化難燃剤の使用は明らかに望ましくない。
【0020】
Masaru,Tは、特開平10−182141号公報(1998)Sumitoma,Chem.Co.において、アゾ、ジアゾ、アジド又はトリアジン化合物を含有するような発泡剤をケイ酸塩の層間に挿入した100〜150℃の温度で耐火性かつ熱膨張性の材料を開示している。しかしながら、多くのポリマー系では、それらは100〜150℃の温度で成形又は形成することを要するため、この難燃性系は望ましくない。
【0021】
InoueとHosokawaは、特開平10−081510号公報(1998)Showa Denko K.K.において、2段階押出法における難燃性プラスチックの手段として、メラミン(0.1〜40%)とメラミン塩(<10%)で交換されたフッ素化合成マイカの使用を研究した。彼らは、80%を超える剥離が生じたときに5%改質マイカを添加することで、VO評価のナイロン6(UL94垂直燃焼試験)が得られたと主張している。合成粘土と多段階処理の使用は、商業的な観点から明らかに望ましくない。InoueとHosokawaは、機械的性能及び耐火性能に影響を与えるトリアジン系配合物に関連する非常に望ましい化学成分及び方法を開示していない。さらに彼らは、燃焼の際に毒性ガスと煙の発生を同時に低減しながら、難燃性にするのが極めて難しいことが当業者に知られている難燃性の薄い部品に対する重要な方法を開示していない。
【0022】
後の開示で、Inoue,H.と共同研究者らはまた、米国特許第6294599号明細書(2001)Showa Denko K.K.において、繊維質の添加剤で強化したポリアミドが、トリアジン改質粘土と追加の難燃剤の添加によって難燃性にできることを教示している。彼らは、ポリアミド、ケイ酸塩−トリアジン複合強化材及び難燃剤/添加剤を含む高剛性難燃ポリアミドを記載している。高剛性ポリアミド配合物がレオロジー特性に乏しいことで、通常の加工技術、例えば、回転成形又は吹込み成形によって作製される部材であって、複雑若しくは薄壁であるか又は高い延性若しくは衝撃性能を必要とする部材の調製においてこの発明の有用性が制限されている。
【0023】
Brown,S.C.らは、国際公開第00/66657号パンフレット、Alcan Internationalにおいて、耐火ケーブルを製造するためにAl(OH)3と組み合わせてCloisiteモンモリロナイトを含むポリマー材料を開示している。Al(OH)3が約190℃を超える温度で分解して水蒸気を放出することを考慮すると、この方法は明らかに低温で加工されるプラスチックにのみ好適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、特定の用途に関連した性能基準を満たし、かつ上記問題に対処する新規の難燃性系の開発に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の1つの態様によれば、
(i) 膨張性又は膨潤性の層状無機成分;及び
(ii)少なくとも1つのイオン性有機成分を含む有機成分
を含む、無機−有機ハイブリッド(IOH)が提供される。
【0026】
好ましくは、IOHの有機成分は、無機成分の層の間にインターカレーションされるか及び/又はそれと結合される1つ又は複数の中性有機成分も含む。
【0027】
本発明の別の態様によれば、上で規定される成分(i)と(ii)又はそれらの構成成分を1つ又は複数の工程で混合することを含む、上で規定されるIOHの調製方法が提供される。
【0028】
本発明はまた、耐火材料としての上で規定されるIOHの使用を提供する。
【0029】
本発明の更なる態様によれば、
(i) 上で規定されるIOH;及び
(ii)1つ又は複数の難燃剤。
を含む、耐火配合物が提供される。
【0030】
本発明のなお更なる態様によれば、上で規定される成分(i)と(ii)又はそれらの構成成分を1つ又は複数の工程で混合することを含む、上で規定される耐火配合物の調製方法が提供される。
【0031】
本発明はまた、
(A)(i) 上で規定されるIOH;及び
(ii)ポリアミド系マトリックス;又は
(B)(i) 上で規定される耐火配合物;及び
(ii)ポリアミド系マトリックス
のいずれかを含むポリアミド耐火配合物を提供する。
【0032】
本発明は、上で規定されるIOH又は耐火配合物又はそれらの構成成分を、ポリアミド系マトリックスに1つ又は複数の工程で分散させることを含む、上で規定されるポリアミド耐火配合物の調製方法をさらに提供する。
【0033】
本発明のIOH及び/又は耐火配合物は、耐火製品又はその部品の製造に使用することができる。
【0034】
したがって、本発明は、全体又は一部が上で規定されるIOH及び/又は耐火配合物から成る耐火製品又はその部品を提供する。
【0035】
本発明はまた、上で規定されるIOH及び/又は耐火配合物を成形又は形成することを含む、上で規定される耐火製品又はその部品の調製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】二軸スクリュー押出機のスクリューとバレルの構成を示す図である。
【図2】例7についてのXRDの結果と透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示すグラフである。
【図3】例8についてのXRDの結果を示すグラフである。
【図4】例9についてのXRDの結果を示すグラフである。
【図5】例17についてのXRDの結果を示すグラフである。
【図6】配合物13と34を用いて成形された複雑な中空耐火性部材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書の目的において、「含んでいる」という語は「含んでいるが限定されない」ということを意味し、「含む」という語も同じ意味であることは明らかに理解されるであろう。また、本明細書の目的において、層状無機成分に関する「膨潤性」及び「膨張性」という用語は同じ意味で用いられることにも留意すべきである。
【0038】
無機成分は、例えば、カオリン及び蛇紋石のような1:1層状ケイ酸塩構造、並びにフィロケイ酸塩、タルク及び葉ろう石のような2:1層状ケイ酸塩構造に基づく層の内部の元素の同形置換によって正(又は負)に帯電した膨潤性/膨張性の層状無機系材料である。他の有用な層状鉱物には、ヒドロタルサイトを含む一般式がMg6Al3.4(OH)18.8(CO31.7・H2Oの層状複水酸化物、並びに合成ヘクトライト、モンモリロナイト、フッ素化合成マイカ及び合成ヒドロタルサイトを含む合成して調製した層状材料がある。
【0039】
フィロケイ酸塩の天然又は合成の類似体から成る群が特に好ましい。この群は、スメクタイト粘土、例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヴォルコンスキー石、ヘクトライト、ベントナイト、サポナイト、ソーコナイト、マガディアイト、ケニアイト、ラポナイト、バーミキュライト、合成ミクロマイカ(Somasif)及び合成ヘクトライト(Lucentite)を含む。他の有用な層状鉱物には、イライト鉱物、例えば、レジカイト、及びイライト鉱物と前記粘土鉱物の混合物がある。
【0040】
天然のフィロケイ酸塩、例えば、ベントナイト、モンモリロナイト、及びヘクトライトが最も好ましい。約5nm未満のプレートレット厚さと、約10:1、より好ましくは約50:1、最も好ましくは約100:1を超えるアスペクト比とを有するこのようなフィロケイ酸塩が特に有用である。
【0041】
好ましい無機材料は一般に、電荷をバランスさせるための層間の又は交換可能な金属カチオン、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、K+、Mg2+又はCa2+、好ましくはNa+を含む。無機材料のカチオン交換容量は、好ましくは約400ミリ当量/100グラム未満、最も好ましくは約50〜約200ミリ当量/100グラムであるべきである。
【0042】
有機成分は、無機成分と結合した交換可能な金属イオンと交換することができる1つ又は複数のイオン性化学種と、任意選択で無機成分及び/又は1つ若しくは複数のカップリング試薬の層の間にインターカレーションされるか及び/又はそれと結合される1つ又は複数の中性有機化学種とを含む。
【0043】
「と結合した」という用語は、その最も広義の意味において本明細書で用いられ、例えば、二次的結合相互作用、例えば、ファンデルワールス相互作用若しくは水素結合によって無機成分の層に結合されるか、又は立体的な制限によって捕捉された中性有機成分を意味する。
【0044】
イオン性化学種の好適な例には、脂肪族、芳香族又はアリール−脂肪族のアミン、ホスフィン及びスルフィドのアンモニウム(1級、2級、3級及び4級)、ホスホニウム又はスルホニウム誘導体のようなオニウムイオンを含有するものがある。
【0045】
このような化合物は、当業者に公知の任意の方法により調製することができる。例えば、塩は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸及びギ酸を含む鉱酸若しくは有機酸との酸−塩基型の反応、ルイス酸−ルイス塩基型の反応、又は例えば、メンシュトキン型の方法を用いて四級塩を形成するためのハロゲン化アルキルとの反応により調製される。
【0046】
吸熱的に分解若しくは昇華するか、分解によって低燃焼性の揮発性物質を放出するか、及び/又は熱分解若しくは燃焼の際に有機化学種の炭化を誘発することが知られているイオン性又は中性化合物が特に好ましい。
【0047】
好適な化学種には、窒素系分子の中性又はイオン性誘導体があり、窒素系分子には、トリアジン系化学種、例えば、メラミン、トリフェニルメラミン、メラム(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン−n−(4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−イル))、メレム((−2,5,8−トリアミノ−1,3,4,6,7,9,9b−ヘプタアザフェナレン))、メロン(ポリ{8−アミノ−1,3,4,6,7,9,9b−ヘプタアザフェナレン−2,5−ジイル)イミノ})、ビス及びトリアジリジニルトリアジン、トリメチルシリルトリアジン、シアヌル酸メラミン、フタル酸メラミン、リン酸メラミン、亜リン酸メラミン、メラミンフタルイミド、リン酸ジメラミン、ホスファジン、及び/又はトリアジンとホスファジンの反復単位を有する低分子量ポリマー、又は上記分子の塩若しくは誘導体があり、上記分子の塩若しくは誘導体には、イソシアヌル酸のオニウムイオン誘導体又は塩又は誘導体、例えば、イソシアヌル酸、シアヌル酸、シアヌル酸トリエチル、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸トリグリシジル、イソシアヌル酸トリアリル、トリクロロイソシアヌル酸、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサメチレンテトラミン、シアヌル酸メラム、シアヌル酸メレム、及びシアヌル酸メロンがある。
【0048】
有機化学種の炭化を誘発することが知られている試薬には、リン酸又はホウ酸の誘導体、例えば、ポリリン酸アンモニア、ポリリン酸メラミン、リン酸メラミン、及びホウ酸アンモニウムがある。
【0049】
本発明の別の実施態様においては、好ましいイオン性化合物は、任意選択で、他のイオン性化合物、例えば、層状無機材料とポリマーマトリックスの間の適合性及び分散を改善することが知られているもの、例えば、ナノ材料の調製に関して国際公開第93/04118号パンフレットに記載されているものと組み合わせて使用することができる。疎水性のアルキル又は芳香族部分とともに親水性のイオン基を含む両親媒性の分子が好ましい。
【0050】
1つ又は複数のカップリング試薬を無機成分に結合させることもできる。好適なカップリング試薬には、有機官能基化したシラン、ジルコン酸塩及びチタン酸塩がある。シランのカップリング試薬の例には、アミノ、エポキシ、イソシアネート、ヒドロキシル、チオール、メルカプト及び/又はメタクリルの反応性部分によって官能基化されるか、又はトリアジン誘導体、長鎖アルキル、芳香族若しくはアルキル芳香族の部分に基づく官能基を含むよう改質されたトリ−アルコキシ、アセトキシ及びハロシランがある。ジルコン酸塩及びチタン酸塩のカップリング試薬の例には、TeazやTitan1がある。
【0051】
層状無機材料と結合した金属カチオン又はアニオンは、イオン交換プロセスにより有機イオンと交換できることが当技術分野において公知である。典型的なプロセスにおいては、層状無機材料は、まず1つ又は複数の好適な溶媒中で膨潤又は膨張させた後イオン交換し、次いでろ過、遠心分離、溶媒の蒸発又は昇華のような方法により凝集させて膨潤溶媒から捕集される。好適な分子を用いたイオン交換法は、粘土と有機ポリマー結合剤との適合性を向上させ、そうしてナノメートルスケールでのポリマー系マトリックスへの粘土プレートレットの分散を助ける有用な方法であることが知られている。
【0052】
イオン交換法を任意選択で1つ又は複数種の有機イオン存在下で実施し、複数の機能を有する無機−有機ハイブリッドを製造できることが見出された。本発明を限定しようとするものではないが、このような機能は、プラスチックマトリックスとの分散、適合性及び相互作用を促進させるイオン、並びに耐火性能のような他の特性を改善するのに有用なイオンの存在を含むことができる。一般に、イオン交換の際、有機イオンは、無機材料のイオン交換容量を超えるモル数で添加され、好ましくは約10倍過剰未満、より好ましくは約5倍過剰未満が必要である。
【0053】
さらには意外にも、イオン交換プロセスは、官能性の溶解又は部分溶解した中性化学種の存在下で実施できることが見出された。理論によって限定するものではないが、中性化学種の少なくとも一部は、イオン交換後、ギャラリー間領域に捕捉されているか又は層状無機材料と結合していることが提案される。このようなプロセスは、分子レベルで中性添加剤をプラスチック中に分散させる有用な機構を提供する。同様に理論によって限定するものではないが、溶融処理の際、無機−有機ハイブリッドの少なくとも部分的な剥離によって、中性分子を拡散させ、分子レベルでマトリックスに均一に分散させることができる。このことは得られる材料の性能に大きな影響を与える。というのも、プラスチック配合物中のすべての成分の、好ましくはナノ又は分子スケールでの効率的な分散は、最適な性能を達成するための重要なファクターであることがよく知られているためである。
【0054】
本発明の別の態様においては、IOHは、上記1つ又は複数のカップリング試薬とのイオン交換の前、その間又は後に処理することができる。カップリング試薬は誘導体化されて、例えば、無機相とポリマーマトリックスの間の適合性及び相互作用を改善するか、又は他の望ましい官能基を無機の層状相に結合させる。
【0055】
火炎伝播、熱放出及び/又は発煙を遅らせ、単独で又は任意選択で相乗的にIOHに添加することができる好適な難燃剤は以下のものを含む。
・リン酸塩、ポリリン酸塩、亜リン酸塩、ホスファジン及びホスフィンの官能基を含有する分子などのリン誘導体、例えば、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニア、ポリリン酸アンモニア、リン酸ペンタエリトリトール、亜リン酸メラミン及びトリフェニルホスフィン。
・窒素含有誘導体、例えば、メラミン、シアヌル酸メラミン、フタル酸メラミン、メラミンフタルイミド、メラム、メレム、メロン、シアヌル酸メラム、シアヌル酸メレム、シアヌル酸メロン、ヘキサメチレンテトラアミン、イミダゾール、アデニン、グアニン、シトシン及びチミン。
・ホウ酸塩官能基を含有する分子、例えば、ホウ酸アンモニア及びホウ酸亜鉛。
・2つ以上のアルコール基を含有する分子、例えば、ペンタエリトリトール、ポリエチレンアルコール、ポリグリコール及び炭水化物、例えば、グルコース、ショ糖及びデンプン。
・吸熱的に不燃性分解ガスを放出する分子、例えば、金属水酸化物、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム。
・膨張性黒鉛。
【0056】
ポリアミド系マトリックスは、ペレット、顆粒、フレーク又は粉末の形態で耐火配合物に含めることができる。好適なポリアミドは、アミドに基づく反復単位を有する一般基、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン68、ナイロン610、ナイロン612及び芳香族ポリアミド、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミン及びポリパラフェニレンテレフタルアミドを含む。
【0057】
ポリアミド系マトリックスは、コポリマー、ブレンド及びアロイを包含できることが理解されるであろう。コポリマーは、そのうちの1つがアミドである2つ以上の異なる反復単位から構成することができる。このようなコポリマーは、当技術分野で公知の任意の好適な方法、例えば、初期重合時又はその後、処理の際にグラフト又は連鎖延長タイプの反応を通して調製することができる。ポリアミドのブレンド及びアロイは、溶融又は溶液混合を含む当業者に公知の任意の方法を用いて調製することができる。ポリアミドの他のポリマーとのブレンド又はアロイは、靭性、モジュラス、強度、クリープ、耐久性、耐熱性、伝導度又は耐火性能などの特性を改善するのに望ましい場合がある。
【0058】
ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66及びそれぞれのコポリマー、アロイ及びブレンドが特に好ましい。
【0059】
ポリアミド配合物はまた、ポリマー加工の技術分野で公知の1つ又は複数の添加剤、例えば、ポリマー安定剤、例えば、UV、光及び熱安定剤;滑剤;酸化防止剤;顔料、染料又は材料の光学的性質若しくは色を変える他の添加剤;導電性の充填剤又は繊維;剥離剤;スリップ剤;可塑剤;抗細菌剤又は抗真菌剤;及び加工剤、例えば、分散試薬、発泡剤、膨張剤、界面活性剤、蝋、カップリング試薬、レオロジー調整剤、フィルム形成試薬及びフリーラジカル生成試薬を任意選択で含有することもできる。
【0060】
特に好ましい配合物は、ナイロン12、ナイロン6及び/又はナイロン66;塩酸メラミン及び/又はメラミンで改質したモンモリロナイト;シアヌル酸メラミン、シアヌル酸メラム(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン−n−(4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−イル))、シアヌル酸メレム((−2,5,8−トリアミノ−1,3,4,6,7,9,9b−ヘプタアザフェナレン))及び/又はシアヌル酸メロン(ポリ{8−アミノ−1,3,4,6,7,9,9b−ヘプタアザフェナレン−2,5−ジイル)イミノ});水酸化マグネシウム;並びに1つ又は複数の添加剤を含む。
【0061】
ポリアミド配合物は、約50〜約95%w/wの量のポリアミド系マトリックスと、約25%w/w未満の量のIOHと、任意選択で約30%w/w未満、幾つかの場合には好ましくは約10%w/wを超える量の難燃剤及び/又は添加剤とを含有することが好ましい。
【0062】
IOHは、配合(混合)段階の際、ポリアミド系マトリックス中に容易に分散できることが見出された。理論によって限定するものではないが、イオン交換は、非改質の無機層状材料と比較して、層状IOHのポリアミドとの適合性を向上することが提案される。この向上した適合性と、十分な混合力、適切な混合順序、スクリューの設計及び時間を組み合わせることで、IOHと結合した有機改質プレートレットを少なくとも部分的にポリアミド中に剥離し、したがって、少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散させることができる。このプロセスはまた、IOHと結合した任意の中性分子を分子レベルでポリアミド中に分散させる有用な機構を提供する。
【0063】
IOHを含む耐火配合物の種々の成分の分散は、混合前に粉砕することで促進される。粉砕は、ボールミル、リングミルなどを含む任意の好適な粉砕装置を用いて達成される。IOHを含む成分は、約200μm未満、より好ましくは約50μm未満、最も好ましくは約20μm未満の粒子サイズに粉砕されることが好ましい。ハイブリッド材料はまた、ナノメートルサイズへの粉砕を可能にする専用の粉砕装置を用いて粉砕することもできる。
【0064】
分散は、IOHを少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散させるのに十分なせん断速度、せん断応力及び滞留時間を可能にする任意の好適な溶融、溶液又は粉末系混合プロセスを用いて作用させることができる。このようなプロセスは、ボールミリングなどの粉砕処置、Banbury及びBrabender/Haake形ミキサーなどの密閉式ミキサーを用いたバッチミキサー、BUS混練機などの混練機、連続配合機を含む連続混合プロセス、高強度単軸及び二軸スクリュー押出によって行うことができる。
【0065】
溶融処理が好ましく、特に好ましい実施態様においては、L:D比が少なくとも約24であり、好ましくは約30を超える、少なくとも1つ、好ましくは複数の混合及びベントゾーンを備えた二軸スクリュー押出機が分散のために用いられる。分散及び分配混合に有用なこのようなスクリュー構成は当業者に周知である。特に有用なシステムは、図1に示すものであることがわかった。
【0066】
配合物の成分は、任意の順序で又は任意の時点で押出機のバレルに沿って加えることができる。ポリアミドは加水分解を受けやすいため、成分を乾燥してから、水蒸気を除去するための処理及び/又は機構、例えば、処理の際に利用できる通気孔又は吸引孔に付すことが好ましい。好ましい実施態様においては、全ての成分が押出機の一方の端部に加えられる。別の好ましい実施態様においては、ポリマー結合剤と任意選択で少量成分が押出機の一方の端部に加えられ、IOHと任意選択で少量成分が後の時点で加えられる。さらに別の好ましい実施態様においては、ポリマー結合剤のIOH部分と任意選択で少量成分が押出機の一方の端部に加えられ、ポリマー結合剤の残りの部分と任意選択で少量成分が後の時点で加えられる。押出後、溶融成分は、水浴、エアナイフ又は大気冷却により冷却され、任意選択で切断してペレットにされる。
【0067】
システムの主要成分と少量成分の全ては、好ましくはできるだけ少ない混合工程で、最も好ましくは単一の混合工程で組み合わせることができる。
【0068】
耐火製品又はその部品へのポリアミド配合物の成形又は形成は、押出、射出成形、圧縮成形、回転成形、吹込み成形、焼結、熱成形、圧延(calending)又はそれらの組み合わせなどのプロセスを含む当業者に公知の任意の方法を用いて実施することができる。
【0069】
本発明の1つの実施態様においては、主要成分と少量成分を含有する耐火性ポリアミド系は、壁厚が約25mm未満、好ましくは約5mm未満、最も好ましくは1.5mm未満の部品に成形又は形成される。このような部品は、チューブ、複合成形中空部品、シート及び複合成形シート、並びに押出、射出成形、熱成形及び回転成形などの技術を用いて成形又は形成された他の複合物を含むがそれらに限定されない。
【0070】
最も簡単なプロセスにおいては、製品又は部品は、例えば、押出機の端部に型を設置し押出物の形状を必要に応じて変更できるようにすることで配合の際に直接製造される。このような成分の例は、フィルム、テープ、シート、チューブ、棒、ひもの形状などの単純な部品を含む。このプロセスはまた、そのうちの1つが同時押出を含む当業者に公知のプロセスによって堆積された前記ポリマー系である異なる材料の複数の層を含むことができる。
【0071】
別の好ましい実施態様においては、配合物は、射出成形、圧縮成形又は吹込み成形などの技術を用いて別々の工程で成形又は形成される。このような部品は一般に、押出のみにより形成される部品と比較して本質的により複雑であり、そのデザインは用いられる成形ツール/プロセスの要件によってのみ制限される。好適な例は、容器のヒンジカバー、ECSダクトスパッド、掛け金、ブラケット、乗客用表面ユニットなどを含むがそれらに限定されない。
【0072】
幾つかの適用について、耐火性ポリアミド配合物を粉砕して粉末にすることが好ましい場合があることに注意されたい。このような場合、意外にも、当業者に公知の低温又は大気粉砕法を用いた前記配合物の粉砕が、システムの性能に大きな影響を与えることなく実施できることが見出された。このような成形用途は、選択的レーザー焼結、回転成形及び押出を含む。好適な例は、環境制御システム(空調ダクト)などを含むがそれらに限定されない。
【0073】
他の好ましい適用においては、ポリマー配合物は、まず、例えば、押出成形、吹込み成形、圧縮成形又は圧延(calending)によりシート又はフィルムに成形することができる。次に、このシートは、熱成形法を用いて所望の形状に成形することができる。さらに別の適用においては、このシート又はフィルムは、圧縮成形又は樹脂注入/トランスファーなどの技術により、表面改質ガラス、天然ガラス、炭素又はアラミドから調製された布を有する熱可塑性強化積層体を調製するのに使用することができる。その上、こうして形成された積層体シートは、熱成形などの技術を用いて所望の形状にさらに成形することができる。
【0074】
あるいはまた、配合物は、当業者に公知の任意の方法により紡糸して繊維にすることができる。このようなプロセスは、耐火布、カーペットなどを製造するための方法を提供する。
【0075】
本発明は、未使用のポリアミドマトリックスに近いか又はそれを超える機械的性質を維持し、かつ発火したときに自己消火して火炎の伝播を制限し、煙や毒性ガスの排出を少なくして燃焼に抵抗することにより標準的な試験で改善された耐火性能を示す薄い若しくは複雑な製品又はその部品を含む、成形に好適なレオロジー特性を有するポリアミド材料を製造するのに有用である。このような製品又はその部品は、優れた耐火性能を必要とする用途、そして、輸送、例えば、航空、自動車、航空宇宙及び船舶;建築及び建設;並びに電気又は光学、例えば、ケーブル、電線及びファイバーを含む耐火性能について規制される業界で有用である。
【0076】
例において添付図面が参照される。
【実施例】
【0077】
次に、本発明は以下の限定的でない例を参照して説明される。
[一般的な条件及び試薬]
【0078】
表1、2及び3は、例に関連した一般的な試薬、条件及び手順を概説する。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
[無機−有機ハイブリッド(IOH)の調製法−例1〜6]
[例1:塩酸メラミン改質モンモリロナイトの調製(IOH1)]
モンモリロナイト交換Na+(カチオン交換容量(CEC)=92meq/100g)を80℃のDI水に懸濁し(2%w/w)、1500rpmで60分間機械撹拌した。次いで、この溶液にメラミン一塩酸塩(1.4mmol/100gモンモリロナイト)を加え、得られた懸濁液をさらに150分間撹拌を続けて冷却させた。懸濁液をろ過した後、沈殿物を温かいDI水で完全に洗浄し、次いで予備乾燥した(60〜80℃)。得られた顆粒状の有機改質粘土を50μm未満の粒子サイズに粉砕し、次いで75℃でさらに乾燥した後、処理又は分析を行った。
【0084】
【表5】

【0085】
結果は、イオン交換によってモンモリロナイトのギャラリー間の間隔が1.10nmから1.27nmに増加することを示している。この結果は、イオン交換の際、ギャラリー間領域でプロトン化したメラミンイオンによってナトリウムイオンが置換されることと一致する。
【0086】
[例2a:メラミン存在下での塩酸メラミン改質モンモリロナイトの調製(IOH2)]
モンモリロナイト交換Na+(カチオン交換容量(CEC)=92meq/100g)を80℃のDI水に懸濁し(2%w/w)、メラミンを加え(1.4mmol/100gモンモリロナイト)、溶液を1500rpmで60分間機械撹拌した。次いで、この溶液にメラミン一塩酸塩(1.4mmol/100gモンモリロナイト)を加え、得られた懸濁液をさらに150分間撹拌を続けて冷却させた。懸濁液をろ過した後、沈殿物を温かいDI水で完全に洗浄し、次いで予備乾燥した(60〜80℃)。得られた顆粒状の有機改質粘土を50μm未満の粒子サイズに粉砕し、次いで75℃でさらに乾燥した後、処理又は分析を行った。
【0087】
【表6】

【0088】
結果は、メラミンの存在下で塩酸メラミンにより改質されたモンモリロナイトが、塩酸メラミン又はナトリウムイオンのみで改質されたモンモリロナイトと比較して、ギャラリー間の間隔を拡大させることを示している。この結果は、イオン交換の際の粘土による中性メラミンの結合/捕捉と一致する。
【0089】
[例2b:メラミン存在下での塩酸メラミン改質モンモリロナイトの調製(IOH2)]
ナトリウムモンモリロナイト3.0Kgを60℃で脱イオン水200Lに激しく撹拌(200rpm)しながら分散させ、その粉末を約1時間かけてゆっくり加えて個々の粒子/プレートレットの浸潤を促進させた。懸濁液をこの温度で約2時間撹拌した後、メラミン1.39KgとHCl0.92L(9.65M)を含有する85℃の水溶液(35L)を素早く加え、同時に撹拌翼の速度を300rpmに上げた。改質モンモリロナイトが凝集する初期の高粘度期間の後、粘度は低下し、粘土溶液を60℃でさらに3時間撹拌した。懸濁液をろ過した後、採取した改質粘土を脱イオン水(150L)に再分散させ、60℃で1時間撹拌した後、メラミン0.385KgとHCl0.26L(9.65M)を含有する約85℃の水溶液(10L)を加えた。この時点で混合物をさらに2時間撹拌した後、それをろ過した。次に改質粘土を脱イオン水(150L)に再分散させ、60℃でさらに1時間撹拌した後、改質粘土をろ過、乾燥及び粉砕して、50μm未満の粒子サイズとした。
【0090】
【表7】

【0091】
これらの結果は、この改質手順がそれを実施するのに用いられる[モンモリロナイトのCEC]/[メラミン塩及びメラミン]のモル比並びに反応条件の変動に対して強いことを示している。この結果は、イオン交換の際の粘土による中性メラミンの結合/捕捉と一致する。
【0092】
[例2c:メラミン存在下での塩酸メラミン改質モンモリロナイトの調製(IOH2)]
ナトリウムモンモリロナイト15.0Kgを60℃で脱イオン水200Lに激しく撹拌(200rpm)しながら分散させ、その粉末を約2時間かけてゆっくり加えて個々の粒子/プレートレットの浸潤を促進させた。懸濁液をこの温度で約4時間撹拌した後、メラミン2.78KgとHCl1.84L(9.65M)を含有する85℃の水溶液(50L)を素早く加え、同時に撹拌翼の速度を300rpmに上げた。改質モンモリロナイトが凝集する初期の高粘度期間の後、粘度は低下し、粘土溶液を60℃でさらに3時間撹拌した。懸濁液をろ過した後、採取した改質粘土を脱イオン水(150L)に再分散させ、60℃で1時間撹拌した後、メラミン1.925KgとHCl1.3L(9.65M)を含有する約85℃の水溶液(25L)を加えた。この時点で混合物をさらに2時間撹拌した後、それをろ過した。次に改質粘土を脱イオン水(200L)に再分散させ、60℃でさらに1時間撹拌した後、改質粘土をろ過、乾燥及び粉砕して、50μm未満の粒子サイズとした。
【0093】
【表8】

【0094】
結果は、この改質手順がそれを実施するのに用いられる反応条件の変動に対して強いことを示している。この結果は、イオン交換の際の粘土による中性メラミン分子の結合/捕捉と一致する。
【0095】
[例3:シアヌル酸メラミン塩酸塩改質モンモリロナイトの調製(IOH3)]
Na+交換モンモリロナイト(カチオン交換容量(CEC)=92meq/100g)を95℃の蒸留水に懸濁し(2%w/w)、シアヌル酸を加え(1.4mmol/100gモンモリロナイト)、溶液を1500rpmで60分間機械撹拌した。次いで、この溶液にメラミン一塩酸塩(1.4mmol/100gモンモリロナイト)を加え、得られた懸濁液をさらに150分間撹拌を続けた。懸濁液をろ過した後、沈殿物を温かい蒸留水で完全に洗浄し、次いで予備乾燥した(75℃)。得られた顆粒状の有機改質粘土を45μm未満の粒子サイズに粉砕し、次いで60〜80℃でさらに乾燥した後、処理又は分析を行った。
【0096】
【表9】

【0097】
例3の結果は、シアヌル酸メラミンイオンとさらに交換されると、モンモリロナイトのギャラリー間の間隔が、ナトリウムイオン又はメラミンイオン改質モンモリロナイトのみ(例1)と比較して、そのより大きなサイズ、したがって立体効果のために拡大されることを示している。
【0098】
[例4:メラミン及びシアヌル酸メラミンの存在下でのメラミン及びシアヌル酸メラミン改質モンモリロナイトの調製(IOH4)]
モンモリロナイト交換Na+(カチオン交換容量(CEC)=92meq/100g)を95℃の蒸留水に懸濁し(2%w/w)、シアヌル酸を加え(1.4mmol/100gモンモリロナイト)、溶液を1500rpmで60分間機械撹拌した。次いで、この溶液にメラミン一塩酸塩(1.4mmol/100gモンモリロナイト)とメラミン(1.4mmol/100gモンモリロナイト)を加え、得られた懸濁液をさらに150分間撹拌を続けた。懸濁液をろ過した後、沈殿物を温かい蒸留水で完全に洗浄し、次いで真空下で予備乾燥した(75℃)。得られた顆粒状の有機改質粘土を45μm未満の粒子サイズに粉砕し、次いで60〜80℃でさらに乾燥した後、処理又は分析を行った。
【0099】
【表10】

【0100】
例4の結果は、メラミンとシアヌル酸メラミンの存在下でシアヌル酸メラミンイオンと交換したモンモリロナイトのギャラリー間の間隔は、ナトリウムイオン又はシアヌル酸メラミンイオン交換モンモリロナイトのみ(例3)よりも大きいことを示している。この結果は、イオン交換の際の粘土による中性メラミン及びシアヌル酸メラミンの結合/捕捉と一致する。
【0101】
[例5:メラミン、トリメチルセチルアンモニウム及び塩酸メラミン改質モンモリロナイトの調製(IOH5)]
モンモリロナイト交換Na+(カチオン交換容量(CEC)=92meq/100g)を90℃の蒸留水に懸濁し(2%w/w)、溶液を1500rpmで60分間機械撹拌した。次いで、この溶液にメラミン一塩酸塩(1.4mmol/100gモンモリロナイト)と塩化トリメチルセチルアンモニウム(1.4mmol/100gモンモリロナイト)を加え、得られた懸濁液をさらに150分間撹拌を続けて冷却した。懸濁液をろ過した後、沈殿物を温かい蒸留水で完全に洗浄し、次いで真空下で予備乾燥した(75℃)。得られた顆粒状の有機改質粘土を45μm未満の粒子サイズに粉砕し、次いで60〜80℃でさらに乾燥した後、処理又は分析を行った。
【0102】
【表11】

【0103】
例5の結果は、塩化トリメチルセチルアンモニウムと塩酸メラミンの両方と交換したモンモリロナイトのギャラリー間の間隔は、ナトリウムより大きいが、トリメチルセチルアンモニウムイオン交換モンモリロナイトより小さいことを示している。この結果は、改質モンモリロナイトのギャラリー間の間隔に塩化トリメチルセチルアンモニウムと塩酸メラミンが存在することと一致する。
【0104】
[例6:メラミン及び塩酸メラミン改質合成ヘクトライト、ラポナイトの調製(IOH6)]
55mmol/100gというその低いカチオン交換容量(CEC)を考慮し、改質のために1%の溶液を用いて、例2で用いたのと同じ一般的な手順によりヘクトライト(Synthetic Laponite RD)を改質した。ヘクトライトCECとメラミン塩のモル比を厳密に制御してプレートレットの凝集を促進させた。メラミン塩/メラミンで処理した後、ろ過によって処理溶液から改質合成粘土を分離した。
【0105】
【表12】

【0106】
例6の結果は、メラミンの存在下で塩酸メラミンと交換した合成ヘクトライトのギャラリー間の間隔が、ナトリウム交換モンモリロナイトよりも大きいことを示している。
【0107】
[成分の溶融分散と耐火材料の配合 例7〜20]
以下の各例は、ポリアミド系マトリックスとしてナイロン12、ナイロン6又はナイロン66を使用しているが、難燃性のナイロン12、ナイロン6及びナイロン66に関する例が、他のタイプのポリアミド、ポリアミドコポリマー、ポリアミドブレンド、アロイなどにも適用できることは当業者であれば理解するであろう。
【0108】
例7〜20で使用された配合物の構成成分を表4a〜4eに与える。
【0109】
【表13】

【0110】
【表14】

【0111】
【表15】

【0112】
【表16】

【0113】
【表17】

【0114】
[例7:溶融処理の際に市販の粘土で改質されたナイロン12の加工レオロジー(表5)、XRD及びTEM(図2)、機械的性能(表6)並びに耐火性能(表7及び8)]
以下の例では、ナイロン12の加工レオロジーは、市販の「有機粘土」が少なくとも部分的にナノメートルスケールで溶融分散することによって影響を受けないことを示している(XRD)。この分散により、機械的性能及びコーン熱量測定によって測定される熱放出速度が改善されるが、UL、ASTM、FAAなどのような運営団体によって材料の耐火性能を区別するのに用いられる主要なツールである垂直燃焼の結果に関しては、従来の難燃性ナイロン12(Nylon12 FR)と比較して性能が劣る。したがって、これらの材料はこのような性能基準を満足しない。
【0115】
【表18】

【0116】
【表19】

【0117】
【表20】

【0118】
【表21】

【0119】
[例8:溶融処理の際に市販の粘土と難燃性添加剤(シアヌル酸メラミン)で改質されたナイロン12の加工(表9)、XRD(図3)、機械的性能(表10)及び耐火性能(表11〜14)]
以下の例では、ナイロン12の加工レオロジーは、市販の「有機粘土」が少なくとも部分的にナノメートルスケールで溶融分散すること及び難燃剤によって影響を受けないことを示している(XRD)。この分散により、従来の難燃性ナイロン12と比較して、機械的性能が改善され、コーン熱量測定による熱放出の結果が低下し、1.6mmよりも厚い試験片の垂直燃焼性能が低下する。厚さ0.75mmの試料は、良好な煙及び毒性ガス放出の結果を与えるが、これらはFAAタイプの12秒垂直燃焼試験に合格せず、放射パネルの試験で成績が悪い。このことは、この方法がFAAなどの運営団体の性能要件に対して薄い部品の性能を満足させるのに十分なものではないことを示している。
【0120】
【表22】

【0121】
【表23】

【0122】
【表24】

【0123】
【表25】

【0124】
【表26】

【0125】
【表27】

【0126】
[例9:溶融処理の際に塩酸メラミン/メラミンで改質されたモンモリロナイトを含むIOH2と難燃性添加剤(シアヌル酸メラミン)とで改質されたナイロン12の加工レオロジー(表15)、XRD(図4)、機械的性能(表16)及び耐火性能(表17〜19)]
以下の例では、ナイロン12の加工レオロジーは、IOH2と難燃剤が少なくとも部分的にナノメートルスケールで溶融分散することによって影響を受けないことを示している(XRD)。このような分散により、従来の難燃性ナイロン12と比較して、機械的性能と垂直燃焼の結果が改善される。0.75mm厚さの試料は、良好な煙及び毒性ガス放出の結果を与え、FAAタイプの12秒垂直燃焼試験に合格し、放射パネルの試験で成績が良い。難燃性の薄いポリマー系材料は、難燃性のより厚い材料よりもはるかに難しいことは当業者に公知であり、したがって、薄い厚さで性能要件を満たすことは優れた耐火性能のしるしである。
【0127】
【表28】

【0128】
【表29】

【0129】
【表30】

【0130】
【表31】

【0131】
【表32】

【0132】
[例10]
以下の例は、IOH2と従来の難燃性シアヌル酸メラミンを含む配合物13の機械的性能(表20)及び垂直燃焼性能(表21)に関して異なる処理パラメータの効果を示している。
【0133】
この結果は、異なる処理条件、例えば、処理能力、温度プロファイル、図1に与える所与のスクリュー及びバレル構成についてのスクリュー速度に対し、機械的性能及び耐火性能に関する配合物の強さを示している。
【0134】
【表33】

【0135】
【表34】

【0136】
[例11]
以下の例は、ナイロン12の機械的性能及び垂直燃焼性能(表22)に対する種々の濃度のIOH2(例2)とシアヌル酸メラミンの効果を示している。
【0137】
この結果は、厚さ0.75mmでFAA12秒垂直燃焼試験の要件に合格するためには、好ましくは10%を超えるシアヌル酸メラミンが必要であることを示している。さらにこの結果は、従来の難燃性ナイロン12とは異なり、この耐火性能がナイロン12と比較して優れた機械的性質を維持しながら達成されることを示している。
【0138】
【表35】

【0139】
[例12]
以下の例は、IOH2(例2)を含むナイロン12の性能(表23)に対する種々の通常の難燃剤の効果を示している。
【0140】
表23に示される結果は、IOHとシアヌル酸メラミンを含む材料が、優れた機械的性能と耐火性能の両方を与えることを実証している。フタル酸メラミンとリン酸ペンタエリトリトールを含有する配合物はまた、優れた耐火性能とより低い機械的性能を与える。シアヌル酸メラミンとMg(OH)2とを有するIOHを含有する試料は、衝撃、モジュラス、及び強度の点で優れた機械的性能を与え、さらには優れた垂直燃焼性能を与える。
【0141】
【表36】

【0142】
[例13]
以下の例は、得られた耐火性能(表24)に対して耐火配合物の成分を除去する効果を示している。
【0143】
この結果は、配合物から改質無機−有機ハイブリッド又はシアヌル酸メラミンのいずれかを除去すると、厚さ0.75mmでのFAA12秒タイプの試験後に不満足な垂直燃焼性能を与えることを示している。
【0144】
【表37】

【0145】
[例14]
以下の例は、IOH2(例2)、シアヌル酸メラミン及び水酸化マグネシウムを用いて調製されたナイロン12配合物の機械的性能、12秒垂直燃焼性能(表25)及びコーン熱量測定の結果(表26)を示している。表27は、上記配合物についての放射パネル、煙、及び60秒FAAタイプ垂直燃焼の結果を示している。異なる表面官能基と粒子サイズ分布を有する、IOH2、シアヌル酸メラミン及び水酸化マグネシウムを含むナイロン12配合物の機械的性能と垂直燃焼性能を表28に与える。
【0146】
例14の結果は、IOH2、シアヌル酸メラミン及び低濃度の水酸化マグネシウムを含む配合物に関して、優れた加工性、機械的性能、垂直燃焼及び熱放出の結果が得られることを示し、特に、少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散されたIOHと、シアヌル酸メラミンと、2.5%の水酸化マグネシウムとを含む配合物が、優れた機械的性能、垂直燃焼、ピーク熱放出及び平均熱放出の結果を与える。この結果はまた、IOH2とシアヌル酸メラミンとともに異なるグレードのMg(OH)2を使用して、優れた加工性、機械的性能及び耐火性能を有する配合物が生成できることを示している。
【0147】
【表38】

【0148】
【表39】

【0149】
【表40】

【0150】
【表41】

【0151】
[例15]
以下の例は、例1、2及び4に概説した無機−有機ハイブリッドとシアヌル酸メラミンを用いて調製したナイロン12配合物の機械的性能と垂直燃焼性能(表29)を示している。
【0152】
この結果は、塩酸メラミン改質IOHのみを用いて調製したもの(例1)と比較して、インターカレーションされ改質されたIOHを含有するナイロン12配合物(例2及び4)が優れた耐火性能を示している。
【0153】
【表42】

【0154】
[例16]
以下の例は、IOH2とシアヌル酸メラミンを含むナイロン6及びナイロン66配合物の性能を示している。
【0155】
この結果は、少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散されたIOH2がシアヌル酸メラミンと共同して、ナイロン6及びナイロン66と比較して優れた機械的性能と垂直燃焼性能を与えることを示している。
【0156】
【表43】

【0157】
[例17]
以下の例は、少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散(図5)された改質及びインターカレーションされたヘクトライト(例6)とシアヌル酸メラミンを含むナイロン12配合物のXRDと当該配合物の垂直燃焼性能(表31)を示している。
【0158】
XRDの結果は、出発物質と比較してヘクトライトがそのより大きなギャラリー間の間隔のために改質されていることを示す。少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散(図5)されたIOH5とシアヌル酸メラミンを含むナイロン12は、優れた耐火性能を示す。
【0159】
【表44】

【0160】
[例18]
本例は、IOH2、通常の難燃剤及び少量の加工添加剤を含む配合物のレオロジー(表32)、機械的性能及び垂直燃焼性能(表33)を示している。
【0161】
本例は、加工の際に(追加の)少量の加工添加剤を加えることにより、ナイロン12、IOH2及び通常の難燃剤を含む配合物の粘度がせん断速度範囲を通して低下することを示している。この粘度の低下は、機械的性能を大きく低下させることなく、かつ一般にはとりわけ種々の取締機関が示す性能基準を満足するよう薄い材料を難燃性にするのに要求される厳しい条件下で耐火性能を犠牲にすることなく可能である。
【0162】
【表45】

【0163】
【表46】

【0164】
[例19]
本例は、IOH2、通常の難燃剤及び少量の安定剤成分を含むナイロン12配合物の機械的性能と耐火性能(表34)を与える。
【0165】
この結果は、ナイロン12、IOH2及び通常の難燃剤を含有する配合物の機械的性能と垂直燃焼性能が、配合の際、配合物に追加の安定剤を添加することで大きく低下しないことを示している。
【0166】
【表47】

【0167】
[例20]
本例は、IOHを含む配合物が、押出、射出成形、圧縮成形などのプロセスだけでなく、回転成形(図6)や選択的レーザー焼結などの低せん断プロセスによっても、材料、部材及び部材の一部に加工できることを示している。
【0168】
図6は、IOH2、シアヌル酸メラミン、任意選択で水酸化マグネシウム、並びに配合物13及び34などのしかしそれらに限定されない他の添加剤を含む配合物を用いて回転成形により製造された部材の例を与える。本例は、このような配合物が、低せん断及び熱的に厳しい環境下で部材を製造するための好適な熱/酸化安定性と溶融レオロジーを示すことを実証している。
【0169】
具体的な実施態様で示した本発明は、概括的に記載した本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、多くの変更及び/又は改良を加えることができるということを当業者であれば理解するであろう。したがって、本実施態様は、すべての点で例示的であって、限定的ではないとみなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機−有機ハイブリッド(IOH)であって、
(i) 膨張性又は膨潤性の層状無機成分;及び
(ii)少なくとも1つのイオン性有機成分
を含む有機成分を含む、無機−有機ハイブリッド(IOH)。
【請求項2】
前記有機成分が、前記無機成分の層の間にインターカレーションされるか及び/又はそれと結合される1つ又は複数の中性有機成分をさらに含む、請求項1に記載のIOH。
【請求項3】
前記無機成分が、層内部の元素の同形置換によって正又は負に帯電された、請求項1又は2に記載のIOH。
【請求項4】
前記無機成分が、1:1層状ケイ酸塩構造、2:1層状ケイ酸塩構造、一般式がMg6Al3.4(OH)18.8(CO31.7・H2Oの複水酸化物、及び合成して調製した層状材料から選択された、請求項1〜3のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項5】
前記無機成分が、フィロケイ酸塩の天然又は合成の類似体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項6】
前記フィロケイ酸塩の天然又は合成の類似体がスメクタイト粘土である、請求項5に記載のIOH。
【請求項7】
前記スメクタイト粘土が、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヴォルコンスキー石、ヘクトライト、ベントナイト、サポナイト、ソーコナイト、マガディアイト、ケニアイト、ラポナイト、バーミキュライト、合成ミクロマイカ及び合成ヘクトライトから選択された、請求項6に記載のIOH。
【請求項8】
前記天然のフィロケイ酸塩が、ベントナイト、モンモリロナイト及びヘクトライトから選択された、請求項6又は7に記載のIOH。
【請求項9】
前記フィロケイ酸塩が、約5nm未満のプレートレット厚さと、約10:1を超えるアスペクト比とを有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項10】
前記アスペクト比が約50:1を超える、請求項9に記載のIOH。
【請求項11】
前記アスペクト比が約100:1を超える、請求項9又は10に記載のIOH。
【請求項12】
前記無機成分が、電荷をバランスさせるための層間の又は交換可能な金属カチオンを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項13】
前記金属カチオンが、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択された、請求項12に記載のIOH。
【請求項14】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属が、Na+、K+、Mg2+及びCa2+から選択された、請求項13に記載のIOH。
【請求項15】
前記無機成分のカチオン交換容量が、約400ミリ当量/100グラム未満である、請求項12〜14のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項16】
前記イオン性有機成分が、前記無機成分の交換可能な金属イオンと交換された、請求項12〜15のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項17】
前記イオン性化学種が、1つ又は複数のオニウムイオンを含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項18】
前記1つ又は複数のオニウムイオンを含有するイオン性化学種が、脂肪族、芳香族又はアリール−脂肪族のアミン、ホスフィン又はスルフィドのアンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム誘導体である、請求項17に記載のIOH。
【請求項19】
前記イオン性又は中性有機成分が、吸熱的に分解若しくは昇華するか、分解によって低燃焼性の揮発性物質を放出するか、及び/又は熱分解若しくは燃焼の際に有機化学種の炭化を誘発する、請求項2〜18のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項20】
前記イオン性又は中性有機成分が、窒素系分子の中性又はイオン性誘導体である、請求項19に記載のIOH。
【請求項21】
前記窒素系分子がトリアジン系化学種である、請求項20に記載のIOH。
【請求項22】
前記トリアジン系化学種が、メラミン、トリフェニルメラミン、メラム(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン−n−(4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン−イル))、メレム((−2,5,8−トリアミノ−1,3,4,6,7,9,9b−ヘプタアザフェナレン))、メロン(ポリ{8−アミノ−1,3,4,6,7,9,9b−ヘプタアザフェナレン−2,5−ジイル)イミノ})、ビス及びトリアジリジニルトリアジン、トリメチルシリルトリアジン、シアヌル酸メラミン、フタル酸メラミン、リン酸メラミン、亜リン酸メラミン、メラミンフタルイミド、リン酸ジメラミン、ホスファジン、トリアジンとホスファジンの反復単位を有する低分子量ポリマー、並びにイソシアヌル酸及びその塩又は誘導体から選択された、請求項21に記載のIOH。
【請求項23】
前記イソシアヌル酸及びその塩又は誘導体が、イソシアヌル酸、シアヌル酸、シアヌル酸トリエチル、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸トリグリシジル、イソシアヌル酸トリアリル、トリクロロイソシアヌル酸、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサメチレンテトラミン、シアヌル酸メラム、シアヌル酸メレム及びシアヌル酸メロンから選択された、請求項22に記載のIOH。
【請求項24】
前記有機成分がリン酸又はホウ酸の誘導体である、請求項19〜23のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項25】
前記リン酸又はホウ酸の誘導体が、ポリリン酸アンモニア、ポリリン酸メラミン、リン酸メラミン及びホウ酸アンモニウムから選択された、請求項24に記載のIOH。
【請求項26】
前記イオン性有機成分が、無機成分と有機成分の間の適合性及び分散を改善することができる他のイオン性化合物と組み合わせて使用される、請求項1〜25のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項27】
前記他のイオン性化合物が、疎水性のアルキル又は芳香族部分とともに親水性のイオン基を含む両親媒性の分子である、請求項26に記載のIOH。
【請求項28】
1つ又は複数のカップリング試薬をさらに含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載のIOH。
【請求項29】
前記カップリング試薬が、有機官能基化したシラン、ジルコン酸塩及びチタン酸塩から選択された、請求項28に記載のIOH。
【請求項30】
前記シランのカップリング試薬が、アミノ、エポキシ、イソシアネート、ヒドロキシル、チオール、メルカプト及び/又はメタクリルの反応性部分によって官能基化されるか、又はトリアジン誘導体、長鎖アルキル、芳香族若しくはアルキル芳香族の部分に基づく官能基を含むよう改質されたトリ−アルコキシ、アセトキシ又はハロシランである、請求項29に記載のIOH。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項で規定される成分(i)と(ii)又はそれらの構成成分を1つ又は複数の工程で混合することを含む、請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOHの調製方法。
【請求項32】
前記混合が、溶融、溶液又は粉末処理を用いて達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記混合が溶液処理を用いて達成される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOHの耐火材料としての使用。
【請求項35】
(i) 請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOH;及び
(ii)1つ又は複数の難燃剤
を含む、耐火配合物。
【請求項36】
前記難燃剤が、リン誘導体、窒素含有誘導体、ホウ酸塩官能基を含有する分子、2つ以上のアルコール基を含有する分子、吸熱的に不燃性分解ガスを放出する分子及び膨張性黒鉛から選択された、請求項35に記載の配合物。
【請求項37】
前記リン誘導体が、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニア、ポリリン酸アンモニア、リン酸ペンタエリトリトール、亜リン酸メラミン及びトリフェニルホスフィンから選択された、請求項36に記載の配合物。
【請求項38】
前記窒素含有誘導体が、メラミン、シアヌル酸メラミン、フタル酸メラミン、メラミンフタルイミド、メラム、メレム、メロン、シアヌル酸メラム、シアヌル酸メレム、シアヌル酸メロン、ヘキサメチレンテトラアミン、イミダゾール、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンから選択された、請求項36又は37に記載の配合物。
【請求項39】
前記ホウ酸塩官能基を含有する分子が、ホウ酸アンモニア及びホウ酸亜鉛から選択された、請求項36〜38のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項40】
前記2つ以上のアルコール基を含有する分子が、ペンタエリトリトール、ポリエチレンアルコール、ポリグリコール及び炭水化物から選択された、請求項36〜39のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項41】
前記吸熱的に不燃性分解ガスを放出する分子が、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムから選択された、請求項36〜40のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項42】
請求項1〜30のいずれか1項で規定される成分(i)と(ii)又はそれらの構成成分を1つ又は複数の工程で混合することを含む、請求項35〜41のいずれか1項で規定される耐火配合物の調製方法。
【請求項43】
前記混合が、溶融、溶液又は粉末処理を用いて達成される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記混合が、二軸スクリュー押出機若しくはバッチミキサーにおける溶融処理;又は高せん断粉体ミキサー若しくは粉砕処置を用いた粉末処理によって達成される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
(A)(i) 請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOH;及び
(ii)ポリアミド系マトリックス;又は
(B)(i) 請求項35〜41のいずれか1項で規定される耐火配合物;及び
(ii)ポリアミド系マトリックス
のいずれかを含む、ポリアミド耐火配合物。
【請求項46】
前記ポリアミド系マトリックスが、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン68、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ポリアミド、及びそれらのコポリマー、ブレンド又はアロイから選択されたアミドに基づく反復単位を有する一般基を含む、請求項45に記載の配合物。
【請求項47】
前記ポリアミド系マトリックスが、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、及びそれらのコポリマー、アロイ又はブレンドから選択された、請求項45又は46に記載の配合物。
【請求項48】
1つ又は複数の添加剤をさらに含む、請求項45〜47のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項49】
前記添加剤が、ポリマー安定剤;滑剤;酸化防止剤;顔料、染料又は材料の光学的性質若しくは色を変える他の添加剤;導電性の充填剤又は繊維;剥離剤;スリップ剤から選択された、請求項48に記載の配合物。
【請求項55】
前記ポリアミド系マトリックスが約75%w/wを超える量で存在し、前記IOHが約3%w/w未満の量で存在し、前記シアヌル酸メラミンの難燃剤が約11〜約15%w/wの量で存在し、前記水酸化マグネシウムの難燃剤が約1〜約5%w/w未満の量で存在し、前記添加剤が約4%w/w未満の量で存在する、請求項48〜53のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項56】
請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOH、請求項35〜41のいずれか1項で規定される耐火配合物又はそれらの構成成分を、前記ポリアミド系マトリックスに1つ又は複数の工程で分散させることを含む、請求項45〜55のいずれか1項で規定されるポリアミド耐火配合物の調製方法。
【請求項57】
前記耐火配合物の成分の少なくとも一部が混合前に粉砕される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記耐火配合物の成分が約200μm未満の粒子サイズに粉砕される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
分散が、溶融、溶液又は粉末処理を用いて達成される、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記分散が、単軸若しくは二軸スクリュー押出機、バッチ混合機、又は連続配合機における溶融処理によって達成される、請求項57〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記溶融処理が二軸スクリュー押出機で行われる、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記分散が、前記IOHを少なくとも部分的にナノメートルスケールで分散させるのに十分なせん断速度、せん断応力及び滞留時間で行われる、請求項56〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
その全体又は一部が、請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOH、及び/又は請求項35〜41及び請求項45〜55のいずれか1項で規定される耐火配合物から成る、耐火製品又はその部品。
【請求項64】
輸送、建築、建設、電気又は光学の用途で使用される、請求項63で規定される耐火製品又はその部品。
【請求項65】
前記輸送用途が、航空、自動車、航空宇宙又は船舶である、請求項64で規定される耐火製品又はその部品。
【請求項66】
中空製品又はシートである、請求項63〜65のいずれか1項で規定される耐火製品又はその部品。
【請求項67】
配管、ダクト、布、カーペット、ケーブル、電線、ファイバー、環境制御システム、容器のヒンジカバー、ケーブルトレイ、ECSダクトスパッド、掛け金、ブラケット、乗客用表面ユニット、及び熱可塑性積層シートから選択された、請求項63〜66のいずれか1項で規定される耐火製品又はその部品。
【請求項68】
その全体又は一部が請求項54又は55で規定される耐火配合物から成り、回転成形又は押出によって製造された、耐火性中空製品又はその部品。
【請求項69】
その全体又は一部が請求項54又は55で規定される耐火配合物から成り、溶融紡糸又は押出によって製造された、耐火性の繊維、布、カーペット又はそれらの部品。
【請求項70】
その全体又は一部が請求項54又は55で規定される配合物から成り、焼結によって製造された、耐火製品又はその部品。
【請求項71】
その全体又は一部が請求項54又は55で規定される耐火配合物から成り、射出又は圧縮成形によって製造された、耐火製品又はその部品。
【請求項72】
請求項1〜30のいずれか1項で規定されるIOH及び/又は請求項35〜41及び請求項45〜51のいずれか1項で規定される耐火配合物若しくはその構成成分を成形又は形成することを含む、請求項59〜71のいずれか1項で規定される耐火製品又はその部品の調製方法。
【請求項73】
前記成形又は形成が、押出、射出成形、圧縮成形、回転成形、吹込み成形、焼結、熱成形、圧延(calending)又はそれらの組み合わせを用いて実施される、請求項72に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219769(P2011−219769A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−154602(P2011−154602)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【分割の表示】特願2004−547287(P2004−547287)の分割
【原出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】