説明

耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布及び耐熱性ポリ乳酸系複合繊維

【課題】 機械的特性と耐熱性に優れたポリ乳酸系長繊維不織布を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体とを含む複合長繊維を構成繊維とする。ポリ乳酸系重合体は、融点が150℃以上である。芳香族ポリエステル共重合体は、ポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分とする。複合長繊維の複合形態は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合形態であるか、または、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れた、植物由来の高分子からできている、耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布及び耐熱性ポリ乳酸系複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油を原料とする合成繊維は、焼却時の発熱量が多いため、自然環境保護の見地から見直しが必要とされている。これに対し、自然界において生分解する脂肪族ポリエステルからなる繊維が開発されており、環境保護への貢献が期待されている。脂肪族ポリエステルの中でもポリ乳酸系重合体は、比較的高い融点を有することから、広い分野に使用されることが期待されている。また、ポリ乳酸系重合体は、生分解性ポリマーの中では、力学特性、耐熱性、コストバランスが最も優れている。そして、これを利用した繊維の開発が急ピッチで行われている。
【0003】
しかしながら、最も有望視されているポリ乳酸系重合体にも、高温力学特性が悪いという課題が挙げられる。ここで、高温力学特性が悪いとは、ポリ乳酸系重合体のガラス転移温度(Tg)である60℃を超えると、重合体が急激に軟化することを指している。実際に、雰囲気温度を変更してポリ乳酸系重合体からなる長繊維不織布の引張試験を行うと、70℃以上では長繊維不織布の強力が急激に低下することがわかっている。
【0004】
ポリ乳酸系重合体からなる長繊維不織布は、上記したように高温での力学特性に劣るため、通常の雰囲気下で用いる場合は問題ないが、高温雰囲気下では変形やへたりが生じる。このため、例えば、炎天下に晒されるような自動車用の内装材には不向きである。また、例えば、ポリ乳酸系長繊維不織布を熱成形用カーペットに使用した際において、130℃、140℃といった成形温度にて熱成形した場合には高温下での不織布の強力・伸度の低下が成形性を悪くし、特に深絞り成形を行った部分においてはカーペット基布が破れてしまうといった問題が発生している。
【0005】
上記ポリ乳酸系重合体のもつ欠点を補うべく、(1)アルキレンジオールやビスフェノールA誘導体等を共重合したポリエチレンテレフタレートをポリ乳酸にブレンドする方法、(2)長鎖カルボン酸を共重合したポリエチレンテレフタレートをポリ乳酸にブレンドする方法、(3)高速紡糸による配向結晶化構造を利用する方法などが提案されている。このうちの(3)の高速紡糸による配向結晶化構造を利用する方法について説明する。例えば、重量平均分子量10万〜30万のホモポリマーからなるL乳酸を紡糸温度210〜250℃で口金より吐出し、冷却風により糸を冷却固化させる。その後、繊維用油剤を付与して高速で引き取り、そのまま巻き取る。このとき、巻き取ったポリ乳酸繊維の(200)面方向の結晶サイズが6nm以上となるように高速の引き取り速度を決定する。これによってポリ乳酸繊維を配向結晶化させることができる。そして、この高速紡糸により配向結晶化したポリ乳酸繊維をさらに延伸温度100℃以上で延伸し、熱セットするものである(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−41433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、同様に機械的特性と耐熱性に優れたポリ乳酸系長繊維不織布を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、不織布の構成ポリマーに着目し、ポリ乳酸系重合体と、酸成分としてテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸を含むとともにグリコール成分としてエチレングリコール及びジエチレングリコールを含む繰り返し単位を構成成分とする芳香族ポリエステル共重合体とを構成成分とする複合形態を採用した複合長繊維を用いることによって、ポリ乳酸系重合体により形成される長繊維不職布に耐熱性を付与することができるということを見いだして、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不職布は、ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体とを含む複合長繊維を構成繊維とし、前記ポリ乳酸系重合体は融点が150℃以上であり、前記芳香族ポリエステル共重合体は、前記ポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分とし、前記複合長繊維の複合形態は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合形態であるか、または、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合形態であることを要旨とするものである。
【0009】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布によれば、ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体との複合比(質量比)が、ポリ乳酸系重合体/芳香族ポリエステル共重合体=3/1〜1/3であることが好適である。あるいは、酸成分としてスルホン酸金属塩を含むことが好適である。
【0010】
また本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布は、130℃でのタテ方向の最大強力を目付で除した値が0.5〜1.5(N/5cm幅)/(g/m)であり、かつ130℃での破断時のタテ方向の伸度が30%以上であることが好適である。
【0011】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系複合繊維は、ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体とを含む複合繊維であって、前記ポリ乳酸系重合体は融点が150℃以上であり、前記芳香族ポリエステル共重合体は、前記ポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分とし、前記複合繊維の複合形態は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合形態であるか、または、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合形態であることを要旨とするものである。
【0012】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系複合繊維によれば、ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体との複合比(質量比)が、ポリ乳酸系重合体/芳香族ポリエステル共重合体=3/1〜1/3である。あるいは酸成分としてスルホン酸金属塩を含むことが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布は、生分解性を有するが高温での力学特性に劣るポリ乳酸系重合体を、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分として高温での力学特性に勝る芳香族ポリエステル共重合体にて概ね被覆した形態の複合繊維を構成繊維とするため、ポリ乳酸系重合体に外部からの熱を伝えにくい形態とすることができて、高温雰囲気下に置かれた場合の耐熱性が良好な長繊維不織布とすることができる。そして、高温雰囲気下での耐熱性が良好であるので、自動車用内装材等の耐熱性が要求される用途、アスファルトルーフィング等施工時に耐熱性が必要とされる用途、機械的特性と生分解が要求される土木用途、園芸用途などに、好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布は、不織布を構成する複合長繊維が、融点が150℃以上のポリ乳酸系重合体と、このポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分とすることを特徴とするものである。
【0015】
まず、ポリ乳酸系重合体について説明する。
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸と、ポリ−L−乳酸と、D−乳酸とL−乳酸との共重合体と、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体と、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体との群から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が、分解性能や低コスト化の点から好ましい。
【0016】
本発明においては、上記ポリ乳酸系重合体であって、融点が150℃以上の重合体あるいはこれらのブレンド体を用いる。ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であると、高い結晶性を有しているため、熱処理加工時の収縮が発生しにくく、また、熱処理加工を安定して行うことができ、さらには、得られる長繊維不織布の耐熱性に優れる。
【0017】
ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸の融点は、約180℃である。ポリ乳酸系重合体として、ホモポリマーでなく、共重合体を用いる場合には、共重合体の融点が150℃以上となるようにモノマー成分の共重合比率を決定する。L−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合であると、L−乳酸とD−乳酸との共重合比がモル比で、(L−乳酸)/(D−乳酸)=5/95〜0/100、あるいは(L−乳酸)/(D−乳酸)=95/5〜100/0のものを用いる。共重合比が前記範囲を外れると、共重合体の融点が150℃未満となり、非晶性が高くなり、本発明の目的を達成し得ないこととなる。
【0018】
本発明において用いられる芳香族ポリエステル共重合体は、上述したポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、グリコール成分として本質的にエチレングリコールとジエチレングリコールとを用い、酸成分として本質的にテレフタル酸と脂肪族ジカルボン酸とを用い、必要に応じてスルホン酸金属塩を用いて、従来から公知の重縮合法により製造される。
【0019】
グリコール成分中のエチレングリコールは、グリコール成分全体を100モル%として50モル%〜99.9モル%であることが好ましく、これに対応してジエチレングリコールは0.1モル%〜50モル%であることが好ましい。ジエチレングリコール単位が50モル%超えると繊維すなわち不織布の機械的特性に悪影響を及ぼし、反対に0.1モル%未満であると所望の生分解性が得られなくなる。
【0020】
酸成分中のテレフタル酸は、酸成分全体を100モル%として、50モル%〜95モル%であることが好ましく、55モル%〜90モル%であることがさらに好ましい。テレフタル酸の量が多い程、機械的強度は高くなる。
【0021】
酸成分中の脂肪族ジカルボン酸の含有量は、不織布の生分解性に寄与する。すなわち、脂肪族ジカルボン酸は、酸成分全体を100モル%として、5モル%〜50モル%であることが好ましく、10モル%〜45モル%であることがさらに好ましい。5モル%未満であると、ガラス転移温度を有意に下げることができず、不織布の生分解性に劣る。一方、50モル%を超えると、ガラス転移温度の低下を招き、不織布製造工程において、紡糸糸条の冷却不足、開繊不良等のトラブルが発生する。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2〜18、好ましくは炭素数2〜10の脂肪族ジカルボン酸が好適に用いられる。具体的には、アゼラン酸、コハク酸、アジピン酸、セパシン酸、グルタル酸などを挙げることができる。中でも、グルタル酸が好ましく用いられる。
【0023】
このような構成の芳香族ポリエステル共重合体は、その熱特性が、ポリ乳酸系重合体に比べて優れている。すなわち、芳香族ポリエステル共重合体は、その構成成分の比率により、ポリ乳酸よりも高融点とすることができる。たとえば、上述のようにポリ乳酸系重合体の融点は最大でも約180℃であるが、芳香族ポリエステル共重合体はその融点を200℃以上とすることができる。たとえばデュポン社の「バイオマックス(R)4027」は融点が235℃であり、また同社の「バイオマックス(R)4026」は融点が200℃である。この芳香族ポリエステル共重合体を使用することにより、ポリ乳酸よりも融点が高い分、高温雰囲気(たとえば130℃や140℃)での熱特性を向上させることができる。
【0024】
生分解性をより強力に発現させるために、スルホン酸金属塩が、必要に応じて用いられる。具体的には、5−スルホイソフタル酸の金属塩、4−スルホイソフタル酸の金属塩、4−スルホフタル酸の金属塩などが挙げられる。金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属や、マグネシウムなどのアルカリ土類金属が好ましい。
【0025】
スルホン酸金属塩を用いる場合には、酸成分全体を100モル%として、テレフタル酸が50モル%〜90モル%、脂肪族ジカルボン酸が4モル%〜49.8モル%、スルホン酸金属塩が0.2モル%〜6モル%であることが好ましく、発現すべき生分解性の程度に応じてスルホン酸金属塩の使用量を加減する。
【0026】
本発明における芳香族ポリエステル共重合体は、このような組成であるために、堆肥化条件で容易に生分解される。
複合長繊維の複合形態は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘複合型であるか、あるいは、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が、芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合型である。
【0027】
ポリ乳酸系重合体を芯部に配置し、その芯部を上述のようにポリ乳酸系重合体よりも熱特性(耐熱性)に優れた芳香族ポリエステル共重合体の鞘部により覆うことにより、あるいは芯部を芳香族ポリエステル共重合体の複数の突起状の葉部によって取り囲むことにより、すなわち、ポリ乳酸系重合体を繊維横断面の中央部に配置することにより、このポリ乳酸系重合体に外部からの熱を伝えにくい形態とすることができる。これにより、ポリ乳酸系重合体の高温下での力学特性が悪いという欠点をカバーすることができる。
【0028】
図1〜2は、本発明にもとづく多葉複合型の繊維の横断面の例を示す模式図である。
図1〜2のいずれの多葉型複合繊維3も、ポリ乳酸系重合体が芯部1を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が葉部2を形成している。図1では、それぞれの葉部2が芯部1により分断されており、芯部1のポリ乳酸系重合体の一部が繊維表面に露出している。図2では、葉部2が芯部1により分断されずに一連に連なった環状となって芯部1を覆っている。
【0029】
このような構成であると、葉部2が突起状に形成されていることから異形度が高くなるため、繊維製造工程において、溶融紡糸した繊維が冷えやすく、また開繊性が向上するという効果も奏する。
【0030】
多葉複合型における葉部2の数は、3〜10個であることが好ましい。突起状の葉部2の数が少ないと、個々の葉部2の大きさによっては、芯部1であるポリ乳酸系重合体が繊維の表面に露出されやすく、その露出した割合が大きくなって、本発明の目的である耐熱性が達成されにくい傾向となる。なお、葉部2の数が多くなると、それぞれの葉部2同士が接触して、芯部1を完全に覆ったいわゆる芯鞘型の断面形状となりやすく、異形度が小さくなる傾向にある。
【0031】
また、突起状の葉部2の配列形態は、繊維横断面の外周上に各々等間隔に位置していることが好ましい。葉部2が繊維横断面の外周上に各々片寄って位置すると、紡糸工程において紡出糸条がニーリングを発生しやすくなる。
【0032】
複合長繊維におけるポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体との複合比(質量比)は、ポリ乳酸系重合体/芳香族ポリエステル共重合体=3/1〜1/3であることが好ましい。芯部の比率が3/1を超えると、繊維全体にしめるポリ乳酸重合体の比率が多くなり、高温雰囲気下での不織布の機械的物性が低くなる。そのため、本発明の不織布をたとえば熱成形用カーペットのための基布として用いた場合には、タフティング、バッキング後のカーペットの熱成形時に破れるなどの問題が発生するおそれがある。一方、芯部の比率が1/3未満となると、高温雰囲気下での機械的物性には優れるものの、得られた不織布がコスト高となってしまう。
【0033】
本発明の不織布における複合長繊維の単糸繊度は、0.5デシテックス〜11デシテックス程度であることが好ましい。単糸繊度が0.5デシテックス未満であると、紡糸、延伸工程において糸切れが頻繁に発生し、操業性が悪化するとともに、得られる長繊維不織布の機械的強度が劣るため、実用的でなくなる。一方、単糸繊度が11デシテックスを超えると、紡糸糸条の冷却性に劣り、糸条同士が密着しやすくなる。
【0034】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布は、前記した複合長繊維が堆積したものであり、芳香族ポリエステル共重合体が溶融または軟化することにより繊維同士が部分的に熱圧着して形態保持していることが好ましい。すなわち、不織ウエブを熱エンボス装置に通すことで、ウエブにおける多数のスポットに熱と圧力が加わることにより、芳香族ポリエステル共重合体が溶融または軟化した熱圧着部と、非熱圧着部とが形成され、それによって不織布として形態保持していることが好ましい。また本発明の不織布は、構成繊維同士が三次元交絡することにより形態保持していることが好ましい。たとえば、ニードルパンチ法により構成繊維どうしを交絡させて不織布として形態保持させたものが好ましい。
【0035】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布の目付は、適宜設定すればよく、特に限定はしないが、一般的には20〜300g/mの範囲であることが好ましい。より好ましくは、30〜200g/mの範囲である。目付が20g/m未満では、地合及び機械的強力に劣り、実用的でない。逆に、目付が300g/mを超えるとコスト面で不利となる。
【0036】
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布は、上述のように、その構成長繊維において、ポリ乳酸系重合体を芯部に配置し、その芯部を芳香族ポリエステル共重合体の鞘部により覆うことにより、あるいは芯部を芳香族ポリエステル共重合体の複数の突起状の葉部によって取り囲むことにより、ポリ乳酸系重合体に外部からの熱を伝えにくい形態とすることができ、これにより、ポリ乳酸系重合体の高温下での力学特性が悪いという欠点をカバーすることができる。その結果、本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布は、130℃でのタテ方向の最大強力を目付で除した値を0.5〜1.5(N/5cm幅)/(g/m)とすることができるとともに、130℃での破断時のタテ方向の伸度を30%以上とすることができるという、すぐれた耐熱性能を発揮可能である。
【0037】
本発明の不織布を構成する繊維を形成するための重合体には、本発明の目的を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、末端封鎖剤、可塑剤、滑剤、離型剤、耐電防止剤、充填剤等を添加することも可能である。例えば、結晶核剤としてのタルクを双方の重合体に配合することが好適である。
【0038】
次に、本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布の好ましい製造方法について説明する。
本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維は、スパンボンド法によって効率よく製造することができる。
【0039】
すなわち、ポリ乳酸系重合体と、前述した成分を含む芳香族ポリエステル共重合体とを用意する。用意したそれぞれの重合体を個別に計量し、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成しかつ芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合紡糸口金を介して溶融紡糸し、紡出糸条を従来公知の横吹付けや環状吹付け等の冷却装置を用いて冷却せしめた後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取る。あるいは、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成しかつ芳香族ポリエステル共重合体が葉部を構成する多葉型複合紡糸口金を介して溶融紡糸し、同様に処理する。
【0040】
このときの牽引速度は、4000〜6000m/分に設定することが好ましく、4500〜6000m/分であることがさらに好ましい。牽引速度が4000m/分未満であると、糸条において十分に分子配向が促進されず、最終的に得られる不織布の寸法安定性が劣りやすくなる。一方、牽引速度が高すぎると紡糸安定性に劣りやすくなる。
【0041】
牽引細化した長繊維は、公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊堆積させて、構成繊維がランダムに分布した不織ウエブを形成する。
次いで、得られたウエブを所望の不織布化手段により不織布化する。例えば、熱エンボス装置に通し、繊維外側の芳香族ポリエステル共重合体を溶融または軟化させることにより、繊維同士を部分熱圧着して、本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を得る。このように繊維同士を部分熱圧着することで、機械的強力と柔軟性との両方に優れた不織布を得ることができる。
【0042】
部分熱圧着時の温度は、芳香族ポリエステル共重合体が溶融または軟化する温度に設定するとよいが、処理時間等に応じて適宜選択する。
例えば、熱エンボス装置のロールの表面温度は、芳香族ポリエステル共重合体の融点よりも50〜100℃低い温度に設定することが好ましい。芳香族ポリエステル共重合体の融点よりも100℃低い温度よりもさらに低い温度に設定すると、芳香族ポリエステル共重合体が十分に溶融または軟化しないために、接着機能に劣り、このため長繊維不織布の機械的性能が劣り、毛羽立ちやすいものとなる。一方、芳香族ポリエステル共重合体の融点よりも50℃低い温度よりも高い温度に設定すると、芯部のポリ乳酸系重合体が溶融してしまうために、機械的強力に劣ることとなる。
【0043】
芯鞘形態や多葉形態の複合繊維にて形成されたウエブに部分熱圧着処理を施して不織布化するときの熱エンボス装置のロール表面温度は、複合繊維の表面部すなわち芯鞘形態の鞘部や多葉形態の葉部を構成する重合体の融点または軟化点よりも10〜50℃低い程度に設定することが通例である。しかし、本発明によると、上述の低めの温度、すなわち芳香族ポリエステル共重合体の融点よりも50〜100℃低い温度に設定しても、良好に熱圧着処理を行うことができる。その理由は、明らかではないが、本発明によると、芳香族ポリエステル共重合体をあまり配向させずに紡糸することができるために、このような低温で処理しても熱圧着が可能になると考えることができる。
【0044】
また、不織布化手段としてたとえば構成繊維同士を交絡させる場合は、得られたウエブをニードルパンチ機に通して、適宜のパンチ密度でニードルパンチを行い、構成繊維同士を交絡させ、本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を得る。なお、ニードルパンチ機に通す前に、ウエブの搬送性を考慮して、ウエブに仮熱圧着処理を施してもよい。
【実施例】
【0045】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は、次の方法により実施した。
(1)メルトフローレート値(g/10分 以下、「MFR値」と略称する):ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて温度210℃、荷重2160gで測定した。
(2)相対粘度(ηrel):フェノールと四塩化エタンとの等質量比の混合溶媒100ccに試料0.5gを溶融し、オストワルド粘度形を用いて測定した。
(3)融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用いて、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分で測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
(4)繊度(デシテックス 以下、「dtex」と記す):ウエブ状態における50本の繊維の繊維径を光学顕微鏡で測定し、密度補正して求めた平均値を繊度とした。
(5)目付(g/m):標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付(g/m)とした。
(6)常温雰囲気下での引張強力(N/5cm幅)及び伸度(%):幅5cm×長さ20cmの短冊状の試験片を10個準備し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用いて、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で引張試験を行い、JIS−L−1906に準じて測定した。そして10点の平均値を引張強力(N/5cm幅)とした。また、上記条件で得られた切断時の伸度(%)を破断伸度(%)とした。
(7)高温雰囲気下での引張強力(N/5cm幅)及び伸度(%):130℃での高温雰囲気下で、JIS−L−1906に準じて測定した。すなわち、不織布のタテ方向及びヨコ方向について、幅5cm×長さ20cmの短冊状の試験片を10個準備した。そして、130℃の高温雰囲気下にある定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、これに試料片をつかみ間隔10cmで設置し、5分間放置した後に、引張速度10cm/分で伸長し、得られた切断時荷重値(N/5cm幅)についての10点の平均値を高温雰囲気下での引張強力(N/5cm幅)とした。また、上記条件で得られた切断時の伸度(%)を破断伸度(%)とした。
(8)生分解性:約58℃に維持された熟成コンポスト中に不織布を埋設し、3ヵ月後に取り出し、不織布がその形態を保持していない場合、あるいは、その形態を保持していても引張強力が埋設前の強力初期値に対して50%以下に低下している場合は、生分解性が良好であると評価し○で示した。これに対し、強力が埋設前の強力初期値に対して50%を超える場合は、生分解性能が不良であると評価し×で示した。
[実施例1]
ポリ乳酸重合体として、融点168℃、MFR値20g/10分、L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸(PLA)を用意した。一方、芳香族ポリエステル共重合体として、融点235℃、相対粘度ηrel=1.42、酸成分であるテレフタル酸及びグルタル酸と、グリコール成分であるエチレングリコール及びジエチレングリコールとからなる繰り返し単位の芳香族ポリエステル共重合体(デュポン社製、バイオマックス(R)4027、スルホン酸金属塩は含まず)を用意した。
【0046】
ポリ乳酸系重合体を芯部、芳香族ポリエステル共重合体を鞘部とし、芯部/鞘部=1/1(質量比)である芯鞘型複合断面となるように、またタルク(TA)が溶融ポリ乳酸系重合体中に0.5質量%となるように、個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダー型溶融押し出し機を用いて温度245℃で溶融し、単孔吐出量1.38g/分の条件で溶融紡糸した。
【0047】
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度4500m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。なお、堆積させた複合長繊維の単糸繊度は3.0dtexであった。
【0048】
次いで、このウエブを、エンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付100g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を140℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20点/cm、圧接面積率15%のものを用いた。得られた不織布の性能を表1に示す。
【0049】
【表1】

[実施例2]
芯部のポリ乳酸系重合体と鞘部の芳香族ポリエステル共重合体との複合比を質量比で芯部/鞘部=2/1とし、牽引速度を5000m/分とした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を得た。得られた不織布の性能を表1に示す。
[実施例3]
芯部のポリ乳酸系重合体と鞘部の芳香族ポリエステル共重合体との複合比を質量比で芯部/鞘部=1/2とし、牽引速度を4000m/分とした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を得た。得られた不織布の性能を表1に示す。
[実施例4、5]
実施例4では、不織布の目付を50g/mとした。実施例5では、不織布の目付を130g/mとした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を得た。得られた不織布の性能を表1に示す。
[実施例6]
単孔吐出量を3.6g/分とし、また牽引速度を4600m/分として、長繊維の繊度を7.7dtexとした。またタルクに代えて二酸化チタン(TI)を20質量%練り込んだマスターバッチを用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を得た。得られた不織布の性能を表1に示す。
[実施例7]
実施例1で用いた芳香族ポリエステル共重合体とポリ乳酸系重合体とを用意した。
【0050】
次に、芳香族ポリエステル共重合体とポリ乳酸系重合体との複合比が、質量比で、芳香族ポリエステル共重合体/ポリ乳酸系重合体=1/1となるように、またタルクがポリ乳酸系重合体中に0.5質量%となるように、個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダー型溶融押し出し機を用いて温度245℃で溶融した。そして、図1に示すように、得られる繊維が芯部1と6つの突起状の葉部2とを有する紡糸口金を用いて、ポリ乳酸系重合体が芯部1となり芳香族ポリエステル共重合体が葉部2となるように、単孔吐出量1.38g/分の条件で溶融紡糸した。
【0051】
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下に設けたエアーサッカーにて牽引速度4500m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。なお、堆積させた複合長繊維の単糸繊度は3.0dtexであった。
【0052】
次いで、このウエブを、エンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付100g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を135℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20点/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。得られた不織布の性能を表1に示す。
[実施例8]
ポリ乳酸重合体として、融点168℃、MFR20g/分、L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸を用意した。一方、芳香族ポリエステル共重合体として、融点200℃、相対粘度ηrel=1.39、酸成分であるテレフタル酸及びグルタル酸及びスルホン酸金属塩とグリコール成分であるエチレングリコール及びジエチレングリコールとからなる繰り返し単位の芳香族ポリエステル共重合体(デュポン社製、バイオマックス(R)4026)を用意した。
【0053】
ポリ乳酸系重合体を芯部、芳香族ポリエステル共重合体を鞘部とし、芯部/鞘部=1/1(質量比)である芯鞘型複合断面となるように、またタルクが溶融ポリ乳酸系重合体中に0.5質量%となるように、個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダー型溶融押し出し機を用いて温度230℃で溶融し、単孔吐出量1.38g/分の条件で溶融紡糸した。
【0054】
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度4000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。なお、堆積させた複合長繊維の単糸繊度は3.4dtexであった。
【0055】
次いで、このウエブを、エンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付100g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を140℃とし、エンボスロールは個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20点/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。得られた不織布の性能を表1に示す。
[比較例1]
ポリ乳酸重合体として、融点168℃、MFR60g/分、L−乳酸/D−乳酸=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸を用意した。この重合体に添加剤としてタルクを0.5質量%配合した。このポリ乳酸系重合体とタルクとの混合物を、丸型の紡糸口金より、紡糸温度220℃、単孔吐出量1.67g/分の条件下で単相で溶融紡糸した。
【0056】
そして紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度5000m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。堆積させた単相の長繊維の単糸繊度は3.3dtexであった。
【0057】
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付100g/mのポリ乳酸系長繊維不織布を得た。熱エンボス条件としては、両ロールの表面温度を135℃とし、エンボスロールは個々の面積が0.6mmの円形の彫刻模様で、圧接点密度が20点/cm、圧接面積率が15%のものを用いた。得られた不織布の性能を表1に示す。
【0058】
本発明の実施例1〜8の不織布は、常温下での引張強力に優れ、また適度の伸度を有していた。かつ、高温雰囲気下においても引張強力・伸度ともに実用的なものであった。一方、比較例1の不織布は、常温下での引張強力は優れるものの、高温雰囲気下での強力の低下が大きいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を構成する多葉複合型の繊維の横断面の一例を示す図である。
【図2】本発明の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布を構成する多葉複合型の繊維の横断面の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 芯部
2 葉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体とを含む複合長繊維を構成繊維とし、前記ポリ乳酸系重合体は融点が150℃以上であり、前記芳香族ポリエステル共重合体は、前記ポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分とし、前記複合長繊維の複合形態は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合形態であるか、または、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合形態であることを特徴とする耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布。
【請求項2】
ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体との複合比(質量比)が、ポリ乳酸系重合体/芳香族ポリエステル共重合体=3/1〜1/3であることを特徴とする請求項1記載の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布。
【請求項3】
酸成分としてスルホン酸金属塩を含むことを特徴とする請求項1または2記載の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布。
【請求項4】
130℃でのタテ方向の最大強力を目付で除した値が0.5〜1.5(N/5cm幅)/(g/m)であり、かつ130℃での破断時のタテ方向の伸度が30%以上であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布。
【請求項5】
ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体とを含む複合繊維であって、前記ポリ乳酸系重合体は融点が150℃以上であり、前記芳香族ポリエステル共重合体は、前記ポリ乳酸系重合体よりも高融点であるとともに、酸成分としてのテレフタル酸及び脂肪族ジカルボン酸とグリコール成分としてのエチレングリコール及びジエチレングリコールとを含む繰り返し単位を構成成分とし、前記複合繊維の複合形態は、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合形態であるか、または、ポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、芳香族ポリエステル共重合体が芯部の外周を取り囲むように複数の突起状の葉部を形成した多葉複合形態であることを特徴とする耐熱性ポリ乳酸系複合繊維。
【請求項6】
ポリ乳酸系重合体と芳香族ポリエステル共重合体との複合比(質量比)が、ポリ乳酸系重合体/芳香族ポリエステル共重合体=3/1〜1/3であることを特徴とする請求項5記載の耐熱性ポリ乳酸系複合繊維。
【請求項7】
酸成分としてスルホン酸金属塩を含むことを特徴とする請求項5または6記載の耐熱性ポリ乳酸系複合繊維。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−9358(P2007−9358A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190811(P2005−190811)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】