説明

耐熱PET容器およびその製造方法

【課題】 結晶状態の異なるPETを積層構成することによって、耐熱性、耐衝撃性の優れた耐熱PET容器を提供すること。
【解決手段】 容器本体が、少なくとも非晶性PETと熱結晶化された結晶性PETを含む積層体によって形成されていることを特徴とし、容器本体が、内側層に非晶性PET、外側層に熱結晶化された結晶性PETを配置した二層の積層体によって形成されている。製造方法は、非晶性PETと結晶性PETとの各層が非晶状態である積層シートを、結晶性PETが容器の外側に配置されるようにして結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を結晶性PETの結晶化温度に加熱して、結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱PET容器に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】PETを素材とした樹脂シートを熱成形した深絞り容器は、従来より知られているが、以下述べるような問題点があるため、耐熱性、耐衝撃性を有する耐熱容器を得ることは困難であった。
【0003】熱成形による容器は比較的小型容器であるため、延伸倍率が低いので、充分な配向結晶化が得られず、耐熱性、剛性を大きくすることができなかった。また、耐熱性を向上させるために、加熱金型でヒートセットを行うと、内部応力や熱収縮のために容器の寸法精度が悪いという問題があった。また、結晶化すると、耐衝撃性が低くなり、割れやすくなったり、ヒートシール性も悪くなるという問題等がある。
【0004】耐熱PETトレーの成形に使用される結晶化促進核剤入りの結晶性PET(CーPET)は、トレーと同じような成形プロセスではカップのような深絞り成形ができない。
【0005】本発明は、上記の問題を解決することを課題とし、結晶状態の異なるPETを積層構成することによって、耐熱性、耐衝撃性の優れた耐熱PET容器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するため、耐熱PET容器として、容器本体が、少なくとも非晶性PETと熱結晶化された結晶性PETを含む積層体によって形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【0007】具体的な積層体として、二層構成の場合に、容器本体が、内側層に非晶性PET、外側層に熱結晶化された結晶性PETを配置した二層の積層体によって形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【0008】また、具体的な積層体として、三層構成の場合に、容器本体が、内側層と外側層に非晶性PET、中間層に熱結晶された結晶性PETを配置した三層の積層体によって形成されていることを特徴とする構成、或いは、容器本体が、内側層に非晶性PET、中間層に熱結晶化されたリサイクルPET、外側層に熱結晶化された結晶性PETを配置した三層の積層体によって形成されていることを特徴とする構成を採用する。
【0009】耐熱PET容器の製造方法として、非晶性PETと結晶性PETとの各層が非晶状態である積層シートを、結晶性PETが容器の外側に配置されるようにして結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を結晶性PETの結晶化温度に加熱して、結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする構成を採用する。
【0010】製造方法の別実施形態として、内外側に非晶性PET、中間層に結晶性PETを配置し、各層が非晶状態である積層シートを、結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を結晶性PETの結晶化温度に加熱して、結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする構成を採用する。
【0011】また、製造方法の他の実施形態として、非晶性PETと、リサイクルPETと結晶性PETとを順次積層した積層シートを、結晶性PETが容器の外側に配置されるようして結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を、結晶性PETの結晶化温度に加熱して、リサイクルPETと結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする構成を採用する。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明第1実施形態の耐熱PET容器について、図面を参照して説明する。図1において、Aは、耐熱PET容器の容器本体であり、該容器本体Aは、胴壁1と底壁2および胴壁1上端に設けられた環状の上周縁3とからなっている。
【0013】容器本体Aは、PETを素材樹脂とし、内側層4と外側層5の二層の積層体によって形成されている。内側層4は、非晶性PETで非晶状態のPETである。外側層5は、結晶性PETで、熱成形された後に加熱され、熱結晶化された結晶状態のPETである。
【0014】次に、上記耐熱PET容器の製造方法について説明する。容器の成形は、各層が非晶状態である非晶性PETと結晶性PETとの積層シートを、結晶性PETが容器の外側に配置されるようにし、通常の熱成形機を用い、結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形し、全てが非晶状態の容器を成形する。
【0015】次に、容器の結晶化工程について説明する。図2に示すように、熱成形された非晶質の容器を、容器内側と同形状のコア10とフランジ11とを具えた治具12に嵌挿し、吸引孔13を通じて真空吸引して治具12に締着させ、次いで、容器を回転させ、ヒーター14によって結晶性PETの結晶化温度(実施例では120゜C以上)の温度に加熱する。外側の結晶性PETは、熱結晶化し、内側層4の非晶性PETは非晶状態のままである。
【0016】外側層5は、熱結晶化したことによって耐熱性が付与され、色は透明から白色になる。その際、容器を治具12に吸引締着しているので、内部応力や熱収縮のために容器の寸法が変わるということはない。また、加熱装置として、容器と同形状の雄型と雌型を用いて型締めして、結晶化温度に加熱してもよい。
【0017】次に、耐熱PET容器の作用効果について説明する。耐熱容器の外側層5が熱結晶化PETであるので、耐熱性、剛性が付与される。 また、外側層5は熱結晶化により、透明から白色に変わるため着色する必要はない。内側層4は非晶状態であるため、耐熱容器に耐衝撃性を付与される。また、この耐熱PET容器には、内容物を収納した後に、被蓋フィルムを上周縁3にヒートシールするようにしているが、上周縁3上面は非晶性PETであるので、ヒートシール性は損なわれない。
【0018】容器の廃棄にあたって、使用している樹脂はPETだけであるので、樹脂のリサイクルが可能である。
【0019】次に、本発明第2実施形態の耐熱PET容器について説明する。本実施形態は、容器本体の層構成を三層としたものである。図3において、Aaは第1実施形態と同様の容器本体であり、容器本体Aaは、内側層20、中間層21、外側層22の三層から構成されている。内側層20と外側層22は非晶性PET、中間層21は結晶化された結晶性PETである。
【0020】耐熱PET容器の成形は、両外側に非晶性PET、中間層に結晶性PETを三層積層した各層が非晶状態の積層シートを、結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで第1実施形態と同様にして、結晶性PETの結晶化温度以上に加熱して中間層21の結晶性PETを熱結晶化させる。かくして、耐熱PET容器が得られる。
【0021】本実施形態の耐熱容器は、前記第1実施形態と同様の作用効果がもたらされるが、さらに、外側層22が非晶性PETで透明であることによって、耐衝撃性とデザイン性の優れた耐熱容器が得られる。
【0022】次に、第3実施形態の耐熱容器について説明する。本実施形態は、耐熱容器の層構成を三層とし、結晶性PETを主とするリサイクルPETを用いたものである。
【0023】図4において、Abは第1実施形態と同様の容器本体であり、該容器本体Abは、内側層30、中間層31、外側層32の三層から構成されている。内側層30は非晶性PET、中間層31は熱結晶化されたリサイクルPET、外側層32は熱結晶化された結晶性PETである。
【0024】耐熱PET容器の成形は、非晶性PET、リサイクルPET、結晶性バージンPETを順次積層した各層が非晶状態の積層シートを、結晶性PETが容器の外側層となるようにして結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することにより容器を成形し、次いで成形された容器を加熱装置により結晶性PETの結晶化温度以上に加熱する。かくして、中間層31と外側層32が熱結晶化された耐熱PET容器が得られる。また、中間層にリサイクルPET、外側層にCーPETを用いてもよい。
【0025】本実施形態の耐熱PET容器は、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるが、さらに、リサイクルPETを用いることによって、資源の再利用、節減に貢献することができる。
【0026】
【発明の効果】本発明は、上記のように構成されているから、次の効果を奏する。非晶性PETと熱結晶化された結晶性PETとの積層体によって容器本体を形成しているから、耐熱性と剛性、耐衝撃性に優れた耐熱PET容器が得られた。
【0027】各層が非晶状態にある非晶性PETと結晶性PETの積層シートから、結晶性PETの結晶化温度以下の温度で成形するから、深絞り成形が容易にできるようになった。
【0028】また、三層の積層シートから成形するときには、リサイクルPETを利用することができるようになり、資源の再利用に貢献することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の耐熱PET容器の説明図で、(a)は容器本体の断面正面図、(b)は容器本体壁面の断面図である。
【図2】加熱装置の説明図である。
【図3】第2実施形態の容器本体壁面の断面図である。
【図4】第3実施形態の容器本体壁面の断面図である。
【符号の説明】
A、Aa、Ab 容器本体
1 胴壁
2 底壁
3 上周縁
4、20、30 内側層
5、22、32 外側層
10 コア
11 フランジ
12 治具
13 吸引孔
14 ヒーター
21、31 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 容器本体が、少なくとも非晶性PETと熱結晶化された結晶性PETを含む積層体によって形成されていることを特徴とする耐熱PET容器。
【請求項2】 容器本体が、内側層に非晶性PET、外側層に熱結晶化された結晶性PETを配置した二層の積層体によって形成されていることを特徴とする耐熱PET容器。
【請求項3】 容器本体が、内側層と外側層に非晶性PET、中間層に熱結晶された結晶性PETを配置した三層の積層体によって形成されていることを特徴とする耐熱PET容器。
【請求項4】 容器本体が、内側層に非晶性PET、中間層に熱結晶化されたリサイクルPET、外側層に熱結晶化された結晶性PETを配置した三層の積層体によって形成されていることを特徴とする耐熱PET容器。
【請求項5】 非晶性PETと結晶性PETとの各層が非晶状態である積層シートを、結晶性PETが容器の外側に配置されるようにして結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を結晶性PETの結晶化温度に加熱して、結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする耐熱PET容器の製造方法。
【請求項6】 内外側に非晶性PET、中間層に結晶性PETを配置し、各層が非晶状態である積層シートを、結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を結晶性PETの結晶化温度に加熱して、結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする耐熱PET容器の製造方法。
【請求項7】 非晶性PETと、リサイクルPETと結晶性PETとを順次積層した積層シートを、結晶性PETが容器の外側に配置されるようして結晶性PETの結晶化温度以下の温度で熱成形することによって容器を成形し、次いで成形された容器を、結晶性PETの結晶化温度に加熱して、リサイクルPETと結晶性PETを熱結晶化させたことを特徴とする耐熱PET容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−11947(P2003−11947A)
【公開日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−199952(P2001−199952)
【出願日】平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】