耐震防火外壁、該耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法
【課題】新築、改修にかかわらず、建物の外壁側から簡易に耐震性及び耐火性を向上した構造とすることができる木造住宅の耐震防火外壁、該耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法を提供する。
【解決手段】耐震性及び防火性を有する建物1の外壁10、20であって、柱8、8、8又は間柱9に留め付けられる長尺部材である胴縁11、11、…と、胴縁に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材12、12、…とを備え、外装面材の胴縁への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材13、13、…により行われることを特徴とする。
【解決手段】耐震性及び防火性を有する建物1の外壁10、20であって、柱8、8、8又は間柱9に留め付けられる長尺部材である胴縁11、11、…と、胴縁に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材12、12、…とを備え、外装面材の胴縁への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材13、13、…により行われることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震性及び防火性を簡易な構造で向上させることができる耐震防火外壁、該耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅において、その維持に関して最も配慮すべき事項は、耐震性能と防火性能であり、いずれも住宅そのものの存続に大きな影響を及ぼす。特に、近年において地震への対策に関心が高まる中、耐震性のみでなく、地震時において生じる火災に対する防火性が重要であることは広く認識されているところである。
【0003】
住宅建物に耐震性及び防火性を付加することについては、耐震パネルの取り付け、及び耐火ボードの設置により従来から行われており、新築住宅では、新築時に様々なこれら耐震構造や耐火構造を各部分に適用することができる。一方、既存の建物に関しても耐震性、及び防火性を向上させたいとの要望は強く、これについては改修、改築により対策がとられる。
【0004】
従来における耐震壁構造への改修は、室内側の壁を取り除き耐力面材を取り付けたり、天井や床も剥がして筋交いを設けたりするものであった。また、特許文献1にはこれら従来のものに比べ改修が比較的容易である改修耐震構造が開示されている。
【0005】
また、防火性を向上するための改修は、いわゆる耐火面材を配置することにより行われ、例えば特許文献2には、柱の室外側に耐火面材、発泡樹脂断熱材、及び塗装部を積層させることが開示されている。
【特許文献1】特開2005−232713号公報
【特許文献2】特開2005−282255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2からもわかるように、耐震性向上と防火性向上とは全く別の改修である。新築、及び改修のいずれにおいても、従来では耐震性向上には耐震パネル、防火性向上には耐火パネルを取り付けるので、各々につき材料の購入、及び施工が必要であり、工事費及び工期ともに増大せざるを得なかった。
【0007】
また改修においては、特許文献1のような耐震改修は室内側からの改修が前提とされており、一方、特許文献2のような防火性向上は室外側から改修が行われている。すなわち、耐震性向上と防火性向上とを同時に行おうとすると室内外いずれの方からも行う場合があり、非常に大掛かりな工事となることがあった。
【0008】
特に室内側からの工事では改修を行うためには、1つの部屋に留まらず、部屋を変えながら、又は各部屋同時に改修を進める必要がある。従って、改修中には居住者に大きな負担を与えることが問題となっていた。具体的には、改修施工場所を確保するための室内に配置された生活用具各種の物の移動、改修工事により生じる塵埃等を挙げることができ、また改修工事中には居住者は家を留守にすることができなかった。
【0009】
そこで本発明は、新築、改修にかかわらず、建物の外壁側から簡易に耐震性及び耐火性を向上した構造とすることができる木造住宅の耐震防火外壁、該耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、耐震性及び防火性を有する建物(1)の外壁(30)であって、柱(8、8、8)又は間柱(9)のうち少なくとも2本の柱又は間柱を渡して該柱又は間柱に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(31、31)を備え、外装面材の柱又は間柱への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により行われることを特徴とする耐震防火外壁を提供することにより前記課題を解決する。
【0012】
ここで「留め付ける」とは固定することを意味し、単に「引掛ける」の意味を含まない概念である。また「セルフドリリング形状」とは、材料を除去しつつ進行することができる形状を意味し、これには例えばドリル刃等を挙げることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、耐震性及び防火性を有する建物(1)の外壁(10、20)であって、柱(8、8、8)又は間柱(9)に留め付けられる長尺部材である胴縁(11、11、…)と、胴縁に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(12、12、…)とを備え、外装面材の胴縁への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により行われることを特徴とする耐震防火外壁を提供することにより前記課題を解決する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の耐震防火外壁(20)における複数の外装面材(12、12、…)は、隣り合う少なくとも2枚の該外装面材同士が共通する1つの連結部材(21)により連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐震防火外壁(10、20、30)における外装面材(12、12、…)の少なくとも固定部材(13、13、…)が取り付けられる部分の表面には網状の面材を含有する補強シート(40)が貼り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐震防火外壁(10、20、30)を備えることにより耐震性及び防火性が向上された建物(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【0017】
請求項6に記載の発明は、耐震性及び防火性が向上された建物(1)の外壁(30)の施工方法であって、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(31、31)を柱(8、8、8)又は間柱(9)に先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により留め付ける工程を含む耐震防火外壁の施工方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0018】
請求項7に記載の発明は、耐震性及び防火性が向上された建物(1)の外壁(10、20)の施工方法であって、柱(8、8、8)又は間柱(9)に長尺部材である胴縁(11、11、…)を留め付ける工程と、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(12、12、…)を胴縁に先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により留め付ける工程と、を含む耐震防火外壁の施工方法により前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来必要であった耐震面材、及び耐火面材の量を減らす、又は使用をなくすことができ、耐震壁及び防火壁と仕上げ外装とを兼ねており、部材の削減をし、その発注、運搬、及び施工を省略することができるので、利便性の高い改修耐震防火外壁を提供することが可能となる。従来における外装面材は、金具等により単に引掛ける、又は係止するように取り付けられることが多く、耐震、防火に関しての効果は小さかった。
【0020】
加えて、改修の場合には、耐震、防火壁への改修をいずれも室外側から行うことができ、居住者、及び施工者のいずれもが自己の作業を平行して進めることが可能となるので利便性が向上する。
【0021】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0023】
図1は第一実施形態に係る本発明の耐震防火外壁10を備える木造の建物1を模式的に示した斜視図である。建物1は、2階建ての住宅であり、1階には窓4、4、5が設けられ、2階には窓3が備えられている。また外観を形成する壁は図1に斜線で示した部位に本発明の耐震防火外壁10を有している。また、図1には耐震防火外壁10の屋内側に配設され、1階と2階との境目を形成する構造部材の1つである梁6、6を破線で示した。従って梁6、6の下方が1階部分、梁6、6の上方が2階部分である。これを見てわかるように、本発明の耐震防火外壁10は、1階部分、及び2階部分のいずれにも形成される外壁である。
【0024】
以下に、さらに詳しく説明する。図2は耐震防火外壁10を屋外正面から見た図で、その一部を表している。ここではわかり易さのため、サイディング(外装面材)12、12、…は斜線を付すとともに透明に示している。また図2に表したサイディング12、12、…の左右、及び上方にも同様にサイディング12、12、…が並列されているが、ここでは省略している。図3は図2に示した耐震防火外壁10の垂直断面である。図3では紙面左が室外側、紙面右が室内側を示している。
【0025】
本発明の耐震防火外壁10は、胴縁11、11、…、外装面材としてのサイディング12、12、…、防水シート14、及び水切り15、16を備えている。始めに各構成部材について説明し、その後にこれら部材の配置等について説明する。
【0026】
胴縁11、11、…は、柱8、8、8間より長い複数の棒材で、通常の建物に用いられる胴縁と同じものである。その中でも材質は繊維方向に割れ難いものが好ましく、合板、OSB(配向性ストランドボード)、LVL(Laminated Veneer Lumber)等を挙げることができる。
【0027】
サイディング12、12、…は外壁面を形成する外装面材であり、所定の大きさを有する矩形の板状の部材である。サイディング12、12、…の屋外側面は模様や色彩が付されており、いわゆる意匠面とされて外装の役割を有している。本発明に用いられるサイディングの種類は特に限定されるものではなく通常利用することができるあらゆるサイディングを用いることが可能である。これには例えばその材質により、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、及び金属系サイディングを挙げることができる。この中でも耐震、防火性の観点、及び後述するように留め付け時や地震による変形時における割れ等の観点から本発明では窯業系サイディング、及びセラミック系サイディングで大きな効果を奏するものとなる。
【0028】
本実施形態におけるサイディング12、12、…はその長手方向が梁6と梁7とを掛け渡せる長さを有している。また、その厚さは厚いことによりサイディング12、12、…自体に耐震性、防火性を有するものとなり、14mm以上であることが好ましい。さらに、機械的強度の高いもの、及び軽量等の施工性が良好であることがさらに好ましい。機械的強度に関してはJIS A5422で規定されている曲げ強度690N以上であることが好ましい。
【0029】
またサイディング12、12、…は建物外装を形成するものではあるが、さらに室外側に若干の仕上げ処理を施してもよい。これによりさらに建物の意匠性を向上させることができる。
【0030】
防水シート14は、屋外側の湿気から室内を保護するシートであり、かかる目的のものであれば特に限定されるものではない。その中でも好ましくは透湿防水シートと呼ばれ、室内側から屋外側へ湿度を透過させることができるが、屋外側からの雨水等は遮断するシートを挙げることができる。
【0031】
水切り15、16は、クランク状の断面を有する長尺部材である。水切り15、16の材質は特に限定されるものではないが、スチール、アルミニウム、及びステンレス鋼等の金属であることが好ましい。
【0032】
次に上記各構成部材の配置について説明する。胴縁11、11、…は複数の長尺の棒状部材で、既に備えられている柱8、8、8を渡すように該柱8、8、8の屋外側に垂直方向に所定の間隔を有して水平に固定されている。この中で最も上に配置される胴縁11は梁6の長手方向に沿って該梁6の屋外側に取り付けられる。また、最も下に配置される胴縁11は梁7の長手方向に沿って該梁7の屋外側に取り付けられる。胴縁11、11、…の柱8、8、8、又は梁6、7への取り付け方法は特に限定されるものではないが、好ましい固定方法として、ビス止め時を挙げることができる。ここで、胴縁11、11、…が上記のように繊維方向に割れ難い材質により形成されていると、ビス止めや地震時に胴縁11、11、…が繊維方向に割れることを抑制することができる。割れが生じると耐震性に影響を与える場合があり、このように割れを抑制することにより耐震性をさらに向上させることが可能となる。また、割れを生じるとここに取り付けられるサイディング12、12、…間に隙間を生じる可能性があり、これを抑制することにより防火性を向上させることができる。
【0033】
本実施形態では胴縁11、11、…は柱8、8、8間を渡すように垂直方向に並列されているが、これに限定されるものではない。図4(a)、図4(b)に変形例、及びさらなる変形例を示した。図4(a)、図4(b)では、見易さのためサイディングの記載を省略している。図4(a)に変形例を示したように、梁6、7に沿って水平に取り付けられた2本の胴縁11a’、11a’と、柱8、8、8、及び間柱9、9に沿って垂直に取り付けられた胴縁11b’、11b’、…とにより形成されていてもよい。また、図4(b)にさらなる変形例を示したように、梁6、7に沿って水平に取り付けられた2本の胴縁11a’’、11a’’と、これら2本の胴縁11a’’、11a’’間を渡すように並列された胴縁11b’’、11b’’、…とにより形成されていても良い。いずれの胴縁の構成を用いるかについては施工される外装面材の種類や施工される建物の柱の態様等によって適宜選択される。
【0034】
防水シート14は、ステープル、タッカー、釘、テープ、及び接着等で柱8、8、8に取り付けられる。
【0035】
サイディング12、12、…は胴縁11、11、…に留め付けられて固定される。本発明の耐震防火外壁10では、複数の矩形のサイディング12、12、…の長手方向を鉛直にして並列し、胴縁11、11、…に固定されている。これにより、サイディング12、12、…が外装材であるだけでなく、住宅の耐震性を大きく向上させるとともに、防火性を向上させることも可能となる。また、外装材を兼ねるので外装の取り扱いの困難を生じることはなく、改修である場合には室外側からの耐震及び防火を向上させる改修ができるようになった。
【0036】
さらに詳しくは次の通りである。図2にAで示した部分に注目した図を図5に、示した。図5(a)は屋外側正面視、図5(b)は固定部材13を含む垂直断面図である。これにより、サイディング12、12、…の胴縁11、11、…への留め付けの態様を説明する。本実施形態において、サイディング12、12、…の胴縁11、11、…への留め付けは、固定部材13、13、…により行われる。そして当該固定部材13、13、…は先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウである。当該先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウを図5(a)、図5(b)に示したように取り付けることによりサイディング12、12、…の胴縁11、11、…へ留め付ける。
【0037】
先端がセルフドリリング形状でない固定部材を用いる場合、固定部材をサイディングや胴縁に取り付けると留め付け過程において材料を押しのけるように固定部材が材料に侵入する。これにより材料に亀裂が生じ、又は亀裂が生じなくても内部応力が大きくなる。一方、先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウでは、材料を除去(切削)しながらサイディング12、12、…、及び胴縁11、11、…に侵入するので、留め付けの過程で亀裂が生じたり、内部応力が大きくなったりすることがない。
【0038】
すなわち、サイディング12、12、…は図6に模式的に示したように地震時には、建物1の揺れに伴って変形し、図6に矢印Cで示したように固定部材が取り付けられた位置Bが移動する。このとき位置Bが最初から亀裂を有していたり、内部応力が大きくなっていたりすると割れが生じる。割れが生じると耐震性は低下するのみでなく、サイディング12、12、…間に隙間等を生じるので防火性も著しく低下する。これに対して本発明に備えられるサイディングでは固定部材が取り付けられる位置にこのような亀裂が生じ難く、耐震性、及び防火性を高く維持することが可能である。これにより耐震性、及び防火性を向上させることができ、本来は必要である耐震面材及び耐火面材の使用量を減らすことができ、場合によっては使用しなくてもよいものとすることができる。
【0039】
図2、及び図3に戻り説明を続ける。水切り15、16は、並列されたサイディング12、12、…の上下端に沿って水平とされ、柱8、8、8に固定される。固定の方法は特に限定されるものではないが、ビスや釘を用いることができる。水切り15、16は、図3によく表れているように、クランク状である断面の一端をサイディング12、12、…より室内側に、他端をサイディング12、12、…より屋外側に配置する。これによりサイディング12、12、…の室内側を伝ってきた雨水等の水を適切に屋外へ排出することができる。
【0040】
以上のような各構成部材、及びその配置により本発明の耐震防火外壁10は上記した効果を奏するものとなる。以上説明した耐震性、耐火性の評価は様々な方法でおこなうことができる。これには例えば耐震性であれば、財団法人建材試験センターが発行する「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載される試験方法に準じて試験を行い、同センターが発行する「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載されている壁倍率評価に基づき「壁強さ倍率」を求めることにより評価することができる。また、防火性については、同じく財団法人建材試験センターが発行する「防耐火性能試験・評価業務方法書」に準じて評価をすることができる。
【0041】
図7には、第一実施形態の耐震防火外壁10の他の例である耐震防火外壁10’を示した。耐震防火外壁10’は、サイディング12’、12’、…が長手方向を水平にして垂直方向に並列されており、この点で耐震防火外壁10と異なる。このようにサイディング12’、12’、…が水平に配置されるものであってもよい。
【0042】
図8は、第二実施形態に係る本発明の耐震防火外壁20を説明するための図である。理解容易のため、第一実施形態の耐震防火外壁10の説明がそのまま該当する部材に関しては、耐震防火外壁10と同じ符号を付している。図8は、耐震防火外壁20における図2に相当する図である。
【0043】
耐震防火外壁20は、耐震防火外壁10に加えて連結部材21を備えている。図9に連結部材21が取り付けられた部分に注目した垂直断面図を示した。図8、9に表れているように、連結部材21は略クランク状の断面を有した長尺部材で、サイディング12、12、…の上端を掛け渡すように水平に配置される。このとき連結部材21のクランク状の断面における一片21aは柱8、8、8に固定されるとともに、他の一片21bはサイディング12、及び胴縁11と固定部材(先端がセルフドリリング形状であるコーチスクリュウ)13により固定される。
【0044】
ここで、連結部材21と、サイディング12、12、…との固定は、複数のサイディング12、12、…のうちから選ばれる2つ以上で行われれば良い。ただし、より高い耐震強度、及び防火性を備えるために可能な限り多くのサイディング12、12、…が1つの連結部材21と固定されることが好ましい。以上の連結部材21により複数のサイディング12、12、…の一端が連結される。これにより、地震時に水平外力(横揺れ)に対してサイディングの変形を抑制することができ、さらに耐震強度を向上させることが可能となる。また、当該変形を抑制することによりサイディング12、12、…の割れも防止して防火性能も向上させることができる。
【0045】
また、連結部材21は図9からもわかるように、その断面が図3に表れる水切り15、16に似た形状を有している。従って連結部材21は水切りの役割を果たすこともでき、この部分には水切りを配設する必要がないので、使用する部材を削減することもできる。
【0046】
図10は、図7に示した耐震防火外壁10’に対応する第二実施形態の変形例である耐震防火外壁20’である。耐震防火外壁20’では、サイディング12’、12’、…の左右両端のそれぞれが連結部材21’、21’で連結されている。これによっても上記と同様にサイディング12’、12’、…の変形を抑制することができ、耐震強度を向上させることが可能となる。また、当該変形を抑制することによりサイディング12’、12’、…の割れも防止することができ、防火性能も向上させることができる。
【0047】
以上説明した各実施例では、サイディングは柱に取り付けられた胴縁に固定されたものである。さらなる他の実施の形態として、胴縁を備えることなく柱に直接サイディングを固定することにより本発明の耐震防火外壁を構成することも可能である。図11に第三実施形態に係る本発明の耐震防火外壁30を示した。これは図2に対応する図である。ここでは耐震防火外壁10と同じ構成の部材には同じ符号を付した。
【0048】
耐震防火外壁30は、図11からもわかるように胴縁が備えられておらず、サイディング31、31が直接柱8、8、8に固定されている。これによっても本発明の耐震防火外壁とすることができ、上記効果を奏することができる。
【0049】
以上説明した本発明の耐震防火外壁10〜30では、サイディングの裏面(屋内側に配置される側の面)で、図12にDで示した固定部材13、13、…が設けられる部分に補強シート40を貼り付けてもよい。これにより地震時におけるサイディングの変形に対してもさらに割れ等を防止することができ、これによっても耐震性、及び防火性を向上させることが可能となる。補強シート40の材料は切れ難い、裂け難い材料であれば特に限定されるものではないがこれには例えばメッシュシート(網状材を備えたシート)を挙げることができる。
【0050】
以上のような本発明の耐震防火外壁によれば、従来必要であった耐震面材、及び耐火面材の使用量を減らす、又は場合によっては使用をなくすことができ、部材の削減、発注、運搬、施工等を省略することができ、これについても利便性の高い改修耐震外壁を提供することが可能となる。
【0051】
さらには、本発明の耐震防火外壁は、建物の改修の場合には、耐震及び防火の改修を屋外側のみから行うことができ、居住者、及び施工者いずれも自己の作業を平行して進めることができるので、利便性が向上する。
【0052】
これらは施工方法にも効果を奏し、より簡易に耐震防火外壁を施工することが可能となった。以下に1つの実施形態にかかる耐震防火外壁の施工方法(S0)について説明する。図13に改修耐震防火外壁の施工方法S0のフロー図を示した。本実施形態の施工方法S0は建物の改修により上記した耐震防火外壁を施工する方法である。
【0053】
耐震防火外壁の施工方法S0は、既存外壁撤去工程S1、防水シート取り付け工程S2、水切り取り付け工程S3、胴縁取り付け工程S4、及びサイディングの取り付け工程S5を有している。既存外壁撤去工程S1は、従来の既存の外壁であるモルタルや横材を取り除く工程である。
【0054】
防水シート取り付け工程S2は、既存外壁の撤去により表れた部分に防水シートを取り付け工程である。また、水切り取り付け工程S3は既存柱に水切りを取り付ける工程である。
【0055】
胴縁取り付け工程S4は胴縁を、サイディング取り付け工程S5はサイディングをそれぞれ上記した配置に取り付ける工程である。
【0056】
上記した第三実施形態の改修耐震外壁30では、胴縁を取り付ける工程を必要としないので、胴縁取り付け工程S4を省略することが可能である。また、本発明の耐震防火外壁の施工方法は、改修に限定されることなく、新築の建物にも適用することができる。このときには、既存外壁撤去工程S1が省略される。
【0057】
以上、現時点においてもっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う耐震防火外壁、耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第一実施形態に係る本発明の耐震防火外壁が備えられた住宅の外観斜視図である。
【図2】図1に示した耐震防火外壁の一部を示す外観正面図である。
【図3】図2に示した耐震防火外壁の垂直断面図である。
【図4】胴縁の配置の変形例を説明する図である。
【図5】固定部材よるサイディングの取り付けを説明するための図である。
【図6】サイディングが地震により変形することを説明するための図である。
【図7】第一実施形態の耐震防火外壁の変形例を説明するための図である。
【図8】第二実施形態に係る本発明の耐震防火外壁を示す図である。
【図9】連結部材の配置を説明するための図である。
【図10】第二実施形態の耐震防火外壁の変形例を説明するための図である。
【図11】第三実施形態に係る本発明の耐震防火外壁を示す図である。
【図12】サイディングに配置される補強シートを説明するための図である。
【図13】本発明の1つの例に係る耐震防火外壁の施工方法のフロー図である。
【符号の説明】
【0059】
1 建物
3、4、5 窓
6、7 梁
8 柱
9 間柱
10 耐震防火外壁
11 胴縁
12 サイディング(外装面材)
13 固定部材(先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウ)
14 防水シート
15、16 水切り
20 耐震防火外壁
21 連結部材
30 耐震防火外壁
31 サイディング(外装面材)
40 補強シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震性及び防火性を簡易な構造で向上させることができる耐震防火外壁、該耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅において、その維持に関して最も配慮すべき事項は、耐震性能と防火性能であり、いずれも住宅そのものの存続に大きな影響を及ぼす。特に、近年において地震への対策に関心が高まる中、耐震性のみでなく、地震時において生じる火災に対する防火性が重要であることは広く認識されているところである。
【0003】
住宅建物に耐震性及び防火性を付加することについては、耐震パネルの取り付け、及び耐火ボードの設置により従来から行われており、新築住宅では、新築時に様々なこれら耐震構造や耐火構造を各部分に適用することができる。一方、既存の建物に関しても耐震性、及び防火性を向上させたいとの要望は強く、これについては改修、改築により対策がとられる。
【0004】
従来における耐震壁構造への改修は、室内側の壁を取り除き耐力面材を取り付けたり、天井や床も剥がして筋交いを設けたりするものであった。また、特許文献1にはこれら従来のものに比べ改修が比較的容易である改修耐震構造が開示されている。
【0005】
また、防火性を向上するための改修は、いわゆる耐火面材を配置することにより行われ、例えば特許文献2には、柱の室外側に耐火面材、発泡樹脂断熱材、及び塗装部を積層させることが開示されている。
【特許文献1】特開2005−232713号公報
【特許文献2】特開2005−282255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2からもわかるように、耐震性向上と防火性向上とは全く別の改修である。新築、及び改修のいずれにおいても、従来では耐震性向上には耐震パネル、防火性向上には耐火パネルを取り付けるので、各々につき材料の購入、及び施工が必要であり、工事費及び工期ともに増大せざるを得なかった。
【0007】
また改修においては、特許文献1のような耐震改修は室内側からの改修が前提とされており、一方、特許文献2のような防火性向上は室外側から改修が行われている。すなわち、耐震性向上と防火性向上とを同時に行おうとすると室内外いずれの方からも行う場合があり、非常に大掛かりな工事となることがあった。
【0008】
特に室内側からの工事では改修を行うためには、1つの部屋に留まらず、部屋を変えながら、又は各部屋同時に改修を進める必要がある。従って、改修中には居住者に大きな負担を与えることが問題となっていた。具体的には、改修施工場所を確保するための室内に配置された生活用具各種の物の移動、改修工事により生じる塵埃等を挙げることができ、また改修工事中には居住者は家を留守にすることができなかった。
【0009】
そこで本発明は、新築、改修にかかわらず、建物の外壁側から簡易に耐震性及び耐火性を向上した構造とすることができる木造住宅の耐震防火外壁、該耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、耐震性及び防火性を有する建物(1)の外壁(30)であって、柱(8、8、8)又は間柱(9)のうち少なくとも2本の柱又は間柱を渡して該柱又は間柱に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(31、31)を備え、外装面材の柱又は間柱への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により行われることを特徴とする耐震防火外壁を提供することにより前記課題を解決する。
【0012】
ここで「留め付ける」とは固定することを意味し、単に「引掛ける」の意味を含まない概念である。また「セルフドリリング形状」とは、材料を除去しつつ進行することができる形状を意味し、これには例えばドリル刃等を挙げることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、耐震性及び防火性を有する建物(1)の外壁(10、20)であって、柱(8、8、8)又は間柱(9)に留め付けられる長尺部材である胴縁(11、11、…)と、胴縁に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(12、12、…)とを備え、外装面材の胴縁への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により行われることを特徴とする耐震防火外壁を提供することにより前記課題を解決する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の耐震防火外壁(20)における複数の外装面材(12、12、…)は、隣り合う少なくとも2枚の該外装面材同士が共通する1つの連結部材(21)により連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐震防火外壁(10、20、30)における外装面材(12、12、…)の少なくとも固定部材(13、13、…)が取り付けられる部分の表面には網状の面材を含有する補強シート(40)が貼り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐震防火外壁(10、20、30)を備えることにより耐震性及び防火性が向上された建物(1)を提供することにより前記課題を解決する。
【0017】
請求項6に記載の発明は、耐震性及び防火性が向上された建物(1)の外壁(30)の施工方法であって、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(31、31)を柱(8、8、8)又は間柱(9)に先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により留め付ける工程を含む耐震防火外壁の施工方法を提供することにより前記課題を解決する。
【0018】
請求項7に記載の発明は、耐震性及び防火性が向上された建物(1)の外壁(10、20)の施工方法であって、柱(8、8、8)又は間柱(9)に長尺部材である胴縁(11、11、…)を留め付ける工程と、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材(12、12、…)を胴縁に先端がセルフドリリング形状である固定部材(13、13、…)により留め付ける工程と、を含む耐震防火外壁の施工方法により前記課題を解決する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来必要であった耐震面材、及び耐火面材の量を減らす、又は使用をなくすことができ、耐震壁及び防火壁と仕上げ外装とを兼ねており、部材の削減をし、その発注、運搬、及び施工を省略することができるので、利便性の高い改修耐震防火外壁を提供することが可能となる。従来における外装面材は、金具等により単に引掛ける、又は係止するように取り付けられることが多く、耐震、防火に関しての効果は小さかった。
【0020】
加えて、改修の場合には、耐震、防火壁への改修をいずれも室外側から行うことができ、居住者、及び施工者のいずれもが自己の作業を平行して進めることが可能となるので利便性が向上する。
【0021】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0023】
図1は第一実施形態に係る本発明の耐震防火外壁10を備える木造の建物1を模式的に示した斜視図である。建物1は、2階建ての住宅であり、1階には窓4、4、5が設けられ、2階には窓3が備えられている。また外観を形成する壁は図1に斜線で示した部位に本発明の耐震防火外壁10を有している。また、図1には耐震防火外壁10の屋内側に配設され、1階と2階との境目を形成する構造部材の1つである梁6、6を破線で示した。従って梁6、6の下方が1階部分、梁6、6の上方が2階部分である。これを見てわかるように、本発明の耐震防火外壁10は、1階部分、及び2階部分のいずれにも形成される外壁である。
【0024】
以下に、さらに詳しく説明する。図2は耐震防火外壁10を屋外正面から見た図で、その一部を表している。ここではわかり易さのため、サイディング(外装面材)12、12、…は斜線を付すとともに透明に示している。また図2に表したサイディング12、12、…の左右、及び上方にも同様にサイディング12、12、…が並列されているが、ここでは省略している。図3は図2に示した耐震防火外壁10の垂直断面である。図3では紙面左が室外側、紙面右が室内側を示している。
【0025】
本発明の耐震防火外壁10は、胴縁11、11、…、外装面材としてのサイディング12、12、…、防水シート14、及び水切り15、16を備えている。始めに各構成部材について説明し、その後にこれら部材の配置等について説明する。
【0026】
胴縁11、11、…は、柱8、8、8間より長い複数の棒材で、通常の建物に用いられる胴縁と同じものである。その中でも材質は繊維方向に割れ難いものが好ましく、合板、OSB(配向性ストランドボード)、LVL(Laminated Veneer Lumber)等を挙げることができる。
【0027】
サイディング12、12、…は外壁面を形成する外装面材であり、所定の大きさを有する矩形の板状の部材である。サイディング12、12、…の屋外側面は模様や色彩が付されており、いわゆる意匠面とされて外装の役割を有している。本発明に用いられるサイディングの種類は特に限定されるものではなく通常利用することができるあらゆるサイディングを用いることが可能である。これには例えばその材質により、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、及び金属系サイディングを挙げることができる。この中でも耐震、防火性の観点、及び後述するように留め付け時や地震による変形時における割れ等の観点から本発明では窯業系サイディング、及びセラミック系サイディングで大きな効果を奏するものとなる。
【0028】
本実施形態におけるサイディング12、12、…はその長手方向が梁6と梁7とを掛け渡せる長さを有している。また、その厚さは厚いことによりサイディング12、12、…自体に耐震性、防火性を有するものとなり、14mm以上であることが好ましい。さらに、機械的強度の高いもの、及び軽量等の施工性が良好であることがさらに好ましい。機械的強度に関してはJIS A5422で規定されている曲げ強度690N以上であることが好ましい。
【0029】
またサイディング12、12、…は建物外装を形成するものではあるが、さらに室外側に若干の仕上げ処理を施してもよい。これによりさらに建物の意匠性を向上させることができる。
【0030】
防水シート14は、屋外側の湿気から室内を保護するシートであり、かかる目的のものであれば特に限定されるものではない。その中でも好ましくは透湿防水シートと呼ばれ、室内側から屋外側へ湿度を透過させることができるが、屋外側からの雨水等は遮断するシートを挙げることができる。
【0031】
水切り15、16は、クランク状の断面を有する長尺部材である。水切り15、16の材質は特に限定されるものではないが、スチール、アルミニウム、及びステンレス鋼等の金属であることが好ましい。
【0032】
次に上記各構成部材の配置について説明する。胴縁11、11、…は複数の長尺の棒状部材で、既に備えられている柱8、8、8を渡すように該柱8、8、8の屋外側に垂直方向に所定の間隔を有して水平に固定されている。この中で最も上に配置される胴縁11は梁6の長手方向に沿って該梁6の屋外側に取り付けられる。また、最も下に配置される胴縁11は梁7の長手方向に沿って該梁7の屋外側に取り付けられる。胴縁11、11、…の柱8、8、8、又は梁6、7への取り付け方法は特に限定されるものではないが、好ましい固定方法として、ビス止め時を挙げることができる。ここで、胴縁11、11、…が上記のように繊維方向に割れ難い材質により形成されていると、ビス止めや地震時に胴縁11、11、…が繊維方向に割れることを抑制することができる。割れが生じると耐震性に影響を与える場合があり、このように割れを抑制することにより耐震性をさらに向上させることが可能となる。また、割れを生じるとここに取り付けられるサイディング12、12、…間に隙間を生じる可能性があり、これを抑制することにより防火性を向上させることができる。
【0033】
本実施形態では胴縁11、11、…は柱8、8、8間を渡すように垂直方向に並列されているが、これに限定されるものではない。図4(a)、図4(b)に変形例、及びさらなる変形例を示した。図4(a)、図4(b)では、見易さのためサイディングの記載を省略している。図4(a)に変形例を示したように、梁6、7に沿って水平に取り付けられた2本の胴縁11a’、11a’と、柱8、8、8、及び間柱9、9に沿って垂直に取り付けられた胴縁11b’、11b’、…とにより形成されていてもよい。また、図4(b)にさらなる変形例を示したように、梁6、7に沿って水平に取り付けられた2本の胴縁11a’’、11a’’と、これら2本の胴縁11a’’、11a’’間を渡すように並列された胴縁11b’’、11b’’、…とにより形成されていても良い。いずれの胴縁の構成を用いるかについては施工される外装面材の種類や施工される建物の柱の態様等によって適宜選択される。
【0034】
防水シート14は、ステープル、タッカー、釘、テープ、及び接着等で柱8、8、8に取り付けられる。
【0035】
サイディング12、12、…は胴縁11、11、…に留め付けられて固定される。本発明の耐震防火外壁10では、複数の矩形のサイディング12、12、…の長手方向を鉛直にして並列し、胴縁11、11、…に固定されている。これにより、サイディング12、12、…が外装材であるだけでなく、住宅の耐震性を大きく向上させるとともに、防火性を向上させることも可能となる。また、外装材を兼ねるので外装の取り扱いの困難を生じることはなく、改修である場合には室外側からの耐震及び防火を向上させる改修ができるようになった。
【0036】
さらに詳しくは次の通りである。図2にAで示した部分に注目した図を図5に、示した。図5(a)は屋外側正面視、図5(b)は固定部材13を含む垂直断面図である。これにより、サイディング12、12、…の胴縁11、11、…への留め付けの態様を説明する。本実施形態において、サイディング12、12、…の胴縁11、11、…への留め付けは、固定部材13、13、…により行われる。そして当該固定部材13、13、…は先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウである。当該先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウを図5(a)、図5(b)に示したように取り付けることによりサイディング12、12、…の胴縁11、11、…へ留め付ける。
【0037】
先端がセルフドリリング形状でない固定部材を用いる場合、固定部材をサイディングや胴縁に取り付けると留め付け過程において材料を押しのけるように固定部材が材料に侵入する。これにより材料に亀裂が生じ、又は亀裂が生じなくても内部応力が大きくなる。一方、先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウでは、材料を除去(切削)しながらサイディング12、12、…、及び胴縁11、11、…に侵入するので、留め付けの過程で亀裂が生じたり、内部応力が大きくなったりすることがない。
【0038】
すなわち、サイディング12、12、…は図6に模式的に示したように地震時には、建物1の揺れに伴って変形し、図6に矢印Cで示したように固定部材が取り付けられた位置Bが移動する。このとき位置Bが最初から亀裂を有していたり、内部応力が大きくなっていたりすると割れが生じる。割れが生じると耐震性は低下するのみでなく、サイディング12、12、…間に隙間等を生じるので防火性も著しく低下する。これに対して本発明に備えられるサイディングでは固定部材が取り付けられる位置にこのような亀裂が生じ難く、耐震性、及び防火性を高く維持することが可能である。これにより耐震性、及び防火性を向上させることができ、本来は必要である耐震面材及び耐火面材の使用量を減らすことができ、場合によっては使用しなくてもよいものとすることができる。
【0039】
図2、及び図3に戻り説明を続ける。水切り15、16は、並列されたサイディング12、12、…の上下端に沿って水平とされ、柱8、8、8に固定される。固定の方法は特に限定されるものではないが、ビスや釘を用いることができる。水切り15、16は、図3によく表れているように、クランク状である断面の一端をサイディング12、12、…より室内側に、他端をサイディング12、12、…より屋外側に配置する。これによりサイディング12、12、…の室内側を伝ってきた雨水等の水を適切に屋外へ排出することができる。
【0040】
以上のような各構成部材、及びその配置により本発明の耐震防火外壁10は上記した効果を奏するものとなる。以上説明した耐震性、耐火性の評価は様々な方法でおこなうことができる。これには例えば耐震性であれば、財団法人建材試験センターが発行する「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載される試験方法に準じて試験を行い、同センターが発行する「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」に記載されている壁倍率評価に基づき「壁強さ倍率」を求めることにより評価することができる。また、防火性については、同じく財団法人建材試験センターが発行する「防耐火性能試験・評価業務方法書」に準じて評価をすることができる。
【0041】
図7には、第一実施形態の耐震防火外壁10の他の例である耐震防火外壁10’を示した。耐震防火外壁10’は、サイディング12’、12’、…が長手方向を水平にして垂直方向に並列されており、この点で耐震防火外壁10と異なる。このようにサイディング12’、12’、…が水平に配置されるものであってもよい。
【0042】
図8は、第二実施形態に係る本発明の耐震防火外壁20を説明するための図である。理解容易のため、第一実施形態の耐震防火外壁10の説明がそのまま該当する部材に関しては、耐震防火外壁10と同じ符号を付している。図8は、耐震防火外壁20における図2に相当する図である。
【0043】
耐震防火外壁20は、耐震防火外壁10に加えて連結部材21を備えている。図9に連結部材21が取り付けられた部分に注目した垂直断面図を示した。図8、9に表れているように、連結部材21は略クランク状の断面を有した長尺部材で、サイディング12、12、…の上端を掛け渡すように水平に配置される。このとき連結部材21のクランク状の断面における一片21aは柱8、8、8に固定されるとともに、他の一片21bはサイディング12、及び胴縁11と固定部材(先端がセルフドリリング形状であるコーチスクリュウ)13により固定される。
【0044】
ここで、連結部材21と、サイディング12、12、…との固定は、複数のサイディング12、12、…のうちから選ばれる2つ以上で行われれば良い。ただし、より高い耐震強度、及び防火性を備えるために可能な限り多くのサイディング12、12、…が1つの連結部材21と固定されることが好ましい。以上の連結部材21により複数のサイディング12、12、…の一端が連結される。これにより、地震時に水平外力(横揺れ)に対してサイディングの変形を抑制することができ、さらに耐震強度を向上させることが可能となる。また、当該変形を抑制することによりサイディング12、12、…の割れも防止して防火性能も向上させることができる。
【0045】
また、連結部材21は図9からもわかるように、その断面が図3に表れる水切り15、16に似た形状を有している。従って連結部材21は水切りの役割を果たすこともでき、この部分には水切りを配設する必要がないので、使用する部材を削減することもできる。
【0046】
図10は、図7に示した耐震防火外壁10’に対応する第二実施形態の変形例である耐震防火外壁20’である。耐震防火外壁20’では、サイディング12’、12’、…の左右両端のそれぞれが連結部材21’、21’で連結されている。これによっても上記と同様にサイディング12’、12’、…の変形を抑制することができ、耐震強度を向上させることが可能となる。また、当該変形を抑制することによりサイディング12’、12’、…の割れも防止することができ、防火性能も向上させることができる。
【0047】
以上説明した各実施例では、サイディングは柱に取り付けられた胴縁に固定されたものである。さらなる他の実施の形態として、胴縁を備えることなく柱に直接サイディングを固定することにより本発明の耐震防火外壁を構成することも可能である。図11に第三実施形態に係る本発明の耐震防火外壁30を示した。これは図2に対応する図である。ここでは耐震防火外壁10と同じ構成の部材には同じ符号を付した。
【0048】
耐震防火外壁30は、図11からもわかるように胴縁が備えられておらず、サイディング31、31が直接柱8、8、8に固定されている。これによっても本発明の耐震防火外壁とすることができ、上記効果を奏することができる。
【0049】
以上説明した本発明の耐震防火外壁10〜30では、サイディングの裏面(屋内側に配置される側の面)で、図12にDで示した固定部材13、13、…が設けられる部分に補強シート40を貼り付けてもよい。これにより地震時におけるサイディングの変形に対してもさらに割れ等を防止することができ、これによっても耐震性、及び防火性を向上させることが可能となる。補強シート40の材料は切れ難い、裂け難い材料であれば特に限定されるものではないがこれには例えばメッシュシート(網状材を備えたシート)を挙げることができる。
【0050】
以上のような本発明の耐震防火外壁によれば、従来必要であった耐震面材、及び耐火面材の使用量を減らす、又は場合によっては使用をなくすことができ、部材の削減、発注、運搬、施工等を省略することができ、これについても利便性の高い改修耐震外壁を提供することが可能となる。
【0051】
さらには、本発明の耐震防火外壁は、建物の改修の場合には、耐震及び防火の改修を屋外側のみから行うことができ、居住者、及び施工者いずれも自己の作業を平行して進めることができるので、利便性が向上する。
【0052】
これらは施工方法にも効果を奏し、より簡易に耐震防火外壁を施工することが可能となった。以下に1つの実施形態にかかる耐震防火外壁の施工方法(S0)について説明する。図13に改修耐震防火外壁の施工方法S0のフロー図を示した。本実施形態の施工方法S0は建物の改修により上記した耐震防火外壁を施工する方法である。
【0053】
耐震防火外壁の施工方法S0は、既存外壁撤去工程S1、防水シート取り付け工程S2、水切り取り付け工程S3、胴縁取り付け工程S4、及びサイディングの取り付け工程S5を有している。既存外壁撤去工程S1は、従来の既存の外壁であるモルタルや横材を取り除く工程である。
【0054】
防水シート取り付け工程S2は、既存外壁の撤去により表れた部分に防水シートを取り付け工程である。また、水切り取り付け工程S3は既存柱に水切りを取り付ける工程である。
【0055】
胴縁取り付け工程S4は胴縁を、サイディング取り付け工程S5はサイディングをそれぞれ上記した配置に取り付ける工程である。
【0056】
上記した第三実施形態の改修耐震外壁30では、胴縁を取り付ける工程を必要としないので、胴縁取り付け工程S4を省略することが可能である。また、本発明の耐震防火外壁の施工方法は、改修に限定されることなく、新築の建物にも適用することができる。このときには、既存外壁撤去工程S1が省略される。
【0057】
以上、現時点においてもっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う耐震防火外壁、耐震防火外壁を備える建物、及びその施工方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第一実施形態に係る本発明の耐震防火外壁が備えられた住宅の外観斜視図である。
【図2】図1に示した耐震防火外壁の一部を示す外観正面図である。
【図3】図2に示した耐震防火外壁の垂直断面図である。
【図4】胴縁の配置の変形例を説明する図である。
【図5】固定部材よるサイディングの取り付けを説明するための図である。
【図6】サイディングが地震により変形することを説明するための図である。
【図7】第一実施形態の耐震防火外壁の変形例を説明するための図である。
【図8】第二実施形態に係る本発明の耐震防火外壁を示す図である。
【図9】連結部材の配置を説明するための図である。
【図10】第二実施形態の耐震防火外壁の変形例を説明するための図である。
【図11】第三実施形態に係る本発明の耐震防火外壁を示す図である。
【図12】サイディングに配置される補強シートを説明するための図である。
【図13】本発明の1つの例に係る耐震防火外壁の施工方法のフロー図である。
【符号の説明】
【0059】
1 建物
3、4、5 窓
6、7 梁
8 柱
9 間柱
10 耐震防火外壁
11 胴縁
12 サイディング(外装面材)
13 固定部材(先端がセルフドリリング形状のコーチスクリュウ)
14 防水シート
15、16 水切り
20 耐震防火外壁
21 連結部材
30 耐震防火外壁
31 サイディング(外装面材)
40 補強シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐震性及び防火性を有する建物の外壁であって、
柱又は間柱のうち少なくとも2本の柱又は間柱を渡して該柱又は間柱に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材を備え、
前記外装面材の前記柱又は間柱への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材により行われることを特徴とする耐震防火外壁。
【請求項2】
耐震性及び防火性を有する建物の外壁であって、
柱又は間柱に留め付けられる長尺部材である胴縁と、
前記胴縁に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材と、を備え、
前記外装面材の前記胴縁への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材により行われることを特徴とする耐震防火外壁。
【請求項3】
前記複数の外装面材は、隣り合う少なくとも2枚の該外装面材同士が共通する1つの連結部材により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐震防火外壁。
【請求項4】
前記外装面材の少なくとも前記固定部材が取り付けられる部分の表面には網状の面材を含有する補強シートが貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐震防火外壁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐震防火外壁を備えることにより耐震性及び防火性が向上された建物。
【請求項6】
耐震性及び防火性が向上された建物の外壁の施工方法であって、
建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材を柱又は間柱に先端がセルフドリリング形状である固定部材により留め付ける工程を含む耐震防火外壁の施工方法。
【請求項7】
耐震性及び防火性が向上された建物の外壁の施工方法であって、
柱又は間柱に長尺部材である胴縁を留め付ける工程と、
建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材を前記胴縁に先端がセルフドリリング形状である固定部材により留め付ける工程と、を含む耐震防火外壁の施工方法。
【請求項1】
耐震性及び防火性を有する建物の外壁であって、
柱又は間柱のうち少なくとも2本の柱又は間柱を渡して該柱又は間柱に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材を備え、
前記外装面材の前記柱又は間柱への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材により行われることを特徴とする耐震防火外壁。
【請求項2】
耐震性及び防火性を有する建物の外壁であって、
柱又は間柱に留め付けられる長尺部材である胴縁と、
前記胴縁に留め付けられ、建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材と、を備え、
前記外装面材の前記胴縁への留め付けが、先端がセルフドリリング形状である固定部材により行われることを特徴とする耐震防火外壁。
【請求項3】
前記複数の外装面材は、隣り合う少なくとも2枚の該外装面材同士が共通する1つの連結部材により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐震防火外壁。
【請求項4】
前記外装面材の少なくとも前記固定部材が取り付けられる部分の表面には網状の面材を含有する補強シートが貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐震防火外壁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐震防火外壁を備えることにより耐震性及び防火性が向上された建物。
【請求項6】
耐震性及び防火性が向上された建物の外壁の施工方法であって、
建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材を柱又は間柱に先端がセルフドリリング形状である固定部材により留め付ける工程を含む耐震防火外壁の施工方法。
【請求項7】
耐震性及び防火性が向上された建物の外壁の施工方法であって、
柱又は間柱に長尺部材である胴縁を留め付ける工程と、
建物外周面の少なくとも一部を形成するように並列される14mm以上の厚さを有する複数の外装面材を前記胴縁に先端がセルフドリリング形状である固定部材により留め付ける工程と、を含む耐震防火外壁の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−240266(P2008−240266A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79003(P2007−79003)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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