説明

耐食ハニカム

ハニカムの端を形成するセル端を包含するセル壁を有する複数個のハニカムセルから構成される耐食金属ハニカム。ポリアミドイミドを含む耐食被覆が該セル壁およびセル端を被覆するのに使用される。該耐食被覆は好ましくは該ハニカム構造が形成されてから適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、金属ハニカム及びかかるハニカムを腐食に対して保護する方法に関する。より詳しくは、本発明は腐食性環境で使用するための金属ハニカムの耐食性を改善することを対象にする。
【背景技術】
【0002】
ハニカム構造は周知であり、高強度低重量材料が必要な多くの用途で広く使用されている。ハニカム構造で見出される低重量と強度を組み合わせた特色により、ハニカム構造は高強度と低重量が特に望ましい飛行機等の用途における使用に特に適切なものとなる。ハニカム構造は、アルミニウム及びアルミニウム合金のような金属を含む多種多様の材料から作製されてきた。かかる構造はアルミニウム・ハニカム又はアルミニウムコアと言及される。本明細書において用語「アルミニウム」をそれだけで使用する場合、それはアルミニウム及びアルミニウム合金の両方を含むと理解される。樹脂を含浸させた繊維および紙から作製された複合材料もハニカム構造に広く使用されている。
【0003】
ハニカム構造を作るための普通の一方法には、複数の薄いアルミニウムシートを特別定方位の節ラインに沿って一緒に接着させることが含まれる。該節ラインは、異なる層を膨張させる時にハニカム構造が形成されるような該異なる層間の隔たりである。このタイプの方法は、普通「膨張」法と言及される。該膨張法は、ある種のタイプのアルミニウムを使用するいくつかの場合には、ハニカム構造を作るのには適していない。例えば、比較的厚いシート又はある種のアルミニウム合金から作製されるシ−トは硬すぎるので、該膨張法を使用してハニカム構造に成形することは出来ない。
【0004】
該膨張法が適していないような状況では、普通「波形」法と言及される製作方法が高強度ハニカム構造を形成するのに使用されてきた。該波形法には、最初にアルミニウムシートを波形構造に成形することが含まれる。次に該波形アルミニウムシートどうしを節ラインに沿って一緒に接着させて最終ハニカムを形成する。
【0005】
膨張法および波形法の両方において、アルミニウムシートどうしを一緒に接着させるには典型的に接着剤が使用される。かかる接着剤は普通「節接着剤」と言及される。該アルミニウムシートの表面は、通常ポリマー系被覆で被覆されているか、さもなければ該節接着剤と該シートとの間の良好な接着を確実にするように処理されている。該接着剤と該処理済アルミニウムシートとの間の接着強度は、一般に該接着剤の剥離強度を測定することにより測定される。剥離強度は典型的にASTMD 1781に規定された標準的手順を用いて測定される。該試験には基本的に、金属シートの3inch(7.6cm)又は1inch(2.54cm)幅ストリップを2枚接着剤で貼り合せ、該2枚のストリップを引き剥がすのに必要な力の量を測定することが含まれる。
【0006】
所定の接着剤に対して最大の剥離強度を達成することは、高強度ハニカムを製造する際の重要な目標である。アルミニウムシート間の接着結合破壊は、全構造の完全な破壊を招く可能性がある。従って、節接着剤の金属表面に対する接着を高める表面被覆および(又は)処理をアルミニウムに対して提供する必要がある。
【0007】
アルミニウム・ハニカムは、該ハニカムが普通「外皮」と言及される2枚のシート材料の間にサンドイッチされているサンドイッチパネルの構成に使用するための評判の良いコア材料である。該ハニカムの端を該外皮に接合するためには接着剤が典型的に使用される。場合によっては、該外皮は粘着性であり、接着剤層の使用を必要としない。該ハニカムの端と該外皮との間の接着結合強度は又、該アルミニウムコアを処理するかさもなければ被覆する際の重要な検討事項でもある。該端の接着破壊も又該構造の破壊を招く可能性がある。
【0008】
アルミニウムは又、通常、耐食性を増加させるために処理される。クロム酸塩は、広く使用されてきたアルミニウム用の評判の良い耐食性被覆であった。しかしながら、クロム酸塩の使用に関連する環境問題が多数存在する。他の多数の耐食性被覆がアルミニウムに対して開発されてきた。例えば、米国特許第3,687,882号は、アルミニウムをシラン−チタネート分散体で被覆することを記載している。該アルミニウムを燐酸で陽極処理すること、及び(又は)、該アルミニウムをエポキシポリマー又は変性フェノールポリマーで被覆することも又、該ハニカムを耐食性にするための評判の良い方法であった。
【0009】
アルミニウム・ハニカムを製造する技術においては、特に該ハニカムが公知の腐食性環境で使用するためのものである場合、該節および端における良好な剥離強度を提供するだけでなく良好な腐食保護をも提供する表面処理の必要性が存在してきたし、又存在し続ける。上記特色のすべてを提供する被覆方式又は処理を開発することは、高強度および軽重量が必要な用途に適したアルミニウム製ハニカムを製作する際の重要な目標である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って、ハニカムの端および(又は)壁がポリアミドイミドを含む耐食被覆で被覆されている耐食金属ハニカムが提供される。更に本発明は、金属材料をハニカムに成形する前および(又は)後に該耐食被覆を該金属材料の表面に適用する方法を含む。
【0011】
本発明に従って、金属ハニカムの耐食性は該ハニカムの端および(又は)壁をポリアミドイミド含有耐食被覆で被覆することにより増加することが発見された。更に、金属シート材料を最終ハニカム構造に加工している間に形成される微小亀裂を充填するために、ハニカムの成形後に該耐食被覆を該ハニカムに適用するのが好ましいことが発見された。
【0012】
本発明は、端を有するセル壁を含んだ複数個のハニカムセルを有する金属ハニカムに耐食性を供与することを含む。セル壁の端は該ハニカムの端を形成する。本発明の特色として、ポリアミドイミドを含む耐食被覆が、少なくともセル壁を、好ましくはセル壁と端の両方を被覆するために使用される。該耐食被覆は、あらかじめ耐食性を増加させるために陽極処理され、そして(又は)ポリマーで被覆されているアルミニウムおよびアルミニウム合金のような金属材料を処理するのに有用である。本発明の耐食被覆は、このようなあらかじめ適用された耐食被覆において該ハニカムの成形中に成長するかも知れない微小亀裂を密封するのに特に有効である。
【0013】
本発明に従って、該耐食被覆は、サンドイッチパネル構成中にハニカム端と面シートとの間の接合に悪影響を及ぼすことなく、最終耐食被覆として該ハニカムに適用することが出来る。従って、該被覆は耐食性の増加および良好な外皮−コア接合特性という二重の利益を提供する。
【0014】
本発明の上記特色並びに他の多くの特色およびそれに付随する利点は、以下の詳細な説明を別紙図面と併せて参照することにより、より良く理解されることとなるであろう。
【0015】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、金属ハニカムの暴露面をポリアミドイミドで被覆することにより該ハニカムの耐食性を増加させることを含む。本発明は、ハニカムを製作するのに使用されるアルミニウムおよびアルミニウム合金のような任意の金属材料から製作されるハニカムを処理するのに使用することが出来る。典型的なアルミニウム合金には、ハニカム構造で普通に使用されている5052および5056合金が含まれる。好ましいハニカムはアルミニウム又はアルミニウム合金から製作されるものである。ハニカムを製作するのに使用される金属材料は、典型的に厚さが0.0005inchから0.05inchまで変動するシート又は箔の形状をしているが、必要なら、それより厚くても薄くても良い。該ハニカムは、実質的にいかなる大きさ又は形状であっても良く、膨張法および波形法を含む任意の知られたハニカム製造法により製作することが出来る。
【0016】
該ハニカムはいくつの目的にも使用することが出来る。しかしながら、該ハニカムは、航空宇宙産業に多種多様の用途を見出しているサンドイッチパネルの製作に使用するのが好ましい。該サンドイッチパネルは、宇宙船の構造的および非構造的構成部品の両方として使用される。該ハニカムは、飛行機に使用されるサンドイッチパネルの製作に特に適している。典型的なサンドイッチパネル又は構造物は、エンジンナセル、主翼および尾翼構造物、および床板や他の内部隔壁のような胴体構成部品に使用される。かかる飛行機構成部品は典型的に多種多様の潜在的腐食性環境にさらされるので、本発明により提供される耐食性はかかる飛行機構成部品において特に望ましい。
【0017】
航空宇宙用途に使用される典型的ハニカムサンドイッチパネルの三つの基本的構成部品は、該パネルの形成前の図1に示されている。それらの構成部品には、複数のハニカムセル13を形成する壁11を有するハニカムコア12が包含される。該壁は、14および16に示された該ハニカムの面又は端を形成する端を有する。他の二つの構成部品は表面板又は外皮17および19である。該表面板17および19は、該ハニカム端に接合するための内部表面21および23を夫々包含する。該表面板17および19は又、外部表面25および27を夫々包含する。該表面板17および19は、該ハニカム端14および16に接合される多種多様の金属および(又は)複合材料から製作することが出来る。
【0018】
該ハニカムの寸法は広く変化させることが出来る。航空宇宙用途に対して、該ハニカムコアは典型的に1/8〜1/2inch(3.2〜12.7mm)のセル(即ち、直径断面における)を有し、該コアは1/4inch(6.4mm)〜2inches(50.8mm)の厚さ(両ハニカム端間の距離)である。該ハニカム壁の厚さも変化させることが出来るが、典型的なハニカム壁はおよそ0.001inch(0.25mm)〜0.005inch(0.13mm)程度の厚さである。セル寸法、壁厚み、および使用材料密度の組合せが該コアの重量を決定し、該重量はポンド/立方フィート(pcf)で表現される。およそ2pcf〜8pcf程度の重量を有するアルミニウムおよびアルミニウム合金ハニカムが好ましい。
【0019】
該ハニカム12に接合される表面板17および19は、金属ハニカムコアを有するサンドイッチパネルの構成に使用される任意の材料から製作することが出来る。かかる材料は、金属および複合材料の両方を包含する。金属又は予備硬化複合表面板を該ハニカムに接合する時には、接着剤が使用される。或いは、「プリプレグ」として知られる複合材料の未硬化板を該ハニカムの両端上に置き所定の位置で接合/硬化させることが出来る。かかるプリプレグは粘着性であっても良いし、或いは追加の接着剤を使用しても良い。図1において、表面板17および19は好ましくは粘着性プリプレグであり、それが所定の位置で硬化されて最終サンドイッチパネル10(図2に示されている)を形成し、それは硬化表面板18および20を包含する。
【0020】
該プリプレグ表面板は通常、繊維および樹脂マトリックスの一以上の層を包含する。プリプレグ表面板17および19で使用される繊維は、複合ラミネートを形成するのに使用される任意の繊維材料であっても良い。典型的な繊維材料はガラス、アラミド、カーボン、セラミックおよびそれらの混成物を包含する。該繊維は織られていても良いし、一方向性であっても良いし、又はランダム繊維マットの形状であっても良い。80〜600gsmの、より好ましくは190〜300gsmの面積重量を有する、平織、ハーネス朱子織、綾織およびバスケット織スタイルのような炭素繊維織物が好ましい。該炭素繊維は、トウ当り3,000〜40,000本のフィラメントを、より好ましくはトウ当り3,000〜12,000本のフィラメントを有することが出来る。最も一般的なものが303gsmにおいて7781であり107gsmにおいて120である、同様なスタイルのガラス織物も使用することが出来る。一方向性の構成物を使用する場合、典型的なプライ重量は炭素に対して150gsmであり、ガラスに対して250gsmである。これら炭素およびガラスの繊維および織物のすべては市販されている。
【0021】
該プリプレグ表面板に使用される樹脂は、典型的にプリプレグ表面板に使用されている任意の熱硬化性ポリマーであっても良い。典型的なポリマー樹脂には、エポキシ、シアネートエステル、およびビスマレイミドが包含される。該熱硬化性樹脂は、技術的に知られているように、粘度制御を提供しフィレット形成および靭性を高めるために、熱可塑性ポリマーを包含しても良い。典型的な粘着性表面板は、米国特許第6,440,257および6,508,910号に詳細に記載されているが、それら特許の内容を特定的に引用して援用する。
【0022】
本発明に従う耐食被覆は、金属材料を最終ハニカムに成形する前又は後に該金属材料の表面に適用することが出来る。しかしながら、金属材料を最終ハニカムに成形した後に該金属材料に該被覆を適用することが好ましい。該耐食被覆は、該ハニカム成形過程中に金属材料の表面および(又は)あらかじめ適用された耐食被覆において成長するかも知れない微小亀裂を覆うのに有効であることが発見されたのである。
【0023】
該被覆は任意の公知被覆適用方式により適用することが出来る。好ましい適用技術は、該ハニカムをポリアミドイミドの溶液中に浸漬して該ハニカムのあらゆる露出面を完全に被覆することである。該ハニカムは、ポリアミドイミド溶液中に完全に浸漬して該被覆を提供しても良いし、或いは完全な表面被覆を提供するように異なる方向づけで複数回部分的に浸漬しても良い。図3に示されているように、本発明に従ってハニカム壁11およびハニカム端16の両方がポリアミドイミド被覆15で被覆されるのが好ましい。他の典型的な適用方式には吹付け塗りおよび過浸漬被覆が包含される。
【0024】
該金属材料は、該ハニカムの成形前に1回以上の従来の腐食防止処理を受けるのが好ましいが、必ずしもそうではない。本発明に従う耐食被覆の適用前に、公知の耐食表面前処理および(又は)被覆(プライマー)のどれでも使用することが出来る。該表面処理および(又は)プライマーはポリアミドイミドに適合することだけが必要である。アルミニウムおよびアルミニウム合金材料は、好ましくは燐酸で陽極処理してから耐食プライマーで被覆する。典型的なプライマーは、エポキシ又は変性フェノール樹脂から製造されるものを含む。典型的なプライマーは、Cytec Corporation(カリフォルニア州、アナハイム)から商品名BR 127で市販されている。Alodine(登録商標)のような化成型被覆を使用することも出来る。
【0025】
本発明に従う処理に適したアルミニウム・ハニカムは、Hexel Corporation(カリフォルニア州、ダブリン)から商品名、HexWeb(登録商標)CR−PAA、HexWeb(登録商標)CRIIIおよびHexWeb(登録商標)ACG(登録商標)で市販されている。HexWeb(登録商標)CR−PAAは、燐酸で陽極処理して変性フェノールプライマーで被覆したアルミニウム・ハニカムである。HexWeb(登録商標)CRIIIは、クロメートで化成被覆してからチタネートおよびアミノシランで封鎖塗りしたアルミニウム・ハニカムである。HexWeb(登録商標)ACG(登録商標)は、クロメートで化成被覆してからチタネートおよびアミノシランで封鎖塗りしたアルミニウム・ハニカムである。
【0026】
本発明に従う耐食被覆15は、実質的にポリアミドイミドから構成される。その他の成分が半分未満ということはあり得る。しかしながら、該被覆の少なくとも95重量パーセントはポリアミドイミドであることが好ましい。なおさら好ましくは、該被覆は少なくとも99重量パーセントのポリアミドイミドであるべきである。該被覆15は該セル壁上において0.0002inch〜0.0004inchの厚さであるべきである。該ハニカムの重量を出来るだけ低く保ちながら、同時に該ハニカム露出面の完全被覆を提供するために、該被覆15は出来るだけ薄いのが好ましい。該露出面は、該ハニカムを形成するために種々の金属層どうしが一緒に接合されている節に位置していない表面である。
【0027】
該ポリアミドイミド被覆15は、反応性(アミド酸)プレポリマーの溶液を該ハニカムに適用してから該ハニカムを加熱して乾燥(即ち、該溶媒の除去)および硬化を達成することにより形成される。該反応性アミド酸ポリマー溶液は典型的に、芳香族アミド、芳香族アミド酸および芳香族イミド部分を含有する。これらの部分はNMPに容易に溶解する。好ましい典型的な反応性アミド酸ポリマーは、TORLON(登録商標)AI−10であり、それはSolvay Advanced Polymers(ジョージア州、アルファレッタ)から入手できる。TORLON(登録商標)AI−10は、未イミド化又はアミド酸状の黄色粉末として供給されている。TORLON(登録商標)AI−10は、80の酸価(ポリマー1g当りのmg KOH)を有し、ジプロトン性溶媒に溶解する。他の適切な(アミド−イミド)プレポリマー溶液は、米国特許第4,316,974および5,087,658号に記載されている。
【0028】
該(アミド−イミド)プレポリマーは、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドを含む多種多様の有機溶剤に溶解する。該アミド酸ポリマーは該溶剤に溶解して、該適用技術に依って望ましい被覆厚みを適用するための適切な粘度を有する溶液を提供する。該ハニカムを該溶液に浸漬する好ましい技術を使用する場合、該溶液は典型的に5〜30重量パーセントのアミド酸ポリマーを該溶剤中に含有する。該ハニカムが浸漬される好ましい浸漬用溶液は、5〜17重量パーセントのTORLON(登録商標)AI−10粉末をNMP溶剤中に含有する。
【0029】
該ハニカムをアミド酸ポリマーの溶液に浸漬してから、溶剤を除去して未硬化被覆を形成するために約200℃までの温度でそれを乾燥することが出来、その後重合(硬化)を提供するために200〜225℃の温度に該未硬化被覆を加熱する。或いは、ポリマー溶液の被覆を硬化温度に直接加熱して該ポリマー溶液の乾燥および硬化の両方を提供することも出来る。どちらの場合にも、該硬化ポリアミドイミド被覆を有するハニカムは次に、必要なら表面板への接合のためハニカム端に接着剤を適用すること以外の更なる処理なしに、表面板17および19への接合に対して準備ができている。
【0030】
実施例は以下の通りである。
【0031】
〔実施例1〕
二つのアルミニウム合金ハニカム(4inches幅、4inches長、および0.63inch厚)、即ち、Hexel Corporation(カリフォルニア州、ダブリン)から入手できるHexWeb(登録商標)CR−PAA(商標)ハニカムを以下のように本発明に従う耐食被覆で被覆した。それらのハニカムは5052又は5056アルミニウム合金から製作した。該公称セル寸法は3/16inchで、該箔厚は0.0015inchで、該公称密度は4.4ポンド/立方フィート(pcf)であった。前述したように、HexWeb(登録商標)CR−PAA(商標)ハニカムで使用されているアルミニウム箔は、該製造業者の確立した製造方法に従うハニカム成形の前に、燐酸でエッチングされ変性フェノ−ル系プライマーで被覆されている。
【0032】
91.5重量パーセントのNMP溶媒に溶解した8.5重量パーセントのTORLON(登録商標)AI−10ポリマーを含む溶液中に、該HexWeb(登録商標)CR−PAA(商標)ハニカムを浸漬した。それらのハニカムを該溶液から除去し、過剰の溶液を該ハニカムから滴らせて「湿った」ハニカムを形成した。次に該「湿った」ハニカムを約200℃の温度に約10分間加熱して該ポリマーを乾燥させ硬化させた。得られたポリアミドイミド被覆は、厚さが約0.0002〜0.0004inchで変動した。
【0033】
次に該ポリアミドイミド被覆を有する二つのハニカムを、ASTMg85−98による10日間酸性化塩水噴霧試験により熱老化に処した。該ポリアミドイミドで被覆されたコアは、平均2個の穴(約1mmの周長)および22個の平均的大きさ(1mm〜数mmの周長)の腐食点を有していた。観察は2個の試料の目視検査に基づいた。穴の総数に関してはコア全体を観察したが、腐食点に関してはコアの周囲のみを検査した。
【0034】
〔比較例1〕
2つのHexWeb(登録商標)CR−PAA(商標)ハニカムを、実施例1のハニカムと同じ酸性化塩水噴霧試験に処した。該ハニカムは、本発明に従うポリアミドイミドで被覆されなかったこと以外は実施例1におけるものと同じであった。酸性化塩水噴霧試験後、該二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当り平均4個の穴(約1mmの周長)および80個の平均的大きさの腐食点および更にいくつかのずっと小さな腐食点(1mm未満の周長)を有することが分った。
【0035】
〔比較例2〕
HexWeb(登録商標)CRIIIという商品名でHexel Corporationから入手でき、5052又は5056アルミニウム合金から製作した二つのハニカムを、実施例1と同じ酸性化塩水噴霧試験に処した。それらのハニカムは、実施例1および2におけるハニカムと同じ大きさであり、同じセル寸法および箔厚みを有していた。該ハニカムは、クロメート化成被覆で処理し、エポキシプライマー被覆を含んでいた。酸性化塩水噴霧試験後、それら二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当りの穴は全く有さず47個の平均的大きさの腐食点を有していることが分った。
【0036】
〔比較例3〕
比較例1で使用されたものと同じハニカムを、それら二つのハニカムの形成後に、更なる変性フェノ−ル系プライマーで過剰浸漬した。変性フェノ−ル系プライマーを用いたそれら二つのコアの過剰浸漬は、実施例1におけるポリアミドイミド被覆と同じように行って更なるフェノ−ル系プライマー被覆を提供した。酸性化塩水噴霧試験後、それら二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当り1個の穴(約1mmの周長)および64個の小さな腐食点(約1mm以下の周長)を有していることが分った。
【0037】
〔実施例2〕
実施例1と同じ二つのハニカムコアを、ASTM B117−90による10日間非酸性化塩水噴霧試験により熱老化に処した。塩水噴霧試験後、それら二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当り5個の穴(約1mmの周長)および47個の平均的大きさの腐食点を有していることが分った。
【0038】
〔比較例4〕
比較例1と同じ二つのハニカムコアを、実施例2と同じ10日間非酸性化塩水噴霧試験により熱老化に処した。塩水噴霧試験後、それら二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当り24個の穴(約1mmの周長)および4個の平均的大きさの腐食点を有していることが分った。なお、該プライマーが除去されていた多数の個所を観察した。これらの個所は外観が銀であった。
【0039】
〔比較例5〕
比較例2と同じ二つのハニカムコアを、実施例2と同じ10日間非酸性化塩水噴霧試験により熱老化に処した。塩水噴霧試験後、それら二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当り17個の穴(約1mmの周長)および6個の平均的大きさの腐食点を有していることが分った。
【0040】
〔比較例6〕
比較例1と同じ二つのハニカムコアを、実施例2と同じ10日間非酸性化塩水噴霧試験により熱老化に処した。塩水噴霧試験後、それら二つのコアを実施例1と同じように検査したところ、コア当り30個の穴(約1mmの周長)および12個の平均的大きさの腐食点を有していることが分った。なお、該プライマーが除去されていた多数の個所を観察した。これらの個所は外観が銀であった。又染みのような個所が多数存在していた。
【0041】
このように本発明の典型的な実施態様を説明してきたが、開示した実施態様は典型的なものに過ぎず、本発明の範囲内で他の種々な代替案、改作、および修正を行うことが出来ることに当業者は注意すべきである。従って、本発明は上述の実施態様によっては限定されないで、別紙特許請求の範囲によって限定されるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】表面板又は外皮をハニカムの両端に適用してサンドイッチパネルを形成する前の本発明に従う典型的な耐食金属ハニカムを示す。
【図2】表面板に接合されてサンドイッチパネルを形成した後の該典型的耐食金属ハニカムを示す。
【図3】図1に示された典型的ハニカムの部分的断面図であり、表面板の一方に接合するための位置にある該ハニカムの一端を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル端を包含するセル壁を有する複数個のハニカムセルを含む金属ハニカム、および
少なくとも前記セル壁を覆う、ポリアミドイミドを含む耐食被覆
を含む耐食ハニカム。
【請求項2】
前記耐食被覆が前記セル壁および前記セル端を覆う、請求項1に記載の耐食ハニカム。
【請求項3】
前記金属ハニカムがアルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項1に記載の耐食ハニカム。
【請求項4】
前記金属ハニカムが燐酸でエッチング処理されたアルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項3に記載の耐食ハニカム。
【請求項5】
前記耐食被覆と前記セル壁との間に位置するポリマー層を包含し、前記ポリマー層がエポキシポリマーおよび変性フェノールポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の耐食ハニカム。
【請求項6】
前記耐食被覆が本質的にポリアミドイミドから成る、請求項1に記載の耐食ハニカム。
【請求項7】
前記耐食被覆が本質的にポリアミドイミドから成る、請求項4に記載の耐食ハニカム。
【請求項8】
ハニカムに耐食性を提供する方法であって、
セル端を包含するセル壁を有する複数個のハニカムセルを含む金属ハニカムを提供しする工程、及び
少なくとも前記セル壁に、ポリアミドイミドを含む耐食被覆を適用する
工程、を含む前記方法。
【請求項9】
前記耐食被覆を前記セル端に適用する、請求項8に記載のハニカムに耐食性を提供する方法。
【請求項10】
前記金属ハニカムがアルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項8に記載のハニカムに耐食性を提供する方法。
【請求項11】
前記金属ハニカムが燐酸でエッチング処理されたアルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項10に記載のハニカムに耐食性を提供する方法。
【請求項12】
前記耐食被覆を適用する前に、前記耐食被覆と前記セル壁との間に位置するポリマー層を前記金属ハニカムに適用する、請求項8に記載のハニカムに耐食性を提供する方法であって、前記ポリマー層がエポキシポリマーおよび変性フェノールポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む前記方法。
【請求項13】
前記耐食被覆が本質的にポリアミドイミドから成る、請求項8に記載のハニカムに耐食性を提供する方法。
【請求項14】
前記耐食被覆が本質的にポリアミドイミドから成る、請求項11に記載のハニカムに耐食性を提供する方法。
【請求項15】
金属材料のシートどうしを選択された個所で一緒に接着させてから膨張させてハニカムを形成するハニカムの製造方法において、ポリアミドイミドを含む耐食層を前記ハニカムに適用することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ハニカムがセル端を包含するセル壁を有する複数個のハニカムセルを含み、前記耐食層を前記セル壁および前記セル端の両方に適用する工程を包含する、請求項15に記載のハニカムの改良製造方法。
【請求項17】
前記ハニカムを形成する前に、前記の金属材料シートを陽極処理し、そして(又は)ポリマー被覆で被覆する、請求項15に記載のハニカムの改良製造方法。
【請求項18】
前記の金属材料シートがアルミニウム又はアルミニウム合金を含む、請求項15に記載のハニカムの改良製造方法。
【請求項19】
前記耐食被覆が本質的にポリアミドイミドから成る、請求項15に記載のハニカムの改良製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−542471(P2009−542471A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518153(P2009−518153)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/014161
【国際公開番号】WO2008/002408
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(503308494)ヘクセル コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】