説明

耐食剤及びそれを備えた熱交換器

【課題】 より安全に使用することができる耐食剤及びそれを備えた熱交換器を提供する。
【解決手段】 冷媒が流れる冷媒管と、冷媒管が貫設されて空気と熱交換を行う熱交換ピンとを備え、熱交換ピンは、熱の伝達が行われる金属板を含み、金属板の腐食を防止するための耐食層が人体への影響が少ない樹脂材質の耐食剤で形成されているので、熱交換器をより安全に製造及び使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、より詳細には、人体への影響が少なく、より安全に使用することができる耐食剤及びそれを備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱交換器は、冷凍システムに適用されて、冷媒と空気を熱交換させるものであって、内部に冷媒が流れる冷媒管と、冷媒管が貫設されて空気との熱交換の面積を増大させる複数の熱交換ピンとを備え、冷媒管の内部を流れる冷媒が熱交換ピンを通じて空気と効率よく熱交換するようになっている。
【0003】
このとき、熱交換ピンは、空気との熱伝達が容易に行われるように、金属板からなるが、このような熱交換ピンが適用される熱交換器が蒸発器として用いられる場合は、熱交換ピンの表面で、空気中の水分が凝縮して凝縮水が発生する。従って、熱交換ピンには、金属板の表面に金属板の腐食を防止するための耐食層と、凝縮水が容易に排出できるようにする親水層とが順次設けられている。
【0004】
しかしながら、このような従来の熱交換器において、耐食層は、通常、6価クロムCr(VI)を含む耐食剤で形成されるが、6価クロムは、重金属の一種であって、人体に有害な毒性を示すので、最近は、法の規制を受けて使用に制約があるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、人体への影響がより少なく、安全に使用することができる耐食剤及びそれを備えた熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の一側面によれば、冷媒が流れる冷媒管と、前記冷媒管が貫設されて空気と熱交換を行う熱交換ピンとを備え、前記熱交換ピンは、熱の伝達が行われる金属板と、樹脂材質で形成され、前記金属板を覆って前記金属板の腐食を防ぐための耐食層と、前記耐食層の外側を覆って、親水性が高い材質で形成された親水層とを含むことを特徴とする熱交換器が提供される。
【0007】
また、前記耐食層は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含む耐食剤で形成されることが好ましい。
【0008】
また、前記耐食剤は、一方は前記エポキシ樹脂と結合され、他方は前記フェノール樹脂と結合されて、前記エポキシ樹脂と前記フェノール樹脂が間接的に結合された状態を維持させるアクリル樹脂をさらに含むことが好ましい。
【0009】
また、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0010】
また、前記親水層は、コロイド状シリカを含む親水剤で形成されることが好ましい。
【0011】
本発明の他の側面によれば、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂と、一方は前記エポキシ樹脂と結合され、他方は前記フェノール樹脂と結合されて、前記エポキシ樹脂と前記フェノール樹脂が間接的に結合されている状態を維持させるアクリル樹脂とを含むことを特徴とする耐食剤が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱交換ピンに人体への影響が少ない樹脂材質の耐食剤で耐食層が形成されているので、熱交換器をより安全に製造及び使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明による耐食剤が適用される熱交換器100は、内部に冷媒が流れる冷媒管10と、熱伝導率が高い薄板で形成され、冷媒管10が貫設されて空気と冷媒管10の熱交換の面積を増大させる熱交換ピン20とを備えている。
【0015】
熱交換ピン20は、図2に示すように、熱伝達が容易に行われるように金属板からなるが、この実施形態において、金属板21は、熱伝導率と耐食性に優れたアルミニウム材質で形成されている。
【0016】
このような熱交換器100が冷凍サイクルに適用されて、蒸発器として用いられる場合、熱交換ピン20の表面には、空気中の水分が凝縮して凝縮水が結ばれるため、金属板21が腐食しやすい環境に露出してしまう。
【0017】
従って、熱交換ピン20には、金属板21の腐食を防止するために耐食層22が形成されるが、本発明による耐食層22は、毒性のある6価クロムCr(VI)成分を除き、人体への影響が少ない樹脂材質の耐食剤を金属板21に塗布して形成されている。耐食剤としては、耐食性に優れたエポキシ樹脂とフェノール樹脂が混合して形成されるが、この実施形態では、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂が用いられる。
【0018】
しかし、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含んで形成された耐食層22は、耐食性には極めて優れているが、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の相互間の結合力が弱く壊れやすい結合構造を有している。
【0019】
従って、本発明による熱交換器100における耐食層22には、一方はエポキシ樹脂と結合され、他方はフェノール樹脂と結合されて、エポキシ樹脂とフェノール樹脂が間接的に互いに結合されている状態を維持させるアクリル樹脂がさらに含まれている。
【0020】
次の式(1)は、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との反応式である。
【0021】
【化1】


次の式(2)は、フェノール樹脂とアクリル樹脂との反応式である。
【0022】
【化2】


(式中、Rはアルキレン基を示す)
式(1)と式(2)から分かるように、アクリル樹脂は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂とそれぞれ結合して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂が間接的に結合されるようにするので、エポキシ樹脂とフェノール樹脂が安定的に結合されている状態を維持することができる。
【0023】
また、本発明による熱交換器100には、熱交換ピン20の表面で発生した凝縮水を容易に排出させるために、親水剤が塗布されて親水層23を形成している。親水剤は、水との親水性が高い材質で形成され、熱交換ピン20の表面に水膜が容易に形成されるようにするものであって、水膜が形成されると、凝縮水が水膜に沿って移動するようになるので、凝縮水の排出が容易に行われる。
【0024】
この実施形態において、親水剤は、親水性に優れたコロイド状シリカを含み、コロイド状シリカ以外にも、抗菌能を有するナノシルバーと抗カビ性を有するイソチアゾリン系防黴剤がさらに含まれることにより、熱交換ピン20で細菌やカビが繁殖することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による熱交換器を示す斜視図である。
【図2】本発明による熱交換器の熱交換ピンの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 冷媒管
20 熱交換ピン
21 金属板
22 耐食層
23 親水層
100 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる冷媒管と、前記冷媒管が貫設されて空気と熱交換を行う熱交換ピンとを備え、前記熱交換ピンは、熱の伝達が行われる金属板と、樹脂材質で形成され、前記金属板を覆って前記金属板の腐食を防ぐための耐食層と、前記耐食層の外側を覆って、親水性が高い材質で形成された親水層とを含むことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記耐食層が、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含む耐食剤で形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記耐食剤が、一方は前記エポキシ樹脂と結合され、他方は前記フェノール樹脂と結合されて、前記エポキシ樹脂と前記フェノール樹脂が間接的に結合された状態を維持させるアクリル樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記親水層が、コロイド状シリカを含む親水剤で形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項6】
エポキシ樹脂及びフェノール樹脂と、一方は前記エポキシ樹脂と結合され、他方は前記フェノール樹脂と結合されて、前記エポキシ樹脂と前記フェノール樹脂が間接的に結合されている状態を維持させるアクリル樹脂とを含むことを特徴とする耐食剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−183986(P2006−183986A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200233(P2005−200233)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】