説明

肝不全の予後診断と治療

肝不全を患っている個体の予後を評価するための方法を提供し、この方法は、例えば該個体における好中球機能を測定することによって、該個体におけるエンドトキシンを検出することを含んでなる。前記方法を用いて、個体における感染リスクの上昇、個体における臓器不全リスクの上昇、個体における死亡リスクの上昇、ならびに/または個体が免疫抑制剤、ステロイドもしくは抗生物質を用いた治療に対しプラスに応答しないリスクの上昇があるかどうかを判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝機能を評価するための方法、特に肝不全の臨床転帰(clinical cutcome)を予測するための方法に関する。本発明はまた、そのような方法で用いるためのキット、ならびに前記方法を用いて有害転帰のリスクがあると確認された個体の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州レジストリからの肝不全のデータによれば、肝疾患の発病率が次第に高まってきており、現在西ヨーロッパでは肝不全患者は約100万人に達し、アルコールに次いで高い割合であることが示唆される。大部分の患者において、肝不全は確立された慢性肝疾患を背景にした感染やアルコール性肝炎のような増悪イベントの結果であり、その事象は「慢性肝不全急性化(acute-on-chronic liver failure: ACLF)」と呼ばれている。いったん肝不全に陥ると、具体的な治療法は臓器のサポートに限られてしまい、死亡率は50%に達する。重症のアルコール性肝炎(AH)に続発したACLFの患者では、およそ40%の死亡が敗血症に起因すると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、アルコール性肝疾患の患者を検査して、そのような患者の免疫機能を破壊する体液性因子(血漿中に存在する)を見つけ出した。エンドトキシンを取り除くと機能の回復が生じることから、その体液性因子はエンドトキシン様の分子であることが示唆される。これらの患者におけるこのエンドトキシン様分子の検出は、彼らの臨床予後、特に、感染のリスク、死亡のリスク、臓器不全のリスクを評価し、また、彼らが免疫抑制治療のような従来の治療法に応答する可能性を評価するために使用できると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明によれば、肝不全を患っている個体の予後を評価するための方法を提供し、この方法は該個体においてエンドトキシンを検出することを含んでなる。本発明者らは、その体液性因子が好中球の活性化を促進する能力があることを確認した。エンドトキシン様分子の存在は個体の好中球機能を評価することによって判定することができる。したがって、好中球活性化または低下した好中球食作用能といった異常な好中球機能は、肝不全の有害転帰の重要な生物学的マーカーとなる。これらのマーカーは肝不全患者における進行および転帰の信頼できる予測因子として使用しうる。
【0005】
さらに、肝不全を患っている個体の予後を評価するための方法で使用するのに適した検査キットも提供し、この検査キットは該個体における好中球機能のレベルを測定するための手段を含んでなる。
【0006】
実施例は、正常血漿へのエンドトキシンの添加が好中球活性化のレベルを増加させることを実証している。さらに、好中球活性化レベルの高い患者の血漿からのエンドトキシンの除去は、好中球活性化のレベルを低下させることが可能である。
【0007】
したがって、本発明はさらに、以下を提供する:
- 肝不全を患っている個体の予後を評価する方法で使用するのに適した検査キットであって、該個体におけるエンドトキシンを検出するための手段を含んでなる上記キット。
【0008】
- 個体における肝不全の治療方法であって、
(i) 本発明に係る方法を用いて個体の予後を判定すること、および
(ii) 上記(i)において、感染、臓器不全および/もしくは死亡のリスクが上昇している、ならびに/または個体が免疫抑制剤、ステロイドもしくは抗生物質による治療に対しプラスに応答しないリスクが上昇している、と確認された個体の血中エンドトキシンレベルを低下させること、
を含んでなる上記方法。
【0009】
- 個体における肝不全の治療方法で使用するための医薬の製造における薬剤の使用であって、該個体は、本発明の方法により、感染、臓器不全および/もしくは死亡のリスクが上昇している、ならびに/または個体が免疫抑制剤、ステロイドもしくは抗生物質による治療に対しプラスに応答しないリスクが上昇している、と確認された者であり、該薬剤は個体の血中エンドトキシンレベルを低下させるものである、上記使用。
【0010】
- 療法によるヒトまたは動物個体の治療方法において同時、個別または逐次使用するための組合せ製剤としての、
(i) 個体における好中球機能を測定するための手段、および
(ii) 血中エンドトキシンレベルを低下させる薬剤、
を含んでなる製品。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Phagotest(登録商標)およびBursttest(登録商標)のための代表的FACS解析プロット。(A) 好中球をそれらの前方および側方散乱光の特徴に従いゲーティングした。(B) 食作用の解析:細菌を含まないサンプルでは、マーカーは、ゲーティングした好中球の99%より多くが第1のマーカー内に入るように設定する。(C) 休止時酸化的バーストが高い患者からの代表的FACSプロット。二重陽性(FL-1で緑色蛍光により測定される反応性酸素代謝産物を生成するCD16陽性細胞)の割合を測定する。(D) 蛍光強度の幾何平均(GMFI)が非常に低い患者からの対応するFACSプロット。(E) 休止時酸化的バーストが低い患者からの代表的FACSプロット。(F) GMFIが低い患者の対応するFACSプロット。(G) 健常対照被験者からの代表的FACSプロット。(H) 標準GMFIを有する健常対照者の対応するFACSプロット。
【図2】対照者、アルコール性肝硬変の患者、および肝硬変+AHの患者についての休止時酸化的バースト、fMLPまたは大腸菌(E. coli)で刺激した後の酸化的バースト、および相対的GMFI。* 対照に対して有意。§ 対照および肝硬変に対して有意。
【図3】(A) 休止時バーストが高い患者と低い患者についての感染までの時間の解析(Kaplan-Meier)。(B) 培養陽性感染を有するおよび有しない患者についてのKaplan-Meier生存曲線およびログランク分析。
【図4】(A) 生存を判定する際の酸化的バーストの測定の予測的有用性を検討するための受信者動作曲線下の面積(area under the receiver operating curve)。休止時バースト<55%のカットオフは死の予測に対して75%の感度と64%の特異度を有していた。面積=0.77; 標準誤差=0.07; 有意性=0.003; カットオフ=55; 感度=0.77; 特異度=0.69。(B) 高い(>/=55%)または低い(<55%)休止時酸化的バーストに対して階層化された患者についてのKaplan-Meier生存曲線およびログランク分析。
【0012】

【図5】(A) 生存を判定する際の蛍光強度の幾何平均(GMFI)の測定の予測的有用性を検討するための受信者動作曲線下の面積。GMFI<295%のカットオフは死の予測に対して86%の感度と76%の特異度を有していた。面積=0.80; 標準誤差=0.08; 有意性=0.002; カットオフ=42; 感度=0.86; 特異度=0.70。(B) 低い(<295)または高い(>/=295)GMFIに対して階層化された患者についてのKaplan-Meier生存曲線およびログランク分析。
【0013】

【図6】患者の全血における、および患者血漿と共にインキュベートした正常好中球における休止時酸化的バースト。高バースト患者からの血漿は正常好中球においても高いバーストを引き起こしたが、休止時バーストの低い患者からの血漿はそのようにできなかった。WB 全血、NN 正常好中球、PP 患者血漿、H 高い休止時バースト (>/=55%)、L 低い休止時バースト (<55%)。* 正常に対してp=0.002。** 正常に対してp=0.0005。
【図7】正常血漿の存在下での患者好中球のインキュベーションによる休止時酸化的バーストの可逆性。PN 患者好中球、PP 患者血漿、NP 正常血漿。
【図8】食作用に及ぼす血漿の影響。患者自身の血漿中でインキュベートした患者好中球は食作用の低下を示す。低休止時バースト患者由来の血漿の存在下での正常好中球のインキュベーションは食作用を変化させず、高バースト患者由来の血漿は食作用を低下させる。正常血漿の存在下での患者好中球のインキュベーションは食作用機能を回復させる。PN 患者好中球、PP 患者血漿、NN 正常好中球、NP 正常血漿、H 高い休止時バースト、L 低い休止時バースト。
【図9】エンドトキシンとのインキュベーションによる休止時バーストの用量依存的増加。* p<0.05; ** p<0.001。
【図10】エンドトキシンとのインキュベーションは正常好中球において食作用を変化させないが、患者好中球においては食作用をさらに低下させる。
【図11】休止時酸化的バーストは、血漿をエンドトキシン除去カラムに通すことにより、または血漿をCD14抗体と共にインキュベートすることにより、可逆性である。低バースト患者由来の血漿または対照血漿を用いる場合、前記カラムまたはCD14抗体は休止時バーストに影響を及ぼさない。NN+PP H 対 NN+PP H CD14 p<0.001。NN+PP H 対 NN+PP H カラム p<0.001。
【図12】食作用の低下は、血漿をエンドトキシン除去カラムに通すことにより、または血漿をCD14抗体と共にインキュベートすることにより、可逆性である。低バースト患者由来の血漿または対照血漿を用いる場合、前記カラムまたはCD14抗体は休止時バーストに影響を及ぼさない。NN+PP H 対 NN+PP H CD14 p=0.004。NN+PP H 対 NN+PP H カラム p=0.03。
【図13】さまざまな重症度の肝疾患を有する10人の患者における好中球の休止時バースト(%)と、血漿(無細胞)ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性(血漿mlあたりのグアヤコール単位×10-3(mGU)で表される)との関係を示す。線形回帰によるフィットが示され、これはこれら2つの測定間の有意な相関を示している(p=0.0075、r2=0.66)。その後死亡した2人の被験者は白抜きの記号で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して、用語「含む」、またはその変形語「含まれる」もしくは「含んでなる」とは、記載した1つの要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するものであり、他の要素、整数もしくはステップ(群)の除外を意味するものでないことが理解されよう。
【0015】
本明細書中でのあらゆる先行技術の言及は、その先行技術がオーストラリアまたはその他の国で一般常識の一部を構成することを承認したり、何らかの形で示唆したりするものではなく、また、そのようなものとして解釈されるべきでない。
【0016】
現在行われているアルコール性肝炎の治療戦略には、ステロイドのような免疫抑制剤の投与が含まれ、最近では抗TNF戦略が採用されている。これらの薬剤をアルコール性肝炎に使用することに関するデータには相反するデータがあり、ステロイド剤が広く用いられてはいるが、従来の臨床試験の結果にはかなりの不均一性が見られる。同様に、アルコール性肝炎の患者に抗TNF戦略を用いることは、いくつかの研究でプラスの効果を有することが示されたが、他の研究では感染(および死亡)のリスク上昇のため臨床試験が中止になってしまった。
【0017】
したがって、どの患者がどの治療処置に応答しそうであるかを見極める必要がある。特定の患者にはより高い感染、臓器不全および/または死亡のリスクがあるのか、また、特定の治療がこれらのリスクを増大させうるのか、を特別に確かめる必要がある。
【0018】
本発明者らは、肝疾患患者由来の血漿または全血中のエンドトキシンまたはエンドトキシン活性の検出または測定がこれらの患者の低リスク群または高リスク群への分類を可能にすることを確認した。これによって患者の予後を予測することが可能である。特に、肝不全の患者における相対的な死亡のリスク、感染のリスク、および臓器不全のリスクを確認することができる。さらに、エンドトキシンまたはエンドトキシン活性の評価は、特定の治療法に割り当てる際にも役立ちうる。これを用いることによって、患者を例えば抗生物質、コルチコステロイド、抗TNFまたは体外療法により治療すべきか否かを決定することができる。また、これを用いることによって、そのような治療法が感染のリスク上昇といった望ましくない副作用をもたらしそうであるかどうかを予測することもできる。この情報は、個々の患者の最適な治療法について臨床決定をする目的で、医師が利用し得る。
【0019】
本発明者らは、そのような測定値の利用が重症アルコール性肝炎患者における転帰の信頼できる予測因子として機能することを実証した。本明細書に記載の検査を適用することは、免疫抑制剤、例えばステロイドまたは抗TNF戦略による治療が有効でありそうな患者を特定するのに役立つと考えられる。これはまた、そのような免疫抑制療法が感染のリスク上昇をもたらしうる他の患者を特定する際にも役立つだろう。さらに、この検査の適用は、現在利用可能な予後スコア(DF、MELD、Child-Pugh)と比較して、肝臓サポートシステムによる早期介入が正当化される進行性肝不全患者を特定するのに役立つと考えられる。その使用はまた、移植待機患者の集団にまで拡大して、移植用臓器の利用を層別化したり、同所肝移植後の臓器機能を判定したりできる可能性がある。
【0020】
エンドトキシン様の体液性因子の存在は、当該因子を直接検出することにより(例えば、エンドトキシンの存在を検出することにより)評価してもよいし、また、当該因子を間接的に検出することにより評価してもよい。例えば、1つの方法は、そのような体液性因子の存在の指標としてエンドトキシン活性を検出することを含むか、または体液性因子の存在に起因する下流効果を検出することを含む。
【0021】
本明細書全体を通して、体液性因子、伝播性因子、エンドトキシン様因子およびエンドトキシンという用語は、肝疾患の患者において実施例で確認された因子を記述するために交換可能に用いられる。これらの用語は、かかる患者の血液または血漿中に見出すことができる、伝播性でありかつエンドトキシン活性を有する因子をさすものとする。
【0022】
体液性因子は血漿中で伝播性であり得る。すなわち、活性化された好中球の集団と接触している血漿に曝すことにより、正常好中球の集団において好中球の活性化を引き起こすことができる。例えば、実施例に示すように、体液性因子はこれまで活性化されていなかった好中球の活性化を引き起こす。したがって、エンドトキシン(体液性因子)の検出方法は、個体由来の血漿を、その個体由来ではない正常好中球のサンプルと接触させ、そのことがこれらの好中球において活性化のような異常な機能を引き起こすか否かを判定することを含む。好中球は、本明細書に記載する正常好中球のサンプルであれば、どのようなサンプルでもよい。例えば、好中球は、肝不全ではない個体に由来するもの、以前に検査して正常な機能をもつことがわかっている(例えば、活性化されていないことがわかっている)好中球の集団に由来するもの、または好中球細胞株に由来するものであってよい。好中球活性化のような好中球機能は、本明細書に記載の方法のいずれかにより、例えば酸化的バーストまたはMPOレベルを評価することにより、測定することができる。そのようなアッセイは個体由来の血漿サンプルに対してin vitroで実施しうる。
【0023】
好中球を活性化できる因子が肝不全を患う個体の血漿中に存在することは、その個体自身が活性化された好中球を有することを示しており、また、その個体が本明細書に記載するような高リスクに分類され得ることを示している。
【0024】
本発明者らは、血漿中の体液性因子の伝播性活性がエンドトキシンを取り除くことで除去可能であることを実証した。同様に、好中球をエンドトキシンに曝すことにより好中球の活性化を刺激することが可能である。
【0025】
したがって、伝播性因子に関するアッセイは、エンドトキシンまたはその作用効果の検出に適応させることができる。例えば、そのようなアッセイによって、個体由来の血漿中のエンドトキシンの存在またはそのエンドトキシンの特定の作用効果を検出しうる。エンドトキシンの存在または活性は当技術分野で公知の方法を用いて検出可能である。
【0026】
エンドトキシン活性の測定はいろいろな方法で行うことができる。例えば、本発明の方法は個体の好中球機能を評価することを含む。本明細書に記載するように、多くの方法を用いて好中球の機能を評価することができる。それは、好中球の食作用能を評価するか、または酸化的バーストや脱顆粒のような他の重要な好中球機能を果たすその能力を評価することによって行われる。好中球活性化の特定の生化学的作用、例えば反応性酸化体の放出、または好中球の集団によるMPO活性化に続く次亜塩素酸の生成を評価してもよい。
【0027】
エンドトキシンの存在またはその量についてはいろいろな方法で評価することができる。それには、エンドトキシン、エンドトキシン活性またはエンドトキシンの下流効果を検出および/または測定して、正常個体におけるエンドトキシン、エンドトキシン活性またはエンドトキシンの下流効果の存在、量、またはレベルと比較することが含まれるであろう。例えば、それには、個体における好中球の機能を検出および/または測定して、正常好中球の同一または同等機能と比較することが含まれる。例えば、肝不全を有する個体由来のサンプル中のエンドトキシンの存在、量または効果(例えば、好中球機能)を、その個体に由来するものではないサンプル(例えば、好中球のサンプル)のような対照サンプル中のエンドトキシンの存在、量または効果(例えば、好中球機能)と比較する。比較用の対照サンプルは、正常な肝機能を有する個体といった、肝疾患を有しない個体または肝不全を有しない個体に由来するものでよい。正常に機能している好中球などの正常サンプルとのそうした比較は、肝不全を有する個体におけるエンドトキシンレベル(例えば、好中球機能)が正常であり、したがってその個体は本明細書に記載した要因のリスクが低いのか、あるいは、エンドトキシンレベル(例えば、好中球機能)に異常があり、そのためその個体は本明細書に記載した要因のリスクが高いのか、についての評価を可能にするだろう。
【0028】
あるアッセイでは、特定の方法で反応するサンプル中の好中球の割合を評価することができる。他のアッセイでは、集団の全体的な反応を定量化することができる。その他のアッセイでは、好中球集団内の各好中球の平均反応を評価してもよい。さらに別のアッセイでは、サンプル中の特定の因子の存在または非存在を評価または定量化してもよい。
【0029】
アッセイがエンドトキシンの存在、活性または効果(例えば、好中球機能)の測定の定量化を必要とする場合には、肝疾患を有する個体に関して得られた量が、対照について得られた量と比較される。その量が同じであるか近似する場合、その個体におけるエンドトキシンは正常と見なされ、その個体を低リスクに分類する。対照に近似する量は、その対照と1%未満、2%未満、5%未満、10%未満、または20%未満異なっていてよい。その量が異なる場合には、その個体におけるエンドトキシンは異常と見なされ、その個体を高リスクに分類する。対照と異なる量は、1%を超えて、2%を超えて、5%を超えて、10%を超えて、または20%を超えて対照と異なっていてよい。差異があるか否かを評価するのに好適な閾値は、採用した特定のアッセイに基づいて決定される。例えば、アッセイが対照サンプル間で高度のバラツキを有する場合、対照からのより大きな分散(不一致)が本発明に従って差異と見なされる。アッセイにそれほどバラツキがなく、対照サンプルがより大きな一致性を示す場合は、対照からのより小さい差異がそうした差異とみなされる。
【0030】
以下でさらに説明するように、肝不全サンプル(例えば、好中球)と正常サンプル(例えば、好中球)との直接比較をあらゆる場合に実施する必要はないかもしれない。一部の検査では、多数の個体から得られた結果に基づいて、閾値またはカットオフレベルを設定することが可能であろう。その後、個体から得られた結果を、別のサンプルと比較するのではなく、その閾値またはカットオフレベルと比較することによって、エンドトキシン(例えば、好中球機能)が正常であるのか異常であるのか、また、その個体が高リスクに分類されるのか低リスクに分類されるのか、を決めることができる。
【0031】
一態様において、好中球機能は好中球活性化のレベルである。正常対照者由来の好中球と比較したときの好中球活性化のレベル上昇は、その個体において本明細書に記載した要因のリスクが高いことを示している。実施例に示すように、本発明者らは、一部の個体(低リスクに分類される)では好中球が概ねプライミングされているものの活性化されておらず、一方、他の個体(高リスクに分類される)では好中球が概ね活性化されていることを見出した。プライミングされた好中球はいつでも細菌チャレンジに応答できる状態にある。好中球のプライミングは微生物チャレンジに対して増大した応答をもたらす機能的および構造的変化を伴っており、当技術分野で十分に説明されている。活性化された好中球についても当技術分野で十分に記述されている。それらにはfMLPに対する過度の応答または本明細書に記載する「高い休止時バースト」(high resting burst)を有する好中球が含まれる。
【0032】
好中球活性化はさまざまな方法で評価することができる。1つの方法は、例えば細菌のような微生物によるチャレンジの際に、更なる酸化的バーストを生じる好中球の能力を評価するものである。好中球の酸化的バースト反応を通常もたらすと考えられるチャレンジはどれも、そうした方法に使用することができる。例えば、チャレンジはfMLPのような細菌によるものであってよい。
【0033】
本発明者らは、プライミングされ活性化された好中球への新たな細菌チャレンジの提示が更なる酸化的バーストを生じる該細胞の能力の欠如と関連することを見出した。したがって、本明細書に記載した要因について高リスクに分類される個体の好中球は、そのようなチャレンジに対して低リスク個体の好中球よりも小さい応答を示すであろう。それゆえに、正常好中球の応答と比較して低下した、そのようなチャレンジに対する酸化的バースト応答は、その個体が本明細書に記載した要因について高リスクに分類されるべきであることを示している。正常好中球による応答に類似している酸化的バースト応答は、その個体が本明細書に記載した要因について低リスクに分類されるべきであることを示している。それは、酸化的バーストの休止時レベルが高リスク群の個体ではより高いので、チャレンジが酸化的バースト応答をそれ以上高められないからである、と考えられる。
【0034】
したがって、好中球活性化は酸化的バーストの休止時レベルを測定することによって評価することができる。この休止時レベルは低リスク個体由来の好中球よりも高リスク個体由来の好中球において高くなるだろう。したがって、正常好中球での酸化的バーストの休止時レベルと比較して増加した酸化的バーストの休止時レベルは、その個体が本明細書に記載した要因について高リスクに分類されるべきであることを示している。正常好中球での酸化的バーストの休止時レベルに類似している休止時レベルは、その個体が本明細書に記載した要因について低リスクに分類されるべきであることを示している。
【0035】
好中球活性化はまた、上記のようにチャレンジした際に休止時レベルからの酸化的バーストの変化を測定することによっても評価することができる。上で説明したとおり、酸化的バーストの休止時レベルが高い好中球は、そのようなチャレンジに対して強く応答する能力を持ち合わせていないだろう。それゆえ、すでに活性化された好中球は、そうしたチャレンジの際に、正常好中球と比較したとき、休止時レベルからの酸化的バーストの増加が減るだろう。そうしたチャレンジの際に休止時レベルからの酸化的バーストの増加が少ないということは、その個体が本明細書に記載した要因について高リスクに分類されるべきであることを示している。チャレンジの際の休止時レベルからの酸化的バーストの増加が正常好中球のチャレンジの際に見られるものと同様であるとき、それは、その個体が本明細書に記載した要因について低リスクであることを示している。
【0036】
酸化的バーストや好中球顆粒放出といった好中球の活性化は、さまざまな方法で評価することができる。これは、好中球そのものの変化またはそのような活性化から生じる好中球の環境の変化を評価することにより達成しうる。例えば、それは酸化的バーストまたは好中球顆粒放出の間に放出される物質の存在を検出することで達成される。かかる物質はその存在を検出および/または測定することにより直接検出してもよいし、かかる物質の作用効果を検出および/または測定することにより間接的に検出してもよい。これらの物質は血液中、血液の画分もしくは抽出物中、または検査すべき好中球を含むin vitro溶液中で直接検出可能である。直接または間接的に検出可能な物質としては、反応性酸化体、ミエロペルオキシダーゼ、過酸化水素、デフェンシン、殺菌性透過亢進タンパク質(bactericidal/permeability increasing protein: BPI)、ならびにセリンプロテアーゼである好中球エラスターゼおよびカテプシンが挙げられる。
【0037】
そのような物質の検出方法は当技術分野でよく知られている。例えば、Phagoburst(登録商標)キット (Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ) はジヒドロローダミン123を用いて反応性酸化体の存在を検出し測定するものである。したがって、本発明の方法は、好中球のサンプルにジヒドロローダミン123のような試薬を添加し、酸化して、サンプル中の反応性酸化体の存在および量を、休止状態でまたは好中球のチャレンジ時に、検出することを含む。反応性酸化体を検出できる試薬であれば、どれを利用してもよく、選択した試薬に応じて適当な検出ステップを選ぶことができる。
【0038】
好中球活性化を検出するための別の方法は、好中球から血漿へのミエロペルオキシダーゼ(MPO)の放出を検出するものである。例えば、CardioMPO(商標)テスト(PrognostiX社、米国オハイオ州)はヒト血漿中のMPO濃度を測定するためにサンドイッチELISAを使用する。MPOは直接検出することもできるし、過酸化水素の添加後に血漿サンプル中に生成される次亜塩素酸のレベルを評価するなどして、間接的に検出することもできる。実施例に示すように、MPO活性の評価は、血漿、グアヤコールおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムを含む溶液に過酸化水素を添加して、この反応をモニタリングすることにより行うことができる。470nmの可視光吸収の変化を用いてMPO活性の比率を算出しうる。かかるアッセイは、全血ではなく血漿で行うことができるため生細胞の保存の必要性がなく、特に有用である。こうして、好中球から放出されたミエロペルオキシダーゼの活性は、次亜塩素酸の生成を測定することで間接的に評価することができる。したがって、休止状態での、またはチャレンジ時の、好中球によるミエロペルオキシダーゼの放出は検出および/または定量化が可能である。休止状態でのMPO活性またはMPO放出のレベル上昇は好中球活性化のレベル上昇を示している。
【0039】
好中球活性化の他のテストと同様に、活性化された好中球においては、MPOのような脱顆粒により放出された物質がより高い休止期レベルで存在しうる。このような物質のチャレンジ応答時の放出は好中球が活性化されている場合には減少し、チャレンジ時の休止期レベルからの増加が活性化好中球のサンプルではより少ないと考えられる。活性化された好中球の存在を示唆するこれらの結果はいずれも、その個体が本明細書に記載するような高リスクに分類されるべきであることを示している。
【0040】
本発明に従って評価できる好中球の更なる機能は好中球の食作用(ファゴサイトーシス)である。本発明者らは、本明細書に記載した要因について高リスクに分類された個体では好中球の食作用が異常であることを観察した。したがって、正常な好中球集団による食作用と比較して、異常な食作用を有する個体は、本明細書に記載した要因について高リスクにあると分類することができる。同様の好中球食作用のレベルおよび程度は、その個体が本明細書に記載した要因について低リスクに分類されるべきであることを示している。本発明者らの観察によれば、高リスク個体では、好中球が健常対照と同様のやり方で細菌を食作用することができたものの、各好中球が食作用する細菌の数は正常好中球対照に比べて著しく少なかった。したがって、好中球がそのような損なわれた食作用能を示す場合には、その個体を高リスクに分類しうる。これは好中球集団による食作用の全体的な低下により、あるいは個々の好中球により達成される食作用のレベル低下により示される。
【0041】
食作用を定量化または評価するために、いくつかの異なる手法を採用することができる。例えば、ある方法はサンプル内の食作用を示す好中球の総数または割合を評価するものである。これはさまざまなサンプルの相対的食作用活性の指標を提供することができ、したがってサンプルは活発に食作用を行っている好中球の集団と、食作用を行っていない好中球の集団を含みうる。これとは別に、ある方法はサンプル中で起こっている食作用の総量を評価するもので、例えば所定の好中球集団に接触したとき食作用によって取り込まれる細菌の数を評価する。かかる方法は所定の好中球集団による細菌の死滅率の指標を提供しうる。好中球細胞1個あたりの死滅率は、サンプル基準で1つのサンプルに対して決定することも可能である。
【0042】
それは、そのような細胞により達成される食作用のレベルを定量化することによって、直接評価することができる。これを行うには、食作用を受ける材料(例えば細胞)を標識し、食作用を生じさせ、その後細胞が好中球による食作用を受けたか、また、どれくらい食作用を受けたかを示すために、標識を定量化し、かつ/または位置づける。例えば、Phagotest(登録商標)キット (Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ) は、FITC標識しオプソニン化された大腸菌を使用して、食作用を示す好中球の全体からみた割合と、細胞1個が取り込んだ細菌の数を測定することができる。したがって、本発明の方法は食作用を示すサンプル中の好中球の数を定量化しうる。本発明の方法は個々の好中球によって示された食作用活性のレベルを定量化してもよい。これは、個々の好中球または好中球の集団が食作用することのできる細胞の数を定量化することにより行うことができる。
【0043】
したがって、本発明によれば、好中球機能は1個体において評価される。好ましくは、個体由来のサンプルに対してin vitroまたはex vivoでそれを実施する。本明細書中で説明するように、異常な好中球機能は肝不全患者における疾患進行の予測因子として用いることができる。そのような異常機能は、好中球活性化の増加として見ることができ、例えば、休止期酸化的バーストの増加もしくは休止期脱顆粒の増加、またはチャレンジに対する酸化的バーストもしくは脱顆粒応答の減少として見られる。上で説明したように、これは酸化的バーストそれ自体を測定することにより、あるいはそのようなバースト中に放出された物質の存在または量を測定することにより検出できる。また、異常な好中球機能は食作用活性の低下によっても検出しうる。好中球活性化の増加が見られる患者と、食作用の低下が見られる患者は、本明細書に記載した要因について高リスクにあると分類される。
【0044】
異常な好中球機能の指示物質は、肝疾患を患っていない個体における相対的レベルと比較することで定量化することができる。例えば、比較のために、肝疾患を患っていない個体または肝不全を有しない個体に由来する好中球のサンプルを用いる。一般的に、比較用の対照好中球は、好中球が正常であると予想される供給源に由来すべきであり、例えば、好中球を活性化する可能性があるいかなる因子にも曝露されていない好中球の集団に由来するものである。対照好中球集団は、応答のためにプライミングされているが、活性化されていないものが好ましい。多くのそのようなサンプルを用いて、評価すべき機能についての平均的な「正常」レベルを決定することができる。こうした手法を用いると、例えば、臨床効果を特に示していると考えられる好中球活性化、食作用または他の好中球機能の特定のレベルを設定することが可能である。
【0045】
本発明に従って、酸化的バースト検査または好中球食作用能の評価といった、好中球機能の測定を用いて個体を分類することができる。これらの方法を用いると、肝不全を有する個体を、各種の要因について高リスクにあるのかまたは低リスクにあるのか分類することが可能である。上で説明したように、個体はそれらの好中球の機能に基づいてこのようにして類別され得る。
【0046】
好中球が正常好中球(例えば、肝疾患がなく、好中球がプライミングされているが活性化されていない個体に由来するもの)と同じように概ね機能している個体は、低リスクにあると分類される。これらの個体は感染、臓器不全および死亡のような要因についてのリスクが比較的低い。これらの個体は免疫抑制剤、コルチコステロイドおよび抗生物質のような従来の肝不全治療に比較的応答しやすいと考えられる。
【0047】
好中球が正常に機能していない個体は高リスクのカテゴリーに入る。本明細書に記載するように、異常な好中球機能は、例えば好中球活性化の増加または食作用の低下として見ることができる。そのような好中球は応答についてプライミングされているが、チャレンジに対して正常に応答できないほど、すでに活性化されている可能性がある。このカテゴリーに入る個体は感染のリスク、臓器不全のリスクおよび死亡のリスクが上昇している。これらの個体における臓器不全および死亡のリスク上昇は感染のリスク上昇の直接的な結果であるかもしれない。そのような高リスク個体はまた、免疫抑制剤、ステロイド、抗生物質といった肝疾患の従来の治療に対して不応答者である可能性が高い。特に注目すべき点は、本発明者らが実施した研究において、この高リスク群の患者が、しばしば同一病院への入院中に、抗生物質療法にもかかわらず多剤耐性の非定型生物に感染したことである。このような治療を高リスク個体に用いると、これらの個体における感染のリスクがさらに上昇し、臓器不全や死亡といった感染の結末を招きかねない。
【0048】
したがって、肝不全の個体における異常な好中球機能は、感染および/または臓器不全の可能性の増加、死亡率の上昇、ならびに患者がステロイド、抗生物質または免疫抑制療法に十分に応答する可能性の減少を示している。
【0049】
本明細書中で報告した結果は、免疫抑制療法について肝不全患者を選別する際にも重要な意味合いをもつと考えられる。アルコール性肝炎のような肝疾患のルーチン治療のためのコルチコステロイドと抗TNF戦略の使用には異論がつきまとうが、それらが選ばれた患者において有効であることにはほとんど疑いがない。本明細書に記載した方法は、そうした治療を考えてみたほうがよい患者と、そうした治療を回避したほうがよい患者の選別を可能にしうる。これはまた、感染のリスクが上昇している患者の識別をも可能にする。その後、かかる個体を注意深くモニタリングし、そうした感染が起こるのを避けるために、より厳しいチェックと処置を受けさせることができる。
【0050】
理想的には、本発明の方法でもたらされる結果は死亡などの具体的転帰を予測すべきであり、すなわち、理想的には当業者が本方法に基づいて臨床転帰(例えば、生存または死亡)を判定できることが望ましい。
【0051】
これは受信者動作特性(ROC)曲線によって達成することができる。この曲線はさまざまな異なるカットポイントについての臨床試験の感度と特異度との関係を探るものであり、したがって、最適なカットポイントの決定を可能にする。すなわち、あるカットポイントより上では肝不全の有害転帰(例えば、感染リスクの上昇、死亡率の上昇、免疫療法に対する応答性の減少)が示され、それより下ではより有望な予後が示される、そのようなカットポイントを選択することが望ましいだろう。
【0052】
臨床試験の性能に関する通常の判定基準は感度と特異度である。感度とは、疾患が実際に存在するときに、その疾患(または本発明の場合には転帰)が存在すると診断される確率のことであり、特異度とは、疾患が実際に存在しないときに、その疾患が無いと診断される確率のことである。理想的には、感度と特異度はどちらも1であるべきである。しかし、感度と特異度の一方を向上させようとしてカットポイントを変えると、通常は他方の低下を招くであろう。
【0053】
ROC曲線は最適なカットポイントを確定するためのグラフィックな技法である。ROC曲線を作成するためには、それぞれの可能なカットポイント値の感度と特異度を計算する必要がある。ROCグラフを作成する場合、X軸に1−(マイナス)特異度をとり、Y軸に感度をとる。左下コーナーから右上コーナーまで対角線を引く。このグラフは識別力なしに検査の特性を反映している。グラフが左上コーナーに近づけば近づくほど、ケースと非ケースとが良好に識別される。この検査の精度指数は曲線下面積であり、この数値が1に近づくほど、検査の識別力が向上する。
【0054】
したがって、ROC曲線を用いて本発明のアッセイのためのカットポイントを確定することができる。そのカットポイントより高いスコアは有害転帰を示す一方で、そのカットポイントより低いスコアは非有害転帰を示す。
【0055】
カットポイントは検査の必要条件に応じて選択することができ、例えば、偽陽性を排除することがより重要であるのか、または全ての真陽性を確認することがより重要であるのかに応じて選択する。今後死亡すると予想される肝不全の入院患者を識別するための検査の場合には、そうした患者をすべて識別することが大切であり、その場合のカットポイントは多くの偽陽性者をも十分に識別しうるものである。
【0056】
適切なカットポイントは当業者によって確定され得る。実施例に示したように、Phagoburst(登録商標)キットを用いると、55%休止期バーストのカットポイントは、アルコール性肝硬変の患者とアルコール性肝炎を併発した肝硬変の患者における生存を評価したとき、有用な予測因子であることが示された。そのような休止期バースト55%のカットオフは、死の予測に対して感度75%および特異度64%を有していた。この検査を用いて、休止期酸化的バーストが55%より低い患者は、感染のリスクがより少なく、死亡率がより低く、ステロイド療法のような免疫抑制療法に応答する可能性がより高いと分類される。この検査を用いて休止期酸化的バーストが55%より高いまたはそれに等しい患者は、感染のリスクが上昇しており、死亡率が高く、ステロイド療法のような免疫抑制療法に応答する可能性が低いと分類される。
【0057】
本実施例はまた、Phagotest(登録商標)アッセイでのGMFI 42%のカットオフが死の予測に対して感度86%および特異度76%を有することを示している。標準GMFIが42%より低い患者は、感染のリスクが上昇しており、死亡率が高く、ステロイド療法のような免疫抑制療法に応答する可能性が低いと分類される。このアッセイで標準GMFIが42%より高いまたはそれに等しい患者は、感染のリスクが少なく、死亡率が低く、免疫抑制療法に応答する可能性が高いと分類される。
【0058】
あるいはまた、本発明の方法を用いて、個体についての相対的または比較的な予後情報を得ることができる。例えば、好中球機能のいくつかの測定について線形相関が存在しうるが、その際正常機能からのより大きな偏差は、肝疾患の次第に高まる重症度または患者の次第に増大する予後不良と相関している。
【0059】
本発明の方法は、肝疾患および肝性脳症の重症度を評価するための、さらには被験者の予後をも評価するための、1以上の追加のスコアリングシステムと組み合わせて実施することができる。例えば、約2、3、4またはそれ以上から約5、6、7、8またはそれ以上のスコアリングシステムを本発明の方法と組み合わせる。そのような追加のスコアリングシステムとしては、Child-Pugh、West Haven Criteria、Glasgow Coma Scaleまたは改変Child-Pughスコアリングシステムが挙げられる。これとは別に、またはこれに加えて、DF、SOFA、MELDまたはAPACHE IIスコアリングシステムを使用してもよい。ポイントは、血清ビリルビンレベル、血清アルブミンレベルを含むパラメーターと、腹水または脳障害の存在を含む徴候とに割り当てられる。治療すべき被験者はChild-PughクラスA、BまたはCに分類することができる。一般には、治療すべき被験者はChild-PughクラスCに分類される。
【0060】
肝機能の評価は広範な状況において有用でありうる。例えば、本方法は肝機能不全の患者を肝機能不全でない患者から区別することができる。こうして、本発明の方法を用いて肝疾患の進行のモニタリングが可能であり、特に、有害転帰になりそうな患者を識別できる。すなわち、本発明の方法を用いることにより肝疾患の転帰、特に肝不全を予測することができる。
【0061】
したがって、本発明は肝疾患を有する個体に適した治療の選択を可能にする。エンドトキシンのレベルもしくは活性の増加または異常な好中球機能(例えば、本明細書に記載するような好中球活性化の増加または好中球食作用の低下)を示す患者は、従来の肝疾患の治療法、例えばステロイド治療、抗生物質投与および免疫抑制療法にあまり応答しないと考えられる。実際、そのような患者に免疫抑制療法を施すと、感染および死亡のリスクが増加して、その患者の予後が悪化するようである。それゆえ、本発明は、個体が異常なエンドトキシンレベルもしくは活性または好中球機能を示すか否かに応じて、その個体における肝不全の治療に適した手法の選択を可能にする。患者が異常なエンドトキシンレベルもしくは活性または好中球機能を示さない場合には、免疫療法、抗生物質投与またはステロイド治療が効を奏すると期待される。
【0062】
肝不全は肝疾患の最終段階である。肝不全は発症の急速性に応じていくつかのタイプに分けられる。急性肝不全は急速に発症するが、慢性肝不全は発症までに何ヶ月も何年もかかる。定義によれば、脳障害が現れるほど肝臓が病気に冒されているか肝機能が低下している場合に肝不全が生じる。進行性の肝疾患はどれも肝不全を引き起こしうる。例としては、アセトアミノフェンの毒性、肝硬変、ウイルス性肝炎、および転移性肝癌が挙げられる。肝疾患の他の徴候、例えば黄疸、腹水、肝性口臭、血液凝固障害などは、肝臓がその正常な生理的義務を果たす上でトラブルを抱えていることを示すが、精神状態の変化が現れるまではそれを肝不全と呼ばない。
【0063】
肝疾患または肝不全の患者の予後は、その症状が多くの原因によるため、推測するのが困難である。しかし、本発明によれば、肝疾患の臨床転帰を、特に急性肝不全の患者のみならずACLF(慢性肝不全急性化)の患者においても、予測することが可能である。それはアルコール性肝炎を有する患者における臨床転帰を予測する上で特に有用である。
【0064】
したがって、本発明の方法は、肝臓が代償不全である個体または肝性脳症を示す個体に対して実施することができる。個体の肝臓は代償期にあるものでもよい。本方法は好ましくは肝不全になっている個体に対して実施される。個体は慢性肝疾患を有する者でもよい。個体は、例えばアルコール性肝炎を併発したまたは併発していない、肝硬変を有する者でもよい。個体は急性肝不全を有する者でもよい。個体は肝性脳症を有する者でもよい。
【0065】
急性および慢性肝疾患の発症は生体異物に起因しうる。例えば、個体は、肝損傷を引き起こす化学薬品、薬物またはその他の物質に曝されたことがある者である。個体は、肝損傷を引き起こすような、店頭販売された薬物、処方された薬物、または「耽溺性があり乱用される」薬物に対する反応を有する者でもよい。個体は、Rezulin(商標)(トログリタゾン;Parke-Davis社)、Serzone(商標)(ネファゾドン;Bristol-Myers Squibb社)、または肝損傷を引き起こすと考えられるその他の薬物を摂取していた者であってもよい。個体は、特定の薬物を過剰量摂取したか、または肝損傷を引き起こしうる薬物の推奨投与量を超過した者であってもよい。例えば、個体は、過剰量のパラセタモールを摂取した者である。個体は、例えばその仕事場などで、肝損傷を引き起こしうる化学薬品に曝された者でもよい。例えば、個体は工業または農業分野でそのような化学薬品に曝露された者である。個体は、肝損傷を引き起こしうる化合物を含む植物を摂取した者でもよく、特に、これは個体が草食動物のような動物の場合に当てはまる。例えば、個体はオグルマ(ragwort)のようなピロリジジンアルカロイドを含む植物を摂取した者である。個体は、肝損傷を引き起こすと考えられる環境毒素に曝された者であってもよい。
【0066】
薬物に関係した肝毒性は、急性肝疾患(急性肝不全)を伴う全症例の50%以上を占める。アセトアミノフェン(パラセタモールおよびN-アセチル-p-アミノフェノールとしても知られる)の毒性は、米国および英国における急性肝不全の最も一般的な原因である。アセトアミノフェンを治療用量またはやや過剰用量で服用する適量から大量の長期飲酒者には、重度の肝障害と、恐らくは急性肝不全のリスクがある。飲酒によってアセトアミノフェンの毒性効果が増強される。また、特異体質性薬物毒性も急性肝不全の一因となる。特異体質性薬物毒性は、個体が薬理学的に異常な方法で薬物に応答する過敏性反応であると考えられる。この異常な反応が急性肝不全をもたらす可能性がある。
【0067】
急性肝不全または慢性肝疾患は病原性生物の感染によっても引き起こされる。例えば、肝疾患はウイルス感染に起因しうる。特に、個体は肝炎を引き起こすウイルスに感染しているか、または感染していた者である。個体は慢性ウイルス性肝炎を有する者でもよい。ウイルスは、例えば、B型、C型、またはD型肝炎ウイルスである。場合によっては、特に個体がウイルス性肝炎を有する場合、その個体はHIV-IまたはIIにも感染している可能性がある。個体はAIDSでありうる。個体が肝疾患を引き起こす他の生物(特に、その生活環のある時期に肝臓に存在する生物)に感染していたか、または感染していることが考えられる。例えば、個体は肝吸虫を保有するか、または保有していた者である。
【0068】
個体は、慢性肝疾患を引き起こすか、またはそのリスクを高める遺伝的疾患を有する者でありうる。例えば、個体は肝ヘモクロマトーシス、ウイルソン病またはα1-アンチトリプシン欠損症の1以上を有する者である。個体は、肝線維症の可能性を高めるような、肝臓におけるある種の構造または機能異常を引き起こす遺伝的障害を有する者でもよい。個体は、肝臓に損傷を与え、それゆえに肝線維症の一因となりうる自己免疫障害を発症するような遺伝的素因を有する者でもよい。
【0069】
慢性肝疾患はアルコール誘導性でありうる。治療すべき男性または女性はアルコール中毒であるか、またはアルコール中毒であった者である。その男性または女性は、平均50単位以上のアルコール/週、60単位以上のアルコール/週、75単位以上のアルコール/週、さらには100単位以上のアルコール/週を摂取しているか、または摂取していた者である。その男性または女性は、平均100単位までのアルコール/週、150単位までのアルコール/週、さらには200単位までのアルコール/週を摂取しているか、または摂取していた者である。1単位のアルコールの測定量は国ごとに相違する。ここで、英国標準に従うと1単位は8グラムのエタノールに等しい。
【0070】
その男性または女性は、そのようなレベルのアルコールを5年以上、10年以上、15年以上、または20年以上にわたり摂取していた者でありうる。個体は、そのようなレベルのアルコールを最長10年間、最長20年間、最長30年間、さらには最長40年間摂取していた者でありうる。アルコール誘導性肝硬変の場合には、個体は、例えば、25歳以上、35歳以上、45歳以上、さらには60歳以上の年齢でありうる。
【0071】
個体は男性または女性のいずれでもよい。女性は男性よりアルコールの有害作用を受けやすいと考えられる。女性は男性より短い時間枠で、しかもより少ない量のアルコールからアルコール性慢性肝疾患を発症する傾向がある。女性の方がアルコール性肝損傷を受けやすいとする理由を説明する単一の要因はないようだが、アルコール代謝に及ぼすホルモンの影響が重要な役割を果たしていると考えられる。
【0072】
このように、個体はアルコール性肝炎を患う者でありうる。アルコール性肝炎は、異常な検査結果が疾患の唯一の指標である軽度の肝炎から、黄疸(ビリルビン滞留によって起こる皮膚の黄染)、肝性脳症、腹水、出血性食道静脈瘤、異常な血液凝固、および昏睡などの合併症を伴う重篤な肝機能不全まで広範囲に及ぶ。
【0073】
本発明において、個体は、肝損傷を起こすことが知られている多くの他の病状、例えば、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性慢性活動性肝炎、および/または住血吸虫症(寄生虫感染)の1以上を有する者でありうる。個体は胆管遮断を有するか、または有していた者でもよい。場合によっては、肝疾患の根本原因が不明であってもよい。例えば、個体は原因不明の肝硬変を有すると診断された者である。したがって、その個体は本明細書に記載した病状のいずれかを有する疑いがある。
【0074】
急性肝不全および肝性脳症のような肝疾患の診断方法は当技術分野でよく知られており、特に、当分野の臨床医や獣医には周知である。好ましくは、個体は、例えば医療または獣医療専門家により、肝疾患および肝性脳症を有すると診断された者である。個体は、肝疾患に伴う1以上の症状、例えば黄疸、腹水、皮膚の変化、体液滞留、爪の変化、あざができやすい、鼻血、食道静脈瘤のうち1以上を示す者であり、また、雄性個体では乳房腫大を有する者でもよい。個体は消耗、疲労、食欲喪失、吐気、衰弱および/または体重減少を示す者でありうる。個体はまた、肝性脳症に伴う1以上の症状、例えば錯乱、見当識障害、痴呆、昏迷、昏睡、脳浮腫、多臓器不全(呼吸不全、心血管不全もしくは腎不全)、筋硬直/筋固縮、発作、または言語障害のうち1以上を示す者でありうる。治療対象の個体は、肝疾患を治療するための他の薬物を服用していても、服用していなくてもよい。治療対象の個体は肝性脳症を発生するリスクがある者でもよい。
【0075】
肝疾患は、超音波のような技術を含めて、物理的検査により確認されたものであっても、これから確認されるものでもよい。線維症、壊死細胞、細胞の変性および/または炎症、ならびに、肝疾患に特有のその他の特徴の形成を見つけるために、肝生検材料を採取されたことがあってもよい。個体の肝機能が損傷されているかどうかを決定するために、個体の肝機能を評価されたことがあってもよい。肝疾患の性質および根本原因を特性解析することもできる。肝疾患の原因物質に対するあらゆる曝露歴を調べることもできる。
【0076】
治療対象の個体は、肝性脳症エピソードのリスクがある者、例えば、肝移植の待機患者、手術および/または門脈高血圧症の患者でありうる。肝性脳症エピソードのリスクがある者とは、肝性脳症エピソードを患ったことがないか、または長期間(約12週間以上)にわたり肝性脳症エピソードを患ったことはないが、肝性脳症エピソードのリスクを生み出す障害または病状を有する者である。肝性脳症エピソードとは、肝疾患または肝機能不全を有する患者に脳機能不全が存在することを特徴とする臨床症状である。肝性脳症における精神障害は、主な影響がクォリティー・オブ・ライフの低下である最も軽度のものから、昏睡、そして最終的には死に至る重篤なものまで広範囲に及ぶ。
【0077】
本発明においては、個体におけるエンドトキシンが検出される。典型的には、本方法は個体由来のサンプルを用いてin vitroまたはex vivoで実施される。本方法がエンドトキシンまたはエンドトキシン活性の直接検出を含む場合、通常、サンプルはエンドトキシンを含むと予想される組織または体液に由来するものである。本方法がエンドトキシンの下流効果の検出を含む場合は、通常、その効果が予期される組織または体液に由来するものをサンプルとする。本方法が好中球機能の評価を含む場合、一般的に、サンプルは好中球を含むことが知られている組織または好中球と接触している組織に由来するだろう。
【0078】
典型的には、サンプルは個体の体液を含む。サンプルは個体由来の血液のサンプルであってよく、例えば、好中球を含む血液のサンプルである。サンプルはある種の成分(例えば、好中球)を存在させておくが他の成分を取り除くように処理された血液サンプルとすることができる。例えば、サンプルは分画された血液サンプルであってよく、好中球を含む画分が選択される。好中球機能は好中球の集団または個々の好中球において評価することができる。例えば、サンプル中の、特別の性質または応答を有する好中球の割合を測定するアッセイもあれば、個々の好中球の特性または機能を評価するアッセイもある。好中球と接触している血液の一成分をサンプルとしてもよい。サンプルは好中球を含むものでもよいし、含まないものでもよい。細胞を含まないサンプルでもよい。例えば、サンプルは個体由来の血漿サンプルでありうる。そうしたサンプルの取得はどのような適切な方法で行ってもよい。血液、血漿およびその他の血液画分の取得方法は当業者によく知られている。
【0079】
本発明はまた、個体における肝不全の転帰を予測するための検査キットを提供し、この検査キットは個体のエンドトキシンを検出する手段を含んでなる。これらは本明細書に記載した方法を実施するためのどのような手段でもよい。例えば、前記キットはエンドトキシンの存在および/または量を検出するための手段、あるいはエンドトキシンの下流効果の存在および/または量を検出するための手段を含む。例えば、一実施形態において、前記キットは個体における好中球機能のレベルを測定するための手段を含む。そのようなキットは、好中球のサンプルと、好中球が活性化されているかどうかを判定するための手段を含むことができる。
【0080】
本発明の検査キットは、場合により、適切な1種以上のバッファー、酵素(例えば、Taqポリメラーゼのような熱安定性ポリメラーゼ)および/または対照ポリヌクレオチドを含んでいてもよい。本発明のキットはまた、適切な包装と、個体における肝疾患の転帰を予測するための方法に用いる説明書を備えていてもよい。
【0081】
本発明の検査キットは肝疾患の治療に有用な薬剤を含むことができる。そのようなキットに加えるのに適した薬剤は本明細書に記載した薬剤である。
【0082】
本発明は肝不全の治療方法を提供し、この方法は、本明細書に記載した方法によって個体のエンドトキシンを検出し、それにより該個体の予後を判定することを含んでなる。本明細書中で説明したように、異常なエンドトキシンレベル、例えばエンドトキシンの増加、エンドトキシン活性の増加、好中球活性化の上昇、または食作用の低下は、予後不良を示すものであって、感染、臓器不全および死亡といった要因の可能性を増大させ、かつ個体がステロイド治療、抗生物質治療および免疫抑制治療などのいくつかの治療形態にプラスに応答する可能性を減少させる。前記治療方法はさらに、肝不全の治療に有用な薬剤を治療上有効な量で個体に投与することを含んでなる。
【0083】
こうして、肝不全の治療に有用な薬剤は、個体における肝不全の治療に使用するためのものであり、ここで該個体は本明細書に記載したようにエンドトキシン、エンドトキシン活性、またはエンドトキシンの下流効果が増大している者である。例えば、その個体は本明細書に記載した方法を用いて予後不良と確認された者である。本発明はまた、上で説明した方法を用いて予後不良と確認されたまたは確認しうる個体の肝不全の治療方法に用いるための医薬の製造における、肝不全の治療に有用な薬剤の使用を提供する。
【0084】
エンドトキシン(例えば、好中球機能)を評価することによって得られた情報を用いて、適当な治療薬を選択することが可能である。例えば、エンドトキシン評価によって個体が本明細書に記載したような高リスクに分類される場合には、免疫抑制剤、ステロイドおよび抗生物質のような治療薬は避けたほうがよい。エンドトキシン評価によって個体が本明細書に記載したような低リスクに分類される場合には、その個体の治療のために免疫抑制剤、ステロイドおよび抗生物質のような治療薬を選択してもよい。個体に直接投与するのに適している薬剤もあれば、ex vivoで(例えば、個体からの血液または血漿のサンプルに対して)使用しうる薬剤もある。好適な投与プロトコールは用いる薬剤ごとに医師によって決定される。
【0085】
したがって、本発明は肝不全の治療方法を提供し、この方法は、上で説明した方法を用いて個体が異常なエンドトキシンを有するかどうかを判定し、そして
(a) 個体が異常なエンドトキシン(例えば、異常な好中球機能)を有する場合には、該個体に、免疫抑制効果のない肝不全治療用の薬剤を治療上有効な量で投与すること、または
(b) 個体が異常なエンドトキシン(例えば、異常な好中球機能)を有しない場合には、該個体に、免疫抑制効果のある肝不全治療用の薬剤を治療上有効な量で投与すること、
を含んでなる。
【0086】
本発明はまた、上で説明した方法を用いて異常なエンドトキシンおよび/または異常な好中球機能および/または予後不良であると確認された個体の肝不全の治療方法に用いるための医薬の製造における、免疫抑制効果のない肝不全治療用の薬剤の使用を提供する。
【0087】
同様に、本発明は、上で説明した方法を用いて異常なエンドトキシンおよび/または好中球機能を有しないと確認された個体の肝不全の治療方法に用いるための医薬の製造における、免疫抑制機能のある肝不全治療用の薬剤の使用を提供する。
【0088】
さらなる態様において、本発明は肝疾患の治療のための特別な方法および使用を提供する。
【0089】
上で説明したように、本発明者らは、疾患の予後と関連した体液性因子の伝播活性がエンドトキシンの除去によって取り除かれることを実証した。したがって、本明細書に記載した方法および使用における肝不全の治療は、個体のエンドトキシンを除去する治療またはそのレベルを低減させる治療でありうる。例えば、本明細書で定義したような異常なエンドトキシンを有する個体は、個体の血液中を循環しているエンドトキシンのレベルを低下させるような方法で治療される。
【0090】
これは当技術分野で知られた多くの方法により達成することができる。例えば、エンドトキシンレベルを下げる薬剤を治療上有効な量で患者に投与することによりエンドトキシンレベルを低下させることができる。この薬剤はエンドトキシンに直接結合することによってその活性を低減させるものでもよいし、エンドトキシンに結合して血液からのそのクリアランスを可能にするものでもよいし、血中のエンドトキシンの構造および/または活性に他の方法で影響を及ぼすものでもよい。例えば、抗エンドトキシン抗体を投与することでエンドトキシンレベルを下げることが当技術分野で知られている。LPS結合タンパク質またはアルブミンのような他の薬剤を投与して、循環エンドトキシンのレベルを下げてもよい。同様に、エンドトキシンの活性を中和する物質(例えば、LPS中和CD-14抗体)を用いて循環エンドトキシンのレベルを低下させてもよい。
【0091】
これとは別に、循環系からエンドトキシンを直接取り除くことができる。例えば、血液または血漿をex vivoで処理してエンドトキシンを直接取り除くことが可能である。例えば、エンドトキシンと結合する物質を保持するカラムのようなエンドトキシン除去カラムに血漿を通過させる。適当な物質は当技術分野で公知であり、例えばポリミキシンB、ポリエチレンイミンなどがある。
【0092】
サンプルからエンドトキシンを取り除くための各種手法が当技術分野ではすでに記載されている。例えば、EP-A-0 129 786には、血液からエンドトキシンを除去するための、ポリスチレン繊維に共有結合で固定されたポリミキシンBの使用が記載される。Falkenhagenら (Artificial Organs (1996) 20:420) は、ポリエチレンイミンをコーティングしたビーズを用いて血漿からエンドトキシンを除去することを記載している。WO 01/23413号には、血液や血漿からエンドトキシンを選択的に取り除くために用いる、高度の分散性を有するオリゴペプチドが記載されている。米国特許第5,476,715号には、サンプルからエンドトキシンを取り除くための材料であって、アクリル酸とメタクリル酸とのポリマーから作られた、特定の粒子サイズとスペースを有する多孔質キャリアーからなる材料が記載されている。Staubachら (Transfusion and Apheresis Science (2003) 29: 93-98) は、固定化アルブミンに基づいたエンドトキシン吸着のための装置を記載している。こうして、サンプルからエンドトキシンを除くために使用できると考えられる方法が多数利用可能である。これらの方法はどれも本発明に従って使用することができるか、または本発明に従って使用するために適合させることができる。当業者であれば、適当な方法とその使用条件を選択することができるだろう。
【0093】
エンドトキシンを取り除くために肝不全の個体に由来する血液を処理する方法はex vivoで実施することができる。例えば、これは血液からエンドトキシンを選択的に除去することによって体外的に血液を処理する方法である。好中球が本明細書に記載するような異常な機能を有する場合には、この方法を用いて血中の好中球の機能を改変しうる。このようにして処理された血液は、治療目的で個体に戻されてもよいし、他の目的に使用してもよい。例えば、血液をこの方法で処理してから別の個体に輸血することができる。
【0094】
エンドトキシンの選択的除去には、血液の他の成分に優先してエンドトキシンを除去することが必要である。他の血液成分が少量だけ除去されてもよいが、除去される主成分はエンドトキシンであるべきである。場合により、エンドトキシンと一緒に除去された他の血液成分を、その後血液に戻してもよい。
【0095】
したがって、本発明は肝不全の治療方法を提供し、この方法は、個体の血流中の循環エンドトキシンのレベルまたは循環エンドトキシン活性のレベルを低下させる薬剤を治療上有効な量で個体に投与することを含んでなる。あるいはまた、肝不全の治療方法は、肝不全を患っている個体の血液または血漿からエンドトキシンを除去するステップを含んでもよい。上で説明したように、個体は本明細書に記載した方法を用いて予後不良と確認された個体、またはそのように確認しうる個体であってよい。例えば、個体はエンドトキシンレベルの上昇、エンドトキシン活性の上昇、または異常な好中球機能、例えば好中球活性化の増加もしくは食作用の低下を有する者である。
【0096】
本発明はまた、個体の肝不全の治療に使用するための医薬の製造における、個体の循環エンドトキシンレベルを下げる薬剤の使用を提供する。
【0097】
こうして、肝不全を有する個体の症状は、肝疾患の治療に用いられる薬剤を投与することで改善される可能性がある。肝疾患の治療に用いられる薬剤の治療上有効な量が、本発明の方法に従って確認されたまたは確認しうる個体に投与される。
【0098】
肝疾患の治療に用いる薬剤はさまざまな剤形で投与することができる。こうして、薬剤は経口的に、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁液剤、分散性粉剤または顆粒剤として投与することができる。疾患の治療に用いる薬剤はまた、非経口的に投与することもでき、皮下、静脈内、筋内、胸骨内、経皮、または注入法のいずれかにより投与される。また、薬剤を座薬の形で投与してもよい。医師は、特定の患者各々に必要な投与経路を決定することができる。
【0099】
肝疾患の治療に用いる薬剤の製剤化は、薬剤そのものの性質、意図する用途が医薬用なのか獣医薬用なのか、などの要因に左右される。肝疾患の治療に用いられる薬剤は、同時使用、個別使用または逐次使用するために製剤化することができる。
【0100】
肝疾患の治療に用いる薬剤は一般に、本発明では製薬上許容される担体または希釈剤を用いて、投与のために製剤化される。製薬用の担体または希釈剤は例えば等張液である。固体の経口製剤は、例えば、活性化合物と一緒に下記の物質を含むことができる:希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;飽和剤;色素;甘味剤;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに、一般に、医薬製剤に用いられる無毒かつ薬理学的に不活性の物質。このような医薬製剤は公知の方法、例えば混合、顆粒化、錠剤化、糖コーティング、またはフィルムコーティングなどの各種方法により製造することができる。
【0101】
経口投与用の分散液剤は、シロップ剤、乳剤または懸濁液剤でありうる。シロップ剤は担体として、例えばサッカロース、あるいはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを加えたサッカロースを含有しうる。
【0102】
懸濁液剤および乳剤は担体として、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有しうる。筋内注射用の懸濁液剤または溶液剤は、活性化合物と一緒に、製薬上許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコールを含んでもよく、所望の場合には、適量の塩酸リドカインを含有させてもよい。
【0103】
静脈内投与または注入用の溶液剤は担体として、例えば滅菌水を含み、それらは無菌の等張生理食塩水の形態であることが好ましい。
【0104】
肝疾患の治療に用いる薬剤の治療上有効な量は、本発明の方法を用いて肝疾患がある、またはそのような肝疾患の予後がかんばしくない、と確認されたまたは確認しうる患者に投与することができる。肝疾患の治療に用いる薬剤の用量は、各種パラメーターに従って、特に用いる物質;治療しようとする患者の年齢、体重および症状;投与経路;ならびに必要とされる治療計画に応じて決定することができる。
【0105】
この場合も、医師は個々の患者のために必要な投与経路および用量を決定することができよう。典型的な日用量は、特異的阻害剤の活性、治療しようとする個体の年齢、体重および症状、退化のタイプおよび重症度、ならびに投与の頻度および経路に応じて、体重1kg当たり約0.1〜50mgである。好ましくは、日用量のレベルは5mg〜2gである。
【0106】
個体の肝疾患の治療方法に用いるための医薬の製造には、好適な薬剤が用いられるが、その際、前記個体は、上で説明した本発明の方法に従って異常なエンドトキシン(例えば、異常な好中球機能)を有すると確認された者である。
【0107】
したがって、個体における肝疾患の治療方法は、(i)上で説明した本発明の方法を用いて、個体が異常な好中球機能のような異常なエンドトキシンを有するか否かを判定すること;および(ii)上記(i)で異常な好中球機能を有すると確認された個体に、治療上有効な量の、先に開示した薬剤、特にエンドトキシンの量または活性を下げる薬剤、を投与することを含んでなる。
【0108】
個体における肝疾患の転帰を予測するための手段と、肝臓の治療に用いる薬剤とを含む製品は、治療法によるヒトまたは動物個体の治療方法において同時、個別または逐次使用するための組合せ製剤として用いられる。したがって、このような製品は診断手段と治療手段の両方を含みうる。
【0109】
本明細書に記載するあらゆる刊行物および特許出願は、本発明が関わる分野の当業者の水準を示すものである。
【0110】
あらゆる刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願の各々が具体的かつ個別に参照として含まれるのと同じ程度に、参照として本明細書に含めるものとする。
【0111】
理解しやすくする目的で、説明および例を用いて本発明をある程度詳細に記述してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修飾が可能であることが明らかであろう。
【0112】
以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0113】
方法:
患者選別
すべての患者またはその親族からインフォームド・コンセントをとりつけ、また、この試験の承認を地域倫理委員会から受けた。アルコール性肝硬変の理由で入院した患者を、経頸静脈的肝生検が臨床的に必要とされる時に、この試験に向けてスクリーニングした。患者が次第にひどくなる黄疸、腹水、または肝性脳症グレード1もしくは2により証明されるアルコール性肝硬変の急性代償不全で入院した場合に、それらの患者をこの試験に参加させ、感染の微生物学的証拠(尿、血液、痰および腹水の一般的培養)が存在するかどうかは問わなかった。患者が<18才または>75才であり、臓器不全(強心薬の必要性、腎不全−クレアチニン>150、肝性脳症グレード3もしくは4、機械的人工換気の必要性、重症の心機能不全)、低ナトリウム血症、肝/肝外の悪性疾患、3日以内の胃腸出血の証拠を有する場合、または患者がこの試験に入る前に何らかの免疫調節療法を受けた場合には、それらの患者を除外した。
【0114】
試験デザイン
関連した電解質異常または血液量減少を修復したあと、血液サンプルを採取して、一般的な生化学、好中球機能、サイトカインプロファイル、およびチオバルビツール酸(T-BARS/修飾MDA)検出のために使用した。患者および健常ボランティアから末梢静脈血をパイロジェンフリーのチューブ(BD Vacutainer、リチウム-ヘパリン、60U/チューブ、Beckton and Dickinson社、英国 Plymouth)に無菌的に採取した。細胞を用いる実験では、血液を室温に保ち、血漿を回収するために血液をすぐに氷上に置いた。遠心分離後、血漿をパイロジェンフリーの条件下でエンドトキシンフリーのcryotube(Corning社、ニューヨーク州コーニング)に分注し、更なる分析まで−80℃で保存した。100μLの全血または50μLの単離好中球と50μLの血漿を用いてPhagoburst(登録商標)またはPhagotest(登録商標)を行った。すべての実験に対して、無菌的に作業を行い、かつエンドトキシンフリーの器具を用いることによって、エンドトキシン汚染を避けるように細心の注意を払った。ビリルビン、アルブミン、肝機能検査、凝固パラメーター、総血球数、およびC反応性タンパク質(CRP)をルーチンな方法で評価した。Maddreyの判別関数(discriminant function)およびPughスコアを計算した。患者は将来を見越して90日間にわたり追跡した。臓器機能不全の発症および死亡を記録した。血液培養物のスクリーニングを定期的に行い、大半の患者においてプレゼンテーションの時に予防用の抗生物質を使うことが我々研究班の方針であった。
【0115】
好中球
好中球は、全血アッセイ(以下に記載する)で、またはワンステップ勾配遠心による単離後に、いずれかで検討した。
【0116】
好中球活性化(酸化的バースト)および食作用:
Phagoburst(登録商標)キット(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、オプソニン化された大腸菌による刺激の存在下で、または刺激の非存在下で、反応性酸化体を生成する好中球の割合をメーカーの説明書に従って決定した。Phagotest(登録商標)(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)では、食作用を示す好中球の全体からみた割合と、個々の細胞の食作用活性とを、FITC標識しオプソニン化された大腸菌を用いて測定した(付属書類を参照のこと)。好中球を特徴的な前方散乱光と側方散乱光(図2A)にゲーティングし、その後CD16陽性細胞−FITC陽性細胞の割合(食作用を行う好中球の割合に相当する)および蛍光強度の幾何平均(GMFI)(1個の細胞が飲み込む細菌の数に相当する)を解析した(図1B、D、F)。細菌のバッチごとの差によるバラツキをなくすため、これらの結果を、用いた細菌の新しいバッチにつき少なくとも3つの健常対照サンプルの平均に対して標準化した。サンプルは3回または2回反復して解析した。
【0117】
エンドトキシンとのインキュベーション
エンドトキシン(大腸菌0111:B4 ロット085K4068、Sigma Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)は1mg/mlの原液として調製し、PBSを用いて表示濃度にそのつど希釈した。全血を水浴中37℃でそれぞれのエンドトキシン濃度と共に1時間インキュベートし、その後Phagotest(登録商標)またはBursttest(登録商標)を行った。
【0118】
患者のカラムからのエンドトキシンの除去
Detoxigelの使用:
細菌性リポ多糖のリピドA部分に結合するポリミキシンBが固定化されているエンドトキシン除去ゲルを含むDetoxi-Gel(登録商標)Affinity-pack充填済みカラム(Pierce Biotechnology社、イリノイ州ロックフォード)を用いて血漿サンプルからエンドトキシンを取り除いた。100μLのこのエンドトキシンフリーの希釈血漿サンプルを50μLの細胞懸濁液と共にインキュベートして、Bursttest(登録商標)またはPhagotest(登録商標)を示されたとおりに行った。
【0119】
CD14抗体の使用:
100μLの血漿と50μLのPBSを、5μLの抗ヒトCD14抗体(クローン11D18、Immuntools社、ドイツ、Friesoythe)(LPSを中和することが知られている)と共に60分インキュベートしてから、Phagotest(登録商標)またはBursttest(登録商標)を実施した。
【0120】
サイトカイン
市販のキット(BioSource International社、ベルギー、Nivelles)を用いて血漿TNFα、sTNFαR1、sTNFαR2、IL-6およびIL-8を測定した。
【0121】
マロンジアルデヒドおよびプロスタグランジンF2α
マロンジアルデヒド(MDA)は当技術分野で知られた修飾チオバルビツール酸反応物質アッセイを用いて測定した。遊離の8-イソプロスタンF2αは市販のEIAキット(Cayman Chemical社、ミシガン州アナーバー)により検出した。
【0122】
統計
2群の比較にはカイ二乗検定、t検定、またはマン・ホイットニー(Mann-Whitney)検定を適宜採用し、3群以上の比較にはANOVA検定をデータセットに関するTurkey(等分散)またはDunnett C(非等分散)の事後解析と共に適宜採用した。診断の正確性を評価するために、受信者動作特性(ROC)曲線を作成し、曲線下の面積(AUROC)を算出した。ログランク検定で生存の差を解析した。ピアソンの相関係数を用いて変数間の関係を評価した。結果を平均±SEMとして示す。p<0.05を有意とみなした。
【0123】
ミエロペルオキシダーゼ活性
肝疾患の異なる重症度ごとに1群10人の患者を選択した。各患者由来のサンプルで好中球の休止期バースト(%)を本明細書に記載したとおりに測定した。血漿(無細胞)のミエロペルオキシダーゼ(MPO)も評価した。
【0124】
EDTAを(抗凝血剤として)コーティングしたチューブを予め冷却しておき、このチューブに血液を採取して氷上に保存した。次に、サンプルを3000rpm、4℃で10分遠心して細胞成分を分離し、得られた血漿を回収して、分析まで−80℃で無菌cryovial中に保存した。
【0125】
分析は、血漿(50μL)を、13mMのグアヤコール(2-メトキシフェノール)と0.02%の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含有する100mMリン酸バッファー(pH7)の溶液中で37℃にてインキュベーションすることを含んでいた(全容量1mL)。5分の平衡化時間の後、1μmolの過酸化水素(H2O2)を添加して反応を開始させた。反応の進行はダイオードアレイ分光光度計を使って470nmで60分間モニタリングした。MPOの活性を(バックグラウンド吸収シグナルを除いた後の)470nmでの吸収の変化率から決定し、グアヤコール単位(26mM-1cm-1の吸光係数を用いて、1分あたり1μmolのテトラグアヤコールを生成する酵素の量として定義される)で表した。
【0126】
この方法は、Cramer et al J Immunol Methods. 1984 May 11;70(1):119-25に基づくものである。
【0127】
結果
患者特性
スクリーニングした72人の患者のうち、63人が参加した。改変NASHスコアリングシステムを用いて、肝硬変のみと比較して顕著な炎症を有するもの(肝硬変+AH)に患者を組織学的に分類した。肝硬変+AHの患者(n=23)は、肝硬変のみの患者(n=40)と比較して、より高いMELDおよびPughスコア(p<0.001)により証明されるように、より重篤な病気であった。肝硬変+AHの患者はまた、有意に高いCRP(p<0.005)、白血球(p<0.001)、ビリルビン(p<0.001)、およびプロトロンビン時間(p<0.001)を有していた。患者は対照者よりも高レベルのTNFα、IL6、IL8、sTNFαR1、sTNFαR2、MDAおよびプロスタグランジンF2αを示した。肝硬変+AHの患者はIL6、IL8およびsTNFαR2が有意に高いレベルであったが、TNFα、sTNFαR1および酸化的ストレスについては統計的に有意な変化が認められなかった。疾患の重症度との相関関係はみられなかった。ex vivo実験では、これら63人のうち16人の患者に由来する血液または血漿を用いた。これら63人の患者のベースライン臨床データは、全コホートと有意に異なっていなかった。表1は、全患者についての、ならびに高いおよび低い休止時バーストを有する亜群についてのベースライン特性を示す(以下を参照のこと)。
【0128】
アルコール性肝硬変の患者における酸化的バーストと食作用
刺激されていない患者の好中球では、好中球の酸化的バーストが対照と比較したとき増加した。アルコール性肝硬変患者由来の好中球は全体的に、健常対照者よりも5.6倍高い休止時酸化的バースト(p<0.001)を示した。肝硬変+AH患者由来の好中球は、肝硬変のみの患者(p<0.001)または対照者(p<0.001)と比較して、休止時酸化的バーストが有意に高かった(図2A)。fMLPによる刺激(プライミングを示す)は、対照者と比較して肝硬変患者(p<0.01)および肝硬変+AH患者(p<0.001)において有意に高い酸化的バースト反応を引き起こしたが、グループ間でPMAに対する応答には差異がなかった。休止時バーストとfMLP応答との差は、肝硬変患者(22.4±6.9、p=0.02)よりも肝硬変+AH患者(1.8±4.7)において有意に低かったが、このことは、肝硬変+AH患者へのfMLPの添加が当該細胞の機能をそれ以上増強できないことを示す。さらに、大腸菌による刺激後、休止時レベルからの酸化的バーストの相対的増加が、肝硬変のみ(p=0.001)または対照者(p<0.001)と比べて、肝硬変+AH患者では有意に小さかった(図2B)。
【0129】
食作用能は蛍光強度の幾何平均(GMFI)により測定したが、これは1個の細胞が飲み込む細菌の数を示している。肝硬変+AH患者では、飲み込まれた細菌が対照者よりもかなり少なかった((p=0.031、図2C)。少なくとも1個の細菌を飲み込んでいる細胞の割合はグループ間で差異がなかった。
【0130】
休止時酸化的バーストおよび食作用と感染、臓器不全および生存との関連性
17人(26%)が臓器不全を発症し、13人(試験した全患者の21%)が付属病院への入院中に死亡した。最も一般的に見られた臓器不全は腎不全であり、これは臓器不全患者のうち15人(88%)にみとめられ、そのうち4人の患者は呼吸と循環の補助が必要な多臓器不全の一部として腎不全を発症していた。90日までに、14人(22%)の患者が死亡してしまい、47人が生存しており、2人はもはや追跡調査しなかった。休止時酸化的バーストは90日生存(AUROC 0.77、p=0.003、図4A)および臓器不全(AUROC 0.76、p<0.001)を予測するのに役立つことが判明した。休止時バースト<55%のカットオフは、死を予測するにあたって77%の感度および69%の特異度を有していた。休止時酸化的バースト<55%の患者は、休止時バースト>/=55%の患者よりも有意に良好に生き残っている(p<0.005、図4B)。食作用機能もまた生存(AUROC 0.80、p=0.02、図5A)および臓器不全(AUROC 0.91、p<0.0001)を予測するのに役立った。試験した患者集団内の標準に対する42%未満のGMFIは、死を予測するのに86%の感度および76%の特異度を有していた(図5B)。
【0131】
42人(66%)の患者には、入院期間中、感染が臨床上疑われたが、参加した患者で好中球機能の評価時点に感染が証明された者は誰一人としていなかった。我々の管理プロトコールによって、感染の疑いがあるとすぐに広域スペクトル抗生物質の使用を余儀なくされるので、これらのデータはこうした状況を考慮すべきである。これらの患者のうち26人(62%)には、培養陽性感染が確認された。13人には、2種以上の生物が見つかった。休止時バーストが高い(>55%)患者は、入院中比較的早期に(8日対23日、p=0.04)、また、2種以上の多い生物(n=10; 休止時バーストが低い患者ではn=3)による、培養陽性感染をおこす可能性が高かった(57%対27%、カイ二乗 p=0.01)。肝硬変+AH患者は培養陽性感染をおこす可能性が高かった(65%対28%、p=0.004)。培養陽性感染をおこした患者は臓器不全を発症して(p=0.001)、死亡する(p=0.002)傾向が高かった。GMFIが42%より低い患者の67%は培養陽性感染をおこしたが、GMFIが42%より高い患者では、たったの21%(p=0.007)がそのような感染をおこしたにすぎなかった。GMFIの低い患者では入院中比較的早期に感染が生じた(9日対47日、p=0.03)。
【0132】
好中球の酸化的バーストに及ぼす患者血漿および正常血漿の影響
休止時バーストが高い患者(>55%; n=6)由来の血漿は正常好中球において高い休止時バーストを誘発させた(p=0.005)が、休止時バーストが低い患者(<55%; n=6)由来の血漿はそのような誘発を果たせなかった(図6)。バースト誘発効果は、血漿と細胞を混合した直後に検出可能であったが、最大1時間のインキュベーション後にも見られた(結果は示してない)。この結果は、患者の血漿中に好中球活性化を引き起こす伝播性因子が存在することを示した。
【0133】
全血アッセイで高い休止時バーストを示した患者の単離好中球を正常血漿と共にインキュベートしたとき、患者自身の血漿と共にインキュベートした好中球に比べて、休止時バーストが有意に減少した(p=0.02; 図7)。これらの実験から、血漿中に存在するある因子の除去により患者の細胞における高い休止時バーストを低下させ得ることが示唆された。
【0134】
食作用に及ぼす患者血漿および正常血漿の影響
休止時バーストが低い患者由来の血漿と共にインキュベートした正常好中球では対照との差異がなかったが、休止時バーストが高い患者由来の血漿と共にインキュベートした正常好中球ではGMFIの22%低下が示された(p=0.03、n=6)。正常血漿と60分間インキュベートした患者好中球では、患者自身の血漿と共にインキュベートした患者好中球に比べて、食作用の22%増加が示された(p=0.03、n=6)。これらの結果から、食作用機能の欠損は伝播性および可逆性の血清因子に起因しうることが示される。
【0135】
酸化的バーストおよび食作用に及ぼすエンドトキシンの影響
5人の健常ボランティア由来の血液を、次第に濃度を増加させたエンドトキシンと共にインキュベートした。休止時バーストの用量依存的増加が見とめめられた(p<0.0001、Turkey post hoc解析を用いた一元配置ANOVA;図9)。患者の好中球をエンドトキシンと共にインキュベートすることによって、相対的GMFIが20%低下した(n=8、p=0.02、図10)。これらの結果から、エンドトキシンは用量依存的に正常好中球を活性化し、それにより患者血漿とのインキュベーションで見られた作用を模倣することが示される。
【0136】
患者の血漿からエンドトキシンを除去することの効果
Detoxi-Gelカラムの使用:
全血アッセイで高い休止時バーストを有することがわかった患者からの血漿は、正常好中球において高い休止時バーストを引き出すことができた。エンドトキシンフリーの血漿(カラムを通過させて得られたもの)は正常好中球において高い休止時バーストを誘発しなかった(p<0.001、n=9)。休止時バーストが低い患者由来の血漿(p=0.91、n=4)および正常血漿(p=0.25、n=3)は休止時バーストを変化させなかった(図11)。休止時バーストが高い患者(n=11)の血漿からエンドトキシンを除去すると、未処置の血漿と共にインキュベートした細胞に比べて、GMFIが31%増加した(p=0.03)。カラムを通過させた、休止時バーストが低い患者由来の血漿(p=0.16、n=8)および正常血漿(p=0.85、n=5)は、GMFIのいかなる変化も生じさせなかった(図12)。このセットの実験は、ポリミキシンBによるエンドトキシン除去が患者血漿のバースト誘発作用および食作用低下作用を逆転させることを示している。
【0137】
LPS中和抗体の使用:
LPS中和抗ヒトCD14抗体とのインキュベーションは、高バースト患者由来の血漿による正常細胞での高バースト誘発を阻止した(p<0.001、n=7)。前記抗体の存在下での低バースト患者由来の血漿(p=0.733、n=8)または正常血漿(p=0.25、n=3)のインキュベーションはバーストを変化させなかった(図11)。LPS中和抗ヒトCD14抗体の存在下での高バースト患者由来の血漿のインキュベーションはGMFIを20%増加させる(p=0.04、n=11)が、この抗体は、低バースト患者由来の血漿(p=0.17、n=8)または正常血漿(p=0.78、n=3)を使用した場合には、GMFIのいかなる変化も生じさせない(図12)。この知見は、エンドトキシンが好中球における高い休止時バーストの誘発に関与しうるという観察を支持するものである。
【0138】
ミエロペルオキシダーゼ活性
好中球の休止時バースト(%)と血漿(無細胞)ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性の比較は有意な関係を明らかにした(図13)。これは、測定した休止時好中球活性と、血漿に放出されたMPO量との間に強い関連性があることを示している。MPOは、制御された好中球環境から放出される場合、正常な代謝機能に有害であると考えられるので、この知見は肝疾患内でおこっている損傷のメカニズムを示している可能性がある。このデータはまた、血漿MPO活性が疾患の重症度の有用な指標となりうることを示している。
【0139】
方法論
好中球活性化(酸化的バースト)および食作用
Phagoburst(登録商標)キット(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、オプソニン化された大腸菌による刺激の存在下で、または刺激の非存在下で、反応性酸化体を生成する好中球の割合をメーカーの説明書に従って決定した。簡単に述べると、100μlのヘパリン化した全血または単離した好中球(示したとおり)を20μlの細菌、N-ホルミルメチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)と共に、または刺激なしに、37℃で20分間インキュベートした。酸化的バースト中の反応性酸化体の生成をジヒドロローダミン123の添加および酸化によりモニタリングした。好中球を同定するために、細胞を抗CD16-PE抗体(IOTest(登録商標)、Beckman Coulter社)で染色し、蛍光活性化セルソーティング(FACS)(Becton Dickinson FACScan、カリフォルニア州サンノゼ)によりCellquest(商標)ソフトウェアを用いて解析した。好中球を特徴的な前方散乱光と側方散乱光にゲーティングし(図1A)、その後反応性酸素代謝産物を生成するCD16陽性細胞の割合を緑色蛍光(FL-1)の測定により決定した(図1C、E、G)。サンプルは2回または3回反復して解析した。休止時バーストに関するアッセイ間変動係数(CV)は5.4%であり、刺激バーストに関してが4.2%であった。休止時バーストに関するアッセイ内CVは4.7%であり、刺激バーストに関してが2.4%であった。
【0140】
好中球の食作用
Phagotest(登録商標)(Orpegen Pharma社、ドイツ、ハイデルベルグ)を用いて、食作用を示す好中球の全体からみた割合と、個々の細胞の食作用活性とを、FITC標識しオプソニン化された大腸菌を用いて測定した。100μlの全血または単離した好中球(以下に示したとおり)を20μlの細菌と共に37℃で20分間インキュベートし、その間陰性対照サンプルを氷上に置いておいた。好中球を同定するために、細胞を抗CD16-PE抗体(IOTest(登録商標)、Beckman Coulter社)で染色した。好中球を特徴的な前方散乱光と側方散乱光(図2A)にゲーティングし、その後CD16陽性細胞−FITC陽性細胞の割合(食作用を行う好中球の割合に相当する)および蛍光強度の幾何平均(GMFI)(1個の細胞が飲み込む細菌の数に相当する)を解析した(図1B、D、F)。細菌のバッチごとのバラツキによる結果の誤解釈をなくすため、これらの結果を、用いた細菌の新しいバッチにつき少なくとも3つの健常対照サンプルの平均に対して標準化した。3回または2回反復してサンプルを解析した。食作用の割合に関するアッセイ間CVは6.8%であり、GMFIに関してが10.1%であった。食作用の割合に関するそれぞれのアッセイ内CVは4.1%で、GMFIに関してが1.6%であった。
【0141】
好中球の単離
4mlの全血を5mlのPolymorphoprep (Axis-Shield社、ノルウェー、オスロ)の上に重層し、400g、室温で30分遠心した。2番目の界面から好中球を採取し、PBS(Sigma Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)を用いて洗浄した。好中球の数をThoma血球計でカウントし、PBS中に50μL中5×106個の細胞密度で懸濁させた。1回のアッセイにつき50μLの細胞懸濁液と50μLの血漿を使用した。トリパンブルー排除法により細胞生存率を計測したところ、98%を超えていた。
【0142】
エンドトキシン除去カラム
細菌性リポ多糖のリピドA部分に結合するポリミキシンBが固定化されているエンドトキシン除去ゲルを含むDetoxi-Gel Affinity-pack充填済みカラム(Pierce Biotechnology社、イリノイ州ロックフォード)を用いて、血漿サンプルからエンドトキシンを取り除いた。カラムを1%デオキシコール酸ナトリウム(Sigma Aldrich社、米国ミズーリ州セントルイス)により再生し、滅菌水で洗浄し、50IU/mlのヘパリン(Multipharm社、英国ワクサム)を添加した0.9%の滅菌塩化ナトリウムにより室温で平衡化した。血漿サンプルをPBSで1:1に希釈してカラムにアプライし、ボイドを捨てた後、パイロジェンフリーのサンプルチューブ中にサンプルを回収した。150μLのこのエンドトキシンフリー希釈血漿サンプルを50μLの細胞懸濁液と共にインキュベートして、示されたとおりにBursttest(登録商標)またはPhagotest(登録商標)を行った。
【0143】
サイトカイン
TNFα、sTNFαR1、sTNFαR2、IL-6およびIL-8は、エチレンジアミン四酢酸塩で凝固を防止した血漿サンプルから、市販のセット(BioSource International社、ベルギー、Nivelles)を使ってメーカーの説明書に従って測定した。サイトカインの検出下限は3pg/mLであった。アッセイ内変動係数は5.4%〜6.4%であった。対照ではIL-6とIL-8が検出不能であった。
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
感染に関する表
試験した患者において詳細に記録した培養陽性感染


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝不全を患っている個体の予後を評価する方法であって、該個体においてエンドトキシンを検出することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
前記個体におけるエンドトキシンの量が、肝不全を患っていない個体に存在する量と異なっているかどうかを判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、該個体における感染のリスクを予測するためのもの、該個体における臓器不全のリスクを予測するためのもの、該個体における死亡のリスクを予測するためのもの、または免疫治療薬、ステロイド剤もしくは抗生物質から任意に選択される薬剤を用いた治療に対する該個体の応答を予測するためのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記個体におけるエンドトキシン活性を検出することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記個体の好中球機能を評価することによってエンドトキシンを検出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
好中球機能が好中球の活性化である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸化的バーストを測定することによって好中球の活性化を評価する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
好中球の顆粒放出を測定することによって好中球の活性化を評価する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
肝不全を患っていない個体における好中球活性化のレベルと比較して、上昇した好中球活性化レベルは、
(a) 該個体における感染のリスク上昇、および/または
(b) 該個体における臓器不全のリスク上昇、および/または
(c) 該個体における死亡のリスク上昇、および/または
(d) 該個体が免疫抑制薬、ステロイドもしくは抗生物質から任意に選択される薬剤を用いた治療に対しプラスに応答しないリスクの上昇、および/または
(e) 該個体がその血中エンドトキシンレベルの低下を目的とした治療に応答する可能性の増加、
を示している、請求項6、7および8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
好中球機能が食作用である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
肝不全を患っていない個体における好中球食作用のレベルと比較して、低下した好中球食作用レベルは、
(a) 該個体における感染のリスク上昇、および/または
(b) 該個体における臓器不全のリスク上昇、および/または
(c) 該個体における死亡のリスク上昇、および/または
(d) 該個体が免疫抑制剤、ステロイドもしくは抗生物質から任意に選択される薬剤を用いた治療に対しプラスに応答しないリスクの上昇、
を示している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記個体が慢性肝不全、慢性肝不全急性化(acute-on-chronic liver failure)、または急性肝不全を患っている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記個体がアルコール性肝疾患を患っている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記個体が肝硬変および/またはアルコール性肝炎を患っている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記方法を個体由来のサンプルに対して実施する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルが血漿サンプル、全血サンプル、または全血サンプルの画分である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、
(a) 個体由来の血漿サンプルを好中球の集団と接触させること、および
(b) 上記(a)での接触が好中球の活性化をもたらすかどうかを判定すること、
を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
肝不全を患っている個体の予後を評価する方法で使用するための検査キットであって、該個体におけるエンドトキシンを検出するための手段を含んでなる、上記検査キット。
【請求項19】
好中球のサンプルと、好中球が活性化されているかどうかを判定するための手段を含む、請求項18に記載の検査キット。
【請求項20】
個体の肝不全を治療するための方法であって、
(i) 請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を用いて該個体の予後を判定すること、
(ii) 上記(i)で感染、臓器不全および/もしくは死亡のリスクが上昇している、ならびに/または該個体が免疫抑制剤、ステロイドもしくは抗生物質から任意に選択される薬剤を用いた治療に対しプラスに応答しないリスクが上昇している、と確認された個体の血中エンドトキシンレベルを低下させること、
を含んでなる、上記方法。
【請求項21】
ステップ(ii)が、前記個体の血流中の循環エンドトキシンのレベルを低下させる薬剤を治療上有効な量で該個体に投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤を個体からの血液または血漿とex vivo(生体外)で接触させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(ii)が、前記個体の血液中の好中球の機能を変えるために、血液からエンドトキシンを選択的に除去することによって該個体からの血液を体外的に処理することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
個体の肝不全の治療方法で使用するための医薬の製造における薬剤の使用であって、該個体は、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法により、感染、臓器不全および/もしくは死亡のリスクが上昇している、ならびに/または該個体が免疫抑制剤、ステロイドもしくは抗生物質から任意に選択される薬剤を用いた治療に対しプラスに応答しないリスクが上昇している、と確認された者であり、該薬剤は個体の血中エンドトキシンレベルを低下させるものである、上記使用。
【請求項25】
前記薬剤が個体からの血液または血漿とex vivo(生体外)で接触される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
療法によるヒトまたは動物個体の治療方法において同時、個別または逐次使用するための組合せ製剤としての、
(i) 個体における好中球機能を測定するための手段、および
(ii) 血中エンドトキシンレベルを低下させる薬剤、
を含んでなる製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−507795(P2010−507795A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533946(P2009−533946)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004107
【国際公開番号】WO2008/050144
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(505367464)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (20)
【Fターム(参考)】