肝細胞癌についての予測マーカーとしてのMiR−26ファミリーの使用および療法に対する反応性
本明細書中において、microRNA-26の発現が、非-癌組織と比較して肝細胞(HCC)腫瘍組織において減少されており、そして低レベルのmicroRNA-26が臨床転帰の悪さと関連していることが開示される。本明細書中において、低発現レベルのmicroRNA-26が、HCC患者におけるインターフェロン(IFN)-α療法に対する好ましい反応と相関していることも開示される。この様に、HCCと診断された患者から得られたサンプル中のmicroRNA-26発現レベルを検出する工程を含む、HCCと診断された患者の臨床転帰を予測する方法が、本明細書中において提供される。HCCと診断された患者から得られたサンプル中のmicroRNA-26発現レベルを検出する工程を含む、IFN-α療法のための候補としてのHCCと診断された患者を選択する方法もまた提供される。候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中でのmicroRNA-26の発現を増加させる薬剤を選択する工程を含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法もまた、提供される。さらに、HCCと診断された患者をIFN-α療法を含む方法で治療し、そして低レベルのmiR-26を発現する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001] 本件出願は、米国仮出願番号61/131,800(2008年6月11日出願)の利益を視聴し、この開示全体を参照により本件明細書中に明示的に援用する。
【0002】
連邦支援研究に関する言及
[0002] 本発明は、国立癌研究所グラント番号Z01 BC 010313およびZ01 BC 010876に基づく政府支援によりなされた。政府は、本発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
本発明の技術分野および産業上利用可能性
[0003] 本件開示は、HCC患者の予後診断についての予測マーカーとしてのmiR-26の同定と、インターフェロン(IFN)-α補助療法に対する反応性とを記載する。
【背景技術】
【0004】
[0004] 肝細胞癌(HCC)は、世界中で最も流行しているヒト悪性腫瘍の一つであり、米国での発症数が増加している(Parkin et al., CA Cancer J. Clin. 55(2):74-108, 2005)。HCCは、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)による感染により生じるウイルス性肝炎に由来するかまたは代謝異常または毒素性傷害に由来するかのいずれかにより生じる炎症性の肝臓を有する患者において最も頻繁に発生する。ウイルス性肝炎は、世界中の80%以上のHCC症例に寄与する(Thorgeirsson and Grisham, Nat. Genet. 31(4):339-3465, 2002;Budhu and Wang, J. Leukoc. Biol. 80(6):1197-1213, 2006)。HCCの重要な特徴の一つは、その性差であり、著しい雄性優先度である(すなわち、雌性と比較して雄性において2〜6倍も一般的である)(El Serag and Rudolph, Gastroenterology 132(7):2557-2576, 2007)。古典的なin vivo発癌実験もまた、雄性げっ歯類でのHCCへの感受性がより高いことを示している(Ghebranious and Sell, Hepatology 27(2):383-391, 1998;Nakatani et al., Jpn. J. Cancer Res. 92(3):249-256, 2001;Rogers et al., Cancer Res. 67(24):11536-11546, 2007;Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007)。さらに、雌性HCC患者は、雄性患者よりもより長い生存期間を有する傾向がある(Ng et al., Cancer 75(1):18-22, 1995;Dohmen et al., J. Gastroenterol. Hepatol. 18(3):267-272, 2003;Tangkijvanich et al., World J. Gastroenterol. 10(11):1547-1550, 2004)。これらの結果は、腫瘍生物学および宿主微小環境が、雄性と雌性との間で顕著に異なっている可能性があることを示す。
【0005】
[0005] 最近の研究により、HCCにおいて見られる性差が、クッパー細胞により生成されるインターロイキン-6(IL-6)の誘導によるものであり、それをエストロゲンにより阻害することができる可能性が示唆される(Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007)。この概念と一貫して、その他の研究は、血清IL-6が、いくつかの活動的な悪性腫瘍(HCCを含む)において非常に亢進されており、そして腫瘍細胞により生成することができるその発現が転移性疾患と予後診断の悪さとに関連していることが示された(Ashizawa et al., Gastric Cancer 8(2):124-131, 2005;Porta et al., Ann. Oncol。19(2):353-358, 2008)。これらの研究から、IL-6の前発癌性活性が性ホルモンにより制御されている可能性があり、そして活性化IL-6を伴う腫瘍が生物学的に独特なものでありそしてより活動的である可能性が示唆される。
【0006】
[0006] 外科手術は、依然として今日まで、治癒の可能性があるHCCについての唯一の有効な治療様式。しかしながら、HCCを有する患者のわずか約10〜20%しか現在のところ外科的治療にはふさわしくない。さらに、治癒的切除を受ける患者はしばしば、高い再発頻度を有する。この様に、予後診断および療法のための患者の階層化を補助する際の十分な解明を提供する診断ツールを開発する要望が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Parkin et al., CA Cancer J. Clin. 55(2):74-108, 2005
【非特許文献2】Thorgeirsson and Grisham, Nat. Genet. 31(4):339-3465, 2002
【非特許文献3】Budhu and Wang, J. Leukoc. Biol. 80(6):1197-1213, 2006
【非特許文献4】El Serag and Rudolph, Gastroenterology 132(7):2557-2576, 2007
【非特許文献5】Ghebranious and Sell, Hepatology 27(2):383-391, 1998
【非特許文献6】Nakatani et al., Jpn. J. Cancer Res. 92(3):249-256, 2001
【非特許文献7】Rogers et al., Cancer Res. 67(24):11536-11546, 2007
【非特許文献8】Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007
【非特許文献9】Ng et al., Cancer 75(1):18-22, 1995
【非特許文献10】Dohmen et al., J. Gastroenterol. Hepatol. 18(3):267-272, 2003
【非特許文献11】Tangkijvanich et al., World J. Gastroenterol. 10(11):1547-1550, 2004
【非特許文献12】Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007
【非特許文献13】Ashizawa et al., Gastric Cancer 8(2):124-131, 2005
【非特許文献14】Porta et al., Ann. Oncol. 19(2):353-358, 2008
【発明の概要】
【0008】
[0007] MicroRNAs(miRs)は、遺伝子発現を制御する小型の一本鎖RNA分子である。microR-26(miR-26)の発現が、非-癌組織と比較してHCC腫瘍組織において減少しており、そして低レベルのmiR-26が、悪い臨床転帰と関連していることが、本明細書中において開示される。低発現レベルのmiR-26がHCC患者におけるインターフェロン(IFN)-α療法に対する好ましい応答と相関することもまた本明細書中において開示される。この様に、HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含むHCCと診断された患者の臨床転帰を予測する方法が、本明細書中において提供され、ここで対照と比較した場合の腫瘍サンプルにおけるmiR-26発現レベルの減少が生存、IFN-α療法に対する好ましい応答、またはこれら両方を示唆する。
【0009】
[0008] HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含む、IFN-α療法の候補としてHCCと診断された患者を選択する方法もまた提供され、ここで対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの減少がその患者がIFN-α療法の候補であることを示唆する。
【0010】
[0009] (i)HCCと診断された患者から得られた腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程;(ii)腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを対照と比較する工程;および(iii)その患者に対する治療方法を選択する工程;を含む、HCCと診断された患者を治療する方法をさらに提供し、ここでその患者について、対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルが1/1.5倍またはそれ以上減少する場合にのみ、治療がIFN-α療法を含む。
【0011】
[00010] 本明細書中で提供される方法のいくつかの態様において、対照は、その患者から得られた非-癌組織サンプルである。その他の態様において、対照は、健康被検体由来の肝臓サンプルまたは基準値である。
【0012】
[00011] 候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞においてmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択し、それによりHCCの治療のための薬剤を同定する工程を含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法をさらに提供する。いくつかの態様において、スクリーニングは、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程を含む。候補薬剤は、サイトカインまたは低分子を含む(しかしこれらに限定されない)、分子のいずれかのタイプであってもよい。
【0013】
[00012] 開示の前述の特徴および利点そしてその他の特徴および利点は、添付する図面を参照して行う、いくつかの態様の以下の詳細な説明からより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[00013] 特許または出願は、1またはそれ以上のカラー図面および/または1またはそれ以上の写真を含有してもよい。(1または複数の)カラー図面および/または(1または複数の)写真を含む本件特許または特許出願公開のコピーは、請求に応じてそして必要な費用の支払い基づいて、特許庁により提供される。
【図1】[00014] 図1A〜1D:雄性および雌性の肝細胞および腫瘍におけるmiR-26発現。 [00015] 図1A:マイクロアレイ解析により決定した、雌性(n=30)および雄性(n=194)の非-癌性肝組織におけるmiR-26a-1の発現レベル。非-対応t-検定を使用した。 [00016] 図1B:雌性事例(n=26)および齢適合雄性G1およびG2事例(n=56)由来のmiR-26aの相対発現レベルを、qRT-PCRにより決定した。非-対応t-検定を使用した。 [00017] 図1C:腫瘍中のmiR-26の状態により二分した場合の、224例の対応NT組織およびT組織の間のmiR-26a-1の相対レベルの比較。対応t-検定を使用した:低miR-26-1群からはp<0.001;高miR-26-1群からはp=0.23。図1A〜1Cにおけるデータは、疾患を有さない正常な肝臓プール(n=8)に対して正規化したlog 2相対発現として、表現される。 [00018] 図1D:マイクロアレイ解析により決定された腫瘍中のmiR-26a-1発現レベル、および生存転帰。ログランク検定を使用し、そして中央値発現レベルをカットオフ値として使用した。低miR-26発現(n=106)は、中央値(50th percentile)よりも低いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均2.69倍の減少)。高miR-26発現(n=111)は、中央値(50th percentile)よりも高いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均0.98倍の減少)。
【図2−1】[00019] 図2A〜2C:低miR-26 HCCにおける特徴的な転写活性。 [00020] 図2A:11,580種の遺伝子の発現に基づく、224例のHCC症例の多次元スケールプロット。サンプルを中央値二分に基づいて低miR-26発現(青色または明色)または高miR-26発現(赤色または暗色)に着色する。 [00021] 図2B:低miR-26 HCC中で同時発現されるmRNAのベン図。
【図2−2】[00022] 図2C:低miR-26 HCCにおけるNFκB/IL-6シグナル伝達の遺伝子ネットワーク。低miR-26 HCCにおける亢進制御された遺伝子 は、オレンジまたは明るい灰色で目立たせる。灰色で印刷した遺伝子は、顕著な遺伝子のリストには載っていないが、ネットワークに関連することが報告されている。実線および点線は、それぞれが直接的な相互作用および間接的な相互作用を示し、一方矢印は、遺伝子発現の正の制御を示す(すなわち、作用する)。線で繋いだ遺伝子は、結合のみを示す。詳細なネットワーク関連およびネットワーク形状は、図15に記載される。
【図3】[00023] 図3A〜3F:2種の予想される無作為化対照IFN治療施行(IFN試験コホート、n=118;IFN検証コホート、n=79)における、腫瘍におけるmiR-26a発現と生存の予後診断との関連性。 [00024] 図3A〜3B:miR-26a発現の、対照群由来のHCC患者(コホート2、パネル図3A;コホート3、パネル図3B)における全生存との関連性。コホート2:高miR-26a事例、n=24;低miR-26a事例、n=35。コホート3:高miR-26a事例、n=21;低miR-26a事例、n=19。 [00025] 図3C〜3D:IFNアジュバント療法の、低miR-26a発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=24;対照事例、n=35. コホート3:IFN事例、n=20;対照事例、n=19。 [00026] 図3E〜3F:IFNアジュバント療法の、高miR-26a発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=35;対照事例、n=24. コホート3:IFN事例、n=19;対照事例、n=21。
【図4A】[00027] 図4A:表1 - コホート1およびコホート2についての被検体の臨床的特徴。
【図4B】[00028] 図4B:追加の表1 - INF試験についての被検体の臨床的特徴 - コホート2およびコホート3。
【図4C】[00029] 図4C:追加の表2 - 性別関連microRNAについて検索するために使用した事例の臨床的特徴。
【図5A】[00030] 図5A:表2 - HCCを有する被検体における、miR-26発現レベルおよび全生存の単変量および多変量のCox回帰分析。
【図5B】[00031] 図5B:表3 -低miR-26発現を有する被検体における、インターフェロン療法および全生存の単変量および多変量のCox回帰分析。
【図6−1】[00032] 図6A:追加の表3 - 8種の性別関連microRNA。
【図6−2】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図6−3】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図6−4】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図6−5】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図7】[00034] 図7A〜7F:検定コホート由来の雄性および雌性の肝臓組織および腫瘍における、miR-26発現の存在度。 [00035] 図7A:雌性(n=30)および雄性(n=194)の非-腫瘍肝組織における、miR-26a-2の発現レベル。 [00036] 図7A:miR-26の状態により二分された場合の、対応TおよびNTのあいだのmiR-26a-2の相対レベルの比較。中央値発現レベルを、カットオフ値として使用した。低miR-26発現は、中央値(50th percentile)よりも低いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均2.69倍の減少)。高miR-26発現は、中央値(50th percentile)よりも高いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均0.98倍の減少)。図7Aおよび図7Bにおけるデータは、マイクロアレイ解析により決定され、そして疾患を有さない正常な肝臓プール(n=8)に対して正規化した、log 2相対発現として表現された。 [00037] 図7C:腫瘍および生存転帰におけるmiR-26a-2発現レベル。 [00038] 図7D〜7F:miR-26b発現状態による、図7A〜7Cにおけるのと同様の結果。
【図8】[00039] 図8:miR-26発現状態に基づく、サンプルの層化。HCCサンプルを、それらの平均的なmicroRNA発現(すなわち、miR-26a-1、miR-26a-2、およびmiR-26b)に基づいて、分類した。中央値発現を使用して、事例を、低miR-26(青色または明色)そして高miR-26(赤色または暗色)に分類した。各ドット(事例)の位置を、3種のmicroRNA発現レベル(miR-26a-1、miR-26a-2およびmiR-26b)により決定する。層化の転帰を使用して、MDSプロットを生成した。
【図9】[00040] 図9A-9B:HCCにおけるS100PおよびSLC2A6の発現およびマイクロアレイとqRT-PCRとの間のそれらの相関。qRT-PCR(左パネル)により決定した、低-miR-26レベルを有する10種のHCCにおけるおよび高miR-26レベルを有する10種のHCC事例におけるS100Pの発現レベル(図9A)およびSLC2A6の発現レベル(図9B)。qRT-PCR対マイクロアレイ由来のデータ間の直線回帰および相関が、r(スピアマン)および示されるp-値(右パネル)とともに示される。発現状態は、腫瘍(T)/非-腫瘍(NT)比として示される。
【図10】[00041] 図10A〜10C:HCCにおけるmiR-26およびIL-6の発現。 [00042] 図10A:qRT-PCRにより決定される、82の対応腫瘍(T)および非-腫瘍組織(NT)におけるIL-6の発現レベル。TとNTとの間でのIL-6の示差的発現を調べるため、スチューデントのt-検定を行った。 [00043] 図10B〜10C:qRT-PCRにより決定された82の対応腫瘍および非-腫瘍組織における、IL-6とmiR-26a(B 図10B)またはmiR-26b(図10C)との間の発現レベルの相関。データは、log2スケールに対するT/NT比として示される。
【図11】[00044] 図11:検証コホート由来の雄性および雌性の肝臓組織および腫瘍における、miR-26発現の存在度。雄性の非-腫瘍組織(左パネル)と比較して、雌性のより多い発現を有する腫瘍におけるmiR-26aの発現およびmiR-26bの発現の低下(右パネル)を、遡及的な無作為化臨床試行から独立した検証コホートにおいて、立証する。miR-26aおよびmiR-26bの発現レベルを、qRT-PCRにより測定した。P値は、非-対応t-検定に由来する。
【図12】[00045] 図12A〜12F:腫瘍におけるmiR-26b発現の、IFNアジュバント療法についての2種の予想される無作為化対照試行における生存予後診断との関連性。 [00046] 図12A〜12B:miR-26b発現の、コホート2(図6A)またはコホート3(図12B)に由来する対照事例における全生存との関連性。コホート2:高miR-26b事例、n=23;低miR-26b事例、n=36。コホート3:高miR-26b事例、n=21;低miR-26b事例、n=19。 [00047] 図12C〜12D:IFNアジュバント療法の、低miR-26b発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=22;対照事例、n=36。コホート3:IFN事例、n=20;対照事例、 n=19。 [00048] 図12E〜12F:IFNアジュバント療法の、高miR-26a発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=37;対照事例、n=23。コホート3:IFN事例、n=19;対照事例、n=21。
【図13】[00049] 図13:初代の新たに単離された肝細胞、hTERT-不死化正常肝細胞株HHT4、2種のHCC細胞株、および健康なドナー由来のPBMCを含む、様々な細胞種におけるqRT-PCRにより決定されたmiR-26の発現。
【図14】[00050] 図14:HCCにおけるHGFの発現およびmiR-26との関連性。qRT-PCRにより決定された、低-miR-26レベルを有する10例のHCCにおけるHGFの発現レベルおよび高miR-26レベルを有する10例のHCC事例におけるHGFの発現レベル(左パネル)。qRT-PCR由来のHGFレベルとマイクロアレイ由来のmiR-26レベルとのあいだの直線回帰および相関を、r(スピアマン)および示されるp-値とともに示す(右パネル)。発現状態が、腫瘍(T)/非-腫瘍(NT)比として示される。
【図15】[00051] 図15:経路解析において使用されるネットワーク関係性およびネットワーク形態の詳細な記載。
【配列表フリーテキスト】
【0015】
[00052] 配列表
[00053] 添付する配列表に列挙する核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822に規定されるように、ヌクレオチド塩基についての標準的な文字省略そしてアミノ酸についての3文字コードを使用して示される。各核酸配列の一方の鎖のみを示すが、しかし相補鎖は、示された鎖をいずれか参照することにより含まれるものとして理解される。添付される配列表において:
[00054] [SEQ ID NO: 1]は、ヒトmiR-26a-1由来の前駆体のヌクレオチド配列である = guggccucgu ucaaguaauc caggauaggc ugugcagguc ccaaugggcc uauucuuggu。
【0016】
[00055] [SEQ ID NO: 2]は、ヒトmiR-26a-2由来の前駆体のヌクレオチド配列である = ggcuguggcu ggauucaagu aauccaggau aggcuguuuc caucugugag gccuauucuu gauuacuugu uucuggaggc agcu。
【0017】
[00056] [SEQ ID NO: 3]は、ヒトmiR-26b由来の前駆体のヌクレオチド配列である = ccgggaccca guucaaguaa uucaggauag guugugugcu guccagccug uucuccauua cuuggcucgg ggaccgg。
【0018】
[00057] [SEQ ID NO: 4]は、ヒトmiR-26a-1およびmiR-26a-2の成熟型のヌクレオチド配列である = uucaaguaau ccaggauagg cu。
【0019】
[00058] [SEQ ID NO: 5]は、ヒトmiR-26bの成熟型のヌクレオチド配列である = uucaaguaau ucaggauagg u。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
[00059] 略語
[00060] 1NN 1-最近傍(Nearest neighbor)
[00061] 3NN 3-最近傍
[00062] AFP アルファ-フェトプロテイン
[00063] ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
[00064] CCP 化合物共変量予測因子
[00065] DLD 対角線形判別式
[00066] DNA デオキシリボ核酸
[00067] HBV 肝炎Bウイルス
[00068] HCC 肝細胞癌
[00069] HCV 肝炎Cウイルス
[00070] IFN インターフェロン
[00071] IL インターロイキン
[00072] ISH In situハイブリダイゼーション
[00073] miR MicroRNA
[00074] miRNA MicroRNA
[00075] mRNA メッセージRNA
[00076] NC 最近傍重心
[00077] PCR ポリメラーゼ連鎖反応
[00078] pre-miRNA 前駆体microRNA
[00079] qRT-PCR 定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
[00080] RNA リボ核酸
[00081] siRNA 低分子干渉RNA
[00082] snRNA 低分子核RNA
[00083] SVM サポートベクター装置
[00084] TACE 経カテーテル動脈化学塞栓術
[00085] TNM 腫瘍-節-転移
[00086] 用語
[00087] 前述の一般的な記載および以下の詳細な説明は両方とも、例示的でありそして説明のためだけのものであり、そして現在の技術の範囲に限定することを意図しないことが、理解されるべきである。本出願において、単数形の使用には、特にそうではないと記載しない限り、複数形も含まれる。
【0021】
[00088] 単語“a”または“an”の使用は、特許請求の範囲および/または明細書中の用語“含む”と組み合わせて使用する場合、“1つ”を意味しうるが、しかし“1またはそれ以上”、“少なくとも1つ”、そして“1またはそれ以上の”の意味とも一貫している。
【0022】
[00089] 同様に、“含む”、“含有する”、そして“含まれる”、またはこれらの基本語の修飾(“comprises”、“contained”、そして“including”を含む(しかしこれらには限定されない))の使用は、限定を意図しない。用語“および/または”は、前および後ろの用語を、一緒にまたは別個に使用することを意味する。例示の目的のため、しかし限定することは意図しないが、“Xおよび/またはY”は、“X”または“Y”または“XおよびY”を意味することができる。
【0023】
[00090] miRNAは、ゲノム配列または遺伝子に由来することが理解される。この側面において、用語“遺伝子”は、簡単にするため、所定のmiRNAについての前駆体miRNAをコードするゲノム配列を参照するために使用される。しかしながら、本発明の態様は、例えば、プロモータまたはその他の制御配列などの、その発現に関与するmiRNAのゲノム配列に関連していてもよい。
【0024】
[00091] 用語“miRNA”は、一般的に、一本鎖分子に関するが、しかし特定の態様において、本発明において実施される分子は、同一の一本鎖分子の別の領域または別の核酸に対して、部分的に相補的(鎖の長さにわたって10〜50%相補性)、実質的に相補的(鎖の長さにわたって50%より多くしかし100%の相補性よりも低い)、または完全に相補的である領域または追加の鎖もまた、包含しうる。この様に、核酸は、1またはそれ以上の相補鎖または(1または複数の)自己相補鎖を含む分子、または分子を含む特定の配列の“相補鎖(1または複数)”を包含することができる。例えば、前駆体miRNAは、自己-相補性領域を有してもよく、それは100%までの本発明の相補的miRNAプローブがそれらの標的に対して少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の相補性であってもよいか、またはそのような相補性である。
【0025】
[00092] 本明細書中において使用する場合の用語“それらの組合せ”は、用語に専攻する列挙された項目の、全ての順列および組合せをいう。例えば、“A、B、C、またはそれらの組合せ”は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つが含まれることが意図され、そして順番が特定の文脈において重要な場合には、BA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABもまた含まれることが意図される。
【0026】
[00093] 本明細書中において使用される節の見出しは、組織的な目的のみのためであり、記載される主題をいかようにも限定することを意図していない。特許、特許出願、記事、書籍、論文、そしてインターネットウェブページを含む、全ての文献および本件出願中で引用される同様の資料は、いずれかの目的のためにそれら全体を参照により明示的に援用される。1またはそれ以上の援用された文献および同様の資料が、ある用語を本件出願におけるその用語の定義とは相反するように定義しまたは使用するという状況では、本件出願が支配する。
【0027】
[00094] そうではないと記載されない限り、技術的用語は、標準的な用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、以下の文献に見出すことができる:Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)。
【0028】
[00095] 開示の様々な態様のレビューを容易にするため、具体的な用語の以下の説明が提供される:
[00096] 補助療法:一次療法と組み合わせて一次療法の作用を改良するために使用される治療のこと。例えば、HCCと診断された患者は、一次療法として肝臓切除を受け、そして補助療法としてインターフェロン(IFN)-α療法を受けることができる。
【0029】
[00097] 候補:本明細書中で使用される場合、IFN-α療法についての“候補”は、HCCの治療について、IFN-α療法に好ましく反応することが予想される患者である。
【0030】
[00098] 臨床転帰:疾患または症状(例えばHCC)に対する治療の後の患者の健康状態、治療を行わない場合の患者の健康状態をいう。臨床転帰には、死までの時間の長さの増加、死までの時間の長さの減少、生存機会の増加、死のリスクの増加、生存、無病生存、慢性疾患、転移、進行疾患、または侵攻性疾患、疾患再発、死、そして療法に対する好ましい応答または悪い応答が含まれるが、これらには限定されない。
【0031】
[00099] 対照:“対照”は、実験サンプル(例えば、HCC患者から得られた腫瘍サンプル)との比較のために使用される、サンプルまたは標準のことをいう。いくつかの態様において、対照は、健康な患者から得られた肝臓サンプルまたはHCCと診断された患者から得られた非-癌組織サンプルである。いくつかの態様において、対照は、歴史的対照または基準値(すなわち、以前に試験された対照サンプルまたは基準値または正常値(非-癌組織におけるmiR-26発現レベルなど)を示すサンプル群)である。
【0032】
[000100] サイトカイン:その他の細胞の挙動に影響を与える様々な造血性細胞そして非-造血性細胞により生成されるタンパク質。サイトカインは、生得的免疫応答および適応免疫応答の両方ともについて重要である。
【0033】
[000101] 生存減少:本明細書中で使用される場合、“生存の減少”は、患者の死までの時間の長さの減少、またはその患者について死のリスクの増加のことをいう。
【0034】
[000102] 発現レベルの検出:本明細書中で使用される場合、“miR-26発現レベルの検出”は、サンプル中に存在するmiR-26の量を定量することをいう。miR-26の発現の検出、またはいずれかのmicroRNAの発現の検出は、当該技術分野において知られているいずれかの方法または本明細書中で記載されるいずれかの方法(例えばqRT-PCR)を使用して、達成することができる。miR-26の発現の検出には、成熟型のmiR-26の発現またはmiR-26発現と相関する前駆体型の発現のいずれかを検出することが含まれる。典型的には、miRNA検出方法には、例えばRT-PCRによるなどの配列特異的検出が関与する。miR-26-特異的プライマーおよびプローブは、当該技術分野において公知である前駆体および成熟型miR-26核酸配列を使用して設計することができ、そして本明細書中においてSEQ ID NO: 1〜5として提供される。
【0035】
[000103] 肝細胞癌(HCC):HCCは、ウイルス性肝炎、肝臓毒素、または肝硬変(しばしばアルコール依存症により生じる)から生じる炎症性肝臓を持つ、患者において典型的に生じる肝臓の原発性悪性腫瘍である。
【0036】
[000104] インターフェロン(IFN)-α:インターフェロンは、白血球(例えば、T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー細胞)および線維芽細胞を含む、様々な異なる細胞型により生成されるサイトカイン種である。インターフェロンは、ウイルス、寄生虫および腫瘍などの外来性物質に対する曝露に反応して誘導される。二本鎖RNAは、しばしばウイルス感染の指標であるが、インターフェロンの一般的な誘導物質である。インターフェロンは、ウイルス複製の阻害、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージの活性化、そしてリンパ球に対する抗原提示の増加、のために重要である。インターフェロンには、IFN-α、IFN-βおよびIFN-γが含まれる。本明細書中で使用される場合、HCCのための“IFN療法”または“IFN-α療法”は、IFN-αを用いた治療のことをいう。本明細書中で使用される場合、“IFN療法に対する好ましい応答”または“IFN-α療法に対する好ましい応答”は、IFN-αにより処理された患者はの生存の増加(死までの時間の長さの増加、または生存の機会の増加)、HCCの症候の改善、HCCの広がりまたは転移の減少、疾患の重症度または攻撃性の減少、または療法に対する陽性の応答を測定するためのいずれかその他の適切な臨床的パラメータ、を意味する。
【0037】
[000105] MicroRNA(miRNA、miR):遺伝子発現を制御する一本鎖RNA分子。MicroRNAは、are 一般的に21〜23ヌクレオチドの長さである。MicroRNAは、プリ-miRNAとして知られる一次転写物から、前駆体(プレ)-miRNAと呼ばれる短いステム-ループ構造そして最終的には機能的成熟microRNAへとプロセシングされる。成熟型microRNA分子は、1またはそれ以上のメッセンジャーRNA 分子に対して部分的に相補的であり、そしてそれらの一次機能は遺伝子発現を下方制御することである。MicroRNAは、RNAi経路を通じて遺伝子発現を制御する。
【0038】
[000106] MicroRNA-26:現在はmiR-26a-1、miR-26a-2およびmiR-26bが含まれる、microRNA(miRとも呼ばれる)のファミリーのことをいう。用語“microRNA-26”もまた、健康組織と比較した場合、HCC腫瘍において識別的に発現される、これまでは未同定のmicroRNA-26ファミリーのいずれの構成成分も含まれる。
【0039】
[000107] miR-26発現:本明細書中で使用される場合、“低miR-26発現”および“高miR-26発現”は、サンプル(例えば、健康な肝臓サンプルまたはHCC肝臓サンプル)において見出されるmiR-26レベルのことに言及する、相対的な用語である。いくつかの態様において、低miR-26発現および高miR-26発現は、非-癌性肝臓サンプルとHCC肝臓サンプルの群におけるmiR-26レベルの比較により決定される。次いで、低発現および高発現を、サンプル中のmiR-26の発現が平均または中央値miR-26発現レベル以上(高)であるかまたは以下(低)であるかに基づいて、各サンプルに対して割り当てることができる。個別のサンプルについて、高miR-26発現または低miR-26発現は、サンプルを、高発現または低発現を有することが知られる対照サンプルまたは参照サンプルと比較することにより、または基準値と比較することにより、決定することができる。低miR-26発現および高miR-26発現には、miR-26前駆体型の発現またはmiR-26成熟型の発現のいずれか、またはこれら両方が含まれてもよい。
【0040】
[000108] 患者:本明細書中で使用される場合、用語“患者”には、ヒトおよび非-ヒト動物が含まれる。治療のための好ましい患者はヒトである。“患者”および“被検体”は、本明細書中では互換的に使用される。
【0041】
[000109] 医薬的に許容可能なビヒクル:本開示において有用な医薬的に許容可能な担体(ビヒクル)は、慣用的なものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、1またはそれ以上の治療用化合物、分子または薬剤の医薬的送達のために適した組成物および製剤を記載する。
【0042】
[000110] 一般に、担体の性質は、使用される具体的な投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常は、医薬的にそして生理学的に許容可能な液体(例えば、ビヒクルとしての、水、生理食塩水、平衡化塩類溶液、水溶性グルコース(aqueous dextrose)、グリセロールなど)が含まれる、注射可能な液体を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤、またはカプセル形状)については、慣用的な非-毒性固体担体には、例えば、マンニトール、ラクトース、スターチ、またはステアリン酸マグネシウムの医薬的グレードのものが含まれていてもよい。生物学的に中性な担体に加えて、投与すべき医薬組成物は、少量の非-毒性の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、そしてpH緩衝化剤(酢酸ナトリウムまたはソルビタンラウリン酸モノエステル(sorbitan monolaurate)など)などを含有することができる。
【0043】
[000111] 疾患の予防、治療、または改善:疾患(例えば、HCC)の“治療”は、疾患の十分な発症を阻害することをいう。“治療する”とは、発症し始めた後に、疾患または病理学的状態の兆候または症候を改善する治療的介入のことをいう。“改善する”とは、疾患の兆候または症候の数または重症度の減少のことをいう。
【0044】
[000112] スクリーニング:本明細書中で使用される場合、“スクリーニング”は、miR-26の発現を増加させる候補薬剤を評価しそして同定するために使用されるプロセスのことをいう。いくつかの事例において、スクリーニングは、候補薬剤(抗体、低分子またはサイトカインなど)をHCC細胞と接触させる工程、そして薬剤のmiR-26の発現に対する作用を試験する工程が関与する。microRNAの発現は、当該技術分野において知られておりそして本明細書中で記載される多数の技術の内のいずれか一つを使用して、例えばマイクロアレイ解析によりまたはqRT-PCRにより、定量することができる。
【0045】
[000113] 低分子:典型的には約1000ダルトン未満の分子量を有する分子、またはいくつかの態様において、約500ダルトン未満の分子量を有する分子のことであり、ここで、分子は、測定可能な程度で標的分子の活性を修飾することができる。
【0046】
[000114] 治療法:診断および治療が両方とも含まれる包括的な用途。
【0047】
[000115] 治療剤:被検体に適切に投与される場合に、所望の治療効果または予防効果を誘導することができる、化合物、低分子、またはその他の組成物(アンチセンス化合物、抗体、プロテアーゼ阻害剤、ホルモン、ケモカイン、またはサイトカインなど)。例えば、HCCに対する治療剤には、HCCの発症または転移を予防または阻害する薬剤が含まれる。本明細書中で使用される場合、“候補薬剤”は、HCCに対する治療剤として機能することができるかどうかを決定するためのスクリーニングのために選択される化合物である。いくつかの態様において、候補薬剤は、薬剤がHCC細胞におけるmiR-26の発現を増加させる場合に、治療剤として同定される。“インキュベーション”には、薬剤が細胞または組織と相互作用するために十分な量の時間が含まれる。“接触する”には、固体形状または液体形状の薬剤を細胞または組織とともにインキュベーションすることが含まれる。細胞または組織を薬剤を用いて“処置する”ことには、薬剤を細胞または組織と接触させるかまたはインキュベーションすることが含まれる。
【0048】
[000116] 治療的有効量:薬剤を用いて治療される被検体または細胞において、所望の効果を達成するために十分な、特定の医薬的組成物または治療剤の量。例えば、これは、miR-26の発現を増加させる治療剤の量および/または患者におけるHCCを予防し、治療しまたは改善する治療剤の量であってもよい。有効量の薬剤は、治療される被検体または細胞、そして治療用組成物の投与の方法を含む(しかしそれらには限定されない)いくつかの因子に依存する。
【0049】
[000117] 腫瘍、新生物、悪性腫瘍、または癌:細胞の異常な増殖または制御されていない増殖の結果。新生物、悪性腫瘍、癌、そして腫瘍は、しばしば互換的に使用され、そして過剰な細胞分裂から生じる組織または細胞の異常な増殖のことをいう。個体中の腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる“全身腫瘍組織量(tumor burden)”である。転移しない腫瘍は、“良性”と呼ばれる。周囲組織に浸潤しおよび/または転移することができる腫瘍は、“悪性”と呼ばれる。
【0050】
[000118] 腫瘍-節-転移(TNM):悪性腫瘍のTNM分類は、患者体内において癌の低後を記述するための、癌病期分類システムである。Tは原発性腫瘍のサイズおよび近傍組織に浸潤したかどうかを記述する;Nは、浸潤されたいずれかのリンパ節を記述する;そしてMは転移を記述する。TNMは、国際対癌連合(International Union Against Cancer)により開発されそして維持されており、癌の広がりの程度を分類するための、1つの世界的に認識されている標準に対するコンセンサスを達成する。TNM分類は、対癌米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer)および世界産婦人科連合(International Federation of Gynecology and Obstetrics)によっても使用される。
【0051】
[000119] 特に説明しない限り、本明細書中において使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本件開示が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。単数形の用語(“a”、“an”、および“the”)には、文脈が明確に特に示さない限り、複数の参照が含まれる。同様に、単語“または”は、文脈が明確に特に示さない限り、“および”を含むと意図される。この様に“AまたはBを含む”は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、そして核酸またはポリペプチドについての全ての分子量または分子量値はおよそのものであり、そして記載のために提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書中において記載される方法および材料と同様または対応する方法および材料を、本発明の開示を実施または試験する際に使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。全ての文献、特許出願、特許、そして本明細書中において言及されるその他の参照は、その全体を参照により援用される。対立する場合には、用語の説明を含め本件明細書が支配する。さらに、材料、方法、そして事例は、説明のためのみであり、そして限定を意図したものではない。
【0052】
[000120] いくつかの態様の概観
[000121] 本明細書中において、miR-26の発現は非-癌組織と比較した場合、HCC腫瘍組織において減少し、そして低レベルのmiR-26は悪い臨床転帰と関与することが開示される。本明細書中において、低発現レベルのmiR-26が、HCC患者におけるIFN-α療法に対する好ましい応答と相関することもまた開示される。
【0053】
[000122] この様に、HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの減少が生存、IFN-α療法に対する好ましい応答、またはその両方ともの減少を示す、HCCと診断された患者の臨床転帰を予測する方法が、本明細書中において提供される。HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中でmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの減少が、患者がIFN-α療法のための候補であることを示す、HCCと診断された患者を、IFN-α療法のための候補として選択する方法もまた、提供される。
【0054】
[000123] 本発明の方法の一態様において、miR-26はmiR-26a-1である。別の態様において、miR-26はmiR-26a-2である。別の態様において、miR-26はmiR-26bである。その他の態様において、miR-26は、miR-26a-1、miR-26a-2およびmiR-26bの2種またはそれ以上の組合せである。
【0055】
[000124] いくつかの態様において、対照は、同一の患者から得られた非-癌組織サンプルである。その他の態様において、対照は、健康被検体(例えば健康肝臓ドナー)から得られた肝臓サンプルである。別の例において、対照は、歴史的な値から算出された標準である。腫瘍サンプルおよび非-癌組織サンプルを、当該技術分野において公知のいずれかの方法に従って、得ることができる。例えば、腫瘍サンプルおよび非-癌性サンプルを肝臓切除を受けたHCC患者から得ることができ、またはそれらを皮下注射針を使用して、顕微解剖により、またはレーザー・キャプチャーにより、抽出することにより得ることができる。対照(非-癌性)サンプルを、例えば、死体ドナーからまたは健康な肝臓ドナーから、得ることができる。
【0056】
[000125] 腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現は、(対照と比較した場合)例えば、腫瘍をIFN-αによる治療に対してより感受性にすること、腫瘍の増殖速度を変更すること、腫瘍を転移できる様にすることなど、表現型効果を付与するために十分な量減少する。理論により束縛されることを望まない一方、表現型効果は、miR-26により制御される異なる遺伝子発現により媒介されると考えられる。表現型効果は、1またはそれ以上のmiR-26の発現により制御された遺伝子の増加または減少であってもよい。いくつかの態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍または少なくとも1.4倍減少する。一態様において、, 腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも1.5倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも2倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも2.5倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも3倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも3.5倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも4倍減少する。その他の態様において、腫瘍サンプルのmiR-26の発現は、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍減少する。miR-26の発現を、検出することができ、そして当該技術分野において公知のいずれかの方法、例えばマイクロアレイおよびqRT-PCRなど(しかしそれらには限定されない)を使用して、定量する。
【0057】
[000126] 候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中のmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択し、それによりHCCの治療のための薬剤を同定する工程、を含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法がさらに提供される。
【0058】
[000127] いくつかの態様において、スクリーニングは、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程を含む。HCC細胞は、HCC患者から得られる初代細胞であってもよく、またはHCC細胞は、不死化細胞または形質転換細胞であってもよい。一態様において、HCC細胞中のmiR-26の発現は、非処置細胞と比較した場合、少なくとも2倍に増加する。別の態様において、HCC細胞におけるmiR-26の発現は、非処置細胞と比較した場合、少なくとも3倍増加する。別の態様において、HCC細胞のmiR-26の発現は、非処置細胞と比較した場合、少なくとも4倍増加する。
【0059】
[000128] 候補薬剤は、タンパク質、ペプチド、低分子、抗体、または核酸などの、いずれのタイプの薬剤であってもよい。いくつかの態様において、候補薬剤は、サイトカインである。いくつかの態様において、候補薬剤は低分子である。スクリーニングには、ハイ-スループットスクリーニングそして候補薬剤の個々の群または小さな群のスクリーニングの両方が含まれる。
【0060】
[000129] (i)HCCと診断された患者から得られた腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程;(ii)腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを対照と比較する工程;そして(iii)HCCと診断された患者のための治療方法を選択する工程;を含み、ここでHCCと診断された患者が、対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの1.5倍またはそれ以上が減少する場合にのみ、治療がIFN-α療法を含む、HCCと診断された患者を治療する方法が、さらに提供される。いくつかの態様において、miR-26は、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、またはこれらの組合せである。
【0061】
[000130] いくつかの態様において、治療の方法は、肝臓切除をさらに含む。いくつかの態様において、IFN-α療法は、IFN-αの投与を含む。
【0062】
[000131] 一態様において、対照は、患者から得られた非-癌組織サンプルである。別の態様において、対照は、健康被検体由来の肝臓サンプルである。別の態様において、対照は基準値である。
【0063】
[000132] 本発明の方法のいくつかの態様において、腫瘍サンプル中でのmiR-26の発現は、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍または少なくとも4倍減少する。
【0064】
[000133] 腫瘍組織サンプル
[000134] 本明細書中において提供される方法には、腫瘍サンプルおよび非-腫瘍組織サンプルにおけるmiR-26発現レベルを検出することが含まれる。いくつかの態様において、組織サンプルは、HCCと診断された被検体から得られ、そしていくつかの事例においては、健康被検体または死体ドナーから得られる。“サンプル”は、全組織、または組織の疾患部分または健康部分、である組織の一部のことをいう。本明細書中で記載するように、腫瘍組織サンプルを、対照と比較する。いくつかの態様において、対照は、同一の被検体から得られる非-癌組織サンプル(HCC腫瘍を取り囲む非-癌性肝組織など)である。その他の態様において、対照は、健康な患者から得られた肝臓サンプルまたは死体由来の非-癌組織サンプルである。その他の態様において、参照サンプルは、歴史的な値に基づく標準である。
【0065】
[000135] 組織サンプルを、当該技術分野において公知のいずれかの方法を使用して、被検体から得ることができる。例えば、組織サンプルを、HCCのための治療としての肝臓切除を受けたHCC患者から得ることができる。これらの患者から、腫瘍組織および周囲の非-癌性肝臓組織の両方を得ることができる。いくつかの態様において、対照として使用される非-癌組織サンプルを、死体から得る。その他の態様において、非-癌組織サンプルを、健康な肝臓ドナーから得る(Kim et al., Hepatology 39(2):518-527, 2004を参照)。
【0066】
[000136] いくつかの態様において、組織サンプルをバイオプシーにより得る。バイオプシーサンプルは、新鮮なもの、凍結されたもの、または固定されたもの(ホルマリン-固定およびパラフィン包埋など)であってもよい。サンプルを、抽出により(例えば、皮下注射針またはその他のタイプの針により)、顕微解剖により、レーザー・キャプチャーにより、または当該技術分野において公知のいずれかその他の手段により、患者から外科的に取り出すことができる。
【0067】
[000137] miR-26発現を検出する方法
[000138] 前駆体microRNA(プレ-miRNA)の配列および成熟miRNAの配列は、例えばSanger Instituteによりオンラインで入手可能なmiRBaseデータベースを通じて、公に入手可能である(Griffiths-Jones et al., Nucleic Acids Res. 36:D154-D158, 2008;Griffiths-Jones et al., Nucleic Acids Res. 34:D140-D144, 2006;およびGriffiths-Jones, Nucleic Acids Res. 32:D109-D111, 2004を参照)。前駆体型そして成熟型のmiR-26ファミリー構成成分の配列は、本明細書中においてSEQ ID NO: 1〜5として提供される。前駆体型のmiR-26a-1およびmiR-16a-2は異なっているが、成熟型のこれらのmiRの配列は、同一である(SEQ ID NO: 4)。
【0068】
[000139] microRNA発現の検出および定量を、当該技術分野において周知のそして以下に記載される多数の方法のいずれか一つにより達成することができる(例えば、本明細書中において参照により援用される、U.S.特許出願公開No. 2006/0211000および2007/0299030を参照)。miR-26ファミリー構成分子の既知の配列を使用して、特異的プローブおよびプライマーを、以下に記載する検出方法において適宜使用するために設計することができる。
【0069】
[000140] いくつかの事例において、miRNA検出方法は、サンプル(例えば、細胞または組織サンプル)由来の核酸の単離を必要とする。RNAそして具体的にはmiRNAを含む核酸を、当該技術分野において公知のいずれかの適切な技術を使用して、単離することができる。例えば、フェノールに基づく抽出は、RNAの単離のための一般的な方法である。フェノールに基づく試薬は、細胞および組織を破壊するため、そしてその後にコンタミネーション物質からRNAを分離するため、変性剤とRNase阻害剤の組合せを含有する。フェノールに基づく単離手順は、10〜200-ヌクレオチド範囲のRNA種(例えば、前駆体および成熟型miRNA、5Sおよび5.8SリボゾームRNA(rRNA)、そしてU1低分子核RNA(snRNA))を回収することができる。さらに、TRIZOLTMまたはTRI REAGENTTMを用いる手順など抽出手順は、大きいものそして小さなものなど全てのRNAを精製し、そしてmiRNAおよび低分子干渉RNA(siRNA)を含有する生物学的サンプルから全RNAを単離するための効率的な方法である。
【0070】
[000141] マイクロアレイ
[000142] マイクロアレイは、複雑な生化学的サンプルの並行解析を可能にする、核酸、タンパク質、低分子、細胞、またはその他の物質の顕微鏡的規則的アレイである。DNAマイクロアレイは、固体基質に化学的に接着するキャプチャープローブとして知られる異なる核酸プローブからなり、それらはマイクロチップ、ガラススライド、またはミクロスフェアサイズのビーズであってもよい。マイクロアレイを使用して、例えば、大量のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現レベルおよび/またはmiRNAの発現レベルを同時的に測定することができる。
【0071】
[000143] マイクロアレイを、ガラススライド上への精細-先端ピンを用いたプリント、事前に作製されたマスクを使用したフォトリソグラフィー、動的マイクロミラーデバイスを使用したフォトリソグラフィー、インクジェットプリント、または微小電極アレイ上の電気化学を含む、様々な技術を使用して製造することができる。
【0072】
[000144] miRNAのマイクロアレイ解析を、当該技術分野において公知のいずれかの方法に従って達成することができる(例えば、それぞれを本明細書中において参照により援用する、PCT公開No. WO 2008/054828;Ye et al., Nat. Med. 9(4):416-423, 2003;Calin et al., N. Engl. J. Med. 353(17):1793-1801, 2005を参照)。一例において、RNAを細胞または組織 サンプルから抽出し、低分子RNA(18〜26-ヌクレオチドRNA)を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して全RNAからサイズ選択する。オリゴヌクレオチドリンカーを、低分子RNAの5'末端および3'末端に接着し、そして得られるライゲーション生成物を、10サイクルの増幅によるRT-PCR反応のための鋳型として使用する。センス鎖PCRプライマーは、その5'末端に接着されたフルオロフォアを有し、それによりPCR生成物のセンス鎖を蛍光的に標識する。PCR生成物を変性し、その後マイクロアレイにハイブリダイゼーションさせる。PCR生成物は、アレイ上の対応するmiRNAキャプチャープローブ配列に対して相補的な標的核酸とも呼ばれるが、塩基対合を介して、キャプチャープローブが固定されたスポットに対してハイブリダイズする。スポットは、次いで、マイクロアレイレーザースキャナを使用して励起される場合、蛍光を発する。次いで、各スポットの蛍光強度を、多数の陽性対照および陰性対照およびアレイデータ正規化方法を使用して具体的なmiRNAのコピー数の単位として評価し、この結果として具体的なmiRNAの発現レベルを評価する。
【0073】
[000145] 代わりの方法において、細胞サンプルまたは組織サンプルから抽出される低分子RNA画分(miRNAを含む)を含有する全RNAを、低分子RNAのサイズ選択をせず、そして3'末端をT4 RNAリガーゼを使用して標識せず、そして短いRNAリンカーのいずれも蛍光標識せず、直接的に使用する。RNAサンプルを、30℃で2時間インキュベーションすることにより標識し、その後の80℃で5分間インキュベーションしてT4 RNAリガーゼを加熱不活性化する。アレイ上の対応するmiRNAキャプチャープローブ配列に対して相補的なフルオロフォア標識したmiRNAを、塩基対合を介してキャプチャープローブを固定するスポットに対してハイブリダイズする。マイクロアレイスキャニングおよびデータプロセシングを、上述する様に実行する。
【0074】
[000146] 使用されるもの以外にも、斑状オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、事前製造されたオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、および斑状の長いオリゴヌクレオチドアレイを含む、いくつかの種類のマイクロアレイが存在する。斑状オリゴヌクレオチドマイクロアレイにおいて、キャプチャープローブは、miRNA配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドである。この種類のアレイは、典型的には、2種の異なるフルオロフォアで標識された比較されるべき2種のサンプル(非-癌組織およびHCC肝臓組織など)由来の、サイズ選択された低分子RNAの増幅PCR生成物と、ハイブリダイゼーションされる。あるいは、低分子RNA画分(miRNAを含む)を含有する全RNAを、2種のサンプルから抽出し、そして低分子RNAのサイズ選択をせず、そして3'末端をT4 RNAリガーゼを使用して標識せず、そして低分子RNAリンカーを2種の異なるフルオロフォアを使用して標識せず、直接的に使用する。サンプルを混合し、そして1つの単一マイクロアレイに対してハイブリダイズさせ、その後それをスキャンして、亢進制御されたmiRNA遺伝子および下方制御されたmiRNA遺伝子を一アッセイ中で可視化することができる。
【0075】
[000147] 事前に製造されたオリゴヌクレオチドマイクロアレイまたは単一-チャネルマイクロアレイにおいて、プローブを、既知のmiRNAまたは予測されるmiRNAの配列と適合するように設計する。全ゲノムをカバーする商業的に利用可能なデザインが存在する(例えば、AffymetrixまたはAgilentのもの)。これらのマイクロアレイは、遺伝子発現の絶対値の推定を可能にし、そして従って2種の条件の比較には、2種の別個のマイクロアレイの使用を必要とする。
【0076】
[000148] 斑状の長いオリゴヌクレオチドアレイは、50〜70-merのオリゴヌクレオチドキャプチャープローブから構成され、そしてインクジェットプリントまたはロボットプリントのいずれかにより製造される。低分子オリゴヌクレオチドアレイは、20〜25-merのオリゴヌクレオチドプローブから構成され、そしてフォトリソグラフィー合成(Affymetrix)またはロボットプリントにより製造される。
【0077】
[000149] 定量的RT-PCR
[000150] 定量的RT-PCR(qRT-PCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応の生成物の量を迅速に測定するために使用される、ポリメラーゼ連鎖反応の改良である。qRT-PCRは、miRなどの遺伝子配列がサンプル中に存在するかどうかを決定する目的で、そして存在する場合にサンプル中のコピー数を決定する目的で、一般に使用される。miRNAを含む核酸分子の発現を決定することができるいずれかのPCRの方法は、本発明の開示の範囲内のものである。当該技術分野において公知のqRT-PCR法には様々なバリエーションが存在し、その内の3種類を以下に記載する。
【0078】
[000151] 定量的ポリメラーゼ連鎖反応のための方法には、アガロースゲル電気泳動、SYBR Greenの使用(二本鎖DNA色素)、そして蛍光リポータープローブの使用、が含まれるが、これらには限定されない。後ろ2種類は、リアルタイムで解析することができる。
【0079】
[000152] アガロースゲル電気泳動を用いて、未知のサンプルおよび既知のサンプルを、既知濃度の同様のサイズの増幅用標的DNA部分を用いて調製する。両方の反応を、同一の条件の下、同一の長さの時間実施する(好ましくは同一のプライマーを使用し、または少なくとも同様のアニーリング温度のプライマーを使用する)。アガロースゲル電気泳動を使用して、それらのもともとのDNAおよび予備のプライマーから、反応生成物を分離する。既知サンプルと未知サンプルの相対量を測定して、未知サンプルの量を決定する。
【0080】
[000153] SYBR Green色素の使用は、アガロースゲル法よりも正確であり、そしてリアルタイムで結果を得ることができる。DNA結合色素は、全ての新たに合成された二本鎖DNAと結合し、そして蛍光強度の増加を測定し、その結果、初期濃度を決定することができる。しかしながら、SYBR Greenは、予期しないいずれかのPCR生成物ならびにプライマーダイマーを含む全ての二本鎖DNAを標識する。反応は、蛍光二本鎖DNA色素の付加を伴って、従来通り調製される。反応を実施し、そして蛍光レベルをモニタリングする(二本鎖DNAに結合下場合の色素のみが蛍光を発する)。標準的なサンプルまたは標準曲線を参照して、PCR中の二本鎖DNA濃度を決定することができる。
【0081】
[000154] 蛍光リポータープローブ法は、配列-特異的核酸に基づくプローブを使用して、それにより全ての二本鎖DNAではなく、プローブ配列のみを定量する。蛍光リポーターおよび隣接する位置に保持されるクエンチャーを有するDNAに基づくプローブ(いわゆる二重-標識プローブ)を用いて、一般的に実行される。リポーターがクエンチャーに近接していることにより、その蛍光を阻害する;プローブが分解された場合にのみ、蛍光が検出される。このプロセスは、関与するポリメラーゼの5'から3'へのエキソヌクレアーゼ活性に依存する。
【0082】
[000155] リアルタイム定量的PCR反応を、二重-標識プローブを添加することにより調製する。二本鎖DNA鋳型の分解に際して、プローブは、鋳型DNAの目的とする領域におけるその相補的配列に結合することができる。PCR反応混合物を加熱してポリメラーゼを活性化する場合、ポリメラーゼは、プライミングされた一本鎖鋳型DNAに対する相補鎖の合成を開始する。ポリマー化が継続するにつれて、それはその相補的配列に結合したプローブに到達し、次いでそれがポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性のために加水分解され、それにより蛍光リポーターとクエンチャー分子が分離される。この結果として、蛍光の増加が生じ、それが検出される。リアルタイムPCR反応の熱サイクルの間、各PCRサイクルで加水分解された二重-標識プローブから放出される蛍光の増加がモニタリングされ、それによりDNAの最終量そしてその結果DNAの初期量の正確な決定が可能になる。
【0083】
[000156] In Situハイブリダイゼーション
[000157] In situハイブリダイゼーション(ISH)を、核酸ハイブリダイゼーション技術を単細胞レベルで適用しそして外挿し、そして細胞化学の技術、免疫細胞化学の技術および免疫組織化学の技術と組み合わせることにより、維持されそして同定されるべき細胞マーカーの形態の維持および同定を可能になり、そして集団中の特定の細胞(例えば組織サンプルおよび血液サンプル)に対して配列を局在化することができる。ISHは、相補的核酸を使用して組織の箇所または部分(in situ)で、または組織が十分に小さい場合には全組織中(ホールマウントISH)で、1またはそれ以上の特異的核酸配列を局在化するある種のハイブリダイゼーションであるる。RNA ISHを使用して、miRNAの発現などの組織中での発現パターンをアッセイすることができる。
【0084】
[000158] サンプル細胞または組織を、プローブ(例えばmiRNA-特異的プローブ)を細胞に進入させるようにそれらの浸透性を上昇させる様に処理する。プローブを処理された細胞に対して添加し、適切な温度でハイブリダイズさせ、そして過剰なプローブを洗浄除去する。相補的プローブを放射活性タグ、蛍光タグ、または抗原性タグを用いて標識し、それにより組織中のプローブの位置および量を、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、またはイムノアッセイを用いて決定することができる。サンプルは、非-癌性サンプルまたはHCC肝臓サンプルなどの、本明細書中において記載される様ないずれのサンプルであってもよい。miR-26ファミリー構成成分の配列は公知であるため、miR-26プローブを、プローブがmiR-26と特異的に結合するように、適宜設計することができる。
【0085】
[000159] In Situ PCR
[000160] In situ PCRは、ISHの前のPCRに基づく標的核酸配列の増幅を行う方法である。RNAの検出のため、細胞内逆転写工程を導入して、RNA鋳型から相補的DNAを生成し、その後in situ PCRを行う。これにより、低コピー数のRNA配列の検出が可能になる。
【0086】
[000161] in situ PCRの前に、細胞または組織サンプル を固定し、そして透過性にして形態を保持し、そして増幅すべき細胞内配列に対してPCR試薬が接近しやすいようにする。標的配列のPCR増幅は、次に、懸濁液中に保持される無傷細胞中、またはガラススライド上の細胞沈降調製物または組織切片中で直接、行われる。前者のアプローチでは、PCR反応混合物中に懸濁された固定化細胞を、従来型のサーマルサイクラーを使用して熱サイクルを行う。PCRの後、細胞をガラススライド上に細胞沈降させ、ISHまたは免疫組織化学による細胞内PCR生成物を可視化する。ガラススライド上のIn situ PCRを、カバースリップの下でサンプルをPCR混合物で覆うことにより行い、次いでそれを封入して反応混合物の蒸発を防止する。熱サイクルを、従来型のサーマルサイクラーまたは特注のサーマルサイクラーのヒートブロックの上部にガラススライドを直接配置することにより、または熱サイクルオーブンを使用することにより、行う。
【0087】
[000162] 細胞内PCR生成物の検出は、一般的に、2種の異なる技術(PCR-生成物特異的プローブを用いたISHによる間接的in situ PCR、または熱サイクルの間にPCR生成物中に取り込ませる標識ヌクレオチド(例えば、ジゴキシゲニン-11-dUTP、フルオロセイン-dUTP、3H-CTPまたはビオチン-16-dUTP)の直接的検出を介したISHを行わない直接的in situ PCRの)の内の一つを用いてう。
【0088】
[000163] HCC予後診断の予測マーカーとして、そしてHCC治療のための治療剤の同定のための、miR-26の使用
[000164] miR-26は、HCC患者における生存予後診断の独立した予測因子であることが、本明細書中において開示される。同一被検体由来のまたは健康被検体由来の非-癌組織と比較して、低miR-26発現を有するHCC腫瘍サンプルは、生存の減少を予測する。さらに、HCC患者のIFN-α治療からの療法転帰を層分類する場合、腫瘍中で低miR-26発現を有する患者のみが、IFN-α療法に好ましく反応した。この様に、腫瘍中のmiR-26状態は、HCC患者の予後診断において、そして再発を防止するようにIFN-αアジュバント療法から利益を得ることができる適切なHCC患者を選択するため、臨床的ツールとして使用することができる。いくつかの事例において、IFN-α療法を、根本的な肝臓切除の後に使用する。
【0089】
[000165] いくつかの態様において、HCC腫瘍サンプル中のmiR-26の発現レベルを、同一患者由来の周囲非-癌組織中のmiR-26の発現レベルと、直接的に比較する。その他の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26発現を、健康被検体(肝臓ドナーなど)から得られる肝臓サンプルのmiR-26の発現レベルと比較する。いくつかの事例において、対照サンプルとして使用される非-癌組織は、死体から得られる。その他の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現を、歴史的な値に基づく標準レベルと比較する。例えば、被検体のコホートから得られる非-癌性肝臓組織サンプル中のmiR-26の平均的な発現レベルに基づいて、標準を設定することができる。例えば、被検体のコホートは、臨床試験に登録したHCC患者の群であってもよい。被検体のコホートは、死体ドナーの群であってもよい。
【0090】
[000166] 対照と比較した場合、HCC腫瘍サンプル中において1またはそれ以上のmiR-26ファミリー構成成分の発現が低いことは、その患者ついて悪い予後診断を示唆し、そしてその患者をIFN-α補助療法に対するよい候補として同定する。本明細書中で使用される場合、“悪い予後診断”は、一般的に生存の低下を意味し、または言い換えると、死のリスクの増加またはしまでの時間の減少を意味する。悪い予後診断は、癌のその他の器官への広がりの増加(転移)など、疾患重症度の増加を意味することもできる。一態様において、miR-26の低発現は、対照と比較した場合、少なくとも1.5倍の発現の減少により示される。その他の態様において、miR-26の低発現は、対照と比較した場合、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍のmiR-26発現の減少により示される。
【0091】
[000167] より高いレベルのmiR-26発現を有するHCC腫瘍を有する患者は、生存についてよりよい機会を有するという知見から、miR-26の発現を増加させる化合物は、HCCの治療のための治療剤として有用である。この様に、候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中のmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択することを含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法が、本明細書中において開示される。いくつかの態様において、スクリーニングは、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程および細胞中のmiR-26の発現レベルのいずれかの変化を検出する工程を含む。HCC細胞は、HCC患者から得られた初代細胞または患者から得られた不死化されまたは形質転換された細胞であってもよく、または細胞はMHCC97細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、またはSNU-423細胞(しかしこれらには限定されない)などの商業的に利用可能な不死化細胞株であってもよい。
【0092】
[000168] 候補薬剤を用いた治療の後のmiR-26の発現の増加により、HCCの治療のための治療剤としての薬剤を同定する。候補薬剤をスクリーニングして疾患の治療のための治療剤を同定する方法は、当該技術分野において周知である。miR-26の発現レベルを検出する方法は、当該技術分野において公知であり、そしてマイクロアレイ解析、RT-PCR(qRT-PCRを含む)、in situハイブリダイゼーション、in situ PCR、およびノザンブロット解析など(しかしこれらには限定されない)、本明細書中に記載される。一態様において、スクリーニングは、ハイスループットスクリーニングを含む。別の態様において、候補薬剤は、個別にスクリーニングされる。
【0093】
[000169] 候補薬剤は、核酸分子、タンパク質、ペプチド、抗体、脂質、低分子、化学物質、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、またはmiR-26発現を直接的または間接的に変化させることができるその他のタイプの分子など(しかしこれらには限定されない)のいずれのタイプの分子であってもよい。いくつかの態様において、候補薬剤は、NFκB/IL-6シグナル伝達経路において役割を果たす分子である。その他の態様において、候補薬剤は、IL-10、STAT3、またはインターフェロン-誘導可能因子シグナル伝達ネットワークにおいて役割を果たす分子である。一態様において、候補薬剤はサイトカインである。別の態様において、候補薬剤は低分子である。
【0094】
[000170] 肝細胞癌(HCC)の特性評価のための方法もまた、本明細書中において記載され、ここでHCCの少なくとも一つの特徴が、以下のもの:HCCの有無;HCCの診断;HCCの予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;HCCの治療に対する感受性(HCCの化学療法治療および/または放射線療法治療に対する感受);HCCのホルモン治療に対する感受性;HCCの侵襲的手術による除去に対する感受性;HCCの組合せアジュバント療法に対する感受性;から成る1またはそれ以上の群から選択される。
【0095】
[000171] miR-26ファミリーの1またはそれ以上の構成成分を含む少なくとも1つの検出プローブを含む、HCCの検出のためのキットもまた、本明細書中において記載される。このキットは、オリゴヌクレオチドアレイの形態であっても、またはオリゴヌクレオチドアレイを含むものであってもよい。
【0096】
[000172] i)少なくとも1つの組織サンプルをHCCに罹患する患者から単離する工程;ii)少なくとも1つの組織サンプルの特性評価を行いおよび/またはプローブの検出を使用して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;iii)工程ii)において同定される少なくとも1つの特徴に基づいて、HCC患者の生理学的状態を診断する工程;iv)工程iii)において得られる診断に基づいて、HCC患者がHCCの治療から利益を得られるかどうかを決定する工程;を含む、治療に対するHCC患者の感受性を決定するための方法もまた、本明細書中において記載される。
【0097】
[000173] 特定の態様において、癌の少なくとも1つの特徴は、以下のもの:癌の有無;癌のタイプ;癌の起源;癌の診断;癌の予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;癌の治療に対する感受性(例えば癌の化学療法治療および/または放射線療法治療に対する感受性);癌のホルモン治療に対する感受性;癌の侵襲的手術による除去に対する感受性;癌の組合せアジュバント療法に対する感受性;からなる1またはそれ以上のの群から選択される。
【0098】
[000174] 癌の治療に対する感受性を決定するための方法もまた、本明細書中において記載され、ここで癌の少なくとも1つの特徴は、癌の治療に対する感受性(例えば、癌の化学療法治療および/または放射線療法治療に対する感受性);癌のホルモン治療に対する感受性;癌の侵襲的手術による除去に対する感受性;癌の組合せアジュバント療法に対する感受性;である。
【0099】
[000175] 以下の工程:i)少なくとも1つの組織サンプルをHCCに罹患する患者から単離する工程;そしてii)少なくとも1つの組織サンプルを特性決定して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;を含む、HCC患者の起こりうる予後診断を決定するための方法もまた、本明細書中において記載され、ここで、この特徴により、HCC患者の起こりうる予後診断を決定することが可能になる。
【0100】
[000176] 以下の実施例は、特定の具体的な特徴および/または態様を説明するために提供される。これらの実施例は、開示を記載される具体的な特徴または態様に限定することを意図したものではない。
【0101】
[000177] 実施例
[000178] 以下の実施例は、HCCにおける性別-依存性のmicroRNAプロファイルの解析および生存予後診断および治療転帰におけるそれらの予測値を記載する。これらの研究について、全部で379人のHCC患者の2種の独立したコホートを解析した。最初のコホートは、HCCと関連する潜在的なmicroRNAを同定するための試験コホートであった。二番目のコホート(検証コホート)を使用して、試験コホートから得られた結果を確認した。Using このストラテジーを使用して、miR-26の構成成分が雌性の肝臓組織においてより広く発現されていたため、miR-26の構成成分を性別-関連microRNAとして同定した。さらに、miR-26ファミリー構成成分の発現レベルを、性別に関わらずそれらの対合非-癌組織と比較した場合に、HCC腫瘍サンプルのサブセットにおいて顕著に下方制御した。miR-26発現が減少した腫瘍は、異なる遺伝子発現プロファイルを有し、そして低miR-26発現を示す事例は、悪い生存予後診断と関連した。以下に記載されたデータにより、miR-26が、腫瘍抑制因子として機能し、そしてmiR-26がサイレンシングされた腫瘍は生物学的に独特であることが示唆される。
【0102】
[000179] 実施例I:材料、方法、および患者の特徴
[000180] 臨床的試料
[000181] 腫瘍(T)および周囲非-腫瘍組織(NT)の両方の瞬間凍結試料またはパラフィン-包埋試料を、インフォームドコンセントの上で、Liver Cancer Institute of Fudan University(上海)(376事例)およびUniversity of Hong Kong Medical Centre(香港)(79事例)(中国)出根治切除を受けた455人のHCC患者から得た(4)。この研究は、対応する研究所の施設内倫理委員会により承認された。正常な肝臓組織サンプルプールを、8例の疾患-不含の肝臓ドナーから得た(24)。利用可能なmicroRNAマイクロアレイデータを伴った以前に記載された241例のHCC事例のコホート(コホート1:試験コホート)(22)を使用して、性別および生存に関連したmicroRNAを検索した。それらの中で、17例でmiR-26発現データが欠けており、そして9例で生存データが欠けており、miR-26発現解析については224事例、そして生存解析については217事例が残された。アジュバントIFN療法を評価するための、予想される無作為化対照試行(RCT)に由来するHCC事例(n=135)(コホート2:検証コホートおよびIFN試験コホート)(3)を、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により独立した検証コホートとして使用した。コホート2の中で、6例でmiR-26発現データが欠けており、そして12例で生存データが欠けており、miR-26発現解析については129事例(60例の対照、69例のIFN事例)そして生存解析については118事例(59例の対照、59例のIFN事例)が残された。別の予想されるRCT(コホート3:IFN検証コホート)由来の残る79例のHCC事例(40例の対照、39例のIFN事例)を使用して、miR-26とインターフェロン療法との関連性を立証した(4)。追加的な方法は、補充添付物中に詳細に記載する。
【0103】
[000182] 患者の特徴
[000183] この研究には、Liver Cancer Institute(上海)からの376人の患者(表1)そしてUniversity of Hong Kongからの追加のIFN検証コホート(図4 - 追加の表1)からなる2種の独立したコホートが関連し、全ては組織学的に確認されたHCCを有し、そして大多数(90.5%)が肝炎Bウイルス(HBV)慢性キャリアを有した。コホート1は、241人の患者からなり、一方コホート2は135人の患者からなり、インターフェロン療法の予想されるRCTに参加した(3)。コホート3は、インターフェロン療法の別の予想されるRCTに由来する、79人のHCC患者からなる(4)。全ての患者は、治癒目的で、肝臓切除を受けた。患者の大多数は雄性であり(85.1%)、肝硬変(88.1%)、血清AFPの上昇(62.2%)そして孤立性の対象(solitary presentation)(84.4%)であった。臨床レベルの変数は、血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル、TNM段階、そしてアジュバント療法を除き、試験コホートと検証コホートとの間で同様であった。ALTレベルにより示される場合のこれらのHBV-関連HCC患者における肝炎活性は、コホート1またはコホート3の場合と比較してコホート2の事例において顕著に低く、そしてより初期段階のHCC事例はコホート2において見出された。さらに、コホート1における39人の患者は、予防的アジュバント両方を受けたが、応答は最小のようであった(p=0.9;ログランク検定)。対照的に、コホート2における53.3%の患者およびコホート3における49.4%が、‘治癒目的’のIFNアジュバント療法を受け、それにより全体の生存が改善された(3;4)。
【0104】
[000184] 性別-関連microRNAおよび臨床転帰
[000185] 雄性の肝臓サンプルと雌性の肝臓サンプルとの間で異なって発現されるmicroRNAを検索するため、本発明者らは、コホート1由来の241例の事例のmicroRNA発現プロファイルを世界規模で解析したが、この場合に腫瘍(T)および非-腫瘍(NT)の両方のmicroRNAアレイデータが利用可能であった(GEOアクセッション番号、GSE6857)(22)。潜在的交絡因子を回避するため、年齢-適合させそして平衡化した事例セットを使用して、性別-依存性microRNAを同定したところ、事例セットは、全ての雌性の事例(n=30)、および2つの年齢-適合された雄性群、すなわち、G1(n=31)およびG2(n=31)を含有した。雌性事例および雄性G1またはG2事例の臨床的特徴は同様であった(図4C〜追加の表2)。
【0105】
[000186] クラス比較解析により、15種のmicroRNA(雌性vs.雄性G1)または45種のmicroRNA(雌性vs.雄性G2)が、NT組織において異なって発現されたが、7種は重複していたことが示された。対照的に、唯一の重複するmicroRNA、miR-129-2、が、腫瘍中で見出された(図6A〜追加の表3)。従って、腫瘍中と比較して、肝臓微少環境中では、microRNA発現のより一貫して差異が存在していた。
【0106】
[000187] 重複したmicroRNAの中で、そのレベルが性別間で最も顕著に異なっておりそして最も豊富であったことから、miR-26a-1が、さらなる解析のために選択された。コホート1の事例を用いた解析は、miR-26a-1レベル雄性と比較して、雌性の肝臓において顕著に高かったことが示された(図1A)。
【0107】
[000188] これは、雌性の事例(n=26)および年齢を適合させた雄性の事例(n=56)中で、qRT-PCRを使用して、成熟型miR-26発現により確認された(図1B)。
【0108】
[000189] 本発明者らは次いで、本明細書中において、miR-26が性別-依存的腫瘍サプレッサー遺伝子として作用することができ、そしてもしその場合、miR-26のサイレンシングが腫瘍中での頻繁に生じる現象であることを、推論した。解析の結果、224例のHCC事例を二分した場合(腫瘍中のmiR-26a-1の中央値レベルに基づいて低miR-26または高miR-26)、NTサンプルと比較してTサンプルにおいてmiR-26a-1の顕著な減少が低miR-26の事例のみにおいて観察されたが(p<0.001)、高miR-26の事例においては見出されなかった(p=0.23)(図1C)ことが示された。
【0109】
[000190] 中央値倍率変化(T/NT比)は、低miR-26a-1事例においては0.37であり、そして高miR-26a-1事例においては0.98であったが、これはmiR-26のサイレンシングが低miR-26事例とのみ関連したことを示唆する。さらに、低miR-26事例は、悪い生存と関連した(図1D)。
【0110】
[000191] ヒトにおいて、3つのmiR-26構成成分、すなわち、miR-26a-1、miR-26a-2、およびmiR-26bが存在した。これらのmicroRNAは、進化的に非常に保存されており、26a-1および26a-2は同一の成熟型配列を共有しており、このことはそれらの機能的冗長性を示唆する。3種類全てのmiR-26構成成分の発現パターンと、それらの生存との関連性は同様であった(図7)。
【0111】
[000192] 本発明者らは、本明細書中において、miR-26構成成分が、雌性の肝臓中でより豊富に発現されており、そしてそれらのサイレンシングが悪い転帰を有するHCCのサブセットの発症において重要である可能性があることをしめす。
【0112】
[000193] 独特な遺伝子発現パターンおよび低miR-26 HCCとの関連性
[000194] 低miR-26 HCCが生物学的に独自のものであるかどうかを試験するため、本発明者らは、本明細書中において、利用可能なmicroRNAおよびmRNAマイクロアレイデータを用いて、224例の適合化したHCC事例を解析した。mRNAマイクロアレイデータは、約21,000個のmRNA遺伝子の発現に基づいた(GEOアクセッション番号、GSE5975)(27)。全ての遺伝子のうちの最初の3つの構成成分に基づく多次元のスケーリング解析により、3種のmiR-26の二分された発現状況に従って(図8)、低miR-26事例の大多数が、高miR-26事例とは別個にクラスターを形成した(図2A)ことが示された。
【0113】
[000195] クラス比較解析により、顕著な数の遺伝子の発現が、低miR-26群と高miR-26群との間で腫瘍中で相違しており、そして915個の遺伝子が共通していたことが示された(図2B)。
【0114】
[000196] SLC2A6およびS100Pが、qRT-PCRによる検証のために、異なって発現された遺伝子間で選択された(図9)。
【0115】
[000197] さらに、多変量クラス予測解析は、結果として全体で80.3%の正確性で低miR-26事例の顕著なクラス予測を生じた。この様に、低miR-26 HCC事例は、高miR-26 HCC事例と比較した場合、それらの遺伝子発現パターンにおいて異なる。
【0116】
[000198] 915個の重複した遺伝子の内、770個が低miR-26 HCCにおいて過剰発現した。これらの770個の遺伝子を使用した遺伝子ネットワーク解析により、高スコア(>10)を伴う一連の推定腫瘍形成性-ネットワークが示された(図6B〜表4)。
【0117】
[000199] 様々なカテゴリーの濃縮遺伝子の調査により、いくつかの重要なシグナル伝達ネットワークを示したが、それらの内で最も印象的なものは低miR-26事例におけるNFκB/IL-6シグナル伝達経路の支配的な活性化を示したことが示された(図2C)。
【0118】
[000200] 本発明者らは、IL-6がHCCおよびHCC性別不均衡に関連したことから、qRT-PCRにより、NFκB標的遺伝子であるIL-6のレベルを測定した。miR-26レベルが減少したHCC事例のほとんどが、IL-6発現が付随的に増加した(図10)。合わせると、これらのデータは、低miR-26 HCCが異なる遺伝子プロファイルを有することを示す。
【0119】
[000201] 独立したコホートを用いた検証
[000202] 性別-依存的miR-26の生存との関連を確認するため、本発明者らは、コホート2由来のT組織およびNT組織において、qRT-PCRにより成熟型miR-26を検出した。IFNアジュバント療法が生存の転帰を変化させたため、本発明者らは、対照群を解析した。コホート1と一致して、miR-26発現は、雌性のNT組織においてより豊富であるが、腫瘍においては、性別に関係なく顕著な減少が観察された(図11)。
【0120】
[000203] さらに、腫瘍中の低miR-26発現は、患者の悪い生存と顕著に関連した(図3A、図12A)。
【0121】
[000204] 別の独立したコホート(コホート3)は、一貫した結果を示した(図3B、図12B)。
【0122】
[000205] コックス比例ハザード回帰分析を使用して、コホート2の中の対照において、miR-26発現の予後診断との関連性をさらに評価した(表2)。
【0123】
[000206] 単変量解析において、低miR-26a腫瘍発現およびTNM病期は、予後診断と顕著に関連した。最終的な多変量モデルにより、腫瘍における低miR-26a発現は、悪い生存の独立した予測因子であったことが示された。同様な傾向は、miR-26bについても見出された。この様に、二分されたmiR-26発現値は、予後診断の独立した予測因子であった。
【0124】
[000207] miR-26発現および治療結果
[000208] 低miR-26 HCCは、NFκB/IL-6経路のものを含む免疫学と機能的に連鎖する遺伝子の濃縮とは生物学的に別個であるようであった。理論により束縛されることは望まないが、本発明者らは、本明細書中において、そのような腫瘍は、サイトカイン-媒介性活性に対する応答において‘常習性’である可能性があると、現在では考えている。コホート2はIFNで治療された事例からなるため、本発明者らは、miR-26発現と治療的転帰との間の関連性を解析した。
【0125】
[000209] 腫瘍中での低miR-26a発現を有する患者は、対照群における全生存と比較した場合に、IFNアジュバント療法を受けた後に顕著な全生存の改善を示したが(p=0.003)(図3C)、これはコホート3において確認された(図3D)。
【0126】
[000210] 対照的に、両コホートに由来する高miR-26a発現を有する患者は、IFNに応答しなかった(図3E〜3F)。
【0127】
[000211] 同様の結果が、miR-26b発現により得られた(図12C〜12F)。コックス比例ハザード回帰分析を使用して、コホート2の低miR-26群における生存に対する治療の効果を評価した(図5B〜表3)。
【0128】
[000212] 単変量解析および多変量解析の両方において、IFN治療は、低miR-26群において顕著に改善された生存と関連した。miR-26、IFN治療、および生存の間での相互作用解析もまた、miR-26発現が、これら2つのコホートにおけるIFN-関連生存転帰に顕著に影響を与えることを示した(miR-26a、p=0.004;miR-26b、p=0.02)。この様に、miR-26は、IFN応答の独立した予測因子である。
【0129】
[000213] 検討
[000214] この研究は、HBV-関連性HCCにおける性別-依存性microRNAプロファイルを解析し、および3つの独立したコホートを使用して生存予後診断および治療転帰におけるそれらの予測値を解析する、これまでで最大の研究である。
【0130】
[000215] 本発明者らは、本明細書中において、miR-26が雌性の肝臓組織においてより豊富に発現したことは示さなかったが、それらの発現は、HCCの対となる非-癌組織と比較して、HCCのサブセットにおいて、性別に関わらず顕著に下方制御された。これらの結果はmiR-26が性別関連そして腫瘍関連microRNAであることを示す。
【0131】
[000216] 同様に、miR-26発現が減少した腫瘍は、異なる遺伝子発現プロファイルを有し、そして低miR-26発現を有する事例は、悪い予後診断を示したが、IFN療法に対して良好に反応した。
【0132】
[000217] これらの結果は、miR-26が腫瘍サプレッサーである可能性があることを示す。肝細胞におけるmiR-26のサイレンシングは、攻撃的HCCの発症においては、雄性に支配的であることに寄与する可能性がある。以下の知見は、本発明者らの上述の仮説と一貫している:(1)miR-26は、雌性の肝臓においてより高いレベルで発現し、この場合おそらくはより高い抗-発癌性活性が存在する;(2)miR-26発現は、悪い生存を有するHCCのサブセットにおいてサイレンシングされている;(3)低miR-26 HCCにおいて活性化される遺伝子は、NFκB/IL-6シグナル伝達経路において選択的に濃縮される;(4)miR-26は、HCC細胞およびPBMCにおけるよりも、肝細胞および不死化/非-形質転換肝細胞において、より豊富に発現される(図13)。
【0133】
[000218] 肝臓癌の性別不均衡は、マウスにおいて、NF-κBによるMyD8-依存的IL-6誘導の性差のためであることが最近見出された(13)。興味深いことに、エストロゲンは、IL-6プロモータ活性を阻害し、それが雌性におけるHCCの感受性の低下に寄与する可能性がある。
【0134】
[000219] これらは、IL-6発現がmiR-26と逆相関したことから、これらの知見と一貫している。さらに、低miR-26 HCCにおいて活性化された多数の遺伝子は、プロゲステロンを誘導する際に機能することができるが、エストロゲンシグナル伝達を阻害する(ネットワーク5およびネットワーク15、図6B〜追加の表4)。興味深いことに、miR-26発現は、HCCにおけるもう一つの重要な因子である肝細胞増殖因子(HGF)と関連しなかった(図14)。
【0135】
[000220] 本発明者らの本明細書中における解析は、miR-26が生存の独立した予測因子であったことが示された。しかしながら、IFN治療に由来する療法転帰が層別化される場合、腫瘍中で低miR-26発現を有する患者のみが、2つの独立した予想されるRCTにおいて、IFN療法に対して良好に応答した。
【0136】
[000221] これらの結果は、腫瘍におけるmiR-26の状態が、HCC患者の予後診断において、そしてIFNアジュバント療法から再発を予防する様な利益を得ることができる適切なHCC患者を選択する補助をする際に、有用な臨床的ツールであることを示す。
【0137】
[000222] 現在、再発-関連死亡率は、手術を受けるHCC患者にとっての重要な臨床的問題であり、そして単一薬剤はアジュバント設定での標準的なケアとしては利用可能ではない。勇気付けるように、Clavienは、7例のRCTにおける肝臓切除または腫瘍切除の後のIFNのアジュバント効果を向上させたと評価し、そしてこれらの試験の全てが中程度に有益な効果を有していたが、明らかに改良が必要であると結論づけた(5)。さらに、複数の実験薬剤の中で、ソラフェニブでは、中程度の生存利益のみが得られる(6)。現在の全身性治療剤の効率の悪さは、特定のHCC療法に対して最も好ましく応答することができる患者の下位集団を選択することができないことにより生じている可能性がある。
【0138】
[000223] 初めて、これらの結果は、この問題に対する解決を提供する。本明細書中において記載される結果は、‘歴史的な’薬剤、すなわち、IFN、の再発見を引き起こし、それの伝統的に中程度の治療利益は、今となっては大きな潜在性を有する薬剤へとシフトする可能性がある。
【0139】
[000224] miR-26 予測因子の頑健性のため、IFNを、切除を受けそしてmiR-26発現が減少した腫瘍を有するHCC患者のために最初に使用される療法として使用することができるが、それは予想される研究において評価される必要はない。ここで提示された研究は、主としてHBV-陽性(約90%)の中国人HCC患者由来であったが、そして従って、非-アジア型HCCおよび肝炎Cおよび/またはアルコールなどのその他の潜在的な肝臓疾患から生じるHCCにおいて、評価する必要があることに、注意すべきである。
【0140】
[000225] 低miR-26 HCC事例のIFN治療に対する感受性の裏にある(1または複数の)メカニズムが現在は不明確であるが、本発明者らは、本明細書中において、これらのHCCがIFN-反応性シグナル伝達経路の特異的な活性化を伴う独特の腫瘍タイプを示すと、考えている。一貫して、低miR-26 HCCは、高miR-26 HCCとは異なっており、そして生存予後診断は悪かった。低miR-26 HCCにおける多数の過剰発現遺伝子は、前炎症性サイトカインまたは抗-炎症性サイトカイン(すなわち、IL-1、IL-2、IL-10およびIL-17)をコードする遺伝子など、細胞性免疫と関連するものである。
【0141】
[000226] さらに、低miR-26 HCCにおいて活性化される多数のシグナル伝達ネットワークは、NFκB/IL-6、IL-10、STAT3およびIFN-誘導可能性因子シグナル伝達ネットワークなどの免疫-関連性のものである。
【0142】
[000227] さらに、理論により束縛されることを望むわけではないが、本発明者らは、本明細書中において、低miR-26発現を有する腫瘍は、IFNシグナル伝達の独自の活性化を有する可能性があり、おそらくはNFκB/IL-6シグナル伝達経路を介するものであり、そして従ってIL-6/STAT3シグナル伝達を介したIFN-媒介性増殖阻害に対して感受性である可能性があると考えている(29)。
【0143】
[000228] HCC患者に由来する雄性の肝臓組織と雌性の肝臓組織のあいだでのmicroRNA発現パターンの全身的な差異の同定が、本明細書中において記載される。miR-26発現が減少した腫瘍は、生物学的に独特であり、生存転帰が悪く、しかしアジュバントIFN療法に対して好ましく応答した。これらのデータは、miR-26が、HCCに対する有用な診断用および予後決定用バイオマーカーであり、そしてアジュバントIFN療法から顕著な利益を得ることができる患者を選択する際の補助をすることができることを示す。
【0144】
[000229] 実施例II:RNA単離およびリアルタイムqRT-PCR解析
[000230] コホート1の凍結組織から標準的なTRIZOL(Invitrogen, Carlsbad, CA)法を使用して、そしてコホート2およびコホート3のパラフィン-包埋組織からMasterPure RNA精製キット(Epicenter, Madison, WI)を使用して、全RNAを抽出した。成熟microRNAの発現を、逆転写後にmiR-26aおよびmiR-26bに対して特異的なTaqman MicroRNAアッセイ(Applied biosystems, Foster City, CA)を使用して、測定した。階層(性別、miRなど)間の全ての比較は、各コホート内で行った。U6 RNAについてのTaqman MicroRNAアッセイを使用して、microRNAの相対的存在度を正規化した。IL-6の発現を、高性能cDNAアーカイブキット(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用することによる逆転写の後にこの遺伝子に対して特異的なTaqman遺伝子アッセイを使用して測定した。18sに対するTaqman遺伝子アッセイを使用して、mRNAの相対的存在度を正規化した。実験を、三重にして行った。
【0145】
[000231] マイクロアレイ解析および統計
[000232] microRNAマイクロアレイプロファイリングのため、腫瘍および対にした非-腫瘍組織を、以前に記載した単一チャネルアレイプラットフォーム(22)を使用して、別個にプロファイリングした。アレイの品質管理、データプロセシング、および正規化を、本質的に以前に記載したように行った(22)。BRB-ArrayToolsソフトウェア3.6.0(http://linus.nci.nih.gov)を、以前に記載したように、マイクロアレイ解析のために使用した(25;26)。アレイの50%より多くから失われた値を有するMicroRNAプローブおよびプローブの中央値からのどちらかの方向において少なくとも1.5倍の変化を有する発現データ値の20%未満を有するMicroRNAプローブを、解析から除去したが、それにより624個のプローブが残った。t-統計を使用したクラス比較解析を使用して、雄性と雌性との間で腫瘍または周囲非-癌組織において異なって発現されたmicroRNAを同定した。
【0146】
[000233] この解析のため、単変量試験の初期顕著性閾値を、p<0.05に設定し、そして解析は多変量試験についての1000の置換(permutation)に基づいており、世界的試験について置換(permutation)p-値を生成して、偽発見率をコントロールする。mRNA発現マイクロアレイプロファイリングについて、本発明者らは、上述した利用可能なmicroRNAマイクロアレイデータと伴う事例と適合した224例の事例を含有した、二元的-チャネルプラットフォーム(すなわち、T/NT比)(27)に基づくそれらの本発明者らの以前に利用可能なオリゴアレイデータセットを使用した。本発明者らは、腫瘍における中央値発現を使用して、HCC事例を二分したが、ここで低miR-26発現は中央値(50th percentile)よりも低いものとして分類され、そして高miR-26発現は中央値(50th percentile)よりも高いものとして分類された。二分されたmiR-26発現レベルに基づくクラス比較解析を使用して、低miR-26 HCCと高miR-26 HCCとのあいだで異なって発現されるmRNAを同定した。同一のプローブフィルタリング分類を、上述の通りに従ったところ、これらの比較のために11,580個の発現プローブが残された。
【0147】
[000234] 6つのクラス予測アルゴリズム(すなわち、Support Vector Machines(SVM)、化合物共変量予測因子(CCP)、Diagonal Linear Discriminant(DLD)、1-Nearest Neighbor(1NN)、3-Nearest Neighbor(3NN)またはCentroid(NC))を使用して、mRNA発現パターンが正確に低miR-26 HCCを高miR-26 HCCから分離することができるかどうかを決定した。これらの解析において、90%のサンプルを、無作為に選択して、分類子を構築し、次いでそれを使用して事例の残り10%を予測した。予測の正確性は、この無作為化分割プロセスを1000回繰り返した後に算出し、偽発見の数および比率をコントロールした。階層的なクラスター解析を、BRBarrayToolsを中央値-中心の相関および完全連鎖とともに使用して行った。監視されていないアプローチを使用して、本発明者らは、フィルタを通過した11,580個の遺伝子の内の最初の3つの主要な構成成分に基づいて、全てのコホート1サンプルを使用して、多次元スケーリング解析を行った。これらの遺伝子の発現レベルを、log-変換し、そしてユークリッド距離を使用してそれらの位置を決定した。Ingenuity Pathways Analysis(Ingenuity(登録商標), www.ingenuity.com)を使用して、miR-26 低HCCとmiR-26 高HCCとのあいだで腫瘍中で異なって発現される遺伝子を濃縮したシグナル伝達経路を、遺伝子ネットワーク解析を使用して同定した。
【0148】
[000235] Kaplan-Meier生存解析を使用して、二分したmiR-26発現に基づいて、GraphPad Prismソフトウェア5.0(GraphPad Software, San Diego, CA)をCox-Mantelログ-ランク検定により生成された統計的P値とともに使用して、患者の生存を比較した。コックス比例ハザード回帰分析を使用して、臨床的変数の患者の生存に足しうる効果を、STATA 9.2(College Station, TX)を使用して解析した。単変量試験を使用して、各臨床変数の生存に対する影響を調べた。p<0.05での顕著なセットにより、生存と顕著に関連した単変量解析由来の臨床的変数を考慮して、多変量解析を行った。共変量の多-共直線性を評価し、そして存在することが見出されなかった。最終モデルにおいて、性別は、HCC転帰におけるそしてmiR-26発現とのその関連性におけるその生物学的関連性のため、共変量として含まれた。最終モデルは、比例ハザードの前提と合致したことが決定された。RT-PCRデータに関して、スチューデントt-試験により生成された統計的P値、およびSpearman相関定数は、GraphPad Prismソフトウェア5.0を使用して算出された。統計的優位性は、p<0.05として定義された。この論文中の全てのp-値は、二方向性である。
【0149】
[000236] 実施例III:HCC腫瘍サンプル中においてmiR-26の低発現を示す患者におけるHCCを治療する方法
[000237] この実施例は、補助療法としてのIFN-α治療に対する好ましい応答を有する可能性があるHCC患者選択しそして治療する方法を記載する。
【0150】
[000238] いくらかのHCC患者について、アジュバント療法(例えば、IFN-α療法)は、生存を長期化することができる(Sun et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 132(7):458-465, 2006)。しかしながら、治療を開始する前に、IFN-α補助療法から利益を得られる可能性が最も高い患者を同定することが有益である。
【0151】
[000239] 対照(同一患者から得られた非-癌性肝臓組織など)と比較した場合、HCC腫瘍サンプルにおいて低レベルのmiR-26を発現するHCC患者の予後診断は、IFN-αを用いた治療の後に非常に改良されることが、本明細書中において開示される。対照的に、腫瘍サンプル中で高レベルのmiR-26を発現する患者は、IFN-α治療の後の生存において顕著な増加は示さず、そして従ってそのような補助治療の良好な候補ではない。
【0152】
[000240] HCCと診断された患者は、治癒を目的として、まず肝臓切除を受ける。HCC腫瘍サンプルおよび非-癌組織サンプルは、その患者から取り出された肝臓組織の一部から得られる。次いで、TRIZOLTMを使用することなどによる当該技術分野において周知の低分子RNA抽出のためのいずれかの適切な方法を使用して、RNAを組織サンプルから単離する。次いで、精製RNAを、miR-26に対して特異的なプライマーを使用したRT-PCRに供して、腫瘍および非-癌組織中でのmiR-26の発現レベルを決定する。非-癌組織と比較した場合、腫瘍組織においてmiR-26の発現が少なくとも1.5倍低い場合、その患者はIFN-α補助療法のための候補である。
【0153】
[000241] 従って、その患者は、当該技術分野において公知の方法に従って、治療的有効量のIFN-αを用いて治療され(例えば、Sun et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 132(7):458-465, 2006;Qian et al., Cancer 107(7):1562-1569, 2006を参照、これら両方ともを参照により本明細書中に援用する)。IFN-αの用量および用法は、様々な因子(その患者の健康状態およびHCCの病期など)に依存して変化する。典型的には、IFN-αは、約6ヶ月までのあいだ毎週1〜3回投与する。
【0154】
[000242] 実施例IV:低発現のmiR-26を用いたHCC患者のための代替治療法
[000243] この実施例は、HCCと診断され、そして肝臓切除を行わない場合にインターフェロン療法により低miR-26の発現を示す、患者を治療する方法を記載する。HCCと診断された患者がIFN-α療法のために良好な候補であるかどうかを決定するため、HCC腫瘍サンプルを、非-癌性肝臓組織サンプルとともに、肝臓切除を受けていない患者から得る。組織サンプルは、当該技術分野において公知のいずれかの方法に従って得ることができる。例えば、 組織サンプルは、皮下注射針を使用して所望の組織を取り出すバイオプシー手順を行うことにより、得ることができる。
【0155】
[000244] 次いで、TRIZOLTMを使用することなどによ当該技術分野において周知の低分子RNA抽出のためのいずれかの適切な方法を使用して、RNAを組織サンプルから単離する。次いで、精製RNAを、miR-26に対して特異的なプライマーを使用したRT-PCRに供して、腫瘍および非-癌組織中でのmiR-26の発現レベルを決定する。非-癌組織と比較した場合、腫瘍組織においてmiR-26の発現が少なくとも1.5倍低い場合、その患者はIFN-α療法の候補である。
【0156】
[000245] 従って、その患者は、当該技術分野において公知の方法に従って、治療的有効量のIFN-αを用いて治療され(例えば、Sun et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 132(7):458-465, 2006;Qian et al., Cancer 107(7):1562-1569, 2006を参照、これら両方ともを参照により本明細書中に援用する)。IFN-αの用量および用法は、様々な因子(その患者の健康状態およびHCCの病期など)に依存して変化する。典型的には、IFN-αは、約6ヶ月までのあいだ毎週1〜3回投与する。
【0157】
[000246] 実施例V:HCC腫瘍サンプル中のmiR-26の高発現を示す患者におけるHCCを治療する方法
[000247] この実施例は、HCCと診断された患者がHCC腫瘍中で高レベルのmiR-26の発現を示す場合、HCCと診断された患者を治療する方法を記載する。
【0158】
[000248] HCCと診断された患者は、治癒を目的として、まず肝臓切除を受ける。HCC腫瘍サンプルおよび非-癌組織サンプルは、その患者から取り出される肝臓組織の部分から得られる。次いで、TRIZOLTMを使用することなどによる当該技術分野において周知の低分子RNA抽出のためのいずれかの適切な方法を使用して、RNAを組織サンプルから単離する。次いで、精製RNAを、miR-26に対して特異的なプライマーを使用したRT-PCRに供して、腫瘍および非-癌組織中でのmiR-26の発現レベルを決定する。非-癌組織と比較した場合、腫瘍組織においてmiR-26の発現が少なくとも1.5倍低くない場合、その患者はIFN-α補助療法に対して好ましく応答する可能性がある。従って、その患者は、IFN-α療法を受けないが、疾患の再発の手術後兆候についてモニタリングする。
【0159】
[000249] 実施例VI:HCC患者を診断する方法
[000250] 一つの具体的な側面において、被検体が肝細胞癌(HCC)を有するか、または肝細胞癌(HCC)を発症するリスクがあるかどうかを診断する方法を、本明細書中において提供する。この方法には一般的に、少なくとも一つのmiR遺伝子産物レベルを被検体由来の試験サンプル中で測定する工程、そして対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した場合、試験サンプルにおけるmiR遺伝子産物のレベルの変化が、被検体がHCCを有するかまたはHCCのリスクがあるかのいずれかを示すかどうかを決定する工程、が含まれる。特定の態様において、少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを、ノザンブロット解析を使用して測定する。同様に、特定の態様において、試験サンプル中の少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも低く、および/または試験サンプル中の少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも高い。
【0160】
[000251] 実施例VII:miR遺伝子産物の測定
[000252] 少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを、被検体から得られた試験サンプル由来のRNAを逆転写して、標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供する工程;miRNA-特異的プローブオリゴヌクレオチドを含む標的オリゴデオキシヌクレオチドをマイクロアレイに対してハイブリダイズさせて、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する工程;そして試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを対照サンプルから得られたハイブリダイゼーションプロファイルと比較する工程;ことにより、測定することができる。少なくとも1つのmiRNAのシグナルの変化は、被検体がHCCを有するかまたはHCCを発症するリスクがあることを示す。
【0161】
[000253] 実施例VIII:診断用途および治療用途
[000254] 別の側面において、被検体におけるHCCを治療する方法が、本明細書中において提供され、この場合、対照サンプルから生成されたシグナルと比較した場合、少なくとも1つのmiRNAのシグナルは無秩序になる(de-regulated)(例えば、下方制御および/または上方制御)。
【0162】
[000255] 被検体から得られた試験サンプル由来のRNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供する工程;標的オリゴデオキシヌクレオチドをmiRNA-特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせて、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する工程;そして試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを対照サンプルから生成されたハイブリダイゼーションプロファイルと比較する工程;により、被検体が、被検体中の1またはそれ以上の予後不良マーカーと関連するHCCを、有するかまたは発症するリスクがあるかどうかを診断する方法もまた、本明細書中において提供される。シグナルの変化は、被検体が、癌を有するかまたは癌を発症するリスクがあることを示す。
【0163】
[000256] 少なくとも1つのmiR遺伝子産物が、対照細胞と比較した場合、被検体の癌細胞において下方制御されるかまたは上方制御されるHCC を有する被検体においてHCCを治療する方法もまた、本明細書中において提供される。1またはそれ以上のmiR遺伝子産物が癌細胞において下方制御される場合、この方法は、被検体有効量の少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子生成物を投与して、それにより被検体中での癌細胞の増殖を阻害する工程を含む。1またはそれ以上のmiR遺伝子産物が癌細胞において上方制御される場合、この方法は、少なくとも1つのmiR遺伝子産物の発現を阻害するための被検体有効量の少なくとも1つの化合物を投与して、それにより被検体中での癌細胞の増殖を阻害する工程を含む。
【0164】
[000257] 以下の工程:対照細胞と比較した場合、HCC細胞における少なくとも1つのmiR遺伝子産物の量を決定する工程;そして、以下の工程:癌細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量が対照細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量よりも少ない場合、被検体に対して有効量の少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子生成物を投与する工程;または癌細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量が対照細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量よりも多い場合、被検体に対して、少なくとも1つのmiR遺伝子産物の発現を阻害するための有効量の少なくとも1つの化合物を投与する工程;によりHCC細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量を変化させて、それにより被検体における癌細胞の増殖を阻害する工程;を含む、被検体におけるHCCを治療する方法もまた、本明細書中において提供される。
【0165】
[000258] 実施例IX:組成物
[000259] 少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子産物および医薬的に許容可能なキャリアを含む、HCCを治療するための医薬組成物もまた、本明細書中において提供される。具体的な態様において、医薬組成物は、適切な対照細胞と比較した場合、HCC細胞において下方制御されるmiR遺伝子産物に対応する少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子産物を含む。特定の態様において、miR遺伝子産物は、SEQ ID NO: 1〜5の1またはそれ以上を含む。
【0166】
[000260] 別の具体的な態様において、医薬組成物は、少なくとも1つのmiR発現制御因子(例えば、阻害剤)化合物および医薬的に許容可能なキャリアを含む。
【0167】
[000261] 適切な対照細胞と比較した場合、HCC細胞において亢進制御または下方制御されるmiR遺伝子産物に対して特異的な少なくとも1つのmiR発現制御因子化合物が含まれる医薬組成物もまた、本明細書中において提供される。
【0168】
[000262] 試験薬剤を細胞に対して提供する工程、そしてHCC細胞において発現レベルの低下と関連する少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを測定する工程、を含む、抗-HCC薬剤を同定する方法もまた、本明細書中において提供され、ここで、適切な対照細胞と比較した場合、細胞中においてmiR遺伝子産物のレベルの増加することが、試験薬剤が抗-HCC薬剤であることを示す。特定の態様において、miR遺伝子産物は、SEQ ID NO: 1〜5の1またはそれ以上を含む。
【0169】
[000263] 試験薬剤を細胞に対して提供する工程、そしてHCC細胞における発現レベルの増加と関連する少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを測定する工程、を含む、抗-HCC薬剤を同定する方法もまた、本明細書中において開示され、ここで、適切な対照細胞と比較した場合、細胞においてmiR遺伝子産物のレベルが減少することが試験薬剤が抗-HCC薬剤であることを示す。
【0170】
[000264] 実施例X:キット
[000265] 本明細書中において記載されるいずれかの組成物を、キット中に含んでもよい。限定的ではない例において、miRNAを単離し、miRNAを標識化し、および/またはmiRNA集団をアレイを用いて評価するための試薬は、キット中に含まれる。このキットには、プローブを生成しまたは合成するための試薬がさらに含まれていてもよい。この様に、キットは、適切な容器手段中に、標識化ヌクレオチドまたはその後標識される非標識ヌクレオチドを取り込むことにより、miRNAを標識化するための酵素が含まれる。それには、1またはそれ以上のバッファ(例えば、反応バッファ、標識化バッファ、洗浄バッファ、またはハイブリダイゼーションバッファ)、miRNAプローブを調製するための化合物、そしてmiRNAを単離するための構成成分、が含まれていてもよい。その他のキットには、miRNAに対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む核酸アレイを製造するための構成成分が含まれていてもよく、そしてこの様に、例えば、固体支持体が含まれていてもよい。
【0171】
[000266] アレイを含むいずれかのキットの態様について、これらは、SEQ ID NO: 1〜5のいずれかの全部または部分と同一な配列またはそれに対して相補的な配列を含有する、核酸分子であってもよい。
【0172】
[000267] キットの構成成分は、水性媒体中または凍結乾燥形状のいずれかでパッケージングすることができる。キットの容器手段には、一般的に、バイアル、試験チューブ、フラスコ、ボトル、シリンジ、または構成成分を配置することができ、そして好ましくは分注することができるその他の容器手段の少なくとも1つが含まれる。1よりも多い構成成分がキット中に存在する場合(標識化試薬と標識とを一緒にパッケージすることができる)、キットは、一般的に、第2の容器、第3の容器、または追加の構成成分を別個に配置することができるその他の追加の容器を含有することもできる。しかしながら、構成成分の様々な組合せを、バイアル中に含んでもよい。本発明のキットには、典型的には、核酸を含有するための手段、および商業的販売のために厳密に管理されたいずれかその他の試薬容器もまた、含まれる。そのような容器には、所望のバイアルが保持される、注入容器または吹き込み成形のプラスチック容器が含まれてもよい。
【0173】
[000268] キットの構成成分が1種および/またはそれ以上の溶液中で提供される場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が一つの好ましい溶液である。キット中に含めることができるその他の溶液は、混合サンプルからmiRNAを単離しおよび/または濃縮する際に関与する溶液である。
【0174】
[000269] しかしながら、キットの構成成分は、(1または複数の)乾燥粉末として提供することができる。試薬および/または構成成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末を適切な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒は、別の容器手段中で提供することもできることが想定される。キットには、標識miRNAの単離を促進する構成成分が含まれていてもよい。miRNAを保存しまたは維持する構成成分またはその分解から保護する構成成分もまた含まれていてもよい。構成成分は、RNAse-不含であってもよく、またはRNAseに対して保護してもよい。
【0175】
[000270] 同様に、キットは、一般的に、適切な手段で、個別の試薬または溶液それぞれについて異なる容器を含むことができる。キットにはまた、キット構成成分を使用することについての、ならびにキットには含まれないいずれかその他の試薬の使用についての指示書が含まれていてもよい。指示書には、実施することができるバリエーションが含まれていてもよい。そのような試薬は、本発明のキットの態様であることが企図される。同様に、キットは、上述した具体的な項目に限定されず、そしてmiRNAの特性評価の操作のために使用されるいずれかの試薬が含まれていてもよい。
【0176】
[000271] miRNAアレイの文脈において検討されたいずれかの態様を、本発明のスクリーニングまたはプロファイリングの方法またはキットにおいてより一般的に使用することができることもまた、企図される。言い換えると、具体的なアレイ中に含まれうるものを記述するいずれかの態様を、miRNAプロファイリングの文脈において、より一般的に実施することができ、そしてアレイ自体が関与しなくてもよい。
【0177】
[000272] いずれかのキット、アレイまたはその他の検出技術または検出ツール、またはいずれかの方法が、これらのmiRNAのいずれかについてのプロファイリングを伴うことができることも、企図される。同様に、miRNAアレイの文脈において検討されたいずれかの態様を、本発明の方法におけるアレイフォーマットを用いるかまたは用いずに、実施することができることも企図される;言い換えると、miRNAアレイ中のいずれかのmiRNAを、当業者に公知のいずれかの技術に従って、本発明のいずれかの方法においてスクリーニングまたは評価することができる。アレイフォーマットは、実施されるべきスクリーニング方法および診断方法のために必要とされない。
【0178】
[000273] 治療用途、予後判断用途、または診断用途のためにmiRNAアレイを使用するためのキットおよびその用途が、本明細書中の発明により企図される。キットには、miRNAアレイ、ならびにアレイ上のmiRNAのための標準的または正規化されたmiRNAプロファイルに関する情報が含まれていてもよい。同様に、特定の態様において、対照RNAまたはDNAが、キット中に含まれていてもよい。対照RNAは、標識化および/またはアレイ解析のための陽性対照として使用することができるmiRNAであってもよい。
【0179】
[000274] 現在の技術の方法およびキットを、本明細書中で広くそして一般的に記載した。包括的な開示中に含まれるより狭い下位概念的分類および中位概念的(sub-generic)分類のいずれかもまた、現在の技術の一部を形成する。これには、切除した材料が本明細書中に具体的に記載されているか否かに関わらず、上位概念由来のいずれかの主題を除去するただし書または否定的限定を伴う、現在の教示の包括的記載が含まれる。
【0180】
[000275] 実施例XI:アレイ調製およびスクリーニング
[000276] miRNAアレイの調製および使用もまた、本明細書中において提供され、これは複数のmiRNA分子または前駆体miRNA分子と完全にまたはほぼ相補的または同一であり、そして空間的に分離された構成で支持体材料上に配置される、規則的なマイクロアレイまたは核酸分子(プローブ)のマイクロアレイである。マイクロアレイは、典型的には、ニトロセルロースまたはナイロンのシートであり、その上にプローブをスポットした。マイクロアレイは、核酸プローブをより高密度に配置し、それにより10,000までの核酸分子を典型的には1〜4 cm2の領域中に固定化することができる。
【0181】
[000277] マイクロアレイを、例えば、遺伝子、オリゴヌクレオチドなどの核酸分子を基質上にスポットすることにより、または基質上でオリゴヌクレオチド配列をin situで製造することにより、製造することができる。スポットされたかまたは製造された核酸分子は、cm2あたり約30個までまたはそれ以上の例えば、cm2あたり約100または1000個までの非-同一の核酸分子を、高密度マトリクスパターンで適用することができる。マイクロアレイは、典型的には、フィルタアレイのニトロセルロースベースの材料とは対照的に、コーティングされたガラスを固体支持体として使用する。miRNA-補完性核酸サンプルのアレイを配列させることにより、各サンプルの位置を、追跡しそしてもとのサンプルと関連づけることができる。
【0182】
[000278] 複数の異なる核酸プローブが安定的に固体支持体の表面と結合する様々なアレイデバイスは、当業者に公知である。アレイのために有用な基質には、ナイロン、ガラス、そしてシリコンが含まれる。アレイを、平均プローブ長、配列、またはプローブのタイプ、プローブとアレイ表面との結合の性質(例えば、共有結合または非共有結合)などを含む、多数の様々な様式で変化させることができる。本明細書中において記載される標識方法およびスクリーニング方法およびアレイは、プローブがmiRNAを検出することを除き、いずれかのパラメータに関してその有用性の点で限定されない;結果的に、方法および組成物を、様々な異なるタイプのmiRNAアレイとともに使用することができる。
【0183】
[000279] 本発明の原理を適用することができる多数の可能性のある態様を考慮して、説明された態様は、本発明の好ましい事例のみであり、そして本発明の範囲に対する限定として捉えられるべきではないことは、理解すべきことである。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求の範囲によって定義される。従って、本発明者らは、本発明として請求の範囲に記載し、それら全てはこれらの請求項の範囲および概念に含まれる。
【0184】
[000280] 参考文献
[000281] 上述した参考文献および以下の参考文献は、それらが例示的な手続きまたは本明細書中で記載された内容に対するその他の詳細な補充を提供する程度に、参照により本明細書中において具体的に援用される。
【0185】
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【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
[0001] 本件出願は、米国仮出願番号61/131,800(2008年6月11日出願)の利益を視聴し、この開示全体を参照により本件明細書中に明示的に援用する。
【0002】
連邦支援研究に関する言及
[0002] 本発明は、国立癌研究所グラント番号Z01 BC 010313およびZ01 BC 010876に基づく政府支援によりなされた。政府は、本発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
本発明の技術分野および産業上利用可能性
[0003] 本件開示は、HCC患者の予後診断についての予測マーカーとしてのmiR-26の同定と、インターフェロン(IFN)-α補助療法に対する反応性とを記載する。
【背景技術】
【0004】
[0004] 肝細胞癌(HCC)は、世界中で最も流行しているヒト悪性腫瘍の一つであり、米国での発症数が増加している(Parkin et al., CA Cancer J. Clin. 55(2):74-108, 2005)。HCCは、B型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)による感染により生じるウイルス性肝炎に由来するかまたは代謝異常または毒素性傷害に由来するかのいずれかにより生じる炎症性の肝臓を有する患者において最も頻繁に発生する。ウイルス性肝炎は、世界中の80%以上のHCC症例に寄与する(Thorgeirsson and Grisham, Nat. Genet. 31(4):339-3465, 2002;Budhu and Wang, J. Leukoc. Biol. 80(6):1197-1213, 2006)。HCCの重要な特徴の一つは、その性差であり、著しい雄性優先度である(すなわち、雌性と比較して雄性において2〜6倍も一般的である)(El Serag and Rudolph, Gastroenterology 132(7):2557-2576, 2007)。古典的なin vivo発癌実験もまた、雄性げっ歯類でのHCCへの感受性がより高いことを示している(Ghebranious and Sell, Hepatology 27(2):383-391, 1998;Nakatani et al., Jpn. J. Cancer Res. 92(3):249-256, 2001;Rogers et al., Cancer Res. 67(24):11536-11546, 2007;Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007)。さらに、雌性HCC患者は、雄性患者よりもより長い生存期間を有する傾向がある(Ng et al., Cancer 75(1):18-22, 1995;Dohmen et al., J. Gastroenterol. Hepatol. 18(3):267-272, 2003;Tangkijvanich et al., World J. Gastroenterol. 10(11):1547-1550, 2004)。これらの結果は、腫瘍生物学および宿主微小環境が、雄性と雌性との間で顕著に異なっている可能性があることを示す。
【0005】
[0005] 最近の研究により、HCCにおいて見られる性差が、クッパー細胞により生成されるインターロイキン-6(IL-6)の誘導によるものであり、それをエストロゲンにより阻害することができる可能性が示唆される(Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007)。この概念と一貫して、その他の研究は、血清IL-6が、いくつかの活動的な悪性腫瘍(HCCを含む)において非常に亢進されており、そして腫瘍細胞により生成することができるその発現が転移性疾患と予後診断の悪さとに関連していることが示された(Ashizawa et al., Gastric Cancer 8(2):124-131, 2005;Porta et al., Ann. Oncol。19(2):353-358, 2008)。これらの研究から、IL-6の前発癌性活性が性ホルモンにより制御されている可能性があり、そして活性化IL-6を伴う腫瘍が生物学的に独特なものでありそしてより活動的である可能性が示唆される。
【0006】
[0006] 外科手術は、依然として今日まで、治癒の可能性があるHCCについての唯一の有効な治療様式。しかしながら、HCCを有する患者のわずか約10〜20%しか現在のところ外科的治療にはふさわしくない。さらに、治癒的切除を受ける患者はしばしば、高い再発頻度を有する。この様に、予後診断および療法のための患者の階層化を補助する際の十分な解明を提供する診断ツールを開発する要望が、依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Parkin et al., CA Cancer J. Clin. 55(2):74-108, 2005
【非特許文献2】Thorgeirsson and Grisham, Nat. Genet. 31(4):339-3465, 2002
【非特許文献3】Budhu and Wang, J. Leukoc. Biol. 80(6):1197-1213, 2006
【非特許文献4】El Serag and Rudolph, Gastroenterology 132(7):2557-2576, 2007
【非特許文献5】Ghebranious and Sell, Hepatology 27(2):383-391, 1998
【非特許文献6】Nakatani et al., Jpn. J. Cancer Res. 92(3):249-256, 2001
【非特許文献7】Rogers et al., Cancer Res. 67(24):11536-11546, 2007
【非特許文献8】Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007
【非特許文献9】Ng et al., Cancer 75(1):18-22, 1995
【非特許文献10】Dohmen et al., J. Gastroenterol. Hepatol. 18(3):267-272, 2003
【非特許文献11】Tangkijvanich et al., World J. Gastroenterol. 10(11):1547-1550, 2004
【非特許文献12】Naugler et al., Science 317(5834):121-124, 2007
【非特許文献13】Ashizawa et al., Gastric Cancer 8(2):124-131, 2005
【非特許文献14】Porta et al., Ann. Oncol. 19(2):353-358, 2008
【発明の概要】
【0008】
[0007] MicroRNAs(miRs)は、遺伝子発現を制御する小型の一本鎖RNA分子である。microR-26(miR-26)の発現が、非-癌組織と比較してHCC腫瘍組織において減少しており、そして低レベルのmiR-26が、悪い臨床転帰と関連していることが、本明細書中において開示される。低発現レベルのmiR-26がHCC患者におけるインターフェロン(IFN)-α療法に対する好ましい応答と相関することもまた本明細書中において開示される。この様に、HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含むHCCと診断された患者の臨床転帰を予測する方法が、本明細書中において提供され、ここで対照と比較した場合の腫瘍サンプルにおけるmiR-26発現レベルの減少が生存、IFN-α療法に対する好ましい応答、またはこれら両方を示唆する。
【0009】
[0008] HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含む、IFN-α療法の候補としてHCCと診断された患者を選択する方法もまた提供され、ここで対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの減少がその患者がIFN-α療法の候補であることを示唆する。
【0010】
[0009] (i)HCCと診断された患者から得られた腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程;(ii)腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを対照と比較する工程;および(iii)その患者に対する治療方法を選択する工程;を含む、HCCと診断された患者を治療する方法をさらに提供し、ここでその患者について、対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルが1/1.5倍またはそれ以上減少する場合にのみ、治療がIFN-α療法を含む。
【0011】
[00010] 本明細書中で提供される方法のいくつかの態様において、対照は、その患者から得られた非-癌組織サンプルである。その他の態様において、対照は、健康被検体由来の肝臓サンプルまたは基準値である。
【0012】
[00011] 候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞においてmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択し、それによりHCCの治療のための薬剤を同定する工程を含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法をさらに提供する。いくつかの態様において、スクリーニングは、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程を含む。候補薬剤は、サイトカインまたは低分子を含む(しかしこれらに限定されない)、分子のいずれかのタイプであってもよい。
【0013】
[00012] 開示の前述の特徴および利点そしてその他の特徴および利点は、添付する図面を参照して行う、いくつかの態様の以下の詳細な説明からより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[00013] 特許または出願は、1またはそれ以上のカラー図面および/または1またはそれ以上の写真を含有してもよい。(1または複数の)カラー図面および/または(1または複数の)写真を含む本件特許または特許出願公開のコピーは、請求に応じてそして必要な費用の支払い基づいて、特許庁により提供される。
【図1】[00014] 図1A〜1D:雄性および雌性の肝細胞および腫瘍におけるmiR-26発現。 [00015] 図1A:マイクロアレイ解析により決定した、雌性(n=30)および雄性(n=194)の非-癌性肝組織におけるmiR-26a-1の発現レベル。非-対応t-検定を使用した。 [00016] 図1B:雌性事例(n=26)および齢適合雄性G1およびG2事例(n=56)由来のmiR-26aの相対発現レベルを、qRT-PCRにより決定した。非-対応t-検定を使用した。 [00017] 図1C:腫瘍中のmiR-26の状態により二分した場合の、224例の対応NT組織およびT組織の間のmiR-26a-1の相対レベルの比較。対応t-検定を使用した:低miR-26-1群からはp<0.001;高miR-26-1群からはp=0.23。図1A〜1Cにおけるデータは、疾患を有さない正常な肝臓プール(n=8)に対して正規化したlog 2相対発現として、表現される。 [00018] 図1D:マイクロアレイ解析により決定された腫瘍中のmiR-26a-1発現レベル、および生存転帰。ログランク検定を使用し、そして中央値発現レベルをカットオフ値として使用した。低miR-26発現(n=106)は、中央値(50th percentile)よりも低いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均2.69倍の減少)。高miR-26発現(n=111)は、中央値(50th percentile)よりも高いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均0.98倍の減少)。
【図2−1】[00019] 図2A〜2C:低miR-26 HCCにおける特徴的な転写活性。 [00020] 図2A:11,580種の遺伝子の発現に基づく、224例のHCC症例の多次元スケールプロット。サンプルを中央値二分に基づいて低miR-26発現(青色または明色)または高miR-26発現(赤色または暗色)に着色する。 [00021] 図2B:低miR-26 HCC中で同時発現されるmRNAのベン図。
【図2−2】[00022] 図2C:低miR-26 HCCにおけるNFκB/IL-6シグナル伝達の遺伝子ネットワーク。低miR-26 HCCにおける亢進制御された遺伝子 は、オレンジまたは明るい灰色で目立たせる。灰色で印刷した遺伝子は、顕著な遺伝子のリストには載っていないが、ネットワークに関連することが報告されている。実線および点線は、それぞれが直接的な相互作用および間接的な相互作用を示し、一方矢印は、遺伝子発現の正の制御を示す(すなわち、作用する)。線で繋いだ遺伝子は、結合のみを示す。詳細なネットワーク関連およびネットワーク形状は、図15に記載される。
【図3】[00023] 図3A〜3F:2種の予想される無作為化対照IFN治療施行(IFN試験コホート、n=118;IFN検証コホート、n=79)における、腫瘍におけるmiR-26a発現と生存の予後診断との関連性。 [00024] 図3A〜3B:miR-26a発現の、対照群由来のHCC患者(コホート2、パネル図3A;コホート3、パネル図3B)における全生存との関連性。コホート2:高miR-26a事例、n=24;低miR-26a事例、n=35。コホート3:高miR-26a事例、n=21;低miR-26a事例、n=19。 [00025] 図3C〜3D:IFNアジュバント療法の、低miR-26a発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=24;対照事例、n=35. コホート3:IFN事例、n=20;対照事例、n=19。 [00026] 図3E〜3F:IFNアジュバント療法の、高miR-26a発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=35;対照事例、n=24. コホート3:IFN事例、n=19;対照事例、n=21。
【図4A】[00027] 図4A:表1 - コホート1およびコホート2についての被検体の臨床的特徴。
【図4B】[00028] 図4B:追加の表1 - INF試験についての被検体の臨床的特徴 - コホート2およびコホート3。
【図4C】[00029] 図4C:追加の表2 - 性別関連microRNAについて検索するために使用した事例の臨床的特徴。
【図5A】[00030] 図5A:表2 - HCCを有する被検体における、miR-26発現レベルおよび全生存の単変量および多変量のCox回帰分析。
【図5B】[00031] 図5B:表3 -低miR-26発現を有する被検体における、インターフェロン療法および全生存の単変量および多変量のCox回帰分析。
【図6−1】[00032] 図6A:追加の表3 - 8種の性別関連microRNA。
【図6−2】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図6−3】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図6−4】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図6−5】[00033] 図6B:表3 - INGENUITYTM経路解析に由来する、遺伝子ネットワークの上位20種のリスト。
【図7】[00034] 図7A〜7F:検定コホート由来の雄性および雌性の肝臓組織および腫瘍における、miR-26発現の存在度。 [00035] 図7A:雌性(n=30)および雄性(n=194)の非-腫瘍肝組織における、miR-26a-2の発現レベル。 [00036] 図7A:miR-26の状態により二分された場合の、対応TおよびNTのあいだのmiR-26a-2の相対レベルの比較。中央値発現レベルを、カットオフ値として使用した。低miR-26発現は、中央値(50th percentile)よりも低いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均2.69倍の減少)。高miR-26発現は、中央値(50th percentile)よりも高いものとして分類された(NTと比較してTにおいて平均0.98倍の減少)。図7Aおよび図7Bにおけるデータは、マイクロアレイ解析により決定され、そして疾患を有さない正常な肝臓プール(n=8)に対して正規化した、log 2相対発現として表現された。 [00037] 図7C:腫瘍および生存転帰におけるmiR-26a-2発現レベル。 [00038] 図7D〜7F:miR-26b発現状態による、図7A〜7Cにおけるのと同様の結果。
【図8】[00039] 図8:miR-26発現状態に基づく、サンプルの層化。HCCサンプルを、それらの平均的なmicroRNA発現(すなわち、miR-26a-1、miR-26a-2、およびmiR-26b)に基づいて、分類した。中央値発現を使用して、事例を、低miR-26(青色または明色)そして高miR-26(赤色または暗色)に分類した。各ドット(事例)の位置を、3種のmicroRNA発現レベル(miR-26a-1、miR-26a-2およびmiR-26b)により決定する。層化の転帰を使用して、MDSプロットを生成した。
【図9】[00040] 図9A-9B:HCCにおけるS100PおよびSLC2A6の発現およびマイクロアレイとqRT-PCRとの間のそれらの相関。qRT-PCR(左パネル)により決定した、低-miR-26レベルを有する10種のHCCにおけるおよび高miR-26レベルを有する10種のHCC事例におけるS100Pの発現レベル(図9A)およびSLC2A6の発現レベル(図9B)。qRT-PCR対マイクロアレイ由来のデータ間の直線回帰および相関が、r(スピアマン)および示されるp-値(右パネル)とともに示される。発現状態は、腫瘍(T)/非-腫瘍(NT)比として示される。
【図10】[00041] 図10A〜10C:HCCにおけるmiR-26およびIL-6の発現。 [00042] 図10A:qRT-PCRにより決定される、82の対応腫瘍(T)および非-腫瘍組織(NT)におけるIL-6の発現レベル。TとNTとの間でのIL-6の示差的発現を調べるため、スチューデントのt-検定を行った。 [00043] 図10B〜10C:qRT-PCRにより決定された82の対応腫瘍および非-腫瘍組織における、IL-6とmiR-26a(B 図10B)またはmiR-26b(図10C)との間の発現レベルの相関。データは、log2スケールに対するT/NT比として示される。
【図11】[00044] 図11:検証コホート由来の雄性および雌性の肝臓組織および腫瘍における、miR-26発現の存在度。雄性の非-腫瘍組織(左パネル)と比較して、雌性のより多い発現を有する腫瘍におけるmiR-26aの発現およびmiR-26bの発現の低下(右パネル)を、遡及的な無作為化臨床試行から独立した検証コホートにおいて、立証する。miR-26aおよびmiR-26bの発現レベルを、qRT-PCRにより測定した。P値は、非-対応t-検定に由来する。
【図12】[00045] 図12A〜12F:腫瘍におけるmiR-26b発現の、IFNアジュバント療法についての2種の予想される無作為化対照試行における生存予後診断との関連性。 [00046] 図12A〜12B:miR-26b発現の、コホート2(図6A)またはコホート3(図12B)に由来する対照事例における全生存との関連性。コホート2:高miR-26b事例、n=23;低miR-26b事例、n=36。コホート3:高miR-26b事例、n=21;低miR-26b事例、n=19。 [00047] 図12C〜12D:IFNアジュバント療法の、低miR-26b発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=22;対照事例、n=36。コホート3:IFN事例、n=20;対照事例、 n=19。 [00048] 図12E〜12F:IFNアジュバント療法の、高miR-26a発現を有するHCC患者における全生存との関連性。コホート2:IFN事例、n=37;対照事例、n=23。コホート3:IFN事例、n=19;対照事例、n=21。
【図13】[00049] 図13:初代の新たに単離された肝細胞、hTERT-不死化正常肝細胞株HHT4、2種のHCC細胞株、および健康なドナー由来のPBMCを含む、様々な細胞種におけるqRT-PCRにより決定されたmiR-26の発現。
【図14】[00050] 図14:HCCにおけるHGFの発現およびmiR-26との関連性。qRT-PCRにより決定された、低-miR-26レベルを有する10例のHCCにおけるHGFの発現レベルおよび高miR-26レベルを有する10例のHCC事例におけるHGFの発現レベル(左パネル)。qRT-PCR由来のHGFレベルとマイクロアレイ由来のmiR-26レベルとのあいだの直線回帰および相関を、r(スピアマン)および示されるp-値とともに示す(右パネル)。発現状態が、腫瘍(T)/非-腫瘍(NT)比として示される。
【図15】[00051] 図15:経路解析において使用されるネットワーク関係性およびネットワーク形態の詳細な記載。
【配列表フリーテキスト】
【0015】
[00052] 配列表
[00053] 添付する配列表に列挙する核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822に規定されるように、ヌクレオチド塩基についての標準的な文字省略そしてアミノ酸についての3文字コードを使用して示される。各核酸配列の一方の鎖のみを示すが、しかし相補鎖は、示された鎖をいずれか参照することにより含まれるものとして理解される。添付される配列表において:
[00054] [SEQ ID NO: 1]は、ヒトmiR-26a-1由来の前駆体のヌクレオチド配列である = guggccucgu ucaaguaauc caggauaggc ugugcagguc ccaaugggcc uauucuuggu。
【0016】
[00055] [SEQ ID NO: 2]は、ヒトmiR-26a-2由来の前駆体のヌクレオチド配列である = ggcuguggcu ggauucaagu aauccaggau aggcuguuuc caucugugag gccuauucuu gauuacuugu uucuggaggc agcu。
【0017】
[00056] [SEQ ID NO: 3]は、ヒトmiR-26b由来の前駆体のヌクレオチド配列である = ccgggaccca guucaaguaa uucaggauag guugugugcu guccagccug uucuccauua cuuggcucgg ggaccgg。
【0018】
[00057] [SEQ ID NO: 4]は、ヒトmiR-26a-1およびmiR-26a-2の成熟型のヌクレオチド配列である = uucaaguaau ccaggauagg cu。
【0019】
[00058] [SEQ ID NO: 5]は、ヒトmiR-26bの成熟型のヌクレオチド配列である = uucaaguaau ucaggauagg u。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
[00059] 略語
[00060] 1NN 1-最近傍(Nearest neighbor)
[00061] 3NN 3-最近傍
[00062] AFP アルファ-フェトプロテイン
[00063] ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
[00064] CCP 化合物共変量予測因子
[00065] DLD 対角線形判別式
[00066] DNA デオキシリボ核酸
[00067] HBV 肝炎Bウイルス
[00068] HCC 肝細胞癌
[00069] HCV 肝炎Cウイルス
[00070] IFN インターフェロン
[00071] IL インターロイキン
[00072] ISH In situハイブリダイゼーション
[00073] miR MicroRNA
[00074] miRNA MicroRNA
[00075] mRNA メッセージRNA
[00076] NC 最近傍重心
[00077] PCR ポリメラーゼ連鎖反応
[00078] pre-miRNA 前駆体microRNA
[00079] qRT-PCR 定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
[00080] RNA リボ核酸
[00081] siRNA 低分子干渉RNA
[00082] snRNA 低分子核RNA
[00083] SVM サポートベクター装置
[00084] TACE 経カテーテル動脈化学塞栓術
[00085] TNM 腫瘍-節-転移
[00086] 用語
[00087] 前述の一般的な記載および以下の詳細な説明は両方とも、例示的でありそして説明のためだけのものであり、そして現在の技術の範囲に限定することを意図しないことが、理解されるべきである。本出願において、単数形の使用には、特にそうではないと記載しない限り、複数形も含まれる。
【0021】
[00088] 単語“a”または“an”の使用は、特許請求の範囲および/または明細書中の用語“含む”と組み合わせて使用する場合、“1つ”を意味しうるが、しかし“1またはそれ以上”、“少なくとも1つ”、そして“1またはそれ以上の”の意味とも一貫している。
【0022】
[00089] 同様に、“含む”、“含有する”、そして“含まれる”、またはこれらの基本語の修飾(“comprises”、“contained”、そして“including”を含む(しかしこれらには限定されない))の使用は、限定を意図しない。用語“および/または”は、前および後ろの用語を、一緒にまたは別個に使用することを意味する。例示の目的のため、しかし限定することは意図しないが、“Xおよび/またはY”は、“X”または“Y”または“XおよびY”を意味することができる。
【0023】
[00090] miRNAは、ゲノム配列または遺伝子に由来することが理解される。この側面において、用語“遺伝子”は、簡単にするため、所定のmiRNAについての前駆体miRNAをコードするゲノム配列を参照するために使用される。しかしながら、本発明の態様は、例えば、プロモータまたはその他の制御配列などの、その発現に関与するmiRNAのゲノム配列に関連していてもよい。
【0024】
[00091] 用語“miRNA”は、一般的に、一本鎖分子に関するが、しかし特定の態様において、本発明において実施される分子は、同一の一本鎖分子の別の領域または別の核酸に対して、部分的に相補的(鎖の長さにわたって10〜50%相補性)、実質的に相補的(鎖の長さにわたって50%より多くしかし100%の相補性よりも低い)、または完全に相補的である領域または追加の鎖もまた、包含しうる。この様に、核酸は、1またはそれ以上の相補鎖または(1または複数の)自己相補鎖を含む分子、または分子を含む特定の配列の“相補鎖(1または複数)”を包含することができる。例えば、前駆体miRNAは、自己-相補性領域を有してもよく、それは100%までの本発明の相補的miRNAプローブがそれらの標的に対して少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の相補性であってもよいか、またはそのような相補性である。
【0025】
[00092] 本明細書中において使用する場合の用語“それらの組合せ”は、用語に専攻する列挙された項目の、全ての順列および組合せをいう。例えば、“A、B、C、またはそれらの組合せ”は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つが含まれることが意図され、そして順番が特定の文脈において重要な場合には、BA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABもまた含まれることが意図される。
【0026】
[00093] 本明細書中において使用される節の見出しは、組織的な目的のみのためであり、記載される主題をいかようにも限定することを意図していない。特許、特許出願、記事、書籍、論文、そしてインターネットウェブページを含む、全ての文献および本件出願中で引用される同様の資料は、いずれかの目的のためにそれら全体を参照により明示的に援用される。1またはそれ以上の援用された文献および同様の資料が、ある用語を本件出願におけるその用語の定義とは相反するように定義しまたは使用するという状況では、本件出願が支配する。
【0027】
[00094] そうではないと記載されない限り、技術的用語は、標準的な用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、以下の文献に見出すことができる:Benjamin Lewin, Genes V, published by Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)。
【0028】
[00095] 開示の様々な態様のレビューを容易にするため、具体的な用語の以下の説明が提供される:
[00096] 補助療法:一次療法と組み合わせて一次療法の作用を改良するために使用される治療のこと。例えば、HCCと診断された患者は、一次療法として肝臓切除を受け、そして補助療法としてインターフェロン(IFN)-α療法を受けることができる。
【0029】
[00097] 候補:本明細書中で使用される場合、IFN-α療法についての“候補”は、HCCの治療について、IFN-α療法に好ましく反応することが予想される患者である。
【0030】
[00098] 臨床転帰:疾患または症状(例えばHCC)に対する治療の後の患者の健康状態、治療を行わない場合の患者の健康状態をいう。臨床転帰には、死までの時間の長さの増加、死までの時間の長さの減少、生存機会の増加、死のリスクの増加、生存、無病生存、慢性疾患、転移、進行疾患、または侵攻性疾患、疾患再発、死、そして療法に対する好ましい応答または悪い応答が含まれるが、これらには限定されない。
【0031】
[00099] 対照:“対照”は、実験サンプル(例えば、HCC患者から得られた腫瘍サンプル)との比較のために使用される、サンプルまたは標準のことをいう。いくつかの態様において、対照は、健康な患者から得られた肝臓サンプルまたはHCCと診断された患者から得られた非-癌組織サンプルである。いくつかの態様において、対照は、歴史的対照または基準値(すなわち、以前に試験された対照サンプルまたは基準値または正常値(非-癌組織におけるmiR-26発現レベルなど)を示すサンプル群)である。
【0032】
[000100] サイトカイン:その他の細胞の挙動に影響を与える様々な造血性細胞そして非-造血性細胞により生成されるタンパク質。サイトカインは、生得的免疫応答および適応免疫応答の両方ともについて重要である。
【0033】
[000101] 生存減少:本明細書中で使用される場合、“生存の減少”は、患者の死までの時間の長さの減少、またはその患者について死のリスクの増加のことをいう。
【0034】
[000102] 発現レベルの検出:本明細書中で使用される場合、“miR-26発現レベルの検出”は、サンプル中に存在するmiR-26の量を定量することをいう。miR-26の発現の検出、またはいずれかのmicroRNAの発現の検出は、当該技術分野において知られているいずれかの方法または本明細書中で記載されるいずれかの方法(例えばqRT-PCR)を使用して、達成することができる。miR-26の発現の検出には、成熟型のmiR-26の発現またはmiR-26発現と相関する前駆体型の発現のいずれかを検出することが含まれる。典型的には、miRNA検出方法には、例えばRT-PCRによるなどの配列特異的検出が関与する。miR-26-特異的プライマーおよびプローブは、当該技術分野において公知である前駆体および成熟型miR-26核酸配列を使用して設計することができ、そして本明細書中においてSEQ ID NO: 1〜5として提供される。
【0035】
[000103] 肝細胞癌(HCC):HCCは、ウイルス性肝炎、肝臓毒素、または肝硬変(しばしばアルコール依存症により生じる)から生じる炎症性肝臓を持つ、患者において典型的に生じる肝臓の原発性悪性腫瘍である。
【0036】
[000104] インターフェロン(IFN)-α:インターフェロンは、白血球(例えば、T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー細胞)および線維芽細胞を含む、様々な異なる細胞型により生成されるサイトカイン種である。インターフェロンは、ウイルス、寄生虫および腫瘍などの外来性物質に対する曝露に反応して誘導される。二本鎖RNAは、しばしばウイルス感染の指標であるが、インターフェロンの一般的な誘導物質である。インターフェロンは、ウイルス複製の阻害、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージの活性化、そしてリンパ球に対する抗原提示の増加、のために重要である。インターフェロンには、IFN-α、IFN-βおよびIFN-γが含まれる。本明細書中で使用される場合、HCCのための“IFN療法”または“IFN-α療法”は、IFN-αを用いた治療のことをいう。本明細書中で使用される場合、“IFN療法に対する好ましい応答”または“IFN-α療法に対する好ましい応答”は、IFN-αにより処理された患者はの生存の増加(死までの時間の長さの増加、または生存の機会の増加)、HCCの症候の改善、HCCの広がりまたは転移の減少、疾患の重症度または攻撃性の減少、または療法に対する陽性の応答を測定するためのいずれかその他の適切な臨床的パラメータ、を意味する。
【0037】
[000105] MicroRNA(miRNA、miR):遺伝子発現を制御する一本鎖RNA分子。MicroRNAは、are 一般的に21〜23ヌクレオチドの長さである。MicroRNAは、プリ-miRNAとして知られる一次転写物から、前駆体(プレ)-miRNAと呼ばれる短いステム-ループ構造そして最終的には機能的成熟microRNAへとプロセシングされる。成熟型microRNA分子は、1またはそれ以上のメッセンジャーRNA 分子に対して部分的に相補的であり、そしてそれらの一次機能は遺伝子発現を下方制御することである。MicroRNAは、RNAi経路を通じて遺伝子発現を制御する。
【0038】
[000106] MicroRNA-26:現在はmiR-26a-1、miR-26a-2およびmiR-26bが含まれる、microRNA(miRとも呼ばれる)のファミリーのことをいう。用語“microRNA-26”もまた、健康組織と比較した場合、HCC腫瘍において識別的に発現される、これまでは未同定のmicroRNA-26ファミリーのいずれの構成成分も含まれる。
【0039】
[000107] miR-26発現:本明細書中で使用される場合、“低miR-26発現”および“高miR-26発現”は、サンプル(例えば、健康な肝臓サンプルまたはHCC肝臓サンプル)において見出されるmiR-26レベルのことに言及する、相対的な用語である。いくつかの態様において、低miR-26発現および高miR-26発現は、非-癌性肝臓サンプルとHCC肝臓サンプルの群におけるmiR-26レベルの比較により決定される。次いで、低発現および高発現を、サンプル中のmiR-26の発現が平均または中央値miR-26発現レベル以上(高)であるかまたは以下(低)であるかに基づいて、各サンプルに対して割り当てることができる。個別のサンプルについて、高miR-26発現または低miR-26発現は、サンプルを、高発現または低発現を有することが知られる対照サンプルまたは参照サンプルと比較することにより、または基準値と比較することにより、決定することができる。低miR-26発現および高miR-26発現には、miR-26前駆体型の発現またはmiR-26成熟型の発現のいずれか、またはこれら両方が含まれてもよい。
【0040】
[000108] 患者:本明細書中で使用される場合、用語“患者”には、ヒトおよび非-ヒト動物が含まれる。治療のための好ましい患者はヒトである。“患者”および“被検体”は、本明細書中では互換的に使用される。
【0041】
[000109] 医薬的に許容可能なビヒクル:本開示において有用な医薬的に許容可能な担体(ビヒクル)は、慣用的なものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、1またはそれ以上の治療用化合物、分子または薬剤の医薬的送達のために適した組成物および製剤を記載する。
【0042】
[000110] 一般に、担体の性質は、使用される具体的な投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常は、医薬的にそして生理学的に許容可能な液体(例えば、ビヒクルとしての、水、生理食塩水、平衡化塩類溶液、水溶性グルコース(aqueous dextrose)、グリセロールなど)が含まれる、注射可能な液体を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤、またはカプセル形状)については、慣用的な非-毒性固体担体には、例えば、マンニトール、ラクトース、スターチ、またはステアリン酸マグネシウムの医薬的グレードのものが含まれていてもよい。生物学的に中性な担体に加えて、投与すべき医薬組成物は、少量の非-毒性の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、そしてpH緩衝化剤(酢酸ナトリウムまたはソルビタンラウリン酸モノエステル(sorbitan monolaurate)など)などを含有することができる。
【0043】
[000111] 疾患の予防、治療、または改善:疾患(例えば、HCC)の“治療”は、疾患の十分な発症を阻害することをいう。“治療する”とは、発症し始めた後に、疾患または病理学的状態の兆候または症候を改善する治療的介入のことをいう。“改善する”とは、疾患の兆候または症候の数または重症度の減少のことをいう。
【0044】
[000112] スクリーニング:本明細書中で使用される場合、“スクリーニング”は、miR-26の発現を増加させる候補薬剤を評価しそして同定するために使用されるプロセスのことをいう。いくつかの事例において、スクリーニングは、候補薬剤(抗体、低分子またはサイトカインなど)をHCC細胞と接触させる工程、そして薬剤のmiR-26の発現に対する作用を試験する工程が関与する。microRNAの発現は、当該技術分野において知られておりそして本明細書中で記載される多数の技術の内のいずれか一つを使用して、例えばマイクロアレイ解析によりまたはqRT-PCRにより、定量することができる。
【0045】
[000113] 低分子:典型的には約1000ダルトン未満の分子量を有する分子、またはいくつかの態様において、約500ダルトン未満の分子量を有する分子のことであり、ここで、分子は、測定可能な程度で標的分子の活性を修飾することができる。
【0046】
[000114] 治療法:診断および治療が両方とも含まれる包括的な用途。
【0047】
[000115] 治療剤:被検体に適切に投与される場合に、所望の治療効果または予防効果を誘導することができる、化合物、低分子、またはその他の組成物(アンチセンス化合物、抗体、プロテアーゼ阻害剤、ホルモン、ケモカイン、またはサイトカインなど)。例えば、HCCに対する治療剤には、HCCの発症または転移を予防または阻害する薬剤が含まれる。本明細書中で使用される場合、“候補薬剤”は、HCCに対する治療剤として機能することができるかどうかを決定するためのスクリーニングのために選択される化合物である。いくつかの態様において、候補薬剤は、薬剤がHCC細胞におけるmiR-26の発現を増加させる場合に、治療剤として同定される。“インキュベーション”には、薬剤が細胞または組織と相互作用するために十分な量の時間が含まれる。“接触する”には、固体形状または液体形状の薬剤を細胞または組織とともにインキュベーションすることが含まれる。細胞または組織を薬剤を用いて“処置する”ことには、薬剤を細胞または組織と接触させるかまたはインキュベーションすることが含まれる。
【0048】
[000116] 治療的有効量:薬剤を用いて治療される被検体または細胞において、所望の効果を達成するために十分な、特定の医薬的組成物または治療剤の量。例えば、これは、miR-26の発現を増加させる治療剤の量および/または患者におけるHCCを予防し、治療しまたは改善する治療剤の量であってもよい。有効量の薬剤は、治療される被検体または細胞、そして治療用組成物の投与の方法を含む(しかしそれらには限定されない)いくつかの因子に依存する。
【0049】
[000117] 腫瘍、新生物、悪性腫瘍、または癌:細胞の異常な増殖または制御されていない増殖の結果。新生物、悪性腫瘍、癌、そして腫瘍は、しばしば互換的に使用され、そして過剰な細胞分裂から生じる組織または細胞の異常な増殖のことをいう。個体中の腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる“全身腫瘍組織量(tumor burden)”である。転移しない腫瘍は、“良性”と呼ばれる。周囲組織に浸潤しおよび/または転移することができる腫瘍は、“悪性”と呼ばれる。
【0050】
[000118] 腫瘍-節-転移(TNM):悪性腫瘍のTNM分類は、患者体内において癌の低後を記述するための、癌病期分類システムである。Tは原発性腫瘍のサイズおよび近傍組織に浸潤したかどうかを記述する;Nは、浸潤されたいずれかのリンパ節を記述する;そしてMは転移を記述する。TNMは、国際対癌連合(International Union Against Cancer)により開発されそして維持されており、癌の広がりの程度を分類するための、1つの世界的に認識されている標準に対するコンセンサスを達成する。TNM分類は、対癌米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer)および世界産婦人科連合(International Federation of Gynecology and Obstetrics)によっても使用される。
【0051】
[000119] 特に説明しない限り、本明細書中において使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本件開示が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。単数形の用語(“a”、“an”、および“the”)には、文脈が明確に特に示さない限り、複数の参照が含まれる。同様に、単語“または”は、文脈が明確に特に示さない限り、“および”を含むと意図される。この様に“AまたはBを含む”は、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、そして核酸またはポリペプチドについての全ての分子量または分子量値はおよそのものであり、そして記載のために提供されることがさらに理解されるべきである。本明細書中において記載される方法および材料と同様または対応する方法および材料を、本発明の開示を実施または試験する際に使用することができるが、適切な方法および材料は以下に記載される。全ての文献、特許出願、特許、そして本明細書中において言及されるその他の参照は、その全体を参照により援用される。対立する場合には、用語の説明を含め本件明細書が支配する。さらに、材料、方法、そして事例は、説明のためのみであり、そして限定を意図したものではない。
【0052】
[000120] いくつかの態様の概観
[000121] 本明細書中において、miR-26の発現は非-癌組織と比較した場合、HCC腫瘍組織において減少し、そして低レベルのmiR-26は悪い臨床転帰と関与することが開示される。本明細書中において、低発現レベルのmiR-26が、HCC患者におけるIFN-α療法に対する好ましい応答と相関することもまた開示される。
【0053】
[000122] この様に、HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの減少が生存、IFN-α療法に対する好ましい応答、またはその両方ともの減少を示す、HCCと診断された患者の臨床転帰を予測する方法が、本明細書中において提供される。HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中でmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの減少が、患者がIFN-α療法のための候補であることを示す、HCCと診断された患者を、IFN-α療法のための候補として選択する方法もまた、提供される。
【0054】
[000123] 本発明の方法の一態様において、miR-26はmiR-26a-1である。別の態様において、miR-26はmiR-26a-2である。別の態様において、miR-26はmiR-26bである。その他の態様において、miR-26は、miR-26a-1、miR-26a-2およびmiR-26bの2種またはそれ以上の組合せである。
【0055】
[000124] いくつかの態様において、対照は、同一の患者から得られた非-癌組織サンプルである。その他の態様において、対照は、健康被検体(例えば健康肝臓ドナー)から得られた肝臓サンプルである。別の例において、対照は、歴史的な値から算出された標準である。腫瘍サンプルおよび非-癌組織サンプルを、当該技術分野において公知のいずれかの方法に従って、得ることができる。例えば、腫瘍サンプルおよび非-癌性サンプルを肝臓切除を受けたHCC患者から得ることができ、またはそれらを皮下注射針を使用して、顕微解剖により、またはレーザー・キャプチャーにより、抽出することにより得ることができる。対照(非-癌性)サンプルを、例えば、死体ドナーからまたは健康な肝臓ドナーから、得ることができる。
【0056】
[000125] 腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現は、(対照と比較した場合)例えば、腫瘍をIFN-αによる治療に対してより感受性にすること、腫瘍の増殖速度を変更すること、腫瘍を転移できる様にすることなど、表現型効果を付与するために十分な量減少する。理論により束縛されることを望まない一方、表現型効果は、miR-26により制御される異なる遺伝子発現により媒介されると考えられる。表現型効果は、1またはそれ以上のmiR-26の発現により制御された遺伝子の増加または減少であってもよい。いくつかの態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍または少なくとも1.4倍減少する。一態様において、, 腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも1.5倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも2倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも2.5倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも3倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも3.5倍減少する。別の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現は、対照と比較した場合、少なくとも4倍減少する。その他の態様において、腫瘍サンプルのmiR-26の発現は、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍減少する。miR-26の発現を、検出することができ、そして当該技術分野において公知のいずれかの方法、例えばマイクロアレイおよびqRT-PCRなど(しかしそれらには限定されない)を使用して、定量する。
【0057】
[000126] 候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中のmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択し、それによりHCCの治療のための薬剤を同定する工程、を含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法がさらに提供される。
【0058】
[000127] いくつかの態様において、スクリーニングは、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程を含む。HCC細胞は、HCC患者から得られる初代細胞であってもよく、またはHCC細胞は、不死化細胞または形質転換細胞であってもよい。一態様において、HCC細胞中のmiR-26の発現は、非処置細胞と比較した場合、少なくとも2倍に増加する。別の態様において、HCC細胞におけるmiR-26の発現は、非処置細胞と比較した場合、少なくとも3倍増加する。別の態様において、HCC細胞のmiR-26の発現は、非処置細胞と比較した場合、少なくとも4倍増加する。
【0059】
[000128] 候補薬剤は、タンパク質、ペプチド、低分子、抗体、または核酸などの、いずれのタイプの薬剤であってもよい。いくつかの態様において、候補薬剤は、サイトカインである。いくつかの態様において、候補薬剤は低分子である。スクリーニングには、ハイ-スループットスクリーニングそして候補薬剤の個々の群または小さな群のスクリーニングの両方が含まれる。
【0060】
[000129] (i)HCCと診断された患者から得られた腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程;(ii)腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを対照と比較する工程;そして(iii)HCCと診断された患者のための治療方法を選択する工程;を含み、ここでHCCと診断された患者が、対照と比較した場合、腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルの1.5倍またはそれ以上が減少する場合にのみ、治療がIFN-α療法を含む、HCCと診断された患者を治療する方法が、さらに提供される。いくつかの態様において、miR-26は、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、またはこれらの組合せである。
【0061】
[000130] いくつかの態様において、治療の方法は、肝臓切除をさらに含む。いくつかの態様において、IFN-α療法は、IFN-αの投与を含む。
【0062】
[000131] 一態様において、対照は、患者から得られた非-癌組織サンプルである。別の態様において、対照は、健康被検体由来の肝臓サンプルである。別の態様において、対照は基準値である。
【0063】
[000132] 本発明の方法のいくつかの態様において、腫瘍サンプル中でのmiR-26の発現は、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍または少なくとも4倍減少する。
【0064】
[000133] 腫瘍組織サンプル
[000134] 本明細書中において提供される方法には、腫瘍サンプルおよび非-腫瘍組織サンプルにおけるmiR-26発現レベルを検出することが含まれる。いくつかの態様において、組織サンプルは、HCCと診断された被検体から得られ、そしていくつかの事例においては、健康被検体または死体ドナーから得られる。“サンプル”は、全組織、または組織の疾患部分または健康部分、である組織の一部のことをいう。本明細書中で記載するように、腫瘍組織サンプルを、対照と比較する。いくつかの態様において、対照は、同一の被検体から得られる非-癌組織サンプル(HCC腫瘍を取り囲む非-癌性肝組織など)である。その他の態様において、対照は、健康な患者から得られた肝臓サンプルまたは死体由来の非-癌組織サンプルである。その他の態様において、参照サンプルは、歴史的な値に基づく標準である。
【0065】
[000135] 組織サンプルを、当該技術分野において公知のいずれかの方法を使用して、被検体から得ることができる。例えば、組織サンプルを、HCCのための治療としての肝臓切除を受けたHCC患者から得ることができる。これらの患者から、腫瘍組織および周囲の非-癌性肝臓組織の両方を得ることができる。いくつかの態様において、対照として使用される非-癌組織サンプルを、死体から得る。その他の態様において、非-癌組織サンプルを、健康な肝臓ドナーから得る(Kim et al., Hepatology 39(2):518-527, 2004を参照)。
【0066】
[000136] いくつかの態様において、組織サンプルをバイオプシーにより得る。バイオプシーサンプルは、新鮮なもの、凍結されたもの、または固定されたもの(ホルマリン-固定およびパラフィン包埋など)であってもよい。サンプルを、抽出により(例えば、皮下注射針またはその他のタイプの針により)、顕微解剖により、レーザー・キャプチャーにより、または当該技術分野において公知のいずれかその他の手段により、患者から外科的に取り出すことができる。
【0067】
[000137] miR-26発現を検出する方法
[000138] 前駆体microRNA(プレ-miRNA)の配列および成熟miRNAの配列は、例えばSanger Instituteによりオンラインで入手可能なmiRBaseデータベースを通じて、公に入手可能である(Griffiths-Jones et al., Nucleic Acids Res. 36:D154-D158, 2008;Griffiths-Jones et al., Nucleic Acids Res. 34:D140-D144, 2006;およびGriffiths-Jones, Nucleic Acids Res. 32:D109-D111, 2004を参照)。前駆体型そして成熟型のmiR-26ファミリー構成成分の配列は、本明細書中においてSEQ ID NO: 1〜5として提供される。前駆体型のmiR-26a-1およびmiR-16a-2は異なっているが、成熟型のこれらのmiRの配列は、同一である(SEQ ID NO: 4)。
【0068】
[000139] microRNA発現の検出および定量を、当該技術分野において周知のそして以下に記載される多数の方法のいずれか一つにより達成することができる(例えば、本明細書中において参照により援用される、U.S.特許出願公開No. 2006/0211000および2007/0299030を参照)。miR-26ファミリー構成分子の既知の配列を使用して、特異的プローブおよびプライマーを、以下に記載する検出方法において適宜使用するために設計することができる。
【0069】
[000140] いくつかの事例において、miRNA検出方法は、サンプル(例えば、細胞または組織サンプル)由来の核酸の単離を必要とする。RNAそして具体的にはmiRNAを含む核酸を、当該技術分野において公知のいずれかの適切な技術を使用して、単離することができる。例えば、フェノールに基づく抽出は、RNAの単離のための一般的な方法である。フェノールに基づく試薬は、細胞および組織を破壊するため、そしてその後にコンタミネーション物質からRNAを分離するため、変性剤とRNase阻害剤の組合せを含有する。フェノールに基づく単離手順は、10〜200-ヌクレオチド範囲のRNA種(例えば、前駆体および成熟型miRNA、5Sおよび5.8SリボゾームRNA(rRNA)、そしてU1低分子核RNA(snRNA))を回収することができる。さらに、TRIZOLTMまたはTRI REAGENTTMを用いる手順など抽出手順は、大きいものそして小さなものなど全てのRNAを精製し、そしてmiRNAおよび低分子干渉RNA(siRNA)を含有する生物学的サンプルから全RNAを単離するための効率的な方法である。
【0070】
[000141] マイクロアレイ
[000142] マイクロアレイは、複雑な生化学的サンプルの並行解析を可能にする、核酸、タンパク質、低分子、細胞、またはその他の物質の顕微鏡的規則的アレイである。DNAマイクロアレイは、固体基質に化学的に接着するキャプチャープローブとして知られる異なる核酸プローブからなり、それらはマイクロチップ、ガラススライド、またはミクロスフェアサイズのビーズであってもよい。マイクロアレイを使用して、例えば、大量のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現レベルおよび/またはmiRNAの発現レベルを同時的に測定することができる。
【0071】
[000143] マイクロアレイを、ガラススライド上への精細-先端ピンを用いたプリント、事前に作製されたマスクを使用したフォトリソグラフィー、動的マイクロミラーデバイスを使用したフォトリソグラフィー、インクジェットプリント、または微小電極アレイ上の電気化学を含む、様々な技術を使用して製造することができる。
【0072】
[000144] miRNAのマイクロアレイ解析を、当該技術分野において公知のいずれかの方法に従って達成することができる(例えば、それぞれを本明細書中において参照により援用する、PCT公開No. WO 2008/054828;Ye et al., Nat. Med. 9(4):416-423, 2003;Calin et al., N. Engl. J. Med. 353(17):1793-1801, 2005を参照)。一例において、RNAを細胞または組織 サンプルから抽出し、低分子RNA(18〜26-ヌクレオチドRNA)を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して全RNAからサイズ選択する。オリゴヌクレオチドリンカーを、低分子RNAの5'末端および3'末端に接着し、そして得られるライゲーション生成物を、10サイクルの増幅によるRT-PCR反応のための鋳型として使用する。センス鎖PCRプライマーは、その5'末端に接着されたフルオロフォアを有し、それによりPCR生成物のセンス鎖を蛍光的に標識する。PCR生成物を変性し、その後マイクロアレイにハイブリダイゼーションさせる。PCR生成物は、アレイ上の対応するmiRNAキャプチャープローブ配列に対して相補的な標的核酸とも呼ばれるが、塩基対合を介して、キャプチャープローブが固定されたスポットに対してハイブリダイズする。スポットは、次いで、マイクロアレイレーザースキャナを使用して励起される場合、蛍光を発する。次いで、各スポットの蛍光強度を、多数の陽性対照および陰性対照およびアレイデータ正規化方法を使用して具体的なmiRNAのコピー数の単位として評価し、この結果として具体的なmiRNAの発現レベルを評価する。
【0073】
[000145] 代わりの方法において、細胞サンプルまたは組織サンプルから抽出される低分子RNA画分(miRNAを含む)を含有する全RNAを、低分子RNAのサイズ選択をせず、そして3'末端をT4 RNAリガーゼを使用して標識せず、そして短いRNAリンカーのいずれも蛍光標識せず、直接的に使用する。RNAサンプルを、30℃で2時間インキュベーションすることにより標識し、その後の80℃で5分間インキュベーションしてT4 RNAリガーゼを加熱不活性化する。アレイ上の対応するmiRNAキャプチャープローブ配列に対して相補的なフルオロフォア標識したmiRNAを、塩基対合を介してキャプチャープローブを固定するスポットに対してハイブリダイズする。マイクロアレイスキャニングおよびデータプロセシングを、上述する様に実行する。
【0074】
[000146] 使用されるもの以外にも、斑状オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、事前製造されたオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、および斑状の長いオリゴヌクレオチドアレイを含む、いくつかの種類のマイクロアレイが存在する。斑状オリゴヌクレオチドマイクロアレイにおいて、キャプチャープローブは、miRNA配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドである。この種類のアレイは、典型的には、2種の異なるフルオロフォアで標識された比較されるべき2種のサンプル(非-癌組織およびHCC肝臓組織など)由来の、サイズ選択された低分子RNAの増幅PCR生成物と、ハイブリダイゼーションされる。あるいは、低分子RNA画分(miRNAを含む)を含有する全RNAを、2種のサンプルから抽出し、そして低分子RNAのサイズ選択をせず、そして3'末端をT4 RNAリガーゼを使用して標識せず、そして低分子RNAリンカーを2種の異なるフルオロフォアを使用して標識せず、直接的に使用する。サンプルを混合し、そして1つの単一マイクロアレイに対してハイブリダイズさせ、その後それをスキャンして、亢進制御されたmiRNA遺伝子および下方制御されたmiRNA遺伝子を一アッセイ中で可視化することができる。
【0075】
[000147] 事前に製造されたオリゴヌクレオチドマイクロアレイまたは単一-チャネルマイクロアレイにおいて、プローブを、既知のmiRNAまたは予測されるmiRNAの配列と適合するように設計する。全ゲノムをカバーする商業的に利用可能なデザインが存在する(例えば、AffymetrixまたはAgilentのもの)。これらのマイクロアレイは、遺伝子発現の絶対値の推定を可能にし、そして従って2種の条件の比較には、2種の別個のマイクロアレイの使用を必要とする。
【0076】
[000148] 斑状の長いオリゴヌクレオチドアレイは、50〜70-merのオリゴヌクレオチドキャプチャープローブから構成され、そしてインクジェットプリントまたはロボットプリントのいずれかにより製造される。低分子オリゴヌクレオチドアレイは、20〜25-merのオリゴヌクレオチドプローブから構成され、そしてフォトリソグラフィー合成(Affymetrix)またはロボットプリントにより製造される。
【0077】
[000149] 定量的RT-PCR
[000150] 定量的RT-PCR(qRT-PCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応の生成物の量を迅速に測定するために使用される、ポリメラーゼ連鎖反応の改良である。qRT-PCRは、miRなどの遺伝子配列がサンプル中に存在するかどうかを決定する目的で、そして存在する場合にサンプル中のコピー数を決定する目的で、一般に使用される。miRNAを含む核酸分子の発現を決定することができるいずれかのPCRの方法は、本発明の開示の範囲内のものである。当該技術分野において公知のqRT-PCR法には様々なバリエーションが存在し、その内の3種類を以下に記載する。
【0078】
[000151] 定量的ポリメラーゼ連鎖反応のための方法には、アガロースゲル電気泳動、SYBR Greenの使用(二本鎖DNA色素)、そして蛍光リポータープローブの使用、が含まれるが、これらには限定されない。後ろ2種類は、リアルタイムで解析することができる。
【0079】
[000152] アガロースゲル電気泳動を用いて、未知のサンプルおよび既知のサンプルを、既知濃度の同様のサイズの増幅用標的DNA部分を用いて調製する。両方の反応を、同一の条件の下、同一の長さの時間実施する(好ましくは同一のプライマーを使用し、または少なくとも同様のアニーリング温度のプライマーを使用する)。アガロースゲル電気泳動を使用して、それらのもともとのDNAおよび予備のプライマーから、反応生成物を分離する。既知サンプルと未知サンプルの相対量を測定して、未知サンプルの量を決定する。
【0080】
[000153] SYBR Green色素の使用は、アガロースゲル法よりも正確であり、そしてリアルタイムで結果を得ることができる。DNA結合色素は、全ての新たに合成された二本鎖DNAと結合し、そして蛍光強度の増加を測定し、その結果、初期濃度を決定することができる。しかしながら、SYBR Greenは、予期しないいずれかのPCR生成物ならびにプライマーダイマーを含む全ての二本鎖DNAを標識する。反応は、蛍光二本鎖DNA色素の付加を伴って、従来通り調製される。反応を実施し、そして蛍光レベルをモニタリングする(二本鎖DNAに結合下場合の色素のみが蛍光を発する)。標準的なサンプルまたは標準曲線を参照して、PCR中の二本鎖DNA濃度を決定することができる。
【0081】
[000154] 蛍光リポータープローブ法は、配列-特異的核酸に基づくプローブを使用して、それにより全ての二本鎖DNAではなく、プローブ配列のみを定量する。蛍光リポーターおよび隣接する位置に保持されるクエンチャーを有するDNAに基づくプローブ(いわゆる二重-標識プローブ)を用いて、一般的に実行される。リポーターがクエンチャーに近接していることにより、その蛍光を阻害する;プローブが分解された場合にのみ、蛍光が検出される。このプロセスは、関与するポリメラーゼの5'から3'へのエキソヌクレアーゼ活性に依存する。
【0082】
[000155] リアルタイム定量的PCR反応を、二重-標識プローブを添加することにより調製する。二本鎖DNA鋳型の分解に際して、プローブは、鋳型DNAの目的とする領域におけるその相補的配列に結合することができる。PCR反応混合物を加熱してポリメラーゼを活性化する場合、ポリメラーゼは、プライミングされた一本鎖鋳型DNAに対する相補鎖の合成を開始する。ポリマー化が継続するにつれて、それはその相補的配列に結合したプローブに到達し、次いでそれがポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性のために加水分解され、それにより蛍光リポーターとクエンチャー分子が分離される。この結果として、蛍光の増加が生じ、それが検出される。リアルタイムPCR反応の熱サイクルの間、各PCRサイクルで加水分解された二重-標識プローブから放出される蛍光の増加がモニタリングされ、それによりDNAの最終量そしてその結果DNAの初期量の正確な決定が可能になる。
【0083】
[000156] In Situハイブリダイゼーション
[000157] In situハイブリダイゼーション(ISH)を、核酸ハイブリダイゼーション技術を単細胞レベルで適用しそして外挿し、そして細胞化学の技術、免疫細胞化学の技術および免疫組織化学の技術と組み合わせることにより、維持されそして同定されるべき細胞マーカーの形態の維持および同定を可能になり、そして集団中の特定の細胞(例えば組織サンプルおよび血液サンプル)に対して配列を局在化することができる。ISHは、相補的核酸を使用して組織の箇所または部分(in situ)で、または組織が十分に小さい場合には全組織中(ホールマウントISH)で、1またはそれ以上の特異的核酸配列を局在化するある種のハイブリダイゼーションであるる。RNA ISHを使用して、miRNAの発現などの組織中での発現パターンをアッセイすることができる。
【0084】
[000158] サンプル細胞または組織を、プローブ(例えばmiRNA-特異的プローブ)を細胞に進入させるようにそれらの浸透性を上昇させる様に処理する。プローブを処理された細胞に対して添加し、適切な温度でハイブリダイズさせ、そして過剰なプローブを洗浄除去する。相補的プローブを放射活性タグ、蛍光タグ、または抗原性タグを用いて標識し、それにより組織中のプローブの位置および量を、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、またはイムノアッセイを用いて決定することができる。サンプルは、非-癌性サンプルまたはHCC肝臓サンプルなどの、本明細書中において記載される様ないずれのサンプルであってもよい。miR-26ファミリー構成成分の配列は公知であるため、miR-26プローブを、プローブがmiR-26と特異的に結合するように、適宜設計することができる。
【0085】
[000159] In Situ PCR
[000160] In situ PCRは、ISHの前のPCRに基づく標的核酸配列の増幅を行う方法である。RNAの検出のため、細胞内逆転写工程を導入して、RNA鋳型から相補的DNAを生成し、その後in situ PCRを行う。これにより、低コピー数のRNA配列の検出が可能になる。
【0086】
[000161] in situ PCRの前に、細胞または組織サンプル を固定し、そして透過性にして形態を保持し、そして増幅すべき細胞内配列に対してPCR試薬が接近しやすいようにする。標的配列のPCR増幅は、次に、懸濁液中に保持される無傷細胞中、またはガラススライド上の細胞沈降調製物または組織切片中で直接、行われる。前者のアプローチでは、PCR反応混合物中に懸濁された固定化細胞を、従来型のサーマルサイクラーを使用して熱サイクルを行う。PCRの後、細胞をガラススライド上に細胞沈降させ、ISHまたは免疫組織化学による細胞内PCR生成物を可視化する。ガラススライド上のIn situ PCRを、カバースリップの下でサンプルをPCR混合物で覆うことにより行い、次いでそれを封入して反応混合物の蒸発を防止する。熱サイクルを、従来型のサーマルサイクラーまたは特注のサーマルサイクラーのヒートブロックの上部にガラススライドを直接配置することにより、または熱サイクルオーブンを使用することにより、行う。
【0087】
[000162] 細胞内PCR生成物の検出は、一般的に、2種の異なる技術(PCR-生成物特異的プローブを用いたISHによる間接的in situ PCR、または熱サイクルの間にPCR生成物中に取り込ませる標識ヌクレオチド(例えば、ジゴキシゲニン-11-dUTP、フルオロセイン-dUTP、3H-CTPまたはビオチン-16-dUTP)の直接的検出を介したISHを行わない直接的in situ PCRの)の内の一つを用いてう。
【0088】
[000163] HCC予後診断の予測マーカーとして、そしてHCC治療のための治療剤の同定のための、miR-26の使用
[000164] miR-26は、HCC患者における生存予後診断の独立した予測因子であることが、本明細書中において開示される。同一被検体由来のまたは健康被検体由来の非-癌組織と比較して、低miR-26発現を有するHCC腫瘍サンプルは、生存の減少を予測する。さらに、HCC患者のIFN-α治療からの療法転帰を層分類する場合、腫瘍中で低miR-26発現を有する患者のみが、IFN-α療法に好ましく反応した。この様に、腫瘍中のmiR-26状態は、HCC患者の予後診断において、そして再発を防止するようにIFN-αアジュバント療法から利益を得ることができる適切なHCC患者を選択するため、臨床的ツールとして使用することができる。いくつかの事例において、IFN-α療法を、根本的な肝臓切除の後に使用する。
【0089】
[000165] いくつかの態様において、HCC腫瘍サンプル中のmiR-26の発現レベルを、同一患者由来の周囲非-癌組織中のmiR-26の発現レベルと、直接的に比較する。その他の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26発現を、健康被検体(肝臓ドナーなど)から得られる肝臓サンプルのmiR-26の発現レベルと比較する。いくつかの事例において、対照サンプルとして使用される非-癌組織は、死体から得られる。その他の態様において、腫瘍サンプル中のmiR-26の発現を、歴史的な値に基づく標準レベルと比較する。例えば、被検体のコホートから得られる非-癌性肝臓組織サンプル中のmiR-26の平均的な発現レベルに基づいて、標準を設定することができる。例えば、被検体のコホートは、臨床試験に登録したHCC患者の群であってもよい。被検体のコホートは、死体ドナーの群であってもよい。
【0090】
[000166] 対照と比較した場合、HCC腫瘍サンプル中において1またはそれ以上のmiR-26ファミリー構成成分の発現が低いことは、その患者ついて悪い予後診断を示唆し、そしてその患者をIFN-α補助療法に対するよい候補として同定する。本明細書中で使用される場合、“悪い予後診断”は、一般的に生存の低下を意味し、または言い換えると、死のリスクの増加またはしまでの時間の減少を意味する。悪い予後診断は、癌のその他の器官への広がりの増加(転移)など、疾患重症度の増加を意味することもできる。一態様において、miR-26の低発現は、対照と比較した場合、少なくとも1.5倍の発現の減少により示される。その他の態様において、miR-26の低発現は、対照と比較した場合、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍のmiR-26発現の減少により示される。
【0091】
[000167] より高いレベルのmiR-26発現を有するHCC腫瘍を有する患者は、生存についてよりよい機会を有するという知見から、miR-26の発現を増加させる化合物は、HCCの治療のための治療剤として有用である。この様に、候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中のmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択することを含む、HCCの治療のための治療剤を同定する方法が、本明細書中において開示される。いくつかの態様において、スクリーニングは、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程および細胞中のmiR-26の発現レベルのいずれかの変化を検出する工程を含む。HCC細胞は、HCC患者から得られた初代細胞または患者から得られた不死化されまたは形質転換された細胞であってもよく、または細胞はMHCC97細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、またはSNU-423細胞(しかしこれらには限定されない)などの商業的に利用可能な不死化細胞株であってもよい。
【0092】
[000168] 候補薬剤を用いた治療の後のmiR-26の発現の増加により、HCCの治療のための治療剤としての薬剤を同定する。候補薬剤をスクリーニングして疾患の治療のための治療剤を同定する方法は、当該技術分野において周知である。miR-26の発現レベルを検出する方法は、当該技術分野において公知であり、そしてマイクロアレイ解析、RT-PCR(qRT-PCRを含む)、in situハイブリダイゼーション、in situ PCR、およびノザンブロット解析など(しかしこれらには限定されない)、本明細書中に記載される。一態様において、スクリーニングは、ハイスループットスクリーニングを含む。別の態様において、候補薬剤は、個別にスクリーニングされる。
【0093】
[000169] 候補薬剤は、核酸分子、タンパク質、ペプチド、抗体、脂質、低分子、化学物質、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、またはmiR-26発現を直接的または間接的に変化させることができるその他のタイプの分子など(しかしこれらには限定されない)のいずれのタイプの分子であってもよい。いくつかの態様において、候補薬剤は、NFκB/IL-6シグナル伝達経路において役割を果たす分子である。その他の態様において、候補薬剤は、IL-10、STAT3、またはインターフェロン-誘導可能因子シグナル伝達ネットワークにおいて役割を果たす分子である。一態様において、候補薬剤はサイトカインである。別の態様において、候補薬剤は低分子である。
【0094】
[000170] 肝細胞癌(HCC)の特性評価のための方法もまた、本明細書中において記載され、ここでHCCの少なくとも一つの特徴が、以下のもの:HCCの有無;HCCの診断;HCCの予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;HCCの治療に対する感受性(HCCの化学療法治療および/または放射線療法治療に対する感受);HCCのホルモン治療に対する感受性;HCCの侵襲的手術による除去に対する感受性;HCCの組合せアジュバント療法に対する感受性;から成る1またはそれ以上の群から選択される。
【0095】
[000171] miR-26ファミリーの1またはそれ以上の構成成分を含む少なくとも1つの検出プローブを含む、HCCの検出のためのキットもまた、本明細書中において記載される。このキットは、オリゴヌクレオチドアレイの形態であっても、またはオリゴヌクレオチドアレイを含むものであってもよい。
【0096】
[000172] i)少なくとも1つの組織サンプルをHCCに罹患する患者から単離する工程;ii)少なくとも1つの組織サンプルの特性評価を行いおよび/またはプローブの検出を使用して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;iii)工程ii)において同定される少なくとも1つの特徴に基づいて、HCC患者の生理学的状態を診断する工程;iv)工程iii)において得られる診断に基づいて、HCC患者がHCCの治療から利益を得られるかどうかを決定する工程;を含む、治療に対するHCC患者の感受性を決定するための方法もまた、本明細書中において記載される。
【0097】
[000173] 特定の態様において、癌の少なくとも1つの特徴は、以下のもの:癌の有無;癌のタイプ;癌の起源;癌の診断;癌の予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;癌の治療に対する感受性(例えば癌の化学療法治療および/または放射線療法治療に対する感受性);癌のホルモン治療に対する感受性;癌の侵襲的手術による除去に対する感受性;癌の組合せアジュバント療法に対する感受性;からなる1またはそれ以上のの群から選択される。
【0098】
[000174] 癌の治療に対する感受性を決定するための方法もまた、本明細書中において記載され、ここで癌の少なくとも1つの特徴は、癌の治療に対する感受性(例えば、癌の化学療法治療および/または放射線療法治療に対する感受性);癌のホルモン治療に対する感受性;癌の侵襲的手術による除去に対する感受性;癌の組合せアジュバント療法に対する感受性;である。
【0099】
[000175] 以下の工程:i)少なくとも1つの組織サンプルをHCCに罹患する患者から単離する工程;そしてii)少なくとも1つの組織サンプルを特性決定して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;を含む、HCC患者の起こりうる予後診断を決定するための方法もまた、本明細書中において記載され、ここで、この特徴により、HCC患者の起こりうる予後診断を決定することが可能になる。
【0100】
[000176] 以下の実施例は、特定の具体的な特徴および/または態様を説明するために提供される。これらの実施例は、開示を記載される具体的な特徴または態様に限定することを意図したものではない。
【0101】
[000177] 実施例
[000178] 以下の実施例は、HCCにおける性別-依存性のmicroRNAプロファイルの解析および生存予後診断および治療転帰におけるそれらの予測値を記載する。これらの研究について、全部で379人のHCC患者の2種の独立したコホートを解析した。最初のコホートは、HCCと関連する潜在的なmicroRNAを同定するための試験コホートであった。二番目のコホート(検証コホート)を使用して、試験コホートから得られた結果を確認した。Using このストラテジーを使用して、miR-26の構成成分が雌性の肝臓組織においてより広く発現されていたため、miR-26の構成成分を性別-関連microRNAとして同定した。さらに、miR-26ファミリー構成成分の発現レベルを、性別に関わらずそれらの対合非-癌組織と比較した場合に、HCC腫瘍サンプルのサブセットにおいて顕著に下方制御した。miR-26発現が減少した腫瘍は、異なる遺伝子発現プロファイルを有し、そして低miR-26発現を示す事例は、悪い生存予後診断と関連した。以下に記載されたデータにより、miR-26が、腫瘍抑制因子として機能し、そしてmiR-26がサイレンシングされた腫瘍は生物学的に独特であることが示唆される。
【0102】
[000179] 実施例I:材料、方法、および患者の特徴
[000180] 臨床的試料
[000181] 腫瘍(T)および周囲非-腫瘍組織(NT)の両方の瞬間凍結試料またはパラフィン-包埋試料を、インフォームドコンセントの上で、Liver Cancer Institute of Fudan University(上海)(376事例)およびUniversity of Hong Kong Medical Centre(香港)(79事例)(中国)出根治切除を受けた455人のHCC患者から得た(4)。この研究は、対応する研究所の施設内倫理委員会により承認された。正常な肝臓組織サンプルプールを、8例の疾患-不含の肝臓ドナーから得た(24)。利用可能なmicroRNAマイクロアレイデータを伴った以前に記載された241例のHCC事例のコホート(コホート1:試験コホート)(22)を使用して、性別および生存に関連したmicroRNAを検索した。それらの中で、17例でmiR-26発現データが欠けており、そして9例で生存データが欠けており、miR-26発現解析については224事例、そして生存解析については217事例が残された。アジュバントIFN療法を評価するための、予想される無作為化対照試行(RCT)に由来するHCC事例(n=135)(コホート2:検証コホートおよびIFN試験コホート)(3)を、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)により独立した検証コホートとして使用した。コホート2の中で、6例でmiR-26発現データが欠けており、そして12例で生存データが欠けており、miR-26発現解析については129事例(60例の対照、69例のIFN事例)そして生存解析については118事例(59例の対照、59例のIFN事例)が残された。別の予想されるRCT(コホート3:IFN検証コホート)由来の残る79例のHCC事例(40例の対照、39例のIFN事例)を使用して、miR-26とインターフェロン療法との関連性を立証した(4)。追加的な方法は、補充添付物中に詳細に記載する。
【0103】
[000182] 患者の特徴
[000183] この研究には、Liver Cancer Institute(上海)からの376人の患者(表1)そしてUniversity of Hong Kongからの追加のIFN検証コホート(図4 - 追加の表1)からなる2種の独立したコホートが関連し、全ては組織学的に確認されたHCCを有し、そして大多数(90.5%)が肝炎Bウイルス(HBV)慢性キャリアを有した。コホート1は、241人の患者からなり、一方コホート2は135人の患者からなり、インターフェロン療法の予想されるRCTに参加した(3)。コホート3は、インターフェロン療法の別の予想されるRCTに由来する、79人のHCC患者からなる(4)。全ての患者は、治癒目的で、肝臓切除を受けた。患者の大多数は雄性であり(85.1%)、肝硬変(88.1%)、血清AFPの上昇(62.2%)そして孤立性の対象(solitary presentation)(84.4%)であった。臨床レベルの変数は、血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル、TNM段階、そしてアジュバント療法を除き、試験コホートと検証コホートとの間で同様であった。ALTレベルにより示される場合のこれらのHBV-関連HCC患者における肝炎活性は、コホート1またはコホート3の場合と比較してコホート2の事例において顕著に低く、そしてより初期段階のHCC事例はコホート2において見出された。さらに、コホート1における39人の患者は、予防的アジュバント両方を受けたが、応答は最小のようであった(p=0.9;ログランク検定)。対照的に、コホート2における53.3%の患者およびコホート3における49.4%が、‘治癒目的’のIFNアジュバント療法を受け、それにより全体の生存が改善された(3;4)。
【0104】
[000184] 性別-関連microRNAおよび臨床転帰
[000185] 雄性の肝臓サンプルと雌性の肝臓サンプルとの間で異なって発現されるmicroRNAを検索するため、本発明者らは、コホート1由来の241例の事例のmicroRNA発現プロファイルを世界規模で解析したが、この場合に腫瘍(T)および非-腫瘍(NT)の両方のmicroRNAアレイデータが利用可能であった(GEOアクセッション番号、GSE6857)(22)。潜在的交絡因子を回避するため、年齢-適合させそして平衡化した事例セットを使用して、性別-依存性microRNAを同定したところ、事例セットは、全ての雌性の事例(n=30)、および2つの年齢-適合された雄性群、すなわち、G1(n=31)およびG2(n=31)を含有した。雌性事例および雄性G1またはG2事例の臨床的特徴は同様であった(図4C〜追加の表2)。
【0105】
[000186] クラス比較解析により、15種のmicroRNA(雌性vs.雄性G1)または45種のmicroRNA(雌性vs.雄性G2)が、NT組織において異なって発現されたが、7種は重複していたことが示された。対照的に、唯一の重複するmicroRNA、miR-129-2、が、腫瘍中で見出された(図6A〜追加の表3)。従って、腫瘍中と比較して、肝臓微少環境中では、microRNA発現のより一貫して差異が存在していた。
【0106】
[000187] 重複したmicroRNAの中で、そのレベルが性別間で最も顕著に異なっておりそして最も豊富であったことから、miR-26a-1が、さらなる解析のために選択された。コホート1の事例を用いた解析は、miR-26a-1レベル雄性と比較して、雌性の肝臓において顕著に高かったことが示された(図1A)。
【0107】
[000188] これは、雌性の事例(n=26)および年齢を適合させた雄性の事例(n=56)中で、qRT-PCRを使用して、成熟型miR-26発現により確認された(図1B)。
【0108】
[000189] 本発明者らは次いで、本明細書中において、miR-26が性別-依存的腫瘍サプレッサー遺伝子として作用することができ、そしてもしその場合、miR-26のサイレンシングが腫瘍中での頻繁に生じる現象であることを、推論した。解析の結果、224例のHCC事例を二分した場合(腫瘍中のmiR-26a-1の中央値レベルに基づいて低miR-26または高miR-26)、NTサンプルと比較してTサンプルにおいてmiR-26a-1の顕著な減少が低miR-26の事例のみにおいて観察されたが(p<0.001)、高miR-26の事例においては見出されなかった(p=0.23)(図1C)ことが示された。
【0109】
[000190] 中央値倍率変化(T/NT比)は、低miR-26a-1事例においては0.37であり、そして高miR-26a-1事例においては0.98であったが、これはmiR-26のサイレンシングが低miR-26事例とのみ関連したことを示唆する。さらに、低miR-26事例は、悪い生存と関連した(図1D)。
【0110】
[000191] ヒトにおいて、3つのmiR-26構成成分、すなわち、miR-26a-1、miR-26a-2、およびmiR-26bが存在した。これらのmicroRNAは、進化的に非常に保存されており、26a-1および26a-2は同一の成熟型配列を共有しており、このことはそれらの機能的冗長性を示唆する。3種類全てのmiR-26構成成分の発現パターンと、それらの生存との関連性は同様であった(図7)。
【0111】
[000192] 本発明者らは、本明細書中において、miR-26構成成分が、雌性の肝臓中でより豊富に発現されており、そしてそれらのサイレンシングが悪い転帰を有するHCCのサブセットの発症において重要である可能性があることをしめす。
【0112】
[000193] 独特な遺伝子発現パターンおよび低miR-26 HCCとの関連性
[000194] 低miR-26 HCCが生物学的に独自のものであるかどうかを試験するため、本発明者らは、本明細書中において、利用可能なmicroRNAおよびmRNAマイクロアレイデータを用いて、224例の適合化したHCC事例を解析した。mRNAマイクロアレイデータは、約21,000個のmRNA遺伝子の発現に基づいた(GEOアクセッション番号、GSE5975)(27)。全ての遺伝子のうちの最初の3つの構成成分に基づく多次元のスケーリング解析により、3種のmiR-26の二分された発現状況に従って(図8)、低miR-26事例の大多数が、高miR-26事例とは別個にクラスターを形成した(図2A)ことが示された。
【0113】
[000195] クラス比較解析により、顕著な数の遺伝子の発現が、低miR-26群と高miR-26群との間で腫瘍中で相違しており、そして915個の遺伝子が共通していたことが示された(図2B)。
【0114】
[000196] SLC2A6およびS100Pが、qRT-PCRによる検証のために、異なって発現された遺伝子間で選択された(図9)。
【0115】
[000197] さらに、多変量クラス予測解析は、結果として全体で80.3%の正確性で低miR-26事例の顕著なクラス予測を生じた。この様に、低miR-26 HCC事例は、高miR-26 HCC事例と比較した場合、それらの遺伝子発現パターンにおいて異なる。
【0116】
[000198] 915個の重複した遺伝子の内、770個が低miR-26 HCCにおいて過剰発現した。これらの770個の遺伝子を使用した遺伝子ネットワーク解析により、高スコア(>10)を伴う一連の推定腫瘍形成性-ネットワークが示された(図6B〜表4)。
【0117】
[000199] 様々なカテゴリーの濃縮遺伝子の調査により、いくつかの重要なシグナル伝達ネットワークを示したが、それらの内で最も印象的なものは低miR-26事例におけるNFκB/IL-6シグナル伝達経路の支配的な活性化を示したことが示された(図2C)。
【0118】
[000200] 本発明者らは、IL-6がHCCおよびHCC性別不均衡に関連したことから、qRT-PCRにより、NFκB標的遺伝子であるIL-6のレベルを測定した。miR-26レベルが減少したHCC事例のほとんどが、IL-6発現が付随的に増加した(図10)。合わせると、これらのデータは、低miR-26 HCCが異なる遺伝子プロファイルを有することを示す。
【0119】
[000201] 独立したコホートを用いた検証
[000202] 性別-依存的miR-26の生存との関連を確認するため、本発明者らは、コホート2由来のT組織およびNT組織において、qRT-PCRにより成熟型miR-26を検出した。IFNアジュバント療法が生存の転帰を変化させたため、本発明者らは、対照群を解析した。コホート1と一致して、miR-26発現は、雌性のNT組織においてより豊富であるが、腫瘍においては、性別に関係なく顕著な減少が観察された(図11)。
【0120】
[000203] さらに、腫瘍中の低miR-26発現は、患者の悪い生存と顕著に関連した(図3A、図12A)。
【0121】
[000204] 別の独立したコホート(コホート3)は、一貫した結果を示した(図3B、図12B)。
【0122】
[000205] コックス比例ハザード回帰分析を使用して、コホート2の中の対照において、miR-26発現の予後診断との関連性をさらに評価した(表2)。
【0123】
[000206] 単変量解析において、低miR-26a腫瘍発現およびTNM病期は、予後診断と顕著に関連した。最終的な多変量モデルにより、腫瘍における低miR-26a発現は、悪い生存の独立した予測因子であったことが示された。同様な傾向は、miR-26bについても見出された。この様に、二分されたmiR-26発現値は、予後診断の独立した予測因子であった。
【0124】
[000207] miR-26発現および治療結果
[000208] 低miR-26 HCCは、NFκB/IL-6経路のものを含む免疫学と機能的に連鎖する遺伝子の濃縮とは生物学的に別個であるようであった。理論により束縛されることは望まないが、本発明者らは、本明細書中において、そのような腫瘍は、サイトカイン-媒介性活性に対する応答において‘常習性’である可能性があると、現在では考えている。コホート2はIFNで治療された事例からなるため、本発明者らは、miR-26発現と治療的転帰との間の関連性を解析した。
【0125】
[000209] 腫瘍中での低miR-26a発現を有する患者は、対照群における全生存と比較した場合に、IFNアジュバント療法を受けた後に顕著な全生存の改善を示したが(p=0.003)(図3C)、これはコホート3において確認された(図3D)。
【0126】
[000210] 対照的に、両コホートに由来する高miR-26a発現を有する患者は、IFNに応答しなかった(図3E〜3F)。
【0127】
[000211] 同様の結果が、miR-26b発現により得られた(図12C〜12F)。コックス比例ハザード回帰分析を使用して、コホート2の低miR-26群における生存に対する治療の効果を評価した(図5B〜表3)。
【0128】
[000212] 単変量解析および多変量解析の両方において、IFN治療は、低miR-26群において顕著に改善された生存と関連した。miR-26、IFN治療、および生存の間での相互作用解析もまた、miR-26発現が、これら2つのコホートにおけるIFN-関連生存転帰に顕著に影響を与えることを示した(miR-26a、p=0.004;miR-26b、p=0.02)。この様に、miR-26は、IFN応答の独立した予測因子である。
【0129】
[000213] 検討
[000214] この研究は、HBV-関連性HCCにおける性別-依存性microRNAプロファイルを解析し、および3つの独立したコホートを使用して生存予後診断および治療転帰におけるそれらの予測値を解析する、これまでで最大の研究である。
【0130】
[000215] 本発明者らは、本明細書中において、miR-26が雌性の肝臓組織においてより豊富に発現したことは示さなかったが、それらの発現は、HCCの対となる非-癌組織と比較して、HCCのサブセットにおいて、性別に関わらず顕著に下方制御された。これらの結果はmiR-26が性別関連そして腫瘍関連microRNAであることを示す。
【0131】
[000216] 同様に、miR-26発現が減少した腫瘍は、異なる遺伝子発現プロファイルを有し、そして低miR-26発現を有する事例は、悪い予後診断を示したが、IFN療法に対して良好に反応した。
【0132】
[000217] これらの結果は、miR-26が腫瘍サプレッサーである可能性があることを示す。肝細胞におけるmiR-26のサイレンシングは、攻撃的HCCの発症においては、雄性に支配的であることに寄与する可能性がある。以下の知見は、本発明者らの上述の仮説と一貫している:(1)miR-26は、雌性の肝臓においてより高いレベルで発現し、この場合おそらくはより高い抗-発癌性活性が存在する;(2)miR-26発現は、悪い生存を有するHCCのサブセットにおいてサイレンシングされている;(3)低miR-26 HCCにおいて活性化される遺伝子は、NFκB/IL-6シグナル伝達経路において選択的に濃縮される;(4)miR-26は、HCC細胞およびPBMCにおけるよりも、肝細胞および不死化/非-形質転換肝細胞において、より豊富に発現される(図13)。
【0133】
[000218] 肝臓癌の性別不均衡は、マウスにおいて、NF-κBによるMyD8-依存的IL-6誘導の性差のためであることが最近見出された(13)。興味深いことに、エストロゲンは、IL-6プロモータ活性を阻害し、それが雌性におけるHCCの感受性の低下に寄与する可能性がある。
【0134】
[000219] これらは、IL-6発現がmiR-26と逆相関したことから、これらの知見と一貫している。さらに、低miR-26 HCCにおいて活性化された多数の遺伝子は、プロゲステロンを誘導する際に機能することができるが、エストロゲンシグナル伝達を阻害する(ネットワーク5およびネットワーク15、図6B〜追加の表4)。興味深いことに、miR-26発現は、HCCにおけるもう一つの重要な因子である肝細胞増殖因子(HGF)と関連しなかった(図14)。
【0135】
[000220] 本発明者らの本明細書中における解析は、miR-26が生存の独立した予測因子であったことが示された。しかしながら、IFN治療に由来する療法転帰が層別化される場合、腫瘍中で低miR-26発現を有する患者のみが、2つの独立した予想されるRCTにおいて、IFN療法に対して良好に応答した。
【0136】
[000221] これらの結果は、腫瘍におけるmiR-26の状態が、HCC患者の予後診断において、そしてIFNアジュバント療法から再発を予防する様な利益を得ることができる適切なHCC患者を選択する補助をする際に、有用な臨床的ツールであることを示す。
【0137】
[000222] 現在、再発-関連死亡率は、手術を受けるHCC患者にとっての重要な臨床的問題であり、そして単一薬剤はアジュバント設定での標準的なケアとしては利用可能ではない。勇気付けるように、Clavienは、7例のRCTにおける肝臓切除または腫瘍切除の後のIFNのアジュバント効果を向上させたと評価し、そしてこれらの試験の全てが中程度に有益な効果を有していたが、明らかに改良が必要であると結論づけた(5)。さらに、複数の実験薬剤の中で、ソラフェニブでは、中程度の生存利益のみが得られる(6)。現在の全身性治療剤の効率の悪さは、特定のHCC療法に対して最も好ましく応答することができる患者の下位集団を選択することができないことにより生じている可能性がある。
【0138】
[000223] 初めて、これらの結果は、この問題に対する解決を提供する。本明細書中において記載される結果は、‘歴史的な’薬剤、すなわち、IFN、の再発見を引き起こし、それの伝統的に中程度の治療利益は、今となっては大きな潜在性を有する薬剤へとシフトする可能性がある。
【0139】
[000224] miR-26 予測因子の頑健性のため、IFNを、切除を受けそしてmiR-26発現が減少した腫瘍を有するHCC患者のために最初に使用される療法として使用することができるが、それは予想される研究において評価される必要はない。ここで提示された研究は、主としてHBV-陽性(約90%)の中国人HCC患者由来であったが、そして従って、非-アジア型HCCおよび肝炎Cおよび/またはアルコールなどのその他の潜在的な肝臓疾患から生じるHCCにおいて、評価する必要があることに、注意すべきである。
【0140】
[000225] 低miR-26 HCC事例のIFN治療に対する感受性の裏にある(1または複数の)メカニズムが現在は不明確であるが、本発明者らは、本明細書中において、これらのHCCがIFN-反応性シグナル伝達経路の特異的な活性化を伴う独特の腫瘍タイプを示すと、考えている。一貫して、低miR-26 HCCは、高miR-26 HCCとは異なっており、そして生存予後診断は悪かった。低miR-26 HCCにおける多数の過剰発現遺伝子は、前炎症性サイトカインまたは抗-炎症性サイトカイン(すなわち、IL-1、IL-2、IL-10およびIL-17)をコードする遺伝子など、細胞性免疫と関連するものである。
【0141】
[000226] さらに、低miR-26 HCCにおいて活性化される多数のシグナル伝達ネットワークは、NFκB/IL-6、IL-10、STAT3およびIFN-誘導可能性因子シグナル伝達ネットワークなどの免疫-関連性のものである。
【0142】
[000227] さらに、理論により束縛されることを望むわけではないが、本発明者らは、本明細書中において、低miR-26発現を有する腫瘍は、IFNシグナル伝達の独自の活性化を有する可能性があり、おそらくはNFκB/IL-6シグナル伝達経路を介するものであり、そして従ってIL-6/STAT3シグナル伝達を介したIFN-媒介性増殖阻害に対して感受性である可能性があると考えている(29)。
【0143】
[000228] HCC患者に由来する雄性の肝臓組織と雌性の肝臓組織のあいだでのmicroRNA発現パターンの全身的な差異の同定が、本明細書中において記載される。miR-26発現が減少した腫瘍は、生物学的に独特であり、生存転帰が悪く、しかしアジュバントIFN療法に対して好ましく応答した。これらのデータは、miR-26が、HCCに対する有用な診断用および予後決定用バイオマーカーであり、そしてアジュバントIFN療法から顕著な利益を得ることができる患者を選択する際の補助をすることができることを示す。
【0144】
[000229] 実施例II:RNA単離およびリアルタイムqRT-PCR解析
[000230] コホート1の凍結組織から標準的なTRIZOL(Invitrogen, Carlsbad, CA)法を使用して、そしてコホート2およびコホート3のパラフィン-包埋組織からMasterPure RNA精製キット(Epicenter, Madison, WI)を使用して、全RNAを抽出した。成熟microRNAの発現を、逆転写後にmiR-26aおよびmiR-26bに対して特異的なTaqman MicroRNAアッセイ(Applied biosystems, Foster City, CA)を使用して、測定した。階層(性別、miRなど)間の全ての比較は、各コホート内で行った。U6 RNAについてのTaqman MicroRNAアッセイを使用して、microRNAの相対的存在度を正規化した。IL-6の発現を、高性能cDNAアーカイブキット(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用することによる逆転写の後にこの遺伝子に対して特異的なTaqman遺伝子アッセイを使用して測定した。18sに対するTaqman遺伝子アッセイを使用して、mRNAの相対的存在度を正規化した。実験を、三重にして行った。
【0145】
[000231] マイクロアレイ解析および統計
[000232] microRNAマイクロアレイプロファイリングのため、腫瘍および対にした非-腫瘍組織を、以前に記載した単一チャネルアレイプラットフォーム(22)を使用して、別個にプロファイリングした。アレイの品質管理、データプロセシング、および正規化を、本質的に以前に記載したように行った(22)。BRB-ArrayToolsソフトウェア3.6.0(http://linus.nci.nih.gov)を、以前に記載したように、マイクロアレイ解析のために使用した(25;26)。アレイの50%より多くから失われた値を有するMicroRNAプローブおよびプローブの中央値からのどちらかの方向において少なくとも1.5倍の変化を有する発現データ値の20%未満を有するMicroRNAプローブを、解析から除去したが、それにより624個のプローブが残った。t-統計を使用したクラス比較解析を使用して、雄性と雌性との間で腫瘍または周囲非-癌組織において異なって発現されたmicroRNAを同定した。
【0146】
[000233] この解析のため、単変量試験の初期顕著性閾値を、p<0.05に設定し、そして解析は多変量試験についての1000の置換(permutation)に基づいており、世界的試験について置換(permutation)p-値を生成して、偽発見率をコントロールする。mRNA発現マイクロアレイプロファイリングについて、本発明者らは、上述した利用可能なmicroRNAマイクロアレイデータと伴う事例と適合した224例の事例を含有した、二元的-チャネルプラットフォーム(すなわち、T/NT比)(27)に基づくそれらの本発明者らの以前に利用可能なオリゴアレイデータセットを使用した。本発明者らは、腫瘍における中央値発現を使用して、HCC事例を二分したが、ここで低miR-26発現は中央値(50th percentile)よりも低いものとして分類され、そして高miR-26発現は中央値(50th percentile)よりも高いものとして分類された。二分されたmiR-26発現レベルに基づくクラス比較解析を使用して、低miR-26 HCCと高miR-26 HCCとのあいだで異なって発現されるmRNAを同定した。同一のプローブフィルタリング分類を、上述の通りに従ったところ、これらの比較のために11,580個の発現プローブが残された。
【0147】
[000234] 6つのクラス予測アルゴリズム(すなわち、Support Vector Machines(SVM)、化合物共変量予測因子(CCP)、Diagonal Linear Discriminant(DLD)、1-Nearest Neighbor(1NN)、3-Nearest Neighbor(3NN)またはCentroid(NC))を使用して、mRNA発現パターンが正確に低miR-26 HCCを高miR-26 HCCから分離することができるかどうかを決定した。これらの解析において、90%のサンプルを、無作為に選択して、分類子を構築し、次いでそれを使用して事例の残り10%を予測した。予測の正確性は、この無作為化分割プロセスを1000回繰り返した後に算出し、偽発見の数および比率をコントロールした。階層的なクラスター解析を、BRBarrayToolsを中央値-中心の相関および完全連鎖とともに使用して行った。監視されていないアプローチを使用して、本発明者らは、フィルタを通過した11,580個の遺伝子の内の最初の3つの主要な構成成分に基づいて、全てのコホート1サンプルを使用して、多次元スケーリング解析を行った。これらの遺伝子の発現レベルを、log-変換し、そしてユークリッド距離を使用してそれらの位置を決定した。Ingenuity Pathways Analysis(Ingenuity(登録商標), www.ingenuity.com)を使用して、miR-26 低HCCとmiR-26 高HCCとのあいだで腫瘍中で異なって発現される遺伝子を濃縮したシグナル伝達経路を、遺伝子ネットワーク解析を使用して同定した。
【0148】
[000235] Kaplan-Meier生存解析を使用して、二分したmiR-26発現に基づいて、GraphPad Prismソフトウェア5.0(GraphPad Software, San Diego, CA)をCox-Mantelログ-ランク検定により生成された統計的P値とともに使用して、患者の生存を比較した。コックス比例ハザード回帰分析を使用して、臨床的変数の患者の生存に足しうる効果を、STATA 9.2(College Station, TX)を使用して解析した。単変量試験を使用して、各臨床変数の生存に対する影響を調べた。p<0.05での顕著なセットにより、生存と顕著に関連した単変量解析由来の臨床的変数を考慮して、多変量解析を行った。共変量の多-共直線性を評価し、そして存在することが見出されなかった。最終モデルにおいて、性別は、HCC転帰におけるそしてmiR-26発現とのその関連性におけるその生物学的関連性のため、共変量として含まれた。最終モデルは、比例ハザードの前提と合致したことが決定された。RT-PCRデータに関して、スチューデントt-試験により生成された統計的P値、およびSpearman相関定数は、GraphPad Prismソフトウェア5.0を使用して算出された。統計的優位性は、p<0.05として定義された。この論文中の全てのp-値は、二方向性である。
【0149】
[000236] 実施例III:HCC腫瘍サンプル中においてmiR-26の低発現を示す患者におけるHCCを治療する方法
[000237] この実施例は、補助療法としてのIFN-α治療に対する好ましい応答を有する可能性があるHCC患者選択しそして治療する方法を記載する。
【0150】
[000238] いくらかのHCC患者について、アジュバント療法(例えば、IFN-α療法)は、生存を長期化することができる(Sun et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 132(7):458-465, 2006)。しかしながら、治療を開始する前に、IFN-α補助療法から利益を得られる可能性が最も高い患者を同定することが有益である。
【0151】
[000239] 対照(同一患者から得られた非-癌性肝臓組織など)と比較した場合、HCC腫瘍サンプルにおいて低レベルのmiR-26を発現するHCC患者の予後診断は、IFN-αを用いた治療の後に非常に改良されることが、本明細書中において開示される。対照的に、腫瘍サンプル中で高レベルのmiR-26を発現する患者は、IFN-α治療の後の生存において顕著な増加は示さず、そして従ってそのような補助治療の良好な候補ではない。
【0152】
[000240] HCCと診断された患者は、治癒を目的として、まず肝臓切除を受ける。HCC腫瘍サンプルおよび非-癌組織サンプルは、その患者から取り出された肝臓組織の一部から得られる。次いで、TRIZOLTMを使用することなどによる当該技術分野において周知の低分子RNA抽出のためのいずれかの適切な方法を使用して、RNAを組織サンプルから単離する。次いで、精製RNAを、miR-26に対して特異的なプライマーを使用したRT-PCRに供して、腫瘍および非-癌組織中でのmiR-26の発現レベルを決定する。非-癌組織と比較した場合、腫瘍組織においてmiR-26の発現が少なくとも1.5倍低い場合、その患者はIFN-α補助療法のための候補である。
【0153】
[000241] 従って、その患者は、当該技術分野において公知の方法に従って、治療的有効量のIFN-αを用いて治療され(例えば、Sun et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 132(7):458-465, 2006;Qian et al., Cancer 107(7):1562-1569, 2006を参照、これら両方ともを参照により本明細書中に援用する)。IFN-αの用量および用法は、様々な因子(その患者の健康状態およびHCCの病期など)に依存して変化する。典型的には、IFN-αは、約6ヶ月までのあいだ毎週1〜3回投与する。
【0154】
[000242] 実施例IV:低発現のmiR-26を用いたHCC患者のための代替治療法
[000243] この実施例は、HCCと診断され、そして肝臓切除を行わない場合にインターフェロン療法により低miR-26の発現を示す、患者を治療する方法を記載する。HCCと診断された患者がIFN-α療法のために良好な候補であるかどうかを決定するため、HCC腫瘍サンプルを、非-癌性肝臓組織サンプルとともに、肝臓切除を受けていない患者から得る。組織サンプルは、当該技術分野において公知のいずれかの方法に従って得ることができる。例えば、 組織サンプルは、皮下注射針を使用して所望の組織を取り出すバイオプシー手順を行うことにより、得ることができる。
【0155】
[000244] 次いで、TRIZOLTMを使用することなどによ当該技術分野において周知の低分子RNA抽出のためのいずれかの適切な方法を使用して、RNAを組織サンプルから単離する。次いで、精製RNAを、miR-26に対して特異的なプライマーを使用したRT-PCRに供して、腫瘍および非-癌組織中でのmiR-26の発現レベルを決定する。非-癌組織と比較した場合、腫瘍組織においてmiR-26の発現が少なくとも1.5倍低い場合、その患者はIFN-α療法の候補である。
【0156】
[000245] 従って、その患者は、当該技術分野において公知の方法に従って、治療的有効量のIFN-αを用いて治療され(例えば、Sun et al., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 132(7):458-465, 2006;Qian et al., Cancer 107(7):1562-1569, 2006を参照、これら両方ともを参照により本明細書中に援用する)。IFN-αの用量および用法は、様々な因子(その患者の健康状態およびHCCの病期など)に依存して変化する。典型的には、IFN-αは、約6ヶ月までのあいだ毎週1〜3回投与する。
【0157】
[000246] 実施例V:HCC腫瘍サンプル中のmiR-26の高発現を示す患者におけるHCCを治療する方法
[000247] この実施例は、HCCと診断された患者がHCC腫瘍中で高レベルのmiR-26の発現を示す場合、HCCと診断された患者を治療する方法を記載する。
【0158】
[000248] HCCと診断された患者は、治癒を目的として、まず肝臓切除を受ける。HCC腫瘍サンプルおよび非-癌組織サンプルは、その患者から取り出される肝臓組織の部分から得られる。次いで、TRIZOLTMを使用することなどによる当該技術分野において周知の低分子RNA抽出のためのいずれかの適切な方法を使用して、RNAを組織サンプルから単離する。次いで、精製RNAを、miR-26に対して特異的なプライマーを使用したRT-PCRに供して、腫瘍および非-癌組織中でのmiR-26の発現レベルを決定する。非-癌組織と比較した場合、腫瘍組織においてmiR-26の発現が少なくとも1.5倍低くない場合、その患者はIFN-α補助療法に対して好ましく応答する可能性がある。従って、その患者は、IFN-α療法を受けないが、疾患の再発の手術後兆候についてモニタリングする。
【0159】
[000249] 実施例VI:HCC患者を診断する方法
[000250] 一つの具体的な側面において、被検体が肝細胞癌(HCC)を有するか、または肝細胞癌(HCC)を発症するリスクがあるかどうかを診断する方法を、本明細書中において提供する。この方法には一般的に、少なくとも一つのmiR遺伝子産物レベルを被検体由来の試験サンプル中で測定する工程、そして対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルと比較した場合、試験サンプルにおけるmiR遺伝子産物のレベルの変化が、被検体がHCCを有するかまたはHCCのリスクがあるかのいずれかを示すかどうかを決定する工程、が含まれる。特定の態様において、少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを、ノザンブロット解析を使用して測定する。同様に、特定の態様において、試験サンプル中の少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも低く、および/または試験サンプル中の少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照サンプル中の対応するmiR遺伝子産物のレベルよりも高い。
【0160】
[000251] 実施例VII:miR遺伝子産物の測定
[000252] 少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを、被検体から得られた試験サンプル由来のRNAを逆転写して、標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供する工程;miRNA-特異的プローブオリゴヌクレオチドを含む標的オリゴデオキシヌクレオチドをマイクロアレイに対してハイブリダイズさせて、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する工程;そして試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを対照サンプルから得られたハイブリダイゼーションプロファイルと比較する工程;ことにより、測定することができる。少なくとも1つのmiRNAのシグナルの変化は、被検体がHCCを有するかまたはHCCを発症するリスクがあることを示す。
【0161】
[000253] 実施例VIII:診断用途および治療用途
[000254] 別の側面において、被検体におけるHCCを治療する方法が、本明細書中において提供され、この場合、対照サンプルから生成されたシグナルと比較した場合、少なくとも1つのmiRNAのシグナルは無秩序になる(de-regulated)(例えば、下方制御および/または上方制御)。
【0162】
[000255] 被検体から得られた試験サンプル由来のRNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供する工程;標的オリゴデオキシヌクレオチドをmiRNA-特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせて、試験サンプルについてのハイブリダイゼーションプロファイルを提供する工程;そして試験サンプルハイブリダイゼーションプロファイルを対照サンプルから生成されたハイブリダイゼーションプロファイルと比較する工程;により、被検体が、被検体中の1またはそれ以上の予後不良マーカーと関連するHCCを、有するかまたは発症するリスクがあるかどうかを診断する方法もまた、本明細書中において提供される。シグナルの変化は、被検体が、癌を有するかまたは癌を発症するリスクがあることを示す。
【0163】
[000256] 少なくとも1つのmiR遺伝子産物が、対照細胞と比較した場合、被検体の癌細胞において下方制御されるかまたは上方制御されるHCC を有する被検体においてHCCを治療する方法もまた、本明細書中において提供される。1またはそれ以上のmiR遺伝子産物が癌細胞において下方制御される場合、この方法は、被検体有効量の少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子生成物を投与して、それにより被検体中での癌細胞の増殖を阻害する工程を含む。1またはそれ以上のmiR遺伝子産物が癌細胞において上方制御される場合、この方法は、少なくとも1つのmiR遺伝子産物の発現を阻害するための被検体有効量の少なくとも1つの化合物を投与して、それにより被検体中での癌細胞の増殖を阻害する工程を含む。
【0164】
[000257] 以下の工程:対照細胞と比較した場合、HCC細胞における少なくとも1つのmiR遺伝子産物の量を決定する工程;そして、以下の工程:癌細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量が対照細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量よりも少ない場合、被検体に対して有効量の少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子生成物を投与する工程;または癌細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量が対照細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量よりも多い場合、被検体に対して、少なくとも1つのmiR遺伝子産物の発現を阻害するための有効量の少なくとも1つの化合物を投与する工程;によりHCC細胞中で発現されるmiR遺伝子産物の量を変化させて、それにより被検体における癌細胞の増殖を阻害する工程;を含む、被検体におけるHCCを治療する方法もまた、本明細書中において提供される。
【0165】
[000258] 実施例IX:組成物
[000259] 少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子産物および医薬的に許容可能なキャリアを含む、HCCを治療するための医薬組成物もまた、本明細書中において提供される。具体的な態様において、医薬組成物は、適切な対照細胞と比較した場合、HCC細胞において下方制御されるmiR遺伝子産物に対応する少なくとも1つの単離されたmiR遺伝子産物を含む。特定の態様において、miR遺伝子産物は、SEQ ID NO: 1〜5の1またはそれ以上を含む。
【0166】
[000260] 別の具体的な態様において、医薬組成物は、少なくとも1つのmiR発現制御因子(例えば、阻害剤)化合物および医薬的に許容可能なキャリアを含む。
【0167】
[000261] 適切な対照細胞と比較した場合、HCC細胞において亢進制御または下方制御されるmiR遺伝子産物に対して特異的な少なくとも1つのmiR発現制御因子化合物が含まれる医薬組成物もまた、本明細書中において提供される。
【0168】
[000262] 試験薬剤を細胞に対して提供する工程、そしてHCC細胞において発現レベルの低下と関連する少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを測定する工程、を含む、抗-HCC薬剤を同定する方法もまた、本明細書中において提供され、ここで、適切な対照細胞と比較した場合、細胞中においてmiR遺伝子産物のレベルの増加することが、試験薬剤が抗-HCC薬剤であることを示す。特定の態様において、miR遺伝子産物は、SEQ ID NO: 1〜5の1またはそれ以上を含む。
【0169】
[000263] 試験薬剤を細胞に対して提供する工程、そしてHCC細胞における発現レベルの増加と関連する少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルを測定する工程、を含む、抗-HCC薬剤を同定する方法もまた、本明細書中において開示され、ここで、適切な対照細胞と比較した場合、細胞においてmiR遺伝子産物のレベルが減少することが試験薬剤が抗-HCC薬剤であることを示す。
【0170】
[000264] 実施例X:キット
[000265] 本明細書中において記載されるいずれかの組成物を、キット中に含んでもよい。限定的ではない例において、miRNAを単離し、miRNAを標識化し、および/またはmiRNA集団をアレイを用いて評価するための試薬は、キット中に含まれる。このキットには、プローブを生成しまたは合成するための試薬がさらに含まれていてもよい。この様に、キットは、適切な容器手段中に、標識化ヌクレオチドまたはその後標識される非標識ヌクレオチドを取り込むことにより、miRNAを標識化するための酵素が含まれる。それには、1またはそれ以上のバッファ(例えば、反応バッファ、標識化バッファ、洗浄バッファ、またはハイブリダイゼーションバッファ)、miRNAプローブを調製するための化合物、そしてmiRNAを単離するための構成成分、が含まれていてもよい。その他のキットには、miRNAに対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む核酸アレイを製造するための構成成分が含まれていてもよく、そしてこの様に、例えば、固体支持体が含まれていてもよい。
【0171】
[000266] アレイを含むいずれかのキットの態様について、これらは、SEQ ID NO: 1〜5のいずれかの全部または部分と同一な配列またはそれに対して相補的な配列を含有する、核酸分子であってもよい。
【0172】
[000267] キットの構成成分は、水性媒体中または凍結乾燥形状のいずれかでパッケージングすることができる。キットの容器手段には、一般的に、バイアル、試験チューブ、フラスコ、ボトル、シリンジ、または構成成分を配置することができ、そして好ましくは分注することができるその他の容器手段の少なくとも1つが含まれる。1よりも多い構成成分がキット中に存在する場合(標識化試薬と標識とを一緒にパッケージすることができる)、キットは、一般的に、第2の容器、第3の容器、または追加の構成成分を別個に配置することができるその他の追加の容器を含有することもできる。しかしながら、構成成分の様々な組合せを、バイアル中に含んでもよい。本発明のキットには、典型的には、核酸を含有するための手段、および商業的販売のために厳密に管理されたいずれかその他の試薬容器もまた、含まれる。そのような容器には、所望のバイアルが保持される、注入容器または吹き込み成形のプラスチック容器が含まれてもよい。
【0173】
[000268] キットの構成成分が1種および/またはそれ以上の溶液中で提供される場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が一つの好ましい溶液である。キット中に含めることができるその他の溶液は、混合サンプルからmiRNAを単離しおよび/または濃縮する際に関与する溶液である。
【0174】
[000269] しかしながら、キットの構成成分は、(1または複数の)乾燥粉末として提供することができる。試薬および/または構成成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末を適切な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒は、別の容器手段中で提供することもできることが想定される。キットには、標識miRNAの単離を促進する構成成分が含まれていてもよい。miRNAを保存しまたは維持する構成成分またはその分解から保護する構成成分もまた含まれていてもよい。構成成分は、RNAse-不含であってもよく、またはRNAseに対して保護してもよい。
【0175】
[000270] 同様に、キットは、一般的に、適切な手段で、個別の試薬または溶液それぞれについて異なる容器を含むことができる。キットにはまた、キット構成成分を使用することについての、ならびにキットには含まれないいずれかその他の試薬の使用についての指示書が含まれていてもよい。指示書には、実施することができるバリエーションが含まれていてもよい。そのような試薬は、本発明のキットの態様であることが企図される。同様に、キットは、上述した具体的な項目に限定されず、そしてmiRNAの特性評価の操作のために使用されるいずれかの試薬が含まれていてもよい。
【0176】
[000271] miRNAアレイの文脈において検討されたいずれかの態様を、本発明のスクリーニングまたはプロファイリングの方法またはキットにおいてより一般的に使用することができることもまた、企図される。言い換えると、具体的なアレイ中に含まれうるものを記述するいずれかの態様を、miRNAプロファイリングの文脈において、より一般的に実施することができ、そしてアレイ自体が関与しなくてもよい。
【0177】
[000272] いずれかのキット、アレイまたはその他の検出技術または検出ツール、またはいずれかの方法が、これらのmiRNAのいずれかについてのプロファイリングを伴うことができることも、企図される。同様に、miRNAアレイの文脈において検討されたいずれかの態様を、本発明の方法におけるアレイフォーマットを用いるかまたは用いずに、実施することができることも企図される;言い換えると、miRNAアレイ中のいずれかのmiRNAを、当業者に公知のいずれかの技術に従って、本発明のいずれかの方法においてスクリーニングまたは評価することができる。アレイフォーマットは、実施されるべきスクリーニング方法および診断方法のために必要とされない。
【0178】
[000273] 治療用途、予後判断用途、または診断用途のためにmiRNAアレイを使用するためのキットおよびその用途が、本明細書中の発明により企図される。キットには、miRNAアレイ、ならびにアレイ上のmiRNAのための標準的または正規化されたmiRNAプロファイルに関する情報が含まれていてもよい。同様に、特定の態様において、対照RNAまたはDNAが、キット中に含まれていてもよい。対照RNAは、標識化および/またはアレイ解析のための陽性対照として使用することができるmiRNAであってもよい。
【0179】
[000274] 現在の技術の方法およびキットを、本明細書中で広くそして一般的に記載した。包括的な開示中に含まれるより狭い下位概念的分類および中位概念的(sub-generic)分類のいずれかもまた、現在の技術の一部を形成する。これには、切除した材料が本明細書中に具体的に記載されているか否かに関わらず、上位概念由来のいずれかの主題を除去するただし書または否定的限定を伴う、現在の教示の包括的記載が含まれる。
【0180】
[000275] 実施例XI:アレイ調製およびスクリーニング
[000276] miRNAアレイの調製および使用もまた、本明細書中において提供され、これは複数のmiRNA分子または前駆体miRNA分子と完全にまたはほぼ相補的または同一であり、そして空間的に分離された構成で支持体材料上に配置される、規則的なマイクロアレイまたは核酸分子(プローブ)のマイクロアレイである。マイクロアレイは、典型的には、ニトロセルロースまたはナイロンのシートであり、その上にプローブをスポットした。マイクロアレイは、核酸プローブをより高密度に配置し、それにより10,000までの核酸分子を典型的には1〜4 cm2の領域中に固定化することができる。
【0181】
[000277] マイクロアレイを、例えば、遺伝子、オリゴヌクレオチドなどの核酸分子を基質上にスポットすることにより、または基質上でオリゴヌクレオチド配列をin situで製造することにより、製造することができる。スポットされたかまたは製造された核酸分子は、cm2あたり約30個までまたはそれ以上の例えば、cm2あたり約100または1000個までの非-同一の核酸分子を、高密度マトリクスパターンで適用することができる。マイクロアレイは、典型的には、フィルタアレイのニトロセルロースベースの材料とは対照的に、コーティングされたガラスを固体支持体として使用する。miRNA-補完性核酸サンプルのアレイを配列させることにより、各サンプルの位置を、追跡しそしてもとのサンプルと関連づけることができる。
【0182】
[000278] 複数の異なる核酸プローブが安定的に固体支持体の表面と結合する様々なアレイデバイスは、当業者に公知である。アレイのために有用な基質には、ナイロン、ガラス、そしてシリコンが含まれる。アレイを、平均プローブ長、配列、またはプローブのタイプ、プローブとアレイ表面との結合の性質(例えば、共有結合または非共有結合)などを含む、多数の様々な様式で変化させることができる。本明細書中において記載される標識方法およびスクリーニング方法およびアレイは、プローブがmiRNAを検出することを除き、いずれかのパラメータに関してその有用性の点で限定されない;結果的に、方法および組成物を、様々な異なるタイプのmiRNAアレイとともに使用することができる。
【0183】
[000279] 本発明の原理を適用することができる多数の可能性のある態様を考慮して、説明された態様は、本発明の好ましい事例のみであり、そして本発明の範囲に対する限定として捉えられるべきではないことは、理解すべきことである。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求の範囲によって定義される。従って、本発明者らは、本発明として請求の範囲に記載し、それら全てはこれらの請求項の範囲および概念に含まれる。
【0184】
[000280] 参考文献
[000281] 上述した参考文献および以下の参考文献は、それらが例示的な手続きまたは本明細書中で記載された内容に対するその他の詳細な補充を提供する程度に、参照により本明細書中において具体的に援用される。
【0185】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌(HCC)と診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合の腫瘍サンプルにおけるmiR-26発現レベルの1/1.5倍またはそれ以上の低下が、生存率の低下を予測するか、インターフェロン(IFN)-α療法に対する好ましい応答を予測するか、またはその両方である、肝細胞癌(HCC)と診断された患者の臨床転帰を予測する方法。
【請求項2】
臨床転帰が生存率の低下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
臨床転帰がインターフェロン療法に対する好ましい応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
miR-26が、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、またはこれらの組合せである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対照が、患者から得られた非-癌組織サンプルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対照が、健康被検体から得られた肝臓サンプルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対照が、基準値である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現が、少なくとも1/2倍、少なくとも1/2.5倍、少なくとも1/3倍、少なくとも1/3.5倍、または少なくとも1/4倍に低下する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合の腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルの1/1.5倍またはそれ以上の低下が、その患者がIFN-α療法のための候補であることを示唆する、IFN-α療法についての候補としてのHCCと診断された患者を選択する方法。
【請求項10】
miR-26が、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、これらの前駆体、これらのアリル変異体、またはこれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対照が、患者から得られた非-癌組織サンプルである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
対照が、健康被検体から得られた肝臓サンプルである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
対照が、基準値である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現が、少なくとも1/2倍、少なくとも1/2.5倍、少なくとも1/3倍、少なくとも1/3.5倍、または少なくとも1/4倍に低下する、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中でのmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択する工程を含み、それによりHCCの治療のための薬剤を同定する、HCCの治療のための治療剤を同定する方法。
【請求項16】
スクリーニングが、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
HCC細胞中でのmiR-26の発現が、非処置細胞と比較した場合に少なくとも2倍に増加する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
HCC細胞中でのmiR-26の発現が、非処置細胞と比較した場合に、少なくとも3倍に増加する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
HCC細胞中でのmiR-26発現が、非処置細胞と比較した場合に、少なくとも4倍に増加する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項20】
候補薬剤がサイトカインである、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
候補薬剤が低分子である、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
HCC細胞がHCC患者から得られた初代細胞である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
HCC細胞が不死化細胞である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
以下の工程:
i)HCCと診断された患者から得られた腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルを検出する工程;
ii)腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルを、対照と比較する工程;そして
iii)その患者に対する治療方法を選択する工程、ここで、その患者が対照と比較した場合に、腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルの1/1.5倍またはそれ以上の低下を有する場合にのみ治療方法がIFN-α療法を含む、
を含む、HCCと診断された患者を治療する方法。
【請求項25】
miR-26が、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、またはこれらの組合せである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
治療が肝臓の切除をさらに含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
IFN-α療法が、IFN-αの投与を含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
対照が、患者から得られた非-癌組織サンプルである、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
対照が、健康被検体から得られる肝臓サンプルである、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
対照が、基準値である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現が、少なくとも1/2倍、少なくとも1/2.5倍、少なくとも1/3倍または少なくとも1/4倍に低下する、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
HCCの少なくとも1つの特徴が、以下:HCCの有無;HCCの診断;HCCの予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;化学療法治療および/または放射線療法治療に対するHCCの適切性などの治療に対するHCCの感受性;ホルモン治療に対するHCCの適切性;侵襲的手術による除去に対するHCCの適切性;組合せアジュバント療法に対するHCCの適切性;からなる群の1またはそれ以上のものから選択される、肝細胞癌(HCC)の特性評価の方法。
【請求項33】
miR-26ファミリーの1またはそれ以上の構成成分を含む少なくとも1つの検出プローブを含む、HCCの検出用キット。
【請求項34】
オリゴヌクレオチドアレイの形状であるか、またはオリゴヌクレオチドアレイを含む、請求項33に記載のHCCの検出用キット。
【請求項35】
以下の工程:
i)少なくとも1つの組織サンプルをHCCに罹患する患者から単離する工程;
ii)請求項32に従って少なくとも1つの組織サンプルの特性評価を行いおよび/または少なくとも1つのmiR-26に対する検出プローブを使用して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;
iii)工程ii)において同定された少なくとも1つの特徴に基づいて、その患者の生理学的状態を診断する工程;
iv)工程iii)において得られた診断に基づいて、その患者がHCCの治療から利益を得られるかどうかを決定する工程;
を含む、治療に対するHCC患者の適切性の決定の方法。
【請求項36】
癌の少なくとも1つの特徴が、以下:癌の有無;癌の種類;癌の起源;癌の診断;癌の予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;化学療法治療および/または放射線療法治療に対する癌の適切性などの治療に対する癌の適切性;ホルモン治療に対する癌の適切性;侵襲的手術による除去に対する癌の適切性;組合せアジュバント療法に対する癌の適切性;からなる群の1またはそれ以上のものから選択される、請求項35に記載の治療のための、癌の適切性の決定のための方法。
【請求項37】
癌の少なくとも1つの特徴が、化学療法治療および/または放射線療法治療に対する癌の適切性などの治療に対する癌の適切性;ホルモン治療に対する癌の適切性;侵襲的手術による除去に対する癌の適切性;組合せアジュバント療法に対する癌の適切性;である、請求項36に記載の治療のための、癌の感受性の決定のための方法。
【請求項38】
以下の工程:
i)HCCに罹患する患者から少なくとも1つの組織サンプルを単離する工程;そして
ii)少なくとも1つの組織サンプルを特性評価して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;
ここで、この特徴により、HCC患者の可能性のある予後診断を決定することが可能になる、
を含む、HCC患者の可能性のある予後診断を決定するための方法。
【請求項1】
肝細胞癌(HCC)と診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合の腫瘍サンプルにおけるmiR-26発現レベルの1/1.5倍またはそれ以上の低下が、生存率の低下を予測するか、インターフェロン(IFN)-α療法に対する好ましい応答を予測するか、またはその両方である、肝細胞癌(HCC)と診断された患者の臨床転帰を予測する方法。
【請求項2】
臨床転帰が生存率の低下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
臨床転帰がインターフェロン療法に対する好ましい応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
miR-26が、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、またはこれらの組合せである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対照が、患者から得られた非-癌組織サンプルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対照が、健康被検体から得られた肝臓サンプルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対照が、基準値である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現が、少なくとも1/2倍、少なくとも1/2.5倍、少なくとも1/3倍、少なくとも1/3.5倍、または少なくとも1/4倍に低下する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
HCCと診断された患者から得られたHCC腫瘍サンプル中のmiR-26発現レベルを検出する工程を含み、ここで対照と比較した場合の腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルの1/1.5倍またはそれ以上の低下が、その患者がIFN-α療法のための候補であることを示唆する、IFN-α療法についての候補としてのHCCと診断された患者を選択する方法。
【請求項10】
miR-26が、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、これらの前駆体、これらのアリル変異体、またはこれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対照が、患者から得られた非-癌組織サンプルである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
対照が、健康被検体から得られた肝臓サンプルである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
対照が、基準値である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現が、少なくとも1/2倍、少なくとも1/2.5倍、少なくとも1/3倍、少なくとも1/3.5倍、または少なくとも1/4倍に低下する、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
候補薬剤をin vitroでスクリーニングして、HCC細胞中でのmiR-26の発現を増加させる薬剤を選択する工程を含み、それによりHCCの治療のための薬剤を同定する、HCCの治療のための治療剤を同定する方法。
【請求項16】
スクリーニングが、候補薬剤をHCC細胞と接触させる工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
HCC細胞中でのmiR-26の発現が、非処置細胞と比較した場合に少なくとも2倍に増加する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
HCC細胞中でのmiR-26の発現が、非処置細胞と比較した場合に、少なくとも3倍に増加する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
HCC細胞中でのmiR-26発現が、非処置細胞と比較した場合に、少なくとも4倍に増加する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項20】
候補薬剤がサイトカインである、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
候補薬剤が低分子である、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
HCC細胞がHCC患者から得られた初代細胞である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
HCC細胞が不死化細胞である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
以下の工程:
i)HCCと診断された患者から得られた腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルを検出する工程;
ii)腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルを、対照と比較する工程;そして
iii)その患者に対する治療方法を選択する工程、ここで、その患者が対照と比較した場合に、腫瘍サンプル中でのmiR-26発現レベルの1/1.5倍またはそれ以上の低下を有する場合にのみ治療方法がIFN-α療法を含む、
を含む、HCCと診断された患者を治療する方法。
【請求項25】
miR-26が、miR-26a-1、miR-26a-2、miR-26b、またはこれらの組合せである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
治療が肝臓の切除をさらに含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
IFN-α療法が、IFN-αの投与を含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
対照が、患者から得られた非-癌組織サンプルである、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
対照が、健康被検体から得られる肝臓サンプルである、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
対照が、基準値である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
腫瘍サンプルにおけるmiR-26の発現が、少なくとも1/2倍、少なくとも1/2.5倍、少なくとも1/3倍または少なくとも1/4倍に低下する、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
HCCの少なくとも1つの特徴が、以下:HCCの有無;HCCの診断;HCCの予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;化学療法治療および/または放射線療法治療に対するHCCの適切性などの治療に対するHCCの感受性;ホルモン治療に対するHCCの適切性;侵襲的手術による除去に対するHCCの適切性;組合せアジュバント療法に対するHCCの適切性;からなる群の1またはそれ以上のものから選択される、肝細胞癌(HCC)の特性評価の方法。
【請求項33】
miR-26ファミリーの1またはそれ以上の構成成分を含む少なくとも1つの検出プローブを含む、HCCの検出用キット。
【請求項34】
オリゴヌクレオチドアレイの形状であるか、またはオリゴヌクレオチドアレイを含む、請求項33に記載のHCCの検出用キット。
【請求項35】
以下の工程:
i)少なくとも1つの組織サンプルをHCCに罹患する患者から単離する工程;
ii)請求項32に従って少なくとも1つの組織サンプルの特性評価を行いおよび/または少なくとも1つのmiR-26に対する検出プローブを使用して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;
iii)工程ii)において同定された少なくとも1つの特徴に基づいて、その患者の生理学的状態を診断する工程;
iv)工程iii)において得られた診断に基づいて、その患者がHCCの治療から利益を得られるかどうかを決定する工程;
を含む、治療に対するHCC患者の適切性の決定の方法。
【請求項36】
癌の少なくとも1つの特徴が、以下:癌の有無;癌の種類;癌の起源;癌の診断;癌の予後診断;療法転帰予測;療法転帰モニタリング;化学療法治療および/または放射線療法治療に対する癌の適切性などの治療に対する癌の適切性;ホルモン治療に対する癌の適切性;侵襲的手術による除去に対する癌の適切性;組合せアジュバント療法に対する癌の適切性;からなる群の1またはそれ以上のものから選択される、請求項35に記載の治療のための、癌の適切性の決定のための方法。
【請求項37】
癌の少なくとも1つの特徴が、化学療法治療および/または放射線療法治療に対する癌の適切性などの治療に対する癌の適切性;ホルモン治療に対する癌の適切性;侵襲的手術による除去に対する癌の適切性;組合せアジュバント療法に対する癌の適切性;である、請求項36に記載の治療のための、癌の感受性の決定のための方法。
【請求項38】
以下の工程:
i)HCCに罹患する患者から少なくとも1つの組織サンプルを単離する工程;そして
ii)少なくとも1つの組織サンプルを特性評価して、HCCの少なくとも1つの特徴を同定する工程;
ここで、この特徴により、HCC患者の可能性のある予後診断を決定することが可能になる、
を含む、HCC患者の可能性のある予後診断を決定するための方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図5A】
【図5B】
【図6−2】
【図6−3】
【図6−4】
【図6−5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4B】
【図4C】
【図6−1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図5A】
【図5B】
【図6−2】
【図6−3】
【図6−4】
【図6−5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4B】
【図4C】
【図6−1】
【公表番号】特表2011−525796(P2011−525796A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513679(P2011−513679)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/046999
【国際公開番号】WO2009/152300
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【出願人】(510149460)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【出願人】(510327954)フーダン・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/046999
【国際公開番号】WO2009/152300
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【出願人】(510149460)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【出願人】(510327954)フーダン・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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