説明

肝臓疾患の支持療法

本発明は、カルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合、比較的親水性である抗酸化剤でもあるジルチアゼンおよびチアミンのようなカルシウム・チャネル・ブロッカーの徐放製剤の経口投与を含む、肝臓疾患に罹患している対象の治療のための組成物および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓の肝硬変および門脈高血圧を含めた肝臓疾患およびその合併症の支持療法の方法に関する。特に、本発明は、一次疾患プロセスに対して二次的である肝臓細胞膜に対する直接的または間接的損傷が、一次疾患プロセスによって引き起されるものを超え、そして上回る細胞膨張、低酸素症、および損傷を受けた肝機能のカスケードを開始する、ウイルス性または中毒性肝炎を含めた非悪性肝臓疾患に適用される。
【背景技術】
【0002】
肝臓疾患は、アルコール性肝炎および肝硬変のような中毒性肝炎、最も一般的なウイルス性肝炎であるC型肝炎、および慢性炎症によって特徴づけられる一般性が低い免疫学上の肝臓疾患を含む。
【0003】
肝機能を改善するための治療上の試みは、一次疾患プロセスの処置に対して常に二次的であったが、しかし病理学上のプロセスの様々な要素を標的にすることによって、機能を改善する多くの試みがなされた。採用された主要な方法として、薬草抽出物シリマリンおよびシリビニンから始まった抗酸化剤の使用である(非特許文献1によって再検討される)。しかし、シリマリンの効力は、アルコール性肝疾患においては期待はずれのものであり(非特許文献2)、また肝毒性作用の可能性がある(非特許文献3)。さらに最近、トコフェロール、ジピリダモール(非特許文献4、非特許文献5)、および広範な最新の、合成および天然両方の抗酸化剤が使用されてきた(非特許文献6)。
【0004】
これらの中に含まれるのは、カルシウム遮断薬ベラパミル、ジルチアゼムおよびアムロジピン(非特許文献7)、およびさらにニトレンジピン(非特許文献8)である。当初、これらの薬剤は、心筋のような興奮性組織、あるいは動脈で作用するときのように、肝細胞に直接的に作用し、カルシウム流入を遮断すると考えられた(非特許文献9)が、しかし、肝臓は、興奮性組織中でこれらの薬剤の標的となる電位依存性カルシウムチャネルを有しないことがすぐに認識された。したがって、これらの薬剤が肝臓で作用していたのであれば、異なった方法で作用していたはずである。このようにして、多くのカルシウム・ブロッカーは、強力な抗酸化剤でもあることが分かった(非特許文献10)。
【0005】
カルシウム・チャネル・ブロッカーは、肝動脈を拡張させて、酸素付加された血液の肝臓への送達を増大させうるとも提案された(特許文献1)。しかし、ベラパミル、ジルチアゼムのような薬剤(非特許文献11;非特許文献12)および他のカルシウムブロッカーの保護効果は、単離細胞で起こる。経口で低用量で投与されるカルシウム・ブロッカーの肝動脈の血流における効果は、確認されなかった。ジルチアゼムも、肝臓内での微細血管の血流にまったく影響を示さないことを示した(非特許文献13)。
【0006】
【特許文献1】McLean、米国特許第5,854,233号、1998年12月29日。
【非特許文献1】Floraら、Am J Gastroenterol 93巻:139−43頁、1998年。
【非特許文献2】Anguloら、Hepatology 32巻:897−900頁、2000年。
【非特許文献3】Bass、Curr Gastroenterol Rep 1巻:50−6頁、1999年。
【非特許文献4】Novikovら、Nauchnve Doki Vvss Shkoly Biol Nauki.12巻:19−27頁、1991年。
【非特許文献5】Vargasら、Int J Toxicol.20巻:363−8頁、2001年。
【非特許文献6】Vaidyaら、J Postgrad Med 42巻:105−8頁、1996年。
【非特許文献7】Masonら、1999年。
【非特許文献8】Thurmanおよび同僚ら、1998年。
【非特許文献9】LiangおよびThurman、1992年。
【非特許文献10】Heoら、1997年。
【非特許文献11】MarteauおよびThurman、1992年。
【非特許文献12】Romeroおよび同僚ら、1994年。
【非特許文献13】Marteauおよび同僚ら、1988年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肝炎を罹患している患者らは、チアミンを吸収する能力に損傷を受けたことを示し、そしてさらに、血中でのチアミン濃度を測定することは、しばしば困難である。したがって、ミトコンドリアでのエネルギー生成は、罹患した肝臓の細胞で激しく弱められる。
【0008】
この文書中で本発明に対する背景の検討は、本発明の内容を説明することを含む。これは、引用される材料の内のいずれかが、出版されたか、知られているか、または請求項のいずれかの優先日に一般に共通の知識の一部であることを認めることとみなされるべきでない。
【発明を解決するための手段】
【0009】
我々は、ミトコンドリアにおけるそのカルシウム遮断効果を発揮するカルシウム・チャネル・ブロッカー(特に、ジルチアゼム)の効果の相互作用が、抗酸化剤効果を示し、そして比較的親油性であること、そして、カルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合に比較的親水性の抗酸化剤であるビタミンBであるチアミンが、肝臓疾患に明らかな改善を供することを見出した。チアミンは、罹患した細胞に効果を与えないことが多い一方で、これらの特性を示すカルシウム・チャネル・ブロッカーの同時投与が、チアミンの作用を促進し、細胞膜を保護し、そして細胞が損傷を受けたときに、エネルギーの継続生成を可能にすると思われる。本発明によって、我々は、(i)抗酸化剤効果を示す比較的親油性のあるカルシウム・チャネル・ブロッカーの経口徐放製剤、および(ii)動揺に抗酸化剤であり、そしてカルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合に、比較的親水性のあるビタミンBチアミンの投与を含む、肝臓疾患を罹患している対象の治療の方法を提供する。
【0010】
本発明は、カルシウム・チャネル・ブロッカーの徐放を供するため、1つまたはそれ以上の組成物中でのそれの同時投与による肝臓疾患治療のための薬の調整法として、肝臓疾患の治療のための医薬品の製剤における(i)抗酸化剤効果を有する比較的親油性のあるカルシウム・チャネル・ブロッカーおよび(ii)動揺に抗酸化剤であり、そしてカルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合に、比較的親水性のあるビタミンBであるチアミンの使用法も提供する。
【0011】
本発明は、さらに、(i)抗酸化剤効果を有する比較的親油性のカルシウム・チャネル・ブロッカーおよび(ii)抗酸化剤であり、そしてカルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合に、比較的親水性であるビタミンBチアミンを含む、肝臓疾患の治療または予防のための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、一般に、徐放組成物である。
【0012】
この治療に適切な薬剤の多くは、血管収縮性であるか、またはそれらが肝臓内で優先的に濃縮される場合に避けられうる全身性影響を示すので、肝臓選択的徐放製剤が必要とされる。低用量徐放組成物は、好ましくは、門脈における臨床上有効な血液濃度を供するのに十分で、そして末梢循環における臨床上有効な濃度を供するのに要求されるより少ないカルシウム・チャネル・ブロッカーの送達速度を供して、それによって、肝臓における選択的効果を示す送達速度を供する。
【0013】
チアミンを別個に、または同時に投与しうるが、しかし、カルシウム・チャネル・ブロッカーを有する同じ組成物で投与することが好ましい。
【0014】
ミトコンドリア保護剤として、すなわち、ピルビン酸デヒドロゲナーゼのコファクターとしてミトコンドリア内で作用するビタミンBとして周知であるチアミンは、親水性抗酸化剤でもある。それは、栄養欠乏を示す患者に、そしてウイルス性肝炎を有するある種の患者に使用される。抗酸化剤特性を示すカルシウム拮抗薬にチアミンを添加することは、さらに、ミトコンドリア内のエネルギー発生におけるビタミンの促進剤効果と、細胞内のそれ自身の抗酸化剤効果との両方を促進する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の方法は、抗酸化剤効果を有する比較的親油性のカルシウム・チャネル・ブロッカー、およびカルシウム・チャネル・ブロッカーと比較したときに比較的親水性の抗酸化剤であるチアミンの投与を含む。
【0016】
好ましくは、心臓血管疾患の治療のために処方される用量の半分未満(さらに好ましくは3分の1未満)である日用量で、カルシウム・チャネル・ブロッカーを投与する。心臓血管疾患の治療のために処方される用量は、処方薬剤に関連する医学典拠で供される。我々は、特に、オーストラリア国で使用の認可されたジルチアゼムを含めたカルシウム・チャネル・ブロッカーの用量を引用した(MIMS2002年の年報のオーストラリア編)。ジルチアゼムについての認可された最適な用量は、1日当たり180から240mgまでである。
【0017】
好ましいカルシウム・チャネル・ブロッカーは、フリーラジカルが作用している場所にそれらの治療効果があるように、細胞、および膜内で深部に確実に浸透する親油性である。対照的に、細胞質ゾルまたは細胞環境内で作用する薬剤は、いっそう親水性であることが必要である。ベラパミル、ジルチアゼム、アムロジピン、およびニトレンジピンのようなほとんどのカルシウム遮断薬剤は、膜安定性効果を有するが、半減期の短いジルチアゼムおよびベラパミルは、これらの剤を、肝臓選択的膜安定化剤としての製剤にいっそう適切になる。好ましい剤は、1日当たり70mg未満、そして好ましくは1日当たり50mg未満の用量で、徐放製剤として投与されるジルチアゼムである。これらの用量は、アンギナおよび高血圧の治療に使用される薬剤の用量より非常に低い。ジルチアゼムは、塩酸塩または他の医薬上許容しうる塩の形態でありうる。
【0018】
好ましいカルシウム・チャネル・ブロッカーは、膜破壊プロセスのいくつかの主要要素を越える効果を示す膜安定化剤(または剤の組合わせ)である。好ましいカルシウム・チャネル・ブロッカーは、細胞内および膜内抗酸化剤として作用し、ミトコンドリアへのカルシウムの流入を制限し、そしてホスホリパーゼ活性を阻害し、そして細胞によるエネルギー生成を促進または維持する。さらに、これらの作用は、好ましくは、細胞pHが低酸素症の間に下降するときに働きつづける。同時に、これらの効果が、細胞膨張および低酸素症を減じるように作用し、それゆえ、肝臓機能を改善すると確信する。ジルチアゼムが、これらの基礎に基づいて特に好ましいことが見出された。
【0019】
シス−(+)−3−(アセチルオキシ)−5−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2,3−ジヒドロ−2−(4−メトキシフェニル)−1,5−ベンゾチアゼピン−4(5H)−オンであり、ここで「ジルチアゼム」と称されるジルチアゼムは、カルシウム拮抗薬活性を保有するベンゾチアジン誘導体である。ジルチアゼムは、これまで、臨床的に、平滑筋および心筋中のカルシウムイオンの還流を遮断し、したがって、強力な心臓血管系作用を発揮するために使用されてきた。ジルチアゼムは、副作用の発生が低いことを示しつつ、慢性心臓疾患、特に狭心症および心筋虚血および高血圧の兆候を緩和するのに有用であることが示された。これらの用途では、ジルチアゼムは、塩酸ジルチアゼムとして、30、60、90および120mgの強度で、錠剤形態で、また60、90、120、180、240および300mgの強度で、カプセル形態で市販されている。ジルチアゼムは、5mg/mlの強度で、注射可能形態でも市販されている。
【0020】
心臓血管疾患の治療のためのジルチアゼム療法は、一般に、1日4回30mg投与で開始する。その投与量は、180から240mg/日まで、そしてしばしば、360mg/日まで徐々に増大され、最適な反応が得られるまで、1から2日までの間隔で、1日3回または4回、分割用量で与えられる。肝臓は、ジルチアゼムを集約的に代謝する。
【0021】
マリオン・メレル・ダウ・インク.によって発行される専門家利用情報によると、カルジゼム(CARDIZEM.)RTM.ブランドの錠剤でのジルチアゼムは、約80%まで吸収され多大な初回通過効果を被るため静脈内投与に比較して、約40%の絶対的生体利用性を示す。CARDIZEM.RTM.ジルチアゼム錠剤の30から120mgまでの単回経口用量は、投与の2から3時間後に、最高の血漿濃度を生じる。検出可能な血漿濃度は、投与の30から60分後に起こり、CARDIZEM.RTM.ジルチアゼム錠剤が直ちに吸収されることを示す。単回または複数回投与に追従する血漿排出半減期は、およそ3.5時間である。CARDIZEM.RTM.ジルチアゼム錠剤の治療上の血中濃度は、50から200ng/mlの範囲にあるように思われる。
【0022】
カルシウム・チャネル・ブロッカーの先行技術製剤と対照的に、心臓血管疾患の有効な治療に障害と見なされるジルチアゼムのような薬剤の初回通過クリアランスは、それが、薬剤の臨床効果を、肝臓に限定させる場合、肝臓疾患を治療する上で長所になる。したがって、カルシウム・チャネル・ブロッカーは、低用量で、そして、門脈中の臨床上有効な血中濃度を供する徐放製剤として、そして末梢循環中で臨床的に有効な濃度を供するために要求されるより少ない用量で存在することが特に好ましい。したがって、本発明の方法および組成物は、肝臓における選択的効果を示す送達速度を供する。
【0023】
チアミンとの組合わせでジルチアゼムを使用する肝臓保護のこの方法は、細胞膜が、酸化剤または酸化プロセスによって、一次的または二次的のいずれかで損傷を受けたあらゆる疾患状態の肝臓に適用される。これらの親油性膜安定化剤の肝臓選択的製剤の使用は、一次疾患の治療に補足的である。
【0024】
適切なこれらの肝臓保護剤を、C型肝炎の管理におけるリバビリンまたは他の経口で投与される抗ウイルス剤のようなその疾患の一次管理で使用される治療剤と同時処方または同時配合しうる。
【0025】
したがって、本発明は、親油性膜安定化剤およびジルチアゼムのような抗酸化剤の肝臓選択的製剤と、チアミンのような親水性抗酸化剤と同時に投与されるものである、門脈の高血圧剤および抗ウイルス剤から選択される上記少なくとも1つの活性剤を投与することによる、肝臓疾患の治療または予防の方法も提供する。
【0026】
膜安定化の2つの成分、すなわち、カルシウム・チャネル・ブロッカー+親水性抗酸化剤チアミンは、同時配合しうるか、または別個の組成物で投与しうる。その剤を、同じ経路(特に経口投与)によって、投与しうるか、または異なる経路によって投与してもよい。例えば、1つの活性剤を、静脈内で、または非経口で投与でき、そしてカルシウム・チャネル・ブロッカー(膜安定化)剤または複数の剤を経口で投与しうる。
【0027】
本発明の方法および組成物で、チアミンを、そのような塩酸塩または他の医薬上許容しうる誘導体から得られる塩として使用しうる。
【0028】
本発明の1つの特に好ましい実施態様では、門脈の高血圧剤および抗ウイルス剤から選択される少なくとも1つの剤を、カルシウム・チャネル・ブロッカーおよびチアミンと同時配合する。
【0029】
最も好ましい抗ウイルスは、インターフェロンとの組合わせで使用されうる(そして好ましくは使用される)リバビリンである。したがって、別の実施態様では、本発明は、膜安定化剤の肝臓選択的製剤を、リバビリンと、そして好ましくはインターフェロンも同時投与することを含む、ウイルス性肝炎の治療の方法を提供する。
【0030】
リバビリンおよび膜安定化剤を、好ましくは、経口で投与し、そしてさらに好ましくは、同時配合して、各剤の徐放を供する。インターフェロンを、好ましくは、非経口で投与して、同時投与の間に、有効な濃度を供する。
【0031】
別の実施態様では、本発明は、親油性カルシウム・チャネル・ブロッカーおよびチアミンの肝臓選択的製剤を同時投与することを含む、中毒性肝炎(例えば、アルコール性肝炎)の治療または予防の方法を提供する。親水性であるチアミンが、カルシウム・チャネル・ブロッカー成分と同時配合される場合、特に有益である。したがって、好ましい実施態様では、我々は、ジルチアゼムのようなカルシウム・チャネル・ブロッカーの、比較的親水性の剤チアミンとの肝臓選択的製剤を含む、中毒性肝炎の治療のための組成物を提供する。
【0032】
好ましいカルシウム・チャネル・ブロッカーは、20から70mg/日まで、そしてさらに好ましくは25から50mg/日までの量にあるジルチアゼムである。
【0033】
チアミンを使用する場合、それは、1日当たり1から5mgまで、そしてさらに好ましくは1日当たり1から3mgまでの送達を供する量で存在するのが好ましい。急性期治療を含めた個別の場合には、主治医の判断で、1日当たり20mgまでの高用量を使用しうる。
【0034】
リバビリンを、ウイルス性肝炎治療に使用する場合、1日当たり1200mgまでの用量を、従来の製剤で、または肝臓選択的製剤として500mg/日未満の用量で使用する。
【0035】
本明細書の説明および請求項を通して、語句「含む」および「包含すること」および「包含する」のようなその語句の変形は、他の添加剤、成分、完全体または段階を除外することを意図しない。
【0036】
本発明によって、我々は、ミトコンドリアのカルシウム・チャネルにおける阻害効果、およびホスホリパーゼの阻害を供するのに十分な量で、比較的親油性の抗酸化剤であるカルシウム・チャネル・ブロッカーの肝臓選択的製剤の投与を含む、医薬上の療法の方法を提供する。親油性の剤は、細胞質ゾルまたは環境内で、並びに細胞膜内での添加剤の抗酸化剤効果があるように親水性の抗酸化剤の添加を伴って、または伴わずに処方されうる。ビタミンであるチアミンの使用は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼのコファクターとして、それがエネルギー生成を促進するミトコンドリアでの相補的ミトコンドリア効果を加える。細胞膜は、肝細胞が、門脈血流を妨げ、そして肝臓の低酸素症を引き起すのに十分に膨張するように一次または二次プロセスのいずれかによって損傷を受けたあらゆる形態の慢性の非悪性疾患によって損傷を受けたときに、この療法は、肝臓を保護し、そして肝機能を維持するために使用されうる。
【0037】
我々は、カルシウム・チャネル・ブロッカーとチアミンとの組合わせが、膜安定化効果を供することを見出した。用語「膜安定化」は、何年も前に、ベータ−アドレナリン遮断薬の局所麻酔および他の膜効果を定義するために案出された。現在ではこの用語は、広範な膜効果に及び、そしてそれは、同様に、個々に特徴づけられることが必要である(Smith、1982年)。
【0038】
本発明の治療が、用途を示しうる疾患は、全ての形態のウイルス性肝炎(C型肝炎を含む)、アルコール性肝臓疾患、肝硬変、中毒性肝炎、自己免疫性肝炎、化学療法または放射線療法の間に受ける肝臓に対する損傷、および肝臓の加齢を含む。
【0039】
慢性肝臓疾患の病理学
肝臓内の細胞膜の構造および機能の進行性破壊は、ほとんど全ての形態の慢性の非悪性肝臓疾患の重要な要素である。それは、肝臓機能の全体的損傷に寄与し、細胞死を導き、そして一次疾患プロセスの効果を補足または増強する。
【0040】
膜破壊、または不安定化は、その共通の特性が、フリーラジカル(超酸化物陰イオン、水酸基ラジカルなど)の発生、およびリゾリン脂質を生成する細胞膜中のリン脂質におけるそれらの酸化効果である少なくとも6つの間の関連プロセスによって引き起される。
【0041】
第一に、一次疾患プロセスは、フリーラジカルを発生しうる。C型肝炎を含めたウイルス性肝炎の場合には、フリーラジカルは、ウイルスにより生成されないが、しかしウイルス感染に対する応答で活性化された体内での免疫系によって生成される(Patrick、1999年;Jainら、2002年;LoguercioおよびFederico、2003年)。
【0042】
その免疫系は、ウイルスが、特に肝細胞の外部膜中で、成長して、リン脂質を酸化している組織で作用して、水、ナトリウムイオンおよびカルシウムイオンに対する膜の透過性を増大させる構造上および機能上の変化を引き起す。このプロセスは、細胞内カルシウムイオン濃度が生理学上の濃度より上に上がるとき、細胞膨張およびカルシウム過負荷を誘発する。アルコール性肝臓疾患、中毒性肝炎、自己免疫性肝炎、化学療法および加齢肝臓における類似のプロセスも、細胞膜を酸化するために作用し、細胞膨張を誘発し、そしてカルシウム過負荷を生じる。
【0043】
第二に、膜透過性における変化により引き起される細胞膨張は、肝臓を通り、そして門脈系を通る血流に対する抵抗を増大させる。他の臓器とは対照的に、その血液供給のほとんどが、門脈系にわたって低圧力であり、そして静脈血の低酸素含有量特徴があるため、肝臓は、細胞膨張が起こるときに、特に、血流が減少する傾向がある。血流のあまり大きくない阻害さえ、一次疾患プロセスにより引き起されるものを越え、そしてそれより上まで肝機能に損傷を与えるのに十分な、肝臓内の低酸素症を引き起す。
【0044】
第三に、進行性低酸素症は、NADPHの細胞内およびミトコンドリア内の濃度の両方を上昇させる。同時に、これは、細胞の外側における免疫または中毒効果によって発生されるものと比較して、細胞およびミトコンドリア内にあるフリーラジカルの生成を刺激する。したがって、免疫または中毒応答は、膜に、外側から内に損傷を引き起すが、しかし低酸素症の即時効果は、膜に、内側から外に損傷を引き起す。
【0045】
第四に、上昇した濃度のカルシウムイオンは、カルシウムが優先的にミトコンドリア内で濃縮されるようにミトコンドリア膜(黒色脂質)内のイオン依存性カルシウム・チャネルを活性化する。これにより、ミトコンドリアは、エネルギー生成からそれらの機能を方向転換させ、そしてカルシウム噴出を優先させる。結果として、低酸素症の間の上昇するミトコンドリアのカルシウム濃度は、低酸素症の機能効果を増大し、そしてNADPH濃度をさらに増大させるように作用する。
【0046】
第五に、カルシウムの上昇するミトコンドリア内濃度は、NADPHによるフリーラジカルの生成を促進するように作用する。したがって、進行性の膜破壊または不安定化の速度は、ミトコンドリアのカルシウム蓄積が進行するときに増大する。
【0047】
第六に、カルシウムの上昇するミトコンドリア内濃度は、ホスホリパーゼを活性化し、これが、次に、肝細胞中の細胞膜に第二の破壊プロセスをもたらす。
【0048】
これらの6つのプロセスは、相互に作用して、進行性膜酸化および機能不全、細胞膨張、低酸素症、カルシウム蓄積、ホスホリパーゼ活性化、肝機能の損傷および最終的な細胞死を作りだす。
【0049】
低酸素症、または細胞膜でのリン脂質を酸化する他のプロセスにより損傷を受けた肝細胞で有効であるために、肝臓保護性膜安定化効果は、以下の条件を満たす必要がある。
・その剤は、高濃度のNADPHによって誘導されるフリーラジカルを吸収または破壊する抗酸化剤として作用すべきであり、そしてそれは、低酸素症および他の形態の酸化的損傷を起こす。
・その剤は、フリーラジカルが形成される予定であり、そしてそれらが損傷を与えている細胞内および膜内の両方で、それの膜保護および抗酸化剤効果を発揮すべきである。
・その剤は、ミトコンドリア内で抗酸化剤として作用すべきである。
・その剤は、ミトコンドリアのカルシウム・チャネルを阻害して、低酸素症の間に起こるNADPHの上昇を減じるべきである。
・その剤は、細胞のカルシウム過負荷の条件下で、ミトコンドリアに、ATPを生成することを継続させるべきである。
・その剤は、カルシウムの濃度を増大させることによって、ホスホリパーゼの活性を防止すべきである。
・その剤は、血液供給における減少が、細胞膜での細胞膨張および酸化的変化を引き起すことを防止または減じるべきである。
【0050】
これらの特性のすべては、D−ジルチアゼムを含めたいくつかのカルシウム遮断剤によって示されるが、しかし、あらゆるこのような剤の保護効果は、カルシウム遮断剤が、全身循環で示す既知の血管拡張剤とは別個であり、そして酸素付加された動脈血の供給における変化とは別個である。
【0051】
カルシウム・チャネル遮断剤に応答するミトコンドリア膜(黒色脂肪)中の特別のカルシウム担持チャネルがある(Spalletti−Cerniaら、2002年)。これらのチャネルは、電圧依存性であるよりむしろイオン依存性である一方で、それらは、興奮性組織中のチャネルと共通した特性を示し、そしてこれは、ベラパミル、ジルチアゼムおよびアムロジピンのような薬剤に対するそれらの応答を説明するようである。ミトコンドリアのカルシウム・チャネル封鎖の即時効果は、細胞内のカルシウム濃度を上昇させることによって、チャネルが活性化されるときに、ミトコンドリアへのカルシウムの流入を制限し、そしてそれによりミトコンドリアの機能を保護することである。これは、この酵素系における薬剤の直接効果でもありうるが、カルシウム流入の制限は、ホスホリパーゼの活性を減じる(Draperら、2004年)。
【0052】
膜肝臓保護剤として有効であるために、膜安定化剤は、比較的親油性である必要がある。一次疾患プロセスによって、または低酸素症によって生じたフリーラジカルの標的は、細胞膜内のリン脂質である。抗酸化剤活性は、脂質バイオ層内、すなわち、フリーラジカルが損傷を与えている細胞膜内で作用しなければならないということになる。同様に、膜保護剤は、これらの膜内に存在するイオン依存性カルシウム・チャネルを阻害する黒色脂質(ミトコンドリア膜)を保護しなければならない。しかし、我々は、親水性抗酸化剤によって供される細胞の細胞質ゾル内での同時効果が、総抗酸化剤保護に加わることを提案する。要求される主要な作用が、ミトコンドリア膜を含めた細胞膜内でのフリーラジカルの破壊的効果を防止する一方で、細胞質ゾルまたは親水性分画内のフリーラジカルを中和することも有用である。
【0053】
親油性は、肝臓選択的製剤として表示するのに適切な剤の望ましい特性にも寄与する。これは、剤が、肝臓の代謝によって短い半減期を示すこと、そして胃腸管を通して落下するカプセルまたは他の製剤からの放出の後、その剤が、胃腸壁で確実に吸収されることを要求する。親油性剤は、細胞膜を十分に超え、それによりこれらの条件を満足する。選択され、そしてそれらの親水性特性について活性なあらゆる抗酸化剤または他の安定化剤は、穏和な親油性まで、半減期および胃腸吸収のこれらの条件に見合う必要がある。チアミンは、これらの条件に見合う。
【0054】
肝機能を改善する第二のアプローチは、ビタミンBチアミンを投与することであった。チアミンは、ミトコンドリアによりエネルギー生成を促進するミトコンドリアの酵素ピルビン酸デヒドロゲナーゼについてのコファクターとして作用する。アルコール性肝臓疾患を有する患者は、この酵素が欠乏している可能性があることはよく知られている一方で、ウイルス性肝炎を有する患者は、その投与から利益を得うることも示された(WallaceおよびWeeks、2001年)。最近の研究は、チアミンの抗酸化剤特性も説明した(Lukiekoら、2000年)。ジルチアゼムと対照的に、チアミンは、比較的親水性の分子である。
【0055】
肝臓選択的製剤としての親油性および親水性膜安定化薬剤の提示は、本発明の重要な部分である。
【0056】
肝臓選択的薬剤創出の概念は、短い半減期を示す薬剤が、低用量として、そして緩徐放または放出制御製剤として投与され、その結果、その薬剤は、数時間にわたって、好ましくは24時間までにゆっくりと放出されることを必要とする。胃腸壁を越えた後、薬剤は、比較的容積小さい門脈系に到達し、そして肝臓に運ばれる。ここで、最大容積の全身循環系に入る残りの部分を用いた代謝によって、かなりの部分が、循環系から除去される。この方法で、薬剤の濃度が、全身循環でより肝臓および門脈循環で、5倍以上の倍数までである安定な濃度勾配が達成される。達成された濃度勾配は、肝硬変または不活発な門脈循環を示す他の症状で高い可能性があるが、しかし、この効果は、門脈および全身循環の間の明らかな側枝血管の発達によって相殺されうる。
【0057】
多くの治療状況で、標的臓器への薬剤の送達を制限することが望ましい。これは、薬剤が、他の薬理学上の特性に関連した副作用を示すときに、特に重要である。カルシウム・チャネル・ブロッカー(および強力な血管拡張剤)でもある膜安定化剤の場合には、肝臓選択的療法としてのそれらの提示は、望ましくない血管拡張剤の心臓への影響の危険を回避または最小限にし、それによって耐性および許容性を増大させる。肝臓選択的送達は、薬剤が投与されて全身効果を達成する予定である場合に通常要求される総全身用量の20−25%まで要求される薬剤の総日用量も減じる。
【0058】
狭心症および高血圧の治療に使用される全身効果のために要求される用量が、一般に120−360mg/日の範囲内にあるジルチアゼムの場合には、ジルチアゼムの1日当たり50mgまたはそれ未満の用量は、体の残りの部分でなく肝臓での治療効果を保持する。
【0059】
これらの特性を示し、そしてチアミンと共に、またはなしに肝臓選択的送達のために配合されるジルチアゼムを含む膜安定化剤は、
●B型およびC型肝炎、および他の形態を含めたウイルス性肝炎
●アルコール性肝炎
●肝硬変
●門脈高血圧
●毒素、薬剤、および異常な免疫状態によって引き起される他の形態の非悪性肝臓疾患
●化学療法中の肝臓機能不全
●放射線療法後の肝臓機能不全
●加齢しつつある肝臓
において肝臓を保護するために使用されうる。
【0060】
ウイルス性肝炎の場合には、肝細胞膜に対する損傷の即時原因は、ウイルスの存在に対する体の免疫応答である(LoguercioおよびFederico、2003年)。これは、細胞の表面および内側における細胞膜に対する損傷と共に、フリーラジカルの発生を導く(Jainら、2002年)。それは、添加されたリバビリン(または関連分子)と共に、またはなしでのインターフェロンの使用は、必須の抗ウイルス治療である一方で、免疫プロセスにより、肝細胞になされた損傷を保護または逆行させる必要があるということになる。したがって、抗酸化剤とミトコンドリア効果との両方を有する肝臓選択的膜安定化剤は、一次処置に補足的である。さらに、高価な殺ウイルス療法を受けることができない人々の集団では、症状を最小限にするか、または阻止しうるジルチアゼムまたは関連分子のような肝臓選択的膜安定化剤を用いた治療は、享受可能な選択肢になる。したがって、添加されたチアミンと共に、またはなしに肝臓選択的膜安定化剤を、単一療法として処方されるか、インターフェロンおよびリバビリンと、または他の適切な抗ウイルス療法と同時処方されるか、または両方または全ての薬剤が、肝臓選択的製剤として一緒に、投与されるようにリバビリンまたは抗ウイルス療法の他の経口投与される成分と同時に処方されうる。
【0061】
アルコール性肝臓疾患を有する患者は、頻繁に、ビタミンの栄養的欠乏を示すので、チアミン(ビタミンB1)を用いた治療が、この疾患の管理に使用されてきた。チアミンは、肝臓のミトコンドリア内の重要な代謝プロセスを含む炭素−炭素結合を切断するいくつかの反応について補酵素として作用する(Wilson、1998年)。栄養欠乏の修正に加えて、チアミンを用いた治療は、BおよびC型肝炎を有する患者における薬剤で誘導されたミトコンドリア損傷を改善しうる(KontorinisおよびDieterich、2003年)。他の研究者らは、チアミン欠乏が、肝硬変を有しないC型肝炎にはないが、アルコール性肝臓疾患とC型肝炎との両方によって引き起される肝硬変を有する患者に共通することを示した(Levyおよび同僚ら、2002年)。しかし、チアミンは、B型肝炎を有する患者における肝機能を改善することが示されている(WallaceおよびWeeks、2001年)。これらの研究者らは、ビタミンが、ウイルス性肝炎を有する患者でのミトコンドリア機能における保護効果を示しうることを示唆した。チアミンの保護作用の別の重要な要素は、その抗酸化剤特性であり、そしてそれは、その親水性特性によって細胞質ゾル中で活性であるように見える。
【0062】
チアミン(ビタミン)を用いた治療が、ミトコンドリアの保護剤としてウイルス性肝炎を有する患者(Wallace AEおよびWeeksWB、2001年)に、特にC型肝炎により引き起された肝硬変を有するような患者(Levyら、2002年)に有用でありうる証拠が生じる。肝臓の6つの選択的膜安定化剤とチアミンとの同時処方または同時配合は、これらの患者に有用でありうる。特に、我々は、チアミンの相補的なエネルギー促進の役割および膜安定化剤と一緒のその抗酸化剤効果は、明らかな利点を供すると信ずる。
【0063】
アルコール性肝炎では、少なくとも3つの病理学上の作用が働いている。第一に、アルコールそれ自身は、膜がフリーラジカルにより損傷を受ける酸化反応を引き起す。透過可能な膜を通して水およびイオンの流入により引き起される結果としての細胞膨張は、細胞膨張および相対的な低酸素症を作り出す。さらに、慢性アルコール性肝臓疾患を有する人々は、頻繁に、栄養的に欠乏しており、その結果、チアミン欠乏は、ミトコンドリアの効率を損なう。これらの患者についての最良の治療は、チアミンの投与を含めた適切な栄養と共に、アルコールの排除である一方で、抗酸化剤およびミトコンドリアのカルシウム阻害の両方を有する肝臓選択的膜安定化剤の使用は、一次処置に補足的である。その剤は、単一療法として処方されるか、チアミンと同時処方されるか、または両方の剤を、肝臓選択的製剤として一緒に投与されうるようにチアミンと同時処方される。
【0064】
門脈の高血圧および肝硬変を有する患者では、即時治療は、根本的な原因となる肝臓疾患の修正であり、そしてその後の、門脈の流れに対する血管抵抗の減少、またはプロパノロールまたは他の非選択的ベータ・アドレナリン遮断薬を用いた門脈の流れの即時減少である。したがって、抗酸化剤およびミトコンドリアのカルシウム阻害の両方を有する肝臓選択的膜安定化剤は、この一次処置に補足的である。その剤は、単一療法として処方されるか、またはプロプラノロールと同時処方されうる。
【0065】
中毒性肝炎、免疫肝炎、および全身化学療法の過程の間の肝臓に対する損傷を含めた他の形態の肝臓疾患で、細胞内外の両方からの酸化剤およびフリーラジカルによる肝細胞の細胞膜への攻撃は、その疾患の本質的病理学上の機構である。これは、次に、細胞を膨張させ、細胞およびミトコンドリア中のフリーラジカル生成の第二段階で、低酸素症を誘発する。
【0066】
放射線療法は、フリーラジカルも生成する。これは、肝臓が、必然的に、または意図的にのいずれかで照射されるときに、癌を有する臓器で標的にされる重要な機構でありうる一方で、門脈血による低圧灌流を伴う正常な生理機能は、臓器を、特に、低酸素症および機能の破壊の危機にさらす。したがって、肝臓選択的膜安定化剤、または抗酸化剤およびミトコンドリアのカルシウム阻害の両方を伴う剤は、薬剤または毒素排除、免疫疾患の管理、全身化学療法を用いた治療、または放射線療法の後に補足的である。
【0067】
加齢しつつある肝臓では、肝臓の酸化特性の減少があり、その結果、肝臓がそれ自身を食事における天然に生じる酸化効果から保護することがほとんどできない。ミトコンドリアおよび細胞質機能の両方を含むこれらの変化は、肝臓を、さらに細胞膨張、控え目な低酸素症および損傷を受けた機能の危機にさらす。したがって、肝臓選択的膜安定化剤、あるいは抗酸化剤およびミトコンドリアのカルシウム阻害の両方を伴う剤は、肝機能にあらゆる程度の損傷を受けた高齢の患者での肝機能を維持するのを助けるために加齢しつつある肝臓の管理のための有用な治療である。
【0068】
単一療法として投与されるか、他の剤と同時処方されるか、または他の剤と同時配合される抗酸化剤効果、ミトコンドリアのカルシウム阻害、および抗ホスホリパーゼ活性を有する膜安定化剤のこの保護効果は、細胞膜におけるフリーラジカルの酸化効果、リソリン脂質の連続生成、および細胞膜の総体的破壊を防止または減じる。この方法で、低酸素症の間フリーラジカルに傷つきやすい肝細胞の細胞膜は、ナトリウムと水との両方に対してそれらの相対的不透過性を保有し、その結果として、細胞膨張が少なく、そして低酸素症の進行が少ない。さらに、透過性の保持およびミトコンドリアのカルシウム阻害の効果は、細胞をカルシウム過負荷およびミトコンドリアの機能が損傷をうけることから保護し、その結果、ミトコンドリア内のフリーラジカル生成の阻害、および未処置の低酸素症の肝細胞でより肝細胞の代謝機能のいっそうの保護がある。
【0069】
ジルチアゼムおよびチアミンの相互作用
細胞膜(ジルチアゼム)および細胞質ゾル(チアミン)内のジルチアゼムおよびチアミンの抗酸化剤効果は、付加的であり、そしておそらく独立であると思われる。
【0070】
薬剤が、健康における効果をほとんど、またはなんら示さないようであるが、しかしジルチアゼムの効果は、カルシウム過負荷の間活性化されるので、様々な状況が、ミトコンドリア内で起こる。対照的に、チアミンは、正常なミトコンドリア内で作用するが、ミトコンドリア内のカルシウム濃度が上昇するとき、阻害されるか、または効果がないように見える。したがって、ミトコンドリアのカルシウム含有量におけるジルチアゼムの保護効果により、チアミンの効果は、疾患状態の間に作用し続けることが可能になる。したがって、ミトコンドリア内のジルチアゼムおよびチアミンの効果は、相乗的であるか、または有効である。
【0071】
罹患した肝細胞におけるジルチアゼムおよびチアミンの組合せは、少なくとも4つの方法で作用する。全細胞におけるそれらの抗酸化剤効果は、付加的である。それらのミトコンドリア内効果は、相乗的であるか、または有効である。対になった細胞およびミトコンドリア効果は、相補的と見なされうる。
【0072】
徐放のための製剤
経口で投与される製剤からの活性な医薬品の徐放を有効にする多くの技術がある。これらの方法は、カプセル、錠剤、または他の媒体の崩壊を遅延することが意図される技術、カプセル、錠剤、または他の媒体の溶解性を遅延することが意図される技術、および活性剤が、その物質が重合体または他の大型分子から放出されるまで吸収が起こりえないように重合体または他の大型分子に結合されうる技術を含みうる。徐放のこのような様々な方法を達成する手段は、多様であり、そしてシェラック・コーティングの層のような周知の古い方法、そして合成およびセルロース重合体を使用するか、または少なくとも1つの孔を有する膜被覆剤を供するより現代的な技術を含む。
【0073】
本発明による投与形態は、放出制御投与形態でありうる。これらの投与形態の放出の機構は、拡散および浸食によって制御されうる。いくつかの実施態様では、その製剤は、重合体で被覆されたマルチ微粒子、重合体で被覆された錠剤またはミニ錠剤、または親水性マトリックス錠剤を含む。
【0074】
肝臓保護剤として作用するように設計された膜安定化薬剤の徐放製剤は、投与に続いて約6から約24時間の期間をかけて薬剤を放出するように設計され、それにより、日に1回の投与を可能にし、そして肝臓へのその薬剤の継続露出を供しうる。いくつかの実施態様では、長期間かけて薬剤を放出する製剤は、時間適用範囲に影響する1回より多い放出成分を有しうる。
【0075】
本発明は、徐放製剤として投与される膜安定化剤の低用量(50mg/日より少ない用量でのジルチアゼムを含めた)の保護効果が、血管でよりむしろ肝臓それ自身における直接保護効果によってもたらされること、その薬剤が、細胞を貫通し、そしてリン脂質酸素添加の損傷影響から細胞膜およびミトコンドリアの両方を保護する親油性抗酸化剤として作用すること、そしてそれは、ミトコンドリアのカルシウム拮抗薬として作用するという所見に関連する。
【0076】
徐放組成物は、ジルチアゼムの用量が、1日当たり20から70mgまでの範囲内に減じられるという例外を伴って、心臓血管疾患の治療のために先に報告された型のものでありうる。上で検討されるとおり、徐放組成物は、好ましくは、1日当たり1から20mgまで、好ましくは1日当たり1−5mgの量でチアミンも含みうる。組成物は、1日1回投与、毎日2回投与またはそれ以上の頻度として設計されうるが、1日1回の投与が特に好ましい。
【0077】
米国特許番号第4,721,619号、第4,891,230号、第4,917,899号および第5,219,621号は、12時間毎に1回(すなわち、1日2回)投与を必要とすることを意味するジルチアゼム製剤を開示する。米国特許番号第4,894,240号および第5,002,776号は、24時間毎に1回(すなわち、1日1回)投与を必要とすることを意味するジルチアゼム製剤を開示する。これらの特許に開示される溶解特性を得るために、開示された製剤は、中心コアを被覆する多層膜、および活性コア中におよび/または多層膜中に有機酸を必要とする。これらの特許で開示される適切な有機酸は、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸および酒石酸である。マリオン・メレル・ダウ・インク.によって発行される専門家利用情報によれば、CARDIZEM.RTM.CDジルチアゼムカプセル剤は、1日当たり1カプセルの指示投与量で、120、180、240または300mg塩酸ジルチアゼムを含有する持効性ジルチアゼム・カプセルである。同様に、24時間ジルチアゼム放出特性を得るために、CARDIZEM.RTM.CDジルチアゼムカプセル中のペレットは、フマル酸、有機酸、および中心コアを被覆する多層膜を含む。前述の特許によれば、ペレットは、被覆プロセスの間および後で、相当数の時間乾燥されなければならない。
【0078】
本発明のプロセスでの用途のために適合されうる別のアプローチは、24時間の期間かけて、ジルチアゼムの均一な放出を供するジルチアゼムの短い遅滞と長い遅滞のペレットの組合せを使用する米国特許第5834024号(Heinickeら)で記述される。
【0079】
本発明の組成物の1つの実施態様では、徐放組成物は、ジルチアゼムおよび1つまたはそれより多くの重合体被覆剤を含有するコアを含む。コアは、チアミン成分を含有してもよく、そして含有するのが好ましい。コアは、例えば、糖球体のような不活性材料の種の上に形成されうる。ヒドロキシプロピルセルロースのような医薬上許容しうる結合剤は、コアに使用しうる。1つまたはそれより多くの被覆剤は、ジルチアゼムおよび水に透過性である重合体、およびジルチアゼムおよび水に比較的透過性が低い重合体を包含しうる。
【0080】
ジルチアゼム透過性重合体の例は、ユードラジット(EUDRAGIT)RL(ローム・ファルマ・ジーエムビーエイチ(Rohm Pharma GmbH)によって製造された)エチレンセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース(低、中程度または高い分子量)、セルロース・アセテート・プロピオネート、セルロース・アセテート・ブチラート、セルロース・アセテート・フタレート、セルロース・トリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルイソブチルエーテル)、ポリビニルアセテート)、ポリビニルクロリド)、またはポリウレタンまたはこれらの内のいずれかの2種またはそれより多くの混合物として知られる低含有量の4級アンモニウム基を有するアクリル酸およびメタクリル酸エステルから合成された陽イオン性重合体である。水およびジルチアゼムに透過性が低い適切な天然に生じる重合体または樹脂は、シェラック、キトサン、ガムジュニパーまたはこれらの内の2種またはそれより多くの混合物を含む。
【0081】
ジルチアゼムおよび水に透過性が低い、使用されうる物質は、ユードラジット(EUDRAGIT)RS(ローム・ファルマ・ジーエムビーエイチ(Rohm Pharma GmbH)によって製造された。ユードラジットRSは、アンモニウム基をほとんど有しないので、ユードラジットRSは、ユードラジットRLより透過性が低い)エチレンセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース(低、中程度または高分子量)、セルロース・アセテート・プロピオネート、セルロース・アセテート・ブチラート、セルロース・アセテート・フタレート、セルロース・トリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルイソブチルエーテル)、ポリビニルアセテート)、ポリビニルクロリド)またはポリウレタン、またはこれらの内のいずれかの2種またはそれより多くの混合物として知られる陽イオン性重合体を含む。水およびジルチアゼムに透過性が低い適切な天然に生じる重合体または樹脂は、シェラック、キトサン、ガムジュニパーまたはこれらの内の2種またはそれより多くの混合物を含む。
【0082】
その重合体に加えて、被覆剤層は、潤滑剤および湿潤剤を含む。好ましくは、潤滑剤は、タルクであり、そして湿潤剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0083】
ラウリル硫酸ナトリウムとして適切な代替物は、アカシア、ベンザルコニウムクロリド、セトマクロゴル乳化ワックス、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、ドキュセートナトリウム、ステリン酸ナトリウム、乳化ワックス、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ラノリンアルコール、レシチン、鉱油、モノエタノールアミン、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート、プロピレングリコールアルギネート、ソルビタンエステル、ステアリルアルコールおよびトリエタノールアミン、または前述のいずれか2種またはそれより多くの混合物のような剤が挙げられる。
【0084】
被覆剤に含まれうるタルクについての適切な代替物は、ステアリン酸カルシウム、コロイド性二酸化シリコン、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポリエチレングリコール、およびステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムまたは前述のいずれか2種またはそれより多くの混合物である。
【0085】
可塑剤は、好ましくは、重合体膜の弾性および安定性を改善し、そして長期間貯蔵にわたって、重合体透過性における変化を防止するために被覆剤中に含まれる。このような変化は、薬剤放出速度に影響を及ぼしうる。適切な従来の可塑剤としては、アセチル化モノグリセリド、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、ひまし油、クエン酸エステル、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、ジエチルオキサレート、ジエチルマレート、ジエチルフマラート、ジエチルフタレート、ジエチルスクシネート、ジエチルマロネート、ジエチルタータレート、ジメチルフタレート、グルセリン、グリセロール、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリブチラート、鉱油およびラノリンアルコール、ワセリンおよびラノリンアルコール、フタル酸エステル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、菜種油、ごま油、トリアセチン、トリブチルシトレート、トリエチルシトレート、およびトリエチルアセチルシトレート、または前述のいずれか2種またはそれより多くの混合物が挙げられる。トリエチルシトレートは、目下好ましい可塑剤である。
【0086】
代わりに、またはさらに、コアまたは被覆剤は、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびフマル酸のような有機酸を包含しうる。
【0087】
放出制御の代替方法は、膜がそこに少なくとも1つの孔を有する活性剤を含むコアの周囲に膜被覆剤を使用することである。このような配列は、Chenらにより、米国特許第6,866,866号で、1日1回用量のためのメトホルミンの徐放を供することについて記述される。Chenらは、米国特許第6,524,620号で、肝臓疾患の治療のための本発明の低用量組成物で利用されうるジルチアゼムについての徐放製剤も記述する。
【0088】
本発明は、ここで、以下の実施例に関連して記述される。実施例が、本発明の例示の手段として供されること、そしてそれらは、決して本発明の範囲を制限しないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0089】
実施例1
インビトロ研究 ジルチアゼムの肝臓保護効果
細胞膜におけるジルチアゼムの保護効果を、3週齢メス子豚の肝臓から得た子豚の肝臓のミクロソーム膜で実験した。ミクロソーム:分画を、1時間、37℃で、血管活性D−ジルチアゼム、または血管不活性L−ジルチアゼム(0−1000μM)のいずれかで、続いてフリーラジカルジェネレーターAAPH(2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド)の1時間で処理した。インキュベーションに続いて、ミクロソーム混合物を、2000rpmで遠心分離して、過剰のAAPHおよびジルチアゼムを除去した。その後、ミクロソーム膜中の反応性酸素種介在脂質過酸化の範囲を、蛍光標識ジクロロフルオレッセン(DCF、15分間10μ)を使用して測定した。画像解析。画像解析から得られた結果は、AAPHで誘発されるフリーラジカル放出におけるDCF活性での減少によって示されるとおり、L−ジルチアゼムでなくD−ジルチアゼムが、膜酸化の用量依存阻害を生じることを示した。
【0090】
【表1】

【0091】
発明者によって委託され、そしてジ・ユニバーシティー・オブ・ウイニペグのエフ・バーツインスキー博士によって請け負われたこれらの研究は、ジルチアゼムが、その血管の薬理学上の特性とは別個である肝臓保護特性を示すことを示唆する。フリーラジカルジェネレーターとしてHを使用する平行研究では、ジルチアゼムは、保護的でなかった。Hは、親油性膜で、またはその付近でよりむしろ細胞質ゾル(親水性相)で作用すると結論付けられた。
【0092】
実施例2
ジルチアゼム+チアミンの肝臓保護効果
肝性肝臓ミクロソームを、先に記述されるとおりの4匹の健全な子豚から得た。研究のために必要とされるまで、ミクロソームを、−80℃で保存した。ミクロソームの濃度は、1mg/mlであった。ジルチアゼム濃度は、50および500μMであった。試験されたチアミン濃度は、10、50および100μMを含んだ。フリーラジカルジェネレーターAAPHは、1mMであった。その研究は、我々の先の報告で記述されるとおり、プレートリーダーにより染料DCFHの蛍光活性を解析することによって、肝臓の脂質過酸化産物を検出した。
【0093】
DCF−DAを、2時間、2M NaOHおよびMeOHで処理し、そしてその時間の後、製造業者により示されるとおり、それを、HClで中和して、細胞内形態のDCFHを得た。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して、肝臓のミクロソームを、1mg/mlに希釈した。ミクロソームを、1時間、37℃で、種々の濃度のジルチアゼム、チアミンまたは組合せでインキュベートした。対照ミクロソームを、PBS(薬剤処置なし)でインキュベートした。その後、ミクロソームの混合液を、1時間、1mM AAPHでインキュベートして、37℃で、1時間、フリーラジカルで誘発される脂質過酸化を開始させた。インキュベートに続いて、ミクロソーム混合物を、5000 MWCO超遠心管を使用して、2000rpmで遠心分離し、そしてその手段を、PBSを用いて2回繰り返して、全てのAAPHおよび薬剤を除去した。脂質過酸化されたミクロソームを、15分間、10μM DCFHでインキュベートし、そして蛍光活性を、蛍光プレート読取装置を使用して記録した。
【0094】
表1は、全ての研究から得られる結果(n=6)を示す。具体化されたミクロソームへのチアミンの添加は、蛍光活性を減じた(すなわち、フリーラジカル放出を抑制した)。総体的に、チアミンへのジルチアゼムの添加は、蛍光活性のさらなる減少を生じた(p<0.05)。活性における減少は、低および高用量のジルチアゼムで顕著であった。ジルチアゼムの添加は、蛍光活性に大きな減少を生じ、その減少は、付加的であるように見えた。
【0095】
【表2】

これらの研究は、ジルチアゼムおよびチアミンが、細胞の細胞質ゾルおよびミクロソーム膜で作用する単離肝細胞における付加的抗酸化剤および保護効果を示すことを示唆する。
【0096】
実施例3
ミトコンドリアにおけるジルチアゼム+チアミンの肝臓保護効果
ミトコンドリアの懸濁液における研究は、エネルギー生産におけるジルチアゼムおよびチアミンの組合せの効果を試験するために始められうる。
【0097】
ラットのミトコンドリアの懸濁液を、酸素生成を刺激するADPの能力を測定することによって、それらの完全な状態を決定するために試験する。別の対照研究として、ミトコンドリアにおけるATPの生成も試験しうる。
【0098】
灌流液中のカルシウム濃度を増大させることによって、疾患に罹患した細胞を、シミュレートしうる。ジルチアゼムが、疾患に罹患した細胞におけるエネルギー生産が改善されることを促進することを示すために、チアミンおよびジルチアゼムの各々の効果の試験を、個別に、および組合せで行いうる。実際に、組合わせた使用は、チアミンが、疾患を罹患した細胞のミトコンドリアに効果的でない場合に、相乗効果を供すると思われる。
【0099】
実施例4
患者における肝臓保護効果
以下の臨床プロトコールを使用して、低用量、徐放のジルチアゼムの肝臓保護効果を研究および実証しうる。
【0100】
臨床プロトコール
抗ウイルス療法で治療されていなかったか、またはリバビリンと共に、またはなしにインターフェロンでの治療に応答しなかった、C型肝炎を有する10名またはそれより多くの患者を、研究に召集して、徐放製剤中の25mgおよび50mgのジルチアゼムの効果を実験する。各患者は、ALT(アミノ−アラミン−トランスフェラーゼ)の上昇した血漿濃度によって立証されるとおり、安定であるが、異常な肝臓機能試験を示すにちがいない。HIV感染を示さないか、または明らかなアルコール摂取問題がある患者に優先すべきである。各製剤は、14日間、1日1回用量として与えられる。
【0101】
肝臓における低用量、徐放性のジルチアゼムの肝臓保護効果は、ALT濃度における変化を評価することによって、客観的に、そして疲労および生活状態に関して患者の症状を評価することによって、主観的に、測定される。公式の臨床治験では、後者は、生活の質を評価する適切な質問と共に、二重盲検−擬薬対照研究を必要とする。
【0102】
臨床調査員の自由裁量で、研究は、患者が、14日の処置の終わりに、1日当たり25mgから1日当たり50mgまでに投与量を増大することを許可する。しかし、高用量で大きな効果を予想するよりむしろ、これらの用量の間の量的差の効力は、いっそう、門脈の流れのいっそう厳しい制限が、肝臓内に高濃度の薬剤を作り出す疾患の個々の重篤度の関数であり、そしてそれゆえ、低用量を使用する機会でありそうである。
【0103】
ジルチアゼムの25mおよび50mgの肝臓選択的製剤が、正常に向かってALT濃度を低下させること、そして患者は、彼らの肝機能が改善するときに、倦怠および疲労が少ないことを示すことが予想される。
【0104】
同時処方および組合せ療法
抗酸化剤効果とミトコンドリアのカルシウム阻害の両方を有する肝臓選択的膜安定化剤(ジルチアゼムのような)の使用は、補完療法であるので、そのような薬剤の肝臓選択的製剤は、頻繁に、ウイルス性肝炎の治療において抗ウイルス処置(リバビリンのような)と、アルコール性肝炎の場合にはチアミン、または門脈高血圧の場合にはプロプラノロールと同時処方される。
【0105】
実施例5
カルシウム・チャネル・ブロッカーおよび比較的親水性の抗酸化剤の放出制御製剤
以下の放出制御製剤を、製剤しうる。
コア
薬剤成分:ジルチアゼム(20から70mgまで)チアミン(1から20mgまで)の2から70%w/wの混合物
結合剤:3から98重量%まで

被覆剤
膜重合体:50から99%まで
灌流促進剤:0から40%まで
可塑剤:0から30%まで
【0106】
実施例6
12時間かけての放出のための以下の低用量の徐放製剤を、米国特許第5,834,024号の方法によって製剤しうる。
コア
ジルチアゼム:30mg
チアミン:3mg
ヒドロキシプロピルセルロース3.5g
糖球体28g

被覆剤
ユードラジッドRL:0.5g
ユードラジッドRS:6.8g
トリエチルシトレート 0.7g
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2g
タルク 4.1g
【0107】
実施例7
以下の徐放カプセル製剤を、米国特許第6,074,669号の方法によって製剤しうる。
成分 mg/カプセル
塩酸ジルチアゼム 40
チアミン2ユードラジッドL−100 65
メトセルK−100−M 175
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−M) 125
ラクトース 100
ステアリン酸マグネシウム 7
エアロジル 8
総量 720
【0108】
実施例8
米国特許第5,616,345号の方法によって、以下の方法を使用して、ジルチアゼムとチアミンとの制御された放出製剤を製剤しうる。
【0109】
塩酸ジルチアゼム(250g)、塩酸チアミン(25g)アジピン酸(0.5kg)およびタルク(0.100kg)を混合し、均質な粉末を得るために、50番のメッシュスクリーンを通して粉砕する。
【0110】
イソプロパノール中の10%ポリビニルピロリドン80重量部
イソプロパノール中の5%エチルセルロース20重量部
の被覆剤溶液を使用して、標準被覆鍋中で、粉末を、スターチ/糖の種(直径0.6−0.71mm)(0.5kg)に塗布しうる。
【0111】
種を、確定した体積の被覆剤溶液で被覆し、次に、確定した体積の粉末ミックスのものを振りかける。被覆された種を、乾燥させ、そして粉末の全てが、塗布されるまで、被覆段階を繰返す。活性コアの形を定める被覆された種を、その後、一夜乾燥させて、全ての微量の溶媒を除去する。
その後、製剤されるべきペレットの活性コアは、
イソプロパノール中の5%エチルセルロース90重量部
イソプロパノール中の5%ポリビニルピロリドン10重量部
より構成される膜溶液によって包まれうる。
【0112】
膜溶液の各被膜は、1kgの被覆された種当たり5mlの溶液を包含しうる。
【0113】
資料
Angulo P、Patel T、Jorgensen RA、Therneau TM、Lindor KD
「ウルソデオキシコール酸に対して次善の応答で一次胆汁性肝硬変を有する患者の治療におけるシリマリン」
Hepatology 32巻:897−900頁、2000年 解説にて:Hepatology33巻:483−4頁、2001年。

Bass NM.
「慢性肝臓疾患を有する患者における伝統的でないか、または代替的な療法についてなんらかの用途があるのか。」
Curr Gastroenterol Rep 1巻:50−6頁、1999年。
Draper DW、Harris VG、Culver CA、Laster SM。
「シクロヘキサミドによるTNFで誘発されるアポトーシスに感受性にさせた細胞中の細胞質ゾルのホスホリパーゼA(2)の核転位および活性化におけるカルシウムおよびそれの役割」
J.Immunol.172巻:2416−23頁、2004年。

Flora K、Hahn M、Rosen H、Benner K。
「肝臓疾患の療法についてのオオアザミ(シリブム・マリアヌム(Silybum marianum))」
Am J Gastroenterol 93巻:139−43頁、1998年、解説で:Am J Gastroenterol 94巻:545−6頁、1999年

Jain SK、Pemberton PW、Smith A、McMahon RF、Burrows PC、Aboutwerat A、Wames TW.
「慢性C型肝炎における酸化ストレス:後期段階の疾患の特色のみでない」
J Hepatol 36巻:805−11頁、2002年。

Kontorinis NおよびDieterich D.
「抗レトロウイルス療法の肝毒性」
AIDS Rev.5巻:36−43頁、2003年。

Levy S、Herve C、Delacoux EおよびErlinger s.
「C型肝炎ウイルスおよびアルコール関連肝臓疾患におけるチアミン欠乏」
DJg Pis Sci 47巻:543−8頁、2002年。

Loguercio C、Federico A.
「ウイルス性およびアルコール性肝炎における酸化ストレス」
Free Radic Biol Med.34巻:1−10頁、2003年。

Lukienko PI、Mel’nichenko NG.Zverinskii IVおよびZabrodskava SV
「チアミンの抗酸化剤特性」
Bull Exp Bio Med 130巻:874−6頁、2000年。

McLean AJ.
「肝臓疾患を治療する方法および血管拡張剤を用いた類似の指示」
米国特許第5,854,233号、1998年12月29日

Novikov KN、Herrera M、Pascual C、Gonzalez R。
「ラットの肝臓ミクロソーム系における薬剤の抗酸化活性」
Nauchnve Doki Vvss Shkoly Biol Nauki.12巻:19−27頁、1991年。

Patrick L。
「C型肝炎:疫学および補完/代替的医薬品治療の検討」
Altern Med Rev 4巻:220−38頁、1999年。

Smith HJ.
「ベータ−アドレナリン作動性受容体拮抗薬の膜安定化活性を再定義する必要性」
J Mol Cell Cardiol.14巻:495−500頁、1982年。

Spalletti−Cernia D、D’Agnano I、Sorrentino、R.Zupi,G、Vecchio G、Portella GおよびLaccetti P。
「ベラパミルは、細胞膜およびミトコンドリアの膜貫通電位を変えることによるKi−ras形質転換された細胞における薬剤誘導アポトーシスに対する耐性を戻す」
Oncol Res.13巻:25−35頁、2002年。

Thurman RG、Apel ED、Lemasters JJ.
「エタノール処理したラットから得た灌流肝臓における低酸素外傷に対するニトレンジピンの保護効果」
J Cardiovasc Pharmacol 12巻(補追4)、S113−6頁、1988年。

Vaidya AB、Antarkar DS、Doshi JC、Bhatt AD、Ramesh V、Vora PV、Perissond D、Baxi AJ、Kale PM。
肝臓保護剤としてのピクロリザ・クロア(Picrorhiza kurroa)(クタキ(Kutaki))ロイルからベンス−実験および臨床研究」
J Postgrad Med 42巻:105−8頁、1996年。

Vargas F、Cheng AT、Velutini G、Marcano E、Sanchez Y、Fraile G、Velasquez M。
「ジピリダモールのインビトロの抗酸化剤および光酸化剤特性」
Int J Toxicol.20巻:363−8頁、2001年。

Wallace AEおよびWeeks WB.
「慢性B型肝炎感染のチアミン治療」
Am J Gastroenterol 96巻:864−8頁、2001年。

Wilson,JD.「ビタミン欠乏および過剰」、マクローヒル、公衆衛生専門部門により出版されたハリソンの内科医療の原理、1998年(内)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)抗酸化剤効果を有する比較的親油性のカルシウム・チャネル・ブロッカーの経口徐放製剤、および(ii)抗酸化剤であり、前記カルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合に比較的親水性であるチアミン、の投与を含む、肝臓疾患を罹患している対象の治療の方法。
【請求項2】
心臓血管疾患の治療のために処方される用量の半分未満である日用量で、前記カルシウム・チャネル・ブロッカーを投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記徐放製剤は、門脈中の臨床上有効な血中濃度を供するのに十分で、そして末梢循環中で臨床上有効な濃度を供するために要求されるより少ない送達速度を供して、それにより、当該肝臓における選択効果を示す送達速度を供する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カルシウム・チャネル・ブロッカーが、ジルチアゼム、ベラパミル、アムロジピンおよびニトレンジピンより構成される群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルシウム・チャネル・ブロッカーが、ジルチアゼムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カルシウム・チャネル・ブロッカーが、1日当たり20から70mgまでの量で投与されるジルチアゼムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カルシウム・チャネル・ブロッカーが、1日当たり50mg未満の量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ジルチアゼムの日用量が、20から70mgまでの範囲内にあり、そしてチアミンの日用量が、1から20mgまでの範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カルシウム・チャネル・ブロッカーが、1日当たり20から50mgまでの用量で投与されるジルチアゼムであり、そして前記比較的親水性の抗酸化剤が、1日当たり1から5mgまでの用量で投与されるチアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ジルチアゼムとチアミンを含む徐放出組成物を投与することを含む、肝臓疾患の治療の方法。
【請求項11】
ジルチアゼム対チアミンの比が、80:1から5:1までの範囲内にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、20から80mgまでの範囲内にあるジルチアゼムの日用量、および1から20mgまでの範囲内にあるチアミンの日用量を供するために投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、中毒性肝炎、ウイルス性肝炎のような感染により引き起される肝炎、および慢性炎症によって特徴づけられる免疫学上の肝臓疾患より構成される群から選択される肝臓疾患に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記肝臓疾患が、急性または慢性薬剤療法の副作用としての中毒性肝炎である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(i)抗酸化剤効果を有する比較的親油性のカルシウム・チャネル・ブロッカー、および(ii)前記カルシウム・チャネル・ブロッカーと比較した場合に、比較的親水性である抗酸化剤であるチアミン、を含む放出制御組成物の形態で肝臓疾患の治療または予防するための医薬組成物。
【請求項16】
前記カルシウム・チャネル・ブロッカーが、ベラパミル、ジルチアゼム、およびそれの混合物から選択され、そして前記比較的親水性の抗酸化剤が、チアミンである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記放出制御製剤は、門脈中の臨床上有効な血液濃度を供するのに十分で、そして末梢循環中で臨床上有効な濃度を供するために要求されるより少ない用量送達速度を供して、それにより、当該肝臓における選択効果を示す送達速度を供する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が、20から70mgまでのジルチアゼムおよび1から20mgまでのチアミンの単位投与量を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
20から70mgまでのジルチアゼムの一日の投与量、および1から5mgまでの範囲にあるチアミンの一日の投与量を供するための、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
ジルチアゼムの平均日用量が、20から50mgまでの範囲内にある、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
リバビリンおよびインターフェロンより構成される群から選択される1つまたはそれ以上のさらなる活性剤をさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記放出制御組成物が、高分子化合物で被覆されたマルチ微粒子、高分子化合物で被覆された錠剤、高分子化合物で被覆されたミニ錠剤、および親水性マトリックス錠剤より構成される群から選択される形態にある、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項23】
カプセル、錠剤またはカプレットの形態にある、請求項15に記載の医薬組成物。


【公表番号】特表2007−533667(P2007−533667A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508672(P2007−508672)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000561
【国際公開番号】WO2005/102353
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506049091)ハワード ジェイ. スミス アンド アソシエイツ ピーティーワイ エルティーディー (2)
【氏名又は名称原語表記】HOWARD J. SMITH & ASSOCIATES PTY LTD
【住所又は居所原語表記】5 Anthlin Court, Templestowe, Victoria 3106 (AU)
【Fターム(参考)】