説明

胃内滞留および制御放出型送達系

本発明は、薬学的に許容できる活性剤および送達剤を含有する、胃内滞留型送達系および制御放出型組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2005年2月1日に出願した米国仮出願第60/649436号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、送達剤化合物を含む、胃内滞留および/または制御放出型送達系を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物を送達する従来の手段は、生物学的、化学的、および物理学的バリヤによりしばしば厳しく制約される。通常、これらのバリヤは送達が行われる環境、送達の標的の環境、および/または標的それ自体により課せられる。物理的バリヤの例には、皮膚、脂質二重層、ならびに、循環系などの、いくつかの薬物に対し比較的不透過性であるが、標的に到達するまでに越えなければならない種々の器官膜が含まれる。化学的バリヤには、胃腸(GI)管内のpH変動、および分解酵素が含まれるがそれらに限定されない。これらのバリヤは、経口送達系を設計するのに特に重要である。多くの薬物を経口送達するには、この薬物を別の経路によって投与する場合よりも大量の薬物を投与する必要がある。
【0004】
これらの物理的バリヤの他に、活性剤が吸収される部位に関するバリヤがある。いくつかの薬剤は、胃内または小腸内でしか吸収されず、またこれらの領域内における粒子の通過は、粒径、剤形(例えば液体、マイクロカプセル化したもの)、または食物の存在にかかわらず一般に3〜5時間以内に完了する。この通過時間は、治療的な量の活性剤の吸収を促進する機会のウィンドウを提供できるが、それはあまりに短いものである。このような薬剤では、頻繁な投与、患者および臨床医に対する不便および出費を要し、そのためしばしば患者の非順守、および治療の失敗を招く。
【0005】
制御放出型剤形により、通常、活性剤の延長された放出、および一定の活性剤送達速度がもたらされる。しかし、活性剤を胃、十二指腸、または小腸などの標的部位に送達させていることがしばしば好ましいことである。
【0006】
先行特許および公開出願は、延長された時間的期間胃内に保有されるいくつかの製剤を記述している。例えば米国特許第6797283号、米国特許第4851232号、米国特許第4871548号、米国特許第4767627号、米国特許第5443843号、米国特許第5007790号、米国特許第5582837号、国際公開出願WO99/07342、米国特許第4290426号、米国特許第5256440号、米国特許第4839177号、米国特許第5780057号、米国特許第5534263号、ならびに米国特許第3845770号、第3995631号、第4034756号、第4111202号、第4320755号、第4327725号、第4449983号、第4765989号、第4892778号、第4940465号、第4915949号、および第5126142号を参照されたい。それぞれのこれらの特許および出願は、参照により本明細書に組み込まれている。
【特許文献1】米国仮出願第60/649436号
【特許文献2】米国特許第6797283号
【特許文献3】米国特許第4851232号
【特許文献4】米国特許第4871548号
【特許文献5】米国特許第4767627号
【特許文献6】米国特許第5443843号
【特許文献7】米国特許第5007790号
【特許文献8】米国特許第5582837号
【特許文献9】国際公開出願WO99/07342
【特許文献10】米国特許第4290426号
【特許文献11】米国特許第5256440号
【特許文献12】米国特許第4839177号
【特許文献13】米国特許第5780057号
【特許文献14】米国特許第5534263号
【特許文献15】米国特許第3845770号
【特許文献16】米国特許第3995631号
【特許文献17】米国特許第4034756号
【特許文献18】米国特許第4111202号
【特許文献19】米国特許第4320755号
【特許文献20】米国特許第4327725号
【特許文献21】米国特許第4449983号
【特許文献22】米国特許第4765989号
【特許文献23】米国特許第4892778号
【特許文献24】米国特許第4940465号
【特許文献25】米国特許第4915949号
【特許文献26】米国特許第5126142号
【特許文献27】米国仮出願第60/619418号
【特許文献28】米国仮出願第60/569476号
【特許文献29】米国特許第5650386号
【特許文献30】国際公開出願WO00/46182
【特許文献31】国際公開出願WO00/59863
【特許文献32】国際公開出願WO03/057650
【特許文献33】米国特許第6,699,467号
【特許文献34】米国特許第6,663,898号
【特許文献35】米国特許第6,693,208号
【特許文献36】米国特許第6,693,073号
【特許文献37】米国特許第6,693,898号
【特許文献38】米国特許第6,663,887号
【特許文献39】米国特許第6,646,162号
【特許文献40】米国特許第6,642,411号
【特許文献41】米国特許第6,627,228号
【特許文献42】米国特許第6,623,731号
【特許文献43】米国特許第6,610,329号
【特許文献44】米国特許第6,558,706号
【特許文献45】米国特許第6,525,020号
【特許文献46】米国特許第6,461,643号
【特許文献47】米国特許第6,461,545号
【特許文献48】米国特許第6,440,929号
【特許文献49】米国特許第6,428,780号
【特許文献50】米国特許第6,413,550号
【特許文献51】米国特許第6,399,798号
【特許文献52】米国特許第6,395,774号
【特許文献53】米国特許第6,391,303号
【特許文献54】米国特許第6,384,278号
【特許文献55】米国特許第6,375,983号
【特許文献56】米国特許第6,358,504号
【特許文献57】米国特許第6,346,242号
【特許文献58】米国特許第6,344,213号
【特許文献59】米国特許第6,331,318号
【特許文献60】米国特許第6,313,088号
【特許文献61】米国特許第6,245,359号
【特許文献62】米国特許第6,242,495号
【特許文献63】米国特許第6,221,367号
【特許文献64】米国特許第6,180,140号
【特許文献65】米国特許第6,100,298号
【特許文献66】米国特許第6,100,285号
【特許文献67】米国特許第6,099,856号
【特許文献68】米国特許第6,090,958号
【特許文献69】米国特許第6,084,112号
【特許文献70】米国特許第6,071,510号
【特許文献71】米国特許第6,060,513号
【特許文献72】米国特許第6,051,561号
【特許文献73】米国特許第6,051,258号
【特許文献74】米国特許第6,001,347号
【特許文献75】米国特許第5,990,166号
【特許文献76】米国特許第5,989,539号
【特許文献77】米国特許第5,976,569号
【特許文献78】米国特許第5,972,387号
【特許文献79】米国特許第5,965,121号
【特許文献80】米国特許第5,962,710号
【特許文献81】米国特許第5,958,451号
【特許文献82】米国特許第5,955,503号
【特許文献83】米国特許第5,939,381号
【特許文献84】米国特許第5,935,601号
【特許文献85】米国特許第5,879,681号
【特許文献86】米国特許第5,876,710号
【特許文献87】米国特許第5,866,536号
【特許文献88】米国特許第5,863,944号
【特許文献89】米国特許第5,840,340号
【特許文献90】米国特許第5,824,345号
【特許文献91】米国特許第5,820,881号
【特許文献92】米国特許第5,811,127号
【特許文献93】米国特許第5,804,688号
【特許文献94】米国特許第5,792,451号
【特許文献95】米国特許第5,776,888号
【特許文献96】米国特許第5,773,647号
【特許文献97】米国特許第5,766,633号
【特許文献98】米国特許第5,750,147号
【特許文献99】米国特許第5,714,167号
【特許文献100】米国特許第5,709,861号
【特許文献101】米国特許第5,693,338号
【特許文献102】米国特許第5,667,806号
【特許文献103】米国特許第5,650,386号
【特許文献104】米国特許第5,643,957号
【特許文献105】米国特許第5,629,020号
【特許文献106】米国特許第5,601,846号
【特許文献107】米国特許第5,578,323号
【特許文献108】米国特許第5,541,155号
【特許文献109】米国特許第5,540,939号
【特許文献110】米国特許第5,451,410号
【特許文献111】米国特許第5,447,728号
【特許文献112】米国特許第5,443,841号
【特許文献113】米国特許第5,401,516号
【特許文献114】米国公開出願第20040110839号
【特許文献115】米国公開出願第20040106825号
【特許文献116】米国公開出願第20040068013号
【特許文献117】米国公開出願第20040062773号
【特許文献118】米国公開出願第20040022856号
【特許文献119】米国公開出願第20030235612号
【特許文献120】米国公開出願第20030232085号
【特許文献121】米国公開出願第20030225300号
【特許文献122】米国公開出願第20030198658号
【特許文献123】米国公開出願第20030133953号
【特許文献124】米国公開出願第20030078302号
【特許文献125】米国公開出願第20030072740号
【特許文献126】米国公開出願第20030045579号
【特許文献127】米国公開出願第20030012817号
【特許文献128】米国公開出願第20030008900号
【特許文献129】米国公開出願第20020155993号
【特許文献130】米国公開出願第20020127202号
【特許文献131】米国公開出願第20020120009号
【特許文献132】米国公開出願第20020119910号
【特許文献133】米国公開出願第20020102286号
【特許文献134】米国公開出願第20020065255号
【特許文献135】米国公開出願第20020052422号
【特許文献136】米国公開出願第20020040061号
【特許文献137】米国公開出願第20020028250号
【特許文献138】米国公開出願第20020013497号
【特許文献139】米国公開出願第20020001591号
【特許文献140】米国公開出願第20010039258号
【特許文献141】米国公開出願第20010003001号
【特許文献142】国際公開出願WO2004/4104018
【特許文献143】国際公開出願WO2004080401
【特許文献144】国際公開出願WO2004062587
【特許文献145】国際公開出願WO2003/057650
【特許文献146】国際公開出願WO2003/057170
【特許文献147】国際公開出願WO2003/045331
【特許文献148】国際公開出願WO2003/045306
【特許文献149】国際公開出願WO2003/026582
【特許文献150】国際公開出願WO2002/100338
【特許文献151】国際公開出願WO2002/070438
【特許文献152】国際公開出願WO2002/069937
【特許文献153】国際公開出願WO02/20466
【特許文献154】国際公開出願WO02/19969
【特許文献155】国際公開出願WO02/16309
【特許文献156】国際公開出願WO02/15959
【特許文献157】国際公開出願WO02/02509
【特許文献158】国際公開出願WO01/92206
【特許文献159】国際公開出願WO01/70219
【特許文献160】国際公開出願WO01/51454
【特許文献161】国際公開出願WO01/44199
【特許文献162】国際公開出願WO01/34114
【特許文献163】国際公開出願WO01/32596
【特許文献164】国際公開出願WO01/32130
【特許文献165】国際公開出願WO00/07979
【特許文献166】国際公開出願WO00/06534
【特許文献167】国際公開出願WO00/06184
【特許文献168】国際公開出願WO00/59863
【特許文献169】国際公開出願WO00/59480
【特許文献170】国際公開出願WO00/50386
【特許文献171】国際公開出願WO00/48589
【特許文献172】国際公開出願WO00/47188
【特許文献173】国際公開出願WO00/46182
【特許文献174】国際公開出願WO00/40203
【特許文献175】国際公開出願WO99/16427
【特許文献176】国際公開出願WO98/50341
【特許文献177】国際公開出願WO98/49135
【特許文献178】国際公開出願WO98/34632
【特許文献179】国際公開出願WO98/25589
【特許文献180】国際公開出願WO98/21951
【特許文献181】国際公開出願WO97/47288
【特許文献182】国際公開出願WO97/31938
【特許文献183】国際公開出願WO97/10197
【特許文献184】国際公開出願WO96/40076
【特許文献185】国際公開出願WO96/40070
【特許文献186】国際公開出願WO96/39835
【特許文献187】国際公開出願WO96/33699
【特許文献188】国際公開出願WO96/30036
【特許文献189】国際公開出願WO96/21464
【特許文献190】国際公開出願WO96/12475
【特許文献191】国際公開出願WO9612474
【特許文献192】国際公開出願WO03/045306
【特許文献193】国際公開出願WO96/30036
【特許文献194】国際公開出願WO97/36480
【特許文献195】国際公開出願WO00/06534
【特許文献196】国際公開出願WO00/46812
【特許文献197】国際公開出願WO00/50386
【特許文献198】国際公開出願WO01/32596
【特許文献199】国際公開出願WO00/07979
【特許文献200】米国特許第5643957号
【非特許文献1】T.W.Greene、Protecting Groups in Organic Synthesis、Wiley、New York(1981)
【非特許文献2】Physicians' Desk Reference(58th Ed.、2004、Medical Economics Company,Inc.、Montvale、NJ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
活性剤の経口的医薬製剤であって、胃腸管の領域への、延長されかつ制御された送達を提供する製剤、特に胃内に保有される必要がある、かつ/または、通常は経口経路によると生体内利用ができない薬剤への必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、活性剤と、送達剤化合物と、膨潤性ポリマー、放出制御ポリマー、または粘膜付着剤の少なくとも1種とを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物に組み込むことができる活性剤には、へパリン、インスリン、ヒト成長ホルモン(hGH)、副甲状腺ホルモン、ならびに生物学的に活性なそれらのフラグメント、類似体、および代謝産物が含まれる。膨潤性ポリマーおよび/または粘膜付着剤を含有する医薬組成物は、延長された時間的期間、胃内に保有され、それにより膨潤性ポリマーまたは粘膜付着剤を含まない同様な組成物よりも多くの活性剤を、胃を経由して送達する。送達剤化合物が存在する状態で活性剤は、一般に、胃腸管の他の領域よりも胃内でより良好に吸収されるので、胃内における医薬組成物の滞留は、活性剤の改良された吸収性、およびバイオアベイラビリティーをもたらす。
【0009】
この医薬製剤は、経口投与されることが好ましい。例えば、本発明の医薬製剤は、1日に1回、1週間に1回、または1カ月に1回投与できる。他の実施形態において、本製剤はより頻繁に、例えば1日に2回、1日に3回、または1日に4回投与することができる。
【0010】
本発明の一実施形態は、一方の区画に膨潤性ポリマーが含まれる2区画系を含む経口用医薬製剤を提供する。その第2の区画は活性剤および送達剤を含有し、また活性剤および/または送達剤化合物の放出を遅らせる放出制御ポリマーをさらに含有できる。
【0011】
本発明の一実施形態は、活性剤と、送達剤化合物と、膨潤性ポリマー、粘膜付着剤、および場合によって放出制御ポリマーの少なくとも1種とを含む経口用医薬製剤であって、ヒトにより経口摂取されると、下記:
(a)活性剤の吸収が、投与からおよそ15〜30分後に始まり、投与後少なくとも約1.5時間、約3.0時間、または約6.0時間続くこと、
(b)投与の30以内に胃内にある間に、少なくとも約10〜15%大きさが増加し、または大きさがおよそ2倍になる剤形、
(c)その剤形が胃内に残留する大部分の継続時間の間、持続される活性剤放出プロフィルをもたらすこと、あるいは
(d)少なくとも4時間、6時間、もしくは12時間、または24時間まで胃内に残留し、その間好ましくは実質的に損なわれていないままであること
の1つまたは複数をもたらす製剤を提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、錠剤またはキャプレットなどの二層型製剤である経口用医薬製剤であって、治療有効量活性剤と少なくとも1種の送達剤とを含む製剤を提供する。一方の層は、活性剤、送達剤、および放出制御ポリマー(例えば、分子量約200,000を有することが好ましいポリエチレンオキシド)を含有する。第2層は、膨潤性ポリマー(例えば、分子量約7,000,000を有することが好ましいポリエチレンオキシド)を含有する。種々の実施形態において、この製剤は、ヒトにより経口摂取されると、下記:
(a)活性剤の吸収が、投与からおよそ15〜30分後に始まり、投与後少なくとも約1.5時間、約3.0時間、または約6.0時間続くこと、
(b)投与の30以内に胃内にある間に、少なくとも約10〜15%大きさが増加し、または大きさがおよそ2倍になる剤形、
(c)その剤形が胃内に残留する大部分の継続時間の間、持続される活性剤放出プロフィルをもたらすこと、あるいは
(d)少なくとも4時間、6時間、もしくは12時間、または24時間まで胃内に残留し、その間好ましくは実質的に損なわれていないままであること
の1つまたは複数をもたらす。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態は、それを必要とする哺乳動物(例えばヒト)に活性剤を投与する方法であって、その哺乳動物に本発明の医薬製剤を投与するステップによる方法である。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態は、医薬製剤を調製する方法であって、一方の層における少なくとも1種の送達剤、少なくとも1種の薬学的に許容できる活性剤またはその塩、および場合によって1種もしくは複数の薬学的に許容できる添加剤または賦形剤、ならびに第2層における膨潤性ポリマーを混合するステップによる方法である。
【0015】
本発明の他の実施形態は、動物(例えばヒト)において、疾患を治療または予防する方法、あるいは所望の生理学的効果を達成する方法であって、本発明の医薬製剤を経口投与するステップによる方法である。
【0016】
本発明の一実施形態は、医薬製剤であって、(a)薬学的に許容できる活性剤、その代謝産物またはプロドラッグ、少なくとも1種の送達剤、および放出制御ポリマーを含有する第1層と、(b)1.5時間まで、もしくは3時間まで、または6時間まで胃内に滞留するため許容できる大きさまで膨潤するのに十分な量である膨潤性ポリマーを含む第2層とを含む製剤を提供する。本発明のさらなる実施形態は、水誘引剤を含有できる。
【0017】
一実施形態において、この膨潤性ポリマーは、分子量約4,000,000〜約9,000,000ダルトン(例えば7,000,000ダルトン)を有することが好ましいポリ(エチレンオキシド)である。一実施形態において、この放出制御ポリマーは、分子量約100,000〜300,000ダルトン(例えば200,000ダルトン)を有することが好ましいポリ(エチレンオキシド)である。
【0018】
本発明の一実施形態は、本発明の医薬製剤をピロリ菌(Helicobacter pylori)による感染を治療するのに使用している方法であって、活性剤として例えばヒスタミン-2遮断薬、Na-K-ATPアーゼプロトンポンプ阻害剤、制酸剤、抗生物質、またはスクラルファートの1種または複数を含有する本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態は、活性剤がヒスタミン-2遮断薬、Na-K-ATPアーゼプロトンポンプ阻害剤、制酸剤、抗生物質、またはスクラルファートの1種または複数である医薬製剤を提供する。
【0020】
本発明の他の実施形態は、活性剤が放射線不透過性色素、または放射線トレーサーである医薬製剤である。この実施形態の一適用において、活性剤は硫酸バリウムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
定義
用語「約」または「およそ」は、当業者により測定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、それは値がどのように測定されるか、すなわち測定系の限界によって一部は決まる。例えば、「約」は、当技術分野の実際により標準偏差1以内、または1を超えることを意味することができる。別法として、製剤に関する「約」は10%まで、好ましくは5%までの範囲を意味することができる。
【0022】
用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルコキシ」、「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキル(アリーレン)」、および「アリール(アルキレン)」には、それぞれ直鎖および分岐アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキレン、アルケニレン、アルキル(アリーレン)、およびアリール(アルキレン)基が含まれるが、それらに限定されない。
【0023】
語句「薬学的に許容できる」は、生理学的に許容可能な、また哺乳動物に投与する場合、アレルギー性、または胃の不調、眩暈などの同様な有害反応を通常生じない化合物または組成物を指す。
【0024】
本明細書において使用される用語「活性剤」には、ラセミ体、ならびにその光学的に純粋な鏡像異性体が含まれる。用語「活性剤」には、溶媒和物、活性な代謝産物、プロドラッグ、ならびにそれらのすべての薬学的に許容できる錯体および水和物も含まれる。
【0025】
「有効量の活性剤」は、状態、障害、または病状を治療または予防するため哺乳動物に投与する場合、このような治療または予防を行うのに十分である、活性剤、塩、それらの溶媒和物、活性な代謝産物、プロドラッグ、あるいはそれらのラセミ体または鏡像異性体の量を意味する。「有効量」は、有効成分、治療される状態、障害、または病状およびその重症度、ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重、身体状態、および応答性によって変わるであろう。「有効量の送達剤」は、例えば胃腸管からの所望量の活性剤の吸収を増加させる送達剤の量を指す。
【0026】
「有効量の医薬製剤」は、ある期間にわたってそれが投与される被験者における状態を治療または予防するのに有効な、例えば所望される投与間隔の間に治療効果をもたらす、記述されている医薬製剤の量である。一般に、有効量の医薬製剤には、少なくとも1種の送達剤と共に投与される場合、所望の期間にわたって所望の状態を治療または予防する活性剤の量(すなわち有効量の送達剤および有効量の医薬製剤)が含まれる。
【0027】
本明細書において使用される用語「治療」には、下記の:
(a)障害の開始(すなわち障害の臨床的発症までの期間)を抑え、遅らせること、ならびに/または障害の発現もしくは悪化の危険を少なくすること、
(b)哺乳動物における障害の少なくとも1つの症状を軽減または緩和すること、あるいは
(c)一定の刺激(例えば圧力、組織の損傷、または低温)に応じた障害を含むがそれらに限定されない、哺乳動物が経験する障害の発症の強さおよび/もしくは持続を軽減または緩和すること
の1つまたは複数のものが含まれる。用語「治療」には、状態(例えば疾患)、その状態の症状、またはその状態の素因を予防的に阻止し、治療し、癒し、軽減し、緩和し、変化させ、治癒し、回復させ、改善し、またはそれらに影響を及ぼすことも含まれる。
【0028】
本明細書において使用している用語「持続される放出」、「延長された放出」、または「長時間作用する」は、延長された時間的期間にわたる有効成分の放出であって、同一有効成分の「即時放出」または「正規放出」製剤と比較して、より低いピーク血漿濃度および延長されたTmaxへと導く放出を指す。
【0029】
用語「バイオアベイラビリティー」は、医薬品から有効成分または活性部分が吸収され、系統的に利用可能となる速度および程度を指す。
【0030】
用語「多形」は、物質の結晶学的に特徴的な形態を指す。
【0031】
本明細書において使用している用語「水和物」には、(i)分子形態で結合された水を含有する物質、および(ii)1つまたは複数の結晶水分子を含有する結晶性物質、または自由水を含有する結晶性物質が含まれるがそれらに限定されない。
【0032】
本明細書において使用している用語「SNAC」は、その一ナトリウム塩および二ナトリウム塩を含む、N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]-アミノ)カプリル酸および薬学的に許容できるその塩を指す。用語「SNAC遊離酸」は、N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]-アミノ)カプリル酸を指す。特に指示されない限り、用語「SNAC」は、SNAC三水和物、ならびにその両者が参照により本明細書に組み込まれている米国仮出願第60/619418号および第60/569476号に記載されるものなどのSNACのすべての非晶質および多形形態を含む、すべての形態のSNACを指す。本明細書において使用している用語「SNAC三水和物」は、3分子の水がSNACの各分子に結合している結晶性形態のSNACを指す。SNACは、例えば、米国特許第5650386号、ならびに国際公開出願WO00/46182およびWO00/59863に記載される手順によって調製することができる。
【0033】
本明細書において使用している用語「SNAD」は、その一ナトリウム塩を含む、N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]-アミノ)デカン酸および薬学的に許容できるその塩を指す。特に指示されない限り、用語「SNAD」は、SNADのすべての非晶質および多形形態を含む、すべての形態のSNADを指す。
【0034】
用語「4-MOAC」は、8-(N-2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾイル)-アミノカプリン酸および薬学的に許容できるその塩を指す。特に指示されない限り、用語「4-MOAC」は、4-MOACのすべての非晶質および多形形態を含む、すべての形態の4-MOACを指す。
【0035】
用語「5-CNAC」は、その一ナトリウム塩を含む、N-[8-(2-ヒドロキシ-5-クロロベンゾイル]-アミノ)オクタン酸(8-(N-2-ヒドロキシ-5-クロロベンゾイル)アミノカプリン酸としても知られる)および薬学的に許容できるその塩を指す。特に指示されない限り、用語「5-CNAC」は、5-CNACのすべての非晶質および多形形態を含む、すべての形態の5-CNACを指す。
【0036】
用語「4-CNAB」は、その一ナトリウム塩を含む、4-[(2-ヒドロキシ-4-クロロベンゾイル)アミノ]ブタノエート(4-[(4-クロロ-2-ヒドロキシ-ベンゾイル)アミノ]ブタン酸としても知られる)および薬学的に許容できるその塩を指す。特に指示されない限り、用語「4-CNAB」は、4-CNABのすべての非晶質および多形形態を含む、すべての形態の4-CNABを指す。特に指示されない限り、用語「4-CNABナトリウム」および「4-CNAB一ナトリウム」は、4-[(2-ヒドロキシ-4-クロロベンゾイル)アミノ]ブタン酸一ナトリウムを指し、その無水物、一水和物、およびイソプロパノール溶媒和物、ならびにそれらの非晶質および多形形態を含む(参照により本明細書に組み込まれている国際公開出願WO03/057650に記載されているものを含む)。
【0037】
本明細書において使用している用語「溶媒和物」には、送達剤または活性剤の分子またはイオンとの、溶媒の分子またはイオンの分子またはイオン錯体が含まれるが、それらに限定されない。
【0038】
用語「送達剤」は、本明細書において開示され、または参照により組み込まれている任意の送達剤化合物を指す。
【0039】
用語「放出制御ポリマー」には、活性剤-送達剤錯体が漸次表面侵食されることを可能にする、したがってこの錯体が無傷で胃および/または小腸に入ることが可能となる、またこうして活性剤が体循環に入ることが可能となる、好ましくは低〜中分子量のポリマーが含まれる。これらのポリマーは幾分水溶性とすべきであり、活性剤-送達剤錯体中に水が入ることを可能とすべきである。代表的なポリマーには、Klucelなどの(ポリ(エチレンオキシド))および低分子量セルロース誘導体が含まれるが、それらに限定されない。
【0040】
用語「膨潤性ポリマー」は高分子量の、また胃の消化過程のせん断力に対して強い抵抗性を有することが好ましいポリマーを指し、これらは経口的に消費されると膨張して、胃内滞留をもたらす。
【0041】
胃内滞留型薬物送達系
胃内滞留型薬物送達系(GRDDS)は、胃内滞留型剤形またはデバイスと呼んでもよい。それはしばしば、延長された時間的期間、通常は4〜24時間、胃内に保有することができ、その間制御された形で胃に活性剤を連続的に放出する制御された送達系を組み込んでいる。放出された活性剤は、胃内で吸収でき、あるいは胃から十二指腸または小腸に分散され、そこで吸収されることができる。
【0042】
GRDDSにより、GI管の上部における限定されたかつ狭い吸収ウィンドウにより特徴付けられる薬物について、ならびに胃および十二指腸における局所的疾患の治療を意図する薬物において吸収性を増し、治療効果を向上させることができる。このような疾患には、胃潰瘍、化学誘発性および放射線誘発性粘膜炎、またはピロリ菌などの微生物による感染が含まれる。これらの送達形態は、胃、上部胃腸管、および関連の臓器(例えば膵臓、肝臓)内に的を絞って、化学療法剤を保有するのに使用され、それによりこれらの領域における癌治療の効力が増大するかも知れない。さらに、この制御された放出および滞留型送達形態は、診断目的に有用である可能性があり、硫酸バリウム、他の放射線不透過性色素、またはI131などの放射線活性トレーサー、ガリウム塩などを送達するのに使用できる。
【0043】
従来の経口剤形物は、GI管に沿って移動し、薬物送達に関する制御を何ら提供せずに体循環において特定の薬物濃度をもたらす。薬物送達部位は不確定である。従来の剤形と比較して、GRDDSは一般に、より制御された放出型の薬物送達系である。薬物送達部位は、胃内に局在化され、薬物放出はしばしば制御された形で行われるように設計される。これらの利点は、比較的狭い吸収ウィンドウを有する薬物について、より一層顕著になる。吸収ウィンドウまでの領域では従来の剤形物から放出される薬物の吸収がほとんどないのに比較して、溶解した薬物がGRDDSから胃内に連続的に放出され、吸収ウィンドウを通って連続的に吸収され、はるかに長い吸収時間、およびしたがってより高い薬物バイオアベイラビリティーをもたらす。胃腸運動パターンがGRDDSの胃内滞留に影響を及ぼす。絶食および給食状態に対応する、2つの特異的なパターンが存在する。給食状態は、食物摂取直後に誘発され、食物が残留する限り通常は3〜4時間持続する。食物は混合され、部分的に消化される。胃が収縮を受けると、消化された物質は小腸に排出され、不消化の食物はさらなる消化のため再び元に戻される。消化期間の終りに、胃は絶食状態に入る。絶食状態では、胃はIMMC(空腹期強収縮群)と呼ばれるサイクルを開始し、それには4つの相が含まれる。全サイクル時間は、約1〜2時間である。大き過ぎない場合すべての内容物が、相IIIの間に起こる強い収縮(清掃波)により胃から掃出される。
【0044】
胃内滞留型剤形は、胃内滞留性を達成するために浮揚性、大きさ、および生体付着性などの様々な機序に基づいて設計することができる。浮揚系は、胃内容物上に浮揚するのに十分な浮力を有し、延長された期間胃内に残される。生体/粘膜付着系は、胃内上皮細胞表面、またはムチンに付着し、GRDDSと生体膜の間の接触の親密性および持続時間を増加させることにより胃内滞留を延長させる。
【0045】
高密度系は、約3g/cm3の密度を有し、胃体内に保有されて、その密度が解剖学的に幽門括約筋よりも低く、その蠕動運動に耐えることが可能である。このようなGRDDSの閾値密度は、2.4〜2.8g/cm3である。膨潤/膨張性系は、膨張性ポリマーで製剤される。投与しやすいように、それらは適度に小さな剤形として製造される。胃液と接触すると、ポリマーは水分を吸収し、膨潤して大きくなり、そのためGRDDSは幽門の通過を妨げられる。持続/制御放出は、適正な分子量および膨潤性状を有するポリマーを選択することにより達成できる。膨潤した系は、摩耗または侵食が原因で機械的強度を損なうため結局その完全性を失うであろう。それらは、胃液が存在すると溶解し、侵食され、または小片に分解できる。薬物の放出が終わると、それらは、体により、GI管から完全にかつ安全に取り除かれるであろう。
【0046】
送達剤化合物
適切な送達剤には、下記の構造を有するもの、および薬学的に許容できるその塩が含まれる:
2-HO-Ar-C(O)-NR8-R7-COOH 式(1)
式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり、OH、ハロゲン、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、またはC1〜C4ハロアルコキシで場合によって置換され、
R7は、C4〜C20アルキル、C4〜C20アルケニル、フェニル、ナフチル、(C1〜C10アルキル)フェニル、(C1〜C10アルケニル)フェニル、(C1〜C10アルキル)ナフチル、(C1〜C10アルケニル)ナフチル、フェニル(C1〜C10アルキル)、フェニル(C1〜C10アルケニル)、ナフチル(C1〜C10アルキル)、またはナフチル(C1〜C10アルケニル)であり、
R8は、水素、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4またはハロアルコキシであり、
R7は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、C2〜C4ハロアルコキシ、-OH、-SH、および-CO2R9、またはこれらの任意の組合せにより場合によって置換され、
R9は、水素、C1〜C4アルキル、またはC2〜C4アルケニルであり、
R7は、酸素、窒素、硫黄、またはこれらの任意の組合せにより場合によって中断される。ただしこれらの化合物は、アルファ位においてアミノ基で置換されて酸基またはその塩を生じないことを前提とする。
【0047】
一実施形態により、Arはハロゲンで置換される。
【0048】
R7は、C4〜C20アルキルまたはフェニル(C1〜C10アルキル)であるのが好ましい。R7は、C5〜C10アルキルまたはフェニル(C2アルキル)であるのがより好ましい。R7は、C7〜C9アルキルまたはフェニル(C2アルキル)であるのが最も好ましい。
【0049】
他の適切な送達剤には、下記の構造を有するもの、および薬学的に許容できるその塩が含まれる:
2-OH-Ar-C(O)-NH-R1-R2 式(2)
式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり、
Arは、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C2〜C4アルケニル、C2〜C4アルキニル、アリール、アリールオキシ、複素環、C5〜C7炭素環、ハロゲン、-OH、-SH、CO2R6、-NR7R8、または-N+R7R8R9Y-により場合によって置換され、
(a)R1は、C1〜C16アルキレン、C2〜C16アルケニレン、C2〜C16アルキニレン、C6〜C16アリーレン、(C1〜C16アルキル)アリーレン、またはアリール(C1〜C16アルキレン)であり、
R2は、-NR3R4、または-N+R3R4R5Y-であり、
R3およびR4は、独立に水素、酸素、ヒドロキシ、置換されたもしくは非置換のC1〜C16アルキル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルキニル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアルキルカルボニル、置換されたもしくは非置換のアリールカルボニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアリールスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルホニル、置換されたもしくは非置換のアリールスルホニル、置換されたもしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換されたもしくは非置換のアリールオキシカルボニルであり、
R5は、独立に水素、置換されたもしくは非置換のC1〜C16アルキル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルキニル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアルキルカルボニル、置換されたもしくは非置換のアリールカルボニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアリールスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルホニル、置換されたもしくは非置換のアリールスルホニル、置換されたもしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換されたもしくは非置換のアリールオキシカルボニルであり、
(b)R1、R2、およびR5は上記において定義した通りであり、また
R3およびR4は組み合わされて、5-、6-もしくは7員複素環、または、C1〜C6アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、オキソ基、もしくは炭素環により置換された5-、6-もしくは7員複素環を形成し、あるいは
(c)R2およびR5は上記において定義した通りであり、また
R1およびR3は組み合わされて、5-、6-もしくは7員複素環、または、C1〜C6アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、もしくはオキソ基、もしくは炭素環により置換された5-、6-もしくは7員複素環を形成し、
R4は、水素、酸素、ヒドロキシ、置換されたもしくは非置換のC1〜C16アルキル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルキニル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアルキルカルボニル、置換されたもしくは非置換のアリールカルボニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアリールスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルホニル、置換されたもしくは非置換のアリールスルホニル、置換されたもしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換されたもしくは非置換のアリールオキシカルボニルであり、
R6は、水素、C1〜C4アルキル、ハロゲンもしくは-OHで置換されたC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、または、ハロゲンもしくは-OHで置換されたC2〜C4アルケニルであり、
R7、R8、およびR9は、独立に水素、酸素、C1〜C4アルキル、ハロゲンもしくは-OHで置換されたC1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、または、ハロゲンもしくは-OHで置換されたC2〜C4アルケニルであり、また
Yは、ハロゲン、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、アルコキシ、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、またはカルボン酸塩である。適切なカルボン酸塩の非限定的な例は酢酸塩である。
【0050】
式(2)の化合物に関して本明細書で使用されている用語「置換された」には、ヒドロキシルおよびハロゲンが含まれるがそれらに限定されない。
【0051】
一実施形態において、Arは非置換のフェニルであり、または1種もしくは複数のC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシもしくはハロゲンで置換されたフェニルである。Arは、メトキシ、Cl、FまたはBrで置換されたフェニルであることがより好ましく、またArは、Clで置換されたフェニルであることがより一層好ましい。
【0052】
他の実施形態において、R1は、C1〜C12アルキル、C2〜C8アルキル、C2〜C6アルキル、またはC6アルキルである。
【0053】
他の実施形態において、R3およびR4は、独立にHもしくはC1〜C2アルキルであり、またはさらにR3およびR4は共にHではなく、あるいはさらにR3およびR4は、独立にメチルまたはエチルであり、またより好ましくはR3およびR4は、共にメチルである。
【0054】
他の適切な送達剤には、下記の構造を有するもの、および薬学的に許容できるその塩が含まれる:
【0055】
【化1】

【0056】
上式において、
R1、R2、R3、およびR4は、独立に水素、-OH、-NR6R7、ハロゲン、C1〜C4アルキル、またはC1〜C4アルコキシであり、
R5は、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルキレン、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルケニレン、置換されたもしくは非置換のC1〜C12アルキル(アリーレン)、または置換されたもしくは非置換のアリール(C1〜C12アルキレン)であり、また
R6およびR7は、独立に水素、酸素、またはC1〜C4アルキルである。
【0057】
式(3)に関して本明細書で使用されている用語「置換された」には、次の置換基:ハロゲン、水酸化物、C1〜C4アルキル、およびC1〜C4アルコキシのいずれか1つまたは任意の組合せによる置換が含まれるがそれらに限定されない。
【0058】
他の適切な送達剤には、下記の構造を有するもの、および薬学的に許容できるその塩が含まれる:
【0059】
【化2】

【0060】
上式において、
(a)R1、R2、R3、およびR4は、独立に水素、-OH、ハロゲン、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、-C(O)R8、-NO2、-NR9R10、または-N+R9R10R11(Y-)であり、
R8は、水素、-OH、C1〜C6アルキル、ハロゲンもしくは-OHで置換されたC1〜C4アルキル、非置換のもしくはハロゲンもしくは-OHで置換されたC2〜C4アルケニル、または-NR14R15であり、
R9、R10、およびR11は、独立に水素、酸素、非置換のまたはハロゲンもしくは-OHで置換されたC1〜C4アルキル、非置換のまたはハロゲンもしくは-OHで置換されたC2〜C4アルケニルであり、
Yは、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、アルコキシ、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩、メシレート、フメレート、マロン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩であり、
R5は、H、-OH、-NO2、ハロゲン、CF3、-NR14R15、-N+R14R15R16(Y-)、アミド、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、カルバメート、カーボネート、尿素、または-C(O)R22であり、R5は、ハロゲン、-OH、-SH、または-COOHで場合によって置換され、R5は、O、N、S、または-C(O)-により場合によって中断され、
R14、R15、およびR16は、独立にH、またはC1〜C10アルキルであり、
R22は、H、C1〜C6アルキル、-OH、-NR14R15であり、
R6は、置換されたもしくは非置換のC1〜C16アルキレン、C2〜C16アルケニレン、C2〜C16アルキニレン、C5〜C16アリーレン、(C1〜C16アルキル)アリーレン、またはアリール(C1〜C16アルキレン)であり、R6はC1〜C7アルキル、またはC1〜C7シクロアルキルで場合によって置換され、
R7は-NR18R19、または-N+R18R19R20Y-であり、
R18およびR19は、独立に水素、酸素、ヒドロキシ、置換されたもしくは非置換のC1〜C16アルキル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルキニル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアルキルカルボニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルキル)カルボニル)、置換されたもしくは非置換のアリールカルボニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルフィニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルカン)スルフィニル)、置換されたもしくは非置換のアリールスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルホニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルカン)スルホニル)、置換されたもしくは非置換のアリールスルホニル、置換されたもしくは非置換のアルコキシカルボニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルコキシ)カルボニル)、または置換されたもしくは非置換のアリールオキシカルボニル、または置換されたもしくは非置換のC5〜C7複素環(すなわち5-、6-、もしくは7員複素環)であり、ここに置換はハロゲンまたは-OHとすることができ、また
R20は、水素、置換されたもしくは非置換のC1〜C16アルキル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2〜C16アルキニル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアルキルカルボニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルキル)カルボニル)、置換されたもしくは非置換のアリールカルボニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルフィニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルカン)スルフィニル)、置換されたもしくは非置換のアリールスルフィニル、置換されたもしくは非置換のアルカンスルホニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルカン)スルホニル)、置換されたもしくは非置換のアリールスルホニル、置換されたもしくは非置換のアルコキシカルボニル(例えば置換されたもしくは非置換の(C1〜6アルコキシ)カルボニル)、または置換されたもしくは非置換のアリールオキシカルボニルであり、あるいは
(b)R1〜R16およびR20は上記において定義した通りであり、また
R18およびR19は結合して、5-、6-もしくは7員複素環を形成し、この環はオキソ基により場合によって中断され、また置換されず、もしくはC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、アリール、アリールオキシ、もしくは炭素環により置換される。
【0061】
一実施形態により、R7はモルホリノ、モルホリニウム塩、またはジエタノールアミノである。
【0062】
他の実施形態により、R6はC1〜C16アルキレンであり、またR7はモルホリノ、またはモルホリニウム塩である。R6は、非置換のC4〜C12アルキレンなどのC4〜C12アルキレンであることが好ましい。R6は、非置換のC4〜C10、C4〜C8、またはC6〜C8アルキレンなどのC4〜C10、C4〜C8、またはC6〜C8アルキレンであることがより好ましい。一実施形態により、R1〜R5の1つはヒドロキシであり、例えばR1はヒドロキシとすることができる。
【0063】
さらに他の実施形態により、R6がC1〜C10アルキレンである場合、R2およびR4のせいぜい1つがハロゲンである。他の実施形態により、R6はC8〜C16、C9〜C16、C10〜C16、またはC11〜C16アルキレンである。例えば、R6はC8、C9、C10、C11、またはC12アルキレン(例えば直鎖C8〜C12アルキレン)としてよい。さらに他の実施形態により、R1およびR5のせいぜい1つがアルキルである。
【0064】
さらに他の実施形態により、R1はヒドロキシであり、またR2、R3、R4、およびR5は、独立に水素、またはハロゲンである。
【0065】
さらに他の実施形態により、R2はヒドロキシであり、またR1、R3、R4、およびR5は、独立に水素、またはハロゲンである。
【0066】
さらに他の実施形態により、R3はヒドロキシであり、またR1、R2、R4、およびR5は、独立に水素、またはハロゲンである。
【0067】
好ましい実施形態において、ハロゲンはF、ClまたはBr、より好ましくはFまたはCl、またより一層好ましくはClである。
【0068】
さらに他の実施形態により、R6はC1〜C16アルキレン、(C1〜C16アルキル)アリーレン、またはアリール(C1〜C16アルキレン)である。R6はC1〜C12アルキレン、より好ましくはC3〜C10アルキレン、より好ましくはC4〜C10またはC4〜C8アルキレン、またより好ましくはC6〜C8アルキレンがより好ましい。R6が非置換であるのがより好ましい。
【0069】
さらに他の実施形態により、R7は-NR18R19であり、またR18およびR19は、独立に、-OHで置換されたC1〜C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、またはブチル)である。他の実施形態により、R7は-NR18R19であり、またR18およびR19は、結合して、オキソ基で置換された6員複素環を形成する。
【0070】
好ましい一実施形態により、R1は水素であり、R2、R3、およびR4は独立に水素、ハロゲン、-OH、または-OCH3であり、R5は水素、-OH、または-C(O)CH3であり、R6はC1〜C6アルキレンであり、またR7は、R18およびR19が結合して、5-、6-、もしくは7員複素環を形成するNR18R19である。
【0071】
他の好ましい実施形態により、R3、R4、およびR5の1つはヒドロキシであり、他のものは独立にハロゲンまたは水素であり、R1およびR2は独立にハロゲンまたは水素であり、R6はC1〜C16アルキレンであり、またR7は、R18およびR19が結合して、5-、6-、もしくは7員複素環を形成するNR18R19である。R6は、非置換のC6〜C16、C6〜C10、C8〜C16、C10〜C16、またはC4〜C8アルキレンなどのC6〜C16、C6〜C10、C8〜C16、C10〜C16、またはC4〜C8アルキレンであることがより好ましい。R18およびR19は、モルホリノまたはイミダゾールを形成するのが好ましい。
【0072】
他の好ましい実施形態において、R1は水素であり、R2、R3、およびR4は独立に水素、ハロゲン、-OH、または-OCH3であり、R5は水素、-OH、または-C(O)CH3であり、R6はC1〜C6アルキレンであり、またR7は、R18およびR19がヒドロキシ置換C1〜C16アルキルであるN+R18R19R20(Y-)であり、またR20は水素である。
【0073】
他の好ましい実施形態において、R1は水素であり、R2、R3、およびR4は独立に水素、ハロゲン、-OH、または-OCH3であり、R5は水素、-OH、または-C(O)CH3であり、R6はC1〜C6アルキレンであり、またR7は、R18およびR19がヒドロキシ置換C1〜C16アルキルであるN+R18R19R20(Y-)であり、またR20は水素である。
【0074】
他の好ましい実施形態において、R1、R2、R4、R5は独立にハロゲンまたは水素であり、R3は-OH、または-OCH3であり、またR7は、R18およびR19がヒドロキシ置換C1〜C16アルキルであるN+R18R19R20(Y-)であり、またR20は水素である。
【0075】
好ましい一実施形態により、R1は水素であり、R2、R3、およびR4は独立に水素、ハロゲン、-OH、または-OCH3であり、R5は水素、-OH、または-C(O)CH3であり、R6はC1〜C6アルキレン、またはアリール置換C1〜C12アルキルであり、またR7は、R18およびR19が結合して、オキソ基で置換された5-、6-、もしくは7員複素環を形成する-NR18R19、またはR18およびR19がヒドロキシ置換C1〜C16アルキルであるN+R18R19R20(Y-)であり、またR20は水素である。
【0076】
他の好ましい実施形態において、送達剤のクエン酸塩が使用される。
【0077】
他の適切な送達剤には、下記の構造を有するもの、および薬学的に許容できるその塩が含まれる:
【0078】
【化3】

【0079】
上式において、
R1、R2、R3、およびR4は、独立にH、-OH、ハロゲン、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、-C(O)R8、-NO2、-NR9R10、または-N+R9R10R11(R12)-であり、
R5は、H、-OH、-NO2、ハロゲン、CF3、-NR14R15、-N+R14R15R16(R13)-、アミド、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、カルバメート、カーボネート、尿素、または-C(O)R18であり、
R5は、ハロゲン、-OH、-SH、または-COOHで場合によって置換され、
R5は、O、N、S、または-C(O)-により場合によって中断され、
R6は、C1〜C12アルキレン、C2〜C12アルケニレン、またはアリーレンであり、
R6は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、-OH、-SH、ハロゲン、-NH2、または-CO2R8で場合によって置換され、
R6は、OまたはNにより場合によって中断され、
R7は、結合またはアリーレンであり、
R7は、-OH、ハロゲン、-C(O)CH3、-NR10R11、または-N+R10R11R12(R13)-、で場合によって置換され、
R8は、H、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、または-NH2であり、
R9、R10、R11、およびR12は、独立にH、またはC1〜C10アルキルであり、
R13は、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、またはリン酸塩であり、また
R14、R15、およびR16は、独立にH、C1〜C10アルキル、-COOHで置換されたC1〜C10アルキル、C2〜C12アルケニル、COOHで置換されたC2〜C12アルケニル、-C(O)R17であり、
R17は、-OH、C1〜C10アルキル、またはC2〜C12アルケニルであり、また
R18は、H、C1〜C6アルキル、-OH、-NR14R15、またはN+R14R15R16(R13)である。
【0080】
一実施形態により、
(1)R1、R2、R3、R4およびR5がHであり、またR7が結合である場合、R6はC1〜C6、C9、またはC10アルキルではなく、
(2)R1、R2、R3、およびR4がHであり、R5が-OHであり、またR7が結合である場合、R6はC1〜C3アルキルではなく、
(3)R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つがHではなく、R5が-OHであり、R7が結合である場合、R6はC1〜C4アルキルではなく、
(4)R1、R2、およびR3がHであり、R4が-OCH3であり、R5が-C(O)CH3であり、またR6が結合である場合、R7はC3アルキルではなく、ならびに
(5)R1、R2、R4、およびR5がHであり、R3が-OHであり、またR7が結合である場合、R6はメチルではない。
【0081】
好ましい一実施形態により、R1は水素であり、R2、R3、およびR4は独立に水素、ハロゲン、-OH、または-OCH3であり、R5は水素、-OH、または-C(O)CH3であり、R6はC1〜C12アルキレンであり、またR7は結合、またはパラ-フェニレンである。R7は、C7〜C9アルキルであることがより好ましい。
【0082】
他の好ましい実施形態により、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは水素、-C(O)CH3、-OH、Cl、-OCH3、F、または-NO2である。より好ましい一実施形態において、R2は、-C(O)CH3、-OH、-OCH3、または-Clである。他のより好ましい実施形態において、R3は、Cl、-C(O)CH3、F、または-OHである。さらに他のより好ましい実施形態において、R4は、-OCH3、または-NO2である。
【0083】
さらに他の好ましい実施形態により、R5は、-C(O)CH3、-OH、H、-CH=CHCH3、-NH2、-NO2、-NHC(O)CH3、-CH=CHCO2H、-C(O)CH2CH3、-C(O)NH2、-C(O)NHCH3、-COOH、-C(O)NHCH2CH3、-C(O)NHCH(CH3)2、-OCH3、-C(CH3)2OH、-C(OH)(CH3)2、または-CH(OH)CH3である。
【0084】
さらに他の好ましい実施形態により、R6は、直鎖C1〜C12アルキレンである。R6は-(CH2)n-(nは整数1〜10である)であることがより好ましい。
【0085】
さらに他の好ましい実施形態により、R4およびR5はアルキルまたはハロゲンではない。
【0086】
さらに他の好ましい実施形態により、R7は、パラ-フェニレン、または結合である。
【0087】
さらに他の好ましい実施形態により、R6は-CH2-であり、またR7はフェニレンであり、より好ましくはパラ-フェニレンである。R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは水素であるのがより好ましい。R5は、-C(O)CH3、-OH、または-C(CH3)2OHであるのがより好ましい。
【0088】
さらに他の好ましい実施形態により、R7は結合であり、R5は-OHであり、またR1、R2、R3、およびR4は水素である。R6は好ましくはC4〜C12アルキレンであり、またより好ましくはC4〜C9アルキレンである。
【0089】
さらに他の好ましい実施形態により、R7は結合であり、R5は-OHであり、またR1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは水素ではない。R6は好ましくはC1〜C12アルキレン、より好ましくはC5〜C12アルキレン、また最も好ましくはC5〜C9アルキレンである。
【0090】
さらに他の好ましい実施形態により、R7は結合であり、R5は-C(O)CH3であり、またR1、R2、R3、およびR4は水素である。R6は好ましくはC1〜C12アルキレン、より好ましくはC3〜C12アルキレン、また最も好ましくはC3〜C7アルキレンである。
【0091】
さらに他の好ましい実施形態により、R7は結合であり、またR1、R2、R3、およびR4は水素である。R6はC7〜C8アルキレンが好ましい。
【0092】
さらに他の好ましい実施形態により、R7は結合であり、R5は水素であり、またR1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つは水素ではない。R6は好ましくはC1〜C12アルキレン、より好ましくはC4〜C9アルキレン、また最も好ましくはC7〜C8アルキレンである。
【0093】
さらに他の好ましい実施形態により、R2は-OHである。R7は結合であり、かつR5は水素であるのがより好ましい。R6はC1〜C12アルキレン、より好ましくはC3〜C9アルキレン、また最も好ましくはC7アルキレンであることが好ましい。
【0094】
さらに他の好ましい実施形態により、R3は-OHである。R7は結合であり、かつR5は水素であるのがより好ましい。R6は好ましくはC1〜C12アルキレン、より好ましくはC3〜C9アルキレン、また最も好ましくはC7アルキレンである。
【0095】
他の適切な送達剤には、下記の構造を有するもの、および薬学的に許容できるそれらの塩が含まれる:
【0096】
【化4】

【0097】
上式において、
R1、R2、R3、およびR4は、独立にH、-OH、ハロゲン、-OCH3、-NR10R11、または-N+R10R11R12(R13)-であり、
R5は、H、-OH、-NO2、-NR14R15、-N+R14R15R16(R13)-、アミド、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、カルバメート、カーボネート、尿素、または-C(O)R18であり、
R5は、-OH、-SH、または-COOHで場合によって置換され、
R5は、O、N、S、または-C(O)-により場合によって中断され、
R6は、C1〜C12アルキレン、C1〜C12アルケニレン、またはアリーレンであり、
R6は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニル、C1〜C4アルコキシ、-OH、-SH、ハロゲン、-NH2、または-CO2R9で場合によって置換され、
R6は、OまたはNにより場合によって中断され、
R7は、結合またはアリーレンであり、
R7は、-OH、ハロゲン、-C(O)CH3、-NR10R11、または-N+R10R11R12(R13)-、で場合によって置換され、
R8は、H、またはC1〜C4アルキルであり、
R9は、H、C1〜C4アルキル、またはC2〜C4アルケニルであり、
R10、R11、およびR12は、独立にH、またはC1〜C10アルキルであり、
R13は、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、またはリン酸塩であり、
R14、R15、およびR16は、独立にH、C1〜C10アルキル、C2〜C12アルケニル、O、または-C(O)R17であり、
R17は、-OH、C1〜C10アルキル、またはC2〜C12アルケニルであり、また
R18は、-OH、C1〜C6アルキル、-NR14R15、-N+R14R15R16(R13)-である。
【0098】
一実施形態により、R5がOCH3である場合、R6はC1〜C8またはC10〜C12アルキルである。
【0099】
好ましい実施形態により、R5は-OCH3ではない。R5はアルコキシではないのがより好ましい。
【0100】
他の好ましい実施形態により、R1、R2、R3、およびR4は水素であり、R5は-COOH、-C(O)NH2、-C(O)CH3、または-NO2であり、R6は-(CH2)7-であり、またR7は結合である。
【0101】
さらに他の好ましい実施形態により、R1、R2、R3、およびR4は水素であり、R5は-C(O)NH2であり、R6は-CH2-であり、またR7はパラ-フェニレンである。
【0102】
一実施形態により、式(6)の送達剤は、式:
【0103】
【化5】

【0104】
(式中、
R19は、-NO2、または-C(O)R23であり、
R20は、C1〜C12アルキレン、またはC1〜C12アルケニレンであり、
R21は結合、またはアリーレンであり、
R22は、H、またはC1〜C4アルキルであり、また
R23は、-OH、C1〜C6アルキル、または-NH2である。)を有する。
【0105】
好ましい送達剤には、SNAC、SNAD、8-(N-2-ヒドロキシ-5-クロロベンゾイル)アミノカプリル酸、8-(N-2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾイル)-アミノ-カプリル酸、4-[(4-クロロ-2-ヒドロキシ-ベンゾイル)アミノ]ブタン酸、および薬学的に許容できるそれらの塩が含まれるが、それらに限定されない。一実施形態において送達剤はSNACである。一実施形態において送達剤はSNACのナトリウム塩である。一実施形態において送達剤はSNACの二ナトリウム塩である。
【0106】
本発明の他の適切な送達剤は、米国特許第6,699,467号、第6,663,898号、第6,693,208号、第6,693,073号、第6,693,898号、第6,663,887号、第6,646,162号、第6,642,411号、第6,627,228号、第6,623,731号、第6,610,329号、第6,558,706号、第6,525,020号、第6,461,643号、第6,461,545号、第6,440,929号、第6,428,780号、第6,413,550号、第6,399,798号、第6,395,774号、第6,391,303号、第6,384,278号、第6,375,983号、第6,358,504号、第6,346,242号、第6,344,213号、第6,331,318号、第6,313,088号、第6,245,359号、第6,242,495号、第6,221,367号、第6,180,140号、第6,100,298号、第6,100,285号、第6,099,856号、第6,090,958号、第6,084,112号、第6,071,510号、第6,060,513号、第6,051,561号、第6,051,258号、第6,001,347号、第5,990,166号、第5,989,539号、第5,976,569号、第5,972,387号、第5,965,121号、第5,962,710号、第5,958,451号、第5,955,503号、第5,939,381号、第5,935,601号、第5,879,681号、第5,876,710号、第5,866,536号、第5,863,944号、第5,840,340号、第5,824,345号、第5,820,881号、第5,811,127号、第5,804,688号、第5,792,451号、第5,776,888号、第5,773,647号、第5,766,633号、第5,750,147号、第5,714,167号、第5,709,861号、第5,693,338号、第5,667,806号、第5,650,386号、第5,643,957号、第5,629,020号、第5,601,846号、第5,578,323号、第5,541,155号、第5,540,939号、第5,451,410号、第5,447,728号、第5,443,841号、および第5,401,516号に記載されている。本発明の送達剤は、米国公開出願第20040110839号、第20040106825号、第20040068013号、第20040062773号、第20040022856号、第20030235612号、第20030232085号、第20030225300号、第20030198658号、第20030133953号、第20030078302号、第20030072740号、第20030045579号、第20030012817号、第20030008900号、第20020155993号、第20020127202号、第20020120009号、第20020119910号、第20020102286号、第20020065255号、第20020052422号、第20020040061号、第20020028250号、第20020013497号、第20020001591号、第20010039258号、および第20010003001号にも記載されている。本発明の送達剤は、次の国際公開出願WO2004/4104018、WO2004080401、WO2004062587、WO2003/057650、WO2003/057170、WO2003/045331、WO2003/045306、WO2003/026582、WO2002/100338、WO2002/070438、WO2002/069937、WO02/20466、WO02/19969、WO02/16309、WO02/15959、WO02/02509、WO01/92206、WO01/70219、WO01/51454、WO01/44199、WO01/34114、WO01/32596、WO01/32130、WO00/07979、WO00/06534、WO00/06184、WO00/59863、WO00/59480、WO00/50386、WO00/48589、WO00/47188、WO00/46182、WO00/40203、WO99/16427、WO98/50341、WO98/49135、WO98/34632、WO98/25589、WO98/21951、WO97/47288、WO97/31938、WO97/10197、WO96/40076、WO96/40070、WO96/39835、WO96/33699、WO96/30036、WO96/21464、WO
96/12475、およびWO9612474にも記載されている:それぞれの上掲の米国特許ならびに米国および国際公開出願は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0107】
カルボン酸として表した送達剤化合物は、カルボン酸またはその塩の形態とすることができる。適切な塩には、有機および無機塩、例えばナトリウム(例えば一ナトリウム塩および二ナトリウム塩)、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムまたはバリウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、リシンまたはアルギニンなどの塩基性アミノ酸、およびジメチルアミンまたはピリジンなどの有機アミンが含まれるがそれらに限定されない。塩は、ナトリウム塩であるのが好ましい。塩は、一ナトリウム塩および二ナトリウム塩などの1価または多価塩とすることができる。塩は、エタノール溶媒和物を含む溶媒和物、および水和物とすることができる。
【0108】
アミンとして表した送達剤化合物は、遊離アミンまたはその塩の形態とすることができる。適切な塩には、有機および無機塩、例えばナトリウム塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、フッ化物塩、炭酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、酸化物、ギ酸塩、酢酸塩、またはクエン酸塩が含まれるがそれらに限定されない。
【0109】
本発明の送達剤化合物の塩は、当技術分野で知られている方法により調製できる。例えばナトリウム塩は、エタノール中に送達剤化合物を溶解し、水性水酸化ナトリウムを添加することにより調製できる。
【0110】
送達剤がアミン部分およびカルボン酸部分を有する場合、1つまたは複数のこれらの化合物を含むポリアミノ酸およびペプチドが使用できる。アミノ酸は、少なくとも1つの遊離アミン基を有する任意のカルボン酸であり、天然産および合成アミノ酸が含まれる。ポリアミノ酸は、ペプチド(ペプチド結合により結合された2つ以上のアミノ酸である)であるか、例えばエステルまたは酸無水物結合により結合することができる他の基によって形成される結合により結合される2つ以上のアミノ酸であるかそのいずれかである。ペプチドは、アミノ酸2つを有するジペプチドからアミノ酸数百個を有するポリペプチドまで長さを変化させることができる。1つまたは複数のアミノ酸またはペプチド単位はアシル化またはスルホン化できる。
【0111】
送達剤は、国際公開出願WO03/045306に記載されるものなど、それに共役されたポリマーを含有できる。例えば送達剤およびポリマーは、-NHC(O)NH-、-C(O)NH-、-NHC(O)-、-OOC-、-COO-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-、-CH2NH-NHCH2-、-CH2NHC(O)O-、-OC(O)NHCH2-、-CH2NHCOCH2O-、-OCH2C(O)NHCH2-、-NHC(O)CH2O-、-OCH2C(O)NH-、-NH-、-O-、および炭素-炭素結合からなる群から選択される結合基によって共役でき、ただしポリマー状送達剤はポリペプチドまたはポリアミノ酸ではない。ポリマーは、哺乳動物で使用するのに安全である、交互コポリマー、ブロックコポリマー、およびランダムコポリマーを含むがそれらに限定されない任意のポリマーとすることができる。
【0112】
好ましいポリマーには、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ならびにそれらの誘導体およびそれらの組合せが含まれるがそれらに限定されない。ポリマーの分子量は、通常約100〜約200,000ダルトンの範囲にある。ポリマーの分子量は、約200〜約10,000ダルトンの範囲にあるのが好ましい。一実施形態において、ポリマーの分子量は、約200〜約600ダルトンの範囲にあり、またより好ましくは約300〜約550ダルトンの範囲にある。
【0113】
本明細書に記載している化合物は、アミノ酸から由来でき、これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれている国際公開出願WO96/30036、WO97/36480、WO00/06534、WO00/46812、WO00/50386、WO00/59863、WO01/32596、およびWO00/07979、ならびに米国特許第5643957号、第5650386号、および第5866536号に記載されているものなどの、当業者の技術の範囲内にある方法によって、アミノ酸から容易に調製することができる。例えば、これらの化合物は、単一アミノ酸を、適正なアシル化またはアミン改質剤と反応させ、これがアミノ酸中に存在する遊離アミノ部分と反応してアミドを生成することにより調製できる。保護基を使用して望ましくない副反応を避けることができる。保護基については、その開示が参照により本明細書に組み込まれているT.W.Greene、Protecting Groups in Organic Synthesis、Wiley、New York(1981)を参照されたい。
【0114】
送達剤化合物は、再結晶により、あるいは単独または直列に繋いだ1種または複数の固体クロマトグラフ担体上で分別により精製できる。適切な再結晶溶媒系には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、水、テトラヒドロフラン、およびこれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。分別は、移動相としてメタノール/n-プロパノール混合物を使用し、アルミナなどの適切なクロマトグラフ担体上で、移動相としてトリフルオロ酢酸/アセトニトリル混合物を使用し逆相クロマトグラフィーで、また移動相として水または適正な緩衝液を使用しイオン交換クロマトグラフィーで実施できる。アニオン交換クロマトグラフィーを行う場合、塩化ナトリウム傾斜0〜500mMを用いるのが好ましい。
【0115】
活性剤
本発明において使用するのに適した活性剤には、薬理学的薬剤、および治療剤を含むがそれらに限定されない生物学的活性剤、および化学的活性剤が含まれる。適切な活性剤には、酸分解、酵素などにより胃腸管内でより有効でなくなり、無効になり、または破壊されるものが含まれる。適切な活性剤としてやはり含まれるのは、経口投与すると大きさ、構造または電荷などの物理化学的特性が吸収を抑えまたは妨げる巨大分子薬剤である。
【0116】
例えば、本発明において使用するのに適した生物学的および化学的活性剤には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ホルモン;多糖、およびムコ多糖の特定の混合物;炭水化物、脂質、小極性有機分子(すなわち500ダルトン以下の分子量を有する極性有機分子)、他の有機化合物、ならびに特に、それ自体胃腸粘膜を通過しない(または投与用量の一部分だけが通過する)、かつ/または胃腸管内の酸および酵素により化学的分解を受けやすい化合物、あるいはそれらの任意の組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0117】
さらなる例には、合成、天然、組換え供給源を含む、次のものが含まれるがそれらに限定されない:ヒト成長ホルモン(hGH)、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、ウシ成長ホルモン、およびブタ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出ホルモン;成長ホルモン放出因子;α(例えばインターフェロンアルファコン-1(Brisbane、CAのInterMune,IncからInfergen(登録商標)として入手できる))、β、およびγを含むインターフェロン;インターロイキン-1、インターロイキン-2、グルカゴン;ブタ、ウシ、ヒト、およびヒト組換え型を含む、場合によって亜鉛、ナトリウム、カルシウム、およびアンモニウムを含む対イオンを有するインスリン;IGF-1を含むインスリン様成長因子;未分別ヘパリン、ヘパリノイド、デルマタン、コンドロイチン、低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリン、および極低分子量ヘパリンを含むヘパリン;サケ、ウナギ、ブタおよびヒトを含むカルシトニン;エリトロポイエチン、心房性ナトリウム利尿因子、抗原、モノクローナル抗体、ソマトスタチン、プロテアーゼ抑制因子、アドレノコルチコトロピン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、黄体化ホルモン放出ホルモン、卵胞刺激ホルモン、グルコセレブロシダーゼ、トロンボポエチン、フィルグラスチム、プロスタグランジン、シクロスポリン、バソプレッシン、クロモリンナトリウム(クロモグリク酸ナトリウムまたは二ナトリウム)、バンコマイシン、デスフェリオキサミン(DFO);アレンドロネート、チルドロネート、エチドロネート、クロドロネート、パミドロネート、オルパドロネート、およびインカドロネートを含むビスホスホネート;そのフラグメントを含む副甲状腺ホルモン(PTH);BIBN-4096BS、および他のカルシトニン遺伝子関連タンパク質アンタゴニストなどの片頭痛防止剤;グルカゴン様ペプチド1(GLP-1);抗生物質、抗細菌剤、および抗真菌剤を含む抗菌剤;ビタミン;これらの化合物の類似体、フラグメント、模倣体またはポリエチレングリコール(PEG)変性誘導体、あるいはこれらの任意の組合せ。抗菌剤の非限定的な例には、ダプトマイシンおよびその類似体などのグラム陽性作用性、殺菌性、リポペプチド性および環状ペプチド性抗菌剤が含まれる。
【0118】
膨潤性ポリマー
本発明の実施形態において、医薬組成物は活性剤、送達剤、および少なくとも1種の膨潤性ポリマーを含む。
【0119】
膨潤性ポリマーは、30分、90分、4時間、6時間、12時間、または24時間以上胃内に医薬組成物が保有されるように、経口摂取すると膨張するポリマーである。例えば、膨潤性ポリマーは、医薬組成物の大きさが、その摂取前の体積と比較して10%、15%、50%、100%、または200%以上増加する原因となることができる。
【0120】
一般に、より高分子量のポリマーが、より速い膨潤速度、より大きい膨潤したサイズ、より強い機械的強度をもたらすのでより望ましい。本発明の一実施形態において、膨潤性ポリマーは50,000ダルトンを超える分子量を有する。他の実施形態において、膨潤性ポリマーは200,000ダルトンを超える分子量を有する。他の実施形態において、膨潤性ポリマーは7,000,000ダルトンを超える分子量を有する。
【0121】
膨潤性ポリマーには、架橋ポリ(アクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン);ポリウレタンヒドロゲル、無水マレイン酸コポリマーなどの無水マレイン酸ポリマー、セルロースポリマー、多糖、デンプン、およびデンプン系ポリマーが含まれるが、それらに限定されない。
【0122】
ポリ(アルキレンオキシド)の例には、単位としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、またはプロピレンオキシドを含有するポリマーが含まれるがそれらに限定されない。これらのポリマーは、任意の上記の単位(モノマーとして)だけからなることができ、コポリマーなど、任意の上記の単位の組合せからなることができる。一実施形態において、膨潤性ポリマーは、反復単位の1つがエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、またはプロピレンオキシドからなるブロックコポリマーである。
【0123】
セルロースポリマーの例には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースとしても知られる)、およびカルボキシメチルセルロースが含まれるがそれらに限定されない。
【0124】
多糖の例には、デキストラン、キサンタンガム、ゲランガム、ウェランガム、ラムサンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、キトサン、ゼラチン、およびマルトデキストリンが含まれるがそれらに限定されない。
【0125】
デンプン系ポリマーの例には、加水分解デンプンポリアクリロニトリルグラフトコポリマー、デンプン-アクリレート-アクリルアミドコポリマーが含まれるがそれらに限定されない。
【0126】
市販の膨潤性ポリマーには、PolyOX 303(商標)(ポリ(エチレンオキシド)、分子量7,000,000)、PolyOX WSR N12K(ポリ(エチレンオキシド)、分子量1,000,000)、PolyOX WSR N60K(ポリ(エチレンオキシド)、分子量2,000,000)、PolyOX WSR 301(ポリ(エチレンオキシド)、分子量4,000,000)、PolyOX WSR凝固剤、PolyOX WSR 303、PolyOX WSR 308、NFgrade(商標)(ポリ(エチレンオキシド)、分子量1,000,000)、PolyOX WSR N80(商標)(ポリ(エチレンオキシド)、分子量200,000)、Methocel F4M(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Methocel A15C(メチルセルロース)、Methocel A18M(商標)、Methocel K4M(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208)、Methocel K100M(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910)、Methocel E10M(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910)、Methocel E4M(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Methocel K15MP(商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれ、それぞれDow Chemical Company、Midland、MIから入手できる。
【0127】
市販の膨潤性ポリマーの他の例には、Blanoseセルロースガム等級7H4(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を含むBLANOSE(登録商標)セルロースガム、ECN7 Pharmaceutical Grade(商標)(エチルセルロース)、およびECN22 Pharmaceutical Grade(商標)(エチルセルロース)、Klucel HF(商標)(ヒドロキシプロピルセルロース、分子量1,150,000)、Klucel NF(商標)(ヒドロキシプロピルセルロース)、Klucel MF(ヒドロキシプロピルセルロース、分子量850,000)、Klucel GF(ヒドロキシプロピルセルロース、分子量370,000)、Klucel JF(ヒドロキシプロピルセルロース、分子量140,000)、Klucel LF(ヒドロキシプロピルセルロース、分子量95,000)、Klucel EF(ヒドロキシプロピルセルロース、分子量80,000)、およびNatrosol 250HX(ヒドロキシエチルセルロース)が含まれ、それぞれHercules Incorporated、Wilmington、DEから入手できる(Aqualon社から供給される)。
【0128】
市販の膨潤性ポリマーの他の例には、Biddle Sawyer Corp.、New York、NYを介してShin-Etsu Chemical Co.,Ltdから入手できるL-HPC Grade 11(商標)(低置換ヒドロキシプロピルセルロース)が含まれる。
【0129】
市販の膨潤性ポリマーの他の例には、Primellose(商標)(クロスカルメロースナトリウム)、Monkey-4(商標)(デンプングリコール酸ナトリウム)が含まれ、それぞれGenerichem Corporation、Totowa、NJを介してAvebe社から入手できる。
【0130】
市販の膨潤性ポリマーの他の例には、Carbopol 974P(商標)(ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコール架橋ポリアクリル酸)、Carbopol 934P(ポリアクリル酸)、Carbopol 971P(ポリアルケニルエーテルまたはジビニルグリコール架橋ポリアクリル酸)が含まれ、それぞれNoveon,Inc.、Cleveland、OHから入手できる。
【0131】
市販の膨潤性ポリマーの他の例には、Elvanol(登録商標)71-30、Elvanol(登録商標)85-30、Elvanol(登録商標)50-42、およびElvanol(登録商標)HVなどの、DuPont社から入手できるポリビニルアルコールが含まれる。
【0132】
水誘引剤の添加により、胃滞留型剤形の膨潤性状を著しく向上させることができ、したがって膨潤性ポリマーを構成させることができる。本発明の医薬組成物中に組み込むことができる水誘引剤の例には、架橋(ポリアクリル酸)、架橋(ポリビニルピロリドン)、微結晶セルロース、架橋カルボキシメチルセルロース、デンプン顆粒、カルボキシメチルデンプンナトリウム、アルギン酸塩、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC、10〜13重量%置換、Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd;Biddle Sawyer社により販売される)、クロスカルメロースナトリウム(Primellose)(Avebe社;Generichemにより販売される)、デンプングリコール酸ナトリウム(Avebe社;Generichemにより販売される)、リン酸二ナトリウムなどのリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸、フマル酸、酒石酸、タンニン酸、糖(例えばマンニトール、スクロース、ラクトース、フルクトース、ソルビトール)、および天然アミノ酸が含まれる。
【0133】
放出制御ポリマー
本発明の一実施形態において、医薬組成物は活性剤、送達剤、および少なくとも1種の放出制御ポリマーを含む。医薬組成物は、例えば1〜60重量%の放出制御ポリマーを含有できる。
【0134】
本発明のさらなる実施形態において、医薬組成物は活性剤、送達剤、膨潤性ポリマーおよび少なくとも1種の放出制御ポリマーを含む。本発明の一実施形態において、放出制御ポリマーにより医薬組成物は、その表面で放出されることが可能になる。このような実施形態において、その表面で錠剤または剤形が溶解すると、膨潤性ポリマーに起因する体積増加が軽減される。
【0135】
放出制御ポリマーの例には、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、キトサン、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー、および多糖が含まれる。
【0136】
放出制御ポリマーは膨潤性ポリマーと同一の種類からしばしば選択されるが、より低い粘性および分子量を有する。いくつかのポリマーは、医薬組成物を膨張させるだけでなく、組成物の放出をも制御する。したがって、ポリマーは膨潤性ポリマーとも、また放出制御ポリマーともすることができる。
【0137】
市販の放出制御ポリマーには、例えば、Dow Chemical Company、Midland、MIから入手できるPolyOX WSR N750(ポリ(エチレンオキシド)、分子量300,000)、PolyOX WSR N80(ポリ(エチレンオキシド)、分子量200,000)、およびPolyOX WSR N10(ポリ(エチレンオキシド)、分子量100,000)、Methocel A15-LV、Methocel A4CP、Methocel A15CP、ならびにCellosize WPおよびCellosize QPが含まれる。
【0138】
他の市販放出制御ポリマーには、例えば、Hercules Incorporated、Wilmington、DEから入手できる(Aqualon社から供給される)Natrosol 250(ヒドロキシエチルセルロース)、Klucel JF、Klucel LF、およびKlucel EF;FMC Biopolymer、Philadelphia、PAから入手できるPtotosan UP CL/G、Pronova UP LVG、Pronova UP MVG、Pronova UP MVM、およびPronova UP LVM;Nippon Gohsei社、Osaka、Japanから入手できるGohsenol N、Gohsenol A、Gohsenol G、Gohsenol K;BASF Corp.、Florham Park、NJから入手できるKollidon Fが含まれる。
【0139】
粘膜付着剤
本発明の実施形態において、医薬組成物には粘膜付着剤が含まれる。粘膜付着剤は、胃の粘膜表面に結合することにより、または粘膜被膜と結合することにより、胃内における滞留を促進する。
【0140】
粘膜付着剤の例には、アリルスクロース、スクロースのアリルエーテル、アリルペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、またはジビニルグリコールにより場合によって架橋されたポリアクリル酸またはポリアクリレート;カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、デキストランポリマー、ポリメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、トラガカント、アルギン酸、ゼラチン、アラビアゴム、ならびに、β-(1-4)-結合-D-グルコサミン単位および/またはN-アセチル-D-グルコサミン単位で場合によって中断された多糖、ならびにこれらの混合物が含まれるがそれらに限定されない。
【0141】
一実施形態において、粘膜付着剤はCarbopol(登録商標)934Pである。この実施形態の適用において、5重量%のCarbopol(登録商標)934Pを、SNAC/ヘパリン組成物に添加し、かつ錠剤とする。
【0142】
代替的実施形態において、粘膜付着剤はキトサンである。この実施形態の適用において、5重量%のキトサンを、SNAC/ヘパリン組成物に添加し、かつ錠剤とする。
【0143】
剤形設計
医薬製剤の膨潤速度、膨潤したサイズ、および機械的強度が、剤形設計において考慮される因子である。サイズに関して、幽門の直径は個体間で変動し約1〜約4cm、平均して約2cmである。ヒトにおける安静時平均直径は、12.8±7.0mmと報告された。直径13mmまでのサイズを有する未分解の錠剤は、一般に胃から出て空になる。サイズが大きいほど、剤形物は長く保有される。11mmを超える錠剤では、IMMCの間だけ空になる傾向がある。本発明の実施形態において、これらの特許では医薬組成物のサイズを、IMMCの前に2〜2.5cmに達するように設定した。
【0144】
膨潤速度/時間に関して、膨潤性ポリマーを含まない実施形態は、剤形の初期サイズに応じて胃内に平均して約1〜3時間残留する。膨張形態物が、保有されるのに十分なサイズに到達するまでに幽門を通過する恐れがある高い可能性がある。したがって、急速な初期膨潤時間を有することが、好ましくは30〜60分以内に膨潤するのが好ましい。
【0145】
最後に、機械的強度に関して、膨潤した剤形物は、活性剤-薬物送達剤複合体が完全に放出されるまで、胃内に保有されるのに十分な剛さを有すべきである。
【0146】
本発明の種々の活性剤および送達剤の間で、胃液中の溶解度に劇的な差異があるため、従来のGRDDSが依拠している拡散機序により薬物および担体の同時放出を達成することはしばしば不可能である。したがって、本発明の実施形態には、表面侵食を促進する放出制御ポリマーが含まれる。
【0147】
一実施形態において、膨潤性ポリマーはPolyOX WSR 303、放出制御ポリマーPolyOX WSR N80、活性剤はヘパリン、また送達剤はSNACのナトリウム塩とした。
【0148】
膨潤ポリマーの選択
膨潤ポリマーは、膨張性GRDDSにおいて重要な役割を果たす。数多くのポリマーが大体積まで膨潤することができると報告されている。しかし、医薬使用向けに承認されたものは限られている。主として3つの範疇:(1)ポリ(エチレンオキシド)系列、(2)多糖系列,および(3)ポリ(アクリル酸)系列が存在する。最も頻繁に使用される膨張性GRDDS向けの医薬用ポリマーは、PolyOX WSR 303(商標)(M=7,000K)、PolyOX WSR N12K(商標)(M=1,000K)などのDow Chemicalsにより製造されるポリ(エチレンオキシド)系列(Alza、DepoMed)、ならびに、Dow社により製造されるMethocel K15PM(商標)、Methocel F4M(商標)、Methocel E4M(商標)、およびHercules社により供給されるKlucel HF(M=1,150K)などのセルロース系列(Teva、DepoMed)であった。
【0149】
最終使用医薬的適用
本発明は、本発明の医薬組成物を投与することによる、動物において疾患の治療または予防のための、または所望の生理学的効果を達成するための方法を提供する。所望の疾患を治療または予防するために、または所望の生理学的効果を達成するために有効な組成物の量を投与することが好ましい。活性剤についての特異的な効能は、参照により本明細書に組み込まれているPhysicians' Desk Reference(58th Ed.、2004、Medical Economics Company,Inc.、Montvale、NJ)に見出すことができる。本発明の医薬組成物を投与することにより治療または達成することができる疾患および生理学的効果の例を、以下に示している:
【0150】
【表1】



【0151】
例えば、本発明の一実施形態は、本発明の医薬製剤においてインスリンを投与することにより、糖尿病を有するまたは罹りやすい患者を治療する方法である。本発明の医薬製剤と共に、上表に示したものを含む他の活性剤を使用することができる。
【0152】
投与後、組成物または剤形物中に存在する活性剤は、循環中に吸収される。薬剤のバイオアベイラビリティーは、知られている血中薬理学的活性、例えばヘパリンに起因する凝血時間の延長、またはカルシトニンに起因する循環カルシウム濃度の低下を測定することにより、容易に評価することができる。別法として、活性剤の循環濃度それ自体を直接測定することができる。
【0153】
(実施例)
下記の実施例は、限定することなく本発明を例証する。特に指定されない限りすべての部は、重量により示している。
【0154】
(実施例1)
二層型キャプレット/錠剤
一方の層がSNAC、へパリン、および放出制御ポリマーであり、他方の層が膨潤性ポリマーである物理的ブレンドを有する二層型キャプレット(caplet)を調製する。これを図1に示す。
【0155】
この実施形態では、放出制御ポリマーの表面侵食によりへパリン/SNACの放出が達成される。へパリンおよびSNACを分子レベルで極めて接近させておくため、へパリンおよびSNACは、放出制御ポリマーとブレンドする前に同時乾燥し、かつ粉末とする。膨潤性ポリマーを他の層に当てはめ、剤形物を膨潤させる役割を果たさせる。これらの2つの層は、圧縮時に形成される物理的接合により互いに接着される。
【0156】
(実施例2)
マトリックス型キャプレット/錠剤
同時乾燥SNAC/へパリン、放出制御ポリマー、および膨潤性ポリマーを有する一層型キャプレットを調製する。これを図2に示す。
【0157】
これらの成分を圧縮して錠剤またはキャプレットとする。放出制御ポリマーの表面侵食によりへパリン/SNACの放出が達成される。
【0158】
(実施例3)
医薬製剤の成分の調製
同時乾燥へパリン/SNAC
へパリン(1.2508g)およびSNAC(3.2485g)を、25mlの脱イオン水に溶解させた。この溶液を室温において窒素流で1晩乾燥させた。得られた固形分ケーキを、真空下で24時間さらに乾燥させた。次いで固形分を摩砕、60メッシュ篩で篩った。同時乾燥へパリン/SNAC粉末は、水分13.1重量%を含有していた。さらなる使用のため、それを乾燥剤中に保持した。
【0159】
疑似胃液(SGF)
塩化ナトリウム(2.0g)を、800mlの脱イオン水に溶解させた。この溶液を塩酸(37%)でpH1.2に調節し、次いで脱イオン水で1000mlに希釈した。
【0160】
疑似腸液(SIF)
一塩基性リン酸カリウム(6.8g)を、250mlの脱イオン水に溶解させた。この溶液に、77mlの0.2N水酸化ナトリウム、および500mlの脱イオン水を添加した。溶液を0.2N水酸化ナトリウム、または0.2N塩酸のいずれかでpH6.8に調節し、次いで脱イオン水で1000mlに希釈した。
【0161】
へパリンおよびSNACのHPLC分析
SECカラム(PLアクアゲル-OH30 8um、300×7.5mm)、移動相:0.2M硫酸ナトリウム(pH5)でへパリン濃度を測定した。検出器:UV206nm。
【0162】
Phenomenexカラム(Luna 5u C18、75×4.6mm、5Micro)、移動相:A;水中の0.1%TFA、B;アセトニトリル中の0.1%TFA、検出器:UV280nmでSNAC濃度を測定した。
【0163】
(実施例4)
膨潤性試験
PolyOX 308(商標)またはMethocel K15PM(商標)のいずれかを含有する、種々の膨潤性ポリマー/水誘引剤の組合せについて、一連の膨潤性試験を実施した。
【0164】
膨潤性ポリマー成分およびMgステアレート(1重量%)を手でブレンドした。このブレンドをCarverプレス上において圧力1000psiで圧縮して平坦な表面の平面錠剤とした。このように調製した錠剤は、直径13±0.05mm、および高さ/厚さ6.5±0.25mmを有し、重量1000±50mgの範囲にあった。
【0165】
この錠剤を、37±2℃に保った50mlビーカー内の40mlの変性SGF(ペプシンを含まない)に加えた。所定の時間にピンセットで錠剤を取り出し、キムワイパーでゆるやかに吸い取り乾かした。直径(D)、および厚さ(T)を、較正した電子キャリパーで測定した。DおよびTに基づいて体積を計算した。膨潤した錠剤の長さを、ピンセットで定性的に査定した。
【0166】
図5は、37℃のSGF中における、分子量の異なった3つのポリエチレンオキシドの膨潤プロフィルを示す。より高い分子量は、より高い初期膨潤速度、膨潤体積、および機械的強度をもたらす。平均分子量7,000Kを有するPolyOX WSR 303は、最良の膨潤性状をもたらした。その体積は約30分で2倍になり、その構造的完全性は含まないが、約3.5時間(最長試験時間)において4〜4.5倍までそのまま増加した。この配合物は、試験した4時間よりもはるかに長く胃内に保有することができると考えられる。平均分子量1,000Kを有するPolyOX WSR N12Kについては、膨潤が著しく遅く、約3.5時間で基線サイズの約3倍に達した。はるかに低い分子量200Kを有するPolyOX WSR N80は、独特の膨潤プロフィルを示した。それは、機械的強度が弱くなったが約30分で約1.5倍まで膨潤し、次いで溶解によりその体積を減少しはじめた。試験の終り(3.5時間)には、大部分のポリマーが溶解し、膨潤した錠剤の残部の体積は、最初の約半分であった。この独特の膨潤性状は、表面侵食により薬物および担体の放出速度を制御するのに有用である。
【0167】
PolyOX WSR 303の膨潤性への水誘引剤の効果を、同一条件下で試験した。表1に示すように、L-HPC、Primejel(デンプングリコレート)、Primellose(クロスカルメロースナトリウム)、Klucel(ヒドロキシプロピルセルロース)を含む種々の水誘引剤の50%添加は、ポリマーの膨潤性を改善しなかった。図6に示すように、Methocel(登録商標)K15PM(メチルセルロース)について同様な傾向が観察された。膨潤性試験の結果に基づくと、Klucelは、Methocel(登録商標)の膨潤性状を改善しなかったと思われる。
【0168】
【表2】

【0169】
図7および8に示したように、PolyOX WSR 303(商標)およびMethocel(登録商標)K15PM(商標)錠剤の両方について、圧縮圧力の効果は顕著ではなかった。
【0170】
Methocel(登録商標)/Klucelの比率、またはPrimejelもしくはPrimelloseなどの超崩壊剤を注意深く調節すると、速やかな初期膨潤性を達成するのに有効とすることができるが、一般に機械的強度での妥協を伴う。この問題を解決するため、時には約4〜5%のタンニン酸を添加した。これらの組合せに関する膨潤性試験を行い、その結果を表2に掲げた。
【0171】
【表3】

【0172】
表に示したように、超崩壊剤の存在により、大部分の組合せ(製剤A、B、C、FおよびG)は非常に速く膨潤し、劇的に(10〜15分)それらの完全性を失った。タンニン酸4〜5%の添加は、錠剤が分解するのを防止できなかった。比率を注意深く調節することにより完全性を維持するのを助けることができたが、膨潤性が損なわれた(製剤DおよびH)。圧縮力は膨潤性に顕著な効果を有していた(製剤DおよびG)。圧縮圧力が低いほど、膨潤は速く、それに関連して機械的強度を失うのが速かった。
【0173】
ポリマーの膨潤性に及ぼす、リン酸一ナトリウムなどの無機リン酸塩の効果をも評価した。図9に示すように、すべて5%のNa2HPO4を有するPolyOX WSR 303(商標)/PrimejelまたはPrimelloseまたはCarbopolの異なった組合せは、異なる初期膨潤パターンを示した。Primellose 20%およびNaHPO4 5%の添加により、完全性の損失を招くことなく、PolyOX WSR 303(商標)錠剤の初期膨潤性が改善されるように見える。15分で、PolyOX WSR 303(商標)だけについて約1.7倍であるのと比較し、この組合せの錠剤は約2.2倍まで膨潤する。
【0174】
上述のように、より低分子量のPolyOX WSR N80(商標)は、表面侵食により薬物および担体の放出速度を制御する追加的成分として使用できる。このポリマーの存在が、PolyOX WSR 303(商標)およびMethocel(登録商標)K15PMの膨潤性に及ぼす効果を評価する試験を行った。表3および4に示すように、PolyOX WSR N80(商標)を25%まで添加すると、PolyOX WSR 303(商標)、またはMethocel(登録商標)K15PMマトリックス型錠剤いずれも膨潤プロフィルおよび機械的強度が共に良好に維持された。PolyOX WSR N80(商標)の含量が50%を超えると、初期膨潤性および機械的強度が共に損なわれた。
【0175】
【表4】

【0176】
【表5】

【0177】
要約すると、PolyOX WSR 303およびMethocel(登録商標)K15PM共に良好な膨潤性状を示した。初期膨潤速度/体積および機械的強度に関して、PolyOX WSR 303は、Methocel(登録商標)K15PMよりも良好な結果をもたらすように見えた。水誘引剤および/または超崩壊剤の添加は、ポリマー膨潤性の顕著な変化をひき起こした。低分子量ポリエチレンオキシドPolyOX WSR N80は、独特の膨潤性状を示した。約30分で体積が最大に達し、続いて溶解のため著しく体積が減少した。この膨潤性状は、表面侵食により薬物/担体の放出速度を調節するのに使用することができる。それらの構造的類似性を考慮して、生体外および生体内試験のため使用する薬物/担体を配合した剤形向けに、PolyOX WSR 303(商標)およびPolyOX WSR N80(商標)を、それぞれ膨潤性ポリマーおよび放出制御ポリマーとして選択した。
【0178】
へパリン/SNAC装填錠剤
提案したGRDDS剤形を試験するため、へパリン対SNAC比が3:8(重量/重量)であり、かつ(へパリン+SNAC)対(WSR 303+WSR N80)比が約4:5(重量/重量)であるへパリン/SNAC装填マトリックス型および二層型錠剤を作製した。WSR N80を含有する錠剤について、WSR N80対WSR 303の比は、1:3であった。錠剤は940〜960mgの重さであった。マトリックス型錠剤は、全成分の物理的ブレンドから作製した(図2参照)。二層型錠剤は一方の層に膨潤性ポリマーを、また他方に残りの成分を含有させた(図1参照)。
【0179】
これらの錠剤の膨潤性状を、上記に示したのと同じ方法で試験した。図10に示すように、放出制御ポリマー(WSR N80)を有する、またはWSR N80を有しない装填マトリックス型錠剤の初期膨潤は、プラセボ錠剤(WSR 303だけを含有する錠剤)と非常に類似し、約30分で2〜2.2倍に達し、強い強度を有していた。WSR N80の溶解に主として起因する表面侵食のため、WSR N80を含有するマトリックス型錠剤は、約30〜45分で機械的強度を失いはじめ、これはWSR N80の膨潤プロフィルに反映されるものと一致した(図5参照)。WSR N80を含有しないマトリックス型錠剤は、へパリン/SNAC放出が顕著になる3.5時間まで機械的強度を失わなかった。ポリマー膨潤からの体積増加と、WSR N80の溶解およびへパリン/SNAC放出からの体積減少との競合のため、最大膨潤体積は、放出制御ポリマーを有するマトリックス型錠剤では2〜2.5時間で、また放出制御ポリマーを有しないマトリックス型錠剤では3〜4時間で観察された。膨潤プロフィルに反映されるように、0.5時間から1.5時間まで体積増加が競合を支配するので、膨潤した体積は、錠剤中の膨潤性ポリマーの量と相互に関連するかも知れない。
【0180】
へパリン/SNACの放出がはるかに速く、膨潤に用いられる表面体積が著しく小さい独特の錠剤設計のため、装填マトリックス型錠剤と比較して、装填二層型錠剤の初期膨潤は著しく遅かった(図11)。以下に考察するように、活性剤/送達剤層が放出制御ポリマーすなわちWSR N80を含有しない場合、(層が放出制御ポリマーを含有する場合4〜5時間かかるのと比較して)放出が約30〜45分で終了した。(図12を参照されたい)。放出制御ポリマーを有する二層型錠剤については、45〜60分で2.2倍の最大プラトーに達し、それが約4時間続いた。この時間の間、膨潤からの体積増加は、薬物/担体層の侵食からの体積減少と均衡していた。
【0181】
(実施例5)
生体外における放出/溶解
胃内滞留型剤形物を投与する場合、へパリン/SNAC吸収には、少なくとも3つの過程----胃内におけるへパリン/SNACの放出(沈澱物でまたは溶液で)、胃内におけるへパリン/SNACの溶解、および腸内におけるへパリン/SNACの溶解が包含される。37℃における疑似液中で、すべての3つの過程を試験した。
【0182】
錠剤は、1000psi(1.5トン)下で圧縮し、直径13±0.05mmおよび高さ/厚さ6.5±0.25mmと共に1000±50mgの重量であった。
【0183】
胃内におけるへパリン/SNACの放出
生体外放出実験は、37±2℃のSGF(40ml/錠剤)中でゆるやかに攪拌しながら実施した。錠剤は、所定の時点にフラスコから取り出した。放出されたSNAC/へパリン沈澱/溶液を含有するSGF媒質は、5N NaOHでpH9〜10に調節し、次いで50または100mlに希釈した。へパリンおよびSNAC両方の濃度を、HPLCにより測定した。
【0184】
3種の剤形を試験した。第1の剤形は、図2に示したマトリックス型錠剤であった。第2の剤形は、図1に示した二層型錠剤であり、放出制御ポリマー(WSR N80)13重量%を含有していた。第3の剤形は、図1の二層型錠剤であるが、放出制御ポリマー(WSR N80)を含まないものであった。
【0185】
図12に示すように、へパリンおよびSNACの同時放出が、表面侵食法によりすべての剤形から達成された。放出制御ポリマーの量を調節することにより、放出速度を調節できた(以下に考察する図14〜15を参照されたい)。放出制御ポリマーを含まない二層型錠剤について、即時放出が観察されたが、一方WSR N80が13%存在すると、薬物/担体層が漸次侵食されるため薬物/担体の持続される放出が達成された。
【0186】
WSR N80を有する二層型錠剤について、錠剤膨潤性およびへパリン/SNAC放出を相互に関連させた。結果を図13に示す。
【0187】
二層型錠剤についての幾分S形の放出プロフィルは、おそらく表面侵食への膨潤効果を反映している。錠剤の体積が増加すると表面積が増加し、表面侵食の増加、したがって放出速度の上昇を招く。大部分の薬物および担体は1.5時間後に放出され、したがって放出速度が低下した。
【0188】
WSR N80を13%含有するマトリックス型錠剤の場合、放出制御ポリマーが錠剤全体にわたって均質に分布していた。二層型錠剤に比べて表面侵食過程がはるかに遅くなり、放出速度の劇的な低下を招いた。膨潤体積の増加と共に1.5時間後に放出速度がより顕著になった。
【0189】
二層型錠剤からの活性剤(へパリン)および送達剤(SNAC)の放出速度は、放出制御ポリマーの量を変化させることにより調節することができる。図14および図15に示すように、薬物層内のWSR N80の量を減少させると放出速度が上昇する。
【0190】
胃内におけるへパリン/SNACの溶解
へパリンおよびSNACは、37℃の酸性水中で非常に異なった溶解度、へパリンについて>500mg/mlおよびSNACについて<0.1mg/ml(遊離酸形態)を有する。したがって、錠剤から放出された後、ほとんどすべてのSNACはSGF内で沈澱として存在するはずであり、一方へパリンはSGF溶液になるはずである。
【0191】
図16は、酸性SGF中の2成分の溶液濃度に基づいた、WSR N80を13%含有する同一の二層型錠剤からのへパリンおよびSNACの放出プロフィルを示す。予想されたように、SGF溶液中には非常に少量のSNAC(<0.1%)しか測定されないが、溶液中のへパリン量は非常に多かった。
【0192】
最初の60分において、溶液中のへパリン量は、錠剤から放出されたへパリンの全量(約30%)に匹敵した。
【0193】
5倍シンク条件下におけるSGF中のへパリン/SNACの溶解
シンク条件は、溶解媒質の可溶化容量超過に関連する。5倍シンク条件は、溶解度に関して物質の完全溶解に必要とされる体積の5倍を意味する。この目的のため、37℃におけるSGF中のSNAC溶解度が0.07mg/mlであることをHPLCにより決定した。実験は、Hanson社SR 8-Plus系(Hanson Research、Chatsworth、CAから入手できる)により37℃のSGF中で75rpmにおいて実施した。直径7.1mmを有する、12.84mgのSNACおよび4.82mgのへパリンを含有した50mg二層型錠剤、ならびに950mlのSGFを使用した。
【0194】
溶解したSNACおよびへパリンをHPLCにより測定した。SNACについては、大注入体積1mlを適用した。へパリンについては、大サンプリング体積8mlを採取し次いで0.25mlに濃縮した。
【0195】
実験は、回転バスケットまたはパドル装置のいずれかを使用して37℃のSGF中で実施した。同一の二層型錠剤からのへパリンおよびSNAC両方の溶解性を測定した。へパリンおよびSNACの溶解プロフィルを図17および18に示す。SGFの5倍シンク条件下で、へパリンの溶解速度はSNACのそれよりも速かった。攪拌は溶解速度に著しい影響をもたらし、同一の攪拌速度(75rpm)により、回転バスケットと比べてパドル装置はより高い溶解速度をもたらした。
【0196】
薬物および担体の溶解に及ぼす、薬物/担体層における速度制御ポリマーの存在の影響を調べるため、パドル装置を使用し同一条件下で0%または5%のWSR N80を含有する同様の二層型錠剤をも試験した。その結果を図19および20に示した。
【0197】
図21および22は、SNACおよびへパリン両方の溶解プロフィルを要約したものである。すべての場合にへパリン溶解は、SNACよりも速く進行した。へパリンおよびSNACの初期溶解速度は共に、放出制御ポリマーの含量が増加するにつれて、低下するように見えた。
【0198】
SIF中における二層型錠剤からのSNAC/へパリンの溶解
疑似腸液(SIF)中における二層型錠剤からのSNACおよびへパリン両方の溶解性を測定した。二層型胃内滞留剤形からのSNACおよびへパリン両方の放出は、薬物/担体層中にPolyOX WSR N80が存在するため、著しく延長された(約30秒から180秒まで)(図23)。
【0199】
プロフィルに基づいて、SNACはへパリンよりも速く溶解するように見える。これはポリマーを通る巨大分子へパリンの拡散が、小分子SNACと比較してより遅いことによる可能性がある。
【0200】
要約すると、放出制御ポリマー介在表面侵食過程によりSGF中における胃内滞留型剤形からのへパリンおよびSNACの同時放出が達成された。放出制御ポリマー(例えばWSR N80)の量を変化させることによって放出速度を調節することができる。活性剤/送達剤放出は、膨潤および表面侵食の複合過程である。薬物/担体層中にWSR N80が存在するため、二層型錠剤からのへパリンおよびSNAC両方についてのSIF中の溶解速度は著しく低い。
【0201】
へパリン/SNAC吸収は、3つの過程全部に関連しているはずであり、その中でもSGF中の錠剤からのへパリン/SNAC放出が律速段階であり得る。
【0202】
(実施例6)
ラットにおける生体内試験
ラットにおける胃内滞留およびへパリン/SNAC吸収試験
ラット(平均体重約350g、n=3)における錠剤滞留およびへパリン吸収試験向けに下記の4つの製剤のミニ錠剤を圧縮成形した。用量レベルはへパリン30mg/kgおよびSNAC 80mg/kgであった。群1および2は、2つの陰性コントロールとして設定した。群1では、製剤は活性剤/送達剤層中に放出制御ポリマー(WSR N80)を含有しない。群2では、錠剤中に膨潤性ポリマー(WSR 303)が存在しない。対応する剤形を有する製剤を以下に掲げた:
群1、WSR 303(45%)+へパリン/SNAC(54%)+Mgステアレート(1%)、二層型。WSR 303が一方の層に存在し、またへパリン/SNACは第2層に存在した。
群2、WSR N80(19.5%)+へパリン/SNAC(79.5%)+Mgステアレート(1%)、一層。
群3、WSR 303(43.3%)+へパリン/SNAC(42.6%)+WSR N80(13%)+Mgステアレート(1%)、二層型。WSR 303が一方の層に存在し、またWSR N80およびへパリン/SNACは第2層に存在した。
群4、WSR 303(50%)+へパリン/SNAC(44%)+WSR N80(5%)+Mgステアレート(1%)、二層型。WSR 303が一方の層に存在し、またWSR N80およびへパリン/SNACは第2層に存在した。
【0203】
試験用物品の調製
群1向け二層型キャプレット:388mgのWSR 303および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に手混合して、部分Aを形成した。460mgのへパリン/SNAC同時乾燥粉末(KF、17.12%)および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを形成した。23.2mgの部分Bは、重さをはかり、第1層としてキャプレット成形型(サイズ#2)に加えた。次いで19.6mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で約1000ポンド圧力のもとで圧縮して、42.8mgのミニキャプレットを成形し、このものは5.2mgのへパリンと、13.2mgのSNACを含有していた。ラット1匹当りキャプレット2錠に基づいて、用量レベルは350gラットについて、へパリン29.7mg/kgおよびSNAC 79.4mg/kgであった。
【0204】
群2向けマトリックス型キャプレット:460mgのへパリン/SNAC同時乾燥粉末(KF、17.12%)、116mgのWSR N80、および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合した。29mgの混合物をキャプレット成形型(サイズ#2)に加え、Carverプレス上で約1000ポンド圧力のもとで圧縮して、ミニキャプレットを成形し、このものは5.2mgのへパリンと、13.2mgのSNACを含有していた。ラット1匹当りキャプレット2錠に基づいて、用量レベルは350gラットについて、へパリン29.7mg/kgおよびSNAC 79.4mg/kgであった。
【0205】
群3向け二層型キャプレット:388mgのWSR 303および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に手混合して、部分Aを形成した。460mgのへパリン/SNAC同時乾燥粉末(KF、17.12%)、116mgのWSR N80、および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを形成した。29.0mgの部分Bは、重さをはかり、第1層としてキャプレット成形型(サイズ#2)に加えた。次いで19.6mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で約1000ポンド圧力のもとで圧縮して、48.6mgのミニキャプレットを成形し、このものは5.2mgのへパリンと、13.9mgのSNACを含有していた。ラット1匹当りキャプレット2錠に基づいて、用量レベルは350gラットについて、へパリン29.7mg/kgおよびSNAC 79.4mg/kgであった。
【0206】
群4向け二層型キャプレット:388mgのWSR 303および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に手混合して、部分Aを形成した。460mgのへパリン/SNAC同時乾燥粉末(KF、17.12%)、44mgのWSR N80、および4mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを形成した。25.4mgの部分Bは、重さをはかり、第1層としてキャプレット成形型(サイズ#2)に加えた。次いで22mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で約1000ポンド圧力のもとで圧縮して、47.4mgのミニキャプレットを成形し、このものは5.2mgのへパリンと、13.2mgのSNACを含有していた。ラット1匹当りキャプレット2錠に基づいて、用量レベルは350gラットについて、へパリン29.7mg/kgおよびSNAC 79.4mg/kgであった。
【0207】
経口栄養手順
ラット試験は、経口栄養投与によりSprague Daweleyラット(体重はおよそ350グラムであった)で行った。ラットは約24時間絶食させ、またケタミン(44mg/kg)およびトラジン(1.5mg/kg)の筋肉内投与により麻酔した。所定の時間間隔で眼窩後方血管から血液試料を取り、グルコースおよびインスリンのバイオアッセイ向け血漿または血清のいずれかとして適正に調製した。動物は、実験の終りに犠牲とし、局所的毒性の徴候についてラットGI粘膜を観察した。
【0208】
ポリマー膨潤性に基づいて、GRDFは、薬物および担体の両方を、同一の部位(胃)に同時に送達することができる徐放型系をもたらすように設計した。薬物のPK/PDプロフィルが、非徐放型剤形のそれと異なっているはずであると予想される。典型的には、活性剤および送達剤が放出を終わるのに十分なだけ長く胃内滞留型剤形を胃内に保有することができれば、Cmaxはより低いであろうが、作用時間範囲はより長いはずである。二層型錠剤によって、胃内滞留型および持続されるへパリンPDプロフィルを達成することができるかどうかチェックするために、ラット試験および霊長類試験の両方を行った。
【0209】
へパリン/SNAC吸収性測定のため、各動物について2錠のミニ錠剤を、ラットに経口投与し、それぞれの所定の時点(群1について0、15、30、45、および60分;群2、3、および4について0、30、90、120、および180分)に血液試料を採取した。実験の終りに錠剤の胃内滞留、および胃液のpHを剖検によりチェックした。結果を表5に掲げた。このラット試験からの4種の錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィルを図24〜31に示し、また表6中に要約してもいる。図29〜31はSNAC/C3濃度を示し、その場合C3はSNACの3-炭素代謝産物である。
【0210】
【表6】

【0211】
【表7】

【0212】
表5に示したように、膨潤性ポリマーPolyOX WSR 303を含んだ製剤を受け入れた群1、3、および4のそれぞれの動物では残留する錠剤2個が見出された。PolyOX WSR 303を含有しない錠剤を受け入れた群2のラットでは、胃内に錠剤の滞留は観察されなかった。胃内pHは、大部分4〜6の範囲にあり、SNAC(弱塩基)放出のため予想よりも幾分高かった。
【0213】
表6は、薬物/担体層中に放出制御ポリマーWSR N80を含有する二層型錠剤の経口投与後におけるへパリンおよびSNACの吸収性を示す。(したがって、それらからの持続される吸収プロフィルを予想した。)へパリン吸収プロフィルに示されるように、形状に関して、平均および個別のプロフィル両方についてへパリン吸収性は持続されるように見える。典型的には、Cmaxは約0.6〜1.8であるが、作用時間は約2時間である。作用時間の遅れは観察されなかった。
【0214】
(実施例7)
霊長類における生体内試験
試験計画
2種の関連する製剤の2つの剤形、キャプレットおよび錠剤について、4匹の絶食させたカニクイザル霊長類、オス2匹およびメス2匹で2群の交差試験を行った:試験A(製剤1、キャプレット)、試験B(製剤1、錠剤)、試験C(製剤2、キャプレット)、および試験D(製剤2、錠剤)。試験A/試験Bおよび試験C/試験Dの実験を、それぞれ1週間の休薬期間をおいて交差させた。用量レベルはへパリンについて30mg/kg、およびSNACについて80mg/kgであった。霊長類IDおよび体重は、
試験A---1M(オス)(5.1kg)、3M(5.2kg)、4F(メス)(6.7kg)、5F(6.4kg)---平均5.85kg、
試験B---1M(5.5kg)、3M(5.4kg)、4F(7.2kg)、5F(6.2kg)---平均6.08kg、
試験C---16M(4.4kg)、17M(3.7kg)、14F(3.2kg)、15F(3.1kg)---平均3.6kg、
試験D---16M(4.3kg)、17M(3.8kg)、14F(3.1kg)、15F(3.2kg)---平均3.6kg
であった。
【0215】
血液試料は、所定の時点(0、30、60、90分および2.5時間、3時間、4時間、ならびに6時間)に収集し、へパリン(APTT/FXa)およびSNAC吸収について検定した。これらの試験において試験した剤形および対応する製剤を、投与量と共に下記に例示する:
試験A---製剤1/キャプレット(キャプレット3錠/サル)
試験B---製剤1/錠剤(錠剤3錠/サル)
試験C---製剤2/キャプレット(キャプレット2錠/サル)
試験D---製剤2/錠剤(錠剤2錠/サル)
【0216】
製剤1および2は図3に示しており、その中の数字は重量%を表す。
【0217】
二層型キャプレット/錠剤の調製手順
試験A向け二層型キャプレット:3.92gのWSR 303および35.2mgのステアリン酸マグネシウムを十分に手混合して、部分Aを形成した。4.82gのへパリン/SNAC同時乾燥粉末(KF、19.06%)、1.172gのWSR N80、および52.8mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを与えた。0.3022gの部分Bは、重さをはかり、第1層としてキャプレット成形型(サイズ#2)に加えた。次いで0.1978mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で圧力1.5トンのもとで圧縮して、500mgのキャプレットを成形し、このものは53mgのへパリンと、141mgのSNACを含有していた。霊長類1匹当りキャプレット3錠に基づいて、用量レベルは5.85kg霊長類について、へパリン27mg/kgおよびSNAC 72mg/kgであり、または5.25kg霊長類について、へパリン30mg/kgおよびSNAC 80mg/kgであった。
【0218】
試験C向け二層型キャプレット:4.5gのWSR 303および50mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Aを形成した。4.95gのSNAC/へパリン同時乾燥粉末(KF、19.06%)、0.45gのWSR N80、および50mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを与えた。0.2725gの部分Bは、重さをはかり、第1層としてキャプレット成形型(サイズ#2)に加えた。次いで0.2275mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で圧力1.5トンのもとで圧縮して、500mgのキャプレットを成形し、このものは54.7mgのへパリンと、145.8mgのSNACを含有していた。霊長類1匹当りキャプレット2錠に基づいて、用量レベルは3.6kg霊長類について、へパリン30.4mg/kgおよびSNAC 81mg/kgであった。
【0219】
試験B向け二層型錠剤:4.474gのWSR 303および50mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Aを形成した。5.306gのSNAC/へパリン同時乾燥粉末(KF、17.12%)、1.34gのWSR N80、および50mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを与えた。0.2751gの部分Bは、重さをはかり、第1層として錠剤成形型(円筒形、サイズ#2直径)に加えた。次いで0.1859mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で圧力1.5トンのもとで圧縮して、461mgの錠剤を成形し、このものは49.3mgのへパリンと、131.4mgのSNACを含有していた。霊長類1匹当り錠剤3錠に基づいて、用量レベルは5.85kg霊長類について、へパリン25.3mg/kgおよびSNAC 67.4mg/kgであり、または5.25kg霊長類について、へパリン28.2mg/kgおよびSNAC 75.1mg/kgであった。
【0220】
試験D向け二層型錠剤:4.5gのWSR 303および45mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Aを形成した。4.778gのSNAC/へパリン同時乾燥粉末(KF、17.12%)、0.45gのWSR N80、および45mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを与えた。0.2476gの部分Bは、重さをはかり、第1層として錠剤成形型(円筒形、サイズ#2直径)に加えた。次いで0.2134mgの部分Aを、第2層として成形型内の部分Bの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で圧力1.5トンのもとで圧縮して、461mgの錠剤を成形し、このものは50.7mgのへパリンと、135.2mgのSNACを含有していた。霊長類1匹当り錠剤2錠に基づいて、用量レベルは3.6kg霊長類について、へパリン28.2mg/kgおよびSNAC 75.1mg/kgであった。
【0221】
へパリン/SNACアッセイ手順
へパリンELISA試験キット(DSL Inc.)を使用してラット血清インスリン濃度を測定した。定量限界(LOQ)は12.5μU/mLと立証されており、較正されたアッセイの直線範囲は250μU/mLまでである。血液グルコース濃度の変化は、グルコメータを使用して測定した。
【0222】
霊長類における二層型キャプレットのX線監視胃内滞留性試験
試験計画
X線により霊長類における二層型キャプレット(サイズ#2)の胃内滞留性を調べるため、図4に例示するように、膨潤性ポリマー中に硫酸バリウムビーズを埋め込んだ:
試験は、4匹の絶食させたアカゲザル霊長類:MONKEY 1(F(メス)、5.0kg)、MONKEY 2(F、5.2kg)、MONKEY 3(M(オス)、4.4kg)、およびMONKEY 4(M(オス)、4.4kg)で行った。上記の霊長類吸収性試験における製剤2の硫酸バリウム埋め込みキャプレットは、これらの霊長類に経口投与した。所与の時点(0、30、60、90分および2.5時間、3時間、4時間、ならびに6時間)にX線写真を撮影して、霊長類内のキャプレットの位置を突き止め、一方血液試料を収集して、へパリン吸収(APTT/FXa)を測定した。用量レベルは、へパリン30mg/kgおよびSNAC 80mg/kgであった。へパリン吸収が検定された。
【0223】
二層型GRDF(製剤1および2)の霊長類における吸収性試験
2種の関連する製剤の2つの剤形、キャプレットおよび錠剤について、4匹の霊長類で2群の交差試験を行った:試験A(製剤1、キャプレット)、試験B(錠剤、製剤1)、試験C(製剤2、キャプレット)、および試験D(製剤2、錠剤)。試験A/試験Bおよび試験C/試験Dの実験を、それぞれ交差させた。へパリンおよびSNAC吸収性の両方を解析し、その結果を図32〜43に示した。個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィルを図44〜59に掲げた。C3はSNACの3炭素代謝産物を表す。
【0224】
すべての4種の剤形についてのへパリン/SNAC吸収性プロフィルは、我々の非徐放型剤形(ポリマー賦形剤を含まない液体および固体)のそれと異なっていた。作用時間の遅れおよび延長(それぞれ45分までおよび4時間)が観察された。典型的には、Cmax(抗FXaについて約0.5〜1IU/ml)がより低く、一方作用時間(約4〜6時間)が長かった。作用時間の遅れ20〜45分は、へパリン/SNAC層中の放出制御ポリマーWSR N80の含量に依存していた。WSR N80の含量が5重量%から13重量%まで増加すると、作用時間の遅れは約20分から約45分まで増加した。4〜6時間後、へパリン吸収は急速にゼロまで落ちた。これは、それらの機械的強度を失ったため、またはまさにこの時間内にへパリン/SNACが完全に放出されたため、胃から剤形物が一掃された結果起こったことであろう。
【0225】
したがって、これを明らかにするため、霊長類試験Aに使用したキャプレットで膨潤性試験を行った。そのデータを表7に示した。キャプレットが3時間後にそれらの機械的強度を失いはじめることが観察された。このことは、霊長類試験Aでは4時間でへパリン吸収がゼロまで突然低下すること(図36)を説明できるであろう。
【0226】
【表8】

【0227】
霊長類交差試験について予備データ解析を行い、その結果を次表に示した。表8に示すように、同一のサルについて錠剤およびキャプレットは同様なTmaxを有したが、すべての霊長類4匹について錠剤は、キャプレットよりも著しく高い(約1.5〜2倍)AUCを示した。AUCの差異におけるこの有意性は、製剤2について相関性分散分析の結果によって確認され(表10)、錠剤がキャプレットよりも良好であることを示唆している。しかし錠剤1については、どちらが良好であるか結論に達していない(表9)。
【0228】
【表9】

【0229】
【表10】

【0230】
【表11】

【0231】
硫酸バリウム埋め込み二層型キャプレットの調製
4.1562gのWSR 303および41.6mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Aを形成した。4.1083gのSNAC/へパリン同時乾燥粉末(KF、10.97%)、0.4156gのWSR N80、および41.6mgのステアリン酸マグネシウムを十分に混合して、部分Bを与えた。0.2998gの部分Aは、重さをはかり、第1層としてキャプレット成形型(サイズ#2)に加えた。次いで約35mgの予め作製した硫酸バリウムビーズ2粒を部分A粉末の表面近くに、2つのビーズが認識しやすいように十分離れているような形で埋め込んだ。次いで0.3261mgの部分Bを、第2層として成形型内の部分Aの上部に加えた。混合物は、Carverプレス上で圧力1.5トンのもとで圧縮して、キャプレットを成形し、このものは71.5mgのへパリンと、190mgのSNACを含有していた。霊長類1匹当りキャプレット2錠に基づいて、用量レベルは4.75kg霊長類について、へパリン30mg/kgおよびSNAC 80mg/kgであった。
【0232】
二層型キャプレットに関する霊長類における胃内滞留試験
霊長類実験は、上述の製剤のBaSO4ビーズ埋め込みキャプレットでサル4匹について行い、X線監視によりキャプレットの胃内滞留性を調べた。キャプレットの大きさは、約サイズ#1カプセルであり、サル4匹のそれぞれにキャプレット2錠を経口投与し、それはへパリン30mg/kgおよびSNAC 80mg/kgに対応していた。6時間までの所与の時点に、X線写真を撮影して、霊長類におけるキャプレットの位置を突き止め、一方血液試料を収集して、へパリン吸収性(APTT/FXa)を測定した。
【0233】
サル4匹のうち3匹(MONKEY 2、MONKEY 1、およびMONKEY 3)について、時間ゼロに投与した両キャプレットが、少なくとも6時間(最長実験時間)胃内に保持された。他のサル(MONKEY 4)については、キャプレット2錠は約60〜90分間胃内に留まっただけで、次いで小腸に出た。
【0234】
同霊長類試験(n=4、アカゲザル)についての対応するへパリン吸収結果は、図64および65に示した。約60〜90分でキャプレットが胃から出てきた霊長類MONKEY 4を除いて、他の霊長類3匹については著しいへパリン吸収が観察されなかった。血液の抗FXa濃度は霊長類MONKEY 4について60分で約0.3IU/mlに達し、TmaxとしてAPTTレベル約40秒に対応する。
【0235】
SNAC分析結果も得られた(図66〜68)。すべての霊長類4匹について著しいSNACおよびC3吸収が観察された。へパリン吸収状況とは異なり、霊長類MONKEY 4におけるSNAC/C3吸収は最高ではなく、この霊長類と他の霊長類3匹との間の差異は、それほど劇的ではなかった。SNAC/C3分析の間、C5関連ピークが観察された。標準がなかったため、それは定量されなかった(図68)。
【0236】
(実施例8)
へパリン/SNACについての浮揚性、霊長類へパリン送達性
下記に示す配合を有する、図69に示した設計に基づいた2種のへパリン/SNAC製剤を調製した:
【0237】
【表12】

【0238】
湿式造粒方法によりSNAC、へパリン、キトサン、およびEudragit(登録商標)RSOPを調製して、顆粒内コアを生成させ、また顆粒外側にMethocel、クエン酸、重炭酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを塗布した。495.5mg錠剤を硬度9kpまで加圧成形し、また990.99mg錠剤を硬度8kpまで加圧成形した。
【0239】
それぞれの錠剤について、下記に示す浮揚試験を行った:
【0240】
【表13】

【0241】
その後、上記の錠剤が水中で浮揚されるためには硬度3kp未満を要することを見極める試験を行った。
【0242】
水ではなく疑似胃液の酸性媒質で錠剤が浮揚されることは、浮揚挙動が、重炭酸ナトリウムと酸性の試験用媒質との反応に依存することを示している。
【0243】
リン酸緩衝液(pH=6.8)中においてSNACおよびへパリンについて、2時間にわたり溶解%に基づく溶解プロフィルが得られた。その結果を図70に示している。
【0244】
上記の製剤を、アカゲザルに経口投与した。350分の期間にわたって血漿へパリン濃度が観察されなかった。重炭酸ナトリウムの存在により、へパリンの吸収が抑制されたと考えられる。
【0245】
(実施例9)
4-CNAB/インスリン胃内滞留型送達系
図69と同様の湿式造粒/外部顆粒化設計により、下記の2種の製剤を調製し、加圧成形して錠剤とした。
【0246】
【表14】

【0247】
製剤AおよびBは、アカゲザルオス4匹の同一群に経口栄養により投与し、約6時間の期間にわたってグルコースの減少パーセントを求めた。製剤Aについての平均した結果を図71に示し、また製剤Bについての結果を図72に示している。
【0248】
(実施例10)
Eudragitの添加によるSNAC溶解の抑制
SNACの溶解性を、Eudragit RS30D(ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレート)クロリド))により被覆または造粒した製剤、あるいはEudragit RSPO 33.4%とブレンドしたSNAC顆粒で検討した。Eudragitの製品列は、Rohm Pharma GmbH、Westerstadt、Germanyから入手できる。
【0249】
下記のSNAC製剤を調製した:
製剤1:乾式造粒SNAC顆粒、
製剤2:Eudragit RS30D 20.5%で被覆した乾燥SNAC顆粒、
製剤3:SNACの乾燥顆粒、
製剤4:Eudragit RS30D 12.6%と共に造粒したSNAC顆粒、
製剤5:Eudragit RS30D 33.4%と共に造粒したSNAC顆粒、
製剤6:Eudragit RSPO 33.4%とブレンドしたSNACの乾燥顆粒。
【0250】
溶解%に基づく上記のSNAC製剤の溶解速度を、pH6.8を有するリン酸緩衝液中で求め、下表に示している:
【0251】
【表15】

【0252】
製剤1の溶解時間対製剤2の溶解時間を比較するプロットを図73に示している。製剤1、4、5および6を比較するプロットを図74に示している。
【0253】
(実施例11)
ヘパリン/SNACの制御放出型製剤
送達剤SNACの部分をEudragit RS30D 33.4%と共に造粒することにより制御放出型製剤を調製した。下表では「遅溶解性SNAC」と呼ぶ。SNACは、乾式造粒顆粒の形でも添加し、「急速溶解性SNAC」と呼ぶ。すべてのSNACが「急速溶解性SNAC」であるすなわち乾式造粒SNAC顆粒の形で添加される即時放出型製剤をも調製した。それぞれの製剤の成分を、下記に示している:
【0254】
【表16】

【0255】
へパリン、SNAC(Eudragit RS30Dを含む、または含まないもの)、リン酸水素カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、および水は湿式造粒により製剤して、内部コアを形成していた。リン酸水素カルシウム、Cab-O-Sil、およびステアリン酸ナトリウムは外部顆粒外側部分を形成していた。内部顆粒および外部顆粒コアを加圧して錠剤を成形した。
【0256】
制御放出型製剤のSNACおよびへパリンの溶解プロフィルを図75に示している。6時間の期間にわたって測定した、制御放出型製剤をカニクイザル8匹に投与した場合の抗ファクターXa活性を図76に示している。
【0257】
上記において言及した特許、出願、試験方法、および出版物は、それら全体を参照により本明細書に組み込んでいる。
【0258】
本発明の多くの変形形態が、上記の詳細な説明に照らして当業者の心に浮かぶであろう。すべてのこのような明らかな変形形態は、添付する特許請求範囲の完全に意図された範囲内にあるものである。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】一方の層がSNAC、へパリン、および放出制御ポリマーであり、他方の層が膨潤性ポリマーである物理的ブレンドを有する二層型キャプレット(caplet)を示す。
【図2】同時乾燥SNAC/へパリン、放出制御ポリマー、および膨潤性ポリマーを有する一層型キャプレットを示す。
【図3】製剤1および2
【図4】膨潤性ポリマー中に硫酸バリウムビーズを埋め込んだ図
【図5】図5は、37℃のSGF中における、分子量の異なった3つのポリエチレンオキシドの膨潤プロフィルを示す。
【図6】膨潤プロフィルを示す。
【図7】錠剤膨潤性に及ぼす錠剤成形圧力の効果
【図8】錠剤膨潤性に及ぼす錠剤成形圧力の効果
【図9】初期膨潤性に及ぼすNa2HPO4の効果
【図10】錠剤の膨潤性
【図11】装填二層型錠剤の膨潤性
【図12】生体外における3種の異なるGRDFからのへパリンおよびSNACの放出
【図13】錠剤膨潤性およびへパリン/SNAC放出の関連
【図14】二層型錠剤からの放出速度
【図15】二層型錠剤からの放出速度
【図16】へパリンおよびSNACの放出プロフィル
【図17】へパリンおよびSNACの溶解プロフィル
【図18】へパリンおよびSNACの溶解プロフィル
【図19】へパリンおよびSNACの溶解プロフィル
【図20】へパリンおよびSNACの溶解プロフィル
【図21】二層型錠剤からのSNACの溶解
【図22】二層型錠剤からのへパリンの溶解
【図23】二層型錠剤からのへパリン/SNAC溶解性
【図24】ラット試験からの錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィル
【図25】ラット試験からの錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィル
【図26】ラット試験からの錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィル
【図27】ラット試験からの錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィル
【図28】ラット試験からの錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィル
【図29】ラット試験からの錠剤のへパリン/SNAC吸収性プロフィル
【図30】ラットにおけるへパリンの経口送達性
【図31】ラットにおけるへパリンの経口送達性
【図32】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図33】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図34】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図35】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図36】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図37】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図38】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図39】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図40】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図41】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図42】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図43】霊長類におけるへパリンの経口送達性
【図44】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図45】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図46】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図47】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図48】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図49】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図50】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図51】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図52】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図53】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図54】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図55】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図56】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図57】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図58】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図59】個々のサルに関する交差実験についての比較プロフィル
【図60】二層型キャプレットに関する霊長類における胃内滞留試験
【図61】二層型キャプレットに関する霊長類における胃内滞留試験
【図62】二層型キャプレットに関する霊長類における胃内滞留試験
【図63】二層型キャプレットに関する霊長類における胃内滞留試験
【図64】同霊長類試験(n=4、アカゲザル)についての対応するへパリン吸収結果
【図65】同霊長類試験(n=4、アカゲザル)についての対応するへパリン吸収結果
【図66】SNAC分析結果
【図67】SNAC分析結果
【図68】SNAC分析結果
【図69】へパリン/SNAC製剤
【図70】リン酸緩衝液(pH=6.8)中においてSNACおよびへパリンについて、2時間にわたり溶解%に基づく溶解プロフィル
【図71】製剤Aについての平均した結果
【図72】製剤Bについての結果
【図73】製剤1の溶解時間対製剤2の溶解時間を比較するプロット
【図74】製剤1、4、5および6を比較するプロット
【図75】制御放出型製剤のSNACおよびへパリンの溶解プロフィル
【図76】制御放出型製剤をカニクイザル8匹に投与した場合の抗ファクターXa活性
【符号の説明】
【0260】
GRDDS 胃内滞留型薬物送達系
GRDF 胃内滞留型剤形
SNAC N-(8-[2-ヒドロキシベンゾイル]-アミノ)カプリル酸、一ナトリウム塩および二ナトリウム塩を含む。
4-CNAB 4-[(2-ヒドロキシ-4-クロロベンゾイル)アミノ]ブタノエート、一ナトリウム塩を含む(4-[(4-クロロ-2-ヒドロキシ-ベンゾイル)アミノ]ブタン酸としても知られる)。
SGF 疑似胃液
SIF 疑似腸液
IMMC 空腹期強収縮群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性剤と、
(b)送達剤化合物と、
(c)膨潤性ポリマー、または粘膜付着剤の少なくとも1種と
を含む医薬組成物。
【請求項2】
放出制御ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記膨潤性ポリマーが、架橋ポリ(アクリル酸)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタンヒドロゲル、無水マレイン酸ポリマー、セルロースポリマー、多糖、デンプン、およびデンプン系ポリマーから選択される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記膨潤性ポリマーがポリ(アルキレンオキシド)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ポリ(アルキレンオキシド)が、モノマー単位としてエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの少なくとも1種を含有するポリマーである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記膨潤性ポリマーが、500,000ダルトンを超える分子量を有するポリ(エチレンオキシド)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記膨潤性ポリマーが、7,000,000ダルトンを超える分子量を有するポリ(エチレンオキシド)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記膨潤性ポリマーがPolyOX(登録商標)WSR 303である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記放出制御ポリマーが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリレート)、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、キトサン、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー、および多糖から選択される、請求項2から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記放出制御ポリマーが、約300,000ダルトン以下の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)である、請求項2から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記放出制御ポリマーが、約200,000ダルトン以下の分子量を有するポリ(エチレンオキシド)である、請求項2から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記放出制御ポリマーがPolyOX(登録商標)WSR N80である、請求項2から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記放出制御ポリマーがポリ(アクリル酸)、またはポリ(アクリレート)である、請求項2から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記放出制御ポリマーがEudragit(登録商標)RS 30Dである、請求項2から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記送達剤化合物が、放出制御ポリマーで被覆され、または放出制御ポリマーと共に造粒されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記粘膜付着剤が、アリルスクロース、スクロースのアリルエーテル、アリルペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、またはジビニルグリコールで場合によって架橋されたポリアクリル酸またはポリアクリレート;カルボキシルビニルポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、デキストランポリマー、ポリメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、トラガカント、アルギン酸、ゼラチン、アラビアゴム、ならびに、β-(1-4)-結合D-グルコサミン単位および/またはN-アセチル-D-グルコサミン単位で場合によって中断された多糖、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記粘膜付着剤が、キトサン、またはカルボキシビニルポリマーから選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記粘膜付着剤がCarbopol(登録商標)934 Pである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
膨潤性ポリマーおよび放出制御ポリマーの両方を含有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記活性剤が、哺乳動物に経口投与した後1.5時間まで継続する吸収性を有するものである、請求項1から19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記活性剤が、哺乳動物に経口投与した後6.0時間まで継続する吸収性を有するものである、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
哺乳動物での経口投与の約30分以内に、体積が少なくとも約10〜15%増加する、請求項1から21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
胃内においてその構造完全性を実質的に失わずに、少なくとも6時間以上10〜15%の体積増加を保持する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
活性剤と送達剤化合物とを含む胃内滞留型薬物送達系を含む経口用医薬組成物であって、経口投与すると、少なくとも1.5時間胃内に存在し続ける医薬組成物。
【請求項25】
経口投与すると、少なくとも3時間胃内に存在し続ける、請求項24に記載の経口用医薬組成物。
【請求項26】
経口投与すると、少なくとも6時間胃内に存在し続ける、請求項25に記載の経口用医薬組成物。
【請求項27】
哺乳動物での経口投与の30分以内に、その投与前の体積と比較して少なくとも約10%体積が増加する、請求項24から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
増加した体積が少なくとも6時間維持される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
経口投与後少なくとも1.5時間は、胃内において実質的に損なわれていないままである、請求項24から28のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項30】
経口投与後少なくとも3時間は、胃内において実質的に損なわれていないままである、請求項29に記載の経口用医薬組成物。
【請求項31】
経口投与後少なくとも6時間は、胃内において実質的に損なわれていないままである、請求項30に記載の経口用医薬組成物。
【請求項32】
前記送達剤化合物の放出が制御される、請求項1から31のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項33】
2つの層を含み、その第1層が膨潤性ポリマーから本質的になり、その第2層が活性剤と送達剤化合物とを含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項34】
前記第2層が放出制御ポリマーをさらに含む、請求項33に記載の経口用医薬組成物。
【請求項35】
ガス発生成分をさらに含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項36】
前記ガス発生成分が重炭酸塩および酸を含む、請求項35に記載の経口用医薬組成物。
【請求項37】
前記送達剤化合物がSNAC、または薬学的に許容できるその塩である、請求項1から36のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項38】
前記活性剤がへパリンである、請求項37に記載の経口用医薬組成物。
【請求項39】
前記送達剤化合物が4-CNAB、またはその塩である、請求項1から36のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項40】
前記活性剤がインスリンである、請求項39に記載の経口用医薬組成物。
【請求項41】
請求項1から40のいずれか一項に記載の医薬組成物を経口投与するステップを含む、哺乳動物に活性剤を投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【公表番号】特表2008−528636(P2008−528636A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553389(P2007−553389)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003899
【国際公開番号】WO2006/084164
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500139958)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (28)
【Fターム(参考)】