説明

胃内pH条件に応じて溶解性が異なる少なくとも1つの有効成分をベースとする経口剤形

本発明の技術分野は、溶解性が胃内pHに応じて大幅に変化する少なくとも1つの有効成分(AP)を有する経口剤形、ならびにそれに関連する治療および投与方法の分野である。
本発明は、APを含む経口剤形において、個体の試料に経口投与されたこの剤形が、個体の摂食または絶食状態にかかわらず、Cmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にするために、前記APを含み、前記APの放出制御を可能にするコーティングまたはマトリックスの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、胃内pH条件に応じて溶解性が大幅に異なる有効成分(AP)を有する経口剤形、ならびにそれに関連する治療および投与方法の分野である。
【0002】
本明細書では、略語「AP」は、ロサルタンを除く単一の有効成分、または複数の有効成分の混合物を意味する。さらに、略語「AP」は、APそれ自体、および/または少なくとも1つの塩、エステル、もしくはその代謝物を含めてその薬剤として許容できる他の形を意味する。
【0003】
一般的特徴
諸問題
治療の質および再現性の保証は、任意の剤形、特に経口AP剤形にとって主要な要件である。
【0004】
しかし、いくつかの経口AP剤形はこの要件を満たさず、したがって同じ薬用量で経口投与された同じ治療剤形で、適切かつ有効な治療的保護から利益を得る患者もいれば、不正確に治療され、かつ/またははるかに重篤になり、有害な副作用の犠牲者となる患者もいるということが起こり得る。
【0005】
このような経口AP剤形は、不規則な血漿中プロファイルを招き、すべての患者に均質であり、有効であり、かつ忍容性が高い治療的処置を保証しない。
【0006】
これらの重大な欠点は、1日1回または複数回投与される可能性がある速放性経口剤形(IRF:immediate−release form)で観察される。
【0007】
具体的には、APの経口IR剤形を投与した後に得られた血漿中濃度プロファイルから、1〜25%の患者では、血漿中濃度ピークが高く、しばしば早期に生じる一方、大部の分患者では、血漿中濃度ピークがより低く、後で生じることが観察されている。
【0008】
薬物動態プロファイルの変化は、全身状態、医薬品を摂食状態それとも絶食状態で服用するか、あるいは服用時間に応じて同じ患者で観察されることがある。
【0009】
APの早期および大量の放出を伴うこの高い変動性は、特にAPが抗高血圧剤である場合に重大な結果を招くことがある。
【0010】
まず、濃度ピークが非常に大きな振幅を有する患者は、APが抗高血圧剤である場合、重大な副作用、例えば血圧低下を被り、あるいはAPが血糖降下剤である場合、血糖低下を被ることがある。
【0011】
次に、ピーク後の血漿中濃度の早期の低下は、次回投与時刻の直前のAPの非常に低い濃度に反映される。したがって、ピークに対応するAPの濃度過剰に曝された後、これらの患者は、次回投与時刻の直前の治療が不十分になる。
【0012】
最後に、この高い変動性によって、開業医はすべての患者の処方投与量を制限し、その結果、ある種の患者は不正確に治療されることがある。
【0013】
したがって、具体的には1日1回投与することができる剤形について、血漿中濃度プロファイルの不規則な挙動を回避することを可能にする経口AP剤形を利用できることは有利となるはずである。言い換えれば、剤形によって、APを大量および/または早期および/または急速に放出することなく、血漿中濃度プロファイルの均質集団が得られることは有利となるはずである。したがって、この目的は、APの徐放剤形の探求とは異なる。
【背景技術】
【0014】
一体化経口剤形および多微粒子経口剤形が知られている。
【0015】
一体化剤形
国際公開第98/24411号(A)には、ブスピロンを使用する治療的処置方法であって、ブスピロンのバイオアベイラビリティを増大させ、その排除、代謝物の形成、さらに薬物動態パラメータの変動性を低減するようにブスピロンと十分量のネファゾドンとを含む速放性剤形(例えば、錠剤またはゲルカプセル剤)を経口投与することを特徴とする方法が記載されている。ネファゾドンとブスピロンとのこの組合せは、米国特許第5431922号(B)(国際公開第98/24411号(A)の3頁、7〜16行)に開示されたブスピロンの放出制御性/徐放性製剤で観察される薬物動態パラメータの高いレベルの変動性の問題を克服するものと想像される。
【0016】
米国特許第6248359号(B)は、オキシブチニンを使用して尿失禁を治療するためのマルチタブレット系を開示する。この系は、オキシブチニンを短時間(例えば、6時間未満)にわたって放出する第1の錠剤、およびオキシブチニンを長時間(18〜24時間)にわたって放出する第2の錠剤を含む。この系は、オキシブチニンを用いた治療に応答して、個体間の変動性を相殺することができるものとして提供されている。これらの錠剤はそれぞれ、例えばオキシブチニンコア、および複数のコートを含む。オキシブチニンは、酸性媒体中で高い溶解性を有する。この溶解性は、胃内pH条件に応じて大幅には変化しない。
【0017】
多微粒子剤形
国際公開第96/11675号(A)には、医薬的および/または栄養的有効成分(AP)を経口投与するための、サイズが1000μm以下のマイクロカプセルが記載されている。これらのマイクロカプセルは、それ自体フィルム形成性ポリマー(エチルセルロース)、疎水性可塑剤(ヒマシ油)、界面活性および/または滑剤(ステアリン酸マグネシウム)、ならびに含窒素ポリマー(ポリビニルピロリドン:PVP)の混合物からなるコーティング材料でコートされた粒子からなる。これらのマイクロカプセルは、小腸に長時間(少なくとも5時間)残留し、この滞在時間中に、小腸で自然の通過時間より長時間にわたってAPの吸収を可能にするその能力も特徴とする。
【0018】
国際公開第03/030878号(A)には、APを遅延放出、制御放出、および限定放出するための系であって、APの放出開始の2重機序:1)胃において、pHの変化なしに、制御時間後に開始される「時間依存的」放出、および2)剤形が腸に進入するとpHの上昇によって開始される「pH依存性の」放出を特徴とする系が記載されている。直径200〜600ミクロンのこれらのマイクロカプセルは、融点が40〜90℃の植物ワックス(Lubritab(登録商標))などの疎水性化合物Bと組み合わせたEudragit(登録商標)Lタイプの親水性ポリマーA(B/Aの比が0.2〜1.5である)をベースとするコーティング被膜を特徴とする。
【0019】
米国特許出願第2005/0059667号(A)は、顆粒を圧縮することによって得られた錠剤の形のラノラジンの徐放性製剤に関する。顆粒はそれぞれ、例えばラノラジン;メタクリル酸コポリマー(Eudragit(登録商標)L 100−55)、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ならびにメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートのコポリマー(Eudragit(登録商標)NE 30D)など少なくとも1つの部分的にpH依存性の結合剤をベースとする。顆粒を、ステアリン酸マグネシウムおよびクロスカルメロースナトリウムと混合して、圧縮する。腸溶性コーティングまたはOpadry(登録商標)をベースとするコーティングで、錠剤をコートすることができる。メタクリル酸コポリマーなど、部分的にpH依存性の結合剤は、基本的にpH5.5未満で不溶であり、pH 5.5超で可溶である。この製剤は、1日2回経口投与することができ、ラノラジンの溶解速度を制御することが可能であり、550〜7500ng塩基/mlの血漿中濃度を維持する。前記特許には、ラノラジンの問題は、低い胃内pH値で高い溶解性を示す問題であることが示唆されている。ラノラジンは、血中半減期が短い。低い胃内pH値でのこの高い溶解性によって、ラノラジンの急速な吸収および排除、さらには望ましくない血中変動、ならびに短い作用時間を招く。その結果、適切な治療を得るためには、経口投与を頻繁にしなければならない。
【0020】
米国特許出願第2005/0059667号(A)による発明は、狭心症を治療するのに有効な血漿中濃度をもたらすと思われる上記の製剤の1日1回または2回の投与を推奨することによってこれを克服することを特許請求している。
【0021】
米国特許第5576533号(B)には、個々に粘膜付着性膜でコートされているフロセミドの複数の放出制御微粒剤を含む経口剤形が記載されている。これらの剤形は、個体間および/または個体内の変動性を低減させるものとして提供されている。
【0022】
これらの周知の経口剤形はどれも、血漿中濃度プロファイルの個体間および/または個体内の再現性、ならびに早期および大量の放出の危険の排除、投与から次回投与までの期間の治療カバーの点から保証をもたらすものとして提供されていない。
【0023】
したがって、前記経口剤形は改善することができる。
【0024】
本発明者らの知る限りでは、したがって、従来技術は、不規則な血漿中プロファイルをもたらす経口剤形のこの問題への最初の解決策を提供することができる技術的提案に欠けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
これらの観察を根拠に、本発明者らは下記の目的を設定した。
【0026】
本発明の本質的な目的は、患者ごとおよび/またはある患者が従来技術で提案されているものに比べてより均一でより再現性のある質の治療に到達するように使用される経口AP剤形を提供することである。
【0027】
本発明の別の本質的な目的は、血漿中濃度プロファイルの最高濃度(Cmax)および/または最高血漿中濃度到達時間(Tmax)の個体間および/または個体内の標準偏差を低減するための手段を提案することである。
【0028】
本発明の別の本質的な目的は、特に血漿中プロファイルの濃度ピークが高くかつ早期である「急速な」危険な状態にある集団の出現を回避するために、周知の経口AP剤形の血漿中濃度プロファイルの個体間および/または個体内の変動性の低減を可能にする経口AP剤形を提供することである。
【0029】
本発明の別の本質的な目的は、治療の安全性(ある種の患者に対してAPの大量および/または急速な放出の危険の排除、ならびに投与から次回投与までの期間の治療カバー)の点から保証をもたらす経口AP剤形を提供することである。
【0030】
本発明の別の本質的な目的は、APの血漿中濃度過剰のいずれの危険からも患者を守り、したがっていずれの医薬品関連事故からも患者を保護する経口AP剤形を提供することである。
【0031】
本発明の別の本質的な目的は、血漿中AP濃度のピーク/谷の比を低減するための手段を提案することである。
【0032】
本発明の別の本質的な目的は、特に血漿中濃度の2つのプロファイル集団(「急速な」プロファイルの危険な状態にある一集団Prと「遅い」プロファイルの一集団Pl)の出現を回避するために、周知の経口AP剤形の血漿中濃度プロファイルの個体間および/または個体内の変動性を低減することができる経口AP剤形を提供することである。
【0033】
本発明の別の本質的な目的は、急速な集団Prを低減し、さらにはなくすための手段を提案することである。
【0034】
本発明の別の本質的な目的は、経口剤形について、上記の目的の少なくとも1つを満たし、具体的には血漿中プロファイルの個体間および/または個体内の変動性を低減するようにAPの放出を制御するための手段(APを含有するコーティングまたはマトリックス)の新規使用を提案することである。
【0035】
本発明の別の本質的な目的は、上記の目的の少なくとも1つを満たすようようにAPを含有するコーティングまたはマトリックスタイプのAPの放出を制御するための手段を含む経口剤形の新規使用を提案することである。
【0036】
本発明の別の本質的な目的は、経口剤形について、血漿中濃度プロファイルの個体間および/または個体内の変動性を低減し、特に投与後の最大血漿中濃度の個体間および/または個体内の標準偏差を低減するために、APの放出を制御するための手段(APを含有するコーティングまたはマトリックス)の新規使用を提案することである。
【0037】
本発明の別の本質的な目的は、血漿中濃度プロファイルの個体間および/または個体内の変動性を低減し、特に投与後の最大血漿中濃度の個体間および/または個体内の標準偏差を低減するために、APを含有するコーティングまたはマトリックスタイプのAPの放出を制御するための手段を含む経口剤形の新規使用を提案することである。
【0038】
本発明の別の本質的な目的は、上記の治療目的の少なくとも1つを満たす経口剤形を使用することを特徴とする治療方法を提供することである。
【0039】
上記の目標とする改善はすべて、APの速放を伴う経口剤形に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
この文脈において、本出願人の功績としては、
−患者間および/または同じ患者における治療の質の非再現性は、胃に存在するpH範囲における溶解性の大きな変動に関係する可能性があるという仮説を作成したこと。したがって、生体内吸収(bioabsorption)速度を調節(condition)する溶解性のこの変動性は、医薬品の薬物動態学的変動性において重要な要因となる;
−胃内pHにおけるこの変動性は、様々な制御できないパラメータ、特に摂食または絶食状態、投与時間、個体間および/または個体内の変動性、これらの胃腸状態に影響を及ぼす医薬品の作用などに依存することを認識したこと;
−最後に、この依存性を制限し、さらにはなくすための技術的解決策を想像したこと。この解決策は、急速な血漿中プロファイル集団Prを低減し、さらにはなくすことができ、かつ胃液酸度にかかわりなくAPの早期および/または大量および/または急速な放出を回避することができ、血漿中濃度プロファイルの個体間および/または個体内の変動性を低減する性質を有するAPを含有するコーティングまたはマトリックスの使用を推奨することを特徴とする。その際、第1に、治療の安全性が、患者のある集団に対するAPの経口投与の有害な結果を防止することによって改善され、第2に治療有効性が向上される。
【0041】
したがって、本発明は、とりわけ
→溶解性が、1.0〜5.5、好ましくは1.5〜5.0の胃内pH条件下で少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも30倍異なるAPを少なくとも1つ含む経口剤形における、
前記APを含み、前記APの放出制御を可能にするコーティングまたはマトリックスの使用であって、
ヒト個体の試料に経口投与されたこの剤形が、個体の摂食または絶食状態にかかわりなく、Cmaxおよび/またはTmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、
この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、
剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にするための使用;ならびに/あるいは
→溶解性が、1.0〜5.5、好ましくは1.5〜5.0の胃内pH条件下で少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも30倍異なるAPの放出制御を可能にするコーティングの形またはマトリックスに含有されているこのAPの使用であって、
ヒト個体の試料への経口投与後、個体の摂食または絶食状態にかかわりなく、Cmaxおよび/またはTmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、
この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、
剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする経口剤形を製造するための使用
を提案することによって、上記の目的を実現する。
【0042】
したがって、本発明は、胃内pHに応じて溶解性が異なる少なくとも1つのAPを含有する剤形に関する。
【0043】
したがって、本発明は、剤形を下記の実施例に記載するものとすることができる実験条件下でヒト個体の試料に経口投与する参照臨床試験の手段によって定義される。この臨床試験は、試験条件下で特異的に得られた薬物動態特性によって本発明を定義する。しかし、本発明は、この参照臨床試験の条件下における実施に限定されない。
【0044】
本発明による使用によって、個体間の血漿中濃度プロファイルの不規則性を低減し、さらにはなくし、その際に第1にAPの早期放出、したがって血漿中濃度過剰、およびそれに伴う副作用を回避し、第2に投与から次回投与までの治療カバーが欠ける可能性を回避することが可能になる。
【0045】
したがって、本発明によって利用され強調される技術的機能は、放出時間の延長ではなく、患者にとって有害となり得る治療の変動性の低減である。したがって、本発明によって、より良好な有効性およびより高い治療の安全性を確実にすることができる。
【0046】
胃内pHは、内因的にpH 1.0〜pH 5.5のpH範囲内で変動する値である。この変動は、同じ個体では特に摂食または絶食状態によって観察され、また個体間で観察される。さらに、胃内pHを改変する医薬品で治療されている患者もいるかもしれない。これは、例えばプロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール)または制酸薬についての場合である。
【0047】
本出願人は功績として、溶解性が胃内pHに大いに依存するAPによって、患者間および/または同じ患者において不規則な血漿中濃度プロファイルがもたらされることを観察した。
【0048】
本出願人はこの現象を完全には説明できないが、この血漿中濃度プロファイルの変動性は、胃内pHに応じてAPの溶解性の変動に由来することを示唆することができる。具体的には、APは吸収されるために、まず溶解されなければならない。したがって、この溶解ステップは、胃内pHに大いに依存する。したがって、同じ薬用量のAPの場合、患者の胃内pHに従って、APは完全にかつ速やかに溶解し、あるいは反対に患者によって、または同じ患者でも投与条件によって、胃では溶解しない。
【0049】
したがって、溶解性が胃内pH、溶解、したがって最終的に血漿中濃度プロファイルに大いに依存するAPは、個体間で、また同じ個体では日によって大きな変動を受けることが理解される。
【0050】
したがって、APの速放性剤形(IRF:immediate−release form、下記の定義を参照のこと)を薬用量100mgで20個体の試料に投与すると、Cmaxが個体間で10倍超異なる(70〜800ng/ml)。
【0051】
この血漿中濃度プロファイルの不規則性は、急速な集団と遅い集団の2つのプロファイル集団の出現を反映している可能性がある。
【0052】
急速な集団のプロファイルは、高い血漿中ピークが非常に早期に観察されるものである。
【0053】
遅い集団のプロファイルは、高い血漿中ピークが非常に早期には観察されないものである。
【0054】
急速な集団の場合、APの早期放出には、非常に有害な結果が3つある。
【0055】
(a)APの早期の血漿中濃度過剰に曝される患者は、血圧低下や血糖低下など、有害な副作用に潜在的に曝され;
(b)これらの危険の存在によって、処方される薬用量は制限され、ある種の患者から適切な治療を奪う恐れがあり;
(c)急速なプロファイルの場合、血漿中濃度は、次回投与時刻の直前に非常に低い。これらの患者の治療カバーは、したがって不十分である。
【0056】
したがって、本発明の本質的要素の1つは、APの放出制御を支配するように設計されたコーティングの形またはマトリックスに含有されているAPを含む経口剤形を治療目的で使用し、またはその使用を提案することであって、ヒト個体の試料に経口投与すると、個体の摂食または絶食状態にかかわりなく、Cmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に小さくすることを可能にすることを特徴とする。
【0057】
このような経口剤形を製造するための上記のコーティングまたは上記のマトリックスの使用も、本発明の目標とされている。
【0058】
上記の使用と関係する経口剤形も、本発明の完全な対象である。
【0059】
したがって、本出願人の功績としては、APを放出制御膜でコーティングすること、またはAPを放出制御マトリックスに含めることによって、AP放出プロファイルの個体間の不規則性をなくし、または低減することが可能になることを発見した。
【0060】
本発明は、1日1回それ自体を投与することができるが、この血漿中プロファイルの不規則な挙動を被るAPの使用を最適化するのに特に重要に思われる。したがって、本発明の目的は、主に放出時間の延長ではなく、特に患者に有害な治療の変動性の低減である。したがって、本発明によって、より良好な有効性および治療の安全性を確実にすることが可能になる。
【0061】
要約すれば、本出願人の発明的価値は、胃内pHに応じたAPの溶解性の変動性、およびこの胃内pHの変動性の問題をはっきり特定し、引き起こしたことに基本的に基づく。これらの不可解な要因から始めて、本出願人は、これらの要因の影響を制限する周知の一般的手段の新規で発明的な使用を提案した。これらの手段は、APを含有するコーティング膜またはマトリックスである。これらによって、APの溶解性が高いような胃内pHである患者の場合でさえ、胃におけるその急速および早期の放出を回避することが可能になる。
【0062】
定義
本発明では、「胃内pHに応じて溶解性が異なるAP」は、溶解性が、1.0〜5.5、好ましくは1.5〜5.0の胃内pH条件下で少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも30倍異なるAPである。
【0063】
この溶解性は、水性媒体中37℃で、考慮しているpHで維持して測定する。
【0064】
本明細書では、用語「リザーバー型」剤形は、APの少なくとも一部分が、その外側への拡散を制御する連続膜(またはフィルム)を通過することによって放出される剤形を意味する。記載することができる非限定的例には、APを含有し個別に膜でコーティングされた微粒子、またはAPの拡散を制御する膜でコーティングされた錠剤が含まれる。
【0065】
本明細書では、用語「マトリックス」剤形は、APが薬剤として許容できる賦形剤からなる固体連続相(マトリックス)に分散され、この相がAPの拡散を制御する連続膜 (またはフィルム)でコーティングされていない剤形を意味する。
【0066】
本明細書では、用語「速放」は、速放性剤形(IRF)による、APの大部分の比較的短時間での放出を意味する。例えば、
・少なくとも70%のAPが、経口摂取後1時間、好ましくは30分で、in vivo放出されるか、または
・少なくとも70%のAPが、1.4〜6.8の任意のpHのin vitro溶解試験で、1時間、好ましくは30分で放出される。
【0067】
本明細書で考慮しているin vitro溶解プロファイルはすべて、欧州薬局方、第4版、表題「固形経口剤形の溶解試験(Test of dissolution of solid oral forms)」の指示(SINK条件下37℃で行われ、100rpmで撹拌されるII型溶解テスト)に従って得られる。
【0068】
本明細書では、用語「放出制御剤形」は、APの少なくとも一部分が、速放性剤形の速度以下の速度で放出される剤形を意味する。この一部分は、例えば1%〜100%、好ましくは10%〜100%、さらにより好ましくは30%〜100%とすることができる。したがって、このような放出制御製剤は、例えば速放期、およびスローリリース期または遅延放出期を含むことができる。放出制御製剤は、この分野で周知である。例えば、Remington:The science and practice of pharmacy、第19版、Mack publishing Co.Pennsylvania,USAを参照のこと。放出制御は、特に徐放および/または遅延放出とすることができる。
【0069】
本発明で考慮している薬物動態パラメータは、下記のように定義される。剤形をN個のヒト個体の試料に経口投与した後、患者の各人について、個々の血漿中濃度プロファイルを測定し、それから一般的な個々の薬物動態パラメータ(Tmax、Cmax、C24h)を得る。
【0070】
・Tmaxは、血漿中濃度がその最高Cmaxに到達する時間である。
【0071】
・C24hは、投与して24時間後の血漿中濃度である。
【0072】
これらの個々のパラメータから、当業者は、一般的にこれらのパラメータの平均値、およびその標準偏差を算出する。これらのパラメータの考察に関して、さらに詳細は、次の書籍:Pharmacokinetics and pharmacodynamic Data Analysis、第3版、J.Gabrelssonら、Kristianstads Bocktryckeri AB,Sweden,2000で見られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
本発明の第1の特定の実施形態によれば、胃内pHに応じて溶解性が異なるAPは、37℃における薬用量Dの水(体積100ml)分散液が、1〜5.5の少なくとも1つの胃内pH値において、平衡状態では薬用量Dの全溶解が不可能であるAPである。
【0074】
本発明の第2の特定の実施形態によれば、胃内pHに応じて溶解性が異なるAPは、37℃における薬用量Dの水(体積100ml)分散液が
・1〜5.5の少なくとも1つの胃内pH値において、平衡状態では薬用量Dの全溶解が不可能であり、
・1〜5.5の少なくともそれ以外の1つの胃内pH値において、平衡状態で薬用量Dの全溶解が可能である
APである。
【0075】
本発明の第3の特定の実施形態によれば、剤形は、同じ薬用量のAPを含む速放剤形の1日投与量と同一であるいくつかの1日投与量によって定義される。
【0076】
最初の2つの実施形態と同様に、この第3の実施形態は、本発明の目的が、AP放出時間の延長ではなく、変動性の低減であることを説明する。
【0077】
AP溶解試験は、本発明を特徴付けるが、本発明が関係し、胃内pHに対するAPの溶解性の依存の問題を受けるAPを選択することも可能にする。
【0078】
有利なことには、本発明が関係しているAPは、非常に胃内pHに依存する溶解性を有するものであり、例えば下記のAPファミリー:
プロトンポンプ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト[すなわちARB:Angiotensin Receptor Blocker(アンジオテンシン受容体遮断薬)]、抗潰瘍剤、抗糖尿病剤、抗凝血薬、抗血栓剤、抗高脂血薬、抗不整脈剤、血管拡張薬、抗狭心剤、降圧薬、血管保護剤、妊娠促進薬、陣痛誘発剤および抑制剤、避妊薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗癌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、神経遮断薬、睡眠剤、抗不安剤、精神刺激薬、抗片頭痛剤、抗うつ薬、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤または抗アレルギー剤;鬱血性心不全、狭心症、左室肥大、心不整脈、心筋梗塞、反射性頻脈、虚血性心疾患、アテローム変性、糖尿病を伴う高血圧、門脈圧亢進、眩暈、徐脈、動脈性低血圧、水貯留、急性腎不全、起立性低血圧、および脳鬱血に対処するための作用剤、ならびに1つまたは複数のファミリー内にある上記のすべての製品の組合せを含む群から選択される。
【0079】
ARB、さらに具体的にはイルベサルタン、オルメサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、ゾラサルタン、タソサルタンを含む下位群から選択されたARBが好ましい。
【0080】
ARBは、利尿剤(ヒドロクロロチアジド)、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、ナトリウムチャネル遮断薬、α遮断薬、α−β遮断薬、血管拡張薬、α−アンタゴニスト、およびアドレナリン作動性ニューロン遮断薬から選択された少なくとも1つの有効補成分と組み合わせることができる。ARBのためのこれらの有効補成分に関して、さらに詳細は、例えば国際公開第03/035039号(A)の4頁19行〜4頁31行の一節に記載されている。
【0081】
ARB以外のAPの例としては、溶解性が大いにpHに依存し、かつ下記の化合物群:アセチルサリチル酸、カルバマゼピン、ペントキシフィリン、プラゾシン、アシクロビア、ニフェジピン、ジルチアゼム、ナプロキセン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、フェンチアザク、吉草酸エストラジオール、メトプロロール、スルピリド、カプトプリル、シメチジン、ジドブジン、ニカルジピン、テルフェナジン、アテノロール、サルブタモール、カルバマゼピン、ラニチジン、エナラプリル、シンバスタチン、フルオキセチン、アルプラゾラム、ファモチジン、ガンシクロビル、ファムシクロビル、スピロノラクトン、5−asa、キニジン、ペリンドプリル、モルフィン、ペンタゾシン、パラセタモール、オメプラゾール、ランソプラゾール、メトクロプラミド、アミノサリチル酸、ナリジクス酸、アモキシシリン、アモキシシリンとクラブラン酸カリウム、アンピシリン、アンピシリンとスルバクタム、アジスロマイシン、バカンピシリン、カルベニシリン−インダニル−ナトリウム(およびカルベニシリンの他の塩)、カプレオマイシン、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セファセロール、セフプロジル、セファドリン、セファマンドール、セフォニシド、セフォラニド、セフロキシム、セフィキシム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタキシジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフメタゾール、セフォテタン、セフォキシチン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、コ−トリアモキサゾール、サイクロセリン、ジクロキサシリン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン(およびエリスロマイシンエストール酸塩、エチルコハク酸塩、グルセプト酸塩、ラクトビオン酸塩、ステアリン酸塩など、他の塩)、エタンブトール−HClと他の塩、エチオナミド、ホスホマイシン、イミペネム、イソニアジド、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ロラカルベフ、メチシリン、メテナミン、メトロニダゾール、メトクロプラミド、メズロシリン、ナフシリン、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、ノボビオシン、オフロキサシン、オキサシリン、ペニシリン、ペニシリン塩、ペニシリン複合体、ペンタミジン、ピペラシリン、ピペラシリンとタゾバクタム、スパルフロキサシン、スルファシチン、スルファメラジン、スルファメサジン、スルファメチキソール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、スルファピリジン、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、チカルシリン、チカルシリンとクラブラン酸カリウム、トリメトプリム、トリメトレキサート、ロレアンドマイシン、バンコマイシン、およびベラパミル、ならびにその混合物から選択された非限定的なセットの化合物に属するAPを挙げることができる。
【0082】
一変形によれば、APは利尿剤を含まない。
【0083】
標準偏差低減係数(f)は、IRF*剤形のCmaxの標準偏差と本発明による使用に関係する剤形の対応する標準偏差との比で定義される。好ましくは、Cmaxの個体間の標準偏差低減係数(f)は、
f≧1.05、好ましくはf≧1.5であり、さらにより好ましくはfは2.0〜20である。
【0084】
本発明の別の有利な構成によれば、1回の投与当たり複数の錠剤を含み、これらの錠剤の少なくとも1つが有効成分を急速放出する(6時間未満)錠剤であり、これらの錠剤の他の少なくとも1つが同じ有効成分を徐放する(18〜24時間)錠剤である系を除いて、剤形を任意のタイプの1つまたは複数の投与単位(例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、体積単位の散剤または液剤)によって毎日投与することができる。
【0085】
有利なことには、コーティングおよびマトリックスは、第1にAPの早期および/または大量および/または急速な放出、続いてAPの有害な血漿中濃度過剰を防止し、第2に投与から次回投与までの治療カバーを確実にするようにAPの放出を制御することを可能にするように設計されている。
【0086】
一変形によれば、コーティングは、米国特許第5571533号(B)の意味で非粘膜付着性である。
【0087】
本発明の有利な一特徴によれば、徐放AP微粒子のコアは、親油性ではない。すなわち、例えば全HLBが8未満の1つまたは複数の賦形剤を含有しない。
【0088】
本発明では、APの血漿中プロファイルの平均ピーク/谷の変調(PTM)は、下記のように定義される。個々の血漿中プロファイル、個々の最高濃度cmax’、および単回経口投与してT時間後の濃度cT’をそれぞれ測定する。PTMは、個々のcmax’/cT’比の算術平均である。
【0089】
患者に毎日投与するよう意図されている製品の場合、Tは、単回投与後24時間である。濃度cT’(T=24時間)が、使用するアッセイ方法の検出限界未満、および米国薬局方によって推奨されかつ/または当業者に知られている方法の検出限界未満である場合、PTMを算出するために使用される濃度c24’は、経口投与してx時間後に測定された濃度cx’で置換され、xは、使用された方法の検出限界を超える濃度を測定することができる最新の時間である。この場合、xは、単回投与後24時間未満である。例えば、xは18時間、またはそれが駄目な場合は12時間である。
【0090】
患者に1日2回投与するよう意図されている製品の場合、Tは、単回投与では12時間である。この場合も、濃度cT’(T=12時間)が、使用されたアッセイ方法の検出限界未満、および米国薬局方によって推奨されかつ/または当業者に知られている方法の検出限界未満である場合、PTMを算出するために使用される濃度c12’は、経口投与してx時間後に測定された濃度cx’で置換され、xは、使用された方法の検出限界を超える濃度を測定することができる最新の時間である。この場合、xは、単回投与後12時間未満である。
【0091】
本発明による使用によれば、剤形のコーティングおよびマトリックスは、この剤形のヒト個体の試料への経口投与によって、APの血漿中濃度プロファイルの平均ピーク/谷の変調(PTM)が、同じ投与量のAP速放性剤形を投与された同じ個体の試料の場合のAPの平均ピーク/谷の変調より小さくなるように設計されている。
【0092】
本発明では、血漿中濃度プロファイルのピーク/谷の変調の低減は、例えばピーク/谷の変調の低減係数gによって得られる。係数gは、IRF*剤形のピーク/谷の変調と本発明による使用に関係する剤形のピーク/谷の変調との比によって定義される。
【0093】
好ましくは、ピーク/谷の変調の低減係数gは、
g≧1.05、好ましくはg≧1.5であり、さらにより好ましくはgは2.5〜20である。
【0094】
本発明による使用によれば、剤形のコーティングおよびマトリックスは、この剤形のヒト個体の試料への経口投与によって、AP代謝物の血漿中プロファイルのピーク/谷の変調の変動性が、同じ投与量のAP速放性剤形を投与された同じ個体の試料の場合のAPのピーク/谷の変調の変動性より小さくなるように設計されている。
【0095】
本発明では、血漿中濃度プロファイルのピーク/谷の変調の変動性の低減は、例えばピーク/谷の変調の標準偏差の低減係数g’によって得られる。係数g’は、IRF*剤形のピーク/谷の変調の標準偏差と本発明による使用に関係する剤形のピーク/谷の変調の標準偏差との比によって定義される。
【0096】
好ましくは、ピーク/谷の変調の標準偏差の低減係数g’は、g’≧1.05、好ましくはg’≧1.5であり、さらにより好ましくはg’は2.5〜20である。
【0097】
得られた血漿中プロファイルは、より均一である。これらの個体間および/または個体内の変動性が低減されている。
【0098】
顕著に、本発明は、
・APを含む経口剤形における、APの放出制御を可能にする前記APを含むコーティングまたはマトリックスの使用であって、ヒト個体の試料に(例えば摂食状態で)経口投与されたこの剤形が、その投与数の低減または1時間以下、好ましくは1.5時間以下のTmaxを有する血漿中プロファイルの消失をもたらし、1時間超、好ましくは1.5時間超のTmaxを有する個々の血漿中プロファイルの利益をもたらし、この同じ個体の試料に(例えば、摂食状態で)同じ投与量で投与されたAP速放性剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする使用;あるいは
・ヒト個体の試料への経口投与後(例えば、摂食状態)、その投与数の低減または1時間以下、好ましくは1.5時間以下のTmaxを有する血漿中プロファイルの消失をもたらし、1時間超、好ましくは1.5時間超のTmaxを有する血漿中プロファイルの利益をもたらし、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする剤形の製造のための、APの放出制御を可能にするコーティングの形またはマトリックスに含有されているAPの使用も提案する。
【0099】
本発明によって使用されるAP放出制御剤形、および速放性剤形(IRF*)、具体的には薬物動態パラメータのその標準偏差の比較を、同じ条件下に同じ投与量のAPで、幾人かのボランティア、例えば15人以上、好ましくは20人以上に対して行う。
【0100】
さらにより具体的に、しかも例として、参照臨床試験に従って、医薬品をN個のヒト個体の試料、好ましくはN≧20または30個体に経口投与することによって、比較を行うことができる。次いで、個々の血漿中濃度プロファイルをボランティアそれぞれについて測定し、それから、血漿中濃度がその最大に到達する時間Tmax、およびこの最高濃度Cmaxの値など個々の薬物動態パラメータを得る。これらの個々のパラメータから、当業者は、一般的にこれらのパラメータの平均値、およびその標準偏差を算出する。これらのパラメータの考察に関して、さらに詳細は、次の書籍:Pharmacokinetics and pharmacodynamics Data Analysis、第3版、J.Gabrelssonら、Kristianstads Bocktryckeri AB,Sweden,2000で見られる。
【0101】
参照臨床試験の実験条件は、例えば以下の通りとすることができる。クロス試験研究の過程で、健常ボランティア20人に、剤形(ゲルカプセル剤、錠剤、または懸濁剤)を所与の投与量で1日1回、朝食後投与。血漿中AP濃度を、例えば投与後0−0.25−0.5−0.75−1−1.5−2−3−4−6−8−10−12−16−18−20−24−36−48時間の折々に測定する。この臨床試験は、試験条件下で特異的に得られた薬物動態特性によって本発明を定義する。しかし、本発明は、この参照臨床試験の条件下における実施に限定されない。
【0102】
一変形によれば、本発明は、
・APを含む経口剤形において、この剤形の個体の試料への投与中の血漿中プロファイルの変動性を、この同じ個体の試料に同じ投与量で投与されたAP速放性剤形IRF*に比べて低減して、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与されたAPの速放性剤形IRF*に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にするための、前記APを含むコーティングまたはマトリックスの使用、あるいは
・この同じ個体の試料に同じ投与量で投与されたAPの速放性剤形IRF*に比べて、この剤形の個体の試料への投与中の血漿中濃度プロファイルの変動性の低減をもたらし、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする剤形の製造のための、コーティングの形またはマトリックスに含有されているAPの使用も対象としている。
【0103】
本発明による使用で目標とする剤形は、APをマイクロ単位の形で含有することができ、特に:
・個々にAPを含むコアと、それをコーティングし、APの放出制御を可能にする少なくとも1つのコーティングとからなる微粒子(以降、コーティングされた微粒子とも呼ぶ);および/または、
・個々にAPを含み、APの放出制御を可能にするマトリックスからなる微粒剤(以降、マトリックス微粒剤とも呼ぶ);および/または
・AP速放性微粒剤
とすることができる。
【0104】
本発明による使用で目標とする経口剤形は、当業者に知られている任意の形、すなわち特にゲルカプセル剤、サッシェ剤、マイクロ単位のAPを含有する懸濁剤、または錠剤とすることができる。
【0105】
これらの錠剤は、
・(i)マイクロ単位のAPを含有する錠剤、あるいは
・(ii)個々にAPを含むコアと、それをコーティングし、APの放出制御を可能にする少なくとも1つのコーティングとからなる微粒子を含まず、かつ/または個々にAPを含み、APの放出制御を可能にするマトリックスからなる微粒剤を含まない錠剤
とすることができる。
【0106】
これらの錠剤(ii)は、マトリックス錠剤、または個々にコーティングされた錠剤とすることができる。
【0107】
マイクロ単位のAP(コーティングされた放出制御微粒子、および/またはマトリックス微粒剤、または速放性微粒剤)は、好ましくは1000未満、好ましくは50〜800、さらに好ましくは50〜500の平均直径(Dm、単位μm)を有する。
【0108】
有利なことには、本発明による使用で意図された経口剤形が、1回の投与後に、以下の通り定義された血漿中プロファイルが得られることを可能にする。
【0109】
Cmax/C24h≦Cmax*/C24h*
好ましくは、1.5×Cmax/C24h≦Cmax*/C24h*
さらにより好ましくは、2.0×Cmax/C24h≦Cmax*/C24h*
ここで、
・C24hは、服用して24時間後のAPの平均血漿中濃度を表し、
・C24h*は、同じ投与量のAPを含有する参照速放性経口剤形で、C24hと同じ条件下で得られたAPの平均血漿中濃度を表し、
・Cmaxは、服用後のAPの平均最大血漿中濃度を表し、
・Cmax*は、同じ投与量のAPを含有する参照速放性経口剤形で、Cmaxと同じ条件下で得られたAPの平均最大血漿中濃度を表す。
【0110】
第1の実施形態によれば、経口剤形は、コーティングされたまたはマトリックス微粒子を含み、下記のようなin vitro溶解プロファイルを有する。
【0111】
投与後およびその後70%のAPが放出される時間、時間t(70%)、は1〜24時間、好ましくは2〜12時間、さらにより好ましくは2〜8時間である。
【0112】
この第1の実施形態の有利な一特徴によれば、時間tが2時間とt(70%)、好ましくは1時間とt(70%)の間で任意の値の場合、溶解されたAPの百分率は、35t/t(70%)以上である。
【0113】
第1の実施形態による微粒子の個々のコーティングまたは個々のマトリックスの組成物は、有利に下記の2つのファミリーAおよびBの一方に対応する。
【0114】
ファミリーA
A−1−消化管の体液に不溶であり、コーティング組成物の全質量に対して50〜90、好ましくは50〜80の比率(固形重量%)で存在し、特に少なくとも1つの非水溶性セルロース誘導体を含む少なくとも1つのフィルム形成性ポリマー(P1);
A−2−コーティング組成物の全質量に対して固形重量2〜25、好ましくは5〜15の比率(固形重量%)で存在し、少なくとも1つのポリアクリルアミドおよび/または1つのポリ−N−ビニルアミドおよび/または1つのポリ−N−ビニルラクタムからなる少なくとも1つの含窒素ポリマー(P2);
A−3−コーティング組成物の全質量に対して固形重量2〜20、好ましくは4〜15の比率(固形重量%)で存在し、下記の化合物:グリセロールエステル、フタル酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、セチルアルコールエステル、ヒマシ油の少なくとも1つからなる少なくとも1つの可塑剤;
A−4−コーティング組成物の全質量に対して固形重量2〜20、好ましくは4〜15の比率(固形重量%)で存在し、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤および/または滑剤から選択された少なくとも1つの界面活性および/または滑剤;ここで前記剤は、上記の製品の1つのみまたは混合物を含むことができる。
【0115】
化合物A−1、A−2、A−3、およびA−4の例を下記に示す。
【0116】
A−1:エチルセルロースおよび/または酢酸セルロース;
A−2:ポリアクリルアミドおよび/またはポリビニルピロリドン;
A−3:ヒマシ油;
A−4:脂肪酸、ステアリン酸、および/またはオレイン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が好ましく、ポリオキシエチレン化ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油誘導体、ステアリン酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたは亜鉛。
【0117】
ファミリーB:
B1−消化管の体液に不溶な少なくとも1つのフィルム形成性ポリマー;
B2−少なくとも1つの水溶性ポリマー;
B3−少なくとも1つの可塑剤;および
B4−場合によっては、好ましくは少なくとも1つのアニオン性界面活性剤および/または少なくとも1つの非イオン性界面活性剤からなる少なくとも1つの界面活性剤/滑剤。
【0118】
化合物B1、B2、B3、およびB4の例を下記に示す。
【0119】
B1:
非水溶性セルロース誘導体、エチルセルロース、および/または酢酸セルロースが特に好ましい。
アクリルポリマー、
ポリ酢酸ビニル、および
その混合物;
B2:
水溶性セルロース誘導体、
ポリアクリルアミド、
ポリ−N−ビニルアミド、
ポリ−N−ビニルラクタム、
ポリビニルアルコール(PVA)、
ポリオキシエチレン(POE)、
ポリビニルピロリドン(PVP)(後者が好ましい)、および
その混合物;
B3:
グリセロールおよびそのエステル、好ましくは次の下位群において:アセチル化グリセリド、モノステアリン酸グリセリル、三酢酸グリセリル、三酪酸グリセリル、
フタル酸エステル、好ましくは次の下位群において:フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、
クエン酸エステル、好ましくは次の下位群において:アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、
セバシン酸エステル、好ましくは次の下位群において:セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、
アジピン酸エステル、
アゼライン酸エステル、
安息香酸エステル、
植物油、
フマル酸エステル、好ましくはフマル酸ジエチル、
リンゴ酸エステル、好ましくはリンゴ酸ジエチル、
シュウ酸エステル、好ましくはシュウ酸ジエチル、
コハク酸エステル、好ましくはコハク酸ジブチル、
酪酸エステル、
セチルアルコールエステル、
サリチル酸、
トリアセチン、
マロン酸エステル、好ましくはマロン酸ジエチル、
ヒマシ油(これは特に好ましい)、および
その混合物;
B4:
脂肪酸、ステアリン酸、および/またはオレイン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が好ましく、
ポリオキシエチレン化油、好ましくはポリオキシエチレン化水素化ヒマシ油、
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、
ポリオキシエチレン化ソルビタンエステル、
ポリオキシエチレン化ヒマシ油誘導体、
ステアリン酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたは亜鉛、ステアリルフマル酸塩、好ましくはステアリルフマル酸ナトリウム、
ベヘニン酸グリセリル、および
その混合物。
【0120】
好ましくは、コーティングは単一のコートからなり、その質量は、微粒子の全質量の1%〜50重量%、好ましくは5%〜40重量%を表す。
【0121】
本発明の第1の実施形態による微粒子を得るための組成物および方法の他の詳細および例は、国際公開第03/084518号(A)に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0122】
ファミリーA1およびA2のコーティング組成物に関する定性的および定量的なさらに詳細については、それぞれ欧州特許第0 709 087号(B)および国際公開第2004/010 984号(A)に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0123】
第2の実施形態によれば、経口剤形は、第1にコーティングされた微粒子および/またはマトリックス微粒子を含み、第2に
・APの放出が異なる2つの開始機序によって支配され、一方はpHの変動に基づき、他方は胃において所定の滞在時間後にAPの放出を可能とするものであり;
・一定のpH 1.4で、溶解プロファイルが、7時間以下、好ましくは5時間以下、さらにより好ましくは1〜5時間続く遅滞期を含み;かつ
・pH 1.4からpH 7.0への変化が、遅滞時間なしに始まる放出期に導く。
【0124】
有利なことには、この第2のモードによる経口剤形は、in vitro溶解試験で測定して、下記に示すような溶解プロファイルを有する。
【0125】
・pH 1.4で2時間後、20%未満のAPが放出され;
・pH 1.4で16時間後、少なくとも50%のAPが放出される。
【0126】
好ましい一特徴によれば、この第2のモードによる経口剤形は、AP放出制御微粒子を含み、その開始pH値は5.0〜7.0(7.0を含む)である。
【0127】
好ましい別の特徴によれば、この第2のモードによる経口剤形は、AP放出制御微粒子を含み、その開始pH値は6.0(6.0を含む)〜6.5(6.5を含む)である。
【0128】
有利なことには、第2の実施形態によるAP放出制御微粒子は、下記の具体的な特徴を有する。
・APの放出制御を可能にするコーティングまたはマトリックスは、複合材料を含み、該複合材料が
・中性のpHでイオン化される基を有する少なくとも1つの親水性ポリマーI、
・少なくとも1つの疎水性化合物II
を含み、
質量分率(微粒子の全質量に対する重量%)≦40を示し、
・その平均直径は、1000μm未満、好ましくは50〜800μm、さらにより好ましくは50〜500μmである。
【0129】
有利な別の特徴によれば、APの放出制御を可能にするコーティングまたはマトリックスの複合材料I−IIは、
重量比II/Iが0.2〜1.5、好ましくは0.5〜1.0であり、かつ
疎水性化合物IIが、固体の形で結晶質であり、融点Tm≧40℃、好ましくはTm≧50℃、さらにより好ましくは40℃≦Tm≦90℃である製品から選択される。
【0130】
好ましい一実施形態によれば、親水性ポリマーIは、
−I.a (メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸のアルキルエステルのコポリマー、ならびにその混合物、
−I.b セルロース誘導体、好ましくは酢酸セルロース、フタル酸セルロース、コハク酸セルロース、およびその混合物、さらにより好ましくはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびコハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにその混合物、
−ならびにその混合物
から選択される。
【0131】
さらにより好ましいポリマーIは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(例えば、C1〜C6アルキル)のコポリマーである。これらのコポリマーは、例えばRohm Pharma Polymers社から販売されている登録商標Eudragit(登録商標)のシリーズLおよびS(例えば、Eudragit(登録商標)L100、S100、L30 D−55、およびL100−55)のタイプのものである。これらのコポリマーは、胃において遭遇するpH値を超えるpH値で水性媒体に可溶なアニオン性腸溶コポリマーである。
【0132】
さらに、好ましい実施形態によれば、化合物IIは、下記の群の製品から選択される:
II.a 植物ワックスの単独または相互混合物;
II.b 水素化植物油の単独または相互混合物;
II.c 少なくとも1つの脂肪酸のグリセリルモノ−および/またはジ−および/またはトリエステル;
II.d 少なくとも1つの脂肪酸のグリセリルモノエステル、ジエステル、およびトリエステルの混合物;
II.e ならびにその混合物。
【0133】
さらにより好ましくは、化合物IIは、
次の群の製品:水素化綿実油、水素化大豆油、水素化パーム油、ベヘニン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン、黄蝋、坐剤基剤として有用な硬質脂肪物質または脂肪、無水乳脂肪、ラノリン、パルミトステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ラウリルマクロゴールグリセリド、セチルアルコール、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ジエチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、オメガ3、および任意のその混合物から選択され、
好ましくは次の下位群の製品:水素化綿実油、水素化大豆油、水素化パーム油、ベヘニン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、トリステアリン、トリパルミチン、トリミリスチン、および任意のその混合物から選択される。
【0134】
実際には、これは限定するものではないが、化合物IIが、
・下記のブランド名で販売されている製品群:Dynasan(登録商標)、Cutina(登録商標)、Hydrobase(登録商標)、Dub(登録商標)、Castorwax(登録商標)、Croduret(登録商標)、Compritol(登録商標)、Sterotex(登録商標)、Lubritab(登録商標)、Apifil(登録商標)、Akofine(登録商標)、Softtisan(登録商標)、Hydrocote(登録商標)、Livopol(登録商標)、Super Hartolan(登録商標)、MGLA(登録商標)、Corona(登録商標)、Protalan(登録商標)、Akosoft(登録商標)、Akosol(登録商標)、Cremao(登録商標)、Massupol(登録商標)、Novata(登録商標)、Suppocire(登録商標)、Wecobee(登録商標)、Witepsol(登録商標)、Lanolin(登録商標)、Incromega(登録商標)、Estaram(登録商標)、Suppoweiss(登録商標)、Gelucire(登録商標)、Precirol(登録商標)、Emulcire(登録商標)、Plurol diisostearique(登録商標)、Geleol(登録商標)、Hydrine(登録商標)、Monthyle(登録商標)、およびその混合物から、ならびに
・またコードが下記の通りである添加剤群:E 901、E 907、E 903、およびその混合物からも、ならびに
・好ましくは下記のブランド名で販売されている製品群:Dynasan(登録商標)P60、Dynasan(登録商標)114、Dynasan(登録商標)116、Dynasan(登録商標)118、Cutina(登録商標)HR、Hydrobase(登録商標)66−68、Dub(登録商標)HPH、Compritol(登録商標)888、Sterotex(登録商標)NF、Sterotex(登録商標)K、Lubritab(登録商標)、およびその混合物から選択されることが好ましい。
【0135】
本発明の有利な別の特徴によれば、APの放出制御を可能にするコーティングまたはマトリックスは、タルクを含まない。
【0136】
有利なことには、微粒子のコーティングまたはマトリックスは、必須構成成分IおよびIIに加えて、当業者に知られている他の標準的材料、特に
・染料、
・可塑剤、例えばセバシン酸ジブチル、
・親水性化合物、例えばセルロースおよびその誘導体、またはポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ならびに
・その混合物
などを含むことができる。
【0137】
これは限定するものではないが、さらにより好ましい実施形態によれば、APのコーティングされた放出制御微粒子のコーティングは、複合コーティング被膜I−IIを唯一含む。
【0138】
本発明の第2の実施形態による微粒子を得るための組成物および方法の他の詳細および例は、国際公開第03/030878号(A)に記載されており、その内容は、参考により本明細書に組み込まれている。
【0139】
定量的には、コーティング単層は、微粒子の例えば40%以下、好ましくは30重量%以下を示すことができる。このような限定された含有量のコーティングによって、それぞれ高い投与量のAPを含有し、嚥下に関連して禁止されているサイズを超えない投与単位を生成することが可能になる。それによって、治療のコンプライアンス、したがって治療の成功は確実に改善される。
【0140】
第3の実施形態によれば、経口剤形は、少なくとも2つの微粒子集団を含む。AP放出制御微粒子の各集団は、上記に提示した第1または第2の実施形態に従うものとすることができる。
【0141】
第3の実施形態と組み合わせた第2の実施形態の一変形2iによれば、本発明による使用で実施される経口剤形は、1.4〜7.4の少なくとも1つのpH値である場合、溶解プロファイルの異なる微粒子の少なくとも2つの集団を含む。
【0142】
第3の実施形態と組み合わせた第2の実施形態の一変形2iiによれば、本発明による使用で実施される経口剤形は、それぞれ開始pH値が異なるAP放出制御微粒子の少なくとも2つの集団を含む。
【0143】
第3の実施形態と組み合わせた第2の実施形態のさらに別の変形2iiiによれば、本発明による経口剤形は、それぞれの開始時間が異なるAP放出制御微粒子の少なくとも2つの集団を含む。
【0144】
第4の実施形態によれば、本発明による使用で実施される経口剤形は、AP放出制御微粒子の少なくとも1つの集団およびAP速放性微粒剤の少なくとも1つの集団を含む。
【0145】
第4の実施形態と組み合わせた第2の実施形態の一変形2ivによれば、本発明による使用で実施される経口剤形は、
→AP速放性微粒剤の少なくとも1つの集団;
→AP放出制御微粒子の少なくとも1つの集団P1、および
→AP放出制御微粒子の少なくとも1つの集団P2
を含み、かつ
さらにP1およびP2のそれぞれの開始pH値は、少なくとも0.5pH単位、好ましくは少なくとも0.8pH単位、さらにより好ましくは少なくとも0.9pH単位異なる。
【0146】
有利なことには、AP放出制御微粒子の様々な集団のそれぞれの開始pH値は、5〜7である。
【0147】
第4の実施形態と組み合わせた第2の実施形態の一変形2vによれば、本発明による使用で実施される経口剤形は、
→AP速放性微粒剤の少なくとも1つの集団;
→その開始pHが5.5である、AP放出制御微粒子の少なくとも1つの集団P1’;および
→その開始pH値が6.0(6.0を含む)〜6.5(6.5を含む)である、AP放出制御微粒子の少なくとも1つの集団P2’
を含む。
【0148】
第2の実施形態の変形2iv〜2vの集団P1、P2、P1’、およびP2’は、第2の実施形態に従って得られたAP放出制御微粒子を含む。
【0149】
マイクロ単位のAP速放性微粒子が本発明による使用で実施される経口剤形中に存在する本発明の変形を例示するために、これらの変形は、この剤形が例えばAP速放性微粒子の少なくとも1つの集団を含む場合に対応できることを指摘することができる。
【0150】
第1の実施形態による使用で実施される経口剤形がAP放出制御微粒子を含む場合、pH 1〜pH 5の前記微粒子の溶解プロファイルは、FDA指示のSUPAC−MR−放出調節固形経口製剤で示されるように算出された類似性ファクターf2によれば、類似しており、すなわちf2≧50%と近い。
【0151】
上記の目標のコーティングされた微粒子は、複数の構造を有することがある。
【0152】
したがって、コーティングされた微粒子の構造の第1の形によれば、経口剤形のAP放出制御微粒子の少なくとも一部はそれぞれ、
→APを含有するコア、および
→コアを覆い、前記APの放出制御を可能にする少なくとも1つのコーティング
を含む。
【0153】
コーティングされた微粒子の構造の第2の形によれば、経口剤形の前記AP放出制御微粒子の少なくとも一部はそれぞれ、
→コアであって、
・中性コアと
・APを含み、中性コアをコーティングする少なくとも1つの有効層と
を含むコア、ならびに
→コアを覆い、APの放出制御を可能にする少なくとも1つのコーティング
を含む。
【0154】
有利なことには、マイクロ単位のAPの比率(マイクロ単位の全質量に対する固形重量%として表す)は、5〜80、好ましくは10〜75、さらにより好ましくは15〜70である。
【0155】
一可能性によれば、AP速放性微粒剤は、AP放出制御微粒子のコーティングされていない核である。
【0156】
本発明によるコーティングされた微粒子の調製に関して、これは、当業者がアクセスできるマイクロカプセル化技法に関し、その原理は、C.Duverney およびJ.P.Benoit、「L’actualite chimique」、1986年12月の論文にまとめられている。さらに詳細には、考慮されている技法は、マトリックスシステムとは対照的に個別化された「リザーバー型」システムをもたらす、フィルムコーティングによるマイクロカプセル化である。
【0157】
さらに詳細については、欧州特許第0 953 359号(B)を参照のこと。
【0158】
本発明による微粒子を生成するために、望ましく必要な粒度のAP粒子は、純粋なAP結晶、ならびに/あるいは少なくとも1つの標準的結合剤および/またはAP固有の溶解特性を改変するための試薬剤の存在下で、当技術分野の一般的技法の1つ、例えば顆粒化により前処理を受けた結晶とすることができる。APを、例えば当業者に知られている技法、例えば流動空気床における「スプレーコーティング」技法でコア上に被着させることができ、または湿式造粒、圧縮、押出球形化などによって形成することができる。
【0159】
有利なことには、本発明による使用で実施される経口剤形は、1000〜500000マイクロ単位のAPを含む、1日1回の経口剤形である
【0160】
さらに詳細には、本発明による使用で実施される経口剤形は、1日1回の1000〜500000のAP放出制御微粒子を含む経口剤形とすることができる。
【0161】
本発明による経口剤形は、AP放出制御微粒子の粉末のサッシェ剤、AP放出制御微粒子を再構成する液体懸濁剤または懸濁剤、AP放出制御微粒子をおそらく含有する錠剤、あるいはAP放出制御微粒子を含有するゲルカプセル剤の形として提供され得る。
【0162】
本発明の主題は、本発明による使用の文脈で上記に記載され、かつそれ自体、本発明による使用とは無関係に考えられる経口剤形でもある。
【0163】
本発明の別の目的によれば、本発明は、上記に定義するAP放出制御微粒子、および場合によっては上記に定義するAP速放性微粒剤の、微粒子の薬剤または食事性の経口剤形、好ましくは有利に口腔内崩壊できる錠剤、散剤、またはゲルカプセル剤の形を調製するための使用を対象とする。
【0164】
本発明の別の目的によれば、本発明は、上記に定義するAP放出制御微粒子および/または微粒剤、ならびに場合によっては上記に定義するAP速放性微粒剤の、治療上安全な微粒子経口剤形を調製するための使用を対象とし、前記剤形は、摂取されると、それに含まれる微粒子は、胃に到達するとき分散し、個別化され、1回の投与中、患者が摂食状態であろうと、絶食状態であろうと、これらの微粒子を規則的および漸進的な胃排出にかけることが可能になり、したがってAPの胃腸吸収ウィンドウにおけるその放出を確実にし、APの血漿中濃度プロファイルの変動性を低減することに関与するように設計されている。
【0165】
本発明のさらに別の主題によれば、本発明は、上記にそれ自体を定義するコーティングされた微粒子および/またはマトリックス微粒剤を対象とする。
【0166】
本発明の他の主題によれば、本発明は、下記を対象とする。
【0167】
・上記に定義する本発明による使用で実施する剤形を、好ましくは1日1回経口投与量として投与することを特徴とする治療的処置方法;
・基本的に、コーティングの形またはマトリックスに含有されているAPを含み、前記APの放出制御を可能にする剤形を経口投与することを特徴とするヒトまたは動物の経口治療的処置のための再現性のある方法であって、ヒト個体の試料に経口投与されたこの剤形が、個体の摂食または絶食状態にかかわりなく、Cmaxおよび/またはTmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする方法;
・基本的に、コーティングまたはマトリックスに含有されているAPを含む剤形を経口投与することを特徴とするヒトまたは動物の経口治療的処置のための再現性のある方法であって、コーティングまたはマトリックスが、この剤形を摂食状態の個体の試料に経口投与することによって、1時間以下、好ましくは1.5時間以下のTmaxを有する個々の血漿濃度プロファイルの数の低減またはその消失をもたらし、1時間超、好ましくは1.5時間超のTmaxを有する個々の血漿中濃度プロファイルのためになり、この同じ個体の試料に投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にするような特性をこの剤形に与える方法;
・基本的に、コーティングの形またはマトリックスに含有されているAPを含む剤形を経口投与して、この剤形の個体の試料への経口投与中の血漿中プロファイルの変動性を低減し、この同じ個体の試料に投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にすることを特徴とするヒトまたは動物の経口治療的処置のための再現性のある方法;
・基本的に、溶解性が胃内pHに依存するAPを含む剤形を経口投与することを特徴とするヒトまたは動物の経口治療的処置のための再現性のある方法であって、この剤形の個体の試料への経口投与によって、Tmaxの個体間および/または個体内の変動係数の低減をもたらし、この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする特性をこの剤形に与えるコーティングの形またはマトリックスに、APが含有されている方法。
【実施例】
【0168】
<実施例1>
【0169】
pHに応じたイルベサルタンの溶解性
イルベサルタンの溶解性は、胃内pH範囲で大幅に異なる。
【0170】
【表1】

<実施例2>
【0171】
薬用量300mgのイルベサルタンを含有するゲルカプセル剤の調製
ステップ1
700gのイルベサルタン、および100gのKlucel EF(登録商標)(ヒドロキシプロピルセルロース/アクアロン)を3000gのイソプロパノールに分散する。懸濁液を、Glatt GPCG1スプレーコーターで200gの中性マイクロスフェア(Asahi−Kasei)に噴霧する。
【0172】
得られた顆粒のイルベサルタン濃度は70%である。
【0173】
ステップ2
70gのエチルセルロース(Ethocel 20 Premium/Dow)、10gのPlasdone K29/32(登録商標)(ポビドン/ISP)、5gのクレモフォールRH 40(マクロゴールグリセリルヒドロキシステアレート/BASF)、および15gのヒマシ油を、60%のイソプロパノールおよび40%のアセトンから構成された混合物に分散する。この溶液を900gのイルベサルタン顆粒(ステップ1で調製)に噴霧する。
【0174】
次いで、得られた微粒子をサイズ0elのゼラチンカプセルに加える。この試験では、イルベサルタン/ゲルカプセルの薬用量を300mg(すなわち、476mgの微粒子)に設定する。このゲルカプセルは、医薬品の最終剤形を構成する。
【0175】
<実施例3>
【0176】
pHに応じたエプロサルタンの溶解性
エプロサルタンの溶解性は、胃内pH範囲で大幅に異なる。
【0177】
【表2】

<実施例4>
【0178】
薬用量300mgのエプロサルタンを含有するゲルカプセル剤の調製
ステップ1
950gのエプロサルタン、および30gのポビドン(Plasdone K29/32)を高せん断造粒機(Aeromatic PMA1)のタンク中で5分間乾式予混合する。次いで、この粉状の混合物を水(200g)を用いて顆粒にする。顆粒を換気オーブン中40℃で乾燥し、次いで500μmのスクリーンで較正する。スクリーニングで、200〜500μmの分画を選択する。得られた顆粒のエプロサルタン濃度は95%である。
【0179】
ステップ2
65gのエチルセルロース(Ethocel−7 Premium/Dow)、15gのPlasdone K29/32(登録商標)(Povidone/ISP)、10gのLutrol F−68(ポロキサマー188/BASF)、および10gのクエン酸トリエチルを、60%のイソプロパノールおよび40%のアセトンから構成される混合物に分散する。この溶液を900gのエプロサルタン顆粒(ステップ1で調製)に噴霧する。
【0180】
次いで、得られた微粒子をサイズ1elのゼラチンカプセルに加える。この試験では、エプロサルタン/ゲルカプセルの薬用量300mg(すなわち、350mgの微粒子)に設定する。このゲルカプセル剤は、医薬品の最終剤形を構成する。
【0181】
<実施例5>
【0182】
pHに応じたアシクロビアの溶解性
アシクロビアの溶解性は、胃内pH範囲で大幅に異なる。
【0183】
【表3】


<実施例6>
【0184】
薬用量200mgのアシクロビアを含有する錠剤の調製
ステップ1
800gのアシクロビア、100gのラクトース、50gのポビドン(Plasdone K29/32)、および50gのステアリン酸マグネシウムをホイールミキサで乾式予混合する。Korsch 打錠用プレスを用いて、上記の混合物250mgで構成される錠剤を調製する。
【0185】
ステップ2
30gのエチルセルロース(エチルセルロース N7/アクアロン)、8gのKlucel EF2(登録商標)(ヒドロキシプロピルセルロース/アクアロン)、7gのLutrol F−68(ポロキサマー188/BASF)、および5gのセバシン酸ジブチルを、70%のエタノールおよび30%の水から構成される混合物に分散する。この溶液を950gのアシクロビア錠剤(ステップ1で調製)に噴霧する。
【0186】
これらのコーティングされた錠剤は、医薬品の最終剤形を構成する。
【0187】
<実施例7>
【0188】
薬用量200mgのアシクロビアを含有するゲルカプセル剤の調製
ステップ1:
970gのアシクロビアおよび30gのPlasdone K29/32(登録商標)(ポビドン/ISP)を、高せん断造粒機(Aeromatic PMA1)のタンク中で5分間乾式予混合する。次いで、この粉状の混合物を水(200g)を用いて顆粒にする。顆粒を換気オーブン中40℃で乾燥し、次いで次いで500μmのスクリーンで較正する。スクリーニングで、200〜500μmの分画を選択する。
【0189】
得られた顆粒のアシクロビア濃度は97%である。
【0190】
ステップ2
50gのエチルセルロース(Ethocel 20 Premium/Dow)、18gのPlasdone K29/32(登録商標)(ポビドン/ISP)、6gのLutrol F−68(ポロキサマー188/BASF)、および6gのヒマシ油を、70%のエタノールおよび30%の水から構成される混合物に分散する。この溶液を、Glatt GPCG1で920gのアシクロビア顆粒(ステップ1で調製)に噴霧する。
【0191】
次いで、得られた微粒子を、サイズ1のゼラチンカプセルに加える。この試験では、アシクロビア/ゲルカプセルの薬用量を200mg(すなわち、302mgの微粒子)に設定する。このゲルカプセル剤は、医薬品の最終剤形を構成する。
【0192】
<実施例8>
【0193】
in vivoデータ
実施剤形:
C1:Zovirax(登録商標)200mgの錠剤(市販品参照)
M1:600mgのアシクロビアを含有する、実施例6マイクロカプセルのゲルカプセル剤
【0194】
試験の説明
クロス試験研究の過程で、3個のC1錠剤および1個のM1ゲルカプセル剤を、48人の健常ボランティアに夕食後に投与する。アシクロビアの血漿中濃度を、投与後0−0.5−1−2−3−4−6−8−10−12−16−20−24−36−48時間の折々に測定する。
【0195】
薬物動態結果
得られた主要な薬物動態パラメータは以下の通りである。
【0196】
【表4】

【0197】
本発明によるM1剤形は、C1剤形に比べてCmax/C24hの比を1.65倍低減することが可能であることがわかる。同時に、Cmaxの変動性も1.12倍低減される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性が、1.0〜5.5、好ましくは1.5〜5.0の胃内pH条件下で少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも30倍異なるAPを少なくとも1つ含む経口剤形における、
前記APを含み、前記APの放出制御を可能にするコーティングまたはマトリックスの使用であって、
個体の試料に経口投与されたこの剤形が、個体の摂食または絶食状態にかかわりなく、Cmaxおよび/またはTmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、
この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、
剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にするための使用。
【請求項2】
溶解性が、1.0〜5.5、好ましくは1.5〜5.0の胃内pH条件下で少なくとも3倍、好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも30倍異なるAPの放出制御を可能にするコーティングの形またはマトリックスに含有されているこのAPの使用であって、
個体の試料への経口投与後、個体の摂食または絶食状態にかかわりなく、Cmaxおよび/またはTmaxの個体間および/または個体内の標準偏差の低下をもたらし、
この同じ個体の試料に同じ薬用量で投与された速放性AP剤形に比べて、
剤形の有効性および治療の安全性の変動性を確実に低くすることを可能にする経口剤形を製造するための使用。
【請求項3】
剤形が、同じ薬用量のAPを含む速放剤形の1日投与量と同一であるいくつかの1日投与量によって定義されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
APが、下記のAPファミリーを含む群:
プロトンポンプ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト[すなわちARB(アンジオテンシン受容体遮断薬)]、抗潰瘍剤、抗糖尿病剤、抗凝血薬、抗血栓剤、抗高脂血薬、抗不整脈剤、血管拡張薬、抗狭心剤、降圧薬、血管保護剤、妊娠促進薬、陣痛誘発剤および抑制剤、避妊薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗癌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬、神経遮断薬、睡眠剤、抗不安剤、精神刺激薬、抗片頭痛剤、抗うつ薬、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤または抗アレルギー剤;鬱血性心不全、狭心症、左室肥大、心不整脈、心筋梗塞、反射性頻脈、虚血性心疾患、アテローム変性、糖尿病を伴う高血圧、門脈圧亢進、眩暈、徐脈、動脈性低血圧、水貯留、急性腎不全、起立性低血圧、および脳鬱血に対処するための作用剤、ならびに1つまたは複数のファミリー内にある上記のすべての製品の組合せ;
ARBが好ましく、さらに具体的にはイルベサルタン、オルメサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、ゾラサルタン、およびタソサルタンの単独または相互混合物を含む下位群から選択されたARB
から選択されることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項5】
剤形が薬用量DのAPを含有し、この剤形を周囲気圧、37℃で100mlの水と接触させて配置すると、1〜5.5の少なくとも1つの胃内pH値の場合、平衡状態では薬用量Dの全溶解が不可能であることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項6】
Cmaxの個体間の標準偏差低減係数(f)が、以下の通り定義されることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用:
f≧1.05、好ましくはf≧1.5、さらにより好ましくはfは2.0〜20である。
【請求項7】
剤形のコーティングまたはマトリックスが、第1にAPの早期および/または大量および/または急速な放出、続いてAPの有害な血漿中濃度過剰を防止し、第2に投与から次回投与までの治療カバーを確実にするようにAPの放出を制御することを可能にするように設計されていることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項8】
剤形のコーティングまたはマトリックスが、この剤形の個体の試料への経口投与によって、APの血漿中プロファイルの平均ピーク/谷の変調が、同じ投与量のAP速放性剤形を投与された個体の同じ試料のAPの平均ピーク/谷の変調より小さくなるように設計されていることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項9】
ピーク/谷の変調の低減係数(g)が、g≧1.05、好ましくはg≧1.5であり、さらにより好ましくはgは2.5〜20であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
剤形のコーティングまたはマトリックスが、この剤形の個体の試料への経口投与によって、AP代謝物の血漿中プロファイルのピーク/谷の変調の変動性が、同じ投与量のAP速放性剤形を投与された同じ個体の試料の場合のAP代謝物のピーク/谷の変調の変動性より小さくなるように設計されていることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項11】
ピーク/谷の変調の標準偏差の低減係数(g’)が、g’≧1.05、好ましくはg’≧1.5であり、さらにより好ましくはg’は2.5〜20であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
経口剤形が、APをマイクロ単位の形で含有し、
個々にAPを含むコアと、それをコーティングし、APの放出制御を可能にする少なくとも1つのコーティングとからなる微粒子;および/または、
個々にAPを含み、APの放出制御を可能にするマトリックスからなる微粒剤;および/または
AP速放性微粒剤
とすることができることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項13】
経口剤形が、個々にAPを含むコアと、それをコーティングし、APの放出制御を可能にする少なくとも1つのコーティングとからなる微粒子を含まず、かつ/または個々にAPを含み、APの放出制御を可能にするマトリックスからなる微粒剤を含まない錠剤であることを特徴とする、請求項1から9の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項14】
剤形が、1回の投与後に、以下の通り定義された漿中プロファイルが得られることを可能にすることを特徴とする、前記請求項の少なくとも一項に記載の使用:
Cmax/C24h≦Cmax*/C24h*
好ましくは、1.5×Cmax/C24h≦Cmax*/C24h*
さらにより好ましくは、2.0×Cmax/C24h≦Cmax*/C24h*
ここで、
C24hは、服用して24時間後のAPの平均血漿中濃度を表し、
C24h*は、同じ投与量のAPを含有する参照速放性経口剤形で、C24hと同じ条件下で得られたAPの平均血漿中濃度を表し、
Cmaxは、服用後のAPの平均最大血漿中濃度を表し、
Cmax*は、同じ投与量のAPを含有する参照速放性経口剤形で、Cmaxと同じ条件下で得られたAPの平均最大血漿中濃度を表す。
【請求項15】
経口剤形が、微粒子を含み、投与後の時間t(70%)、およびその後70%のAPが放出される時間が1〜24時間、好ましくは2〜12時間、さらにより好ましくは2〜8時間であるようなin vitro溶解プロファイルを有することを特徴とする、請求項7から9の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項16】
経口剤形のin vitro溶解プロファイルが、2時間とt(70%)の間の任意の時間値t、好ましくは1時間とt(70%)間の任意の時間値tの場合、溶解されたAPの百分率は、35t/t(70%)以上であることを特徴とする、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
経口剤形が、
APの放出が異なる2つの開始機序によって支配され、一方はpHの変動に基づき、他方は胃において所定の滞在時間後にAPの放出を可能とし;
一定のpH 1.4で、溶解プロファイルが、7時間以下、好ましくは5時間以下、さらにより好ましくは1〜5時間続く遅滞期を含み;かつ
pH 1.4からpH 7.0への変化が、遅滞時間なしに始まる放出期に導く
ことを特徴とする、請求項7から9の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項18】
経口剤形が、in vitro溶解試験で測定して、下記に示すような溶解プロファイルを有することを特徴とする、請求項17に記載の使用:
pH 1.4で2時間後、20%未満のAPが放出され;
pH 1.4で16時間後、少なくとも50%のAPが放出される。
【請求項19】
経口剤形が、AP放出制御微粒子を含み、その開始pH値が、5.0(5.0を含む)〜7.0(7.0を含む)であることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
経口剤形が、AP放出制御微粒子を含み、その開始pH値が、6.0(6.0を含む)〜6.5(6.5を含む)であることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
経口剤形が、少なくとも2つの微粒子集団を含むことを特徴とする、請求項7から9、および15から20の一項に記載の使用。
【請求項22】
経口剤形が、放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも1つの集団、ならびに/あるいは速放性微粒剤の少なくとも1つの集団を含むことを特徴とする、請求項7から9、および15から21の一項に記載の使用。
【請求項23】
経口剤形が、1.4〜7.4の少なくとも1つのpH値の場合、溶解プロファイルの異なる放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも2つの集団を含むことを特徴とする、請求項7から9、および18から22の一項に記載の使用。
【請求項24】
経口剤形が、それぞれ開始pH値が異なるAP放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも2つの集団を含むことを特徴とする、請求項7から9、および18から23の一項に記載の使用。
【請求項25】
経口剤形が、それぞれの開始時間が異なるAP放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも2つの集団を含むことを特徴とする、請求項7から9、および18から24の一項に記載の使用。
【請求項26】
経口剤形が、
AP速放性微粒剤の少なくとも1つの集団、
AP放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも1つの集団P1、ならびに
AP放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも1つの集団P2
を含み、
P1およびP2のそれぞれの開始pH値は、少なくとも0.5pH単位、好ましくは少なくとも0.8pH単位、さらにより好ましくは少なくとも0.9pH単位異なることを特徴とする、請求項7から9、および18から25の一項に記載の使用。
【請求項27】
AP放出制御微粒子および/または微粒剤の様々な集団のそれぞれの開始pH値が、5〜7であることを特徴とする、請求項7から9、および18から26の一項に記載の使用。
【請求項28】
経口剤形が、
AP速放性微粒剤の少なくとも1つの集団、
その開始pHが5.5である、AP放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも1つの集団P1’、ならびに
その開始pH値が6.0(6.0を含む)〜6.5(6.5を含む)である、AP放出制御微粒子および/または微粒剤の少なくとも1つの集団P2’
を含むことを特徴とする、請求項7から9、および18から27の一項に記載の使用。
【請求項29】
経口剤形が、AP速放性微粒剤の少なくとも1つの集団を含み、in vitro溶解試験におけるその挙動が、1.4〜7.4の任意のpHで少なくとも80%のAPを1時間で放出することを特徴とする、請求項7から28の一項に記載の使用。
【請求項30】
経口剤形が、1000〜500000マイクロ単位のAPを含む、1日1回の経口剤形であることを特徴とする、請求項7から29の一項に記載の使用。
【請求項31】
経口剤形が、1日1回の1000〜500000のAP放出制御微粒子および/または微粒剤を含む経口剤形であることを特徴とする、請求項7から30の一項に記載の使用。
【請求項32】
経口剤形が、粉末のサッシェ剤、液体懸濁剤、または再構成する懸濁/剤、錠剤、またはゲルカプセル剤の形であることを特徴とする、前記請求項の一項に記載の使用。
【請求項33】
剤形が、AP以外の少なくとも1つの有効成分APを含むことを特徴とする、前記請求項の一項に記載の使用。
【請求項34】
剤形が、AP放出制御微粒子および/または微粒剤を含み、そのコーティングまたはマトリックスの組成物が、下記に示すフォーミュラAまたはフォーミュラBを含む群:
フォーミュラA
A1−消化管の体液に不溶であり、コーティング組成物の全質量に対して固形重量50〜90、好ましくは50〜80の比率で存在し、特に少なくとも1つの非水溶性セルロース誘導体を含む少なくとも1つのフィルム形成性ポリマー(P1);
A2−コーティング組成物の全質量に対して固形2%〜25%、好ましくは5%〜15重量%の比率で存在し、少なくとも1つのポリアクリルアミドおよび/または1つのポリ−N−ビニルアミドおよび/または1つのポリ−N−ビニルラクタムからなる少なくとも1つの含窒素ポリマー(P2);
A3−コーティング組成物の全質量に対して固形2%〜20%、好ましくは4%〜15重量%の比率で存在し、下記の化合物:グリセロールエステル、フタル酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、セチルアルコールエステル、ヒマシ油の少なくとも1つからなる少なくとも1つの可塑剤;
A4−コーティング組成物の全質量に対して固形2%〜20%、好ましくは4%〜15重量%の比率で存在し、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤および/または滑剤から選択された少なくとも1つの界面活性および/または滑剤;前記作用剤は、ことによると上記の製品の1つのみまたは混合物を含み;あるいは
フォーミュラB
B1−消化管の体液に不溶な少なくとも1つのフィルム形成性ポリマー、
B2−少なくとも1つの水溶性ポリマー、
B3−少なくとも1つの可塑剤、および
B4−場合によっては、好ましくは少なくとも1つのアニオン性界面活性剤および/または少なくとも1つの非イオン性界面活性剤からなる少なくとも1つの界面活性剤/滑剤
から選択されることを特徴とする、請求項7から9、および15から17の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項35】
AP放出制御微粒子および/または微粒剤の平均直径(Dm、単位μm)が、1000未満、好ましくは50〜800、さらに好ましくは50〜500であることを特徴とする、請求項7から34の少なくとも一項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−507760(P2009−507760A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512842(P2008−512842)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062609
【国際公開番号】WO2006/125811
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(593125160)フラメル・テクノロジー (22)
【氏名又は名称原語表記】FLAMEL TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】