説明

胃腸障害の処置のためのプロスタグランジン化合物およびプロトンポンプ阻害剤の併用

本発明は、(a)特定のプロスタグランジン (PG) 化合物および(b) H+,K+-ATPase 阻害剤の胃腸障害の処置のための併用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のプロスタグランジン化合物およびH+,K+-ATPase 阻害剤を含む医薬組成物および該組成物を用いる哺乳類対象における胃腸障害の処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトンポンプ阻害剤(PPI)は壁細胞における水素イオン産生の最終工程に関与する酵素であるH+,K+-ATPaseを阻害することによる胃酸分泌の強力な阻害剤であり、ヒトにおける胃酸関連疾患、例えば、胃潰瘍、出血性潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID-誘発性潰瘍、消化性潰瘍、糜爛性食道炎、胃食道逆流症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、ゾリンジャー・エリソン症候群、NSAIDまたはCOX2 阻害剤-関連予防、消化不良および胃炎の処置に非常に有効である。現在五種類のPPIが入手可能であり、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾールおよびパントプラゾールが含まれる。これらの薬剤はすべて胃酸分泌の最終共通路を阻害する置換ベンズイミダゾールである。
【0003】
胃食道逆流は、胃から食道への胃内容物の逆行性移動をいう。この逆流が症候性症状または組織学的変化を導くと、胃食道逆流症 (GERD)として知られるものとなる。胃内容物の食道への逆流は、炎症、食道の内層の肥厚、食道潰瘍およびバレット食道を導きうる。GERDは通常、慢性の再発性の症状である。米国の成人のおよそ44%が少なくとも月に一回胸やけを経験しており、18%が少なくとも週に二回、7%が毎日胸やけを経験している。およそ百万人のアメリカ人が糜爛性食道炎を有しており、それら個体の20%までもが食道狭窄などの合併症を発症している。GERDの治療法は、患者の症状の排除、逆流の頻度と持続時間の低減、損傷を受けた粘膜の治癒および合併症の発症の防止に向けられている。GERDの管理には生活習慣の改変、制酸薬治療、およびおそらくは手術も含まれる。生活習慣の改変には、ベッドの頭部挙上、食生活の変化、禁煙および減量が含まれる。プロトンポンプ阻害剤はGERDの制酸薬治療の中心をなす。
【0004】
消化性潰瘍疾患もまた、寛解と増悪の繰り返しを特徴とする慢性疾患である。全アメリカ人の約 10%が生涯の内に消化性潰瘍を発症する。十二指腸潰瘍は胃潰瘍よりも一般的である。十二指腸潰瘍は通常、25 〜55歳の個体に起こり、胃潰瘍は55〜65 歳の個体に起こることが最も多い。消化性潰瘍は、酸分泌、粘膜の抵抗力および運動性の異常から発症する。ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)および非ステロイド性抗炎症薬も潰瘍疾患の発症に重要な役割を果たす。消化性潰瘍疾患のための薬物療法は胃の酸性度の低下および粘膜の抵抗力の増強を目的とする。
【0005】
ゾリンジャー・エリソン症候群 (ZES)は、膵臓におけるガストリン分泌腫瘍によって起こる酸過分泌性状態である。ZESは十二指腸潰瘍患者の約 0.1%に起こる。患者は15 meq/時を超える基礎酸分泌量を有する場合、ZESと診断される。プロトンポンプ阻害剤は、ZESの管理に選択されている薬剤である。
【0006】
プロトンポンプ阻害剤は入手可能なもののなかでもっとも有効な制酸薬である。入手可能な薬剤の5つのすべてがGERD、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の処置において同等に有効であるようである。しかし、エソメプラゾール 40mgが、オメプラゾール 40mg、パントプラゾール 40mgまたはランソプラゾール 30mgよりも酸分泌の制御により有効であったと報告されている(Medical Letter vol.43 (W1103B)、2001)。パントプラゾールおよびラベプラゾール錠は砕いたり、懸濁液製剤にしたりできないので、これら2つのPPIは小児患者や嚥下障害を患う患者にはあまり適していない(CIGNA HEALTHCARE COVERAGE POSITION Number 4005)。
【0007】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】

【0008】
PG類は5員環の構造および置換基にしたがって以下のようないくつかのタイプに分類される:
プロスタグランジンA類(PGA類);
【化2】

プロスタグランジンB類 (PGB類);
【化3】

プロスタグランジンC類 (PGC類);
【化4】

プロスタグランジンD類 (PGD類);
【化5】

プロスタグランジンE類 (PGE類);
【化6】

プロスタグランジンF類 (PGF類);
【化7】

等である。さらにそれらは、13,14-二重結合を含むPG1類、5,6-および13,14-二重結合を含むPG2類、および、5,6-、13,14-および17,18-二重結合を含むPG3類に分類される。PG類は様々な医学的および薬理学的活性を有していることが知られており、例えば、血管拡張、炎症誘導、血小板凝集、子宮筋刺激、腸管運動亢進性、および抗潰瘍活性などが挙げられる。ヒトの胃腸 (GI)系において産生される主なプロスタグランジンはE、IおよびF類のものである(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995))。
【0009】
通常の生理条件下では、内因的に産生されるプロスタグランジン類は、GI 機能の維持において主要な役割を果たしており、例えば、腸運動および輸送の制御、ならびに便の堅さの制御が挙げられる(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981);Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol.、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990))。薬理用量にて投与されると、PGE2およびPGFの両方が、腸の輸送を刺激し、下痢を引き起こすことが示された(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976))。さらに、消化管潰瘍疾患の処置のために開発されたPGE1 アナログであるミソプロストールのもっとも一般的に報告されている副作用は下痢である(Monk、et al.、Drugs 33 (1): 1-30 (1997))。
【0010】
PGEまたはPGFは腸の収縮を刺激しうるが、エンテロプーリング効果には乏しい。したがって、PGE類またはPGF類を下剤として用いるのは腹痛を起こす腸の収縮などの副作用のために実用的でない。
【0011】
多数の機構、例えば、腸管神経応答の調節、平滑筋収縮の変化、粘膜分泌の刺激、細胞のイオン分泌の刺激 (特に 起電性 CI- 輸送)および腸の液体容積の増加などがプロスタグランジン類のGI効果に寄与することが報告されている (Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990); Federal Register Vol. 50、No. 10 (GPO,1985); Pierce、et al.、Gastroenterology 60 (1): 22-32 (1971); Beubler、et al.、Gastroenterology、90: 1972 (1986); Clarke、et al.、Am J Physiol 259: G62 (1990); Hunt、et al.、J Vet Pharmacol Ther、8 (2): 165-173 (1985); Dajani、et al.、Eur J Pharmacol、34(1): 105-113 (1975); Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management 1451-1471 (WB Saunders Company、1998))。プロスタグランジン類は細胞保護効果も更に有することが示されている(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res 2:507-520 (1976); Wallace、et al.、Aiiment Pharmacol Ther 9: 227-235 (1995))。
【0012】
米国特許第5225439、5166174、5284858、5428062、5380709、5876034および6265440号には、特定のプロスタグランジンE化合物が、潰瘍、例えば、十二指腸潰瘍および胃潰瘍の処置に有効であることが記載されている。
【0013】
上野らの米国特許第5317032号には、二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジン化合物の下剤が記載されており、上野の米国特許第6,414,016号には、該二環式互変異性体が抗便秘薬として顕著な活性を有することが記載されている。1以上のハロゲン原子によって置換されている二環式互変異性体は、低用量にて便秘の軽減に用いることが出来る。C−16位に、特にフッ素原子を有するものは、低用量で便秘の軽減に用いることが出来る。
【0014】
上野らの米国特許出願公開第2003/0130352号には、クロライドチャンネル、特にClC チャンネル、特にClC-2チャンネルをオープンし、活性化するプロスタグランジン化合物が記載されている。
【0015】
上野の米国特許出願公開第2003/0166632号には、ClCチャンネルオープナーがClC-2チャンネルのオープンに応答する疾患または症状の処置に有効であることが記載されている。
【0016】
上野らの米国特許出願公開第2003/0119898号には、便秘の処置および予防のためのハロゲン化プロスタグランジンアナログの特定の組成物が記載されている。
【0017】
上野らの米国特許出願公開第2004/0138308号には、腹部不快感の処置、および機能性胃腸障害、例えば、過敏性腸症候群および機能性消化不良の処置のための、クロライドチャンネルオープナー、特に、プロスタグランジン化合物が記載されている。
【0018】
国際出願公開WO00/35448号には、胃腸障害の処置に使用されるプロトンポンプ阻害剤および特定の胃抗分泌性プロスタグランジンアナログを含む医薬製剤が記載されている。
【0019】
胃抗分泌性プロスタグランジンアナログの一つであるミソプロストールが、血小板凝集を阻害することが報告されている(Jounal of Physiology and Pharmacology 2002、53、4、635-641)。胃抗分泌性プロスタグランジンアナログの一つであるオルノプロスチルが、出血を促進する抗血小板凝集効果を有し、それゆえ出血性潰瘍患者には注意深く投与しなければならないということも報告されている(オルノプロスチルのパッケージ中に示されている)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、胃腸障害の処置に有用な既知の化合物の新規な組合せを提供することである。換言すると、本発明の目的は、胃腸障害の処置に有用な新規組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、胃腸障害の処置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は以下を含む医薬組成物に関する:
(a)医薬上有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン (PG) 化合物:
【化8】

[式中、
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、LおよびMの少なくとも一方は水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【化9】

ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;および、
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基;
ただし、Rはハロゲンで置換されている、および/または、ZはC=Oである]、
(b)医薬上有効量のH+、K+-ATPase 阻害剤、および、
医薬上好適な賦形剤。該組成物は胃腸障害の処置に有用である。
【0022】
本発明はまた、
(a)医薬上有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン(PG)化合物、
および、
(b)医薬上有効量のH+,K+-ATPase 阻害剤、
の組合せを、必要とする対象に投与することを含む、哺乳類対象における胃腸障害の処置方法にも関する。
【0023】
本発明はさらに、(a) 式(I)で表されるプロスタグランジン (PG) 化合物、および、(b) H+,K+-ATPase 阻害剤の、哺乳類対象における胃腸障害の処置のための医薬組成物の製造のための併用に関する。
【0024】
図面の簡単な説明
図1は、ラットにおける総酸分泌量に対する13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (化合物1)の効果を示すグラフである。値は6匹の動物の平均 ± S.E.である。##p<0.01は、スチューデントt検定による生理食塩水処理対照群との比較である。
【0025】
発明の詳細な説明
(a)式(I)の化合物
本発明のプロスタグランジン化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸骨格の番号を用いる。
【0026】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0027】
例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有するPG化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換−PG化合物あるいは11−デヒドロキシ−11−置換−PG化合物の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9−あるいは11−デオキシ−PG化合物と称する。
【0028】
前述のように、PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0029】
アナログ(置換誘導体を含む)または誘導体の例は、上記PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9および/または11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0030】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9および/または11位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0031】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0032】
本発明において用いられる特定のプロスタグランジン化合物は式(I)で表される:
【化10】

[式中、
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、LおよびMの少なくとも一方は水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【化11】

ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;および、
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基;
ただし、Rはハロゲンで置換されている、および/または、ZはC=Oである]。
【0033】
本発明に用いられる好ましい化合物は式(II)で表される:
【化12】

[式中、
LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ、ここで、LおよびMの少なくとも一方は水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【化13】

ここで、RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、RおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
およびXは、水素、低級アルキル、またはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
は、単結合または低級アルキレン;および、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基;
ただし、XおよびXの一方はハロゲンで置換されている、および/または、ZはC=Oである]。
【0034】
上記式中、RおよびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0035】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、好ましくは炭素原子数1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0036】
「ハロゲン原子」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0037】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0038】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0039】
「低級アルキレン」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の二価飽和炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0040】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0041】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0042】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0043】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0044】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0045】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0046】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0047】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0048】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0049】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0050】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0051】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0052】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0053】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル-またはアリール-スルホニルアミドが挙げられる。
【0054】
好ましいLおよびMの例は、水素、ヒドロキシ、オキソを含み、特にMがヒドロキシでLがオキソであるいわゆるPGEタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0055】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0056】
好ましいXおよびXの例は、両方がハロゲンであり、より好ましくは両方がフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を提供するものである。
【0057】
好ましいRは、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0058】
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、および、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−。
【0059】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0060】
もっとも好ましい態様において、プロスタグランジン化合物は、13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE化合物または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE化合物である。
【0061】
上記式(I)および(II)において環およびα−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0062】
本発明において、13と14位がジヒドロであり、15位がケト(=O)であるPG化合物は、11位のヒドロキシと15位のケト間のへミアセタール形成により、ケト−ヘミアセタール平衡を生ずる場合がある。
【0063】
例えば、XおよびXの両方がハロゲン原子、特にフッ素原子の場合、化合物は互変異性体、二環式化合物を含むことが確認されている。
【0064】
このような互変異性体が存在する場合、両異性体の存在比率は他の部分の構造または置換基の種類により変動し、場合によっては一方の異性体が圧倒的に存在することもあるが、本発明においてはこれら両者を含むものとする。
【0065】
さらに、本発明に用いられる15-ケト-PG 化合物は、二環式化合物およびそのアナログまたは誘導体を含む。
【0066】
二環式化合物は式(III)で表される:
【化14】

[式中、
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
’およびX’は、水素、低級アルキル、またはハロゲン;
Yは、
【化15】

ここでR’およびR’は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R’およびR’は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;および、
'は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基;および、
'は、水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基]。
【0067】
本発明に用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわりなくケト型の構造式または命名法によって化合物を表わすことがあるが、これは便宜上のものであってヘミアセタール型の化合物を排除しようとするものではない。
【0068】
本発明において、いずれの異性体、例えば、個々の互変異性体、その混合物、または光学異性体、その混合物、ラセミ混合物、およびその他の立体異性体も同じ目的に用いることが出来る。
【0069】
本発明に用いられる化合物のいくつかは、米国特許第5073569、5166174、5221763、5212324、5739161および6242485号に開示の方法によって調製することが出来る(これら引用文献は引用によりその内容を本明細書に含める)。
【0070】
(b) H+,K+-ATPase 阻害剤
H+,K+-ATPase 阻害剤、即ち、本発明において用いられるプロトンポンプ阻害剤には、これらに限定されないが、一般式(II)の化合物、そのアルカリ塩、その単一のエナンチオマーのいずれかまたはエナンチオマーのいずれかのアルカリ塩が含まれる:
【化16】

[式中、
Het1は、
【化17】

ここで、R、RおよびRは同一であるかまたは異なっており、水素、アルキル、フッ素により置換されていてもよいアルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルコキシ、ジアルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ハロゲン、フェニルおよびフェニルアルコキシから選択され、
およびRは同一であるかまたは異なっており、水素、アルキルおよびアリールアルキルから選択され、そして、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、アルキルまたはアルコキシ;
Het2は、
【化18】

ここで、R−Rは同一であるかまたは異なっており、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、オキサゾリニル、トリフルオロアルキルから選択され、または隣接する基 R−Rはさらに置換されていてもよい環構造を形成する、そして、
ベンズイミダゾール部分のベンゼン環の中心のNは、R−Rによって置換されている環炭素原子の一つが、いかなる置換基も有さない窒素原子と交換されていてもよいことを意味し; そして、
Xは、
【化19】

ここで、Rは、水素またはRとともにアルキレン鎖を形成し、そして、
およびRは同一であるかまたは異なっており、水素、ハロゲンまたはアルキルから選択される]。
【0071】
特に好ましい式IIによる化合物の例は、
【化20】

オメプラゾール
【化21】

エソメプラゾール
【化22】

ランソプラゾール
【化23】

ラベプラゾール
【化24】

パントプラゾール
【化25】

パリプラゾール(Pariprazole)
【化26】

レミノプラゾール
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

である。
【0072】
本明細書において用いられる化合物は、中性形態またはアルカリ塩形態、例えば、Mg2+、Ca2+、Na+またはK+ 塩のいずれにおいて用いてもよい。化合物はまた、その単一のエナンチオマーのいずれかまたは単一のエナンチオマーのアルカリ塩の形態において用いてもよい。
【0073】
本明細書において用いられるプロトンポンプ阻害剤の好ましい化合物は、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾールまたはそれらの医薬上許容される塩、その単一のエナンチオマーの一つまたはその医薬上許容される塩であり、特に、オメプラゾール、ランソプラゾールおよびエソメプラゾールマグネシウムであり、さらには、オメプラゾールおよびランソプラゾールである。
【0074】
医薬上好適な賦形剤
本発明によると、組成物は、いずれの形態に製剤してもよい。医薬上好適な賦形剤はそれゆえ、組成物の所望の形態に応じて選択されうる。本発明によると、「医薬上好適な賦形剤」は、本発明の活性成分と組み合わせての剤形に好適な不活性物質を意味する。
【0075】
本発明の経口投与のための固体組成物の例としては、錠剤、調製物、顆粒剤等が挙げられる。固体組成物において、1以上の活性成分は少なくとも1つの不活性希釈剤、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微晶質セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合され得る。通常の慣行に従って、組成物はさらに、不活性希釈剤以外の添加剤を含んでいてもよく、例えば、滑沢剤、例えば、 ステアリン酸マグネシウム; 崩壊剤、例えば、 繊維状グルコン酸カルシウム;安定化剤、例えば、シクロデキストリン、例えば、α,β-またはγ-シクロデキストリン; エーテル化シクロデキストリン 、例えば、ジメチル-α-、ジメチル-β-、トリメチル-β-、またはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン; 分枝状シクロデキストリン、例えば、グルコシル-、マルトシル-シクロデキストリン; ホルミル化シクロデキストリン、イオウ含有シクロデキストリン; リン脂質等が挙げられる。上記シクロデキストリンを用いる場合、シクロデキストリンによる包接化合物を場合によっては形成させて安定性を高めることが出来る。あるいは、リン脂質を場合によっては用いてリポソームを形成させ、その結果、安定性を高めることが出来る。
【0076】
錠剤または丸剤は、例えば、糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、またはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の胃または腸溶性フィルムで所望により被覆してもよい。さらに、それらは、吸収性物質、例えば、ゼラチンとともにカプセルとして製剤してもよい。好ましくは、組成物は、特定のプロスタグランジン化合物を液体にて含み、かつ中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む軟ゼラチンカプセルに製剤する。本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドの例としては、炭素原子数6−14の分枝鎖を有していてもよい飽和または不飽和脂肪酸のトリグリセリドが挙げられる。好ましい脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸、例えば、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)である。さらに、2以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを組合せて用いてもよい。さらに好適な賦形剤は米国特許第6583174号に開示されている。
【0077】
経口投与のための液体組成物の例としては、医薬上許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップまたはエリキシル剤ならびに一般に用いられている不活性希釈剤等が挙げられる。該組成物はさらに、不活性希釈剤に加えて、補助剤、例えば、湿潤剤および懸濁化剤、甘味料、香味料、保存料、可溶化剤、抗酸化剤などを含んでいてもよい。添加剤についての詳細は薬学分野の一般的書籍に記載のものから選択すればよい。かかる液体組成物は、軟カプセルに直接封入してもよい。非経口投与のための溶液、例えば、本発明による坐薬、浣腸等は、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、乳濁液、界面活性剤などを含んでいてもよい。水溶液および懸濁液としては、例えば、蒸留水、生理的食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0078】
非水性溶液および懸濁液としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、植物油、例えば、オリーブ油、アルコール、例えば、エタノールおよびポリソルベート等が挙げられる。組成物はさらに、補助剤、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗酸化剤等を含んでいてもよい。
【0079】
非経口投与のための本発明の注射可能組成物の例としては、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。水溶液または懸濁液のための希釈剤としては、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水およびリンゲル液が挙げられる。
【0080】
溶液および懸濁液のための非水性希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、アルコール、例えば、エタノールおよびポリソルベートが挙げられる。組成物はさらに、添加剤、例えば、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を含んでいてもよい。それらは例えば細菌保持フィルターでのろ過によって、滅菌剤を配合することによって、あるいはガスまたは放射性同位体照射滅菌によって滅菌してもよい。注射可能組成物は、注射用無菌溶媒に使用時に溶解される滅菌された粉末組成物として提供してもよい。
【0081】
本発明の組成物の別の形態は、坐薬または腟坐薬であり、これは活性成分を体温で軟化する常套の基剤、例えば、カカオ脂と混合することによって調製でき、好適な軟化温度を有する非イオン性界面活性剤を吸収性を高めるために用いてもよい。
【0082】
本発明の方法によると、本発明の組成物は全身的または局所的に経口または非経口投与によって投与でき、坐薬、浣腸等が含まれる。単一または複数の組成物を所望の用量を達成するために投与することもできる。
【0083】
本発明によると、哺乳類対象は本発明の特定の化合物の組合せを投与することにより本発明により処置されうる。哺乳類対象はヒトを含むあらゆる対象であり得る。化合物は全身的または局所的に適用することが出来る。通常、化合物は経口投与、静脈内注射 (注入を含む)、皮下注射、直腸内投与、膣内投与、経皮投与等によって投与しうる。投与量は動物の種類、年令、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与経路、処置期間等により変化する。1日1〜6、好ましくは1〜4分割用量で全身投与または連続投与する場合、例えば、0.001〜100000μg、好ましくは0.01〜10000μg、より好ましくは0.1〜1000μg そして特に1〜100μgの特定のプロスタグランジン化合物および、1〜200mg、より好ましくは1〜60mgのH+,K+-ATPase 阻害剤の各投与量の組合せで満足な効果が得られる。
【0084】
本明細書において用いられる「組合せ」という語は、活性成分、即ち、特定のプロスタグランジン化合物およびPPIの両方が、患者に同時に一回投与形態で投与されるか、または、それら両方が患者に同時または時間制限無く逐次に別々の形態で投与されることを意味し、ここでかかる投与は治療上有効レベルのそれら2成分を体内に好ましくは同時に提供するものである。
【0085】
本明細書において用いる「処置」の語は、例えば、症状の予防、治療、軽減、症状の減弱、進行の阻害などのあらゆる管理手段をいう。
【0086】
本明細書において用いられる特定のプロスタグランジン化合物は、胃腸管のバリア機能の回復を誘導する活性を含む、顕著な抗潰瘍活性および細胞保護性を有しており、胃酸分泌量またはATP-誘導性血小板凝集に実質的に影響を及ぼさないものである。かかる事実は、特定のプロスタグランジン化合物の抗潰瘍活性が胃酸分泌の阻害に由来するのではなく、H+,K+-ATPase 阻害剤の作用機作とは異なることを示唆する。したがって、該組合せは成分 (a)および(b)を含むことにより、胃腸障害に対して優れた効果を有するという利点を有し、したがって用量を低下させることが出来、および/または副作用を低下させることができる。
【0087】
本明細書において用いられる「胃腸障害」には、例えばこれらに限定されないが、胃潰瘍、出血性潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID-誘発性潰瘍、消化性潰瘍、糜爛性食道炎、胃食道逆流症、ヘリコバクター・ピロリ感染症、ゾリンジャー・エリソン症候群、NSAIDまたはCOX2 阻害剤-関連予防、消化不良、胃炎、胃腸出血、食道潰瘍およびバレット食道が挙げられる。
【0088】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0089】
実施例 1
用いた被験動物の各群は、Crj: ウィスター系の10匹の雄性ラットからなるものとした。動物を化合物1 (13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)または媒体の経口投与の前24 時間絶食させた。被験サンプルまたは媒体の経口投与の10分後、すべてのラットに20 mg/kg 経口用量のインドメタシンを与えた。動物を6 時間後に安楽死させた。胃を取り出し、各胃潰瘍の最長の軸の長さを測定した。潰瘍指数を各個々の潰瘍の長さの和として計算した。
【0090】
表1に示すように、化合物1 (13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)は、インドメタシン-誘発性潰瘍形成に対して有意な保護を提供することが示された。
【0091】
表 1:ラットにおけるインドメタシン-誘導性胃潰瘍に対する化合物1の効果
【表1】

a各個々の潰瘍の長さの和
b 平均 ± SE; *p<0.05、媒体-処理対照群との比較(スチューデントt検定)
【0092】
実施例 2
用いた被験動物の各群は、Crj: ウィスター系の9または10匹の雄性ラットからなるものとした。動物を被験サンプルの経口投与の前に24 時間絶食させた。様々な用量の化合物1 (13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)または媒体の経口投与の10分後、各動物を狭いケージに入れ、水中に (23℃)剣状突起の高さまで6 時間浸した。動物を次いで安楽死させた。胃を取り出し、各胃潰瘍の最長の軸の最大の長さを測定した。潰瘍指数を各個々の潰瘍の長さの和として計算した。
【0093】
表 2に示すように、化合物1は、ストレス-誘発性潰瘍形成に対して有意に保護を提供することが示された。
【0094】
表 2:ラットにおけるストレス-誘導性胃潰瘍に対する化合物1の効果
【表2】

a各個々の潰瘍の長さの和
b 平均 ± SE; **p<0.01、媒体-処理対照群との比較(ダネット検定)
【0095】
実施例 3
研究は、Wong et al(Pharmacol. Soc. 32:49-56、1989) に記載の方法にしたがって行った。用いた被験動物の各群はCrj: ウィスター系の6匹の雄性ラットからなるものとした。動物に水を自由に与えて24 時間絶食させた。各用量処方の、化合物1 (13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)、生理食塩水および中鎖脂肪酸トリグリセリド (MCT)を経口投与し、30分後に幽門結紮した。陽性対照について、動物に公知の胃酸刺激剤であるペンタガストリンを皮下に2000μg/kgで与えた。エーテル麻酔下で、正中切開により開腹し、3-0 絹縫合により幽門結紮し、腹部を閉じた。動物をその後、飼料と水を与えずに維持した。幽門結紮の4時間後、動物を頸椎脱臼により安楽死させ、開腹した。胃内容物を滅菌遠心管に集め、3000rpmで10 分間遠心分離して固体物質を除いた。上清を収集し、体積を測定した。各胃液サンプルの1 mL アリコットを自動滴定装置 (COMTITE-900、Hiranuma Sangyo、Co.、Ltd.、Japan)を用いて0.01 N 水酸化ナトリウムによりpH 7.0になるまで滴定し、酸性度 (mEq H+/mL)を測定した。4 時間の胃酸の総分泌量を計算した。
【0096】
結果
結果を図 1に示す。生理食塩水- およびMCT-処理群の間に総酸分泌量における有意差はなかった。一方、陽性対照としての2000μg/kgのペンタガストリンの皮下投与は、生理食塩水-処理対照群と比較して有意な上昇をもたらした (p < 0.01)。被験化合物は媒体-処理対照群と比較して総酸分泌量に影響を与えなかった。
【0097】
実施例 4
血液をJW/CSK 系統のウサギから採取し、9 体積の血液対1 体積の3.8% クエン酸ナトリウム溶液の比にてクエン酸ナトリウムと混合することによりクエン酸処理した。多血小板血漿(PRP)をクエン酸処理血液を1000 rpm (168 x g)で10 分間遠心分離することによって得た。PRPの収集後、残余の血液をさらに3000 rpm (1670 x g)で15分間遠心分離し、上清を乏血小板血漿 (PPP)として用いた。PRP (200 μL)と各被験溶液(25 μL)との1 分間37℃でのプレインキュベーションの後、25 μL の血小板凝集剤 (ADP 25 μM)を添加した。血小板凝集を血小板凝集測定器 (HEMATRACER PAT-4A、Niko Bioscience、Inc.)を用いて測定した。各被験溶液を 3匹の異なる動物源の血小板を用いて二連で調べた。阻害パーセントを生理食塩水-処理群による最大凝集との比較により計算した。
【0098】
表 3に示すように、化合物1 (13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)は血小板凝集に対する効果は有さなかった。一方、プロスタグランジンE1 (PGE1)は血小板凝集を有意に阻害した。
【0099】
表 3.化合物1およびPGE1のADPで誘導されたウサギ血小板凝集に対する効果
【表3】

a 平均 ± SE、
**p<0.01、媒体対照群との比較(スチューデントt検定)
【0100】
実施例 5
(方法)
ウィスターラットを水を自由に与えて一晩絶食させた後に用いた。化合物1 (13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)または化合物 2(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18(s)メチル-PGE1)を動物に経口投与した。化合物1およびプロトンポンプ阻害剤 (ランソプラゾールまたはオメプラゾール)による組合せ処理の効果を評価する際、化合物1とプロトンポンプ阻害剤とは同時に経口投与した。対照群には等体積の媒体を与えた。投与の10分後、動物をストレスケージに入れ、23℃に維持した水浴に剣状突起まで垂直に浸した。5時間後、各動物をケージから出し、CO2 窒息により屠殺した。胃を胃の心臓領域と十二指腸の上部を結紮した後取り出した。胃を4 mLの生理的食塩水で満たし、1% ホルマリン溶液で30 分間固定した。胃を大弯に沿って開けた。個々の潰瘍の長さ(mm)を測定し、潰瘍指数を胃あたりの全ての潰瘍の長さの和として表した。
【0101】
(結果)
表 4に示すように、化合物1および2は胃潰瘍を用量依存的に阻害した。表 5に示すように、化合物1とランソプラゾールとの組合せ処理は、ランソプラゾールのみでの処理と比較してより強力に胃潰瘍を阻害した。さらに、化合物1とオメプラゾールとの組合せ処理も、オメプラゾールのみでの処理と比較してより強力に胃潰瘍を阻害した。
【0102】
結果は、特定のプロスタグランジン化合物とプロトンポンプ阻害剤の組合せ処理が、胃潰瘍の阻害について相加および/または相乗効果を有することを示した。
【0103】
表 4 : ラットにおいて水浸ストレスにより誘導された胃潰瘍に対する化合物 1および2の効果
【表4】

【0104】
表 5 :ラットにおいて水浸ストレスにより誘導された胃潰瘍に対する化合物1とプロトンポンプ阻害剤との組合せ処理の効果
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、ラットにおける総酸分泌量に対する13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 (化合物1)の効果を示すグラフである。値は6匹の動物の平均 ± S.E.である。##p<0.01は、スチューデントt検定による生理食塩水処理対照群との比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)で表されるプロスタグランジン (PG) 化合物:
【化1】

[式中、
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、LおよびMの少なくとも一方は水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【化2】

ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;および、
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基;
ただしRはハロゲンで置換されている、および/または、ZはC=Oである]、
および、
(b) H+、K+-ATPase 阻害剤
の、医薬上許容される賦形剤と組み合わせての医薬組成物の製造のための併用。
【請求項2】
該プロスタグランジン化合物が16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項3】
該プロスタグランジン化合物が15-ケト-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項4】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項5】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項6】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項7】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項8】
該プロスタグランジン化合物が15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項9】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である、請求項1の併用。
【請求項10】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物である、請求項1の併用。
【請求項11】
該プロスタグランジン化合物が15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物である、請求項1の併用。
【請求項12】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物である、請求項1の併用。
【請求項13】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE化合物である、請求項1の併用。
【請求項14】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジンE化合物である、請求項1の併用。
【請求項15】
該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16- ジフルオロ-プロスタグランジンE化合物または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE化合物である、請求項1の併用。
【請求項16】
H+,K+-ATPase 阻害剤が、一般式 IIの化合物、そのアルカリ塩、その単一のエナンチオマーのいずれかまたはエナンチオマーのいずれかのアルカリ塩である請求項1-15のいずれかの併用:
【化3】

[式中、
Het1は、
【化4】

ここで、R、RおよびRは同一であるかまたは異なっており、水素、アルキル、フッ素により置換されていてもよいアルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルコキシ、ジアルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ハロゲン、フェニルおよびフェニルアルコキシから選択され、
およびRは同一であるかまたは異なっており、水素、アルキルおよびアリールアルキルから選択され、そして、
は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、アルキルまたはアルコキシ;
Het2は、
【化5】

ここで、R−Rは同一であるかまたは異なっており、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、オキサゾリニル、トリフルオロアルキルから選択され、または隣接する基 R−Rはさらに置換されていてもよい環構造を形成する、そして、
ベンズイミダゾール部分のベンゼン環の中心のNは、R−Rにより置換された環炭素原子の一つが、いかなる置換基も有さない窒素原子と交換されていてもよいことを意味する;そして、
Xは、
【化6】

ここで、Rは水素、またはRとともにアルキレン鎖を形成し、そして、
およびRは同一であるかまたは異なっており、水素、ハロゲンまたはアルキルから選択される]。
【請求項17】
H+,K+-ATPase 阻害剤が、オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、ラベプラゾールまたはその医薬上許容される塩、その単一のエナンチオマーの一つまたはその医薬上許容される塩である、請求項16の併用。
【請求項18】
H+,K+-ATPase 阻害剤が、オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール、またはその医薬上許容される塩、その単一のエナンチオマーの一つまたはその医薬上許容される塩である、請求項16の併用。
【請求項19】
H+,K+-ATPase 阻害剤が、オメプラゾール、ランソプラゾール、またはその医薬上許容される塩、その単一のエナンチオマーの一つまたはその医薬上許容される塩である、請求項16の併用。
【請求項20】
H+,K+-ATPase 阻害剤が、オメプラゾールまたはその医薬上許容される塩、その単一のエナンチオマーの一つまたはその医薬上許容される塩である、請求項16の併用。
【請求項21】
H+,K+-ATPase 阻害剤が、ランソプラゾールまたはその医薬上許容される塩、その単一のエナンチオマーの一つまたはその医薬上許容される塩である、請求項16の併用。
【請求項22】
該医薬上許容される賦形剤が、経口投与のための賦形剤である、請求項1-21のいずれかの併用。
【請求項23】
医薬組成物が胃腸障害の処置のためのものである請求項1-22のいずれかの併用。
【請求項24】
胃腸障害が、胃潰瘍、出血性潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID-誘発性潰瘍、消化性潰瘍、糜爛性食道炎、胃食道逆流、ヘリコバクター・ピロリ感染症、ゾリンジャー・エリソン症候群、NSAIDまたはCOX2 阻害剤-関連予防、消化不良、胃炎、胃腸出血、食道潰瘍およびバレット食道からなる群から選択される、請求項 23の併用。
【請求項25】
必要とする対象に、以下の(a)と(b)の組合せを投与することを含む、哺乳類対象における胃腸障害の処置方法:
(a)医薬上有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン (PG) 化合物:
【化7】

[式中、
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、LおよびMの少なくとも一方は水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【化8】

ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;および、
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基;
ただし、Rはハロゲンで置換されている、および/または、ZはC=Oである]、
および、
(b)医薬上有効量のH+,K+-ATPase 阻害剤。
【請求項26】
成分 (a)および(b)が同時または逐次に投与される請求項 25の方法。
【請求項27】
(a)医薬上有効量の式(I)で表されるプロスタグランジン(PG)化合物:
【化9】

[式中、
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ; ここで、LおよびMの少なくとも一方は水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい;
Aは、−CH3、−CHOH、−COCHOH、−COOH またはそれらの官能性誘導体;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【化10】

ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキル、ただしRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、飽和または不飽和の二価の低〜中級脂肪族炭化水素であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;および、
は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基; 低級アルコキシ; 低級アルカノイルオキシ; シクロ(低級)アルキル; シクロ(低級)アルキルオキシ; アリール; アリールオキシ; 複素環基; 複素環オキシ基;
ただし、Rはハロゲンで置換されている、および/または、ZはC=Oである]、
(b)医薬上有効量のH+,K+-ATPase 阻害剤、
および医薬上好適な賦形剤、
を含む、医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−535774(P2008−535774A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547675(P2007−547675)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国際出願番号】PCT/JP2006/308001
【国際公開番号】WO2006/109881
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】