説明

胃酸分泌の即効性阻害剤

本発明は、休止期での胃酸分泌の減少、胃のpHの上昇並びに分泌促進期での胃酸放出期間の減少に関して迅速な作用を提供し、そして場合により、長期間の作用を提供し、並びに胃食道逆流症(GERD)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)、ゾリンジャーエリソン症候群(ZE疾患)、潰瘍性疾患及び胃癌などの状態を治療するため、及び潰瘍性疾患のおそれを防止又は減少させるための、製薬上許容される亜鉛塩の使用、好ましくは水溶性亜鉛塩単独での使用、又は場合により、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2遮断薬、抗H.ピロリ抗生物質/抗菌剤、細胞保護剤又は本明細書の他の箇所に記載されている組合せの薬剤のうちの1つ以上と組合せての使用に関する。さらに、本方法は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)に対して反応のない患者を治療するために、又は酸分泌を誘発する分泌促進物質の迅速かつ完全な阻害によって引き起こされる状態を治療するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃底(液胞型H+−ATPアーゼを阻害することによる)及び胃の上部領域(H+/K+−ATPアーゼを阻害することによる)における酸分泌を含めた胃酸分泌の減少、例えば、休止期での胃のpHの上昇及び分泌促進期での胃酸放出期間の減少に関して迅速な作用を提供し、そして場合により、長期間の作用を提供し、並びに、胃食道逆流症(GERD)、非びらん性胃食道逆流症(NERD)、ゾリンジャーエリソン症候群(ZE疾患)、潰瘍性疾患及び胃癌などの状態を治療するため及び潰瘍性疾患のおそれを防止又は減少させるための、製薬上許容される亜鉛塩の使用、好ましくは水溶性亜鉛塩単独での使用、又は場合により、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2遮断薬、抗H.ピロリ抗生物質/抗菌剤、細胞保護剤又は本明細書の他の箇所に記載されている組合せの薬剤のうちの1つ以上と組合せての使用に関する。さらに、本発明の方法は、従来の療法に代わるものとして、プロトンポンプ阻害剤(PPI)に対して反応のない患者を治療するために、又は酸分泌を誘発する分泌促進物質の迅速かつ完全な阻害によって引き起こされる状態を治療するために有用である。
【0002】
関連出願
本願は、2006年1月27日に出願された米国仮出願US60/762,595、2006年2月3日に出願されたUS60/764,834及び2006年10月11日に出願されたUS60/850,891の優先権の利益を主張し、前記出願の各々は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
哺乳類壁細胞による濃縮0.16N塩酸の生成は、ニューロン及びホルモン調節性フィードバックループの複雑な組合せに関係している1-3。細胞の活性化後、イオンの複雑な細胞転移があり、これによって酸の形成が可能となる4-7。これらの成分のいずれか(分泌受容体又はイオントランスポーター)の混乱が、酸の分泌又は酸の過分泌による休止のいずれかをもたらし得る。後者では、年間3000万人を超える患者が、酸関連疾患の症状に苦しんでおり、その数は年々増加している8-11。臨床的には、酸の制御されない放出又は継続する過分泌は、胃及び腸管の上皮の両方において異変をもたらし得るが、より重篤な症例では食道のびらんを引き起こすこともあり、これが化成及び死亡をもたらすことがある12-14。過分泌状態の長期の再発期間が、胃カルチノイド形成をもたらし得るという最近の証拠も現れた15
【0004】
過酸分泌を防ぐための療法を考案する試みでは、最近、種々のアプローチが用いられ、最も成功した2つのものは以下のとおりである:a)壁細胞の側底膜上のヒスタミン受容体の阻害、b)H,K−ATPアーゼを標的とするプロトンポンプ特定薬剤(いわゆるプロトンポンプ阻害剤;PPI)16-18。これらの療法は両方とも、この疾患を患っている患者の生活の質を大幅に向上させたが、この薬物をまだ摂取しているにもかかわらず、疾患の発性を経験した患者の数は増加の一途をたどる19,20。これらの高度の有効性及び世界的な臨床使用にもかかわらず、酸関連疾患の治療における失敗が報告されており、症状緩和の発現の程度及び速度は、患者にとって重要である21。GRED患者の約30%は、標準用量のPPIで依然症状を示したままであると推定されている22。さらに、PPIは、短い血漿半減期を有し、これが夜間の酸の急増をもたらすことが多い23。PPIの治療用の経口量は、通常の投与計画で4〜5日後に定常状態に達し、したがって、その最大有効レベルを達成する24。PPIの効果のこの緩慢で累積による発現は、そのPPI薬が利用可能であるときに活性であるポンプのみを阻害する能力に関連している。PPI投与後、酸分泌の回復があるが、これは一部には、酵素のデノボ合成によるものである25
【0005】
亜鉛は、食事での不可欠な成分であり、すべての細胞は細胞膜の健全性及び機能を維持するためにそれを必要とする。細胞内亜鉛の欠乏は、アポトーシスイベント及び細胞死をもたらす26-30。これまでの研究により、増殖及び胃の表面での保護壁、すなわち粘液ゲル層の生成における亜鉛の潜在的な役割が調べられた31-34。これらの研究は、誤って酸分泌の減少はゲル層の厚みの増大に原因があるとしてきた33-35
【0006】
胃酸は、タンパク質消化を助け、鉄、カルシウム及びビタミンB12の吸収を促進し、細菌の異常増殖を防ぐ。酸及びタンパク質分解酵素の度合いが、粘膜の防御作用を圧倒する場合に、潰瘍が生じる。これらの厳しい疾患と関連する損傷を避けるために、胃酸は、ニューロン経路(例えば、アセチルコリン)、ホルモン経路(例えば、ガストリン及びグレリン)及び傍分泌経路(例えば、ヒスタミン及びソマトスタチン)を重複させることによって、そしてより最近ではカルシウム感知受容体を介して、綿密に調節されなければならない。これらの調節経路のいずれかのあらゆる長期の変質が、細胞及び組織の破壊並びに消化性潰瘍性疾患又は胃食道逆流症(GERD)といった臨床兆候をもたらす。酸の過剰産生を治療するためには、2つの方法がよく用いられている:a)外科的なニューロン成分の排除によるもの(迷走神経切離術)、又はb)薬理学的なヒスタミン2受容体拮抗薬又はプロトンポンプ阻害剤(PPI)のいずれか又は両方の組合せによるものである。
【0007】
PPI、例えば、オメプラゾールは、胃のH+/K+ −ATPアーゼの不可逆性阻害剤であり、H+/K+ −ATPアーゼの細胞外表面にある複数のシステイン残基と結合する親化合物オメプラゾールの種々の誘導体が、より緊密な分子結合を有することを期待して近年開発されており、より長期の活動が費やされている。ラベプラゾール及びランソプラゾールは両方とも、これらの多重結合薬の例であり、胃腺の酸性内腔において活性化され、H+/K+ −ATPアーゼの内腔表面に位置するシステイン残基を変更する。休止細胞では、酸分泌ポンプは管状小胞の系に内部移行されており、このような構造状態では、PPIはすでに活性化され、壁細胞の先端面に移動されたH+/K+−ATPアーゼしか阻害できない。
【0008】
PPIの種類の中で薬理学的特性を最適化することは、何らかの臨床上の利益を提供し得るが、その他の研究領域がより有益であると分かり、さらに、酸分泌プロセスの微調整はまだ完全には理解されておらず、これが依然、胃酸分泌を調節する療法の重要な対照となっている。
【0009】
亜鉛は、遺伝子発現、複製、膜安定性、ホルモン貯蔵及び放出をはじめとする多数の生物学的プロセスにとって、また酵素の触媒成分として必要である。酸分泌に対する効果に関して、細胞レベルでの亜鉛の作用の調査はなかった。
【0010】
H.ピロリ(Helicobacter pylorus)は、ヒト胃粘膜の粘膜層内に存在する。胃は、極めて低いpHのために、ほとんどのその他の微生物にとっては不適な環境である。H.ピロリの胃において繁栄する能力は、例えば、塩基性微環境を作り出すことによって細菌を胃の酸性度から保護するそのウレアーゼの産生のような防御作用に起因するとされている。Taylor及びBlaser、Epidemiol Rev、13:42〜59頁(1991)を参照のこと。
【0011】
胃は、食べ物の消化並びに液体及び水の殺菌プロセスに関与している、3つの主要な領域に分けることができる大きな臓器である。胃を機能から定義する場合には、通常、2つの領域に分けられてきた:胃上部及び胃下部。胃上部は、胃底及び上体からなると考えられており、低頻度の持続性収縮を示し、これが胃内の基礎圧力の発生の原因である。これらの持続性収縮はまた、胃から小腸への圧力勾配を発生させ、これが胃内容物排出の原因であるということは留意される。興味深いことに、食品を飲み込んだ結果として生じる胃膨満が、胃のこの領域の収縮を阻害するよう作用すると、圧力の大幅な増加を伴わずに膨らみ、大きな貯蔵所を形成することが可能となる。胃下部は、胃のこの部分に見られる壁細胞からのHClの分泌による食べ物の破砕及び液化に関係していると考えられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、副作用のおそれがほとんど、ないし全くない、酸分泌の速やかな阻害のための新規組成物及び方法に関する。第1の態様では、本発明は、患者の胃における酸分泌の速やかな減少(すなわち、約5分ほどの、約10分ほどの、約20分ほどの、約30分ほどの、約1時間ほどの間に)を生じ、結果として、少なくとも約3.0〜3.5、少なくとも約4.0、約4.0〜約5.0という胃内pHレベルに胃pHが増大(上昇)する有効量で、少なくとも1種の製薬上適合する亜鉛塩(好ましくは、水溶性塩)を含む亜鉛組成物に関する。本発明のこの態様では、胃pHの増大を必要とする患者を、胃内pHの上昇の速やかな発現が起こるよう、製薬上適合する亜鉛塩の有効量で治療する。この方法発明は、少なくとも1種の製薬上適合する、好ましくは、水溶性亜鉛塩の有効量の投与(好ましくは、限定するものではないが注射による)により、これでは、低pH(通常、約2.0未満)の、好ましくは、低pH(約1.0〜約2.0)から高pH(約5.5〜約7.5又はそれより高い)の範囲のpH内の胃液において相当部分が溶解し、その結果亜鉛塩の有効量が投与され、酸放出の初期での速やかな阻害及び胃におけるその後の酸放出の阻害の維持を提供できる。本発明では、胃酸の阻害は、好ましくは、約20分〜約1時間という速やかな期間内に(通常、約5分ほどの時間内に、約10分ほどの時間内に又は約20分ほどの時間内に、約30分ほどの時間内に、約1時間ほどの時間内に)阻害される。
【0013】
胃上部に、特に、胃の胃底領域(第2の識別可能なタンパク質H+ −ATPアーゼの阻害によって)及び/又は胃上部の上体部(H+/K+ −ATPアーゼの阻害によって)で本発明の組成物の局部的な効果があるものの、患者の胃における酸分泌の速やかな減少は、胃全体にわたって(H+/K+ −ATPアーゼの阻害によって胃上部及び胃下部の両方で)起こる。したがって、本発明のさらなる態様は、H+/K+ −ATPアーゼ(通常、胃全体)、H+ −ATPアーゼ(主に、胃の胃底領域における)及び好ましくは、両方の阻害のための、有効量の製薬上許容される亜鉛化合物の使用を対象とする。本化合物を用いて胃底領域においてH+ −ATPアーゼを阻害できるという発見は、以下の理由のために重要な臨床上の効果を有する:
【0014】
1)酸にさらされることによる食道のびらんは、酸に長期間さらされたことによる内出血、潰瘍形成及び又は胃のカルチノイド形成のいずれかにより命に関わる結果を有する。本発明に従えば、現在実証されるように、胃底の腺は食道接合部と直に近接しており、これが酸を分泌し、そして本発明の組成物によって阻害され得る。従って、本組成物はGRED、NERD及び関連状態の治療において特に有用である。
【0015】
2)PPI(プロトンポンプ阻害剤)に対して非感受性となりつつある、また酸逆流症の再発性症状を有する患者数は増える一方である。胃底腺において本発明者が確認したタンパク質は、PPIに対して感受性でなく、このタンパク質がこれらの患者が従来療法に対して応答しない理由である可能性がある。
【0016】
3)長期間PPIを投与されている患者は、何らかの「反動」酸分泌を示すようである。この結果は、やはり、本発明者が示すヒスタミンに対して感受性である胃底H+−ATPアーゼ、及び細胞内のプロトンのレベルに関連付けられ得る。
【0017】
本発明の態様の好ましい実施形態では、pHにかかわらず(すなわち、約1.0〜約7.5又はそれより高いpHの範囲内)水溶性である単一の亜鉛塩が好ましい。塩化亜鉛は、本発明において使用するのに好ましい塩である。代替の実施形態では、高pH可溶性亜鉛塩と低pH可溶性亜鉛塩との混合物又は小腸を通って容易に吸収され得る亜鉛塩(例えば、アミノ酸キレート亜鉛化合物)を、場合により、製薬上許容される緩衝液と組合せて提供する。本発明のこの態様では、塩化亜鉛(ZnCl2)、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛(モノ又はビスキレート)及びそれらの混合物、好ましくは、塩化亜鉛と、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛のうちの少なくとも1種との混合物からなる群から選択される亜鉛塩の有効量を単独で、又は製薬上許容される担体、添加剤又は賦形剤と組合せて提供する。
【0018】
種々の態様では、本発明は、胃酸分泌の減少における速やかな作用を提供するため、胃のpHを低下させるため、潰瘍性疾患のおそれを防ぐか又は低下させるため、潰瘍性疾患を治療するため、胃癌を治療するため、潰瘍性疾患のおそれを防ぐか又は低下させ、並びに胃食道逆流症(GERD)、非びらん性逆流症(NERD)、ゾリンジャーエリソン症候群(ZE疾患)、潰瘍性疾患及び胃癌からなる群から選択される疾患又は状態を治療するための、少なくとも1種の水溶性亜鉛塩の単独での、又は従来のプロトンポンプ阻害剤化合物/組成物、H2遮断薬、抗生物質/抗菌剤(H.ピロリに対して有効)、細胞保護剤又はこれらの薬剤の混合物(ヘリダック、プレブパック(prevpac))からなる群から選択される、少なくとも1種の化合物/組成物(治療される病状又は状態の関係で)と組合せての使用に関する。
【0019】
本発明の即時の及び長期の放出特性の両方を最大にする亜鉛塩の混合物を有し、場合により製薬上許容される担体、添加剤又は賦形剤と組み合わせ、さらに場合によりプロトンポンプ阻害剤、H2遮断薬、抗H.ピロリ抗生物質/抗菌剤、細胞保護剤及びこれらの薬剤の組合せからなる群から選択される付加薬剤の有効量と組合せた薬剤組成物が、本発明のさらなる態様である。これらの組成物の任意の1種以上を、本明細書において別の場所で開示される種々の状態/病状を治療する中で使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を説明するために、本明細書を通じて以下の用語を用いる。
【0021】
用語「患者」又は「被験体」とは、本発明の組成物を用いて治療可能な状態又は病状を治療するために本発明の組成物が投与される、治療又は療法を必要とする動物、好ましくは、哺乳類、さらにより好ましくは、ヒトを指す。治療される疾患又は状態に応じて、用語「患者」とは、文脈からその疾患を治療される動物を指す。
【0022】
用語「有効な」とは、文脈内で用いられる場合に、胃におけるpHの増大、過剰の酸放出と関連している症状の低減、又は病状若しくは状態の見込みのある治療を含めて、意図される結果を生じる、治療、化合物、組成物、成分又は本発明の関連態様を説明するために用いる。用語「有効な」は、本明細書に記載される1種以上の有効成分(類)の量又は濃度、及び意図される効果を生じる期間の両方を包含する。
【0023】
文脈内で用いられる用語「製薬上許容される亜鉛塩」又は「亜鉛塩」とは、亜鉛を含む塩又は塩の組合せを指し、これは低pHの胃液中で溶解し、約2以下という低pHの胃粘膜においてある程度、約4.0〜5.0又はそれよりも高いより高pHの胃において、また高pHの小腸において吸収され、療法の期間にわたって血流中の亜鉛の有効濃度に達し、維持する。例示的な製薬上適合する亜鉛塩として、無機及び有機亜鉛塩の両方、例えば、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、酪酸亜鉛、炭酸亜鉛(胃の低pHの希酸において可溶性)、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛(例えば、濃度に応じて、亜鉛と錯体を形成するかキレートするL−又はD−アミノ酸のモノ及びビスキレート(消化管からより容易に吸収され得る天然に存在するL−アミノ酸が好ましい))、例えば、中でも好ましくは、L−システイン、L−シスチン、L−N−アセチルシステイン、L−ヒスチジン(また、D−ヒスチジン)、L−タウリン、L−グリシン酸、L−アスパラギン酸及びL−メチオニンが挙げられる。本発明の目的上、亜鉛アミノ酸キレートは、亜鉛塩と見なされるということは留意すべきである。製薬上許容される亜鉛塩は、水溶性であることが好ましい。
【0024】
当業者ならば、本発明において使用するために好都合な亜鉛塩を認識するであろう。本発明の態様では、少なくとも1種の製薬上適合する水溶性亜鉛塩が、胃における酸放出の速やかな阻害を提供し、その結果、長期間、好ましくは、少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間以上胃pHが4を超える(通常、約4.0〜5.0の間、5.0を超える場合もある)増大が得られるよう患者に投与される。本発明の特定の好ましい態様では、患者に投与される選択された亜鉛塩又は塩の組合せは、酸放出の速やかな阻害及び約4を超える胃のpHの上昇を生じるように、低pHの胃における与える亜鉛の初期投与濃度を調整できるということは留意すべきである。さらに、好ましい亜鉛塩又は塩の組合せは、胃における酸放出を、種々のレベルの酸性度及びpH、すなわち、完全に酸性であるレベル(pH、約2.0未満)で阻害し、pH約4.0以上にする。
【0025】
用語「胃酸分泌を減らす速やかな作用を提供すること」とは、本発明の方法は、少なくとも約4.0、より好ましくは約4.0〜約5.0又はわずかに上というレベルへのpHの増大を、約30分ほどの期間で、好ましくは、約20〜30分未満で、さらにより好ましくは、約10〜20分未満で、約15分以下、あるいは、約5分未満でもたらすという事実を説明するために用いる。
【0026】
用語「分泌促進」とは、胃の壁細胞が胃液中に酸を分泌し、pHを低下させる期間を指す。分泌促進期間は、食事の直後に生じることが多いが、酸の分泌は、その他の時間に起こり得る。分泌促進期は短期間である場合も、長期間である場合もある。
【0027】
用語「胃食道逆流症」、「GERD」又は「酸逆流」とは、胃の液体内容物が食道に逆流する(regurgitate)(逆流する(backs up)、逆流する(refluxes))状態である。液体は食道の内膜に炎症を起こし、損傷を与えるが、これは少数の患者に起こる。逆流した液体は、通常、胃によって産生された酸及びペプシンを含む。逆流した液体はまた、十二指腸から胃に逆流した胆汁を含み得る。酸は、逆流した液体において最も損傷を与える成分であると考えられている。ペプシン及び胆汁もまた、食道を傷付けるが、食道炎症及び損傷(食道炎)の生成におけるその役割は酸の役割と同じようには明確でない。
【0028】
GERDは、慢性状態である。ひとたび起こると、通常一生涯である。食道の内膜に損傷がある(食道炎)と、これも慢性状態である。さらに、治療で食道が治癒し、治療を停止した後に、ほとんどの患者で数ヶ月内に損傷が元に戻る。したがって、GREDの治療が始まると、通常、持続的に短期間の治療を継続することが必要である。
【0029】
実際のところ、胃の液体内容物の食道中への逆流は、ほとんどの正常な個体において起こる。実際ある研究により、逆流はGERDの患者と同程度の頻度で正常な個体に起こるということがわかった。しかし、GERDの患者では、逆流した液体が酸を含むことが多く、酸が食道により長くとどまる。
【0030】
重力、嚥下及び唾液は、食道の重要な保護作用であるが、それらは個体が立位でいる場合にのみ有効である。夜間就寝時には、重力は効果がなく、嚥下は停止し、唾液の分泌も減少する。したがって、夜間に起こる逆流は、食道に酸がより長期間残ることとなり、食道により大きな損傷を引き起こす可能性が高い。
【0031】
特定の条件が、ヒトをGERDに対して感受性にする。例えば、逆流は、妊娠の際の深刻な問題であり得る。おそらくは、妊娠のホルモンレベルの上昇が、下部食道括約筋の圧力を低下させることによって逆流を引き起こす(下記参照)。同時に、成長中の胎児が、腹部の圧力を高める。これらの作用の両方が逆流を増大させると思われる。また、食道筋肉を弱める疾患(下記参照)、例えば、強皮症又は混合性結合組織病の患者は、より逆流を発生する傾向がある。
【0032】
GERDの原因は複雑である。おそらくは複数の原因があり、異なる個体では、又は同一個体においてであっても種々の時点で、異なる原因が作用している可能性がある。何人かのGERD患者は、異常に多量の酸を産生するが、これは珍しいことであり、大部分の患者の要因ではない。GERDを引き起こす原因となる要因として、弱い食道括約筋、食道裂孔ヘルニア、食道収縮及び胃が空であることがある。GREDの原因に因らず、本発明は、損傷を引き起こす食道への傷害性酸逆流を起こす傾向を減らすことができる。
【0033】
食道における収縮の波に不具合がある場合には、逆流した酸は胃の中に押し戻されない。GERDの患者では、いくつかの収縮の異常が記載されている。例えば、各嚥下の後に収縮の波が始まらない場合があり、又は収縮の波が胃に到達する前に絶えてしまう場合もある。また、収縮によって生じた圧力があまりにも弱く、胃の中に酸を押し戻せない場合もある。GERDの患者では、酸の食道からの排除を減少させる、このような収縮の異常が見られることが多い。実際、それらは、最も重篤なGERDの患者において最も頻繁に見られる。異常な食道収縮の作用は、重力が逆流した酸を胃へ戻すのを助けない夜間に悪化すると思われる。喫煙も、酸の食道からの排除を大幅に減少させるということは留意すべきである。この作用は、最後のタバコから少なくとも6時間継続する。
【0034】
日中のほとんどの逆流は食後に起きる。この逆流は、おそらくは、食物での胃の膨張によって引き起こされる一時的なLES弛緩によるものである。約20%の少数のGERD患者は、食後異常にゆっくりと胃が空になると分かっている。胃がゆっくりと空になることによって、食後の食物での胃の膨張が長くなる。したがって、ゆっくりと空になることによって、逆流が起こる可能性が高い時間が長くなる。
【0035】
用語「非びらん性逆流症」又は「NERD」とは、上記のGERDの特定の形を説明するために用いる。GERDは、いくつかの症例では、食道の内膜を侵食し、食道炎と呼ばれる状態を作り出す。NERDは、食道炎を引き起こさないGERDである。ほとんどのGERD患者が食道炎を有さないので、NERDが、GERDの最もよくある形である。名前が単語「非びらん」を含むので、NERDがGREDの最も重篤度の低い状態であるように感じられるが、これは必ずしもそうではない。実際には、NERDは食道外合併症を生じる可能性が高く、また、胃底皺襞形成術に対応する可能性も低い。ある研究では、56%のNERD患者だけが(びらん性逆流の患者の90%と比較して)、胃底皺襞形成術によってその症状が完全に排除されたと報告した。NERDはまた、嚥下障害を引き起こす可能性が2倍高い。
【0036】
胸やけが、NERDの主要な症状である。裂孔ヘルニア、生活習慣での行動及び食事をはじめ、いくつか原因の可能性がある。多数の人々が、単に、その行動を調整することによって胸やけに対応している。投薬又は手術が必要である場合もある。従来の制酸薬もまた、NERDを治療するために用いられてきた。
【0037】
用語「ゾリンジャーエリソン症候群」又は「ZE症候群」とは、本明細書を通じて、ホルモンガストリンの異常な産生によって引き起こされる状態を説明するために用いる。ZE症候群では、膵臓又は小腸中の小さな腫瘍(ガストリノーマ)が、血中に高レベルのガストリンを産生する。ZE症候群は、通常、膵臓の頭部及び小腸上部に見られる腫瘍によって引き起こされる。これらの腫瘍はホルモンガストリンを産生し、ガストリノーマと呼ばれる。高レベルのガストリンは、胃酸の過剰産生を引き起こす。高い胃酸レベルは、胃及び小腸に多数の潰瘍を引き起こす。ZE症候群の患者は、腹痛及び下痢を経験し得る。診断はまた、胃及び小腸の重篤な潰瘍を有する症状のない患者について疑われる。
【0038】
ZE症候群を治療するための選択薬は、本明細書において上述されたプロトンポンプ阻害剤(PPI)である。これらの薬物は、胃による酸の産生を劇的に減少させ、胃及び小腸における潰瘍の治癒を促進する。それらはまた、腹痛及び下痢を解消する。
【0039】
単一のガストリノーマの外科的除去は、その他の臓器(例えば、リンパ節又は肝臓)に広がっているという証拠がない場合に試みられ得る。酸の産生を制御するための胃の手術(胃切除術)が必要であることは、今日稀である。腫瘍の初期診断及び外科的除去は、20%〜25%しかない治癒率と関連している。しかし、ガストリノーマはゆっくりと増殖し、患者は、腫瘍が発見された後何年にもわたって生存する場合もある。制酸薬は、酸過剰産生の症状の制御で極めて有効である。
【0040】
用語「潰瘍」とは、本明細書を通じて、例えば、特に消化(GI)管の内膜の、特に、胃(消化性潰瘍)、食道又は小腸(十二指腸潰瘍)の組織びらんの領域を説明するために用いる。びらんのために潰瘍は凹形である。常に周囲組織レベルより下に押し下がっている。潰瘍は多様な原因を有し得るが、GI管では、主に、細菌H.ピロリダス(H.pyloridus)(H.ピロリ)の感染によると考えられている。しかし、GI潰瘍は、ストレス、喫煙及びその他の非感染性因子、特に、過剰の胃酸などによって悪くなることがあるが、これは低pHがH.ピロリのより良好な増殖環境である傾向があるためである。
【0041】
H.ピロリダス(H.pyloridus)の従来治療としては、抗菌剤/抗生物質、例えば、アモキシシリン、クラリスロマイシン(ビアキシン)、メトロニダゾール(フラジール)及びテトラサイクリン(「抗H.ピロリ剤」);H2遮断薬、例えば、シメチジン(タガメット)、ファモチジン(ペプシド)、ニザチジン(アクシド(axid))、ラニチジン(ザンタック);プロトンポンプ阻害剤(PPI)、例えば、エソメプラゾール(ネキシウム)、ランソプラゾール(プレバシド)、オメプラゾール(プリロセック)、パントプラゾール(プロトニックス)及びラベプラゾール(アシフェックス);細胞保護剤、例えば、次サリチル酸ビスマス、スクラルファート;及び組合せの薬剤、例えば、ヘリダック(次サリチル酸ビスマス、メトロニダゾール及びテトラサイクリンの組合せ)、プレブパック(Prevpac)(ランソプラゾール、クラリスロマイシン及びアモキシシリン)が挙げられる。
【0042】
本発明はまた、少なくとも1種の製薬上許容される水溶性亜鉛塩の有効量を単独で、又は上記の少なくとも1種のその他の従来治療法と組合せて(好ましくは、同時投与によって)投与することによって、患者においてH.ピロリダス(H.pyloridus)感染を治療するために使用できる。
【0043】
用語「同時投与」又は「併用療法」とは、少なくとも2種の有効成分を有効量で用いて、本明細書において別に記載される1種以上の病状又は状態を同時に治療する療法を説明するために用いる。用語「同時投与」は、患者への2種の有効成分を同時に投与することを含むが、個々の化合物の有効量が患者に同時に存在すれば、化合物が患者に同時に投与される必要はない。活性な組成物は、1種以上の亜鉛塩及び/又はさらなる化合物/組成物、例えば、プロトンポンプ阻害剤、H2遮断薬、抗生物質/抗菌薬、細胞保護剤又は本明細書において別に記載される組合せの薬剤を、通常、それらの化合物が用いられる疾患又は状態のための有効量で含み得る。
【0044】
用語「プロトンポンプ阻害剤」は、本明細書を通じて、胸やけ及び胃食道逆流症(GERD)の痛みによる不快感の抑制を助け、胃及び十二指腸潰瘍の治癒を促進する薬物として説明に用いる。プロトンポンプ阻害剤は、処方箋によってのみ入手可能である。それらは錠剤、カプセル剤、注射又は懸濁液にする散剤となっている。
【0045】
プロトンポンプ阻害剤は、胃酸の産生を遮断することによって働く。それらは、「水素−カリウムアデノシン三リン酸酵素」系の別名である、プロトンポンプとして知られる胃における系を阻害する。プロトンポンプ阻害剤は、かなり用途が広い。それらは非ステロイド性抗炎症薬を服用することによって引き起こされた胃潰瘍を含めた、胃及び十二指腸潰瘍を治癒するために用いられる。それらはまた、上記で論じたように、食道炎(食道(oesophagus)又は食道(gullet)の炎症)及び重篤な胃食道逆流症(GERD)の症状を軽減するために用いられる。
【0046】
プロトンポンプ阻害剤は、特定の抗生物質(例えば、アモキシシリン及びクラリスロマイシン)と、又は本発明の亜鉛塩と組合せると、H.ピロリ感染症(胃の細菌感染症)を治療するために有効である。H.ピロリ細菌は、再発性胃潰瘍の原因における主な要因と考えられている。PPIはまた、上記で論じられた、ゾリンジャーエリソン症候群と呼ばれる稀な状態の最初に選択される治療である。
【0047】
プロトンポンプ阻害剤は、特に、下痢、具合が悪く感じたり具合が悪くなったりすること、便秘、鼓腸、腹痛、頭痛及びより稀に、アレルギー反応、そう痒、めまい、腫れた足首、筋肉及び関節痛、かすみ眼、鬱病及び口渇をはじめとする副作用を示すが、管理可能である傾向がある。プロトンポンプ阻害剤の長期の使用は、胃の感染症をもたらし得る。プロトンポンプ阻害剤は酸の産生を完全に停止し、胃酸は、胃中の細菌などの微生物を死滅させるのに役立つために、PPIを用いることは、胃において有害である可能性がある微生物の増殖をもたらし得る。
【0048】
プロトンポンプ阻害剤は、大きな、時には、有害な薬物相互作用を示し、例えばその効果を高めるてんかん薬としてのフェニトインとの反応、血栓を防ぐワルファリンとの反応、その吸効率を低減するケトコナゾール及びイトラコナゾールとの反応、その代謝を減少させるジアゼパム(バリウム)との反応を示す。
【0049】
プロトンポンプ阻害剤は、通常、1〜2ヶ月間服用されるが、より長期間服用される場合もある。プロトンポンプ阻害剤の服用を停止すると、症状が元に戻る場合がある。プロトンポンプ阻害剤は、内出血を引き起こす可能性があり、その徴候として吐血、嘔吐物中のコーヒーかすのような物質又はひどい黒色のタール状の大便などが挙げられ、直ちに医師の診察が必要である。
【0050】
よくあるプロトンポンプ阻害剤として、オメプラゾール(プリロセック)、エソメプラゾール(ネキシウム)、ランソプラゾール(プレバシド)、パントプラゾール(プロトニックス)及びラベプラゾールナトリウム(アシフェックス)が挙げられる。
【0051】
本発明は、胃酸分泌の減少、休止期の間の胃のpHの上昇、分泌促進期の間の胃酸放出期間の減少において迅速な作用、場合により、長期間の作用を提供し、胃食道逆流症(GERD)、非びらん性逆流症(NERD)、ゾリンジャーエリソン症候群(ZE疾患)、潰瘍性疾患及び胃酸分泌の減少が有益である胃癌をはじめとする状態を治療するための、並びに胃酸分泌の減少によって潰瘍性疾患のおそれを防ぐ又は減少させるための方法に関する。さらに、本方法は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)に対して反応のない患者を治療するために、従来療法の代替物として、又は酸分泌を誘発する分泌促進物質の迅速かつ完全な阻害によってによって引き起こされる状態を治療するために有用である。
【0052】
本方法は、状態又は病状を軽減又は治療するために、少なくとも1種の製薬上許容される水溶性亜鉛塩の有効量を投与することを含む。本方法は、治療の進行及び結果に応じて、水溶性亜鉛塩単独で、又は本明細書に開示されるその他の薬剤と組合せて、1度、好ましくは長期間、通常約2〜3日から約2〜3ヶ月間、間にさまざまな間隔を入れて投与することを含み得る。
【0053】
本発明の亜鉛塩は、治療される状態又は病状に応じて、単独で投与してもよいし、その他の化合物、組成物又は療法、例えば、プロトンポンプ阻害剤又はH.ピロリ感染を治療するために使用できる本明細書に別に記載されるその他の薬剤の有効量と組合せて投与してもよい。これらの薬剤として、プロトンポンプ阻害剤、例えば、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール若しくはラベプラゾール、H2遮断薬、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン若しくはラニチジン、抗H.ピロリ剤、例えば、アモキシシリン、クラリスロマイシン(ビアキシン)、メトロニダゾール(フラジール)若しくはテトラサイクリン、細胞保護剤、例えば、次サリチル酸ビスマス若しくはスクラルファート又は組合せの薬剤、例えば、ヘリダック若しくはプレブパック(Prevpac)が挙げられる。
【0054】
本発明の好ましい態様では、少なくとも1種の水溶性亜鉛塩を用い、ここで、亜鉛塩又は組合せは、低pH(すなわち、胃の酸性条件において起こる約1〜2というpH)及び高pH(すなわち、胃における酸分泌が阻害された後の約4〜5又はそれをわずかに超えるpH、又はさらに高いpH、すなわち、十二指腸における約5.5〜6.0から空腸及び回腸における約6.5〜7.5のpH−pHは回腸において空腸よりもわずかに高い)の両方で可溶性であり(胃腸粘膜を通って)吸収性であることを特徴とする。水溶性であり、胃腸粘膜全体(すなわち、胃及び小腸の種々の部分を通って)で吸収性である組成物を提供することによって、亜鉛塩の生体利用効率が、治療される状態又は病状に適した療法として最大となる。この態様では、塩化亜鉛の有効量と、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛(モノ−又はビス−アミノ酸キレートとして)からなる群から選択される少なくとも1種の亜鉛塩との組合せが好ましいが、良好な結果を得るために多数のその他の亜鉛酸化合物を組合せることができる。
【0055】
好ましい亜鉛塩として、pkaが少なくとも約4〜約5.5又はそれより高いプロトン化形のアニオン性対イオンの塩が挙げられる。また、1〜2から約7.5のpH範囲内ですべての亜鉛塩が可溶性である亜鉛塩の混合物が好ましい。単独又は別の亜鉛塩、特に塩化亜鉛と組合せた、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛及びアスコルビン酸亜鉛が、本発明において使用するのに特に有用である。アミノ酸キレート亜鉛(モノ−又はビス−アミノ酸キレート)もまた、塩化亜鉛と、L−システイン、L−シスチン、L−N−アセチルシステイン、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、L−タウリン、L−グリシン酸、L−アスパラギン酸、L−メチオニン及びそれらの混合物の亜鉛キレート(モノ−又はビス−キレート)からなる群から選択されるアミノ酸キレート亜鉛との組合せにおいて用いることが好ましい。
【0056】
本発明の好ましい亜鉛塩として、例えば、酢酸亜鉛(pka4.75)といった塩化亜鉛(ここで、対イオンのpKaは、そのクロライドチャンネルとの相互作用のために重要ではない)及び有機酸、グルコン酸亜鉛並びにアスコルビン酸亜鉛(4.2及び11.6というpka)が挙げられる。さらに、グリコール酸亜鉛及び乳酸亜鉛を用いることも好ましく、中でもグリコール酸亜鉛が好ましい。亜鉛塩の組合せを用いる場合には、胃の低pHで有効である少なくとも1種の亜鉛塩(酸分泌の即時阻害のための)を、4.0〜5.0又はそれより高いpHの胃中でより高い効果を示すか、小腸において優先的に吸収される薬剤(亜鉛モノ−又はビス−アミノ酸キレート)と組合せることが好ましい。
【0057】
理論に限定されず、胃における低pHで有効である亜鉛塩(例えば、塩化亜鉛及び硫酸亜鉛)と、より高いpHで有効である1種以上の有機酸亜鉛塩との組合せは、まず、胃における酸性胃液に溶解し、ここで酸の最初の阻害が生じ、pHが上がることによって、続いて亜鉛の血中レベルが治療レベルに高まる胃又は小腸における、より高いpHでの亜鉛の吸収(亜鉛塩からの)によって、胃粘膜への亜鉛の受け渡しが最大になり、良好な効果が得られると考えられる。胃における、より高いpHレベルでの、又は小腸のより高いpH(5.5〜7.5又はそれより高い)での亜鉛塩の吸収及び効果は、この亜鉛の遅延された吸収が、後の時点で(低pHでの初期効果よりも)長期にわたって胃酸分泌を減少させるので有利である。本発明の組成物は、1度の投与でもよいが、通常、約2〜3日から数ヶ月又はそれより長い範囲の期間、1日1回又は2回投与することが好ましい。
【0058】
本発明の組成物はまた、低pHの胃液における速やかな溶解を可能又は容易にし、その結果、酸分泌の速やかな阻害が達成される(pHが、約4.0〜約5.0又はそれより高いレベルに同時に上昇する)第1の成分と、血流中の亜鉛の有効レベルを維持するために、胃において、又はより好ましくはさらに小腸において、より高いpHレベルで亜鉛塩を持続放出方式で放出して、胃における胃酸分泌を長期間阻害する第2の成分とを含む持続放出又は徐放性製剤に関する。第1の即効性成分は、低pHの胃液において溶解する亜鉛塩(例えば、pH約1.0〜約2.0の塩化亜鉛又は硫酸亜鉛)を用い、胃において迅速に溶解する標準賦形剤、例えば、ラクトース、粉末の形の粉砂糖、種々のステアリン酸塩などを用いて容易に製剤できる。そして、第2の持続放出性又は徐放性製剤は、任意の数の高分子結合剤、マトリックス(ポリマー及び/又は侵食性)、顆粒剤又は、亜鉛塩の小腸における徐放性又は持続放出ベースの放出を可能にする腸溶コーティングを利用する。これらの技術のうち多数のものは、当技術分野で周知である。多くの他のものの中でも、Beckerの米国特許第4,863,741号、Newtonらの米国特許第4,938,967号、MacFarlaneらの米国特許第4,940,556号及びMorellaらの米国特許第5,202,128号などの例示的特許は、本発明において有用な、迅速放出/持続放出又は徐放性製剤を製剤するための、すべて当技術分野で周知である教示を提供するために有用である。
【0059】
上記の製剤は、本発明において別に開示される、胃潰瘍、GERD、NERD、ゾリンジャーエリソン症候群、胃癌のうち1種以上の治療又はそのおそれの低減において、及び胃における酸の分泌の減少/阻害において、胃のpHの約4.0〜約5.0又はそれ以上への上昇において有用である1種以上の亜鉛塩及び、場合によりその他の薬剤の増強された生体利用効率を提供するために有用である。胃における酸分泌の阻害において、約100マイクロモル(μmol)という亜鉛塩の血中濃度が、約70%の阻害を引き起こすということは留意される。300μmol濃度の亜鉛塩を用いると、阻害は100%に達する。100μmol又は300μmolでの血液運搬からの阻害作用の時間は、即時である(すなわち、亜鉛塩が細胞膜と接触するや否や、阻害が生じる)。阻害は、分泌促進物質の存在下で、約10〜15分から約1時間内に起こるということがわかる。亜鉛塩は、単独又は任意のPPI薬と組合せて、経口投与(好ましくは、1日ほんの1回又は2回)又は静脈内投与できる。
【0060】
塩化亜鉛は、単独又は本明細書に別に記載される少なくとも1種のさらなる亜鉛塩と組合せての使用が好ましい。さらなる好ましい亜鉛塩として、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛(モノ−及びビス−アミノ酸キレート)が挙げられる。これらの亜鉛塩及び組合せは、単独で、又はプロトンポンプ阻害剤(エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール若しくはラベプラゾール)、H2遮断薬(シメチジン、ファモチジン、ニザチジン若しくはラニチジン)、抗H.ピロリ剤(アモキシシリン、クラリスロマイシン、メトロニダゾール若しくはテトラサイクリン)、細胞保護剤、例えば、次サリチル酸ビスマス若しくはスクラルファート又は組合せの薬剤、例えば、ヘリダック若しくはプレブパック(Prevpac)などのさらなる薬剤と組合せて使用できる。
【0061】
薬剤組成物としては、有効量の製薬上許容される亜鉛塩を単独で、又は好ましくは、少なくとも1種のその他の亜鉛塩又は有効量の従来プロトンポンプ阻害剤、例えば、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール若しくはラベプラゾール、H2遮断薬、例えば、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン若しくはラニチジン、抗H.ピロリ剤、例えば、アモキシシリン、クラリスロマイシン(ビアキシン)、メトロニダゾール(フラジール)若しくはテトラサイクリン、細胞保護剤、例えば、次サリチル酸ビスマス若しくはスクラルファート又は組合せの薬剤、例えば、ヘリダック若しくはプレブパック(Prevpac)と組合せて、場合により、製薬上許容される担体、添加剤又は賦形剤と組合せて含む。
【0062】
医薬製剤としては、経口、直腸、鼻腔、局所(口内及び舌下を含む)、経膣又は非経口(筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したものが挙げられる。経口組成物又は非経口組成物(特に、IV投与用のもの)が好ましい。本発明の組成物はまた、ボーラス、舐剤又はペースト剤とすることができる。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、従来の賦形剤、例えば、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤又は湿潤剤を含み得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法にしたがってコーティングされていてもよい。経口液体製剤は、例えば、水性又は油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップ又はエリキシルの形であってもよいし、使用前に水又はその他の適したビヒクルで構成する乾燥製剤として提示されてもよい。このような液体製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用オイルを含み得る)又は保存料を含み得る。上記で論じられるように望まれる場合には、本製剤は、当技術分野で周知の標準的方法を用いて組成物中の有効成分の持続放出特性を提供するようにされる。低pHの胃液における亜鉛塩の有効量の初期用量、続いて、長期にわたって亜鉛の徐放効果を提供する組成物が好ましい。
【0063】
本発明の製薬態様では、本発明の組成物を、好ましくは、製薬上許容される担体との混合物で製剤する。一般に、薬剤組成物を経口投与することが好ましいが、特定の製剤は、非経口的に、特に、静脈内投与又は筋肉内投与で、並びにその他の非経口経路、例えば、経皮、口内、皮下、坐剤又は鼻腔内吸入などのその他の経路で投与することが好ましい。経口投与は、錠剤又はカプセル剤(好ましくは、ハード又はソフトゼラチン)の形で投与することが好ましい。静脈製剤及び筋肉製剤は、滅菌生理食塩水中で投与することが好ましい。もちろん、当業者ならば、本発明の組成物を不安定にすることなく、その治療活性を落とすことなく、特定の投与経路用の多数の製剤を提供するよう、本明細書の技術の範囲内で製剤を改変することができる。
【0064】
特に、本組成物は容易に水に溶けることが好ましく、迅速放出/持続放出製剤としての側面をもたらすために、水溶性亜鉛の混合物が用いられる。これにより、単に塩の種類を選び、しかるべく亜鉛塩混合物の割合を調整することによって即時効果及び長期持続の効果を最大にすることができる。もちろん、用いた亜鉛塩の運搬及び生物学的同等性に作用するよう賦形剤を選択することができる。患者への最大の有益な効果のために本組成物の薬物動態を管理するよう個々の組成物の投与経路及び用量・用法を修正することは、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0065】
本発明の化合物を含有する製剤は、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体投与形、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、持続放出性製剤、溶液、懸濁液、エマルション、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、エアゾール剤などの形を、好ましくは、正確な投与量の簡単な投与に適した単位投与形で取り得る。
【0066】
本組成物は、通常、従来の薬剤担体又は賦形剤を含み、さらに、その他の薬剤、担体などを含み得る。組成物は、約0.05重量%から約75〜80重量%の亜鉛塩化合物又は本発明の組成物であり、残りが適した薬剤添加物、担体及び/又は賦形剤からなることが好ましい。経口投与用のこのような賦形剤として、製薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。必要に応じて、組成物は、微量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤又は緩衝液を含み得る。
【0067】
液体組成物は、化合物(約0.5%〜約20%)及び任意の薬剤添加剤を、担体、例えば、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール又はエタノールなどに溶解又は分散させて、溶液又は懸濁液を形成することによって調製できる。経口液体製剤として使用するために、組成物は、溶液、懸濁液、エマルション又はシロップとして調製でき、液体形又は水若しくは生理食塩水での水和に適した乾燥形のいずれかで供給される。
【0068】
経口投与用の固体製剤の形で組成物を用いる場合には、製剤は、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などである。錠剤製剤では、組成物は通常、添加剤、例えばサッカライド又はセルロース調製物といった賦形剤、デンプンペースト又はメチルセルロースといった結合剤、増量剤、崩壊剤、及び調合製剤の製造において通常用いられるその他の添加剤を用いて製剤される。
【0069】
非経口投与のための注射用組成物は、通常、滅菌生理食塩水といった適したi.v.溶液に組成物を含む。本組成物はまた、脂質又はリン脂質中の、リポソーム懸濁液中の、水性エマルション中の懸濁液として製剤できる。
【0070】
本発明の薬剤組成物はまた、鼻腔エアゾール又は吸入によって投与できる。このような組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の技術にしたがって調製し、ベンジルアルコール又はその他の適した保存料、生体利用効率を高めるための吸収促進剤、フッ化炭素及び/又はその他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製できる。
【0071】
このような投与形を調製する方法は公知であるか、又は当業者には明らかであろう;例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(第17版、Mack Pub. Co、1985)を参照。当業者ならば、本発明のプロドラッグ形の適した薬物動態パラメータを利用して、ウイルス感染を患う患者へ本組成物を投与する場合には、組成物の意図される効果を最大にする。
【0072】
本発明の薬剤組成物はまた、その他の有効成分、例えば、プロトンポンプ阻害剤、H2遮断薬、抗菌剤、細胞保護剤又は組合せの薬剤を含み得る。さらに、本発明の組成物はまた、抗癌剤(胃癌を治療するための)を含み得る。有効な化合物各々の有効量又は濃度が、本発明の薬剤組成物内に含まれる。
【0073】
このような組合せの個々の成分は、別個の又は組合せた医薬製剤で逐次又は同時のいずれかで投与できる。
【0074】
1種以上の本発明の組成物を、第2の有効な治療薬と組合せて用いる場合には、各組成物の用量は、組成物が単独で用いられる場合と同一である場合もあるし、異なる場合もある。当業者には、適当な用量は容易に理解される。
【0075】
以下の実施例は、本発明を説明するために用いる。それらは単に例示的なものであると理解され、決して、本発明の技術的範囲を制限するとは理解されない。
【実施例】
【0076】
胃は、食物を分解するのを助けるために酸を産生し、これによって消化が容易になる。実際には、胃酸が胃及び十二指腸(小腸の上端)の内膜を刺激することもある。時々、酸が上方へ「逆流」し、食道の内膜を刺激する。胃又は食道の内膜の刺激が酸消化障害(胸やけ)を引き起こし、潰瘍又は出血を引き起こすこともある。
【0077】
本発明者は、この実施例において、ZnCl2が、ラット及びヒト胃腺において、胃H+/K+−ATPアーゼの活性を無効にすることによって細胞レベルで胃酸分泌に対して強力な阻害効果を有するということを示す。本発明者はまた、マイクロモル濃度のZnCl2を添加することで、全ラット胃でのZnCl2の豊富なえさによって、ヒスタミン依存性酸分泌を有効に防ぐことができるということを実証する。
【0078】
材料及び方法
動物.
スプラーグ−ドーリーラット150〜250g(Charles River Laboratory))を、気候及び湿度が制御された、光周期を調節した部屋で、標準食を与え、水は自由に取らせて飼育し、エール・アニマル・ケア(Yale Animal Care)によって確立された動物の世話の人道的な実施に従って対処した。実験に先立って、動物は18〜24時間絶食させ、水は自由に取らせた。
【0079】
ラット及びヒト胃腺の分離.
胃を摘出した後、胃を縦に開き、体部及び幽門洞を分離し、0.5cm角の切片にスライスし、冷リンガー液で洗浄して残存する食物粒子を除去した。この組織を解剖顕微鏡のステージに移した。先に記載されるような手作業で解剖する技術を用いて、個々の腺を分離した36。分離後、個々の分離した腺を、Cell−Tak(Collaborative Research,Bedford,MA)で予めコーティングしておいたカバースリップに接着させ、倒立顕微鏡のステージに移した。
【0080】
ヒト組織を、HEPES緩衝リンガー液に入れて手術室(OR)から移した。組織を氷上で保存し、直ちに、分離した腺を上記のように解剖した。
【0081】
細胞内pHのデジタル画像.
先に記載されたようにして、分離した胃腺を、10μmolのpH感受性色素BCECF−AM(2’,7’)−ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(及び6)−カルボキシ−フルオレシン(fluorescin)、アセト−メチルエステル(Molecular Probes,Eugene,OR)のいずれかを含有するHEPES緩衝リンガー液中で10分間培養した37-39。色素を与えた後、チャンバーをHEPES溶液で洗い流して、非脱エステル化色素をすべて除去する。灌流チャンバーを倒立顕微鏡(Olympus IX50)のステージ上にマウントし、これを40倍対物レンズにより落射蛍光方式で用いた。続いて、BCECFを、モノクロメーター光源からの440nm及び490nmで励起し、得られた蛍光シグナルを、増感型電荷結合素子カメラを用いて535nmでモニターした。注目される個々の領域には輪郭を描き、実験の過程の間、15秒ごとに同時にモニターした。腺あたり最小8の細胞又は領域を選択した。
【0082】
個々の壁細胞によるプロトン放出を、20mMのNH4Clを含有するNa+不含HEPES溶液を用いて、細胞に酸を与えた後のpHiの回復の観察によりモニターした。続いて、Na+不含HEPESを用いて壁細胞を灌流すると、これによって、すべてのNa+/H+交換(NHE)活性が無効になり、サイトゾル内のH+が捕捉され、pHiの急落が始まった。これらの条件下では、唯一の可能性あるH+放出経路は、H+/K+−ATPアーゼ活性化によるものである。
【0083】
強度比データ(490/440)を、高K+/ナイジェリシン較正技術を用いてpH値に変換した40。細胞内pH回復速度を、同一初期出発pHから算出し、異なる実験条件下での細胞の個々の細胞内緩衝力のあり得るばらつきを排除した。すべての波長の個々の画像を含むすべてのデータを、ハードディスクに記録し、これによって、さらなる分析のために実験後に個々の画像に戻ることが可能となった。回復速度は、ΔpH/分として表し、6.5〜6.8のpH範囲にわたって算出した。すべての化学物質は、Sigma及びMolecular Probesから入手した。すべてのデータは、平均±標準誤差として要約し、測定値をベースライン値でグループ分けすることによって分析した。
【0084】
全胃pH測定値.
実験の前に、基礎酸分泌を一貫した最小に減少させるために、動物を24時間絶食させた。動物は過剰用量のイソフルランで殺され、腹部切開を行った。胃を十二指腸及び食道接合部で縛り、摘出した。次いで、胃の内腔に1mlの非緩衝生理食塩水(140mM)を注入した。この容積は胃を膨張させなかったので、伸ばすことによる酸分泌の刺激の可能性は避けられた。次いで、胃を酸素化(酸素を豊富に含んだ)HEPES緩衝リンガー液、又は100μMのヒスタミンを単独で含む同液若しくはさらに300μMのZnCl2(pH7.4)を含む同液のいずれかに入れ、37℃で維持した。1時間後、胃内容物を吸引し、pHを記録した。
【0085】
ラットにおける経口亜鉛補給.
これらの研究は、食料の亜鉛を増加することによって酸分泌を調節するようにされた。これらの研究では、本発明者は、経口ZnCl2溶液(水道水中の塩化亜鉛)を用いた。動物に、研究期間の間、食料及び亜鉛含有水を自由に取らせた。飲料水に150mg/kg/d又は0.5mg/kg/dのZnCl2を5日間加えた。実験の24時間前まで、動物に水を自由に取らせ、標準食を与え、その時点からZnCl2含有水のみを自由に取らせた。5日の試験期間の後、24時間絶食させた動物を犠牲にし、この動物に胃全摘術を実施した。個々の胃腺を、上記の手作業での解剖技術で分離した。
【0086】
結果
ヒト及びラットにおけるヒスタミン誘発性酸分泌は、ZnCl2によって阻害される.
第1段階では、新たに分離した胃腺内の単一の壁細胞のpHi測定値を用いてH+/K+−ATPアーゼ活性を測定した。プロトンポンプの活性は、ナトリウム及び重炭酸塩の不在下でNH4Clプレパルス技術を用いて酸性化した後のpHiのアルカリ化の速度(ΔpHi/分)から算出した。これらの条件下でのH+放出は、先に示したようにH+/K+−ATPアーゼの活性に応じて変わる41。あらゆる刺激の不在下では、低速のpHi回復のみが観察された(0.011±0.002pHi単位/分、n=3動物由来の3腺由来の32細胞、図1E)。ラット胃腺をヒスタミン(100μM)にさらした後、アルカリ化速度は、0.051±0.004pH単位/分(n=8動物由来の15腺由来の60細胞、図1A)に高まった。ヒスタミン(100μM)の存在下で表面灌流容器に300μMのZnCl2を加えることによって、Na+−非依存性pHi回復速度に対するヒスタミンの刺激効果が阻止され(0.0012±0.004pH単位/分)、ヒスタミンにさらされていない対照腺(n=4動物由来の6腺由来の60細胞;図1B)において見られるものと同レベルに低下した。ヒト胃腺はまた、ヒスタミン刺激下で強いプロトン流出を示した。この効果は、ZnCl2によって無効になった(図1C、D);(n=26細胞、3腺)。したがって、新たに分離したラット及びヒト胃腺は、ヒスタミンによって刺激され、ZnCl2によって阻害され得るH+/K+−ATPアーゼ活性を示した。
【0087】
ZnCl2は、ラット酸分泌を用量に応じて阻害する.
ZnCl2は、H+放出を用量に応じて阻害した(図2)。この観察記録では、酸分泌はヒスタミンによって刺激され、ΔpHi/分として示された。したがって、ラット胃腺を100μMのヒスタミンとともに培養し(15分)、ヒスタミンは実験全体を通じて存在した。ZnCl2の阻害力を調べるために、種々の濃度(25μM〜300μM)を用いた。ZnCl2は、15分のヒスタミン培養期間を含めた全実験の間、存在した。300μMのZnCl2では、ヒスタミンが誘発する速度及び対照と比較するとプロトン放出の98%の阻害を示した。
【0088】
ZnCl2による胃酸分泌の迅速な発現及び可逆性阻害.
入手可能な不可逆性酸遮断薬(例えば、オメプラゾール)及び可逆性酸遮断薬(P−CAB)を用い42、本発明者は、インビトロの設定においてZnCl2の阻害効果の可逆性を調べる。したがって、本発明者は、全実験の間、ヒスタミン(100μM)を用いて酸分泌を刺激した。細胞内アルカリ化(酸分泌)が観察された場合には、表面灌流容器にZnCl2(300μM)を加えた。酸分泌は、数秒後に無効となった(図3A)。同一実験においてZnCl2を除去した後、酸分泌は正常レベルに戻る。本発明者は、ZnCl2(300μM)及びヒスタミン(100μM)とともに、20分にわたる壁細胞の培養及び灌流後の可逆性を実証できた。表面灌流容器からZnCl2を除去した後、細胞内アルカリ化(プロトン放出)は、通常の阻害されていない速度で進行した(図3B)。
【0089】
経口亜鉛補給は、基礎ラット胃酸分泌を低下させる.
これらの研究は、食料の亜鉛を増加させることによって酸分泌を調節するために立案された。飲料水に150mg/kg/d又は0.5mg/kg/dのZnCl2を5日間加えた。H+放出速度を、上記のようにBCECFを用いて測定した。ヒスタミンが刺激した壁細胞は、0.051±0.004(n=8動物由来の15腺由来の120細胞)という強い回復速度(プロトン放出)を示した。図4は、飲料水中のZnCl2(150mg/kg/d又は0.5mg/kg/d)が、ヒスタミンに誘発された酸分泌を、ヒスタミン単独を用いた対照群と比較して大幅に減少させたことを示す。150mg/kg/d:0.022±0.0045;(n=3動物由来の10腺由来の60細胞)、0.05mg/kg/d:0.034±0.0036;(n=4動物由来の6腺由来の60細胞)。
【0090】
ZnCl2は生体外で胃酸製造を減少させた.
ZnCl2が全臓器において胃酸分泌を阻害できるどうかを調べるために、本発明者は、新たに分離されたラット胃において、HEPES又は100μMのヒスタミンを含む同液若しくは100μMのヒスタミン及び300μMのZnCl2の両方を含む同液中で培養した後に、内腔pHを調べた。図5に示されるように、ヒスタミンの存在下での平均内腔pHは、HEPES単独中で培養された対照の胃の標本よりも低かった(3.15±0.27対4.59±0.48、各n=9、P<0.005)。ヒスタミン及びZnCl2の存在下では、内腔pHは、刺激のない対照群(休止胃)とほぼ同程度に高かったが、この知見は意味を表さなかった(4.54±0.065対4.59±0.48、各群n=8、P>0.005)。
【0091】
異なる亜鉛塩は、内腔内pHの上昇において異なる有効性を示す.
本発明に従ういくつかの亜鉛塩を用いた全胃内腔内pHの測定を行い、内腔内pHに対する塩及び濃度の効果を評価した。ラット由来の分離全胃標本を、食道及び十二指腸の接合部でカニューレを挿入し、37℃、pH7.4のリンガー液を用いてインビトロで灌流した。次いで、血液灌流液を100μMのヒスタミンにさらし、酸分泌を誘発した。胃の内腔に、0.5ccの非緩衝等張生理食塩水を注入した。いくつかの研究では、以下の亜鉛塩のうち1種を、300μMという最終濃度で内腔灌流液に加えた(塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛)。データは、棒の各々について5の別々の動物に由来する5つの別の胃の集計である。データは、すべての研究の平均であり、平均の標準誤差が示されている。それらの結果は、添付の図6に現れている。
【0092】
考察
この研究では、本発明者は、ヒト及びラット胃腺における胃酸分泌の阻害のZnCl2による用量依存性を調べた。さらに、本発明者は、ZnCl2の効果の発現を評価しようとし、胃酸分泌に対する効果を調べるために全胃標本及び経口亜鉛補給を用いた。
【0093】
酸分泌は、従来の公知の分泌促進物質ヒスタミンによって誘発され、これは、休止中の刺激されていない腺における基礎酸分泌と比較してH+、K+−ATPアーゼを介した強いプロトン放出をもたらした(図1e)。その後の研究では、本発明者は、分泌促進物質感受性の胃酸分泌に対するZnCl2の阻害効果を調べた。本発明者は、ヒスタミン誘発性酸分泌に対するZnCl2(300μM)の阻害力を確認した。ZnCl2は、単一の胃腺において用量に依存して酸分泌を阻害する。ZnCl2は、ヒト及びラット胃腺の両方において、対照実験のものと同程度のレベルにプロトン放出を無効にした(図1)。この用量は、ヒトでは1日あたり40mgの補給に相当する。1日あたりの推奨される亜鉛摂取量は11mgである。文献では、毒性であると考えられる量はより多く10倍である。したがって、経口酸遮断薬としての40mgのZnCl2は、報告される毒性用量よりも大幅に低い。さらに、同様の量のZnCl2はまた、生体外で全胃標本において酸分泌を阻止する(図5)。これらの実験では、ZnCl2は胃の内腔側に適用されており、したがって、金属イオンは壁細胞のH+/K+−ATPアーゼに対して直接働いているか、細胞に入って酸分泌のシグナル伝達経路を調節していると結論付けることができる。ZnCl2がどのように細胞に入るかは不明確なままである。これまでの研究は、亜鉛が側底膜上にある電位依存性Ca2+媒介及び/又はHCO3/CI-交換体を介して細胞に入ると説明した。経口適用されたZnCl2によって本発明者のこれまでの結果が確認された。ZnCl2処理ラットによるプロトン放出は、本発明者の対照群による酸分泌よりも大幅に低かった(図4)。この対照とはヒスタミン刺激された物を指す。図では、亜鉛処理された腺は、まだ対照(ヒスタミン処理されていない)単独よりも高かった。
【0094】
序文に記載されるように、プロトンポンプ阻害剤は、急性作用の遅延型発現を有しており、完全な阻害効果は遅く、数回の用量周期を必要とする。例えば、オメプラゾールは、治療初日には酸分泌の30%阻害にしか達しない43。本発明者の研究は、作用ZnCl2の作用の迅速な発現並びにその可逆性を特徴とする。効果のより迅速な発現及びより増大された作用期間は、GERD及びその他の酸関連障害の患者に改善を提供する。実際、図5aに示されるように、本発明者は、300μMのZnCl2を加えることによって、最大プロトン放出の間のヒスタミン誘発性酸分泌を阻害できた。表面灌流容器からZnCl2を除去した後も継続したその他の手作業によるヒスタミン誘発による酸分泌は、ZnCl2の可逆性を実証した(図3b)。
【0095】
要約すると、本発明者の発見は、ZnCl2はより迅速で、より長期の胃酸分泌の阻害を提供するということを示す。ZnCl2は、単一のラット及びヒト胃腺における、また全胃標本における酸分泌の可逆性の及び迅速作用の阻害剤である。
【0096】
このような治療は、かなりの利益をGERDの患者に提供し得る。ZnCl2が酸分泌を阻害する正確な作用を調べるさらなる研究が必要であり、その研究は、薬剤が使用される状態での酸関連疾患の治療においてさらに今後の地位を明確にするのに役立つ。
【0097】
胃底領域
以下の実施例では、胃の胃底領域及び胃底腺は機能性酸分泌タンパク質を含むことが示されている。さらに、胃底腺は、ナトリウム及びカリウム非依存性タンパク質、液胞型H+−ATPアーゼと呼ばれることも多いプロトンATPアーゼを有することが示されている。証拠は、H+−ATPアーゼのサブユニットに対する抗体を用いた免疫蛍光データ並びにNa及びKの不在下でのこれらの細胞からのプロトンの放出速度が測定される機能データ(図7〜10)からなる。さらに、このプロセスは、ヒスタミン、胃の体部にある壁細胞において見られる胃H,KATPアーゼにのみ影響を及ぼすと考えられる化合物の存在下で増幅されるという証拠がある。この活性は、ラットモデル及び胃縮小手術を受けた患者から取られたヒトの胃切除部においての両方で実証されている。
【0098】
材料及び方法
動物及び化学物質
体重200〜300gの雄のスプラーグドーリーラットを、気候及び湿度が制御された、光周期を調節した部屋で標準食を与え、水は自由に取らせて飼育した。実験に先立って、動物を18〜24時間、水を自由に取らせながら絶食させて、基礎酸分泌を低下させた。イソフルラン麻酔後に動物は犠牲にされ、腹部切開を行って胃を摘出した。食道及び十二指腸接合部を分離した後、1〜2cmの食道を胃切除に付着したままにして胃全摘術を実施した。本発明者は、胃底全体を分離するための一般的な目印を有するように食道接合部を含めた。食道を鉗子でつかみながら5mmの無傷の食道を含む約3mmの胃底を摘出した。
【0099】
胃底腺分離
摘出した胃底組織を氷冷HEPES緩衝リンガー液(4℃でpH7.4に調整)に入れ、解剖顕微鏡のステージに移した。胃底腺を倍率50の顕微鏡下で可視化した。食道接合部に隣接する腺を、手作業で解剖した。分離後、個々の腺を、生物学的接着剤Cell−Tak(Cell−Tak(商標)細胞接着剤,BD Biosciences; Bedford,MA)で予め処理しておいたカバースリップに接着した。
【0100】
免疫組織化学/免疫蛍光
先に記載された雄のウィスターラット(200〜250g)をペントバルビタールi.p.で麻酔し、PBS、続いて過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒド(PLP)固定剤を用い、左心室を通して灌流した19a。胃を摘出し、食物残留物を除去し、PLPに浸漬することによって4℃で一晩固定した。胃をPBSで3回洗浄し、2.3MのPBSで少なくとも12時間凍結保護した後、切片を5μmの厚みに切断した。先に記載されたように、免疫染色を実施した20a。切片を、1%SDSで5分間培養し、PBSで3回洗浄し、一次抗体に先立って、1%ウシ血清アルブミンを含有するPBSで15分間培養した。PBSで1:50希釈した一次抗体(マウスモノクローナル抗ヒトβ胃H+、K+−ATPアーゼ(Affinity Bioreagents,CA,USA))を4℃で一晩適用した。次いで、切片を、高NaClのPBS(PBS+2.7%NaCl)で2回5分間洗浄し、PBSで1回洗浄し、1:1000希釈の二次抗体(ロバ抗ウサギAlexa546、Molecular Probes,オレゴン州)とともに室温で1時間培養した。切片を、高NaClのPBSで2回、PBSで1回洗浄し、その後VectaMount(Vector Laboratories,Burlingame,CA)でマウントした。検体をNikon E−800顕微鏡で見た。
【0101】
免疫金標識
腹腔内で投与される5mlの10%ペントバルビタールナトリウムを用いて、ラットを麻酔した。固定は、PBS、次いでPLPを用いて、左心室心灌流によって行った。胃を摘出し、PLP中で4時間固定し、次いで保持緩衝液に一晩移した。胃食道接合部の凍結及びエポン切片を作製し、金標識及び電子顕微鏡のために薄片をとった。
【0102】
ヘマトキシリン及びエオシン染色
腹腔内で投与される5mlの10%ペントバルビタールナトリウムを用いてラットに麻酔した。固定は、PBSを用いて左心室心灌流によって動物を洗い流し、次いでカルノフスキー固定液で2時間、次いで保持緩衝液中で一晩行った。胃食道接合部の切片を作製し、H+,K+−ATPアーゼタンパク質の電子顕微鏡形態及び胃食道接合部の腺のヘマトキシリン/エオシン染色のために薄片をとった。
【0103】
分離された胃底腺の細胞内pH(pHi)測定のための測定
本発明者が分離体部腺灌流のために開発した手順を用いて20a、21a、個々の胃底腺に、10μM濃度のpH感受性色素(BCECF、(2’7−ビス(2−カルボキシエチル)−5−(及び6)−カルボキシフルオレセイン−アセトメチルエステル;Molecular Probes,OR、USA))を15分間供給した。供給期間の後、デジタル画像システム(Universal Imaging Corp;Dowingtown,PA)に接続した灌流チャンバーを倒立顕微鏡(Olympus IX50)のステージ上にマウントし、HEPES緩衝リンガー液を用いて37℃で5分間灌流してエステル化していない色素を除去した。60×/.80及び40×/.90対物レンズを用いて落射蛍光方式で測定を実施した。続いて、BCECFを、440±10nm及び490±10nmで励起し、得られた細胞内蛍光シグナルを、増感型電荷結合素子カメラを用いて535nmでモニターした。データ点は15秒毎に取得された。得られた490/440強度比データを、高K+/ナイジェリシン較正技術を用いて細胞内pH(pHi)値に変換した22as、22as。重炭酸の不在下で酸放出をモニターした。再現可能な持続細胞内酸性化をもたらす、NH4Clプレパルス技術を用いて細胞内アルカリ化の速度を後に測定した22a、23a。細胞内pH回復速度(H+,K+−ATPアーゼ活性)を、1)100μMヒスタミン、2)100μMペンタガストリン、3)l00μMアセチルコリン、4)100μMヒスタミン+100μM及び200μM濃度のオメプラゾールを含有するNa+不含HEPES溶液中で測定した。
【0104】
細胞内pH回復速度を、同一初期出発pHから算出し、異なる実験条件下での細胞の個々の細胞内緩衝力のばらつきの可能性を排除した。個々のすべての波長の画像を含むすべてのデータを、ハードディスクに記録し、これによって、さらなる分析のために実験後に個々の画像に戻ることが可能となった。回復速度は、ΔpHi/分として表し、6.5〜6.9のpH範囲にわたって算出した。
【0105】
ヒスタミン、アセチルコリン又はペンタガストリンによる酸分泌の活性化は、BCECF(100μM)供給と組合せた、実験の前の15分間の腺の事前培養によって誘発した。すべてのデータは、平均±標準誤差として要約した。有意性は、一元配置分散分析検定を用いて調べ、p<0.05を統計的に有意であると考えた。用いたすべての化学物質は、Sigma及びMolecular Probesから入手した。
【0106】
結果
+,K+−ATPアーゼの免疫組織化学的局在
胃のH+,K+−ATPアーゼのα又はβサブユニットのいずれかに高度に保存されたエピトープに対する特異抗体を用いる免疫組織化学によって、胃底腺における両サブユニットの特異染色を同定した(図7A)。
【0107】
電子顕微鏡
絶食ラット胃食道接合部のエポン切片を得た後、この接合部のそばから得た胃腺及び本発明者がF1と名づけ、本発明者の実験のすべてに用いたもので電子顕微鏡検査を行った。図7B、Cは、胃底腺由来の壁細胞におけるH+,K+−ATPアーゼへの金タグ局在を示す。本発明者は、分泌腺又は液胞細管中の細胞の頂端極での高密度の染色に注目した。これは、胃底腺ではタンパク質は常に膜にあるのに対し、体部では刺激までは受容体が分泌細管の内側にあるという事実によるもので、体部と比較した胃底領域の高い基礎プロトン放出速度と相関があり得る。
【0108】
H2受容体染色
H2受容体染色を、胃底及び体部の両方で行い、胃の両領域における受容体の存在及び密度を調べた。本発明者は、体部腺において明らかな基底外側染色を見い出し、胃底腺では染色を検出できなかった。これらの結果は、胃底酸分泌の刺激においてヒスタミンによる効果がないことと相関する。胃底の腺にはH2受容体がなく、体部には存在することがはっきりと分かった(データは示されていない)。
【0109】
分泌促進物質誘発性酸分泌
細胞内pHを、pH感受性色素BCECFを用いて測定し、リアルタイム蛍光イメージングシステムを用いて連続的にモニターして細胞内pHの変化を確認した。プロトン流出の速度は、体部腺のために本発明者の実験室で開発した技術を用いてΔpHi/分として算出した21a〜25a。本発明者は、分泌促進物質の存在下及び不在下で流出速度の変化を測定した。
【0110】
胃底及び体部H+、K+−ATPアーゼに対するヒスタミン効果
本発明者は、個々の腺を、100μMのヒスタミンとともに20分間培養した。ヒスタミンは、全表面灌流プロトコルの間存在していた。本発明者は、体部腺において、0.056±0.008ΔpHi/分というヒスタミンによって刺激されたプロトン放出速度を測定したのに対し、いずれの分泌促進物質も用いない基礎酸分泌は、0.011±0.002ΔpHi/分であった(図8C、D)。体部と比較して、胃底は基礎条件下でさえ、高いプロトン放出速度を示した(0.039±0.009ΔpHi/分)。これは、ヒスタミンによって誘発された酸分泌と同様である(0.040±0.0079ΔpHi/分、図8A、B)。このデータは、対照と比較して、F1領域の腺に対してヒスタミンの効果がないことを示す。
【0111】
アセチルコリン及び胃底酸分泌
本発明者は、次にACHを介したニューロン刺激による胃底腺の機能特性を調べた。ヒスタミンと対照的に、刺激後のプロトン放出速度には顕著な変化があった。対照が依然活発にプロトンを排出する一方で、胃底腺は、色素供給の間及び灌流を通して、100μMのアセチルコリンで20分間刺激された。本発明者は、アセチルコリンがアルカリ化速度の増大を引き起こすことを見つけ出した(0.075±0.0015ΔpHi/分に対し、対照0.039±0.009ΔpHi/分)。このことは、胃底酸放出に対するアセチルコリンの直接効果を示す(図9)。
【0112】
F1領域に対するペンタガストリン効果
ガストリンもまた、胃底H+,K+−ATPアーゼを活性化できるかどうかを調べるために、本発明者は、体部腺において強い酸分泌を引き起こすことがわかっているペンタガストリン、ガストリンの全5個の末端アミノ酸を含有する合成ペプチドを用いて研究を実施した。100μMのペンタガストリンという用量で、本発明者は、0.062±0.007ΔpHi/分のアルカリ化速度を観察した。これは、胃底細胞からのプロトン放出速度を高めるという点でアセチルコリンと同様であった(図9)。
【0113】
胃底酸分泌の阻害剤
次の研究で、本発明者は、胃底腺が体部において観察されたような同様のH+,K+−ATPアーゼ阻害の側面を有するかどうかを調べようとした。本発明者は、胃底H+,K+−ATPアーゼの十分に特性決定された阻害剤、オメプラゾール及びP−CAB(カリウム競合酸遮断薬)AZD0865を選択した26、27
【0114】
F1領域及び体部に対するオメプラゾール効果
図10Aに示されるように、オメプラゾールは、体部において分泌促進物質誘発性酸分泌を完全に阻害した同一濃度を用いて酸分泌を阻害しなかった(図10B)。通常、体部において酸分泌を阻害するよりも高い用量においてさえ、胃底はプロトンを放出し続けた。全実験を通じて、胃底腺を、200μMのオメプラゾール及び100μMのヒスタミンとともに事前培養し、次いで、オメプラゾール及びヒスタミンを用いて灌流した。アルカリ化速度は、ヒスタミンによって刺激されただけの対照の0.042±0.007ΔpHi/分と比較して、0.045±0.002ΔpHi/分であった。対照的に体部腺における酸分泌は、200μmolのオメプラゾールによって無効になった(0.014±0.002ΔpHi/分)(図10B)。
【0115】
体部と比較した、F1領域に対するAZD0865効果:
また、図10(C、D)に示されるように、P−CAB AZD0865は、10μM濃度で体部において酸分泌を効率的に阻害するが、その同一濃度でF1領域は、依然、カリウム依存性回復を有する。胃底では、細胞内pHが0.031±0.006ΔpHi/分という速度で増大した。体部では、10μMという同一濃度で、回復速度が0.021±0.008ΔpHi/分であった。
【0116】
表1
単一ラット胃腺における細胞内pH測定に用いた溶液の組成.
すべての濃度は、Mmで示されている。NMDGは、N−メチル−D−グルコサミンであり、すべての溶液は、NaOH又はKOHのいずれかを用い、pH7.4、37℃で滴定された。NMDGはHClで滴定された。
【0117】
【表1】

【0118】
考察
本発明者は、この研究で、胃の胃底領域は、胃のH+,K+−ATPアーゼによって酸を分泌できる腺を含むという証拠を提供した。本発明者は、この研究において、はじめて、胃底の酸分泌特性を明らかにした。本発明者は、胃底におけるH+,K+−ATPアーゼタンパク質活性の形態学的、免疫組織化学的及び機能的証拠を提供する。本発明者は、その形態学的研究において、最初に、胃底が始まり終わる場所を線引きしなくてはならなかった。この領域は、胃食道接合部で始まると理解されているので、本発明者は、この接合点から胃底の大弯の開始まで腺を取ることにした。本発明者は、胃食道接合部から始まり、2mm遠位に続く、本発明者の呼ぶF1領域から組織切片を取った。本発明者はこれらの腺は、形において、また密度など壁細胞において全く異なっていることを見い出した。F1中のその壁細胞がH+,K+−ATPアーゼを含むことを確認するために、本発明者は、α及びβサブユニットを染色した(図7は、αサブユニットの染色を示す)。
【0119】
本発明者の分泌促進物質誘発性の胃底酸分泌についての調査の中で、ヒスタミンは、体部においてそうであるように、胃底において酸分泌の最も強力な刺激剤であるというわけではないことを実証できた。実際、ヒスタミンで刺激されたものと比較して、刺激されない腺には極めてわずかな相違が見られた(図8及び9)。この結果は、胃底においてH2受容体の染色がないことによって確認された(データは示されていない)。胃底では、3種の分泌促進物質のうちアセチルコリンが最も強力でがあったが、これは、迷走神経の胃底領域への近接と関係する可能性がある。胃のこの部分は、食物が存在するときには伸びるので、アセチルコリン分泌を伴った迷走神経刺激がある28a〜30a。この発見は、胃食道逆流症(GERD)を有する肥満症患者における臨床問題を考慮する場合に特に重要である。これは、重篤な潰瘍性疾患を有する患者が、医学的管理から緩和を得られないことの後に迷走神経切除術を受ける場合に得る利益と相関があり得る31a〜33a
【0120】
もう1つの興味深い発見は、胃底は、胃のH+,K+−ATPアーゼの抗体と免疫反応性であるが、胃底酸分泌に対してオメプラゾールによる阻害がないことである。本発明者は、体部においてすべての酸分泌を効率的に排除した用量の2倍の用量では(図10B)、プロトンポンプ阻害剤オメプラゾールを用いて、基礎又は分泌促進物質(ヒスタミン)誘発性胃底酸分泌を阻害できなかった(図10A)。これらの発見は、本発明者のデータ(図8C,D)20a、21a、24a、25a及び体部由来の腺におけるその他の発見34a〜38aと正反対である。この発見は、PPIで効率的に治療されないGERDを患っている患者の数がますます増えているという点において興味深い臨床的相関を有する39a。オメプラゾール感受性の欠如について、1つの可能性ある説明は、オメプラゾールは酸活性化される必要があるので、細管状の空間がないことが酸の濃縮を阻止し、薬物の酸活性化を阻止する可能性があるというものであり得る。図7B、Cに示されるように、本発明者は免疫金タグ標識を用いて、実際に分泌空間があること及びポンプはこの空間の先端面に並んでいるようであることを確認している。酸分泌のこれまでの理論については、体部に焦点を当てた治療の外科的手段及び医療手段についての多数の見解から来たものである。手術後に胃底の小さな部分しか残っておらず、機能的体部がほとんどないか全くない胃バイパス患者におけるGERDのような症状の最近の出現は、興味深い。そういった症状を示す患者では、従来のPPIを用いてほとんど全く良い結果が出ておらず40a、このことは、ここで本発明者の最近の発見によって説明できる可能性がある。
【0121】
本発明者の発見は、胃の胃底領域は、保持領域よりも多く、実際、分泌促進物質刺激に応じて酸を分泌でき、さらに、この部分に見られるH+,K+−ATPアーゼはオメプラゾールに対して非感受性であるようであるということを実証する。これらの結果は、PPI耐性であるか、PPI療法の存在下で再発性逆流症状を有する患者のための重要な新しい目標に導き得る。
【0122】
結果
胃底腺は、体部腺と比較して別個の形態を示した(伸長しているが典型的な膨らみを欠く壁細胞)。免疫蛍光(H+,K+−ATPアーゼのα及びβサブユニット)及び免疫金標識(βサブユニット)は、胃底領域では両方とも陽性であった。胃底腺プロトン放出速度は、ガストリン及びアセチルコリンによって刺激されたが、ヒスタミンによっては影響を受けなかった。最後に、刺激された胃底腺の酸分泌は、H+,K+−ATPアーゼ阻害剤オメプラゾールによって阻害することはできなかった。
【0123】
結論:
胃の胃底領域は、H+,K+−ATPアーゼによって酸を分泌し、プロトンポンプ阻害剤には感受性でなかった。本発明者の発見は、胃の胃底領域は、保持領域よりも多く、実際、ヒスタミンを除く分泌促進物質刺激に応じて酸を分泌できるということを実証する。
【0124】
胃による食物の消化には、ホルモン作用及びニューロン作用の複雑な組合せが必要である。一般に、胃の体部又は本体が壁細胞によって酸を分泌し、幽門洞が重炭酸を分泌して、胃内容物のpHを上げることによって消化物を中和すると考えられてきた1a〜9a。このプロセスの間に、胃のぜん動運動が収縮をもたらし、これが食物を胃の胃底部分に押し上げ、ここを通過し、その後、小腸へと出て行く10a。この消化のモデルでは、胃底は保持領域としてのみ作用し、酸分泌には関与しない4a、11a。体部での従来の胃酸分泌は、H+,K+−ATPアーゼが分泌促進物質によって刺激され、細胞質管状小胞から頂端膜へ輸送された後の分泌細管中にプロトンを分泌し始めると生じる12a。壁細胞は、その側底膜上に少なくとも3種の活性化受容体、すなわち、ヒスタミンH2、アセチルコリンM3及びガストリンCCK−Bを有する。H2受容体がGsと結合して、cAMPを生じるアデニレートシクラーゼを活性化し、続いてcAMP依存性プロテインキナーゼを活性化するということは広く受け入れられている。アセチルコリン及びガストリン受容体は、非Gs系統、おそらくはGqによって結合し、IP3及びジアシルグリセロールを生じるホスホリパーゼCを活性化する。アセチルコリンは、細胞内Ca2+及びガストリン活性化プロテインキナーゼCを放出する13a。細胞内作用のこの段階の後に、壁細胞が、電気的中性の割合で細胞内H+イオンを細胞外K+イオンと交換するH+,K+−ATPアーゼポンプによってプロトンを放出する14a
【0125】
胃バイパス術を受けた患者における最近の知見は、興味深い実例を示す。すなわち、術後に小さな胃底領域しか残っていない患者が、依然、酸分泌を有し、患者の中には、これが逆流症状、潰瘍及び腸の内容物の漏れをもたらすものもある15a。これらの患者の多数は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)療法を受けている間も症状の減少にほとんど成功しないということは留意される16a〜18a。本発明者は、これらの初期臨床知見から、疑問を提起した:胃底は、酸の産生において役割を果たすのか、その特性は体部分泌タンパク質とどのように類似しているのか。本発明者はまた、従来の分泌促進物質に対する胃底感受性を調べることに関心を持ち、したがって、ヒスタミン、ペンタガストリン及びアセチルコリンを用いる研究を実施した。
【0126】
本発明者は、本実験において、休止下及び分泌促進物質によって刺激された状態下のラット胃底の酸分泌特性を調べ、さらに酸分泌の阻害剤に対する胃底反応を解明した。本発明者のデータは、胃底領域は、胃中の活性な分泌領域であり、分泌促進物質によって刺激され得るがオメプラゾールに対しては非感受性であると思われる胃H+,K+−ATPアーゼを含むことを実証する。本発明に従う亜鉛療法は、胃底領域における酸放出を調節する一手段である。
【0127】
参照文献
第1セット
1.Hersey SJ, Sachs G. Gastric acid secretion.(胃酸分泌)Physiol Rev 1995;75:155-189.
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【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】基礎酸分泌、ヒスタミン誘発性酸分泌及びZnCl2による阻害の独自の記録を示す図である。単一のヒト及びラット胃腺を分離し、pH感受性色素BCECFを与えて単一の壁細胞上の細胞内pHを測定し、pHi回復速度を、NH4Clプレパルス技術を用いて酸供給後の傾斜から算出した。(A、C)胃腺におけるH+/K+−ATPアーゼの関数としての、細胞外Na+の不在下、ヒスタミン(100μM)によって刺激された細胞内アルカリ化。(B、D)胃腺からのヒスタミン誘発性プロトン流出は、300μmolのZnCl2によってブロックできる。(E)平均標準誤差(SE)としてデータをまとめる棒グラフである(対照:n=32細胞、3腺、3個体の動物;ヒスタミン:n=120細胞、15腺、8個体の動物;ヒスタミン+ZnCl2:n=60細胞、6腺、4個体の動物)。
【図2】ZnCl2が酸分泌を用量に依存して阻害することを示す図である。基礎及びヒスタミン誘発性酸分泌と比較した、100μmolのヒスタミンの存在下でのH+/K+−ATPアーゼ活性(ΔpH/分として表される細胞内アルカリ化)のZnCl2濃度依存性を示す(各ZnCl2濃度について、n=40細胞、3〜4腺、3〜4個体の動物)。
【図3】ZnCl2を用いる迅速発現阻害効果及び可逆性を示す図である。(A)ヒスタミン誘発性酸分泌に対するZnCl2の迅速阻害効果を示す独自の記録を示す図である。ヒスタミン(100μM)は全実験を通じて加えた。細胞内アルカリ化(プロトン流出)が観察された場合に、ZnCl2(300μM)を、表面灌流容器に加える。酸分泌は、数秒後に消滅した(平坦な中央部分)。表面灌流容器からZnCl2を除去し、薬物を洗い流しても、細胞内pHの増大が続いた。(B)細胞が、ZnCl2(300μM)及びヒスタミン(100μM)とともに20分間培養され、灌流された後の可逆性を示す独自の記録を示す図である。表面灌流容器からZnCl2を除去した後、細胞内アルカリ化(プロトン放出)が生じる。
【図4】経口ZnCl2適用後の酸分泌を示す図である。300μmolのZnCl2を飲料水に加えた。動物は対照動物と同程度に食べ、飲んだ。実験に先立って、それらを12〜18時間絶食させた。ヒスタミン誘発性酸分泌を、先に記載されたように測定した。ZnCl2処理された動物の細胞は、ゆっくりした速度でのプロトン流出を示した。150mg/kg/d:0.022±0.0045;(n=60細胞、10腺、3個体の動物)、0.05mg/kg/d:0.034±0.0036;(n=60細胞、6腺、4個体の動物)。
【図5】ZnCl2が、新しく分離したラット全胃標本において胃酸分泌を阻害することを示す図である。生体外ラット全胃標本を、HEPES緩衝リンガー液(対照:n=9)、HEPES緩衝リンガー液+100μMヒスタミン(n=8)又はHEPES緩衝リンガー液+100μmolヒスタミン及び300μmol ZnCl2(n=8)で培養した。ヒスタミン及びZnCl2とともに培養した胃標本は、HEPES緩衝リンガー液及びヒスタミンで培養したものよりも高いpHを有しており、そのpHは、対照胃のpHと同様であった。
【図6】本発明のいくつかの亜鉛塩を用いる、全胃腔内pHの測定値を示す図である。ラット由来の分離全胃標本を、食道及び十二指腸の接合部にカニューレを挿入し、37℃、pH7.4リンガー液を用いて生体外で灌流した。次いで、血液灌流液を100μMのヒスタミンにさらし、酸分泌を誘発した。胃の内腔に、0.5ccの非緩衝等張生理食塩水を注入した。いくつかの研究では、以下の亜鉛塩のうち1種を、300μMという最終濃度で内腔灌流液に加えた(塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛)。データは、棒の各々について5の別々の動物に由来する5つの別の胃の集計である。データは、すべての研究の平均であり、平均の標準誤差が示されている。
【図7】ラットの胃の胃底における免疫組織化学を示す図である。(A)ラット胃底腺壁細胞における胃のH+,K+−ATPアーゼαサブユニットの免疫学的局在決定(40×)を示す。(B)金タグを付けたH+,K+−ATPアーゼタンパク質の胃底壁細胞の電子顕微鏡の図である。これによれば、核、頂端膜及び細管構造を見ることができる(8,000×)。(C)同一細胞のより高倍率(25,000×)の図である。これによれば、細管構造の境界に分布する、金タグを付けたH+,K+−ATPアーゼタンパク質が見られる(矢印)。(この図では、n=核、c=細管様構造、am=頂端膜)。
【図8】胃の胃底及び体部における基礎酸分泌及びヒスタミン誘発性酸分泌の独自の記録を示す図である。単一のラット胃腺を分離し、pH感受性色素BCECFを与えて単一の壁細胞の細胞内pHを測定し、pHi回復速度を、NH4CLプレパルス技術を用いて酸供給後の傾斜から算出した。(A)表面灌流容器からNa+を除去した後のF1腺アルカリ化(プロトン流出)の独自の記録を示す図である。(B)H+,K+−ATPアーゼの関数としての、細胞外Na+の不在下、ヒスタミン(100μM)によって刺激されたF1腺の細胞内アルカリ化を示す。(C)休止条件下での体部腺アルカリ化の記録を示す図である。(D)H+,K+−ATPアーゼの関数としての、細胞外Na+の不在下、ヒスタミン(100μM)によって刺激された体部腺の細胞内アルカリ化を示す。
【図9】一連のF1腺分泌促進物質を示す図である。刺激を含まない基礎条件化でのF1腺は、0.039ΔpHi/分±0.009(n=52細胞/8腺/5個体の動物)というアルカリ化速度を示す。100μMのヒスタミンの存在下で、回復速度は0.042±0.007ΔpHi/分(n=64細胞/8腺/6個体の動物)。100μMのアセチルコリンの存在下、F1腺は0.075±0.0015ΔpHi/分(n=86細胞/10腺/6個体の動物)という速度でアルカリ化された。100μMのペンタガストリンの存在下で、F1腺は0.062±0.007ΔpHi/分(n=49細胞/6腺/5個体の動物)いうアルカリ化速度を示す。
【図10】F1腺及び体部腺を、オメプラゾール及びAZD0865と比較する、酸分泌の独自の記録を示す図である。単一のラット胃腺を分離し、pH感受性色素BCECFを与えて単一の壁細胞上の細胞内pHを測定し、pHi回復速度を、先に記載されたNH4CLプレパルス技術を用いて酸供給後の傾斜から算出した。(A)ヒスタミン(100μM)による刺激後のF1腺アルカリ化を実証する細胞内pH測定値の独自の記録を示す。この図は、オメプラゾール(200μM)はF1腺において酸分泌を阻害しないということを示す。(B)ヒスタミン(100μM)で刺激した後の細胞内アルカリ化の体部腺の記録を示す。この記録は、オメプラゾール(200μモル濃度)は体部において酸分泌を阻害し、細胞内アルカリ化速度は(0.014±0.002ΔpHi/分であったということを示す。(C)体部と同様に、胃底では、AZD0865がプロトン放出を完全には阻害しないということを実証するpH測定値の細胞内の記録を示す。10μMのAZD0865にさらされた胃底腺では、細胞内回復は、0.031±0.006ΔpHi/分であった。(D)体部では、AZD0865は、カリウム依存性回復の強力な阻害を示し、細胞内アルカリ化速度は0.021±0.008ΔpHi/分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の胃の胃液のpHを高める方法であって、
前記患者に、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記患者に少なくとも2種の亜鉛塩の混合物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記亜鉛塩又は少なくとも1種の前記亜鉛塩が、アミノ酸キレート亜鉛である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アミノ酸キレート亜鉛が、L−又はD−アミノ酸のモノ−及びビス−キレートからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アミノ酸キレートが、亜鉛の、L−システイン、L−シスチン、L−N−アセチルシステイン、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、L−タウリン、L−グリシン酸、L−アスパラギン酸及びL−メチオニンからなる群から選択されるアミノ酸とのキレートである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項10】
前記亜鉛塩が、塩化亜鉛又は塩化亜鉛及び酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、硫酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる亜鉛塩である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記亜鉛塩が塩化亜鉛である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記亜鉛塩又は前記亜鉛塩の混合物を、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤と同時投与する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール及びラベプラゾールからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者における前記胃液の前記pHが、前記亜鉛塩を約1時間投与する間に少なくとも約3.0高まる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記患者における前記胃液の前記pHが、前記亜鉛塩を約30分投与する間に少なくとも約3.5高まる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記患者における前記胃液の前記pHが、前記亜鉛塩を約20分投与する間に少なくとも約4.0高まる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
潰瘍のおそれを低減させる方法であって、患者の胃における酸放出の上昇のために潰瘍の危険にある前記患者に、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項18】
前記患者に、少なくとも2種の亜鉛塩の混合物を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛(胃の低pHで希酸に可溶性)、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記亜鉛塩を、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害薬の有効量と組合せる、請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール及びラベプラゾール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
胃食道逆流症、(GERD)、非びらん性逆流症(NERD)、ゾリンジャーエリソン症候群(ZE症候群)、潰瘍性疾患及び胃癌からなる群から選択される病状又は状態について患者を治療する方法であって、前記患者に、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項24】
前記患者に、少なくとも2種の亜鉛塩の混合物を投与する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記亜鉛塩又は少なくとも1種の前記亜鉛塩が、アミノ酸キレート亜鉛である、請求項23〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記アミノ酸キレート亜鉛が、L−又はD−アミノ酸のモノ−及びビス−キレートからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記アミノ酸キレートが、亜鉛の、L−システイン、L−シスチン、L−N−アセチルシステイン、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、L−タウリン、L−グリシン酸、L−アスパラギン酸及びL−メチオニンからなる群から選択されるアミノ酸とのキレートである、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記亜鉛塩が、塩化亜鉛又は塩化亜鉛及び酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、硫酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる亜鉛塩である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項33】
前記亜鉛塩が塩化亜鉛である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記亜鉛塩又は前記亜鉛塩の混合物を、プロトンポンプ阻害剤、H2遮断薬、細胞保護剤又は2種以上のこれらの薬剤の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤と同時投与する、請求項23〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール及びラベプラゾールからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記H2遮断薬が、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン又はそれらの混合物である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞保護剤が、次サリチル酸ビスマス、スクラルファート又はそれらの混合物である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記の薬剤の混合物が、プレブパックである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記病状又は状態が、GERD、NERD又はZE症候群である、請求項23〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記疾患が潰瘍性疾患であり、前記亜鉛塩を、抗H.ピロリ剤又はヘリダックからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤とさらに組合せる、請求項23〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
患者の胃において、液胞型H+−ATPアーゼ、H+/K+−ATPアーゼ又はH+−ATPアーゼとH+/K+−ATPアーゼの両方を阻害する方法であって、前記患者に少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量を投与するステップを含む方法。
【請求項42】
前記患者に少なくとも2種の亜鉛塩の混合物を投与する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記亜鉛塩又は少なくとも1種の前記亜鉛塩が、アミノ酸キレート亜鉛である、請求項41〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記アミノ酸キレート亜鉛が、L−又はD−アミノ酸のモノ−及びビス−キレートからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記アミノ酸キレートが、亜鉛の、L−システイン、L−シスチン、L−N−アセチルシステイン、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、L−タウリン、L−グリシン酸、L−アスパラギン酸及びL−メチオニンからなる群から選択されるアミノ酸とのキレートである、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
前記亜鉛塩が、塩化亜鉛又は塩化亜鉛及び酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、硫酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる亜鉛塩である、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項51】
前記亜鉛塩が塩化亜鉛である、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記亜鉛塩又は前記の亜鉛塩の混合物を、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害剤と同時投与する、請求項41〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール及びラベプラゾールからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記患者の胃液のpHが、前記亜鉛塩を約20分投与する間に少なくとも約4.0高まる、請求項41〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記患者が、プロトンポンプ阻害剤治療に対して効果的に反応しない、請求項41〜54のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
有効量の少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩を、有効量のプロトンポンプ阻害剤、H2遮断薬、抗H.ピロリ剤、細胞保護剤若しくはそれらの混合物と組合せて、又は製薬上許容される担体、添加剤若しくは賦形剤と組合せて含む、薬剤組成物。
【請求項57】
前記プロトンポンプ阻害剤が、エソメプラゾール、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール又はそれらの混合物である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記H2遮断薬が、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン又はそれらの混合物である、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
前記抗H.ピロリ剤が、アモキシシリン、クラリスロマイシン(ビアキシン)、メトロニダゾール(フラジール)、テトラサイクリン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項60】
前記細胞保護剤が次サリチル酸ビスマス又はスクラルファートである、請求項56に記載の組成物。
【請求項61】
患者においてH.ピロリ感染を治療する方法であって、前記患者に、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量を、又は前記亜鉛塩の有効量を抗H.ピロリ剤と組合せて投与するステップを含む方法。
【請求項62】
前記患者に、少なくとも2種の亜鉛塩の混合物を投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項64】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2種の亜鉛塩から選択される、請求項61〜63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項66】
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛からなる群から少なくとも2種の亜鉛塩が選択される、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項67】
前記亜鉛塩又は少なくとも1種の前記亜鉛塩が、アミノ酸キレート亜鉛である、請求項61〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記アミノ酸キレート亜鉛が、L−又はD−アミノ酸のモノ−及びビス−キレートからなる群から選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記アミノ酸キレートが、亜鉛の、L−システイン、L−シスチン、L−N−アセチルシステイン、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、L−タウリン、L−グリシン酸、L−アスパラギン酸及びL−メチオニンからなる群から選択されるアミノ酸とのキレートである、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記亜鉛塩が、塩化亜鉛又は塩化亜鉛及び酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、硫酸亜鉛及びアミノ酸キレート亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる亜鉛塩である、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項71】
前記亜鉛塩が塩化亜鉛である、請求項61に記載の方法。
【請求項72】
前記亜鉛塩又は前記亜鉛塩の混合物を、少なくとも1種の抗H.ピロリ剤と同時投与する、請求項61〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記抗H.ピロリ剤が、アモキシシリン、クラリスロマイシン(ビアキシン)、メトロニダゾール(フラジール)、テトラサイクリン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項72に記載の方法
【請求項74】
患者の胃の胃液のpHを高めるための医薬の製造における、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量の使用。
【請求項75】
前記亜鉛塩が少なくとも2種の亜鉛塩の混合物である、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項74に記載の使用。
【請求項77】
胃食道逆流症、(GERD)、非びらん性逆流症(NERD)、ゾリンジャーエリソン症候群(ZE症候群)、潰瘍性疾患及び胃癌からなる群から選択される病状又は状態について、患者を治療するための医薬の製造における、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の有効量の使用。
【請求項78】
前記亜鉛塩が少なくとも2種の亜鉛塩の混合物である、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項77に記載の使用。
【請求項80】
患者においてH.ピロリ感染を治療するための医薬の製造における、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩又は前記亜鉛塩と抗H.ピロリ剤との組合せの使用。
【請求項81】
前記亜鉛塩が少なくとも2種の亜鉛塩の混合物である、請求項80に記載の使用。
【請求項82】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項80に記載の使用。
【請求項83】
患者の胃において、液胞型H+−ATPアーゼ、H+/K+−ATPアーゼ又はH+−ATPアーゼとH+/K+−ATPアーゼの両方を阻害するための医薬の製造における、少なくとも1種の製薬上許容される亜鉛塩の使用。
【請求項84】
前記亜鉛塩が、少なくとも2種の亜鉛塩の混合物である、請求項83に記載の使用。
【請求項85】
前記亜鉛塩が、酢酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、亜鉛ブトリエート、炭酸亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛ウンデニレート、アミノ酸キレート亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項83に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−524669(P2009−524669A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552394(P2008−552394)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/001950
【国際公開番号】WO2007/089511
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(503188829)エール ユニバーシティー (6)
【Fターム(参考)】