説明

背圧調整装置付きアダプタ

【課題】押出機のスクリュから混練して押し出される溶解樹脂が流通する樹脂流路の途中に配設される背圧調整装置付きアダプタであって、ニードルバルブの弁棒の軸方向と直角の断面形状が、円弧で成り立つ欠円の弦を基準にして、円弧を反転複写した図形であるアダプタ。
【解決手段】背圧調整装置付きアダプタにおいて、背圧調整装置のニードルバルブの弁棒の軸方向と直角の断面を円弧で成り立つ欠円の弦を基準にし、円弧を反転複写した図形にすることにより、アダプタ内の流動をスムーズにして、溶解樹脂の滞留樹脂を減らし、それに起因する劣化樹脂を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機に接続されたアダプタ内の流路に関し、アダプタに付帯する背圧調整装置のニードルバルブの弁棒軸方向と直角の断面形状を改造することによりアダプタ内の樹脂流動をスムーズにして、劣化樹脂の起因である滞留樹脂を軽減することに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム等の薄膜状の基材や金属線等の線状の基材の表面に樹脂層をコーティングしたり、複数の基材間に樹脂層を挟み込んでラミネートしたりするための押出機は、スクリュにより混練して、押し出された溶解樹脂を所定の断面形状を備えるダイの出口から押し出す構成になっている。
【0003】
溶解樹脂の押出し量は、シリンダとスクリュの容積、スクリュ形状、スクリュ回転数により決まる。押出し量が多くなると、背圧が大きくなり、スクリュで過度の混練が起き、溶解樹脂が発熱、劣化する。逆に少ないと背圧が小さくなり、スクリュでの混練が不十分になる。このように押出機のスクリュにかかる背圧は、押し出される樹脂の品質に影響を及ぼす。そのため、背圧調整装置が設置されている。
【0004】
背圧調整装置としてオリフィスを使用する例がある(例えば特許文献1参照)。オリフィスを用いた背圧調整装置の断面図を図2に示す。
【0005】
図2において2101は押出機のバレル(胴体)としてのシリンダであり、シリンダ2101の中には図示されない駆動源によって回転させられるスクリュ2102が配設されている。また、前記シリンダ2101の前端には、濾過装置2103があり、その下流側には前記スクリュ2102によって押し出された溶解樹脂の流路を直角に曲げるための背圧調整装置を有するアダプタ2107が取り付けられ、さらに、前記アダプタ2107には、図示されないダイに接続される導出管2105が取り付けられている。前記シリンダ2101の先端部にある前記濾過装置2103は、スクリーンメッシュと該スクリーンメッシュを支持するブレーカープレート2106から成り、溶解樹脂に混在する異物を除去する役割を果たす。
【0006】
次に流路について説明する。前記スクリュ2102に押出された溶解樹脂は、流路2201を通り、前記ブレーカープレート2106を通る。前記ブレーカープレート2106通過後、前記スクリュ2102と同心である前記アダプタ2107内流路2202を通り、可動ブロック2118のオリフィス2203b、固定ブロック2119の流路2204、前記可動ブロック2118の流路2205b、前記スクリュ2102と同心に直交する前記アダプタ2107内流路2206の順番に通過し、図示していないダイと接続している導出管2105へ流動する。
【0007】
前記アダプタ2107の背圧調整装置について説明する。前記可動ブロック2118には図示していないハンドルが付いており、そのハンドルを回すことにより前記固定ブロック2119に対して回転する。前記可動ブロック2118には、いくつかのオリフィス2203a〜2203dが配設されている(図2では、内径の異なるオリフィス4種類、配設している)。背圧調整装置は、オリフィスで溶解樹脂に付与される抵抗を調整することにより行われる。従って、背圧に適したオリフィスを選択して、背圧を調整する。
【0008】
しかし、この方式では、いったんオリフィスを変更した後、再度以前使用したオリフィスを使用することができない。その理由は、オリフィス内に残留していた溶解樹脂が劣化樹脂となり、これが製品に付着すると外観、機械的特性などに影響を及ぼすからである。再び、使用するには前記可動ブロック2118を交換しなければならないので手間と時間がかかる。
【0009】
加えて、前記可動ブロック2118に加工してあるオリフィスの内径が決まっているので、少しだけ操業条件等を変更した際に必要となるような微少の背圧調整を行うことができない。
【0010】
ニードルバルブを用いて背圧を調整する方法もある。図3にニードルバルブ3108を用いた背圧調整装置付きアダプタ断面図を示す。
【0011】
まず、ニードルバルブ3108の部位について図4を用いて説明する。
【0012】
ニードルバルブ3108は、先端が円錐になって流路の容積を変化させる弁体3117とネジが加工してある弁棒3116とハンドルなどの駆動機器を取り付ける3120より成り立っている。
【0013】
次に、流路について図3を用いて説明する。スクリュ3102に押出された溶解樹脂は、流路3201を通り、濾過装置3103内流路にあるブレーカープレート3106を通る。前記ブレーカープレート3106通過後、前記スクリュ3102と同心であるアダプタ3107内流路3202を通り、ニードルバルブ3108の弁体に沿って流路3203を流れ、前記スクリュ3102と同心に直交する前記アダプタ3107内流路3206を通過し、図示していないダイと接続している導出管3105へ流動する。
【0014】
前記アダプタ3107には、濾過装置3103から前記アダプタ3107間の流路3202の反対側に流路を塞ぐための閉塞部材3109が取り付けられている。なお、前記閉塞部材3109には挿入孔が形成され、該挿入孔に前記ニードルバルブ3108が挿入されている。また、前記閉塞部材3109にはナット部材3110が取り付けられ、前記ナット部材3110にニードルバルブ3108の弁棒3116に形成された雄ねじが螺合される。そして、前記ニードルバルブ3108には、図示されないハンドルや伸縮駆動手段等が取り付けられている。これにより、オペレータがハンドルを操作して前記ニードルバルブ3108を回転させると、該ニードルバルブ3108は軸方向に移動する。なお、3111は、閉塞部材3109の挿入孔とニードルバルブ3108の外周との隙間から溶解樹脂が漏れることを防止するためのシール部材であり、シール押さえ部材3112によって固定されている。
【0015】
そして、前記背圧調整装置においては、オペレータが前記ハンドルを操作して前記ニードルバルブ3108を回転させることによって、前記スクリュ3102にかかる背圧を調整する。この場合、前記ニードルバルブ3108を回転させて軸方向に移動させると、前記ニードルバルブ3108の弁体が樹脂流路3203を変化し、該流路を通過する溶解樹脂に与えられる抵抗が変化するので、前記溶解樹脂の動圧が変化して、前記スクリュ3102にかかる背圧が変化する。これにより、前記スクリュ3102にかかる背圧を所望の値に調整することができる。
【0016】
ニードルバルブ3108付近の流動について詳しく説明する。
【0017】
前記樹脂流路3203を通過する樹脂は、図5で示すように前記ニードルバルブ3108の上方側を通過する溶解樹脂(以下便宜的に溶解樹脂αとする)と前記ニードルバルブ3108の下側を通過する溶解樹脂(以下便宜的に溶解樹脂βとする)に区別される。溶解樹脂αは、前記ニードルバルブ3108の弁棒3116と周方向に接しながら流動するので、溶解樹脂流速が前記ニードルバルブ3108の弁棒3116近傍で遅くなる。一方、溶解樹脂βは、樹脂αに比べ、前記ニードルバルブ3108の弁棒3116と接する範囲が少なく流速を保っている。そのため、溶解樹脂αと溶解樹脂βが合流する樹脂流路3206において、溶解樹脂αと溶解樹脂βの流速に差があり、速度の速い溶解樹脂βが図示していない導出管3105へ流動するので、溶解樹脂αはアダプタ3107内流路3204、3205で滞留する。
【0018】
そして、その滞留した溶解樹脂が、熱などにより劣化し、劣化樹脂となり、製品に混入すると、製品の外観、機械的特性などに影響を及ぼす原因となる。また、樹脂の種類の変更は、流路に残っている樹脂を変更する樹脂で押出すことで切替を行っている。しかし、前述した流路3204、3205に滞留樹脂が残っていると押出樹脂量が多くなり、切替ロスが起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2005−1283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、劣化樹脂を軽減することである。より詳しくは、溶解樹脂のニードルバルブ1108の弁棒近傍を流動する溶解樹脂αの流速低下を抑えることで、前記溶解樹脂αと前記溶解樹脂βの合流する樹脂経路1206において前記溶解樹脂αと前記溶解樹脂βの流速差が無くなり、前記溶解樹脂α、前記溶解樹脂βの流動がスムーズになり、ニードルバルブ1108による背圧調整装置付きアダプタ1107内の滞留樹脂を減らし、滞留樹脂に起因する劣化樹脂を軽減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の課題は、背圧調整装置付きアダプタ1107において、ニードルバルブ1108の弁棒軸方向断面形状を円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準に円弧を反転複写した図形にすることによって達成される。
【0022】
本発明に係るニードルバルブ1108は、ニードルバルブ弁体の直径と、円弧と弦から成り立つ欠円を反転複写した図形の弦の長さ比が1であり、かつ、弁棒の弦の長さに対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ直線の長さ比が、0.7以下であることが好ましい。
また、ニードルバルブ1108の弁棒軸方向と直角の断面形状の弦をスクリュ1102の同心と直交するアダプタ内流路1206と平行に取り付けすることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ニードルバルブ1108の弁棒の軸方向と直角の断面形状を円弧と弦で成り立つ欠円を反転複写した図形にすることにより、ニードルバルブ1108の弁棒近傍の溶解樹脂の流速差を抑制できる。また、ニードルバルブ1108の弁体の直径と弁棒の弦の長さ比が1であり、かつ弁棒の弦に対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比が0.7以下であれば、よりニードルバルブ1108の溶解樹脂の流速差を抑制できる。また、ニードルバルブ1108の弁棒軸方向と直角の断面形状の弦をスクリュ1102の同心と直交するアダプタ1107内流路1206と平行に取り付けすることにより、さらにニードルバルブ1108の溶解樹脂の流速差を抑制できる。これらによりアダプタ1107内の樹脂流動がスムーズになり、滞留樹脂を減らすことで、滞留樹脂に起因する劣化樹脂が軽減されるため、樹脂変更による押出樹脂量が減少し、切替ロスが減る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による背圧調整装置付きアダプタ断面図
【図2】オリフィスを用いた背圧調整装置を有するアダプタ断面図
【図3】ニードルバルブを用いた従来の背圧調整装置付きアダプタ
【図4】従来の背圧調整装置におけるニードルバルブ部位図
【図5】図3におけるニードルバルブ近傍の流路詳細図
【図6】本発明によるニードルバルブ部位図
【図7】図6におけるA−A断面図
【図8】図1におけるニードルバルブ近傍の流路詳細図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、アダプタ1107内水平流路1202からそれに直交する流路1206の間にあるニードルバルブ1108の弁棒の軸方向と直角の断面形状を円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形に改造することにより、アダプタ1107流路内の溶解樹脂の流動をスムーズにして、溶解樹脂の滞留を少なくすることにより劣化樹脂を減少させることである。
【0026】
まず、本発明によるニードルバルブ1108の形状について説明する。
【0027】
図6に本発明によるニードルバルブ1108を示す。前記ニードルバルブ1108は、弁体1117と弁棒1116から成り立っている。弁棒1116は、軸方向と直角の断面形状が、図7に示す円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形の部分1116bと円の部分1116aの2つに分かれる。弁棒1116aは、ボルトのように円柱にネジ加工してある。弁棒1116b軸方向と直角の断面形状は、円弧と弦から成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形である。その弦の長さが弁体の直径長さ以下であり、弦の長さに対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比は1未満である。より好ましいのは、弦の長さに対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比は、0.7〜0.4の範囲であり、さらに好ましいのは、弦の長さに対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比が0.5〜0.4である。溶解樹脂と接する面積がより少ないと劣化樹脂は、発生しにくくなる。しかし、弦の長さに対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比が0.4と0.5では、劣化樹脂の減少に大差が見られなかった。弦の長さに対する、弦と直交し弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比が0.4以下では、強度が低下傾向である。弁体1117は、円錐形状をしている。弁体1117と弁棒1116bは、弁体1117の底面である円の中心より半径1/3の長さ離れた範囲内に、円弧と弦から成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形の弦の中点が存在し、かつ、弁体1117の底面である円の内側に円弧と弦から成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形の円弧が常に存在する関係である。より好ましいのは、弁体1117の断面である円の中心より半径の1/5の長さが離れた範囲内に円弧と弦から成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形の弦の中点が存在し、さらに好ましいのは、弁体1117の断面である円の中心線に対して弁棒1116bの断面である円弧と弦から成り立つ欠円の弦を基準にして円孤を反転複写した図形が対称になっているときである。弁棒1116bが弁体1117に対して対称な位置にないと、流路において広い流路と狭い流路ができ、流速差が生じる原因となる。また、弁体1117と弁棒1116bが、弁体1117の底面である円の中心より1/3の長さ以上離れた範囲にあると、劣化樹脂の減少は見られない。
ニードルバルブ1108を並進(非回転で移動)させることにより弁体を移動し、樹脂流路の容積を変化させる。
【0028】
次にアダプタ1107について説明する。
【0029】
図1においてスクリュ1102は、シリンダ1101内に取り付けられており、前記シリンダ1101より下流側にスクリーンとスクリーンメッシュを支持するブレーカープレート1106が取り付けられている濾過装置1103があり、前記濾過装置1103の下流にアダプタ1107が取り付けられている。アダプタ1107内の流路1202は同じくアダプタ1107内の流路1206と直交し、下流側は、図示していない導出管1105、図示していないダイの順番に接続されている。
【0030】
前記シリンダ1101の後方には変速機としての図示していないギヤボックスにおいて従動ギヤに接続されている。また、前記従動ギヤはスクリュ1102の駆動源として図示していない電動モータの回転軸に接続された駆動ギヤに噛み合わされている。これにより、前記電動モータの回転軸の回転が減速されて前記従動ギヤに伝達され前記スクリュ1102が回転させられる。
【0031】
背圧調整装置1104について説明する。
【0032】
図1において1107は、流路1202と反対側に背圧調整装置1104を付随しているアダプタであり、前記シリンダ1101の先端から押出された溶解樹脂が流通するようになっている。そして、水平流路1202と直交流路1206の間には、溶解樹脂に付与される抵抗を調整するために前記ニードルバルブ1108が設置されている。前記ニードルバルブ1108は、前記シリンダ1101の先端部から前記スクリュ1102によって押し出されて樹脂流路1203を流通する溶解樹脂に付与される抵抗を調整して、前記溶解樹脂の動圧を調整することによって前記スクリュ1102にかかる背圧を調整する。なお、1111は、閉塞部材1109の挿入孔とニードルバルブ1108の外周との隙間から溶解樹脂が漏れることを防止するためのシール部材であり、シール押さえ部材1112によって固定されている。
【0033】
ニードルバルブ1108の取り付け方法の一例を示す。前記アダプタ1107に前記ニードルバルブ1108を挿入する。その時、前記ニードルバルブ1108の弁棒の軸方向と直角の断面が、図7に示す円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形であり、その弦をアダプタ流路1206と平行の向きになるよう挿入する。そうすることにより、樹脂流動を阻害するニードルバルブの水平方向に接する面積を少なくすることができ、樹脂の流速差をより小さくすることができる。結果、劣化樹脂をより軽減できる。前記ニードルバルブ1108挿入後、ナット部材1113を前記ニードルバルブ1108のネジ部に螺合する。次にナット押さえ板1114を支持材1110にボルトで螺合する。前記ニードルバルブ1108と繋がった前記ナット部材1113を前記押さえ板1114で固定することにより前記ニードルバルブ1108は、動かないように固定される。背圧調整装置1104は、前記ニードルバルブ1108を非回転にて並進させることにより樹脂流路1203の容積を変化させ、溶解樹脂に付与する抵抗を調整することにより行われる。
【0034】
樹脂の流動について説明する。
【0035】
樹脂は、図示していないホッパーより前記シリンダ1101に供給された固相の原料樹脂は、前記スクリュ1102で回転されることによって、前記シリンダ1101の前方に向けて搬送されつつ、混練され、溶解樹脂となって前記シリンダ1101の前端から流路1201に排出される。そして、溶解樹脂は、前記流路1201から前記ブレーカープレート1106を経由して前記アダプタ1107内にある前記スクリュ1102と同心である流路1202に入る。流路1202より前記ニードルバルブ1108の弁体1117に沿って流路1203を通り、前記スクリュ1102同心に直交する前記アダプタ1107内流路1206を通り、図示していないダイと接続している導出管1105へ流動する。
【0036】
本発明におけるアダプタ1107内の樹脂の流動について詳しく説明する。
【0037】
樹脂流路1203を通過する溶解樹脂は、従来のニードルバルブを用いた背圧調整装置付きアダプタ同様、図8で示すように前記ニードルバルブ1108の上方側を通過する溶解樹脂αと前記ニードルバルブ1108の下側を通過する溶解樹脂βに区別される。溶解樹脂αは、ニードルバルブ1108の弁棒1116bと周方向に接しながら流動する。本発明によるニードルバルブ1108の軸方向と直角の断面形状は、円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形であるので、弁棒の軸方向と直角の断面形状が円である従来のニードルバルブより溶解樹脂とニードルバルブ1108の弁棒1116bの接する面積が少なくなる。そのため、溶解樹脂αのニードルバルブ1108の弁棒1116b近傍の流速低下を従来品、すなわち軸方向と直角の断面形状が円であるニードルバルブより抑制できる。溶解樹脂αの流速低下を抑制することにより、溶解樹脂αと溶解樹脂βが合流するアダプタ内流路1206において、溶解樹脂αと溶解樹脂βの流速差が小さくなり、溶解樹脂α、溶解樹脂βともアダプタ内流路1206の流動がスムーズになり、アダプタ内流路1204、1205の滞留樹脂が減る。滞留樹脂が減ることにより、それに起因する劣化樹脂を軽減できる。さらに弦の長さに対する弦に直交する弦の中点を通る円弧と円弧を結ぶ線の長さ比を小さくすることにより、溶解樹脂とニードルバルブの弁棒の接する面積をより少なくし、溶解樹脂αと溶解樹脂βの流速差をより小さくすることができ、劣化樹脂を軽減できる。また、アダプタ内流路1204、1205の滞留樹脂が減少するため、樹脂変更による押出し樹脂量が減少し、切替ロスが減る。
【0038】
また、ニードルバルブを並進する機構に関して、ニードルバルブ1108に直動台車を取り付けその台車が直線に移動するようにギヤなどの駆動部材を設け、アクチュエータ、ハンドル等でニードルバルブ1108を並進させ、挿入長さを調整できるようにしても良い。また、樹脂圧力計を用いて樹脂の測定圧力をニードルバルブ1108の挿入長さをフィードバックするような制御装置にしても良い。
【0039】
本発明における作用について説明する。
【0040】
時間当たり一定樹脂量を押し出す条件下でコーティングを実施して1000m毎に0.2mm以上の劣化樹脂をレーザー検査器にて計数する。ニードルバルブ1108の弁棒1102bは、ニードルバルブ1108の弁体1102aの直径と同じ長さで固定し、弦と直交し、弦の中点を通る円弧と円弧を結ぶ直線と弦に対する長さを変化させる。
その結果、従来品であるニードルバルブ3108の弁棒3116の軸方向と直角の断面形状が円であるときの1000m当たりの劣化樹脂数の割合を1とすると、弁棒の軸方向と直角の断面形状が、円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形であり、弦の長さに対する弦に直交する弦の中点を通る円弧と円弧を結ぶ線の比が、0.7であるニードルバルブ1108を使用したときの劣化樹脂数の割合は0.84であり、良化する。さらに好ましいことに弁棒の軸方向と直角の断面形状が円弧と弦で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形であり、弦の長さに対する弦に直交する弦の中点を通る円弧と円弧を結ぶ線の比が、0.5であるニードルバルブ1108を使用したときは、劣化樹脂数の割合は0.73となり、さらなる劣化樹脂発生を抑制できる。このように本発明により劣化樹脂抑制が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1101 シリンダ
1102 スクリュ
1103 濾過装置
1104 背圧調整装置
1105 導出管
1106 ブレーカープレート
1107 アダプタ
1108 ニードルバルブ
1109 閉塞部材
1110 支持部材
1111 シール部材
1112 シール押さえ部材
1113 ナット部材
1114 ナット押さえ板
1116 弁棒
1117 弁体
1201 シリンダ内流路
1202 アダプタ内流路
1203 アダプタ内流路
1204 アダプタ内流路
1205 アダプタ内流路
1206 アダプタ内流路
2107 背圧調整装置を有するアダプタ
2118 可動ブロック
2119 固定ブロック
3104 背圧調整装置
3107 アダプタ
3108 ニードルバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のスクリュから混練して押し出される溶解樹脂が流通する樹脂流路の途中に配設される背圧調整装置付きアダプタであって、ニードルバルブの弁棒軸方向と直角の断面形状が弦と円弧で成り立つ欠円の弦を基準にして円弧を反転複写した図形であることを特徴とする背圧調整装置付きアダプタ。
【請求項2】
ニードルバルブ弁体の軸方向と直角の断面の直径と弦の長さ比が1であり、かつ弦の長さに対する、弦に直交する弦の中点を通り円弧と円弧を結ぶ線の長さ比が0.7以下である請求項1に記載の背圧調整装置付きアダプタ。
【請求項3】
ニードルバルブの弁体軸方向と直角の断面形状にある弦をスクリュの同心と直交するアダプタ内流路と平行に取り付けした請求項1または請求項2に記載の背圧調整装置付きアダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192648(P2012−192648A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59019(P2011−59019)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】