背負式動力噴霧機
【課題】背当パットが左右略中心から端部にかけて背面方向に湾曲するように形成した背負式動力噴霧機を提供する。
【解決手段】背負式動力噴霧機1の背負部2bに、背当パット33を貼設し、該背当パット33の上部に、背負ベルトの取り付け部34を配設し、該背負部2bは、薬液タンク3が形成されている上部よりも、ポンプ装置4等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット33の上部33aは、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン5側に湾曲され、下部33bに移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成した。
【解決手段】背負式動力噴霧機1の背負部2bに、背当パット33を貼設し、該背当パット33の上部に、背負ベルトの取り付け部34を配設し、該背負部2bは、薬液タンク3が形成されている上部よりも、ポンプ装置4等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット33の上部33aは、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン5側に湾曲され、下部33bに移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式動力噴霧機に関し、より詳細には、該背負式動力噴霧機の取り扱いを容易とする構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンおよびエンジン等のポンプ駆動源にて構成されるポンプ装置、ならびに薬液が貯溜される薬液タンクを、枠体部に搭載した背負式の動力噴霧機が知られている。また、前記薬液タンクと枠体部とを一体形成したものも知られている。オペレータは、このような動力噴霧機を背負い、圃場を歩きながら薬剤を噴霧させて防除作業を行う。そのため、かかる背負式動力噴霧機の操作性を向上させ、また、取り扱いを容易にさせるような装置構成とされている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−80151号公報
【特許文献2】特開平11−235146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータは、背負式動力噴霧機を背負いながら防除作業を行うものであるが、機体の背負部の形状を人体に合わせて形成することは、背負感の向上や疲労を軽減させる上で好ましい。しかし、従来のように、該背負部に当接される背当パットが平面状であったので、形状が背負部とマッチしなかった。また、該背当パットが該背負部を覆うような形状とされてなかったため、薬液やエンジンの排風がオペレータ側に漏れてしまうという課題があったのである。
【0005】
そこで、本発明においては、背負式動力噴霧機に関し、前記従来の課題を解決するもので、背当パットが左右略中心から端部にかけて背面方向に湾曲するように形成する背負式動力噴霧機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、一体形成された枠体部(2)と薬液タンク(3)に、エンジン(5)とポンプ装置(4)とが配設され、該エンジン(5)の動力によって駆動されるポンプ装置(4)により、薬液タンク(3)内の薬液が噴霧管(15)を介して噴霧される背負式動力噴霧機において、該背負式動力噴霧機(1)の背負部(2b)に、背当パット(33)を貼設し、該背当パット(33)の上部に、背負ベルトの取り付け部(34)を配設し、該背負部(2b)は、薬液タンク(3)が形成されている上部よりも、ポンプ装置(4)等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット(33)の上部(33a)は、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン(5)側に湾曲され、下部(33b)に移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成したものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1記載の背負式動力噴霧機において、前記背当パット(33)は、左右上部(33a・33a)と下部(33b)とに、溝によりそれぞれ分割する溝形状に構成し、該背当パット(33)の上下方向に沿って、左右略中心に溝である凹部(33c)を形成し、平面視において、左右上部(33a・33a)と下部(33b)の、左右の端部(33d・33d)が背面方向に湾曲するように形成し、該背当パット(33)の左右端部(33d・33d)によってオペレータの腰部をホールドするように形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、一体形成された枠体部(2)と薬液タンク(3)に、エンジン(5)とポンプ装置(4)とが配設され、該エンジン(5)の動力によって駆動されるポンプ装置(4)により、薬液タンク(3)内の薬液が噴霧管(15)を介して噴霧される背負式動力噴霧機において、該背負式動力噴霧機(1)の背負部(2b)に、背当パット(33)を貼設し、該背当パット(33)の上部に、背負ベルトの取り付け部(34)を配設し、該背負部(2b)は、薬液タンク(3)が形成されている上部よりも、ポンプ装置(4)等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット(33)の上部(33a)は、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン(5)側に湾曲され、下部(33b)に移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成したので、オペレータが、該背負式動力噴霧機を背負った際に、該オペレータの背中と背負部との間に隙間が生じないため、噴霧された薬液やエンジンの排風がオペレータの背中に被爆するのを防ぐことができ、取り扱いが容易となる。また、デザイン的にも背負部がスマートに見える。
【0011】
また、オペレータが背負式動力噴霧機1を背負った場合に、該背当パットがオペレータの背中にフィットするため、防除作業による疲労を軽減させることができる。つまり、背負部2bとオペレータの背中との間に隙間や空間を作らないように、該背当パット33が成形される。そのため、噴霧された農薬や前記エンジン5の排風によって、オペレータが背中から被爆することを防ぐことができるのである。
【0012】
請求項2の如く、前記背当パット(33)は、左右上部(33a・33a)と下部(33b)とに、溝によりそれぞれ分割する溝形状に構成し、該背当パット(33)の上下方向に沿って、左右略中心に溝である凹部(33c)を形成し、平面視において、左右上部(33a・33a)と下部(33b)の、左右の端部(33d・33d)が背面方向に湾曲するように形成し、該背当パット(33)の左右端部(33d・33d)によってオペレータの腰部をホールドするように形成したので、前記背当パットに上下方向に連続した凹部が形成され、該背当パットが左右略中心から端部にかけて背面方向に湾曲するように形成されるので、両端部からの噴霧された薬液やエンジンの排風の混入を防ぎ、また、オペレータが該背負式動力噴霧機を背負った際に、該オペレータの背中にフィットするため疲労を減少させることができる。
【0013】
また、背当パット33を、左右上部と下部とにそれぞれ分割した溝形状に形成させることで、背負式動力噴霧機1を背負ったオペレータの背中に対する通風性を良好にすることができる。なお、該背当パット33は、このように溝形状に形成させたものだけでなく、一面パットとしてもよい。該背当パット33の上部33aおよび下部33bにおいて、背負部2bの左右軸方向にかけて一体的に該背負部2bを覆うように形成されている。さらに、図13および図14に示すように、前記背当パット33の形状をよりオペレータの背中にフィットさせることが出来るので、防除作業中において背負式動力噴霧機1が左右方向へずれるのを防ぐことができる。
【0014】
また、背当パット33のように、左右上部と下部とにそれぞれ分割した溝形状に形成させることで、背負式動力噴霧機1を背負ったオペレータの背中に対する通風性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は本実施例に係る背負式動力噴霧機の正面図、図2は同じく側面図である。また、図3は操作部の正面図、図4は同じく側面図である。また、図5は本参考例に係るキャップの正面図、図6は同じく側面図、図7は別参考例に係るキャップの側面図、図8は噴霧管の取り付け状態を表す背負式動力噴霧機の正面図である。図9は従来のキャップの側断面図、図10は本参考例に係るキャップの側断面図、図11は別参考例に係る背負式動力噴霧機の正面一部断面図である。そして、図12は本実施例に係る背負式動力噴霧機の後面図、図13は別実施例に係る背当パットの側面図、図14は同じく平面図である。
【0017】
まず、図1および図2により、背負式動力噴霧機1の全体構造について説明する。なお、図2において左方を背負式動力噴霧機1の背面とする。背負式動力噴霧機1は、枠体部2と薬液タンク3とがブロー成形により一体的に構成されている。枠体部2には、下部に台座部2aが形成され、背面に背負部2bが形成されている。該台座部2aには、ポンプ装置4と、該ポンプ装置の駆動源であるエンジン5とが配設されている。また、該エンジン5の下部には燃料タンク6が配設され、該燃料タンク6およびエンジン5が、防振部材7を介して前記台座部2aに固設されている。
【0018】
前記エンジン5の正面中央には、リコイルスタータ8が配設されている。該リコイルスタータ8から始動用ケーブル9が延出され、該始動用ケーブル9の先端部にはグリップ部10が配設されている。該グリップ部10は、後述する枠体部2の側方下部に形成されるブラケット11に、掛金具12により固着されている。該グリップ部10により始動用ケーブル9が引き操作され、リコイルスタータ8によって点火されてエンジン5が始動される。このように、エンジン5が停止した状態から始動する場合等に、オペレータが、かかる背負式動力噴霧機1を背負った状態のままで、エンジン5の始動を行うことができるのである。
【0019】
前記ポンプ装置4の吸引口には、図示せぬホースを介して前記薬液タンク3と接続されている。そして、前記エンジン5が起動されて、ポンプ装置4が駆動されると、薬液タンク3内の薬液は、前記枠体部2の側面に突出形成された薬液吐出口13から、該薬液吐出口13に介装されたホース14を介して、後述する噴霧管15に圧送されて噴霧可能となるのである。
【0020】
この種の背負式動力噴霧機の構造に関し、例えば、特許文献1に示すようなものが提案されている。具体的には、搭載エンジンをセルモータにより起動可能とした背負式防除機において、背当部側にセルモータを駆動するバッテリーの取り付け部を設けたものである。当該防除機において、枠体と薬液タンクとからなる機体の、片側面にエンジン起動のスイッチと、アクセルレバーと、チョークノブとが配設されている(特許文献1参照)。
【0021】
しかし、従来の背負式動力噴霧機においては、以下のような課題があったのである。すなわち、オペレータにおいては、防除作業中は背負式動力噴霧機を常時背負うことになる。また、必要な場所で薬液の噴霧を行う必要があり、前記エンジンの始動・停止は適宜行われる。そして、エンジン始動の際にかかりが悪い場合には、チョーク操作によって燃料濃度を調節しなければならない場合が生じる。かかる場合に、従来においては、オペレータが当該背負式動力噴霧機を背負った状態で、かかるチョーク操作を行うことができなかったため、その都度当該背負式動力噴霧機を地面に置かなければならず、煩わしかった。
【0022】
この点では、従来において、前記特許文献1に提案されるように、機体の片側面にチョークノブを備える背負式防除機がすでに公知となっている。しかし、従来の背負式防除機においては、チョークノブを取り付けるための部材を新たに機体に配設する必要があるため、コストがかかるという課題があったのである。
【0023】
次に、本参考例に係るチョークノブ19の取り付け構造について、以下に説明する。図3および図4に示すように、前記枠体部2の左右側方の下部には、アクセルレバー17等からなる操作部16が形成されている。該枠体部2の一側下部においては、ブラケット11が該枠体部2と一体的に、かつ、側面視略L字型に形成されている。該ブラケット11は、該背負部2bの上下方向に沿うように形成された鉛直部11aと、該鉛直部11aから機体前方に向けて、徐々に水平となるように形成された水平部11bとから構成されている。
【0024】
該水平部11bには、取付金具20がボルト21により固設されている。該取付金具20は断面視略コ字型に形成されており、鉛直部20aと上部水平部20bとが構成されている。該鉛直部20aには、アクセルレバー17が支持軸23により回動可能に支持されている。該アクセルレバー17の前部側は、ワイヤ22を介して前記エンジン5内に配設される図示せぬスロットルバルブと、連結連動するように構成されている。オペレータにおいては、本参考例に係る背負式動力噴霧機1を背負ったままで、前記アクセルレバー17を回動操作することによって、バルブ開度を調節し、エンジン5の出力を減増させることができる。
【0025】
また、上部水平部20bには、エンジン停止スイッチ18がナット25により固設されている。該エンジン停止スイッチ18は配線24を介して点火回路と接続され、オペレータは背負式動力噴霧機1を背負ったままで、エンジン停止スイッチ18を押すことによりエンジン5を停止させることができる。
【0026】
そして、前記ブラケット11の鉛直部11aには、チョークノブ19がナット27により固設され、該チョークノブ19にワイヤ26を介してチョークバルブと連結している。エンジン5のかかりが悪い場合や低温時等には、該チョークノブ19を引っ張って図示しないチョークバルブを閉じて空気吸入量を減少して、混合気の量を増加させて始動し易くすることができる。したがって、操作部16に該チョークノブ19を設けることで、本参考例に係る背負式動力噴霧機1を背負ったままで、該チョークノブ19によるチョーク操作が可能となり、エンジン5の始動が容易となるのである。
【0027】
前記鉛直部11aの上部には、図示せぬ背負ベルトを取り付けるベルト取り付け孔28が貫設されている。チョークノブ19が取り付けられる前記ブラケット11は、背負ベルトの固定用ブラケットとしても兼用できるものであり、上述のように、該ブラケット11は側面視L字型に構成して枠体部2と一体的に形成される。そのため、本参考例に係るチョークノブ19の取り付け構造においては、従来と比べて新たな部材を設ける必要がなく、また、枠体部2の成形も容易に行うことができるためコストがかからない、という点で特に有用である。更に、枠体部2の側部の補強をも兼ねて剛性をアップすることもできるのである。
【0028】
なお、上述のように、アクセルレバー17、エンジン停止スイッチ18およびチョークノブ19で構成される操作部16が、枠体部2の左右一側方に集成されているため、オペレータにおいては、該枠体部2の他側方から延出される噴霧管15を保持しつつ、空いている手で操作部16の操作を容易に行うことができる。
【0029】
また、背負式動力噴霧機においては、前記薬液の噴霧は、該エンジンの動力によって駆動されるポンプ装置により、噴霧管を介して行われる。かかる噴霧管は、機体本体からホースを介して、噴霧管の先端部に設けられた噴霧ノズルにより薬液を噴霧するものである。該噴霧管は、噴霧ノズルに薬液が附着することもあり、その取り扱いには慎重を要するものである。
【0030】
そこで、かかる観点から、特許文献2に示すような背負式動力噴霧機の構造が提案されている。具体的には、背負式動力噴霧機の機体に上向きの突起を立設させ、該突起に対して、噴霧管に形成された係止部材により、当該噴霧管を係合支持させるものである(特許文献2参照)。
【0031】
そして、上述の防除作業を行う前後には、当該背負式動力噴霧機を持ち運ぶことになる。また、一時的に安置させる場合もある。その際に、従来は、安置時には、薬液タンク側面に噴霧管を縦方向に取り付け、背負式動力噴霧機の運搬時には、オペレータが片手に噴霧管を、他方に機体本体を持って移動させていた。オペレータは両手を塞がれているため、同時に他の作業を行うことができなかった。そのため、作業を行うには他の把持物を一度手放さなければならないので煩わしく、作業の効率が悪かった。
【0032】
前記特許文献2において提案されている機体本体に噴霧管を係止させる係止手段においては、当該背負式動力噴霧機を背負った状態であれば、オペレータの両手が自由となる。しかし、放置された背負式動力噴霧機を移動させるには、上述のように、オペレータにおいて片手に噴霧管を、他方に機体本体を持たなければならないという課題があったのである。
【0033】
次に、本参考例に係る噴霧管15の係止手段について、以下に説明する。前記薬液タンク3上部に薬液注入口3aが設けられ、左右一側下部(枠体部2の上下中途部の側部)には残液排出用の開閉コック3bが配設されている。図5および図6に示すように、前記薬液タンク3上部にキャップ29が配設され、該キャップ29は、把持部29aと取り付け部29bとからなり、取り付け部29bに対して鉛直軸方向に把持部29aが立設されている。該取り付け部29bは、内側面に雌ネジがネジ切りされており、前記薬液注入口3aと螺挿される。また、前記把持部29aは側面視略E字型に構成され、その左右略中心に補強部31が配設され、該把持部29aの強度が維持されている。
【0034】
なお、該把持部29aを形成させることによって、従来、薬液タンク3の両側面に形成されていた凹状の移動用把持部が不要となるため、機体の製造や型製作が容易となる。また、上述のようなキャップ29の構造は、本発明の一参考例を示すものであり、別参考例として、後述するように、該補強部等にブリーザ孔を形成してもよい。
【0035】
前記把持部29aにおいては、長手方向に凹溝29cが形成され、該凹溝29cには、前記噴霧管15を着脱可能に係止する係止手段として、係止部材32が配設されている。該係止部材32は側面視略U字型に形成され、切欠き部32aと係止部32bとからなり、前記凹溝29cの短手方向に沿うように配置されている。該係止部32bの内径および切欠き部32aの切欠き幅Wは、噴霧管15の外径と略同一に形成されている。なお、該係止部材32は、把持部29aと一体形成させてもよく、別途成形させた係止部材32を取り付けてもよい。
【0036】
図8に示すように、前記凹溝29cに係止部材32が配設されることで、噴霧管15を、該係止部材32に係合させ該把持部29aの長手方向に横設させることができる。そのため、オペレータが、本参考例に係る背負式動力噴霧機1を背負わずに移動させる際には、片手で把持部29aと該把持部29aに係合支持された噴霧管15とを同時に持つことができ、持ち運び移動が容易となるのである。また、格納しておく場合にも、噴霧管15を固定してホース14を回りに伸ばしておくことがない。
【0037】
また、図7に示すように、前記切欠き部32aの切欠き幅W1を、前記係止部32bの内径W2よりも狭くなる(W1<W2)ように形成させてもよい。かかる場合には、切欠き幅W1は、噴霧管15の外径よりも僅かに狭く、かつ、該噴霧管15が通過できるように形成される。このように形成されることで、該切欠き部32aに挿通された噴霧管15が、該切欠き部32aの上方に抜脱するのを防ぐことができる。そして、噴霧管15の係止支持が容易となり、該噴霧管15が把持部に係止された状態で放置することが可能となる。
【0038】
なお、前記係止部材32は、例えばウレタン系樹脂のように、弾性力を有し、かつ、耐薬液性を備えた樹脂で形成させることもできる。かかる場合には、該係止部材32によって、前記噴霧管15が弾性係止されるため、該噴霧管15の着脱が容易となる点で、特に有用である。また、該係止部材32は、把持部29aの長手方向に少なくとも2箇所以上で、かつ、係止部材32相互の間隔が最大となるように配置させてもよい。このように配置させることで、前記噴霧管15を安定して係止支持することができるのである。
【0039】
次に、別参考例に係るキャップの構造について、以下に説明する。図9に示すように、従来のキャップ40は、略円柱状に形成されたキャップ40本体の上部平面にブリーザ孔41が穿設され、取り付け部40bにおいて、前記薬液注入口3aに着脱可能に螺着されていた。そして、該キャップ40が前記薬液タンク3に取り付けられた状態において、傾けた場合等で該薬液タンク3内の薬液が該ブリーザ孔41から洩れるのを防止するため、該キャップ40内部であって、ブリーザ孔41の直下方に逆支弁42が配置されていた。該薬液タンク3内の通気を確保する上で、キャップ40に該ブリーザ孔41を穿設することは有用であるが、薬液タンク3内に注入される薬液が、該ブリーザ孔41から洩れて、周囲を濡らすことを防止する必要があった。そのため、別途逆支弁42が配設されていたのである。
【0040】
しかし、前記逆支弁42をキャップ40に別途配置する構造であると、部品点数が増え、キャップ製作にコストがかかるという課題があった。そこで、本参考例に係るキャップの構造においては、逆支弁を設けることなく、かつ、薬液が直接洩れることのないようにブリーザ孔を設けたものである。
【0041】
図10および図11に示すように、キャップ129は、把持部129aと取り付け部129bとからなり、取り付け部129bに対して鉛直軸方向に把持部129aが立設されている。該取り付け部129bは、円筒状として内側面に雌ネジがネジ切りされており、前記薬液注入口3aと螺挿される。また、前記把持部129aは側面視略E字型に構成され、その左右略中心に補強部131が一体的に配設され、把持部材を構成している。該補強部131により、該把持部129aの剛性をより高めるとともに、部品点数を減らして、製作コストを低減させることができる。
【0042】
前記把持部129aにおいては、長手方向に凹溝129cが上方を開放するように形成され、該凹溝129cには、前記噴霧管15を着脱可能に係止する係止手段として、係止部材132が配設されている。該係止部材132は側面視略U字型に形成され、切欠き部132aと係止部132bとからなり、前記凹溝129cの短手方向に沿うように配置されている。該凹溝129cに係止部材132が配設されることで、噴霧管15を、該係止部材32に係合させ該把持部29aの長手方向に横設させることができる。
【0043】
前記補強部131の内部、および、取り付け部129bの中央部において、上下方向に排出路131aが形成されている。該補強部131の下方端部において、該排出路131aが、キャップ129の内部に穿通するように開口されている。該補強部131の上端部は、前記凹溝129cにより閉じられており、該凹溝129c下面近傍の補強部131側面に、ブリーザ孔141が水平方向に貫設されている。該ブリーザ孔141は、キャップ129内部から、排出路131a・該ブリーザ孔141を介して、外部に通気するように形成されている。
【0044】
このように、排出路131aおよびブリーザ孔141を配設することによって、前記従来のキャップ40と比較して、別途逆支弁42を設けることなく、薬液タンク3内部の薬液が、ブリーザ孔141を介して漏出するのを防ぐことができる。そのため、オペレータが、片手で把持部129aと該把持部129aに係合支持された噴霧管15とを同時に持つことができ、持ち運び移動が容易となると同時に、かかる移動の際や、噴霧作業中において、該ブリーザ孔141から薬液が漏出して、オペレータの手足等を濡らすことがなく、薬害が生じることも殆どない。
【0045】
また、本参考例においては、該排出路131aおよびブリーザ孔141は、把持部129aに配設された前記補強部131に形成されるものであるが、形成部材はこれに限定するものではない。すなわち、例えば、前記把持部129aの水平部の両端から斜下方に形成される左右両縁部に形成してもよい。
【0046】
次に、本実施例に係る背負式動力噴霧機1の背当パット33の構造について、以下に説明する。図2および図12に示すように、本実施例に係る背負式動力噴霧機1の背負部2bにおいては、背当パット33が貼設され、上部には前記背負ベルトの取り付け部34が配設されている。該背負部2bは、薬液タンク3が形成されている上部よりも、ポンプ装置4等が配設されている下部のほうが、背面方向に突出するように形成されている。つまり、側面視略S字型となるように上部から下部にかけて、その形状の変化は滑らかに形成されている。そして、前記背当パット33が、該背負部2bの形状に合わせて形成されるのである。
【0047】
具体的には、図2に示すように、背当パット33の上部33aは、上方から下方に向けてなだらかに正面方向(図2において右方向)に湾曲され、下部33bに移行するにつれて背面方向(図2において左方向)になだらかに突出するように形成されている。そして、該背当パット33は、前記背負部2bの形状に合うように形成されている。このように側面視において、該背当パットと背負部2bとの間隙を作らないようにすることで、オペレータが背負式動力噴霧機1を背負った場合に、該背当パットがオペレータの背中にフィットするため、防除作業による疲労を軽減させることができる。
【0048】
そして、図12に示すように、該背当パット33の上部33aおよび下部33bにおいて、背負部2bの左右軸方向にかけて一体的に該背負部2bを覆うように形成されている。つまり、背負部2bとオペレータの背中との間に隙間や空間を作らないように、該背当パット33が成形される。そのため、噴霧された農薬や前記エンジン5の排風によって、オペレータが背中から被爆することを防ぐことができるのである。
また、該背負部2bを一体的に覆うため、デザイン的にも該背負部2bがスマートに見える。
【0049】
さらに、図13および図14に示すように、前記背当パット33の形状をよりオペレータの背中にフィットさせるため、前記背当パット33において、左右略中心に凹部33cを形成させてもよい。具体的には、該背当パット33の上下方向に沿って、かつ、左右略中心に凹部33cが設けられ、平面視において左右の端部33d・33dが背面方向に湾曲するように形成される。該凹部33cおよび端部33dを形成させることで、背当パット33がオペレータの背中によりフィットする。特に、左右の端部33dによってオペレータの腰部をホールドするように形成されるため、防除作業中において背負式動力噴霧機1が左右方向へずれるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施例に係る背負式動力噴霧機の正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】操作部の正面図。
【図4】同じく側面図。
【図5】本参考例に係るキャップの正面図。
【図6】同じく側面図。
【図7】別参考例に係るキャップの側面図。
【図8】噴霧管の取り付け状態を表す背負式動力噴霧機の正面図。
【図9】従来のキャップの側断面図。
【図10】別参考例に係るキャップの側断面図。
【図11】別参考例に係る背負式動力噴霧機の正面一部断面図。
【図12】本実施例に係る背負式動力噴霧機の後面図。
【図13】別実施例に係る背当パットの側面図。
【図14】同じく平面図。
【符号の説明】
【0051】
1 背負式動力噴霧機
2 枠体部
2a 台座部
2b 背負部
3 薬液タンク
5 エンジン
11 ブラケット
15 噴霧管
16 操作部
17 アクセルレバー
18 エンジン停止スイッチ
19 チョークノブ
29・129 キャップ
29a・129a 把持部
32 係止部材
33 背当パット
131a 排出路
141 ブリーザ孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式動力噴霧機に関し、より詳細には、該背負式動力噴霧機の取り扱いを容易とする構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンおよびエンジン等のポンプ駆動源にて構成されるポンプ装置、ならびに薬液が貯溜される薬液タンクを、枠体部に搭載した背負式の動力噴霧機が知られている。また、前記薬液タンクと枠体部とを一体形成したものも知られている。オペレータは、このような動力噴霧機を背負い、圃場を歩きながら薬剤を噴霧させて防除作業を行う。そのため、かかる背負式動力噴霧機の操作性を向上させ、また、取り扱いを容易にさせるような装置構成とされている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−80151号公報
【特許文献2】特開平11−235146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータは、背負式動力噴霧機を背負いながら防除作業を行うものであるが、機体の背負部の形状を人体に合わせて形成することは、背負感の向上や疲労を軽減させる上で好ましい。しかし、従来のように、該背負部に当接される背当パットが平面状であったので、形状が背負部とマッチしなかった。また、該背当パットが該背負部を覆うような形状とされてなかったため、薬液やエンジンの排風がオペレータ側に漏れてしまうという課題があったのである。
【0005】
そこで、本発明においては、背負式動力噴霧機に関し、前記従来の課題を解決するもので、背当パットが左右略中心から端部にかけて背面方向に湾曲するように形成する背負式動力噴霧機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、一体形成された枠体部(2)と薬液タンク(3)に、エンジン(5)とポンプ装置(4)とが配設され、該エンジン(5)の動力によって駆動されるポンプ装置(4)により、薬液タンク(3)内の薬液が噴霧管(15)を介して噴霧される背負式動力噴霧機において、該背負式動力噴霧機(1)の背負部(2b)に、背当パット(33)を貼設し、該背当パット(33)の上部に、背負ベルトの取り付け部(34)を配設し、該背負部(2b)は、薬液タンク(3)が形成されている上部よりも、ポンプ装置(4)等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット(33)の上部(33a)は、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン(5)側に湾曲され、下部(33b)に移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成したものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1記載の背負式動力噴霧機において、前記背当パット(33)は、左右上部(33a・33a)と下部(33b)とに、溝によりそれぞれ分割する溝形状に構成し、該背当パット(33)の上下方向に沿って、左右略中心に溝である凹部(33c)を形成し、平面視において、左右上部(33a・33a)と下部(33b)の、左右の端部(33d・33d)が背面方向に湾曲するように形成し、該背当パット(33)の左右端部(33d・33d)によってオペレータの腰部をホールドするように形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、一体形成された枠体部(2)と薬液タンク(3)に、エンジン(5)とポンプ装置(4)とが配設され、該エンジン(5)の動力によって駆動されるポンプ装置(4)により、薬液タンク(3)内の薬液が噴霧管(15)を介して噴霧される背負式動力噴霧機において、該背負式動力噴霧機(1)の背負部(2b)に、背当パット(33)を貼設し、該背当パット(33)の上部に、背負ベルトの取り付け部(34)を配設し、該背負部(2b)は、薬液タンク(3)が形成されている上部よりも、ポンプ装置(4)等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット(33)の上部(33a)は、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン(5)側に湾曲され、下部(33b)に移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成したので、オペレータが、該背負式動力噴霧機を背負った際に、該オペレータの背中と背負部との間に隙間が生じないため、噴霧された薬液やエンジンの排風がオペレータの背中に被爆するのを防ぐことができ、取り扱いが容易となる。また、デザイン的にも背負部がスマートに見える。
【0011】
また、オペレータが背負式動力噴霧機1を背負った場合に、該背当パットがオペレータの背中にフィットするため、防除作業による疲労を軽減させることができる。つまり、背負部2bとオペレータの背中との間に隙間や空間を作らないように、該背当パット33が成形される。そのため、噴霧された農薬や前記エンジン5の排風によって、オペレータが背中から被爆することを防ぐことができるのである。
【0012】
請求項2の如く、前記背当パット(33)は、左右上部(33a・33a)と下部(33b)とに、溝によりそれぞれ分割する溝形状に構成し、該背当パット(33)の上下方向に沿って、左右略中心に溝である凹部(33c)を形成し、平面視において、左右上部(33a・33a)と下部(33b)の、左右の端部(33d・33d)が背面方向に湾曲するように形成し、該背当パット(33)の左右端部(33d・33d)によってオペレータの腰部をホールドするように形成したので、前記背当パットに上下方向に連続した凹部が形成され、該背当パットが左右略中心から端部にかけて背面方向に湾曲するように形成されるので、両端部からの噴霧された薬液やエンジンの排風の混入を防ぎ、また、オペレータが該背負式動力噴霧機を背負った際に、該オペレータの背中にフィットするため疲労を減少させることができる。
【0013】
また、背当パット33を、左右上部と下部とにそれぞれ分割した溝形状に形成させることで、背負式動力噴霧機1を背負ったオペレータの背中に対する通風性を良好にすることができる。なお、該背当パット33は、このように溝形状に形成させたものだけでなく、一面パットとしてもよい。該背当パット33の上部33aおよび下部33bにおいて、背負部2bの左右軸方向にかけて一体的に該背負部2bを覆うように形成されている。さらに、図13および図14に示すように、前記背当パット33の形状をよりオペレータの背中にフィットさせることが出来るので、防除作業中において背負式動力噴霧機1が左右方向へずれるのを防ぐことができる。
【0014】
また、背当パット33のように、左右上部と下部とにそれぞれ分割した溝形状に形成させることで、背負式動力噴霧機1を背負ったオペレータの背中に対する通風性を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は本実施例に係る背負式動力噴霧機の正面図、図2は同じく側面図である。また、図3は操作部の正面図、図4は同じく側面図である。また、図5は本参考例に係るキャップの正面図、図6は同じく側面図、図7は別参考例に係るキャップの側面図、図8は噴霧管の取り付け状態を表す背負式動力噴霧機の正面図である。図9は従来のキャップの側断面図、図10は本参考例に係るキャップの側断面図、図11は別参考例に係る背負式動力噴霧機の正面一部断面図である。そして、図12は本実施例に係る背負式動力噴霧機の後面図、図13は別実施例に係る背当パットの側面図、図14は同じく平面図である。
【0017】
まず、図1および図2により、背負式動力噴霧機1の全体構造について説明する。なお、図2において左方を背負式動力噴霧機1の背面とする。背負式動力噴霧機1は、枠体部2と薬液タンク3とがブロー成形により一体的に構成されている。枠体部2には、下部に台座部2aが形成され、背面に背負部2bが形成されている。該台座部2aには、ポンプ装置4と、該ポンプ装置の駆動源であるエンジン5とが配設されている。また、該エンジン5の下部には燃料タンク6が配設され、該燃料タンク6およびエンジン5が、防振部材7を介して前記台座部2aに固設されている。
【0018】
前記エンジン5の正面中央には、リコイルスタータ8が配設されている。該リコイルスタータ8から始動用ケーブル9が延出され、該始動用ケーブル9の先端部にはグリップ部10が配設されている。該グリップ部10は、後述する枠体部2の側方下部に形成されるブラケット11に、掛金具12により固着されている。該グリップ部10により始動用ケーブル9が引き操作され、リコイルスタータ8によって点火されてエンジン5が始動される。このように、エンジン5が停止した状態から始動する場合等に、オペレータが、かかる背負式動力噴霧機1を背負った状態のままで、エンジン5の始動を行うことができるのである。
【0019】
前記ポンプ装置4の吸引口には、図示せぬホースを介して前記薬液タンク3と接続されている。そして、前記エンジン5が起動されて、ポンプ装置4が駆動されると、薬液タンク3内の薬液は、前記枠体部2の側面に突出形成された薬液吐出口13から、該薬液吐出口13に介装されたホース14を介して、後述する噴霧管15に圧送されて噴霧可能となるのである。
【0020】
この種の背負式動力噴霧機の構造に関し、例えば、特許文献1に示すようなものが提案されている。具体的には、搭載エンジンをセルモータにより起動可能とした背負式防除機において、背当部側にセルモータを駆動するバッテリーの取り付け部を設けたものである。当該防除機において、枠体と薬液タンクとからなる機体の、片側面にエンジン起動のスイッチと、アクセルレバーと、チョークノブとが配設されている(特許文献1参照)。
【0021】
しかし、従来の背負式動力噴霧機においては、以下のような課題があったのである。すなわち、オペレータにおいては、防除作業中は背負式動力噴霧機を常時背負うことになる。また、必要な場所で薬液の噴霧を行う必要があり、前記エンジンの始動・停止は適宜行われる。そして、エンジン始動の際にかかりが悪い場合には、チョーク操作によって燃料濃度を調節しなければならない場合が生じる。かかる場合に、従来においては、オペレータが当該背負式動力噴霧機を背負った状態で、かかるチョーク操作を行うことができなかったため、その都度当該背負式動力噴霧機を地面に置かなければならず、煩わしかった。
【0022】
この点では、従来において、前記特許文献1に提案されるように、機体の片側面にチョークノブを備える背負式防除機がすでに公知となっている。しかし、従来の背負式防除機においては、チョークノブを取り付けるための部材を新たに機体に配設する必要があるため、コストがかかるという課題があったのである。
【0023】
次に、本参考例に係るチョークノブ19の取り付け構造について、以下に説明する。図3および図4に示すように、前記枠体部2の左右側方の下部には、アクセルレバー17等からなる操作部16が形成されている。該枠体部2の一側下部においては、ブラケット11が該枠体部2と一体的に、かつ、側面視略L字型に形成されている。該ブラケット11は、該背負部2bの上下方向に沿うように形成された鉛直部11aと、該鉛直部11aから機体前方に向けて、徐々に水平となるように形成された水平部11bとから構成されている。
【0024】
該水平部11bには、取付金具20がボルト21により固設されている。該取付金具20は断面視略コ字型に形成されており、鉛直部20aと上部水平部20bとが構成されている。該鉛直部20aには、アクセルレバー17が支持軸23により回動可能に支持されている。該アクセルレバー17の前部側は、ワイヤ22を介して前記エンジン5内に配設される図示せぬスロットルバルブと、連結連動するように構成されている。オペレータにおいては、本参考例に係る背負式動力噴霧機1を背負ったままで、前記アクセルレバー17を回動操作することによって、バルブ開度を調節し、エンジン5の出力を減増させることができる。
【0025】
また、上部水平部20bには、エンジン停止スイッチ18がナット25により固設されている。該エンジン停止スイッチ18は配線24を介して点火回路と接続され、オペレータは背負式動力噴霧機1を背負ったままで、エンジン停止スイッチ18を押すことによりエンジン5を停止させることができる。
【0026】
そして、前記ブラケット11の鉛直部11aには、チョークノブ19がナット27により固設され、該チョークノブ19にワイヤ26を介してチョークバルブと連結している。エンジン5のかかりが悪い場合や低温時等には、該チョークノブ19を引っ張って図示しないチョークバルブを閉じて空気吸入量を減少して、混合気の量を増加させて始動し易くすることができる。したがって、操作部16に該チョークノブ19を設けることで、本参考例に係る背負式動力噴霧機1を背負ったままで、該チョークノブ19によるチョーク操作が可能となり、エンジン5の始動が容易となるのである。
【0027】
前記鉛直部11aの上部には、図示せぬ背負ベルトを取り付けるベルト取り付け孔28が貫設されている。チョークノブ19が取り付けられる前記ブラケット11は、背負ベルトの固定用ブラケットとしても兼用できるものであり、上述のように、該ブラケット11は側面視L字型に構成して枠体部2と一体的に形成される。そのため、本参考例に係るチョークノブ19の取り付け構造においては、従来と比べて新たな部材を設ける必要がなく、また、枠体部2の成形も容易に行うことができるためコストがかからない、という点で特に有用である。更に、枠体部2の側部の補強をも兼ねて剛性をアップすることもできるのである。
【0028】
なお、上述のように、アクセルレバー17、エンジン停止スイッチ18およびチョークノブ19で構成される操作部16が、枠体部2の左右一側方に集成されているため、オペレータにおいては、該枠体部2の他側方から延出される噴霧管15を保持しつつ、空いている手で操作部16の操作を容易に行うことができる。
【0029】
また、背負式動力噴霧機においては、前記薬液の噴霧は、該エンジンの動力によって駆動されるポンプ装置により、噴霧管を介して行われる。かかる噴霧管は、機体本体からホースを介して、噴霧管の先端部に設けられた噴霧ノズルにより薬液を噴霧するものである。該噴霧管は、噴霧ノズルに薬液が附着することもあり、その取り扱いには慎重を要するものである。
【0030】
そこで、かかる観点から、特許文献2に示すような背負式動力噴霧機の構造が提案されている。具体的には、背負式動力噴霧機の機体に上向きの突起を立設させ、該突起に対して、噴霧管に形成された係止部材により、当該噴霧管を係合支持させるものである(特許文献2参照)。
【0031】
そして、上述の防除作業を行う前後には、当該背負式動力噴霧機を持ち運ぶことになる。また、一時的に安置させる場合もある。その際に、従来は、安置時には、薬液タンク側面に噴霧管を縦方向に取り付け、背負式動力噴霧機の運搬時には、オペレータが片手に噴霧管を、他方に機体本体を持って移動させていた。オペレータは両手を塞がれているため、同時に他の作業を行うことができなかった。そのため、作業を行うには他の把持物を一度手放さなければならないので煩わしく、作業の効率が悪かった。
【0032】
前記特許文献2において提案されている機体本体に噴霧管を係止させる係止手段においては、当該背負式動力噴霧機を背負った状態であれば、オペレータの両手が自由となる。しかし、放置された背負式動力噴霧機を移動させるには、上述のように、オペレータにおいて片手に噴霧管を、他方に機体本体を持たなければならないという課題があったのである。
【0033】
次に、本参考例に係る噴霧管15の係止手段について、以下に説明する。前記薬液タンク3上部に薬液注入口3aが設けられ、左右一側下部(枠体部2の上下中途部の側部)には残液排出用の開閉コック3bが配設されている。図5および図6に示すように、前記薬液タンク3上部にキャップ29が配設され、該キャップ29は、把持部29aと取り付け部29bとからなり、取り付け部29bに対して鉛直軸方向に把持部29aが立設されている。該取り付け部29bは、内側面に雌ネジがネジ切りされており、前記薬液注入口3aと螺挿される。また、前記把持部29aは側面視略E字型に構成され、その左右略中心に補強部31が配設され、該把持部29aの強度が維持されている。
【0034】
なお、該把持部29aを形成させることによって、従来、薬液タンク3の両側面に形成されていた凹状の移動用把持部が不要となるため、機体の製造や型製作が容易となる。また、上述のようなキャップ29の構造は、本発明の一参考例を示すものであり、別参考例として、後述するように、該補強部等にブリーザ孔を形成してもよい。
【0035】
前記把持部29aにおいては、長手方向に凹溝29cが形成され、該凹溝29cには、前記噴霧管15を着脱可能に係止する係止手段として、係止部材32が配設されている。該係止部材32は側面視略U字型に形成され、切欠き部32aと係止部32bとからなり、前記凹溝29cの短手方向に沿うように配置されている。該係止部32bの内径および切欠き部32aの切欠き幅Wは、噴霧管15の外径と略同一に形成されている。なお、該係止部材32は、把持部29aと一体形成させてもよく、別途成形させた係止部材32を取り付けてもよい。
【0036】
図8に示すように、前記凹溝29cに係止部材32が配設されることで、噴霧管15を、該係止部材32に係合させ該把持部29aの長手方向に横設させることができる。そのため、オペレータが、本参考例に係る背負式動力噴霧機1を背負わずに移動させる際には、片手で把持部29aと該把持部29aに係合支持された噴霧管15とを同時に持つことができ、持ち運び移動が容易となるのである。また、格納しておく場合にも、噴霧管15を固定してホース14を回りに伸ばしておくことがない。
【0037】
また、図7に示すように、前記切欠き部32aの切欠き幅W1を、前記係止部32bの内径W2よりも狭くなる(W1<W2)ように形成させてもよい。かかる場合には、切欠き幅W1は、噴霧管15の外径よりも僅かに狭く、かつ、該噴霧管15が通過できるように形成される。このように形成されることで、該切欠き部32aに挿通された噴霧管15が、該切欠き部32aの上方に抜脱するのを防ぐことができる。そして、噴霧管15の係止支持が容易となり、該噴霧管15が把持部に係止された状態で放置することが可能となる。
【0038】
なお、前記係止部材32は、例えばウレタン系樹脂のように、弾性力を有し、かつ、耐薬液性を備えた樹脂で形成させることもできる。かかる場合には、該係止部材32によって、前記噴霧管15が弾性係止されるため、該噴霧管15の着脱が容易となる点で、特に有用である。また、該係止部材32は、把持部29aの長手方向に少なくとも2箇所以上で、かつ、係止部材32相互の間隔が最大となるように配置させてもよい。このように配置させることで、前記噴霧管15を安定して係止支持することができるのである。
【0039】
次に、別参考例に係るキャップの構造について、以下に説明する。図9に示すように、従来のキャップ40は、略円柱状に形成されたキャップ40本体の上部平面にブリーザ孔41が穿設され、取り付け部40bにおいて、前記薬液注入口3aに着脱可能に螺着されていた。そして、該キャップ40が前記薬液タンク3に取り付けられた状態において、傾けた場合等で該薬液タンク3内の薬液が該ブリーザ孔41から洩れるのを防止するため、該キャップ40内部であって、ブリーザ孔41の直下方に逆支弁42が配置されていた。該薬液タンク3内の通気を確保する上で、キャップ40に該ブリーザ孔41を穿設することは有用であるが、薬液タンク3内に注入される薬液が、該ブリーザ孔41から洩れて、周囲を濡らすことを防止する必要があった。そのため、別途逆支弁42が配設されていたのである。
【0040】
しかし、前記逆支弁42をキャップ40に別途配置する構造であると、部品点数が増え、キャップ製作にコストがかかるという課題があった。そこで、本参考例に係るキャップの構造においては、逆支弁を設けることなく、かつ、薬液が直接洩れることのないようにブリーザ孔を設けたものである。
【0041】
図10および図11に示すように、キャップ129は、把持部129aと取り付け部129bとからなり、取り付け部129bに対して鉛直軸方向に把持部129aが立設されている。該取り付け部129bは、円筒状として内側面に雌ネジがネジ切りされており、前記薬液注入口3aと螺挿される。また、前記把持部129aは側面視略E字型に構成され、その左右略中心に補強部131が一体的に配設され、把持部材を構成している。該補強部131により、該把持部129aの剛性をより高めるとともに、部品点数を減らして、製作コストを低減させることができる。
【0042】
前記把持部129aにおいては、長手方向に凹溝129cが上方を開放するように形成され、該凹溝129cには、前記噴霧管15を着脱可能に係止する係止手段として、係止部材132が配設されている。該係止部材132は側面視略U字型に形成され、切欠き部132aと係止部132bとからなり、前記凹溝129cの短手方向に沿うように配置されている。該凹溝129cに係止部材132が配設されることで、噴霧管15を、該係止部材32に係合させ該把持部29aの長手方向に横設させることができる。
【0043】
前記補強部131の内部、および、取り付け部129bの中央部において、上下方向に排出路131aが形成されている。該補強部131の下方端部において、該排出路131aが、キャップ129の内部に穿通するように開口されている。該補強部131の上端部は、前記凹溝129cにより閉じられており、該凹溝129c下面近傍の補強部131側面に、ブリーザ孔141が水平方向に貫設されている。該ブリーザ孔141は、キャップ129内部から、排出路131a・該ブリーザ孔141を介して、外部に通気するように形成されている。
【0044】
このように、排出路131aおよびブリーザ孔141を配設することによって、前記従来のキャップ40と比較して、別途逆支弁42を設けることなく、薬液タンク3内部の薬液が、ブリーザ孔141を介して漏出するのを防ぐことができる。そのため、オペレータが、片手で把持部129aと該把持部129aに係合支持された噴霧管15とを同時に持つことができ、持ち運び移動が容易となると同時に、かかる移動の際や、噴霧作業中において、該ブリーザ孔141から薬液が漏出して、オペレータの手足等を濡らすことがなく、薬害が生じることも殆どない。
【0045】
また、本参考例においては、該排出路131aおよびブリーザ孔141は、把持部129aに配設された前記補強部131に形成されるものであるが、形成部材はこれに限定するものではない。すなわち、例えば、前記把持部129aの水平部の両端から斜下方に形成される左右両縁部に形成してもよい。
【0046】
次に、本実施例に係る背負式動力噴霧機1の背当パット33の構造について、以下に説明する。図2および図12に示すように、本実施例に係る背負式動力噴霧機1の背負部2bにおいては、背当パット33が貼設され、上部には前記背負ベルトの取り付け部34が配設されている。該背負部2bは、薬液タンク3が形成されている上部よりも、ポンプ装置4等が配設されている下部のほうが、背面方向に突出するように形成されている。つまり、側面視略S字型となるように上部から下部にかけて、その形状の変化は滑らかに形成されている。そして、前記背当パット33が、該背負部2bの形状に合わせて形成されるのである。
【0047】
具体的には、図2に示すように、背当パット33の上部33aは、上方から下方に向けてなだらかに正面方向(図2において右方向)に湾曲され、下部33bに移行するにつれて背面方向(図2において左方向)になだらかに突出するように形成されている。そして、該背当パット33は、前記背負部2bの形状に合うように形成されている。このように側面視において、該背当パットと背負部2bとの間隙を作らないようにすることで、オペレータが背負式動力噴霧機1を背負った場合に、該背当パットがオペレータの背中にフィットするため、防除作業による疲労を軽減させることができる。
【0048】
そして、図12に示すように、該背当パット33の上部33aおよび下部33bにおいて、背負部2bの左右軸方向にかけて一体的に該背負部2bを覆うように形成されている。つまり、背負部2bとオペレータの背中との間に隙間や空間を作らないように、該背当パット33が成形される。そのため、噴霧された農薬や前記エンジン5の排風によって、オペレータが背中から被爆することを防ぐことができるのである。
また、該背負部2bを一体的に覆うため、デザイン的にも該背負部2bがスマートに見える。
【0049】
さらに、図13および図14に示すように、前記背当パット33の形状をよりオペレータの背中にフィットさせるため、前記背当パット33において、左右略中心に凹部33cを形成させてもよい。具体的には、該背当パット33の上下方向に沿って、かつ、左右略中心に凹部33cが設けられ、平面視において左右の端部33d・33dが背面方向に湾曲するように形成される。該凹部33cおよび端部33dを形成させることで、背当パット33がオペレータの背中によりフィットする。特に、左右の端部33dによってオペレータの腰部をホールドするように形成されるため、防除作業中において背負式動力噴霧機1が左右方向へずれるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施例に係る背負式動力噴霧機の正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】操作部の正面図。
【図4】同じく側面図。
【図5】本参考例に係るキャップの正面図。
【図6】同じく側面図。
【図7】別参考例に係るキャップの側面図。
【図8】噴霧管の取り付け状態を表す背負式動力噴霧機の正面図。
【図9】従来のキャップの側断面図。
【図10】別参考例に係るキャップの側断面図。
【図11】別参考例に係る背負式動力噴霧機の正面一部断面図。
【図12】本実施例に係る背負式動力噴霧機の後面図。
【図13】別実施例に係る背当パットの側面図。
【図14】同じく平面図。
【符号の説明】
【0051】
1 背負式動力噴霧機
2 枠体部
2a 台座部
2b 背負部
3 薬液タンク
5 エンジン
11 ブラケット
15 噴霧管
16 操作部
17 アクセルレバー
18 エンジン停止スイッチ
19 チョークノブ
29・129 キャップ
29a・129a 把持部
32 係止部材
33 背当パット
131a 排出路
141 ブリーザ孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体形成された枠体部(2)と薬液タンク(3)に、エンジン(5)とポンプ装置(4)とが配設され、該エンジン(5)の動力によって駆動されるポンプ装置(4)により、薬液タンク(3)内の薬液が噴霧管(15)を介して噴霧される背負式動力噴霧機において、
該背負式動力噴霧機(1)の背負部(2b)に、背当パット(33)を貼設し、該背当パット(33)の上部に、背負ベルトの取り付け部(34)を配設し、該背負部(2b)は、薬液タンク(3)が形成されている上部よりも、ポンプ装置(4)等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット(33)の上部(33a)は、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン(5)側に湾曲され、下部(33b)に移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成したことを特徴とする背負式動力噴霧機。
【請求項2】
請求項1記載の背負式動力噴霧機において、前記背当パット(33)は、左右上部(33a・33a)と下部(33b)とに、溝によりそれぞれ分割する溝形状に構成し、該背当パット(33)の上下方向に沿って、左右略中心に溝である凹部(33c)を形成し、平面視において、左右上部(33a・33a)と下部(33b)の、左右の端部(33d・33d)が背面方向に湾曲するように形成し、該背当パット(33)の左右端部(33d・33d)によってオペレータの腰部をホールドするように形成したことを特徴とする背負式動力噴霧機。
【請求項1】
一体形成された枠体部(2)と薬液タンク(3)に、エンジン(5)とポンプ装置(4)とが配設され、該エンジン(5)の動力によって駆動されるポンプ装置(4)により、薬液タンク(3)内の薬液が噴霧管(15)を介して噴霧される背負式動力噴霧機において、
該背負式動力噴霧機(1)の背負部(2b)に、背当パット(33)を貼設し、該背当パット(33)の上部に、背負ベルトの取り付け部(34)を配設し、該背負部(2b)は、薬液タンク(3)が形成されている上部よりも、ポンプ装置(4)等が配設されている下部のほうが背面方向に突出すべく、該背当パット(33)の上部(33a)は、上方から下方に向けて、正面方向であるエンジン(5)側に湾曲され、下部(33b)に移行するにつれて背面方向に突出するように、側面視略S字型となるように滑らかに形成したことを特徴とする背負式動力噴霧機。
【請求項2】
請求項1記載の背負式動力噴霧機において、前記背当パット(33)は、左右上部(33a・33a)と下部(33b)とに、溝によりそれぞれ分割する溝形状に構成し、該背当パット(33)の上下方向に沿って、左右略中心に溝である凹部(33c)を形成し、平面視において、左右上部(33a・33a)と下部(33b)の、左右の端部(33d・33d)が背面方向に湾曲するように形成し、該背当パット(33)の左右端部(33d・33d)によってオペレータの腰部をホールドするように形成したことを特徴とする背負式動力噴霧機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−159588(P2007−159588A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17178(P2007−17178)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【分割の表示】特願2003−276068(P2003−276068)の分割
【原出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【分割の表示】特願2003−276068(P2003−276068)の分割
【原出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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