説明

能動フィルタ装置及び電力変換装置

【課題】補償電流が小さいときに増幅器の損失を低減できる能動フィルタ装置及び電力変換装置。
【解決手段】三相交流電源1と電力変換装置3との間に設けられ、電源線1a〜1cに流れるコモンモード電流によるノイズを低減する能動フィルタ装置であり、電源線1a〜1cから電力を得て任意の直流出力電圧に可変して出力する可変直流電源30と、電源線と検出線10aとが挿通され、検出線によりコモンモード電流を検出し、コモンモード電流検出信号を出力する電流検出手段10と、可変直流電源の直流出力電圧を電源電圧とし、コモンモード電流検出信号を増幅度1で増幅し、第1コンデンサC1を介して接地相の電源線と接地との間に電流を流す増幅器11と、増幅器の出力振幅を検出する電圧検出手段D8,C3,R1,R2とを備え、電圧検出手段で検出された出力振幅検出信号に基づき前記可変直流電源の直流出力電圧を可変させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換機器に設けるフィルタ装置に関し、特に、スイッチングに起因するコモンモード電流及びEMIノイズが交流系統に流れ出る量を低減するための能動フィルタ装置及び能動フィルタ装置を入力側に設けた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体素子の特性向上に伴い、スイッチング周波数の高周波化を実現できるようになってきた。無停電電源装置や通信用電源装置に代表される電力変換装置は、高速応答や低騒音への要求、フィルタの小型化要求などからPWM制御を用いた高周波スイッチング方式が広く用いられる。
【0003】
スイッチング周波数の高周波化が進むに連れて、直流リンク部やケーブルを介して、大地に流れる高周波漏れ電流が大きくなってきている。この高周波漏れ電流は、交流系統に流れ込みノイズとなって、交流系統に接続された他の装置に対して悪影響を与え社会的な問題となってきている。例えば、無停電電源装置において特に直流側に大容量の蓄電池をフローティングで接続する場合、この蓄電池及び長くなった直流ケーブルから大地に対して大きな高周波漏れ電流が流れる傾向にあり、この高周波漏れ電流が交流系統に接続された他の交流機器に悪影響を及ぼす。
【0004】
交流系統に流出する高周波漏れ電流を低減する方法として、例えば、特許文献1に記載された能動フィルタ装置が知られている。図5は特許文献1に示す従来のノイズ低減装置及び電力変換装置の構成図である。図5において、グランドE0,E1,E2は共通の接地であるが、説明のために個々に異なる符号を付している。
【0005】
図5において、三相交流電源1と、電力変換装置3と、負荷5と、三相交流電源1及び電力変換装置3間に設けられた能動フィルタ装置7が備えられている。
【0006】
電流検出器である電流トランス20は、1ターンの電源線1a〜1cと、Nターンの検出線20aが巻回され、検出線20aによって電力変換装置3が発生するコモンモード電流ioを検出比1/N(N>1)で検出して検出電流io/Nとして出力する。コンデンサC2はコンデンサC1の(N−1)倍のアドミタンスを有する。
【0007】
トランジスタ11a,11bからなる増幅器11の入力(ベース)と出力(エミッタ)間には検出線20aが接続され、コンデンサC1には検出電流と同等の電流io/Nが流れる。また、コンデンサC2にはコンデンサC1に流れる電流io/Nの(N−1)倍の電流(N−1)io/Nが流れる。すなわち、グランドE1には検出電流io/NのN倍の電流ioが流れる。
【0008】
検出電流は電力変換装置3のコモンモード電流ioの1/N倍であるので、増幅器11に流れる電流は、コモンモード電流ioと等しくなり、交流系統に流出するコモンモード電流を打ち消すことができる。これにより、交流系統に流出するコモンモード電流を低減することができる。
【0009】
しかし、図5に示す電力変換装置3では、大きな補償電流を流す場合、コンデンサC1,C2の端子電圧が高くなることがある。この端子電圧が増幅器11の電源電圧を超えると、増幅器11が飽和し、コモンモード電流の低減効果が得られなくなる。この問題を解決するために、最大補償電流に基づき増幅器11の電源電圧を設計している。
【0010】
図6及び図7は従来の能動フィルタ装置の直流電源の具体的な構成例である。図6では、交流系統の三相交流電源1の交流電圧を単純にダイオードD7及びコンデンサC5で整流平滑して増幅器11の直流電源(動作電源)を生成している。図7では、交流系統の三相交流電源1の交流電圧をダイオードD7,D8,D9、コンデンサC5,C6、トランジスタQ7及び抵抗13cで1/2電圧整流平滑して増幅器11の直流電源を(動作電源)を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−312429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図6、図7に示す構成にあっては、増幅器11を構成するトランジスタ11a,11bに対して常に、直流電源Vc(コンデンサC5の端子電圧)のほぼ半分の電圧が印加され、トランジスタ11a,11bの発熱が大きくなる欠点があった。また、トランジスタ11a,11bの損失は、増幅器11の電源電圧(及び補償電流)に比例する。コモンモード電流を補償(打ち消す)するための補償電流が小さいときでも、大きな増幅器損失が発生し、システム全体の効率が悪くなる。
【0013】
本発明は、補償電流が小さいときに増幅器の損失を低減することができる能動フィルタ装置及び電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、3つの電源線の内の1つの電源線を接地相とする三相交流電源と前記三相交流電源から供給された交流電力を所定の交流電力又は直流電力に変換して負荷に供給し且つ筐体に接地端子を有する電力変換装置との間に設けられ、前記電源線に流れるコモンモード電流によるノイズを低減する能動フィルタ装置であって、前記電源線から電力を得て任意の直流出力電圧に可変して出力する可変直流電源と、前記電源線と検出線とが挿通され、前記検出線により前記コモンモード電流を検出し、コモンモード電流検出信号を出力する電流検出手段と、前記可変直流電源の直流出力電圧を電源電圧とし、前記コモンモード電流検出信号を増幅度1で増幅し、第1コンデンサを介して前記接地相の電源線と接地との間に電流を流す増幅器と、前記増幅器の出力振幅を検出する電圧検出手段とを備え、前記電圧検出手段で検出された出力振幅検出信号に基づき前記可変直流電源の直流出力電圧を可変させることを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、3つの電源線の内の1つの電源線を接地相とする三相交流電源と前記三相交流電源から供給された交流電力を所定の交流電力又は直流電力に変換して負荷に供給し且つ筐体に接地端子を有する電力変換装置との間に設けられ、前記電源線に流れるコモンモード電流によるノイズを低減する能動フィルタ装置であって、前記電源線から電力を得て任意の直流出力電圧に可変して出力する可変直流電源と、前記電源線と検出線とが挿通され、前記検出線により前記コモンモード電流を1/N(N>1)の検出比で検出し、コモンモード電流検出信号を出力する電流検出手段と、前記可変直流電源の直流出力電圧を電源電圧とし、前記コモンモード電流検出信号を増幅度1で増幅して、第1コンデンサを介して前記接地相の電源線と接地との間に流す増幅器と、前記第1コンデンサの(N−1)倍のアドミタンスを有し、前記増幅器と略同電位の端子から前記接地相の電源線と接地との間に流す第2コンデンサと、前記増幅器の出力振幅を検出する電圧検出手段とを備え、前記電圧検出手段で検出された出力振幅検出信号に基づき前記可変直流電源の直流出力電圧を可変させることを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、三相交流電源から供給された交流電力を所定の交流電力又は直流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置において、第1又は第2の発明の能動フィルタ装置を入力側に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電圧検出手段は、増幅器の出力振幅を検出し、電圧検出手段で検出された出力振幅検出信号に基づき可変直流電源の直流出力電圧を可変させるので、補償電流が小さいときには、増幅器の電源電圧が小さくなり、増幅器の損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の能動フィルタ装置及び電力変換装置の構成図である。
【図2】実施例1の能動フィルタ装置のコンデンサC3の両端電圧に応じて可変直流電源の直流出力電圧が可変する様子を示す図である。
【図3】実施例2の能動フィルタ装置及び電力変換装置の構成図である。
【図4】実施例3の能動フィルタ装置及び電力変換装置の構成図である。
【図5】従来の能動フィルタ装置及び電力変換装置の例1の構成図である。
【図6】従来の能動フィルタ装置の直流電源の具体的な構成例1である。
【図7】従来の能動フィルタ装置の直流電源の具体的な構成例2である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の能動フィルタ装置及び電力変換装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は実施例1の能動フィルタ装置及び電力変換装置の構成図である。図1において、三相交流電源1と、電力変換装置3と、負荷5と、三相交流電源1及び電力変換装置3間に設けられた能動フィルタ装置7−1が備えられている。
【0021】
三相交流電源1には、R相用の電源線1aとS相用の電源線1bとT相用の電源線1cとが接続され、S相用の電源線1bは接地相の電源線であり、接地されている。電力変換装置3の筐体(フレーム)3aは、接地端子Eに接続されて接地されている。電力変換装置3と筐体3aとの間には、いたるところに対地間容量を有するが、これ等をまとめて、電力変換装置3のコンデンサC0の負極と接地端子Eとの間の対地間容量4で示すことにする。
【0022】
R相用,S相用,T相用電源線1a〜1cは、能動フィルタ装置7−1の端子R1,S1,T1のそれぞれに接続されている。能動フィルタ装置7−1は、電流トランス10(電流検出手段)と、NPNトランジスタ11aとPNPトランジスタ11bからなる増幅器11と、低周波分離コンデンサC1(第1コンデンサ)と、ダイオードD7、コンデンサC5、非絶縁の可変直流電源30、ダイオードD8、コンデンサC3、抵抗R1,R2を有している。
【0023】
非絶縁の可変直流電源30は、入力端子、出力端子、共通端子及び出力電圧調整端子を備え、直流入力電圧を入力端子と共通端子間に入力して、出力電圧調整端子に入力される信号に応じた直流出力電圧を出力端子と共通端子間に出力する。この可変直流電源30は、例えば、チョッパ型コンバータ等で構成される。
【0024】
電流トランス10は、トロイダルコアに主電源線であるR相用,S相用,T相用電源線1a〜1cがそれぞれ1T(ターン)巻回される(貫通される)とともに、検出線10aが1T巻回されている。
【0025】
ダイオードD7のアノードは、R相用の電源線1aに接続され、ダイオードD7のカソードは、可変直流電源30の入力端子とコンデンサC5の一端に接続されている。コンデンサC5の他端は、接地相の電源線1bとトランジスタ11bのコレクタと可変直流電源30の共通端子とに接続されている。コンデンサC5の両端は可変直流電源30の入力端子と共通端子との間に接続されている。可変直流電源30はコンデンサC5の直流電圧が直流入力電圧として印加される。
【0026】
トランジスタ11aのコレクタは、可変直流電源30の出力端子に接続され、トランジスタ11aのベースは、トランジスタ11bのベースと検出線10aの一端と低周波分離コンデンサC1の一端に接続され、低周波分離コンデンサC1の他端は、接地端子Eに接続されている。
【0027】
トランジスタ11aのエミッタは、トランジスタ11bのエミッタと検出線10aの他端とダイオードD8のアノードに接続され、ダイオードD8のカソードはコンデンサC3の一端と抵抗R1の一端に接続されている。抵抗R1の他端は抵抗R2を介してコンデンサC3の他端とトランジスタ11bのコレクタとに接続されている。
【0028】
抵抗R1と抵抗R2との接続点は、可変直流電源30の出力調整端子に接続されている。ダイオードD8、コンデンサC3、抵抗R1,R2からなる電圧検出手段は、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧を増幅器11の出力振幅として検出し、検出された出力振幅検出信号に応じて可変直流電源30の直流出力電圧Vrを可変させる。
【0029】
また、電流トランス10を挿通した電源線1a,1b,1cには、それぞれ対応してチョークコイルL1,L2,L3が直列に接続されている。電力変換装置3は、チョークコイルL1,L2,L3と、6個のダイオードD1〜D6と、6個のIGBTからなるスイッチング素子Q1〜Q6と、コンデンサC0とを有する。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との直列回路の両端と、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との直列回路の両端と、スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との直列回路の両端とは、コンデンサC0の両端及び負荷5に接続されている。
【0030】
スイッチング素子Q1〜Q6のコレクタ−エミッタ間には、それぞれ対応してダイオードD1〜D6が接続されている。ダイオードD1とダイオードD2との接続点にはチョークコイルL1が接続され、ダイオードD3とダイオードD4との接続点にはチョークコイルL2が接続され、ダイオードD5とダイオードD6との接続点にはチョークコイルL3が接続されている。スイッチング素子Q1〜Q6の各々のゲート端子は、図示しない制御回路に接続され、この制御回路によりスイッチング素子Q1〜Q6のオン/オフが制御され、電力変換装置3は、三相交流電源1から供給された交流電力を所定の直流電力に変換して負荷5に供給するコンバータ(交流直流変換装置)として動作する。
【0031】
なお、電力変換装置としては、三相交流電源1から供給された交流電力を所定の交流電力に変換して負荷5に供給するインバータを用いても良い。
【0032】
次に、図1を参照しながら実施例1の能動フィルタ装置の動作を説明する。まず、電流トランス10において、1Tの電源線1a〜1cにコモンモード電流iが流れると、1Tの検出線10aにも、コモンモード電流と同じ電流iが流れる。
【0033】
増幅器11は、検出線10aに流れるiを増幅度1で増幅して、低周波分離コンデンサC1を介してグランドE1に流す。このとき、トランジスタ11a,11bのエミッタの出力をダイオードD8及びコンデンサC3で整流平滑し、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧を増幅器11の出力振幅として検出し、検出された出力振幅検出信号に応じて可変直流電源30の直流出力電圧Vrを可変させる。従って、コモンモード電流を打ち消すための補償電流が小さいときには、増幅器11の電源電圧が小さくなり、増幅器11の損失を低減することができる。
【0034】
図2に実施例1の能動フィルタ装置のコンデンサC3(抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧に対応)の両端電圧に応じて可変直流電源30の直流出力電圧Vrが可変する様子を示す。図2に示すように、コンデンサC3の電圧に比例して、可変直流電源30の直流出力電圧Vrが直線的に変化している。
【実施例2】
【0035】
図3は実施例2の能動フィルタ装置及び電力変換装置の構成図である。図3に示す実施例2の能動フィルタ装置7−2は、図1に示す実施例1の能動フィルタ装置7−1に対して、電流トランス20にNターン(N>1で例えば10ターン)の検出線20aが巻回されている。
【0036】
トランジスタ11a,11bのエミッタと接地端子Eとの間に低周波分離コンデンサC2が接続されている。低周波分離コンデンサC2は、低周波分離コンデンサC1のアドミタンスの9倍のアドミタンスを有する。即ち、低周波分離コンデンサC2は、低周波分離コンデンサC1の容量の9倍の容量値を持つ。
【0037】
このように構成された実施例2の能動フィルタ装置によれば、まず、電流トランス20において、1Tの電源線1a〜1cにコモンモード電流iが流れると、10Tの検出線20aには、コモンモード電流の10分の1の電流i=i/10が流れる。
【0038】
増幅器11は、低周波分離コンデンサC1に流す電流iを電流i/10に等しくなるように電圧を制御するアンプ部V1と、アンプ部V1の電圧と同一電圧を有し、低周波分離コンデンサC1の9倍の容量を持つ低周波分離コンデンサC2に電流i=9i=9i/10を流すためのアンプ部V2とを有することと等価である。
【0039】
即ち、アンプ部V1は、検出線20aで検出したコモンモード電流の10分の1の電流i/10を増幅度1で増幅して、低周波分離コンデンサC1を介してグランドE1に流す。また、アンプ部V2は、低周波分離コンデンサC1に流れる電流i=i/10の9倍の電流i=9i=9i/10を周波分離コンデンサC2を介してグランドE1に流す。
【0040】
従って、グランドE1には、コモンモード電流iと同一値の電流iが流れるので、交流系統に流出するコモンモード電流を低減できる。このため、発生するノイズを低減し、安価で且つ小型化を図ることができる。
【0041】
また、トランジスタ11a,11bのエミッタの出力をダイオードD8及びコンデンサC3で整流平滑し、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧を増幅器11の出力振幅として検出し、検出された出力振幅検出信号に応じて可変直流電源30の直流出力電圧Vrを可変させる。従って、コモンモード電流を打ち消すための補償電流が小さいときには、増幅器11の電源電圧が小さくなり、定常時の増幅器11の損失を低減することができる。
【実施例3】
【0042】
図4は実施例3の能動フィルタ装置及び電力変換装置の構成図である。図4に示す実施例3の能動フィルタ装置7−3は、図3に示す実施例2の能動フィルタ装置7−2に対して、コンデンサC1,C2に代えて抵抗R3,R4、コンデンサC4を設けたものであり、抵抗R3,R4を直列に接続してトランジスタ11a,11bのベースとエミッタ間に接続し、抵抗R3,R4の接続点と接地端子Eとの間にコンデンサC4を接続している。
【0043】
抵抗R4は、抵抗R3のアドミタンス(抵抗値の逆数)の9倍のアドミタンスを有する。即ち、抵抗R4は、抵抗R3の1/9倍の抵抗値を持つ。
【0044】
このように構成された実施例3の能動フィルタ装置によれば、まず、電流トランス20において、1Tの電源線1a〜1cにコモンモード電流iが流れると、10Tの検出線20aには、コモンモード電流の10分の1の電流i=i/10が流れる。
【0045】
増幅器11は、抵抗R3に流す電流iを電流i/10に等しくなるように電圧を制御するアンプ部V1と、アンプ部V1の電圧と同一電圧を有し、抵抗R3の1/9倍の抵抗値を持つ抵抗R4に電流i=9i=9i/10を流すためのアンプ部V2とを有することと等価である。
【0046】
即ち、アンプ部V1は、検出線20aで検出したコモンモード電流の10分の1の電流i/10を増幅度1で増幅して、抵抗R3とコンデンサC4を介してグランドE1に流す。また、アンプ部V2は、抵抗R3に流れる電流i=i/10の9倍の電流i=9i=9i/10を抵抗R4とコンデンサC4を介してグランドE1に流す。
【0047】
従って、グランドE1には、コモンモード電流iと同一値の電流iが流れるので、交流系統に流出するコモンモード電流を低減できる。このため、発生するノイズを低減し、安価で且つ小型化を図ることができる。
【0048】
また、トランジスタ11a,11bのエミッタの出力をダイオードD8及びコンデンサC3で整流平滑し、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧を増幅器11の出力振幅として検出し、検出された出力振幅検出信号に応じて可変直流電源30の直流出力電圧Vrを可変させる。従って、コモンモード電流を打ち消すための補償電流が小さいときには、増幅器11の電源電圧が小さくなり、増幅器11の損失を低減することができる。
【0049】
なお、本発明は実施例1乃至実施例3の能動フィルタ装置に限定されるものではない。実施例2において、コンデンサC1に直列に抵抗R3を接続し、コンデンサC2に直列に抵抗R4を接続するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、無停電電源装置や通信用電源装置に代表される電力変換装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 三相交流電源
1a R相用電源線
1b S相用電源線
1c T相用電源線
3 電力変換装置
4 対地間容量
5 負荷
7,7a,7b,7−1,7−2,7−3 能動フィルタ装置
10,20 電流トランス
10a,20a 検出線
30 可変直流電源
11a,11b トランジスタ
R1,R2,R3,R4 抵抗
C1,C2 低周波分離コンデンサ
C0,C3,C4,C5,C6 コンデンサ
Q1〜Q6 スイッチング素子
D1〜D8 ダイオード
L1〜L3 チョークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの電源線の内の1つの電源線を接地相とする三相交流電源と前記三相交流電源から供給された交流電力を所定の交流電力又は直流電力に変換して負荷に供給し且つ筐体に接地端子を有する電力変換装置との間に設けられ、前記電源線に流れるコモンモード電流によるノイズを低減する能動フィルタ装置であって、
前記電源線から電力を得て任意の直流出力電圧に可変して出力する可変直流電源と、
前記電源線と検出線とが挿通され、前記検出線により前記コモンモード電流を検出し、コモンモード電流検出信号を出力する電流検出手段と、
前記可変直流電源の直流出力電圧を電源電圧とし、前記コモンモード電流検出信号を増幅度1で増幅し、第1コンデンサを介して前記接地相の電源線と接地との間に電流を流す増幅器と、
前記増幅器の出力振幅を検出する電圧検出手段と、を備え、
前記電圧検出手段で検出された出力振幅検出信号に基づき前記可変直流電源の直流出力電圧を可変させることを特徴とする能動フィルタ装置。
【請求項2】
3つの電源線の内の1つの電源線を接地相とする三相交流電源と前記三相交流電源から供給された交流電力を所定の交流電力又は直流電力に変換して負荷に供給し且つ筐体に接地端子を有する電力変換装置との間に設けられ、前記電源線に流れるコモンモード電流によるノイズを低減する能動フィルタ装置であって、
前記電源線から電力を得て任意の直流出力電圧に可変して出力する可変直流電源と、
前記電源線と検出線とが挿通され、前記検出線により前記コモンモード電流を1/N(N>1)の検出比で検出し、コモンモード電流検出信号を出力する電流検出手段と、
前記可変直流電源の直流出力電圧を電源電圧とし、前記コモンモード電流検出信号を増幅度1で増幅して、第1コンデンサを介して前記接地相の電源線と接地との間に流す増幅器と、
前記第1コンデンサの(N−1)倍のアドミタンスを有し、前記増幅器と略同電位の端子から前記接地相の電源線と接地との間に流す第2コンデンサと、
前記増幅器の出力振幅を検出する電圧検出手段と、を備え、
前記電圧検出手段で検出された出力振幅検出信号に基づき前記可変直流電源の直流出力電圧を可変させることを特徴とする能動フィルタ装置。
【請求項3】
前記第1コンデンサに代えて第1抵抗を接続し、前記第2コンデンサに代えて第2抵抗を接続し、前記第2抵抗は、前記第1抵抗の(N−1)倍のアドミタンスを有することを特徴とする請求項2記載の能動フィルタ装置。
【請求項4】
三相交流電源から供給された交流電力を所定の交流電力又は直流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置において、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の能動フィルタ装置を入力側に設けたことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−259247(P2010−259247A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107621(P2009−107621)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】