説明

脂肪族アルコールのアミノ化触媒及びその触媒を用いたアミンの製造方法

【課題】特に脂肪族アルコールから、脂肪族1級アミンを高い選択率で製造する触媒、及びこの触媒を用いて脂肪族1級アミンを高選択に製造する方法を提供する。
【解決手段】
1〜50nmの範囲の平均細孔径を有する結晶性多孔体と(A)ルテニウム、白金、ニッケル、コバルト及び銅の中から選ばれる少なくとも1種の金属成分とからなる、脂肪族アルコールのアミノ化触媒、及び前記アミノ化触媒の存在下、直鎖状若しくは分岐を有する炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールを、アンモニア及び水素と接触させる、脂肪族アミンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性多孔体に活性金属成分が分散してなるアミノ化触媒、及び該アミノ化触媒を用い、脂肪族アルコールから高選択に脂肪族1級アミンを得る脂肪族アミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族1級アミンは、家庭用、工業用分野において重要な化合物であり、界面活性剤、繊維処理剤等の製造原料などとして用いられている。
脂肪族1級アミンの製造方法としては、様々な方法があるが、その中の1つとして、触媒の存在下に、脂肪族1級アルコールを、アンモニア及び水素と接触させる方法が知られている。この接触反応においては、触媒として、ニッケル、銅系触媒や貴金属系触媒が用いられる。これらの技術においては、いずれも触媒には、担体として、通常の多孔性酸化物が用いられている。
一方、平均細孔径が1〜50nm程度の細孔を多数有する結晶性多孔体として、例えばメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミナなどのメソポーラス金属酸化物、メソポーラスアルミノリン酸塩などが知られている。
このような結晶性多孔体は、その細孔の均一性を利用して、選択性のよい触媒をはじめとして、種々の物理化学的な機能をもつ材料として期待されている。
結晶性多孔体を合成触媒に用いた例としては、金属を含有し、メソ孔を有する多孔質物質を含む、ポリエステル製造用触媒、並びにこの触媒を用いて、ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとジアルコールとからポリエステルを製造する方法(例えば、特許文献1参照)、あるいはメソポーラス化合物からなる担体に、パラジウムを担持したメタノール合成用触媒、並びにこの触媒を用いて、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素とを気相で反応させてメタノールを合成する方法(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
しかしながら、これらの技術は、それぞれポリエステル及びメタノールを得るためのものであり、脂肪族アルコールからアミンを得る技術ではない。
【0003】
【特許文献1】特開2004−331736号公報
【特許文献2】特開2001−79398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に飽和又は不飽和の脂肪族アルコールから、脂肪族1級アミンを高選択に製造し得る脂肪族アルコールのアミノ化触媒、及び前記アミノ化触媒を用い、脂肪族アルコールから、高選択に脂肪族1級アミンを得る、脂肪族アミンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、1〜50nmの範囲の平均細孔径を有する結晶性多孔体に特定の金属成分とからなる触媒が、脂肪族アルコールのアミノ化触媒として前記目的に適合し得ること、そしてこのアミノ化触媒を用いることにより、脂肪族アルコールから脂肪族1級アミンを高選択に製造し得ることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)1〜50nmの範囲の平均細孔径を有する結晶性多孔体と(A)ルテニウム、白金、ニッケル、コバルト及び銅の中から選ばれる少なくとも1種の金属成分とからなる、脂肪族アルコールのアミノ化触媒、及び
(2)上記(1)の脂肪族アルコールのアミノ化触媒の存在下、直鎖状又は分岐若しくは環を有する炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールを、アンモニア及び水素と接触させる、脂肪族アミンの製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脂肪族1級アミンを高選択に製造し得る脂肪族アルコールのアミノ化触媒を提供することができる。また、このアミノ化触媒を用いることにより、脂肪族アルコールから脂肪族1級アミンを高選択に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のアミノ化触媒は、1〜50nmの範囲の平均細孔直径を有する結晶性多孔体と(A)ルテニウム、白金、ニッケル、コバルト及び銅の中から選ばれる少なくとも1種の金属成分(以下、金属成分Aと称することがある)とからなる触媒である。本願の金属成分Aは、アミノ化触媒として汎用の金属成分であり、結晶性多孔体の表面に担持しても、骨格中に内包して存在してもよい。
【0009】
本発明における結晶性多孔体としては、例えばアルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ及びタンタルなどの金属の酸化物並びに活性炭の中から選ばれる少なくとも1種を含有しているものを挙げることができるが、得られるアミノ化触媒の性能の観点から、アルミニウム、ケイ素、チタン及びジルコニウムの酸化物並びに活性炭の中から選ばれる少なくとも1種を含有しているものが好ましく、アルミニウム、ケイ素及びジルコニウムの酸化物の中から選ばれる少なくとも1種を含有しているものがさらに好ましい。
また、当該結晶性多孔体は、結晶性を高める観点から、前記化合物と共にリン又は硫黄の化合物が含まれても良い。リン又は硫黄の化合物の含有量は、結晶性多孔体全量に基づき、リン又は硫黄元素として0.01〜20質量%程度、好ましくは0.1〜15質量%である。
結晶性多孔体におけるリンの含有量は、該多孔体を湿式分解処理後、ICP発光分析で測定する。また、硫黄の含有量は、燃焼/IC法により測定する。
【0010】
本発明においては、当該結晶性多孔体の細孔径は、得られるアミノ化触媒の選択性などの観点から、1〜50nmであり、1〜10nmの範囲が好ましい。
当該結晶性多孔体に、必須金属成分として分散してなる前記金属成分Aの含有量は、触媒活性、選択性及び経済性などの観点から、触媒全量に基づき、金属元素として0.1〜30質量%程度、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.2〜10質量%である。
触媒中の金属成分Aの含有量測定において、ルテニウムの場合は触媒を硫酸水素アンモニウムで融解処理後、ICP発光分析で測定する。また、ルテニウム以外の金属成分の場合は、結晶性多孔体中に珪素が含まない触媒では該触媒を湿式分解(硫酸−過酸化水素)処理し、珪素が含む触媒では該触媒をアルカリ溶融処理して、ICP発光分析で測定する。
【0011】
本発明で用いる1〜50nmの範囲の平均細孔直径を有する結晶性多孔体は、従来公知の方法で製造することができる。当該結晶性多孔体が金属酸化物で構成される場合には、前記金属酸化物源である被加水分解性金属化合物を、テンプレート剤の存在下、ゾル−ゲル法及び/又は水熱合成法により反応させて固体(結晶性多孔体前駆体)を生成させ、生成した上記固体を焼成させてテンプレート剤を除去することにより製造することができる。
前記テンプレート剤は、多孔体構造の鋳型となるもので特に制限はなく、従来テンプレート剤として使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宣選択して用いることができるが、本発明においては、例えばハロゲン化C6〜C22アルキルトリメチルアンモニウム、C12アルキル硫酸ナトリウム及びC6〜C22脂肪酸が好適である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このテンプレート剤の使用量としては、前記被加水分解性金属化合物に対し、通常0.01〜30倍モル、好ましくは0.05〜10倍モルの範囲で選定される。
【0012】
前記被加水分解性金属化合物としては、加水分解性基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシル基が金属原子に結合したアルコキシド、金属の塩化物や臭化物などの金属のハロゲン化物、金属ゾルなどが挙げられる。
ゾルーゲル法による結晶性多孔体を製造するには、例えば以下の方法を用いることができる。まず、水性有機溶媒に被加水分解性金属化合物及びテンプレート剤を溶解させて溶液とし、この溶液中で前記被加水分解性金属化合物を水と反応させて加水分解処理し、生成したゾルを加熱して固体(結晶性多孔体前駆体)を生成させ、この固体を焼成してテンプレート剤を除去することで、結晶性多孔体を製造する。
【0013】
この際用いる水性溶媒としては、水と混和する有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられるが、これらの中でメタノール、エタノ―ル、n−プロパノール及びイソプロパノールが好ましい。
加水分解処理は、通常0℃以上、水性有機溶媒の沸点以下、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜90℃の温度で行われる。また、加水分解処理に用いる水の量については、加水分解反応が十分に進行し得る量であればよく、特に制限はない。
【0014】
一方、水熱合成法による結晶性多孔体を製造するには、例えば、水と被加水分解性金属化合物とテンプレート剤との混合物を、高温下で加熱処理し、反応させて固体(結晶性多孔体前駆体)を生成させ、この固体を焼成してテンプレート剤を除去する方法を用いることができる。高温下での加熱処理条件としては、温度は、好ましくは80〜400℃、より好ましくは100〜250℃である。水熱合成法に用いる水の量については、水熱合成反応が十分に進行し得る量であればよく、特に制限はない。
前記のゾルーゲル法及び/又は水熱合成法により得られた固体(メソポーラス物質前駆体)を焼成処理して、テンプレート剤を除去する温度としては、通常200〜1200℃、好ましくは300〜1000℃、より好ましくは350〜800℃である。
【0015】
前記の金属成分Aを当該結晶性多孔体の表面に担持及び/又は骨格中に内包させる手段については特に制限はなく、従来公知の手段、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法、金属ドープ法などの中から、適宜選択することができる。
前記金属成分を当該結晶性多孔体の表面に担持及び/又は骨格中に内包させる場合、前記の手段に応じて、予め前記のようにして当該結晶性多孔体を形成し、これに所望の金属成分を担持及び/又は内包させて、本発明の触媒を得る方法、あるいは当該結晶性多孔体の形成過程に金属成分源となる所望の金属化合物を加え、当該結晶性多孔体に金属成分が担持及び/又は内包してなる本発明の触媒を得る方法を採用することができる。
前記金属成分A源となる金属化合物としては、例えば塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アミン錯体などを挙げることができる。
【0016】
当該結晶性多孔体の形成過程に、金属成分A源となる金属化合物を加えて、当該結晶性多孔体に金属成分を担持及び/又は内包させる方法においては、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法を採用する場合、ゾルーゲル法及び/又は水熱合成法で得られた未焼成固体(結晶性多孔体前駆体)の段階に加えることが好ましく、金属ドープ法を採用する場合、ゾルーゲル法及び/又は水熱合成法を実施する段階で加えることが好ましい。
【0017】
また、予め前述の方法で結晶性多孔体を形成し、これに金属成分を担持させる方法は、例えば含浸法、沈殿法、イオン交換法を採用する場合に適用することができる。
前記のように、沈殿法やイオン交換法を採用し、最終焼成処理が必要でない場合、そのまま使用することもできるが、触媒調製液中で還元剤として、例えばホルムアルデヒド、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムなどを用い、必要に応じて加熱し、20〜95℃程度、好ましくは60〜95℃の温度で還元処理を行っても良い。
還元処理後、固液分離して得られた固形物を充分に水洗後、好ましくは140℃以下の温度で常圧又は減圧下で乾燥処理することにより、目的の触媒を得ることができる。
一方、最終焼成処理を行った場合には、そのまま使用することもできるが、水素気流中において、150〜500℃程度の温度で還元処理を行っても良い。
【0018】
具体的には、結晶性多孔体に金属成分を担持及び/又は内包させる手段として、金属ドープ法を採用する場合には、前述したゾルーゲル法及び/又は水熱合成法で固体(結晶性多孔体前駆体)を形成させる過程に、金属成分源となる金属化合物を加え、得られた結晶性多孔体前駆体を焼成処理し、次いで必要に応じて還元処理する操作を行うことができる。
また、イオン交換法を採用する場合には、ゾルーゲル法及び/又は水熱合成法で形成された結晶性多孔体前駆体に、金属成分源となる金属化合物を加え、該前駆体中のテンプレート剤、例えば4級アンモニウム塩と、金属カチオンをイオン交換させる。この場合、焼成処理は必ずしも必要ではなく、また、還元処理を必要に応じて行うことができる。
【0019】
沈殿法を採用する場合には、ゾルーゲル法及び/又は水熱合成法で形成された結晶性多孔体前駆体に、金属成分源となる金属化合物を加え、pHを7〜12程度に調整して金属成分を加水分解により沈殿させ、前記の前駆体に担持及び/又は内包させたのち、焼成処理し、次いで還元処理する操作を行うことができる。あるいは、予め得られた結晶性多孔体に、前記と同様に沈殿法により金属成分を担持及び/又は内包させたのち、焼成処理を行わずに、必要に応じて還元処理を行うことができる。
含浸法を採用する場合、ゾルーゲル法及び/又は水熱合成法で形成された結晶性多孔体前駆体又は結晶性多孔体に、金属成分源となる金属化合物を含浸・担持及び/又は内包させたのち、焼成処理し、次いで必要に応じて還元処理する操作を行うことができる。
このようにして、本発明の脂肪族アルコールのアミノ化触媒を得ることができる。このアミノ化触媒は、特に飽和又は不飽和の脂肪族アルコールから、脂肪族1級アミンを高選択に製造するのに、好適に用いることができる。
【0020】
本発明の脂肪族アミンの製造方法は、前記本発明のアミノ化触媒の存在下、直鎖状又は分岐若しくは環を有する炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールを、アンモニア及び水素と接触させることにより、脂肪族アミンを製造する方法である。
本発明において、原料として用いられる脂肪族アルコールは、炭素数6〜22の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を有するものである。
【0021】
このような脂肪族アルコールの具体例としては、ヘキシルアルコール、イソヘキシルアルコール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、3,5,5−トリメチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、3,7−ジメチルオクチルアルコール、2−プロピルヘプチルアルコール、ラウリルアルコールなどのドデシルアルコール類、ミリスチルアルコールなどのテトラデシルアルコール類、ヘキサデシルアルコール類、ステアリルアルコールなどのオクタデシルアルコール類、ベヘニルアルコール、イコシルアルコール類、オレイルアルコール、ゲラニオール、シクロペンチルメタノール、シクロペンテニルメタノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキセニルメタノールなどを挙げることができる。
本発明において、前記脂肪族アルコールとしては、炭素数6〜22の直鎖状脂肪族アルコールが好ましい。
【0022】
本発明のおける前記脂肪族アルコールとアンモニア及び水素との接触反応は、バッチタイプでは密閉式、或いは流通式で行ってもよく、又は固定床流通式で行ってもよい。触媒の使用量は、反応方式にもよるが、バッチタイプの場合、良好な反応性及び選択性を得る観点から、原料の脂肪族アルコールに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。また、良好な転化率や選択性及び触媒劣化の抑制などの観点から、反応温度は120〜280℃程度、好ましくは180〜250℃であり、反応圧力は、通常常圧〜50MPaG程度、好ましくは0.5〜30MPaGである。
また転化率及び1級アミンの選択性などの観点から、アンモニア/脂肪族アルコールのモル比は、通常0.5〜20程度、好ましくは2〜10である。
このようにして、脂肪族アルコールから、脂肪族1級アミンを高選択に製造することができる。
【実施例】
【0023】
調製例1
第四級アンモニウム塩として、デシルトリメチルアンモニウムブロミド20.4gを40℃にて攪拌しながら、蒸留水64.2gに溶解させた。該水溶液に、コロイダルシリカ「スノーテックス20」(日産化学工業(株)製、SiO2として約20質量%含有)30.7gと水酸化ナトリウム水溶液14.0g(水酸化ナトリウムとして1.16g)を加えて2時間攪拌した。次にこのシリカ源含有懸濁液を静置条件下、140℃、48時間加熱処理した。その後、析出物を濾過、水洗後、80℃で乾燥させ、水熱合成乾燥粉末約4gを得た。
次いで、得られた乾燥粉末3gを蒸留水30gに加えて室温、攪拌下に塩化ルテニウム5水和物0.18gと硝酸ニッケル6水和物0.48gを蒸留水30gに溶解させた水溶液を徐々に滴下した。滴下を終了した後、更に1時間攪拌してから80℃に加熱して同温度で20時間静置した。その懸濁液を冷却した後、濾過、水洗を行って80℃で乾燥した。この乾燥粉末を600℃で6時間焼成した後、水素流通下420℃で3時間還元して、平均細孔径1.7nmを持つシリカ多孔体に担持した2質量%ルテニウム−3質量%ニッケル触媒Aを約3g得た。
【0024】
調製例2
第四級アンモニウム塩として、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド22.5gを用いた以外は調製例1と同様にして、平均細孔径2.1nmを持つシリカ多孔体に担持した2質量%ルテニウム−3質量%ニッケル触媒Bを約3g得た。
【0025】
比較調製例1
シリカゲル3gを蒸留水80gに加えて室温、攪拌下に塩化ルテニウム5水和物0.18gと硝酸ニッケル6水和物0.48gを蒸留水30gに溶解させた水溶液を徐々に滴下した。滴下を終了した後、更に1時間攪拌してから80℃に加熱して同温度で20時間静置した。その懸濁液を冷却した後、濾過、水洗を行って80℃で乾燥した。この乾燥粉末を600℃で6時間焼成した後、水素流通下420℃で3時間還元して、シリカゲルに担持した2質量%ルテニウム−3質量%ニッケル触媒Cを約3g得た。
【0026】
調製例3
第四級アンモニウム塩として、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド24.5gを用いた以外は調製例1と同様の水熱合成を行って、水熱合成乾燥粉末4gを得た。
次いで、得られた乾燥粉末3gをイオン交換水51gに分散させ、そこに塩化ルテニウム5水和物0.18gと硝酸ニッケル6水和物0.48gをイオン交換水12gに溶解させた水溶液を加えて攪拌下で60℃まで加熱した。その懸濁液(60℃)を10時間攪拌した後、沈殿剤としてアンモニア水を滴下して懸濁液のpHを11にして加水分解させ、2時間熟成した。その懸濁液に37質量%ホルマリン溶液1.4gを加えて90℃まで加熱し、1時間還元した後、得られた粉末を濾過、水洗し、60℃、13kPaで乾燥して平均細孔径2.4nmを持つシリカ多孔体に担持した2質量%ルテニウム−3質量%ニッケル触媒Dを約3g得た。
【0027】
調製例4
公知文献(D.Zaho et.al.,Chem.Commun.,1009(1997))を参考にしてリン含有アルミナ多孔体を調製した。即ち、イオン交換水108.7gにヘキサデシルアンモニウムクロリド2.90gを加え、該水溶液に水酸化アルミニウム3.5gと85%燐酸4.2gをイオン交換水15gに溶解させた水溶液を添加して室温で30分間攪拌した。そこに25%ヒドロキシトリメチルアンモニウム水溶液を、pH9.5になるまで加えて沈殿を生成させ、室温で72時間攪拌した。その懸濁液を濾過、水洗し、70℃で常圧乾燥した。この乾燥粉末を400℃で毎時2.5Nm3の窒素流通下で1時間焼成後、空気流通に切り替えて6時間焼成して、平均細孔径2.6nmを持つ6質量%リン含有のアルミナ多孔体を約4g得た。
次いで、得られたリン含有アルミナ多孔体3gをイオン交換水51gに分散させ、そこに塩化ルテニウム5水和物0.18gをイオン交換水12gに溶解させた水溶液を加えて攪拌下で60℃まで加熱した。その懸濁液(60℃)を10時間攪拌した後、沈殿剤としてアンモニア水を滴下して懸濁液のpHを11にして加水分解させ、2時間熟成した。その懸濁液に37質量%ホルマリン溶液1.4gを加えて90℃まで加熱し、1時間還元した後、得られた粉末を濾過、水洗し、60℃、13kPaで乾燥して平均細孔径2.6nmを持つアルミナ多孔体に担持した2質量%ルテニウム触媒Eを約3g得た。
【0028】
調製例5
公知文献(U.Ciesla et.al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,35,541(1996))を参考にしてリン含有ジルコニア多孔体を調製した。すなわち、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド5gをイオン交換水170gに溶解し、該水溶液に硫酸ジルコニウム4水和物9.1gをイオン交換水30gに溶解させた溶液を滴下しながら加え、室温で2時間攪拌した。その懸濁液をオートクレーブに移し、静置条件下、100℃で2日間加熱処理した。得られた析出物を濾過、水洗し、100℃で乾燥した。該乾燥粉末を燐酸水溶液(0.87mol/L)に加えて2時間攪拌し、濾過、水洗後、100℃で乾燥した。この乾燥粉末を400℃、5時間焼成して平均細孔径2.1nmをもつ4質量%リン含有のジルコニア多孔体を約3g得た。
次いで、得られたリン含有ジルコニア多孔体3gをイオン交換水51gに分散させ、そこに塩化ルテニウム5水和物0.18gをイオン交換水12gに溶解させた水溶液を加えて攪拌下で60℃まで加熱した。その懸濁液(60℃)を10時間攪拌した後、沈殿剤としてアンモニア水を滴下して懸濁液のpHを11にして加水分解させ、2時間熟成した。その懸濁液に37質量%ホルマリン溶液1.4gを加えて90℃まで加熱し、1時間還元した後、得られた粉末を濾過、水洗し、60℃、13kPaで乾燥して平均細孔径2.1nmを持つアルミナ多孔体に担持した2質量%ルテニウム触媒Fを約3g得た。
【0029】
実施例1
内容積500mlの電磁誘導回転攪拌式オートクレーブに、ステアリルアルコール150g(0.55mol)、調製例1で得た触媒A3g(2.0質量%対原料アルコール)を仕込み、アンモニア47g(2.76mol)と、全圧が2.3MPaG(室温)になるように水素(0.17mol)を圧入した。次いで攪拌(1000r/min)を行って反応温度220℃まで昇温した。同温度での初期最高圧力は17MPaGであった。全圧力を17MPaGで一定になるように水素を連続追加して反応を行った。得られた反応生成物は触媒を濾別した後、ガスクロマトグラフィーで組成分析を行った。結果を第1表に示す。
【0030】
実施例2及び比較例1
実施例1で触媒Aの代わりに、調製例2で得た触媒B、又は比較調製例1で得た触媒Cを用いて、第1表に示す反応温度220℃での初期最高圧力で一定になるように水素を連続追加した以外は、実施例1と同様に反応を行い、得られた反応生成物について実施例1と同様に分析を行った。結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例3〜5
実施例1において、触媒Aの代わりに、調製例3、4及び5でそれぞれ得た触媒D、E及びFの各々を用いて第2表に示す反応温度220℃での初期最高圧力で一定になるように水素を追加した以外は、実施例1と同様の反応を行い、得られた反応生成物は実施例1と同様の分析を行った。結果を第2表に示す。
【0033】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の脂肪族アルコールのアミノ化触媒は、1〜50nmの範囲の平均細孔直径を有する結晶性多孔体に特定の活性金属成分を分散してなる触媒であって、高級脂肪族アルコールから、脂肪族1級アミンを高選択に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜50nmの範囲の平均細孔径を有する結晶性多孔体と(A)ルテニウム、白金、ニッケル、コバルト及び銅の中から選ばれる少なくとも1種の金属成分とからなる、脂肪族アルコールのアミノ化触媒。
【請求項2】
(A)金属成分の含有量が、金属元素として、触媒全量に基づき0.1〜30質量%である請求項1記載の脂肪族アルコールのアミノ化触媒。
【請求項3】
結晶性多孔体が、アルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ及びタンタルの酸化物、並びに活性炭の中から選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項1又は2に記載の脂肪族アルコールのアミノ化触媒。
【請求項4】
結晶性多孔体の平均細孔径が1〜10nmである請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪族アルコールのアミノ化触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアミノ化触媒の存在下、直鎖状若しくは分岐若しくは環を有する炭素数6〜22の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールをアンモニア及び水素と接触させる、脂肪族アミンの製造方法。
【請求項6】
脂肪族アルコールとアンモニア及び水素との接触反応を、温度120〜280℃の条件で行う請求項5記載の脂肪族アミンの製造方法。
【請求項7】
脂肪族アルコールとアンモニア及び水素との接触反応を、圧力常圧〜50MPaGの条件で行う請求項5又は6に記載の脂肪族アミンの製造方法。
【請求項8】
脂肪族アルコールとアンモニア及び水素との接触反応を、アンモニア/脂肪族アルコールのモル比0.5〜20の条件で行う請求項5〜7のいずれかに記載の脂肪族アミンの製造方法。

【公開番号】特開2007−175662(P2007−175662A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379667(P2005−379667)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】