説明

脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレット及びその製造方法

【課題】溶融成形加工時において着色が少ない熱安定性に優れたポリヒドロキシカルボン酸ペレット、並びに、工業的に安定に該ペレットを製造する方法を提供すること。
【解決手段】溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法と当該製造方法により得られるペレット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレット及びその製造方法に関する。更に詳しくは、高い熱安定性を有し、溶融成形加工時においても着色が少ない脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸、ポリグリコール酸、或いはこれらの共重合体に代表されるヒドロキシカルボン酸から製造される脂肪族ポリエステルは、生分解性の高分子として注目され、例えば、縫合糸等の医用材料、医薬、農薬、肥料等の徐放性材料等多方面に利用されている。特にポリグリコール酸およびグリコール酸構造単位を主体とするグリコール酸共重合体は、バリアー性に優れるという特徴を有し、フィルム等包装材料用途に利用する提案が多数報告されている。
【0003】
しかしながら、これらポリヒドロキシカルボン酸は、融点より高い溶融温度で成形加工等に供した場合、融点と分解温度との差が小さく、着色が著しい等、ポリヒドロキシカルボン酸の熱安定性が問題となる傾向にあった。
このため、熱安定性を改善する検討が多くなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリヒドロキシカルボン酸の末端官能基を特定の化合物で反応させて熱安定性を向上させる方法が検討されている。この方法は、グリコール酸重合体の成形加工時の解重合を抑制するには効果的ではあるが、成形加工時のポリマーの着色抑制に対する効果は未だ十分ではなかった。
【0005】
また、例えば特許文献2には、ポリヒドロキシカルボン酸とジカルボン酸成分及びジオール成分から成るポリエステル、高分子量化剤、キレート剤及び/または酸性リン酸エステル類とを、溶剤の共存下或いは非共存下で混練することで、成形加工時の分子量低下や着色を改善する方法が開示されている更に、例えば特許文献3には、錫等の金属触媒を用い、開環重合する際に、重合後半又は重合終了時にリン酸系エステルを添加することにより熱安定性、特に、分子量保持性に優れた高分子量のポリ乳酸を製造する方法が提案されている。
【0006】
上記の特許文献2及び3に開示されている方法はいずれも、ポリヒドロキシカルボン酸の熱安定性を高めるために安定剤を用いる方法であるが、しばしば成形加工後のポリマーに着色が見られる場合が生じる等、安定的に再現性よく、成形加工時のポリマー着色を抑制する方法とはいえなかった。
【0007】
一方、ポリヒドロキシカルボン酸を水等の液体と接触させて固化、結晶化させる方法についても幾つかの開示がなされている。例えば、特許文献4には、脂肪族ポリエステルを結晶化させる際に、水冷することで結晶化を促進させる方法が開示されている。更に、特許文献5には、溶融状態にある特定の分子量範囲のポリヒドロキシカルボン酸プレポリマーを水と接触させて、固化、結晶化させる方法が開示されている。しかしながら該公報には、接触させる水の純度に関する記述は一切なく、更に、用いる水の純度によりポリヒドロキシカルボン酸の熱安定性が変動することに関する記載や示唆は一切なされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−157422号公報
【特許文献2】特開平9−95603号公報
【特許文献3】特開平9−151243号公報
【特許文献4】特開平8−34843号公報
【特許文献5】特開2000−302852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、溶融成形加工時においても着色が少ない熱安定性に優れた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレット、並びに工業的に安定に該ペレットを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う製造方法により製造することにより、高い熱安定性を有する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う製造方法により得られることを特徴とする脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレット。
[2]冷却水中に含有される粒径1μm以上50μm以下の異物量が、25℃で測定して0個/ml以上10個/ml以下であることを特徴とする[1]記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレット。
[3]脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な化合物とを出発原料として、重縮合して得られることを特徴とする[1]又は[2]に記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレット。
[4]溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
[5]冷却水中に含有される粒径1μm以上50μm以下の異物量が、25℃で測定して10個/ml以下であることを特徴とする[4]記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
[6]脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な化合物とを出発原料として、重縮合して得られることを特徴とする[4]又は[5]に記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
[7]冷却水により脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却した後に、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の表面に付着している冷却水を除去する工程を含むことを特徴とする[4]〜[6]のいずれか1項に記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶融成形加工時においても着色が少ない熱安定性に優れた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレット、並びに工業的に安定に該ペレットを製造する方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本発明」と言う。)について詳細に説明する。本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を少なくとも50モル%以上含む重合体である。このような脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位からなるホモポリマー、コポリマー、或いは、これらの混合物であってよい。更に、その他の共重合単位として、ポリオール単位及び/又はポリカルボン酸単位を含有するコポリマー、或いは、これらの混合物、更には、上記の脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位からなるホモポリマー或いはコポリマー等との混合物であってもよい。
【0014】
本発明において用いられるコポリマーとは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交替共重合体、グラフト共重合体であってよく、更に、混合物とは、ポリマーブレンド、ポリマーアロイの概念を含むものである。
【0015】
また、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸中には、本発明の効果を妨げない限り、従来公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、無機フィラー、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等を、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加して用いることも可能である。これらの添加剤は、当業界で通常用いられる量で使用することができる。
【0016】
本発明において用いられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位としては、例えば、グリコール酸単位、乳酸単位、2−ヒドロキシブタノイックアシッド単位、2 −ヒドロキシペンタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位、2−ヒドロキシヘプタノイッ クアシッド単位、2−ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、 2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイックアシッド単位、 2−ヒドロキシ−2−メチルブタノイックアシッド単位、2 −ヒドロキシ−2−エチルブタノイックアシッド単位、2− ヒドロキシ−2−メチルペンタノイックアシッド単位、2− ヒドロキシ−2−エチルペンタノイックアシッド単位、2− ヒドロキシ−2−プロピルペンタノイックアシッド単位、2 −ヒドロキシ−2−ブチルペンタノイックアシッド単位、2 −ヒドロキシ−2−メチルヘキサノイックアシッド単位、2 −ヒドロキシ−2−エチルヘキサノイックアシッド単位、2 −ヒドロキシ−2−プロピルヘキサノイックアシッド単位、 2−ヒドロキシ−2−ブチルヘキサノイックアシッド単位、 2−ヒドロキシ−2−ペンチルヘキサノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−エチルヘプタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−プロピルヘプタニックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ブチルヘプタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ペンチルヘプタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ヘキシルヘプタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−メチルオクタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−エチルオクタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−プロピルオクタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ブチルオクタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ペンチルオクタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ヘキシルオクタノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−ヘプチルオクタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシプロパノイックアシッド単位、3−ヒドロキシブタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位、3−ヒドロキシヘプタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−メチルブタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−メチルペンタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−エチルペンタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−エチルヘキサノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−プロピルヘキサノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−メチルヘプタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−エチルヘプタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−プロピルヘプタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−ブチルヘプタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−メチルオクタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−エチルオクタノイックアシッド単位、3−ヒドロキシ−3−プロピルオクタノイックアシッド単位、3− ヒドロキシ−3−ブチルオクタノイックアシッド単位、3− ヒドロキシ−3−ペンチルオクタノイックアシッド単位、4 −ヒドロキシブタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位、4−ヒドロキシヘプタノイックアシッド単位、4 −ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−メチルヘキサノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ −4−エチルヘキサノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−メチルヘプタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−エチルヘプタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−プロピルヘプタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−メチルオクタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−エチルオクタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−プロピルオクタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシ−4−ブチルオクタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位、5−ヒドロキシヘプタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサノイックアシッド単位、5−ヒドロキシ−5−メチルヘプタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシ−5−エチルヘプタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシ−5−メチルオクタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシ−5−エチルオクタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシ−5−プロピルオクタノイックアシッド単位、6−ヒ ドロキシヘキサノイックアシッド単位、6−ヒドロキシヘプタノイックアシッド単位、6−ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、6−ヒドロキシ−6−メチルヘプタノイックアシッド単位、6−ヒドロキシ−6−メチルオクタノイックアシッド単位、6−ヒドロキシ−6−エチルオクタノイックアシッド単位、7−ヒドロキシヘプタノイックアシッド単位、7−ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、7−ヒドロキシ− 7−メチルオクタノイックアシッド単位、8−ヒドロキシオクタノイックアシッド単位、12−ヒドロキシステアリックアシッド単位、16−ヒドロキシヘキサデカノイックアシッド単位等の脂肪族モノヒドロキシモノカルボン酸単位、2−ヒドロキシエトキシ酢酸単位、2−ヒドロキシプロポキシ酢酸単位等、分子内にヘテロ原子を含む脂肪族モノヒドロキシモノカルボン酸単位等が挙げられる。
【0017】
これらは単独で、又は二種以上混合して用いることができる。不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物の場合には、そのいずれをも用いることができる。
【0018】
更に、グリセリン酸単位、アラボン酸単位、マンノン酸単位、ガラクトン酸単位等の脂肪族多価ヒドロキシモノカルボン酸単位、リンゴ酸単位、クエン酸単位等の脂肪族モノヒドロキシ多価カルボン酸単位、ジグリセリン酸単位、マンノ糖酸単位等の脂肪族多価ヒドロキシ多価カルボン酸単位等を単独で、又は二種以上混合して併用することも可能である。これらの内、不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0019】
本発明において用いられる脂肪族ポリオール単位は、水酸基を2個以上含むものであり、炭素数2〜20のものが好ましい。このようなポリオール単位として、例えば、エチレングリコール単位、1,3−プロパンジオール単位、1,2−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、2,3−ブタンジオール単位、1,5−ペンタンジオール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,12−ドデカンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジオール単位、1,2−シクロヘキサンジオール単位、1,3−シクロヘキサンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位等の脂肪族ジオール単位、更に、ヘテロ原子を含む脂肪族ジオール単位、例えば、ジエチレングリコール単位、トリエチレングリコール単位、テトラエチレングリコール単位等が挙げられる。
【0020】
これらは単独で、又は二種以上混合して用いることができる。不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物も用いることができる。
【0021】
更に、グリセリン単位、1,2,4−ブタントリオール単位、トリメチロールエタン単位、トリメチロールプロパン単位、ブタン−1,2,3−トリオール単位等の脂肪族トリオール単位、澱粉単位、グルコース単位、セルロース単位、ヘミセルロース単位、キシロース単位、アラビノース単位、マンノース単位、ガラクトース単位、キシリトール単位、アラビニトール単位、マンニトール単位、ガラクチトール単位、ペンタエリスリトール単位、キチン単位、キトサン単位、デキストリン単位、デキストラン単位、カルボキシメチルセルロース単位、アミロペクチン単位、グリコーゲン単位等の糖類単位等を単独で、又は二種以上混合して併用することも可能である。これらの内、不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0022】
本発明において用いられる脂肪族ポリカルボン酸単位は、カルボキシル基単位を2個以上含むものであり、炭素数が2〜20のポリカルボン酸単位が好ましい。このようなポリカルボン酸単位として、例えば、シュウ酸単位、マロン酸単位、グルタル酸単位、コハク酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位、フマル酸単位、マレイン酸単位、ジグリコール酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位等の脂肪族ジカルボン酸単位等が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上混合して用いることができる。不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物も用いることができる。
【0023】
更に、プロパントリカルボン酸単位、トリメリット酸単位、ピロメリット酸単位、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸単位等の脂肪族トリカルボン酸単位、エチレンジアミン四酢酸単位等の1分子中のカルボキシル基が4以上含有されるカルボン酸単位等、或いは、これらの混合単位等も併用することができる。 これらの内、不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0024】
前記の脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位とポリオール単位及び/又はポリカルボン酸単位とのコポリマーの具体例としては、例えば、グリコール酸単位、L−及び/又はD−乳酸単位、3−ヒドロキシブタノイックアシッド単位、4 −ヒドロキシブタノイックアシッド単位、4−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位、5−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位、6−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイックアシッド単位、12−ヒドロキシステアリックアシッド単位等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を50モル%以上含み、エチレングリコール単位、1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、1,5−ペンタンジオール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、グリセリン単位、1,2,4−ブタントリオール単位、トリメチロールエタン単位、トリメチロールプロパン単位、ブタン−1,2,3−トリオール単位なる群から選ばれるポリオール単位及び/又はシュウ酸単位、マロン酸単位、コハク酸単位、アジピン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位、ジグリコール酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位、プロパントリカルボン酸単位、トリメリット酸単位、ピロメリット酸単位、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸単位なる群から選ばれるコポリマー及びそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
上記のヒドロキシカルボン酸単位、ポリオール単位、ポリカルボン酸単位からなる群から選ばれる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の内、硬度が高く、引き続いて実施される乾燥、或いは、加熱結晶化や固相重合の際にペレットの破損や微粉の発生量が抑制されることから、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を80モル%以上含有する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が好ましく、100℃以上の融点を有する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が更に好ましく用いられる。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸単位を80モル%以上含み、且つ、100℃以上の融点を有する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の具体例としては、例えば、グリコール酸単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、L−及び/又はD−乳酸単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、3−ヒドロキシブタノイックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、4 −ヒドロキシブタノイックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、4−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、5−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、6−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、12−ヒドロキシステアリックアシッド単位を80モル%以上含む脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸、等が挙げられる。これらの内、グリコール酸単位を80モル%以上含有する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸は、ガスバリアー性が高いことが知られており、特に好ましく用いられる。
【0026】
その他、本発明の効果を損なわない範囲で、これまでに例示した共重合成分以外の共重合単位成分を導入することも可能である。このような共重合単位成分としては、例えば、グリシン単位、(+)−アラニン単位、β−アラニン単位、(−)−アスパラギン単位、(+)−アスパラギン酸単位、(−)−システイン単位、(+)−グルタミンサン単位、(+)−グルタミン単位、(-)−ヒドロキシリシン単位、(−)−ロイシン単位、(+)−イソロイシン単位、(+)−リシン単位、(−)−メチオニン単位、(−)−セリン単位、(−)−トレオニン単位、(+)−バリン単位、アミノ酪酸単位、アザセリン単位、アルギニン単位、エチオニン単位等のアミノ酸単位、例えば、メチルヒドラジン単位、モノメチレンジアミン単位、ジメチレンジアミン単位、トリメチレンジアミン単位、テトラメチレンジアミン単位、ペンタメチレンジアミン単位、ヘキサメチレンジアミン単位、ヘプタメチレンジアミン単位、オクタメチレンジアミン単位、ノナメチレンジアミン単位、デカメチレンジアミン単位、ウンデカメチレンジアミン単位、ドデカメチレンジアミン単位等の多価アミン単位、例えば、プロパンラクタム単位、α−ピロリドン単位、α−ピペリドン単位、ε−カプロラクタム単位、α−メチル−カプロラクタム単位、β−メチル−カプロラクタム単位、γ−メチル−カプロラクタム単位、δ−メチル−カプロラクタム単位、ε−メチル−カプロラクタム単位、N−メチル−カプロラクタム単位、β,γ−ジメチル−カプロラクタム単位、γ−エチル−カプロラクタム単位、γ−イソプロピル−カプロラクタム単位、ε−イソプロピル−カプロラクタム単位、γ−ブチル-カプロラクタム単位、γ−ヘキサシクロベンジル−カプロラクタム単位、ω−エナントラクタム単位、ω−カプリルラクタム単位、カプリロラクタム単位、ラウロラクタム単位等のラクタム単位、等が挙げられる。これらは単独、又は2種以上混合して用いるができる。不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物の場合には、そのいずれをも用いることができる。
【0027】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の1構造単位中に2個以上のイソシアネート基及び/又はエポキシ基を有する化合物単位を含有していてもよい。
【0028】
本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸は、従来公知の方法で製造したものを用いることが可能である。具体的には、例えば、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位のホモポリマー又はコポリマーの場合には、溶媒の非存在下或いは存在下、触媒の存在下或いは非存在下で、ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体を重縮合する方法や、或いは、例えばグリコリド、ラクチド等に代表される脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルやε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状エステルを、溶媒の非存在下、或いは、存在下で開環重合する方法等により製造することが可能である。
【0029】
また、例えば、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位と脂肪族ポリオール単位及び/又は脂肪族ポリカルボン酸単位から構成される場合には、溶媒の非存在下或いは存在下、触媒の存在下或いは非存在下で、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位のホモポリマー又はコポリマーなる群から選ばれる少なくとも一種と、脂肪族ポリオール及び/又は脂肪族ポリカルボン酸とを重縮合する方法や、溶媒の非存在下或いは存在下で、脂肪族ポリオール、脂肪族ポリカルボン酸、或いは、脂肪族ジオールと脂肪族ポリカルボン酸とからなる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸なる群から選ばれる少なくとも一種の存在下で、例えばグリコリド、ラクチド等に代表されるヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステルやε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状エステルを開環重合する方法などにより製造することが可能である。
【0030】
更に、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸と、他の脂肪族ポリエステル、例えば、脂肪族ポリオール及び脂肪族ポリカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル、或いは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ポリオール及び/又は脂肪族ポリカルボン酸とからなる脂肪族ポリエステルとを加熱溶融した状態で、エステル交換反応を行う方法などにより製造することも可能である。
【0031】
上記の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の製造方法の内、重縮合によって脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造する方法は、少ない工程数で脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が製造可能であるため、好ましく用いられる。
【0032】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造する際に原料として用いられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシブタノイックアシッド、2 −ヒドロキシペンタノイックアシッド、2−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシヘプタノイッ クアシッド、2−ヒドロキシオクタノイックアシッド、 2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイックアシッド、 2−ヒドロキシ−2−メチルブタノイックアシッド、2 −ヒドロキシ−2−エチルブタノイックアシッド、2− ヒドロキシ−2−メチルペンタノイックアシッド、2− ヒドロキシ−2−エチルペンタノイックアシッド、2− ヒドロキシ−2−プロピルペンタノイックアシッド、2 −ヒドロキシ−2−ブチルペンタノイックアシッド、2 −ヒドロキシ−2−メチルヘキサノイックアシッド、2 −ヒドロキシ−2−エチルヘキサノイックアシッド、2 −ヒドロキシ−2−プロピルヘキサノイックアシッド、 2−ヒドロキシ−2−ブチルヘキサノイックアシッド、 2−ヒドロキシ−2−ペンチルヘキサノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−プロピルヘプタニックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ブチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ペンチルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ヘキシルヘプタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−メチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−エチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−プロピルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ブチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ペンチルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ヘキシルオクタノイックアシッド、2−ヒドロキシ−2−ヘプチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシプロパノイックアシッド、3−ヒドロキシブタノイックアシッド、3−ヒドロキシペンタノイックアシッド、3−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルブタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルペンタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルペンタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−プロピルヘキサノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−プロピルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−ブチルヘプタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−メチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−エチルオクタノイックアシッド、3−ヒドロキシ−3−プロピルオクタノイックアシッド、3− ヒドロキシ−3−ブチルオクタノイックアシッド、3− ヒドロキシ−3−ペンチルオクタノイックアシッド、4 −ヒドロキシブタノイックアシッド、4−ヒドロキシペンタノイックアシッド、4−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、4−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、4 −ヒドロキシオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルペンタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルヘキサノイックアシッド、4−ヒドロキシ −4−エチルヘキサノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−エチルヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−プロピルヘプタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−メチルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−エチルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−プロピルオクタノイックアシッド、4−ヒドロキシ−4−ブチルオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシペンタノイックアシッド、5−ヒドロキシヘキサノイックアシッド、5−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、5−ヒドロキシオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−メチルヘキサノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−メチルヘプタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−エチルヘプタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−メチルオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−エチルオクタノイックアシッド、5−ヒドロキシ−5−プロピルオクタノイックアシッド、6−ヒ ドロキシヘキサノイックアシッド、6−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、6−ヒドロキシオクタノイックアシッド、6−ヒドロキシ−6−メチルヘプタノイックアシッド、6−ヒドロキシ−6−メチルオクタノイックアシッド、6−ヒドロキシ−6−エチルオクタノイックアシッド、7−ヒドロキシヘプタノイックアシッド、7−ヒドロキシオクタノイックアシッド、7−ヒドロキシ− 7−メチルオクタノイックアシッド、8−ヒドロキシオクタノイックアシッド、12−ヒドロキシステアリックアシッド、16−ヒドロキシヘキサデカノイックアシッド等の脂肪族モノヒドロキシモノカルボン酸、2−ヒドロキシエトキシ酢酸、2−ヒドロキシプロポキシ酢酸等の分子内にヘテロ原子を含む脂肪族モノヒドロキシモノカルボン酸等、を挙げることができる。
【0033】
更に、グリセリン酸、アラボン酸、マンノン酸、ガラクトン酸等の脂肪族多価ヒドロキシモノカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族モノヒドロキシ多価カルボン酸、ジグリセリン酸、マンノ糖酸等の脂肪族多価ヒドロキシ多価カルボン酸等を併用することも可能である。
【0034】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造するために用いられるヒドロキシカルボン酸の誘導体としては、例えば、上記のヒドロキシカルボン酸の重縮合物や、上記のヒドロキシカルボン酸と炭素数1以上10以下の単官能性アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール等とのエステル等や、例えばグリコリド、ラクチド、グリコール酸と乳酸とからなる環状2量体エステル等のヒドロキシカルボン酸からなる環状2量体エステル類や、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状エステルであるラクトン等が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上混合して併用することも可能である。また、単位構造内に不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0035】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造する際に共重合成分として用いることが可能な脂肪族ポリオールとしては、1分子中に水酸基を2個以上含む化合物が挙げられ、炭素数2〜20のポリオールが好ましい。このような脂肪族ポリオールとして、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、更に、ヘテロ原子を含むジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が、更に、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール単位、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタン−1,2,3−トリオール等の脂肪族トリオール、澱粉、グルコース、セルロース、ヘミセルロース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、キシリトール、アラビニトール、マンニトール、ガラクチトール、ペンタエリスリトール、キチン、キトサン、デキストリン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アミロペクチン、グリコーゲン等の糖類が挙げられる。これらは単独、又は2種以上混合して用いられる。また、単位構造内に不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0036】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造する際に共重合成分として用いることが可能な脂肪族ポリカルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基単位を2個以上含むものであり、炭素数が2〜20のポリカルボン酸単位が好ましい。このような脂肪族ポリカルボン酸単位として、例えば、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上混合して用いることができる。不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物も用いることができる。
【0037】
更に、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸等の脂肪族トリカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸等の1分子中のカルボキシル基が4以上含有されるカルボン酸等を単独で、又は二種以上混合して併用することも可能である。これらの内、不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0038】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造するために用いられるポリカルボン酸の誘導体としては、上記のポリカルボン酸と炭素数1以上10以下の単官能性アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール等とのエステル等や対応するポリカルボン酸の酸無水物などが挙げられる。これらは単独で、又は二種以上混合して併用することも可能である。また、単位構造内に不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在する化合物は、そのいずれをも用いることができる。
【0039】
その他、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、アミノ酸、多価アミン、ラクタム等を共重合成分として用いることができる。
【0040】
アミノ酸としては、炭素数2〜20のアミノ酸が好ましい。アミノ酸として、例えば、グリシン、(+)−アラニン、β−アラニン、(−)−アスパラギン、(+)−アスパラギン酸、(−)−システイン、(+)−グルタミンサン、(+)−グルタミン、(-)−ヒドロキシリシン、(−)−ロイシン、(+)−イソロイシン、(+)−リシン、(−)−メチオニン、(−)−セリン、(−)−トレオニン、(+)−バリン、アミノ酪酸、アザセリン、アルギニン、エチオニン等が挙げられる。
【0041】
多価アミンとしては、炭素数0〜20の多価アミンが好ましい。アミンとして、例えば、ヒドラジン、メチルヒドラジン、モノメチレンジアミン、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられる。
【0042】
ラクタムとしては、炭素数2〜20のラクタムが好ましい。ラクタムとして、例えば、グリシン無水物、プロパンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン、ε−カプロラクタム、α−メチル−カプロラクタム、β−メチル−カプロラクタム、γ−メチル−カプロラクタム、δ−メチル−カプロラクタム、ε−メチル−カプロラクタム、N−メチル−カプロラクタム、β,γ−ジメチル−カプロラクタム、γ−エチル−カプロラクタム、γ−イソプロピル−カプロラクタム、ε−イソプロピル−カプロラクタム、γ−ブチル-カプロラクタム、γ−ヘキサシクロベンジル−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−カプリルラクタム、カプリロラクタム、ラウロラクタム、等が挙げられる。
前記の化合物の内、不斉炭素原子を有し、光学異性体が存在し得るものは、そのいずれをも用いることができる。
【0043】
上記の脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体、ポリオール、ポリカルボン酸及び/又はその誘導体、並びに、他の共重合可能な成分は、固体状、液体状、水溶液状のいずれの状態の場合でも、本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の製造に供することができる。
【0044】
本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を重縮合によって製造するための反応温度は、ポリヒドロキシカルボン酸等の種類、分子量によっても異なるため、限定されないが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を50モル%以上含む原料を、温度20℃以上350℃以下、好ましくは50℃以上280℃以下、更に好ましくは、80℃以上250℃以下の範囲が例示できる。20℃未満の温度では反応速度が著しく小さくなり、重縮合時間が長大となり、350℃を越える場合にはポリマーの熱分解による着色が増加しやすくなる。
【0045】
上記の重縮合により、高い硬度を有し、引き続いて実施される乾燥、或いは、加熱結晶化や固相重合の際にペレットの破損や微粉の発生量が抑制される製造される脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を得るためには、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位を80モル%以上含む原料を重縮合することが好ましい。更に、100℃以上の融点を有し、実用特性に優れる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を得るためには、例えば、グリコール酸単位を80モル%以上含む原料、L−及び/又はD−乳酸単位を80モル%以上含む原料、3−ヒドロキシブタノイックアシッド単位を80モル%以上含む原料、4 −ヒドロキシブタノイックアシッド単位を80モル%以上含む原料、4−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位を80モル%以上含む原料、5−ヒドロキシペンタノイックアシッド単位を80モル%以上含む原料、6−ヒドロキシヘキサノイックアシッド単位を80モル%以上含む原料、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイックアシッド単位を80モル%以上含む原料、12−ヒドロキシステアリックアシッド単位を80モル%以上含む原料、を重縮合することがより好ましい。これらの内、グリコール酸単位を80モル%以上含有する原料を重縮合して得られる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸は、ガスバリアー性が高いことが知られており、更に好ましく用いられる。
【0046】
重縮合反応の雰囲気としては、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の着色を抑制する上で、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス又は低級飽和炭化水素等から選ばれる1種又は2種以上の不活性ガスの雰囲気下、加圧下、流通下及び/又は減圧下で行うことが好ましい。減圧状態で反応を実施する場合、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の種類、操作温度によっても異なるが、通常、1.333Pa以上1.014×10Pa以下の範囲が例示できる。
【0047】
上記の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を重縮合によって製造する際に、操作温度及び/又は操作圧力を多段階に調節しながら実施する方法は好ましい様式である。
【0048】
本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を重縮合により製造する際に、比較的高い蒸発比表面積が確保できる重縮合反応装置を利用することは、高い分子量を有する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造することができるため好ましい様式である。この様な高い蒸発比表面積が確保できる重縮合反応装置としては、例えば、二軸横型高粘度反応機、塔内にワイヤーや金網等の溶融ポリマー支持体をその構造として保有する高比表面積重合装置を利用する方法等が挙げられる。
【0049】
更に、本発明の効果を損なわない範囲で、重縮合反応の途中で、従来公知の1構造単位中に2個以上のイソシアネート基及び/又はエポキシ基を有する化合物を添加して、より単時間に分子量を上昇させることも可能である。これらの化合物を添加する量は、通常、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸に対し0.05質量%以上5質量%以下の範囲である。
上記の重縮合反応は、回分式及び/又は連続式の1種又は2種以上の反応装置を組み合わせて行うことができる。
【0050】
本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を重縮合により製造する際には、触媒を加えずに重縮合反応を実施することができるが、重縮合速度を高める為に、必要に応じて触媒を用いることができる。
【0051】
触媒としては、元素周期律表1族、2族、3族、4族、5族、8族、12族、ホウ素を除く13族、炭素を除く14族、窒素を除く15族の半金属を含む金属や、これら金属の金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属アルコキサイド、金属スルホン酸塩等が挙げられる。例えば、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、亜鉛、ゲルマニウム、錫、アンチモン等の金属、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、シリカ、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモン等の金属酸化物、弗化錫、弗化アンチモン、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第一錫、塩化第二錫、臭化第一錫、臭化第二錫、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸錫、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、等の金属塩、炭酸亜鉛、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化銅、水酸化亜鉛等の金属水酸化物等、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸亜鉛、酢酸錫、オクタン酸錫、ステアリン酸錫、乳酸鉄、乳酸錫等の金属カルボン酸塩、マグネシウム、ランタノイド、チタン、ハフニウム、鉄、ゲルマニウム、錫、アンチモン等の金属のアルコキサイド、ジブチルスズオキサイド等の有機金属、メタンスルホン酸錫、トリフルオロメタンスルホン酸錫、p-トルエンスルホン酸錫等の有機スルホン酸塩、アンバーライト、ダウエックス等のイオン交換樹脂が挙げられる。
【0052】
更に、塩酸、過塩素酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸等の無機酸触媒、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、等の有機酸が挙げられる。
【0053】
触媒は、これらに限定されるものではなく、一種、又は二種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0054】
これらの触媒種は、例えば、原料化合物又は原料化合物の水溶液、或いは溶液に直接添加したり、重縮合物を得た後に添加して使用されるが、この他にも、必要に応じて、水及び/又は脂肪族ヒドロキシカルボン酸存在下で加水分解した後に、原料や、重縮合物に対して添加して使用してもよい。
【0055】
ここでいう重縮合物は、さらなる溶融重合が可能で有れば、分子量等には制限はない。
触媒の使用量は、好ましくは、原料として用いた化合物1g当たり、金属原子として1×10−10モル以上1×10−2モル以下の範囲である。原料として用いた化合物1g当たりに使用する触媒量が、金属原子として1×10−10モル未満の場合には、重縮合速度を高める効果が充分に発揮されず、1×10−2モルを越える場合には、樹脂の着色等の副反応が著しく増大する傾向がある。
【0056】
本発明において用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を重縮合により製造する際に、重縮合中の熱劣化による着色を抑えるために、熱安定剤を添加して反応を行ってもよい。熱安定剤は、そのままで、又は適当な液体に溶解又は混合して反応系に添加することができる。熱安定剤の添加時期の制限はなく、原料モノマーの濃縮又は縮合過程から、実質的に重縮合反応が完結するまでの間であれば、いずれの時期に反応系に添加してもよい。添加は一括でも分割でもよい。
【0057】
更に、他の添加剤として、従来公知の酸化防止剤、紫外線防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、防湿剤、防水剤、撥水剤、滑剤、離型剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、無機フィラー、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等を、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加、あるいは配合することも可能である。
【0058】
本発明に用いられる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の重量平均分子量は、ペレタイズ後の乾燥時、或いは輸送、保管時のペレットの破損や微粉の発生量が抑制されるため、5,000以上であることが好ましい。更に好ましくは、10,000以上、より好ましくは25,000以上である。一方、分子量が高すぎると成形の際の加工性が低下するため、重量平均分子量は、通常、1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下、特に好ましくは200,000以下である。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値を用いることができる。例えば、グリコール酸重合体、或いは、共重合体の分子量は、真空下、室温(25℃)にて水分量1000ppm以下に乾燥した後に、GPCにより次の測定条件で測定することができる。
【0059】
標準サンプル:単分散ポリメタクリル酸メチル
溶離液 :80mMのトリフルオロ酢酸ナトリウムを溶解したヘキサフルオロイ ソプロパノール
カラム :ガードカラムとして東ソー(株)社製Tskguardcolum nHHR−H(登録商標)を用い、東ソー(株)製Tskgel(登録 商標)G5000HHR、及び東ソー(株)製Tskgel(登録商 標)G3000HHRの各1本ずつを直列に配置して用いる。
カラム温度 :40℃
【0060】
本発明において、「溶融押し出し」とは、溶融状態にある脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸をダイ又はノズルを通して押し出すことを意味する。上記のダイ又はノズルの形状については特に限定はなく、従来公知のものを使用することが可能である。また、押し出しには従来公知の方法を使用することができ、例えば、ギヤポンプを用いる方法、スクリュウ式押出機を用いる方法、ピストン式押出機を用いる方法、或いは、これらの組み合わせによる方法、等を用いることができる。
【0061】
本発明において、溶融重合方法により脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を製造した後に、溶融状態にある脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸をそのまま、或いは、上記の添加剤を添加した後に、ギヤポンプや押出機を用いて押し出す方法は、一度固化した後に再度溶融する工程を削減できることから、好ましく用いられる方法である。
【0062】
本発明の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットは、溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う製造方法により得られるものである。
【0063】
本発明において、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却するために用いられる冷却水の電気伝導度は1×10μS/cm以下であることが必要である。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却するために用いられる冷却水の電気伝導度は1×10μS/cmを超過する場合には、得られる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを溶融成形して得られる製品の着色が著しくなるため、好ましくない。一方、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却するために用いられる冷却水の電気伝導度が0.01μS/cm未満の水を製造するためには、多大な労力がかかり現実的ではない。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却するために用いられる冷却水の電気伝導度としては、0.03μS/cm以上500μS/cm以下の範囲であることがより好ましく、0.05μS/cm以上200μS/cm以下の範囲であることが更に好ましく、0.07μS/cm以上100μS/cm以下の範囲であることが特に好ましい。
【0064】
本発明における、25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の範囲の水を調製する方法については特に限定はないが、蒸留する方法、陽及び/又は陰イオン交換樹脂等により処理する方法、或いは、これらの組み合わせによる方法等が例示できる。上記の方法により調製した、25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の範囲の水は、外部から電気伝導度を変化させる物質が混入した場合においても上記電気伝導度の範囲を逸脱しない範囲であればよいが、調製後に外部から新たに電気伝導度を変化させる物質が混入しないようにする、或いは、保管容器に由来した物質の混入により電気伝導度が変化しないように適正な処置を施しておく、或いは、調製後に外部から新たに電気伝導度を変化させる物質が混入する場合においても、連続或いは間欠的に水を混合し、上記伝導度の範囲に維持する方法を施すことが望ましい。
【0065】
本発明において、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却するために用いられる冷却水としては、得られるペレットの強度が高まり、該ペレットを乾燥する、或いは、移送する際の微粉の発生が低減されることから、冷却水中に含有される粒径1μm以上50μm以下の異物量が、25℃で測定して10個/ml以下であることが好ましく、10個/ml以下であることがより好ましく、10個/ml以下であることが更に好ましく、10個/ml以下であることが特に好ましい。
【0066】
本発明における粒径1μm以上50μm以下の異物量を低減した水を調製する方法としては、例えば、50μm以下等の適切な細孔径を有するフィルターや膜等を通過させて異物を除去する方法や、蒸留する方法、或いはこれらの組み合わせによる方法等が例示できる。上記の方法により、異物を除去した水は、外部から異物が混入した場合においても本発明の異物量の範囲を逸脱しない範囲であればよいが、除去後に外部から新たに異物が混入しないようにする、或いは、保管容器の腐食等により異物が新たに混入しないように適正な保管容器を用いる等の処置を施しておくことが望ましい。
【0067】
本発明において用いられる電気伝導度は、電気伝導度計を用いて測定でき、1μm以上50μm以下の異物量は、例えば、レーザーを用いた微粒子測定装置で測定できる。なお、本発明における異物とは、レーザー光線を散乱させることのできる微小な物質のことを指し、例えば砂粒や鉱物粒子、金属粒子、有機物粒子、埃、等が例示できる。
【0068】
本発明において、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却と切断を行う操作の順序は特に限定されず、冷却後に切断を行う方法、切断後に冷却を行う方法、冷却と切断を同時に行う方法、のいずれの方法で行うことも可能である。
【0069】
本発明において、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を液体状態にある水で冷却する方法は、溶融状態にある脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸と液体状態にある水が接触して溶融状態にある脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が固体状態になることができれば特に限定はなく、通常、水の凝固温度を超え、水の沸点未満の温度範囲から適宜選択される。効率的に溶融状態にある脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が固体状態とすることができることから、水の温度としては、水の凝固点を超え、80℃以下の範囲が好ましく、水の凝固点を超え、70℃以下の範囲がより好ましい。液体状態にある水で冷却する方法の具体例としては、水中に設けられたダイから直接水中に溶融樹脂を押し出して冷却する方法や、空気中若しくは不活性ガス中に設けられたダイから一旦空気中若しくは不活性ガス中に押し出した後、水中に投じて冷却もしくは水や霧を吹きかけて冷却する方法等を挙げることができる。
【0070】
本発明において、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を切断してペレットを製造する方法については特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、ストランドカット(strand cut)法、ホットカット(hot cut)法、少量の冷却水を用いるホットカット法〔例えばミストカット(hot cut in mist air stream)法〕、アンダーウォーターカット(under−water cut)法、等の方法でペレットを製造することができる。上記のストランドカット法は、ダイから溶融樹脂をストランド状に押し出し、水で冷却した後にストランドをカットする、又は水で冷却しながらストランドをカットする方法であり、ホットカット法は、ダイから押し出された溶融樹脂を、ダイ面に設置したナイフでカットし、得られた溶融樹脂ペレットを水で冷却する方法であり、ミストカット法は、ダイから押し出された溶融樹脂を、水のミストを吹き付けて冷却しながら、ダイ面に設置したナイフでカットする方法であり、アンダーウォーターカット法は、水中に置かれたダイから押し出された溶融樹脂を、ダイ面に設置したナイフで水中でカットする方法である。
【0071】
本発明における脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、粉状、直方体状、フレーク状、球状、円柱状、マーブル状、タブレット状等やこれらの混合物等が挙げられる。これらの内、成形の際の取扱い性や、製造工程における取扱い性、或いは、均一な結晶化の観点から、球状、円柱状、又は、マーブル状、タブレット状が好ましく用いられる。
【0072】
また、上記の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの大きさは、特に限定されるものではなく、通常、最大径が1mm以上20mm以下の範囲である。成形時の溶融押出性を考慮すると、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの大きさとしては、最大径が1mm以上10mm以下であることが好ましく、1.5mm以上8mm以下がより好ましく、1.5mm以上5mm以下が更に好ましい。
【0073】
本発明において、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸中の粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量は、得られるペレットの強度が高まり、該ペレットを乾燥する、或いは、移送する際の微粉の発生が低減されることから、少ないことが好ましい。該粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量としては、10個/g以下であることが好ましく、10個/g以下であることがより好ましい。
【0074】
また、冷却水による冷却の後、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸に付着している冷却水をそのまま蒸発させると、冷却水中に含有されるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、鉄イオン、塩素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、等のイオン成分や、有機物、或いは、埃、砂等の異物が脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の表面に残存するので、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の表面に付着している冷却水を除去することが好ましい。この冷却水を除去する工程としては、例えば、クリーンエアブローや遠心分離器等を用いて冷却水を飛散させる方法等を用いることができる。
【0075】
本発明の方法によって得られる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットは、上記に記載した脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の表面に付着している冷却水を除去する工程に引き続いて、従来公知の方法により、例えば、減圧下、ガス流通下、或いはこれらの混合条件下において、攪拌、混合、流動、又はこれらの混合条件下で乾燥することができる。また更に引き続き固相重合に供することも可能である。
【0076】
乾燥の際に、ガスを流通させる場合には、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス又は低級飽和炭化水素等の不活性ガスや、空気等のガスから選ばれる1種又は2種以上からなるガスを用いることができる。
【0077】
乾燥させる際の温度は、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの融点以下の温度範囲であれば、特に限定はない。融点が、乾燥操作によって高まる場合には、高まった後の融点までの範囲で乾燥を行うことが可能である。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの加水分解による分子量低下を抑制し、効率的に乾燥を行う上で、10℃以上150℃以下の温度で実施することが好ましく、30℃以上140℃以下の温度で実施することが更に好ましく、50℃以上140℃以下の温度で実施することがより好ましい。乾燥する際の温度は上記範囲内であれば一定である必要はなく、高めることも、或いは、低めることも可能である。
【0078】
乾燥後の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの含水量は、輸送や貯蔵時の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の加水分解を抑制するために低ければ低いほど好ましく、通常300ppm以下である。
【0079】
乾燥させる際の時間は、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの含水量が十分に低減可能な時間であれば特に限定はなく、通常1分〜100時間の範囲である。
本発明の方法により得られる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットは、乾燥された後に、更に分子量を増大させるために、必要に応じて加熱結晶化処理した後、固相重合に供することも可能である。
【0080】
本発明によって得られた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを加熱結晶化処理する方法には制限はなく、従来公知の方法が利用できる。具体例としては、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス、低級飽和炭化水素等の不活性ガスや、空気等のガスから選ばれる1種又は2種以上からなるガスの雰囲気下、流通下、減圧下或いは、加圧下、又はこれらの組み合わせにおいて、静置状態、或いは、機械的撹拌、流動、混合、移送しながら加熱することにより結晶化させる方法、加熱結晶化させる温度において脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットが溶解しない液体、例えば、水、アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、エステル類等と接触させる方法等が挙げられる。
【0081】
加熱結晶化処理する際の温度は、通常、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットのガラス転移温度以上融点未満の範囲である。前記範囲内であれば、温度を連続的に、或いは、多段階に変化させて行うことも可能である。また、加熱結晶化処理により、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの融点が高められる場合には、高められた融点までの温度範囲内で加熱処理を実施することが可能である。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの加熱結晶化処理に要する時間には特に限定はなく、通常、0.5分以上10時間以下の範囲である。
【0082】
固相重合を行う際の反応温度は、反応系に存在する脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットが実質的に固体状態を維持していれば制限されなく、通常、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットのガラス転移温度以上融点未満の範囲である。固相重合の重合速度を考慮すると、好ましくは100℃以上脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの融点未満であることが好ましく、より好ましくは120℃以上脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの(融点−5℃)以下、更に好ましくは130℃以上脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの(融点−10)℃以下の温度範囲である。この際、固相重合を行う際の反応温度は、前記した温度の範囲内であれば、反応中一定である必要はない。
【0083】
固相重合反応中、分子量の増加やアニール効果により脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの融点が上昇する場合、その時点における脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの融点の範囲まで反応温度を上げて固相重合反応を実施することも可能である。
固相重合は、不活性ガス流通下、減圧下、加圧下又はこれらの組み合わせで行うことができる。この際、重合により生成する水を除去することが必要であるため、不活性ガス流通下及び/又は減圧下で行うことが好ましい。
【0084】
固相重合を行う際の反応系内の圧力は、充分に高い重量分子量を有するグリコール酸共重合体が得られる範囲であれば制限されない。
【0085】
固相重合を不活性ガス流通下で行う場合、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、炭酸ガス、低級飽和炭化水素等から選ばれる1種又は2種以上からなるガスが挙げられる。流通させる不活性ガスは、含水量ができるだけ低く、実質的に無水状態の乾燥ガスが好ましい。含水量が多い場合には固相重合反応で生成した水が効率よく除去できないために重合速度が遅くなる。流通ガスの含水量を露点で示すと、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−40℃以下である。
【0086】
不活性ガスを流通させる場合の流量は、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの形状、粒径、結晶性、反応温度、減圧度等を考慮し、十分に重量平均分子量が高い脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得ることができる程度に生成した水を留去することができればよい。一般的に、流通するガスの流量が多いほど、生成した水を除去する効率が高いが、通常、結晶化プレポリマー1g当たり、常圧換算で0.0005ml/分以上3000ml/分以下の範囲である。
【0087】
流通させる不活性ガスは、モレキュラーシーブ類やイオン交換樹脂類等を充填した層に通すこと、或いは、冷却することにより脱水して使用することができる。
固相重合を行う時間は、通常1時間以上200時間以下、好ましくは5時間以上120時間以下の範囲である。
【0088】
固相重合を行う装置は、従来公知の回分式及び/又は連続式の1種又は2種以上の反応装置を組み合わせて行うことができる。
【0089】
本発明によって得られる脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットは、溶融して成形体又は成形容器、延伸又は未延伸のフィルム又はシート、発砲体、繊維等に加工することができる。必要に応じて、成形後に、熱処理等を施すこともできる。
【0090】
成形体又は成形容器としては、例えば、飲料、化粧品、洗剤のボトル、使い捨てのカップ、トレー等の容器、保冷箱や各種カートリッジのケーシング、農業用の植木鉢や育成床、掘り出し不要のパイプや仮止め材料、ブロック等の建材・土木材料、ボールペン・シャープペン・鉛筆等文具、ゴルフ用ティー等の部材等が挙げられる。フィルム又はシートとしては、例えば、農業用マルチフィルム、ショッピングバッグ、包装用フィルム、ラップフィルム、種々のテープ、肥料袋等が挙げられる。発砲体としては、例えば、食品トレー、緩衝剤、断熱材等が挙げられる。繊維としては、例えば、釣り糸、漁網、不織布、縫合糸等が挙げられる。特殊な例としては、肥料に配合して、遅効性の肥料等、各種配合剤や、農薬用、或いは、肥料用のカプセル等としても使用することができる。
【0091】
得られた成形体は、必要に応じて、帯電防止剤、防曇性を向上させる目的でコーティングやコロナ処理等の各種表面処理等を施してもよい。シール適性、防湿性、ガスバリアー性、印刷適性等を向上させる目的で、ラミネート加工、コーティング加工、アルミニウム等の真空蒸着等を施すことも可能である。
【実施例】
【0092】
本発明について、以下具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例において用いる各特性は、以下の方法で測定した。
【0093】
(1)脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を構成するモノマー単位の含有量比
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を凍結粉砕処理し、真空下、室温(25℃)にて水分量1000ppm以下に乾燥させて得られた粉砕物30mgに対して、1mlの割合で重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒に溶解した脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール溶液に、基準物質としてテトラメチルシランを極く少量添加したものを測定試料とする。この測定試料を用いて、400MHz(日本分光社製α―400)の1H−NMRの測定を積算回数500回にて行い、得られた結果を解析してジグリコール酸単位以外のモノマー単位の構成量をモル比で算出する。
【0094】
(2)脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の重量平均分子量
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置8020GPCシステムを用い、以下の条件により求める。
使用する溶媒として、予め、80mMのトリフルオロ酢酸ナトリウム(和光純薬社製試薬)を溶解したヘキサフルオロイソプロパノールを調整しておく。すなわち、ヘキサフルオロイソプロパノール1000gに対して、トリフルオロ酢酸ナトリウム6.48gを溶解した溶液(以下、溶離液、と略記する)を調整する。
【0095】
評価用の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の試料溶液として、80℃、1×10Paで含有水分量が200ppm以下になるまで乾燥した脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレット1gを精秤した後、前記溶離液150gに溶解し、その後、0.2μmのフィルターにて濾過したものを用いる。
【0096】
カラム温度40℃にて、溶離液を流量1ml/分の条件下で、70マイクロリットルの試料溶液をカラム[カラム構成は、ガードカラムとして東ソー(株)社製TskguardcolumnHHR−H(登録商標)を用い、東ソー(株)製Tskgel(登録商標)G5000HHR、及び東ソー(株)製Tskgel(登録商標)G3000HHRの各1本ずつを直列に配置]を通し、分子量1,577,000、685,000、333,000、100,250、62,600、24,300、12,700、4,700、1,680、1140の、分子量既知のPolymer Laboratories社製単分散ポリメタクリル酸メチル標準物質、及びメタクリル酸メチルモノマー(分子量100)のRI検出による溶出時間から求めた検量線を予め作成し、その溶出時間から重量平均分子量を算出する。
【0097】
(3)水の電気伝導度
電気化学計器(株)製の導電率計を用いて、25℃で測定した。
【0098】
(4)粒径1μm以上50μm以下の異物量
米国Pacific Scientific Instruments社製の微粒子測定装置(登録商標:HIAC/ROYCO)を用いて、25℃で測定した。
なお、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は、ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒100重量部に脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を0.4重量部の量で溶解して、25℃の温度で測定した。
【0099】
(5)脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の融点
JIS K7121に準じて求める。
パーキンエルマー(株)製DSC−7を用い、80℃、1×10Paで含有水分量が200ppm以下になるまで乾燥した乾燥したグリコール酸共重合体を−20℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温させて得られるDSC曲線より求める。この際、融解ピークが複数存在する場合には、一つのベースラインで表される融解ピークの内、最も高温側にあるピークのピークトップ温度を融点とする。
【0100】
<ペレットの耐熱変色性試験>
上記の方法において、重量平均分子量を求める際に、検出器として波長350nmに設定したUV検出器UV8020(東ソー社製)を接続し、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレットの分析を行って、UV 検出器にて検出される全カウント数をもってペレットの着色度を評価する(評価値1と略記する)。
【0101】
次に、乾燥した100gの脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを得る。得られたプレスシートから試験片を採取し、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレットの着色度の評価と同様に上記記載の方法に従って、プレスシート成形後の着色度を評価する(評価値2と略記する)。
【0102】
評価値1及び2の値が50未満の場合、得られたポリマーは目視で白色〜淡黄色に相当し、50〜100の範囲の場合は目視で黄色に相当し、100を越える場合には、得られるポリマーは目視で褐色〜黒褐色に相当する値である。
【0103】
上記で得られた評価値1と評価値2の値を用い、以下の数式(1)に従って算出した値を着色度変化率として定義し、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの溶融成形加工時の熱安定性の指標として用いた。
着色度変化率(%)=(評価値2)/(評価値1)×100 ・・・式(1)
【0104】
(6)微粉の発生量
100gの脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の粒状物を50メッシュのふるい上で水洗し、粒状物表面に付着した50メッシュ未満のサイズの微粉を除去し、50メッシュ以上の粒状物とを分離する。微粉及びペレットを、室温(25℃)にて真空下、72時間乾燥させて、各々の重量を測定する。微粉の発生量は、乾燥後の微粉の質量の、乾燥後の微粉及び粒状物の質量の総和に対する質量分率で表す。微粉の発生量が0から2,000ppm以下の範囲の場合を◎、2,000ppm超過5,000ppm以下の範囲の場合を○、5,000ppm超過10,000ppm以下の場合を△、10,000ppm超過の場合を×とした。
【0105】
[樹脂製造例1]
ガラス製留出管及びグラスライニングされた平羽根型撹拌翼を備えた邪魔板付きのガラスライニングされた20リットルのオートクレーブに70質量%グリコール酸水溶液(米国デュポン社製Glypure70)を10kg及び原料水溶液に対して0.05質量%のテトライソプロポキシゲルマニウム(モノマー1g当たりゲルマニウム金属原子として2×10−6モル)を仕込んだ後に、攪拌を開始し、窒素置換を行った。
【0106】
引き続き、オートクレーブを窒素気流下にて150℃に加熱し、1.5時間保持して脱水を行った。次いで、圧力を徐々に下げ5.0×10Paで1時間、2.5×10Paで0.5時間、1.0×10Paで50分、5.0×10Paで50分、2.0×10Paで50分反応させた後、温度を200℃に昇温し、圧力を6.0×10Paに下げて120分重縮合反応を実施した。次いで得られた重縮合物を溶融状態を維持したまま、窒素置換されたステンレススチール製の20リットルのVCR重合機(登録商標;三菱重工(株)社製)に移送し、引き続き攪拌条件下、200℃、4×10Paにて6時間反応を継続した。
【0107】
得られたグリコール酸−乳酸共重合体の重量平均分子量は54,000、樹脂組成はグリコール酸単位含有率91モル%、乳酸単位含有率9モル%であり、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量は710個/gであった。
【0108】
[樹脂製造例2]
70質量%グリコール酸水溶液(米国デュポン社製Glypure70)を10kg、90質量%L−乳酸水溶液(オランダ国ピューラック社製HiPure90)を911g、日本国和光純薬社製試薬特級のネオペンチルグリコール106g、日本国和光純薬社製試薬特級のコハク酸119g及び原料水溶液に対して0.05質量%のテトライソプロポキシゲルマニウム(モノマー1g当たりゲルマニウム金属原子として2×10−6モル)を仕込んだこと以外は樹脂製造例1と同様に重縮合操作を実施した。
【0109】
得られたグリコール酸−乳酸−ネオペンチルグリコール−コハク酸共重合体の重量平均分子量は56,000、樹脂組成はグリコール酸単位含有率89モル%、乳酸単位含有率9モル%、ネオペンチルグリコール単位含有率1モル%、コハク酸単位含有率1モル%であり、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量は680個/gであった。
【0110】
[樹脂製造例3]
ガラス製留出管及びグラスライニングされた平羽根型撹拌翼を備えた邪魔板付きのガラスライニングされた20リットルのオートクレーブに70質量%グリコール酸水溶液(米国デュポン社製Glypure70)を10kg、90質量%L−乳酸水溶液(オランダ国ピューラック社製HiPure90)を911g及び原料水溶液に対して0.05質量%のテトライソプロポキシゲルマニウム(モノマー1g当たりゲルマニウム金属原子として2×10−6モル)を仕込んだ後に、窒素置換を行った。
【0111】
引き続き、オートクレーブを窒素気流下にて150℃に加熱し、1.5時間保持して脱水を行った。次いで、圧力を徐々に下げ、5.0×10Paで1時間、2.5×10Paで0.5時間、1.0×10Paで50分、5.0×10Paで50分、2.0×10Paで50分反応させた後、温度を200℃に昇温し、圧力を6.0×10Paに下げて120分重縮合反応を実施した。
【0112】
得られたグリコール酸−乳酸共重合体の重量平均分子量は15,000、樹脂組成はグリコール酸単位含有率91モル%、乳酸単位含有率9モル%、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量は730個/gであった。
【0113】
[樹脂製造例4]
重縮合条件を150℃、1.5時間、次いで、圧力を徐々に下げ5.0×10Paで1時間、2.5×10Paで0.5時間、1.0×10Paで50分、5.0×10Paで50分、2.0×10Paで50分反応させた後、温度を200℃に昇温し、圧力を6.0×10Paに下げて20分重縮合反応を実施した以外は、樹脂製造例1と同様にして、重縮合反応を実施した。
【0114】
得られたグリコール酸−乳酸共重合体の重量平均分子量は4,000、樹脂組成はグリコール酸単位含有率91モル%、乳酸単位含有率9モル%、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量は800個/gであった。
【0115】
[実施例1]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1A>
樹脂製造例1で製造した重量平均分子量が54,000、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量が710個/gのグリコール酸−乳酸共重合体を重合器からギアポンプで抜き出し、押し出し温度を200℃に設定したベント付き2軸押出機に供給した。該押出機に取り付けたダイス直径5.5mmのダイスから出た溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が950μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が8,000個/mlの50℃の水で満たされた長さ3mのストランドバスをくぐらせて冷却した後、温度20℃の空中に取り出し、クリーンエアで付着水を飛散させた後にペレタイザーでカットして直径2.6mm、長さ3mmの脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は830個であった。
【0116】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1B>
バットに脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aにて製造したペレット15kgを敷き詰め、真空乾燥機にて、80℃、1×10Paで含有水分量が800ppm以上1,000ppm以下の範囲になるまで乾燥した。得られた乾燥ペレットを、流通ガスを温調して導入可能な導入管及び外部冷却可能な流通ガスの留出管と十分な伝熱面積を有するトラップを備えた100リットルのダブルコーンドライヤーに充填し、留出管を外部から5℃に水冷、並びに、トラップを−40℃に冷却しながら、露点温度−80℃の窒素を30リットル(25℃、大気圧における値)/min流通させ、50℃にて1時間、80℃にて1時間、130℃にて2時間乾燥して水分量が200ppm以下となるまで乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0117】
<ペレットの耐熱変色性試験−1C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bにて得られたペレットの着色度は23であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は45であり、着色度変化率は196%であった。結果を表1に示す。
【0118】
[実施例2]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−2A>
溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が8,000個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は820個であった。
【0119】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−2B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−2Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0120】
<ペレットの耐熱変色性試験−2C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−2Bにて得られたペレットの着色度は23であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−2Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は40であり、着色度変化率は174%であった。結果を表1に示す。
【0121】
[実施例3]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−3A>
溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が80μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が8,000個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は825個であった。
【0122】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−3B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−3Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0123】
<ペレットの耐熱変色性試験−3C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−3Bにて得られたペレットの着色度は23であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−3Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は35であり、着色度変化率は152%であった。結果を表1に示す。
【0124】
[比較例1]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1a>
溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が1,150μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が7,800個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は830個であった。
【0125】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1b>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0126】
<ペレットの耐熱変色性試験−1c>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1bにて得られたペレットの着色度は23であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は105であり、着色度変化率は457%と大きかった。結果を表1に示す。
【0127】
[比較例2]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−2a>
樹脂製造例1で製造した重量平均分子量が54,000、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量が710個/gのグリコール酸−乳酸共重合体を重合器からギアポンプで抜き出し、添加剤(熱安定剤)としてトリスノニルフェニルホスファイトを100質量ppmの濃度で添加した後、押し出し温度を200℃に設定したベント付き2軸押出機に供給したこと、溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が1,150μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が7,800個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は820個であった。
【0128】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−2b>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−2aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0129】
<ペレットの耐熱変色性試験−2c>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−2bにて得られたペレットの着色度は23であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−2bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は70まで低下したが未だその値は大きく、着色度変化率も304%と大きかった。結果を表1に示す。
【0130】
[実施例4]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−4A>
溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が95,000個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は1510個と多かった。
【0131】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−4B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−4Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm超過5,000ppm以下の範囲であった。
【0132】
<ペレットの耐熱変色性試験−4C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−4Bにて得られたペレットの着色度は23であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−4Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は43であり、着色度変化率は187%であった。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例5]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−5A>
樹脂製造例1の代わりに樹脂製造例2で製造した重量平均分子量が56,000、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量が680個/gのグリコール酸−乳酸−ネオペンチルグリコール−コハク酸共重合体を用いたこと、溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が780個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は740個であった。
【0134】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−5B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−5Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下の範囲であった。
【0135】
<ペレットの耐熱変色性試験−5C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−5Bにて得られたペレットの着色度は20であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−5Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は39であり、着色度変化率は195%であった。結果を表1に示す。
【0136】
[実施例6]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−6A>
樹脂製造例1の代わりに樹脂製造例2で製造した重量平均分子量が56,000、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量が680個/gのグリコール酸−乳酸−ネオペンチルグリコール−コハク酸共重合体を重合器からギアポンプで抜き出し、添加剤(熱安定剤)としてトリスノニルフェニルホスファイトを100質量ppmの濃度で添加した後、押し出し温度を200℃に設定したベント付き2軸押出機に供給したこと、溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が780個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は730個であった。
【0137】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−6B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−6Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0138】
<ペレットの耐熱変色性試験−6C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−6Bにて得られたペレットの着色度は20であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−6Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は35であり、着色度変化率は175%であった。結果を表1に示す。
【0139】
[実施例7]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−7A>
溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が80個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例4の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−4Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は、700個であった。
【0140】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−7B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−7Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−4Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm以下であった。
【0141】
<ペレットの耐熱変色性試験−7C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−7Bにて得られたペレットの着色度は20であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−7Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は35であり、着色度変化率は175%であった。結果を表1に示す。
【0142】
[実施例8]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−8A>
樹脂製造例1の代わりに樹脂製造例3で製造した重量平均分子量が15,000、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量が730個/gのグリコール酸−乳酸共重合体を用いたこと、溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が780個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は、810個であった。
【0143】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−8B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−8Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、2,000ppm超過5,000ppm以下の範囲であった。
【0144】
<ペレットの耐熱変色性試験−8C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−8Bにて得られたペレットの着色度は18であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−8Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は40であり、着色度変化率は222%であった。結果を表1に示す。
【0145】
[実施例9]
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−9A>
樹脂製造例1の代わりに樹脂製造例4で製造した重量平均分子量が15,000、粒径1μm以上50μm以下の異物の含有量が800個/gのグリコール酸−乳酸共重合体を用いたこと、溶融樹脂ストランドを、電気伝導度が400μS/cm、粒径1μm以上50μm以下の異物量が780個/mlの20℃の水で冷却したこと以外は実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−1Aと同様の操作を行って、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットを得た。該ペレット中の粒径1μm以上50μm以下の異物量は、940個であった。
【0146】
<脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−9B>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造−9Aで得られたペレットを用いたこと以外は、実施例1の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−1Bと同様にして、ペレットの乾燥を行った。乾燥終了後のペレットの微粉の発生量を計測した結果、5,000ppm超過10,000ppm以下の範囲であった。
【0147】
<ペレットの耐熱変色性試験−9C>
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−9Bにて得られたペレットの着色度は17であった。脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−9Bにて得られた乾燥ペレットを、アルミ板で作成した型枠に入れ、230℃に設定した加熱プレス機で5分間、加熱、加圧し、25℃に設定した冷却プレスで冷却し、厚み200μmのシートを作成した。プレスシート成形後の着色度は40であり、着色度変化率は235%であった。結果を表1に示す。
【0148】
[参考例]
実施例7の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの乾燥−7Bにて得られたペレット(融点181℃グリコール酸−乳酸−ネオペンチルグリコール−コハク酸共重合体のペレット15gを内径40mm、有効長さ50mmのSUS316製円筒状竪型反応器に充填し、反応圧力101.3kPa(大気圧)にて、流量が20リットル(25℃、大気圧における値)/分、露点温度が−95℃の窒素ガスを、165℃に加熱して流通させながら、円筒状竪型反応器の内部温度を165℃に維持して、60時間反応させた。
【0149】
反応後に得られたグリコール酸共重合体は融着しておらず、その重量平均分子量は132,000であり、高い分子量を有するグリコール酸−乳酸−ネオペンチルグリコール−コハク酸共重合体の製造が可能であった。
【0150】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0151】
高い熱安定性を有し、高い温度における溶融成形加工時においても着色が少ないポリヒドロキシカルボン酸ペレット、並びに、工業的に効率よく、且つ、安定的に再現性よく該ペレットを製造する方法を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う製造方法により得られることを特徴とする脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレット。
【請求項2】
冷却水中に含有される粒径1μm以上50μm以下の異物量が、25℃で測定して10個/ml以下であることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレット。
【請求項3】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な化合物とを出発原料として、重縮合して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸のペレット。
【請求項4】
溶融押し出しされた脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の冷却工程及びその切断工程を含み、該冷却を25℃で測定した電気伝導度が0.01μS/cm以上1×10μS/cm以下の液体状態にある冷却水を用いて行う脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
【請求項5】
冷却水中に含有される粒径1μm以上50μm以下の異物量が、25℃で測定して10個/ml以下であることを特徴とする請求項4記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
【請求項6】
脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸が、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と、脂肪族ヒドロキシカルボン酸及び/又はその誘導体と共重合可能な化合物とを出発原料として、重縮合して得られることを特徴とする請求項4又は5に記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。
【請求項7】
冷却水により脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸を冷却した後に、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸の表面に付着している冷却水を除去する工程を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸ペレットの製造方法。

【公開番号】特開2012−139835(P2012−139835A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292281(P2010−292281)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】