説明

脂肪蓄積抑制剤及び飲食品

【課題】脂肪の蓄積を抑制するために有効な脂肪蓄積抑制剤を提供する。
【解決手段】下記の化学式(1)で示され、緑茶又は包種茶を抽出して得られるメチル化カテキンを有効成分量含有した。
[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチル化カテキンを有効成分として含有する抗肥満剤又は抗肥満剤を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の高脂肪・高カロリー化により、国民の肥満化が進行している。上半身肥満、耐糖能異常、高中性脂肪、高血圧は「死の四重奏」と呼ばれ、これらが重なると加速度的に動脈硬化や心疾患の曜患率が高まり、生命を脅かすとされている。このような生理学的異常の発現には、遺伝因子とともに食生活をはじめとする環境因子が大きく関わっているため、予防・改善するためには時として生活習慣を大きく変える必要があり、持続困難な自己規制を強いられることがある。誰もが受け入れられるような簡便な肥満の予防もしくは改善手段が望まれている。
【0003】
この問題を解決するために、食品又はこれに準ずる天然物から様々な有用物質が見出され、その生理機能を生かした機能性食品の研究が盛んに行なわれている。機能性食品は、健常な人が日常的に摂取することで血液脂質、血糖値、血圧等の改善が期待され、簡便な健康増進・疾病予防手段を提供するものである。中でも特に、肥満の予防もしくは改善作用が期待される素材としてはポリフェノール類が注目を集めつつあり、中でも緑茶由来のカテキン類は最も研究が進んでいる素材に数えられる。
【0004】
カテキン類とは緑茶特有のタンニン又はポリフェノールの一種であり、緑茶の味を決める主成分の一つである。このカテキン類は、抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用等、多様な作用があることが実証されているため、茶葉の粉末等を健康食品の原料に用いることによって、基礎代謝を向上させ、脂肪の燃焼を促進させることによって肥満を予防する方法が知られている(非特許文献1)。
【非特許文献1】村松敬一郎編 「茶の科学」朝倉書店(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように脂肪の燃焼を促進させ、肥満症を予防するためにカテキン類が有効であることは従来から知られていたものの、メチル化カテキンを選択的に含有させた脂肪蓄積抑制剤は未だ提案されていない。
【0006】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、メチル化カテキンを有効成分として含有する脂肪蓄積抑制剤及びこの脂肪蓄積抑制剤を含有した飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ある種の茶葉中に含有されるメチル化カテキンが脂肪蓄積抑制作用を有することを見出し、以下のような本発明を完成するに至った。
【0008】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 下記の化学式(1)で示され、緑茶又は包種茶を抽出して得られるメチル化カテキンを有効成分量含有する脂肪蓄積抑制剤。
【化1】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【0010】
(1)の発明によれば、メチル化カテキンを飲料に有効成分量含有したことによって、脂肪の蓄積を抑制することが可能となる。上述のように、カテキン類には、抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、殺菌作用、抗菌作用、消臭作用等様々な効果を有する。
【0011】
中でも、化学式(1)で示されるメチル化カテキンは、これらの作用効果のうち特に、抗アレルギー作用及び、中性脂肪の低減に優れている。中性脂肪の低減により、レムナント様リポタンパク−コレステロールや小粒子LDL−コレステロールの生合成が抑えられるため動脈硬化が予防され、さらに脂肪細胞の中性脂肪蓄積が抑えられることで肥満症の発症リスクが低減される。
【0012】
また、中性脂肪は肝リパーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解されて肝細胞に取り込まれるため、血清中の中性脂肪値の上昇は脂肪肝、さらには肝炎や肝硬変のリスクを高めるが、(1)の発明によれば、メチル化カテキン飲料に有効成分量を含有したことによって、中性脂肪値が抑えられるため、これらの胆肝機能障害を予防することも可能となる。
【0013】
また、「脂肪蓄積抑制剤」とは、上述のような脂肪の蓄積を抑制する効果を奏するものをいう。さらに、「有効成分量」とは、脂肪の蓄積を抑制する効果を奏する有効成分が、十分な効果を奏すると判断される場合の含有量をいう。具体的には、飲料100ml当たり、メチル化カテキンを2mgから100mg含有することをいう。
【0014】
(2) 前記メチル化カテキンは「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉由来のものである(1)に記載の脂肪蓄積抑制剤。
【0015】
(2)の発明によれば、メチル化カテキンは、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」、及び「おくみどり」等の品種の茶葉固有のものであるため、これらの茶葉を用いたことによって、脂肪の蓄積を抑制することが可能となる。また、メチル化カテキンを含有する茶葉として上記の品種の茶葉を挙げたが、特にこれらの品種に限られるものではない。
【0016】
(3) 脂肪の蓄積を抑制するために有効であるために用いられる旨の表示、及び/又は脂肪蓄積抑制剤として有効成分量含有する旨の表示を付したものである(1)又は(2)に記載の脂肪蓄積抑制剤。
【0017】
(3)の発明によれば、脂肪の蓄積を抑制するために有効であるために用いられる旨の表示、及び/又は脂肪蓄積抑制剤として有効成分量含有する旨の表示を付したことによって消費者に本発明に係る脂肪蓄積抑制剤の効能を印象付けることが可能となる。
【0018】
(4) (1)から(3)いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、飲料100mlあたり2mgから100mg含有する飲料。
【0019】
(4)の発明によれば、飲料中100ml中のメチル化カテキンの含有量を上記の量とすることによって、渋みが少なく、飲みやすい飲料を提供することが可能となる。メチル化カテキンの含有量が100mg以上であると「苦渋味」が増加するため、飲料に適さない。また、2mg以下であると十分な効果を奏することができない。
【0020】
(5) (1)から(3)いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、100gあたり100mgから5000mg含有する食品。
【0021】
食品の場合、メチル化カテキンの含有量は飲料に含有される場合よりも多いことが好ましい。(5)の発明によれば、食品又は医薬品100g中のメチル化カテキンの含有量を上記の量とすることによって、渋みが少なく、摂取しやすい食品又は医薬品を提供することが可能となる。また、メチル化カテキンの含有量が5000mg以上であると「苦渋味」が増加するため、口腔にて摂取するには適さない。また、2mg以下であると十分な抗肥満効果を奏することができない。
【0022】
(6) (1)から(3)いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、2mgから200mg含有する医薬品。
【0023】
医薬品の場合、メチル化カテキンの含有量は食品に含有される場合よりも多いことが好ましい。(6)の発明によれば、錠剤あたりのメチル化カテキンの含有量を上記の量とすることによって、渋みが少なく、摂取しやすい医薬品を提供することが可能となる。
【0024】
(7) (1)から(3)いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、飲料に有効成分量含有させることにより、この飲料に脂肪蓄積抑制作用を新たに付与する方法。
【0025】
(8) 下記の化学式(1)で示され、緑茶又は包種茶を抽出して得られるメチル化カテキンを有効成分量含有する機能性飲料であって、
脂肪の蓄積を抑制するために有効であるために用いられる旨の表示、及び/又は脂肪蓄積を抑制する旨の表示を付したものである機能性飲料。
【化2】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る機能性飲料によれば、脂肪の蓄積を抑制し、眠気などの副作用を誘発することなく、かつ万人向けの風味を有する飲食品及び脂肪蓄積抑制剤を提供することが可能となる。これにより、茶を飲むという日常的に行われている行為により、高脂血症剤、肥満剤、肝疾患等の生活習慣病を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0028】
[脂肪蓄積抑制剤の製造]
本発明に係る脂肪蓄積抑制剤は、所定の茶葉由来のメチル化カテキン成分を有効成分量含有する。ここで「メチル化カテキン」とは、化学式(1)で示されるものであり、メチル化されたカテキン及び精製の際の不可避成分をいう。本発明におけるメチル化カテキンは主として、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、ECG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、ECG4”Meという)、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、EGCG4”Meという)、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、GCG3”Meという)、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、CG3”Meという)、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、CG4”Meという)、又は、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、GCG4”Meという)及びこれらの異性化体を含むことが好ましい。
【化3】

【0029】
本発明に係る脂肪蓄積抑制剤は、所定の茶葉からメチル化カテキンを従来公知の方法を用いて抽出して得られる。メチル化カテキンを含有している所定の茶葉としては、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「鳳凰単叢」、「鳳凰水仙」、「白葉単叢水仙」、「黄枝香」、「武夷水仙」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物などが挙げられる。これらの茶葉を単一種又は複数種混合して用いてもよい。
【0030】
また、抽出際の温度は、溶媒の融点より高く、沸点より低い温度であれば、特に限定されるものではないが、水では10℃から100℃、エタノールおよびメタノールでは10℃から40℃が望ましい。抽出時間は10秒から24時間の範囲とするのが好ましい。
【0031】
例えば、乾燥させた茶葉を破砕、粉砕等により粉末化処理したものに、抽出溶媒を添加して抽出物又はその処理物として用いることが好ましい。抽出溶媒としては、水;低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等が挙げられるが、水、エタノール、又は水−エタノール混合溶媒が好ましい。
【0032】
得られた抽出物は、そのまま本発明に係る脂肪蓄積抑制剤として用いることも可能であるが、化学分離精製手法として一般的に用いられる方法を使用することが好ましい。例えば、液−液分配、薄層クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、分配カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、電気泳動や高速液体クロマトグラフィーなどを用いることができる。また、必要に応じこれらの分離精製手段を組み合わせて行なってもよい。
【0033】
本発明に係る脂肪蓄積抑制剤は、飲料、医薬、食品等のような各種用途に用いることができる。食品としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品などに食品添加物として配合することができる。添加対象の食品としては、各種食品に可能である。飲料としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品としての飲料やその他の栄養飲料、健康飲料、各種の健康茶、その他の飲料などに配合できる。他の食品としては、菓子類、パン、麺類、大豆加工品、乳製品、卵加工品、練り製品、油脂、調味料等が挙げられる。
【0034】
具体的な製造方法としては、上記所定の茶葉の抽出物を使用する。この際、茶葉そのものを粉砕した粉砕物を混合してもよい。また、生化学的に合成したメチル化カテキンを混合してもよい。
【0035】
なお、飲料及び食品中で、上記のメチル化カテキンが十分な脂肪蓄積抑制効果を奏するために酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0036】
例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。クエン酸もしくはリンゴ酸を飲料中に0.1〜5g/L、好ましくは0.5〜2g/L含有するのがよい。酸化防止剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、があげられる。飲料中に、0.005〜0.5質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%含有するのがよい。
【0037】
飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。
【0038】
また、上記の容器は例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた所定の殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して、容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【0039】
また、本発明に係る脂肪蓄積抑制剤を有効成分とする医薬としては、アレルギー性鼻炎や高脂血症、肥満症、肝疾患の治療目的に使用するものが挙げられる。
【0040】
医薬に関しては、本発明に係る組成物をそのまま、あるいは水等で希釈して、経口的に投与できる。もしくはこれを公知の医薬用担体と共に製剤化することにより調製される。例えば、シロップ剤などの経口液状製剤として、またはエキス、粉末などに加工して、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口固形製剤として投与できる。薬学的に許容できる担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、賦形剤、懸濁化剤、結合剤などとして配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色料、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【実施例】
【0041】
[実施例1:錠剤の製造]
べにふうきは30倍量の純水を用いて、90℃で抽出を行って得た抽出液中のメチル化カテキン成分を、有機溶媒を用いた合成樹脂の吸脱着により精製した。この精製物1gとべにふうき粉末19g、乳糖60g、及びステアリン酸マグネシウム15gを均一に混合し、常法に従って錠剤、カプセル剤とした。
【0042】
[実施例2:錠剤の製造]
実施例1に記載の方法で得られた精製物200mgをカプセルに封入してカプセル剤とした。
【0043】
[実施例3:散剤の製造]
実施例1に記載の方法で得られた精製物2gと、べにふうき茶葉粉末78gと澱粉及び乳糖をそれぞれ10g均一に混合し、常法に従って散剤とした。
【0044】
[実施例4:飴の製造]
実施例1に記載の方法で得られた精製物2gと、べにふうき茶葉粉末8gショ糖20g、水飴(75%固形分)60g、水9.5g、着色料0.45g及び香料0.05gを常法に従って飴とした。
【0045】
[実施例5:クッキーの製造]
実施例1に記載の方法で得られた精製物2gと、べにふうき茶葉粉末8g、薄力粉32g、全卵16g、バター16g、砂糖25g、水10.8gベーキングパウダー0.2gを常法に従ってクッキーとした。
【0046】
[実施例6:飲料の製造]
べにふうきの茶葉は30倍量の純水を用いて、90℃で抽出を行って得た抽出液を、重曹などの水質調整剤及びビタミンCを添加混合した。殺菌し密封容器に窒素充填して試験飲料1とした。
【0047】
[実施例7:培養脂肪細胞の中性脂肪蓄積阻害作用の検討]
メチル化カテキン成分は、佐野らの方法(J,Agr1c.Food.Chem.1999,47,1906−1910)に従って精製した。この方法は具体的には、有機溶媒で抽出して、HP−20のカラムにより精製する方法をいう。体重250gの雄性SDラットより精巣周囲の脂肪組織を採取し、常法に従って組織をコラゲナーゼとヒアルロニターゼで処理して細胞を分散させ、細胞浮遊液を調製した。また、遠心分離により浮遊した成熟脂肪細胞と、沈降した脂肪細胞前駆細胞を含む細胞群を分離回収し、前者をフラスコ中で、後者を96六ウェルの培養プレート中で(3万個/0.1mL培地/ウェル)3日間培養した。
【0048】
次いで、成熟脂肪細胞の培養上情を回収し、一定濃度になるようメチル化カテキン成分を添加した後、前駆細胞のウェルに0.1mLずつ添加した。前駆細胞をさらに4日間培養した後、半数のウェルにAlamarB1ue液を添加して、2時間培養し、細胞のバイアビリティーを測定した。残りのウェルについては細胞を洗浄した後、細胞中の中性脂肪濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0049】
これより、メチル化カテキン成分は、脂肪細胞前駆細胞のバイアビリティーには影響することなく、中性脂肪の蓄積を濃度依存的に抑制することが示された。
【0050】
[実施例8:べにふうき茶菓の抗肥満作用]
4適齢の雄性ICR系マウスを8匹ずつ3群に分け、それぞれに精製飼料(AIN−93G)、及びやぶきた茶葉粉末を1%添加した精製飼料、べにふうき茶葉を0.5%添加した精製飼料を7週間自由摂取させた。飼育終了後、体重、精巣脂肪重量、肝臓中の中性脂肪濃度を試験群間で比較した。なお、べにふうき茶葉の飼料への添加量は、やぶきた茶葉と総カテキン量を合わせるため半量とした。その結果を表2に示す。
【表2】

【0051】
表2に示した通り、べにふうき茶葉は、メチル化カテキンを含有しないやぶきた茶葉を明らかに上回る体重、精巣周囲脂肪重量、肝臓中性脂肪濃度の低減効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(1)で示され、緑茶又は包種茶を抽出して得られるメチル化カテキンを有効成分量含有する脂肪蓄積抑制剤。
【化1】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【請求項2】
前記メチル化カテキンは「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉由来のものである請求項1に記載の脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
脂肪の蓄積を抑制するために有効であるために用いられる旨の表示、及び/又は脂肪蓄積抑制剤として有効成分量含有する旨の表示を付したものである請求項1又は2に記載の脂肪蓄積抑制剤。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、飲料100mlあたり2mgから100mg含有する飲料。
【請求項5】
請求項1から3いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、100gあたり100mgから5000mg含有する食品。
【請求項6】
請求項1から3いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、2mgから200mg含有する医薬品。
【請求項7】
請求項1から3いずれかに記載の脂肪蓄積抑制剤を、飲料に有効成分量含有させることにより、この飲料に脂肪蓄積抑制作用を新たに付与する方法。
【請求項8】
下記の化学式(1)で示され、緑茶又は包種茶を抽出して得られるメチル化カテキンを有効成分量含有する機能性飲料であって、
脂肪の蓄積を抑制するために有効であるために用いられる旨の表示、及び/又は脂肪蓄積を抑制する旨の表示を付したものである機能性飲料。
【化2】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]

【公開番号】特開2006−298792(P2006−298792A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119858(P2005−119858)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】