説明

脂肪酸を含有するS−ニトロソタンパク質とその製法

【課題】
タンパク質の構造を変化させることなく、システイン残基に効率よくNOを付加させ、生体内へNOを供与することが可能なニトロソタンパク質を提供する。
【解決手段】
発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、タンパク質に脂肪酸、N−アセチルアミノ酸などの安定化剤を含有することにより、チオール基とNOが反応し、S−ニトロソアルブミンを提供することが可能となり、本発明に到達した。特にアルブミンにおいては、脂肪酸、N−アセチルアミノ酸などの安定化剤を含有することにより、34番目のシステインの反応性を高め、速やかにシステインとNOが反応し、S−ニトロソアルブミンを提供することが可能となり、本発明に到達した。本発明のS−ニトロソタンパク質は、SH基と一酸化窒素との結合効率や安定性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸を含有するS−ニトロソタンパク質及び、その製造方法に関するものである。さらに詳しくは、S−ニトロソグルタチオンとタンパク質溶液を混合するだけで、効率よく一酸化窒素を付加されたS−ニトロソタンパク質に関するもので
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素(以下、NOと略記する)は生理機能の調節、病態発現、治療への応用など多岐にわたり研究されているが、特に虚血性疾患や臓器移植時などでは血流減少に伴う基質枯渇に起因する内因性NOの産性低下により様々な障害が引き起こされるため、外因的なNOの補充(NO補充療法と称されている)が必要不可欠となっている。これまでに、NO補充療法として、NOの吸入療法などが試みられてきたが、NO自身の反応性の高さ及び多様性のため、生体内での消失が極めて短時間であること及び選択的に有益な効果を得ることが困難であるという現状があった(非特許文献1)。
【0003】
また、生体内においてはNOはタンパク質などのチオール基(以下、SH基と略記する)と反応し、S−ニトロソチオール(以下、RS−NOと略記する)へと変換され、比較的安定な状態を保ち、NOリザーバーとして働き、生体内のNO濃度の調節に関与していることが知られている(非特許文献2)。
【0004】
ニトロソ化したタンパク質が有用である事例として、構成アミノ酸配列のうち1つ以上のアミノ酸残基に変異を有するアルブミン変異体を用いて、ニトロソ化の効率、およびその抗菌活性を種々の細菌感染モデル動物を用いて解析した結果、該アルブミン変異体が効率的にニトロソ化され、そのニトロソ化体が、NOや低分子のニトロソチオールに比べて、より強力な抗菌活性を示すことが報告されている(特許文献1)。
【0005】
一方、NOの輸送タンパク質としてアルブミンを使用することが可能であるが、アルブミンにはフリーのシステイン残基は34番目に存在するものの、反応性が極めて低い。そのため、アルブミンとNO供与剤の反応を試みても、速やかにS−ニトロソアルブミンが得られないことが知られている。そこで、アルブミンにNOを付加させるために、適当な化学修飾剤を付加させて結合効率を高めるか、アルブミンのアミノ酸の一部をシステインに変異させる事によって反応効率を高める方法が知られているが、これらの方法はアルブミン本来の構造を変化させてしまうため、生体内での挙動が変化するなどの問題があった。
【非特許文献1】Ignarro LJ et al. Pharm Res. 1989, 6, 651-659
【非特許文献2】Ignarro LJ et al.J Pharmacol Exp Ther. 1981, 218 739-749
【特許文献1】特開2005−206577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンパク質の構造を変化させることなく、システイン残基に効率よくNOを付加させ、生体内へNOを供与することが可能なニトロソタンパク質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、タンパク質に脂肪酸、N−アセチルアミノ酸などの安定化剤を含有することにより、チオール基とNOが反応し、S−ニトロソアルブミンを提供することが可能となり、本発明に到達した。特にアルブミンにおいては、脂肪酸、N−アセチルアミノ酸などの安定化剤を含有することにより、34番目のシステインの反応性を高め、速やかにシステインとNOが反応し、S−ニトロソアルブミンを提供することが可能となり、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせの安定化剤を含有するS−ニトロソタンパク質。
(2)N−アセチルアミノ酸がN−アセチルトリプトファン又はN−アセチルメチオニンである(1)記載のS−ニトロソタンパク質。
(3)脂肪酸がオレイン酸又はカプリル酸である(1)記載のS−ニトロソタンパク質。
(4)脂肪酸塩がカプリル酸ナトリウムである(1)記載のS−ニトロソタンパク質。
(5)N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせの安定化剤を含有するタンパク質溶液に、一酸化窒素供与剤を含有させてS−ニトロソタンパク質を製造する方法。
(6)一酸化窒素供与剤がS−ニトロソグルタチオンである(5)記載の製造方法
(7)(1)〜(4)記載のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する虚血性疾患の改善剤。
(8)(1)〜(4)記載のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する臓器移植時の臓器保護剤。
(9)(1)〜(4)記載のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する医薬組成物。
(10)安定化剤を含有するアルブミン製剤と一酸化窒素供与剤とを投与24時間前〜投与直前に混合調整することにより得られる(9)記載の医薬組成物
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のS−ニトロソタンパク質は、N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせの安定化剤を含有することにより、SH基と一酸化窒素との結合効率や安定性を高めることができる。例えばタンパク質がアルブミンの場合は、その構造変化がほとんどなく、安定なS−ニトロソチオール形態のものが得られる。
【0010】
S−ニトロソアルブミンは、虚血性疾患や臓器移植時などで血流減少に伴う基質枯渇に起因する内因性NOの産生低下により引き起こされる様々な障害に対して、NOの供与源として働き、活性酸素種からの虚血部位臓器の保護作用を示す。さらにS−ニトロソタンパク質は、肝組織血流の改善、好中球浸潤の抑制、好アポトーシス作用などの生理活性が期待できる。さらには、タンパク質例えばアルブミンは、構造変化がほとんどないことから異種タンパクと認識されず、人体に対して安全に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、ニトロソ化とは、ニトロソ基(−NO)が付加されることである。タンパク質のニトロソ化は、タンパク質中のチオール基へニトロソ基が付加されることが好ましく、亜硝酸塩、S−ニトロソグルタチオン(以下、GSNOと略記する)、S−ニトロソシステイン、S−ニトロソ−N−アセチル−DL−ペニシラミン、propylamine NONOate等の一酸化窒素供与剤と反応させる公知の方法によって達成することができる。
【0012】
本発明における、ニトロソ化されるタンパク質は特に特定されるものでなく、一般的なタンパク質でも可能である。例えば、アルブミン、グロブリン、ヘパリン、ヘモグロビン、α1-アンチトリプシン等チオール基を有するタンパク質であれば良い。中でも血液中に存在する、アルブミン、グロブリン、ヘパリンが好適である。また、これらタンパク質は遺伝子操作で製造されたものでも充分に用いることができる。医薬品として用いる場合は、ヒト由来のものがよくその場合、個体から採取されたものでも遺伝子操作で製造されたものでもかまわない。特に、ヒト由来のアルブミンは個体から採取されたものでも遺伝子操作で製造されたものでも好適である。
【0013】
本発明におけるタンパク質に含有させる安定化剤は、N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせができる。この安定化剤の存在により、例えばアルブミンのアミノ酸配列34番目のチオール基を一酸化窒素を付加させるニトロソ化が可能となり、ニトロソ化後も安定なタンパク質となりうるのである。
【0014】
タンパク質に含有させる脂肪酸又は脂肪酸塩は、特に限られるものでは無く、一般式CC00Hの内、n=2〜30がよく、さらにはn=4〜20、より好ましくはn=6〜10のものがよい。例えば、カプリル酸、カプロン酸、カプリン酸が挙げられるが、その中でもカプリル酸が好適である。脂肪酸塩としては、そのナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0015】
タンパク質に含有するときの脂肪酸又は脂肪酸塩の濃度は0.01〜100mMがよく、さらには0.1〜50mM、より好ましくは1〜20mMがよい。タンパク質に含有するときの脂肪酸又は脂肪酸塩は、特に決まった方法が有るものでなく、予め含有している状態でも適当な量を添加してもよく、混合状態であればタンパク質のニトロソ化において充分に良好な環境となる。
【0016】
また、安定化剤として含有するN−アセチルアミノ酸としては、N−アセチルトリプトファンやN−アセチルメチオニン等のアミノ酸成分が挙げられる。
【0017】
その他、薬剤の賦形剤が含有していてもニトロソ化において特に問題は無い。
【0018】
ニトロソ化においては、例えばカプリル酸等の脂肪酸と、例えばアルブミン等のタンパク質との溶液に、ニトロソ化の為の一酸化窒素供与剤を含有させることで、タンパク質のチオール基がニトロソ化する。
【0019】
一酸化窒素供与剤としては、亜硝酸塩、GSNO、S−ニトロソシステイン、S−ニトロソ−N−アセチル−DL−ペニシラミン、propylamine NONOate等が挙げられるが、GSNOが好適である。
【0020】
タンパク質をニトロソ化するときの、一酸化窒素供与剤の含有量は、0.01〜50mMがよく、さらには0.1〜30mM、より好ましくは1〜10mMがよい。
【0021】
タンパク質をニトロソ化するときの温度は、4〜40℃がよく、さらには15〜40℃、より好ましくは25〜37℃がよい。その時の時間は、1〜360分がよく、さらには10〜300分、より好ましくは20〜180分がよい。
【0022】
タンパク質の中でも化学修飾されていないアルブミンにおいては、そのアミノ酸配列の34番目のアミノ酸のチオール基がニトロソ化される。このとき、アミノ酸の分子内開裂や分子間開裂を伴うものでなく、非常に温和な状況でニトロソ化されることから、本来のアルブミンとしての機能や立体構造を損なうことがほとんどない。
【0023】
また、例えばアルブミンの中にはチオール基が分子内架橋している場所が17個存在するが、それを開裂した後この脂肪酸存在下でニトロソ化することもできる。
【0024】
本発明のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンである場合、そのものが虚血性肝疾患モデル動物に有効であり、それを含有する虚血性疾患の改善剤とすることができる。
【0025】
本発明のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンである場合、そのものが抗アポトーシス効果や抗酸化物質の誘導作用を有することから臓器移植時の臓器保護剤とすることができる。
【0026】
これら本発明の改善剤や保護剤の投与方法は、経口投与、皮下注射投与、静脈内投与などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0027】
本発明のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する医薬組成物とすることができる。医薬組成物としては、例えば錠剤を構成する一般的な賦形剤、滑沢剤、結合剤等と本発明のS−ニトロソアルブミンとで成るものや、注射剤を構成する一般的な溶媒、等張化剤、pH調整剤、防腐剤等と本発明のS−ニトロソアルブミンとで成るもの等が挙げられる。
【0028】
さらには、安定化剤を含有するアルブミン製剤と一酸化窒素供与剤とを別包装しておき、投与24時間前〜投与直前に混合調整する様な医薬組成物も挙げられる。S−ニトロソアルブミンは、N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせの安定化剤を含有することで従来のものより安定化しているものの、投与24時間前〜投与直前に混合調整しうる医薬組成物とすることで、より安定に供給しうるものとすることができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
カプリル酸16.0mMとN−アセチルトリプトファン18.6mMを含有する3mMの遺伝子組み換えヒト血清アルブミン(以下、HSAと略記する)製剤溶液について、そのSH基の感受性を5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(以下、DTNB法と略記する)を用いて波長405nmの吸光度を測定することにより確認した。その結果を図1に示す。
【0030】
図1の■印での経時変化に示されるごとく、アルブミン製剤では30分程度で反応がプラトーに達しており、カプリル酸16.0mMを含有するHSA製剤溶液におけるアルブミンのSH基が感受性の高いことを確認した。
【0031】
(比較例1)
カプリル酸16.0mMとN−アセチルトリプトファン18.6mMを含有する上記HSA製剤に活性炭を加え、脱脂処理を施した同濃度のアルブミンについて、実施例1と同様にそのSH基の感受性を確認した。その結果を図1に示す。
図1の●印での経時変化に示されるごとく、脱脂処理済アルブミンでは吸光度が緩やかに上昇し、30分が経過してもまだ反応がプラトーに達しなかった。
【0032】
(実施例2)
1.6mM カプリル酸及び1.86mM N−アセチルトリプトファンを含有した300μM HSA溶液を調製し、HSAのモル比で5倍量のGSNOを加え37℃、1分間反応させてS−ニトロソHSA試料を得た。その後その試料について、4℃保存で遮光あり、4℃保存で遮光なし、25℃保存で遮光あり、25℃保存で遮光なしのそれぞれの条件で10日間保存試験を行い、経時的にNO濃度をGriess試薬を用いたHPLC-flow reactor system法で測定することによりHSAのニトロソ化状態を確認した。
【0033】
その結果を図2に示す。4℃遮光ありの条件と4℃遮光なしの条件ではニトロソ基の残存率に大きな差はみられなかったものの、25℃保存の条件では遮光ありの条件に比べ、遮光なしの条件においてNOの消失が極端に早かった。今回の検討ではNOドナーであるGSNOの除去操作を行っていないことから、残存率が5日目まで徐々に上昇したと考えられる。
【0034】
(比較例2)
1.6mMカプリル酸及び1.86mM N−アセチルトリプトファンを含有しない300μMHSA溶液を用いた以外は、実施例2と全て同様にした。その結果、安定性を見るまでもなくHSAのニトロソ化そのものを観察しなかった。
【0035】
(実施例3)
1.6mMカプリル酸及び1.86mM N−アセチルトリプトファンを含有する300μMのHSA溶液を調製し、1.5mM S−ニトロソチオール(GSNO)溶液を添加し、遮光下37℃で約30分混合してS−ニトロソHSA試料を得た。その試料について、NO濃度をGriess試薬を用いたHPLC-flow reactor system法で測定することによりHSAのニトロソ化を確認した。
【0036】
(試験例1)
実施例3で得られたS−ニトロソアルブミンの構造を確認するため、円二色性スペクトル(Jasco J-720型分光偏光計、以下、CD−スペクトルと略記する)を測定した。その結果を図3、図4に示した。
【0037】
図3より、二次構造を反映する遠視外領域におけるニトロソHSA試料のスペクトルは、HSAとほぼ同様のCD−スペクトルを示し、アルブミン本来のα-へリックス構造を維持していることが観察された。
【0038】
また、図4より、三次構造を反映する近紫外領域のスペクトルもニトロソアルブミンはHSAとほぼ同様のCD−スペクトルを示し、アルブミン本来の三次構造を維持していることが観察された。以上より、実施例3で得られたニトロソHSA試料はHSA本来の構造を十分に保持している。
【0039】
(試験例2)
実施例3により得られたS−ニトロソHSA試料を60℃で10時間の低温殺菌を行った。定温殺菌処理後のS−ニトロソHSA試料について、SDS電気泳動(以下、SDS−PAGEと略記する)におけるジチオトレイトール(以下、DTTと略記する)の存在、非存在下での、タンパク質の凝集化の有無を確認した。その結果を、図5に示す。
【0040】
低温殺菌処理後のニトロソHSA試料は、HSA、ニトロソHSA(以下、S−NO−HSAと略記する)と同様、凝集化が認められなかった。すなわち、低温殺菌処理後のニトロソHSA試料は、低温殺菌でも安定である。
【0041】
(試験例3)
ラットにおいてエーテル麻酔下、腹部を正中切開で開腹し肝臓を露出させ、中葉及び左葉のみが虚血状態になるように問脈と肝動脈を同時にクリップで挟み、45分間血流を遮断し、その後血流を回復させる虚血再灌流障害モデルを用いて、ニトロソHSA試料の評価を行った。その評価として、60分後に誘導されるAST及びASTの血漿中濃度を測定した。
【0042】
すなわち、再灌流後、実施例3で得られたニトロソHSA試料を0.1μmol/kg又は0.5μmol/kgそれぞれを別途直ちに静脈内投与した。比較としてHSA0.5μmol/kgを別途同様に投与した。その結果を図6に示した。
【0043】
図6より、ニトロソHSA試料0.5μmol/kg投与群において、アラニンアミノ基転移酵素値(以下、ALT値と略記する)及びアスパラギン酸アミノ基転移酵素値(以下、AST値)の上昇はHSA投与群に比べ有意に抑制された。このことは、ニトロソHSA試料が肝臓虚血再灌流障害に効果を有することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】脂肪酸存在下のHSAにおけるSH基感受性の経時変化を示す。■印のアルブミン製剤は、試料が脂肪酸存在下のHSA(実施例1)である。●印の脱脂済アルブミンは、試料が脱脂されたHSA(比較例1)である。縦軸は、DTNBがSH基と反応して遊離される3−カルボキシ−4−ニトロチオフェノレートイオンの405nmの吸光度を示す。
【図2】ニトロソHSA試料を各条件で保存した場合の、HSA溶液のNO付加率の経時変化を示す。縦軸は、S−nitroso moietyすなわちNO付加率を表す。----●----印は、4℃保存で遮光あり、――●――印は、4℃保存で遮光なし、----■----印は、25℃保存で遮光あり、――■――印は、25℃保存で遮光なしの保存条件である。縦軸は、1mol HSAあたりのNO濃度を示す。
【図3】遠紫外領域(Far−UV CD spectra)におけるニトロソHSA試料のスペクトルを示す。縦軸は[θ]すなわちmol楕円率を、横軸は波長を表す。波線のHSAはニトロソ化されていないアルブミンを、実線のS−NO−HSAはニトロソHSA試料を示す。
【図4】近紫外領域(Near−UV CD spectra)におけるニトロソHSA試料のスペクトルを示す。縦軸は[θ]すなわちmol楕円率を、横軸は波長を表す。波線のHSAはニトロソ化されていないアルブミンを、実線のS−NO−HSAはニトロソHSA試料を示す。
【図5】定温殺菌処理後のS−ニトロソHSA試料について、SDS−PAGEした泳動のバンドを示す。1:分子量マーカーは分子量マーカーとしてtrypsin inhibitor(分子量:20,100)、carbonic anhydrase(分子量:30,000)、ovalbumin(分子量:45,000)、albumin(分子量:66,000)、phosphorylase b(分子量:97,000)試料を、2:HSAはニトロソ化されていないアルブミンを、3:S−NO−HSAはS−ニトロソHSA試料を、4:S−NO−HSA(60℃、10h)は低温殺菌処理後のニトロソHSA試料を示す。
【図6】ラットにおける、低温殺菌処理後のニトロソHSA試料の虚血前と再灌流後とのALTとASTとのレベルの変動を示す。縦軸のALTはアラニンアミノ基転移酵素量を、ASTはアスパラギン酸アミノ基転移酵素量を表す。白い棒線で示したHSA0.5μmol/kgはニトロソ化されていないアルブミン0.5μmol/kg投与の場合を、黒い棒線で示したS−NO−HSA0.1μmol/kgはニトロソHSA試料0.1μmol/kg投与の場合を、斑点の棒線で示したS−NO−HSA0.5μmol/kgはニトロソHSA試料0.5μmol/kg投与の場合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせの安定化剤を含有するS−ニトロソタンパク質。
【請求項2】
N−アセチルアミノ酸がN−アセチルトリプトファン又はN−アセチルメチオニンである請求項1記載のS−ニトロソタンパク質。
【請求項3】
脂肪酸がオレイン酸又はカプリル酸である請求項1記載のS−ニトロソタンパク質。
【請求項4】
脂肪酸塩がカプリル酸ナトリウムである請求項1記載のS−ニトロソタンパク質。
【請求項5】
N−アセチルアミノ酸、脂肪酸又は脂肪酸塩から選ばれる1つ又は複数の組み合わせの安定化剤を含有するタンパク質溶液に、一酸化窒素供与剤を含有させてS−ニトロソタンパク質を製造する方法。
【請求項6】
一酸化窒素供与剤がS−ニトロソグルタチオンである請求項5記載の製造方法
【請求項7】
請求項1〜4記載のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する虚血性疾患の改善剤。
【請求項8】
請求項1〜4記載のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する臓器移植時の臓器保護剤。
【請求項9】
請求項1〜4記載のS−ニトロソタンパク質がS−ニトロソアルブミンでありそれを含有する医薬組成物。
【請求項10】
安定化剤を含有するアルブミン製剤と一酸化窒素供与剤とを投与24時間前〜投与直前に混合調整することにより得られる請求項9記載の医薬組成物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−50294(P2008−50294A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227427(P2006−227427)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年8月8日 日本血液代替物学会発行の「日本血液代替物学会 会誌 人工血液 Vol.14(1)」に発表
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】