説明

脂肪酸エステルの製造方法

【課題】より低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を得ること。
【解決手段】油脂と、一価の低級アルコールと、固体触媒粉体とを、前記低級アルコールの沸点近傍の温度、若しくは摂氏50℃から80℃の温度範囲に加熱および撹拌混合した後、該固体触媒粉体を分離して、内燃機燃料に使用可能な脂肪酸エステルを生成させる脂肪酸エステルの製造方法において、前記固体触媒粉体としてプラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単体、若しくはその他の内燃機燃料である軽油やガソリンやエタノール等に混合して、内燃機燃料として使用することのできる脂肪酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題の見地から、化石燃料の使用により排出される二酸化炭素の量を抑制するため、これら化石燃料の代替えとして、大気中の二酸化炭素が固定された植物由来の油脂、つまり植物油や、動物由来の動物油をエステル交換により脂肪酸エステルとして使用することがなされてきている。
【0003】
そして、これら油脂を脂肪酸エステルとする方法としては、アルカリ触媒法が一般的であり、これらアルカリ触媒法で製造された菜種やひまわり油や廃食油を原料とする脂肪酸エステル(FAME)が実用化されているとともに、近年、パーム油由来の脂肪酸エステル(FAME)が多く検討されてきている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−197047
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアルカリ触媒法は、洗浄廃液の処理を十分に行えば、反応条件が穏やかであるとともに量産性もあり、比較的高いエステル化率の脂肪酸エステル燃料(FAME)を得ることができるものの、これら得られる脂肪酸エステル燃料(FAME)、特にパーム油由来の脂肪酸エステル(FAME)は、従来燃料である軽油に比較して、低温において凝固しやすく、寒冷地においては、凝固によりエンジンの始動が不能となるので、これら脂肪酸エステル燃料(FAME)を単体では使用できないという問題があり、これら脂肪酸エステル燃料(FAME)の低温特性を改良できる製造方法が切望されていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、従来に比較して、より低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を得ることのできる脂肪酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の脂肪酸エステルの製造方法は、
油脂と、一価の低級アルコールと、固体触媒粉体とを、前記低級アルコールの沸点近傍の温度、若しくは摂氏50℃から80℃の温度範囲に加熱および撹拌混合した後、該固体触媒粉体を分離して、内燃機燃料に使用可能な脂肪酸エステルを生成させる脂肪酸エステルの製造方法において、
前記固体触媒粉体がプラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体であることを特徴としている。
この特徴によれば、プラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体を固体触媒粉体として使用することにより、従来に比較して、より低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を得ることができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の脂肪酸エステルの製造方法は、
油脂と、一価の低級アルコールと、エステル交換触媒とを、前記低級アルコールの沸点近傍の温度、若しくは摂氏50℃から80℃の温度範囲に加熱および撹拌混合した後、該エステル交換触媒を分離して、内燃機燃料に使用可能な脂肪酸エステルを生成させる脂肪酸エステルの製造方法において、
前記生成された脂肪酸エステルに、該脂肪酸エステルに難溶であって、プラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体を混合、撹拌した後、該プラズマ処理固体触媒粉体を濾過することを特徴としている。
この特徴によれば、プラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体を脂肪酸エステルに混合して撹拌することにより、従来に比較して、より低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を得ることができる。
【0009】
本発明の請求項3に記載の脂肪酸エステルの製造方法は、請求項2に記載の脂肪酸エステルの製造方法であって、
前記プラズマ処理固体触媒粉体を混合した前記脂肪酸エステルを、摂氏40℃から70℃の温度範囲に加熱することを特徴としている。
この特徴によれば、摂氏40℃から70℃の温度範囲に加温することにより、良好な低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を迅速に得ることができる。
【0010】
本発明の請求項4に記載の脂肪酸エステルの製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪酸エステルの製造方法であって、
前記プラズマ処理固体触媒粉体が、アルカリ土類金属元素酸化物またはマグネシウム酸化物であることを特徴としている。
この特徴によれば、これらアルカリ土類金属元素酸化物またはマグネシウム酸化物は、プラズマの暴露によっても比較的安定であるので、そのもの自体をプラズマ暴露処理したり、或いは、プラズマ暴露処理にてこれらを生成することが比較的容易であり、プラズマ暴露処理がし易いばかりか、生成する脂肪酸エステルに難溶であるので、静置や濾過により容易に分離することができる。
【0011】
本発明の請求項5に記載の脂肪酸エステルの製造方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の脂肪酸エステルの製造方法であって、
前記暴露処理するプラズマ源が大気圧エアープラズマであることを特徴としている。
この特徴によれば、プラズマ源を大気圧エアープラズマとすることで、暴露処理に要するランニングコストを低減できるとともに、連続的に固体触媒粉体を暴露処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の脂肪酸エステルの製造方法が適用された本実施例のディーゼル燃料製造装置の全体像を示す装置構成図である。
【0014】
本実施例のディーゼル燃料製造装置は、主に、植物油脂である菜種油やひまわり油やパーム油並びに廃食油等のグリセリントリエステル原料油脂を貯留する原料油脂タンク1と、該原料油脂に添加する低級アルコールであるメタノールを貯留するアルコールタンク3と、本実施例における固体触媒粉体である生石灰粉体を供給する個体触媒供給装置19並びに該個体触媒供給装置19から供給された生石灰粉体をプラズマ処理するプラズマ処理装置18と、その外周にヒータ7並びに保温材を備える反応タンク6と、該反応タンク6にて反応が終了した反応液を静置して比重分離させる分離タンク8と、該分離タンク8にて比重分離された上部脂肪酸エステル層をろ過するために直列接続された各種のマイクロフィルター12、13と、マイクロフィルター12、13にてろ過された脂肪酸エステルを貯留するための貯留タンク14とから主に構成されている。
【0015】
本実施例の原料油脂タンク1はステンレス製とされており、その外周には、使用する原料油脂がパーム油のように、ステアリン酸等の飽和脂肪酸のグリセリントリエステルを多く含む場合には、これら原料油脂が室温が低下すると固形状となる場合があるので、これら原料油脂を加熱して溶かしたり、或いは、容易に処理が実施できるような粘度に加熱により粘度を低下させるための加熱ヒータ2が設けられている。
【0016】
これら原料油脂としては、グリセリンと脂肪酸とのエステルである植物油や動物油等を使用すれば良く、上記したように、常温において固形の油脂であっても、加熱溶解して使用することができる。
【0017】
これら原料油脂タンク1は開閉バルブV1並びにポンプP1とを介して反応タンク6に接続されており、該原料油脂タンク1内の原料油脂を反応タンク6に供給できるようになっている。
【0018】
また、アルコールタンク3には、メチルアルコール(メタノール)が貯蔵されており、該アルコールタンク3からバルブV2並びにポンプP2を通じてメチルアルコールが原料油脂タンク1に供給される。
【0019】
これら、本発明に使用するアルコールとしては、メチルアルコール(メタノール)のように、一価の低級アルコールであれば良く、これら一価の低級アルコールとしては、炭素数が多くなると、得られる脂肪酸エステルの粘度や融点が上昇することから、エチルアルコールや、ノルマルプロピルアルコールや、イソプロピルアルコールや、ノルマルブチルアルコールや、イソブチルアルコール等の、炭素数1〜5の低級アルコールを用いることが好ましい。
【0020】
また、反応タンク6の上部位置には、本発明における固体触媒粉体である生石灰粉体を貯留するとともに、該貯留している生石灰粉体をプラズマ処理装置18に定量的に供給する個体触媒供給装置19と、該個体触媒供給装置19から供給された生石灰粉体をプラズマ処理するプラズマ処理装置18が設けられており、該プラズマ処理装置18にて生成されたプラズマに暴露された生石灰粉体を、反応タンク6に投入できるようになっている。尚、個体触媒供給装置19には、予め計量済みの生石灰粉体が計量されて貯留されており、該計量済みの生石灰粉体がプラズマ処理されて反応タンク6に投入される。
【0021】
これら固体触媒粉体として、本実施例では生石灰である酸化カルシウムを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら固体触媒としては、特開2004−35873号公報に開示されているように、エステル交換反応を促進でき、生成する脂肪酸エステルに難溶な固体触媒であって、プラズマ処理に耐えられる耐熱性を有するものを好適に使用することができ、これらカルシウム以外のアルカリ土類金属であるバリウムやストロンチウムやラジウムや、カルシウムと同様の2属元素であるマグネシウムの酸化物を使用することができ、特に、酸化バリウムや、酸化マグネシウムは、酸化カルシウムとほぼ同様の触媒特性を得ることができ、これらを単体または混合して使用することができるが、酸化カルシウムを主として使用することは、毒性や触媒コストの面からも好ましい。
【0022】
また、これら固体触媒粉体としては、生石灰やバリウム酸化物やマグネシウム酸化物のように、酸化物そのものを使用する他に、高温のプラズマによる暴露処理により、これら生石灰やバリウム酸化物やマグネシウム酸化物を生成するもの、例えば、カルシウムやバリウムやマグネシウムの水酸化物塩や炭酸塩等を使用しても良い。尚、これら水酸化物塩としては、一度、エステル交換に使用した生石灰で、該使用により消石灰になったものを再使用することもできる。
【0023】
また、これら生石灰粉体の粒度としては、これが大きすぎると、原料油脂との接触面積が少なくなって、良好な触媒効果が得られず、反応時間が長くなってしまう場合がある一方、これが小さすぎると、取り扱いが難しくなるとともに、そのろ過に要する時間やコストが大きくなってしまうので、粒径としては50μmから1ミリのもの、特には、100メッシュ以下のものを好適に使用することができる。
【0024】
ここで、本実施例に使用したプラズマ処理装置18について、図2に基づいて説明すると、本実施例のプラズマ処理装置18は、電気絶縁性材料である所定厚みのガラスから成る筒状容器である所定の径のガラス管21と、該ガラス管21(石英管)の断面のほぼ中心位置において該ガラス管21を長手方向に貫通するように設けられた、電気伝導性を有するステンレス材にて形成された棒状の中心電極22とを有しており、この中心電極22は、ガラス管21の両端部に、該中心電極22がガラス管21を保持するための電気絶縁材料から成るガイド部材24、28の中央位置を貫通するように、これらガイド部材24、28と一体化されており、該ガイド部材24、28をガラス管21の両端に装着することで、中心電極22とガラス管21の側面との離間距離がほぼ等しくなるように、ガラス管21の中央位置に配置されるようになっている。
【0025】
尚、ガイド部材24、28は、本実施例においては電気絶縁性を有するフッ素樹脂(四フッ化エチレン材料)にて形成されているとともに、これらガイド部材24、28には、図2に示すように、中心電極22を囲むように、4つの開口が設けられており、ガイド部材がプラズマ処理装置18の上部に装着される上部ガイド部材24である場合には、該開口が流入口25となり、ガイド部材がプラズマ処理装置18の下部に装着される下部ガイド部材28である場合には、該開口が流出口29となり、プラズマ処理装置18に供給された生石灰が、該流入口25からガラス管21内部に流入する。
【0026】
尚、図2中の30は、ガイド部材24、28を固定するためのネジ部材であり、該ネジ部材30を緩めることで、中心電極22と蓋部材24、28とをガラス管21から取り外すことができるようになっている。
【0027】
そして、ガラス管21の外周側面には、図2に示すように、複数の窓部32が形成された外部電極27が設けられており、この外部電極27は、2つの導電層から形成されている。
【0028】
この2つの導電層の内、内側の導電層はアルミニウム層31とされ、外側の導電層は、透明電極材料として使用される酸化インジウム薄膜層26とされており、アルミニウム層31には窓部32がパターン形成されているが、酸化インジウム薄膜層26は該窓部32上にも存在するように形成されている。
【0029】
具体的に、これら窓部32を有するガラス管21を製造する方法としては、まず、外部電極27を形成するガラス管21の側面領域全体に、アルミ蒸着により均一にアルミニウム層31を所定厚みに形成した後、窓部32の反転パターンをレジスト印刷して、窓部32の部分のアルミニウム層31のみをエッチングにて除去した後、該エッチングにて窓部32が形成されたガラス管21の外部電極27を形成する側面領域全体に、酸化インジウム薄膜層26を全面蒸着して形成することで得ることができ、このようにすることで、アルミニウム層31がある部分のみではなく、アルミニウム層31がない窓部32にも導電性が付与されることで、該窓部32の領域内においてもプラズマが生成されるようになる。
【0030】
これら外部電極27に使用する導電層としては、電気伝導性に優れて、容易にガラス管21の外周側面に形成できるものであれば良く、前述のアルミニウムに限定されるのではなく、例えば、金、銀、銅等の貴金属や、ニッケルやスズ、これらの合金、例えば半田等であっても良く、これら導電層の形成方法としては、前述の蒸着に限定されるものではなく、例えばニッケルであればメッキや電鋳により形成しても良いし、溶射や半田浸漬等により形成しても良い。
【0031】
また、本実施例では、窓部32上に形成する透明電極材料として酸化インジウムを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら透明電極材料としては、薄膜において導電性と光透過性を有するものであれば使用することができ、これら酸化インジウムに代えて酸化スズや、金薄膜も使用することができる。
【0032】
尚、本実施例では、これら透明電極材料である酸化インジウム薄膜層26を、アルミニウム層31上となる外部に設けており、このようにすることは、アルミニウム層31が酸化インジウム薄膜層26に被覆されることで、酸化や腐食によりアルミニウム層の導電性が低下することを防止できることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、逆に酸化インジウム薄膜層26を内蔵にアルミニウム層31を外層として形成しても良い。
【0033】
また、本実施例では、多数の窓部32を外部電極27の全面にほぼ均一に存在するように設けており、このようにすることで、反応セル20の内部におけるプラズマの生成状況を、いずれの方向から、更にどの位置においても目視にて確認できるようになることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら窓部32の配置形態や、大きさや形状等は適宜に選択すれば良い。
【0034】
また、本実施例の中心電極22は、図2に示すように、その外周表面に中心電極22と外部電極27との離間距離がほぼ等しく、且つ、該中心電極22の長手方向に繰返し凹部と凸部とが存在することとなるネジを使用しているとともに、該中心電極22は、その内部が中空とされていて、該中空の内部には、空気や水等の冷却材を循環できるようになっている。
【0035】
そして、これら中心電極22と外部電極27との間に、高圧交流電力を印加することで、中心電極22であるネジの先端部と外部電極27との間に、大気圧エアープラズマが発生し、これら中心電極22と外部電極27との間となるガラス官21内部を生石灰粉体が通過することで、該通過する生石灰粉体が大気圧エアープラズマに暴露処理されて、高活性化される。
【0036】
尚、本実施例では、これら大気圧エアープラズマを生成して生石灰粉体を処理するプラズマ処理装置18を、図2に示すガラス管21を用いた装置としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらプラズマ処理装置として、例えば、セラミック粉体材料や金属粉体材料等を溶射する際に使用するプラズマ溶射装置も好適に使用することができ、中でも、作動ガスとして空気を使用することのでできるエアープラズマ溶射装置は、プラズマ処理におけるランニングコストを低く抑えることができることから、より好適に使用することができる。
【0037】
これら原料油脂と、メタノールと、プラズマ処理された生石灰とが供給される反応タンク6には、これら供給された原料油脂とメタノールと生石灰とから成る混合液を、メタノールの大気圧沸点である64.7℃近傍の温度、具体的には、62℃に加温するためのヒータ7と保温材とが、その外周に設けられているとともに、これら混合液を撹拌するための撹拌装置5が設けられている。
【0038】
そして、該反応タンク6には、バルブV3並びにポンプP3を通じて分離タンク8に接続されており、該反応タンク6にて反応が終了した混合液は、該分離タンク8に移送されて比重分離される。
【0039】
尚、この本実施例の分離タンク8は、略密閉タンクとされているとともに、その上部には、窒素ボンベ9から導出された窒素供給管がバルブV4、V5を介して接続されており、分離タンク8内の空気を、窒素ボンベ9から供給される乾燥した窒素ガスにて置換できるようになっている。
【0040】
また、分離タンク8の上部には、上下動自在とされた吸引管15が設けられており、該吸引管15の下端部より、分離タンク8において比重分離により分離された上部脂肪酸エステル層を、ポンプP4と供給管10を介して直列接続された各マイクロフィルター12、13に供給できるようになっており、マイクロフィルター12、13にてろ過された脂肪酸エステルが、貯留タンク14に排出されて貯留されるようになっている。
【0041】
そして、供給管10には、窒素ボンベ9から導出された窒素供給管がバルブV4、V6を介して接続されており、分離タンク8と同様に、供給管10内の空気並びに各マイクロフィルター12、13内部と、これらマイクロフィルター12、13を連結している連結管の内部の空気を、窒素ボンベ9から供給される乾燥した窒素ガスにて置換できるようになっている。
【0042】
この本実施例に使用するマイクロフィルターとしては、貯留タンク14に排出される脂肪酸エステルの水素イオン濃度指数(pH)が、夏季の高温・高湿度の大気中の保存においても膜形成を生じない、8.0以下となるようにろ過できるものであれば良く、これら水素イオン濃度指数(pH)を8.0以下とするには、反応タンク6における撹拌により生じた微細な生石灰微粒子や反応により生じた消石灰微粒子等をろ過により除去すれば良く、これらpH8.0以下とするためのろ過として、本実施例においては、第1段目となるマイクロフィルター12として5μmのろ過能力(孔径)を有するフィルターを使用し、第2段目となるマイクロフィルター13として、1μmのろ過能力(孔径)を有するフィルターを使用している。
【0043】
また、本実施例では、これらマイクロフィルター12、13としては、生成される、脂肪酸メチルエステルに対して溶解することのない、耐油性を備えたものを使用することが好ましいとともに、その廃棄において、これを、分離タンク8内にて回収した生石灰とともに燃焼処理して、生石灰を再生する燃料としても使用できるようにするためにも、燃焼により塩素系ガス等の有害ガス等を生じない、ポリオレフィン系やセルロース系のものが好ましく、本実施例では、ポリプロピレン製のものを使用している。
【0044】
また、本実施例では、第1段目となるマイクロフィルター12には、糸巻型または不織布等のメディアからなり、比較的安価なデプス型フィルターを使用し、第2段目となるマイクロフィルター13には、孔径よりも大きなものを通過させ難いメンブレン型フィルターを使用しており、このようにすることで、ほぼ確実に1μm以上の微粒子を除去できるようにしている。
【0045】
尚、本実施例では、第1段目のろ過フィルターとして5μmのマイクロフィルターを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら第1段目のろ過フィルターは、比較的ろ過される生石灰微粒子や消石灰微粒子の量が多くなるので、最終のマイクロフィルター13よりも粗いマイクロフィルターを使用しておき、最終段において、水素イオン濃度指数(pH)を8.0以下とするのに必要なマイクロフィルターを使用することで、比較的高価な1μmのマイクロフィルター13が、不必要に大きな粒子をろ過することで目詰まりを短期間に生じて、使用寿命が低下してしまうことを防止できることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらマイクロフィルターの大きさや組み合わせ等は適宜に選択すれば良い。
【0046】
また、これらpH8.0以下とするのに必要なマイクロフィルターとしては、マイクロフィルターとして1μm以下のろ過能力を有するマイクロフィルターを使用しないと、何段も繰返してろ過する必要が生じる等のように、pH8.0以下の状態を、なかなか得ることができない一方、ろ過能力がサブミクロンのものになると、得られる脂肪酸エステルのpHは、ほぼ7.0(中性)となるものの、ろ過に時間を要するとともに、マイクロフィルターの価格が高価となって、ランニングコストに直接影響するので、これらマイクロフィルターのろ過能力としては、1μm程度のものを使用することが好ましい。
【0047】
尚、これらフィルターとしては、従来技術である特開2004−35873号公報に開示されているように、活性炭等の高い吸着性を有するフィルターを使用すると、これら活性炭に空気中の水分が吸着され、これら吸着された水分にろ液が接触することで、液表面における膜と同様に、微小なカルシウム石けんが生成して、ろ液が白濁しやすいことから、これら活性炭等の吸着性フィルター以外の、比較的、吸着性の低い低吸着性のマイクロフィルターを使用することが好ましい。
【0048】
以下、本実施例のディーゼル燃料製造装置において、脂肪酸エステルの製造工程について、図3のフロー図に基づいて説明すると、まず、原料油脂タンク1内に貯留されている原料油脂を計量(予め、原料油脂タンク1内に計量済みの原料油脂を貯留しておいても良い)して反応タンク6内に投入する。尚本実施例では、原料油脂として菜種油とパームステアリン15kgを使用し、パームステアリンについては、移送経路中の温度低下を考慮して約70℃に加熱して溶融させて、反応タンク6内に投入した。
【0049】
そして、該反応タンク6のヒータ7に通電して、該反応タンク6内の原料油脂を加熱するとともに、該原料油脂の液温が反応温度である62℃になるように、ヒータ7の通電を制御する。
【0050】
尚、本実施例では、使用するアルコールがメタノールであるので、反応タンク6内の液温を62℃としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、より沸点の高いアルコールを使用する場合には、その沸点近傍の温度としても良いが、沸点近傍の温度が80℃を超える場合には、これらの加熱に多くのエネルギーを必要として、本来の代替えエネルギーとしての価値が損なわれてしまうので、これら沸点の高いアルコールであっても、反応温度を摂氏50℃から80℃の温度範囲にとどめることが好ましい。
【0051】
また、本実施例では、反応温度を62℃と、メタノールの大気圧沸点以下の温度としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、反応タンク6を耐圧タンクとして、内部の圧力を加圧して大気圧より上昇させることで、メタノールの大気圧沸点以上の温度、例えば65℃等の温度にて反応を実施するようにしても良い。
【0052】
次に、撹拌装置5を稼働させて、反応タンク6内の原料油脂の撹拌を開始した後、予め計量されて個体触媒供給装置19に貯留されている生石灰粉体、具体的には、3.6kgを、所定量ずつ交流電圧の印加によりプラズマを発生させたプラズマ処理装置18に供給してプラズマ暴露処理し、該プラズマ暴露処理した生石灰粉体を反応タンク6内に順次投入した。尚、これらプラズマ暴露処理の時間としては、プラズマ処理装置18内の生石灰の滞留時間を約10〜20秒程度となるように、ガラス管21の角度を調節して処理を実施した。尚、このプラズマ処理に際して、生石灰の粉体は、ガラス管21や中心電極22に付着して落下しずらくなるので、これらガラス管21並びに中心電極22に、図示しないバイブレータにより振動を印加して、ガラス管21内に生石灰粉体が詰まりを生じないようにして処理を実施した。
【0053】
また、本実施例では、予め計量した生石灰粉体を投入するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、投入時において、生石灰を計量して投入するようにしても良い。
【0054】
そして、これらプラズマ処理した生石灰粉体を投入した後、プラズマの生成を終了して、アルコールタンク3内に貯留されているメタノールを計量(予め、アルコールタンク3に計量済みのメタノールを貯留しておいても良い)して反応タンク6内に投入した。尚本実施例では、室温のメタノール、4.8kgを投入した。
【0055】
そして、これらメタノールを全量投入した後、該反応タンク6内の液温を約62℃に4時間保持して反応を進行させた後、加温と撹拌を終了するとともに、ポンプP3を稼働させて、反応タンク6内の反応液を分離タンク8内に移送した。
【0056】
尚、該移送に際して、分離タンク8内には、バルブV4、V5を開いて、窒素ボンベ9内の窒素ガスが供給されて、分離タンク8内の湿度を含む空気が、乾燥された窒素ガスに置換されることで、反応タンク6から移送された反応液の上部空間を、乾燥した窒素ガスが占めるようになり、これら上部空間に水分を含んだ空気が存在することで、反応液の液面に、膜が形成することが防止される。
【0057】
そして、これら反応液は、分離タンク8内にて約24時間、室温にて静置されることで、図1に示すように、最上部に最も比重の軽い脂肪酸エステル層が、中層にグリセリン層が、下層に生石灰層(消石灰を含む)が比重分離される。
【0058】
尚、本実施例では、これら分離タンク8においては、室温にて静置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら静置の段階においても加温、例えば、反応温度と同じ温度、或いは、50〜60℃の温度に保持しても良い。
【0059】
そして、バルブV4、V6を開いて、供給管10に窒素ガスを供給して、該供給管10内部並びにマイクロフィルター12、13と、連結管内の空気を、乾燥した窒素ガスにて置換した後、ポンプP4を稼働させて、分離タンク8内の脂肪酸エステル層をマイクロフィルター12、13に供給してろ過した後、マイクロフィルター13から貯留タンク14に排出された脂肪酸エステルのpHを、pH測定装置(PH B−211型 株式会社 堀場製作所製商品名)にて測定したところ、pH7.7であり、非常に透明度が高い淡琥珀色の脂肪酸エステルが得られた。
【0060】
ここで、比較例として、バルブV5を閉じたままとし、窒素ガスを分離タンク8内に導入しなかった場合において、室内温度、28℃、湿度75%の環境下においても、分離タンク8内の液表面に、膜形成が見られたのに対し、窒素ガスを導入した置換を実施した場合においては、29℃、湿度80%の環境下においても、分離タンク8内の液表面には、膜形成が見られなかった。
【0061】
このようにして、パームステアリンを原料とする脂肪酸エステルと、菜種油を原料とする脂肪酸エステルとを作製するとともに、比較例として、プラズマ暴露処理を実施しない未処理の生石灰を利用し、その他は、上記本実施例と同様として作製したパームステアリンを原料とする脂肪酸エステルと、菜種を原料とする脂肪酸エステルとを作製して、各サンプルの低温特性を比較した。また、参照として、従来のアルカリ洗浄法である水酸化ナトリウムとメタノールを使用して作製したパームステアリンを原料とする脂肪酸エステルと、菜種を原料とする脂肪酸エステルの凝固点を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
以上の結果から、生石灰をプラズマ処理して使用した場合には、従来のアルカリ法とほぼ同様の凝固点を得ることのできる未処理の生石灰を用いる場合に比較して、パームステアリンで約1〜2℃、菜種においては約6〜7℃の凝固点の低下が見られ、低温特性と改良する添加剤を添加することなしに、凝固点を低下することができる。
【0064】
以上、本実施例1によれば、プラズマに暴露処理された生石灰粉体を使用することにより、従来のアルカリ法や未処理の生石灰粉体を使用する方法に比較して、より低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を、添加剤等を添加することなしに得ることができる。
【0065】
また、本実施例1によれば、これらアルカリ土類金属元素酸化物である生石灰粉体は、プラズマの暴露によっても比較的安定であるので、そのもの自体をプラズマ暴露処理したり、或いは、プラズマ暴露処理にてこれらを生成することが比較的容易であり、プラズマ暴露処理がし易いばかりか、生成する脂肪酸エステルに難溶であるので、静置や濾過により容易に分離することができる。
【0066】
また、前記実施例によれば、固体触媒粉体である生石灰粉体が静置工程にて粗分離されるので、マイクロフィルター12、13にてろ過される生石灰粉体量を低減でき、マイクロフィルター12、13、特には、マイクロフィルター12の交換寿命を延ばすことができる。
【実施例2】
【0067】
次に、本発明の請求項2に対応する実施例2について、図4並びに図5に基づいて説明する。尚、本実施例2の特徴としては、実施例1においては、プラズマ処理された生石灰粉体を、原料油脂とアルコールとの混合液に添加してエステル交換反応を行っているのに対し、プラズマ処理されていない生石灰によるエステル交換反応にて生成された脂肪酸エステルに、プラズマ処理された生石灰を添加、撹拌する後処理を実施することで、より、低温特性の優れた脂肪酸エステルを得ている点が異なり、その他のディーゼル燃料製造装置の構成や手順等は、実施例1と同一であることから、同一である部分の説明は省略するものとし、実施例1からの変更点となる本実施例2の特徴部分、つまり、生成された脂肪酸エステルに、プラズマ処理された生石灰を添加する後処理に関する部分について以下に詳述する。
【0068】
図4は、本実施例2のディーゼル燃料製造装置の構成を示す図であり、図1に示す実施例1のディーゼル燃料製造装置において、反応タンク6の上部に設けられていたプラズマ処理装置18並びに個体触媒供給装置19に代えて、固体触媒粉体である生石灰粉体を貯留する生石灰タンク4が設けられている。
【0069】
また、分離タンク8とマイクロフィルター12との間には、分離タンク8にて比重分離された脂肪酸エステルに対して、プラズマ処理された生石灰を添加して撹拌、混合する後処理タンク11が追加して設けられている。
【0070】
この本実施例2の後処理タンク11の外周には、図4に示すように、該後処理タンク11内の脂肪酸エステルを加熱するためのヒータ16並びに保温材が設けられているとともに、その上部には、実施例1において用いた個体触媒供給装置19並びにプラズマ処理装置18とが配置されていて、実施例1と同様に、プラズマ処理された生石灰粉体が後処理タンク11内の脂肪酸エステルに添加されるようになっている。
【0071】
尚、後処理タンク11には、これら後処理タンク11内の脂肪酸エステルと添加されたプラズマ処理された生石灰粉体とを撹拌するための撹拌装置17が設けられている。
【0072】
以下、本実施例2のディーゼル燃料製造装置において、脂肪酸エステルの製造工程について、図5のフロー図に基づいて説明すると、まず、原料油脂タンク1内に貯留されている原料油脂を計量して反応タンク6内に投入する。
【0073】
そして、該反応タンク6のヒータ7に通電して、該反応タンク6内の原料油脂を加熱するとともに、該原料油脂の液温が反応温度である62℃になるように、ヒータ7の通電を制御する。
【0074】
次に、アルコールタンク3内に貯留されているメタノールを計量して反応タンク6内に投入する。尚本実施例では、室温のメタノール、4.8kgを投入した。
【0075】
そして、これらメタノールの投入後に、撹拌装置5を稼働させて、反応タンク6内の原料油脂とメタノールとの撹拌を開始した後、予め生石灰タンク4に貯留されている、計量済みの生石灰粉体、具体的には、3.6kgを、反応タンク6内に投入した。尚、該投入の再、一度に全量の生石灰粉体を投入すると、生石灰の大きな塊が生成されてしまう場合があるので、本実施例では、図4に示すように、下方が小径となるホッパを使用することで、ある程度の時間をかけて、徐々に生石灰粉体を投入するようにした。
【0076】
そして、これら生石灰を投入した後、該反応タンク6内の液温を約62℃に4時間保持して反応を進行させた後、加温と撹拌を終了するとともに、ポンプP3を稼働させて、反応タンク6内の反応液を分離タンク8内に移送した。
【0077】
尚、該移送に際して、分離タンク8内には、バルブV4、V5を開いて、窒素ボンベ9内の窒素ガスが供給されて、分離タンク8内の湿度を含む空気が、乾燥された窒素ガスに置換されることで、反応タンク6から移送された反応液の上部空間を、乾燥した窒素ガスが占めるようになり、これら上部空間に水分を含んだ空気が存在することで、反応液の液面に、膜が形成することが防止される。
【0078】
そして、これら反応液は、分離タンク8内にて約24時間、室温にて静置されることで、図1に示すように、最上部に最も比重の軽い脂肪酸エステル層が、中層にグリセリン層が、下層に生石灰層(消石灰を含む)が比重分離される。
【0079】
尚、本実施例2では、これら分離タンク8においては、室温にて静置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら静置の段階においても、実施例1と同様に、反応温度、或いは、50〜60℃の温度に保持しても良い。
【0080】
次に、バルブV4、V6を開いて、供給管10に窒素ガスを供給して、該供給管10内部並びに後処理タンク11の内部の空気を、乾燥した窒素ガスにて置換した後、ポンプP4を稼働させて、分離タンク8内の脂肪酸エステル層を後処理タンク11に移送した後、該移送された脂肪酸エステルを撹拌装置17にて撹拌するとともに、ヒータ16により約60℃の温度に加温し、これら撹拌、加温された脂肪酸エステルに対して、その重量比率として3重量%の生石灰を、プラズマ処理装置18にてプラズマ暴露処理して添加して、約2時間撹拌した。
【0081】
そして、これら撹拌が終了した後、加温を終了して脂肪酸エステルの温度が、室温に下がった後、バルブV8を開くとともに、ポンプP5を稼働させて、後処理タンク11内部の脂肪酸エステルをマイクロフィルター12、13に供給してろ過した後、マイクロフィルター13から貯留タンク14に排出された脂肪酸エステルのpHを、pH測定装置にて測定した。
【0082】
尚、これらマイクロフィルター12、13によるろ過に際しては、バルブV4、V7を開いて、窒素ボンベ9内の窒素ガスをマイクロフィルター12,13と、連結管内に供給して、乾燥した窒素ガスにて置換する。
【0083】
この後処理タンク11の脂肪酸エステルに添加するプラズマ処理された生石灰の添加量としては、これが少なすぎると低温特性の改良効果が少なくなるとともに、その処理時間も長く必要となる一方、この添加量が多すぎると、脂肪酸エステルの分子が架橋されたようになり、不飽和結合を内在する菜種を原料油脂とする脂肪酸エステルでは、液がゲル化してしまう場合があるので、好ましくは1重量%〜5重量%の範囲とすれば良い。
【0084】
また、これらプラズマ処理された生石灰を添加する際の脂肪酸エステルの温度としては、これらが低すぎると、長い処理時間が必要となったり、十分な低温特性の向上効果が得られない場合がある一方、この温度が高すぎると、脂肪酸エステルの粘土が上昇してしまう場合があるので、摂氏40℃から70℃の温度範囲、より好ましくは、50〜60℃の範囲とすれば良い。
【0085】
尚、これらプラズマ処理された生石灰と脂肪酸エステルとの処理時間としては、プラズマ処理された生石灰の添加量と添加温度や原料油脂の種別(不飽和結合を有するか否か)等により、適宜に選択すれば良い。
【0086】
このように本実施例2の後処理による方法において、実施例1と同様に、原料油脂としてパームステアリンを使用した脂肪酸エステルと、原料油脂として菜種油を使用した脂肪酸エステルとを作製するとともに、比較例として、後処理タンクにおいて加温を実施しないで脂肪酸エステル(後処理の時間を4時間としたもの)、および、後処理タンク11における後処理を実施しない脂肪酸エステルとを作製して、各サンプルの低温特性を比較した結果を以下に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
以上の結果から、実施例1と同様に、生石灰をプラズマ処理して後処理した場合には、後処理を実施しない、従来のアルカリ法とほぼ同様の凝固点を得ることのできる生石灰を用いた方法に比較して、パームステアリンで約1〜2℃、菜種油においては約6〜7℃の凝固点の低下が見られ、低温特性と改良する添加剤を添加することなしに、凝固点を低下することができる。
【0089】
以上、本実施例2によれば、プラズマに暴露処理された生石灰を脂肪酸エステルに混合して撹拌することにより、従来に比較して、より低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を得ることができる。
【0090】
また、本実施例2によれば、プラズマに暴露処理された生石灰を添加する脂肪酸エステルを、摂氏40℃から70℃の温度範囲、より好ましくは、50〜60℃の温度範囲に加温することにより、良好な低温特性の良い脂肪酸エステル燃料(FAME)を迅速に得ることができる。
【0091】
また、前記各実施例によれば、プラズマ源を大気圧エアープラズマとすることで、暴露処理に要するランニングコストを低減できるとともに、連続的に固体触媒粉体を暴露処理できる。
【0092】
また、前記各実施例によれば、分離タンク8内に窒素ガスを導入することで、静置工程においても、反応液表面に膜が生成することを極力、防止できるようになる。
【0093】
また、前記各実施例によれば、マイクロフィルター12、13や連結管内部を、乾燥した窒素ガスにて置換しているので、比表面積の大きなマイクロフィルターが、空気中の水分を吸着することで、これら吸着した水分と個体触媒微粉である生石灰や生石灰が消費されて生成した消石灰を含む反応液とが接触することで、ろ液内にアルカリ土類金属石けんが生成して、ろ液が白濁してしまうことを防止することができる。
【0094】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0095】
例えば、前記実施例では、乾燥雰囲気を形成するのに圧縮された高圧の窒素ガスを使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら乾燥雰囲気としては、その他の高圧ガス、例えば炭酸ガス等を用いても良いし、あるいは、分離タンク8内や、供給管10内部並びにマイクロフィルター12、13と、連結管内の空気を真空ポンプにて吸引して、乾燥雰囲気を形成するようにしても良い。
【0096】
また、前記実施例では、反応タンク6内の液温を62℃とし、反応時間を4時間としてが、これら反応温度や処理時間等はこれに限定されるものではなく、使用する固体触媒の量や粒度、種類等により、適宜に選択すれば良い。
【0097】
また、前記実施例では、ろ過を全てマイクロフィルター12、13にて実施しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらろ過の一部に、遠心分離等によるマイクロフィルターに依らないろ過を組み入れるようにしても良い。
【0098】
また、前記実施例2では、生石灰にて作製した脂肪酸エステルにプラズマ処理した生石灰を添加しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら脂肪酸エステルとしては、従来のアルカリ触媒法により製造された脂肪酸エステルであっても良い。
【0099】
また、前記実施例2では、プラズマ処理した生石灰の添加量が少ないので静置処理を実施していないが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら実施例2の後処理タンクにおいても、2時間の撹拌後において、実施例1と同様に、静置処理を実施してプラズマ処理した生石灰の粗分離を実施するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の活用例として、上記した実施例では、主に脂肪酸エステルについて記述したが、同時にグリセンリンも生成するので、グリセンリンの製造方法としても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の脂肪酸エステルの製造方法が適用された実施例1におけるディーゼル燃料製造装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1のディーゼル燃料製造装置に用いた、プラズマ処理装置を示す一部破断図である。
【図3】本発明の実施例1のディーゼル燃料製造装置における脂肪酸エステルの製造工程を示す工程フロー図である。
【図4】本発明の脂肪酸エステルの製造方法が適用された実施例2におけるディーゼル燃料製造装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例2のディーゼル燃料製造装置における脂肪酸エステルの製造工程を示す工程フロー図である。
【符号の説明】
【0102】
1 原料油脂タンク
2 加熱ヒータ
3 アルコールタンク
4 生石灰タンク
5 撹拌装置
6 反応タンク
7 ヒータ
8 分離タンク
9 窒素ボンベ
10 供給管
11 後処理タンク
12 マイクロフィルター
13 マイクロフィルター
14 貯留タンク
17 撹拌装置
18 プラズマ処理装置
19 個体触媒供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂と、一価の低級アルコールと、固体触媒粉体とを、前記低級アルコールの沸点近傍の温度、若しくは摂氏50℃から80℃の温度範囲に加熱および撹拌混合した後、該固体触媒粉体を分離して、内燃機燃料に使用可能な脂肪酸エステルを生成させる脂肪酸エステルの製造方法において、
前記固体触媒粉体がプラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体であることを特徴とする脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項2】
油脂と、一価の低級アルコールと、エステル交換触媒とを、前記低級アルコールの沸点近傍の温度、若しくは摂氏50℃から80℃の温度範囲に加熱および撹拌混合した後、該エステル交換触媒を分離して、内燃機燃料に使用可能な脂肪酸エステルを生成させる脂肪酸エステルの製造方法において、
前記生成された脂肪酸エステルに、該脂肪酸エステルに難溶であって、プラズマに暴露処理されたプラズマ処理固体触媒粉体を混合、撹拌した後、該プラズマ処理固体触媒粉体を濾過することを特徴とする脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理固体触媒粉体を混合した前記脂肪酸エステルを、摂氏40℃から70℃の温度範囲に加熱することを特徴とする請求項2に記載の脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理固体触媒粉体が、アルカリ土類金属元素酸化物またはマグネシウム酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脂肪酸エステルの製造方法。
【請求項5】
前記暴露処理するプラズマ源が大気圧エアープラズマであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脂肪酸エステルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−163198(P2008−163198A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354618(P2006−354618)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(304065640)株式会社CBE (4)
【出願人】(506337644)
【出願人】(502314089)
【Fターム(参考)】