説明

脂質を含む組成物を用いたパターニング

チップおよび基材表面を提供する工程、チップ端にパターニング組成物を配置する工程、チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含む、方法を含む、生体分子アレイを形成するためのより優れた方法を含む、より優れたパターニング法。脂質はDOPC(1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)などのリン脂質でありうる。パターニング種はオリゴヌクレオチドまたはタンパク質でありうる。ナノスケール解像度の堆積物を含むマイクロアレイおよびナノアレイを調製することができる。脂質はパターニングを促進またはパターニング速度を増加させることができる。簡略されたチップ調製が達成できる。ナノスコピック、SPM(原子間力顕微鏡)およびAFM(走査型プローブ顕微鏡)チップを使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/945,164号、および2007年6月21日に出願された米国特許仮出願第60/929,314号、ならびに2008年4月24日に出願された米国特許仮出願第61/047,642号に対し優先権を主張するが、これらは全て参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府補助金の表示
本明細書で記載した様々な態様は、下記助成金の下、連邦政府により資金供給された:空軍科学研究局(AFOSR助成金:AFOSR FA9550-05-1-0054)およびAFMCLO/JAZI(助成金#FA8650-06-C-7617)。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
参考文献は、以下、参考文献リストにおいて引用する。
【0004】
マイクロアレイおよびナノアレイは重要な商業的開発である。分子、特に生体分子および生物種、例えば、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ウイルス粒子、および細胞(真核および原核)のパターニングされたアレイは、様々な生物学的および学際的研究における強力なツールとして使用されている。例えば、特に、マイクロアレイは、生物学的および医学的研究の多くの領域において著しく進歩している(1)。強力な新規ナノリソグラフィー法、例えば、ディップペンナノリソグラフィー(DPN)プリンティングまたはパターニングの出現により(2)、現在、そのようなアレイにおける加工寸法(feature size)がそれらの物理的限界、すなわち、それらが製造されている構造のサイズおよびそれらが問われることとなっている構造のサイズにまで減少する可能性がある(3)。そのような大規模な小型化により、コンビナトリアルライブラリの密度を増加させ、生物的診断事象との関連においてそのような構造の感度を増加させ、必要とされる試料分析物の体積を減少させるだけでなく、従来のマイクロアレイフォーマットでは不可能であった研究が実施できるようになる。
【0005】
生物アレイを含む、マイクロアレイおよびナノアレイの商業的可能性を含む、最大の可能性を実現するために、ナノリソグラフィー技術(例えば、DPNプリンティング)を用いた種、分子、生体分子の直接堆積は可能な限り、ルーチン的で強固である必要がある。現在、DPNプリンティングのいくつかの用途は、単一オリゴヌクレオチド配列またはあるタンパク質のいずれかの単一成分アレイの使用に限定される可能性がある。他の用途はそのように限定されない。多成分アレイが製造できるかは、DPNプリンティングにより同時に複数の生体分子を直接描画することができるかに依存する。この領域では以前に進歩が見られたが、依然として、特に商業的用途を目的とする要求が存在している。1つの潜在的な制限は、再現可能なチップコーティングを目的とする、AFMチップなどのチップの化学修飾である。異なる生体分子は特定の修飾が必要なことがあり、これにより、適合性の問題が生じる可能性がある。第2は、並列DPNプリンティングの状況におけるものである。生体分子は異なる輸送特性を有する可能性があるため、チップ間で不均一な表面特徴に至る可能性があり、場合によっては、全く堆積させることができない。最後に、生物活性の変性および損失が問題となる可能性がある。これらの潜在的な制限を回避するためには、分子の生物活性を保存したまま、輸送速度を均一にすることができる方法が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書で提供した態様は、例えば、製造方法、物品、装置、組成物、および使用法を含む。
【0007】
例えば、1つの態様は、チップおよび基材表面を提供する工程、チップ端にパターニング組成物を配置する工程、チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含む、方法を提供する。
【0008】
別の態様は、ナノスコピックチップおよび基材表面を提供する工程、ナノスコピックチップ端にパターニング組成物を配置する工程、チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物が少なくとも1つのリン脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのバイオオリゴマーまたはバイオポリマーパターニング種を含む、方法を提供する。
【0009】
1つの別の態様は、チップおよび基材表面を提供する工程、チップ端にパターニング組成物を配置する工程、チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含み、脂質はパターニング種の堆積速度を上昇または増加させる、方法である。
【0010】
別の態様は、原子間力顕微鏡チップおよび基材表面を提供する工程、原子間力顕微鏡チップ端にパターニング組成物を配置する工程、チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程を含み、パターニング組成物が少なくとも1つのリン脂質およびリン脂質とは異なる少なくとも1つのバイオポリマーを含む、方法を提供する。
【0011】
別の態様は、基材表面、該表面上に配置されるパターニング組成物を含む少なくとも1つの堆積物を含み、パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含む、アレイを提供する。
【0012】
別の態様は、脂質を、脂質とは異なるパターニング種を含むパターニング組成物と混合し、チップ端上に配置された場合および基材表面上に堆積された場合にパターニング種のパターニングを促進する工程を含む、脂質を使用するための方法を提供する。
【0013】
本明細書で記載した1つまたは複数の態様に対し、利点としては、例えば、特に、そうでなければ堆積させることができない分子を堆積させ、堆積速度を改善させ、パターンサイズの制御を含む堆積のよりよい制御を提供し、複数の堆積を1度に実施した場合の分子間の堆積の一貫性を改善することができること、チップを修飾なしで使用することができること、堆積された分子中で生物活性が保持されることを含む、改善された堆積、が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
特許または出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有するこの特許または特許出願公開のコピーは、要請および必要な料金の支払いがあれば、特許庁により提供される。
【0015】
【図1】リン脂質マトリクスの使用による、フルオロフォア-標識したチオール化DNAの金表面への堆積。明視野の蛍光重ねあわせ、赤色、緑色蛍光(灰色、赤色、および緑色;各々の擬似カラー)。
【図2】DOPCリン脂質マトリクスの使用による、フルオロフォア-標識したアミノ末端を有するDNAのガラス表面への堆積。赤チャネルにより獲得した蛍光画像(Alexa 597)。
【図3】並列DPNおよびリン脂質マトリクスとしてのDOPCの使用による、2つのフルオロフォア-標識したタンパク質のガラス表面上での堆積。赤、緑および青チャネルの蛍光重ねあわせ画像。インクウェルの使用により、複数のパターニング条件を同時に研究することができる(例えば、DOPCあり、およびなしでのタンパク質堆積の比較)。
【図4】十分に洗浄してDOPCマトリクスを除去した、パターニングした基材の高解像度蛍光画像。画像において見られるように、タンパク質は表面上に明瞭に保持される。赤および緑チャネルの蛍光重ねあわせ画像。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
序論
本明細書で引用した参考文献は全て、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0017】
2007年6月20日に出願された優先権主張米国特許仮出願第60/945,164号、および2007年6月21日に出願された優先権主張米国特許仮出願第60/929,314号、ならびに2008年4月24日に出願された優先権主張米国特許仮出願第61/047,642号は全て、参照により、特許請求の範囲、図面、実施例、および他の記述態様を含むその全体が本明細書に組み入れられる。
【0018】
本出願と同じ日に出願された、“Matrix Assisted Ink Transport”と題する、Mirkinらの米国特許出願第 は、参照により、図面、実施例、特許請求の範囲、および他の記述態様を含む、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0019】
本出願と同じ日に出願された、“Universal Matrix”と題する、Mirkinらの米国特許出願第 は、参照により、図面、実施例、特許請求の範囲、および他の記述態様を含む、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0020】
本明細書では、様々な新規アプローチが立証されている。1つの態様では、脂質、例えば、1つまたは複数のリン脂質が、普遍的インク担体として使用される。例えば、脂質は、ディップペンナノグラフィー(DPN)プリンティングを用いて、生体分子(例えば、オリゴペプチドおよびタンパク質)を含む様々な分子および種を直接、表面上にパターニングするための生体適合性インク担体として機能することができる。好ましいインク担体としてのリン脂質の使用は、この技術により、送達される生体分子の構造および完全性を保存することができる好都合な生体適合性環境が得られるため、望ましい。普遍的インク担体として、好ましいリン脂質を使用する場合、有効であれば、DPNプリンティング前にAFMチップの表面修飾をすることができるが、必要とされない場合もある。さらに、埋め込んだ生体分子の堆積速度は、リン脂質マトリクスの輸送速度により決定づけることができる。これにより、並列DPNプリンティングを用いて、異なる生体分子を制御可能な速度で同時に堆積させることがで可能になる。このアプローチを、パターニングがより困難な生体分子の送達のために適用することもできる。
【0021】
DPNプリンティングは、器具類、材料、および方法を含む、当技術分野において一般に公知である。本明細書で記載した様々な態様の実施では、リソグラフィー、マイクロリソグラフィー、およびナノリソグラフィー機器、ペンアレイ、アクティブペン、パッシブペン、インク、パターニング化合物、キット、インク送達、ソフトウエア、ならびに直接描画プリンティングおよびパターニングのためのアクセサリは、NanoInk, Inc., Chicago, ILから入手可能である。ソフトウエアとしてはINKCADソフトウエア(NanoInk, Chicago, IL)が挙げられ、リソグラフィー設計および制御のためのユーザインタフェースが提供される。E-Chamberを環境制御のために使用することができる。ディップペンナノリソグラフィー(Dip Pen Nanolithography)(商標)およびDPN(商標)はNanoInk, Inc.の商標である。
【0022】
カンチレバー、チップおよびパターニング化合物を用いる直接描画プリンティングに関連する下記特許および共に係属中の出願は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられ、インク、パターニング化合物、ソフトウエア、インク送達装置、などを含む、本明細書で記載された様々な態様の実施において使用することができる:
1. Mirkinらの米国特許第6,635,311号は、インク、チップ、基材、および他の器具類パラメータおよびパターニング法を含むDPNプリンティングの基本的な局面を記載する。
2. Mirkinらの米国特許第6,827,979号は、ソフトウエア制御、エッチング手順、ナノプロッター、ならびにコンプレックスおよびコンビナトリアルアレイ形成を含むDPNプリンティングの基本的な局面をさらに記載する。
3. 2002年9月5日に公開された米国特許出願公開第2002/0122873 A1号(“Nanolithography Methods and Products Produced Therefor and Produced Thereby”)は、DPNプリンティングの開口態様および駆動力態様を記載する。
4. 2003年2月14日に出願されたEbyらの米国普通特許出願第10/366,717号(“Methods and Apparatus for Aligning Patterns on a Substrate”)は、DPNプリンティングに対する整合法を記載する(2003年10月2日に2003/0185967として公開)。
5. 2003年2月28日に出願されたDupeyratらの米国普通特許出願第10/375,060号(“Nanolithographic Calibration Methods”)は、DPNプリンティングに対する較正法を記載する。
6. Mirkinらの2003年4月10日に公開された米国特許出願公開第2003/0068446号(“Protein and Peptide Nanoarrays”)は、タンパク質およびペプチドのナノアレイを記載する。
7. Mirkinらの2002年12月2日に出願された米国普通特許出願第10/307,515号(“Direct-Write Nanolithographic Deposition of Nucleic Acids from Nanoscopic Tips”)は、核酸パターニングを記載する(2003年6月12日に公開されたPCT/US2002/038252)。
8. Mirkinらの2002年12月17日に出願された米国普通特許出願第10/320,721号(“Patterning of Solid State Features by Direct-Write Nanolithographic Printing”)は、反応性パターニングおよびゾルゲルインクを記載する(現在、2003/0162004として2003年8月28日に公開)。
9. Liuらの米国特許第6,642,129号および同第6,867,443号(“Parallel, Individually Addressible Probes for Nanolithography”)は、アクティブペンアレイを記載する。
10. Schwartzの、2003年1月9日に公開され、米国特許出願公開第2003/0007242号(“Enhanced Scanning Probe Microscope and Nanolithographic Methods Using Same”)。
11. Schwartzの、2003年1月9日に公開された米国特許出願公開第2003/0005755号(“Enhanced Scanning Probe Microscope”)。
12. 現在、第2004/0101469号として公開されている、2003年8月11日に出願された米国特許出願第10/637,641号は、触媒ナノ構造およびカーボンナノチューブ用途を記載する。
13. 2004年2月12日に2004/0026681として公開されて現在公開されている、2003年5月23日に出願された米国特許出願第10/444,061号、および2004年1月15日に公開された米国特許出願公開第2004/0008330号は、それぞれ、タンパク質および導電ポリマーのプリンティングを記載する。
14. 現在、米国特許第7,005,378号となっている、2003年8月26日に出願された米国特許出願第10/647,430号は、パターニング化合物として導電性材料を記載する。
15. 2004年9月9日の2004/0175631として現在公開されている、2003年10月21日に出願された米国特許出願第10/689,547号は、フォトマスク修復を含むマスク用途を記載する。
16. 2005年2月17日の2005/0035983として現在公開されている、2003年11月12日に出願された米国特許出願第10/705,776号は、マイクロフルイディクスおよびインク送達を記載する。
17. 2005年1月13日の2005/0009206として現在公開されている、2004年3月1日に出願された米国特許出願第10/788,414号は、ペプチドおよびタンパク質のプリンティングを記載する。
18. 2005年12月8日の2005/0272885として現在公開されている、2004年7月19日に出願された米国特許出願第10/893,543号は、ROMP法およびコンビナトリアルアレイを記載する。
19. 2005年11月17日に2005/0255237として公開されて現在公開されている、2005年2月14日に出願された米国特許出願第11/056,391号は、スタンプチップまたはポリマーコートチップ用途を記載する。
20. 2005年10月27日の2005/0235869として現在公開されている、2005年2月25日に出願された米国特許出願第11/065,694号は、チップレスカンチレバーおよび平面パネルディスプレイ用途を記載する。
21. 2006年1月19日に公開された米国特許出願公開第2006/001,4001号は、DPN法により製造されるナノ構造のエッチングを記載する。
22. 2004年12月2日に公開されたLiu & MirkinのWO 2004/105046は、接触プリンティングのための走査プローブを記載する。
23. ウイルスアレイを記載する、Mirkinの米国特許出願公開第2007/0129321号。
【0023】
上記1〜23で引用した参考文献は全て、参照により組み入れられ、その中の教示は、本明細書で記載されている様々な態様と共に使用するために適合させることができる。
【0024】
DPN法はまた、高いスループットの並列法の記載を含む、Ginger et al., “The Evolution of Dip-Pen Nanolithography,”Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 30-45においても記載されている。
【0025】
DPNプリンティングおよびパターン転写法を含む直接描画法は、例えば、Direct-Write Technologies, Sensors, Electronics, and Integrated Power Sources, Pique and Chrisey (Eds), (2002)において記載されている。
【0026】
ナノリソグラフィーのための2次元アレイは、例えば、2007年3月23日に出願されたMirkinらの米国特許出願公開第2008/0105042号において記載されているが、これは、参照により、実施例、図面、特許請求の範囲、および他の記述態様を含む、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0027】
本明細書で記載した直接描画ナノリソグラフィー機器および方法は特に、ペプチド、タンパク質、核酸、DNA、RNA、ウイルス、生体分子、などに基づくバイオアレイ、ナノアレイ、およびマイクロアレイを調製する際に使用するには興味深い。例えば、チップ(chip)およびライブラリーの大量製造に対しては米国特許第6,787,313号;ペプチドチップを有する自動分子生物研究室のためには同第5,443,791号;薬学用途における分子アレイの自動合成のための装置に対しては同第5,981,733号を参照されたい。コンビナトリアルアレイを調製することができる。また、例えば、Hendersonらの米国特許第7,008,769号;同第6,573,369号;および同6,998,228号を参照されたい。
【0028】
走査プローブ顕微鏡法は、Bottomley, Anal. Chem. 1998, 70, 425R-475Rにおいて概説されている。また、走査プローブ顕微鏡は、例えば、米国特許第5,705,814号(Digital Instruments)において記載されているプローブ交換機構を含む技術分野において公知である。
【0029】
パターニング組成物は、チップから基材表面への転写および堆積のために、製剤化し適合させることができる。組成物は、1つまたは複数の脂質および1つまたは複数のパターニング種を含む、2つ以上の成分を有することができる。任意の溶媒系もまた使用することができ、溶媒の量は、例えば、乾燥工程または湿潤雰囲気の使用により変動させることができる。パターニング組成物は、堆積過程を妨害する成分および成分の量を排除するように製剤化することができ、ここで、パターニング組成物は良好な結果を達成するのに必要とされる構成要素を本質的に含む。パターニング組成物は、堆積工程前にチップ上で、部分的に、または完全に乾燥させることができる。
【0030】
所望であれば、界面活性剤を使用することができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Collierらの米国特許出願公開第2006/0242740号を参照されたい。
【0031】
パターニング組成物-脂質
パターニング組成物は1つまたは複数の脂質を含むことができ、脂質は一般に当技術分野において公知である。例えば、Bohinski, Modern Concepts in Biochemistry, 4th Ed., Chapter 8, “Lipids and Biomembranes”を参照されたい。例えば、脂質は単純脂質、複合脂質、または誘導脂質でありうる。単純脂質は、例えば、アシルグリセロールまたはワックスでありうる。複合脂質は、例えば、ホスホアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、セレブロシド、またはガングリオシドでありうる。誘導脂質は、例えば、ステロイド、カロテノイド、または脂質ビタミンでありうる。
【0032】
当技術分野において公知の脂質に対しては、例えば、Organic Chemistry 6th ed., Morrison and Boyd, Prentice hall, Englewood cliffs, NJ 1992のchapter 33ならびにテキストブック全体;Molecular biology of the cell 3rd ed., Alberts et al., Garland Publishing, New York, NY, 1994のchapter 2ならびにテキストブック全体;およびOrganic Chemistry 3th ed., Loudon, the Benjamin/Cummings publishing co., Redwood city CA, 1995のchapter 21ならびにテキストブック全体も参照されたい。
【0033】
天然または合成脂質を使用することができる。脂質は水溶液中、それ自体で、または他の脂質と組み合わされて、リポソームを形成することができる。
【0034】
脂質は、水中では不溶であるが、非極性有機溶媒中では可溶となるようにする長い炭化水素鎖を含む化合物でありうる。
【0035】
脂質の別の例としては、脂肪、油、ステロイドおよびワックスが挙げられる。
【0036】
グリセリドは、グリセロールおよび脂肪酸から形成される脂質の1つの型である。グリセロールは3つのヒドロキシ基を含み、1つ、2つまたは3つの脂肪酸とエステル化されると、それぞれ、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドが形成される。脂肪酸の1つが糖またはホスフェートと置換されると、得られた化合物はそれぞれ、糖脂質またはリン脂質となる。脂肪酸は不飽和、飽和、一不飽和または多価不飽和でありうる。不飽和脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびアラキドン酸が挙げられる。飽和脂肪酸の例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸が挙げられる。さらに、脂肪酸はcisまたはtrans配置を採用してもよい。脂肪酸鎖の長さは変動してもよい。例えば、脂肪酸炭化水素鎖は、3を超える炭素原子、3〜18の間の原子、または12〜20の間の炭素原子を含んでもよい。鎖は分枝であってもよく、またはそうでなくてもよい。1つの態様では、脂質化合物はリン酸基を含む。別の態様では、脂質化合物は糖基を含む。1つの態様では、脂質化合物は1つ、2つまたは3つの脂肪酸を含む。別の態様では、脂質化合物は、飽和、一不飽和または多価不飽和である少なくとも1つの脂肪酸を含む。脂質は2つの脂肪酸を含むことができる。少なくとも1つの脂肪酸は一不飽和でありうる。どちらの脂肪酸も一不飽和でありうる。脂肪酸はcisまたはtransであってよい。1つの態様では、少なくとも1つの脂肪酸は少なくとも3つの炭素原子を含む。別の態様では、少なくとも1つの脂肪酸は3〜18の間の、その間の全ての整数を含む炭素原子を含む。別の態様では、少なくとも1つの脂肪酸は12〜20の間の、その間の全ての整数を含む炭素原子を含む。
【0037】
1つの態様では、脂質化合物はアミノ基を含むリン脂質である。アミノ基は一級、二級、三級または四級であってもよい。好ましくはアミノ基は四級である。より好ましくは、アミノ基はリン酸基の酸素原子に結合させることができる。最も好ましくは、アミノ基は少なくとも1つの炭素原子を介して酸素原子に結合させることができる。
【0038】
別の態様では、脂質化合物はリン脂質誘導体を含む。非限定的な例としては、ホスホコリン、ホスホグリセロール、ホスファチジン酸、ホスホセリン、PEGリン脂質、などが挙げられる。
【0039】
脂質はゲル-液晶転移温度を示すことができる。
【0040】
脂質の分子量は例えば250〜約2,000、または約500〜約1,500、または約500〜約1,000とすることができる。
【0041】
1つの態様では、自己集合し、脂質二重層を含む膜となることができる脂質を使用することができ、そのため、脂質は自己集合し脂質二重層となることができる脂質である。例えば、脂質二重層に関する、米国特許出願公開第2006/0094053号を参照されたい。
【0042】
別の態様では、脂質は、式Iの構造により表すことができ、式中、例えばR1およびR2は独立して選択され、それぞれ、3〜20の炭素原子を有する飽和、一飽和、不飽和、または多価飽和炭素鎖を示す。

【0043】
脂質の一例は、以下、実施例においてさらに記載されているようなDOPCである。別の例としては、POPCおよびDMPCが挙げられる。例えば、パターニングすることができる脂質については、Lenhart et al., Small, 2007, 3, no. 1, 71-75を参照されたい。
【0044】
パターニング組成物-パターニング種
パターニング組成物は1つまたは複数のパターニング種を含むことができる。これは脂質とは異なる組成物である。パターニング種は分子または微粒子でありうる。合成または天然でありうる。ポリマー、オリゴマー、または非ポリマーでありうる。小分子でありうる。生体分子の用途は特に注目すべきである。例えば、パターニング種は生体分子でありうる(ここで、水は生体分子ではない)。パターニング種は生体高分子でありうる。パターニング種は核酸またはアミノ酸単位の重合された単位または反復単位を含むことができる。パターニング種は例えばオリゴヌクレオチド、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、糖、炭化水素、などでありうる。パターニング種は、基材表面との相互作用に関して、合成的に適合されないように使用することができる。例えば、天然種、例えば、天然タンパク質でありうる。また、パターニング種は、基材表面との相互作用に関して、合成的に適合されるように使用することができる。例えば、末端の基を官能化させ、表面に結合させることができる。これは、例えばR-XまたはR-(X)nにより表すことができ、式中、RはX基により官能化されたパターニング種であり、nはX基の数であり、これは例えば、1〜10、または1〜5、または1〜3でありうる。
【0045】
パターニング種として機能しうる非生物化合物としては、例えば、微粒子材料、ナノ構造材料、有機化合物、無機化合物、ポリマー、合成ポリマー、金属(例えば、金)に化学吸着する化合物、例えば、チオールおよびスルフィド、などが挙げられる。
【0046】
タンパク質パターニング種
パターニング種は、タンパク質材料ならびにタンパク質およびペプチドを含むことができる。タンパク質材料としては、例えば、抗体、酵素、などが挙げられる。
【0047】
ペプチドおよびタンパク質態様では、ペプチド結合を含む様々な種類の化学構造を含むナノアレイを調製することができる。これらには、ペプチド、タンパク質、オリゴペプチド、およびポリペプチドが含まれ、それらは単純か、または複雑である。ペプチド単位は、非ペプチド単位と組み合わせることができる。タンパク質またはペプチドは、単一のポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖を含むことができる。一般に、分子量がより高いペプチドが好ましいが、オリゴペプチドを含む分子量がより低いペプチドを使用することができる。ペプチド中のペプチド結合の数は、例えば、少なくとも3、10もしくはそれ未満、少なくとも100、約100〜約300、または少なくとも500でありうる。
【0048】
タンパク質は特に好ましい。タンパク質は単一か、または複合でありうる。複合タンパク質の例としては、核タンパク質、リポタンパク質、リンタンパク質、金属タンパク質および糖タンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
タンパク質は、他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドとの複合体中で共存した場合、機能的となる可能性がある。タンパク質はウイルスでありえ、ウイルスはタンパク質および核酸の複合体でありえ、DNAまたはRNA型である。タンパク質は、より大きな構造、例えば、球およびロッド構造のシェルでありうる。
【0050】
タンパク質の形状は球形または繊維状でありうる。後者は一般に、水に典型的には不溶の強固な材料である。これらは1つのポリペプチド鎖または、例えば、繊維形態のような、平行に配列された複数のポリペプチド鎖を含むことができる。例としてはコラーゲンおよびエラスチンが挙げられる。球状タンパク質は、隙間なく折り畳まれて球状または球形の形状とされ、大部分は水系に溶解できるポリペプチドである。例えば、多くの酵素は、抗体、いくつかのホルモンおよび輸送タンパク質、例えば血清アルブミンおよびヘモグロビンのように、球状タンパク質である。
【0051】
ミオシンおよびフィブリノーゲンのような、繊維状および球状の特性を有するタンパク質を使用することができ、これらは強固でロッド状構造であるが可溶性である。タンパク質は1を超えるポリペプチド鎖を有することができ、オリゴマータンパク質とすることができ、それらの個々の成分はプロトマーと呼ばれる。オリゴマータンパク質は、普通は互いに共有結合により結合されていない、偶数のポリペプチド鎖を通常含む。ヘモグロビンはオリゴマータンパク質の一例である。
【0052】
組み入れることができるタンパク質の型としては、酵素、貯蔵タンパク質、輸送タンパク質、収縮タンパク質、保護タンパク質、毒素、ホルモン、および構造タンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
酵素の例としては、リボヌクレアーゼ、シトクロムc、リゾチーム、プロテアーゼ、キナーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、およびエンドヌクレアーゼが挙げられるが、それらに限定されない。酵素およびそれらの結合機構は、例えば、Alan FershtによるEnzyme Structure and Mechanism, 2nd Ed.,1977において開示されており、15章に下記酵素型が含まれる:デヒドロゲナーゼ、プロテアーゼ、リボヌクレアーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、リゾチーム、炭酸脱水酵素およびトリオースリン酸イソメラーゼ。
【0054】
貯蔵タンパク質の例としては、卵白アルブミン、カゼイン、フェリチン、グリアジンおよびゼインが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
輸送タンパク質の例としては、ヘモグロビン、ヘモシアニン、ミオグロビン、血清アルブミン、β1-リポタンパク質、鉄結合グロブリン、およびセルロプラスミンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0056】
収縮タンパク質の例としては、ミオシン、アクチン、ダイニンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0057】
保護タンパク質の例としては、抗体、補体タンパク質、フィブリノーゲン、およびトロンビンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
毒素の例としては、クロストリジム ボツリヌム(Clostridium botulinum)毒素、ジフテリア毒素、ヘビ毒、およびリシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
ホルモンの例としては、インスリン、副腎皮質刺激ホルモンおよびインスリン様成長ホルモン、ならびに成長ホルモンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
構造タンパク質の例としては、ウイルスコートタンパク質、糖タンパク質、膜構造タンパク質、α-ケラチン、スクレロチン、フィブロイン、コラーゲン、エラスチン、およびムコタンパク質が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
天然または合成ペプチドおよびタンパク質を使用することができる。使用することができるタンパク質は、例えば組換え法により調製される。
【0062】
好ましいタンパク質の例としては、免疫グロブリン、IgG(ウサギ、ヒト、マウス、など)、タンパク質A/G、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、リゾチーム、ストレプトアビジン、アビジン、フェリチン、レクチン(Con.A)、およびBSAが挙げられる。ウサギIgGおよび、IgGにサンドイッチ構造で結合されたウサギ抗IgGは有用な例である。
【0063】
スプライソソームおよびリボゾームなどを使用することができる。
【0064】
非常に広範囲のタンパク質が当業者に公知であり、使用することができる。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、A.L.Lehninger, 1970によるBIOCHEMISTRYの55〜66ページの第3章、“Proteins and their Biological Functions:A Survey”を参照されたい。
【0065】
標識タンパク質および蛍光標識タンパク質を含む、追加のタンパク質について、下記実施例において記載する。タンパク質はコレラ毒素サブユニットBおよびトリプシン阻害剤を含むことができる。
【0066】
核酸パターニング種
核酸態様では、核酸は特に限定されない。例えば核酸は、例えば基材への化学吸着または共有結合のために調整された官能基を含むように、合成により製造し修飾することができ、または天然由来である。核酸は、低、中、または高分子量を有することができ、オリゴマーまたはポリマーでありうる。核酸は一本鎖、二本鎖、または三本鎖とすることさえできる。核酸はデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはそれらの組み合わせに基づくことができる。核酸の構造は一般に、例えば、Calladine and Drew, Understanding DNA, The Molecule and How it Works, 2nd Ed., 1997において記載されている。
【0067】
パターニングすることができる核酸の一般型としては、例えば、DNA、RNA、PNA、CNA、RNA、HNA、p-RNA、オリゴヌクレオチド、DNAのオリゴヌクレオチド、RNAのオリゴヌクレオチド、プライマー、A-DNA、B-DNA、Z-DNA、DNAのポリヌクレオチド、RNAのポリヌクレオチド、核酸のT接合部、非核酸ポリマー-核酸ブロックコポリマーのドメイン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。核酸の別の一般型としては、例えば、ウイルスRNAまたはDNA、疾患と関連する遺伝子、細菌DNA、真菌DNA、生物学的起源由来の核酸、ポリメラーゼ連鎖反応増幅の産生物である核酸、ナノ粒子と接触した核酸、および三本鎖複合体の産生に至る、ナノ粒子上でオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされた二本鎖核酸が挙げられる。
【0068】
一般に、核酸は、遺伝情報の貯蔵および複製ならびにタンパク質合成によるその情報の発現において中心的役割を果たす、細胞およびウイルス内で見られる有機物の一群のいずれかでありうる。プリン、ピリミジン、および炭化水素、ならびにリン酸は一般に核酸の基本的な有機物を特徴づける。プリンおよびピリミジンはヌクレオチド、ヌクレオシドであり、ここで、2-デオキシ-D-リボースまたはD-リボースの一級ヒドロキシ基がオルトリン酸によりエステル化される。ヌクレオシドは、プリンまたはピリミジン塩基が、N-原子を介してC-1に結合されており、2-デオキシ-D-リボースまたはD-リボースのいずれかのヒドロキシ基が置換されているが、リン酸基を有さない化合物である。生体系における一般的なヌクレオシドはアデノシン、グアノシン、シチジン、およびウリジン(リボースを含む)ならびにデオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、およびチミジン(デオキシリボースを含む)である。このように、プリン塩基はアデニンヌクレオチドまたはグアニンヌクレオチドであってもよい。ピリミジン塩基はチミンヌクレオチド、シトシンヌクレオチド、またはウラシルヌクレオチドであってもよい。
【0069】
核酸配列は、ランダムであってもよく、または所望のアミノ酸構造をコードするように特異的であってもよい。例えば、3つのヌクレオチドの群はコドンを含む可能性がある。1つのコドンは1つのアミノ酸を含む。核酸のコード領域はコドンを含む。
【0070】
核酸は自由に存在することができ、またはペプチドもしくはタンパク質に結合し、別々の束または構造化形態、例えば染色体などの核タンパク質を形成することができる。核酸はまた、一本鎖または二本鎖形態で存在することができる。核酸は直線、環状、またはスーパーコイルであってもよい。核酸は直接、細胞または細胞小器官から単離してもよい。プラスミドまたはクローニングベクターもまた核酸の例である。
【0071】
核酸はヌクレオチドから構成させることができ、それぞれが、糖(デオキシリボース)、リン酸基、ならびに窒素含有プリン-およびピリミジン-塩基の混合物を含む。糖は環状または非環状形態をとってもよい。DNAはチミンおよびシトシンピリミジンのみを含み、ウラシルを含まない。DNAは細胞から、ゲノム、核またはミトコンドリアDNAとして細胞から単離してもよく、または合成、すなわち、化学的過程により製造してもよい。
【0072】
細胞中に存在する遺伝子は典型的には、DNAのエキソンおよびイントロンストレッチから構成されるゲノムDNAを含む。エキソンストレッチは、アミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチドを含み、一方、DNAのイントロンストレッチは、おそらくアミノ酸をコードするコドンを含まないヌクレオチドを含む。プリンおよびピリミジンのヌクレオチド配列は、その遺伝子により特定されるタンパク質のポリペプチド鎖中のアミノ酸の配列を決定する。
【0073】
DNAはまた、RNA依存性DNAポリメラーゼの作用により、RNA鋳型から産生した相補またはコピーDNA(cDNA)として単離されてもよい。例えば、cDNAはPCR増幅により、約100〜800mer鎖とすることができる。RNA鋳型がイントロンを除去するように処理された場合、cDNAはRNAが転写された遺伝子と同一ではない。このようにcDNAは、実際には大部分がエキソンであるヌクレオチドのストレッチを含んでもよい。
【0074】
二本鎖形態である場合、2つのDNA鎖は二重らせんを形成する。このらせんでは、1つの鎖中の各ヌクレオチドは、もう一方の鎖上の特定のヌクレオチドに水素結合される。このように、DNAでは、アデニンはチミンと結合し、グアニンはシトシンと結合する。各鎖中に存在するヌクレオチドの互いに結合する能力により、鎖が相補的であること、例えば、1つの鎖上の全てのアデニンに対し、もう一方の鎖上にはチミンが存在することが決定される。
【0075】
RNAは一般にDNAに類似する可能性があるが、デオキシリボースの代わりにリボース糖を、チミンの代わりにウラシル塩基を含む。RNAは一本鎖または二本鎖とすることができ、細胞DNAから転写される。RNA分子はヘアピンループまたは他の二本鎖構造を形成してもよい。RNAは鋳型RNA、メッセンジャーRNA(mRNA)、全RNA、またはトランスファーRNA(tRNA)であってもよい。ポリソーム。本発明により、RNA-DNAハイブリッド分子を堆積させることができる。さらに、タンパク質-核酸、または「ペプチド核酸」(“PNA”)もまた、本発明に従って使用してもよい。
【0076】
相補ヌクレオチド間で示される結合特性は、核酸を、他の核酸に結合することができるプローブとして有用なものとすることができる。核酸は標識することができ、プローブとして使用することができる。多くの標準標識技術のうちのいずれか一つによって、核酸プローブを使用してハイブリダイゼーションにより別の核酸を検出することができる。標識が、例えば、蛍光、放射性または酵素標識である場合、ハイブリダイゼーションを可視化または検出することができる。このように、本発明の核酸はまた、蛍光マーカーまたはタグのような検出可能な実体、金粒子、ストレプタビジン、ジゴキシゲニン、磁性ビーズ、または当業者に公知の他のマーカーを含むように、標識、または修飾することができる。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Landesの米国特許第4,626,501号(“Labeled DNA”)を参照されたい。
【0077】
ヌクレオチドおよび核酸はまた、核酸分解に対し保護されるように修飾することができる。例えば、核酸はリポソーム内にカプセル化されてもよい。また、チオール基をポリヌクレオチド内に、例えば、RNAまたはDNA分子内に、ヌクレオチドのリン含有基を置換することにより、組み入れてもよい。そのように核酸の「骨格」に組み入れられた場合、チオールはその部位でのDNAの切断を阻止することができ、従って核酸分子の安定性が改善される。
【0078】
Cookらの米国特許第5,965,721号もまた、参照により組み入れられるが、パターニング可能で、改善されたヌクレアーゼ抵抗性を有し、改善された細胞取り込みを有することができるオリゴヌクレオチドが開示されている。
【0079】
このように、インビボでの核酸処理のバイオアベイラビリティを、記載のように核酸を修飾することによって改善してもよい。例えば、修飾した核酸製剤は、増加した半減期を有する可能性があり、および/または非修飾核酸よりも長い期間、血漿中に保持される可能性がある。例えば、核酸およびポリエチレングリコールの製剤もまた、任意の公知の持続放出核酸製剤のように、インビボでの核酸の半減期を増加させる可能性がある。このように、核酸を修飾することによって、インビボでの核酸の効果および/またはそのバイオアベイラビリティが増加する可能性がある。
【0080】
核酸のサイズは、数ヌクレオチドのサイズからオリゴヌクレオチドまで、またはプローブ、ポリヌクレオチドまで、遺伝子、染色体フラグメントから完全染色体まで、およびゲノムまで、相当の範囲とすることができる。例えば、一本鎖または二本鎖核酸は、少なくとも10-、20-、30-、40-、50-、60-、70-、80-、90、または100-ヌクレオチドまたは塩基対(bp)の長さであってもよい。さらに大きい場合、核酸は、少なくとも0.2kb、0.3kb、0.4kb、0.5kb、0.6kb、0.7kb、0.8kb、0.9kb、または1.0kbのサイズであってもよい。実際に、本発明で使用するための核酸は、少なくとも1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、もしくは10kbまたはそれ以上のサイズとすることができる。1つの好ましいサイズ範囲は1〜2kbである。核酸は様々な長さのヌクレオチド鎖とすることができ、典型的には、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと呼ばれる。オリゴヌクレオチドは、一般にヌクレオチドの直鎖状配列から得られるオリゴマーである。オリゴヌクレオチドは、例えば、約2〜約100、約2〜約20、約10〜約90、または約15〜約35ヌクレオチドを含むことができる。オリゴヌクレオチドアレイでは、約25merのオリゴヌクレオチドを使用することができる。別の特別な範囲は約60〜約80merであり、これは比較的長いオリゴヌクレオチドである。
【0081】
核酸の選択、プロービング、標識、および検出を含む、マイクロアレイ法は米国特許第6,379,932号および同第6,410,231号(Incyte Genomics)に記載されており、使用することができる。これらの特許は参照により全体が組み入れられる。これらの参考文献はディップペンナノグラフィー法について言及しているが、どのようにディップペンナノグラフィー法を使用して本明細書で記載したような改善されたナノアレイを作製することができるかについて示唆しておらず、またはそれについての手引きを提供していない。
【0082】
単一ヌクレオチドを含む化合物もまた、インクとして使用することができる。核酸混合物を使用することができ、1つのアレイ上の異なるスポットは異なる核酸を含むことができる。
【0083】
堆積のための核酸は、基材表面上への直接描画の堆積前、または後に、他の要素と共に製剤化または混合してもよい。このように、本発明の「インク」は、所望の核酸試料に加えて、基材表面に堆積させるための他の化学物質、化合物、または組成物を含んでもよい。上述のように、溶媒および塩を使用して、核酸をチップに適用することができる。界面活性剤を使用することができる。例えば、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを所望の核酸と共に基材表面に堆積させてもよい。
【0084】
核酸アレイ、およびその中で使用される核酸の型は、例えば、A Primer of Genome Science, G. Gibson and S. Muse, 2002, Chapters3-4(123〜181ページ)において記載されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。この参考文献は、例えば、cDNAマイクロアレイおよびオリゴヌクレオチドアレイの両方、標識、ハイブリダイゼーション、および統計分析を記載する。cDNAアレイを使用して、何千もの遺伝子の発現の相対レベルを同時にモニタすることができる。PCR増幅させたcDNAフラグメント(EST)を、蛍光または放射性標識したcDNAに対し、スポッティングまたはプロービングすることができる。観察されたシグナル強度は、研究しているRNA群中に存在する転写物の量に比例すると仮定することができる。強度の差は、処理間の転写物レベルの差を反映する。統計学的および生物情報学的分析をその後、通常、確立した分子生物学的アプローチを用いて試験してもよい仮説を作製する目的で、実施することができる。しかしながら、現在のcDNAマイクロアレイは、15,000要素の上限を有する可能性があり、より高等な真核生物のゲノムにおいて存在する遺伝子の完全な組を示すことができない。オリゴヌクレオチド対cDNAマイクロアレイの利点および欠点は前記A Primer of Genome Scienceにおいて記載されており、本明細書で記載した核酸ナノアレイを構築する際に使用することができる。
【0085】
オリゴヌクレオチドはまた、標識オリゴヌクレオチドおよびフルオロ標識したオリゴヌクレオチドを含む下記実施例において記載されている。
【0086】
パターニング組成物-溶媒
パターニング組成物は1つまたは複数の溶媒を含むことができる。溶媒は、例えば、純水、蒸留水、脱イオン水、などを含む水でありうる。緩衝溶媒でありうる。pHは用途によって変動させることができる。溶媒は1種または複数種の有機溶媒でありうる。溶媒化合物の混合物を使用することができる。例としては、当業者に公知のように、アルコール、エーテル、アルカン、エステル、芳香族化合物が挙げられる。
【0087】
パターニング組成物-量
パターニング組成物は堆積の成功が得られるように製剤化することができる。例えば、脂質およびパターニング種の重量比を適合させることができる。例えば、重量比は約10:1〜約1:10、または約9:1〜約1:9、または約8:1〜約1:8、または約7:1〜約1:7、または約6:1〜約1:6、または約5:1〜約1:5、または約4:1〜約1:4、または約3:1〜約1:3、または約2:1〜約1:2、または約1.5:1〜約1:1.5とすることができる。場合によっては、重量比で大体等量(1:1)のパターニング化合物対パターニング種を使用することができる。
【0088】
成分は単一の溶媒系中で共に溶解させることができ、または成分を別個に溶解させ、その後、別々の溶液を共に混合することができる。例えば、溶媒中の濃度は、例えば、少なくとも約0.01g/L、または少なくとも約0.1g/L、または少なくとも約1g/Lとすることができる。濃度は約25g/Lもしくはそれ以下、または約10g/Lもしくはそれ以下とすることができる。
【0089】
濃度は、液晶相および自己集合およびリポソーム形成を含む成分の相挙動の要因となるように適合させることができる。温度は相状態を制御するように制御することができる。
【0090】
チップおよび器具類
材料をチップから基材表面に移動させることによりパターニングを実行するための器具類は当技術分野において公知である。例えば、NanoInk, Inc.(Skokie, IL)からの製品を参照されたい。例えば、米国特許第6,827,979号;同第6,642,129号;同第6,867,443号;同第7,008,769号;同第6,573,369号;および同第6,998,228号もまた参照されたい。例えば、チップはナノスコピックチップでありうる。例えば、チップは走査プローブ顕微鏡チップまたは原子間力顕微鏡チップでありうる。チップは固体チップでありえ;または、チップは中空チップでありうる。中空チップは、インク組成物をチップ端に送達するための、開口および送達流路を含むことができる。チップは、例えば、無機表面または有機表面を含むことができる。チップは硬質材料から、例えば微細加工により製造することができる。チップの鮮鋭化を実施することができる。
【0091】
チップ作製後、チップはそのまま使用することができるが、そのまま使用する場合最初に清浄化することができる。チップはまた、所望であれば作製後、表面修飾することができる。例えば、有機コーティングを無機チップ表面に添加することができる。
【0092】
チップは、無機チップ表面を含むチップ表面を有することができ、これは有機材料により修飾されていない。
【0093】
チップはAFM技術分野で公知の材料から作製することができ、窒化ケイ素、ケイ素、および他の硬質材料が挙げられる。
【0094】
チップは、当技術分野において公知なように、カンチレバー端またはカンチレバー付近を含むカンチレバー上に配置することができる。
【0095】
チップは所望であれば、例えば少なくとも5μm、または少なくとも10μmの長さを有するかなり長いチップとすることができる。
【0096】
チップはチップのアレイの一部とすることができ、そのため、複数のチップを提供することができる。表面に対してz方向に移動するためには、チップは受動モードで共に移動することができ、または能動または作動モードで個々に移動させることができる。このように、堆積工程では、チップは受動的に使用することができ、または作動チップとして使用することができる。作動機構は、例えば、熱または静電またはピエゾ抵抗とすることができる。チップの一次元アレイを使用することができ;またはチップの二次元アレイを使用することができる。特に、多数のチップを有するアレイを使用することができる。例えば、以下の参照文献リスト4.に引用されるLenhart Small論文を含む、参照により全体が本明細書に組み入れられる、2007年3月23日に出願されたMirkinらの米国特許出願第11/690,738号を参照されたい。
【0097】
チップ、およびカンチレバー上に配置されたチップを、表面に対しx、yおよびz方向に移動させる器具類の方法は当技術分野において公知である。
【0098】
器具類は、チップを加熱するために適合させることができる。例えば、Sheehanらの米国特許出願公開第2006/0242740号を参照されたい。
【0099】
基材および基材表面
堆積のための表面を提供する様々な基材を使用することができる。基材は、当技術分野においてマイクロアレイを調製するために使用されるものでありうる。基材はポリマー、ガラス、セラミック、複合物、金属、半導体、酸化物、ケイ素、などでありうる。基材はモノリシック、ワンピースでありえ、または互いに配置された複数の層を含むことができる。基材は無機または有機表面コーティングを含むことができる。単層コーティングを使用することができる。表面は有機官能基または有機材料により官能化させることができる。例えば、基材は有機材料で修飾された無機材料表面を含むことができる。
【0100】
基材表面は、パターニング組成物の1つまたは複数の成分に共有結合する、または化学吸着するように適合させることができる。例えば、基材表面は求電子性表面でありうる。基材表面は、パターニング種中の官能基と反応するように適合させることができる。例えば、タンパク質中のアミノ基はスクシンイミドと反応することができる。または、チオール基もしくは化合物は金に化学吸着することができる。
【0101】
蛍光検出を使用する場合、基材およびパターニングは、蛍光のクエンチングを最小に抑える、または回避するように適合させることができる。
【0102】
基材は必要に応じて予めパターニングすることができ、堆積ゾーンに対する境界を提供し、堆積ゾーンに対する空間を指定することができる。
【0103】
堆積工程
チップおよび基材表面は、パターニング組成物の堆積が起こり、材料がチップから表面に移動され、堆積物が形成されるように、互いに対し移動させることができる。場合によっては、堆積を促進するためにメニスカスが存在してもよい。堆積のために定位置にあるチップは所望のように制御することができる。
【0104】
場合によっては、熱を使用して堆積を促すことができる。チップおよびチップを支持するカンチレバーは加熱することができ、または堆積領域の周囲の環境を加熱することができる。環境チャンバを使用して、湿度、温度、雰囲気ガス、および他のパラメータを制御することができる。例えば堆積は、堆積を起こすことができるのに十分な、例えば十分高い相対湿度で実施することができる。場合によっては、相対湿度が高いほど、堆積が進み、または加速される可能性がある。堆積は、例えば少なくとも30%、または少なくとも50%、または少なくとも70%の相対湿度で実施することができる。
【0105】
脂質がゲル-液晶転移温度を示す場合、堆積温度はこの温度より高くすることができ、例えばゲル-液晶転移温度より10℃またはそれ以上高い温度とすることができる。
【0106】
堆積工程はチップを表面と接触させることにより実施することができ、この場合、チップは表面に対しxy表面内に固定して保持される。また堆積工程は、チップを表面と接触させることにより実施することができ、この場合、チップは表面に対しxy表面内に固定して保持されず、むしろチップは移動している。
【0107】
走査プローブ器具類、例えば、AFM器具類を使用する場合、例えば接触モード、非接触モード、またはタッピングモードまたは間欠接触モードを含む使用のための様々なモードを使用することができる。
【0108】
堆積の促進および速度
脂質は、パターニング種の堆積速度を上昇または増加させることができる。例えば、いくつかの態様では、パターニング種は実質的には、脂質なしでチップから離れることはなく、またはチップから離れる量が検出するには少なすぎる、もしくは商業的に有用になるのにかかる時間が長すぎる可能性がある。堆積の検出は、例えば、蛍光検出または走査プローブ法により実施することができる。
【0109】
堆積物
堆積物は、様々な形状およびパターンで形成させることができる。パターンは単一の堆積物中に、または一連の別個の堆積物中に見出すことができる。堆積物は、例えばドットまたは線でありうる。線は直線または曲線でありうる。堆積物は、線幅またはドット直径により特徴づけることができる。例えば、ドット直径または線幅は約10nm〜約20μm、または約50nm〜約10μm、または約100nm〜約1μm未満とすることができる。
【0110】
堆積物はまた、高さにより特徴づけることができる。例えば、高さは約1nm〜約1μm、または約10nm〜約750nm、または約100nm〜約500nmとすることができる。
【0111】
堆積物間の距離は、高い解像度を反映することができ、例えば、約50μmもしくはそれ未満、または約10μmもしくはそれ未満、または約1μmもしくはそれ未満、または約15nm〜約10μm、または約100nm〜約1μmとすることができる。堆積物間の距離は縁から縁までの距離として、または中心点(例えば、ドットの中心)間の距離として測定することができる。
【0112】
堆積物は、例えば洗浄により、脂質、溶媒、または両方を含む1つまたは複数の成分を除去するように処理することができる。堆積および洗浄は、パターニング種が除去されないように適合させることができる。全てまたは実質的に全ての脂質を除去することができ、または、所望であれば、洗浄をそれに応じて適合させた場合、いくらかの脂質を保持することができる。
【0113】
アレイ
アレイを含む物品もまた本明細書で提供されており、ここで、アレイは基材および基材表面上に配置された1つまたは複数の堆積物を含む。堆積物は本明細書で記載した方法により形成させることができる。
【0114】
用途
用途としては、生物アレイを含むマイクロアレイおよびナノアレイ、ならびにそのようなアレイの公知の用途が挙げられる。例えば、タンパク質に基づくナノ構造のための直接パターニングおよびナノパターニング法の開発が、プロテオミクス、およびセラノスティクスの領域で働く研究者にとって重要である。そのような方法により、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよびウイルスの多成分生物ナノ構造を作製することができる。他の用途としては、ナノスケールでのより大きな生物学的実体(すなわち、真核細胞、ウイルス、細菌、および胞子)との生体分子相互作用の研究のようなハイスループットなゲノムおよびプロテオミクス分析のため、ならびにバイオセンシングおよび医学的診断のための、生物マイクロアレイおよびナノアレイの開発が挙げられる。
【0115】
実施例
一連の非限定的な実施例もまた提供する。
【0116】
様々な生体分子(すなわち、オリゴヌクレオチドおよびタンパク質)のパターニングを、表面上で、ディップペンナノリソグラフィーおよび新規生体適合性リン脂質マトリクスを使用してパターニングした。マトリクスは、1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)の水溶液を、緩衝液に溶解したパターニングされる所望の生体分子と共に、等しい体積比、通常1:1で含む。
【0117】
第1の実施例では、マトリクスとしてDOPCを使用して、オリゴヌクレオチドの金表面上への送達を実施した。得られたパターンを特徴づけるために、3’チオール末端基を有する、5’フルオロフォア-標識オリゴヌクレオチドを使用した。フルオロフォアで標識したチオール化DNAを純水に溶解した(1g/Lの濃度で)。この溶液をその後、等しい体積の、純水に溶解したDOPCの溶液(10g/Lの濃度)と混合し、前に記載した(4)DPNのためのインクとして使用した。その後、パターンを作製させた後、蛍光顕微鏡写真をとった(図1)。この場合、より薄いパターンの金表面によるクエンチングのために、より厚いパターンのみが蛍光を示した。このアプローチにより、より小さな特徴も作製された(図2)。この場合、金表面上で大きな長方形の特徴をパターニングする代わりに、予め修飾したガラススライド(アミノ末端の官能基を捕捉するために使用される、スクシンイミドポリマーで官能化させた市販のガラススライド)上でナノスケールの線特徴を作製した。ガラスの使用は、金表面に比べ、最小のクエンチング効果が観察されるので、キャラクタリゼーションに好都合である。これらの実験で使用されるオリゴヌクレオチドは、5’フルオロフォア標識され(Alexa 597)、3’アミノ末端を有した。DNA対脂質比は質量で約1:1であった。蛍光顕微鏡法を使用して決定されるように、500nm未満(厚さ約320nm)の線幅が明確に観察された(図2)。水中で10分間の超音波処理、続いて、エタノール中で10分間の超音波処理後でも、蛍光パターンが依然として視認可能であり、アミン末端を有するDNAがスクシンイミド官能化ガラスに共有結合により付着されたままで、担体を除去することができることが示唆される。
【0118】
DOPCリン脂質がDPNプリンティングを支援するための普遍的インク担体として使用することができることをさらに証明するために、(並列DPNを使用する)同時の複数のタンパク質のマトリクスが支援する堆積を研究した。これらの実験に対し、2つの異なるフルオロフォア標識タンパク質、コレラ毒素サブユニットB(Alexa 596:赤チャネル)およびトリプシン阻害剤(Alexa 488:緑チャネル)を使用した。DOPCをこれらのタンパク質(1g/L)と2つの異なる比(1:1および10:1)で混合した。並列マルチチップアレイにインク付けするために、インクウェルを使用したが、この場合、異なるインク付け条件を、同じカンチレバーアレイを有する同じチップ(chip)上で同時に研究した(4)。チップ-インクウェル接触時間は、中程度の相対湿度(37%)で約30分であり、これらの実験で使用した基材、予め修飾したガラスは、上記、オリゴヌクレオチドに対し使用したものと同じであった。1:1比のDOPC対タンパク質を使用した場合、両方のタンパク質の同時堆積が、明瞭に観察された(図3、左端の2つのカラム)。より高い比のDOPC対タンパク質を使用した場合(10:1)、これらのタンパク質を堆積させる能力は著しく損なわれた。対照として、純粋なタンパク質をDOPCリン脂質マトリクスなしでパターニングすることを試みたが、蛍光顕微鏡写真画像において見られるように、同じ条件下ではパターニングできなかった(図3、右端の2つのカラム)。リン脂質マトリクスを洗い流した後(10分間の水中での超音波処理後)にタンパク質を保持することができるかどうかを決定するために、図3の正方形様パターンから画像化すると、パターニングした領域からのタンパク質の損失はなく、これにより、基材へのタンパク質の共有結合が保持されたことが示された(図4)。
【0119】
NanoInk, Inc.(Skokie, IL)から入手したNSCRIPTOR(商標)をリソグラフィーのために使用した。NanoInk由来の26ペンの直線アレイ(F-26)を使用した。インクウェルもまた、NanoInkから入手した。
【0120】
参照文献リスト:


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップおよび基材表面を提供する工程、
チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含む、方法。
【請求項2】
チップがナノスコピックチップである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
チップが走査プローブ顕微鏡チップである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
チップが原子間力顕微鏡チップである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
チップが固体チップである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
チップが中空チップである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
チップが、有機材料により修飾されていない表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
チップが、有機材料により修飾されていない無機表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
チップが、カンチレバー上にある、請求項1記載の方法。
【請求項10】
複数のチップが提供される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
複数のチップがチップの一次元アレイで提供される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
複数のチップがチップの二次元アレイで提供される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
堆積工程で、チップが受動的に使用される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
堆積工程で、チップが作動チップとして使用される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
基材表面が、パターニング組成物の1つまたは複数の成分に共有結合し、または化学吸着するように適合される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
基材表面が求電子性表面である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
基材表面がアミノ基と反応性である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
基材表面がチオール化合物に化学吸着するように適合される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
基材表面が有機材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
基材が有機材料で修飾された無機材料表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
パターニング組成物がチップ上での乾燥に供せられる乾燥工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
堆積が、堆積を起こさせるのに十分高い相対湿度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
堆積が、少なくとも30%の相対湿度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
堆積が、少なくとも50%の相対湿度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
堆積が、チップを表面と接触させ、チップを表面に対しXY面内で固定して保持することにより実施される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
堆積が、チップを表面と接触させ、チップを表面に対しXY面内で移動させることにより実施される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
堆積物がドットまたは線である、請求項1記載の方法。
【請求項28】
堆積物が少なくとも約10nmおよび約20μm未満のドット直径または線幅を有する、請求項1記載の方法。
【請求項29】
堆積物が少なくとも約50nmおよび約10μm未満のドット直径または線幅を有する、請求項1記載の方法。
【請求項30】
堆積物が少なくとも約100nmおよび約1μm未満のドット直径または線幅を有する、請求項1記載の方法。
【請求項31】
脂質がリン脂質である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
脂質が単純脂質である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
脂質が複合脂質である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
脂質が誘導脂質である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
脂質がホスホアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、セレブロシド、またはガングリオシドである、請求項1記載の方法。
【請求項36】
脂質がステロイド、カロテノイド、または脂質ビタミンである、請求項1記載の方法。
【請求項37】
脂質が不飽和脂肪酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項38】
脂質が自己集合して脂質二重層になることができる脂質である、請求項1記載の方法。
【請求項39】
脂質がホスホコリン脂質である、請求項1記載の方法。
【請求項40】
脂質がDOPCである、請求項1記載の方法。
【請求項41】
パターニング種が生体分子である、請求項1記載の方法。
【請求項42】
パターニング種がバイオポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項43】
パターニング種が重合された核酸またはアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項44】
パターニング種がオリゴヌクレオチド、DNA、RNA、タンパク質、またはペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項45】
パターニング種が、基材表面との相互作用のために合成的に適合されていない、請求項1記載の方法。
【請求項46】
パターニング種が、基材表面との相互作用のために合成的に適合されている、請求項1記載の方法。
【請求項47】
任意の溶媒が水である、請求項1記載の方法。
【請求項48】
任意の溶媒が緩衝溶媒である、請求項1記載の方法。
【請求項49】
脂質およびパターニング種の重量比がパターニング種の堆積のために適合される、請求項1記載の方法。
【請求項50】
脂質およびパターニング種の重量比が約9:1〜約1:9である、請求項1記載の方法。
【請求項51】
脂質およびパターニング種の重量比が約7:1〜約1:7である、請求項1記載の方法。
【請求項52】
脂質およびパターニング種の重量比が約5:1〜約1:5である、請求項1記載の方法。
【請求項53】
脂質およびパターニング種の重量比が約3:1〜約1:3である、請求項1記載の方法。
【請求項54】
脂質およびパターニング種の重量比が約2:1〜約1:2である、請求項1記載の方法。
【請求項55】
堆積物を洗浄する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項56】
堆積物を洗浄して脂質を堆積物から除去する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項57】
堆積物を洗浄して脂質を堆積物から除去する工程をさらに含み、パターニング種が該堆積物中に残っている、請求項1記載の方法。
【請求項58】
脂質がリン脂質であり、かつパターニング種がタンパク質を含むか、または核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項59】
脂質がリン脂質であり、かつパターニング種がオリゴヌクレオチドである、請求項1記載の方法。
【請求項60】
脂質がリン脂質であり、かつパターニング種がタンパク質である、請求項1記載の方法。
【請求項61】
ナノスコピックチップおよび基材表面を提供する工程、
ナノスコピックチップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つのリン脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのバイオオリゴマーの、またはバイオポリマーのパターニング種を含む、方法。
【請求項62】
チップおよび基材表面を提供する工程、
チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含み、かつ、
脂質が、パターニング種の堆積速度を上昇または増加させる、方法。
【請求項63】
原子間力顕微鏡チップおよび基材表面を提供する工程、
原子間力顕微鏡チップ端にパターニング組成物を配置する工程、
チップから基材表面にパターニング組成物の少なくともいくらかを堆積させ、基材表面上に配置される堆積物を形成させる工程
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つのリン脂質およびリン脂質とは異なる少なくとも1つのバイオポリマーを含む、方法。
【請求項64】
基材表面、
該表面上に配置されるパターニング組成物を含む少なくとも1つの堆積物
を含み、
パターニング組成物が少なくとも1つの脂質、任意で少なくとも1つの溶媒、ならびに該脂質および任意の溶媒とは異なる少なくとも1つのパターニング種を含む、アレイ。
【請求項65】
脂質がリン脂質である、請求項64記載のアレイ。
【請求項66】
脂質が単純脂質である、請求項64記載のアレイ。
【請求項67】
脂質が複合脂質である、請求項64記載のアレイ。
【請求項68】
脂質が誘導脂質である、請求項64記載のアレイ。
【請求項69】
脂質が自己集合して脂質二重層になることができる脂質である、請求項64記載のアレイ。
【請求項70】
脂質がホスホコリン脂質である、請求項64記載のアレイ。
【請求項71】
脂質がDOPCである、請求項64記載のアレイ。
【請求項72】
バイオポリマーがタンパク質または核酸を含む、請求項64記載のアレイ。
【請求項73】
バイオポリマーがタンパク質を含む、請求項64記載のアレイ。
【請求項74】
バイオポリマーがオリゴヌクレオチドを含む、請求項64記載のアレイ。
【請求項75】
バイオポリマーが基材表面に共有結合により結合される、請求項64記載のアレイ。
【請求項76】
バイオポリマーが基材表面に共有結合により結合されない、請求項64記載のアレイ。
【請求項77】
約1μm未満の縁間距離だけ互いに分離された複数の堆積物を含む、請求項64記載のアレイ。
【請求項78】
約500nm未満の縁間距離だけ互いに分離された複数の堆積物を含む、請求項64記載のアレイ。
【請求項79】
堆積物がドットまたは線を含む、請求項64記載のアレイ。
【請求項80】
脂質を、脂質とは異なるパターニング種を含むパターニング組成物と混合し、チップ端上に配置され、かつ基材表面上に堆積された場合にパターニング種のパターニングを促進する工程を含む、脂質を使用するための方法。
【請求項81】
脂質がリン脂質である、請求項80記載の方法。
【請求項82】
脂質がグリセリド脂質である、請求項80記載の方法。
【請求項83】
脂質が単純脂質である、請求項80記載の方法。
【請求項84】
脂質が複合脂質である、請求項80記載の方法。
【請求項85】
脂質が誘導脂質である、請求項80記載の方法。
【請求項86】
脂質がホスホコリン脂質である、請求項80記載の方法。
【請求項87】
パターニング種が生体分子である、請求項80記載の方法。
【請求項88】
パターニング種がバイオポリマーを含む、請求項80記載の方法。
【請求項89】
パターニング種が核酸またはタンパク質を含む、請求項80記載の方法。
【請求項90】
パターニング種が基材表面に共有結合により結合するように適合された生体分子を含む、請求項80記載の方法。
【請求項91】
請求項1記載の方法を含む方法により調製されたアレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−531977(P2010−531977A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513208(P2010−513208)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/007498
【国際公開番号】WO2008/156732
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(507294960)ノースウエスタン ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】