説明

脆性ウェハ加工用粘着テープ

【課題】本発明は、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合することにより発光層や回路面を保護するとともに、該ウェハの裏面を所定の仕上げ厚さまで問題なく研削することを可能とする、ウェハ加工用粘着テープを提供する。
【解決手段】基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有するウェハ加工用粘着テープであって、該粘着テープにおける粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmで、かつ粘着剤層表面の純水接触角が85°以上であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープである。前記粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性ウェハの研削時に使用されるウェハ加工用粘着テープに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、発光ダイオード製造の際に使用されるサファイアウェハ等の脆性ウェハの裏面研削工程において、該ウェハを固定し、かつ該ウェハの表面を保護するために用いられるウェハ加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイや照明機器の光源として、従来の蛍光灯などと比較して省電力、長寿命である発光ダイオード(以下、「LED:Light Emitting Diode」ともいう。)の需要が急増している。LEDの形成には、主にサファイア、SiC、Siなどが基板として使用されるが、高い透過率を有することからサファイアが多く用いられている。LEDの製造工程では、サファイア基板上にGaNなどの発光層や回路を形成し、得られたサファイアウェハの裏面を研磨して薄膜ウェハとした後、LEDチップに個片化して実装するプロセス等が採用されている。
【0003】
このような製造工程においてサファイアウェハを薄化する方法としては、サファイアウェハの裏面を研削した後、さらに研磨する方法が一般的である。このような方法では、裏面を研削する際にサファイアウェハ表面を保護するために、ワックスで固定する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、まずサブストレートにワックスでサファイアウェハを固定して研削や研磨等の加工工程を行う。そして、これらの加工工程終了後、該ウェハに加熱等の工程を施すことによりワックスを溶融させてウェハを剥離し、更に有機溶剤等を用いてワックスを洗浄除去した後、リングフレームへの貼り付けを経てダイシングなどの次工程へと運ばれる。
【0005】
しかし、このようなワックスを用いた固定方法では、ウェハやサブストレートに付着したワックスを洗浄除去しなければならないために、工程が煩雑になる。また、溶剤を用いてウェハを洗浄した場合には、除去しきれなかった残存ワックスがデバイスに悪影響をもたらし、不良が発生したり、大量の溶剤を必要とするために廃液が環境に悪影響を与えたりという問題がある。このため、ワックスを使用せずにウェハ研削を行うことができる方法が望まれている。
【0006】
ワックスを使用しない方法として、該ウェハの裏面研削工程において、表面にウェハ加工用粘着テープを貼合して発光層や回路面を保護するウェハ加工用粘着テープについて検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、LEDの基板として使用されるサファイアウェハは、GaAs基板と同様に脆性材料として知られ、一般的な半導体デバイスに用いられるシリコンウェハに比べて非常に脆い。このため、裏面研削時の応力でテープが変形した場合には、研削中に割れることもあり、研削の難易度が高い。また、反り量が非常に大きいことから、研削中に切削水が浸入してテープが剥離することもある。このため、従来のシリコンウェハ用の表面保護テープを単純に併用することは適当でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−46744号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】梶山啓一、「LED用基板薄化加工の完全自動化」、SEMICONDUCTOR International日本版、2009年11月、14〜18頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合することにより発光層や回路面を保護するとともに、該ウェハの裏面を所定の仕上げ厚さまで問題なく研削することを可能とする、ウェハ加工用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層が形成されたウェハ加工用粘着テープであって、該粘着テープにおける粘着剤層の放射線硬化前の粘着力が特定の範囲内にあり、かつ粘着剤層表面の純水接触角が特定の範囲内にある粘着テープが、上記課題を解決できることを見出した。本発明はそれらの知見に基づきなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有するウェハ加工用粘着テープであって、前記粘着テープにおける粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmで、かつ粘着剤層表面の純水接触角が85°以上であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(2)前記粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることを特徴とする(1)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(3)前記粘着剤層が、放射線硬化性のアクリル系粘着剤からなり、前記アクリル系粘着剤を構成するポリマーの側鎖長が炭素数で4以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(4)前記粘着テープにおける前記粘着剤層の厚さが、20〜70μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
(5)前記粘着テープにおける前記基材樹脂フィルムの厚さが、50〜150μmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウェハ加工用テープは、脆性ウェハ、特にサファイアウェハの裏面を研削する工程において、該ウェハ表面に貼合して発光層や回路面を保護するとともに、該ウェハの裏面研削を実用上十分な厚さまで行うことを可能にするものである。また、本発明のウェハ加工用粘着テープによれば、ウェハ加工用粘着テープを剥離した後のウェハ表面の汚染を防止することができ、別途洗浄工程を必要としないことから、製造工程が簡略化され、洗浄液等の廃液による環境への負荷も低減される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
この実施形態において、ウェハ加工用粘着テープは、基材樹脂フィルムの上に放射線硬化性の粘着剤層が形成されてなる。本発明のウェハ加工用粘着テープは、サファイアウェハをはじめとする脆性ウェハの加工に用いられるものである。
【0015】
なお、以下、本発明のウェハ加工用粘着テープの実施形態については、脆性ウェハの一例としてサファイアウェハの加工工程を挙げて説明するが、本発明はサファイアウェハの加工用に限定的に用いられるものではなく、脆性ウェハの加工に適用され得るものである。
【0016】
本発明のウェハ加工用粘着テープは、サファイアウェハをはじめとする脆性ウェハ表面に貼合されて使用される。サファイアウェハは、反り応力が大きいことから、加工中のウェハ変形により割れるリスクが非常に高い。したがって、本発明のウェハ加工用粘着テープでは、粘着力と弾性率の両方が大きいことが求められる。
【0017】
具体的には、本発明のウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層のシリコンウェハのミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmであることを特徴とする。粘着剤層の放射線硬化前の粘着力が小さすぎると、サファイアウェハを研削、薄化した場合に生じる反りによりウェハのエッジ部から粘着テープが剥れ、その部分のウェハにエッジクラックが生じやすくなる。一方、粘着剤層の放射線硬化前の粘着力が大きすぎる場合には、粘着剤が発光層や回路面に悪影響を及ぼしたり、放射線硬化後にも粘着剤が残ったりする恐れがある。より実用的な範囲としては、該粘着剤層の放射線硬化前の粘着力は、2.0〜20N/25mm、または2.0〜10N/25mm程度とする。
【0018】
なお、本発明のウェハ加工用粘着テープの粘着層の粘着力については、前記のとおり、シリコンウェハのミラー面に対する粘着力として定義されるが、粘着力は、シリコンウェハの厚さが400μm以上のもので測定する。また、粘着力の具体的な測定方法は、例えば以下のとおりである。
【0019】
ウェハ加工用粘着テープから試験片を採取し、その試験片をシリコンウェハのミラー面に一定の圧力で圧着した後、JIS B 7721に準拠した引張試験機を用いて90度引きはがし試験を行う。このとき、引張速さは50mm/minとし、測定温度は23℃、測定湿度は50%とする。
【0020】
本発明のウェハ加工用粘着テープの弾性率を大きくする点については、ウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量を150μm以下とすることが好ましく、120μm以下とすることがより好ましい。サファイアウェハは、一般的なシリコンウェハに比べ硬いため、裏面研削時には通常のシリコンウェハの研削時よりも大きな力を加える必要がある。したがって、ウェハ加工用テープの圧縮変位量が大きすぎると、裏面研削時の応力によりウェハ加工用粘着テープが変形し、ウェハ割れが生じやすくなる。一方、本発明のウェハ加工用粘着テープの放射線硬化前の圧縮変位量の下限値については、ウェハ加工用粘着テープが、ウェハ表面に追従して密着する必要があることから、通常、20μm以上とすることが望ましい。
【0021】
なお、本発明における圧縮変位量は、次の方法で求めた値をいうものとする。
本発明のウェハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルム層と、粘着剤層を突き合わせて5枚積層する。この積層されたウェハ加工用粘着テープを、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加する。応力印加前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力印加時の変位量を測定値とする。
【0022】
さらに、本発明のウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層表面の耐水性も重要となる。粘着剤層表面の耐水性が低い場合は、ウェハ研削加工中に切削水が浸入し、粘着テープがウェハエッジ部より剥離しやすくなることからエッジチッピングが誘発される。サファイアのような脆性材料では、このようなエッジチッピングの生じた箇所から結晶方向にそって割れが発生しやすい。したがって、本発明のウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤層表面の耐水性が高いことが望ましく、具体的には、粘着剤層表面の純水との接触角が85°以上であることが好ましい。粘着剤の材料特性の観点から、純水との接触角は、通常150°以下とする。実用的には粘着剤層表面の純水との接触角は85〜120°程度である。なお、接触角の測定環境は、室温(25±5℃)、湿度50±10%とする。
【0023】
本発明のウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤の粘着力や粘着テープの圧縮変位量を制御する方法は、とくに限定されない。一般的には、粘着剤の粘着力を上げる手段として、粘着剤中に含有される硬化剤の部数を減らして架橋度を下げるか、ポリマーの分子量を下げる方法が適用される。しかし、これらの方法では粘着剤の粘着力が大きくなりすぎる場合があるだけでなく、同時に粘着剤の弾性率を低下させてしまうため、粘着テープの圧縮変位量が大きくなってしまう。つまり、粘着力と弾性率はトレードオフの関係になる。
【0024】
そこで、本発明のウェハ加工用粘着テープでは、粘着剤の粘着力を前記のような好適な範囲に制御するために、粘着剤を構成するポリマーの分子構造自体、すなわち高分子鎖を構築するモノマー(各種アクリル酸およびそのエステル類)を変更すること、具体的には、ポリマーの側鎖長を炭素数で4以上とすることにより、粘着力と弾性率を両立させ、さらには、粘着剤表面の耐水性を十分な範囲としている。もちろん、ウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化前の粘着剤の粘着力、圧縮変位量、および粘着剤層の純水接触角を好適な範囲に制御できれば、硬化剤やオリゴマー、モノマーなどの他の添加剤を用いてもよい。
【0025】
さらに、本発明のウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤層の厚さは、20〜70μmであることが好ましい。サファイアウェハ表面にはGaNなどの発光層や回路が形成されており、凹凸が存在している。このため粘着剤層の厚さが薄すぎると、ウェハ加工用粘着テープがこの凹凸に追従することが困難になり、ウェハ割れが生じたり裏面に研削痕(ディンプル)が残り易くなったりする。一方、粘着剤層の厚さが厚すぎると、研削時の応力により粘着剤層が変形しやすくなり、ウェハが変形して割れることがある。
【0026】
また、本発明のウェハ加工用粘着テープでは、基材樹脂フィルムの厚さは50〜150μmであることが好ましい。基材樹脂フィルムの厚さが薄すぎると、ウェハ加工用粘着テープとしての剛性が不足し、ウェハの反りを抑制することが困難になる。一方、基材樹脂フィルムの厚さが厚すぎると、ウェハ加工用粘着テープの可撓性が低くなるため、ウェハ加工用粘着テープをウェハに貼合する際やウェハから剥離する際の作業性が著しく悪化する。
【0027】
本発明のウェハ加工用粘着テープにおいて、放射線硬化性の粘着剤層に用いられる粘着剤は、上記の粘着力と圧縮変位量と純水接触角を発揮し得るものであればよく、その種類や構成は限定されない。放射線硬化性の粘着剤層は、単一の粘着剤から構成されるものでも、複数種類の粘着剤が積層されてなるものもよい。
【0028】
一般に、粘着剤は樹脂組成物であるが、本発明のウェハ加工用粘着テープにおける放射線硬化性の粘着剤層を構成する粘着剤としては、樹脂組成物のベース樹脂として主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(a)を主成分とするものが好ましい。ここで、「重合体(a)を主成分とする」とは、ベース樹脂中の重合体(a)の含有割合が80〜100質量%であることをいう。また本発明においては、(メタ)アクリル系単量体は、アクリル系単量体とメタクリル系単量体の両者を含むものとする。
【0029】
このような重合体(a)はどのようにして製造されたものでもよい。例えば、前記重合体(a)としては、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体(a1)と、該官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(a2)とを反応させて得たものを挙げることができる。また、官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体を(a1’)とし、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するとともに(a1’)の官能基と反応し得る官能基を有する化合物を(a2’)とし、これらを反応させて、重合体(a)とすることもできる。
【0030】
前記の主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体(a1)は、例えば、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルなどの単量体(a1−1)と、官能基を有する単量体(a1−2)とを共重合させて得ることができる。
【0031】
単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート)を挙げることができる。また、単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらと同様のメタクリレートなど)を挙げることができる。
【0032】
単量体(a1−1)として、アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が大きな(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用するほどガラス転移点は低くなる傾向にある。したがって、単量体(a1−1)のアルキルエステルのアルキル基の炭素数を適宜選択することにより、所望のガラス転移点を有する重合体(a)を得ることができる。
【0033】
また、ガラス転移点の以外にも、他の成分との相溶性や粘着剤としての各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を(a1−1)に加えて重合体(a)を得てもよい。これらの低分子化合物の配合量は、単量体(a1−1)の5質量%以下とすることが好ましい。
【0034】
単量体(a1−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。単量体(a1−2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0035】
前記(a2)の官能基がカルボキシル基や環状酸無水基の場合は、(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。また(a2)の官能基が水酸基の場合は、(a1)の有する官能基としては、例えば、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができる。(a2)の官能基がアミノ基の場合は、(a1)の有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。(a2)の官能基がエポキシ基である場合には、(a1)の有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができる。
【0036】
また、具体例としては、単量体(a1−2)の具体例で列挙したものと同様のものを列挙することができる。
なお、(a1)と(a2)の反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価または水酸基価などを所望の範囲に適宜設定することができる。
【0037】
主鎖に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体を構成単位として含む重合体(a)は、各種の溶剤中で溶液重合することにより得ることができる。溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができる。一般にアクリル系重合体の良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤を使用することが好ましい。例えば、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を用いることができる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の重合体(a)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、重合体(a)の合成は、溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0038】
本発明のウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層を構成する樹脂組成物には、ベース樹脂として上記の主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(a)のほかに、さらにほかの樹脂を含ませることができる。例えば、アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体や、アクリル酸エステルを構成単量体単位の1つとして含むアクリル系共重合体を挙げることができる。アクリル系共重合体には、その他の官能基を有する単量体をさらに共重合させたものを挙げることができる。構成単量体単位として使用されるアクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどを挙げることができる。
【0039】
このような粘着剤層を構成する樹脂組成物については、放射線硬化前のDSC測定によるガラス転移温度が−40〜−10℃であることが好ましい。なお、ここでいうDSC測定によるガラス転移温度とは、昇温速度0.1℃/分でDSC(示差走査熱量計)により測定されたガラス転移温度をいう。
【0040】
本発明のウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤層を構成する樹脂組成物には、従来の光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を単独で、又は併用して用いることができる。これらのうち少なくとも1種類を、粘着剤を構成する樹脂組成物に添加することにより、放射線照射による硬化反応を効率よく進行させることができる。
【0041】
なお、ここで言う放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線を意味する。光重合開始剤の含有量は特に制限されるものではないが、好ましくは前記のベース樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
【0042】
さらに、本発明のウェハ加工用粘着テープにおいて、粘着剤層を構成する樹脂組成物は、硬化剤(架橋剤)を含有し、それにより前記のベース樹脂を架橋するものであってもよい。硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。
【0043】
硬化剤を使用する場合、その含有量は、粘着剤の粘着力、粘着テープの圧縮変位量、粘着層の純水接触角が所望の範囲となるよう調整すれば良く、上記のベース樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部とすることが好ましく、さらに好ましくは、0.1部〜5質量部である。
【0044】
さらに、本発明のウェハ加工用粘着テープにおける粘着剤の粘着力、粘着テープの圧縮変位量および粘着層の純水接触角は、適宜オリゴマーや単量体を加えることによって調整することもできる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
<ウェハ加工用粘着テープの作製>
(実施例1)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート(69mol%)、2―ヒドロキシエチルアクリレート(29mol%)、メタクリル酸(2mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(a)を得た。
【0047】
得られた重合体(a)の重量平均分子量と二重結合量については、次の方法により測定、算出した。
(i)重量平均分子量
重合体(a)について、下記条件のGPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で重量平均分子量を測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000、(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min、
濃度:0.3質量%、
注入量:20μl、
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
(ii)二重結合量
ヨウ素価測定法により二重結合量を算出した。
重合体(a)の重量平均分子量は80万、また二重結合量は0.9(meq/g)であった。
【0048】
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1A)を調製した。
【0049】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1A)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0050】
(実施例2)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
ブチルアクリレート(69mol%)、2―ヒドロキシエチルアクリレート(30mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(a)を得た。
さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(a)の重量平均分子量は、33万、二重結合量は1.5(meq/g)であった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.6質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1B)を調製した。
【0051】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0052】
(実施例3)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.7質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1C)を調製した。
【0053】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤層に樹脂組成物(1C)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0054】
(実施例4)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.7質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1C)を調製した。
【0055】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムを用いた以外は、実施例2と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0056】
(実施例5)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.7質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1C)を調製した。
【0057】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムを用いた以外は、実施例2と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0058】
(実施例6)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.3質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を調製した。
【0059】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムを用いた以外は、実施例2と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0060】
(実施例7)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.3質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1D)を調製した。
【0061】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
乾燥後の厚さが20μmとなるように塗工した以外は、実施例2と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0062】
(実施例8)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
官能基を有するアクリル系共重合体A100質量部に対して、光反応性オリゴマー150質量部重合体を配合し、重合体(a)を得た。さらに、重量平均分子量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(a)の重量平均分子量は30万であった。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)4.2質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1E)を調製した。
【0063】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1E)を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0064】
(実施例9)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
官能基を有するアクリル系共重合体A100質量部に対して、光反応性オリゴマー150質量部重合体を配合し、重合体(a)を得た。さらに、重量平均分子量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(a)の重量平均分子量は30万であった。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.0質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1F)を調製した。
【0065】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1F)を乾燥後の厚さが70μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0066】
(実施例10)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
官能基を有するアクリル系共重合体A100質量部に対して、光反応性オリゴマー100質量部重合体を配合し、重合体(a)を得た。さらに、重量平均分子量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(a)の重量平均分子量は30万であった。
(2)粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)4.2質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1G)を調製した。
【0067】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の基材樹脂フィルムに、上記の樹脂組成物(1G)を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して適宜養生し、ウェハ加工用粘着テープを得た。
【0068】
(実施例11)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例2と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)3.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(1H)を調製した。
【0069】
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
上記の樹脂組成物(1H)を使用した以外は、実施例1と同様の方法によりウェハ加工用粘着テープを得た。
【0070】
(比較例1)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(b)の調製
ブチルアクリレート(81mol%)、2―ヒドロキシエチルアクリレート(18mol%)、メタクリル酸(1mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(b)を得た。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(b)の重量平均分子量は、34万、二重結合量は0.9(meq/g)であった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(b)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)0.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2A)を調製した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤として樹脂組成物(2A)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0071】
(比較例2)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(a)の調製
実施例1と同様の方法により重合体(a)を合成した。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(a)の重量平均分子量は、80万、二重結合量は0.9(meq/g)であった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(a)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2B)を調製した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤を構成する樹脂組成物(2B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0072】
(比較例3)
1.粘着剤を構成する樹脂組成物の調製
(1)重合体(b)の調製
エチルアクリレート(45mol%)、ブチルアクリレート(35mol%)、2―ヒドロキシエチルアクリレート(19mol%)、メタクリル酸(1.5mol%)からなるアクリル系共重合体を調製した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えて、このアクリル系共重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート側鎖末端OH基と、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基を反応させて、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(b)を得た。さらに、重量平均分子量と二重結合量を実施例1と同様の方法により測定、算出した。重合体(b)の重量平均分子量は、66万、二重結合量は0.6(meq/g)であった。
(2)樹脂組成物の調製
(1)で得られた重合体(b)100質量部に、光重合開始剤としてイルガキュア184((商品名)、日本チバガイギー社製)を2.0質量部配合し、さらに硬化剤としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)1.5質量部を配合して、粘着剤を構成する樹脂組成物(2C)を調製した。
2.ウェハ加工用粘着テープの作製
粘着剤を構成する樹脂組成物(2C)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でウェハ加工用粘着テープを得た。
【0073】
<ウェハ加工用粘着テープの評価>
1.粘着力
各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープから幅25mm×長さ150mmの試験片を3点採取し、その試験片をシリコンウェハのミラー面に2kgのゴムローラを3往復かけ圧着した。1時間放置後、JIS B 7721に準拠した引張試験機を行いて粘着力を測定した。
測定は、90度引きはがし法によるものとし、引張速さは50mm/minとした。測定温度は23℃、測定湿度は50%とした。粘着力が2.0〜35N/25mmのものを合格とし、2.0N/25mm未満のもの及び35N/25mmを越えるものを不合格とした。
【0074】
2.圧縮変位量
各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープを200mm×200mm程度の大きさに5枚切断し、基材樹脂フィルムと粘着剤層との間で積層した。その積層されたものを25mm×55mmに切断し、これを試験片とした。この試験片を、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮応力を印加した。応力印加前に圧子がサンプルへ接触した部分をゼロ点として、50N圧縮応力印加時の変位量を測定値とした。
【0075】
3.粘着剤層表面の純水接触角
各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープのセパレータを剥離し、粘着剤層表面へ純水を滴下した。滴下直後の接触角を接触角計(協和界面科学製:CONTACT-ANGLE METER MODEL:CA−S)で測定し、85°以上を合格、85°未満を不合格とした。
【0076】
4.ウェハの反り
直径4インチのサファイアウェハ表面に各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハの厚さが100μmとなるまでウェハ裏面を研削した。研削後、サファイアウェハに貼合されたウェハ加工用粘着テープが上面となるように、サファイアウェハを水平面上に静置し、該水平面からのウェハ端縁部の高さの最大値を測定した。この測定を1個のウェハの複数個所について行い、その平均値をウェハの反りとした。反りの部分がウェハ上面側に向かって反っている場合を+、逆の場合を−とした。ウェハの反りの絶対値が、10〜15mmを◎、16〜20mmを○、21〜30mmを△、31mm以上を×とした。
【0077】
5.研削可能な仕上げ厚さ
直径4インチのサファイアウェハ表面に各実施例及び各比較例のウェハ加工用粘着テープを貼合し、バックグラインド装置(商品名:DFG8540、株式会社DISCO製)で、サファイアウェハ裏面を研削した。ウェハ裏面の研削厚さを変えて研削を行い、研削終了後のウェハを観察し、割れやクラックがない最低厚さを、研削可能な仕上げ厚さとした。80〜90μmを◎、91〜120μmを○、121〜164μmを△、165μm以上を×とした。
これらの方法により評価したウェハの反りと研削可能な仕上げ厚さについて、ともに×がなく、両方が○又は◎のものを合格とし、それ以外のものを不合格とした。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
各実施例からわかるように、本発明のウェハ加工用粘着テープを用いた場合、サファイアウェハの反りと研削後の仕上げ厚さの評価において合格レベルの優れた特性が得られた。特に、粘着力、接触角の何れも規定範囲内であり、圧縮変位量が120μm以下である実施例1〜7、10、11は、ウェハの反り及び研削可能な仕上げ厚さの何れも◎であった。
これに対し、比較例1では粘着剤層表面の純水接触角が低く、耐水性が不足したために、研削可能な仕上げ厚さが十分に得られず、総合的な評価は合格レベルに到達しなかった。また、比較例2では、粘着力が2N/25mmを下回るため、研削可能な仕上げ厚さが厚くなった。比較例3においては、比較例2より良好ではあるものの、比較例1と同様に耐水性が不足したために研削可能な仕上げ厚さが厚くなりすぎ、実使用に耐え得ないことがわかった。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂フィルム上に放射線硬化性の粘着剤層を有するウェハ加工用粘着テープであって、前記粘着テープにおける粘着剤層のシリコンウェハミラー面に対する放射線硬化前の粘着力が2.0〜35N/25mmで、かつ粘着剤層表面の純水接触角が85°以上であることを特徴とする脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着テープにおける放射線硬化前の圧縮変位量が150μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層が、放射線硬化性のアクリル系粘着剤からなり、前記アクリル系粘着剤を構成するポリマーの側鎖長が炭素数で4以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着テープにおける前記粘着剤層の厚さが、20〜70μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着テープにおける前記基材樹脂フィルムの厚さが、50〜150μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脆性ウェハ加工用粘着テープ。

【公開番号】特開2012−195484(P2012−195484A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59164(P2011−59164)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】