説明

脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物

本発明は化学および医薬に関し、特には新規な分子実体である、1,4−ジヒドロピリジン誘導体と縮合したベンゾジアゼピン、ピリドジアゼピンおよびピリミドジアゼピンタイプの、脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物誘導体の製造に関する。ジヒドロピリジン環を含有する誘導体をオルトフェニレンジアミン、オルトジアミノピリジン、オルトジアミノピリミジンタイプの化合物と反応させ、続いて変換することによって、1,4−ジヒドロピリジン核に縮合したジアゼピンまたはジアゼピノン核を有する一般式I〜XIIの三環系化合物および四環系化合物誘導体が得られ、環Aはベンゼン、ピリジンまたはピリミジンの置換または非置換環である。このような分子化合物は、GABA作動性およびカルシウムチャンネルの調節作用を有し、心血管、脳血管、神経変性、精神神経および神経疾患の治療に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学および医薬品分野に関し、より具体的には、新しい分子実体である、一般式:
【化1】

のジアゼピン縮合ジヒドロピリジンの合成変化形を得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系の疾患を治療するためのベンゾジアゼピンまたはジヒドロピリジン誘導体について記載している特許文献は幾つかある。しかしながら、このような文献に、これらの核を縮合させて新しい薬理学的実体を生成することについての記載はない。ベンゾジアゼピン核の様々な置換基を使用している、本発明の主題と関係のない特許を以下に挙げる。
【0003】
欧州特許第1593683号明細書(特許文献1)および欧州特許第1157992号明細書(特許文献2)には、潜在的な抗痙攣薬としてジヒドロ−2,3−ベンゾジアゼピンから誘導される分子を得る工程が記載されているが、水素タイプの置換基、アルキル鎖並びにフェニル、チエニル、フリル、ピリジル、イミダゾリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾールおよびフタラジニルタイプの芳香環を使用している。欧州特許第349949号明細書(特許文献3)には、アリール、ヒドロキシルおよびカルボキシル基で置換された複素環基でのベンゾジアゼピン置換誘導体が記載されている。米国特許第20040157833号明細書(特許文献4)には、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンをベースとした医薬化合物が記載されている。
【0004】
米国特許第20020103371号明細書(特許文献5)には、GABA受容体を調節するベンゾジアゼピン誘導体が記載されているが、ジヒドロピリジンには触れていない。
【0005】
欧州特許第733634号明細書(特許文献6)には、チエノ(2,3−B)(1,5)ベンゾジアゼピンから誘導される新しい分子実体が記載されている。
【0006】
ベンゾジアゼピン誘導体を開示している他の特許は以下;米国特許第5658901号(特許文献7)(2,3−ジヒドロ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−2−オキソ−5−フェニル−1H−1,4ベンゾジアゼピンが得られる)、米国特許第5610158号(特許文献8)(4−オキソおよび4H−イミダゾ(5,1−c)(1,4)ベンズオキサジンが得られる)、欧州特許第558104号(特許文献9)および英国特許第9201180号(特許文献10)(1,5−ベンゾジアゼピン誘導体)、欧州特許第491218号(特許文献11)(ベンゾジアゼピノン誘導体)である。
【0007】
本発明の主題であるジヒドロピリジンと縮合したジアゼピンの合成変化形は、脈管系および中枢神経系にある種の作用を示した。しかしながら、この作用の程度は、1,4−DHPの4位のR置換基の性質およびR置換基の性質に左右される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1593683号
【特許文献2】欧州特許第1157992号
【特許文献3】欧州特許第349949号
【特許文献4】米国特許第20040157833号
【特許文献5】米国特許第20020103371号
【特許文献6】欧州特許第733634号
【特許文献7】米国特許第5658901号
【特許文献8】米国特許第5610158号
【特許文献9】欧州特許第558104号
【特許文献10】英国特許第9201180号
【特許文献11】欧州特許第491218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、RはH、アルキル基、(好ましくは、最高で8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびこれらの全ての連鎖異性体)、環状アルキルおよびアルキル置換化合物(好ましくは、ハロゲンで置換)、ビニルおよびビニル置換化合物並びにシクロアルキル鎖、好ましくはシクロヘキシル基を表す。
【0011】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、Rはアリール基(ベンジル、ナフチル、置換ナフチル、アントラシル)も表す。アリールおよびアリール置換基は、好ましくは、非置換フェニルまたは−NO、−NH、−OH、F、Cl、Br、I、−CN、−OCH、−N(CH、−CH、−OCOCH、−COOCH、−OCF、−SH、−NH(C=O)−CH、−CHO、−C=NH、−C=NH−NH、−C=NH−OHから独立して選択される1〜5個の置換基で置換されるフェニルを表す。
【0012】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、Rはヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールも表し、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールとは好ましくはフルフリル、置換フルフリル、ピロリジル、置換ピロリジル、チオフェニル、置換チオフェニル、ピリジル(2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、置換ピリジル、キノリン(2−キノリン、3−キノリン、4−キノリン)、ピラゾリルのことである。
【0013】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、Rはヘテロアリール、好ましくはピロール、チオフェンおよびフェニル置換フランも表し、フェニル基は−CN、−C(C=O)−CH、F、Cl、Br、NH、NOから選択される1個以上の置換基で置換され得る。
【0014】
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、RはH、好ましくは1〜16個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、および脂環基を表す。
【0015】
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、RはOR’(R’はHを表し得る)またはそのナトリウム(Na)およびカリウム(K)塩、1〜24個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、tert−ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、デュオデシルおよびこれらの全ての直鎖もしくは分岐鎖位置異性体、−(CH−O−(CH−CH、−(CH−O−(CH−O−(CH−CH(nは1以上8未満である)、−(CH−CN(nは1〜8の数字である)も表し得る。
【0016】
R’は、最高で24個の炭素原子を有する一価または多価不飽和脂肪酸から誘導される脂質鎖も表す。
【0017】
は−NHR”も表し、R”は独立してH、1〜24個の炭素原子を有するカーボネート鎖の直鎖または分岐アルキル基、−(CH−O−(CH−CH、−(CH−O−(CH−O−(CH−CH(nは1〜8の数字である)、−(CH−CN(n=1〜8)を表し、R”は、最高で24個の炭素原子を有する一価および多価不飽和脂肪酸から誘導される脂肪鎖も表す。
【0018】
は−NHR”’も表し、R”’は独立して−(CH−NH(nは1〜10の数字である)を表し、Rは、例えば(また好ましくは)−NH−(CH−NH、−NH−(CH−NHである。Rは、−NH−(CH−NH(C=O)−Rタイプの鎖も表し、nは1〜10の数字であり、Rは直鎖または分岐アルキル基、−(CH−C=C−(CH−CHタイプの不飽和アルキレート残基、好ましくは最高で18個の炭素原子を有する長鎖を表す。Rは、例えば(また好ましくは)、−NH−(CH−NH(C=O)−C1123、−NH−(CH−NH(C=O)−C14−CH=CH−C17である。
【0019】
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、Rは−NH−CH(R)−COOHタイプのアミノ酸残基も表し、Rは、好ましくはバリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、リジン、トリプトファン、システイン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、プロリンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸残基である。Rは、独立して選択されるこれらのアミノ酸の幾つかを組み合わせることで得られる、2〜12個のアミノ酸を有する低分子ペプチド鎖も表す。
【0020】
は、−NH−OH、−NH−NH、−NH−NH−(C=O)−NH、−NH−NH−(C=S)−NHも表す。
【0021】
は−NHRも表し、Rは、チアゾールまたはチアゾール置換環、4−フェニルチアゾールまたは置換4−フェニルチアゾールである。Rは、フェニルまたはフェニル置換基も表す。
【0022】
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、Rはアルキルまたはシクロアルキル基を表し、アルキル基は、1〜16個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、−(CH−NH基および(CH−OH基(nは1〜8である)である。
【0023】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはジアゼピン環に縮合した6員芳香環であり、またベンゼンまたはベンゼン置換環を表し、ベンゾジアゼピンを構成し、ある構造並びに全てのその位置異性体および全ての考えられ得る互変異性体を含意するような形で縮合している。
【0024】
環Aとして表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼンは、OH、COOH、CH、NO、NH、CHO(ホルミル基)、ハロゲンおよびこれらの組み合わせから独立して選択される1〜4個の置換基で置換される。
【0025】
Aで表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼン基はまた、カルボン酸誘導体−C(C=O)−Rで置換され、RはO−アルキル、−O−アリール、NH、−NH−アルキル、−NH−アリールを表す。
【0026】
Aで表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼン基はまた、−NH−C(C=O,S)−N(R基で置換され、RはHまたは1〜6個の炭素原子を有する低分子の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。
【0027】
Aで表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼン基はまた、−NH−(C=O,S)−OR基で置換され、RはHまたは1〜8個の炭素原子を有する低分子の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。
【0028】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはジアゼピン環に縮合した6員複素環でもあり、またピリジンおよびピリジン置換環(好ましくはハロゲンで置換)を表す。このピリジン環は、ある構造並びにその全ての考えられる位置異性体および考えられる互変異性体を含意するような形でジアゼピン環に縮合し得る。
【0029】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはジアゼピン環に縮合した6員複素環でもあり、またピリミジン置換または非置換環を表し、ピリミジンの一方または両方の窒素原子は、独立して選択されるH、CH、OH、SH、NHおよびこれらの組み合わせで置換され得る。ピリミジンの炭素原子は、H、CH、OH、SH、NH、−C=O、−C=S、−C=NHから選択される1個以上の置換基で、ある構造並びに誘導される全ての互変異性形態、位置異性体および全ての互変異性形態を含意するような形で独立して置換され得る。
【0030】
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはピリミジン置換環であり、このようなピリミジン環はまた、その炭素位置でR置換基(Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を表す)、好ましくは非置換フェニル基または−NO、−NH、−OH、F、Cl、Br、I、−CN−OCH、−N(CH、−CH、−OCOCH、−COOCH、−OCF、−SH、−NH(C=O)−CH、−CHO、−C=NH、−C=NH−NH、−C=NH−OHから独立して選択される1〜5個の置換基で置換されるフェニル基で、ある構造並びに誘導される全てのその考えられる位置異性体および全ての互変異性形態を含意するような形で置換され得る。
【発明の効果】
【0031】
これらの新規な化合物は、不安、虚血、てんかん、高血圧並びに他の心血管、脳血管、神経変性、精神神経および神経障害並びに心血管系に関連した他の障害を治療するための治療薬のベースとしての役割を果たすことができる。
【0032】
I、II、III、X、XIおよびXIIタイプの化合物は、オルトジアミン二置換化合物、オルトフェニレンジアミン、オルトジアミンピリジン、オルトジアミンピリミジンで適切に置換した1,4−ジヒドロピリジン誘導体を縮合させて、1,4−ジヒドロピリジン誘導体と縮合したジアゼピンまたはジアゼピノンから誘導される三環式(I、II、III)および四環式(X、XI、XII)化合物を生成することによって得られる。
【0033】
一般式I、IIおよびIIIの化合物の変換は、IV、V、VI、VII、XIIIおよびIXタイプの四環式構造の生成につながり得る。
【0034】
キラル炭素の存在により、新しい誘導体がラセミ体として、同じくラセミ体として得られる合成前駆体を経て得られる1,4−ジヒドロピリジンのラセミ誘導体をベースとして得られる。
【0035】
エナンチオマーを90%より高い鏡像体過剰率で分割して別々に得ることができ、またこれは基礎となる中間体のいずれかのエナンチオマー分割によって、または(分割過程およびそれに続く本来の分割された構造への変換を促進するための事前の化学的変換(これは常に必要というわけではない)を伴う、好ましくは酵素を使用した分割による)最終生成物の直接のエナンチオマー分割によって行われる。全ての分離されたエナンチオマーを、その比旋光度の測定によって更に特徴づけた。
【0036】
ベンゾジアゼピンは、特別な化学構造(privileged structure)と称された最初の薬理学的実体であった。一般に、殆どのベンゾジアゼピンは、GABA受容体を阻害することによって中枢神経系の抑制剤として作用し、GABA受容体は、中枢神経系の幾つかの領域の間をつなぐ双方向性の抑制系の一部である。これらの誘導体は、催眠、抗不安、抗痙攣、健忘および筋弛緩作用を有する。これらの誘導体は血管拡張作用も有し、心不全の治療に使用することができる。
【0037】
1,4−DHPは、血管拡張および降圧作用を有すると特徴づけられている。これらの構造は、抗酸化および神経保護活性を有する。
【0038】
本発明の分子系では、カルシウムチャンネルブロッカーとして相互作用可能な、ジアゼピン誘導体と縮合した1,4−ジヒドロピリジンのフラグメントの存在によって、この新しい化合物を、心血管、脳血管、神経変性、精神神経および神経疾患を治療するための潜在的な治療薬として使用できる蓋然性がある。
【0039】
試験対象である分子の構造およびGABA受容体との相互作用の指標としてのげっ歯類における探索行動を分析した結果、脳血管、神経変性、精神神経および神経疾患を治療するための、DHPと縮合したジアゼピンの合成変化形の使用は正しいと判明した。
【0040】
本発明の新規性は、心血管、脳血管、神経変性、精神神経および神経疾患の治療における潜在的な応用として、ジアゼピン誘導体縮合DHP環を有する三環系化合物または四環系化合物の分子系を得ること、およびこれらの三環系化合物または四環系化合物を1,4−ジヒドロピリジン誘導体を出発物質として使用することで実現される点にある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一般式Iを示す
【図2】一般式I〜XIIを示す
【発明を実施するための形態】
【0042】
一般実験条件:NMR−HおよびNMR−13Cスペクトルを、25℃で、DMSO−dを使用して、Bruker DPX300分光計で記録した(300MHz−H、75.4MHz−13C)。質量スペクトルを、Hewlett Packard 5989Aを使用して得た。純度測定を、CAMAG TLC−SCNNER IIデンシトメータ(スイス)(λ=254nm)を使用して行った。
【0043】
実施例1:I、II、III、IV、V、VI、VII、XIIIおよびIXタイプの化合物の調製に有用な4−アリール−5−カルボニルオキシ−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリジン合成中間体の合成
4−アリール−5−カルボニルオキシ−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリジン誘導体は、最終生成物を得るのに必要な合成中間体の一部である。還流冷却器を備えた100mLのフラスコで、5.76g(40mmol)のメルドラム酸を40mLの氷酢酸、アセトニトリルまたはエタノールに溶解させる。次に、40mmolの対応する芳香族アルデヒドを40mmolの所定のジカルボニル化合物(アセチルアセトン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、または他の市販のもしくは事前に調製されたジカルボニル化合物であり得る)および3.46g(45mmol)の酢酸アンモニウムと共に添加する。この反応混合物を加熱して約8〜16時間にわたって還流させる。次に、この混合物を冷水中に注ぎ、沈殿した固形物を真空濾過し、エタノールで再結晶させる。
【0044】
実施例2:X、XIおよびXIIタイプの化合物の調製に有用な4−アリール−5−カルボニルアコキシ(carbonylacohoxy)−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリジンから誘導される合成中間体の合成
方法1
1.44g(10mmol)のメルドラム酸を10mLの氷酢酸に溶解させ、10mmolの対応する芳香族アルデヒドを1.40g(10mmol)の別のジカルボニル環状化合物(ジメドンであり得る)および0.7g(10mmol)の酢酸アンモニウムと共に添加する。この反応混合物を加熱して20〜35時間にわたって還流させる。反応が終了したら、この混合物を冷水中に注ぎ、沈殿した固形物を濾過し、適切な溶媒で再結晶させる。
【0045】
方法2
実施例1の方法1に記載の技法を利用し、反応混合物に0.8mmol、0.14gのp−トルエンスルホン酸を4〜10時間にわたって添加する。単離手順および精製は、方法1のものと同じである。
【0046】
方法32 10mmolの5−X−アリリデン(ariliden)誘導体(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等)を10mLの氷酢酸に溶解させた。この混合物に1.40g(10mmol)の他の必要なジカルボニル化合物(アセチルアセトン、ジメドン他)および0.7gの酢酸アンモニウムを添加し、2〜10時間にわたって還流させる。その後、反応混合物を冷水に添加し、沈殿した固形物を濾過し、適切な溶媒で再結晶させる。
【0047】
実施例3:4−アリール−3−カルボニルアルコキシ−2−アルキル−6−クロロ−5−ホルミル−1,4−ジヒドロピリジン合成中間体の合成
4−アリール−3−カルボニルアルコキシ−2−アルキル(またはアリール)−6−クロロ−5−ホルミル−1,4−ジヒドロピリジン誘導体も合成中間体である。無水クロロホルム中のN,N−ジメチルホルムアミド溶液に等モル量のオキシ塩化リンを室温で添加する。しばらくしてから、対応する4−アリール−5−カルボニルアコキシ−6−アルキル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリジン誘導体の溶液を添加する。次に、室温で約10〜20時間にわたって撹拌する。次に、酢酸ナトリウム水溶液を添加し、10〜30分にわたって撹拌する。有機相を分離し、溶媒を真空濾過する。得られた固形物をエタノールで再結晶させる。
【0048】
実施例4:アリール−3−カルボキシ−2−メチル−6−クロロ−5−ホルミル−1,4−ジヒドロピリジンの合成中間体の合成(方法A)
フラスコで、適当な有機溶媒に4−アリール−3−カルボニルアルコキシ−2−メチル−6−クロロ−5−ホルミル−1,4−ジヒドロピリジンの対応する誘導体を溶解させる。次に、不純物を除去するために事前にチオ硫酸ナトリウムで処理した過剰量のイオリドリコ(iorhidrico)酸溶液を添加する。この混合物を8〜24時間にわたって還流させる。その後、この反応混合物を水に添加し、反応を、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムで中和する。沈殿した固形物を真空濾過し、少量のエタノール/水で洗浄する。収率は40〜75%である。
【0049】
実施例5:4−アリール−3−カルボキシ−2−メチル−6−クロロ−5−ホルミル−1,4−ジヒドロピリジンの誘導合成中間体の合成(方法B)
4−アリール−5−カルボニルアメトキシ(carbonylamethoxy)−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリジンの誘導体を、メタノールおよび水の中でNaOHを使用して4−アリール−5−カルボニルアカルボキシ(carbonylacarboxy)−6−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリジンの誘導体に鹸化し、続いて4−アリール−3−カルボキシ−2−メチル−6−クロロ−5−ホルミル−1,4−ジヒドロピリジンの誘導体へと実施例3で説明した手順に従って変換する。
【0050】
実施例6:ジアゼピン縮合ジヒドロピリジンから誘導される三環系化合物および四環系化合物の合成(化合物I、II、III、X、XIおよびXII)
マグネチックスターラを備えたフラスコで、得られた対応する1,4−ジヒドロピリジン誘導体をエタノールに溶解させる。次に、対応する1,2−ジアミン誘導体を得られた溶液に添加する。この反応混合物を、沈殿物が出現するまで10〜78℃で数時間にわたって撹拌する。この沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄する。化合物によっては、カラムクロマトグラフィ技法を利用しての最終生成物の単離を必要とする。
【0051】
次に、生成物をデシケータで乾燥させる。収率は35〜80%である。続いて、薄層クロマトグラフィ(エタノール:シクロヘキサン:クロロホルム)を行う。化合物を、NMR−H、NMR−C13および質量分析法で特徴づけする。
【0052】
実施例7:様々なジアゼピン縮合ジヒドロピリジン合成変化形のマウスの探索行動への作用
オープンフィールド試験は、鎮静作用を有する薬剤の評価に広く利用されている試験である。この試験では、オープンフィールドの中央領域での動物の立ち上がりおよび/または交差回数を数える。これらの動作は、げっ歯類の探索行動を示す。鎮静剤によって、げっ歯類の探索行動は抑制される。
【0053】
様々なジアゼピン縮合ジヒドロピリジン合成変化形の探索行動への作用を、体重18〜22gのスイスアルビノラットで評価した。ラットに用量4mg/Kgを投与した。30分後、ラットを個別に6分にわたって探索活動試験用の箱に入れ、その間の立ち上がりおよび箱の中央の交差回数を記録した。
【0054】
試験対象である様々な分子を評価して得られた結果は神経鎮静作用を示している。ただし、探索行動の低下の度合いが全てのケースで同じであったわけではない。この差は、試験対象であるポリ複素環系の核に加えられた構造的変化によるものである。この行動は、鎮静剤の神経薬理学的プロファイルと一致する。評価対象である分子の構造特性が、GABA作動性受容体とのその潜在的な相互作用に起因する得られる作用を説明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

の、医学上の薬剤として使用され、脈管系および中枢神経系に作用する、1,4−ジヒドロピリジン環が縮合したジアゼピンから誘導される、ラセミ体およびそれぞれ別々に左旋性および右旋性のエナンチオマーである三環系化合物および四環系化合物であって、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、RはH、アルキル基、(好ましくは、最高で8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルおよびこれらの全ての連鎖異性体)、環状アルキルおよびアルキル置換化合物(好ましくは、ハロゲンで置換)、ビニルおよびビニル置換化合物並びにシクロアルキル鎖、好ましくはシクロヘキシル基を表し、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、Rはアリール基(ベンジル、ナフチル、置換ナフチル、アントラシル)も表す。アリールおよびアリール置換基は、好ましくは、非置換フェニルまたは−NO、−NH、−OH、F、Cl、Br、I、−CN、−OCH、−N(CH、−CH、−OCOCH、−COOCH、−OCF、−SH、−NH(C=O)−CH、−CHO、−C=NH、−C=NH−NH、−C=NH−OHから独立して選択される1〜5個の置換基で置換されるフェニルを表し、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、Rはヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールも表し、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールとは好ましくはフルフリル、置換フルフリル、ピロリジル、置換ピロリジル、チオフェニル、置換チオフェニル、ピリジル(2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、置換ピリジル、キノリン(2−キノリン、3−キノリン、4−キノリン)、ピラゾリルのことであり、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、Rはヘテロアリール、好ましくはピロール、チオフェンおよびフェニル置換フランも表し、フェニル基は−CN、−C(C=O)−CH、F、Cl、Br、NH、NOから選択される1個以上の置換基で置換され得て、
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、RはH、好ましくは1〜16個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、および脂環基を表し、
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、RはOR’(R’はHを表し得る)またはそのナトリウム(Na)およびカリウム(K)塩、1〜24個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、tert−ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、デュオデシルおよびこれらの全ての直鎖もしくは分岐鎖位置異性体、−(CH−O−(CH−CH、−(CH−O−(CH−O−(CH−CH(nは1以上8未満である)、−(CH−CN(nは1〜8の数字である)も表し得て、
R’は、最高で24個の炭素原子を有する一価または多価不飽和脂肪酸から誘導される脂質鎖も表し、
は−NHR”も表し、R”は独立してH、1〜24個の炭素原子を有するカーボネート鎖の直鎖または分岐アルキル基、−(CH−O−(CH−CH、−(CH−O−(CH−O−(CH−CH(nは1〜8の数字である)、−(CH−CN(n=1〜8)を表し、R”は、最高で24個の炭素原子を有する一価および多価不飽和脂肪酸から誘導される脂肪鎖も表し、
は−NHR”’も表し、R”’は独立して−(CH−NH(nは1〜10の数字である)を表し、Rは、例えば(また好ましくは)−NH−(CH−NH、−NH−(CH−NHである。Rは、−NH−(CH−NH(C=O)−Rタイプの鎖も表し、nは1〜10の数字であり、Rは直鎖または分岐アルキル基、−(CH−C=C−(CH−CHタイプの不飽和アルキレート残基、好ましくは最高で18個の炭素原子を有する長鎖を表す。Rは、例えば(また好ましくは)、−NH−(CH−NH(C=O)−C1123、−NH−(CH−NH(C=O)−C14−CH=CH−C17であり、
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、Rは−NH−CH(R)−COOHタイプのアミノ酸残基も表し、Rは、好ましくはバリン、フェニルアラニン、アラニン、ヒスチジン、リジン、トリプトファン、システイン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、プロリンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸残基である。Rは、独立して選択されるこれらのアミノ酸の幾つかを組み合わせることで得られる、2〜12個のアミノ酸を有する低分子ペプチド鎖も表し、
は、−NH−OH、−NH−NH、−NH−NH−(C=O)−NH、−NH−NH−(C=S)−NHも表し、
は−NHRも表し、Rは、チアゾールまたはチアゾール置換環、4−フェニルチアゾールまたは置換4−フェニルチアゾールである。Rは、フェニルまたはフェニル置換基も表し、
一般式I、IIおよびIIIの化合物に関し、Rはアルキルまたはシクロアルキル基を表し、アルキル基は、1〜16個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、−(CH−NH基および(CH−OH基(nは1〜8である)であり得て、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはジアゼピン環に縮合した6員芳香環であり、またベンゼンまたはベンゼン置換環を表し、ベンゾジアゼピンを構成し、ある構造並びに全てのその位置異性体および全ての考えられ得る互変異性体を含意するような形で縮合していて、
環Aとして表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼンは、OH、COOH、CH、NO、NH、CHO(ホルミル基)、ハロゲンおよびこれらの組み合わせから独立して選択される1〜4個の置換基で置換され、
Aで表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼン基はまた、カルボン酸誘導体−C(C=O)−Rで置換され得て、RはO−アルキル、−O−アリール、NH、−NH−アルキル、−NH−アリールを表し、
Aで表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼン基はまた、−NH−C(C=O,S)−N(R基で置換され得て、RはHまたは1〜6個の炭素原子を有する低分子の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、
Aで表わされる、ジアゼピンに縮合しているベンゼン基はまた、−NH−(C=O,S)−OR基で置換され得て、RはHまたは1〜8個の炭素原子を有する低分子の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはジアゼピン環に縮合した6員複素環でもあり、またピリジンおよびピリジン置換環(好ましくはハロゲンで置換)を表す。このピリジン環は、ある構造並びにその全ての考えられ得る位置異性体および考えられ得る互変異性体を含意するような形でジアゼピン環に縮合し得て、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはジアゼピン環に縮合した6員複素環でもあり、またピリミジン置換または非置換環を表し、ピリミジンの一方または両方の窒素原子は、独立して選択されるH、CH、OH、SH、NHおよびこれらの組み合わせで置換され得る。ピリミジンの炭素原子は、H、CH、OH、SH、NH、−C=O、−C=S、−C=NHから選択される1個以上の置換基で、ある構造並びに誘導される全ての互変異性形態、位置異性体および全ての互変異性形態を含意するような形で独立して置換され得て、
一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物に関し、環Aはピリミジン置換環であり、このようなピリミジン環はまた、その炭素位置でR置換基(Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基を表す)、好ましくは非置換フェニル基または−NO、−NH、−OH、F、Cl、Br、I、−CN−OCH、−N(CH、−CH、−OCOCH、−COOCH、−OCF、−SH、−NH(C=O)−CH、−CHO、−C=NH、−C=NH−NH、−C=NH−OHから独立して選択される1〜5個の置換基で置換されるフェニル基で、ある構造並びに誘導される全てのその考えられ得る位置異性体および全ての互変異性形態を含意するような形で置換され得る
ことを特徴とする三環系化合物および四環系化合物。
【請求項2】
心血管、脳血管、神経変性、精神神経および神経疾患の治療における治療用の製剤を調製するための有効成分として使用される、請求項1に記載の脈管系および中枢神経系に作用する、一般式I、II、III、IV、V、VI、VII、XIII、IX、X、XIおよびXIIの三環系化合物および四環系化合物。
【請求項3】
製剤が液体の形態で提示される、請求項2に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項4】
製剤がシロップ、懸濁液または注射剤として提示される、請求項2に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項5】
製剤が固体の形態で提示される、請求項2に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項6】
製剤が錠剤、カプセル、顆粒またはペレットとして提示される、請求項5に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項7】
製剤が経鼻投与用に提示される、請求項2に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項8】
製剤がドロップまたは点鼻薬として提示される、請求項7に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項9】
製剤によって薬剤の持続放出が可能になる、請求項2、3、4、5、6、7および8に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項10】
製剤が有効成分としてラセミ化合物を使用して調製される、請求項2、3、4、5、6、7、8および9に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項11】
製剤が有効成分として右旋性のエナンチオマーを使用して調製される、請求項2、3、4、5、6、7、8および9に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。
【請求項12】
製剤が有効成分として左旋性のエナンチオマーを使用して調製される、請求項2、3、4、5、6、7、8および9に記載の脈管系および中枢神経系に作用する三環系化合物および四環系化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507329(P2013−507329A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532450(P2012−532450)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/CU2010/000004
【国際公開番号】WO2011/041989
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512092645)
【氏名又は名称原語表記】CENTRO DE INVESTIGACION Y DESARROLLO DE MEDICAMENTOS(CIDEM)
【住所又は居所原語表記】Calle 26 No.1605 entre Boyeros y Puentes Grandes,Nuevo Vedado,Plaza,CEP 10400 Ciudad de la Habana,Republic of Cuba
【出願人】(512092656)ラボラトリオ デ シンテシス オルガニカ デ ラ ファカルタド デ キミカ デ ラ ウニベルシダ デ ラ ハバナ (1)
【氏名又は名称原語表記】LABORATORIO DE SINTESIS ORGANICA DE LA FACULTAD DE QUIMICA DE LA UNIVERSIDAD DE LA HABANA
【住所又は居所原語表記】Zapata s/n entre G y Carlitos Aguirre,Vedado,Plaza de la Revolucion,CEP 10400 Ciudad de la Habana,Republic of Cuba
【Fターム(参考)】