説明

脊椎骨の脊髄の活動を測定するための装置

本発明は、脊椎動物の脊髄の活動を測定するための装置に関する。本装置は、脊椎骨の棘突起に固定されるように形成された、少なくとも一つの主プローブを備える。この主プローブは、脊髄と相互作用可能な波を放射する少なくとも一つのエミッタと、脊髄と相互作用した波を受信し、脊髄の活動を示す信号を生成する、少なくとも1つの関連レシーバとを、脊椎骨における互いに対向する側の位置にそれぞれ保持するように形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎動物の脊髄の活動を測定するための装置に関する。「活動」という語は、ここでは、特に運動作用または認知作用に対する神経系の反応を特徴とし得る、光学的、科学的、または身体的な脊髄の特性の如何なる種類をも意味するように用いられる。
【背景技術】
【0002】
運動作用は、脊髄を介して神経信号を効果器に導く、一連のエネルギープロセスに由来する。脊髄の部分的または全体的な障害は、神経路の変性に繋がり、これにより、もはや障害を超えて信号を脊髄ニューロンに伝達することが不可能となる。その結果、麻痺、および脳に向かう上方経路の妨害へと繋がり、これにより、知覚喪失へと繋がってしまうことがある。
【0003】
脊柱に沿って神経信号を伝達するメカニズムを理解することは、最も効果的な、可能性のある治療法を開発するために必要である。
【0004】
酸化ヘモグロビン(HbO)および脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の分布の変動性は、認知作用または運動作用中に、皮質および脊柱の神経領域に血流を送る血管および毛細血管から観察され得る。
【0005】
血液量および酸化のこれらの変動を検出可能とする光学画像装置を用いることによって、脳の神経組織を研究することが可能となっている。それにも関わらず、用いられている技術は、体における他の部分に設置し、または脊椎動物に継続的にインプラントするには、大き過ぎるサイズを有している。穿孔術は、脳組織へのアクセスを得ることを十分になし得る一方、延髄組織へのアクセスを得ることは、より困難であり、椎弓切除術が必要となる。最後に、公知の光学画像装置は、主に光ファイバを備えており、このようなファイバは、脊髄に用いることが困難である。何故ならば、これらファイバの形状によって、血流力学的反応を測定するために該ファイバを簡単な方法で結合することが困難となってしまうからである。
【0006】
したがって、現在、全体として脊髄を研究するための主な手段は、脊髄を視認可能とし、延髄組織を分析可能とする磁気共鳴映像法(MRI)となっている。それにも関わらず、このような研究は外部に留まっており、延髄組織にて知覚される神経活動は、その研究が急がれており、一人の患者から他の患者まで理解することが困難となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、脊椎動物の脊髄の活動を測定することを可能としつつ、上記欠点を克服することができる、インプラント可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、脊椎動物の脊髄の活動を測定する測定装置を提案する。本装置は、脊椎骨の棘突起に固定されるように形成された、少なくとも一つの主プローブを備える。この主プローブは、脊髄と相互作用可能な波を放射する少なくとも一つのエミッタと、脊髄と相互作用した波を受信し、脊髄の活動を示す信号を生成する、少なくとも1つの関連レシーバとを、脊椎骨における互いに対向する側の位置にそれぞれ保持するように形成される。
【0009】
主プローブは、対象となる脊椎骨と一致する切り込みを設け、脊椎骨の両側の筋肉を押し広げて離隔させることによって、非常に簡単に配置される。これにより、プローブは、脊椎骨に跨るようにして設置され得る。その後に、主プローブを、脊椎骨の棘突起に、ネジまたは接着剤を用いて固定しさえすればよい。このようにして、手術が、簡単且つ迅速となる。
【0010】
本発明は、添付の図面に示された図を参照した以下の説明の観点から、より理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の主プローブが取り付けられた脊椎骨の斜視図である。
【図2】図1に示す主プローブが取り付けられた脊椎骨の断面図である。
【図3】図1に示す主プローブの斜視図である。
【図4】主プローブと、本発明の補助プローブとが取り付けられた脊椎骨の断面図である。
【図5】図4に示す補助プローブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、猫の脊椎骨へのアプリケーションとして示されている。このアプリケーションは、当然のことながら限定的なものではない。
【0013】
図1〜図3を参照して、本発明の測定装置は、脊椎骨3の棘突起2に固定されるように形成された主プローブ1を備える。主プローブ1は、赤外線に対して透過性を有する樹脂からなり、フォーク4の形状を有する。このフォーク4は、二つの歯部4a、4bと、該フォーク4から突出するハンドル5とを含む。
【0014】
この形状によって、手術を簡単化することができ、外科医は、脊椎骨3の側方に位置する筋肉を押し広げて離隔させ、フォーク4を棘突起2に図1の矢印で示す方向に配置するだけでよい。この位置において、フォーク4は、延髄の管を形成する脊椎骨の一部に跨って設置され、ハンドル5は、棘突起2に面して延在する。そして、主プローブ1は、好ましくは、そのハンドル5を介して、例えば、生体適合性を有する接着剤、またはチタン製のネジを用いて、棘突起2に固定される。
【0015】
歯部4aは、赤外線エミッタ6を有し、そこからの赤外線は、脊椎骨の脊髄7を透過する。そして、赤外線は、延髄組織と相互作用した後、他方の歯部4bに設けられた赤外線レシーバ8によって収集される。赤外線は、骨壁を透過し、脊髄7に含まれる血液中のヘモグロビンと相互作用する。これにより、脊髄7にストレスが与えられたときに、脊髄7の血管活動を監視することが可能となる。レシーバ8は、受信した赤外線を、血管活動を示す電気信号、すなわち、それ自体が神経活動を示す電気信号に変換する。
【0016】
主プローブ1は、この電気信号をデジタルデータに変換するための電気的手段9を有する。この実施例においては、デジタルデータは、メモリに記録され、その後に送信される。このために、主プローブは、該主プローブ1から離隔して設置される赤外線トランシーバとバイナリフレームで通信するための赤外線エミッタ10および赤外線レシーバ11を有する。代替的には、デジタルデータは、記録されずにリアルタイムで送信されてもよい。
【0017】
有利には、このような方法で生成されたデジタルデータは、シミュレーションに応じて脊髄の血管活動を追跡するために、リモートトランシーバDに送信される。本実施例の方法によって、トランシーバは、アクチュエータを制御するように構成された外部制御ユニットに結合されてもよく、このアクチュエータは、機能不全を緩和するように脊椎動物の組織に作用する。例えば、制御ユニットは、主プローブの手段によって脊髄の活動を検出することに応じて化学物質を供給するインプラントまたはポンプを制御するために用いられてもよい。
【0018】
本実施例においては、主プローブ1は、該主プローブ1の外部に設けられた回路から、電力を供給される。この外部回路は、変動磁界を供給し、これにより、アンテナ12に電流が発生する。この実施例においては、アンテナ12は、ハンドル5に配置されている。電気的手段9は、主プローブ1によって直接的に使用可能な電位を生成するための、アンテナ12に誘導された電位を調整するように構成されている。本実施例においては、プローブが誘導源から離隔している間でさえも動作することを可能とするために、オンボード電池13を充電するようにこの電位を用いることが望ましい。
【0019】
図4および図5を参照して、本発明の特定の態様によれば、リモートトランシーバDは、骨髄7と直接接触するように脊椎骨3の内部にインプラントされた補助プローブ14と結合されてもよい。好ましいインプラントのモードにおいて、脊椎骨を囲む筋肉が、一度押し広げられて離隔されると、外科医は、脊椎骨に椎弓切除術を施し、延髄の管に補助プローブ14を挿入し、ポリマー樹脂を用いて脊椎骨を再構築する。図3、図4、および図5を参照して、好ましい安定化モードにおいて、補助プローブ14の位置は、主プローブ1との磁気的な連結によって安定化される。ここで、各プローブは、磁石15、16を有し、これら磁石は、一方のプローブにおいては同じ極性を有し、他方のプローブにおいては上記一方のプローブと逆の極性を有するように設置される。脊椎骨3は、マグネット15、16が骨壁を通して互いに引き合うことを可能とするほどに十分薄い。これにより、補助プローブを主プローブに対して安定させることができる。この固定法は、外科的な縫合を用いる固定法と比べて、外科手術を簡単とする点において、有利である。
【0020】
補助プローブ14は、いくつかの機能を実行し得る。この機能としては、脊髄7の神経活動を測定することが挙げられる。このために、補助プローブ14は、脳脊髄液中におけるある生体粒子の存在に反応し、電気信号を生成するセンサ17を含む。補助プローブ14は、この信号をデジタルデータに変換する電気的手段18を含む。また、補助プローブ14の他の機能として、化学的および/または電気的手段によって、脊髄の神経活動を刺激することが挙げられる。このために、補助プローブ14は、ダイヤフラムを含み、化学化合物を貯蔵するように機能するタンク19と、上記ダイヤフラムを選択的に移動させるように該ダイヤフラムと協働するマイクロモータ20とを含む。これにより、化学化合物を脊髄7中に放出することができる。また、電極21は、ローカル電位を、電極21と接触する脊髄7の軸索に印加する。
【0021】
この実施例において、補助プローブ14のトランシーバDは、主プローブ1のエミッタ10および赤外線レシーバ11とバイナリフレームで通信する赤外線エミッタ22および赤外線レシーバ23を有する。このように、電気的手段18によって生成されたデータを送信し、または、主プローブ1からの命令を受信するために、2つのプローブ間における無線通信が必要とされる。同様に、補助プローブ14は、無線で電力の供給を受ける。好ましい装置において、アンテナ24は、主プローブ1のアンテナ12と、電磁誘導によって通信する。電気的手段18は、補助プローブ14によって直接的に使用可能な電位へとアンテナ24に誘導された電位を調整するように構成されている。この実施例においては、オンボード電池25を充電するためにこの電位を用いることが望ましい。
【0022】
補助プローブは、大変敏感な組織である脊髄に非常に近接してインプラントされるので、補助プローブが小型化される必要があることに留意すべきである。そのサイズの結果、補助プローブが動作できる期間の長さは限定され、補助プローブは、定期的に電力の供給を受けるために、より大きなサイズのプローブ(ここでは主プローブ)に連結される必要がある。
【0023】
本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義された範囲に属する如何なる変形例をも包含するものである。
【0024】
特に、補助プローブ14と主プローブ1との間、および、主プローブ1と該主プローブ1から離隔したトランシーバとの間の通信が、赤外線によって行われる場合について説明したが、他の如何なる通信モードを利用することも可能である。このような通信としては、例えば、無線自動識別(RFID)通信、または、主プローブ1とリモートトランシーバとの間の通信のために、ワイヤを用いた通信としてもよい。さらには、主プローブ1が、補助プローブ14および主プローブから離隔したトランシーバと通信するために、共通の通信システムを用いる場合について説明したが、当然のことながら、二つの異なる通信システムを備えるプローブを提供することも可能である。
【0025】
主プローブ1は、電磁波を赤外線として放射することによって脊髄7の活動を測定するためのシステムを備えるものとして説明されたが、例えば、超音波を放射するといった、他の公知技術を用いることも可能である。
【0026】
補助プローブが脊髄7と直接接触するために脊椎骨の内部にインプラントされたものとして説明したが、より広くは、如何なる機能性組織に接触するように補助プローブをインプラントすることも可能である。
【0027】
変形例において、補助プローブをアルゼット(Alzet)タイプの浸透圧ポンプに連結することを予測することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎骨(3)の棘突起(2)に固定されるように形成された少なくとも1つの主プローブ(1)を備え、
前記主プローブ(1)は、脊髄(7)と相互作用可能な波を放射する少なくとも1つのエミッタ(6)と、脊髄(7)と相互作用した波を受信し、脊髄の活動を示す信号を生成する、少なくとも1つの関連レシーバ(8)とを、脊椎骨における互いに対向する側の位置にそれぞれ保持するように形成されることを特徴とする、脊椎動物の脊髄の活動を測定するための測定装置。
【請求項2】
前記主プローブは、脊椎骨に跨るように設置されるフォーク(4)として形成されるとともに、前記主プローブが脊椎骨に設置されたときに棘突起に面して延在するハンドル(5)を有する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記主プローブの前記エミッタ(6)から放射され、前記関連レシーバ(8)によって受信される波は、赤外線である、請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記主プローブは、少なくとも1つのリモートトランシーバ(D)と遠隔通信するための通信手段(10、11)を有し、
前記通信手段は、前記リモートトランシーバ(D)と、該リモートトランシーバ(D)からの信号を受信する少なくとも1つの赤外線レシーバ(11)とに信号を発信する、少なくとも1つの赤外線エミッタ(10)を含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記リモートトランシーバ(D)は、機能性組織、特に脊髄と直接的に接触するように設置された、少なくとも1つの補助プローブ(14)と関連付けられ、
前記補助プローブは、前記機能性組織を刺激するための手段(19、20、21)、および、前記機能性組織の活動を測定するための手段(17)の少なくとも一方を有する、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記補助プローブは、脊髄と接触して設置されるように構成され、
前記補助プローブおよび前記主プローブは、脊椎骨における前記補助プローブの位置を安定させるための磁気的手段(15、16)を有する、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
脊髄を刺激するための前記手段は、電極(21)を含み、
前記電極(21)は、該電極(21)に接触する軸索にローカル電位を印加する、請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
脊髄を刺激するための前記手段は、粒子を貯蔵し、該粒子を脊髄の中に徐々に放出するための手段(20)と結合されるタンク(19)を含む、請求項5に記載の測定装置。
【請求項9】
前記補助プローブは、電気エネルギーを遠隔受信するための誘導手段を有し、
前記誘導手段は、少なくとも1つのアンテナ(24)を含む、請求項5に記載の測定装置。
【請求項10】
前記主プローブは、電気エネルギーを遠隔受信するための誘導手段を有し、
前記誘導手段は、少なくとも1つのアンテナ(12)を含む、請求項1に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−510602(P2013−510602A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538234(P2012−538234)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006832
【国際公開番号】WO2011/057765
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(504317743)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) (18)
【出願人】(512123765)
【出願人】(512123824)ユニベルシテ ドゥ モントリオール (1)
【Fターム(参考)】