説明

脱アミド化プロフィールが低減した抗体

本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体、及び脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.導入
本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体、及び脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
タンパク質薬剤(抗体など)の安定性は、多くの異なる因子によって悪影響を受ける。これらの因子の1つは脱アミド化である。脱アミド化は、アミド官能基が有機化合物から除去される非酵素的化学反応である。この反応は、アミノ酸アスパラギン及びグルタミンのアミド含有側鎖を改変するため、タンパク質の分解において考慮すべき重要な点である。
【0003】
生化学的脱アミド化反応の一例では、アスパラギンの側鎖が隣接するペプチド基を攻撃し、対称性のスクシンイミド中間体を形成する。この中間体の対称性によって、2つの加水分解産物、それぞれアスパラギン酸塩及びイソアスパラギン酸塩が生じる。このプロセスは、アスパラギン側鎖におけるアミドがカルボキシレート基と置き換わるため、脱アミド化反応と考えられている。類似の反応がアスパラギン酸側鎖においても起こり、イソアスパラギン酸塩への部分的な変換が起こる。グルタミンの場合には、脱アミド化速度が一般的にアスパラギンの場合の10分の1であるが、この機構は本質的に同じであり、進行に水分子のみを必要とする。
【0004】
タンパク質の分解とそれに続くタンパク質活性の低減は、医薬産業において多発の問題である。従って、長期間にわたって安定性を維持しかつ医薬品として有用な抗体が望まれている。抗体を安定化するため、経時的なアミノ酸の脱アミド化を抑制することが必要な場合がある。上述したように、脱アミド化する傾向を示すアミノ酸配列は知られている。例えば、アスパラギン、例としてAsn-Gly含有配列におけるアスパラギンなどは、容易に脱アミド化される。アスパラギンに隣接したグリシンに加えて、他のアミノ酸が脱アミド化の促進に関連している。N+1位におけるセリン、スレオニン及びアスパラギン酸のアミノ酸もまた隣接するアスパラギンの脱アミド化を促進することが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定の場合において、タンパク質におけるアミノ酸を改変することによって脱アミド化を抑制する方法を用いて、医薬品の価値及び品質を改善することができる(例えば、米国特許公開第20050171339号)。分子のアミノ酸配列を変更することが望まれない場合には、他の手法が必要とされる。このような場合には、タンパク質(特に抗体)の活性に影響を及ぼすことなくアスパラギン残基の脱アミド化を抑制する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.発明の概要
一実施形態において、本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化する傾向を示すと思われるものである、上記方法を提供する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化する傾向を示すと思われるものであり、以下のステップ:約33℃〜約35℃の温度で増殖させた細胞から抗体を産生するステップであって、前記細胞を約6.7〜約7.1 pH単位のpH値を有する培地中で増殖させるステップ、及び前記細胞を約13〜約19日間培養するステップを含む方法を提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した安定な抗IFNαモノクローナル抗体組成物であって、前記抗体が、そうしなければ脱アミド化する傾向を示すものである、上記抗体組成物を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化する傾向を示すものであり、約34℃で増殖させた細胞から抗体を産生させるステップであって、前記細胞を6.9単位のpHを有する培地中で増殖させるステップを含むプロセスにより産生される、抗体組成物を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化する傾向を示すものであり、約33℃〜約35℃の温度で増殖させた細胞から抗体を産生させるステップであって、前記細胞を約6.7〜約7.1 pH単位のpH値を有する培地中で増殖させ、約13〜約19日間にわたり前記細胞を培養するステップを含むプロセスにより産生される、抗体組成物を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、脱アミド化プロフィールが増加する傾向を示す抗体を精製する方法であって、精製中に前記抗体の脱アミド化種を除去するための洗浄ステップを含む、上記方法を提供する。
【0012】
3.1. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】抗IFNα抗体クローン13H5重鎖可変領域DNA及びアミノ酸配列を開示する。CDR領域はオーバーラインで示す。
【図1B】抗IFNα抗体クローン13H5 κ鎖可変領域DNA及びアミノ酸配列を開示する。CDR領域はオーバーラインで示す。
【図2A】抗IFNα抗体クローン13H7重鎖可変領域DNA及びアミノ酸配列を開示する。CDR領域はオーバーラインで示す。
【図2B】抗IFNα抗体クローン13H7 κ鎖可変領域DNA及びアミノ酸配列を開示する。CDR領域はオーバーラインで示す。
【図3A】抗IFNα抗体クローン7H9重鎖可変領域DNA及びアミノ酸配列を開示する。CDR領域はオーバーラインで示す。
【図3B】抗IFNα抗体クローン7H9 κ鎖可変領域DNA及びアミノ酸配列を開示する。CDR領域はオーバーラインで示す。
【図4−1】A:Bに示す線形塩勾配を用いてカラムから溶出された種々の画分に相当する13H5種のIECクロマトグラムである。B:10カラム容積の勾配傾きにおける線形塩勾配を用いてカラムから溶出された総13H5のIECクロマトグラムである。
【図4−2】C:Dに示す線形塩勾配を用いてカラムから溶出された種々の画分に相当する13H5種のIECクロマトグラムである。D:20カラム容積の勾配傾きにおける線形塩勾配を用いてカラムから溶出された総13H5のIECクロマトグラムである。
【図4−3】E:Fに示す線形塩勾配を用いてカラムから溶出された種々の画分に相当する13H5種のIECクロマトグラムである。F:30カラム容積の勾配傾きにおける線形塩勾配を用いてカラムから溶出された総13H5のIECクロマトグラムである。
【図4−4】G:Hに示す線形塩勾配を用いてカラムから溶出された種々の画分に相当する13H5種のIECクロマトグラムである。H:40カラム容積の勾配傾きにおける線形塩勾配を用いてカラムから溶出された総13H5のIECクロマトグラムである。
【図5】典型的な100Lバイオリアクター実験の抗IFNα抗体力価であり、インタクトな力価の実測値(黒色四角)及び推定値(三角)、並びに脱アミド化(%)推定値(淡色四角)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
3.2. 定義
本発明がより容易に理解されるように、最初にいくつかの用語を定義する。他の定義は詳細な説明において説明している。
【0015】
用語「インターフェロンアルファ」「IFNアルファ」「IFNα」「IFNアルファ」及び「アルファインターフェロン」は、互換的に使用され、インターフェロンα遺伝子座の機能遺伝子がコードし、IFNα1(GenBank番号NP_076918、又はGenBank番号NM_024013がコードするタンパク質)と75%以上の配列同一性を有するIFNαタンパク質を指すことを意図している。IFNαサブタイプの例には、IFNα1、α2a、α2b、α4、α4a、α4b、α5、α6、α7、α8、α10、α13、α14、α16、α17及びα21が挙げられる。用語「インターフェロンα」は、各種のIFNαサブタイプの組換え形態、並びに白血球IFN、リンパ芽球様細胞IFNなどのIFNαタンパク質を含む天然調製物を包含することを意図している。用語IFNαは、IFNω単独を包含することを意図していないが、IFNα及びIFNωの両方を含む組成物は、用語IFNαに包含される。
【0016】
用語「抗インターフェロンα抗体」は、上述したインターフェロンαイソフォームファミリーを含むポリペプチド又は複数のポリペプチドに特異的な抗体又は抗体フラグメントを指す。さらに、本発明の抗インターフェロンα抗体は、刊行物WO 2005/059106号及びUS 2007/0014724、並びに米国出願第11/009,410号(これらの標題は全て「Interferon alpha antibodies and their uses(インターフェロンα抗体及びその用途)」であり、その全体を全ての目的のための参照により本明細書に組み入れる)に例示されている。特定の実施形態において、本発明の抗インターフェロンα抗体は13H5、13H7及び7H9を含む。
【0017】
用語「IFNα受容体」は、リガンドのIFNαに対する受容体である分子のIFNα受容体ファミリーのメンバーを指す。IFNα受容体の例は、IFNα受容体1(GenBankアクセッション番号NM_000629)並びにIFNα受容体2(GenBankアクセッション番号、イソフォームA:NM_207585.1及びイソフォームB:NM_000874.3)である(Uzeら(1990) Cell 60:225; Novickら、(1994) Cell 77:391)。
【0018】
用語「免疫応答」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び前記細胞又は肝臓が産生する可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用であって、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌細胞、又は自己免疫若しくは病的炎症の場合は、ヒトの正常な細胞若しくは組織を、選択的に損傷し、破壊し、又はヒトの身体から消滅させる作用を指す。
【0019】
「シグナル伝達経路」とは、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において機能する様々なシグナル伝達分子の間の生化学的関係を指す。「細胞表面受容体」という表現には、例えば、シグナルを受容し、そのようなシグナルを細胞の形質膜を横切って伝達することができる分子及び分子複合体が含まれる。本発明の「細胞表面受容体」の例はIFNα受容体1又はIFNα受容体2である。
【0020】
本明細書で使用する場合の用語「抗体」は、抗体全体及び任意の抗原結合フラグメント(即ち、「抗原結合部分」)、又はそれらの一本鎖を包含する。「抗体」とは、ジスルフィド結合で相互に連結された、少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略称)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、三つのドメインCH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略称)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLからなる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称する超可変性の領域と、その間に散在するフレームワーク領域(FR)と称する、より保存性の高い領域とに更に細分される。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順:FR1、(VH又はVL)CDR1、FR2、(VH又はVL)CDR2、FR3、(VH又はVL)CDR3、FR4に配置された3個のCDR及び4個のFRで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の各種細胞(例えば、それだけに限らないが、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主の組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0021】
「抗体」又は「複数の抗体」という用語には、限定されるものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fv(scFv)(二重特異性scFvを含む)、ダイアボディ、BiTE(登録商標)分子、一本鎖抗体Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド連結Fv(dsFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに前記抗体いずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。特に、本発明の抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性を有する部分、すなわちIFNα又はIFNα抗原に特異的に結合する抗原結合部位(例えば、抗IFNα抗体の1又は複数の相補性決定領域(CDR))を含む分子が含まれる。
【0022】
用語「安定な」とは、抗体がその所望の機能を発揮する能力に関して組成物中での抗体の状態を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合の抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、IFNα)に特異的に結合する能力を保持している、抗体の一つ又は複数のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントにより発揮することができることが示されている。抗体の「抗原結合部」という用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメントで、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント、(ii)F(ab')2フラグメントで、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋で連結された2個のFabフラグメントを含む二価フラグメント、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341: 544-546)、並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。更に、Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、両者は、組換え法を用いて、VL及びVH領域が対をなして一価分子を形成するタンパク質一本鎖として作製されることを可能にする合成リンカーにより、繋ぎ合わせることができる(一本鎖Fv(scFv)としても知られており、例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426及びHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部」という用語に包含することを意図している。こうした抗体フラグメントは、当業者に公知の慣用技法を用いて得られ、該フラグメントは、インタクトな抗体同様に有用性についてスクリーニングされる。
【0024】
本明細書で使用する「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、IFNαと特異的に結合する単離された抗体は、IFNα以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を意味するものとする。しかしながら、IFNαと特異的に結合する単離された抗体は、例えば他の種に由来するIFNα分子などの他の抗原との交差反応性を有していてもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものであってもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合の用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性及び特定のエピトープに対する親和性を示す。
【0026】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図している。更に、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域もヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列がコードしないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発、又はインビボでの体細胞変異で導入される変異)。
【0027】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワーク及びCDR領域の両方がヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含んだゲノムを有する非ヒトトランスジェニック動物、例えばトランスジェニックマウスから得られるB細胞が不死化細胞と融合しているハイブリドーマにより産生される。
【0028】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、組換え手段により調製、発現、創製又は単離される全てのヒト抗体であって、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入若しくは染色体組換え(transchromosomal)されている動物(例えばマウス)、又はそれから調製したハイブリドーマから単離された抗体、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離された抗体、(c)ヒト抗体組換えコンビナトリアルライブラリーから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う他の任意の手段により、調製、発現、創製又は単離された抗体、などを含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、ある種の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、インビトロの変異誘発(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用した場合、インビボの体細胞変異誘発)に供することができ、したがって組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系のVH及びVL配列に由来し、関係しているが、インビボでのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内には自然に存在しないこともある配列である。
【0029】
用語「イソタイプ」とは、重鎖定常領域の遺伝子によってコードされる抗体のクラス(例えばIgM又はIgG1)を指す。
【0030】
用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」とは、所定の抗原に対する抗体の結合を指す。通常、抗体は、10-8M以下の解離定数(KD)で結合するが、所定の抗原に対して、所定の抗原又は非常に近縁の抗原以外の非特異抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合のKDに比べ、1/2以下であるKDで結合する。語句「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原と特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0031】
本明細書で使用する用語「Kassoc」又は「Ka」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を意味するものとし、一方、本明細書で使用する用語「Kdis」又は「Kd」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を意味するものとする。本明細書で使用する用語「KD」は、KdとKaとの比(すなわちKd/Ka)から得られる解離定数を意味するものとし、モル濃度(M)で表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立されている方法を用いて決定することができる。抗体のKDを決定するための別の方法は、例えばバイオセンサーシステム(BIAcore(登録商標)システムなど)を用いる表面プラズモン共鳴を用いることにより行われる。
【0032】
IgG抗体についての「高親和性」という用語は、KDが10-8M若しくはそれ未満、10-9M若しくはそれ未満、又は10-10M若しくはそれ未満である抗体を指す。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体イソタイプについては異なりうる。例えば、IgMイソタイプについての「高親和性」結合は、KDが10-7M若しくはそれ未満、又は10-8M若しくはそれ未満である抗体を指す。
【0033】
用語「被験体」は、ヒト又は非ヒトの任意の動物を含む。用語「非ヒト動物」には、全ての脊椎動物、例えば哺乳類及び非哺乳類、例として非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。
【0034】
用語「疎水性電荷誘導クロマトグラフィー」(又は「HCIC」)は、混合物中の対象タンパク質が、添加塩(例えば、リオトロピック塩)の非存在下で軽度の疎水性相互作用により二重モード樹脂に結合する、混合モードクロマトグラフィープロセスの1種である(Schwart et al. J Chromatogr, 2001;908(1-2):251-63)。
【0035】
用語「疎水性電荷誘導クロマトグラフィー用樹脂」は、その分離能のために、チオフィリック作用(thiophilic effect)(即ち、チオフィリッククロマトグラフィーの性質を利用する)、疎水性及びイオン性基の性質を併有するリガンドを含有する固相である。したがって、本発明の方法に使用されるHCIC樹脂は、イオン化可能であり、中性(生理学的)又は弱酸性、例えば、約pH5〜10若しくは約pH6〜9.5において、軽度に疎水性であるリガンドを含有する。このpH領域では、リガンドは、主に非荷電であり、軽度の非特異的疎水性相互作用により対象タンパク質に結合する。pHが減少するにつれ、リガンドは電荷を獲得し、疎水性結合は、pHシフトによる該溶質に対する静電荷反発によって破壊される。HCICにおける使用に適切なリガンドの例には、任意のイオン性芳香族又はヘテロ環構造、(例えば、ピリジン構造を有するものとして、2-アミノメチルピリジン、3-アミノメチルピリジン及び4-アミノメチルピリジン、2-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン又は4-メルカプトエチルピリジン、メルカプト酸類、メルカプトアルコール類、イミダゾリル系の、メルカプトメチルイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、アミノメチルベンズイミダゾール、ヒスタミン、メルカプトベンズイミダゾール、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノプロピルモルホリン、アミノプロピルイミダゾール、アミノカプロン酸、ニトロヒドロキシ安息香酸、-14-ニトロチロシン/エタノールアミン、ジチオロサリチル酸(dichiorosalicylic acid)、ジブロモチラミン、クロロヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、チラミン、チオフェノール、グルタチオン、ビスイフェート(bisuiphate)、並びに、その誘導体を含み、リンカーアーム及び/又はリガンド構造上に、脂肪族鎖及び少なくとも1個の硫黄原子を有する色素類が挙げられるが、色素類については、Burton and Harding, Journal of Chromatography A 814: 8 1-81 (1998)及びBoschetti, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 49: 361-389 (2001)を参照されたい。HCIC樹脂の非限定的な例には、MEP HYPERCEL(登録商標)(Pall Corporation; East Hills, NY)が挙げられる。
【0036】
用語「イオン交換」及び「イオン交換クロマトグラフィー」とは、対象とするイオン性基(例えば、混合物中の対象タンパク質)が、固相イオン交換材料に(例えば、共有結合により)連結された逆荷電リガンドと、pH及び導電率の適当な条件下で相互作用し、その結果、対象溶質が、混合物中の溶質不純物又は汚染物より多く又は少なく、該荷電化合物と非特異的に相互作用するクロマトグラフィープロセスを指す。混合物中の汚染性溶質は、イオン交換材料のカラムから洗い出すことができ、又はその樹脂に結合しており、又は対象溶質より速く若しくは遅く、樹脂から排除される。「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的には陽イオン交換、陰イオン交換及び混合モードクロマトグラフィーを包含する。
【0037】
用語「陽イオン交換樹脂」とは、負に帯電しており、当該固相の上又は中を通過する水溶液中の陽イオンと交換するための遊離陽イオンを有する固相を指す。固相に結合し、陽イオン交換樹脂の形成に適した任意の負荷電リガンド、例えば、カルボキシレート、スルホネート及び以下に記載するような他のものが、使用できる。市販の陽イオン交換樹脂には、それだけに限らないが、例えば、スルホネート系の基(例えば、GE Healthcare製のMonoS、MiniS、Source 15S及び30S、SP Sepharose Fast Flow、SP Sepharose High Performance、Tosoh製のToyopearl SP-650S及びSP-650M、BioRad製のMacro-Prep High S、Pall Technologies製のCeramic HyperD 5、Trisacryl M及びLS SP並びにSpherodex LS SP)、スルホエチル系の基(例えば、EMD製のFractogel SE、Applied Biosystems製のPoros S-及びS-20)、スイホプロピル(suiphopropyl)系の基(例えば、Tosoh製のTSK Gel SP 5PW及びSP-5PW-HR、Applied Biosystems製のPoros HS-20及びHS-50)、スルホイソブチル系の基(例えば、(EMD製のFractogel EMD SO3)、スルホキシエチル系の基(例えば、Whatman製のSE52、SE53及びExpress-Ion S)、カルボキシメチル系の基(例えば、GE Healthcare製のCM Sepharose Fast Flow、Biochrom Labs Inc.製のHydrocell CM、BioRad製のMacro-Prep CM、Pall Technologies製のCeramic HyperD CM、Trisacryl M CM、Trisacryl LS CM、Millipore製のMatrx Cellufine C500及びC200、Whatman製のCM52、CM32、CM23及びExpress Ion C、Tosoh製のToyopearl CM-650S、CM-650M及びCM-650C)、スルホン酸及びカルボン酸系の基(例えば、J. T. Baker製のBAKERBOND Carboxy-Sulfon)、カルボン酸系の基(例えば、J. T. Baker製のWP CBX、Dow Liquid Separations製のDOWEX MAC-3、Sigma-Aldrich製のAmberlite Weak Cation Exchangers、DOWEX Weak Cation Exchanger及びDiaion Weak Cation Exchangers、並びにEMD製のFractogel EMD COO-)、スルホン酸系の基(例えば、Biochrom Labs Inc.製のHydrocell SP、Dow Liquid Separations製のDOWEX Fine Mesh Strong Acid Cation Resin、J. T. Baker製のUNOsphere 5, WP Sulfonic、Sartorius製のSartobind S膜、Sigma-Aldrich製のAmberlite Strong Cation Exchangers、DOWEX Strong Cation及びDiaion Strong Cation Exchanger)、並びにオルトホスフェート系の基(例えば、Whatman製のP11)を有する樹脂が挙げられる。
【0038】
用語「洗浄剤(detergent)」とは、タンパク質の凝集防止、及び対象タンパク質への汚染物の非特異的相互作用又は結合の防止に有用であり、浄化、平衡、投入、投入後洗浄(複数回も含む)、溶出又は除去(strip)用の緩衝液を含め、本発明に用いる各種の緩衝液中に存在することができる、イオン性、両性イオン性及び非イオン性の界面活性剤を指す。特定の実施形態では、洗浄剤は洗浄緩衝液に添加される。本発明において使用することができる洗浄剤の例には、それだけに限らないが、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又は80)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、Triton、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム;ラウリル、ミリスチル、リノレイル又はステアリルスルホベタイン;ラウリル、ミリスチル、リノレイル又はステアリルサルコシン;リノレイル、ミリスチル又はセチルベタイン;ラウロアミドプロピル、コカミドプロピル、リノールアミドプロピル、ミリスタミドプロピル、パルミドプロピル又はイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル、パルミドプロピル又はイソステアラミドプロピルジメチルアミン;メチルココイルタウレートナトリウム又はメチルオレイルタウレート二ナトリウム、MONAQUATシリーズ(Mona Industries, Inc., Paterson, N.J.)、Igepal CA-630、Pluronic、Triton、BRIJ、Atlas G2127、Genapol、HECAMEG、LUBROL PX、MEGA、NP、THESIT、TOPPS、CHAPS、CHAPSO、DDMAU、EMPIGEN BB、AWITTERGENT及びC12B8が挙げられる。洗浄剤は、任意の使用緩衝液中に添加することができ、対象分子を含有する供給液中に含めることもできる。洗浄剤は、タンパク質精製プロセスでの使用に適した任意の量、例えば、約0.001%〜約20%及び通常約0.01%〜約1%で存在することができる。特定の実施形態では、ポリソルベート80は、陽イオン交換クロマトグラフィー用洗浄緩衝液中に使用される。
【0039】
本発明に使用される用語「緩衝液」は、酸-塩基共役成分の作用により、酸又は塩基の添加によるpH変化に抗する溶液である。多様な緩衝液が、緩衝液の所望のpH及び精製プロセスの特定のステップに応じて、本発明の方法において使用することができる。本発明の方法に望ましいpH領域の調節に使用できる緩衝液成分の非限定例には、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム緩衝剤、コハク酸塩、18-MES、CHAPS、MOPS、MOPSO、HEPES、Trisなど、並びに以下のTRIS-リンゴ酸-NaOH、マレイン酸塩、チオロ酢酸塩(chioroacetate)、ギ酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、ピリジン、ピペラジン、ADA、PIPES、ACES、BES、TES、トリシン、ビシン、TAPS、エタノールアミン、CHES、CAPS、メチルアミン、ピペリジン、正ホウ酸、炭酸、乳酸、ブタンアンジオイック(butaneandioic)酸、ジエチルマロン酸、グリシグリシン(glyciglycine)、HEPPS、HEPPSO、イミダゾール、フェノール、POPSO、コハク酸塩、TAPS、アミン系のベンジルアミン、トリメチル若しくはジメチル若しくはエチル若しくはフェニルアミン、エチレンジアミン又はモルホリンが挙げられる。追加の成分(添加剤)を必要に応じて緩衝液中に存在させることができ、例えば、それだけに限らないが、塩を緩衝液イオン強度の調節に使用することができる。非限定例には、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及び塩化カリウム、並びにアミノ酸(グリシン、ヒスチジンなど)、カオトロープ(尿素など)、アルコール(エタノール、マリニトール(marinitol)、グリセロール、ベンジルアルコールなど)、洗浄剤、及び糖(スクロース、マンニトール、マルトース、トレハロース、グルコース、フルクトースなど)などの他の添加剤が挙げられる。緩衝液の成分及び添加剤、並びに使用する濃度は、本発明で実施するクロマトグラフィーの種類に応じて変更することができる。緩衝液のpH及び導電率は、精製プロセスのどのステップで緩衝液を使用するかに応じて、変更することができる。
【0040】
用語「平衡緩衝液」とは、精製する対象タンパク質を含有する混合物をカラムに投入する前に、クロマトグラフィーカラムのpH及び導電率を調節するために使用される溶液を指す。この目的のために使用できる適切な緩衝液、例えば、それだけに限らないが、以上に又は本明細書に記載の緩衝液は、当技術分野で周知であり、対象タンパク質を精製するためのクロマトグラフィーステップで使用される選定樹脂に適合するpHにおける任意の緩衝液を包含する。この緩衝液は、対象ポリペプチドを含む混合物を投入するために使用される。平衡緩衝液は、対象ポリペプチドが樹脂に結合するような、又は対象タンパク質がカラム中を流れる一方で、1種若しくは複数の不純物がカラムに結合するような、導電率及び/又はpHを有する。
【0041】
用語「ローディングバッファー」とは、対象タンパク質を含有する混合物をカラム上に投入するために使用される溶液を指す。適当な任意の溶液をローディングバッファーとして使用することができる。本プロセスにおけるローディングバッファー導電率及びpHは、対象タンパク質が樹脂に結合する一方、汚染物がカラム中を流れることができるように選択される。場合により、ローディングバッファーをバッファー交換することができる。ローディングバッファーは、それ以前の精製プロセスから得られる、溶出緩衝液などの緩衝混合液から調製することもできる。選定樹脂と共にローディングバッファーとしての使用に適切な緩衝液、例えば、それだけに限らないが、上記の緩衝液は、当技術分野で周知である。陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン及びHCIC用のローディングバッファーは、同等なpH(同じでないとしても)及び導電率で使用することができる。
【0042】
用語「洗浄緩衝液」又は「投入後洗浄液」とは、対象タンパク質を溶出する前に、イオン交換樹脂から1種又は複数の不純物を溶出するために使用される緩衝液を指す。用語「洗浄」及びその文法的変形体は、クロマトグラフィー樹脂を通る又はその全体に渡る、適当な洗浄緩衝液の通過を述べるために使用される。ある種の実施形態では、洗浄緩衝液、平衡緩衝液及びローディングバッファーは、同じでもよいが、そうである必要はない。該緩衝液のpH及び導電率は、1種若しくは複数の不純物が樹脂から溶出する一方で、樹脂が対象ポリペプチドを保持するようなものである。所望であれば、洗浄緩衝液は、上記のように、ポリソルベートなどの洗浄剤を含有してもよい。上記の緩衝液などの、選定樹脂に適合するpHにおける適切な任意の緩衝液が、対象タンパク質の精製に使用することができる。洗浄緩衝液のpH及び導電率の選択は、対象タンパク質を有意に溶出せずに、宿主細胞タンパク質(HCP)及び他の汚染物の除去のために重要である。混合物を投入した後におけるHCIC及び陽イオン交換クロマトグラフィーのための後続洗浄ステップに使用される洗浄緩衝液において、対象タンパク質より親水性で、酸性又は塩基性の強い汚染物を除去し、溶出ステップの前にシステムの導電率を低下させるために、導電率及びpHを減少又は維持又は増加させることができる。特定の実施形態では、HCICクロマトグラフィーのために導電率だけを減少させ、陽イオン交換クロマトグラフィー用の投入後洗浄液は、平衡、投入及び投入後洗浄に使用される緩衝液のpH及び導電率のいずれの変化も含まない。
【0043】
用語「溶出緩衝液」とは、固相から対象タンパク質を溶出するために使用される緩衝液を指す。用語「溶出」及びその文法的変形体とは、適当な条件の使用、例えば、クロマトグラフィー材料を囲む緩衝液のイオン強度若しくはpHの変更、リガンドに対する競合分子の添加、その分子の疎水性の変更、又はリガンドの化学的性質の変更による、ある分子、例えば、それだけに限らないが、対象ポリペプチドの除去であって、対象タンパク質が、樹脂に結合できず、したがってクロマトグラフィーカラムから溶出されるような除去を指す。用語「溶出液」とは、カラムに溶出を適用した際の対象ポリペプチドを含有する、カラムからの流出液を指す。対象ポリペプチドの溶出後、カラムは、必要な場合、再生、浄化及び保存することができる。
【0044】
本発明で使用される用語「滞留時間」は、産生の開始から精製の終了までの時間と定義される。「滞留時間」には、細胞培養の後であって、精製の前の任意のホールドステップが含まれる。
【0045】
4. 発明の詳細な説明
本発明者等は、抗インターフェロンα抗体が、抗体の産生、精製及び保存中に経時的に活性を喪失することを見出した。更に調べると、抗インターフェロンα抗体は、イオン交換クロマトグラフィーにより多数のピークを示すことを判定し、該ピークが、抗体の脱アミド化の結果であると判定した。抗体配列の更なる調査から、Asn-GlyモチーフがVHCDR2中に存在し、そのため抗体が脱アミド化を受け易くなることが明らかになった。特定の仮説に拘る訳ではないが、この潜在的な脱アミド化部位が抗体の重要な結合領域中に存在するために、活性の喪失が示されたと考えられる。したがって、抗インターフェロンα抗体の安定性を保持するために、本発明者等は、抗体を産生、精製及び保存する方法、並びに脱アミド化プロフィールの低減した安定な抗体組成物を開発した。本発明の選択された実施形態を、以下の項で説明する。
【0046】
脱アミド化部位は、グリシン(Gly若しくはG)、セリン(Ser若しくはS)、スレオニン(Thr若しくはT)、又はアスパラギン酸(Asp若しくはD)などのアミノ酸に先行する(N末端からC末端へと読む)、アスパラギン残基と言及される。
【0047】
以下の実施形態では、これらの実施形態が「本発明の方法」を総括的に代表するものと理解される。
【0048】
以下の4.1〜4.6項に記載の方法を用いると、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールが、以下に記載の方法を受けていない、脱アミド化の傾向がある対照抗体と比較して低減し得る。
【0049】
本発明の一実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%又は約5%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して約5%〜約70%、約5%〜約60%、約5%〜約50%、約5%〜約40%、約5%〜約30%、約5%〜約20%又は約5%〜約10%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して約10%〜約70%、約10%〜約60%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約10%〜約30%、又は約10%〜約20%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して約20%〜約70%、約20%〜約60%、約20%〜約50%、約20%〜約40%、又は約20%〜約30%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して約30%〜約70%、約30%〜約60%、約30%〜約50%、又は約30%〜約40%低減する。
【0050】
本発明の一実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%又は5%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して5%〜70%、5%〜60%、5%〜50%、5%〜40%、5%〜30%、5%〜20%又は5%〜10%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して10%〜70%、10%〜60%、10%〜50%、10%〜40%、10%〜30%、又は10%〜20%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、20%〜40%、又は20%〜30%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、又は30%〜40%低減する。
【0051】
本発明の一実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%又は少なくとも5%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して少なくとも5%〜少なくとも70%、少なくとも5%〜少なくとも60%、少なくとも5%〜少なくとも50%、少なくとも5%〜少なくとも40%、少なくとも5%〜少なくとも30%、少なくとも5%〜少なくとも20%又は少なくとも5%〜少なくとも10%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して少なくとも10%〜少なくとも70%、少なくとも10%〜少なくとも60%、少なくとも10%〜少なくとも50%、少なくとも10%〜少なくとも40%、少なくとも10%〜少なくとも30%、又は少なくとも10%〜少なくとも20%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して少なくとも20%〜少なくとも70%、少なくとも20%〜少なくとも60%、少なくとも20%〜少なくとも50%、少なくとも20%〜少なくとも40%、又は少なくとも20%〜少なくとも30%低減する。本発明の別の実施形態では、脱アミド化の傾向がある抗体の脱アミド化プロフィールは、対照脱アミド化プロフィールに対して少なくとも30%〜少なくとも70%、少なくとも30%〜少なくとも60%、少なくとも30%〜少なくとも50%、又は少なくとも30%〜少なくとも40%低減する。
【0052】
脱アミド化レベルは、抗体の全濃度に対する比率(%)としても表現し得る。ある種の実施形態では、4.1〜4.6項に記載の方法を受けた、脱アミド化の傾向がある抗体は、存在する抗体の全濃度に対する比率(%)で測定した場合、低減した脱アミド化プロフィールを示す。一実施形態では、本発明の方法は、脱アミド化の傾向があり、そして試料中に存在する全抗体量の約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%又は約35%の脱アミド化プロフィールを示す抗体を産生する。ある種の実施形態では、本発明の方法は、脱アミド化の傾向があり、そして試料中に存在する全抗体量の35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満又は1%未満の脱アミド化プロフィールを示す、抗体を産生する。
【0053】
4.1. 抗体の細胞培養産生
4.1.1. 抗体の組換え発現
本発明の抗体、それらの誘導体、類似体又はフラグメント(例えば、本発明の抗体若しくはその一部、又は本発明の一本鎖抗体の重鎖又は軽鎖)の組換え発現には、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを構築する必要がある。一度、抗体分子、又は抗体の重鎖若しくは軽鎖、又はその一部をコードするポリヌクレオチドが得られたなら、抗体分子産生用ベクターは、当技術分野で公知の技術を使用し、組換えDNA技術によって作製することができる(4.7.4節も参照のこと)。
【0054】
従って、抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを発現することにより、タンパク質を調製する方法を本明細書に記載する。当業者に公知の方法を使用して、抗体コード配列、並びに好適な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。こうした方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。
【0055】
本発明はまた、プロモーターに機能的に連結した、本発明の抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、抗体又はその一部の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン、又は重鎖若しくは軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能ベクターを提供する。そのようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことが可能であり(例えば、国際公開WO86/05807号;WO89/01036号;及び米国特許第5,122,464号を参照)、重鎖全体、軽鎖全体、又は重鎖と軽鎖全体の両方を発現させるためのベクター中に、抗体の可変ドメインをクローン化しうる。
【0056】
発現ベクターは、慣用技術によって宿主細胞に移入し、次いでそのトランスフェクト細胞を慣用技術によって培養して本発明の抗体を産生する。従って、本発明は、異種プロモーターに機能的に連結させた、本発明の抗体若しくはそのフラグメント、又はその重鎖若しくは軽鎖、又はその一部、あるいは本発明の一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。他の実施形態では、二重鎖抗体を発現するためには、以下に詳述するように、免疫グロブリン分子全体を発現させるための宿主細胞で、重鎖と軽鎖をコードするベクターを同時に発現させうる。
【0057】
様々な宿主発現ベクター系を使用して、本発明の抗体分子を発現しうる(例えば、米国特許第5,807,715号を参照)。そのような宿主−発現系は、それによって対象のコード配列を産生し、続いて精製しうるビヒクルを表すが、同様に、好適なヌクレオチドコード配列で形質転換し、又はこれをトランスフェクトした場合、本発明の抗体分子をin situで発現しうる細胞も表す。これらには、それだけには限らないが以下のものが含まれる:微生物、例えば、抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌及び枯草菌);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス・ピキア);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた又はその配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞ゲノム由来プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来プロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築体を保持する哺乳動物細胞系(例えば、COS、HEK、293、MDCK、CHO、BHK、NS0、及び3T3細胞)。大腸菌などの細菌細胞、及び真核細胞、特に、組換え抗体分子全体を発現させるための真核細胞が、組換え抗体分子の発現に使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間体初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せて、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳動物細胞は、抗体の効果的な発現系である(Foeckingら, 1986, Gene 45:101;及びCockettら, 1990, Bio/Technology 8:2)。特定の実施形態では、IFNαと特異的に結合する本発明の抗体又はそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターによって調節される。
【0058】
細菌系では、抗体分子を発現させることを意図した使用に応じて、いくつかの発現ベクターを有利に選択しうる。例えば、そのようなタンパク質を大量に製造する場合、抗体分子医薬組成物の生成には、精製が容易な融合タンパク質生成物を高レベルに発現するベクターが望ましいであろう。そのようなベクターには、それだけには限らないが、大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO 12:1791)、その際、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列は、lac Zコード領域によって別個にベクターにインフレームでライゲートしうる;pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109;Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 24:5503-5509)などが含まれる。pGEXベクターを使用して、グルタチオン5-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現することも可能である。一般に、そのような融合タンパク質は、溶解性であり、マトリックス・グルタチオン・アガロースビーズに吸着し結合させるステップ、続いて遊離グルタチオンの存在下で溶出させるステップによって、溶解した細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、GST部分からそのクローン化標的遺伝子産物を遊離できるように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計されている。
【0059】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)が使用される。このウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、多角体遺伝子)中に別個にクローン化し、AcNPVプロモーター(例えば、多角体プロモーター)の制御下に配置しうる。
【0060】
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスに基づく発現系を使用しうる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する事例では、対象の抗体コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び3つからなるリーダー配列にライゲートしうる。次いで、インビトロ又はインビボ組換えにより、このキメラ遺伝子をアデノウイルスゲノム中に挿入しうる。ウイルスゲノム(例えば、領域E1又はE3)の非必須領域中への挿入によって、生存可能であり、感染宿主中で抗体分子を発現することが可能な組換えウイルスがもたらされる(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 1:355-359を参照されたい)。特定の開始シグナルはまた、挿入した抗体コード配列の効率的翻訳にも必要であろう。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。さらに、挿入物全体の翻訳を確実にするために、開始コドンは所望のコード配列の読み枠と一致するものでなければならない。これらの外来性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成を含む様々な起源のものであってよい。発現効率は、好適な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって高めることができる。(例えば、Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153:516-544を参照)。
【0061】
さらに、挿入した配列の発現を調節し、又は所望する特定の方式で遺伝子産物を修飾し、プロセシングする宿主細胞株を選択しうる。タンパク質産物のそのような修飾(糖鎖形成など)及びプロセシング(切断など)は、そのタンパク質の機能にとって重要であろう。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後のプロセシング及び修飾について、特徴的かつ特定の機序を有する。発現した外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確実に行うために、好適な細胞系又は宿主系を選択することができる。この目的のために、遺伝子産物の適切な一次転写産物のプロセシング、糖鎖形成、及びリン酸化を行うための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用しうる。そのような哺乳動物宿主細胞には、それだけには限らないが、CHO、MDCK、VERY、BHK、Hela、COS、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0、CRL7O3O、及びHsS78Bst細胞が含まれる。
【0062】
組換えタンパク質を長期間高収量で産生するためには、安定した発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定して発現する細胞系を設計しうる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、好適な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、及び選択マーカーによって制御されたDNAにより、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入に続き、操作した細胞を富栄養培地で1〜2日間増殖させることができ、次いで選択培地に取り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対して耐性を付与し、そして細胞が安定してその染色体中にプラスミドを組み込み、増殖して増殖巣を形成できるようにし、次いでその増殖巣が細胞系中でクローン化し増殖することができる。この方法は、抗体分子を発現する細胞系の操作に有利に使用しうる。そのように操作した細胞系は、抗体分子と直接的又は間接的に相互作用する組成物のスクリーニング及び評価に特に有用かもしれない。
【0063】
それだけには限らないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11:223)遺伝子、ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(Szybalska & Szybalski, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202)遺伝子、及びアデニンホスホリボシル転移酵素(Lowyら, 1980, Cell 22:8-17)遺伝子を含むいくつかの選択系を使用することができ、それらは、それぞれ、tk-、hgprt-、又はaprt細胞で使用することができる。さらに、以下の遺伝子の選択基準として、代謝拮抗物質耐性を使用することができる:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら, 1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:357;O'Hareら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Wu and Wu, 1991, Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596;Mulligan, 1993, Science 260:926-932;及びMorgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191-217;May, 1993, TIB TECH 11(5):l55-2 15);及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら, 1984, Gene 30:147)。組換えDNA技術の技術分野で一般に公知方法を常法に従って適用して、所望する組換えクローンを選択するが、そのような方法は、例えば、Ausubelら(編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993);Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990);及びChapters 12 and 13, Dracopoliら(編), Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994);Colberre-Garapinら, 1981, J. Mol. Biol. 150:1に記載されている。これらについて、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0064】
抗体分子の発現レベルは、ベクターを増幅することによって増大できる[概説については、Bebbington及びHentschel、「DNAクローニングにおいて、哺乳動物細胞中でクローン化遺伝子を発現させるための、遺伝子増幅に基づくベクターの使用(The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning)」第3巻を参照されたい。(Academic Press, New York, 1987)]。抗体を発現するベクター系でマーカーを増幅することができると、宿主細胞の培養中に存在する阻害薬レベルの上昇によってマーカー遺伝子の複製数が増加する。増幅領域は、抗体遺伝子に関連するので、抗体の産生も増大する(Crouseら, 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
【0065】
宿主細胞は、本発明の2個の発現ベクターを用いて共トランスフェクトすることが可能であり、第1ベクターは重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2ベクターは軽鎖由来ポリペプチドをコードする。その2個のベクターは、重鎖と軽鎖ポリペプチドの同等の発現が可能になる同一選択マーカーを含みうる。あるいは、重鎖と軽鎖ポリペプチドをコードし、発現することができる単一のベクターを使用しうる。そのような状況では、過剰な有害遊離重鎖を回避するために、軽鎖を重鎖の前に配置すべきである(Proudfoot, 1986, Nature 322:52;及びKohler, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2 197)。重鎖と軽鎖のコード配列はcDNA又はゲノムDNAを含みうる。
【0066】
本発明の抗体分子を組換え発現によって作製した後、その抗体分子は、免疫グロブリン分子を精製するための当技術分野で公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、特にプロテインAの後の特異的抗原に対するアフィニティ、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解(differential solubility)、又はタンパク質精製の他の任意の標準的技術によって精製しうる。さらに、本発明の抗体又はそのフラグメントは、本明細書に記載し、又は精製を促進するために当技術分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合しうる。
【0067】
4.1.2. 細胞培養プロセス
いくつかの細胞培養プロセスを、所望産物の大規模合成に使用し得る。一般に、細胞は、500ml未満の容量を有する小型組織培養フラスコ中で開始される。細胞培養物は、所望濃度に一旦達すると、増殖のためにより大型のフラスコに移すことができる。細胞をより大型の振とうフラスコ中で増殖させる後、培養物は、所望産物の産生のためにバイオリアクターに無菌的に移すことが多い。こうしたバイオリアクターは、サイズが5リットルから5000リットルの範囲にすることができる。「シード」用バイオリアクターと呼ぶ第1のバイオリアクターを、容量通りに運転することが多く、次いで培養物を「製造」用バイオリアクターに移して、産物を取得する。バイオリアクターの運転中、pH、温度、溶存酸素などの多くの生理学的パラメーターを連続的にモニターし、必要に応じて調節する。プロセスを通して、試料を慣用的に採取し、pH、生細胞密度(VCD)及び細胞生存率(%)を試験する。それに加え、汚染微生物の顕微鏡評価を行う。
【0068】
一実施形態では、本発明の方法は、pH値範囲が約6.0〜約7.5の培地中で増殖する細胞を含む。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値範囲が約7.0〜約7.5の培地中で増殖させる。本発明の他の実施形態では、細胞をpH値範囲が約6.0〜約7.0、約6.1〜約7.0、約6.2〜約7.0、約6.3〜約7.0、約6.4〜約7.0、約6.5〜約7.0、約6.6〜約7.0、約6.7〜約7.0、約6.8〜約7.0、又は約6.9〜約7.0の培地中で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値範囲が約6.0〜約7.2、約6.0〜約7.0、約6.0〜約6.9、約6.0〜約6.8、約6.0〜約6.7、約6.0〜約6.6、約6.0〜約6.5、約6.0〜約6.4、約6.0〜約6.3、又は約6.0〜約6.2の培地中で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値範囲が約6.0〜約6.1、約6.1〜約6.2、約6.2〜約6.3、約6.3〜約6.4、約6.4〜約6.5、約6.5〜約6.6、約6.6〜約6.7、約6.7〜約6.8、約6.8〜約6.9、約6.9〜約7.0、約7.0〜約7.1、約7.1〜約7.2、約7.2〜約7.3、約7.3〜約7.4、又は約7.4〜約7.5の培地中で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値が約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、又は約7.5の培地中で増殖させる。
【0069】
一実施形態では、本発明の方法は、pH値範囲が6.0〜7.5の培地中で増殖する細胞を含む。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値範囲が7.0〜7.5の培地中で増殖させる。本発明の他の実施形態では、細胞をpH値範囲が6.0〜7.0、6.1〜7.0、6.2〜7.0、6.3〜7.0、6.4〜7.0、6.5〜7.0、6.6〜7.0、6.7〜7.0、6.8〜7.0、又は6.9〜7.0の培地中で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値範囲が6.0〜7.2、6.0〜7.0、6.0〜6.9、6.0〜6.8、6.0〜6.7、6.0〜6.6、6.0〜6.5、6.0〜6.4、6.0〜6.3、又は6.0〜6.2の培地中で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値範囲が6.0〜6.1、6.1〜6.2、6.2〜6.3、6.3〜6.4、6.4〜6.5、6.5〜6.6、6.6〜6.7、6.7〜6.8、6.8〜6.9、6.9〜7.0、7.0〜7.1、7.1〜7.2、7.2〜7.3、7.3〜7.4又は7.4〜7.5の培地中で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞をpH値が6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、又は7.5の培地中で増殖させる。
【0070】
一実施形態では、本発明の方法は、約28℃〜約37℃の温度範囲で増殖する細胞を含む。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約32℃、約32℃〜約34℃、又は約34℃〜約37℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約36℃、約28℃〜約35℃、約28℃〜約34℃、約28℃〜約33℃、約28℃〜約31℃、又は約28℃〜約30℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約29℃〜約37℃、約30℃〜約37℃、約31℃〜約37℃、約32℃〜約37℃、約33℃〜約37℃、約34℃〜約37℃、約35℃〜約37℃、又は約36℃〜約37℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約29℃、約29℃〜約30℃、約30℃〜約31℃、約31℃〜約32℃、約32℃〜約33℃、約33℃〜約34℃、約34℃〜約35℃、約35℃〜約36℃、又は約36℃〜約37℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、又は37℃の温度で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約37℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約33℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約34℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約30℃〜約33℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約30℃〜約34℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約33℃〜約36℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約29℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約28℃〜約29℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約29℃〜約30℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約30℃〜約31℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約31℃〜約32℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約32℃〜約33℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約33℃〜約34℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約34℃〜約35℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約35℃〜約36℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を約36℃〜約37℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。
【0071】
一実施形態では、本発明の方法は、28℃〜37℃の温度範囲で増殖する細胞を含む。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜32℃、32℃〜34℃、又は34℃〜37℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜36℃、28℃〜35℃、28℃〜34℃、28℃〜33℃、28℃〜31℃、又は28℃〜30℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を29℃〜37℃、30℃〜37℃、31℃〜37℃、32℃〜37℃、33℃〜37℃、34℃〜37℃、35℃〜37℃、又は36℃〜37℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜29℃、29℃〜30℃、30℃〜31℃、31℃〜32℃、32℃〜33℃、33℃〜34℃、34℃〜35℃、35℃〜36℃、又は36℃〜37℃の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、又は37℃の温度で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜37℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜33℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜34℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を30℃〜33℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を30℃〜34℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を33℃〜36℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜29℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を28℃〜29℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を29℃〜30℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を30℃〜31℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を31℃〜32℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を32℃〜33℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を33℃〜34℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を34℃〜35℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を35℃〜36℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を36℃〜37℃の間にある増分0.1度の温度範囲で増殖させる。
【0072】
一実施形態では、本発明の方法は、約8日超、約9日超、約10日超、約11日超、約12日超、約13日超、約14日超、約15日超、約16日超又は約17日超の全実施期間の間、培養した細胞を含む。別の実施形態では、細胞を約9〜約17日、約9〜約14日、若しくは約14〜約17日、又はそれより長い全実施期間の間、培養することができる。別の実施形態では、細胞を約9〜約11日、約11〜約3日、約13日〜約15日、約15〜約17日、又はそれより長い間、培養することができる。別の実施形態では、細胞を約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日又はそれより長い全実施期間の間、培養することができる。別の実施形態では、細胞を9、10、11、12、13、14、15、16、又は17日の全実施期間の間、培養することができる。
【0073】
本発明のある種の実施形態では、細胞培養温度及び培地pHの各パラメーターは、上記のように同時に低下される。別の実施形態では、細胞培養温度、培地pH及び採集タイミングは、上記のように同時に低下される。本発明の別の実施形態では、細胞を、増分0.1度で約28℃〜約37℃の範囲を含む温度、及び増分0.1で約6.0〜約7.2のpH範囲を含んで増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を、増分0.1度で約28℃〜約37℃の範囲を含む温度、及び増分0.1で約6.0〜約7.2のpH範囲を含んで増殖させ、接種後であって、増分1日で約0〜約17日を含む範囲のある日に採集する。
【0074】
本発明の他の実施形態では、細胞を、増分0.1度で28℃〜37℃の範囲を含む温度、及び増分0.1で6.0〜7.2のpH範囲を含んで増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を、増分0.1度で28℃〜37℃の範囲を含む温度、及び増分0.1で6.0〜7.2のpH範囲を含んで増殖させ、接種後であって、増分1日で0〜17日を含む範囲のある日に採集する。
【0075】
本発明の別の実施形態では、細胞を、約33℃〜約35℃の温度で、pHが約6.7〜約7.1 pH単位の培地中、約17日間増殖させる。本発明の別の実施形態では、細胞を、約36℃〜約38℃の温度で、pHが約6.8〜約7.5 pH単位の培地中で増殖させる。本発明の特定の実施形態では、細胞を、約34℃の温度で、pH値が約6.9 pH単位の培地中、約17日間増殖させる。本発明の別の特定の実施形態では、細胞を、34℃の温度で、pH値が6.9 pH単位の培地中、17日間増殖させる。
【0076】
4.2. 温度シフト-二相性培養条件
本発明の細胞培養の方法及びプロセスにおいては、培養操作中における1回又は複数の温度シフトと共に培養した細胞は、終期力価で測定した場合、多量で高品質の産物を産生することができる。本発明の方法に伴う多量で高品質のタンパク質産生は、培養操作を約8〜約17日の全実施時間の間、実施するか否かに関わらず、温度シフトを用いない、又は多くとも1回の温度シフトを用いる方法に比して得られる。その上、培養プロセス中における1回又は複数の温度シフトの結果、細胞は、標準又は初期の産生相を本質的に延長する期間の間、培養の中で維持することができる。標準又は初期の産生相は、通常約6〜17日である。高品質タンパク質の産生量増加、並びに細胞生存率の維持は、2回以上の温度シフトを伴う本培養法の延長産生期の間に実現される。
【0077】
本発明の一実施形態では、細胞は、約8日超、約9日超、約10日超、約11日超、約12日超、約13日超、約14日超、約15日超、約16日超又は約17日超の温度シフト期間の間、培養し得る。別の実施形態では、細胞は、約9〜約17日、約9〜約14日、若しくは約14〜約17日、又はそれより長い温度シフト期間の間、培養し得る。別の実施形態では、細胞は、約9〜約11、約11〜約3、約13〜約15、約15〜約17日又はそれより長い温度シフト期間の間、培養し得る。本発明の別の実施形態では、細胞は、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17日又はそれより長い温度シフト期間の間、培養し得る。
【0078】
他の実施形態では、細胞は、9〜17日、9〜14日、若しくは14〜17日、又はそれより長い温度シフト期間の間、培養し得る。別の実施形態では、細胞は、9〜11、11〜3、13〜15、15〜17日又はそれより長い温度シフト期間の間、培養し得る。本発明の別の実施形態では、細胞は、9、10、11、12、13、14、15、16、17日又はそれより長い温度シフト期間の間、培養し得る。
【0079】
細胞培養温度のシフトのタイミングは、培養容器内の細胞数の関数として評価し得る。幾つかの実施形態では、温度シフトは、細胞数が、約1×105細胞/mlから約1×106細胞/ml、約1×105細胞/mlから約5×105細胞/ml、約5×105細胞/mlから約1×106細胞/ml、又は約4×105細胞/mlから約8×105細胞/mlに達した後で起こる。他の実施形態では、温度シフトは、細胞数が、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10×105細胞/mlに達した後で起こる。特定の実施形態では、温度シフトは、細胞密度が、1×106細胞/mlに達したときに起こる。
【0080】
幾つかの実施形態では、温度シフトは、細胞数が、1×105細胞/mlから1×106細胞/ml、1×105細胞/mlから5×105細胞/ml、5×105細胞/mlから1×106細胞/ml、又は4×105細胞/mlから8×105細胞/mlに達した後で起こる。他の実施形態では、温度シフトは、細胞数が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10×105細胞/mlに達した後で起こる。
【0081】
一実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃又は約37℃から起こり得る。別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃又は約37℃まで起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、約28℃〜約37℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、約28℃〜約33℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、約32℃〜約34℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、約34℃〜約36℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。特定の実施形態では、細胞培養温度は、約34℃から約32℃へ変化する。
【0082】
一実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃又は37℃から起こり得る。別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃又は37℃まで起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、28℃〜37℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、28℃〜33℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、32℃〜34℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。本発明の別の実施形態では、1回又は複数の温度シフトは、34℃〜36℃の間にある増分0.1度の温度範囲まで、又はその温度範囲から起こり得る。特定の実施形態では、細胞培養温度は、34℃から32℃へ変化する。
【0083】
4.3. 播種密度の増加
細胞生存率、タンパク質産生、培養時間及び他の要因について細胞増殖条件を最適化する研究において、播種細胞密度を調節することができる。本発明のある実施形態では、細胞は、約1×105細胞/mlから約1×106細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、約1×105細胞/mlから約5×105細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、約5×105細胞/mlから約1×106細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、約4×105細胞/mlから約8×105細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、又は約10×105細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、約1〜約2、約2〜約3、約3〜約4、約4〜約5、約5〜約6、約6〜約7、約7〜約8、約8〜約9、約9〜約10×105細胞/mlの間の密度で播種される。
【0084】
本発明の他の実施形態では、細胞は、1×105細胞/mlから1×106細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、1×105細胞/mlから5×105細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、5×105細胞/mlから1×106細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、4×105細胞/mlから8×105細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10×105細胞/mlの密度で播種される。本発明の別の実施形態では、細胞は、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10×105細胞/mlの間の密度で播種される。
【0085】
4.4. 採集時pH変化
所望のタンパク質産物の脱アミド化を更に最小化する研究において、採集物質のpHを採集時に調節し得る。採集物質のpHは、塩基又は酸の添加でそれぞれ高く又は低く調節し得る。本発明のある実施形態では、採集物質のpHは低く調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは高く調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、約6.0〜約7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集物質のpHは、約7.0〜約7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集物質のpHは、約6.0〜約7.0、約6.1〜約7.0、約6.2〜約7.0、約6.3〜約7.0、約6.4〜約7.0、約6.5〜約7.0、約6.6〜約7.0、約6.7〜約7.0、約6.8〜約7.0、又は約6.9〜約7.0の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、約6.0〜約7.2、約6.0〜約7.0、約6.0〜約6.9、約6.0〜約6.8、約6.0〜約6.7、約6.0〜約6.6、約6.0〜約6.5、約6.0〜約6.4、約6.0〜約6.3、又は約6.0〜約6.2の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、約6.0〜約6.1、約6.1〜約6.2、約6.2〜約6.3、約6.3〜約6.4、約6.4〜約6.5、約6.5〜約6.6、約6.6〜約6.7、約6.7〜約6.8、約6.8〜約6.9、約6.9〜約7.0、約7.0〜約7.1、約7.1〜約7.2、約7.2〜約7.3、約7.3〜約7.4又は約7.4〜約7.5の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、又は約7.5の値に調節される。
【0086】
本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、6.0〜7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集物質のpHは、7.0〜7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集物質のpHは、6.0〜7.0、6.1〜7.0、6.2〜7.0、6.3〜7.0、6.4〜7.0、6.5〜7.0、6.6〜7.0、6.7〜7.0、6.8〜7.0、又は6.9〜7.0の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、6.0〜7.2、6.0〜7.0、6.0〜6.9、6.0〜6.8、6.0〜6.7、6.0〜6.6、6.0〜6.5、6.0〜6.4、6.0〜6.3、又は6.0〜6.2の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、6.0〜6.1、6.1〜6.2、6.2〜6.3、6.3〜6.4、6.4〜6.5、6.5〜6.6、6.6〜6.7、6.7〜6.8、6.8〜6.9、6.9〜7.0、7.0〜7.1、7.1〜7.2、7.2〜7.3、7.3〜7.4又は7.4〜7.5の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集物質のpHは、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、又は7.5の値に調節される。
【0087】
4.5. 採集後ホールドpH変化
産生及び精製プロセスの間に、所望のタンパク質産物を有する培地の採集と、精製プロセスとの間にホールドステップが存在してもよい。このステップは、「採集後ホールド」ステップと呼ぶことも多い。採集後ホールドステップの期間は、細胞培養の数時間後から数日後までの任意の時間とし得る。本発明の一実施形態では、採集後ホールドステップは、0〜約21日、又はそれより長期間でもよい。
【0088】
所望のタンパク質産物の脱アミド化を最小化する研究において、採集後ホールド物質のpHは、採集後の任意の時間に調節し得る。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、採集後の任意の時間に調節される。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、採集後の0〜約21日に調節し得る。採集後ホールド物質のpHは、塩基又は酸の添加でそれぞれ高く又は低く調節し得る。本発明のある実施形態では、採集後ホールド物質のpHは低く調節される。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは高く調節される。
【0089】
本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、約6.0〜約7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、約7.0〜約7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、約6.0〜約7.0、約6.1〜約7.0、約6.2〜約7.0、約6.3〜約7.0、約6.4〜約7.0、約6.5〜約7.0、約6.6〜約7.0、約6.7〜約7.0、約6.8〜約7.0、又は約6.9〜約7.0の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、約6.0〜約7.2、約6.0〜約7.0、約6.0〜約6.9、約6.0〜約6.8、約6.0〜約6.7、約6.0〜約6.6、約6.0〜約6.5、約6.0〜約6.4、約6.0〜約6.3、又は約6.0〜約6.2の値に調節される。
【0090】
本発明の別の実施形態では採集後ホールド物質のpHは、6.0〜7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、7.0〜7.5の値に調節される。本発明の一実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、6.0〜7.0、6.1〜7.0、6.2〜7.0、6.3〜7.0、6.4〜7.0、6.5〜7.0、6.6〜7.0、6.7〜7.0、6.8〜7.0、又は6.9〜7.0の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、6.0〜7.2、6.0〜7.0、6.0〜6.9、6.0〜6.8、6.0〜6.7、6.0〜6.6、6.0〜6.5、6.0〜6.4、6.0〜6.3、又は6.0〜6.2の値に調節される。
【0091】
本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、約6.0〜約6.1、6.1〜約6.2、約6.2〜約6.3、約6.3〜約6.4、約6.4〜約6.5、約6.5〜約6.6、約6.6〜約6.7、約6.7〜約6.8、約6.8〜約6.9、約6.9〜約7.0、約7.0〜約7.1、約7.1〜約7.2、約7.2〜約7.3、約7.3〜約7.4又は約7.4〜約7.5の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、又は約7.5の値に調節される。
【0092】
本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、6.0〜6.1、6.1〜6.2、6.2〜6.3、6.3〜6.4、6.4〜6.5、6.5〜6.6、6.6〜6.7、6.7〜6.8、6.8〜6.9、6.9〜7.0、7.0〜7.1、7.1〜7.2、7.2〜7.3、7.3〜7.4又は7.4〜7.5の値に調節される。本発明の別の実施形態では、採集後ホールド物質のpHは、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、又は7.5の値に調節される。
【0093】
本発明のある実施形態では、細胞培養温度が調節される。別の実施形態では、細胞培養温度が調節され、培地のpHが調節される。別の実施形態では、細胞培養温度が調節され、培地のpHが調節され、細胞培養の操作時間が調節される。本発明の別の実施形態では、上記の細胞培養パラメーターのいずれでも、同時に操作することがてきる。
【0094】
4.6. 抗体の精製
本発明のペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質を、組換え発現により産生した後、それを、当技術分野で公知の任意のタンパク質精製法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインAの後に特異抗原に対するアフィニティー、及びサイズ分離のカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、又はタンパク質精製の他の任意の標準技法によって精製し得る。
【0095】
組換え技法を用いた際、抗体を、細胞内に産生させるか、又は培地中に直接分泌させることができる。抗体が細胞内に産生される場合、第1ステップとして、宿主細胞、溶解断片のいずれかである粒子状屑を、例えば、遠心分離又は限外濾過により除去する。粒子状屑は、遠心分離により除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合、このような発現系の上清は、一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AMICON又はMILLIPORE Pellicon(登録商標)限外濾過ユニットを用いて先ず濃縮する。同様に、細胞屑は、タンジェンシャルフロー中空繊維精密濾過(TFF)によって除去することができる。得られる調整済培地(CM)は、更なる精製に供する。タンパク質分解を阻害するために、上記のステップのいずれかにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を含めてもよく、偶然生じた汚染物の増殖を防止するために、抗生物質を含めてもよい。
【0096】
細胞から調製した抗体組成物は、少なくとも一つの精製ステップに供する。適切な精製ステップの例には、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオンクロマトグラフィー、陰イオンクロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。親和性リガンドとしてのプロテインAの適性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に使用することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 [1983])。プロテインGは、全てのマウスイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 [1986])。アフィニティーリガンドが結合しているマトリックスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースで実現できる流速より速く、処理時間をより短くすることを可能にする。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈澱、逆相HPLC、シリカを用いるクロマトグラフィー、ヘパリンSepharoseTMを用いたクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラムなど)、等電点電気泳動、SDS-PAGE及び硫安塩析などの他のタンパク質精製技法も、回収しようとする抗体に応じて利用可能である。
【0097】
任意の予備精製ステップ(複数でもよい)の後、対象抗体及び汚染物(複数も)を含む混合物は、ウィルス不活化ステップに供する。精製しようとする抗体組成物は、前の精製ステップの緩衝液中に存在することもあるだろう。しかし、ウィルス不活化ステップの前に、抗体組成物に緩衝剤を添加することが必要な場合もある。多くの緩衝剤が、利用可能であり、慣用的な実験により選択することができる。精製しようとする抗体及び少なくとも1種の汚染物(ウィルス粒子)を含む混合物のpHは、開始時のpHに応じて、酸又は塩基のいずれかを用いて約2.5〜4.5のpHに調節され、室温で60〜75分間、慣用的にインキュベートを行う。
【0098】
上記混合物は、イオン交換カラムに投入し得る。イオン交換クロマトグラフィーは、試料中のタンパク質と選定樹脂上に固定化した電荷との電荷-電荷相互作用に依拠している。イオン交換クロマトグラフィーは、正荷電イオンが負荷電樹脂に結合する陽イオン交換クロマトグラフィーと、結合性イオンが負で、固定化官能基が正である陰イオン交換クロマトグラフィーとに細分することができる。溶質が結合した後、カラムを洗浄することにより、低イオン強度とすべき開始緩衝液中で平衡化させ、次いで、溶出液のイオン強度を漸増させる第2緩衝液の勾配を用いて、結合分子を溶離する。あるいは、相互作用を起こさないと見込まれる電荷をタンパク質又はマトリックスに付与するように、溶出緩衝液のpHを改変することができ、対象分子は樹脂から溶出する。
【0099】
本発明のある種の実施形態では、採集物質が陽イオン交換カラムに投入される。適切な陽イオン交換樹脂の非限定例は、各種の供給源のために商業的に利用できるHS50樹脂である。適切な陽イオン交換樹脂の別の非限定例は、Fractogel(登録商標)EMD媒体(Merck KGa)である。
【0100】
クロマトグラフィーカラムに投入される物質量は、完全な物質の効率的回収に影響し得る。より具体的には、一部のカラムは、インタクトな種と脱アミド化種との分離が重複し、非効率的回収を起こす程度まで、過剰投入されることがある。この問題を緩和するには、投入物質のタンパク質濃度(タンパク質投入)を最適化する必要があると理解されている。したがって、幾つかの実施形態では、タンパク質投入濃度が、100mg/ml未満、75mg/ml未満、50mg/ml未満、25mg/ml未満、20mg/ml未満又は15mg/ml未満である。他の実施形態では、タンパク質投入濃度が、約5mg/ml〜約15mg/ml、約10mg/ml〜約20mg/ml、約15mg/ml〜約50mg/ml、約20mg/ml〜約50mg/ml、約25mg/ml〜約50mg/ml、約30mg/ml〜約50mg/ml、又は約50mg/ml〜約100mg/mlである。特定の実施形態では、タンパク質投入濃度が15mg/ml以下である。更に別の特定の実施形態では、タンパク質投入濃度が50mg/ml以下である。
【0101】
採集物質の投入後、投入物質中に存在する不純物の多くを除去するために、一連の洗浄を行う必要があると十分に理解されている。洗浄ステップは、特定の各用途について最適化する必要があろう。調節できるパラメーターの幾つかは、緩衝剤選定、pH、重量モル浸透圧濃度、及び界面活性剤(ポリソルベート80など)濃度である。より具体的には、重量モル浸透圧濃度は、それだけに限らないが、NaClを含めた溶質量を増加させることにより、増加させることができる。溶質濃度は、所望の産物の精製を補助するために、洗浄緩衝液中0mM〜2Mまで調節することができる。本発明の一実施形態では、洗浄のステップ数は、所望の産物を精製するために、1、2、3、4、5又はそれより多いステップに亘る。本発明の別の実施形態では、緩衝剤選定が、所望の産物の精製を補助するために調節される。例示的な緩衝剤には、それだけに限らないが、リン酸ナトリウム、HEPES、Tris、リン酸カリウム又はリン酸ナトリウムが挙げられる。本発明の別の実施形態では、所望の産物の精製を補助するために、pHが調節される。本発明の別の実施形態では、所望の産物の精製を補助するために、界面活性剤の濃度が調節される。本発明の別の実施形態では、所望の産物の精製を補助するために、洗浄緩衝液の重量モル浸透圧濃度が調節される。別の実施形態では、洗浄緩衝液中の溶質濃度は、約0mM〜約2M、約0mM〜約1M、約0mM〜約500mM、又は約0mM〜約100mMの範囲にある。本発明の別の実施形態では、洗浄緩衝液中の溶質濃度は、約5mM〜約500mMの範囲にある。本発明の別の実施形態では、洗浄緩衝液中の溶質濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、又は約50mMである。本発明の別の実施形態では、洗浄緩衝液は、緩衝剤としてリン酸ナトリウム及び調節性溶質剤として塩化ナトリウムを含む。本発明の別の実施形態は、溶質勾配の増加により、陽イオン交換カラムから所望の産物を溶出させることを含む。
【0102】
本発明のある実施形態では、洗浄緩衝液中のNaCl濃度は、約0mM〜約100mMの範囲にある。別の実施形態では、洗浄緩衝液中のNaCl濃度は、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、又は約50mMである。別の実施形態では、洗浄緩衝液中のNaCl濃度は35mMである。特定の実施形態では、洗浄緩衝液中のNaCl濃度は30mMである。
【0103】
ある種の実施形態では、混合物をHCICカラムに投入し得る。HCICカラムは通常、疎水性リガンドを連結している基材マトリックス(例えば、架橋したセルロース又は合成コポリマー材料)を含む。多くのHCICカラムが商業的に入手可能である。非限定例は、MEP Hypercel(登録商標)(Pall, New York)である。HCICは、塩濃度ではなくpHに基づいて制御される。抗体溶出は、低イオン強度で行われるため、捕捉の後にイオン交換クロマトグラフィーが行われると見込まれる用途では、十分なダイアフィルトレーションの必要性がなくなる。プロテインA吸着剤を用いたクロマトグラフィーと比較して、HCICカラムからの溶出は、相対的に温和な条件下で実現される(pH4.0)。このような条件下では、抗体分子も正電荷を保持する。静電反発が誘発され、抗体は脱着される。
【0104】
抗体は、通常はローディングバッファーと同じ溶出緩衝液を用いてHCICカラムから溶出される。溶出緩衝液は、慣用的な実験を用いて選択することができる。溶出緩衝液のpHは、2.5〜6.5の間にあり、低い塩濃度を有する(即ち、約0.25M未満の塩)。所望の産物は、カラムにさほど結合しないフロースルー分画中に回収し得るので、対象抗体を溶出させるために、塩勾配を使用する必要がないことが、以前に発見されている。
【0105】
4.7. さらなる実施形態
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものである、上記方法である。更なる実施形態では、該抗体は、グリシン、セリン、スレオニン又はアスパラギン酸残基などの脱アミド化誘発残基に先行して、アスパラギン残基を含有する。更なる実施形態では、該抗体は、アスパラギンの後に脱アミド化誘発残基を含有し、両者は、該抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2又はVLCDR3領域の少なくとも一つに位置している。更に別の更なる実施形態では、該抗体は、該抗体のVHCDR2領域内に位置する、アスパラギンの後の脱アミド化誘発残基を含有する。更なる特定の実施形態では、該抗体は13H5である。他の実施形態では、該抗体は、13H7又は7H9である。
【0106】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、前記抗体の脱アミド化プロフィールが、対照の脱アミド化プロフィールと比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%又は約10%低減する方法である。
【0107】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、30〜約37℃からなる範囲の温度で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む方法である。更なる実施形態では、抗体産生細胞を34℃で増殖させる。更なる実施形態では、抗体産生細胞を、6.0〜約7.2 pH単位からなる範囲のpHの培地中で増殖させる。更なる実施形態では、抗体産生細胞を、6.9 pH単位のpHの培地中で増殖させる。
【0108】
本発明のある実施形態は、アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、抗体産生細胞を二相培養で増殖させる方法である。
【0109】
本発明のある実施形態は、アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、採集時に培地のpH変化を含む方法である。更なる実施形態では、pHは、採集時に5.0〜約7.0 pH単位からなる範囲に調節する。更なる実施形態では、pHは、採集時に6.9 pH単位に調節する。
【0110】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、pH変化を含んだ、細胞採集後のホールドステップを含む方法である。更なる実施形態では、pHは、5.0〜約7.0 pH単位からなる範囲に調節する。更なる実施形態では、pHは、採集後ホールドステップ中に6.0 pH単位に調節する。
【0111】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、希釈ステップを含む方法である。更なる実施形態では、希釈ステップは、ライン内希釈又は槽内希釈ステップである。更なる実施形態では、該方法は限外濾過ステップを含まない。
【0112】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、17日未満の滞留時間を含む方法である。
【0113】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、該抗体がインターフェロンαに特異的である方法である。更なる実施形態では、該抗体が13H5である。
【0114】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、以下のステップ、即ち、約33℃〜約35℃の温度で増殖させた細胞から抗体を産生するステップであって、細胞を約6.7〜約7.1 pH単位のpH値を有する培地中で増殖させるステップ、及び細胞の培養に15〜19日を要するステップを含む方法である。本発明の更なる実施形態では、細胞の培養に17日を要する。更なる実施形態では、該抗体が13H5である。
【0115】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した安定な抗IFNαモノクローナル抗体組成物であって、該抗体が、前記抗体の脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すアミノ酸配列を含有する、抗体組成物である。更なる実施形態では、該抗体は、アスパラギン残基に隣接して、脱アミド化誘発残基として、グリシン、セリン、スレオニン又はアスパラギン酸残基を含有する。更なる実施形態では、アスパラギン及び脱アミド化誘発残基は、該抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2又はVLCDR3領域の少なくとも一つに位置している。更なる実施形態では、アスパラギン及び脱アミド化誘発残基は、該抗体のVHCDR2中に位置する。更なる実施形態では、該抗体は13H5である。
【0116】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した安定な抗IFNαモノクローナル抗体組成物であって、該抗体が、前記抗体の脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すアミノ酸配列を含有し、抗体の脱アミド化プロフィールが、対照の脱アミド化プロフィールと比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%又は約10%低減する、抗体組成物である。更なる実施形態では、該抗体は抗体フラグメントである。更なる実施形態では、該抗体フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント及びscFvからなる群から選択される。
【0117】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが低減した安定な抗IFNαモノクローナル抗体組成物であって、該抗体が、前記抗体の脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すアミノ酸配列を含有し、該抗体組成物が、約34℃の温度で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、抗体産生細胞が約6.9pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップを含むプロセスで産生される、抗体組成物である。更なる実施形態では、該抗体は13H5である。
【0118】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールの低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示し、約34℃で抗体産生細胞を増殖させ、抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させることを含むプロセスで産生される、抗体組成物である。更なる実施形態では、該抗体は13H5である。
【0119】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールの低減した抗体組成物であって、該抗体が、他の場合には脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示し、約33℃〜約35℃で抗体産生細胞を増殖させ、該細胞を約6.7〜約7.1単位のpHを有する培地中で増殖させ、約15〜約19日間、抗体産生細胞を培養することを含むプロセスで産生される、抗体組成物である。更なる実施形態では、該細胞を34℃で増殖させる。更なる実施形態では、該細胞を6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させる。更なる実施形態では、該細胞を17日間培養する。更なる実施形態では、該抗体は13H5である。
【0120】
本発明のある実施形態は、脱アミド化プロフィールが増加する傾向を示す抗体を精製する方法であって、該抗体の脱アミド化種を除去するために、精製中に洗浄ステップを含む方法である。更なる実施形態では、洗浄ステップは、約0mM〜100mMの塩濃度を有する緩衝液を含む。更なる実施形態では、塩濃度が35mMである。更なる実施形態では、該抗体は13H5である。
【0121】
4.7. 抗体
4.7.1. 抗体の種類
本発明の抗体には、それだけに限らないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え産生抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fv(scFv)(二重特異性scFvを含む)、BiTE(登録商標)分子、一本鎖抗体Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド連結Fv(dsFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに前記抗体いずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。特に、本発明の抗体には、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫活性を有する部分が含まれる。更に、本発明の抗体は任意のイソタイプでよい。一実施形態では、本発明の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4イソタイプである。本発明の抗体は、可変及び定常領域を含む全長抗体でもよく、或いは一本鎖抗体又はFab若しくはFab'2フラグメントなどの、全長抗体の抗原結合フラグメントでもよい。
【0122】
他の実施形態では、本発明は、サイトトキシン又は放射性同位体などの治療剤と連結した、本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫コンジュゲートも提供する。ある種の実施形態では、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合部分とは結合特異性の異なる第2の機能部分と連結した、前記抗体又はその抗原結合部分を含む二重特異性分子も提供する。
【0123】
本発明の抗体若しくはその抗原結合部分、又は免疫コンジュゲート若しくは二重特異性分子と、医薬として許容可能な担体とを含む組成物も、提供される。
【0124】
4.7.2. IFNαに特異的な抗体
特定の実施形態では、本発明は、IFNαに特異的な抗体を提供する。ある種の実施形態では、本発明の抗IFNα抗体は、13H5(図1A、B)、13H7(図2A、B)及び7H9(図3A、B)を含む。他の実施形態では、本発明の抗IFNα抗体は、全て"Interferon alpha antibodies and their uses"と題する公開文書のWO2005/059106号及びUS2007/0014724及び米国出願第11/009,410号においても例示されている。
【0125】
本発明のある実施形態では、抗インターフェロンα抗体は、インターフェロンαのサブタイプ:α1、α2、α4、α5、α8、α10及びα21に特異的である。他の実施形態では、抗インターフェロンα抗体は、α1、α2、α4、α5、α8、α10及びα21からなる群から選択される、インターフェロンαの少なくとも一つのサブタイプに特異的である。他の実施形態では、抗インターフェロンα抗体は、α1、α2、α4、α5、α8、α10及びα21からなる群から選択される、インターフェロンαの少なくとも二つ、少なくとも三つ、少なくとも四つ、少なくとも五つ、少なくとも六つ、又は少なくとも七つのサブタイプに特異的である。別の実施形態では、抗インターフェロンα抗体は、α1、α2、α4、α5、α8、α10及びα21からなる群から選択される、インターフェロンαの少なくとも一つのサブタイプには特異的でない。
【0126】
4.7.3. 抗体コンジュゲート
本発明はまた、それだけには限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣剤、合成薬、無機分子、及び有機分子を含めた1つ又は複数の部分とコンジュゲート又は融合した抗体又はそのフラグメントの使用も包含する。
【0127】
本発明は、融合タンパク質を作製するために、異種タンパク質又はポリペプチド(若しくはその断片、例えば少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個若しくは100個のアミノ酸のポリペプチド)と、組換えによって融合した又は化学的にコンジュゲートした(共有及び非共有コンジュゲーションをどちらも含む)抗体又はそのフラグメントの使用を包含する。融合は必ずしも直接である必要はなく、リンカー配列を介して起こり得る。たとえば、in vitro又はin vivoのどちらかで、抗体を、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体と融合又はコンジュゲーションさせることによって、抗体を、特定の細胞種を異種ポリペプチドの標的とするために用い得る。また、当分野で知られている方法を用いて、異種ポリペプチドと融合又はコンジュゲートした抗体をin vitro免疫アッセイ及び精製方法に用い得る。たとえば、その全体で参考として組み込まれている、国際公開公報WO93/21232号;欧州特許EP439,095号;Naramura他、1994、Immunol. Lett. 39:91-99;米国特許第5,474,981号;Gillies他、1992、PNAS 89:1428-1432;及びFell他、1991、J. Immunol. 146:2446-2452を参照されたい。
【0128】
本発明には、抗体フラグメントと融合又はコンジュゲートした異種タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを含む組成物がさらに含まれる。たとえば、異種ポリペプチドは、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR、VL CDR、又はそのフラグメントと融合又はコンジュゲートしていてよい。ポリペプチドを抗体の一部分と融合又はコンジュゲーションさせる方法は、当分野で周知である。たとえば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、及び第5,112,946号;欧州特許EP307,434号及びEP367,166号;国際公開公報WO96/04388号及びWO91/06570号;Ashkenazi他、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539; Zheng他、1995、J. Immunol. 154:5590-5600;及びVil他、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341を参照されたい(前記参考文献はその全体で参考として組み込まれている)。
【0129】
さらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、及び/又はコドンシャフリング(「DNAシャフリング」と総称される)の技術によって作製し得る。DNAシャフリングは、本発明の抗体又はそのフラグメントの活性を変更するために用い得る(たとえば、より高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体又はそのフラグメント)。一般に、米国特許第5,605,793号;第5,811,238号;第5,830,721号;第5,834,252号;及び第5,837,458号、並びにPatten他、1997、Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33; Harayama、1998、Trends Biotechnol. 16(2):76-82; Hansson他、1999、J. Mol. Biol. 287:265-76;並びにLorenzo及びBlasco、1998、Biotechniques 24(2):308-313を参照されたい(これらの特許及び出版物のそれぞれは、その全体が参考として本明細書中に組み込まれている)。抗体若しくはそのフラグメント、又はコードされている抗体若しくはそのフラグメントは、組換えの前に、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入又は他の方法によるランダム突然変異誘発に供することによって変更し得る。抗体又は抗体フラグメント(その一部がIFNαに特異的に結合する)をコードしているポリヌクレオチドの1つ又は複数の部分を、1つ又は複数の異種分子の1つ又は複数の構成成分、モチーフ、セクション、部分、ドメイン、断片などと組み換え得る。
【0130】
さらに、精製を容易にするために、抗体又はそのフラグメントをペプチドなどのマーカー配列と融合することができる。他の実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、多くの市販されているもののうち、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN, Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)中に提供されるタグなどのヘキサヒスチジンペプチドである。Gentz他、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載のように、たとえば、ヘキサヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグには、それだけには限定されないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilson他、1984、Cell 37:767)及び「flag」タグが含まれる。
【0131】
他の実施形態では、本発明の抗体若しくはそのフラグメント、その類似体又は誘導体は、診断剤又は検出可能な薬剤とコンジュゲートさせることができる。そのような抗体は、特定の治療の有効性の決定など、臨床試験手順の一部として炎症性疾患の発生又は進行をモニター又は予後診断するために有用である可能性がある。そのような診断及び検出は、抗体を、それだけには限定されないが、それだけには限定されないが西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼなどの様々な酵素;それだけには限定されないがストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンなどの補欠分子族;それだけには限定されないがウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリスリンなどの蛍光物質;それだけには限定されないがルミノールなどの発光性物質;それだけには限定されないがルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンなどの生物発光性物質;それだけには限定されないがヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、及びテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、及び117Tinなどの放射性物質;様々な陽電子放射断層撮影、非放射性常磁性金属イオン、及び分子放射標識した又は特定の放射性同位体とコンジュゲートさせた分子を用いた陽電子放出金属を含めた、検出可能な物質とカップリングさせることによって、達成することができる。
【0132】
本発明は、さらに、治療部分にコンジュゲートさせた抗体又はそのフラグメントの使用を包含する。抗体又はそのフラグメントは、治療部分、例えば、細胞毒素、例えば、細胞分裂停止剤若しくは細胞破壊剤、治療剤、又は放射性金属イオン、例えばα放射体にコンジュゲートさせうる。細胞毒素又は細胞傷害剤には、細胞に有害な任意の薬剤が含まれる。治療部分には、それだけには限らないが以下のものが含まれる:代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン(decarbazine));アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロランブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスフアミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、及びシスプラチン);アンスラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名ダウノマイシン)及びドキソルビシン);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC));アウリスタチン分子(例えば、アウリスタチンPHE、ブリオスタチン1、及びソラスタチン10(Woykeら, Antimicrob. Agents Chemother. 46:3802-8 (2002)、Woykeら, Antimicrob. Agents Chemother. 45:3580-4 (2001)、Mohammadら, Anticancer Drugs 12:735-40 (2001)、Wallら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:76-80 (1999)、Mohammadら, Int. J. Oncol. 15:367-72 (1999)を参照されたい。それらの全てを参照により本明細書に組み込む);ホルモン(例えば、グルココルチコイド、プロゲスチン、アンドロゲン、及びエストロゲン)、DNA修復酵素阻害薬(例えば、エトポシド又はトポテカン)、キナーゼ阻害薬[例えば、化合物ST1571、メシル酸イマチニブ(Kantarjianら, Clin Cancer Res. 8(7):2167-76 (2002));細胞傷害性薬剤(例えば、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにその類似体又は同族体)、並びに以下の特許に開示されているような化合物:米国特許第6,245,759号、同第6,399,633号、同第6,383,790号、同第6,335,156号、同第6,271,242号、同第6,242,196号、同第6,218,410号、同第6,218,372号、同第6,057,300号、同第6,034,053号、同第5,985,877号、同第5,958,769号、同第5,925,376号、同第5,922,844号、同第5,911,995号、同第5,872,223号、同第5,863,904号、同第5,840,745号、同第5,728,868号、同第5,648,239号、同第5,587,459号);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬(例えば、R115777、BMS-214662、及び例えば以下の特許により開示されているような化合物:米国特許第6,458,935号、同第6,451,812号、同第6,440,974号、同第6,436,960号、同第6,432,959号、同第6,420,387号、同第6,414,145号、同第6,410,541号、同第6,410,539号、同第6,403,581号、同第6,399,615号、同第6,387,905号、同第6,372,747号、同第6,369,034号、同第6,362,188号、同第6,342,765号、同第6,342,487号、同第6,300,501号、同第6,268,363号、同第6,265,422号、同第6,248,756号、同第6,239,140号、同第6,232,338号、同第6,228,865号、同第6,228,856号、同第6,225,322号、同第6,218,406号、同第6,211,193号、同第6,187,786号、同第6,169,096号、同第6,159,984号、同第6,143,766号、同第6,133,303号、同第6,127,366号、同第6,124,465号、同第6,124,295号、同第6,103,723号、同第6,093,737号、同第6,090,948号、同第6,080,870号、同第6,077,853号、同第6,071,935号、同第6,066,738号、同第6,063,930号、同第6,054,466号、同第6,051,582号、同第6,051,574号、及び同第6,040,305号);トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、カンプトテシン;イリノテカン;SN-38;トポテカン;9-アミノカンプトテシン;GG-211(GI 147211);DX-8951f;IST-622;ルビテカン;ピラゾロアクリジン;XR-5000;サイントピン;UCE6;UCE1022;TAN-1518A;TAN-1518B;KT6006;KT6528;ED-110;NB-506;ED-110;NB-506;及びレベッカマイシン);ブルガレイン(bulgarein);DNAマイナーグルーブバインダー(minor groove binder)、例えばヘキスト(Hoescht)色素33342及びヘキスト色素33258;ニチジン;ファガロニン(fagaronine);エピベルベリン(epiberberine);コラリン(coralyne);β-ラパコン;BC-4-1;ビスホスホン酸塩(例えば、アレンドロン酸、シマドロント(cimadronte)、クロドロン酸塩、チルドロン酸塩、エチドロン酸塩、イバンドロン酸塩、ネリドロン酸塩、オルパンドロン酸塩、リセドロン酸塩、ピリドロン酸塩、パミドロン酸塩、ゾレンドロン酸塩)HMG-CoA還元酵素阻害薬、(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、スタチン、セリバスタチン、レスコール、ルピター(lupitor)、ロスバスタチン及びアトルバスタチン);並びにそれらの医薬として許容される塩、溶媒和物、包接化合物、及びプロドラッグ(例えば、Rothenberg, M. L., Annals of Oncology 8:837-855(1997);及びMoreau, P.ら、J. Med. Chem. 41:1631-1640(1998)を参照のこと);アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,277,832号、同第5,998,596号、同第5,885,834号、同第5,734,033号、及び同第5,618,709号に開示されているような化合物);免疫調節剤(例えば抗体及びサイトカイン)、抗体、アデノシン脱アミノ酵素阻害薬(例えば、リン酸フルダラビン及び2-クロロデオキシアデノシン)。例としては、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、EB、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体又は同族体が挙げられる。
【0133】
治療剤としては、それだけには限らないが以下のものが含まれる:代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン);アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスフアミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、及びシスプラチン);アンスラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名ダウノマイシン)及びドキソルビシン);抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC));アウリスタチン分子(例えば、アウリスタチンPHE、ブリオスタチン1、及びソラスタチン10;Woykeら, Antimicrob. Agents Chemother. 46:3802-8 (2002)、Woykeら, Antimicrob. Agents Chemother. 45:3580-4 (2001)、Mohammadら, Anticancer Drugs 12:735-40 (2001)、Wallら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:76-80 (1999)、Mohammadら, Int. J. Oncol. 15:367-72 (1999)を参照されたい。それらの全てを参照により本明細書に組み込む);抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)、ホルモン(例えば、グルココルチコイド、プロゲスタチン、アンドロゲン、及びエストロゲン)、DNA修復酵素阻害薬(例えば、エトポシド又はトポテカン)、キナーゼ阻害薬(例えば、化合物ST1571、メシル酸イマチニブ(Kantarjianら, Clin Cancer Res. 8(7):2167-76 (2002));並びに以下の特許に開示されているような化合物:米国特許第6,245,759号、同第6,399,633号、同第6,383,790号、同第6,335,156号、同第6,271,242号、同第6,242,196号、同第6,218,410号、同第6,218,372号、同第6,057,300号、同第6,034,053号、同第5,985,877号、同第5,958,769号、同第5,925,376号、同第5,922,844号、同第5,911,995号、同第5,872,223号、同第5,863,904号、同第5,840,745号、同第5,728,868号、同第5,648,239号、同第5,587,459号);ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬(例えば、R115777、BMS-214662、及び例えば以下の特許により開示されているような化合物:米国特許第6,458,935号、同第6,451,812号、同第6,440,974号、同第6,436,960号、同第6,432,959号、同第6,420,387号、同第6,414,145号、同第6,410,541号、同第6,410,539号、同第6,403,581号、同第6,399,615号、同第6,387,905号、同第6,372,747号、同第6,369,034号、同第6,362,188号、同第6,342,765号、同第6,342,487号、同第6,300,501号、同第6,268,363号、同第6,265,422号、同第6,248,756号、同第6,239,140号、同第6,232,338号、同第6,228,865号、同第6,228,856号、同第6,225,322号、同第6,218,406号、同第6,211,193号、同第6,187,786号、同第6,169,096号、同第6,159,984号、同第6,143,766号、同第6,133,303号、同第6,127,366号、同第6,124,465号、同第6,124,295号、同第6,103,723号、同第6,093,737号、同第6,090,948号、同第6,080,870号、同第6,077,853号、同第6,071,935号、同第6,066,738号、同第6,063,930号、同第6,054,466号、同第6,051,582号、同第6,051,574号、及び同第6,040,305号);トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、カンプトテシン;イリノテカン;SN-38;トポテカン;9-アミノカンプトテシン;GG-211(GI 147211);DX-8951f;IST-622;ルビテカン;ピラゾロアクリジン;XR-5000;サイントピン;UCE6;UCE1022;TAN-1518A;TAN-1518B;KT6006;KT6528;ED-110;NB-506;ED-110;NB-506;及びレベッカマイシン;ブルガレイン;DNAマイナーグルーブバインダー、例えばヘキスト色素33342及びヘキスト色素33258;ニチジン;ファガロニン;エピベルベリン;コラリン;β-ラパコン;BC-4-1;並びにそれらの医薬として許容される塩、溶媒和物、包接化合物、及びプロドラッグ(例えば、Rothenberg, M. L., Annals of Oncology 8:837-855(1997);及びMoreau, P.ら、J. Med. Chem. 41:1631-1640(1998)を参照のこと));アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、米国特許第6,277,832号、同第5,998,596号、同第5,885,834号、同第5,734,033号、及び同第5,618,709号に開示されているような化合物);免疫調節剤(例えば抗体及びサイトカイン)、抗体(例えば、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、カリケアマイシン(MYLOTARG(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN(登録商標))、及びトシツモマブ(BEXXAR(登録商標))、TNF阻害剤(アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))など)、アデノシン脱アミノ酵素阻害薬(例えば、リン酸フルダラビン及び2-クロロデオキシアデノシン)。
【0134】
さらに、抗体又はそのフラグメントは、所与の生物学的応答を改変する治療部分又は薬物部分(drug moiety)にコンジュゲートさせうる。治療部分又は薬物部分は、従来の化学療法剤に限定されるとは解釈されない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドでありうる。そのようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、コレラ毒素、又はジフテリア毒素などの毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲンアクチベーター、アポトーシス剤、例えば、TNF-α、TNF-β、AIM I(国際公開WO97/33899号を参照)、AIM II(国際公開WO97/34911号を参照)、Fasリガンド(Takahashiら, 1994, J. Immunol., 6:1567-1574)、及びVEGF(国際公開第99/23105号を参照)、血栓症剤又は抗血管形成剤、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン又は凝固経路成分(例えば、組織因子);又は生物学的応答調節物質、例えば、リンフォカイン(例えば、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、及び顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」))、増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、又は凝固剤(例えば、カルシウム、ビタミンK、組織因子、例えば、ただしそれらだけには限らないが、ハーゲマン因子(XII因子)、高分子量キニノゲン(HMWK)、プレカリクレイン(PK)、凝固タンパク質因子II(プロトロンビン)、V因子、XIIa因子、VIII因子、XIIIa因子、XI因子、XIa因子、IX因子、IXa因子、X因子、リン脂質など、フィブリンモノマーである、フィブリノーゲンα及びβ鎖由来の線維素ペプチドA及びB)が含まれる。
【0135】
さらに、抗体は、治療部分、例えば、放射性金属イオン、例えば213Biなどのα放射体、又はそれだけには限らないが、131In、131L、131Y、131Ho、131Smを含む放射性金属イオンと、ポリペプチドをコンジュゲートさせるのに有用な大環状キレート剤にコンジュゲートさせることができる。ある実施形態では、大環状キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸(DOTA)であり、リンカー分子を介してこれを抗体に結合することができる。そのようなリンカー分子は、当技術分野で公知あり、Denardoら, 1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90;Petersonら, 1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7;及びZimmermanら, 1999, Nucl. Med. Biol. 26(8):943-50に記載されている。各々のその全体を参照により組み込む。
【0136】
治療部分と抗体とをコンジュゲートさせる技術はよく知られており、例えば、Arnonら,「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy(癌治療における薬物免疫標的用モノクローナル抗体)」, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら,「Antibodies For Drug Delivery(薬物送達用抗体)」, Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら(編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe,「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review(癌治療における細胞傷害性薬剤の抗体担体:概説)」, Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら(編), pp. 475-506 (1985);「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy(癌治療における放射標識抗体の分析、結果、及び治療的使用の将来の展望)」, Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、及びThorpeら, 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照されたい。
【0137】
あるいは、抗体は、米国特許第4,676,980号でSegalが記載したように、第2の抗体にコンジュゲートさせて、抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0138】
被験体において、特定の障害に対する所望の予防又は治療効果を実現するために、IFNαに特異的に結合する抗体又はそのフラグメントにコンジュゲートする治療部分又は薬物を選択すべきである。臨床医又は他の医療従事者は、どの治療部分又は薬物と、IFNαに特異的に結合する抗体又はそのフラグメントとをコンジュゲートさせるか決める際には、疾患の性質、疾患の重症性、及び被験体の状態を考慮すべきである。
【0139】
抗体は、イムノアッセイ又は標的抗原の精製に特に有用である固相担体にも取り付けうる。そのような固相担体には、それだけには限らないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンが含まれる。
【0140】
4.7.4. 抗体の産生方法
抗体又はその抗体フラグメントは、抗体を合成するための当技術分野で公知の任意の方法によって、特に化学合成、又は組換え発現技術によって産生させることができる。
【0141】
IFNαに対するポリクローナル抗体は、当技術分野で公知の様々な手順によって製造することができる。例えば、IFNαに特異的なポリクローナル抗体を含む血清の生成を誘発するために、IFNα又はその免疫原性断片を、それだけには限らないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む様々な宿主動物に投与することができる。宿主の種に応じて免疫応答を増大させるために、様々なアジュバントを使用してよく、アジュバントには、それだけには限らないが、フロイント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル;表面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及び潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット-ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム・パルバム(corynebacterium parvum)が含まれる。そのようなアジュバントも当技術分野で公知である。
【0142】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術の使用を含む当技術分野で公知の多彩な技術、又はそれらの組合せを使用し調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、例えば、Harlowら, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版,1988);Hammerlingら, Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)(前記参照文献のそれら全体を参照により組み込む)に教示されているものを含むハイブリドーマ技術を使用し産生することができる。本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物クローン、原核生物クローン、又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、それを産生する方法は限定されない。
【0143】
ハイブリドーマ技術を使用する、特異的抗体を産生しスクリーニングする方法は、慣用的なものであり、当技術分野で公知である。簡単に説明すると、マウスは、IFNαにより免疫することができ、免疫応答が検出された後に、例えばそのマウス血清中にIFNαに特異的な抗体が検出された後に、マウス脾臓を採取し脾細胞を単離する。次いで、公知の技術によって、その脾細胞と、任意の好適な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手できる細胞系SP20由来細胞とを融合する。限界希釈法によって、ハイブリドーマを選択し、クローン化する。次いで、本発明のポリペプチドと結合することができる抗体を分泌する細胞について、当技術分野で公知の方法によってハイブリドーマクローンをアッセイする。陽性ハイブリドーマクローンによりマウスを免疫することによって、一般的に高レベルの抗体を含む腹水を得ることができる。
【0144】
従って、モノクローナル抗体は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養するステップであって、該ハイブリドーマを、IFNαで免疫したマウスから単離した脾細胞と骨髄腫細胞とを融合することによって生成し、次いでIFNαに結合できる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、融合から生じたハイブリドーマをスクリーニングすることによって作製することができる。
【0145】
特異的なIFNαエピトープを認識する抗体フラグメントは、当業者に公知の任意の技術によって産生しうる。例えば、本発明のFab及びF(ab')2フラグメントは、酵素、例えば、パパイン(Fabフラグメントを産生する)又はペプシン(F(ab')2フラグメントを産生する)を使用し、免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって産生しうる。F(ab')2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域、及び重鎖CH1ドメインを含む。さらに、本発明の抗体は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ方法を使用して生成することもできる。
【0146】
ファージディスプレイ法では、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に機能性抗体ドメインが提示される。特に、VH及びVLドメインをコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、ヒト又はマウスリンパ組織cDNAライブラリー)から増幅する。PCRによりVH及びVLドメインをコードするDNAとscFvリンカーとを組換え結合し、ファージミドベクター(例えばp CANTAB 6又はpComb 3 HSS)中にクローン化する。そのベクターを大腸菌中にエレクトロポレーションし、その大腸菌にヘルパーファージを感染させる。こうした方法で使用するファージは、典型的には、Fd及びM13を含む繊維状ファージであり、通常、VH及びVLドメインは、組換えによってファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIに融合される。対象のIFNαエピトープと結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて選択し同定することができ、例えば、標識抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕獲させた抗原を使用し、選択又は同定することができる。本発明の抗体を製造するために使用できるファージディスプレイ法の例には、以下に開示された方法などが含まれる:Brinkmanら, 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50;Amesら, 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleboroughら, 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958;Persicら, 1997, Gene 187:9-18;Burtonら, 1994, Advances in Immunology 57:191-280;国際出願PCT/GB91/O1134;国際公開WO90/02809号、WO91/10737号、WO92/01047号、WO92/18619号、WO93/11236号、WO95/15982号、WO95/20401号、及びWO97/13844号;及び米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号、及び同第5,969,108号。その各々について、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0147】
上記参照文献に記載されているように、ファージの選択後、ファージから抗体コード領域を単離し使用して、ヒト抗体を含む抗体全体、又は他の任意の所望する抗原結合フラグメントを生成し、そして例えば以下に記述するような哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主で発現させることができる。国際公開WO92/22324号;Mullinaxら, 1992, BioTechniques 12(6):864-869;Sawaiら, 1995, AJRI 34:26-34;及びBetterら, 1988, Science 240:1041-1043(前記参照文献のそれら全体を参照により組み込む)に開示されているような方法など、当技術分野で公知の方法を利用し、Fab、Fab'及びF(ab')2フラグメントを組換え産生する技術を使用することもできる。
【0148】
抗体全体を産生させるため、VH又はVLヌクレオチド配列、制限部位、及び制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローン中のVH又はVL配列を増幅することができる。当業者に公知のクローニング技術を使用し、PCR増幅したVHドメインを、VH定常領域、例えばヒトγ4定常領域を発現するベクターにクローン化することができ、PCR増幅したVLドメインは、VL定常領域、例えば、ヒトκ又はλ定常領域を発現するベクターにクローン化することができる。一実施形態において、VH又はVLドメインを発現するベクターは、EF-1αプロモーター、分泌シグナル、可変ドメインのクローニング部位、定常ドメイン、及びネオマイシンなどの選択マーカーを含みうる。VH及びVLドメインはまた、必要な定常領域を発現する一個のベクター中にクローン化してもよい。次いで、当業者に公知の技術を使用し、重鎖転換ベクター及び軽鎖転換ベクターを細胞系に共トランスフェクトして、例えばIgGなどの全長抗体を発現する細胞系で安定的又は一時的に産生させる。
【0149】
ヒトでの抗体のインビボ使用、及びインビトロ検出アッセイを含むいくつかの用途には、ヒト抗体又はキメラ抗体を使用するのが好ましい。完全ヒト抗体は、特にヒト被験体の治療的処置に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを使用する上記のファージディスプレイ方法を含む、当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。また、米国特許第4,444,887号、及び同第4,716,111号;及び国際公開WO98/46645号、WO98/50433号、WO98/24893号、WO98/16654号、WO96/34096号、WO96/33735号、及びWO91/10741号も参照されたい。その各々について、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0150】
ヒト抗体は、機能性内在性免疫グロブリンは発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子は発現できるトランスジェニックマウスを使用し産生することもできる。例えば、ヒト重鎖と軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、無作為に、又は相同組換えによってマウス胚性幹細胞中に導入しうる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、及び多様な領域は、ヒト重鎖と軽鎖遺伝子に加えてマウス胚性幹細胞に導入しうる。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、別々に、又は相同組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入と同時に非機能的なものにしうる。特に、JH領域のホモ接合型欠失によって、内在性抗体の産生が妨害される。改変された胚性幹細胞を増殖し、胚盤胞に微量注入してキメラマウスを作製する。次いで、そのキメラマウスを繁殖して、ヒト抗体を発現するホモ接合型子孫を生成する。通常の方法で、選択した抗原、例えば、本発明のポリペプチドの全て又は一部を用いてトランスジェニックマウスを免疫する。抗原を標的とするモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して免疫したトランスジェニックマウスから得ることができる。
【0151】
トランスジェニックマウスにより保持されているヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞の分化中に再構成し、続いてクラススイッチング及び体細胞変異を受ける。このようにして、そのような技術を使用し、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を産生することができる。ヒト抗体を生成するこの技術の概要については、Lonberg and Huszar(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65 93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生成するこの技術、並びにそのような抗体を生成するプロトコルの詳細な考察については、例えば、国際公開WO98/24893号、WO96/34096号、及びWO96/33735号;及び米国特許第5,413,923号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、及び同第5,939,598号を参照されたい。これらの特許のその全体を参照によりを本明細書に組み込む。さらに、メダレックス社(Princeton, N.J.)などの企業は、上記の技術に類似する技術を使用し、選択した抗原に対して生起されたヒト抗体を提供することに取り組むことができる。
【0152】
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。キメラ抗体を生成する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら, 1986, BioTechniques 4:214;Gilliesら, 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;及び米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、同第4,816,397号、及び同第6,311,415号を参照されたい。これらのその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0153】
ヒト化抗体とは、所定の抗原に結合することができ、かつ実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域、及び実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体若しくはその変異体又はそのフラグメントである。ヒト化抗体は、少なくとも一個の、典型的には2個の可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab')2、Fabc、Fv)の全てを実質的に含み、その際、CDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し(ドナー抗体)、そしてフレームワーク領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。他の実施形態では、ヒト化抗体は、さらに免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれを含む。通常は、抗体は、軽鎖及び少なくとも重鎖可変ドメインを含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域を含みうる。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のイソタイプから選択することができる。通常、定常ドメインは、ヒト化抗体が細胞傷害活性を示し、クラスが典型的にはIgG1であるのが望ましい補体結合定常ドメインである。そのような細胞傷害活性を望まない場合、定常ドメインは、IgG2クラスのものであってよい。ヒト化抗体は、一個を超えるクラス又はイソタイプからの配列を含んでよく、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択することは、当技術分野の通常の技術範囲内である。
【0154】
ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域は、正確に親配列に対応していなくてもよく、例えば、ドナーCDR又はコンセンサスフレームワークは、少なくとも一個の残基の置換、挿入、又は欠失によって変異誘発されることがあり、その結果、その部位のCDR又はフレームワーク残基は、コンセンサス又は移入抗体に対応しない。しかし、そのような変異は広範なものではない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも75%は、親フレームワーク領域(FR)及びCDR配列のものに対応し、90%、及び95%超対応することの方が多い。ヒト化抗体は、それだけには限らないが、以下の技術を含む当技術分野で公知の多彩な技術:CDRグラフト化(欧州特許第239,400号;WO91/09967号;及び米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び同第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)又はリサーフェイシング(resurfacing)[欧州特許第592,106号及び同第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;及びRoguskaら, 1994, PNAS 91:969-973]、鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)、及び例えば以下の特許に開示された技術:米国特許第6,407,213号、同第5,766,886号、WO9317105号、Tanら, J. Immunol. 169:1119-25 (2002)、Caldasら, Protein Eng. 13(5):353-60 (2000)、Moreaら, Methods 20(3):267-79 (2000)、Bacaら, J. Biol. Chem. 272(16):10678-84 (1997)、Roguskaら, Protein Eng. 9(10):895-904 (1996)、Coutoら, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995)、Coutoら, Cancer Res. 55(8):1717-22 (1995)、Sandhu J S, Gene 150(2):409-10 (1994)、及びPedersenら, J. Mol. Biol. 235(3):959-73 (1994)を使用し産生することができる。フレームワーク領域中のフレームワーク残基をCDRドナー抗体由来の対応する残基で置換して、抗原結合を変化させ又は改善することが多く行われている。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で公知の方法、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用をモデリングして、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定し、配列比較して、特定の位置の異常なフレームワーク残基を同定することによって同定する(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;及びRiechmannら, 1988, Nature 332:323を参照されたい。これらについて、その全体を参照により本明細書に組み込む)。
【0155】
さらに、本発明の抗体を次に使用して、当業者に公知の技術を用いてIFNαを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を生成する(例えば、Greenspan & Bona, 1989, FASEB J. 7(5):437-444;及びNissinoff, 1991, J. Immunol. 147(8):2429-2438を参照されたい)。例えば、結合し、(当技術分野で周知のアッセイにより測定した場合に)その結合パートナーに対するIFNαの結合を競合的に阻害する本発明の抗体を使用して、IFNα結合ドメインを「模倣し」、結果としてIFNα及び/又はその結合パートナーに結合し、中和する抗イディオタイプを作製することができる。このような中和性の抗イディオタイプ、又はこのような抗イディオタイプのFabフラグメントを、IFNαを中和するための治療レジメンで用いることができる。本発明は、本発明の抗体又はそのフラグメントをコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの使用を採用する方法を提供する。
【0156】
4.7.4. 抗体をコードするポリヌクレオチド
本発明の方法は、高ストリンジェンシー、中又は低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも包含する。
【0157】
当技術分野で周知のいずれかの方法によって、このポリヌクレオチドを得ることができ、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。その抗体のアミノ酸配列が判明しているので、当技術分野で周知の方法を用いてこれらの抗体をコードするヌクレオチド配列を決定することができ、例えば、特定のアミノ酸をコードすることが知られているヌクレオチドコドンが、本発明の抗体又はそのフラグメントをコードする核酸を生成するように構築される。抗体をコードするこのようなポリヌクレオチドは、化学合成したオリゴヌクレオチドから構築することもでき(例えば、Kutmeierら, 1994, BioTechniques 17:242に記載のように)、簡単に説明すると、それは、抗体をコードする配列の一部分を含む重複オリゴヌクレオチドの合成、それらオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、次いで連結したオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
【0158】
あるいは、適切な供給源に由来する核酸から、抗体をコードするポリヌクレオチドを生成してもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが入手できなくとも、抗体分子の配列がわかっている場合、その免疫グロブリンをコードする核酸を化学的に合成することができ、あるいは、適切な供給源(例えば、本発明の抗体を発現するとして選択されたハイブリドーマ細胞などの、本抗体を発現する任意の組織又は細胞から単離された核酸、例えばポリA+RNA、それから作製したcDNAライブラリー、又は抗体cDNAライブラリー)から、その配列の3'末端及び5'末端にハイブリダイズすることのできる合成プライマーを使用するPCR増幅によって、又は、特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用してクローニングし、例えばその抗体をコードするcDNAクローンをcDNAライブラリーから同定することもできる。PCRによって生成した増幅核酸は、次いで、当技術分野で周知の任意の方法を使用して、複製可能なクローニングベクター中にクローン化することができる。
【0159】
抗体のヌクレオチド配列をいったん決定すれば、その抗体のヌクレオチド配列を、ヌクレオチド配列の遺伝子操作のための当技術分野で周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら, 1990, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY;及びAusubelら編, 1998, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NYに記載の技術)を用いて遺伝子操作して、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し、例えば、アミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を生じさせることができる。
【0160】
特定の実施形態では、通常の組換えDNA技術を用いて1以上のCDRをフレームワーク領域内に挿入する。そのフレームワーク領域は、天然の又はコンセンサス・フレームワーク領域、例えばヒトフレームワーク領域でありうる(例えば、ヒトフレームワーク領域の記載についてはChothiaら、1998、J. Mol. Biol. 278:457-479を参照のこと)。特定の実施形態では、フレームワーク領域とCDRの組合せによって作製されるポリヌクレオチドが、IFNαに特異的に結合する抗体をコードする。さらに、1以上のアミノ酸置換がフレームワーク領域内で生じ得ることが好ましく、アミノ酸置換が抗体のその抗原への結合を改善することもある。さらに、こうした方法を用いて、鎖内ジスルフィド結合に関与する1以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換又は欠失を生じさせ、1以上の鎖内ジスルフィド結合を欠損する抗体を生成することができる。ポリヌクレオチドに対する他の改変も本発明に包含され、当技術分野の技術範囲内にある。
【0161】
4.8 IFNαと特異的に結合するペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質
4.8.1 ペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質コンジュゲート
本発明はまた、精製を容易にするために、マーカー配列(例えば限定されるものではないが、ペプチドなど)と融合させた、IFNαと特異的に結合するペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質を包含する。他の実施形態では、マーカーアミノ酸配列はpQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, Calif., 91311)で提供されるタグなどのヘキサヒスチジンペプチドであり、特にその多くは市販されている。例えばGentzら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824に記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグとして、これに限定されるものではないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilsonら, 1984, Cell 37:767)及び「FLAG」タグが挙げられる。
【0162】
本発明はさらに、治療部分とコンジュゲートされた、IFNαと特異的に結合するペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質を包含する。IFNαと特異的に結合するペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質は、治療部分、例えばサイトトキシン(例えば細胞静止剤又は細胞破壊剤)、治療効果を有する可能性のある薬剤、又は放射性金属イオン(例えばα発光体)とコンジュゲートすることができる。サイトトキシン又は細胞毒性剤として、細胞に有害である任意の薬剤が挙げられる。サイトトキシン又は細胞毒性剤の例として、限定されるものではないが、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにその類似体又は同族体が挙げられる。治療効果を有する可能性のある他の薬剤として、これに限定されるものではないが、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン及びアントラマイシン(AMC))、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられる。
【0163】
さらに、IFNαと特異的に結合するペプチド、ポリペプチド及び融合タンパク質は、所与の生体応答を改変する治療部分又は薬物部分とコンジュゲートし得る。治療効果を有する可能性のある薬剤又は薬物部分は古典的な化学療法剤に限定されるものと解釈されるものではない。例えば、薬物部分は所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。かかるタンパク質として、例えば、毒素(アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素など);タンパク質(腫瘍壊死因子、IFN-α、IFN-β、NGF、PDGF、TPA)、アポトーシス剤、例えばTNF-α、TNF-β、AIM I(国際公開WO 97/33899号参照)、AIM II(国際公開WO 97/34911号参照)、Fasリガンド(Takahashiら, 1994, J. Immunol., 6:1567-1574)、及びVEGF(国際公開WO 99/23105号)、血栓剤又は抗血管形成剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン;或いは生体応答調節剤(例えばリンホカイン(例えばIL-1、IL-2、IL-6、IL-10、GM-CSF、及びG-CSFなど)又は成長因子(例えばGH)が挙げられる。
【0164】
4.8.2 ポリペプチド及び融合タンパク質の作製方法
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技法により、又はタンパク質合成技法、例えばペプチドシンセサイザーを使用することにより作製することができる。例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸分子を、自動DNAシンセサイザーを含む慣用技術により合成することができる。あるいは、2つの連続する遺伝子断片の間に相補的な突出末端を生じるアンカープライマーを用いて遺伝子断片のPCR増幅を行い、続いてこれをアニーリング及び再増幅して、キメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編, John Wiley & Sons, 1992参照)。さらに、生物活性分子をコードする核酸を、Fcドメイン又はその断片を含む発現ベクター中にクローニングして、その生物活性分子をFcドメイン又はFcドメイン断片とインフレームで連結してもよい。
【0165】
ポリペプチドを抗体の定常領域と融合又はコンジュゲートするための方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,723,125号、同第5,783,181号、同第5,908,626号、同第5,844,095号及び同第5,112,946号;欧州特許EP307,434号及びEP367,166号、EP 394,827号;国際公開公報WO 91/06570号、WO96/04388号、WO 96/22024号、WO 97/34631号及びWO 99/04813号;Ashkenazi他、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 10535-10539;Traunecker他、1988, Nature, 331:84-86;Zheng他、1995、J. Immunol. 154:5590-5600;及びVil他、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0166】
生物活性分子及びFcドメイン又はその断片をコードするヌクレオチド配列は、当業者に利用可能な任意の情報から得ることができる(例えば、Genbank、文献、又は慣用のクローニングにより)。IFNαリガンドをコードするヌクレオチド配列は、あらゆる利用可能な情報から、例えばGenbank、文献、又は慣用のクローニングから得ることができる。例えば、Xiongら, Science, 12;294(5541):339-45 (2001)を参照のこと。ポリペプチド融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写及び翻訳に必要なエレメントを含有するベクターに挿入することができる。本発明においては、様々な宿主-ベクター系を利用して、その配列をコードするタンパク質を発現させることができる。これらには、限定するものではないが、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)を感染させた哺乳動物細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母などの微生物;あるいはバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNAで形質転換した細菌が挙げられる。ベクターの発現エレメントは、その強度及び特異性の点で異なる。使用する宿主-ベクター系に応じて、いくつかの好適な転写及び翻訳エレメントのいずれか1つを用いることができる。
【0167】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質の発現は、当技術分野で公知の任意のプロモーター又はエンハンサーエレメントにより制御することができる。融合タンパク質をコードする遺伝子の発現を制御するために用いることができるプロモーターとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:SV40初期プロモーター領域(Bemoist and Chambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端リピートに含まれるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42)、テトラサイクリン(Tet)プロモーター(Gossenら, 1995, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:5547-5551);原核生物発現ベクター、例えばβ-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroffら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)又はtacプロモーター(DeBoerら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25;"Useful proteins from recombinant bacteria" Scientific American, 1980, 242:74-94も参照のこと);ノパリンシンターゼプロモーター領域(Herrera-Estrellaら, Nature 303:209-213)又はカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら, 1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)、及び光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaら, 1984, Nature 310:115-120)を含む植物発現ベクター;酵母又は他の真菌由来のプロモーターエレメント、例えばGal 4プロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなど、並びに、組織特異性を示し、トランスジェニック動物において用いられている以下の動物転写制御領域:膵腺房細胞において活性を有するエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら, 1984, Cell 38:639-646;Omitzら, 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonald, 1987, Hepatology 7:425-515);膵臓β細胞において活性を有するインシュリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ系細胞において活性を有する免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら, 1984, Cell 38:647-658;Adamesら, 1985, Nature 318:533-538;Alexanderら, 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣、乳房、リンパ系及びマスト細胞において活性を有するマウス乳癌ウイルス制御領域(Lederら, 1986, Cell 45:485-495)、肝臓において活性を有するアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら, 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓において活性を有するαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら, 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648;Hammerら, 1987, Science 235:53-58)、肝臓において活性を有するα1抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら, 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄細胞において活性を有するβグロビン遺伝子制御領域(Mogramら, 1985, Nature 315:338-340;Kolliasら, 1986, Cell 46:89-94)、脳のオリゴデンドロサイト細胞において活性を有するミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら, 1987, Cell 48:703-712);骨格筋において活性を有するミオシン軽鎖2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Nature 314:283-286);神経細胞において活性を有するニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(Morelliら, 1999, Gen. Virol. 80:571-83);神経細胞において活性を有する脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子制御領域(Tabuchiら, 1998, Biochem. Biophysic. Res. Corn. 253:818-823);星状細胞において活性を有するグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(Gomesら, 1999, Braz J Med Biol Res 32(5):619-631;Morelliら, 1999, Gen. Virol. 80:571-83)及び視床下部において活性を有する性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら, 1986, Science 234:1372-1378)。
【0168】
特定の実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質の発現は構成的プロモーターにより調節される。別の実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質の発現は誘導性プロモーターにより調節される。別の実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質の発現は組織特異的プロモーターにより調節される。
【0169】
特定の実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする核酸と機能的に連結したプロモーター、1以上の複製起点、及び場合により1以上の選択マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を含むベクターを使用する。
【0170】
哺乳動物宿主細胞では、いくつかのウイルスに基づく発現系を使用しうる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する事例では、ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び3つからなるリーダー配列にライゲートしうる。次いで、インビトロ又はインビボ組換えにより、このキメラ遺伝子をアデノウイルスゲノム中に挿入しうる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)中への挿入によって、生存可能であり、感染宿主中で抗体分子を発現することが可能な組換えウイルスがもたらされる(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:355-359を参照されたい)。特定の開始シグナルはまた、挿入された融合タンパク質コード配列の効率的翻訳にも必要であろう。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。さらに、挿入物全体の翻訳を確実にするために、開始コドンは所望のコード配列の読み枠と一致するものでなければならない。これらの外来性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成を含む様々な起源のものであってよい。発現効率は、好適な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含めることによって高めることができる。(例えば、Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153:51-544を参照)。
【0171】
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする遺伝子の挿入物を含む発現ベクターは、以下の3つの一般的な手法により同定することができる。すなわち、(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在又は非存在、及び(c)挿入された配列の発現である。第1の手法では、発現ベクター中のペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする遺伝子の存在を、それぞれペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は融合タンパク質をコードする挿入された遺伝子に対して相同性を有する配列を含むプローブを用いた核酸ハイブリダイゼーションにより検出することができる。第2の手法では、組換えベクター/宿主系を、ベクター中のポリペプチド又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の挿入によって生じる、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成など)の存在又は非存在に基づいて同定し、選択することができる。例えば、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合には、融合タンパク質挿入物をコードする遺伝子を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在により同定することができる。第3の手法では、組換え発現ベクターは、組換え体により発現される遺伝子産物(例えば融合タンパク質)をアッセイすることにより同定することができる。このようなアッセイは、in vitroアッセイ系において、例えば融合タンパク質の物理的又は機能的特性、例えば抗生物活性分子抗体との結合に基づくものでありうる。
【0172】
さらに、挿入された配列の発現を調節し、又は所望する特定の方式で遺伝子産物を修飾し、プロセシングする宿主細胞株を選択しうる。特定のプロモーターからの発現は、特定の誘導因子の存在下で高めることができ、従って、遺伝子操作した融合タンパク質の発現は制御することができる。さらに、異なる宿主細胞は、転写及び翻訳後のプロセシング及び修飾(例えば、タンパク質の糖鎖付加、リン酸化)について、特徴的かつ特定の機序を有する。発現された外来タンパク質の所望の修飾及びプロセシングを確実に行うために、好適な細胞系又は宿主系を選択することができる。例えば、細菌系における発現によって非グリコシル化産物が生成され、酵母における発現によってグリコシル化産物が生成される。遺伝子産物の適切な一次転写産物のプロセシング、糖鎖形成、及びリン酸化を行うための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用しうる。そのような哺乳動物宿主細胞には、それだけには限らないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、NS0、特に神経細胞系、例えばSK-N-AS、SK-N-FI、SK-N-DZヒト神経芽細胞腫(Sugimotoら, 1984, J. Natl. Cancer Inst. 73: 51-57)、SK-N-SHヒト神経芽細胞腫(Biochim. Biophys. Acta, 1982, 704: 450-460)、Daoyヒト小脳髄芽腫(Heら, 1992, Cancer Res. 52: 1144-1148)、DBTRG-05MG膠芽腫細胞(Kruseら, 1992, In vitro Cell. Dev. Biol. 28A: 609-614)、IMR-32ヒト神経芽細胞腫(Cancer Res., 1970, 30: 2110-2118)、1321N1ヒト星状細胞腫(Proc. Natl Acad. Sci. USA, 1977, 74: 4816)、MOG-G-CCMヒト星状細胞腫(Br. J. Cancer, 1984, 49: 269)、U87MGヒト膠芽細胞腫-星状細胞腫(Acta Pathol. Microbiol. Scand., 1968, 74: 465-486)、A172ヒト膠芽細胞腫(Olopadeら, 1992, Cancer Res. 52: 2523-2529)、C6ラットグリオーマ細胞(Bendaら, 1968, Science 161: 370-371)、Neuro-2aマウス神経芽細胞腫(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1970, 65: 129-136)、NB41A3マウス神経芽細胞腫(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1962, 48: 1184-1190)、SCPヒツジ脈絡叢(Bolinら, 1994, J. Virol. Methods 48: 211-221)、G355-5、PG-4ネコ正常星状細胞(Haapalaら, 1985, J. Virol. 53: 827-833)、Mpfフェレット脳(Trowbridgeら, 1982, In vitro 18: 952-960)など、並びに正常細胞系、例えばCTX TNA2ラット正常大脳皮質(Radanyら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 6467-6471)、例えばCRL7030及びHs578Bstなどが含まれる。さらに、異なるベクター/宿主発現系は、異なる程度にプロセシング反応を実施することが可能である。
【0173】
組換えタンパク質を長期間高収量で産生するためには、安定した発現が好ましい。例えば、ポリペプチド又は融合タンパク質を安定に発現する細胞系を操作しうる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、好適な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、及び選択マーカーによって制御されたDNAにより、宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入に続き、操作した細胞を富栄養培地で1〜2日間増殖させることができ、次いで選択培地に取り替える。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対して耐性を付与し、そして細胞が安定してその染色体中にプラスミドを組み込み、増殖して増殖巣を形成できるようにし、次いでその増殖巣が細胞系中でクローン化し増殖することができる。この方法は、IFNαに特異的に結合するポリペプチド又は融合タンパク質を発現する細胞系の操作に有利に使用しうる。そのように操作した細胞系は、IFNαに特異的に結合するポリペプチド又は融合タンパク質の活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニング及び評価に特に有用かもしれない。上述したような選択系を用いることができる。
【0174】
4.9. 本発明の治療用途
I型インターフェロンは、T細胞の分化、抗体の産生、並びに記憶T細胞の活性及び生存に関与する免疫調節サイトカインであることが知られている。その上、I型インターフェロンの発現量増加は、いくつかの自己免疫疾患、HIV感染症、移植片拒絶反応、及び移植片対宿主病(GVHD)において記載されてきた。したがって、本発明の抗IFNα抗体又はそのフラグメントは、異常な又は望ましくないI型インターフェロン活性が関与する多様な臨床兆候において、使用することができる。本発明は、I型インターフェロン媒介疾患又は障害を予防、処置、維持、改善又は抑制する方法であって、本発明の抗体又はその抗原結合部分を投与することを含む方法を包含する。
【0175】
本発明の抗体を使用することができる自己免疫状態の具体例には、それだけに限らないが、以下のもの:全身性エリテマトーデス(SLE)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病、潰瘍性大腸炎及びセリアック病を含む)、多発性硬化症(MS)、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、関節リウマチ(RA)、及び糸球体腎炎が挙げられる。更に、本発明の抗体組成物は、移植片拒絶反応の抑制若しくは予防、又は移植片対宿主病(GVHD)の処置、又はHIV感染症/AIDSの処置に使用することができる。
【0176】
高レベルのIFNαが、全身性エリテマトーデス(SLE)患者の血清中に観察されてきた(例えば、Kim et al. (1987) Clin. Exp. Immunol. 70:562-569を参照されたい)。その上、例えば、癌又はウィルス感染症の処置におけるIFNαの投与は、SLEを誘発することが示された(Garcia-Porrua et al. (1998) Clin. Exp. Rheumatol. 16:107-108)。したがって、別の実施形態では、本発明の抗IFNα抗体は、処置を必要とする被験体に該抗体を投与することにより、SLEの処置に使用することができる。
【0177】
SLEを処置する他の方法は、"Methods of treating SLE"という題名で、以下の出願番号: 2007年4月16日出願の第60/907,767号、及び2007年11月5日出願の第60/966,174号の米国特許出願、並びに2007年12月9日出願のPCT出願第PCT/US2007/02494号に記載されているが、以上の各出願は、その全体が参照により組み込まれる。
【0178】
IFNαは、I型糖尿病の病理にも関与している。例えば、I型糖尿病患者の膵臓β細胞における免疫反応性IFNαの存在が、報告されている(Foulis et al. (1987) Lancet 2:1423-1427)。抗ウィルス治療におけるIFNαの長期使用も、I型糖尿病を誘発することが示された(Waguri et al. (1994) Diabetes Res. Clin. Pract. 23:33-36)。したがって、別の実施形態では、本発明の抗IFNα抗体又はそのフラグメントは、処置を必要とする被験体に該抗体を投与することにより、I型糖尿病の処置に使用することができる。該抗体は、単独で、又はインスリンなどの他の抗糖尿病剤と組み合わせて使用することができる。
【0179】
IFNαによる処置は、自己免疫性甲状腺炎を誘発することも観察されてきた(Monzani et al. (2004) Clin. Exp. Med. 3:199-210; Prummel and Laurberg (2003) Thyroid 13:547-551)。したがって、別の実施形態では、本発明の抗IFNα抗体は、処置を必要とする被験体に本発明の抗体を投与することにより、自己免疫性原発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、及び甲状腺機能低下を伴う破壊性甲状腺炎を含む、自己免疫性甲状腺炎の処置に使用することができる。本発明の抗体は、単独で、又は抗甲状腺薬、放射性ヨウ素、甲状腺亜全摘などの他の薬剤若しくは処置と組み合わせて使用することができる。
【0180】
高レベルのIFNαが、HIV感染症患者の循環血中にも観察されてきており、その存在は、AIDS進行の予測マーカーである(DeStefano et al. (1982) J. Infec. Disease 146:451; Vadhan-Raj et al. (1986) Cancer Res. 46:417)。したがって、別の実施形態では、本発明の抗IFNα抗体は、処置を必要とする被験体に本発明の抗体を投与することにより、HIV感染症又はAIDSの処置に使用し得る。別の実施形態では、本発明の抗体は、単独で、又はヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤及び融合阻害剤などの他の抗HIV剤と組み合わせて使用することができる。
【0181】
IFNAR1に対する抗体は、同種移植片拒絶反応の抑制及び同種移植片生存の延長に有効であることが示されてきた(例えば、Tovey et al. (1996) J. Leukoc. Biol. 59:512-517; Benizri et al. (1998) J. Interferon Cytokine Res. 18:273-284を参照されたい)。したがって、本発明の抗IFNα抗体は、同種移植片拒絶反応を抑制し、及び/又は同種移植片生存を延長するために、移植片受容者においても使用することができる。本発明は、処置を必要とする移植片受容者に本発明の抗IFNα抗体を投与することにより、移植片拒絶反応を抑制する方法を提供する。処置できる組織移植片の例には、それだけに限らないが、肝臓、肺、腎臓、熱、小腸、及び膵小島細胞、並びに移植片対宿主病(GVHD)の処置が挙げられる。本発明の抗体は、単独で、又は免疫抑制剤(例えば、サイクロスポリン、アザチオプリン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ミコフェノール酸モフェチル、シリリムス、ラパマイシン、タクロリムス)、抗感染症剤(例えば、アシクロビル、クロトリマゾール、ガンシクロビル、ナイスタチン、トリメトプリムサルファメトキサゾール)、利尿薬(例えば、ブメタニド、フロセミド、メトラゾン)及び潰瘍薬(例えば、シメチジン、ファモチジン、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラニチジン)と組み合わせて使用することができる。
【0182】
別の実施形態では、本発明の組成物は、広範囲の炎症状態を処置し、予防するために使用されるが、該炎症状態には、虫垂炎、消化性、胃及び十二指腸の潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性、偽膜性、急性及び虚血性の大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再潅流傷害、臓器壊死、枯草熱、敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、内毒素性ショック、悪液質、超高熱、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、感染流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、塵肺症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウィルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウィルス感染症、C型肝炎ウィルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、火傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、蕁麻疹、疣、膨疹、脈管炎(vasulitis)、血管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム硬化症、静脈血栓症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、うっ血性心不全、再狭窄、COPD成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳塞栓、ギヤン(Guillame)-バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎疹、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎(thryoiditis)、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、バーガー病、ライター(Retier's)症候群、及びホジキン病などの慢性、急性双方の状態が含まれる。
【0183】
別の実施形態では、本発明の組成物は、以下の状態又は病状に伴う症状の予防、処置、改善に使用され、又は有用であり得る。即ち、グレーブス病、橋本甲状腺炎、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、交感性眼炎、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性リンパ増殖症候群、抗リン脂質症候群、シェーグレン症候群、強皮症、アジソン病、多内分泌腺機能低下症候群、ギヤン-バレー症候群、免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、重症筋無力症、原発性胆汁性肝硬変、混合結合組織病、白斑、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、血小板減少(thrombopocytopenia)、セリアック病、疱疹状皮膚炎、自己免疫性肝炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、自己免疫性心筋炎、自己免疫性脈管炎、円形脱毛症、自己免疫性アテローム硬化症(artherosclerosis)、ベーチェット病、自己免疫性ミエロパシー、自己免疫性血友病(hemophelia)、自己免疫性間質性膀胱炎、自己免疫性尿崩症、自己免疫性子宮内膜症、再発性多発性軟骨炎、強直性脊椎炎、自己免疫性蕁麻疹、皮膚筋炎、ミラー-フィッシャー症候群、IgAネフロパシー、グッドパスチャー症候群、及び妊娠性疱疹である。
【0184】
別の実施形態では、本発明の組成物は、以下の状態又は病状:特発性炎症性筋障害(IIM)、皮膚筋炎(DM)、多発性筋炎(PM)、及び封入体筋炎(IBM)に伴う症状の予防、処置、改善に使用され、又は有用であり得る。
【0185】
別の実施形態では、本発明の抗体の投与法及び組成物は、シェーグレン症候群に伴う症状の予防、処置、改善に有用であり得る。シェーグレン症候群は、免疫細胞が、涙液及び唾液を生成する外分泌腺を攻撃し、破壊する自己免疫性障害である。この症候群は、最初に言及したスウェーデン人眼科医Henrik Sjogren(1899〜1986年)に因んで命名されている。シェーグレン症候群は、関節リウマチなどのリウマチ障害にも付随し、90%の症例でリウマチ因子陽性である。この障害の代表的症状は、口渇及び乾性眼である。それに加え、シェーグレン症候群は、皮膚、鼻及び膣の乾燥を起こし得る上、腎臓、血管、肺、肝臓、膵臓及び脳を含む他の体内器官にも影響し得る。シェーグレン患者10人中9人が女性であり、平均発症年齢は40代後半であるが、シェーグレンは、女性、男性双方の全年齢層において起こる。米国だけで4百万人もがそれに罹ると推定され、2番目に多い自己免疫性リウマチ疾患である。
【0186】
筋炎は、骨格筋又は随意筋の炎症を特徴とする全身的状態である。筋肉炎症は、アレルギー反応、有毒な物質若しくは医薬への暴露、癌やリウマチ状態などの別種の疾患、又はウィルス若しくは他の感染源によって起こり得る。慢性炎症性筋障害は、特発性であり、それは原因が不明であることを意味している。この筋障害は、体内白血球(通常は疾患と闘う)が、血管、正常な筋肉線維、並びに器官、骨及び関節内の結合組織を攻撃する、自己免疫性障害であると理解されている。
【0187】
多発性筋炎は、身体の両側にある骨格筋(運動に関わる)を冒す。これは、18歳未満の人にはめったに見られず、大抵の症例は、31〜60歳の間の患者に見られる。上記に列挙した症状以外に、進行性の筋脱力が、嚥下、会話、座位からの起立、階段上り、物体の持上げ、又は背伸びを困難にする。多発性筋炎患者には、関節炎、息切れ及び心臓不整脈も起こり得る。
【0188】
皮膚筋炎は、進行性の筋脱力に先行する、又はそれを伴う皮膚発疹を特徴とする。その発疹は、斑点状に青紫色又は赤色の変色を示し、瞼上と、拳、肘、踵及び爪先を含む関節上とに特徴的に発現する。赤い発疹は、顔、首、肩、胸上部、背中及び他の箇所にも現れることがあり、患部が腫れることもある。発疹は、筋肉に明らかに関係なく現れることが時々ある。皮膚筋炎の成人は、体重減少又は軽度の発熱を起こし、肺に炎症を生じ、光に敏感になることもある。多発性筋炎と異なり、成人性皮膚筋炎は、乳房、肺、女性器又は腸の腫瘍を伴うこともある。皮膚筋炎の小児及び成人は、カルシウム沈着を発現することもあるが、これは、皮下又は筋肉内の硬い隆起となって現れる(石灰沈着症と呼ぶ)。石灰沈着症は、疾患発生から1〜3年後に起こることが最も多いが、何年も後に起こることもある。こうした沈着物は、成人で始まる皮膚筋炎より、小児期皮膚筋炎において頻繁に見られる。皮膚筋炎は、膠原血管病又は自己免疫疾患と関係することもある。
【0189】
封入体筋炎(IBM)は、進行性の筋脱力、及び消耗を特徴とする。IBMは、多発性筋炎に類似しているが、独自の明確な特徴も有する。筋脱力の発症は、一般に漸進的であり(数カ月又は数年に亘る)、近位、遠位双方の筋肉を冒す。筋脱力は、身体の片側だけを冒すこともある。空胞と称する小穴が、罹患筋線維の細胞中に見られる。転倒及びつまずきが、普通、IBMの最初に目立つ症状である。一部の患者では、この障害は、物体の挟み付け、ボタン掛け及び握り締めを困難にする、手首及び指の脱力から始まる。手首及び指の筋脱力と、前腕筋及び脚の大腿四頭筋の萎縮(菲薄化及び筋肉量の減少)が、起こることもある。嚥下の困難は、IBM症例のおよそ半数で起こる。この疾患の症状は、普通、50歳を過ぎて始まるが、より早く起こることもある。多発性筋炎及び皮膚筋炎と異なり、IBMは、女性より男性に多く発生する。
【0190】
若年性筋炎は、成人性の皮膚筋炎及び多発性筋炎とある程度類似している。2〜15歳の小児が、それに通常冒され、その症状には、近位筋の脱力及び炎症、浮腫(腫れを起こす、体組織内の異常な体液集中)、筋肉痛、疲労、皮膚発疹、腹痛、発熱、並びに拘縮(筋腱における炎症で起こる、関節周囲の筋肉又は腱の慢性的短縮であって、関節の自由な運動を妨げること)が挙げられる。若年性筋炎の小児は、嚥下及び呼吸も困難な場合があり、心臓が冒されることもある。若年性筋炎の小児中およそ20〜30%が、石灰沈着症を発現する。若年患者は、筋肉酵素のクレアチンキナーゼを血中に通常より多量に示すとは限らないが、他の筋肉酵素を通常より多量に示す。
【0191】
したがって、他の実施形態では、本発明の抗体は、筋炎、炎症性筋炎、特発性筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎(IBM)、若年性筋炎、又はこれらの状態に伴う症状の予防、処置又は改善に有用となり得る。
【0192】
別の実施形態では、本発明の抗体は、脈管炎に伴う症状の予防、処置又は改善に有用となり得る。
【0193】
本発明の抗体は、強皮症の処置に有用となり得る。強皮症を処置する方法は、2007年11月5日に出願し、その全体があらゆる目的のために参照により組み込まれる、出願番号が第60/996,175号の"Methods Of Treating Scleroderma"と題する米国特許出願に記載されている。
【0194】
別の実施形態では、本発明の抗体は、サルコイドーシスに伴う症状の予防、処置又は改善に有用となり得る。サルコイドーシス(サルコイド又はベスニエ-ベック病とも呼ばれる)は、非壊死性肉芽腫(小型の炎症性小結節)を特徴とする免疫系障害である。ほぼ任意の器官が冒される恐れがあるが、肉芽腫は、肺又はリンパ節に出現することが最も多い。症状は、時には突然現れることもあるが、普通は徐々に現れる。肺のX線像を見ると、サルコイドーシスは、結核又はリンパ腫の外観を呈することもある。
【0195】
本発明の抗体及び組成物は、IFN-I応答遺伝子の調節に有用となり得る。IFN-I応答遺伝子は、"IFN alpha-induced Pharmacodynamic Markers"という題名で、以下の出願番号: 2006年12月6日出願の第60/873,008号、2007年4月16日出願の第60/907,762号、2007年5月21日出願の第60/924,584号、2007年9月19日出願の第60/960,187号、2007年11月5日出願の第60/966,176号を有する米国特許出願、及び2007年12月6日出願のPCT出願第PCT/US2007/02494号に同定されているが、以上の各出願は、その全体が参照により組み込まれる。
【0196】
4.10. 併用
本発明の組成物は、他の薬剤との組合せなどの併用療法で投与することもできる。例えば、その併用療法は、本発明の抗IFNα抗体と少なくとも1種の他の免疫抑制剤との組合せを含むことができる。
【0197】
幾つかの方法では、結合特異性の異なる2種以上のモノクローナル抗体が、同時に投与されるが、その場合、各抗体の投与量は指示された範囲内に入る。該抗体は、普通、多くの機会に投与される。単回投与間の間隔は、例えば、週間、月間、3カ月毎、又は年間でもよい。間隔は、標的抗原に対する抗体の患者における血中濃度を測定することにより、指示の通り不定期でもよい。幾つかの方法では、投与量は、約1〜1000μg/mlの抗体血漿濃度となるように調節され、幾つかの方法では、約25〜300μg/mlとなるように調節される。
【0198】
IFNαに対する抗体を別の薬剤と共に投与する場合、両者を順時、同時のいずれかで投与することができる。例えば、本発明の抗IFNα抗体は、以下の薬剤の1種又は複数と併用することができる。即ち、メサラミンを含有する薬物(スルファサラジン、及び5-アミノサリチル酸(5-ASA)を含有する、オルサラジン、バルサラジドなどの他の薬剤を含む)、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ハイドロコーチゾン)、TNF阻害剤(アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、エタナセプト(ENBREL(登録商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))を含む)、免疫抑制剤(6-メルカプトプリン、アザチオプリン及びサイクロスポリンAなど)、及び抗生物質、抗IFNAR1抗体、抗IFNγ受容体抗体及び可溶性IFNγ受容体である。
【0199】
他の実施形態では、本発明の組成物は、SLEの処置に有用な薬剤も含み得る。このような薬剤には、鎮痛剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、ハイドロコーチゾン)、免疫抑制剤(シクロホスファミド、アザチオプリン及びメソトレキセートなど)、抗マラリア剤(ヒドロキシクロロキンなど)、及びdsDNA抗体の産生を阻害する生物学的薬物(例えば、LJP394)が挙げられる。
【0200】
4.11. 特定の実施形態
1. 脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものである、上記方法。
【0201】
2. 哺乳動物細胞の使用を含む、実施形態1に記載の方法。
【0202】
3. 前記哺乳動物細胞が、NS0、CHO、MDCK又はHEK細胞からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0203】
4. 前記抗体が、N末端からC末端へと読み取った場合、グリシン、セリン、スレオニン又はアスパラギン酸残基に先行かつ隣接してアスパラギン残基を含む、実施形態1に記載の方法。
【0204】
5. 前記残基が、前記抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2又はVLCDR3領域の少なくとも一つに位置している、実施形態4に記載の方法。
【0205】
6. 前記残基が、前記抗体のVHCDR2に位置している、実施形態5に記載の方法。
【0206】
7. 前記抗体の脱アミド化プロフィールが、対照の脱アミド化プロフィールと比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%又は約10%低減している、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
【0207】
8. 約30℃〜約37℃間の範囲にある温度で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
【0208】
9. 前記温度が約34℃である、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
【0209】
10. pHが約6.0〜約7.2 pH単位の範囲の培地中で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
【0210】
11. 前記pHが約6.9 pH単位である、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
【0211】
12. 二相培養で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む、実施形態1〜11のいずれかに記載の方法。
【0212】
13. 前記二相培養が、少なくとも一回の温度シフトを含む、実施形態12に記載の方法。
【0213】
14. 前記温度シフトが、約34℃から約32℃へのシフトを含む、実施形態13に記載の方法。
【0214】
15. 前記温度シフトが、細胞培養密度が1×106細胞/mlに達した時又はその後で起こる、実施形態14に記載の方法。
【0215】
16. 採集時における培地のpH変化を含む、実施形態1〜15のいずれかに記載の方法。
【0216】
17. 前記pHが、約5.0〜約7.0 pH単位の範囲に調節される、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
【0217】
18. 前記pHが約6.9 pH単位に調節される、実施形態1〜17のいずれかに記載の方法。
【0218】
19. 細胞採集後に、pH変化を含むホールドステップを含む、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
【0219】
20. 前記pHが、約5.0〜約7.0 pH単位の範囲に調節される、実施形態1〜19のいずれかに記載の方法。
【0220】
21. 希釈ステップを含む、実施形態1〜20のいずれかに記載の方法。
【0221】
22. 前記希釈ステップが、ライン内希釈又は槽内希釈ステップである、実施形態1〜21のいずれかに記載の方法。
【0222】
23. 限外濾過ステップを含まない、実施形態1〜22のいずれかに記載の方法。
【0223】
24. 約17日未満の滞留時間を有する、実施形態1〜23のいずれかに記載の方法。
【0224】
25. 約13日の滞留時間を有する、実施形態24に記載の方法。
【0225】
26. 前記抗体がインターフェロンαに特異的である、実施形態1〜25のいずれかに記載の方法。
【0226】
27. 前記抗体が13H5である、実施形態1〜26のいずれかに記載の方法。
【0227】
28. 脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、以下のステップ:
(a)約33℃〜約35℃の温度で増殖させた細胞から抗体を産生するステップであって、前記細胞を約6.7〜約7.1 pH単位のpH値を有する培地中で増殖させるステップ、及び
(b)前記細胞を約13〜約19日間培養するステップ
を含む方法。
【0228】
29. 前記細胞を13日間培養する、実施形態28に記載の方法。
【0229】
30. 前記抗体が13H5である、実施形態28に記載の方法。
【0230】
31. 脱アミド化プロフィールが低減した安定なモノクローナル抗体組成物であって、前記抗体が、前記抗体の脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すアミノ酸配列を含む、上記抗体組成物。
【0231】
32. 前記抗体が抗インターフェロンα抗体である、実施形態31に記載の組成物。
【0232】
33. 前記抗体が、N末端からC末端へと読み取った場合、グリシン、セリン、スレオニン又はアスパラギン酸残基に先行かつ隣接してアスパラギン残基を含む、実施形態31又は32に記載の組成物。
【0233】
34. 前記残基が、前記抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2又はVLCDR3領域の少なくとも一つに位置している、実施形態31〜33のいずれかに記載の組成物。
【0234】
35. 前記残基が、前記抗体のVHCDR2に位置している、実施形態31〜34のいずれかに記載の組成物。
【0235】
36. 前記抗体の脱アミド化プロフィールが、対照の脱アミド化プロフィールと比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%又は約10%低減している、実施形態31〜35のいずれかに記載の組成物。
【0236】
37. 前記抗体が抗体フラグメントである、実施形態31〜36のいずれかに記載の組成物。
【0237】
38. 前記抗体フラグメントが、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント及びscFvからなる群から選択される、実施形態31〜37のいずれかに記載の組成物。
【0238】
39. 前記組成物が、約34℃の温度で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、前記抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップを含むプロセスで産生される、実施形態31〜38のいずれかに記載の組成物。
【0239】
40. (a)約34℃の第1の温度で抗体産生細胞を増殖させるステップ、
(b)細胞密度が約1×106細胞/mlに達したときに、前記細胞を約32℃の第2の温度にシフトするステップ、及び
(c)前記抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップ
を含むプロセスにより産生される、実施形態31〜39のいずれかに記載の抗体組成物。
【0240】
41. 脱アミド化プロフィールが低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すものであり、約34℃で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、該抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップを含むプロセスにより産生される、抗体組成物。
【0241】
42. 細胞密度が約1×106細胞/mlに達した時又はその後で、前記温度を約32℃にシフトするステップを更に含むプロセスにより産生される、実施形態41に記載の抗体組成物。
【0242】
43. 脱アミド化プロフィールが低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すものであり、約32℃〜約35℃で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、前記細胞を約6.7〜約7.1単位のpHを有する培地中で増殖させるステップと、約12〜約19日間にわたり前記抗体産生細胞を培養するステップを含むプロセスにより産生される、抗体組成物。
【0243】
44. 前記細胞が約34℃で増殖される、実施形態43に記載の抗体組成物。
【0244】
45. 前記細胞が約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖される、実施形態43又は44に記載の抗体組成物。
【0245】
46. 前記細胞が約13日間培養される、実施形態41〜45のいずれかに記載の抗体組成物。
【0246】
47. 前記抗体が13H5である、実施形態41〜46のいずれかに記載の組成物。
【0247】
48. 脱アミド化プロフィールが増加する傾向を示す抗体を精製する方法であって、精製中に前記抗体の脱アミド化種を除去するための洗浄ステップを含む、上記方法。
【0248】
49. 前記洗浄ステップが、約0mM〜約100mMの塩濃度を有する緩衝液を含む、実施形態48に記載の方法。
【0249】
50. 前記塩濃度が約30mMである、実施形態48又は49に記載の方法。
【0250】
51. 前記緩衝剤がリン酸ナトリウムである、実施形態48〜50のいずれかに記載の方法。
【0251】
52. イオン交換クロマトグラフィーステップを含む、実施形態48〜51のいずれかに記載の方法。
【0252】
53. 実施形態1〜30のいずれかに記載の方法を更に含む、実施形態48〜52のいずれかに記載の方法。
【0253】
4.12. 同等物
当業者であれば、単に慣用的な実験を用いるだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの等価形態を認識し、又は確認することができよう。このような等価形態は、後出の特許請求の範囲に包含されることを意図している。
【0254】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の各刊行物、特許又は特許出願が、参照により本明細書に組み込まれることが、明確に個別に示されているかのような場合と同程度に、本明細書中に参照により組み込まれる。それに加え、共に2007年3月30日に出願した次の米国仮特許出願、第60/909,117号及び第60/909,232号は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0255】
5. 実施例
5.1. 実施例1:脱アミド化は、産生のための細胞培養条件を変えることにより低減する
方法:標準的な細胞培養プロセスは、当技術分野において十分に記述報告されている。産生細胞系の増殖性及び生存性に対する一定のパラメーターの変更により、産物力価が増加し得る。この実施例では、温度及びpHなどの細胞培養条件を、所望の産物の脱アミド化を低減させるために調節した。具体的には、細胞の培養温度を標準の37℃から34℃へ低下させた。それに加え、細胞を培養する培地のpHを、標準のpH7.2から6.9へ低下させた。所望の産物の脱アミド化プロフィールは、標準的なイオン交換クロマトグラフィー法により分析した。脱アミド化率(%)は、イオン交換クロマトグラフィー用カラムからの溶出プロフィールに対する曲線下面積(AUC)法により決定した。
【表1】

【0256】
結果:細胞培養産生試験1〜4の結果を表1に記録している。試験1では、37℃、pH7.2の標準的な細胞培養条件で細胞を増殖させた。所望のタンパク質産物の得られた脱アミド化プロフィールは、50%であった。細胞培養試験2及び3では、pHを変えずにプロセス温度を34℃へ下げた。得られた脱アミド化率(%)は、各々61%及び70%であった。細胞培養試験4では、2種のパラメーターを調節した。温度を34℃へ下方調節する一方、pHも、増殖期及び産生期の期間中、6.9に下げた。得られた産物の脱アミド化プロフィールは、温度及びpHのシフトを併用して17%であった。脱アミド化率(%)のこの低下は、遥かに高い脱アミド化プロフィールを生じた現行の標準細胞培養に対する有意で予想外の改善である。以上の結果から、温度減少及びpH減少を組み合わせると、驚くほど相乗的な作用が生まれ、最終結果として、所望のタンパク質産物の脱アミド化率(%)が、劇的に低下することが示唆される。
【0257】
5.2. 実施例2:採集のタイミングの変更は、所望のタンパク質産物の脱アミド化を低減させる
タンパク質産生の標準技術によれば、細胞培養試験の14日目に採集すると、所望のタンパク質産物が最適に回収されることが示唆されている。この実施例では、採集時期パラメーターを調節して、所望のタンパク質産物の脱アミド化状態に対する効果を決定した。
【0258】
方法:大規模のタンパク質製造では、採集時期試験を細胞培養試験に亘って変更することができる。この実施例では、採集日を接種後、9日目から14日目及び17日目に変更した。細胞培養試験は、各試験に対して同様な条件下で行った。所望の産物の脱アミド化プロフィールは、標準的なイオン交換クロマトグラフィー法により分析した。脱アミド化率(%)は、イオン交換クロマトグラフィー用カラムからの溶出プロフィールに対する曲線下面積法により決定した。
【表2】

【0259】
結果:表2には、所望のタンパク質の脱アミド化プロフィールに対する効果を決定するために、様々な日に採集した個別の細胞培養試験の結果を記録している。示してあるように、所望のタンパク質の採集が早いほど、示された脱アミド化プロフィールは低い。そのため、以上の結果から、採集のタイミングの変更は、所望の産物の脱アミド化状態に影響することが示唆される。したがって、産生試験において所望のタンパク質の採集を早めると、脱アミド化率(%)が、驚くほど予想外に低下する。
【0260】
5.3. 実施例3:所望のタンパク質産物の脱アミド化低減を目的とした、採集時pHの調節
方法:採集時に、対象タンパク質を含有する培養上清に、適切な酸の添加によりpHの下方シフトを加える。得られるpHは、細胞をそれまで培養していたpHより低いものになろう。得られるpHは、6.5ぐらいか、それより低いと想定される。pHのこの下方調節により、脱アミド化速度が遅くなり、そのため所望のタンパク質産物の回収率が増加することになろう。所望のタンパク質産物の実測脱アミド化率(%)は、標準的なイオン交換クロマトグラフィーの曲線下面積率(%)を用いて決定できよう。
【0261】
5.4. 実施例4:所望のタンパク質産物の脱アミド化低減を目的とした、採集後pHの調節
方法:採集後に、対象タンパク質を含有する培養上清に、適切な酸の添加によりpHの下方シフトを加えた。対照試料をpH7.0に維持したのに対し、試験試料はpH6.0に調節した。両組の試料とも、全期間中2〜8℃に維持した。実験の継続期間中、試料をその2条件から採取し、所望のタンパク質産物の脱アミド化を分析した。所望のタンパク質産物の実測脱アミド化率(%)は、標準的なイオン交換クロマトグラフィーの曲線下面積率(%)を用いて決定した。以上の実験の結果を表3に提示してある。
【表3】

【0262】
結果:表3に示すように、時間の経過と共に、pH7.0に維持した産物は、pH6.0に維持した産物と比較して速い脱アミド化速度を受ける。pHのこの下方調節により、脱アミド化速度が遅くなっており、そのため所望のタンパク質産物の回収率が増加する。以上のデータにより、細胞培養試験後のpH値が低下すると、タンパク質産物の安定性が維持されることが示唆される。
【0263】
5.5. 実施例5:所望の産物の脱アミド化低減を目的とした、採集後温度の調節
方法:採集後に、対象タンパク質を含有する培養上清に、温度の2〜8℃への下方シフトを加えた。対照試料は15〜25℃に維持した。試料を8週間までpH7.2に保持した。所望のタンパク質産物の実測脱アミド化率(%)は、標準的なイオン交換クロマトグラフィーの曲線下面積率(%)を用いて決定した。以上の実験の結果を表4に提示してある。
【表4】

【0264】
結果:表4に示すように、時間の経過と共に、より高温(15〜25℃)で維持した産物は、より低温(2〜8℃)で維持した産物と比較して速い脱アミド化速度を受ける。温度のこの下方調節により、脱アミド化速度が遅くなっており、そのため所望のタンパク質産物の回収率が増加する。以上のデータにより、細胞培養試験後の温度が低下すると、タンパク質産物の安定性が維持されることが示唆される。
【0265】
5.6. 実施例6:所望のタンパク質産物の回収率増加を目的とした、洗浄緩衝液ステップの調節
方法:陽イオン交換クロマトグラフィーの分解能、及び所望のタンパク質産物の回収率を増加させるために、手順内の洗浄ステップを調節した。その結果、洗浄緩衝液のイオン強度を用いた実験により、所望のタンパク質産物から、脱アミド化タンパク質などの不要なタンパク質種の選択的除去が可能となった。所望のタンパク質産物から不要な脱アミド化種を除去する、最適なイオン強度を決定するために、線形溶質勾配の変化を試験した。カラムに、以下に概説するようにpH調整した培養上清を投入した。2回目の洗浄後、結合13H5を様々な勾配傾斜(勾配長さが10、20、30、40カラム容積(CV))の線形塩勾配(35mMリン酸ナトリウム、pH6.2の中で0〜100mM NaCl)で溶出した。分析HPLCイオン交換クロマトグラフィーにより、溶出ピークを分画し、脱アミド化含有率(%)を測定した。これらの分画に対応するIECクロマトグラムを、参照標準IECプロフィールと共に示してある。こうした分析クロマトグラムにおける早期溶出ピークは、13H5抗体の酸性又は脱アミド化部分種に相当する。
【0266】
結果:こうしたプロット(図4A〜H)で見ることができるように、線形塩勾配の使用により、脱アミド化種を完全な13H5分子から分離でき、分解能は、勾配傾斜が低下する(勾配長さを延長する)と改善される。以上の実験を拡張する(試験数及び分析ピーク分画数を増加させる)ことにより、以上の結果をステップ溶出の適用/最適化へ拡張することができる。陽イオン交換溶出産物の最終的所望収率及び脱アミド化含有率(%)に応じて、脱アミド化種の除去を目的に、0〜100mM NaClの範囲にある任意の塩濃度(リン酸ナトリウム緩衝液中)を3回目洗浄として選択し得る。
【0267】
5.7. 実施例7:最適な採集日の推定
バイオリアクターでの産生中、13H5の脱アミド化は、とりわけ、細胞培養液のpH及び温度に主に制御される速度で起こる。該抗体は、細胞から分泌直後はインタクトな状態にあると予想されるので、採集時の脱アミド化13H5の最終比率(%)は、数ある要因の中で、総括的なバイオリアクター寿命に左右されよう。言い換えると、採集時には、サイクル中でより早期に産生した抗体は、サイクル中でより後期に産生した抗体より、かなり長い時間不利な条件(高いpH及び温度)に曝される。様々なバイオリアクター時点における全脱アミド化率(%)の実験的決定により、より早期の試料が、より後期の試料より脱アミド化抗体を少なく含有することが実際に示された。したがって、合計脱アミド化率(%)は、バイオリアクター採集日を短縮することにより、恐らく制御でき、次いで、脱アミド化を最小限に抑える、より有利な条件を確立することができる。しかし、抗体産生はバイオリアクター寿命を通して継続されるので、総生産性と脱アミド化との得失(トレードオフ)が明白となる。
【0268】
結果:図5は、バイオリアクター寿命の関数としての13H5の生産性測定値を示す。この特定の事例では、18日後の最終力価は1.1g/Lと測定された。この測定値は、インタクト状態、脱アミド化両方の13H5を含む。各時点での推定脱アミド化率(%)が見積もられ、その結果、「インタクトな」13H5の推定濃度も示されている。この事例では、脱アミド化率(%)が、18日目(採集時)にだけ測定されたことに留意されたい。それ以前の脱アミド化時点は、一次の脱アミド化速度(一定の脱アミド化速度定数)に基づく推定値である。この手法によって、バイオリアクターの分析及び最適化が可能となる。例えば、13H5の総生産は13日目より先まで継続される(13日目の0.9g/Lから18日目の1.1g/Lまで増加する)が、インタクト抗体の力価曲線は、この同じ期間中に実質上平坦であることが明らかになる。したがって、この実施例では、13日目にバイオリアクターを採集すると、18日目(24%)よりかなり低い(15%)最終脱アミド化率(%)が得られると共に、インタクト抗体の総生産性の損失が最小限に抑えられよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものである、上記方法。
【請求項2】
哺乳動物細胞の使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞が、NS0、CHO、MDCK又はHEK細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、N末端からC末端へと読み取った場合、グリシン、セリン、スレオニン又はアスパラギン酸残基に先行かつ隣接してアスパラギン残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記残基が、前記抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2又はVLCDR3領域の少なくとも一つに位置している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記残基が、前記抗体のVHCDR2に位置している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体の脱アミド化プロフィールが、対照の脱アミド化プロフィールと比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%又は約10%低減している、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
約30℃〜約37℃間の範囲にある温度で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記温度が約34℃である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
pHが約6.0〜約7.2 pH単位の範囲の培地中で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記pHが約6.9 pH単位である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
二相培養で増殖させた細胞から抗体を産生することを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記二相培養が、少なくとも一回の温度シフトを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度シフトが、約34℃から約32℃へのシフトを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度シフトが、細胞培養密度が1×106細胞/mlに達した時又はその後で起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
採集時における培地のpH変化を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記pHが、約5.0〜約7.0 pH単位の範囲に調節される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記pHが約6.9 pH単位に調節される、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
細胞採集後に、pH変化を含むホールドステップを含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記pHが、約5.0〜約7.0 pH単位の範囲に調節される、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
希釈ステップを含む、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記希釈ステップが、ライン内希釈又は槽内希釈ステップである、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
限外濾過ステップを含まない、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
約17日未満の滞留時間を有する、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
約13日の滞留時間を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体がインターフェロンαに特異的である、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が13H5である、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
脱アミド化プロフィールが低減した抗体の産生方法であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すと思われるものであり、以下のステップ:
(a)約33℃〜約35℃の温度で増殖させた細胞から抗体を産生するステップであって、前記細胞を約6.7〜約7.1 pH単位のpH値を有する培地中で増殖させるステップ、及び
(b)前記細胞を約13〜約19日間培養するステップ
を含む方法。
【請求項29】
前記細胞を13日間培養する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が13H5である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
脱アミド化プロフィールが低減した安定なモノクローナル抗体組成物であって、前記抗体が、前記抗体の脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すアミノ酸配列を含む、上記抗体組成物。
【請求項32】
前記抗体が抗インターフェロンα抗体である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗体が、N末端からC末端へと読み取った場合、グリシン、セリン、スレオニン又はアスパラギン酸残基に先行かつ隣接してアスパラギン残基を含む、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項34】
前記残基が、前記抗体のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2又はVLCDR3領域の少なくとも一つに位置している、請求項31〜33のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
前記残基が、前記抗体のVHCDR2に位置している、請求項31〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
前記抗体の脱アミド化プロフィールが、対照の脱アミド化プロフィールと比較して、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%又は約10%低減している、請求項31〜35のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
前記抗体が抗体フラグメントである、請求項31〜36のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
前記抗体フラグメントが、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント及びscFvからなる群から選択される、請求項31〜37のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物が、約34℃の温度で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、前記抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップを含むプロセスで産生される、請求項31〜38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
(a)約34℃の第1の温度で抗体産生細胞を増殖させるステップ、
(b)細胞密度が約1×106細胞/mlに達したときに、前記細胞を約32℃の第2の温度にシフトするステップ、及び
(c)前記抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップ
を含むプロセスにより産生される、請求項31〜39のいずれかに記載の抗体組成物。
【請求項41】
脱アミド化プロフィールが低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すものであり、約34℃で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、該抗体産生細胞を約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖させるステップを含むプロセスにより産生される、抗体組成物。
【請求項42】
細胞密度が約1×106細胞/mlに達した時又はその後で、前記温度を約32℃にシフトするステップを更に含むプロセスにより産生される、請求項41に記載の抗体組成物。
【請求項43】
脱アミド化プロフィールが低減した抗体組成物であって、該抗体が、そうしなければ脱アミド化プロフィールを増加させる傾向を示すものであり、約32℃〜約35℃で抗体産生細胞を増殖させるステップであって、前記細胞を約6.7〜約7.1単位のpHを有する培地中で増殖させるステップと、約12〜約19日間にわたり前記抗体産生細胞を培養するステップを含むプロセスにより産生される、抗体組成物。
【請求項44】
前記細胞が約34℃で増殖される、請求項43に記載の抗体組成物。
【請求項45】
前記細胞が約6.9 pH単位のpHを有する培地中で増殖される、請求項43又は44に記載の抗体組成物。
【請求項46】
前記細胞が約13日間培養される、請求項41〜45のいずれかに記載の抗体組成物。
【請求項47】
前記抗体が13H5である、請求項41〜46のいずれかに記載の組成物。
【請求項48】
脱アミド化プロフィールが増加する傾向を示す抗体を精製する方法であって、精製中に前記抗体の脱アミド化種を除去するための洗浄ステップを含む、上記方法。
【請求項49】
前記洗浄ステップが、約0mM〜約100mMの塩濃度を有する緩衝液を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記塩濃度が約30mMである、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記緩衝剤がリン酸ナトリウムである、請求項48〜50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
イオン交換クロマトグラフィーステップを含む、請求項48〜51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
請求項1〜30のいずれかに記載の方法を更に含む、請求項48〜52のいずれかに記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−523085(P2010−523085A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501162(P2010−501162)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/058133
【国際公開番号】WO2008/121616
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【Fターム(参考)】