説明

脱水有機廃棄物の含水率低減方法と低含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料並びに脱水有機廃棄物の含水率低減設備

【課題】家畜排泄物や食品廃棄物を含む脱水有機廃棄物の含水率を低減することにより、エネルギー源としての有効利用を図ることができ、さらにはセメント焼成設備の燃料として有効利用することができる脱水有機廃棄物の含水率低減方法と低含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料並びに脱水有機廃棄物の含水率低減設備を提供する。
【解決手段】本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法は、家畜排泄物や食品廃棄物を含む脱水ケーキCを含水率低減設備31のメッシュ32上に投入し、脱水ケーキCに含まれる水分をメッシュ32から浸出させて脱水し、低含水率脱水ケーキC’とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水有機廃棄物の含水率低減方法と低含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料並びに脱水有機廃棄物の含水率低減設備に関し、更に詳しくは、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物等の有機廃棄物を含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減することが可能な脱水有機廃棄物の含水率低減方法、この含水率低減方法により得られた低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥することにより塩素濃度及び含水率の低いバイオマス燃料としての利用が可能な低含水率有機廃棄物の燃料化方法、この低含水率の有機廃棄物を用いたバイオマス燃料、脱水有機廃棄物の含水率を低減する脱水有機廃棄物の含水率低減設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的であるが、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
特に、近年、家畜排泄物の管理に関する適正化法が施行されたことにもより、畜糞尿を含む家畜排泄物の多くが肥料化されることが予想される一方、農地の減少傾向により使用される肥料の総量も減少傾向にある。そこで、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するために、肥料以外の用途の多角化が急務になっており、エネルギーとしての利用もその一つである。
【0003】
一般に、家畜排泄物は35質量%以下の低含水率状態では高位の発熱量を有するものであるが、低含水率状態とするためには、長時間の自然乾燥や化石燃料を用いた加熱乾燥を必要とするために、エネルギーとしての利用はごく一部では行われているものの総体的には進んでいない。
図7は、従来の豚舎から排出される豚糞及び洗浄水を含む豚糞スラリーを脱水して得られた脱水ケーキの含水率を低減する含水率低減設備を備えた処理設備の一例を示す断面図であり、図において、1は豚糞スラリーを脱水し固形状の脱水ケーキ(脱水有機廃棄物)Cとする脱水機、2は脱水機1の取り出し側に設けられ脱水ケーキCの含水率を低減する含水率低減設備である。
この含水率低減設備2は、脱水ケーキCを長期間静置して自然乾燥することにより、この脱水ケーキCの含水率を低減するもので、ステンレス鋼や硬質プラスチック等からなる収納庫3の側壁の一部が取り払われて低含水率の脱水ケーキを取り出す取り出し口とされている。
【0004】
この設備では、脱水処理することにより含水率を80質量%以上かつ90質量%以下とした固形状の脱水ケーキCを、含水率低減設備2にて長期間静置して自然乾燥することにより、含水率が50質量%以上かつ75質量%以下の脱水ケーキC’としている。
このようにして得られた脱水ケーキC’は、その後乾燥または加熱乾燥され、さらに粉砕または解砕されて直径が10mm以下の粒子状とされ、セメント焼成設備等に供給されてバイオマス燃料として有効利用される。
【0005】
一方、現在行われている家畜排泄物のエネルギー利用としては、鶏糞を発電や廃棄物ボイラーの燃料として用いたり、牛や豚の糞尿をメタン発酵させてメタンガスを主成分とするバイオガスを生成させ、このバイオガスを燃料として用いる等がある。
このような家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や設備が提案されており、例えば、次のような提案がなされている。
(1)鶏糞、家畜糞等の含水廃棄処理物を、蒸気管と燃焼室を備えた熱風炉と多段式の乾燥炭化炉との間に発生蒸気の循環系統を配設して密閉系内で熱源を循環させながら炭化物及び灰化物を生成する方法(特許文献1)。
この方法では、乾燥炭化炉から炭化物を、熱風炉から灰化物を、それぞれ回収することで、二次利用可能な炭化物及び灰化物を同時に資源回収するとともに、省資源化と無公害化の推進を図っている。
(2)畜糞を乾燥させる乾燥機と、乾燥された畜糞を小粒と大粒に分離する分離機と、分離された小粒の乾燥畜糞を焼却処理する焼却炉と、乾燥未完了の畜糞を破砕して金属類の混入異物を露出するとともに、この混入異物を磁石を介して除去する磁石付振動式篩とを有する畜糞乾燥焼却設備(特許文献2)。
この設備では、畜糞原料に混入している石、金属などの金属類異物を簡単容易に撤去することで、金属類異物に起因する機械のトラブルを未然に回避するとともに、この畜糞を焼却処理することにより発生する熱を有効利用している。
【特許文献1】特開2004−330092号公報
【特許文献2】特開2005−156085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の豚糞スラリーの処理施設では、脱水ケーキの含水率を所望の値となるまで低減するためには、含水率低減設備にて長期間静置して自然乾燥する必要があり、処理施設の処理能力を上げることができないという問題点があった。
一方、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や設備が提案されているが、これらの方法や設備においても、次のような問題点があった。
鶏糞をエネルギー源として利用しようとした場合、鶏糞のエネルギー利用を阻んでいる主たる点は、塩素含有量が高いという点である。鶏糞の塩素含有量が高いと、この塩素成分のために燃焼設備が腐食したり、あるいは低融点塩素化合物が発生して配管等の様々な箇所で閉塞等の様々なトラブルが発生する虞があるという問題点があった。
【0007】
また、この鶏糞を、例えば、セメント焼成設備に燃料として投入した場合、それに含まれる塩素成分がセメントクリンカに混入してセメントの品質を低下させる虞がある。また、塩素成分がセメント焼成設備を腐食させる等のトラブルが発生する虞があるために、セメントの操業に悪影響を及ぼす虞がある。
また、牛や豚の糞尿がエネルギー利用され難いのは、鶏糞と同様に塩素含有量が高いことと、含水率が80%前後と高いために、燃料として用いた場合、燃焼時に発生する熱エネルギーが糞尿に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまい、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが難しいからである。
このように、様々な理由から、家畜排泄物や食品廃棄物等を含む有機廃棄物のエネルギー源としての有効利用ははかばかしくないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物等を含む脱水有機廃棄物の含水率を低減することにより、エネルギー源としての有効利用を図ることができ、さらにはセメント焼成設備の燃料として有効利用することができる脱水有機廃棄物の含水率低減方法と低含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料並びに脱水有機廃棄物の含水率低減設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、家畜排泄物や食品廃棄物を含む有機廃棄物スラリーを脱水した脱水有機廃棄物を、含水物質から水分を浸出させる水浸出手段または水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面上に導入し、この水浸出手段または傾斜面により前記脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて外方へ排水すれば、低含水率有機廃棄物を得ることができ、さらに、この低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥すれば、バイオマス燃料等のエネルギー源として、さらにはセメント焼成設備のバイオマス燃料として有効利用することができ、しかもセメント焼成設備の操業やセメント品質に悪影響を及ぼす虞が無いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の脱水有機廃棄物の含水率低減方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であって、前記脱水有機廃棄物を、含水物質から水分を浸出させる水浸出手段に導入し、前記脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて排水し、低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0011】
この方法では、脱水有機廃棄物を、含水物質から水分を浸出させる水浸出手段に導入し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて排水することにより、簡単な操作のみで脱水有機廃棄物をさらに脱水することが可能になり、従来よりもまして低含水率の有機廃棄物となる。また、脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させることで塩素および/または塩素化合物も同時に除去され、塩素濃度が極めて低い低含水率の有機廃棄物となる。よって、この低含水率有機廃棄物は、低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料として有効利用することが可能となる。
また、塩素濃度が極めて低いために、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、この低含水率有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0012】
本発明の第2の脱水有機廃棄物の含水率低減方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であって、前記脱水有機廃棄物を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面上に導入し、前記脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて前記傾斜面の下端側から排水し、低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0013】
この方法では、脱水有機廃棄物を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面上に導入し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて傾斜面の下端側から排水することにより、簡単な操作のみで脱水有機廃棄物をさらに脱水することが可能になり、従来よりもまして低含水率の有機廃棄物となる。また、脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させることで塩素および/または塩素化合物も同時に除去され、塩素濃度が極めて低い低含水率の有機廃棄物となる。よって、この低含水率有機廃棄物は、低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料として有効利用することが可能となる。
また、塩素濃度が極めて低いために、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、この低含水率有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0014】
前記脱水有機廃棄物の含水率は、80質量%以下であることが好ましい。
脱水有機廃棄物の含水率を80質量%以下とすることにより、得られた低含水率有機廃棄物の含水率をそれ以下とすることが可能になり、よって、燃料として用いた場合においても、燃焼時に発生する熱エネルギーが脱水有機廃棄物に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまうことが無くなり、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが可能になる。
【0015】
本発明の低含水率有機廃棄物の燃料化方法は、本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法により得られた低含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、前記低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0016】
この燃料化方法では、低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることにより、得られた乾燥有機廃棄物は、含水率及び塩素濃度が極めて低くかつ高位の発熱量を有しており、燃焼効率が高いバイオマス燃料として有効利用することが可能である。
また、この乾燥有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0017】
前記加熱乾燥における熱源は、太陽熱、前記有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱のいずれか一方、または双方であることが好ましい。
太陽熱、有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱のいずれか一方、または双方を用いて加熱乾燥することにより、化石燃料を用いずに加熱乾燥することが可能になり、よって、省エネルギー効果が大きく、かつ、環境負荷も小さなものとなる。
【0018】
前記低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥した後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことが好ましい。
低含水率有機廃棄物は、乾燥または加熱乾燥した後では、通常、球状、塊状(ブロック状)、板状等、比較的大きな形状を有している。そこで、乾燥または加熱乾燥した低含水率有機廃棄物に対して分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより、所望の形状の粉粒体とすることが可能である。
【0019】
本発明のバイオマス燃料は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥したバイオマス燃料であって、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下であることを特徴とする。
【0020】
このバイオマス燃料では、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を35質量%以下としたことにより、燃焼時に発生する熱エネルギーが低含水率有機廃棄物に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまう虞が無くなり、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが可能になる。
また、塩素濃度が低く、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0021】
本発明の第1の脱水有機廃棄物の含水率低減設備は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する設備であって、前記脱水有機廃棄物を収納する収納部に、前記脱水有機廃棄物から水分を浸出させる水浸出手段を設け、この水浸出手段の下部または下方に前記脱水有機廃棄物から浸出した水分を外部へ排出する排出手段を設け、前記脱水有機廃棄物を前記水浸出手段に導入し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を前記水浸出手段により浸出させて前記排出手段により排水することにより、前記脱水有機廃棄物を低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0022】
この含水率低減設備では、水浸出手段により脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて脱水有機廃棄物から除去し、この浸出した水分を排出手段により外部へ排水する。
これにより、低塩素濃度かつ低含水率の有機廃棄物を簡単な操作で容易に作製することが可能になる。
【0023】
前記水浸出手段は、網部材、複数の孔が穿孔された板部材、回転篩、揺動篩、旋動篩のいずれか1種以上を備えていることが好ましい。
前記網部材または前記板部材を、水平面内の一方向に対して傾斜してなることが好ましい。
【0024】
本発明の第2の脱水有機廃棄物の含水率低減設備は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する設備であって、前記脱水有機廃棄物を収納する収納部の底面の少なくとも一部を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面とし、この傾斜面の下端部または下方に、前記脱水有機廃棄物から浸出した水分を外部へ排出する排出手段を設け、前記脱水有機廃棄物を前記傾斜面上に静置し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて前記傾斜面により前記排出手段に導入して排水することにより、前記脱水有機廃棄物を低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0025】
この含水率低減設備では、傾斜面により脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させ該傾斜面に沿って流下させて脱水有機廃棄物から除去し、この浸出した水分を排出手段により外部へ排水する。
これにより、低塩素濃度かつ低含水率の有機廃棄物を簡単な操作で容易に作製することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1の脱水有機廃棄物の含水率低減方法によれば、脱水有機廃棄物を、含水物質から水分を浸出させる水浸出手段に導入し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて排水するので、低塩素濃度かつ低含水率の有機廃棄物を容易に得ることができる。したがって、この有機廃棄物を低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料として有効利用することができる。
また、塩素濃度が極めて低いので、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、この低含水率有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0027】
本発明の第2の脱水有機廃棄物の含水率低減方法によれば、脱水有機廃棄物を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面上に導入し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて前記傾斜面の下端側から排水するので、低塩素濃度かつ低含水率の有機廃棄物を容易に得ることができる。したがって、この有機廃棄物を低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料として有効利用することができる。
また、塩素濃度が極めて低いので、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、この低含水率有機廃棄物をセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0028】
本発明の低含水率有機廃棄物の燃料化方法によれば、低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とするので、低含水率及び低塩素濃度でありかつ高位の発熱量を有し、しかも燃焼効率が高い有機廃棄物からなるバイオマス燃料を容易かつ安価に得ることができる。
また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【0029】
本発明の第1の脱水有機廃棄物の含水率低減設備によれば、脱水有機廃棄物を収納する収納部に、脱水有機廃棄物から水分を浸出させる水浸出手段を設け、この水浸出手段の下部または下方に脱水有機廃棄物から浸出した水分を外部へ排出する排出手段を設けたので、低塩素濃度かつ低含水率の有機廃棄物を簡単な操作で容易に作製することができる。
【0030】
本発明の第2の脱水有機廃棄物の含水率低減設備によれば、脱水有機廃棄物を収納する収納部の底面の少なくとも一部を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面とし、この傾斜面の下端部または下方に、脱水有機廃棄物から浸出した水分を外部へ排出する排出手段を設けたので、低塩素濃度かつ低含水率の有機廃棄物を簡単な操作で容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の脱水有機廃棄物の含水率低減方法と低含水率有機廃棄物の燃料化方法及びバイオマス燃料並びに脱水有機廃棄物の含水率低減設備の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0032】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図であり、図において、11は脱水機、12は脱水機11の取り出し側に設けられた含水率低減設備である。
【0033】
脱水機11は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水処理して固形状の脱水ケーキCと水分とに固液分離することができるものであればよく、濾過機、加圧濾過機、遠心脱水機、スクリュープレス等の各種脱水機が使用でき、特に、短時間で固液分離ができるスクリュープレスが好ましい。
【0034】
含水率低減設備12は、脱水機11にて脱水処理して得られた固形状の脱水ケーキCに含まれる水分を浸出させて除去する設備であり、脱水ケーキCを収納する略ロート状のホッパ部(収納部)13と、ホッパ部13の下端部の開口に着脱可能に設けられ脱水ケーキCから水分を浸出させるメッシュ(網部材)14と、メッシュ14を通過した水分を排水する排水溝15とにより構成されている。
メッシュ14は、例えば、円形状あるいは矩形状の枠に網を張ったステンレス製のもので、この網目の目開きは、脱水ケーキCに含まれる水分を浸出させることができる程度の目開きであればよく、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
このメッシュ14の替わりに複数の孔が穿孔されたプレート(板部材)を用いてもよい。
【0035】
次に、この含水率低減設備12を用いて固形状の脱水ケーキCの含水率を低減する方法について説明する。
ここで、有機廃棄物スラリーとは、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物等を含む有機廃棄物と、水とを含むスラリーであり、このスラリーの含水率が60質量%以上、好ましくは70質量%以上のものである。
上記の家畜排泄物や食品廃棄物は、その用途や必要に応じて、家畜排泄物を1種、または食品廃棄物を1種としてもよく、あるいは、家畜排泄物及び食品廃棄物全体から2種以上を選択し、混合してもよい。
【0036】
まず、この有機廃棄物スラリーを、脱水機11を用いて脱水処理し、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が80質量%以下、好ましくは85質量%以下の固形状の脱水ケーキCとする。
この脱水機11から排出される排水は、排水処理設備(図示略)により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0037】
次いで、この脱水ケーキCを含水率低減設備12のホッパ部13に投入し、所定時間、例えば、1〜24時間静置する。この静置の間に脱水ケーキCに含まれる水分は、その自重により下方に移動し、メッシュ14から浸出する。メッシュ14を通過した水分は、排水溝15により排出され、その後、排水処理設備(図示略)により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0038】
この含水率低減方法では、脱水ケーキCを含水率低減設備12のホッパ部13に投入して静置することにより、この脱水ケーキCに含まれる水分をメッシュ14から浸出させて排出するので、脱水ケーキCを更に低含水化することができる。
また、脱水ケーキCに含まれる水分をメッシュ14から浸出させて排出する際に、この脱水ケーキCに含まれる塩素および/または塩素化合物も同時に排出されるので、塩素濃度が極めて低くかつ低含水率の脱水ケーキを容易に得ることができる。
以上により、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が80質量%以下の低含水率ケーキ(低含水率有機廃棄物)C’を、簡単な設備で容易に得ることができる。
【0039】
次に、この低含水率ケーキを燃料化するための方法について説明する。
図2は、本実施形態の燃料化方法に用いられる燃料化設備を示す模式図であり、図において、21は乾燥設備、22は乾燥機、23は粉砕機である。
【0040】
乾燥設備21は、低含水率ケーキ(低含水率有機廃棄物)C’を乾燥させるために、この低含水率ケーキC’に含まれる家畜排泄物や食品廃棄物の種類や量に応じて太陽熱単独あるいは太陽熱及び自然の風力による天日乾燥、自然の風力あるいは他の設備からの排気等を利用した風力乾燥、有機廃棄物の発酵に伴う発酵熱による発酵乾燥のいずれか1種、あるいは2種以上を選択することができる設備であり、有機廃棄物の発酵乾燥を行う縦型撹拌式発酵設備、横型開放式発酵設備等の発酵設備と、太陽熱、自然の風力、他の設備からの排気等を利用して低含水率ケーキの天日乾燥あるいは風力乾燥を行うハウスとを備えている。
なお、この乾燥設備21は、有機廃棄物に含まれる家畜排泄物や食品廃棄物の種類や量が限定される場合には、それらの用途に応じて、発酵設備、ハウスのいずれか一方のみにより構成してもよい。
【0041】
乾燥機22は、乾燥設備21で天日乾燥された乾燥ケーキの含水率を調整したり、さらに乾燥したり等に用いられる設備であり、特に、用途に応じて乾燥、加熱乾燥を使い分けることができるという使い勝手の点でヒータ内蔵の乾燥機が好ましい。
粉砕機23は、乾燥設備21(あるいは乾燥機22)から取り出された固形状の乾燥ケーキ(乾燥有機廃棄物)を粉砕または解砕して直径10mm以下の粒子状とする設備であり、自動乳鉢、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
【0042】
上記の低含水率ケーキC’の乾燥または加熱乾燥は、乾燥設備21を用いて、天日乾燥、風力乾燥、発酵乾燥のいずれか1種または2種以上を組み合わせて行う。
例えば、上記の低含水率ケーキC’を乾燥設備21内に搬入し、太陽熱等の自然エネルギーを利用した天日乾燥、風力等の自然エネルギーあるいは他の設備からの排気等を利用した風力乾燥、縦型撹拌式発酵設備や横型開放式発酵設備等の発酵設備から発生する発酵熱を用いた発酵乾燥等のうち1種、あるいは2種以上を組み合わせて上記の低含水率ケーキC’の乾燥を行い、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とする。
なお、この低含水率ケーキC’を発酵設備を用いて発酵させると同時に、この発酵熱を用いて乾燥を行えば、効率的な乾燥処理を行うことができる。この発酵設備では、発酵により生じる臭気及び水分を含む空気を水槽内に導入することにより、この臭気及び水分を取り除いているので、臭気等が外部へ漏れる虞はない。
【0043】
このようにして得られた乾燥有機廃棄物は、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下と低く、かつ高位の発熱量を有しているので、工業用各種燃料としての利用が可能である。
この乾燥有機廃棄物は、単に乾燥しただけでは、球状、塊状、板状等、比較的大きな形状をしていることが多い。用途によってはこのままの形状でもよいが、セメント焼成設備等にて用いる場合等では、粉砕機23を用いて分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、直径10mm以下の粒子状とするのがよい。
【0044】
この乾燥有機廃棄物をセメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部等に投入することにより、セメント焼成用燃料としての有効利用が可能である。
また、この乾燥有機廃棄物の含水率をさらに減少させたい場合には、乾燥機22を用いて所定の温度にて所定時間乾燥処理を施すことにより、含水率が極めて低い乾燥有機廃棄物を得ることができる。
【0045】
「バイオマス燃料」
本実施形態のバイオマス燃料は、上記の低含水率ケーキC’を乾燥または加熱乾燥して得られた低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料である。その塩素濃度は3000ppm以下が好ましく、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
また、含水率は35質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0046】
このバイオマス燃料では、塩素濃度を3000ppm以下かつ含水率を35質量%以下としたことにより、燃焼時に発生する熱エネルギーが低含水率有機廃棄物に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまう虞が無くなり、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが可能になる。
また、塩素濃度が低く、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の含水率低減方法によれば、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が80質量%以下の低含水率ケーキを容易に得ることができる。したがって、この低含水率ケーキを低含水率かつ低塩素濃度のバイオマス燃料として有効利用することができる。
また、塩素濃度が極めて低いので、燃焼設備等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、この低含水率ケーキをセメント焼成設備に燃料として投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
【0048】
本実施形態の燃料化方法によれば、塩素濃度が3000ppm以下、含水率が35質量%以下、かつ高位の発熱量を有し、しかも燃焼効率が高い有機廃棄物からなるバイオマス燃料を容易かつ安価に得ることができる。
また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【0049】
本実施形態の含水率低減設備によれば、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が80質量%以下の低含水率ケーキを、簡単な設備で容易に得ることができる。
【0050】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減設備を備えた処理設備を示す模式図であり、本実施形態の含水率低減設備が第1の実施形態の含水率低減設備と異なる点は、第1の実施形態の含水率低減設備では、含水率低減設備12をホッパ部13とメッシュ14と排水溝15とにより構成したのに対し、本実施形態の含水率低減設備31では、固形状の脱水ケーキCを静置し水分を浸出させるメッシュ(網部材)32と、メッシュ32の表面を脱水機11の近傍から外方かつ下方へ向かって傾斜する(水平面内の一方向に対して傾斜する)傾斜面32aとした状態で固定具(図示略)を用いて着脱可能に固定するステンレス鋼からなる収納庫(収納部)33と、収納庫33の底面に形成されメッシュ32を通過した水分を排水する排水溝34とにより構成し、メッシュ32の表面を収納庫33の底面(水平面)に対して角度θの傾斜面32aとした点である。
【0051】
このメッシュ32は、円形状(あるいは矩形状)の枠35に網36を張ったステンレス製のもので、このメッシュ32の傾斜面32aの収納庫33の底面との角度θは、脱水ケーキCから効率よく水分を浸出させるために70°以下とされている。
【0052】
次に、この含水率低減設備を用いて固形状のケーキCの含水率を低減する方法について説明する。
この脱水ケーキCを含水率低減設備31のメッシュ32上に投入し、所定時間、例えば、1〜24時間静置する。この静置の間に脱水ケーキCに含まれる水分は、その自重により下方に移動し、メッシュ32から浸出する。メッシュ32を通過した水分は、排水溝34により排出され、その後、排水処理設備(図示略)により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0053】
この含水率低減方法では、脱水ケーキCを含水率低減設備31のメッシュ32上に投入し静置することにより、この脱水ケーキCに含まれる水分をメッシュ32から浸出させて排出するので、脱水ケーキCを更に低含水率とすることができる。
また、脱水ケーキCに含まれる水分をメッシュ32から浸出させて排出する際に、この脱水ケーキCに含まれる塩素および/または塩素化合物も同時に排出されるので、塩素濃度が極めて低くかつ低含水率の脱水ケーキを容易に得ることができる。
【0054】
以上により、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が80質量%以下の低含水率ケーキ(低含水率有機廃棄物)C’を、簡単な設備で容易に得ることができる。
この低含水率ケーキC’を燃料化する方法は、第1の実施形態と全く同様であるから、説明を省略する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0055】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減設備を備えた処理設備を示す模式図であり、本実施形態の含水率低減設備が第2の実施形態の含水率低減設備と異なる点は、第2の実施形態の含水率低減設備では、メッシュ32の表面を脱水機11の近傍から外方かつ下方へ向かって傾斜する傾斜面32aとしたのに対し、本実施形態の含水率低減設備41では、収納庫33上にメッシュ32を水平に支える支持部42を立設し、メッシュ32を収納庫33及び支持部42それぞれに設けられた支持部材43にて支持することでメッシュ32の表面を水平面32bとした点である。
本実施形態の低含水率ケーキC’を燃料化する方法は、第1の実施形態と全く同様であるから、説明を省略する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減設備を備えた処理設備を示す模式図であり、図において、51は脱水機11の取り出し側の収納庫33の端部近傍に設けられた含水率低減設備である。
【0057】
この含水率低減設備51は、脱水ケーキCを収納するステンレス鋼や硬質プラスチック等からなる収納庫52の端部に設けられたもので、回転篩(トロンメル)、揺動篩、旋動篩のいずれか1種、または2種以上により構成されている。
これら回転篩(トロンメル)、揺動篩、旋動篩の網目の目開きは、脱水ケーキCに含まれる水分を浸出させることができる程度の目開きであればよく、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0058】
次に、この含水率低減設備51を用いて固形状のケーキCの含水率を低減する方法について説明する。
脱水機11から排出された固形状の脱水ケーキCを、一旦収納庫33に収納した後、所定量の脱水ケーキCを含水率低減設備51の回転篩に投入する。この回転篩では、篩面を水平面から約5°傾斜した軸の回りに回転させることで脱水ケーキC中の水分を篩分けし、この水分を篩面から外方へ浸出させる。この篩面を通過した水分は、排水溝(図示略)により外方へ排出され、その後、排水処理設備(図示略)により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0059】
以上により、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が80質量%以下の低含水率ケーキを、簡単な設備で容易に得ることができる。
また、脱水ケーキCに含まれる水分を篩面から浸出させて排出する際に、この脱水ケーキCに含まれる塩素および/または塩素化合物も同時に排出されるので、塩素濃度が極めて低くかつ低含水率の脱水ケーキC’を容易に得ることができる。
本実施形態の低含水率ケーキC’を燃料化する方法は、第1の実施形態と全く同様であるから、説明を省略する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
[第5の実施形態]
図6は、本発明の第5の実施形態の脱水有機廃棄物の含水率低減設備を備えた処理設備を示す模式図であり、図において、61は脱水機11の取り出し側に設けられた含水率低減設備である。
【0061】
この含水率低減設備61は、脱水機11にて脱水処理して得られた固形状の脱水ケーキCに含まれる水分を浸出させて除去する設備であり、底面が脱水機11側から斜め下方へ向かって傾斜する(水平面内の一方向に対して傾斜する)傾斜面62aとされ脱水ケーキCを収納する収納庫(収納部)62と、傾斜面62a上の脱水ケーキCから浸出した水分を排水する排水溝63とにより構成されている。
この傾斜面62aの水平面との角度θは、脱水ケーキCから効率よく水分を浸出させるために10°〜70°の範囲とされている。
【0062】
次に、この含水率低減設備61を用いて固形状のケーキCの含水率を低減する方法について説明する。
この脱水ケーキCを含水率低減設備61の収納庫62の傾斜面62a上に投入し、所定時間、例えば、1〜24時間静置する。この静置の間に脱水ケーキCに含まれる水分は、その自重により傾斜面62aに沿って下方に移動し、浸出する。この水分は、排水溝63により排出され、その後、排水処理設備(図示略)により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0063】
以上により、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が80質量%以下の低含水率ケーキ(低含水率有機廃棄物)C’を、簡単な設備で容易に得ることができる。
本実施形態の低含水率ケーキC’を燃料化する方法は、第1の実施形態と全く同様であるから、説明を省略する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
脱水ケーキとして、含水率90質量%、塩素濃度2500ppmの豚糞脱水ケーキを用いた。
この豚糞脱水ケーキ100kgを、図6に示す含水率低減設備61の傾斜面62aに落下・堆積させ、豚糞脱水ケーキから浸出した水分を排水溝63から排出し、含水率70質量%、塩素濃度650ppmの豚糞脱水ケーキを33kg得た。
【0066】
次いで、この豚糞脱水ケーキを乾燥設備21内に搬入し、太陽熱及び風力を利用して天日乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度650ppmの乾燥豚糞を13kg得た。天日乾燥による豚糞脱水ケーキからの脱水量は20kgであった。
【0067】
(比較例1)
脱水ケーキとして、含水率90質量%、塩素濃度2500ppmの豚糞脱水ケーキを用い、この豚糞脱水ケーキ100kgを乾燥機22に投入して加熱乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度2500ppmの乾燥豚糞を13kg得た。加熱乾燥による豚糞脱水ケーキからの脱水量は87kgであった。
【0068】
以上により、実施例1では、比較例1と比べて豚糞脱水ケーキからの脱水量が67kg減少しており、加熱乾燥に要する熱量を36200kcal低減することができた。
【0069】
(実施例2)
脱水ケーキとして、含水率85質量%、塩素濃度1500ppmの豚糞脱水ケーキを用いた。
この豚糞脱水ケーキ100kgを、図5に示す含水率低減設備51のトロンメルに投入して回転・脱水し、含水率65質量%、塩素濃度490ppmの豚糞脱水ケーキを43kg得た。
【0070】
次いで、この豚糞脱水ケーキを乾燥設備21内に搬入し、太陽熱及び風力を利用して天日乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度490ppmの乾燥豚糞を20kg得た。天日乾燥による豚糞脱水ケーキからの脱水量は23kgであった。
【0071】
(比較例2)
脱水ケーキとして、含水率85質量%、塩素濃度1500ppmの豚糞脱水ケーキを用い、この豚糞脱水ケーキ100kgを乾燥機22に投入して加熱乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度1500ppmの乾燥豚糞を20kg得た。加熱乾燥による豚糞脱水ケーキからの脱水量は80kgであった。
【0072】
以上により、実施例2では、比較例2と比べて豚糞脱水ケーキからの脱水量が57kg減少しており、加熱乾燥に要する熱量を30800kcal低減することができた。
【0073】
(実施例3)
脱水ケーキとして、含水率85質量%、塩素濃度3000ppmの牛糞脱水ケーキを用いた。
この牛糞脱水ケーキ100kgを、図3に示す含水率低減設備31のメッシュ32上に落下・堆積させ、牛糞脱水ケーキから浸出した水分を排水溝34から排出し、含水率75質量%、塩素濃度1590ppmの牛糞脱水ケーキを60kg得た。
【0074】
次いで、この牛糞脱水ケーキを乾燥設備21内に搬入し、太陽熱及び風力を利用して天日乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度1590ppmの乾燥牛糞を20kg得た。天日乾燥による牛糞脱水ケーキからの脱水量は40kgであった。
【0075】
(比較例3)
脱水ケーキとして、含水率85質量%、塩素濃度3000ppmの牛糞脱水ケーキを用い、この牛糞脱水ケーキ100kgを乾燥機22に投入して加熱乾燥を行い、含水率25質量%、塩素濃度3000ppmの乾燥牛糞を20kg得た。加熱乾燥による牛糞脱水ケーキからの脱水量は80kgであった。
以上により、実施例3では、比較例3と比べて牛糞脱水ケーキからの脱水量が40kg減少しており、加熱乾燥に要する熱量を21600kcal低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の燃料化方法に用いられる燃料化設備を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図である。
【図7】従来の含水率低減設備を備えた処理設備を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
11 脱水機
12 含水率低減設備
13 ホッパ部
14 メッシュ
15 排水溝
21 乾燥設備
22 乾燥機
23 粉砕機
31 含水率低減設備
32 メッシュ
32a 傾斜面
32b 水平面
33 収納庫
34 排水溝
41 含水率低減設備
42 支持部
43 支持部材
51 含水率低減設備
52 収納庫
61 含水率低減設備
62 収納庫
62a 傾斜面
63 排水溝
C 脱水ケーキ
C’ 低含水率脱水ケーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であって、
前記脱水有機廃棄物を、含水物質から水分を浸出させる水浸出手段に導入し、前記脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて排水し、低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項2】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する方法であって、
前記脱水有機廃棄物を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面上に導入し、前記脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて前記傾斜面の下端側から排水し、低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項3】
前記脱水有機廃棄物の含水率は、80質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の脱水有機廃棄物の含水率低減方法。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の脱水有機廃棄物の含水率低減方法により得られた低含水率有機廃棄物を燃料化するための方法であって、
前記低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥し、塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥有機廃棄物とすることを特徴とする低含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項5】
前記加熱乾燥における熱源は、太陽熱、前記有機廃棄物の発酵過程にて発生する発酵熱のいずれか一方、または双方であることを特徴とする請求項4記載の低含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項6】
前記低含水率有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥した後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことを特徴とする請求項4または5記載の低含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項7】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる低含水率の有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥したバイオマス燃料であって、
塩素濃度が3000ppm以下かつ含水率が35質量%以下であることを特徴とするバイオマス燃料。
【請求項8】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する設備であって、
前記脱水有機廃棄物を収納する収納部に、前記脱水有機廃棄物から水分を浸出させる水浸出手段を設け、この水浸出手段の下部または下方に前記脱水有機廃棄物から浸出した水分を外部へ排出する排出手段を設け、
前記脱水有機廃棄物を前記水浸出手段に導入し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を前記水浸出手段により浸出させて前記排出手段により排水することにより、前記脱水有機廃棄物を低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする脱水有機廃棄物の含水率低減設備。
【請求項9】
前記水浸出手段は、網部材、複数の孔が穿孔された板部材、回転篩、揺動篩、旋動篩のいずれか1種以上を備えていることを特徴とする請求項8記載の脱水有機廃棄物の含水率低減設備。
【請求項10】
前記網部材または前記板部材を、水平面内の一方向に対して傾斜してなることを特徴とする請求項9記載の脱水有機廃棄物の含水率低減設備。
【請求項11】
家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含む有機廃棄物と、水とを含む有機廃棄物スラリーを脱水して得られる脱水有機廃棄物の含水率を低減する設備であって、
前記脱水有機廃棄物を収納する収納部の底面の少なくとも一部を、水平面内の一方向に対して傾斜する傾斜面とし、
この傾斜面の下端部または下方に、前記脱水有機廃棄物から浸出した水分を外部へ排出する排出手段を設け、
前記脱水有機廃棄物を前記傾斜面上に静置し、この脱水有機廃棄物に含まれる水分を浸出させて前記傾斜面により前記排出手段に導入して排水することにより、前記脱水有機廃棄物を低含水率有機廃棄物とすることを特徴とする脱水有機廃棄物の含水率低減設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−106895(P2009−106895A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283862(P2007−283862)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】