説明

脱水機能を有する包装材料

【課題】意匠性と保形性と脱水機能とを併せ持ち、安定生産できる包装材料の提供。
【解決手段】基材シート11と、この基材シート11にその周縁部Sがシールされた半透膜12との間に、高浸透圧物質13が挟持された包装材料10であって、基材シート11として、密度が0.6〜1g/cm、かつ、目付が50〜150g/mの紙類、または、目付が50〜150g/mの樹脂シートを使用する。また、基材シート11の少なくとも一方の面には印刷を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉や鮮魚などの食品の包装に好適に使用される脱水機能を有する包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を包装する包装材料として、紙類の表面に竹皮模様が印刷された包装材料(以下、人造竹皮という。)がある。人造竹皮は、意匠性を有するとともに、適度なコシを備えていて保形性に優れるため、和菓子、惣菜などの他、食肉や鮮魚などの食品の包装に広く使用されている。また、包装対象が特に食肉や鮮魚などの生ものである場合には、これらから生じたドリップが人造竹皮の外側にしみ出てしまうおそれがあるため、人造竹皮の内面には、防水処理が施される場合がある(例えば特許文献1参照。)。
ところが、このような防水処理が施されていると、ドリップが人造竹皮内に溜まってしまい、食品の味や鮮度に悪影響を及ぼすことがあった。
【0003】
一方、このようなドリップの吸収などを目的とした脱水シートが広く使用されている。この脱水シートは、一般に、食品中の水分を脱水可能な高浸透圧物質が2枚の透水性の半透膜で挟持された構成となっていて、この脱水シートで食品を包むなどして、脱水シートと食品とを接触させることにより、ドリップなどの水分が脱水シート中に取り込まれ、食品の味や鮮度が維持されるものである。
【0004】
このような脱水シートは、例えば次のようにして連続的に製造される(特許文献2の実施例5参照。)。
まず、ベルトコンベアにより、ポリビニルアルコールなどからなる第1の半透膜を連続的に搬送し、この第1の半透膜の上に高浸透圧物質を間欠的に塗布していく。その後、さらにその上に第2の半透膜を重ねて、2枚の半透膜の間に高浸透圧物質が挟まれた積層体を製造する。ついで各高浸透圧物質を囲むように、第1の半透膜と第2の半透膜とをヒートシールして、高浸透圧物質を内部に密封した脱水シートの連続体を製造する。そして、この連続体から、各脱水シートをカッターで切り離す切断工程を実施することにより、周縁部がヒートシールされ、その内部に高浸透圧物質を有する個々の脱水シートを得ることができる。
ここで、各脱水シートを切り離す際には、ポリビニルアルコールからなる半透膜のように靭性が高く薄いものでも、目的の箇所を良好に切断しやすいことから、円盤状の回転刃を備え、連続体の幅方向を往復して所定の箇所を切断するロータリーシェアーカッターが使用されている。
【特許文献1】実開平06−049327号公報
【特許文献2】特開平08−156977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の脱水シートは、食品からのドリップを吸収でき、食品の味や鮮度を維持できるものの、コシがなく保形性を備えていないため、包装材料としての使用には制限があった。
そこで、本発明者らは、人造竹皮のように意匠性と保形性とを備えているとともに、脱水機能をも有し、食品の味や鮮度に悪影響を及ぼさない包装材料について鋭意検討した。その結果、例えば上述した方法で脱水シートを製造する際に、高浸透圧物質が塗布される材料として、第1の半透膜の代わりに、シール性を備えた人造竹皮を基材シートとして採用することで、竹皮模様を備えた基材シートと半透膜の間に高浸透圧物質が挟持され、意匠性と保形性と脱水機能とを併せ持った包装材料を提供できることに想到した。
【0006】
ところが、実際にこのような構成の包装材料の製造を試みたところ、切断工程において、連続体から各包装材料をロータリーシェアーカッターで切り離そうとすると、連続体がカッターに引きづられて動いてしまい、安定な切断が行えなくなる場合があった。切断工程において連続体が動かないようにするには、これをピンチロールなどでしっかりと押さえつつ、切断することも考えられるが、この連続体は、流動性のある高浸透圧物質を内部に有するものであるため、これをピンチロールなどでしっかりと押さえることは困難であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、意匠性と保形性と脱水機能とを併せ持ち、安定生産できる包装材料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、上述した切断工程を安定に行うことができ、かつ、保形性に優れた包装材料を得るためには、使用する基材シートの物性の制御が重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の包装材料は、基材シートと、該基材シートにその周縁部がシールされた半透膜との間に、高浸透圧物質が挟持された包装材料であって、前記基材シートは、密度が0.6〜1g/cm、かつ、目付が50〜150g/mの紙類であり、その少なくとも一方の面に印刷が施されていることを特徴とする。
本発明の第2の包装材料は、基材シートと、該基材シートにその周縁部がシールされた半透膜との間に、高浸透圧物質が挟持された包装材料であって、前記基材シートは、目付が50〜150g/mの樹脂シートであり、その少なくとも一方の面に印刷が施されていることを特徴とする。
前記基材シートの前記半透膜側の面には、酸無水物に由来する単位を含有するポリオレフィンからなる接着層が設けられ、該接着層を介して、前記周縁部がシールされていることをが好ましい。
前記接着層は、少なくとも前記半透膜の全面に対応する部分に設けられているとともに、前記接着層における前記高浸透圧物質との接触面には、コロナ処理が施されていることが好ましい。
前記半透膜は、ポリビニルアルコールまたはポリエーテル・エステル・アミドブロック共重合体からなることが好ましい。
本発明の食品は、前記包装材料で包装されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、意匠性と保形性と脱水機能とを併せ持ち、安定生産できる包装材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の包装材料は、周縁部が互いにシールされた矩形の基材シートと半透膜との間に、高浸透圧物質が挟持されたものであって、食品を包むための包装シートとして使用されたり、真空包装時などにおいて袋体に食品が入れられる場合に、食品を載置する台紙として使用されたりするものである。この包装材料は高浸透圧物質による脱水機能を備えていて、食品を包んだり、食品を載置したりする際に、半透膜の側を食品と接触させることによって、食品中の水分や食品からのドリップが半透膜を通過し、高浸透圧物質に吸収されるようになっている。
【0011】
図1は本発明の一例の包装材料10を示す部分断面斜視図であって、長さが40cm程度で、幅が10cm程度の長方形の基材シート11と半透膜12との間に、高浸透圧物質13が挟持されたものである。この包装材料10はその長尺な形状から、例えば、長手方向の中央部における半透膜12上に食肉などの食品を載置した後、長手方向の両端部を中央部に向けて折り返して食品を包むのに好適に使用される。
また、この例の包装材料10は、基材シート11において半透膜12とシールされていない側の面(以下、外面という。)11aの全面に、図示略の竹皮模様が印刷されていて、半透膜12を内側として食品を包むことにより、竹皮で包んだような意匠性を発揮するようになっている。
また、この例では、基材シート11における半透膜12側の面(以下、内面という。)11bの全面に接着層14が設けられていて、接着層14が半透膜12の全面に対応するように、すなわち、半透膜12の全面をカバーするように設けられている。
この接着層14を介して、基材シート11と半透膜12とがその周縁部Sにおいて互いにヒートシールされている。
【0012】
なお、この例では、接着層14がこのように内面11bの全面に設けられているために、高浸透圧物質13は接着層14と直に接した状態となっているが、ここで高浸透圧物質13と接着層14とは接着しておらず、接着層14における高浸透圧物質13との接触面14aに、高浸透圧物質13が薄く展延された状態となっている。また、この例では、接触面14aにはあらかじめコロナ処理が施され、その表面張力が好ましくは38mN/m以上、より好ましくは40mN/m以上となるように調整されてから、高浸透圧物質13が展延されている。このようにあらかじめ表面張力を調整しておくと、接触面14a上に高浸透圧物質13が薄く均一に展延されやすくなる。
【0013】
基材シート11としては、紙類または樹脂シートが使用される。紙類としては、食品分野で使用される包装用紙であれば特に限定されないが、クラフト紙が好ましい。また、クラフト紙のなかでも、印刷性に優れ、意匠性が高まることから、さらしクラフト紙がより好ましい。このような包装用紙の製造方法は特に限定されないが、その目付(1mあたりの質量)と厚みから計算される密度が0.6〜1g/cmで、かつ、目付が50〜150g/mであることが必要である。このような密度と目付とをともに備えた紙類を基材シート11として使用すると、適度なコシを有し保形性に優れる包装材料10が得られるとともに、この包装材料10を製造する際の切断工程を安定に行うことができる。紙類の好ましい密度は0.7〜1g/cmで、また、好ましい目付は60〜150g/m、より好ましい目付は80〜150g/mである。
【0014】
すなわち、密度が0.6g/cm未満である紙類や、目付が50g/m未満である紙類を基材シートとして使用した場合には、得られた包装材料はコシが不十分で保形性がない。よって、食品を包むのには適さないし、例えば、食品を袋体に入れる場合の台紙として使用する場合にも、作業時に包装材料が容易に折れ曲がるなどして作業性が悪く、包装材料に皺がよる場合もある。一方、目付が150g/mを超える紙類を基材シートとして使用した場合には、この包装材料を製造する際において、包装材料が複数連なった連続体をまず製造し、ついで、この連続体から各包装材料をロータリーシェアーカッターで切り離そうとした場合に、連続体がロータリーシェアーカッターに引きづられて動いてしまう。よって、切断工程を安定に行えず、包装材料の安定生産が困難になる傾向にある。また、密度が1g/cmを超える紙類は、入手自体が困難な傾向にある。
【0015】
基材シート11に使用される樹脂シートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなるものが好ましく、特にブロックポリプロピレンが好ましいが、その目付が50〜150g/mであることが必要である。また、好ましくは、発泡処理などにより、その密度が0.2〜0.7g/cmの範囲とされたものが好ましい。このような樹脂シートを基材シート11として使用すると、上述した紙類の場合と同様に、適度なコシを有し保形性に優れる包装材料10が得られるとともに、この包装材料10を製造する際の切断工程を安定に行うことができる。
【0016】
半透膜12としては、ポリビニルアルコールまたはポリエーテル・エステル・アミドブロック共重合体がフィルム状に形成されたものが好ましい。
ポリビニルアルコールからなる半透膜12は、その厚みが12〜40μmのものが好ましい。
ポリエーテル・エステル・アミドブロック共重合体は、ジカルボン酸アミドとポリアルキレングリコールとを触媒の存在下で重縮合して得られる樹脂であって、その製造方法は、例えば特開昭50−159586号公報等に記載されている。また、市販品としては、PEVAX樹脂(エルフ・アトケム・ジャパン社製)が挙げられる。この樹脂は熱可塑性樹脂分野で一般に採用されているTダイによる押出成形、インフレーション成形などの成形方法により容易にフィルム化できる。ポリエーテル・エステル・アミドブロック共重合体からなる半透膜12の好ましい厚さは10〜50μmであり、好ましい透湿度は、150〜700g・mm/l・atm・24時間(JISZ0208に準拠し40℃で測定)である。
【0017】
高浸透圧物質13としては、食品中の水分や食品からのドリップを吸収可能な脱水能力を有したものであれば制限はなく、例えば、10気圧以上の浸透圧を有する水飴、砂糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、マンニトール、ソルビトール、還元水飴などの糖類の水溶液や、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。また、これらの高浸透圧物質を使用する場合には、高浸透圧物質が吸水した場合でも、一定の粘度を維持するように特公平4−33491号公報に開示されているような水溶液糊料を、高浸透圧物質に添加して使用することが好ましい。
また、包装材料10における高浸透圧物質13の量は、10〜600g/mであれば、脱水能力と包装材料としての取扱性がともに優れ好ましい。
【0018】
接着層14の材質としては、基材シート11と半透膜12とを良好にシールできるシール性を有するものであれば特に制限はないが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、酸無水物などに由来する単位を含有するポリオレフィンが好ましく、これらの中では、実質的に水分を透過せず、半透膜12とのヒートシール性に優れる点などから、酸無水物に由来する単位を含有するポリオレフィンが好ましい。酸無水物に由来する単位を含有するポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンに無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸などの酸無水物をグラフト重合したグラフト重合体や、オレフィンと酸無水物を直接共重合した共重合体などである。これらの中で、酸無水物としては接着性に優れることから無水マレイン酸が好ましく、重合体の形態としては、グラフト重合体が好ましい。
酸無水物に由来する単位を含有するポリオレフィン中の酸無水物の含有量としては、上述のグラフト重合体の場合には、0.02〜0.3質量%が好ましく、上述の共重合体の場合には、0.1〜20質量%が好ましい。
また、接着層14の厚さとしては、コスト、成形安定性の点から5〜200μmが好ましく、5〜80μmがより好ましい。
【0019】
次にこのような包装材料10の製造方法について説明する。
まず、基材シート11を用意し、この基材シート11を搬送しながら、その片面(外面)11aに、公知の印刷法により竹皮模様を印刷する。
ついで、基材シート11の印刷されていない面(内面)11bの全面に、接着層14を押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法などの方法で形成する。
ついで、形成された接着層14の表面、すなわち接触面14aをコロナ処理し、その表面張力を調整した後、この接触面14a上に、高浸透圧物質13を間欠的に塗布していく。高浸透圧物質13の塗布方法としては特に制限はないが、下面に吐出口が形成された貯槽の該吐出口から、高浸透圧物質13を所定量吐出して、接着層14上に塗布していく方法などが好ましい。
【0020】
ついで、高浸透圧物質13を覆うように半透膜12を密着させ、基材シート11、接着層14、高浸透圧物質13、半透膜12が順に積層した積層体を形成する。そして、サイドシーラーにより、この積層体の幅方向の両側端部をヒートシールし、ついで、エンドシーラーにより、この積層体における各高浸透圧物質13間をヒートシールする。
こうして得られた包装材料10の連続体は、その後、切断工程へと送られ、まず、サイドカッターにより両側端部がトリミングされる(サイドカット)。ついで、図2に模式的に示すように、円盤状の回転刃21を備え、連続体10’の幅方向に沿って往復するロータリーシェアーカッター20により、個々の包装材料10に切り離される(エンドカット)。
【0021】
このようにして製造された包装材料10は、外面11aに竹皮模様が印刷された基材シート11と半透膜12との間に、高浸透圧物質13が挟持されたものであるため、意匠性を備えているとともに、脱水機能をも有している。よって、食品として、食肉や鮮魚などの生ものを包装する際に好適に使用される。
さらに、この包装材料10は、基材シート11として、特定の密度と目付を備えた紙類、または、特定の目付の樹脂シートを備えている。よって、その製造時の切断工程において、連続体10’がロータリーシェアーカッター20に引きづられて動くなどのトラブルが起こらず、安定生産が可能である。また、適度なコシを有し保形性に優れていて、包装材料としての特性に優れている。
【0022】
なお、図1の包装材料10は、半透膜12上に載置された食品を包む用途に好適に使用されるものであるため、食品を包んだ際に意匠性が発現するように基材シート11の外面11aに印刷が施されているが、包装材料の用途などに応じて、印刷は基材シートの内面に施されてもよいし、両面に施されてもよい。印刷が基材シートの内面に施された場合には、その印刷は、接着層、高浸透圧物質、半透膜を透して、半透膜の側から目視されることとなる。よって、包装材料が、例えば、袋体に食品が入れられる際に食品を載置するための台紙として使用される場合には、このように基材シートの内面に印刷を施すことが意匠性の点から好ましい。このような用途の包装材料の場合でも、その基材シートが上述の密度や目付の紙類や樹脂シートであれば、作業時に包装材料が容易に折れ曲がることなどなく、作業性に優れ、包装材料に皺がよるなどの問題も生じない。
また、印刷される図柄も食品の種類や包装材料の用途などに応じて変更でき、竹皮模様に限定されないし、包装材料の大きさや形状もこれらに応じて任意に設定できる。
【0023】
また、例示した包装材料10では、接着層14は、基材シート11の内面11bの全面に設けられているが、基材シート11と半透膜12の周縁部Sをシールするという点では、パートコートなどにより少なくとも周縁部Sに設けられていればよい。しかしながら、基材シート11の全面に設ける方法によれば、部分的に設ける場合よりも容易に接着層14を形成できるとともに、基材シート11と半透膜12とをシールする際に、これらを厳密に位置合わせする必要がなく好ましい。
周縁部Sのシール方法も、ヒートシールに限定されず、インパルスシール、超音波シールなどで行ってもよい。
さらに、以上の例では、印刷が施された基材シートと、接着層と、高浸透圧物質と、半透膜とからなる包装材料10を示したが、本発明の効果を妨げない範囲で、印刷の保護や防水性付与などを目的として、基材シートの内面や外面に他の層を設けるなどしてもよい。
また、図示例では、基材シート11と半透膜12とはほぼ同じ大きさのものを使用しているが、半透膜として、基材シートよりも大きさ(面積)の小さいものを選択してもよい。その場合、接着層は、基材シートの片面において、少なくとも半透膜の全面に対応する部分に設けられることが好ましく、このような形態としては、基材シートの片面の全面に形成される形態や、半透膜の全面に対応する部分にのみ形成される形態がある。しかしながら、接着層は、シールに必要な部分、すなわち、半透膜の周縁部にのみ設けられていてもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
次のようにして、図1の構成の包装材料10を製造した。
まず、基材シート11として、密度が0.8g/cm、目付が80g/mのさらしクラフト紙を用意し、その片面(外面)11aに竹皮模様を印刷した。
ついで、基材シート11の印刷されていない面(内面)11bの全面に、ポリエチレンに無水マレイン酸をグラフトしたグラフト重合体からなる厚さ15μmの接着層14を押出ラミネート法で形成した。
ついで、形成された接着層14の表面(接触面14a)をコロナ処理し、その表面張力を40mN/mとした後、この接触面14a上に、異性化糖液(加藤化学(株)ハイフラクトーカ製HF75F55)100質量部、グリセリン12質量部、エタノール2質量部、アルギン酸ナトリウム2質量部からなる高浸透圧物質13を長さ15cm、幅10cmの範囲に1.5gずつ、間欠的に塗布した。
ついで、塗布された高浸透圧物質13を覆うように、半透膜12として、厚さ17μmのポリビニルアルコールフィルムを密着させ、基材シート11、接着層14、高浸透圧物質13、半透膜12が順に積層した積層体を形成した。
そして、サイドシーラーにより、この積層体の幅方向の両側端部をヒートシールし、ついで、エンドシーラーにより、この積層体における各高浸透圧物質13間をヒートシールした。ヒートシール温度は280℃とした。
こうして得られた包装材料の連続体10’を切断工程へと送り、まず、サイドカッターにより両側端部をトリミングし、ついで、図2のようにして、円盤状の回転刃21を備え、連続体10’の幅方向に沿って往復するロータリーシェアーカッター20により、各高浸透圧物質13間を切断し、1.5gの高浸透圧物質13を有する18cm×13cmの包装材料10を得た。
【0025】
(エンドカット性の評価)
ロータリーシェアーカッターにより包装材料を連続体から切り離した際のカット性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:良好に切断された。
×:連続体がロータリーシェアーカッターで噛み込み、切断できない事態が頻発した。
【0026】
(包装材料の作業性等の評価)
得られた包装材料10を台紙とし、この半透膜12上に150gのマグロの解凍サクを載置し、包装材料10の端部を掴んで、これを22cm×18cmのポリエチレン袋内に滑り込ませるように入れた。その後、袋内を脱気して密封した。包装材料10をポリエチレン袋内に入れた際の作業性等を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:作業性が良好であり、ポリエチレン袋内に入れられた包装材料の外観も良好であった。
×:包装材料の端部を掴んだ際に、反対側の端部が垂れ下がり、袋入れの作業が困難であった。また、注意深く作業をしても、ポリエチレン袋内に入れられた包装材料に皺が発生し、その外観が悪かった。また、袋入れ作業に時間を要し、作業性が悪かった。
【0027】
(脱水機能の評価)
上記の包装材料の作業性等の評価で得られたポリエチレン袋入りのマグロの解凍サクを4℃の冷蔵庫で2日間保存した。
その結果、解凍サクはしっかりと脱水され、ドリップの発生は認められず、また、解凍サクの外観も良好であった。
【0028】
[実施例2〜4、比較例1〜3]
使用した基材シート11を表1に示す密度と目付の紙類に変更した以外は、実施例1と同様にして、包装材料10を製造し、同様に評価した。エンドカットの評価結果と、包装材料の作業性等の評価結果を表1に示す。また、脱水機能の評価では、いずれの例においても実施例1と同様の良好な結果が得られた。
【0029】
【表1】

【0030】
[実施例5]
実施例1と同じ方法で、大きさが39cm×12cmで、高浸透圧物質を長さ36cm、幅9cmの範囲に1.2g有する包装材料10を製造した。
そして、この包装材料10の長手方向の中央部の半透膜12上に、200gの食肉を載置した後、包装材料10の長手方向の両端部を中央部に向けて折り返し、およそ13cm×12cmの大きさになるように豚のスライス肉を包んだ。この際、包装材料は保形性に優れ、豚のスライス肉を良好に包むことができた。その後、この包みを4℃の冷蔵庫で2日間保存した結果、食肉はしっかりと脱水され、ドリップの発生は認められず、また、その外観も良好であった。
【0031】
[実施例6]
基材シート11として、発泡倍率が2倍で、厚み150μm、目付60g/mのポリプロピレン製発泡シートを使用した以外は、実施例1と同様にして、包装材料10を製造し、同様に評価した。
その結果、いずれの評価でも、実施例1と同様の結果が得られた。なお、包装材料の作業性等の評価、脱水機能の評価では、マグロの解凍サクの代わりに、アジの開き150gを使用した。
【0032】
[実施例7]
接着層の接触面上にコロナ処理を施さない以外は実施例1と同様にして、包装材料を製造した。なお、接着層の接触面上に高浸透圧物質を塗布した際、塗布ムラが認められたため、半透膜を設けた後にその上から軽く押さえ、高浸透圧物質を均一に延ばした。そして、実施例1と同様に評価したところ、いずれの評価でも、実施例1と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の包装材料の一例を示す部分断面斜視図である。
【図2】本発明の包装材料の製造方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0034】
10 包装材料
11 基材シート
12 半透膜
13 高浸透圧物質
S 周縁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートにその周縁部がシールされた半透膜との間に、高浸透圧物質が挟持された包装材料であって、
前記基材シートは、密度が0.6〜1g/cm、かつ、目付が50〜150g/mの紙類であり、その少なくとも一方の面に印刷が施されていることを特徴とする包装材料。
【請求項2】
基材シートと、該基材シートにその周縁部がシールされた半透膜との間に、高浸透圧物質が挟持された包装材料であって、
前記基材シートは、目付が50〜150g/mの樹脂シートであり、その少なくとも一方の面に印刷が施されていることを特徴とする包装材料。
【請求項3】
前記基材シートの前記半透膜側の面には、酸無水物に由来する単位を含有するポリオレフィンからなる接着層が設けられ、該接着層を介して、前記周縁部がシールされていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装材料。
【請求項4】
前記接着層は、少なくとも前記半透膜の全面に対応する部分に設けられているとともに、前記接着層における前記高浸透圧物質との接触面には、コロナ処理が施されていることを特徴とする請求項3に記載の包装材料。
【請求項5】
前記半透膜は、ポリビニルアルコールまたはポリエーテル・エステル・アミドブロック共重合体からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の包装材料。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の包装材料で包装されたことを特徴とする食品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−216985(P2007−216985A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36813(P2006−36813)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(595159530)昭和電工プラスチックプロダクツ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】