説明

脱着式壁パネル

【課題】パネル部材同士の接合部における防水機能、防風機能および防音機能を向上させ、且つ、パネル部材の交換作業を容易にする。
【解決手段】建物11の壁部に立設された複数のパネル部材17〜21を相互に脱着可能に接合して成る脱着式壁パネル13において、隣接するパネル部材17〜21の外面に、接合部を封止するための帯状のシール材23を配置する。該シール材23は縦長の押圧カバー24により押圧保持して固定する。又、押圧カバー24は左右両側部に突起28を有する断面コ字状に形成する。更に、該押圧カバー24の突起28は、各パネル部材17〜21の接合端部近傍の外壁面に形成した各縦溝25に嵌合装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱着式壁パネルに関するものであり、特に、組立・分解可能なユニットハウス等の外壁を形成する際に使用される脱着式壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種脱着式壁パネル、例えば、建設現場等で事務所や倉庫として設置されるユニットハウスの壁パネルを施工する際は、図6に示すように、ユニットハウス1の床骨格2の四隅に柱用フレーム3を垂直に固定した後、該柱用フレーム3に複数のパネル部材4a,4bを脱着可能に接合して並設している。尚、所定位置のパネル部材4a,4bには必要により窓やドアが設けられる。
【0003】
前記壁パネルの構造としては、施工現場での組立・分解性等を考慮して、ユニットハウスのフレームに間柱等を設けて複数のパネル部材を固定する構造、或いは、複数のパネル部材の側端面に所定形状(板状及び屈曲形状を含む)の接続プレートを設け、且つ、該接続プレートをチャンネル形状のカバー部材で覆い、これらをボルト等で締結してパネル部材同士を連結する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−182160号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように構成すると、間柱の設置や接続プレート等の加工を必要とし、コスト及び施工作業の観点から不利となり、複数のパネル部材の組立・分解性が低下する。特に、各パネル部材の側端面(接合端面)に縦溝又は凸起を形成して、隣接するパネル部材同士を左右方向に順次凹凸嵌合して連結する方式では、任意のパネル部材を単独で取り外すことができない。
【0005】
従って、壁パネルの左右方向中間に配設された1枚のパネル部材を別のものと交換する場合、当該パネル部材の左右両側に配設されたパネル部材も取り外す必要があり、パネル部材の交換作業が面倒であった。更に、パネル部材の側端面に接続プレート等を設ける構造では、パネル部材同士の接合部に隙間が生じ易い。又、該隙間を閉鎖するために、シール材をパネル部材同士の接合部に装着した場合、パネル部材の側端面に設けた接続プレート等が邪魔になり、所要のシール性を確保することが困難になり、防水性能、防風性能及び防音性能が低下するという問題があった。
そこで、複数のパネル部材間の防水機能および防音機能を向上させ、且つ、任意のパネル部材の交換作業を容易にするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、建物の壁部に立設された複数のパネル部材を相互に脱着可能に接合して成る脱着式壁パネルにおいて、前記パネル部材同士の接合部外面に帯状のシール材を配設すると共に、シール材を断面コ字状の押圧カバーにより押圧して保持固定する脱着式壁パネルを提供する。
【0007】
この構成によれば、隣接するパネル部材同士の接合部外面にシール材を設けたので、該接合部の隙間が生じても、該隙間はシール材により効果的に封止される。又、シール材は断面コ字状の押圧カバーにより押圧して保持固定される。このため、例えば、複数のパネル部材のうち、中間位置のパネル部材一枚を交換する際は、該パネル部材の両側に配置さ
れた押圧カバーのみを取り外すことにより交換できる。この場合、中間位置のパネル部材の両側に隣接する他のパネル部材は取り外す必要がない。
【0008】
請求項2記載の発明は、上記押圧カバーは左右両側に突起を有し、該突起は上記パネル部材同士の接合部両側に形成した縦溝に嵌合して装着されている請求項1記載の脱着式壁パネルを提供する。
【0009】
この構成によれば、上記押圧カバーの突起は、上記パネル部材の縦溝に嵌合して装着するので、該縦溝の水や空気の進入経路が階段状に屈曲して長くなり、その分だけシール作用が高まる。
【0010】
請求項3記載の発明は、上記押圧カバーの上端部は天井側上梁に固設した断面コ字状の保持部材に差し込んで保持され、且つ、前記押圧カバーの下端部は床側下梁又は基礎土台に固設した断面L型の支持プレートに載置されていると共に、押え金具により上記シール材側に押し付けて固定されている請求項1又は2記載の脱着式壁パネルを提供する。
【0011】
この構成によれば、上記押圧カバーの上端部を天井側上梁に固設した保持部材に差し込んだ後、該押圧カバーの下端部を床側下梁又は基礎土台に固設した断面L型の支持プレートの上に載置する。そして、該押圧カバーの下端部を押え金具によりシール材側に押し付けて固定する。これにより、シール材は押圧カバーにより適度な押圧力を受けて保持される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、パネル部材同士の接合部外面をシール材により面接触して直接封止したので、シール材をパネル部材に当接する押圧カバーにて押し付けたことと相まって、当該接合部に対する防水機能、防風機能および防音機能が従来に比べて向上し、又、左右方向中間のパネル部材を交換する場合、隣接する両側のパネル部材を取り外す必要がなく、この場合、押圧カバーのみを取り外せば良いので、パネル部材の交換作業を容易迅速に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記パネル部材の縦溝に押圧カバーの突起が嵌合することにより、パネル部材と押圧カバー間の雨水(液体)又は空気(気体)の進入経路が屈曲して長くなるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、パネル部材同士の接合部分における防水性能、防音性能及び防風性能が一層向上する。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記シール材は押圧カバーにより適度な力で弾性的に押し付けることができるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、シール材を常に安定して保持固定できると共にシ−ル効果が更に高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、パネル部材同士の接合部における防水機能、防風機能および防音機能を向上させ、且つ、パネル部材の交換作業を容易にするという目的を、建物の壁部に立設された複数のパネル部材を相互に脱着可能に接合して成る脱着式壁パネルにおいて、前記パネル部材同士の接合部外面に帯状のシール材を配設すると共に、該シール材を断面コ字状の押圧カバーにより押圧して保持固定することにより実現した。又、本発明に係る押圧カバーは、その両側先端面をパネル部材外面に接触させることにより、高いシール機能を発揮させることができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図5に従って説明する。図1は本実施例に係
る脱着式壁パネルを設置した建物を示す斜視図、図2は脱着式壁パネルを構成するパネル部材及び押圧カバーを示す分解斜視図、図3は図1のパネル部材及び押圧カバーを示す拡大斜視図、図4は図3のパネル部材及び押圧カバーの取り付け状態を説明する詳細図、図5は押圧カバーの上下両端の固定部を示す説明図である。尚、図示例は1階建ての建物の壁パネルに適用した例を示すが、本発明は二階以上の建物の壁パネルにも適用可能である。
【0017】
図1に於いて、11はユニットハウス等の建物であり、該建物11の四隅には柱12が設けられている。この建物11の外壁は、予め工場にて一定の規格寸法に生産された脱着式壁パネル13により形成され、該壁パネル13は、天井14側に設けた上梁15と、床側に設けた下梁(又は基礎土台)16との間に建て込まれている。又、該壁パネル13は複数のパネル部材17〜21から構成され、これらパネル部材17〜21はその側面同士を相互に突き合わせて並設され、隣接するパネル部材17〜21同士は互いに脱着可能に接合されている。図示例では、図1及び図2に示すように、左側から2番目に配置したパネル部材18には窓(又はドア)22が形成されている。
【0018】
図3(a)に示すように、隣接するパネル部材17〜21の接合部外面には、該接合部を封止するためのシール材23が配置され、該シール材23は所定幅を有する帯状に形成されている。このシール材23の材質は特に限定されるべきではなく、所要の柔軟性と強度を有するゴム材、合成樹脂等を使用することができる。又、図3(b)に示すように、シール材23は、その外側に配設した縦長の押圧カバー(締め付け具)24により適度な締め付け力で押圧して保持固定されている。尚、押圧カバー24はパネル部材17〜21の接合部に跨がるように設けられ、且つ、該押圧カバー24の長さは、シール材23及びパネル部材17〜21の上下方向の寸法と略一致している。
【0019】
又、パネル部材17〜21の接合部近傍の外面側(室外S側)には縦溝25が形成され、該縦溝25は各パネル部材17〜21の接合部に沿って上下方向に延伸している。図3に示すように、パネル部材17〜21の接合部と縦溝25との間には凸部26が形成され、該凸部26の先端面には前記シール材23が適度な弾性力で密接している。
【0020】
尚、凸部26の先端部は、シール材23と押圧カバー24の合計の厚さ分だけ切欠されている。このため、押圧カバー24の外面はパネル部材17〜21と面一に形成されている。又、前記縦溝25の溝幅は、その開口端方向に向かって漸次幅広に形成され、本実施例では、縦溝25内の一側面(接合部に近い側の内面)が他側面に対し若干傾斜している。
【0021】
前記押圧カバー24は、シール材23と略同一の左右幅を有する背板27と、該背板27の左右幅方向両側に直角に折曲形成された一対の突起(歯部)28,28とから成り、横断面コ字状に形成されている。又、一対の突起28,28は、各パネル部材17〜21の接合部を挟む左右両側に形成した縦溝25,25に嵌合して装着され、該突起28,28の先端面は、縦溝25,25の内底面に密接している。
【0022】
次に、上記パネル部材17〜21の接合部にシール材23を押圧カバー24にて保持固定する構造について、その一例を図4及び図5に基づいて詳しく説明する。先ず、コ字状の押圧カバー24の背板27内面にシール材23を装着した後、図4に示すように、押圧カバー24の上端部及び下端部を天井側上梁15及び床側下梁16に取り付ける。
【0023】
具体的には、押圧カバー24の上端部を天井側の上梁15に取り付ける場合は、図5(a)に示すように、コ字状に形成された下面開放タイプの保持部材29を上梁15下面に溶接等にて固着し、該保持部材29に押圧カバー24の上端部を下方より差し込んで嵌挿
する。然る後、押圧カバー24の下端部を床側の下梁16に固定する。即ち、図5(b)に示すように、下梁16の左右幅よりも長い縦断面L字型の支持プレート30の一側部を下梁16の上面に溶接等にて取り付ける。この場合、支持プレート30の他側部は、下梁16の外側に所定寸法だけ延出させる。
【0024】
次いで、支持プレート30の一側部上面に押圧カバー24の下端部を載置し、該押圧カバー24の下端部を支持プレート30上面に対して垂直に立設する。この後、略Z形に形成された押え金具31の一側上部を押圧カバー24の一側面に押し当て、この状態のまま、押え金具31の他側下部を支持プレート30の上面に重ねる。
【0025】
而して、押え金具31の他側下部に形成した長孔32の所要位置にボルト33を挿入し、該ボルト33にナット34を螺合して締結固定する。この場合、押え金具31は長孔32の長手方向、即ち、押圧カバー24に対し離反接近する方向の任意位置に移動させて取り付けることができる。このため、押え金具31を所定位置に固定して締結することにより、押圧カバー24を所要の押し付け力にて締着することができる。
【0026】
このように、押圧カバー24の上端部を上梁15に固設した保持部材29に差し込んだ後、押圧カバー24の下端部を下梁16に固設した支持プレート30の上に載置し、押圧カバー24の下端部を押え金具31によりシール材23側に押し付けて固定することにより、シール材23を適度な押圧力で保持固定できる。斯くして、該シール材23を常に安定して保持固定できると共に、高いシール効果を得ることができる。
【0027】
上述したように、本実施例の脱着式壁パネル13によれば、各パネル部材17〜21はいずれも、その隣接した両側のパネル部材を取り外すことなく単独で脱着できる。従って、窓等を設けたパネル部材18、或いは、窓またはドア等を何ら設けていないパネル部材17,19〜21と交換して取り替えることができる。その際、作業者はボルト33を緩めて押圧カバー24のみを取り外せばよいので、個々のパネル部材17〜21の交換作業を容易迅速に行える。
【0028】
因みに、従来例では、複数の各パネル部材の側面に縦溝又は突起を形成し、隣接するパネル部材の縦溝又は突起を左右方向に嵌合して順次連結していたので、複数のパネル部材のうち左右方向中間に配置されたパネル部材を交換するときは、交換対象以外のパネル部材も取り外す必要があり、多くの手間を要していた。その点、本発明は交換対象であるパネル部材17〜21のいずれか1枚のみを単独で取り外せばよいので、交換作業を非常に効率良く実施できる。
【0029】
又、各パネル部材17〜21はいずれも、全ての外形寸法が同一のもの、或いは、左右幅寸法のみが2倍、3倍等の整数倍だけ異なるものを使用できる。従って、目的とする任意のパネル部材17〜21を他の単数又は複数のパネル部材17〜21と自由に取り替えることができる。
【0030】
更に、本発明では、パネル部材17〜21外面に設けた個々の縦溝25の凸部26と各押圧カバー24の背板27との間にシール材23を介装し、且つ、各押圧カバー24の突起28,28の先端面が、縦溝25,25の内底面に密接している。従って、パネル部材17〜21同士の接合部に隙間が生じていても、該隙間はシール材23及び押圧カバー24により効果的に閉塞され、防水性能、防風性能および防音性能が更に向上する。
【0031】
更に又、パネル部材17〜21の接合部外面の各縦溝25内には、各押圧カバー24の両側に設けた突起28が嵌合装着されている。従って、各縦溝25と前記押圧カバー24の装着部における気体や液体の侵入経路が階段状に屈曲して長くなるので、その分だけパ
ネル部材17〜21の接合部の気密性及び液密性が高まり、これにより、一層優れた防水機能、防風機能および防音機能を確保することができる。
【0032】
図示例では、各パネル部材17〜21の外壁側に縦溝25を形成したが、本発明の壁パネルでは縦溝25を形成しない構造も採択できる。即ち、縦溝25を有しない各パネル部材17〜21の接合部にシール材23を押圧カバー24にて押し付け、且つ、該押圧カバー24の一対の突起28を接合部両側に接触させて固定してもよい。このように構成すると、各パネル部材17〜21の接合部は、シール材23によりシール機能が付加されるだけでなく、前記押圧カバー24の突起28によっても高いシール機能が得られ、この場合、縦溝25を加工するための手間とコストが大幅に削減される。
【0033】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例を示し、脱着式壁パネルを設置した建物の全体斜視図。
【図2】図1の脱着式壁パネルのパネル部材及び押圧カバーを示す分解斜視図。
【図3】図2のパネル部材間の接合部を示し、(a)は前記接合部にシ−ル材を当て付けたときの状態を示す拡大斜視図、(b)は前記シ−ル材を押圧カバーで押し付けたときの状態を示す拡大斜視図。
【図4】図3のパネル部材及び押圧カバーの取り付け状態を説明する詳細図。
【図5】実施例に係る押圧カバーの固定部の一例を示し、(a)は押圧カバーの上端部の固定構造の説明図、(b)は押圧カバーの下端部の固定構造の説明図。
【図6】従来例を示し、壁パネルを設置した建物の全体斜視図。
【符号の説明】
【0035】
11 建物(ユニットハウス)
13 脱着式壁パネル
15 上梁
16 下梁(基礎土台)
17〜21 パネル部材
23 シール材
24 押圧カバー
25 縦溝
27 背板
28 突起
31 保持部材
32 支持プレート
33 押え金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁部に立設された複数のパネル部材を相互に脱着可能に接合して成る脱着式壁パネルにおいて、前記パネル部材同士の接合部外面に帯状のシール材を配設すると共に、該シール材を断面コ字状の押圧カバーにより押圧して保持固定したことを特徴とする脱着式壁パネル。
【請求項2】
上記押圧カバーは左右両側に突起を有し、該突起は上記パネル部材同士の接合部両側に形成した縦溝に嵌合して装着されていることを特徴とする請求項1記載の脱着式壁パネル。
【請求項3】
上記押圧カバーの上端部は天井側上梁に固設した断面コ字状の保持部材に差し込んで保持され、且つ、前記押圧カバーの下端部は床側下梁又は基礎土台に固設した断面L型の支持プレートに載置されていると共に、押え金具により上記シール材側に押し付けて固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の脱着式壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−95279(P2008−95279A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274566(P2006−274566)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(304008382)住重ナカミチハウス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】