説明

脱臭フィルタ並びに空気清浄装置

【課題】圧力損失が低く、高い脱臭性能を有し、一旦吸着した有害ガスが脱離しない薄型かつ小型の脱臭フィルタ並びにこの脱臭フィルタを用いた空気清浄装置を得る。
【解決手段】脱臭フィルタは、繊維径5〜30μmの繊維で構成された、無秩序な網目構造を持つフィルタに、マンガン酸化物と活性炭とゼオライトとを、47:23:10の重量比で含有してなる脱臭剤を、前記3成分の合計量として、100〜900g/m2担持してなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型・小型であるとともに、圧力損失が低くかつ高い脱臭性能を有する脱臭フィルタ、並びにこの脱臭フィルタを用いた空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脱臭フィルタは粒状の活性炭及び吸着材を板状に敷きつめて、これをポリエチレンやポリプロピレンなどの高分子有機材料で覆い、フィルタを通過する有害ガスや不快臭と接触する粒状の活性炭及び吸着材の表面積を増大させて、高い脱臭性能を得るようにしたものがある。
【0003】
また、別の従来の脱臭フィルタは、ハニカム状に形成されたペーパやセラミックペーパーやコ−ジェライトに触媒及び吸着材を担持させ、広い表面積を確保し、さらに通気時のフィルタの圧力損失を低く抑えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−120648号公報(図1、段落0019、0028)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粒状の活性炭及び吸着材を敷きつめた構造をもつ従来の脱臭フィルタでは、上述したように有害ガスや不快臭との接触表面積を増やすために粒状の活性炭及び吸着材を板状に敷きつめたものを高分子有機材料で覆うようにしているため、圧力損失が高くなってしまう。そして、圧力損失が高いまま所定の風量を得ようとするとフィルタを通過する風切り音による騒音が大きくなってしまう。
【0006】
また、特許文献1で示されているようなハニカム状に形成された従来のフィルタでは、触媒及び吸着材は有害ガスや不快臭の流入方向に対して平行な面に担持されているので、有害ガスや不快臭と触媒及び吸着材との接触確率が低く、脱臭に寄与する有効な触媒及び吸着材の担持面積が小さく、脱臭性能が悪くなる。
【0007】
そして、圧力損失を抑えるためには、有害ガスや不快臭の流入面積つまりフィルタに形成される有害ガスや不快臭が通過可能な開口の面積を増大しなければならない。また、脱臭性能を向上させるためには、フィルタの厚みを厚くするまたはフィルタの開口の面積を増大し、フィルタの有害ガスとの接触表面積を大きくするようにしなければならない。このように、従来の脱臭フィルタでは、脱臭効率が高く且つ圧力損失が低い脱臭フィルタを得ようとすると脱臭フィルタが大型化してしまい、それに伴い空気清浄装置も大型化しなければならないという問題があった。
【0008】
さらにまた、従来のいずれの脱臭フィルタにおいても、一般的に不快と感じられる臭気が発生し易い相対湿度60%(温度25℃)以上の高湿度環境では、脱臭フィルタに吸着されていた有害ガスや不快臭がフィルタを通過する空気中に存在する水分と反応して、その水分とともに脱離してしまい再度外気中に放出されてしまうという問題があった。また、上記高湿度の環境下では、フィルタを通過する空気中に存在する水分が吸着表面を覆ってしまい、脱臭性能の経年劣化も促進されてしまうという問題もある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するために為されたものであり、薄型かつ小型のフィルタであって、さらに圧力損失が低くかつ高い脱臭性能を有する脱臭フィルタ並びにこのフィルタを用いた空気清浄装置を得ることを目的とする。さらに、脱臭フィルタに一旦吸着された有害ガスが脱臭フィルタから脱離することがない薄型かつ小型の脱臭フィルタ並びにこのフィルタを用いた空気清浄装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる脱臭フィルタは、繊維径5〜30μmの繊維で構成された、無秩序な網目構造を持つフィルタに、マンガン酸化物と活性炭とゼオライトとを、それぞれ47:23:10の重量比で含有してなる脱臭剤を、前記3成分の合計量として、100〜900g/m2担持してなる、空気清浄装置用脱臭フィルタである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、脱臭フィルタに担持する脱臭剤の成分としてマンガン酸化物及びゼオライトに加えて、活性炭を混合することで、脱臭性能の経年劣化、および高湿度環境において一旦吸着した有害ガスが脱離して再度外気中に放出される量を抑制できる。活性炭単体ではこのような現象は起こらないため、マンガン酸化物と活性炭を組み合わせることで前述した効果が得られることを見出した。活性炭混合比率が増加するに従って臭気の脱離量は減少するが、マンガン酸化物と活性炭とゼオライトの比率(重量比)を47:23:10とすることで、一旦フィルタ上で吸着した有害ガスが脱離する量が最も少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における脱臭フィルタを示す構成図であり、図1(a)は脱臭フィルタの外観図、図1(b)は図1(a)におけるフィルタ枠内の脱臭フィルタの拡大図である。本発明の脱臭フィルタは、脱臭剤Aを担持した繊維状の脱臭フィルタBであり、脱臭剤Aは、図1(b)に示すように、空気中の有害ガスや不快臭であるアセトアルデヒド、アンモニア、硫化水素、トリメチルアミンの四大悪臭成分、及び酢酸、二硫化メチル、イソ吉草酸、及び建築溶剤などから揮発するホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの揮発性有機化合物(以下、有害ガスや不快臭という)を分解するマンガン酸化物2と、空気中の有害ガスや不快臭を吸着する活性炭1とゼオライト3とが混合され、これらマンガン酸化物2およびゼオライト3および活性炭1をフィルタ枠5内に繊維4により担持させて脱臭フィルタBを構成している。
まず、ゼオライト3は、吸着作用により空気中の有害ガスや不快臭をマンガン酸化物2より高速で除去するとともにマンガン酸化物2では除去できない有害ガスや不快臭を除去することができるものである。本発明において好ましく使用されるゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が高い、すなわち疎水性ゼオライトであり、具体的にはSiO2/Al2O3モル比が40以上、好ましくは50以上、より好ましくは70以上、500以下のゼオライトであり、MFI型、ベータ型ゼオライト、モルデナイトが例示され、そのタイプはプロトン型のほか、アンモニウムイオン置換型、Na金属、Fe金属、Cu金属置換型のいずれでも好ましく使用される。これら疎水性ゼオライトを成分として含む脱臭剤を担持した脱臭フィルタは、とりわけ高湿度下において、優れた脱臭率を長期間維持できる。
一方マンガン酸化物2は、化学反応によりゼオライト3が除去できない有害ガスや不快臭を分解することで除去することができるものである。本発明において好ましく使用されるマンガン酸化物は、細孔容積が0.2〜0.4cc/g、BET窒素吸着による比表面積が100〜150m2/g、平均細孔直径が50〜100オングストロームの範囲にある、多孔質酸化マンガンである。このマンガン酸化物を前記ゼオライトと併用してなる脱臭剤は、高湿度下において特に優れた脱臭率を長期間維持できる。
活性炭1は、ゼオライトより細孔径の大きい細孔を多数持っているので広い表面積を有することができるため、ゼオライトでは吸着できない比較的分子量の大きい有害ガスや不快臭を吸着することができる。
【0013】
上記したような脱臭剤Aは、担持工程において、スラリーの粘性が最適に調製され、フィルタ繊維4に対して均一に担持されている。このため、目詰まりなどの不均一化によるフィルタの圧力損失の増大を抑制でき、さらに脱臭剤の有効な表面積が増大して高い脱臭性能が得られる。そのため、単位体積当たりの繊維表面に担持できる脱臭剤量は増えるので、単位面積あたりの繊維の重量(以下目付け量という)が非常に少ないフィルタにおいても十分な脱臭性能を得ることができる。
【0014】
図2は本発明の脱臭フィルタにおける脱臭剤担持量と脱臭率の関係を示すグラフである。ここで、脱臭剤担持量とは、脱臭剤Aが単位面積当たり繊維またはハニカムなどの基材に担持されている量を指す。そして、脱臭率は以下のようにして算出している。1m3箱内においてたばこ5本を完全燃焼させ、箱内に配置した脱臭フィルタに対して30分間通気した後のたばこ臭気の除去率を測定し、検知管を用いて、たばこ臭気の主成分であるアセトアルデヒド、酢酸、アンモニアの3臭気に対する除去率を測定し、以下に示す式に基づいて脱臭率(以下ηという)を算出する。
η={(酢酸除去率)+(アンモニア除去率)+(アセトアルデヒド除去率)×2}/4
【0015】
図2に示すように、従来の脱臭フィルタとして用いられるハニカムフィルタでは、脱臭率80%以上を達成するためには、250g/m2以上の脱臭剤担持量を必要とするが、本発明の脱臭剤を担持してなる脱臭フィルタを用いることにより、100g/m2の脱臭剤担持量で脱臭率80%を達成することができる。このように、本発明の脱臭フィルタは従来のハニカムフィルタよりも必要な脱臭剤担持量が少なく、また基材自体のコストも安価なため、低コストで高い脱臭性能を有するフィルタを提供することができる。
【0016】
図3は、フィルタ容積V(cm3)と脱臭率η(%)との関係について、フィルタ容積当たりの脱臭剤の担持量が同一のときの本発明の脱臭フィルタと従来の活性炭フィルタを比較したグラフである。
図3に示すように、従来の活性炭フィルタでは、フィルタの脱臭率η(%)は、η<0.15×Vとなっている。これに対し、本発明の脱臭フィルタでは、η(%)はη≧0.15×V(ただしηは100以下)となり、したがって上記のη≧0.15×Vを満たす本発明の脱臭フィルタはフィルタ容積当たりの脱臭性能が極めて高いことを示している。以上のことより、従来の脱臭フィルタと同一の高い脱臭性能を維持しながら本発明の脱臭フィルタの容積を小さくすることができ、それに伴って空気清浄装置も小型化することができる。
【0017】
さらに、従来のフィルタでは、フィルタの圧力損失により生じる騒音を一般的にうるさいと感じられる50dB以下に抑制することができる値である35Pa以下で上記の脱臭性能を得るためには1000cm3以上の容積を必要とし、また、容積600cm3以下で前記の脱臭性能を得るためには50Pa以上の圧力損失となっていたが、本発明の脱臭フィルタを用いることにより、圧力損失が35Pa以下、且つフィルタ容積が600cm3以下となる相対的に低い圧力損失の脱臭フィルタを実現できるので、空気清浄装置の動力である送風ファンの直径または厚みを最小限に抑制することができる。このため、空気清浄装置の薄型化が可能である。従って、上記3つの条件を満たす脱臭フィルタを空気清浄装置に設置することにより、空気清浄装置本体の薄型化及び小型化が可能となる。このときにフィルタ容積を600cm3以下とすることで、ファン径と同等面積のフィルタとすることができるため、ファンとフィルタとの距離を離すことなくフィルタ全体に均一に通風させることができる。
即ち、本発明の脱臭フィルタを空気清浄装置に設置することにより、空気清浄装置本体の薄型化及び小型化が可能となる。
【0018】
また、一般的に快適と言われる相対湿度40〜60%(温度25℃)の環境の中では脱臭フィルタに吸着した臭気が再放出することがなくても、相対湿度60%より高湿度の環境内では、再放出しやすくなる。そこで、マンガン酸化物と活性炭とゼオライトとの混合比率(重量)を47:23:10に設定することで、前述した高湿度の環境の中でも、また、フィルタの脱臭性能が経時的に劣化していく中でも、一旦吸着した有害ガスのうち脱離して再度外気へ放出される量を1%以下に抑えることができる。図4に、脱臭剤における活性炭混合比率と不快臭成分であるアセトアルデヒドの再放出率との関係を示す。マンガン酸化物及び活性炭及びゼオライトを混合した脱臭剤24mgに対してアセトアルデヒドを0.08mg吸着させた後、相対湿度80%(室温25℃)の高純度な空気を通気したときに脱離して外気へ放出されるアセトアルデヒド量は、混合する活性炭の比率を増加させると減少し、23%含有したときには再放出率が1%以下に抑制できる。これは、従来の脱臭フィルタである活性炭のみフィルタでは脱離するアセトアルデヒド量は31%あることから、マンガン酸化物と活性炭の混合により有害ガスの吸着力が増大することが考えられる。このとき、ゼオライトは疎水性の高い材料を用いることで高湿度の空気の流入に対しても脱離するアセトアルデヒド量を抑制できる。
【0019】
本発明に係わる脱臭フィルタでは、繊維径を5〜30μmとし、繊維の目付け量を40〜400g/m2とし、この繊維へ担持される脱臭剤の担持量を100〜900g/m2とした。また、繊維4を、ケイ素酸化物、あるいはニッケル、銅、鉄、コバルトなどの遷移金属あるいは炭素のうち1種類以上を主成分とする無機材料、あるいはポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、アクリル、アラミド、ポリアミドのうち1種類以上の高分子有機材料で構成した。
上記の数値範囲に限定した理由は以下の通りである。
フィルタ容積V(cm3)に対する脱臭率をη(%)としたとき、本発明の脱臭フィルタを用いてη≧80%を満たすために、図2に示すように全ての繊維の目付け量に対して脱臭剤の担持量を100g/m2以上とする必要があるが、脱臭剤の担持量が900g/m2を超えると、担持量の増加に伴い繊維上に脱臭剤を保持する付着強度が急激に弱くなる。図5に脱臭フィルタ表面を手など人為的にこすることにより脱落する脱臭剤の総量を示す。脱臭フィルタに担持する脱臭剤量を増加させると脱臭剤の脱落量(粉落ち量)も急激に増大し、脱臭性能が低下する。また、繊維径が30μm以上では繊維が折れやすくなってしまい、繊維上に担持されている脱臭剤も同時に脱落し、脱臭性能の劣化につながる。さらに繊維径が5μm未満では繊維が軟化するため、フィルタを形成するために使用するバインダ量が多くなってしまい、繊維径も結果として5μm以上のものを選ぶ必要がある。また、繊維の目付け量は40g/m2未満であると、上記条件を満たすために必要な脱臭剤の担持量100g/m2以上を担持することができず、一方、400g/m2を超えると脱臭剤が繊維上に均一に担持することができなくなり、脱臭剤のむら発生に伴うフィルタの目詰まりが発生する。
【0020】
また、上記繊維4には、例えばアクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂のうち1種類以上を主成分とする有機化合物、またはシリカ、アルミナのうち1種類以上を主成分とする無機化合物からなるバインダにより保持されたマンガン酸化物ゼオライト及び活性炭が担持されている。
【0021】
また、上記マンガン酸化物2および活性炭1を担持することでアセトアルデヒド、アンモニア、硫化水素、トリメチルアミンの四大悪臭成分だけでなく、酢酸、二硫化メチル、イソ吉草酸、及び建築溶剤などから揮発するホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの揮発性有機化合物を有害レベル以下まで低減する。
【0022】
以上のことから、上記脱臭フィルタは繊維で形成されるため、同一フィルタ容積に対して従来のハニカムフィルタより大きい表面積を得ることができ、また、繊維と繊維が交差して重なって形成される網目構造となることによりフィルタ内で乱流が生じるため、粒子との接触確率も増大する。
【0023】
図6に本発明の実施の形態1における従来のハニカム状の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとのアセトアルデヒドの除去性能を比較した図を示す。100cm2の脱臭フィルタを設置した風洞をアセトアルデヒド1ppmで満たした1m3箱内に設置し、風速1m/sで通気したときの30分間の1m3箱内におけるアセトアルデヒド濃度の減衰を測定した結果、本発明の脱臭フィルタは従来のハニカム状の脱臭フィルタと比較して2/5倍の脱臭剤量で同等の脱臭性能が得られた。
【0024】
図7は上述した本発明の脱臭フィルタを適用した空気清浄装置の実施の形態1を示す側面断面図である。図7の空気清浄装置6は、吸い込み口側から順に吸い込み口7と集塵フィルタ8と脱臭フィルタ9と送風ファン10と吹き出し口11で構成される。この脱臭フィルタ9は図1で示す脱臭フィルタと同じものである。
【0025】
以下、実施の形態1における空気清浄装置の動作について図7を用いて説明する。塵埃や有害ガスや不快臭を含む空気は吸い込み口7より矢印で示される風向き12の方向に吸引され、集塵フィルタ8を通過して塵埃を除去されたのち、脱臭フィルタ9上で有害ガスや不快臭が除去されて、送風ファン10を通過して吹き出し口11から風向き12の方向に清浄な空気が排出される。
【0026】
図7に示す空気清浄装置6に用いる脱臭フィルタ9は、繊維が網目構造に成形されており、高密度に編んだ網目構造の脱臭フィルタよりも有害ガスが流入する開口の面積が広くなるため、脱臭フィルタの圧力損失もより低くなる。このため、開口面積が広い脱臭フィルタ9は、有害ガスや不快臭がフィルタ面に対してどの方位からも流入することが可能となる。これにより、本発明の脱臭フィルタ9を実際に空気清浄装置に組み込むときには、送風ファン10に脱臭フィルタ9を近接してもフィルタ全面を通風することができるため、送風ファン10の吸い込み面積よりも大きい面積をもつ脱臭フィルタ9を配置したときにもフィルタ全面積に相当する脱臭性能を得ることができ、さらに、空気清浄装置6の奥行きを薄くすることができる。
【0027】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2における空気清浄装置の構成を示す側面断面図であり、実施の形態1における脱臭フィルタはこの実施の形態2でも用いられる。図8の空気清浄装置は、吸い込み口側から順に、空気を吸い込むための吸い込み口7、本発明の脱臭フィルタ9、空気中の花粉及び粉塵及び埃等の微粒子の少なくともいずれかを捕捉する集塵フィルタ8、吸い込み口7に吸引力を与える送風ファン10、吹出し口11、送風ファン10の下部に設けられた気化エレメント13、貯水タンク14、気化エレメント13及び貯水タンク14の下部に設けられた貯水トレイ15より構成される。
【0028】
以下、実施の形態2における空気清浄装置の動作について図8を用いて説明する。有害ガスや不快臭は吸い込み口7より風向き12の方向に吸引され、脱臭フィルタ9上で除去されて無害化されたガスが、集塵フィルタ8を通り塵埃を除去された後、送風ファン10を通過するガスと気化エレメント13を通過してから送風ファン10を通過するガスとに分かれて、吹き出し口11の手前で乾燥空気と加湿空気が混合された状態で清浄な空気が排出される。送風ファン10は、気化エレメント13の上部に配置され、脱臭フィルタ9から直接流入するガスと、気化エレメント13より流入するガスについてそれぞれ片側から吸い込む、両吸いファンで構成される。貯水トレイ15は気化エレメント13及び貯水タンク14の下に配置され、貯水タンク14から流れ出した水が貯水トレイ15に貯まり、気化エレメント13の下部が浸漬する。
【0029】
このとき、貯水タンク14は空気清浄装置6内部の通風路外に設置される。気化エレメント13は吸湿性を有するゼオライトまたはシリカを含む有機または無機で形成される不織布からなるフィルタで構成され、貯水トレイ15に貯まっている水を、浸漬している気化エレメント13の下部からエレメント上面まで吸い上げる吸水力を有するフィルタである。また、気化エレメント13は、吸湿性を有するゼオライトまたはシリカが有機または無機で形成される樹脂表面に担持され、貯水トレイ15に貯まっている水と接触して気化エレメント表面に水膜を形成するものであってもよい。
【0030】
上記構造において、脱臭フィルタ9に担持するマンガン酸化物及び活性炭及びゼオライトの混合比率を上記実施の形態1で示したように47:23:10とすることで、吸脱臭フィルタ9を気化エレメント13に近接したときにも脱臭性能の劣化を抑制することができる。
【0031】
また、上記構造により、流入する臭気ガスは脱臭フィルタ9にて除去されるため、脱臭化されたガスが気化エレメント13を通過することとなり、吹き出し口11から清浄な加湿空気が排出される。
【0032】
また、清浄な空気が気化エレメント13を通過するので、気化エレメント13上で細菌やカビが繁殖することを抑制でき、また、気化エレメント13上に繁殖した細菌が機外に放出される懸念もなくなり、さらに、気化エレメント13の保水性の悪化も軽減できる。
【0033】
また、送風ファン10は気化エレメント13の上部に配置されることで、空気清浄装置6全体を薄くすることができる。
【0034】
以上の通り、本実施の形態2によれば、加湿用の気化エレメントをさらに備え、脱臭フィルタに担持する吸着材を疎水性としたので、脱臭性能の劣化を抑制しつつ実施の形態1の効果を奏することができる。
【0035】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3における空気清浄装置の構成を示す側面断面図であり、実施の形態1における脱臭フィルタはこの実施の形態3でも用いられる。空気清浄装置6は吸い込み口側から順に吸い込み口7、集塵フィルタ8、気化エレメント13、脱臭フィルタ9、送風ファン10で構成される。
次に、動作を説明する。図9に示すように吸い込み口7より左向き(風向き12)の方向に流入したガスは、集塵フィルタ8と気化エレメント13を通過したのち、脱臭フィルタ9を通過して、吹き出し口11から加湿された空気として上方(風向き12)の方向に排出される。気化エレメント13は吸湿性を有するゼオライトまたはシリカを含む有機または無機で形成される不織布からなるフィルタで構成され、底部に溶媒を保持する手段を有し、その溶媒を気化エレメント13の上面まで吸い上げる給水力を有するフィルタである。また、気化エレメント13は、吸湿性を有するゼオライトまたはシリカが有機または無機で形成される樹脂表面に担持され、貯水トレイ15に貯まっている水と接触して気化エレメント表面に水膜を形成するものであってもよい。気化エレメントに保持する溶媒を水、または過酸化水素水または電解水とする。気化フィルタに保持する溶媒を過酸化水素水または電解水とすることで、殺菌能力を高めることができる。
【0036】
上記構造において、脱臭フィルタ9にマンガン酸化物及び活性炭及びゼオライトの混合比率が47:23:10である脱臭剤を担持することで、脱臭フィルタ9を気化エレメント13に近接したときにもゼオライトの吸湿能力により脱臭性能の劣化を抑制することができる。
【0037】
上記構造により、気化エレメント上に保持されている溶媒が脱臭フィルタに噴霧され、脱臭フィルタの洗浄を行なうことができ、脱臭性能を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における脱臭フィルタを示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるハニカム状の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとの脱臭剤担持量当たりの脱臭率性能を比較した図である。
【図3】本発明の実施の形態1における従来の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとのフィルタ容積当たりの脱臭率性能を比較した図である。
【図4】本発明の実施の形態1における活性炭混合比率とアセトアルデヒド再放出率の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における脱臭剤の担持量と粉落ち量との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるハニカム状の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとのアセトアルデヒドの除去性能を比較した図である。
【図7】本発明の脱臭フィルタを適用した空気清浄装置の実施の形態1を示す側面断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における空気清浄装置の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における空気清浄装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 活性炭、2 マンガン酸化物、3 ゼオライト、4 繊維、5 フィルタ枠、6 空気清浄装置、7 吸い込み口、8 集塵フィルタ、9 脱臭フィルタ、10 送風ファン、11 吹き出し口、12 風向、13 気化エレメント、14 貯水タンク、15 貯水トレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径5〜30μmの繊維で構成された無秩序な網目構造を持つフィルタに、マンガン酸化物と活性炭とゼオライトとを、47:23:10の重量比で含有してなる脱臭剤を、前記3成分の合計量として100〜900g/m2担持してなることを特徴とする脱臭フィルタ。
【請求項2】
前記枠の容積(以下、フィルタ容積という)をVcm3とし、フィルタ脱臭率をη(%)としたとき、
η≧0.15×V が成り立ち、
前記枠を通過する空気の風速が1m/sの時の圧力損失が35Pa以下であり、フィルタ容積が600cm3以下であることを特徴とする請求項1記載の脱臭フィルタ。
【請求項3】
前記繊維の径を5〜30μmとし、前記繊維の目付け量を40〜400g/m2とし、前記マンガン酸化物及び活性炭及びゼオライトの総担持量を100〜900g/m2としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱臭フィルタ。
【請求項4】
前記繊維は、ケイ素酸化物、遷移金属、若しくは炭素を主成分とする無機材料、又は高分子有機材料のいずれかから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱臭フィルタ。
【請求項5】
前記ゼオライトは、疎水性ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱臭フィルタ。
【請求項6】
加湿機能を備えた空気清浄機用であることを特徴とする請求項1に記載の脱臭フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の脱臭フィルタと、
花粉及び粉塵及び埃の微粒子の少なくともいずれかを捕捉する集塵フィルタと、
空気を吸引して外部へ排気するファンと、を備えたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項8】
貯水タンクと、
この貯水タンクの水を貯水するトレイと、
このトレイに貯水された水を保持し、保持した水を上記ファンが吸引した空気により気化させる気化エレメントと、を備え、
この気化エレメントは、前記脱臭フィルタの後段に配置されたことを特徴とする請求項7記載の空気清浄装置。
【請求項9】
貯水タンクと、
この貯水タンクの水を受けて貯水する貯水トレイと、
このトレイに貯水された水を保持し、保持した水を上記ファンが吸引した空気により気化させる気化エレメントと、を備え、
この気化エレメントは、前記集塵フィルタと上記脱臭フィルタとの間に配置され、前記脱臭フィルタに加湿した空気を噴霧することを特徴とする請求項7記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−45225(P2009−45225A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214010(P2007−214010)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000226219)日揮ユニバーサル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】