説明

脱銅スラグから金属銅を回収する方法

【課題】銅を含有するスクラップの銅を硫化物系フラックスで除去する際に、銅、及び脱銅処理後の冷却スラグをそれぞれ有効利用する。
【解決手段】銅を含有するスクラップを溶銑とともに溶解してナトリウム、鉄、硫黄を主成分とするフラックスを用いて脱銅精錬を行って得られる脱銅スラグの処理に際し、脱銅スラグ中の酸素含有量を3質量%以上にすると共に、脱銅スラグを600℃以上800℃以下の温度範囲で3時間以上保持することによって、脱銅スラグ中の銅を金属銅に改質して回収し、無機化合物のスラグと金属銅とを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム、鉄、硫黄を主成分とする硫化物系の脱銅スラグから金属銅を回収する方法に関する。
本明細書において、硫化物系の脱銅スラグとは、FeS-Na2S系フラックスなどの硫化物フラックスを用いて鉄鋼スクラップなどの溶鉄から銅を除去する際に生成されるスラグをいう。
【背景技術】
【0002】
製鋼過程で使用する鉄源は、鉄鉱石を高炉で還元して得られる溶銑が主体であるが、鉄鋼材料の加工工程で発生する鋼屑や、建築物及び機械製品などの老朽化に伴って発生する鋼屑も、かなり使用されている。
高炉での溶銑の製造には、鉄鉱石を還元し、且つ溶融するための多大なエネルギーを要するのに対し、鋼屑は溶解熱のみを必要としており、製鋼過程で鋼屑を利用した場合には、鉄鉱石の還元熱分のエネルギー使用量を少なくすることが出来るという利点がある。
したがって、省エネルギーの観点及びCO2削減による地球温暖化防止の観点からも、鋼屑利用の促進が望まれている。
【0003】
しかし、鋼屑を利用する際、銅及び錫に代表されるトランプエレメントが溶解過程で不可避的に溶鉄中に混入する。トランプエレメントは鋼の性質を損なう成分であり、一定の濃度以下に保つ必要がある。このため、高級鋼を製造する鉄源として、銅や錫を含む恐れのある低級鋼屑を使用することは困難であった。
他方、近年の鋼屑発生量の増加及びCO2発生削減のための鋼屑使用の要請を勘案すると、低級屑の再生利用を進める必要がある。もっとも、現状では電化製品、自動車などのシュレッダーダスト等、銅を多く含む鋼屑は、溶解前に磁選等を行っても、銅成分を完全に除去することは出来ておらず、溶鉄に混入した脱銅処理技術の開発が望まれている。
【0004】
溶鉄に混入した後の脱銅方法に関しては、含銅高炭素溶鉄とFeS-Na2S系フラックスとを接触させ、溶鉄中の銅成分をCu2Sとしてフラックス中に分離除去する原理的技術知見が、非特許文献1及び非特許文献2に報告されている。
【0005】
一方、脱銅処理によって発生するスラグからの銅回収方法としては、鋼スクラップからの銅除去方法として、例えば、特許文献1に酸化物系のフラックスを用いて銅の融点以上の温度で銅の融液として回収する技術が公開されている。
また、銅製錬など、銅を多く含むスラグからの銅回収方法としては、例えば、特許文献2にカルシウムフェライト系のスラグを形成して回収する技術が公開されている。いずれの技術にしても、酸化物系のスラグからの銅回収方法に関するものである。
上述のように、酸化物系のスラグからの銅回収は提案があるものの、硫化物系のスラグからの銅回収に関しては、何らの提案もないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「鉄と鋼」、Vol.74、1988、No.4、p.640-647
【非特許文献2】「鉄と鋼」、Vol.77、1991、No.4、p.504-511
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-354831号公報
【特許文献2】特許第3709728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
銅を含有するスクラップから、ナトリウム、鉄、硫黄を含むフラックスを用いることで、溶鉄中から銅を除去することは可能であり、これによって鉄原料側は有効に利用することができる。しかし、プロセスとして実用化させるためには、処理後のフラックスを冷却して副次的に生成されるスラグを有効利用することが必要不可欠である。たとえば、通常の鉄鋼スラグや酸化物系のスラグの場合、酸化カルシウム、酸化珪素を主体とした複合酸化物であるため、類似した組成のセメントの原料として使用されたり、また、石や砂と類似の性質をしているため、路盤材や土工用砕石などにほぼ100%再利用されている。
ところが、脱銅処理によって発生する硫化物系の脱銅スラグは、ナトリウム成分を含むため、脱銅スラグが雨水などに接触するとナトリウム成分が溶出する。また、硫化物であるため、セメントのような酸化物系の材料に混合利用することは、適している方法とは言い難い。このため、通常のスラグ(鉄鋼スラグや酸化物系のスラグ)のように路盤材、土工用砕石、セメント原料等へ利用することができない。
また、硫化物系の脱銅スラグに含まれる銅濃度は1〜2質量%程度と低く、銅精錬用原料に利用するには、一般的に、5質量%程度の濃度が要求されるため、銅精錬用原料として利用することもできず、銅としての経済価値はこのままではほとんど無い。
このように、酸化物系の脱銅スラグに対し、硫化物系の脱銅スラグは、硫化物フラックスが高価であるためそのコストが高いにもかかわらず、脱銅スラグからの銅回収はおろか、回収後のスラグの用途についても目処が立っていない状況である。
【0009】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、硫化物系の脱銅スラグに少量含まれる銅を、金属銅の形態として回収する方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
銅を含有するスクラップを溶銑とともに溶解してナトリウム、鉄、硫黄を主成分とするフラックスを用いて1200℃以上の温度で脱銅精錬を行うことにより、溶鉄中の銅成分をスラグに分配することができる。
しかし、得られた硫化物系の脱銅スラグをそのまま冷却した場合、脱銅スラグは非晶質になってしまい、銅成分は全体に極めて微量に分散してしまうことが分かった。
そこで、発明者らは、鋭意研究をした結果、冷却条件を制御することによって、脱銅スラグを結晶化させることが可能であることを見出している。その場合の銅の存在形態について検討したところ、硫化鉄との化合物、あるいは硫化銅の形態で存在することがわかった。
【0011】
この点を、図1を参照しながら詳細に説明する。図1に示した4枚の写真は結晶化した脱銅スラグの一部の同じ視野を撮影したものであり、(A)は微構造のSEM写真、(B)はCuの面分析写真、(C)はFeの面分析写真、(D)はSの面分析写真である。微構造写真(A)より、結晶の形が明瞭に観察され、結晶化が進行した状態であることが確認できる。また、写真(B)(C)(D)において明るく表示された部分は当該元素を含むことを示している。
写真中の中央部付近でCuが高いところ(丸で囲んだa部)を見ると、Feはほとんど含まれず、Sが共存していることから、Cu−S系化合物と想定される。一方、それ以外の部分でCuが存在する部分、例えば丸で囲んだb部については、Fe,Sと共存しているので、Cu−Fe−Sという形でCuが存在しているものと想定される。このように、脱銅スラグ中のCuの存在形態としては、硫化物の状態であると想定される。
【0012】
発明者らは、結晶化した脱銅スラグから金属銅を分離できれば、資源のさらなる有効利用につながると考え、分離技術を鋭意検討したところ、脱銅スラグ中に微量の酸素を共存させることが有効であることを見出した。
この点を図2、図3に基づいて説明する。図2、図3は脱銅スラグ中に酸素を10質量%共存させたときの銅存在部の元素分析結果を説明する写真、グラフである。図2は、脱銅スラグの微構造写真であり、そのうち、写真中の矢印で指している部分について、エネルギー分散型X線分光法による点分析(スポット分析)を実施した。図3は、その際に検出されたエネルギー値(横軸)と強度(縦軸)の関係を示すグラフである。図3に示した結果を元に各元素の質量比を解析したものが、図中に記されている数値であり、銅が約70質量%を占め、鉄が15質量%と一部含まれている状態である一方、硫黄は3質量%、酸素は5質量%程度にすぎず、金属銅を主成分とする金属相が主相として生成したことが確認される。反応機構は不明であるが、硫化銅あるいは硫化鉄・硫化銅化合物に対して酸素が関与して酸化が起こり、金属銅になるものと推察される。
【0013】
研究を進めるなかで、酸素が十分共存しても、金属銅が形成されないケースが観察された。このようなケースを含む一例を以下に示す。
1300℃で脱銅精錬を行った脱銅スラグにおいて、酸素含有量が9〜11質量%となるように炭酸塩を添加し、冷却過程において保持時間を4時間として、保持温度を変えたときの金属銅の生成状況をまとめたものを表1に示す。表1においては、広範囲に金属銅が観察された場合を◎、50%以上が金属銅とみられた場合を○とし、50%未満を△、ほとんど見られない場合を×とした。表中の記号の意味は、表2、3においても同じである。
【0014】
【表1】

【0015】
表1に示されるように、精錬温度近傍で保持したのちに冷却しても金属銅はほとんど形成されず(1100℃の欄参照)、また、特段の温度保持をしない場合にも金属銅は観察されなかった(保持無しの欄参照)。
一方、600℃〜800℃の温度で保持した場合、金属銅の生成が顕著に認められ、本温度域で制御することが重要であることが分かった。
【0016】
次に、脱銅スラグ中の酸素の含有量と金属銅の生成との関係についても調査した。保持温度を800℃として、4時間保持する場合において、酸素含有量を0.5〜15質量%の範囲で変化させて金属銅の有無を観測した。その結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
表2に示されるように、酸素含有量が3質量%以上であれば金属銅が観察され、それ以下でも観察されるケースはあるが、条件によって不安定であった。このことから、3質量%以上の酸素含有量が望ましいことが分かった。さらには、酸素含有量が7質量%以上であれば、安定した金属銅の生成がみられ、より望ましいことも分かった。
【0019】
脱銅スラグ中に酸素を供給する方法としては、ガスで供給する方法、炭酸塩や硫酸塩といった溶融塩として添加する方法など、特に限定するものではない。ただし、ガスで供給した場合には酸素がスラグ中の硫黄と反応してSOx等のガスで抜ける量が多くなる。したがって、安定した反応制御のための酸素供給方法としては、炭酸塩もしくは硫酸塩で添加することが望ましい。
【0020】
さらに、600℃〜800℃の温度範囲での保持時間についても検討した結果、3時間以上が望ましく、より望ましくは4時間以上であることが判明した。原因は明確ではないが、結晶化と酸化に必要なエネルギー量と反応時間に起因するものと推察される。
なお、金属銅の生成は、脱銅スラグ中に共存する酸素の影響が大きいため、600℃〜800℃の範囲で温度保持する際の雰囲気は特に限定するものではないが、不活性ガス雰囲気では脱銅スラグ中の酸素分圧が低下しやすくなるため、大気中で保持することがより望ましい。
【0021】
本発明は上記の種々の知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
【0022】
(1)本発明に係る脱銅スラグから金属銅を回収する方法は、銅を含有するスクラップを溶銑とともに溶解してナトリウム、鉄、硫黄を主成分とするフラックスを用いて脱銅精錬を行って得られる脱銅スラグから金属銅を回収する方法であって、
前記脱銅スラグ中の酸素含有量を3質量%以上にすると共に、該脱銅スラグを600℃以上800℃以下の温度範囲で3時間以上保持することによって、前記脱銅スラグ中の銅を金属銅に改質して回収することを特徴とするものである。
【0023】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記銅含有スラグ中の酸素含有量を所定値以上にする方法として、炭酸塩および/または硫酸塩を脱銅精錬時に溶解させることを特徴とするものである。
【0024】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記脱銅スラグの温度を所定範囲に保持する際に、大気雰囲気中で保持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、脱銅スラグ中の酸素含有量を所定量以上とし、かつ脱銅スラグを熱保持、徐冷等によって温度制御するようにしたので、硫化銅系の化合物として存在している銅成分を金属銅として回収することができる。また、脱銅スラグを、無機化合物のスラグと金属銅とに分離することになるので、それぞれを有用に利用することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の課題を解決するための手段を説明する説明図であり、結晶化した脱銅スラグの一部の同じ視野を撮影した写真であり、(A)は微構造のSEM写真、(B)はCuの面分析写真、(C)はFeの面分析写真、(D)はSの面分析写真である。
【図2】本発明の課題を解決するための手段を説明する説明図であり、脱銅スラグ中に酸素を10質量%共存させたときの微構造写真である。
【図3】図2に矢印で示した部位に対して行ったエネルギー分散型X線分光法による点分析(スポット分析)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施の形態の脱銅スラグから金属銅を回収する方法は、銅を含有するスクラップを溶銑とともに溶解してナトリウム、鉄、硫黄を主成分とするフラックスを用いて脱銅精錬を行って得られる脱銅スラグから金属銅を回収する方法であって、
前記脱銅スラグ中の酸素含有量を3質量%以上にすると共に、該脱銅スラグを600℃以上800℃以下の温度範囲で3時間以上保持することによって、前記脱銅スラグ中の銅を金属銅に改質して回収することを特徴とするものである。
以下、本発明の主な構成について詳細に説明する。
【0028】
<脱銅スラグ>
脱銅スラグは、FeS-Na2S系フラックスなどの硫化物フラックスを用いて鉄鋼スクラップなどの溶鉄から銅を除去する硫化物フラックス精錬法によって発生するスラグであって、ナトリウム、鉄、硫黄を含有するものである。
【0029】
<脱銅スラグ中の酸素含有量>
[課題を解決するための手段]の項で述べたように、脱銅スラグ中の酸素含有量は3質量%以上であることが必要である。酸素含有量を3質量%以上にすることで、金属銅を安定的に生成させることができる。また、酸素含有量を7質量%以上にすることで、より安定して金属銅を生成することができるのでより望ましい。
【0030】
<脱銅スラグ中に酸素を供給する方法>
脱銅スラグ中に酸素を供給する方法としては、ガスで供給する方法、炭酸塩や硫酸塩といった溶融塩として添加する方法などがある。
安定した反応制御のための酸素供給方法としては、炭酸塩もしくは硫酸塩で添加することが望ましい。そのための方法としては、炭酸塩および/または硫酸塩を脱銅精錬時に溶解させるようにすればよい。
【0031】
<脱銅スラグを所定温度範囲で保持する方法>
温度保持の方法は、常温で保管された状態の脱銅スラグを電気炉や高周波炉を用いて加熱処理する方法でもよい。
あるいは脱銅処理後に排出された高温状態の脱銅スラグを、600℃以上800℃以下の温度で保持する方法でもよい。なお、600℃以上800℃以下の温度で保持する場合には、上記範囲内の一定温度で保持するのでもよいが、上記温度範囲内であれば温度変化があってもよい。
【0032】
なお、温度範囲を600℃以上800℃以下に制御する理由は[課題を解決するための手段]の項で述べたように、600℃未満あるいは800℃超えの条件では金属銅が安定して生成されないからである。
【0033】
脱銅スラグの温度を所定範囲に保持する際の雰囲気は特に限定するものではない。もっとも、不活性ガス雰囲気では脱銅スラグ中の酸素分圧が低下しやすくなるため、酸素含有量を安定させるためには大気中で脱銅スラグの温度を保持するのがより望ましい。
【0034】
なお、脱銅スラグ中の銅を金属銅に改質した後の回収方法としては、脱銅スラグに含まれる可溶成分を水に溶解して金属銅を分離し、その後、例えば遠心分離による方法やフィルタープレスによる方法などの固液分離によって金属銅を回収すればよい。あるいは、処理後の脱銅スラグを細かく粉砕した上で、比重等で分離する方法も可能である。いずれの条件においても、残ったスラグ部は銅の多くが除去されているので、脱銅処理のフラックス原料として再利用することや、溶解した液から他の工業原料を生産することが可能である。
【実施例】
【0035】
本発明の効果を確認するための実験を行ったので、以下これについて説明する。
銅を含有するスクラップに対して、硫化鉄、硫化ナトリウム、炭酸ナトリウムを用いて1300℃で脱銅精錬を行い、銅含有量1.8質量%の脱銅スラグを得た。
得られた脱銅スラグについて、温度条件、温度保持条件、酸素含有量条件、の各条件を変えたときの金属銅の生成状況を、SEM分析を用いて評価した。なお、酸素含有量は、炭酸ナトリウムの量と投入タイミングで調整した。また、脱銅スラグ中の酸素含有量はエネルギー分散型X線分光法によって求めた。
【0036】
結果を表3に示す。表3において、温度条件、温度保持条件、酸素含有量条件の全てが本発明範囲のものを実施例として示し、各条件のいずれか一つ又は複数が発明範囲外のものを比較例として示している。
【0037】
【表3】

【0038】
表3から明らかなように、実施例のものでは、50%以上が金属銅であるのに対して、比較例のものでは金属銅は50%未満となった。より詳細に分析すると以下のようなことが言える。
【0039】
実施例1、2と比較例1、2とを比較すると、保持温度とスラグ中酸素含有量は同じであるが、実施例1、2では保持時間が4時間、3時間であり発明範囲内であるのに対して比較例1、2では保持時間が1.5時間、0.5時間であり発明範囲外である。この保持時間の違いにより、金属銅生成状況に差異が見られる。なお、このことは実施例5と比較例5との比較についても同様である。
【0040】
実施例1、3と比較例3、4とを比較すると、保持温度と保持時間は同じであるが、実施例1、3ではスラグ中酸素含有量が12質量%、7質量%であり発明範囲内であるのに対して比較例3、4では2質量%、0.5質量%であり発明範囲外である。このスラグ中酸素含有量の違いにより、金属銅生成状況に差異が見られる。
【0041】
実施例1、4と比較例6、7とを比較すると、保持時間とスラグ中酸素含有量は同じであるが、実施例1、4では保持温度が800℃、600℃であり発明範囲内であるのに対して比較例6、7では400℃、900℃であり発明範囲外である。この保持温度の違いにより、金属銅生成状況に差異が見られる。
【0042】
上記の実施例から、本発明範囲の条件であれば、金属銅への反応が進行していることが確認された。
【0043】
以上のように、本発明を適用することにより、スクラップ中に存在する、高級鋼製造の阻害となる銅成分を取り除くだけではなく、そのスラグから銅成分を金属銅として回収することが可能となる。金属銅を別に分けることによって、有効利用が可能となり、また、銅を含まない残部のスラグは、フラックス原料として再利用するなど、さらに高度の資源循環が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含有するスクラップを溶銑とともに溶解してナトリウム、鉄、硫黄を主成分とするフラックスを用いて脱銅精錬を行って得られる脱銅スラグから金属銅を回収する方法であって、
前記脱銅スラグ中の酸素含有量を3質量%以上にすると共に、該脱銅スラグを600℃以上800℃以下の温度範囲で3時間以上保持することによって、前記脱銅スラグ中の銅を金属銅に改質して回収することを特徴とする脱銅スラグから金属銅を回収する方法。
【請求項2】
前記銅含有スラグ中の酸素含有量を所定値以上にする方法として、炭酸塩および/または硫酸塩を脱銅精錬時に溶解させることを特徴とする請求項1に記載の脱銅スラグから金属銅を回収する方法。
【請求項3】
前記脱銅スラグの温度を所定範囲に保持する際に、大気雰囲気中で保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の脱銅スラグから金属銅を回収する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153358(P2011−153358A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16091(P2010−16091)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 難利用鉄系スクラップの利用拡大のための先導的研究委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】