説明

脳ガンの処置又は予防のためのMTキナーゼ阻害剤の使用

本発明は、PCT公開WO2004/105765中で化合物22として記載されているいくつかの大環状キナゾリン誘導体、4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル−が原発性脳ガン又は脳転移の処置又は予防のための薬剤の製造において有用であるという発見に関する。従って本発明は、脳ガンを処置するか、予防するか、遅らせるか又は緩和するため、あるいは脳起源の細胞の増殖を予防するか又は遅くするための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PCT公開公報である特許文献1中で化合物22として記載されている大環状キナゾリン誘導体、4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチルが、原発性脳ガンの処置あるいは脳転移の処置又は予防の薬剤の製造において有用であるという発見に関する。従って本発明は、脳転移を処置するか、予防するか、遅らせるか又は緩和するための方法ならびに原発性脳ガンを処置するか、遅らせるか又は緩和するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
「脳ガン」は、(1)下記で原発性脳ガンとも呼ばれるいずれかの型のニューロン細胞の異常に増加した増殖あるいは(2)下記で脳転移とも呼ばれる中枢神経系(CNS)中に転移した他のいずれかのガンを意味する。
【0003】
ほとんどのニューロン細胞−すなわち、例えばニューロン、小神経膠細胞及び神経膠星状細胞を含むCNSを構成するか又はそこで見出される細胞−は、「終末的に分化して(terminally differentiated)」おり、それはそれらがもはや細胞周期を完結させる能力を有していないことを意味する。(非特許文献1)。ニューロン細胞が細胞周期に入るとしても、それらはアポトーシス(細胞死)を経るので、通常それらはプロセスを完結させることができない(非特許文献2)。ニューロン細胞がアポトーシスを経る保護的能力を失った場合のみに、原発性脳ガンは起こり得る。原発性脳ガンの例には神経腫、神経膠星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、髄膜腫、稀突起神経膠腫、髄芽腫、脊髄腫瘍及び神経線維腫が含まれるが、これらに限られない。
【0004】
神経膠腫は、すべての原発性CNS腫瘍の約60%を構成し、通常は脳の大脳半球に存在するが、視神経、脳幹又は小脳のような他の領域においても見出され得る。神経膠腫は、それらの起源となる神経膠細胞の型に従ってグループに分類される(非特許文献1)。神経膠腫の最も普通の型は神経膠星状細胞腫である。これらの腫瘍は、神経膠星状細胞と呼ばれる星−形の神経膠細胞から発達する。神経膠星状細胞腫は、それらの悪性度に従う度に指定される。I及びII度神経膠星状細胞腫としても既知の低−度神経膠星状細胞腫は最も悪性が低く、比較的ゆっくり成長し、多くの場合に外科手術を用いて完全に除去され得る。III度神経膠星状細胞腫としても既知の中−度神経膠星状細胞腫はもっと急速に成長し、より悪性である。III度神経膠星状細胞腫は外科手術で処置され、続いて放射線及びいくつかの化学療法で処置される。IV度神経膠星状細胞腫としても既知の高−度神経膠星状細胞腫は急速に成長し、近くの組織に侵入し、非常に悪性である。IV度神経膠星状細胞腫は通常、外科手術で処置され、続いて放射線治療及び化学療法の組み合わせで処置される。多形神経膠芽腫はIV度神経膠星状細胞腫であり、それは最も悪性且つ致死の原発性脳腫瘍の中に含まれる(同上)。多形神経膠芽腫及びそれより悪性度が低い脳腫瘍の処置のために、同じ外科手術の方法及び原理が適用されるが、多形神経膠芽腫の全体的除去は達成がより困難であった。
【0005】
悪性度の差は、原発性脳腫瘍を有する患者に関する予後にも反映される。I度神経膠星状細胞腫に関して処置された人は、通常10年かもしくはそれより長く、再発なしで生存することができるが、IV度神経膠星状細胞腫を有する患者の場合の生存の平均の長さは、外科手術的処置後15週間である。IV度神経膠星状細胞腫の高悪性−成長の可能性の
故に、外科手術的処置のみから後の1年間、患者の5%しか生存せず、2年後にはほとんど0%の生存率である。外科手術と組み合わされた放射線処置は、生存率を処置から2年後に約10%まで増加させる;しかしながら、5年より長く生存する患者は実質的にいない(同上)。
【0006】
外科手術、放射線治療及び化学療法の処置管理は、IV度神経膠星状細胞腫脳腫瘍を有する患者のために寿命を少し延長する機会を与えるが、各処置方法に伴う危険は多い。処置の利益は最小であり、処置は患者の短い残り寿命の質を有意に低下させ得る。従って、特にCNS腫瘍は若い患者における充実性腫瘍の最も一般的なグループを呈するので、上記の通常の方法の欠点を克服する原発性脳ガン予防及び処置方法に対する当該技術分野における明白な必要性が残っている。脳腫瘍は、子供におけるガン−関連死の2番目の筆頭原因であり、すべてのそのような死の約25%の割合になり、現在の治療を用いて、これらの子供の大部分は診断から1年目以内に死亡する。
【0007】
原発性脳腫瘍と比較して、脳転移の発生率はずっと高い。USAにおいて1年に約100,000人の患者が症候性頭蓋内転移を有し、剖検研究に従うと、ガン患者の4分の1が腫瘍転移を有する(非特許文献3)。脳転移は、例えば肺ガン(小細胞及び非−小細胞の両方)、乳ガン、結直腸ガン、前立腺ガン、黒色腫及び膵臓ガンを含むがこれらに限られない体内の他の場所における原発性腫瘍から生ずる。特に転移性乳ガンを有する患者において、脳転移の発生は10〜20%の率で診断される(非特許文献4)。乳ガンは、婦人におけるガン−関連死の2番目の筆頭原因であり、乳ガンからのほとんどすべての死亡が転移性疾患の故であり、脳転移は剖検において患者の30%に見出される。
【0008】
処置の標準的な様式は、外科手術的切除、化学療法及び放射線処置、特に全−脳放射線治療(WBRT)及び定位固定放射線手術(stereotactic radiosurgery)(SRS)又はそれらの組み合わせを含む。脳転移のための外科手術は、特に単一の病巣を有する患者において生存率(survival)を向上させることができる。しかしながら、多数の病巣の表面、外科手術的に近寄れない病巣又は外科手術に耐えられない患者において、外科手術は可能でないかも知れない。乳ガンにおいて、脳ガン転移を有する患者の50%が多数の転移を有し、それらを外科手術の候補としてあまり適さないものとしている。WBRTは、処置をしない場合よりメジアン生存率を向上させることができ、外科手術への補助(adjuvant)として、それは再発率及び神経学的に死亡する機会を減少させるが、それは生存率又は機能のレベルを変えない。SRSは、位置又は患者の状態により外科手術的に切除され得ない脳転移を処置する方法を与える。SRSは生命の質における向上を与えるが、単一の転移を有する患者における場合を除いて、生存率における利益(survival benefit)を与えない。脳転移の処置における化学療法の使用は、大分子量化合物が血液−脳関門を横切ることができず、かくしてほとんどの化学療法薬が制限されることにより、妨げられる。これは、ほとんどの転移性乳ガンのような化学的感受性腫瘍が、多くの場合に化学療法への完全な全身的反応を、脳における腫瘍進行を伴って示すという事実に反映される。しかしながら、脳転移の処置における化学療法の使用へのこの初期の抵抗は、近年に及んで、転移性病巣が損なわれた血液−脳関門を生じ、このおかげで化学療法薬が必ず腫瘍中に入ることができるという、動物モデル及びヒト脳腫瘍剖検における発見に基づいて、変化した。化学療法と一緒になった放射線治療は、脳転移の処置における第1線のアプローチ(first−line
approach)に発展した。
【0009】
しかしながら、現在の処置方法のすべてに伴う重大な制限及び危険がある。高度に特異的で多くの場合に不完全に限定されるガン組織の領域を優先的に消滅させる試みにおいて、多くの場合に高度に破壊的な線量の電離放射線を、体の正常な組織を介して送達しようとする放射線治療は、正常な神経系又は体の他の組織の破壊の故に重大且つ有意な副作用
を有し、中でも記憶喪失及び人格変化に導き得る(下記を参照されたい)。体の組織への化学薬剤又は薬剤の多様な投与を介して、正常な細胞の代わりにガン細胞を優先的に消滅させようとする化学療法は、現在利用可能な薬剤により有効性において制限されており、正常な組織への毒性且つ意図されていない副作用に導き得る。ガンを機械的に破壊するか又はその進行に介在しようとする外科手術も、機械的外傷及び正常な組織の破壊の結果として、重大な副作用又は結果に導き得る。上記の方法に伴う問題のいくつかは、(i)知能、学習能力、記憶、運動機能、意識及び情緒の変化を含む不利な副作用;(ii)これらの治療への耐性の発現の故の、処置から3〜5年以内における腫瘍の再発(re−emergence);(iii)そのような処置が無効なことによる死亡である。前記から、中枢神経系におけるガンの成長及び/又は腫瘍性拡大を減じるのに有効な量で血液−脳関門を横ぎることができる化学療法薬を開発するという、緊急のやむにやまれぬ、まだ満たされていない要求が存在するのは、明らかであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2004/105765号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kornblith et al.著,Cancer:Principles and Practice of Oncology,第2版,DeVita,V.,Hellman,S.,Resenberg,S,編集,J.B.Lippincott Campany,Philadelphia,Chapter 41:Neoplasms of the Central Nervous System,1986年
【非特許文献2】Multani,A.S.,et al.著,Neoplasia 2(4),2000年,339−45
【非特許文献3】Newton,H.B.,et al.著,J.Neurooncol.61,2003年,35−44
【非特許文献4】Tyson,R.M.et al.著,Therapy 3(1),2006年,97−112
【発明の概要】
【0012】
発明の概略
本発明は、一部には、引用することによりその開示全体が本明細書の内容となる国際公開第2004/105765号パンフレットに記載されているある種の化合物を用いて、脳ガンを処置もしくは予防するか、ならびに/るあいは脳転移を処置又は予防する方法を目的とする。
【0013】
1つの態様において、本発明は、原発性脳ガン又は脳転移の処置又は予防のための薬剤の製造における、PCT公開公報である国際公開第2004/105765号パンフレット中で化合物22として記載されている大環状キナゾリン誘導体、4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチルの使用を提供する。
【0014】
関連する態様において、本発明は、転移性ガンを有すると思われる哺乳類患者に本発明
の化合物を、中枢神経系へのガンの転移的拡大を妨げるのに有効な量で投与することを含んでなる、哺乳類患者における中枢神経系へのガンの転移的拡大を妨げる方法;ならびにガンを有すると診断される哺乳類患者に本発明の化合物を含んでなる組成物を、脳ガン/転移の成長又は腫瘍性拡大を減じるのに有効な量で投与することを含んでなる、脳ガンの処置方法を提供する。ガン成長又は拡大の速度における低下(生命及び生命の質を延長することができる)が処置の成功の指標であることは、認識されるであろう。好ましい態様において、ガン成長は完全に停止する。さらにもっと好ましい態様において、ガンは収縮するか又は全体的に根絶される。処置のための好ましい患者は人間の患者であるが、他の動物、特にネズミ、ラット、イヌ、ウシ、ブタ、霊長類及びガン処置のための他のモデルシステムが意図されている。
【0015】
前記の処置法の1つの変形において、化合物を第2のガン治療薬と共に投与する。第2の薬剤はいずれかの化学療法薬、放射性薬剤、放射線、ガン治療薬をコードする核酸、抗体、タンパク質及び/又は他の抗−リンパ管形成剤もしくは抗−脈管形成剤であることができる。第2の薬剤を本発明の化合物の前、後又はそれと同時に投与することができる。
【0016】
1つの変形において、処置されるべき患者は手術可能な腫瘍を有すると診断され、投与段階は、腫瘍が患者から切除される前、その間又はその後に行なわれる。腫瘍切除と一緒の化合物処置は、切除され損なったガン細胞からの腫瘍の再成長を減少させるか又は除去することを目的とする。
【0017】
もっと一般的に述べると、本発明は、必要のある哺乳類(人間、ラット、イヌ、ウシ、ブタ及び霊長類を含むがこれらに限られない)に本発明の化合物を投与する段階を含んでなる、脳ガンの処置方法ならびに脳転移の処置又は予防方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】皮下A431腫瘍成長への4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル(化合物1)の効果。灰色の棒は、化合物1を用いる処置期間、すなわちp.o.,QDx14を示す。黒の矢印は、参照化合物BCNU(カルムスチン(carmustin))を用いる処置、すなわちi.v.,Q14Dx2を示す。灰色の矢印−18日。18日に、メジアン皮下(s.c.)腫瘍体積を統計的に分析した。
【図2】A431細胞のメジアン皮下(s.c.)腫瘍体積の統計的分析。灰色の棒は、化合物1を用いる処置期間、すなわちp.o.,QDx14を示す。
【図3】頭蓋内及び皮下腫瘍を有するラットの生存率を示すKapalan Myer生存率曲線。91日に、広範囲の皮下腫瘍負荷量の故に、いくらかの生存動物を犠牲にし始める。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な記述
国際公開2004/105765号パンフレットは、多重標的キナーゼ阻害剤(multi targeted kinase inhibitors)(MTKIs)としての式(I)の大環状キナゾリン誘導体の製造、調製及び製薬学的性質を記載している。
【0020】
【化1】

【0021】
今回、前記の種類の中の1つの化合物、すなわち前記のPCT公開公報中で化合物22として記載されている、本明細書でMTKI 1及び/又は化合物1とも呼ばれる4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチルが、脳ガンモデルにおいて臨床的活性を有することが見出され、従って原発性脳ガン及び前記で定義した脳転移を含む脳ガンの処置用の製薬学的組成物の調製のためのこの化合物の使用を提供する。
【0022】
従って、1つの側面において本発明は、脳ガンの処置もしくは予防用の薬剤の製造における4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル又はその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩の使用を提供する。
【0023】
本発明のさらに別の側面は、処置の必要な哺乳類患者に4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル又はその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩の治療的に有効な量を投与することを含んでなる、哺乳類患者における脳ガンの処置もしくは予防のための方法を目的とする。
【0024】
上記で言及した製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩は、MTKI 1が形成することができる治療的に活性な無毒性の酸及び無毒性の塩基付加塩の形態を含むものとする。適した酸を用いる塩基の形態の処理により、塩基性をそれらの製薬学的に許容され得る酸付加塩に転換することができる。適した酸は例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸もしくは臭化水素酸;硫酸;硝酸;リン酸などの酸;あるいは有機酸、例えば酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸(すなわちブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸などの酸を含む。
【0025】
適した有機及び無機塩基を用いる酸の形態の処理により、酸性をそれらの製薬学的に許容され得る塩基付加塩に転換することができる。適した塩基塩の形態は、例えばアンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩、ならびに例えばアルギニン、リシンなどのようなアミノ酸との塩を含む。
【0026】
酸もしくは塩基付加塩という用語は、MTKI 1が形成することができる水和物及び溶媒付加形態も含む。そのような形態の例は、例えば水和物、アルコラートなどである。
【0027】
特に本発明は、MTKI 1に関する前記の使用のいずれかにおける4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチルのジヒドロブロミド塩、すなわち17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル−4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロペンタデシン ジヒドロブロミドの使用に関する。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は脳ガンの処置及び/又は予防用の製薬学的組成物の調製のための前記のMTKI 1の使用を提供する。
【0029】
本発明は、哺乳類に前記のMTKI 1の治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる、該哺乳類における脳ガンの処置及び/又は予防方法にも関する。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、脳転移の処置及び/又は予防用の製薬学的組成物の調製のためのMTKI 1の使用を提供する。
【0031】
本発明は、哺乳類に前記のMTKI 1の治療的に有効な量を投与する段階を含んでなる、該哺乳類における脳転移の処置及び/又は予防方法にも関する。
【0032】
従ってさらに別の側面において、本発明に従う使用のために最も好ましい化合物は、以下の構造を有する化合物より成る群から選ばれるものである:
【0033】
【化2】

【0034】
当該技術分野において既知の方法により、そして特に本明細書で言及され且つ引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる公開特許明細書、国際公開第2004/105765号パンフレットに記載されている方法に従って、本発明に従う化合物を製造し、製薬学的組成物に調製することができる。
【0035】
本発明において用いられる好ましい化合物の、国際公開第2004/105765号パンフレットから得た適した製造は以下の通りである:
【実施例】
【0036】
実施例1
a)1−ペンタノール,5−[[(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)メチル]アミノ]−(中間体1)の製造
EtOH(15ml)中の4−ブロモ−2−ニトロ−ベンズアルデヒド(0.013モル)、5−アミノ−1−ペンタノール(0.013モル)及びチタン,テトラキス(2−
プロパノラート)(0.014モル)の溶液を室温で1時間攪拌し、次いで反応混合物を50℃に加熱し、30分間攪拌した。混合物を室温に冷まし、NaBH(0.013モル)を分けて加えた。反応混合物を終夜攪拌し、次いで氷水(50ml)中に注ぎ出した。得られる混合物を20分間攪拌し、生成する沈殿を濾過し(濾液(I)を与える)、HOで洗浄し、DCM中で攪拌した(生成物を溶解してそれをTi−塩から取り出すために)。混合物を濾過し、次いで濾液を乾燥し(MgSO)、濾過し、最後に溶媒を蒸発させた。EtOHが除去されるまで濾液(I)を蒸発させ、水性濃厚液をDCMで2回抽出した。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させ、3.8g(93%)の中間体1を与えた。
【0037】
実施例2
a)1−ペンタノール,5−[[(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)メチル]メチルアミノ]−(中間体2)の製造
EtOH(150ml)中の中間体50(0.0047モル)、ホルムアルデヒド(0.025モル)及びチタン,テトラキス(2−プロパノラート)(0.0051モル)の溶液を50℃に加熱し、1時間攪拌し、次いでNaBH(0.026モル)を室温で分けて加えた。反応混合物を終夜攪拌し、次いで水(100ml)を用いてクエンチングした。得られる混合物を1時間攪拌し、生成する沈殿を濾過し、洗浄した。有機濾液を濃縮し、次いで水性濃厚液をDCMで抽出し、乾燥した。溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲル上で濾過した(溶離剤:DCM/CHOH 98/2から95/5)。生成物画分を集め、溶媒を蒸発させ、0.5gの中間体2を与えた。
【0038】
b)1−ペンタノール,5−[[(4−ブロモ−2−ニトロフェニル)メチル]メチルアミノ]−,アセテート(エステル)(中間体3)の製造
無水酢酸(8ml)中の中間体2(0.0015モル)及びピリジン(0.015モル)の溶液を室温で終夜攪拌し、次いで溶媒を蒸発させ、トルエンと共−蒸発させ、中間体3を与えた。
【0039】
c)1−ペンタノール,5−[[(2−アミノ−4−ブロモフェニル)メチル]メチルアミノ]−,アセテート(エステル)(中間体4)の製造
THF(50ml)中の中間体3(0.0015モル)の混合物を、チオフェン溶液(0.5ml)[H179−034]の存在下で、触媒としてPt/C 5%(0.5g)を用いて水素化した。H(3当量)の吸収の後、触媒を濾過し、濾液を蒸発させ、0.5gの中間体4を与えた。
【0040】
d)6−キナゾリノール,4−[[2−[[[5−(アセチルオキシ)ペンチル]メチルアミノ]メチル]−5−ブロモフェニル]アミノ]−7−メトキシ−,アセテート(エステル)(中間体5)の製造
2−プロパノール(30ml)中の中間体4(0.0015モル)及び4−クロロ−7−メトキシ−6−キナゾリノールアセテート(エステル)(0.0015モル)の混合物を80℃に加熱し、反応混合物を1日攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、残留物をそのまま次の反応段階において用い、0.83gの中間体5を与えた。
【0041】
e)6−キナゾリノール,4−[[5−ブロモ−2−[[(5−ヒドロキシペンチル)メチルアミノ]メチル]フェニル]アミノ]−7−メトキシ−(中間体6)の製造
メタノール(25ml)中の中間体5(0.0015モル)の溶液を室温で攪拌し、HO(2.5ml)中のKCO(0.003モル)の溶液を加え、次いで反応混合物を60℃に加熱し、18時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、HO(20ml)を加え、次いで酢酸を用いて混合物を中和し、生成する沈殿を濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、濃厚液をDCMで抽出し、濾過し、次いで乾燥し(MgSO)、混合物を減圧下で濃縮し
、0.5g(70%)の中間体6を与えた。
【0042】
実施例3
a)4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル−(化合物MTKI1)の製造
THF(50ml)中の中間体6(0.0011モル)の溶液を室温で攪拌し、トリブチルホスフィン(0.0016モル)を加え、次いで1,1’−(アゾジカルボニル)ビス−ピペリジン(0.0016モル)を加え、反応混合物を2時間攪拌した。最初の体積の1/3まで溶媒を蒸発させた。得られる沈殿を濾過し、洗浄した。濾液を蒸発させ、残留物をRP高−性能液体クロマトグラフィーにより精製した。生成物画分を集め、有機溶媒を蒸発させた。水性濃厚液をDCMで2回抽出し、有機層を乾燥し(MgSO)、次いで濾過した。溶媒を蒸発させ、残留物を50℃で乾燥し(真空)、0.004g(0.8%)の化合物MTKI1を与えた。
【0043】
前記の製薬学的組成物の調製のために、場合により付加塩の形態にあることができる特定の化合物の治療的に有効な量を活性成分として、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、好ましくは経口的、経皮的又は非経口的投与のような全身的な投与;あるいは吸入、鼻スプレー、点眼薬を介するか又はクリーム、ジェル、シャンプーなどを介するような局所的投与に適した単位投薬形態にある。例えば経口的投薬形態における組成物の調製において、通常の製薬学的媒体のいずれか、例えば懸濁剤(ナノ懸濁剤を含む)、シロップ、エリキシル剤及び溶液のような経口用液体調製物の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体担体を用いることができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口用組成物の場合、担体は通常少なくとも大部分において無菌水を含んでなるが、例えば溶解性を助けるための他の成分が含まれることができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含んでなる注入可能な溶液を調製することができる。式(I)の化合物を含有する注入可能な溶液を、長時間の作用のために油中で調製することができる。この目的のために適した油は、例えばピーナツ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、大豆油、長鎖脂肪酸の合成グリセロールエステル及びこれらの油及び他の油の混合物である。注入可能な懸濁剤も調製することができ、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。経皮的投与に適した組成物において、担体は場合により浸透促進剤及び/又は適した湿潤剤を含んでなることができ、それらは場合により小さい割合におけるいずれかの性質の適した添加剤と組み合わされていることができ、その添加剤は皮膚に有意な悪影響を引き起こさない。該添加剤は皮膚への投与を容易にすることができるか、及び/又は所望の組成物の調製の助けとなることができる。これらの組成物を種々の方法で、例えば経皮パッチとして、スポット−オンとして又は軟膏として投与することができる。局所的適用に適した組成物として、薬剤を局所的に投与するために通常用いられるすべての組成物、例えばクリーム、ジェル、包帯、シャンプー、チンキ剤、塗布剤、軟膏、軟膏剤(salves)、粉剤などを挙げることができる。該組成物の適用は、例えば窒素、二酸化炭素、フレオンのようなプロペラントを用いるか、又はポンプスプレーのようにプロペラントを用いないエアゾール、滴剤、ローション又は半固体、例えば綿棒により適用することができる増粘された組成物によることができる。特に軟膏剤、クリーム、ジェル、軟膏などのような半固体組成物は、簡単に用いられるであろう。
【0044】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を投薬単位形態物に
おいて調製するのが特に有利である。本明細書及び本明細書の請求項で用いられる投薬単位形態物は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決められた量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような投薬単位形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、粉剤小包、ウェハース、注入可能な溶液又は懸濁剤、小匙一杯、大匙一杯など、ならびに分離されたそれらの複数である。
【0045】
好ましくは、本発明に従う化合物を含んでなる製薬学的組成物の治療的に有効な量を、経口的又は非経口的に投与する。該治療的に有効な量は、患者において多様な腫瘍性障害又は細胞増殖性障害(上記参照)の転移及び/又は成長を有効に妨げるかあるいはその大きさを縮小させる量である。現在のデータに基づき、本発明の化合物そして特に4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル(MTKI 1)を活性成分として含んでなる製薬学的組成物を、1日に10mg〜数(1〜5)グラムの量で、1回の投薬としてかあるいは例えば1日2、3又は4回をも含む1回より多い投薬に細分して経口的に投与することができると思われる。好ましい量は、1日に500〜4,000mgの範囲である。そのような化合物に関する特に好ましい投薬量は、1日に750mg〜3,000mgの範囲内である。本明細書で活性成分とも呼ばれる本発明に従う化合物の、治療的効果を達成するのに必要な量が、投与の経路、受容者の年令及び状態ならびに処置されている特定の障害又は疾患とともにもちろん変わるであろうことは認識されるであろう。最適の投薬量及び投薬管理は、通常の方法を用い且つ本明細書に示される情報を見て、当該技術分野における熟練者により容易に決定され得る。この処置を継続的に、あるいは例えばこれらに限られないが、サイクル当たりに1〜21日の処置を与える3〜4週間のサイクル又は有効且つ安全であることが示される他のスケジュールを含んで断続的に与えることができる。
【0046】
1つの代表的な調剤は以下の通りである:
実施例4:調剤:
生成物MTKI1を10−mg/mLの経口用溶液,pH2として調製することができる。それは精製水中に賦形剤、Captisol(R)(化学名:スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン,SBE−β−CD)、クエン酸、Tween(R)20、HCl及びNaOHを含有する。調剤を冷蔵保存(2〜8℃;36〜46°F)し、投薬量調製から前の最大で1時間、室温に温めることができる。
【0047】
生成物MTKI1を、それぞれ3、4及び00のサイズの硬質ゼラチンカプセル中に活性化学物質(active chemical entity)MTKI1、ラクトース一水和物(200メッシュ)、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含有する50−mg、100−mg及び300−mgの経口用即時放出カプセルとして調製することもできる。カプセルは以下の成分のいずれか又はすべてを含有することもできる:ゼラチン、赤色酸化鉄及び酸化チタン。
【0048】
上記の本発明のMTKIを、1種もしくはそれより多い他のガン処置と組み合わせて用いることができる。そのような組み合わせは、いずれかの確立された抗腫瘍治療、例えばこれらに限られないが化学療法、放射線ならびに標的に基づく治療、例えば抗体及び小分子(テモゾロミド(Temozolomide)又はBCNUを含むがこれらに限られない)を包含することができる。これらの治療を、最適の有効性/安全性必要条件に依存して、全身的治療においてあるいは局所的滴注/投与(例えば硬膜下腔内に)おいて組み合わせることができる。
【0049】
MTKI 1(例えば化合物1)及びさらに別の抗−ガン剤を同時に(例えば別々の又
は単一の組成物中で)あるいはいずれかの順序で逐次的に投与することができる。後者の場合、2つの化合物は、有利な付加的もしくは相乗的効果が達成されるのを保証するのに十分である期間内に、ならびにそのような量及びやり方で投与されるであろう。好ましい投与の方法及び順序ならびに組み合わせの各成分に関するそれぞれの投薬量及び投薬管理が、投与される特定のMTKI及びさらに別の抗−ガン剤、それらの投与経路、処置されている特定の腫瘍ならびに処置されている特定の宿主に依存するであろうことは、認識されるであろう。最適の投与の方法及び順序ならびに投薬量及び投薬管理は、通常の方法を用い且つ本明細書に示される情報を見て、当該技術分野における熟練者により容易に決定され得る。
【0050】
実験データ
MTKI 1の独特の物理−化学的性質は、優れた細胞活性及び経口的バイオアベイラビリティーをまだ保持しながら無損傷の血液脳関門を横切る能力を含む非常に好ましい組織分布側面を生じた。ここで我々は、この脳への優先的な組織分布が有意な抗腫瘍活性を生ずることを、脳転移の実験モデルを用いてさらに示す。
【0051】
A431(ATCC,Rockville,MD.USA)外陰ガン細胞を、無胸腺ヌードラット及びマウスに定位的に注入した。ラットの研究において動物生存率を読み出し(readout)として用いることにより、あるいはマウスの研究の場合にはMRI画像法を用いて、腫瘍成長の遅れを追跡した。
【0052】
我々のデータは、MTKI 1が有力に腫瘍成長を遅らせ、脳転移の実験モデルにおける生存率の向上に導くことを示す。
【0053】
方法
脳モデル
ラットの脳における細胞の定位的注入
0日に、パートIにおける(in part I)40匹のラット(Wistar,BDIX又はSprague Dawley)及び40匹のヌードラットに細胞を定位的に注入した。腫瘍細胞の定位的注入のために、ケタミン(Ketamine)(Ketamine500(R),Ref 043KET204,Centravet,France)及びキシラジン(Xylazine)(Rompun(R),Ref 002ROM001,Centravet,France)混合物(2/1,v/v,それぞれ70及び15mg/kg)の筋肉内注射によりラットを麻酔した。5μlのRPMI倍地中に再−懸濁された1x10個の腫瘍細胞を用い、1x10個のA431細胞を、4個の独立した定位装置(Kopf Instrument,Germany及びStoelting Company,USA)を用いて右前頭葉に定位的に注入した。5μlの細胞懸濁液を、SOP No TEC−083/001に従って0.5μl/分において注入した。細胞注入の後、ラットを1時間観察した。
【0054】
ラットにおける細胞の皮下注入
定位的注入の同じ日、0日に、ラットにA431細胞を皮下的に注入した。RPMI倍地(200μl)中の1x10個のA431細胞の皮下(SC)注入により、ラットにおいてそれらの右側腹部に腫瘍を得た。腫瘍細胞の皮下注入のために、イソフルラン フォレン(Isoflurane Forene)(Minerve,Bondoufle,France)の吸入によりラットを麻酔した。
【0055】
MTKI 1(下記の図中の化合物1)を20%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(20%β−HP−Cyclodextrin,pH4.0)の溶液中に溶解し、細胞の接種から4日後に開始して14日間、すなわち4日から17日まで、経口的強制
栄養法により毎日与えた。ビヒクル処置動物は、β−HP−Cyclodextrin溶液のみを与えられた。
【0056】
参照化合物BCNU(カルムスチン)は、4日及び18日に静脈内に投薬された。
【0057】
結果
脳モデル
ラットにおける細胞の皮下注入
調べられた3つの投薬量、すなわち50mpk、75mpk及び100mpkにおいて、体重の減少又は行動的変化のような毒性の臨床的兆候はMTKI 1を用いる処置に伴わなかった。種々の動物において観察されるメジアン皮下腫瘍体積における差を見ると(図1)、A431腫瘍成長へのBCNUの効果はなかったが、MTKI 1は、調べられたすべての投薬量において、皮下A431腫瘍成長を明らかに妨げた。BCNUの高い投薬量(15mpk)はいくらかの穏やかな毒性を誘導したかも知れず(毒性、すなわち体重減少の臨床的兆候のより早い出現から明らかである)、ビヒクル標準と比較して一様な(even)増加した腫瘍成長速度を説明している。
【0058】
18日、すなわち最後のMTKI 1処置サイクルから24時間後、皮下A431腫瘍の統計的分析(図2)は、調べられたすべての投薬量において、皮下腫瘍成長へのMTKI 1の有意な効果を示した。処置対標準(標準を100%として)値は、MTKI 1の50mpkの場合に5.37%、MTKI 1の75mpkの場合に4.29%そしてMTKI 1の100mpkの場合に3.17%であった。
【0059】
ラットの脳における細胞の定位的注入
Kapalan Myer生存率曲線(図3)は、MTKI 1(化合物1)で処置された動物に関する生存率における利益を明らかに示す。動物生存時間(例えば実証されている肺における化合物の誤−投与に続く、及び/又は脳腫瘍の存在に関連しないいくつかの「事故的」な動物の死亡が観察された)へのMTKI 1(化合物1)の用量−依存性の顕著な効果が観察された。生存時間(50%)は、ビヒクル処置動物に関する49日から、それぞれ50mpk、75mpk及び100mpkの化合物1で処置された動物に関する61、83及び88日に変化した。
【0060】
これらの実験において、91日に生存しているいくらかの動物は、広範囲の皮下腫瘍負荷のために犠牲にしなければならなかった。
【0061】
前記の明細書は本発明の原理を記載し、例示の目的で実施例が与えられているが、本発明の実施は、以下の請求項及びそれらの同等事項の範囲内に含まれる通常の変更、応用及び/又は修正のすべてを包含することが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類患者における脳ガン又は脳ガン転移の処置又は予防方法であって、そのような処置の必要な哺乳類患者に、4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル又はその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩;あるいは17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル−4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロペンタデシン ジヒドロブロミドより成る群から選ばれる化合物の治療的に有効な量を投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
化合物が以下の構造:
【化1】

を有する請求項1の方法。
【請求項3】
化合物の治療的に有効な量を経口的、非経口的、局所的又は硬膜下腔内に投与する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル又はその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩を、さらに別の抗−ガン剤と組み合わせて投与する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに別の抗−ガン剤がテモゾロミド(Temozolomide)又はBCNUより成る群から選ばれる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脳ガン又はガン転移の処置又は予防のための薬剤の製造における4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロ−ペンタデシン,17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル又はその製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩;あるいは17−ブロモ−8,9,10,11,12,13,14,19−オクタヒドロ−20−メトキシ−13−メチル−4,6−エタンジイリデンピリミド[4,5−b][6,1,12]ベンズオキサジアザシクロペンタデシン ジヒドロブロミドより成る群から選ばれる化合物の使用。
【請求項7】
化合物が以下の構造:
【化2】

を有する化合物より成る群から選ばれる請求項6に記載の使用。
【請求項8】
薬剤の治療的に有効な量を経口的又は非経口的に投与する請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
式(I)の化合物をさらに別の抗−ガン剤と組み合わせて投与する請求項6〜8のいずれか1つに記載の使用。
【請求項10】
さらに別の抗−ガン剤がテモゾロミド又はBCNUより成る群から選ばれる請求項9に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507625(P2010−507625A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533849(P2009−533849)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061498
【国際公開番号】WO2008/049901
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】